こんな堂々とした「黒歴史」の抹消を、誰も疑問に思わなかったのだろうか。 日本でも指折りの総合商社・双日が2017年の神戸開港150年を記念して開設した特別サイトを見て、文字通り「開いた口がふさがらない」気分を味わった。 このサイトでは「スペシャルコンテンツ」として、同社の源流である鈴木商店が描かれたマンガ『栄光なき天才たち』を復刻し、公開しているのである。 『栄光なき天才たち』は作:伊藤智義(一部)、画:森田信吾によって、1986年から「週刊ヤングジャンプ」(集英社)に連載された作品である。この作品の特徴は、一般の偉人伝とは異なり、異形を達成しながらも、生前は正当な評価を受けなかった人物や、栄光を逃したり一瞬の輝きだけで忘れ去られた人物を数多く取り上げている点である。 連載当時は、話題になった作品であるが、現在は単行本は絶版。2014年にはイーブックで電子書籍化もされているのだが、どういう権利関係なのか、収録されているのが、ごく一部の作品だけになっているという、埋もれた名作なのである。 そうした中で、読むことが困難になっていた鈴木商店編は、大正時代に第一次世界大戦に伴う好況で世界に名を轟かせながらも没落していった一大商社の姿を描いた、重厚な人間ドラマであった。 それが再び、しかも無料で読めるとは、さすが大企業は太っ腹! そう思って読み始めた。 物語は、明治時代に誕生した貿易商・鈴木商店が、番頭の金子直吉の采配の下で、発展していく姿を描く。とりわけ、第一次世界大戦の勃発と共に、当時ロンドン支店勤務だった高畑誠一によって手がけられた、日本を介さない三国間貿易によって、その売上は当時の日本のGNPの一割へと達していくのである……。 しかし、栄光も長くは続かなかった! ……いや、長く続かなかったハズである。 なぜ、そう記さなくてはならないかといえば、現在サイトで公開されているのは、栄光の部分だけだからである。 そう、栄光の後にタイトル通り「栄光なき天才」となってしまった顛末が描かれるのだが、物語は「『栄光なき天才たち・鈴木商店』双日特別版は、こちらで終了となります」と、予想外の打ち切りになってしまているからである。 ナンダ、コレは……と、驚きながらサイトの下部を見てみると「載された全てを掲載してはおりません。ご了承ください」と、連載当時を知る読者の怒りを、最初からわかっていたかのような断り書きが。 本編では、この後、大戦の終了と共に好況が終焉。さらに米騒動を経て、昭和恐慌に飲み込まれる形で鈴木商店は倒産へと至るまでのドラマが克明に描かれていた。 だが、そこは会社にとっては、なかったことにしたい部分であろう。なぜなら、倒産を前に、もう鈴木商店には先がないことを見切った高畑誠一が密かに社員に声をかけ、破綻後に設立した新会社が日商、双日となったことが描かれているからである。 実業家としては評価すべき「見切り千両」の場面だけれども、読み方によっては会社を裏切ったと、とれなくもない。さすがに、そこまでを自社の歴史として公開してしまうのは、ためらいがあったのか? だったら、こんなサイトにしなければよかったのに……。幻の名作に再会した喜びが、一転裏切られた気分になった新年である。 (文=昼間たかし) ■双日 神戸開港150年 特別サイト http://sp.sojitz.com/kobe150/双日 神戸開港150年 特別サイトより。
月別アーカイブ: 2017年1月
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視聴率急落! テレビ朝日系『就活家族 きっと、うまくいく』に「暗すぎる」との声
