今号の「nina’s」(祥伝社)、特集を見る前にまずは2人のママタレインタビューから。今年3月に第二子を出産した後藤真希は、「(長女のムラ食いに悩んで)『子ども ご飯 食べない』って検索したり(笑)」と、日々の育児の悩みをサラリと披露。一方、木下優樹菜は1歳になる次女を伴い親子ファッショントークを中心に、姉妹子育ての難しさについて語っています。自然派育児やクリエィティブ育児をうっとりと語るママタレが多い中、この2人の気負ってない感はなかなかのもの。それがまさか今号の清涼剤となろうとは……。
<トピックス>
◎連載nina’s PEOPLE 後藤真希
◎親子コーデ☆グランプリ
◎私たちの子育てドラマ
■「nina’s」は村上春樹作品並みに固有名詞の支配力が強め
さて、今号の特集は人気企画街角スナップの拡大版「親子コーデ☆グランプリ」です。キャッチに「定番コーデ、コスパ服、おでかけルック、ハンドメイド 全国のオシャレ親子の着こなしテクをキャッチ」とありますように、全国津々浦々のキメキメ親子をこれでもかとばかりに捕獲しています。
見どころは「おでかけルック」部門と「ハンドメイド」部門。「おでかけルック」では、「そのコーデで行きたいおでかけ先」まで調査する優秀なページ。「お誕生日パーティー」や「アンパンマンミュージアム」あたりはまだしも、「京都の大山崎山荘美術館」「(香川県の古い倉庫を活用した複合商業施設)北浜アリーのカフェ」「鎌倉のカフェめぐり」「東京都庭園美術館」「(長野県松本市にあるレトロなビル)ラボラトリオでお買い物」「代々木公園のフェス」と、オシャレママの自意識が大暴発してます。
そして親子コーデの真骨頂である「ハンドメイド」部門。リバティプリントで作ったサロペット、台湾で購入したお醤油柄(?)の布で作ったおそろいスカート、はたまた「プティマインのものにフリンジを作り、ヘアゴムのパーツをつけました」というリメイクものまで百花繚乱。「実家の母に習いながら作ってます」「息子のボトムはばあばの手作り。私のバッグも母が作ってくれました。私も作家さんのものの服を着るのが好きで、このワンピースもヒトハリママさんのもの」と、ハンドメイド魂は一子相伝の秘技であることもしっかり伝えています。
「番外編」として「キッズ」「マタニティ」「三世代」「パパと一緒」コーナーと盛りだくさんすぎて、他人様のお宅でお出かけビデオを延々と見せられているような、軽い胸やけに襲われます。人は「幸せとはなにか」を探し求める生き物ですが、「nina’s」においては「家族の幸せとはオシャレをして『nina’s』に写真を撮られることである」という明確な解を打ち出しており、オシャレ人生に一片の迷いなしと思った次第です。
本レビューでも繰り返し申し上げていますが、「nina’s」はオシャレという名のもとに生活の辛苦や生臭さをなかったことにする雑誌。今までもセックスレス問題や共働き家事分担問題を取り上げてはきたものの、なんとなく最終的にはマリメッコの生地でふわ~っと包み込み、「お前が我慢しろ、お母さんが笑顔ならみんなハッピー」みたいな着地点に落ち着いてきたわけです。
そして今号には「私たちの子育てドラマ」というページが。リードには「ニナーズ読者のほとんどが『これで本当にいいのかな』と日々悩み、模索しながら進めているであろう子育て。何が正解なのか、答えがないだけに難しさもひとしお。今回は3足以上のわらじを履くパワフルママや、子だくさんママなど“先輩ママ”にご登場いただき、どんな育児を実践しているのか、また経験してきたのかを伺いました!」とあります。
モデルでアパレルブランド経営のシングルマザー・仁香、産後セルフケアインストラクター、オリンピック選手の母で幼児教室講師(シングルマザー)、料理研究家のシングルマザー、そして「筆談ホステス」で話題となった東京都北区議会議員の斉藤りえもシングルと、5人中4人が離婚経験者。それぞれが子育てで最も大切にしていること、苦労したこと、うれしかったこと、工夫していることなどをプライベートフォトを交えて紹介しています。
シングルということは、もちろん仕事をしながら子育てをしなければならないわけで、「まさに分刻みのスケジュールをこなしていました。車を運転しながら、頭の中がグルグル回って、今自分が何をしているのかわからくなるなんてこともありました」「二人を育てるには元ダンナの3倍の収入が欲しかったんです。そのためには人の3倍働かなきゃいけないし、3倍辛いこともあると思いましたが、それでしかるべき」と、みなさん猛烈に多忙な日々を過ごしてきたそう。
その上で「お仕事はもちろん大切なんですが、子どもの一瞬一瞬も二度と返ってこないので、忙しくても子どもをできるだけ最優先にした仕事をするようにしています」「絶対手作りのものを食べさせたかったので、作り置きをして手作りにこだわりました」「幼い頃から、よいことと悪いことをしっかり教えていました。『ダメなものはダメ』とガマンを教えることをやって育ててきたので、3人ともグズったり、わがままを言うことはありませんでした。今まで、子育てが大変と思ったことはなかった」と、子育てもきっちりとこなす。う~ん、パワフル。
それなのにひとりのママなんて「こんなTHEダメ母ですが」と言っているんですよ。一緒にご飯が食べられないならせめて手作りのおかずを……とがんばってる母親が「ダメ母」なはずがない。だけど仕事だろうがなんだろうが子どものそばにいられない母は「ダメ母」であると、自分自身を縛り上げている。なんだか暗澹たる気持ちになりました。
「これでいいのかと日々悩み、模索しているニナーズ読者」に、この5人のパワフルママたちの子育てはどのように映るのでしょうか。どうか「世の中にはこんなにがんばっている人もいるのに、子どもと二人きりの時間が苦しいとか私はなんてダメ母なんだろう」などと考えないで……。「ダメ母」のハードルが上がって幸せになる人は誰もいません。というわけで、「母」という主語のデカさをあらためて痛感したこの企画。人生いろいろ、お母さんいろいろ、です。
(西澤千央)