東方神起は「ウイルス拡散宗教の信者」!? 本国でデマ拡散、事務所は法的措置を宣言

 日本でも絶大な人気を誇るK-POPグループ・東方神起について、新興宗教「新天地イエス教会」の信者であるというウワサが韓国内で拡散され、物議を醸している。

 「新天地イエス協会」(以下、「新天地」)といえば、韓国での新型コロナウイルス感染者拡大の原因にもなったといわれる団体で、米有力紙ニューヨーク・タイムズでも「韓国で確認される感染者4000人以上のうち、60%が新天地イエス教会の関係者である」と報じられている。ソウル市は同団体の教祖と教団幹部を「殺人罪」で刑事告発。これを受け、翌日に同団体のイ・マンヒ総会長は記者会見を開き、土下座で謝罪。この模様は日本のメディアでも大きく取り上げられた。

 そんな中、韓国のネット上で「新天地イエス協会の芸能人信者リスト」なる文書が流布、拡散され、そのリスト内に有名俳優らと共に東方神起の名も挙がっていたのである。この報道を受け、日本の音楽業界関係者はため息を漏らす。

「すでに東方神起は、日本でのイベントがコロナウイルスの影響で延期になるなど、損害が出ている。ですが、今回の『新天地の信者だ』というウワサは明らかにデマですし、今後の活動に支障が出ることはないと思います。ただ、根も葉もない話が発端でトイレットペーパーの買い占めが起こったように、人々が不安になっている時に流される“ウワサ”や“憶測”の類が及ぼす悪影響を考えると、デマとはいえ看過できない。こんなことに巻き込まれた東方神起は完全に被害者ですから、韓国の事務所も黙ってはいないでしょう」

 関係者がこう語るように、SMエンターテインメントはすでに「現在ネット上で流布されている内容は事実ではない。これは全く根拠のないデマ。当方のアーティストは特定の宗教とは無関係」と真っ向からウワサを否定。「(デマの拡散など)アーティストの名誉を傷つける不法行為に対しては法的措置をとる」と発表した。韓流系メディアの編集者はこう語る。

「東方神起は昨年日本デビュー15周年を迎え、今も根強い人気がある。日本で一番知名度があるK-POPアーティストといえるでしょう。また、『新天地』についても、土下座会見の様子が広く報道されましたから、たとえ事実でなくとも『東方神起が新天地の信者だとウワサされた』ことに、日本のファンも動揺していました。ですから、事務所が迅速に声明文を出したのは賢明な判断だったと思います」

 思わぬデマ被害に遭った東方神起は災難だったが、こうした新型コロナウイルスによる混乱は収まる気配がない。エンタメ業界が被る被害もまだまだ拡大していきそうだ。

2019年のK-POPシーンを振り返る――日本語楽曲のクオリティが急上昇、EDMはジャンル定着

――毎月リリースされるK-POPの楽曲。それらを楽しみ尽くす“視点”を、さまざまなジャンルのDJを経て現在はK-POPのクラブイベントを主宰するe_e_li_c_a氏がレクチャー。今回は2019年のK-POPを振り返ります。

 明けましておめでとうございます。年も明けたということで、今回は下記の3つのトピックスから2019年のK-Popシーンを振り返りたいと思います。

・K-Popの楽曲の方向性
・K-Popグループの日本での楽曲リリース、活動
・脱退、活動休止など

トピック1:K-Popの楽曲の方向性

 2019年はシティポップ楽曲が増加したこと、 また19年から突然というわけではないですが、年々EDMというジャンルの中での楽曲の幅の広がりを感じます。「EDM」というとフェスで騒ぐうるさい曲というイメージがあるかもしれませんが、Electro Dance Musicの略で、5月に紹介したBlackpinkの「Kill this love」はTrap、6月に紹介したDeep house7月に紹介したPsyche Trance10月に紹介した2stepなど全てがここに包括されるような大きいジャンルのくくりです。

 2010年頃も4つ打ち楽曲は多かったですが、BPM128前後でシンセの音が全面的に出ている、今でいうとElectro Houseとジャンル分けされるような楽曲がほとんどでした。当時の2NE1、BEAST、INFINITE、T-ARA、U-KISS、4MINUTE、KARAなどをイメージしてもらえばわかりやすいかと思います。

 その時と比べると新たに「EDM」という単語ができ定着してきたり、上記のジャンル以外にもFuture Bass、Tropical House、Moombahtonなどのジャンルが新しく生まれ、HouseやTechnoなどのジャンルも更に細分化しました。16年頃から現在も、Future Bassのはやりは依然として根強く残り、18年頃からDeep Houseの流れが来ていますが、一方でマイナーな事務所でも新しいジャンルの楽曲をリリースする状況も出てきているように感じます。今年は特にElectroやBig Room Houseなど一般的にEDMと思われる、フェスで聞くような派手な楽曲が例年に比べて多く感じました。あとはEuro Dance、Hard Style、Hardcoreあたりをやるアイドルが出てくれば、K-PopシーンでもうほとんどのEDMジャンルは網羅できるのではないでしょうか。

 ということで、楽曲にそのジャンルの要素があると思うEDMのサブジャンルを書きながら、19年にリリースされた順に楽曲を紹介していきます。

<French House、Nu Disco、2step>
네온펀치 (NeonPunch) - Tic Toc 2019.1.30

<Future Bass>
이달의 소녀 (LOONA) - Butterfly 2019.02.19

<Future House>
장동우(Jang Dong Woo) - Party Girl 2019.03.04

<Electro Swing>
DIA(다이아) - WOOWA(우와) 2019.03.19

<Melbourne Bounce>
MOMOLAND(모모랜드) - I'm So Hot 2019.03.20

<Electro、Future Bounce>
Stray Kids - MIROH 2019.03.25

<Moombahton>
KARD - Bomb Bomb(밤밤) 2019.03.27

<Tropical House、Future Bass>
IZ*ONE (아이즈원) - 비올레타 (Violeta) 2019.04.01

<Bass House>
NCT 127 - Superhuman 2019.05.24

<Garage House、Electro House>
공원소녀(GWSN) - RED-SUN(021)  2019.07.23

<Synth Pop>
디원스(D1CE) - 놀라워 2019.08.01

<Electro House、Progressive House>
TRCNG - MISSING 2019.08.04

<Big Room House>
EVERGLOW (에버글로우) - Adios 2019.08.19

<Deep House>
NU'EST - LOVE ME 2019.10.21

<Trap>
A.C.E (에이스) - 삐딱선 (SAVAGE)  2019.10.29

<Disco House、French House>
DONGKIZ - Fever 2019.11.06

 韓国語楽曲のリリースより真面目に追ってないこともあり、今回あらためて日本語楽曲を挙げてみたことで、はっきりと2018年とは状況が違うなと感じました。

 まずは日本オリジナル曲の作りが韓国語曲に近付いてきていること です。個人的な好みではありますが、 日本でリリースされる楽曲は韓国語楽曲を越えられることはないから別に聞かなくてもいいだろう、という位置付けでした。そうした固定概念を覆されたのが19年だったように思います。 ジャニーズやLDH関係でもK-Pop(韓国語楽曲) と同じ作曲家が起用されていますが、作曲家が同じにもかかわらずJ-PopとK- Popでは楽曲の構造やトラックの高中低音の配分、 ボーカルの押し出し方など、さまざまなところで違いが感じられます。それはプロデューサー(発注側) の考え方の差だと思っていたので、 その人たちの考え方が変わったのか、何があったのか。 外から見ているだけだとわからず、気になるところです。

 リリース順にいくつか挙げましたが、個人的には今までGOT7の日本語曲に期待したことは一度もなく、聞いては後悔を繰り返していたので、今回このような楽曲がリリースされたことに驚いているし素直にうれしいです。あとはやはりTwiceが「Fake & True」の一つ前の「Breakthrough」がリリースされたときから、おや……? 様子が違うぞ? と思っていたら、その後韓国でも日本でも良い楽曲しかリリースされず、こちらもビックリしました。

 以前に比べて、日本オリジナル曲をリリースするグループが増えたとも感じています。デビューの仕方も、既存韓国語曲の日本語バージョンもしくは日本語オリジナル曲をリリースするという2パターンから、The Boyzのように全く新しい韓国語楽曲で日本デビューするという今までないパターンも出てきました。THE BOYZのEPは6曲中5曲が韓国語で、日本語曲は1曲しかありません。ATEEZは既存韓国語曲の日本語バージョン2曲のうち1つをタイトル曲とし、それ以外は既存韓国語曲をRemixした9曲を収録したアルバムをリリースしました。そして同時に、『TREASURE EP.EXTRA : SHIFT THE MAP (Remixx!) 』として日本語バージョン2曲を除いたものを韓国でリリースするという、今までにない展開です。

