家庭を持っている女性が、家庭の外で恋愛を楽しむ――いわゆる“婚外恋愛”。その渦中にいる女性たちは、なぜか絶対に“不倫”という言葉を使わない。どちらの呼び名にも大差はない。パートナーがいるのにほかの男とセックスする、それを仰々しく “婚外恋愛”と言わなくても、別に“不倫”でいいんじゃない? しかしそこには、相手との間柄をどうしても“恋愛”だと思いたい、彼女たちの強い願望があるのだろう。
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恋愛体質の女性にとって永遠の悩みは、恋を取るか、友情を取るか、ではないだろうか。学生時代に女友達との約束をすっぽかして恋人に会いに行く……なんてことを繰り返す女は、グループに1人は存在していたような気がする。そして、女の友情を大切にしない女は、大抵同性から嫌われる。
「嫌われてもしょうがないですよ。私の生活って、多分女にとってはあこがれだから、嫉妬されるだろうなって」
そう話す充希さん(仮名)の表情は、あっけらかんとしていた。
■「年上の男」に強くあこがれてしまう
今回お話を聞かせてくれた充希さんは、30代前半の独身女性。若くして結婚し、20代であった2年前に離婚を経験しているという話を聞いていたので、派手めのルックスを想像していたが、艶のあるストレートの黒髪に白い肌、グレーのニットという外見は、「婚外恋愛」「早婚」「離婚」などという突飛な言葉とは無縁のように感じられる。淡々とした穏やかな口調からは、いわゆる「お嬢様」な気品すら漂っている。筆者がそんな第一印象を話すと、充希さんは楽しそうに笑った。
「そういっていただけると、うれしいですね。私、母子家庭で育ったんですよ。離婚の原因は詳しく聞いていませんけど、多分母親の浮気だよねって妹と話しています。母は友達も大勢いたし、たぶん相当モテるんじゃないかな」
いわゆる“バリキャリ”であった充希さんの母親は、明るく自由な性格であった。そのためか自然と人を惹き付け、自宅には女性の友人はもちろん、見知らぬ男性もちょこちょこと顔を出していたという。
「不快感はありませんでしたよ。私たちがいる前では、母は絶対に女の顔は見せませんでしたし、私たちを一番に考えてくれていましたから。物心がつくと、、『あの男の人は、母の彼氏なんだろうな』と気づくこともありましたけど、母がその男性といちゃいちゃしていたわけではなく、私たちの前では、普通のお友達みたいな感じでしたね。むしろ、連れてきた男性に、私たちのことを『宝物』と紹介してくれるのが、とてもうれしかったんです」
充希さんは、母子家庭であることに寂しさや負い目を感じたことはなく、また金銭面でも何ひとつ不自由したことはないという。優しく働き者の母親だったそうだ。
しかし、次第に充希さんの中で、“父親”という存在にあこがれが芽生え始める。
「小中学生の頃から、年上の男の人にばかりあこがれていました。学校の先生や塾の先生……中学時代に教育実習に来た大学生の先生は本当に好きになってしまって。教育実習が終わる日に強引に連絡先を聞き出して、しばらくは連絡取り合っていましたよ。交際には至らなかったけれど、良い思い出です」
学生の頃から付き合う男性は全員年上。しかも5歳以上離れた男性ばかりだったという充希さん。短大を卒業後、派遣社員として働き始め、数社目の会社で運命的な出会いをする。
「社員200人くらいの規模の会社で出会った、私の直属の上司です。私よりも10歳以上年上、管理職ということもあって頼れそうな人だなと感じたんです」
1年半の派遣を経て、次の会社へ移るタイミングでその上司と同棲を始め、すぐに籍を入れた。プロポーズは彼の方からだったという。
「最初の2年は本当に幸せでしたよ。派遣を辞めて専業主婦になり、彼のためだけに時間を使えるようになりました。ご飯を作ることも、休日に一緒に遊びに行くことも、何もかも幸せでした」
しかし仕事の忙しさから、次第にご主人は充希さんに対して、冷たく接するようになっていく。
「おやすみのキスもなくなってしまったし、寝る時には背を向けるようになりました。帰宅してからも話を聞いてくれないし、一緒にお風呂にも入らないようになって……友達に相談したら『それ、普通だよ』なんて言われましたけどね。私は寂しくてしょうがありませんでした」
■婚外恋愛相手は、既婚の経営者
充希さんは寂しさを紛らわせるために、再び派遣で仕事を始めた。
「今の彼と知り合ったのも派遣先です。熊みたいなルックスで、優しくて、一目惚れでしたね」
その恋人は、彼女の派遣先の経営者、しかも彼も既婚者だというから驚きである。
「私の方から一生懸命アプローチしました。もちろん彼は私が既婚者だということは知っていましたが、それでも受け入れてくれたんです」
入社後、彼と婚外恋愛関係になるには、そう時間がかからなかった。彼に惚れこんでしまった充希さんは、夫とのスキンシップを拒絶するようになってしまう。
「一緒にお風呂に入るのはもちろん、おはよう、おやすみのキスも、もちろんセックスも全て拒みました。だからあっさりバレちゃいましたよ」
泥沼になるはずだったが、意気消沈してしまったご主人は、条件も何も提示せずに離婚を求めてきたという。以来充希さんは、恋人の所有するマンションで暮らし、いわゆる愛人生活を送っている。
「派遣先は辞めて、引き続きパートとして彼の会社で働いています。とはいっても週に2回、5時間だけですけど……それなりのお給料をいただいているので、みんな怪しんでいると思いますよ。でも誰も何も言いません。もともとパートの女性が多い小さな会社で、あらゆるウワサは絶えませんし、奥さんとは私が来る前から仮面夫婦だったみたいだから」
彼の所有するマンションには、基本的に肉親以外を招き入れることは禁止されているそうだ。
「それに、今こういう生活をしているって話したら、女友達がほとんどいなくなっちゃいました。母と妹には、彼が既婚者だということは秘密にしていますけど……」
24時間、彼の監視下にある現在の充希さんの生活だが、息苦しさを感じないのだろうか?
「全然平気ですよ! 一番下のお子さんがまだ小さいので、土日は毎週会えないのが寂しいくらいです。彼との交際で唯一イヤなのはセックスですね……私、あまりセックスが好きじゃないんです。それよりもいちゃいちゃくっついている方が、幸せを感じます」
大勢の友達をなくし、彼と2人きりの濃密な時間を過ごす充希さん。前のご主人との生活に辟易し、婚外恋愛に走ったのも、こうした時間が得られなかったからなのかもしれない。筆者が彼女の立場であれば、とてつもなく寂しく不安な毎日に感じてしまうが、彼女の幸せは、彼女自身が一番かみしめているのだろう。
(いしいのりえ)