テレビ朝日系『就活家族 きっと、うまくいく』19日放送の2話の視聴率は、9.4%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)と急落。初回2ケタという華々しいスタートでしたが、「暗すぎる」などの声もあるために、視聴者を選ぶ結果となったのではないでしょうか。 さて、大企業・日本鉄鋼金属に勤めるエリート社員の富川洋輔(三浦友和)は、中学教諭の妻・水希(黒木瞳)とOLの娘・栞(前田敦子)さらに、就活生の光(工藤阿須加)の4人家族の大黒柱。社内で採用担当とリストラ勧告を受け持っています。35年にわたって会社に奉仕し続けてきた洋輔には、役員昇格というゴールが待っていました。 洋輔の役員昇格に浮かれる富川一家は、一軒家の購入を決断。水希はいそいそとローンを通し、マイホーム生活に夢を膨らませ……というのが、前回のお話。 1話で、すでに各々が問題を抱えていた富川一家。2話は、関係が逆転しつつある父・洋輔と息子・光を中心に見ていきましょう。 1話の終わりで、後輩社員の川村優子(木村多江)にありもしないセクハラ被害で訴えられた洋輔。自身の潔白を譲らず主張しますが、事態は悪い方向へ転びます。「会社のメンツが大切だから」と、手始めに自宅謹慎を命じられ、最終的には孫請けの「日鉄鋼物流」への出向を命じられました。 “大企業のエリート社員”としてのプライドがある洋輔にとって、孫請け企業への出向は、左遷以外のなにものでもないし、プライドが許しません。「給与も役職も考慮する」との社長の申し出を切り捨て、「今月いっぱいで退職させていただきます」と勢いのまま宣言してしまうのでした。 家庭に戻ってもやることがなく、会社を辞めることでさえ“プライド”が許さず言い出せない洋輔。現役時代に築き上げたコネを使って、他社への再就職を試みますが、全滅。洋輔からすれば、なぜどこも雇ってくれないのか、全く理解できません。 洋輔が思い切って面接でそれを切り出すと、こんな答えが返ってきました。「富川さんには、『日本鉄鋼金属』という看板があったから価値があった。それがなくなると、今まで通りとはいかない」。洋輔のプライドは、自分より下の零細企業の老いぼれ社長によって簡単に壊されてしまいました。 一方の息子・光はどうでしょうか? いかにも怪しい国原耕太(新井浩文)の運営する「国原就活塾」に通い、洗脳されたかのように国原の指示に従う光。 頭からつま先まで黒ずくめの国原は、就活生たちを誘導して募金活動をさせ、その募金をポケットに入れるインチキっぷりですが、それと裏腹に国原の就活指導は的を得ているようです。光は積極的に就職活動に打ち込み、以前よりも堂々とした立ち居振る舞い。3流大学生を1流企業に送り込んだというという国原の触れ込みは、本当なのかもしれません。 洋輔の退職日がやってきました。退職を迎えたものの、再就職先は見つからず。そんな時に自分を退職に追い込んだきっかけである川村から連絡が。川村によれば、洋輔の同期で総務部長の綿引雄二(神保悟志)に「人事が変わればリストラが取消になる」とそそのかされて、洋輔を陥れたということでした。綿引は、セクハラ被害の1件を収めたとして、本来、洋輔に用意されていた役員の座に就くことに。 「本当に取り返しのつかないことをした」と反省し、自らも日本鉄鋼金属を退職した川村は叔父の経営する会社を、洋輔の再就職先として提案します。しかし、そこでもやはり“プライド”が邪魔し、「仕事くらい自分で探せるさ」と川村を突き放すのでした。 結局、なりふり構っていられなくなった洋輔は、後日川村を呼び出して、川村の叔父の会社への再就職を頼むことになります。 光は、1次面談を突破することができ、再就職がにっちもさっちもいかない洋輔と反比例するように晴れやかな顔になっていきます。 というのが、今回のお話。2話から、一家の大黒柱が無職に。予想できた展開ではありますが、転落っぷりがすごい。 さて、娘の栞は、真壁雄斗(渡辺大)の紹介で部署を異動。ジュエリーを売ってノルマを達成しなければならないのですが、栞の業績は芳しくありません。