
勝俣州和プロフィール-ARTIST- YOUGO OFFICE
勝俣州和。1965年3月12日生まれ。劇男一世風靡(一世風靡セピアの母体)を経て、欽ちゃんファミリーの一員として活動。アイドルグループ「CHA-CHA」、お笑いユニット「K2」を結成し、その後はバラエティ番組を中心に活躍している。職業は、タレント。トークバラエティ全盛期の今、共演者を選ばない名バイプレイヤーとして欠かすことができない存在である。
TBS『水曜日のダウンタウン』では、早くからこの勝俣州和のあり方に注目している。「勝俣州和のファン0人説」を提唱し、ファンが一人もいないにもかかわらず、これほどまでにテレビから必要とされるのはなぜか? あるいは「タレント」とは根本的にどのような存在なのか? という哲学的な問いまで、そこには見え隠れする。10月29日に放送された番組では、かなりの長尺とロケ時間を使って「勝俣州和の自伝が電車の網棚に置かれていても持って帰る人0人説」を検証。実際に勝俣州和の自伝は、電車の網棚に置かれたまま、鹿児島から長い旅路を経て、北海道までたどり着いてしまった。
だがこれは決して、勝俣州和の不人気や実力不足を示しているわけではない。同番組ではバラエティ制作者100人からアンケートを取り、「勝俣州和のココがすごい!」というランキングを発表した。結果は以下の通りである。
第5位:見た目が若い
第4位:清潔感がある
第3位:手を抜かない
第2位:リアクションがデカイ
第1位:なんとかしてくれる
そう、勝俣州和は、なんとかしてくれるのだ。どんな番組においても、どんな企画でも、どんな共演者が相手でも、最終的にはなんとかしてくれる。いわゆる「企画成立屋」としてのスキルが尋常ではない。では一体なぜ、勝俣州和だけがそれをできるのか? ここでは彼の持つ、3つの武器について語ってみたい。すなわち、<持ち上げ><キラーパス><オウム返し>の3つである。
<持ち上げ>
勝俣州和は基本的な主戦場がトークバラエティとなるため、大御所との共演の機会も多い。特定の派閥に属することなく、ダウンタウンやとんねるず、ウッチャンナンチャンなど第一線のお笑いコンビとフラットに共演を果たせるのも大きな魅力だが、TBS『アッコにおまかせ!』では和田アキ子と、朝日放送『朝だ!生です旅サラダ』では神田正輝と日々共演。この際の、大御所に対する<持ち上げ>の能力は抜群である。
特に『旅サラダ』での神田正輝への対応は見事だ。基本的にこの番組における神田正輝は、ところどころでしょうもないダジャレや親父ギャグを言うというキャラクターなのだが、ここで凡百のタレントであればいちいちツッコんだり、あるいはそこにかぶせてみたりと、進行の邪魔をしながらも自らの存在をアピールする。だが、勝俣州和はそうではない。神田正輝の口からダジャレが発せられたその瞬間、カラ笑いをするのだ。そこにはなんの感情もない。面白いから笑っているのではなく、神田正輝がダジャレを言ったから笑っている。
この、大御所に対する<持ち上げ>のセンスは半端ではない。テレビから勝俣州和のカラ笑いが聞こえたら、それは彼が今日もまた優秀な仕事をしている証明である。
<キラーパス>
勝俣州和は10月23日&10月30日に放送された『ダウンタウンDX』に、2週続けて出演している。これがすでに信頼されている証しなのだが、どちらの週でもしっかり結果を残している。というか、共演者に結果を残させている。これが彼の<キラーパス>という武器だ。
10月23日放送では、博多華丸・大吉と共演。勝俣州和はエピソードとして、以前雑誌の取材で鼎談した出来事を挙げる。「夏を乗り切る麺」という特集記事でトークは盛り上がったのだが、最後の最後で「好きな麺は?」と聞かれた大吉が「僕は年間通して食が細いので、わずかなそうめんがあればいいです」と答えたというエピソードを披露。また10月30日放送では、共演している和田アキ子の暴力的な悪行を暴露する。
ここで重要なのは、勝俣州和は自分が話すエピソードトークでシメない、という点だ。その場に共演者がいるということから、当然その共演者に話が振られる。自らがゴールを決めているのではなく、共演者のエピソードを語ることで<キラーパス>を送る。あとは共演者がゴールを決めるだけだ。日頃からさまざまな芸能人と交流を持っていて、その際に常に使えるネタを探している勝俣州和だからこそ、なせる業である。特にゲストが多数出演するトークバラエティではパスの応酬こそがすべてであり、勝俣州和が「なんとかしてくれる」と言われるゆえんはここにあるのだろう。
<オウム返し>
勝俣州和の武器で、最も威力を発揮するのが<オウム返し>である。10月23日の放送で、モーニング娘。'14のメンバーである鈴木香音が顔で果物のモノマネをしたときがまさに顕著だ。かわいい顔を思い切りひん曲げて、リンゴ、バナナ、ミカンの顔マネをする鈴木香音。普通のアイドルの変顔とはレベルが違うほどやり切るため、スタジオでは微妙な空気ながらも笑いは起こる。
アイドルが顔マネ、あるいはモノマネをする場合の定石としては、スカシもしくは強いツッコミにより、滑ったアイドルを誰かが救うというのがセオリーである。だが、スタジオは微妙に受けている。この場合の判断は難しい。どちらに転ぶのが正解なのかが分からないからだ。そこで浜田雅功はまず「ナイスファイツ!」と真顔で拍手をするのだが、ここで勝俣州和は「ナイスファイツ!」と、取りあえず浜田雅功のセリフを<オウム返し>する。つまりその後の判断を、MCに任せるのである。是非の評価は自分で下さず、その場のキープレイヤー、ここで言うと松本人志に委ねるのだ。
最終的に松本人志は笑いながら「そこまでできるとは思わなかったですよ」とコメントし、言わば「是」の評価を与える。その瞬間、勝俣州和は鈴木香音に対して「良かったね、褒められて」と言葉をかけ、「是」であることを視聴者に強調する。
勝俣州和の真骨頂は、ここにこそある。自らがしゃしゃり出ることなく、スタジオ全体の空気を読みながら、あるべき方向が見えたらそこで初めてオールを漕ぐ。トークバラエティという急流を、冷静に見つめて舵を切り、行くべきところで船を進める。勝俣州和は決して間違えない。だからこそ彼は、どんな場所でも、「なんとかしてくれる」のである。
【検証結果】
どんな番組においても、共演者を立てながら、確実に成立させる勝俣州和。その仕事のあり方は、まるで各球団を渡り歩く、フリーのバッティングピッチャーのようだ。バッターが望むボールを的確に投げるコントロール。球速を自在に操ることのできる地肩の強さ。そしてバッターとの間に築く信頼関係。彼は決して試合のマウンドに上がるエースではない。だが、優秀なバッティングピッチャーであるために、誰よりも多くブルペンで球を投げているのは、間違いなく勝俣州和その人だろう。
(文=相沢直)
●あいざわ・すなお
1980年生まれ。構成作家、ライター。活動歴は構成作家として『テレバイダー』(TOKYO MX)、『モンキーパーマ』(tvkほか)、「水道橋博士のメルマ旬報『みっつ数えろ』連載」など。プロデューサーとして『ホワイトボードTV』『バカリズム THE MOVIE』(TOKYO MX)など。
Twitterアカウントは @aizawaaa