
ファミコンが発売30周年を迎えたということで、にわかに盛り上がりをみせる2013年のレトロゲーム・シーン。その中心タイトルの一つが、日本のテレビゲーム黎明期を盛り上げたゲームメーカー・ジャレコが1985年に発売したファミコンゲーム『忍者じゃじゃ丸くん』である。
6月20日に、ニンテンドー3DS用ソフト『忍者じゃじゃ丸くん さくら姫と火竜のひみつ』(発売:ハムスター)を発売。さらに今後、実写映画化も企画されているという謎の大フィーバー中の『忍者じゃじゃ丸くん』だが、その映画版に先駆けて6月22日よりミュージカル『忍者じゃじゃ丸くん』の上演が東京・新宿シアターブラッツにてスタートした。
主人公・じゃじゃ丸くん役の服部翼をはじめ、汐崎アイル、寿里などテレビ番組『戦国鍋TV』やミュージカル『テニスの王子様』で活躍するイケメン俳優や、アイドルグループ・アイドルカレッジの重本未紗といったフレッシュな面々が舞台に登場するミュージカル『忍者じゃじゃ丸くん』は、公式発表以降レトロゲームファンの間で話題騒然。かつてゲームをプレーしたことのある人なら誰しも、「一体、あのゲームをどうミュージカルにするんだ?」と疑問に感じたことだろう。
そこで今回は、上演初日のステージに潜入。ミュージカル『忍者じゃじゃ丸くん』の全貌を、この目で確かめてきた!
まずは、ボスキャラ・なまず太夫の妻・なまず太夫太夫(山科香絵)がファミコン本体を持って登場。紫色の『忍者じゃじゃ丸くん』のカセットを胸元から取り出し、フッと息を吹きかけて本体にセット! いきなりの先制パンチに、会場は大盛り上がりだ。そしてスタートするのは、『忍者じゃじゃ丸くん』メインBGMをロック調にアレンジしたメインテーマ。全キャストによる、迫力のオープニングでミュージカルの幕は上がった。


物語のあらすじは以下の通り。
藤重政孝演じるなまず太夫(超シブい!)にさらわれたさくら姫を救うべく、じゃじゃ丸くんが旅に出る!
以上!
原作通りのシンプルなストーリーなのだが、ポイントはここに肉付けされるミュージカルならでは設定だ。例えば、本来ならじゃじゃ丸くんの兄・忍○くん(大人の都合で自主規制)が姫を救出に向かうべきなのだが、現在行方不明。そこで、ジャレコ流忍法の後継者となったじゃじゃ丸くんが、兄の代わりに旅立つことになる、という設定はゲーム開発の裏事情を知っているレトロゲームファンならニヤリとせざるを得ないだろう。また、ゲームに2プレイヤー用キャラとして登場する予定だったという没キャラ・かげ丸が、じゃじゃ丸のライバル的存在として登場するなど、とにかくネタがいちいち濃いのである。重箱の隅をつつくような表設定・裏設定を盛り込み、それをちゃんとエンタテインメント的にまとめあげていくシナリオには感心するばかりだ。
また、中盤に差し掛かるあたりで、毎回日替わりのゲストが登場。初日はミュージカル『テニスの王子様』に出演した河原田巧也が先輩忍者役として登場。ニンテンドー3DS用ソフト『忍者じゃじゃ丸くん さくら姫と火竜のひみつ』で、じゃじゃ丸くんたちとステージ上でゲーム勝負を披露してくれた。
このようにコミカルなノリで展開した前半だが、中盤を越えたあたりから物語は急にシリアスな色彩を帯び始める。序盤にちりばめられていた小ネタの数々を伏線として回収していく、後半の怒涛の展開は圧巻。さらに序盤やゲーム勝負で見せた人懐っこい笑顔が印象的な服部翼の眼光も俄然鋭さを増し、舞台狭しと繰り広げられる複雑な殺陣や、忍法ガマパックンのシーンで再現される圧倒的なカタストロフは必見である。そしてゲームシステムを逆手に取った反則技スレスレのオチには、スタンディングオベーションを送るしかない。
結論として、ミュージカル『忍者じゃじゃ丸くん』はレトロゲームへのリスペクトと、同時に原作を破壊することを恐れない勇気に満ちた、一流のエンタテインメント作品だったと言える。
上演終了後、観客に感想を聞いたところ、


「ゲームは知らなかったけど、普通に楽しかった! ファミコンをやってみたくなった」(20代・女性)
「ネタが細かくて、懐かしかった。お話もよくできていて、最後まで飽きることなく楽しむことができた」(40代・男性)
という答えが返ってきたことからも分かるように、ゲームを知らなくても熱いアクション伝奇ミュージカルとして楽しめるし、ゲームを知っていれば懐かしさと原作の世界観とのギャップを味わうことができて、より一層ディープにストーリーを楽しめるはずだ。このように、一つの作品でも異なる価値観を持つ者が見れば、全く異なる印象を与えるミュージカル『忍者じゃじゃ丸くん』は、実はかなり複雑な計算の上に成り立っているのかもしれない。
そういえば、渡部紘士演じるクロベエも劇中でそんなことを言っていたっけ。
「ともあれ“価値観”を揺さぶるミュージカル。それが『忍者じゃじゃ丸くん』なのだ」
なお、本作は6月30日まで東京・新宿シアターブラッツにて毎日上演される予定。まだ当日券も手に入るとのことなので、気になる人はぜひともその目でミュージカル『忍者じゃじゃ丸くん』のすべてを確かめてみてはいかがだろうか。
(取材・文=有田シュン)
●ミュージカル『忍者じゃじゃ丸くん』
6月22~30日まで、東京・新宿シアターブラッツにて上演中。
・企画:三澤友貴
・演出/脚本:吉谷光太郎
・主催:レトロゲームシアター <
http://retrogame-theater.com/>