業を煮やした部長の中原綾子(山本未來)は、栞を婚活パーティーに連れて行きます。そこで栞は、体を売ってでも商品を売りつけてこいと中原に突きつけられてしまうのでした。 もうすでに、不幸が一家を覆い尽くしそうな展開ですが、最大の問題を抱えていたのは母親の水希でした。 水希が学年主任を務めていた時に同姓同名の生徒がいて、その生徒の内申書を取り違えてしまったことが発覚。結果、不良だった生徒は進学校へ、優等生の生徒は不良の方の内申書を持たされて3流高校へ。優等生は、進学先でいじめに遭い、引きこもりとなってしまったのでした。 水希は、優等生のもとに謝罪に向かいますが、父親から門前払いにされてしまいます。これは死活問題です。引き続き、解決に向けての苦労が続くことでしょう。 ところで、再就職先が見つからない洋輔が、公園で出会った失業者の天谷五郎(段田安則)という男。天谷は「お仲間でしょう?」と声かけますが、洋輔は「わたしとあなたは違う」とピシャリ。 天谷と洋輔は同じ境遇のようで、聞けば、天谷もかつては大企業で働いていたそう。「プライドで仕事を失った」と皮肉っぽく語る姿は、まるで、洋輔の未来を見ているようです。 さて、この天谷は、路頭に迷うことになるであろう富川一家にとってキリストとなるのでしょうか? (文=どらまっ子HAYAちゃん)テレビ朝日系『就活家族 きっと、うまくいく』番組サイトより
掴みどころがないのが魅力! 『二宮和也 MYSTERIOUS★ミステリ★PRINCE』発売
内に秘めた情熱と真理をつく冷静さ。その狭間を自由自在に行き来して、周囲を魅了して止まない嵐・二宮和也。
その魅力の数々に迫ります!
Contents
Jr.・・・・4P~
オーディションでは踊らずに
ただ揺れていた(笑)
—-嵐に奇跡が起こったとしたら、この5人になったことだと思う
ARASHI・・・・18P~
ヘタな芝居して、嵐まで「たいしたことない」と思われるのが嫌だった
—-オレ以外の”正直者4人”のためならなんだってできる
ACTOR・・・・36P~
自分の考えが生まれちゃうでしょ、それが一番やっかいなんです
—-目の前の現場が一番で、出来上がったものには興味がない
IDOL・・・・58P~
「トップになろうね」って夢、嘘にしないために走ってきた
—-なめてもらっちゃ困るよ、アイドルを
AMBIVALENT・・・・74P~
大切なのは人との違いを知ることだと思う
—-他者との違いを認めつつ、相交わらない孤高の男
LEGEND・・・・82P~
「変わらないことがすごいんだ」って絶対思ってる
—-オレ、「変わらない進化系」を信じてるから
番宣出演でタトゥー発覚の木村拓哉から、透けて見える“状況”
――毒舌コラムニスト・今井舞が、話題のアノ人物やアノニュースをズバッとヒトコトで斬り捨てる!
◎大きな痛手
背水の陣ですから、わっしょいわっしょい番宣祭り。しかしここまで全て裏目に出ようとは。
張り切ったエアホッケーではオレオレ性(さが)が、ヨガのロケでの足のタトゥーが。見せてはいけないものが次々と露見。特にタトゥーはなぁ。「あるらしいよ」と「ここにあります」は雲泥の差だから。「足首にタトゥーあり」は、間違いなくキムタクのトップシークレットであり、そのカバーのためにはまず、当たり前だがそれを共有しなくてはならない。はずなのだが。カメラにバッチリ映った上に、それが編集されず、そのまんま放映されてしまったというのは……。
1:「タトゥーのことを知らなかった」
2:「悪意があった」
原因はいずれかである。現状、2は考えづらいので、1の「知らなかった」ってことになるのだろう。知らなかったって。
周知徹底、鋭意実行の前任者が部隊ごとまるっといなくなり、「機能不全」に陥っているということなんだろうな。仕方ない。自ら選んだ道だもの。いや、嫁の選んだ道なのか。共白髪、共入墨で、生き抜け、A LIFE!
