
AKB48『恋するフォーチュンクッキーType B』(キングレコード)
【リアルサウンドより】
『山口百恵→AKB48 ア・イ・ド・ル論』(宝島社)を上梓したアイドルウォッチャー北川昌弘氏が、40年のアイドル史を振り返った上で、これからのアイドルの在り方を考察する集中連載第三回。
第二回「松田聖子、小泉今日子、中森明菜......80年代アイドルはなぜあれほど輝いたのか?」では、80年代~90年代初頭にかけて、アイドルの「黄金時代」から「冬の時代」へと転換していく過程を語ってもらった。
最終回となる今回は、
AKB48を始めとする現代のグループアイドルの特性と、ファン気質の変化を、メディア状況の変遷を踏まえて解説する。
第一回:
「AKB48は、もはやアイドルじゃない!」古き良き"歌謡曲アイドル"はこうして絶滅した
第二回:
松田聖子、小泉今日子、中森明菜...『あまちゃん』でも注目、80年代アイドルはなぜ輝いていた?
――北川さんは、音楽産業としてのアイドル歌謡曲は1988年には終わったとする一方、テレビの影響力は残ったと指摘されています。
北川昌弘(以下、北川):前回も少しお話しましたが、テレビの音楽も90年代に小室さんが出てきて持ち直すんですね。音楽を"聴かせる"のではなく"見せる"という手法で。その後、『ASAYAN』で
モーニング娘。がドキュメントバラエティの手法を採り入れ、「アイドルは売れない」と言われた時代に見事ブレイクします。メンバーの年齢層とキャラクターがうまくバラけていて識別しやすく、視聴者が親近感を抱くことができたのが成功の一因でしょう。ただ、モーニング娘。は、
後藤真希や、辻ちゃん加護ちゃんが加わるあたりまでは見事でしたが、途中からメンバーが増えすぎて一遍に覚えられなくなり、下降線をたどることになる。そしてモーニング娘。の絶頂期からAKB48の登場までの間、アイドル音楽界はまた少し沈静化します。恐らく、そこがメディアとアイドル界の質的変化期だったのではないでしょうか。
――デビュー時のAKB48にとって、テレビは一番の舞台ではありませんでした。
北川:テレビを活用したかつての歌謡アイドルとは、真っ向から違う手法でしたね。専用劇場という、小さなところからスタートしています。一方、ハロプロはAKB48登場の少し前あたりから、テレビ発信型からライブ重視型に転換しています。転換できたからこそ、今も継続できているのでしょう。僕はあまり現場に行かないのですが、ハロプロのコンサートは本当に楽しいと評判です。そしてハロプロは、一定のツアーやライブを継続できる収益構造を、すでに確立しているんですよね。ただ、やはりハロプロとAKB48では、ファンとの距離が全然違う。ハロプロは、生で観ていても客席からステージが遠い。それに比べて、AKB48は本当に目の前で観れてしまう。
――北川さんは著書の中で「今の若いアイドルファンは、アイドルに会いに行くために小洒落た恰好をしている。自分たちの時代とは違う」と指摘されていますね。
北川:好きなアイドルに会いに行くわけだから、自分を最大限に魅力的に見せる努力をするんですよね。でも、僕から言わせてもらえば、オタクって言うのは基本的に自分の身だしなみに気を使ってはいけない(笑)。なぜなら、無駄な努力をするくらいなら、違うところに情熱を注ぎたいから。僕はずっとそういう風に信じてきました。だけど、今みたいに直接アイドルに会いに行って、認知されるのが目的になると、だんだん話が違ってくる。アイドルに「あー、あの気持ち悪い人」って認知されるのを目指すというのも、変な話ですからね(笑)。でも、僕は小奇麗なアイドルファンは、断固として"オタク"とは認めません。でも、認知されるということは、無駄な努力と決めつけられませんからね。そこが昔とは明らかに違うのです。
――ファンと直接、コミュニケーションをとるようになったのはAKB48から?