 K-Popアイドルが日本語曲を出すことに対しては昔からさまざまな議論があり、どうしても楽曲のクオリティが下がってしまうように感じることから、私は別にいらないと思っていましたが、以前Zion.Tがインタビューで「日本で活動するときは、韓国とは区別して、日本人のように歌いたいなと思っている」と答えている文章を見て、そこに本人の意思があり制作の時間なども十分に取れるなら意味があるのかなと思いました(全ての楽曲の作詞作曲を自分たちでやっているStray kidsの日本デビューがずっと心配です)。

Red Velvet - SAPPY 2019.01.05

EXID(이엑스아이디) - トラブル (TROUBLE) 2019.01.23

NCT 127 - Wakey-Wakey 2019.03.18

SEVENTEEN - Happy Ending 2019.05.17

GOT7 - #SUMMERVIBES 2019.07.31

PENTAGON - HAPPINESS 2019.08.13

MONSTA X - Carry on 2019.08.21

TWICE - Fake & True 2019.10.17

THE BOYZ(더보이즈) - TATTOO 2019.11.06
 

ATEEZ - TREASURE EP.EXTRA : SHIFT THE MAP 2019.12.04

 このキーワードを見て「ああ……」とならない方はいないぐらい、脱退や活動休止の多い年でした。年始のバーニングサン事件に関連するBIGBANGのV.I.の脱退から始まり、さまざまな理由で色々なグループのメンバーが脱退したり活動休止したり……。

 個人的に、物事や人の考えは常に変わるものと思っているので、本人の意思でグループを離れることやグループが解散になることは全然アリだと思う半面、大衆からの評価などが多分に影響してくる仕事の性質上難しいなと思うところもあります。

 年末に来日したLim Kimのインタビューで、「K-POPの女性ソロ歌手に対する画一的なイメージがあり、なぜ私をこう見るのだろうと思った」「以前の活動を通して私を好んでくださっていたファンの方や、私が積み重ねてきたキャリアというのは私の物ではなかった」(自分のやりたいことができていたわけではないという趣旨)と答えているのを見て、もちろん一般的にアイドルというのは演じることがメインで作詞や作曲ができなくても成り立つものですが、「音楽をやりたい」という意思のある人たちにはそれができる環境があればより良いと思います。

 実際にここ3〜4年は「自給自足アイドル」という固有名詞も出てきているように、制作を実現しているグループも数えられないほど出てきています。ですが一方では、アーティスト本人たちへの負担は昔に比べ計り知れないほど大きくなり、韓国の完璧主義の風潮が悪い方向に働き、心身ともに影響が出ている人たちも見受けられます。

 もう少しマクロ的な視点で見ると、個人的にはフットワークが軽く新しいことをやるのに向いている新陳代謝の良い国だと感じますが、何かを長く継続してやるという文化が日本に比べるとあまりなく(それが良いのか悪いのかはまた別の話)、短期間に根を詰めてやるのには支障がなくても、長く続けようとするとどうしても影響が出て、今のような状況になっているようにも感じます。社会としても日本と比べると突然何かが決定されるようなことが多いため、遠くのスケジュールなどを見越せず、中長期的なビジョンを持ちづらく、ほとんどの事務所は会社の規模が小さく体力が持たないという点もあると思います。どうしても世の中の動きが速いため、今アピールできないとチャンスを逃してしまうという焦燥感が強くなることもわかりますが、多様な価値観を重視し、さまざまな活動形態でアーティストとして活動していけるような未来が来て欲しいです。

 前述のLim Kimのインタビューにもあるように「アイドルだからこうなんでしょ」という固定観念が強く、そこから一歩でも道を踏み外すと強いバッシングを受け、日本に比べると流行に一辺倒で多様性に許容が少ない傾向を感じます。先程の日本活動の部分に関係しますが、その点、音楽ジャンルに関して日本はどんなものでも幅広く許容する土壌があり、韓国でやることが難しいようなものでも受け入れられる可能性があるかもしれないので、もちろん韓国で何でもできるのが一番だとは思いますが、せっかく日本で活動するなら、その部分を生かしたことができると良いのかなと思います。

12月分の紹介したい1曲‖Stray Kids - Gone Days

日本語含め8カ国語で字幕がついてるので是非字幕をオンにして見てみて下さい。韓国は日本以上に上下関係が厳しく上の人の言うことが絶対の世界なので、そんな背景を思いながらこの曲を聴いて泣きました。

<近況>
 皆さんにとって2019年はどんな年でしたか? 私は本厄でしたが実家の犬に腕を噛まれたりソファに足を強打して薬指が腫れたぐらいで、その代わりに申し込む公演全てのチケットが当たるという謎な年でした。

 そして冬っぽいなと思う曲を詰め込んだDJミックスを作ったので(一部のクリスマス曲はもう季節外れ感ありますが……)、是非聴いてください!

e_e_li_c_a
1987年生まれ。18歳からDJを始めヒップホップ、ソウル、 ファンク、ジャズ、中東音楽、 タイポップスなどさまざまなジャンルを経て現在K-POPをかけるクラブイベント「Todak Todak」を主催。楽曲的な面白さとアイドルとしての魅力の双方からK-POPを紹介して人気を集める。

Twitter @e_e_li_c_a TodakTodak 
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「一線越えたら即逮捕」「チケットで熱意が試される」!? 海外遠征で知っておきたい“オタク知識”

 “推し”のために何度も海外遠征をしている、K-POPファンとサッカーファンを招き行われた“オタク談義”。前編では、オタ活ならではの旅トラブルや、「わざわざ行く」からこそ得られる経験について語っていただいた。後編では、さらに具体的なオタ活事情、日本と海外の違いが話題となった。

【出席者】
カナコさん……アラフォー、既婚。K-POPアイドルにハマり、韓国に数えきれないほどの渡航歴アリ。2009年頃、洋楽好きな友達の勧めでK-POPを聴くようになり、その後、現在の推しが韓国でデビュー。13年頃に「この子しかいないっ!」と開眼してから、頻繁に遠征するようになった。なお、“推し”の名前は非公開。
しんいちさん……1974年生まれの45歳、既婚。サッカー日本代表や、Jリーグチーム・FC東京のサポーターとして海外に遠征。95年に「アンブロ・カップ」という国際親善大会のため、“聖地”と呼ばれるイギリスのウェンブリー・スタジアムに行ったのが初めての海外遠征。アニメやゲームも好きで、海外で行われる「アニメコンベンション」に参加することもある。

「言葉を間違えたら恥ずかしい」とは思わなくていい!

――海外遠征に行こうと思っても、なかなか一歩踏み出せない理由として、「言葉の壁」は大きいのではないかと思います。お二人はその点、どう克服しましたか?

カナコさん 私はK-POPにハマってから、韓国語を勉強しています。週に1回、先生のレッスンを受ける程度ですけどね。最初は「推しを見ているうちに自然と覚えちゃった!」って時期もあったんですが、それでは飽き足らず……。というか、言葉がわからないと、現場で“交渉”できないんですよ。

――何を交渉するんですか?

カナコさん 参加するイベントが毎回ちゃんとした運営だとは限らないという事情もあり(笑)、その場で概要が説明されるとか、列に並ばされたはいいけど、その後どうなるかわからないとか、結構あるんです。説明が理解できないとスタッフさんも困るし、何より自分が損をしちゃう。私の場合、韓国語がわかったから、足を運べるようになったというイベントもあります。

――しんいちさんは、英語圏に遠征することが多そうですが、言葉について不自由はないですか?

しんいちさん 最初に行ったイギリスでは、しばらく滞在するうちに耳が英語に慣れて、だんだん聞き取れるようになったんです。「よっしゃ~、だいぶ慣れたぞ~!」と安心していた頃にリヴァプールへ行ったら、もう、同じ英語とは思えないぐらい訛ってて(笑)。ちっとも聞き取れなかった経験がありますね。

 でもひとつ言っておきたいのは、向こうからしたら「外国語を話してるだけエライ!」「コミュニケーションをとろうとしてるだけでスゴイ!」って感じなので、「間違えたら恥ずかしい」とかは、本当に考えなくていい(笑)。物おじしないで話してみると案外通じますし、自然と度胸もつきますよ。

カナコさん 最初のうちは、言葉が通じなくて四苦八苦するのも、いい思い出になるんじゃないでしょうか。そこは覚悟してトライしてほしいですね。

――日本でも海外でも、オタ活に必要なものといえば、やっぱり“チケット”です。お二人は、どのように手配しているんですか?

