
パッケージからしてツッコミどころ満載だが、注目すべきは協賛・協力企業の多さ!
■坂上忍の代表作ってなんだよ!?
フジテレビお昼のバラエティ番組『バイキング』の司会を務めるなど、テレビで見ない日はない状態となっている坂上忍。
毒舌・潔癖キャラでブレークして以降、バラエティ番組への出演が増え、すっかり司会者、コメンテーターという役回りが定着した坂上だが、本業は一応役者さんだ。……でも、役者としての代表作って何?
「天才子役」ということで子ども時代にはメチャクチャ活躍していたらしいけど、大人になってからは……ドラマ『地獄先生ぬ~べ~』(日本テレビ系)で変な鬼の役をやっていたのくらいしか記憶にないよ!?
妙に大物俳優感を出しているけど、実体がよくわからない坂上。そんな彼のザ・黒歴史的な主演作を発見したので紹介しよう。
それが、オリジナルビデオ作品『天界戦士ファンタジー伝説<レムリアの陰謀>』!
有名俳優がくすぶっている時期にB級映画やVシネマで変な役をやっていたなんて話はよくあるけど、このビデオはVシネですらない。……というか、おそらく流通にすら乗っていないシロモノだ。だって、バーコードがついてないんだもん。
じゃ、コレはなんなのかというと、愛知県蒲郡市で変なテーマパークやお土産屋、レストランを運営していた「(株)蒲郡フラワーパーク」(倒産)という会社が企画し、地元企業やホテル、観光協会などが協賛して作られたオリジナルドラマ+観光地紹介といった感じの謎ビデオなのだ。おそらく、制作に関わったお店や観光協会のみで売られていたのだろう。
パッケージにもエンドロールにも制作年度が書かれていないが、消費税がまだ3%であること、出演者の活動期間、ビデオの終わりに収録されているCMに森高千里の「気分爽快」が使われていることなどから推測するに、1994年頃に作られたビデオだと思われる。
坂上が天才子役と呼ばれていた時期はとっくに過ぎ去って、中途半端に大人になってしまい、迷走していた時期だ。
■メチャクチャなストーリーとステマで理解不可能!
坂上のキャリア以上に、ビデオの内容も迷走しまくっている。
周りの友達にいじめられている車椅子の少女・雪(そそぐ)からのヘルプミー電波を受信した天界に住む暴れん坊・タケル(坂上)が、人間界にやってきて雪を救うというストーリーなのだが、まず根本的な問題として、主演であるはずの坂上が途中で出てこなくなっちゃうのだ。
ギャラの折り合いがつかなかったのか、スケジュールが押さえられなかったのか……。
雪を助けにきたはずのタケルが、開始15分くらいでキチガイおじさん風の敵キャラ・魔神土蜘蛛の攻撃を受けて寝込んでしまう。しかも、呪いを解かないと、あと7日で死んじゃうという状態に!
その後は、助けられるはずの車椅子女子・雪が、兄&その彼女と一緒にタケルを助けるという話にすり替わっていく。

坂上が、このメガネっ娘を助けにきたはずが……
車椅子生活をしていた少女が、なんの前触れもなくいきなり立ち上がっちゃうわ、敵と激しいバトルアクションを繰り広げるわ……「クララが立った!」の10倍は衝撃的な展開だ。そもそも、タケルが来る必要なかったんじゃないの?
タケルの呪いを解くため、なんだかんだで魔神土蜘蛛の居場所を突き止めた雪たちだったが、兄の彼女は土蜘蛛に腹を食い破られちゃって、それを見ていた兄は失神。そして雪も、せっかく立てるようになった足を食われちゃうという……エグすぎるクライマックス!
しかし、ラスト3分で唐突にタケルが復活、敵を倒してめでたしめでたし。……とまあ、こんなストーリーなのだ。

