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自身初の演劇『羊人間012』に挑む森本晃司氏。(撮影/後藤秀二)
『MEMORIES EPISODE1 -彼女の思い出-』や『アニマトリックス』、『Genius Party Beyond』といったアニメ作品をはじめ、KEN ISHIの『EXTRA』といったMV、今年はカンヌ映画祭でリリースされた『LEXUS SHORT FILM -A Better Tomorrow』のアニメーション・パート監督など、マルチに活躍するアニメーション作家・ビジュアルクリエイター森本晃司。その作品の中で、不思議な空間を創り続けてきた彼が新たに手がけるのは「演劇空間」だった!
森本氏の新作は、監督・演出から映像・イメージデザインまでを手がけた演劇『羊人間012』。森本氏率いるクリエイター集団「phyΦ」と気鋭の劇団「ムシラセ」のコラボレーションによって、来る12月7日から12月16日、新宿「サンモールスタジオ」にて公演予定だ。特に今回の『羊人間012』では、現在クラウドファンディングの『CAMPFIRE』を使い資金を集める
(参照)など、その新たな試みが注目を集めている。
そこで、「おたぽる」ではそんな森本晃司その人を直撃。話は『羊人間012』だけにとどまらず、現在の日本のアニメ業界が孕む問題まで、赤裸々に語ってもらった。
──大御所アニメ監督の森本さんが演劇をやると聞いてびっくりしました!
森本 もともと演劇には興味があって、昔で言うと劇作家の寺山修司とか安部公房が好きでしたね。(アニメと違って)演劇は、ナマモノでリアルタイムに変化していくから、そういうのも面白いな、と。アニメでも演劇でも、基本は(観客を)「驚かせたい」というのは同じです。劇場の席に座って、スクリーンを見て、一番最初のワンカット目に何を観せよう? とか、日常に戻った時に視る景色が変わっていてほしいな、というところは変わりませんから。
──確かに観終わった後、世界を見る目が変わる作品というのがありますね。
森本 そう、それが一番やりたいんだよね。「1+1がもしかしたら3かもしれないよ」っていうのを提示するのが自分の仕事だと思っていて、その時間の中ではその嘘に説得されて、それから出て行ってもらいたい。
さっきも言ったけど、私は寺山修司が好きで、彼はすごい発明家なんですね。観客が安全な場所から舞台を観るのが普通の演劇だけど、寺山さんの舞台は観客を巻き込んで、急に安全ではなくなってしまう。そんな寺山さんの舞台は本当に楽しそうだな、と思っていました。私自身がDJをやっているように、「人を巻き込む」というのがすごく好きなんです。演劇は観る側が受身なだけじゃつまらない。観客も一緒に参加して、みんなで盛り上げてほしい。この舞台も、ふらっとあるSFチックなバーに来て「今日はここでなにやるの?」「今日は演劇やるらしいよ」「じゃあちょっと見てから帰ろうか」みたいな気軽な気分で観てほしいんです。
──演劇であれば、観客を巻き込んだ作品が作れるということですね。
森本 今回やっているクラウドファンディングも同じ趣旨です。普通は公開まで作品の情報はあまり出てこないけど、それが面白くないなと思ってて。作っている途中の情報をある程度公開することで興味持つ人が出てきて、「お、面白くなりそうだから参加しよう」と思ってくれれば、でき上がったものを観るだけじゃなく、制作過程に参加して楽しんでもらうこともできますよね。そういう参加の形を作れるのがクラウドファンディングだと思って。
今回はUstreamでの配信も予定しているけど、ただ舞台の様子を流すだけじゃつまらないから、カメラを複数使ったり、舞台とはまた違う『羊人間012』を作りたい。それにもコストはかかるけど、「面白そう」「観たいな」と思ってくれる人がいれば、作るところから協力をしていただきたいです。
──どうしても、演劇にはちょっとハードルが高いなというところがありますけど、今回のクラウドファンディングでは500円の参加で、Ustream配信を観る権利をもらえますよね。それなら気軽に観れるし、それがきっかけとなって実際に舞台を観に行こうかと思うかもしれません。
森本 たしかに演劇にはハードルが高い部分があって、それは仕方ないかもしれない。でも、500円だけでもファンディングしてくれれば、Ustreamでリアルタイムに観られるし、もっと軽い気分で、この『羊人間012』の目撃者になってほしい。
■最初はSF版『東京物語』をやろうとしていた

(撮影/後藤秀二)
───今回の『羊人間012』は、元々どういうところから始まったんですか?
森本 友人を介して「劇団ムシラセ」の保坂萌さんと会ったんだけど、軽い気持ちで彼女が手がけた舞台『煉獄アリス』を見に行ったらすごく面白くてね。最初は「森本さん、舞台に興味あるんですか?」と言われていたのが、「12月に舞台をやりたいんで、一緒にできませんか?」ということになっていって……。
──それは、『羊人間012』をやりましょうという話だったんですか?