しんいちさん サッカーの場合は、クラブチームから直接買うのが一番確実ですね。海外の試合であれば、オフィシャルツアーも組まれるはずなので、航空券・ホテル・試合のチケットがすべて一括で手配できるし、周りも日本人サポーターばかりなので、初心者にはオススメです。あとは国にもよるんですけど、オフィシャルツアーじゃないと入国できないパターンもあります。中東は特に大変で、入国するためのビザがなかなか下りないこともありますね。

 だけど、トーナメント戦の場合は、勝ち進んでみないと、どこで試合があるかわからないんですよ。トーナメントで当たった国によって、試合の開催国が変わったりするので。だからもう、先に「この日に日本とこの国が試合をやるハズだから、会場は多分ここになるだろう」とか予想して、航空券やホテルの情報を先に調べたり……。

――それってもはや“賭け”じゃないですか。

しんいちさん とはいえ海外試合の場合だと、チケットが完売しちゃうことって、そうそうないです。ワールドカップなんかはもちろん別ですが、よほどのビッグマッチじゃない限り、普通は売り切れないんですよ。もちろん海外まで行くんですから、なるべく事前に手配できるものは手配したほうが安心ですけど、会場に入るチケットだけなら、結構なんとかなっちゃうんじゃないかな? 海外出張のついでに現地でサッカー観戦、みたいなことをしている友達もいますよ。

――K-POPのチケット事情はどうですか?

カナコさん 韓国は今、“本人確認ブーム”の嵐が吹き荒れていて……。今回のミュージカルも結構、本人確認のルールが厳しいんです。昔は当日券でなんとかなることもあったんですけど、今は難しいですね。外国人がチケットを買う場合、パスポートの確認が必要ってこともあるし。そもそも、「外国人は買えません」っていうチケットもあります。韓国って住民登録番号(RNN)と携帯電話の番号などが全部ひもづいていて、外国人っていうだけですごく購入のハードルが上がるんですよね。

――今回のミュージカルのチケットは、どうやって手配したんですか?

カナコさん 外国人向けのグローバルサイトがあるので、そこで買いました。韓国って座席は“早い者勝ち”のものが多いので、チケットの発売日には、熱心なファンがネットカフェの高速回線を使って買ったりするんです(笑)。そういう点では、ある程度努力すればいい席を取れる可能性があるので、日本の抽選式よりは、熱意が試されてるかもしれませんね。

――海外の現場に行ってみてわかる、「日本のここが好き」「海外ってすごい」というポイントはありますか?

しんいちさん 僕が感じるのは、日本のホスピタリティの良さ。海外のスタジアムに行くとわかるんですけど、スタジアムのホスピタリティって、圧倒的に日本が良いんですよ。そりゃもう、ズバ抜けて良いんです(笑)。海外はほったらかしというか、自由にしていられるんだけど、越えちゃいけない一線がそれぞれの場所であって。それを越えたらもう、注意じゃなくて「即、逮捕!」みたいな感じなんです。スタジアムに入ってから、大勢の警察官に囲まれた中で応援する……みたいな国もありました。

――怖っ! “一発レッドカード”ってことですか!?

しんいちさん もちろん、普通にしていれば怖い目に遭うことなんてないですよ。でも、調子に乗っているとヤバイ。国によっては、警察官が一般市民に本当に銃向けますからね。あとアジア圏だと、スポーツと政治を絡めたがる人たちがいます。一目で国がわかるユニフォームを着て街を歩いていると、ちょっかい出されることとか……。そういう時は、「日本ってやっぱり平和なんだな」と思いますね。

カナコさん 私は、日本では体験できないことや知り得ないことを知る、違う文化に触れられるのが、単純に楽しいです。K-POPは韓国のアイドルと言いつつ、香港や台湾にアジアツアーもするし、コンサートやイベント会場には、世界各国からファンが集まるんですよ。あと最近は、中国のエンターテインメントがすごい勢いだなって思います。K-POPファンの中でも、感覚の鋭い人はもう、中国のアイドルに移っていたり。

――そういうファンの方って、アジア圏のアイドルをどんどん深めていく感覚なんですか?

カナコさん というよりも、今一番“新しいもの”が好きなんじゃないかな? K-POPって、昔はマニアックな趣味というか、アジアのちょっと珍しい面白いもの・キッチュなもの、っていう感じで受け取られていたと思うんですけど、今はむしろトレンドの最先端になっているじゃないですか。K-POPのファンは、K-POPがどんどん発展して、洗練されていくのをずっと目の当たりにしてきたんです。そうやって、韓国や中国のエンターテインメントが恐ろしい勢いで発達しているのを見て、ファンは楽しんでいるんだと思います。それと同時に、日本の文化やエンターテインメントがどんどん古く・つまらなくなっているのを、かなり前から肌で感じていたんじゃないでしょうか。

しんいちさん “新しいもの好き”な人が国内のエンタメに満足できなくなっているというのは、正直すごく感じます。

カナコさん これからグローバル化が進んでいくことを考えると、日本の中で一生懸命に新しいことや楽しいものを探さなくてもいいのでは、と思います。世界中を見渡しながら、「今は何が一番新しくて、面白いのかな?」という視点で、“推し”を探す人が増えるかもしれませんね。

「一線越えたら即逮捕」「チケットで熱意が試される」!? 海外遠征で知っておきたい“オタク知識”

 “推し”のために何度も海外遠征をしている、K-POPファンとサッカーファンを招き行われた“オタク談義”。前編では、オタ活ならではの旅トラブルや、「わざわざ行く」からこそ得られる経験について語っていただいた。後編では、さらに具体的なオタ活事情、日本と海外の違いが話題となった。

【出席者】
カナコさん……アラフォー、既婚。K-POPアイドルにハマり、韓国に数えきれないほどの渡航歴アリ。2009年頃、洋楽好きな友達の勧めでK-POPを聴くようになり、その後、現在の推しが韓国でデビュー。13年頃に「この子しかいないっ!」と開眼してから、頻繁に遠征するようになった。なお、“推し”の名前は非公開。
しんいちさん……1974年生まれの45歳、既婚。サッカー日本代表や、Jリーグチーム・FC東京のサポーターとして海外に遠征。95年に「アンブロ・カップ」という国際親善大会のため、“聖地”と呼ばれるイギリスのウェンブリー・スタジアムに行ったのが初めての海外遠征。アニメやゲームも好きで、海外で行われる「アニメコンベンション」に参加することもある。

「言葉を間違えたら恥ずかしい」とは思わなくていい!

――海外遠征に行こうと思っても、なかなか一歩踏み出せない理由として、「言葉の壁」は大きいのではないかと思います。お二人はその点、どう克服しましたか?

カナコさん 私はK-POPにハマってから、韓国語を勉強しています。週に1回、先生のレッスンを受ける程度ですけどね。最初は「推しを見ているうちに自然と覚えちゃった!」って時期もあったんですが、それでは飽き足らず……。というか、言葉がわからないと、現場で“交渉”できないんですよ。

――何を交渉するんですか?

カナコさん 参加するイベントが毎回ちゃんとした運営だとは限らないという事情もあり(笑)、その場で概要が説明されるとか、列に並ばされたはいいけど、その後どうなるかわからないとか、結構あるんです。説明が理解できないとスタッフさんも困るし、何より自分が損をしちゃう。私の場合、韓国語がわかったから、足を運べるようになったというイベントもあります。

――しんいちさんは、英語圏に遠征することが多そうですが、言葉について不自由はないですか?

しんいちさん 最初に行ったイギリスでは、しばらく滞在するうちに耳が英語に慣れて、だんだん聞き取れるようになったんです。「よっしゃ~、だいぶ慣れたぞ~!」と安心していた頃にリヴァプールへ行ったら、もう、同じ英語とは思えないぐらい訛ってて(笑)。ちっとも聞き取れなかった経験がありますね。

 でもひとつ言っておきたいのは、向こうからしたら「外国語を話してるだけエライ!」「コミュニケーションをとろうとしてるだけでスゴイ!」って感じなので、「間違えたら恥ずかしい」とかは、本当に考えなくていい(笑)。物おじしないで話してみると案外通じますし、自然と度胸もつきますよ。

カナコさん 最初のうちは、言葉が通じなくて四苦八苦するのも、いい思い出になるんじゃないでしょうか。そこは覚悟してトライしてほしいですね。

――日本でも海外でも、オタ活に必要なものといえば、やっぱり“チケット”です。お二人は、どのように手配しているんですか?

しんいちさん サッカーの場合は、クラブチームから直接買うのが一番確実ですね。海外の試合であれば、オフィシャルツアーも組まれるはずなので、航空券・ホテル・試合のチケットがすべて一括で手配できるし、周りも日本人サポーターばかりなので、初心者にはオススメです。あとは国にもよるんですけど、オフィシャルツアーじゃないと入国できないパターンもあります。中東は特に大変で、入国するためのビザがなかなか下りないこともありますね。

 だけど、トーナメント戦の場合は、勝ち進んでみないと、どこで試合があるかわからないんですよ。トーナメントで当たった国によって、試合の開催国が変わったりするので。だからもう、先に「この日に日本とこの国が試合をやるハズだから、会場は多分ここになるだろう」とか予想して、航空券やホテルの情報を先に調べたり……。

――それってもはや“賭け”じゃないですか。

しんいちさん とはいえ海外試合の場合だと、チケットが完売しちゃうことって、そうそうないです。ワールドカップなんかはもちろん別ですが、よほどのビッグマッチじゃない限り、普通は売り切れないんですよ。もちろん海外まで行くんですから、なるべく事前に手配できるものは手配したほうが安心ですけど、会場に入るチケットだけなら、結構なんとかなっちゃうんじゃないかな? 海外出張のついでに現地でサッカー観戦、みたいなことをしている友達もいますよ。

――K-POPのチケット事情はどうですか?