兄は失神、その彼女は腹を食いい破られ、雪は足を食われ……という阿鼻叫喚のクライマックスをパッケージに載せちゃってるのもスゴイ

ご丁寧に「クライマックス」と書かれているのもさることながら、このスチル写真、日付入っちゃってない?
こう書いちゃうと(メチャクチャだけど)単純な話っぽいのだが、実際にビデオを見ていると全然ストーリーが理解できないのもまたスゴイ。
……というのも、このビデオはただのオリジナルドラマではなく、いろんなスポンサー企業の思惑が渦巻くプロモーションビデオでもあるからだ。
たとえば、天界から人間界に降りてきたタケルが、まず向かうのが、なぜか「ウォッチマン」(当時、愛知県を中心にチェーン展開していた時計屋)。
もちろん、こんなのストーリー的にはまったく必要のないシーンなので、店内をひととおり見回して「人間界にも面白いところがあるじゃないか……」と言うだけ。
そんな感じの、今でいうステマ的なシーンがやたらと多い。
企画をした「(株)蒲郡フラワーパーク」が運営しているテーマパークやお土産屋、レストランにも当然意味なく訪れるし、観光協会が推してきたと思われるホテルや観光地もキッチリ訪問&紹介。
さらに、各スポットで、そこの社長さんや社員さんがチョイ役で登場するという(スポンサーへの)サービスっぷり。
そのたびに本筋のストーリーが中断されてしまうため、話の展開を覚えていられないのだ。
■社長の愛人を出演させてないか?
プロットだけ見れば単純なはずの本筋に、余計な要素をガンガン詰め込んでしまっているのも、話が理解できない要因のひとつ。
坂上演じる主人公がタケルで、アマテラスやスサノオも出てくるということで、『日本書紀』をモチーフにしているのかなと思いきや、敵たちが住んでいるのはレムリア(海に沈んだとされる伝説上の大陸)だし、そいつらが狙っているのはラ・ムー(ムー大陸)。さらに、古代シュメール文明のペトログリフの謎うんぬんまで絡んできて……。
いろんな神話が出てくるくせに、そのほとんどがストーリー上なくてもいい要素。ただ単に「レムリア」とか「ラ・ムー」とか言いたかっただけでしょ!?
明らかに必要ないのに、やたらと登場人物が多いのもややこしい。
主演の坂上とその付き人である武井情(武井壮の兄)、あと何人か以外は、おそらく完全な素人! 高校演劇部でも、もうちょっと演技できるだろうという、信じられないような大根役者が次々と登場するのだ。

この青い人が武井情っぽいけど、確証持てず
各スポンサー企業の社長あたりが「飲み屋のねーちゃんに『ドラマ出してやる』って言っちゃったから、役を作ってやってくれよ~」みたいな感じでムリヤリねじ込んできたんじゃ……と勘ぐりたくなるレベル!
そんな素人役者の滑舌が悪すぎて、ますます話が見えなくなってくるのだ。
ボクもストーリーを理解するまでに3回も見直したもん。メチャクチャ苦痛だった……!
このほかにも、剣でバトルしているはずなのに、コツンコツンと木がぶつかり合う音がバッチリ入っていたり、90年代の洋楽PVかと思うような変すぎるCGが多用されていたり、伝説の魔除けの呪符に書かれている文字がヘタすぎたりと、90分間ツッコミどころが満載で頭がクラクラしてくる。
Amazonでもヤフオクでも売られていないけど、倒産した「(株)蒲郡フラワーパーク」から引き継いで運営されている「竹島ファンタジー館」というところで投げ売りされているので、ぜひそこまで行って購入&見てもらいたいビデオだ。
■監督は詐欺師でした
最近、ネットでは「ネイティブアド」とかいって「広告なのにこんな変なことやっちゃいました~」的な記事や動画がはやっているようだけど、そんなもん、この『天界戦士ファンタジー伝説』の足下にも及ばないよ!
観光協会や地元企業など、地域を挙げての広告ビデオなのに、ここまでクレイジーなものを作っちゃってるんだもん。しかも90分も。
異常な映像とはいえ、なんだかんだでCGやセット、衣装など、かなりの費用がかかっていると思われ、バブルの残り香を感じさせてくれる。
ちなみに、こんなモンを作ったスタッフはどんな人なのかと、エンドロールで流れてくる人名をひとりひとりググッてみたところ、ほとんどのスタッフは消息不明だったものの、唯一、監督の小佐内直哉さんだけ情報を発見できた。
……なんと、2003年に起こしたWeb技術関連の特許詐欺で、一部Web界隈で有名な人らしいよ(「NAOシフト詐欺」でググろう!)。
坂上忍にとってホントに忘れたい……もしかしたらリアルに忘れちゃってるかもしれない黒歴史でした。
(文=北村ヂン)