羨望、嫉妬、嫌悪、共感、慈愛――私たちの心のどこかを刺激する人気芸能人たち。ライター・仁科友里が、そんな芸能人の発言にくすぐられる“女心の深層”を暴きます。
<今回の芸能人>
「素直に『存じ上げません』って言ったの」加藤紗里
(加藤紗里公式Twitter、3月14日)
もう終わってしまったが、『ざっくりハイタッチ』(テレビ東京)という番組があった。千原ジュニア、フットボールアワー・後藤輝基、小藪千豊がMCを務め、毎回ゲストを招くバラエティ番組だが、平成ノブシコブシ・吉村崇がオンナについて、こんなエピソードを披露したことがある。
「芸能人を抱きたい」という吉村は、グラビアアイドル・佐野ひなこにアプローチしたものの、まったく相手にされず、どうにかなるのは、グラドルのタマゴばかりだという。この“グラドルのタマゴ”とは、「イメージDVDを数枚出している」「テレビに出たことはない」子のことだそうで、それを聞いたMC陣は皆笑っていた。吉村はさらに、周囲の反対を押し切り、会社に借金までして2000万円もする高級車を購入したというが、ジュニアが「2000万のクルマはすごい」と言った上で、「そこに、DVD2枚出したことのある子を乗せて」と重ねると、再び笑いが起こった。
2000万クラスの高級車と、テレビに出たこともないグラドルでは“格”が合わないという考えから生まれる笑いだろうが、今の若い世代は、もはやそういう“格”や“上下”を理解していないのではないだろうか。お笑い芸人・狩野英孝の“元彼女”として世に出てきた元レースクィーン・加藤紗里を見ていると、そう思えてしまう。
加藤が世に出たのは、歌手の川本真琴がTwitterで、彼氏の存在を告白し、“ある女性”に対して「私の彼氏を盗らないで」とツイートしたことがきっかけだった。狩野こそ川本の彼氏だったわけだが、そこに加藤が「事務所公認の上、狩野英孝とつきあっている」「川本真琴はストーカー」と挑戦的なツイートを返す。当時の加藤は、吉村の掲げた「DVDを数枚出した」「テレビに出たことのない」に該当する、つまり“グラドルのタマゴ”だっただけに、この反撃の仕方は、「狩野に乗じて、自分を売り込もうとしている」と“売名”バッシングされた。
加藤の外見にクセがあり、経歴もいまひとつはっきりしないことから、これ幸いとばかりにバッシングは過熱。狩野特需で、加藤はバラエティ番組に出始める。テレビ出演経験がほとんどないだろうに、大物芸能人を前にしても、加藤は臆することはない。が、その一方で、タレントとして前に出る気もあまり感じられないのである。通常ならば、こういうタレントは時間の経過と共に忘れ去られていくのだが、時代は加藤に味方しているように思う。ネットで注目を集めている案件をテレビが取り上げることが多くなっている今、SNSが活発な芸能人は、テレビで需要があるのだ。
例えば加藤は、「週刊新潮」(新潮社)に、AV女優・坂口杏里から借金を申し込まれたものの、これを拒否したと報じられた。坂口はTwitterで「お金かりてません!」と否定したが、加藤は「紗里が売名のためにお金貸してって言われたってわざわざ嘘ついてるって感じで・・・。どっちでもいーけど、色々悩んでいたのがバカみたい笑」と反論した。何か事情があることを思わせる発言で、『バイキング』(フジテレビ系)はそのあたりを聞こうと、加藤にオファーをかけるが、テレビに出た彼女の口は重い。SNSやブログでの加藤はネットニュースが食いつきそうな単語を散りばめているのに、テレビでの加藤は別人のようなのだ。
しかし、知名度を上げた加藤にオファーをかける番組は多い。元阪神タイガースで野球解説者の下柳剛氏と『虎バン』(朝日放送)で共演した加藤は、「ピッチャーって知っているか?」と尋ねられ、「素直に『存じ上げません』とお答えした」ことをTwitterで明かした。自称“カープ女子”がピッチャーも知らないとは、炎上を狙っての燃料投下にも思えるが、もしかしたら真実かもしれないとも感じるのだ。
加藤を見ていると、他人への興味のなさを感じる。
バラエティ番組では、上下関係と相手の個性を読みつつ、オリジナルなコメントをすることが求められるが、加藤は他人に興味がないので、求められていることがわからず、凡庸なコメントしかできないのではないか。その点、SNSは自分ひとりの世界なので、好きな時に好きなことを書ける。誰にも邪魔されることはなく、強気なことも書ける。
芸能人といえば、テレビに出て顔を売ることが仕事と思われてきた。しかし、これからは自分にしか興味がなく、SNSで自分をアピールし、時折テレビに出て実績は稼ぐが、存在感があるというわけではない(しかし、SNS有名人ゆえに仕事そのものは減らない)という加藤タイプの芸能人が、増えるような気がしてならない。
仁科友里(にしな・ゆり)
1974年生まれ、フリーライター。2006年、自身のOL体験を元にしたエッセイ『もさ子の女たるもの』(宙出版)でデビュー。現在は、芸能人にまつわるコラムを週刊誌などで執筆中。気になるタレントは小島慶子。著書に『間違いだらけの婚活にサヨナラ!』(主婦と生活社)、最新刊は『確実にモテる 世界一シンプルなホメる技術』(アスペクト)。
ブログ「もさ子の女たるもの」