カナコさん 韓国は今、“本人確認ブーム”の嵐が吹き荒れていて……。今回のミュージカルも結構、本人確認のルールが厳しいんです。昔は当日券でなんとかなることもあったんですけど、今は難しいですね。外国人がチケットを買う場合、パスポートの確認が必要ってこともあるし。そもそも、「外国人は買えません」っていうチケットもあります。韓国って住民登録番号(RNN)と携帯電話の番号などが全部ひもづいていて、外国人っていうだけですごく購入のハードルが上がるんですよね。

――今回のミュージカルのチケットは、どうやって手配したんですか?

カナコさん 外国人向けのグローバルサイトがあるので、そこで買いました。韓国って座席は“早い者勝ち”のものが多いので、チケットの発売日には、熱心なファンがネットカフェの高速回線を使って買ったりするんです(笑)。そういう点では、ある程度努力すればいい席を取れる可能性があるので、日本の抽選式よりは、熱意が試されてるかもしれませんね。

――海外の現場に行ってみてわかる、「日本のここが好き」「海外ってすごい」というポイントはありますか?

しんいちさん 僕が感じるのは、日本のホスピタリティの良さ。海外のスタジアムに行くとわかるんですけど、スタジアムのホスピタリティって、圧倒的に日本が良いんですよ。そりゃもう、ズバ抜けて良いんです(笑)。海外はほったらかしというか、自由にしていられるんだけど、越えちゃいけない一線がそれぞれの場所であって。それを越えたらもう、注意じゃなくて「即、逮捕!」みたいな感じなんです。スタジアムに入ってから、大勢の警察官に囲まれた中で応援する……みたいな国もありました。

――怖っ! “一発レッドカード”ってことですか!?

しんいちさん もちろん、普通にしていれば怖い目に遭うことなんてないですよ。でも、調子に乗っているとヤバイ。国によっては、警察官が一般市民に本当に銃向けますからね。あとアジア圏だと、スポーツと政治を絡めたがる人たちがいます。一目で国がわかるユニフォームを着て街を歩いていると、ちょっかい出されることとか……。そういう時は、「日本ってやっぱり平和なんだな」と思いますね。

カナコさん 私は、日本では体験できないことや知り得ないことを知る、違う文化に触れられるのが、単純に楽しいです。K-POPは韓国のアイドルと言いつつ、香港や台湾にアジアツアーもするし、コンサートやイベント会場には、世界各国からファンが集まるんですよ。あと最近は、中国のエンターテインメントがすごい勢いだなって思います。K-POPファンの中でも、感覚の鋭い人はもう、中国のアイドルに移っていたり。

――そういうファンの方って、アジア圏のアイドルをどんどん深めていく感覚なんですか?

カナコさん というよりも、今一番“新しいもの”が好きなんじゃないかな? K-POPって、昔はマニアックな趣味というか、アジアのちょっと珍しい面白いもの・キッチュなもの、っていう感じで受け取られていたと思うんですけど、今はむしろトレンドの最先端になっているじゃないですか。K-POPのファンは、K-POPがどんどん発展して、洗練されていくのをずっと目の当たりにしてきたんです。そうやって、韓国や中国のエンターテインメントが恐ろしい勢いで発達しているのを見て、ファンは楽しんでいるんだと思います。それと同時に、日本の文化やエンターテインメントがどんどん古く・つまらなくなっているのを、かなり前から肌で感じていたんじゃないでしょうか。

しんいちさん “新しいもの好き”な人が国内のエンタメに満足できなくなっているというのは、正直すごく感じます。

カナコさん これからグローバル化が進んでいくことを考えると、日本の中で一生懸命に新しいことや楽しいものを探さなくてもいいのでは、と思います。世界中を見渡しながら、「今は何が一番新しくて、面白いのかな?」という視点で、“推し”を探す人が増えるかもしれませんね。

不法就労を疑われ、ペンライトで赤っ恥――それでも「行かなくては」! オタクが“海外遠征”する理由

 嵐がプライベートジェットでアジア4カ国を回るプロモーションツアー『JET STORM』を、11月10・11日に行った。各国で現地のファンに歓迎される5人の姿は、同3日に開設されたばかりの嵐公式SNSで見ることができ、国内にいてもその盛り上がりが感じられた。

 2020年には北京でのコンサートも予定しており、これを機に“海外遠征”を考えているファンも少なくないようだが、ネット上には「行ってみたいけど、わかんないことだらけで心配」「英語しゃべれないし無理!」「国内ならいいけど、海外は気軽に行けない」など、消極的な声が見受けられる。しかし本当に、海外遠征は「気軽に行けない」のだろうか? “推し・担当”のために何度も海外へ行っているというK-POPファン、サッカーファンに、予算や“旅行”との違い、海外のチケット事情などを聞いた。

【座談会出席者】
カナコさん……アラフォー、既婚。K-POPアイドルにハマり、韓国に数えきれないほどの渡航歴アリ。2009年頃、洋楽好きな友達の勧めでK-POPを聴くようになり、その後、現在の推しが韓国でデビュー。13年頃に「この子しかいないっ!」と開眼してから、頻繁に遠征するようになった。なお、“推し”の名前は非公開。
しんいちさん……1974年生まれの45歳、既婚。サッカー日本代表や、Jリーグチーム・FC東京のサポーターとして海外に遠征。95年に「アンブロ・カップ」という国際親善大会のため、“聖地”と呼ばれるイギリスのウェンブリー・スタジアムに行ったのが初めての海外遠征。アニメやゲームも好きで、海外で行われる「アニメコンベンション」に参加することもある。

「行けばよかった!」の後悔が“遠征オタク”の道へ

――いきなりですが、カナコさんは今日これから「韓国へ旅立つ」とか……?

カナコさん そうなんです(笑)。今回の遠征は、韓国軍がやっているミュージカルを観劇するためで……。

――軍!? いきなりすごい単語が出てきましたね。韓国軍が舞台制作をしているってことですか?

カナコさん そうです。今、韓国軍は「韓国最大の芸能事務所」っていわれていまして。K-POPブームで大人気だったアイドルが、ちょうど今、兵役の年齢を迎えているんです。広報のために舞台制作や芸能活動のようなこともしていて、オーディションで選ばれた兵士が舞台などに出演しています。特に今回のミュージカルは、出演者に結構有名なK-POPアイドルの名前がたくさん並んでいて、チケットがすぐ完売してしまったんです。

しんいちさん へえ~……全然知らない世界ですね……。

――しんいちさんがサッカー観戦を始めたのはいつでしたか?

しんいちさん 1993年のワールドカップ予選、国立競技場で行われた、日本対UAE戦ですね。Jリーグが発足した年ということもあり、サッカー自体がすごく盛り上がっていた頃でした。それまでは、全然サッカーを見たことがなかったんですけど、試合の面白さはもちろん、スタジアムでの応援のスタイルを知ったら、すごく楽しくて。そこからハマってしまいました。

 最初のうちは、海外までサッカー観戦に行くなんて、考えもしませんでした(笑)。でも、そのあと俗に言う「ドーハの悲劇」というやつがあって。僕は日本のスポーツバーで仲間たちと中継を観ていたんですけど、日本が試合に負けたときに、「ああ、行けばよかった!」って後悔したんですよ。勝つにしても負けるにしても、「その場にいたかった!」って思ったことが、海外遠征のきっかけですね。

「入国理由」をキッチリ言えないと、大変なことに!?

――お二人とも、かなりの回数渡航されていると思うのですが、トラブルに巻き込まれてしまったことはありますか?

しんいちさん トラブル……。まあ、何かあったら今ここにいませんからね(笑)。

カナコさん 確かに(笑)。私もほとんどないですけど、やっぱり荷物検査で“ペンライト”が引っかかると嫌ですよね。「これ何?」って聞かれたりするの、恥ずかしいんですよ(笑)! あとは、頻繁に韓国へ行っているので、入出国の理由を怪しまれます。一度、帰国したときに「こんなにしょっちゅう韓国に行って、何してるんだ? 仕事じゃないよね?」って質問されたことがありますね。そのときは、相手の言い方もなんかムカついたので、正直に「韓国のアイドルにハマってるんです!」って、開き直りましたけど。

しんいちさん それ、僕もあります。これはサッカーとは関係ないんですけど、アトランタで開催された「アニメコンベンション」に行ったとき、入国時に「何をしに来たんだ?」って聞かれたので、「『アニメコンベンション』のために来た」って言ったら、「はあ!? 何言ってるんだ?」って反応されて。「アトランタに来たら、普通はコカ・コーラかCNNか、マーティン・ルーサー・キングの墓へ行くに決まってんだろうが!」って(笑)。不法就労を疑われる場合もあるから、入国理由は明確にしておいたほうがいいですね。実際に行く予定はなくても、主要な観光地ぐらいは押さえておいたほうがいいかも。

――海外遠征でハードルになることって、なんだと思いますか?

