
イシワタさんお気に入りのトタン建築の一つ。木の存在がいい味を醸し出している。
身の回りにいそうでいない、ちょっと変わったことをしている人や、面白そうな場所に、文筆家のやきそばかおるが直撃取材!
「トタニスト」……トタン建築の魅力にどっぷりとハマってしまって、出てこられない人物がいる。名前はイシワタフミアキさん。街を歩けば、気になるのはトタンのことばかり。撮影したトタン建築はすでに1000件以上!……というイシワタさんに、トタン建築の魅力を聞いてみた。
やきそば 「なぜトタン建築の写真を撮ろうと?」
イシワタさん 「今から6~7年前に、雜誌の仕事で、路地裏の飲食店を撮っている時に、知り合いのライターさんが『トタンっていいよね~』って言ってきたんです。最初は『トタンですか……』という感じでピンとこなかったんですけど」
やきそば 「確かに……」
イシワタさん 「そのライターさんが何度もそう言うんで、だんだんと意識するようになってきたんです。そのうち、街を歩いている時でもトタン建築が気になるようになってきて、気づいたらハマっていました」
やきそば 「ひょえ~~。イシワタさんにとって、トタン建築の魅力ってなんでしょう?」
イシワタさん 「たとえ腐食している場合でも、色使いや、色の組み合わせなど、現代アートっぽいところがいいですね。あとは、現代的な建物のすぐそばにトタン建築があることがあって、現代とトタンが一緒になっている風景も好きです。周りはすごいスピードで進んでいるけど、そこだけは時間が止まっている感じがするんです」

神保町にて。こちらもイシワタさんのお気に入りのトタン建築の一つ。
やきそば 「今でもトタン建築が見られるところって、どういうところですか?」
イシワタさん 「海沿い、川沿い、線路沿いです。海沿いや川沿いは潮風が強いため、トタンを住宅用に使った場合は傷みが激しくなります。後から作り直す時に、壊しやすく、値段が安いこともあって、今でもトタンを使っています。線路沿いにあるトタン建築は、闇市の名残ですね」
やきそば 「そういえば、意外な場所にもありますよね。東京スカイツリーに行った時に、ツリーの周辺にトタン建築があって、ツリーとトタン建築とのコントラストに、私も思わず瞳孔が開いちゃいました」
イシワタさん 「スカイツリーのある墨田区は、今でもトタン建築が多く残っています。事実、私のようなトタン建築ファンが写真を撮っている光景をよく見かけますよ」
やきそば 「ほかのトタン建築好きの方は、トタン建築のどんなところに注目しているんですか?」
イシワタさん 「いろんな好みはあると思いますが、私が思うに、サビ好きな人が多いですね(笑)」
やきそば 「あぁ、サビって人間の手ではコントロールができない分、サビによってできる模様も味があっていいですよね。墨田区以外で、トタン建築をよく見かける地域は?」
イシワタさん 「大田区、北区も多いし、世田谷区や新宿区、中央区に位置する築地の場外市場や銀座でも見かけます」
やきそば 「都心のど真ん中にもあるっていうことですね。あえてお聞きしますが、イシワタさんが街を歩いていて、『あ、この辺にトタン建築がありそうだな~』というカンのようなものが働くことはありますか?」
イシワタさん 「ありますね(笑)。なんとなく気配を感じて歩いてみると『あった』っていうことはあります。あとは、いつも歩いているような道でも、通りに面した建物が壊されると、突然その奥にトタン建築を発見することもあります。地層の中に埋もれている感じなので『発掘調査』って呼んでます(笑)」
イシワタさんは、仕事の移動中に素敵なトタン建築を見つけると、チェックして休日にあらためて見に行くほど、ハマっているという。
■トタン建築・ジャンル分け
ところで、イシワタさんは、トタン建築をジャンル分けされているとのことで4パターンを紹介してもらった。
【グライコ】

イシワタさん「トタンの凸凹に沿って、サビが棒グラフ化したものです」
やきそば 「昔、ラジカセにも付いてましたね。懐かしい」
【パッチワーク】

イシワタさん「トタンを継ぎはぎしている様式です」
やきそば 「継ぎはぎする人のセンスが出そうですね」
【バーコード】

イシワタさん「文字通り、見た目がバーコードっぽいものです」
やきそば「トタンの付け方からして、几帳面な性格っていう感じですね」
【怨念化】

イシワタさん 「サビや腐食が心霊写真のように見えるパターンです」
やきそば 「深夜に遭遇してしまったら、逃げ出したくなりますね」
中には、パッチワーク、怨念化、バーコードのすべての要素を兼ね備えたものもあるという。
■トタンと出産

奥様が出産する際に撮りに行ったトタン建築。
そんなイシワタさんは、トタンにのめり込みすぎて、奥様を怒らせたことがあるという。
イシワタさん 「妻が妊娠して、もう少しで生まれるかもしれないという時に、車で病院に運んでたんです。病院に向かう途中で、前から目をつけていたトタン建築と目が合った瞬間に『子どもが生まれたら、ニ度とこの道を通ることはないかもしれない。ということは、あのトタン建築も、すぐには撮りに来られないかもしれない……』と思うと、いてもたってもいられなくなって、最寄りのコンビニに車を止めて、写真を撮りに行ったんです」
やきそば 「奥様はそのままで!?」
イシワタさん 「そうです。トタン建築を撮影して車に戻ってきたら、妻がものすごくご機嫌ナナメで(泣)」
やきそば 「そりゃそうですねぇ……」
イシワタさん 「『私は大変な思いをしてて、赤ちゃんもどうなるか分からないのに、私を置いてトタンを撮りに行くって、どういうことなの!?』って」
やきそば 「まぁ、怒られても仕方ないような気が……」
イシワタさん 「相当、恨んでるのか、今でもたまに、そのことについて言及されます……(苦笑)」
そんなイシワタさん、なんと、初の個展を開催! お客さんがたくさん遊びに来て、奥様のご機嫌も直ってくれることを祈る!
●イシワタフミアキ 写真展「トタニズム」
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http://f-stop.blog.so-net.ne.jp/>
10月25日(金)~1月7日(木) ※日曜休館
会場:エプソンイメージングギャラリー エプサイト
(新宿区西新宿2-1-1 新宿三井ビル1階 ※JR・小田急・京王新宿駅・各西口徒歩8分)
※入館無料
※詳細はイシワタさんのブログにて。
※12月には洋泉社から写真集が発売される予定!
●やきそば・かおる
山口県出身、東京都在住。ライター、構成作家、写真家。趣味は、変わった人に会って、変わった話を聞くこと。「相づちだけはうまいと言われます」(本人談)
Twitter
@yakisoba_kaoru