
死んだ彼女の骨壷を持って冥婚式に臨む男性
「冥婚」という言葉をご存じだろうか? 未婚のまま若くして亡くなった子どもに対して、その親族などがあの世では結婚して幸せになってほしいとの思いを込めて行う結婚式のことで、中華圏や朝鮮半島の一部にいまだ存在する伝統文化だ。起源は、紀元前の漢王朝時代にまでさかのぼるといわれている。
「新浪新聞」(11月15日付)では、台湾・台中市で、亡くなった彼女のために冥婚を行った男性の様子が報じられた。男性は彼女の骨壺に白い花嫁ドレスを掛けて、あの世にいる彼女と結婚したことを報告した。

生前の2人の様子。どこにでもいる、仲の良さそうカップルだ
2人を知る関係者によると、彼女は男性の態度が最近、急に冷たくなったことに不安を覚え、そのまま自殺してしまったという。亡くなった彼女のFacebookには、今も友人たちから冥福を祈るコメントが寄せられている。
女性の恋人だった男性は白いスーツを着用し、必死に笑顔を作って彼女との冥婚式に臨んだ。式の途中、結婚証明書にサインをする場面では、彼女の親族の前で「彼女を一生、大切にします」と宣言したり、彼女の両親にひざまずいて感謝の言葉を述べた。亡くなった娘が、あの世で幸せな結婚生活を送れるということで、両親は悲しみの中で喜びも感じている様子で、号泣していたそうだ。
今回の冥婚に関して中国版Twitter「微博」では、多くのコメントが寄せられている。
「ネットのウワサでは、自殺した女性は妊娠していたらしいぞ。それで彼氏の浮気にショックを受けて、自殺したんだ。決して美談ではない」
「冥婚した場合、この男は一生独身でいなきゃいけないのか? ほかの女と結婚したら、重婚になるの?」
「もしこの男が違う女と結婚することになったとしたら、なんだか怨念で呪われそうだな」

中国の田舎で行われている冥婚。男女そろって埋葬されようとしている
中華圏における冥婚という風習について、北京市在住の日本人大学講師はこう話す。
「今回の一件は、片方が生きているパターンですが、死んだ若い男性と、同じく死んだ女性を結婚させ、一緒に埋葬するパターンは、今でも田舎へ行けばよくあります。死んだ女性の親も、冥婚を歓迎する風潮がある。田舎の保守的な家庭では、女性は嫁ぎ先で供養されるもので、実家では成仏できないと考えられており、冥婚をした上で“里帰り”という形式を取らないと実家に霊が帰れない、という考えが残っているからです」
冥婚をめぐっては、2013年、冥婚用に遺体を販売するため、墓を掘り起こして女性の遺体を盗んでいた集団が逮捕されたこともあった。21世紀になった今でも、中華圏に残るこの不思議な風習は廃れる気配がないようだ。
(取材・文=青山大樹)