
「日本ゲーム産業に今、必要なコト ~ゲームビジネス新時代の展望~」と題した第1部に登壇した鵜之澤会長は、確かに市場構造は変化してはいるが、ゲーム市場全体としては衰えていないと強調した。
「どうしてもメディアでは、わかりやすいストーリーとして、家庭用ゲームの本数が落ち、ソーシャルゲームやスマートデバイスに取られている、という書かれ方になる」(鵜之澤会長)
途中に示された2012年CESA白書が出典の棒グラフでは、家庭用ゲームの国内ソフトウェア、ハードウェア出荷規模は、ともに緩やかな右肩下がり。ソーシャルゲームへの移行が進み、そちらが優位に立ちつつあることは間違いない。
ただ、大手6社の業績に大きな変化はない、とするデータも映し出された。
そもそも現在は、ゲームビジネスの構造が変化している時期であり、以前から市場にいたゲームメーカー/パブリッシャーは、それによくついていっている──と鵜之澤会長は評価している。ソーシャルということより、フリートゥプレイ(基本プレイ無料)という入口の設定の仕方のほうが、ゲームに大きな影響を与えているのだと。
新しいアプローチの例として挙げたのは、任天堂の3DSソフト『ファイアーエムブレム 覚醒』(2012年4月発売)。
任天堂の岩田聡代表取締役社長に直接取材して聞き出したという数字は、
・3DSの国内ネット接続経験率 75%
・有料追加コンテンツDL数 120万
・有料追加コンテンツ売上 約3.8億円
スタンドアローンで「純ゲーム」を楽しむ傾向が強いと思われがちな任天堂ユーザーですら、オンラインを嗜むということは、受け手の準備もすっかり整い、ゲームそのものから離れているわけではない証だと言いたいのだろう。

鵜之澤伸一氏。
バンダイナムコゲームスで6月末からサービスを開始した『ガンダムバトルオペレーション』は、基本無料+アイテム課金ビジネスモデルで、その後2カ月間の累計売上が7億円。7月4日にサービスインしたセガの『ファンタシースターオンライン2』は、その後の2カ月間でユーザーIDが90万IDに達したという。
こうしたコンソールからネットワークへの移行を捉え、市場規模を的確に表した新しい指標がない、その指標を用いて正しい情報発信を行い、日本のゲーム産業は元気だというメッセージを伝え、グローバルな競争に打ち勝ちたいというのがCESAの意向のようだ。
ただ、世界市場における日本製ゲームの地位が低下したのは、技術開発力が相対的に劣化してきたからでもある。的確な情報発信をするだけでなく、質の高いゲームを送り出していかなくてはならないが、その準備はできているのだろうか?
8月30日に開催された『メタルギア』生誕25周年記念イベント「METAL GEAR 25th ANNIVERSARY PARTY」で発表されたデモ『METAL GEAR SOLID GROUND Zeroes』は、海外製ゲームに対抗し、世界に打って出るための武器、FOX ENGINEによるものだった。品質の裏打ちなしに日本製ゲームの復興はない。

田中良和氏。
件の「METAL GEAR 25th ANNIVERSARY PARTY」で発表されたソーシャル版『METAL GEAR SOLID SOCIAL OPS』に、ヒントがあるかもしれない。
第2部「スマートデバイスがもたらすソーシャルゲームの進化」に登壇したグリーの田中社長は、席上、グリーに供給される『METAL GEAR SOLID SOCIAL OPS』のトレーラーを公開した。
これまで発表された『メタルギア』シリーズのストーリーを追体験できるというこのゲームは、少なくとも外見的には、従来のソーシャルゲームの枠を超えて家庭用ゲーム並みの品質を保っている。
それ以外にも「ストーリー性のあるゲームで、ソーシャル性を維持したもの」が構想されていると田中社長は言う。
状況としては家庭用ゲーム機が3DCGに移行したPlayStation、SEGASATURNの登場時に近いのだろうか? ドライブゲームなど、従来の家庭用ゲームにあったカテゴリーのソフトを、グリー上に揃えようとしているようにも見える。
ゲーム市場のソーシャル適合化と、ソーシャルゲームの内容の家庭用ゲーム化。この変化がゲーム業界に活気をもたらすことになるのかもしれない。
(取材・文=後藤勝)