カナコさん 問題は“お金と時間”ですよね、あと“体力”。これをそろえることが、最低限の条件ですかね?

しんいちさん そりゃ、アマゾンの奥地へ行くとなれば話は別でしょうけど、都市部ならパスポートとお金、スマートフォンさえ持っていたら、なんとかなりますよね。今は航空券やホテルの手配も、すべてインターネットでできますし、そういった点でも気軽に海外へ行けるようになったと思います。

カナコさん 遠征する人って、もともと“旅行”に対するハードルが低いような気もします。なので、結構すぐに「あ、海外でもなんとかなるわ」って気づくのではないでしょうか(笑)。

――体力が必要ということになると、「だいたいこのくらいの年齢が海外遠征オタクの限界」と考えたりしますか?

しんいちさん 明確な年齢は考えてないですね。体力とお金が続く限りは、海外までFC東京を追いかけると思います。「行かなくてはならないのなら、必ず行く」という気持ちなので。

カナコさん 私も年齢のことはあまり考えないんですが、さすがに若いときに比べると、体力に“陰り”が見え始めてます(笑)。周囲に迷惑をかけずに、見苦しくない感じで続けていければいいな、と思ってますね。若い人ばかりのイベントは、さすがにちょっと遠慮しようかな……という感じですが。

「海外まで行く必要あるのか」という声には……

――ちなみに、お二人がこれまでに行った遠征の中で、一番お金を使ったのはどんな現場ですか?

しんいちさん 僕はやっぱり、最初に行ったイギリスです。2週間近く行っていたこともあり、30~40万くらいかかりましたね。まだ20歳そこそこの頃だったので、かなり頑張ってためました。でも、今考えたら結構安く済んでると思います。主な目的はサッカー観戦だから、スタジアムへ行って、ごはんを食べて帰ってくるだけなので、そんなにお金使わなかったのかな(笑)。このときもそうですが、基本的に遠征へ行ってもお土産は買わないんです。

カナコさん 私はサイン会のために、同じCDを何枚も買ったときですね。グループにもよりますが、そのときは韓国への旅費込みで30~50万くらい使ったかな。ちなみに、私もお土産は買わないですね。韓国によく行く友達が多いので、必要ないんですよ。「虚礼廃止しよう」ってことで、みんなで一斉にやめました。

――趣味に使う金額としては結構高額だと思うのですが、ご家族や職場の人からツッコまれたりしませんか?

しんいちさん それこそお土産を買う羽目になるので、僕は家族にも職場にも何も言わずに遠征へ行ってます(笑)。

カナコさん 私は家族にも職場の人にも恵まれていて、夫と一緒にソウルのコンサートに行ったこともあります。オタクなことを周囲に隠さないほうが、協力してもらいやすいですし、楽だと思いますよ。

しんいちさん 正直、周りが海外遠征するオタクばっかりなので、何かツッコまれること自体がないかも。もし「海外まで行く必要ある?」とか言われても、それはその人の価値観なので「僕は行くけどね~」で終わりです(笑)。

カナコさん K-POPファンからしたら、せっかく海外の人を好きになったのに、その人を取り巻く環境や文化を直接体験しに行きたいと思わないほうが不思議。もちろん、事情があって海外遠征に行けない友人もいますけど、K-POPファンで海外遠征に否定的な人が少ないからか、仲間内で「あの人変だよね」みたいな空気になることもないですよ。

――「わざわざ海外まで行ってよかった!」と感じるのは、どんなときですか?

カナコさん K-POPアイドルは日本での活躍も増えてますけど、日本のイベントと韓国のイベントは、やっぱり性質が違いますね。グループにもよりますが、日本のイベントは、あくまでも“日本のファン向け”。コンサートはもちろん、サイン会とかハイタッチ会みたいなイベントは日本にもありますが、韓国でやるイベントはもっと密というか……充実度が違います。韓国のサイン会だと推しと話せる時間も長いですし、プレゼントが手渡しできたりと距離が近いんです。

 あと、韓国内でのイベントに日本人がいると、やっぱり「わざわざ来てくれてありがとう」って言ってくれるんです。熱心に追っかけていると、「今日、あなたのことを見てましたよ」って推しに言ってもらえることもあります。そういうのはうれしいですよね、やっぱり。

しんいちさん 僕の場合、食事が楽しみですね。サッカー観戦に行くときって“弾丸ツアー”になる場合もあって、普通の旅より全然時間がないし、あんまり観光もできないんです。でも、遠征で来ている仲間と合流して、「一緒にごはん食べよう~!」ってなるのは、すごく楽しい。

――海外なのに、「行けば誰かいる」っていうのは驚きます。

しんいちさん でも、そうやって周りがみんな行ってるから、海外遠征へのハードルが下がっているっていうのもあるのかな。僕なんか、ほかの人に比べたら全然行ってないほうですよ。「AFCチャンピオンズリーグ」で全試合行っている友達とか、ザラにいます。“上には上がいる”ってやつです(笑)。いろんな意味で、世界は広いですよね。

※後編へ続く

K-POPとアラビック音楽が面白い15曲! B.I.Gは「アラビア語バージョン」で人気拡大中

――毎月リリースされるK-POPの楽曲。それらを楽しみ尽くす“視点”を、さまざまなジャンルのDJを経て現在はK-POPのクラブイベントを主宰するe_e_li_c_a氏がレクチャー。10月にリリースされた曲から[いま聞くべき曲]を紹介します!

今月の1曲‖비아이지 (B.I.G) – ILLUSION

 GH Entertainment所属5人(6人?)グループ、B.I.Gのアラビック調の新曲です。メンバーの2人がアイドル再起プロジェクト番組『The Unit』への出演経験があり、これから日本で始まるアイドル発掘プロジェクト「G-EGG」にも再度出演予定とのことです。今回のリリースはシングルなのですが、同時にアラビア語バージョンも収録されており、なんとMVも別であります。

 そして驚くことにアラビア語バージョンの再生数が韓国語バージョンの倍近いことになっています。今までは日本語や英語、中国語、スペイン語バージョンの楽曲を用意するアイドルはたくさんいましたが、アラビア語バージョンをリリースしているのは彼らだけではないでしょうか。

 2019年年始に、彼らがラジオ番組「KBS World Radio Arabic」でアラビア語の楽曲をカバーし、アラブ圏での反応が良かったため定期的にアラビア語のカバー曲や自分たちの既存曲のアラビア語バージョンをリリースし、地道に活動し続けた結果、大統領官邸で開催されたサウジアラビア皇太子の訪韓公式昼食会にゲストとして呼ばれた唯一のアイドルグループとなりました。

 16年にUAEのアブダビにて『KCON』が開催されたものの、それ以降中東圏でのK-Popグループの公演は少なく、18年にドバイで『SMTOWN』、今年の7月にはSuper Junior、Stray Kidsがジェッダで、10月にはBTSが首都リヤドで公演を行い、B.I.Gも11月にアブダビにて単独公演・ファンミーティングを行いました。今年の9月末に、サウジアラビアへの観光目的でのビザ発給が解禁されたこともあり、中東圏も段々といろいろな面で開けてきたことを感じます。

 と、いうことで今月はいつもよりもぐっと幅を広げ中近東圏の音楽について解説したいと思いますが、語り始めたら到底足りないので基礎的で一般的な所をかいつまんで説明します。

中近東圏の独特の音階・リズムとは?