◎安定のセンス
どこまでも「やっぱり」な方向に膨らんでいく、「成宮寛貴の友人A」関連情報。名前からしてもう。真月・スカイ・ジュニアー・ダ・シルバーだと。競馬馬か。
汲めども尽きぬ泉のように、溢れるたまらんチョイ悪情報。どれも「友人A」像にピッタリで、膝を打つものばかり。しかしあの携帯の画像だけはびっくりだ。ダサすぎるだろう、あのカバー。
◎だ、大丈夫……です
始まります、始まってます、マイナンバー。出版各社も寄稿者のマイナンバー収集の真っ最中。しかし、まだどんなやり方が「正解」かわからないゆえ、各社とも集め方にも管理にもかなりのバラつきが。
「NTTデータ」等の情報管理専門の会社に委託するところもあれば、いや、外に頼んで漏れたりしたらってことで、自社内で対応するところも。その際「マイナンバー係」など、専用の部署を設けて対応している会社がほとんどで、各人からのマイナンバーの宛先もそこになっている。送付の封筒もみな受取人払いの簡易書留。「ポストに直接投函されると、普通郵便扱いとなり、万一紛失の際の後追いができませんので、郵便局の窓口を通してお送りください」という注意書きを添えて。各社万全を期しまくり。
そんな中、ちょい心配なのが、実はこのサイゾーなんである。82円切手貼っただけの白封筒に、宛先も「サイゾー御中」。係すらなし。投函したものが紛失したら? 社内でどんな管理がされてるの? うーむ。ただただ不安である。苫米地センセー、これで大丈夫なんですかぁー。
……この原稿が掲載されることを祈って。

今井舞(いまい・まい)
週刊誌などを中心に活躍するライター。皮肉たっぷりの芸能人・テレビ批評が人気を集めている。著書に『女性タレント・ミシュラン』(情報センター出版局)、近著に『気になる「あそこ」見聞録』(新潮社)がある。
領土問題と慰安婦問題を強引に一体化!? どさくさに紛れて「竹島少女像」計画が始動!
2018年に開催される平昌冬季五輪の公式ホームページ上で竹島が「独島」と表記されて話題となる中、韓国では竹島に慰安婦像(少女像)を設置しようという動きが本格化している。 “竹島少女像”に関連して韓国政府は1月19日、「独島問題は領土権問題、慰安婦問題は人権問題が本質で、連携させてはならない」と事実上、反対の立場を表明。しかし、竹島少女像の設置を主動する民間団体「独島サラン(=愛)・国土サラン会」は翌日、「日本との間違った慰安婦合意をした植物状態の政府の立場と判断する」と一蹴し、計画を推し進めていく意向を示した。 同会は16日より、京畿道道議会のロビーに募金箱を設置して7,000万ウォン(約700万円)を目標に募金活動を始めている。彼らは、2月から駐韓日本大使館前で抗議活動を展開し、慰安婦・独島セミナー(4月)、独島文化祝祭(7月)、「独島の日」イベント(10月25日)などを経て、ソウルの少女像が設置された日と同じ12月14日に、竹島少女像を設置する計画だ。 日韓関係において、長きにわたって“障壁”となっている竹島問題と慰安婦問題をセットにしてしまおうという無茶苦茶な話だが、韓国ネット民の反応を見ると「あの政府が反対しているということは、“やって正解”ということ」「韓国は現在、無政府状態です」「東京都庁の前にも少女像を立てよう」「この際、対馬も取り戻そう」などと乗り気な意見が多い。中には、これを機に「日本とは断交してしまえ!!」と過激な書き込みをする者もいた。 周知の通り、慰安婦問題は2015年末の日韓慰安婦合意で、すでに解決したはずだった。日本は履行事項である10億円をすでに捻出。生存する元慰安婦46人のうち、すでに31人がお金を受け取っている(1月18日時点)。しかし、韓国側は駐韓日本大使館前の少女像を撤去しないばかりか、釜山にも少女像を設置。さらに今回、竹島に設置しようというのだから話にならない。 竹島問題も一向に前進していない。韓国の政治家が次々と同島へ上陸し、「検討本」として公開された新しい歴史教科書にも、竹島が韓国領であることの理屈を、こう解説している。 「日本を占領統治した連合国最高司令官は1946年1月覚書(SCAPIN)第677号を交わし、日本に対して敗戦直前まで支配した国外のすべての地域の政治、行政上の権力行使を停止させ、鬱陵島と独島、済州島が韓国の領土であることを確認した」 個別の解決さえ難しい問題をミックスさせて、さらなる混乱を巻き起こしている韓国。かの国には、問題を解決する気はまったくなさそうだ。韓国の日本大使館前に設置されている慰安婦像
