【リアルサウンドより】
過去の記憶とその再生の狭間にたゆたう「音の壁」を音像化したような銀杏BOYZ9年ぶりの新作『光のなかに立っていてね』や、去年のプロデューサーオブザイヤーともいうべきファレル・ウィリアムスの8年ぶりのソロアルバム『GIRL』など、2014年に入って通常のポップミュージックのリリースタームを凌駕した大作・傑作の登場が目立っている。
アーティスト側に立てば、これらの年月は制作に打ち込んだ自らの存在証明であり、作品のテーマを研ぎ澄ましていくのに必要不可欠な時間といえるが、そうした作り手の事情と並んで、作品と作品におけるリリースタームの長期化は「Don't trust over 30.(30歳以上のやつの言うことなんか信じるな)」を標榜し、常に若者の音楽としてその「刹那」を主題化してきたロックミュージックが産業として、そして何よりも表現メディアとして、アーティスト自身の成長をも作品化できうる媒体へと成熟している証ともいえる。
今回は8年、9年といった年月がまだまだひよっこ(?)に思える、2014年「待たせすぎた」新作をリリースする洋楽アーティスト達をご紹介したい。
伝説の歌姫リンダ・パーハクス
44年ぶり奇跡の新作『The Soul of All Natural Things』
ダフトパンクをして「アシッドフォークミュージックにおける最高傑作」と言わしめ、彼等の映画『Electroma』にもフューチャーされた彼女の前作『Parallelograms』がリリースされたのは1970年。現在も当時も歯科衛生士(!)だった彼女が、趣味で録音していた驚くべき唄の数々に取り憑かれたのは、彼女の患者の一人で映画『エデンの東』『理由なき反抗』の主題歌を手掛けたレナード・ローゼンマンだった。
当時のヒッピーコミューンの在り様を幻想的に、そしてなによりも一聴したら忘れる事の出来ない歌声で描写したそのアルバムは、プロモーションされる事もなく忘れ去られていったが、2000年以降のアニマルコレクディブらによる「フリークフォーク」ムーブメントによって一躍再評価され、カルトアルバムとして神格化されていった。
そして今年スフィアン・スティーヴンスのレーベルより実に44年ぶりに発売された『The Soul of All Natural Things』は彼女の孫の世代といってもいいUSインディーのミュージシャン達による熱烈なラヴコールに応えて制作された一大傑作アルバム。人魚の歌声とよばれた彼女が紡ぐ、時代を超えた奇跡のメロディーに、魂を揺さぶられる作品だ。