 まずは音階についてです。いま私たちが普段耳にしている一般的なポップスなどは、基本的に西洋音楽の枠の中で考えられたもので、全音階というド~シの1オクターブをピアノの鍵盤でいう12音階に分けて、ドから始めると長音階(メジャースケール)、ラから始めると短音階(マイナースケール)、そこからハ長調(C Major)、イ短調(A Minor)というような表し方をしています。

 一方で中東圏には「マカーム」という音階があり、アラブのマカーム、トルコのマカームというように地域によって複数存在していて、その種類は150、組み合わせで無数にあるとも言われています。例えば「マカーム・ヒジャーズカル」はドレ♭ミファソラ♭シの7音階、「マカーム・ナワサル」はドレミ♭ファ♯ソラ♭シの7音階です。マカームはシルクロードを越え、ウイグルでも「ムカーム」と呼ばれ、西はモロッコから東はウイグルまでがイスラーム文化圏の音楽システムを使っています。

 日本でもヨナ抜き音階や琉球音階という音階があるように、ヨナ抜き長音階であればドレミソラの5音、琉球音階はドレミファソシの6音と言われており、どれも実際に聞いてみると感覚でそれっぽいというのがわかると思うので、YouTubeなどで検索して実際に音を聞いてみて下さい。

 一方でリズムは「イーカー(iqa‘またはiqa‘at)」と総称されるさまざまなリズムパターンを使います。こちらもアユーブ、マクスーム、マルフールといったさまざまパターンがあります。またアラビア圏の音楽をアラビア音楽たらしめているのは、以上のマカームやイーカーを奏でる楽器が占める部分も大きく、西洋、アジア圏で使用する楽器の元になったものも多く、音色を聞くだけでアラビア音楽っぽいなというのが感覚でわかってもらえると思います。例えば「ウード」はリュートの元になった木製の撥弦楽器で、「ハンマーダルシマー」や「カーヌーン」、「サントゥール」はピアノの前身と言われています。マカームやイーカーについてはこのサイトが実際に音で聞けてとても参考になるので、英語ですが興味のある方は見てみて下さい。

関連曲:ポピュラー音楽に移行した中近東楽曲

 では、ここでB.I.GがKBS World Arabicで歌ったエジプトのAbuというミュージシャンの「3Daqat」という曲を聞いてみましょう。クラシックでわかりやすいものを選んだつもりですが、この曲はメロディはもちろんのこと、ドラムのダルブッカの音色、リズムがアラビアを感じさせる要素が強いと思います。

 歌謡に焦点をあてると、レコード産業が始まってからはエジプトが中心にアラビア圏を引っ張っていましたが、伝統音楽からポピュラー音楽へ移行するにつれレバノンがリードするようになります。またこれらエジプト、レバノンなどのポップスのことを「シャアビ(Chaabi,Shaabi)」と言い、それ以外にも発祥の場所などによって「ハリージ(Khaleegy)」「シャバービ(Shabbabi)」「アルジール(Al Jeel)」「ライ(Rai)」など細かいジャンルがあります。

 また、現在の中近東の広いエリアをオスマン帝国が支配していた時代、 セルビア人の軍楽隊が休憩時間に民謡を演奏していたものが、トルコの軍楽隊や移動民族“ロマ民族”のジプシー・ ミュージックと融合し「バルカンミュージック」となっていきます。 バルカンミュージックはそれ一括りがジャンルというよりは、変拍子にトランペットなどの管楽器やアコーディオンを使うことが特徴で、現代ではポップスやロック、 ハウスなどさまざまなジャンルに取り入れられています。
■SANDRA AFRIKA ft. COSTI - Devojka tvog druga

 近年は欧米圏のポップスのテイストも取り込み楽曲が欧米的になりつつも、マカームや使われる楽器の特殊さから西洋音楽とは聞いてすぐに違いがわかるような楽曲が多く、スラム教だと女性は肌を隠さなければならないのが一般的ですが、 政教分離の進んだトルコでは欧米圏におけるポップスのMVと見間違えるほど肌の露出が多いものもあります。この4人組女性グループのMVは色使いなどからDestiny' s Childの「Say My Name」を感じさせる作りです。
■Hepsi - Yalan

 B.I.GがカバーしたSaad Lamjarredというモロッコのポップシンガーの「LM3ALLEM」は15年リリースの楽曲で、使われている音色はクラブミュージックと変わりません。

 それでは、K-Popのアラビック要素のある楽曲をいくつか紹介したいと思います。

■티아라(T-ARA) - 하늘땅 별땅

 0:20~入るシンセ、Aメロの後ろで鳴っているシンセもアラビックです。

■f(x) (에프엑스) - 지그재그 (Zig Zag)
サビの上ネタがアラビックです。

■디홀릭 (D.Holic) - 쫄깃쫄깃 (Chewy)

イントロ部分で鳴っているホーンがアラビックです。少しバルカニックっぽくも聞こえます。

■Nop.K - Queen Cobra (Feat. Don Mills)

これは曲全体が完全にバルカニックです。

■UP10TION(업텐션) - Catch me!(여기여기 붙어라)

イントロ、ラップの入る0:51~のトラックの上ネタがアラビックです。

■4MINUTE(포미닛) - Canvas

サビの上ネタがアラビックです。

■OH MY GIRL(오마이걸) - WINDY DAY

サビ後のインストの部分がバルカニック(特にロマ、ジプシーミュージック)です。

■마마무(MAMAMOO) - 아재개그(AZE GAG)

2:23~、3:51~の間奏がアラビックです。

■이달의 소녀/최리 (LOONA/Choerry) - Love Cherry Motion

サビ後の1:28~、2:45~がバルカニックです。

■리얼걸프로젝트(Real Girls Project) - 핑퐁게임(PINGPONG GAME)

サビの直前0:48~、1:39~のそれぞれ4小節がアラビックです。

■EXO (엑소) - 다이아몬드 (Diamond)
トラックの音だけがアラビックなものが多かったですがこの曲はボーカルもトラックも楽器も全てがアラビックです。

■PENTAGON (펜타곤) - 재밌겠다 (Rap unit)
1:39~の上ネタ、2:30~のサビの上ネタがアラビックです。彼らのデビュー曲Gorillaもバルカニックですね。

■DIA(다이아) - WOOWA(우와)

1:49~の上ネタがアラビックです。

■에이스 (A.C.E) - Do It Like Me

EXOのDiamonと同じくボーカルもトラックもアラビックです。

■AleXa (알렉사) - Bomb

1:39~のサビのシンセがアラビック、特にエレクトロ・シャアビ(Electro Chaabi)。先述のシャアビ(Chaabi)から発展したエレクトロミュージックで、マハラガーン(Mahraganat)とも言います。

<落選したけど……紹介したい1曲>
今月どうしてもどうしても1曲に絞れず……。あまりしゃべらないので2曲紹介させてください。
■PENOMECO (페노메코) X ELO (엘로) LOVE? Feat. GRAY(그레이)

気持ち良さでいうとこちらのが少し上……

■GOT7(갓세븐) - Thursday

多幸感で言うとこちらのが上……GOT7がこういうのをやり続ける限りJYPの犬はついて行きます。

<近況>
Stray Kidsを見にソウルに行き、嗚咽するほど泣きました。この記事が出る頃にはまた代々木第一体育館で彼らを見ているでしょう。
12/13(金)18:00~秋葉原mograにて久しぶりのLiarLiarを開催します。もしかしたら入場規制がかかるかもしれませんが良かったらどうぞ。

e_e_li_c_a
1987年生まれ。18歳からDJを始めヒップホップ、ソウル、 ファンク、ジャズ、中東音楽、 タイポップスなどさまざまなジャンルを経て現在K-POPをかけるクラブイベント「Todak Todak」を主催。楽曲的な面白さとアイドルとしての魅力の双方からK-POPを紹介して人気を集める。

Twitter @e_e_li_c_a TodakTodak 
mixcloud eelica

元KARA・ハラ死去……自殺者相次ぐ韓国芸能界とネット社会の闇

 日本でも一世を風靡したK-POPアイドルグループKARAの元メンバー、ク・ハラ24日、ソウル市内の自宅で死亡しているのが見つかった。死因については現在警察が調査中だというが、自殺とみられている。

 ハラは元交際相手からDVやリベンジポルノを流布させると脅迫を受けていたのにもかかわらず、ネット上では逆に誹謗中傷され、今年5月にも自殺未遂を図っていた。その後、日本の大手事務所と契約し、日本で再出発を図るもその矢先、10月14日に親友で元f(X)のソルリが自殺。大きなショックを受けていたことから、ハラのメンタルを心配する声が上がっていた。

 当サイトでも何度か報じている通り、韓国で芸能人の自殺が相次ぐ背景には、ネット上での苛烈なバッシングや誹謗中傷があるといわれる。そこで今回は、韓国芸能界とネット社会の闇についてあらためて振り返りたい。

***

AIが関与!? 韓国の“ネット性暴力”とPV至上主義がもたらした元f(X)のソルリの死
ソルリを自殺に追い込んだ、ネット上の性暴力と、それを面白おかしく書き立てるメディア。彼女を守るメディアはほぼ皆無だったという。

女性嫌悪もすごいが男性嫌悪もすごい!? 芸能人を追い込み遺族を愚弄する「韓国ネット民の闇」
事務所もうかつに手出しできず……時に芸能人を自殺にまで追い込む、韓国ネットコミュニティの影響力とは?

SHINee・ジョンヒョンの遺書“全文公開→削除”の朝日新聞だけじゃない!? 日韓「自殺報道」の違いとは
2017年12月、男性アイドルグループSHINee・ジョンヒョンが自殺。朝日新聞では遺書を全文公開したが、「自殺を誘発する可能性がある」などと物議を醸し、その後、削除した。韓国で芸能人の死が日本以上にデリケートに扱われる背景とは?

