
早くもすっかり夏日和となった中国東部沿岸の都市・青島(チンタオ)のビーチに、今年も異様なフェイスマスクをかぶった水着姿のおばちゃんたちが現れた。マスクで顔が隠れているのにどうしておばちゃんとわかるかというと、それは体形。その肉付きは、もはや年齢を隠しようがないほどに“熟成”している。
さてこのフェイスマスク、今ではすっかり青島の“夏の風物詩”となった感があるが、おばちゃんたちが世界を驚愕させたのは、米「ニューヨーク・タイムズ」紙が写真とともに紹介した2012年夏のこと。フェイスとビキニにひっかけて「フェイスキニ」と命名され、その年の米「タイム」誌では「2012年驚きの写真」の1枚にも選ばれている。

映画『犬神家の一族』の佐清(すけきよ)を彷彿とさせる姿(といっても、若い読者の方々には意味不明かも)
しかし実際には、05年ごろにはすでに青島のビーチに出現していたらしい。中国では日焼けした顔の女性は“外で働く貧しい女性”というイメージがあり、日焼け防止のためにこのマスクが発明されたのだという。
ところで、いったい誰が最初にこのフェイスキニを作ったのかについては2つの説がある。1つは、水泳を趣味にしていた袁学英という女性が2004年に工場の制服の切れ端で作ったものが最初で、それが周囲の水泳愛好家たちに広まり、それを見た水泳用具店の張式範という女性が真似て作ったものを売り出した――というもの。しかし、当の張さんのほうは「誰がなんと言おうと、私が最初に作ったのよ」と言い張っているのだという。袁さんのほうはすでに亡くなっており、今となっては真偽のほどは確かめようがないのだが、現在では張さんが“公認の発明者”ということになっているようだ。
その張さん、今年の夏に向けてフェイスキニの新作を発表した。これまでは色とりどりだが無地のものしかなかったが、そこにデザインを加えたのだ。

中高年にウケるようにと、京劇風のデザインを施したフェイスキニを発表した張式範さん
今は試作品の段階だが7月ごろには発売されるそうで、京劇マスクをかぶったおばちゃんたちの姿がビーチに登場するのも間もなくのようだ。とはいっても、特に見たくもないのだが……。
(文=佐久間賢三)