妄想・幻覚もひとつの「現実」である・統合失調症患者の「現実」とゆらぎ――卯月妙子『人間仮免中』『人間仮免中つづき』
初めて自殺未遂をしたのは中学3年生。20歳で結婚し出産するも、ほどなく夫の会社が倒産。借金返済のためにホステス、ストリップ嬢、そしてAV女優として働き、スカトロ系などの過激なAVなどに出演したことでカルト的人気を獲得。代表作は、排泄物や吐瀉物やミミズを食べる『ウンゲロミミズ』。しかしその後、夫が投身自殺し、幼少期から悩まされてきた統合失調症が悪化。自傷に他傷、・殺人欲求などの症状により精神病院に入退院を繰り返し、新宿のストリップ劇場では、舞台の上で喉を掻っ切り公開自殺未遂――壮絶な経歴を持つ漫画家・卯月妙子によるコミックエッセイが2012年刊行の『人間仮免中』(イースト・プレス)とその続編で昨年12月に刊行された『人間仮免中つづき』(小学館)です。
『人間仮免中』は、「統合失調症」を患う作者と、内縁の夫・ボビーとの生活をユーモラスに描いた漫画ですが、その内容は、統合失調症の陽性症状である幻覚や妄想に、躁状態での歩道橋からの飛び降りによる顔面崩壊……と波乱万丈。しかしこの漫画は、いわゆる「闘病記」や「統合失調症の体験記」といったものではありません。読み手の側からどんなに異様に見えたとしても、これは「卯月妙子の生活」そのものを描いた作品なのです。
作者は生活のなかで、さまざまな幻覚・妄想を体験します。電車に乗れば、車内の中吊り広告に刷られた「卯月妙子死刑確定」「卯月妙子転落の人生を暴く!!」などという週刊誌の見出しが目に飛び込んできますし、突如として「自分にはカリスマ占い師の素質がある。だからなんでも分かるのだ」という妄想に取り憑かれたりもします。そして投身自殺をはかったあと、入院先で彼女が突入していく妄想の世界も壮絶です。作者を殺す場面をネット配信しようとたくらむ終花看護師(おそらく作者の妄想上の人物)と病院の職員たちの「ボビーとのエッチな合成写真を作って、実名と一緒に公開しよう」「エキサイトに献花台の無料レンタルサイトがあるから(ありません)、卯月妙子のサイトも作ってやろう」という会話。病院内でいきなり卯月妙子のAV上映会が始まったり、同意書を書かされたボビーも病院で一緒に殺されることになったり、謎の占い師が卯月妙子の死ぬまでの運勢を生中継で占いにきたり……とにかく因果関係のめちゃくちゃな、狂った世界が彼女を取り巻いているのです。そんななかで彼女は殺されることになっているわけですから、当然ものすごく恐ろしい。読んでいると、無性に不安な気持ちを掻き立てられます。しかし同時に、どこか吉田戦車の不条理ギャグ漫画のような滑稽さもあって、読者は混乱の渦に巻き込まれたまま、ページをめくることになるのです。
作者の見ている世界は、いわゆる「正常な」人びとが日常的に見ているものとは大きく異なっています。常識にのっとって考えれば、彼女の見ている世界は「妄想」や「幻覚」――つまり「誤った考え」や「誤った知覚」であると言えるでしょう。しかし彼女にとって、それらはひとつの「現実」なのです。他人と、それも大多数の人間とは別の「現実」を生きること。そして自分にとっての「現実」が、ともに生きる他人には受け入れられないのだとしたら、それはとても苦しいことのように思われます。
「正しい現実」と「誤った妄想」?