北川:そういう流れは、実は90年代から"地下アイドル"にはあった。例えば、制服向上委員会なんかは昔からあった(92年結成)し、今も続いている。今年、再結成が話題となった東京パフォーマンスドール(90年結成)が先駆けでしょうか。当時からライブハウスでの活動に重きを置いて、ファンと密なコミュニケーションをとっていました。東京パフォーマンスドールだけは、かなりメジャー展開にも成功し、目的を果たして終了した感じですが、地下アイドルとAKB48には、決定的に違う点があります。制服向上委員会は一時期メディアの取材NGにするなどして我が道を行く感じでしたが、AKB48は最初からメジャーになることを恐れていないんです。それどころか、地下的なところからトップを目指していた。地下アイドルは一瞬、脚光を浴びることがあっても、それを継続していこうという発想はなかったのだと思います。メジャーになると普通、最初から付いていたファンは離れてしまいますからね。
――AKB48は、なぜ「会いに行ける」というコンセプトとメジャー化を両立できたのでしょう?
北川:インターネットやソーシャルメディアの普及が決定的だったのは間違いないでしょう。映画がテレビの登場でパワーダウンした時と同じで、それに代わるメディアが登場したからこそ、テレビはパワーダウンしたのだと思います。そして新しい主導権を握るメディアが登場すると、アイドルとファンの関係も変わります。AKB48はソーシャルメディアをうまく活用して、細かく情報を発信しつつ、ファンの意見を取り入れる姿勢を保てているからこそ、メジャーになってもファンと密な関係を築けている。テレビに出るときも、主要なメンバーだけが出るわけですから、グループには何人いてもいいわけです。
――最近は、アイドルといえばグループという印象があります。
北川:グループアイドルとは、ぶっちゃけて言えば、ある程度のレベルの人を集めて、その中で競争させることによって、最後に残った人でやっていこうという手法なんです。未熟なうちから人前で歌わせて、それをソーシャルメディアなどで拡散して、上手にアピールできると成功するという。その中でピンで活躍できる人も出てくるだろうし、そうじゃなければふるいにかけられる。街でスカウトして、テレビに売り込んでっていう従来のやり方よりも、ある意味では効率的ですし、成功確率も高い。だからこそ、今はみんなグループで始めるのが普通になっているのだと思います。
――今後はもう、単体のアイドルが天下を取ることは難しいのでしょうか。
北川:いや、テレビはまだまだ侮れない、と考えています。「あまちゃん」に象徴的ですが、あのドラマは今の状況を理解した上で、ソーシャルメディアやグループアイドルの手法をテレビの中に取り込むにはどうすればいいのかっていうのを、すごく真面目に考えている。テレビを使って、80年代からのアイドルの流れも入れ、地方アイドルの流れも入れ、さらに今の日本が抱える問題も取り込んでいます。「あまちゃん」の能年玲奈のように、テレビの中から単体のアイドルが成功する余地はあると思います。ソロでアイドル歌手的展開はかなり難しくなったと思いますが、それでも、
きゃりーぱみゅぱみゅとかが結果を出しています。広末涼子や深田恭子や上戸彩的なドラマやCMを中心に活躍するテレビの中のアイドルは、今後も生まれるでしょう。武井咲とか、
剛力彩芽とか。そして今は、能年玲奈に注目というわけですね。
――テレビはテレビで継続していくと。
北川:かつて、テレビが普及したあとも映画が残ったのと同じように、ネットの普及後もテレビは残るでしょう。別にテレビとSNSが真っ向から戦争する必要はまったくないので、どんどん融合して、両方使ってうまくやりましょうっていう流れになっていくと思う。気になるのは、レコード会社が今後どうするのかというところ。単にCDを売っていくだけの時代は終わってるでしょうから、そこは真剣に考えなきゃいけないところですよね。(了)
(取材・文=編集部)