森本 最初は、アニメ監督の小林治くんと保坂さんと俺の3人で、新しい『東京物語』(小津安二郎監督, 1953年)をやろうとしたんです。ある家族のいろんな時代を切り取って、過去、現在、未来の三部作でやろうよ、と。俺は一番ラストの未来編で、もう廃墟になったとこに未来の調査員がやってきて、みたいなSFでね。でも、(小林)治くんが別の仕事で忙しくて、一緒にできなくなって。それで『東京物語』はやめて、寝かせていたストーリーを膨らませて、演劇にしたのが『羊人間012』です。
──『羊人間012』のタイトルや、ひとりの人間から生まれた11人の「分裂人間」たちをめぐる話だというあらすじを見て、フィリップ・K・ディックのSF小説『アンドロイドは電気羊の夢をみるか』のアンドロイドや、萩尾望都のマンガ『11人いる!』のことが頭に浮かんだのですが…
森本 それはまったくない。オリジナルから分裂するから、クローンといえばクローンだけどね(笑)。
──失礼しました(苦笑)。では、『羊人間012』の発想のきっかけはなんですか?
森本 『アニマトリックス』をやっていた頃に、過去の自分が今の自分を追い越す、みたいな話を考えたんです。『マトリックス』では、エージェントが人間を乗っ取って、乗り継いでいくじゃない。そういう感じで、過去の自分が今の自分を乗っ取ろうとして追いかけてきたら、それを振り切るにはどうすればいいんだろう? って話を考えた時、「あ、人間って分裂できないけど、分裂しているよね」と思って。
──??? その「分裂」というのはどういう意味なんでしょう?
森本 それは観てもらうしかない(笑)。でも、すこしだけ言うと、誰でも「もし自分がパイロットだったら」とか「陶芸家だったら」みたいな思いがあるでしょ。そういう「ありえた自分」のようなものを、物語の本筋である「進化」の上に乗せて検証したいな、っていう話です。
──「分裂」と「進化」?
森本 いや、進化とか分裂人間とか設定がぶっ飛んでいて「なんで分裂するの?」ってなると思うけど、そこじゃなくて。「へんてこな世界ですごく進化していると思ったけど、この人達まだそんなこと言ってるの?」っていう、変わらない「人間臭さ」を観てほしいんです。『羊人間012』は、基本的に1分ごとに笑わせたいっていう喜劇ですからね。
例えば、俺が好きな藤子不二雄さんは、「タケコプターで好きなところに飛んで行けて、そうしたら生活がこんな風になりますよ」っていう世界を『ドラえもん』で描いてますよね。タケコプターの技術的な理屈を描いてるわけじゃない。『羊人間012』も、同じなんです。
──なるほど!『ドラえもん』は“ひみつ道具”を介して、のび太の人間らしさなどを描いていますもんね。
森本 そうそう。『ドラえもん』も設定ぶっ飛んでるじゃない? でも、そこは誰も突っ込まないよね(笑)。
(構成/尾野スミ)
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森本晃司(もりもと・こうじ)
phy主宰。代表作に『アニマトリックス』『次元爆弾』など。2011年にフランスの広告「Attraction/魅力」でカンヌ・インターナショナル・クリエィティビィティ・フェスティバルにてサイバー部門銀賞を受賞。2013年にLEXUS社と「THE WEINSTEIN COMPNY」によって製作された「LEXUS SHORT FILMS」中の「A Better Tomorrow」アニメーション・パートを監督。この作品は2013年第66回カンヌ国際映画祭のワールドプレミアでリリースされた。同年7月、劇場作品『SHORT PEACE』のオープニングアニメーションを監督。
【公演情報】
『羊人間012』
アニメーション監督・森本晃司と劇団ムシラセ主宰の保坂萌が手がける新感覚演劇。
ひとりの人間から、あるとき分裂した11人の「分裂人間」たち。姿形も違えば、歩んできた人生もまるで違う。あるひとりの分裂人間が発した言葉が、彼らの世界を激変させる。「もし分裂した自分たちを一人に絞るなら、誰を残す?」――。
※ファンディングパートナー募集中!
http://camp-fire.jp/projects/view/794
■ 会場:新宿サンモールスタジオ
■ 日程:2013年12月7日(土)~12月16日(月) 全15ステージ
■ 公式URL:
http://sheep012.com
Facebook:
https://www.facebook.com/sheep012
Twitter:@sheep_012 (
https://twitter.com/sheep_012)
主催:羊人間012実行委員会
■ 協力:CAMPFIRE Linkalink サンカルパ ジーズデイズ
■ 企画制作:phy[Φ] ムシラセ
■ チケット料金:全席自由 5500円