ついに自殺者も……韓国芸能界“#MeToo”運動、盛り上がりの裏にある「性上納」「セクハラ」の横行
2018年に世界的な盛り上がりを見せた「#MeToo」運動。韓国ではベテラン俳優にセクハラ疑惑が持ち上がり、世間の猛バッシングを受けた結果、自殺。死後もネット上での中傷は続いた。

アイドルの卵に枕営業を強要! 芸能事務所社長による性的暴行が横行する、韓国芸能界の闇
2016年に起きた、韓国の芸能事務所社長が、デビュー前のアイドルの卵に枕営業を強要し、逮捕された事件。韓国芸能界では、今も「性上納」がはびこっているという。

AIが関与!?する韓国の“ネット性暴力”とPV至上主義がもたらした元f(X)のソルリの死

 今年10月中旬、韓国で人気の女性アイドルグループf(X)の元メンバー・ソルリが、自宅で死亡しているのがみつかった。自殺だった。

 ソルリを自殺に追いこんだのはインターネット上の悪質な書き込み(韓国語で「アクプル」)だったと、多くの韓国メディアが分析している。それらはまるで鬼の首を取ったかのような書きぶりである。

 しかし、どの国においても、インターネット上に悪質な書き込みは氾濫している。「アクプルがソルリを苦しめ自殺に追い込んだ」という表面的な認識は、問題の本質を隠ぺいするものでしかない。メディアに自身を露出し続ける日々のなかで、彼女を常に苦しめてきたもの正体はほかならぬ「性暴力」だったのではないだろうか。

 11歳の頃にデビューしたソルリは、思春期から大人の女性に成長する過程において、メディアや世間から、プライベートや自身の考えを罵倒され続ける人生を歩んできた。特に彼女が、女性である自分の権利を主張した際には“攻撃”がエスカレートした。

 一回り年上のヒップホップ歌手との交際が発覚した時、また自身のアカウントで「ノーブラ」に見える姿で動画配信を行った時など、SNSのコメント欄には罵詈雑言や“性的虐待”のような書き込みが殺到した。

 韓国で堕胎を違法とする堕胎罪に違憲判決が下った時、ソルリが賛意を表明すると批判や罵倒が燃え上がったこともある。いずれも共通点は、彼女が「性」について自由や権利、意見を主張した時である。

 韓国メディアは、ソルリに対して向けられるインターネット上の性暴力に対して警鐘を鳴らすどころか、おもしろおかしく書き立て続けた。彼女が自殺した後、まるで正義の使者のように振る舞っている韓国メディアだが、彼女が苦しんでいる時にはひたすら悪意に火に油を注いできたのも彼らである。韓国では、そのようなメディアの商売手法を「コメント商売」、もしくは「女嫌商売」という。明らかな性暴力があったのにもかかわらず、彼女を守るメディアはほぼ皆無だったのだ。業界内部からはこんな声も聞こえてくる。

「“女嫌”を始めとする嫌悪感を増幅するニュースは、クリック数が増えるのでメディアの食い扶持となっている。また、韓国メディアはNAVERという大手ポータルに依存する傾向が強いのだが、そのNAVERは人でなくAIがニュースを選抜している。嫌悪感を増幅するニュースは人気が高いので、それをAIが検索で引き上げPVがさらに増えるという悪循環がある。韓国の記者の中では『AI様に向けて記事を書こう』など皮肉が酒の肴になって久しい」(韓国紙記者)

 公権力や政治、さらには女性の平等を唱える人々も、進歩派を自称する人々もソルリの問題を無視し続けた。驚いたことに「彼女は芸能人だから特別だ」として、誰も手を差し伸べてなかったのだ。芸能人と「アクプル」をテーマとし、ソルリが最後まで出演を続けたTV番組『アクプルの夜』も、結果的に彼女を守ることはなかった。彼女に対するアクプルに直接目を向け、ドキュメンタリーでも作った方が何倍もリアリティがあったのではないだろうか。

 ソルリはこの世を去ったが、韓国で「次のソルリ」が生まれるのも時間の問題かもしれない。実際、元ボーイフレンドからリベンジポルノを流布させると脅迫を受けたのにもかかわらず、むしろ非難中傷され自殺を図ったク・ハラの事件から韓国社会は何を学んでいいない。性被害や暴力を経験した女性芸能人たちは、ネット上の書き込みや誹謗中傷で2次、 3次的に被害を今でも受け続けている。

AIが関与!?する韓国の“ネット性暴力”とPV至上主義がもたらした元f(X)のソルリの死

 今年10月中旬、韓国で人気の女性アイドルグループf(X)の元メンバー・ソルリが、自宅で死亡しているのがみつかった。自殺だった。

 ソルリを自殺に追いこんだのはインターネット上の悪質な書き込み(韓国語で「アクプル」)だったと、多くの韓国メディアが分析している。それらはまるで鬼の首を取ったかのような書きぶりである。

 しかし、どの国においても、インターネット上に悪質な書き込みは氾濫している。「アクプルがソルリを苦しめ自殺に追い込んだ」という表面的な認識は、問題の本質を隠ぺいするものでしかない。メディアに自身を露出し続ける日々のなかで、彼女を常に苦しめてきたもの正体はほかならぬ「性暴力」だったのではないだろうか。

 11歳の頃にデビューしたソルリは、思春期から大人の女性に成長する過程において、メディアや世間から、プライベートや自身の考えを罵倒され続ける人生を歩んできた。特に彼女が、女性である自分の権利を主張した際には“攻撃”がエスカレートした。

 一回り年上のヒップホップ歌手との交際が発覚した時、また自身のアカウントで「ノーブラ」に見える姿で動画配信を行った時など、SNSのコメント欄には罵詈雑言や“性的虐待”のような書き込みが殺到した。

 韓国で堕胎を違法とする堕胎罪に違憲判決が下った時、ソルリが賛意を表明すると批判や罵倒が燃え上がったこともある。いずれも共通点は、彼女が「性」について自由や権利、意見を主張した時である。

 韓国メディアは、ソルリに対して向けられるインターネット上の性暴力に対して警鐘を鳴らすどころか、おもしろおかしく書き立て続けた。彼女が自殺した後、まるで正義の使者のように振る舞っている韓国メディアだが、彼女が苦しんでいる時にはひたすら悪意に火に油を注いできたのも彼らである。韓国では、そのようなメディアの商売手法を「コメント商売」、もしくは「女嫌商売」という。明らかな性暴力があったのにもかかわらず、彼女を守るメディアはほぼ皆無だったのだ。業界内部からはこんな声も聞こえてくる。

「“女嫌”を始めとする嫌悪感を増幅するニュースは、クリック数が増えるのでメディアの食い扶持となっている。また、韓国メディアはNAVERという大手ポータルに依存する傾向が強いのだが、そのNAVERは人でなくAIがニュースを選抜している。嫌悪感を増幅するニュースは人気が高いので、それをAIが検索で引き上げPVがさらに増えるという悪循環がある。韓国の記者の中では『AI様に向けて記事を書こう』など皮肉が酒の肴になって久しい」(韓国紙記者)

 公権力や政治、さらには女性の平等を唱える人々も、進歩派を自称する人々もソルリの問題を無視し続けた。驚いたことに「彼女は芸能人だから特別だ」として、誰も手を差し伸べてなかったのだ。芸能人と「アクプル」をテーマとし、ソルリが最後まで出演を続けたTV番組『アクプルの夜』も、結果的に彼女を守ることはなかった。彼女に対するアクプルに直接目を向け、ドキュメンタリーでも作った方が何倍もリアリティがあったのではないだろうか。

 ソルリはこの世を去ったが、韓国で「次のソルリ」が生まれるのも時間の問題かもしれない。実際、元ボーイフレンドからリベンジポルノを流布させると脅迫を受けたのにもかかわらず、むしろ非難中傷され自殺を図ったク・ハラの事件から韓国社会は何を学んでいいない。性被害や暴力を経験した女性芸能人たちは、ネット上の書き込みや誹謗中傷で2次、 3次的に被害を今でも受け続けている。

SHINee・EXO・NCTの「SuperM」は楽曲もスゴい! K-POPの「Juke」に驚嘆のワケ

――毎月リリースされるK-POPの楽曲。それらを楽しみ尽くす“視点”を、さまざまなジャンルのDJを経て現在はK-POPのクラブイベントを主宰するe_e_li_c_a氏がレクチャー。10月にリリースされた曲から[いま聞くべき曲]を紹介します!