しかし、作者を介護する母親や恋人のボビーは、彼女の見ている世界を否定しません。すずなり荘という物件に住む母親を、隣人の漆原容疑者なる人物が殺そうとしているという妄想に襲われた作者が「すずなり荘にはもう行かないで! 隣に住んでるのは漆原容疑者だよ!!」と支離滅裂な内容の手紙を渡しても、「そんなバカなことがあるわけがない」などとは決して言わないのです。「すずなり荘はとっくに解約して、今はウィークリーマンションに泊まってるから大丈夫だよ!」と、母親を心配する作者の気持ちを汲んだ受け答えをしています。
また、病室で寝ている状態にも関わらず、劇場の楽屋にいるという認識をしている作者が「お母ちゃん今朝は楽屋に来てくれたのにごめんね。私はSMの仕事で何度も鼓膜をやぶいていて、お母ちゃんがつけたテレビの音がどうしても耐えられないの」という手紙を書いたときにも、そこに書かれていることが正しいか/誤っているかを問題にするのではなく、彼女にとっての「現実」を自分たちの「現実」と並び立つものとして尊重し、彼女が今どのように感じているのか、何を望んでいるのかを汲み取ろうとしています。
恋人のボビーも、彼女が見たり聞いたりしているものが幻覚であることを指摘しつつも、それが彼女にとっての「現実」なのだということを認めています。『人間仮免中つづき』において、作者はしばしば幽霊の姿を見ていますが、ボビーは「霊っていうのは(統合失調症の)陽性症状だよ。あなたが自己保存のために作り出した世界だ」と言いながらも、恋人が彼らのためにお経をあげることを止めさせたりはしません。彼女にとっての「現実」と、自分にとっての「現実」との間にはズレがあるけれども、それを当然のこととして受け入れているのです。
私たちを取り巻く「現実」は、刻一刻と変化していくものです。しかし同時に、「現実」の中心にいると思われている自分自身もまた、つねに変動し続けている存在なのだということは、しばしば忘れられがちです。いつでも自分を確かな存在として信用していて、移り変わるのは周りだけだと思っているし、意味や価値のない、無方向な変化を認めたがらない。だから人は齧ったリンゴが酸っぱいときには「このリンゴは外れだ」と考えてしまうのですし、自分の味覚が変動していることなど思いもよらないのです。人の言うことを聞き間違えて、相手の意図とはまったく違う話を頭の中に作り上げてしまうことだってありますし、カーテンをお化けだと見間違えて恐怖を感じることだってあるでしょう。そのとき私たちの「現実」は、私たち自身の変動――それも成長や経験、自分の意思による変化だけではない、「ズレ」や「ゆらぎ」という不安定で一見役に立たないものによって、たやすく揺れ動いてしまうのです。「何かがおかしい」と感じたときには、周囲ではなく自分が変動しているのかもしれない。でも、周囲が変化している場合もある。そう考えると、自分が感じている「現実」が、そしてなにより自分自身が、とても頼りないものに感じられるのではないでしょうか。自分とは違う「現実」の捉え方をしている人のことを、「異常だ」「間違っている」などとは、とても言えなくなってしまいます。
すごいのは「メンヘラの人生」というコンテンツではない
作者のように何らかの精神疾患を抱えた人びとは、その人生が強烈であればあるほど、いわゆる「メンヘラ」という用語で表されるようなコンテンツとして消費されがちです。現に、『人間仮免中』を評価するレビューの多くは、作者自身の「壮絶な人生」に焦点をあてたものでした。しかし、『人間仮免中』がすぐれて力強い作品であるのは、作者・卯月妙子の人生が壮絶なものであったから――という単純な理由ではないように思われます。