今月の1曲‖SuperM - I Can't Stand The Rain

 SHINeeのテミン、EXOのベッキョン、カイ、NCTのテヨン、テン、ルーカスからなるアベンジャーズ(?)グループ・SuperMのアルバム曲「I Can't Stand The Rain」です。SuperMの結成が発表された時から、グループの存在に賛否両論が飛び交い、リリース後にBillboardの8つのチャートで1位を獲ってもなお、プロモーションの仕方やチャートの妥当性などが毎日議論に挙げられている状態です。

 売り出し方やアメリカでの人気の是非などについては、いろいろな人が論じていますが、あまり音楽的な面で説明されているものを見ないのと、最近のSMからリリースされる楽曲にあまりピンと来ていなかった私が、久しぶりに面白いアルバムだなと思ったので今回は2曲目の「I Can't Stand The Rain」を紹介したいと思います。

 アルバム全曲、さまざまなジャンルを取り込んだ楽曲になっており、JoppingはTechno、2 Fastは2stepと説明し出したらキリがないのですが、「I Can't Stand The Rain」で特筆する部分はサビの「너 없이 난 아무것도 할 수 없어(の おぷし なん あむごっと はるす おぷそ)~I can't stand the rain」の部分です。ここのドラムの打ち方が「Juke」というジャンルで、この曲を聞いた時にびっくりしました。今回は、Jukeというジャンルについて紹介したいと思います。

関連曲‖Jukeのルーツを知る

 Jukeを語るにあたってルーツのChicago Houseの説明をする必要があるのですが、源流を辿るとそのジャンル名にもあるようにHouseに辿り着き、先月取り上げた2stepともルーツは同じであることがわかると思います。

 先月の記事通り、HouseはFrankie KnucklesがシカゴにあるWare Houseでかけた楽曲を「House Music」と呼ぶところから来ています。当初はディスコやサルソウルなどのフィリーソウルをプレイしていたので、NYのParadise Garageでかかる「Garage」とあまり違いはなかったのかもしれませんが、ドラムマシンやシンセサイザーを多用したエレクトロニックなトラックがHouseの特徴で、House musicの最初のヒット曲、1985年リリースのシカゴ出身J.M. Silkの作ったこの曲を聞くと何となくはわかるかもしれません。

■J.M. Silk - Music Is The Key

 先程の曲は現代で一般的に言う「House」というイメージからは少し離れているかもしれませんが、86年にリリースされたこの曲はなんとなくイメージと近くなるかと思います。

■STEVE "SILK" HURLEY - Jack Your Body

 この曲はシカゴで作られたChicago Houseですが、UKのシングルチャートで1位を獲得し世界的にHouseというジャンルの名前が知られていきます。Houseは制作のために使われるドラムマシンやシンセサイザーなどの機材が当時格安で出回っていたこともあり、DiscoやSoulのように沢山の楽器でセッションをして曲を作るという過程がなくても曲が作れることからたくさんの楽曲が作られ、そこからAcid House・Deep Houseなどのサブジャンル、Detroit Technoなどに派生していきます。

 その後Chicago HouseはHiphopをルーツにするBass Music「Miami Bass」と混ざり合い、1990年代前半頃、粗くてダーティな質感の「Ghetto House」というジャンルが生まれます。

 Miami Bassは、昨今よく使う「Bass Music」という大きな括りのクラブミュージックを表す語源となったジャンルで、ジャンル名に入っている通り発祥はアメリカのマイアミです。と言っても、代表的なアーティスト2 Live Crewは南カリフォルニア出身で、週末の度にマイアミに行ってライブをしていたそうですが、彼らが完全にマイアミに拠点を移しMiami Bass DJ’sというクルーを立ち上げたのがジャンル名の元となっています。マイアミのクラブでは、さまざまなジャンルの楽曲が低音重視でプレイされていたことや、2 Live Crewが踊りやすいようにビートを強調したトラックをRolandのTR-808というドラムマシンで作ったことなどもあり、低音が強調されたTR-808のドラムが入った楽曲がMiami Bassの特徴と言えるでしょう。また、とにかく下品な歌詞やジャケット、既存の曲や歌詞を無断で借用したり、何でもアリな風潮も特徴です。2 Live Crew以前の世界的に名前が知られたMiami Bassと言われた、TR-808のドラム音がわかりやすいMC ADEの楽曲と2 Live Crewの代表曲を紹介します。

■MC ADE - Bass Rock Express

■2 Live Crew - Me So Horny

 「Ghetto House」はBooty Houseとも言い、1992年頃に先述のMiami BassとChicago Houseが影響しあって誕生したジャンルです。「Ghetto」というアフリカン・アメリカンのスラングで貧困地域(転じて治安の悪いエリア)を表す単語が入っているように、Gangsta RapやMiami Bassなどの影響などもありHouse Musicに過激な歌詞が入った曲が登場するようになり、そのおかげでゲットーの男性たちがHouse Musicを聴いてもダサくないというような風潮になっていきます。

 この曲は耳で拾えるだけでも、かなり過激な歌詞がたくさん入っていることがわかると思います。

■DJ Funk - There's Some Hoes in This House

 Dance Maniaというレーベルが中心となりDJ Funk, DJ Deeon, Traxmen, DJ Milton, DJ Slugoなどがたくさんの曲をリリースしていくなか、94年リリースのこの曲で初めて「Ghetto House」というフレーズが出てきたそうです。どのジャンルもそうですが、黎明期から音楽ジャンルの名前が付いていることは少なく、ある程度時がたってから「あのムーブメントを括って、こういうジャンルと呼ぼう」となることが多いと感じます。

■DJ Funk - Follow(Getto House Mix)

 Dance Maniaの看板アーティストとして君臨したDJ Slugoが、後のインタビューで「Ghetto Houseはビッチのために作っていた。クラブで女とエロいダンスをするための音楽だ」と語っていたことからも、GhettoやBooty(お尻)などのキーワードがジャンル名に入るのも頷けます。

 90年代前半にGhetto Houseはフットワークと呼ばれる、足を高速で動かすダンスと共に発展し、その盛り上がりからGhetto HouseのBPMもどんどん速くなり、2000年頃になるとChicago JukeやJuke Houseという名前で「Juke」というジャンルが確立し、さらにそこからJukeのキックドラムがなくなり、「Footwork」という音楽ジャンルとして派生していきます。

 ダンスとしてのフットワークは見てもらうのが一番早いと思いますが、曲もFootworkという音楽ジャンルで有名なプロデューサーのものをたくさん使っており、感覚的にわかりやすいと思います。

 Jukeの特徴はリズムとダンス。BPM80、120、160を行き来します。一般的なHouse Musicなどは、120~130ぐらいで、1分間に120回首を振れると言ったらわかりやすいでしょうか。

 クラブミュージックのジャンルは、大体このぐらいのBPMとジャンルでざっくり決まっていることが多い中、Jukeは一定していません。というのも、ドラムがトラックのメインになっており、ハイハット・キック・スネア――どれを全面に出すか、どういう刻み方をするかで、人によって拍の取れ方が変わってくることも多いです。そこが逆にリズムに乗りづらく、ジャンルとして掴みづらい、難解という印象になることもわからなくもないです。

 こちらはダンスバトルの動画ですが、RP BooとTraxmanがDJをしていて、いろいろなJukeの曲が聴けます。なんとなくJukeに対してのイメージが掴めるかと思います。

 日本でもBooty Tuneなどのレーベルが、クラブシーンで活発にJuke/Footworkを広め、Traxmanのアルバムリリースに合わせて作られたドキュメンタリーもあるので興味がある方は見てみて下さい。

 2013年にはNHK BSでEXILEのTETSUYAが本場シカゴに乗り込み、Footworkバトルをするという番組も放送され、ダンスシーンでも注目されていきます。

関連曲‖K-PopにおけるJuke曲

 ビートが主体なこともあり、ポップスに取り入れるのは難しいため関連曲は少ないですが、最後に日本のシーンとK-PopでJukeを取り入れた楽曲を紹介します。

■Boogie Mann running through with Tavito Nanao - Future Running

■EVERGLOW - Bon Bon Chocolat

この曲は連載を始めた一番最初の5月の記事でも取り挙げましたが、ほんの一瞬、最後の3:33あたりにJukeのビートが聞こえます。

<落選したけど……紹介したい1曲>
■TWICE - Fake & True

先月メインで取り上げたTwiceですが、日本の楽曲が前作の「Breakthrough」あたりから、「日本語楽曲はダサい」という今までの固定概念は何だったのか、というほど正解を叩き出しており、韓国での楽曲も含め独走しています。

<近況>
私が熱を上げて追っている(いた)グループのメンバーがどんどん脱退していくんですがどういうことでしょうか…。ラウンちゃん…ファルくん…ミンくん…ウジニヒョン…みんなどこに行ったの…

e_e_li_c_a
1987年生まれ。18歳からDJを始めヒップホップ、ソウル、 ファンク、ジャズ、中東音楽、 タイポップスなどさまざまなジャンルを経て現在K-POPをかけるクラブイベント「Todak Todak」を主催。楽曲的な面白さとアイドルとしての魅力の双方からK-POPを紹介して人気を集める。

Twitter @e_e_li_c_a TodakTodak 
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