一度でも読んだことがある人ならば身に覚えがあると思うのですが、この漫画は、読み手の精神を非常に疲れさせるものです。ひとたび本を開けば、ジェットコースターに乗せられたかのような猛烈な勢いに取り憑かれて読んでしまうのに、ページをめくってみると驚くほど進んでいない。読んでいるうちに不安定な気持ちになって、乗り物酔いのようなめまいすら感じてしまう。このような奇妙な現象が起こる理由として、作者の描く世界が、私たちが日常用いている「現実」を読み解くためのコードにのっとっていないから、ということが挙げられます。それはたとえば常識や規範と呼ばれるものであり、こうしたコードがあるからこそ、私たちはある出来事についていちいち深く考えなくとも、ほとんど自動的にそれを解釈し、物事をパターン化・あるいはカテゴライズして捉えることができるようになっているのです。
ところが『人間仮免中』において描かれる世界では、そのような便利なコードはほとんど通用しません。 常識のコードをひとつひとつ外しながらでないと読み進めることができないのです。今まで自分たちが信じて頼ってきたものを手放すわけですから、どんどん「現実」が、自分が分からなくなる。これは間接的に作者の統合失調症の症状を体験しているのだと言えます。この漫画がいわゆる「闘病記」や「体験記」という体裁を取っていないことも大きいでしょう。『人間仮免中』は、読者に分かりやすく統合失調症の症状を説明し、理解を求めるという類のものではありません。「健常な」人びとに理解を求める「体験記」は、完全に「健常な」言語で書かれるものですが、この漫画の作者は、むしろ「患者の」言語と「健常な」言語のバイリンガルとして「統合失調症」を伝えています。だからこそ、私たちはこの作品を読んでこんなにも心が、感覚が揺さぶられる。つまり、『人間仮免中』という作品の最も優れた、特有な点は、卯月妙子という女性の「壮絶な人生」ではなく、読者の「現実」をゆらがせる、彼女の「筆力」なのです。
また、常識や規範のコードが通用しないというのは、作者を取り巻く人びとのありようにも言えることでしょう。「1に、この世にあること! 2に、快くこの世にあること! 生き様なんて5番目だ!!」というボビーの台詞にもあるように、ボビーや母親をはじめとする周囲の人びとはみな、「正しく生きる」ことよりも、卯月妙子という個人が「快く生きられる」ことを大切にしており、一見はちゃめちゃで、とても常識的とは言えないものの、温かく愛に満ちた関係を作者と築いていることが彼女の漫画からは伝わってきます。
彼女を取り巻く人々が、漫画の中で温かく描かれていること。これもまた、「彼女の周囲の人びとが彼女を愛している」という事実だけに回収されるものではありません。娘のためにダメな医師を怒鳴りつけ、退院早々彼女が吸いたがっていた煙草を「退院したばかりなんだから」とも言わずに差し出してくれた母親。こうした思いやりも、作者がなんとも思わなければ、作中であのように描かれることはなかったはずです。そして、癇癪持ちで型破りで、でも照れ屋で情に厚くて涙もろくて、卯月さんが大好きなボビー。作中で描かれる彼の姿は、とてもかわいい。ボビーという人間を、漫画の登場人物としてしか知らない読者にも、涙が出るほど愛おしいと思わせてしまう。これもまた、卯月妙子の「筆力」によるものでしょう。
この本を読んだ人は一様に、「これは、愛の物語だ」と口にしてしまいます。ですが、やはりこれも、卯月妙子という人の人生を指す言葉ではないように思います。愛しい出来事・愛しい人びとを、作品の中に愛おしく描くこと――彼女はそれに間違いなく成功しています。それこそが漫画家・卯月妙子の何よりの愛の証であり、『人間仮免中』という作品を、「愛の物語」たらしめているものなのです。
(文・餅井アンナ)
香取慎吾が司会を務める『全日本仮装大賞』放送! 1月21日(土)ジャニーズアイドル出演情報
――翌日にジャニーズアイドルが出演予定の番組情報をお届けします。見逃さないように、録画予約をお忘れなく!
※一部を除き、首都圏の放送情報を元に構成しています。
※番組編成、及び放送日時は変更になることがあります。最新情報は番組公式サイト等をご確認ください。
●TOKIO
6:00~ 8:00 『週刊ニュースリーダー』(テレビ朝日ほか) 城島茂
●V6
21:00~21:54 『出没!アド街ック天国』(テレビ東京系) 井ノ原快彦


