「GINGER」(幻冬舎)12月号を購入するために、書店の女性誌コーナーに足を運んだのですが、カバーガールの桐谷美玲の圧に思わず怯んでしまいました。というのも、美玲が普段とはまったく違うスタイルに仕上がっていたからです。月9『好きな人がいること』(フジテレビ系)や映画『ヒロイン失格』などの胸キュンラブストーリーで見せた、ちょっとドジで隙のある“愛され美玲”や、『NEWS ZERO』(日本テレビ系)での清楚で好感度の高い“女子アナ風・美玲”からは想像できないダークカラーに身を包み、ガッツリアイラインの強めメイク。今にも「舐めんなよ!」とガンを飛ばしてきそうです。
表紙タイトルの上にある「Spark GINGER」という唐突なロゴは、「GINGER」のウェブサイトの名称だそうですが、まさに“スパーク”な仕上がりの美玲を見て、筆者は勝手に、この「舐めんなよ!」とスパークする気合こそ「GINGER」の精神なのだと理解。そんな強気な中身を早速チェックしていきましょう~。
<トピックス>
◎今月は3万円でおしゃれする!
◎クリスマス・ティーパーティーへ、ようこそ。
◎今月のGINGERさん
■「3万円」の使い方に賭けるセンスとプライド
「アラサー女子の“リアルおしゃれ”大調査」「月刊30歳美容委員会」「今月のアラサー女子に効く!映画」などなど、全編に渡り「アラサー」を自称している「GINGER」。ただ、そこに過剰な自虐や、逆に開き直った「30歳女子(はぁと)」といった自意識は感じられません。年齢はただの数字であり、「それ以上でも以下でもない」と捉えているのでしょうか。
それはファッションについてもいえるようで、「GINGER」には、夢見がちなストーリーとともに展開される“着回し企画”が一切ありません。「同じプロジェクトの先輩とうっかり恋仲になった」「学生時代から付き合っている彼氏に、サプライズなプロポーズをされた」などの、恋愛とファッションを絡ませる演出はゼロ! その代わり、「全身3万円コーデを楽しむ!実践アイデア集」「UNDER¥30,000で探す『着回せる旬服』1点買い」「おしゃれ業界人の『今月は3万円で何を買う?』」など、実用的で無難なファッションページが淡々と続きます。
表紙のスパーク魂はどこにいったんや!? と思いきや、よくよくキャッチを読んでみると「“普通の人”印象に終わらないほんの少しのエッジが必要」「チラ見せインナーでセンスに差をつける」「1点投入で脱・コンサバ。こなれ感が上がる!」といった文言が並び、「GINGER」女子たちのファッションに対する微かなプライドが垣間見えました。働く女子の間では、“THE無難”なファッションブランドとして知られる「NATURAL BEAUTY BASIC」の服が一着も紹介されていないことも、「GINGER」が「無難に見えて、実は無難じゃない」女を目指していることの裏付けになるのではないでしょうか。
そんな「GINGER」の街角スナップショットに登場する女性たちの職業は、事務OLや受付嬢といった一般職ではなく、営業、マスコミ、商社、IT、デザイナー……などがメイン。そこからも、“私は自分にしかできない仕事をして自立している”と誇りを持つ「GINGER」女子像が浮かび上がってきます。
そんな彼女たちは、社内恋愛を狙って、ゆるふわ愛されファッションをする必要も、ハイスペ彼氏の自慢の彼女でいるために、女子アナ風コンサバファッションをする必要もないのかもしれません。だからと言って、個性を押し出すモード系やハイブランドに走るわけではなく、社会性を保ちつつ、適度に流行を取り入れるというスタンスからは、やはり「(職場でもプライベートでも)舐められたくない!」という気概を感じます。
しかし、そのバランス感覚は、自然と身につくものではないようで、当初「3万円」という値段の縛りしかなかったはずのファッション特集には、「堅苦しすぎるのも、地味すぎるのもNG!」「得意アイテムが確定したら色違い買いをしてもOK!」「複雑なレイヤードは不要。小物で色柄をON」など細かなルールがビッシリ! まさにリアルファッションの参考書。読者には、「舐められたくない」というただ一点のために、堅実な努力を重ねている真面目女子が多いのかもしれません。スパークするのも、そんなに簡単ではないようですね……。
■恋愛に夢を見ない超現実主義
もう1つ気になったことは、「GINGER」には男の影が一切ないこと。普通、アラサー女性誌の12月号といえば、クリスマス一色のロマンティック浮かれモードな特集ばかりで、彼に買ってもらいたいおねだりアクセサリー企画のほか、プロポーズを期待してなのか、真冬なのにウェディング特集が多いのも特徴です。そうでなくても、自分へのご褒美として、クリスマス限定のコフレセット特集やスイーツ特集などが組まれたり、とにかく誌面が「キラキラ」「女子力全開!」な作りになっているもの。
しかし、「GINGER」姐さんときたら、クリスマスという単語が出てきたのはウェッジウッドと女優の比嘉愛未(ナゼその組み合わせ……)のタイアップ記事「クリスマス・ティーパーティーへ、ようこそ。」、ニトリと脚本家・渡辺千穂(やっぱりナゼ……)のタイアップエッセイ「親友へのメリークリスマス」のみ。しかも、どちらも女友達とのホームパーティーの話で、『東京タラレバ娘』(講談社)の登場人物のようにグダグダと酒を飲みつるんでいるわけでもなく、キラキラ女子たちのようにシャンパン片手にリムジン女子会を開くでもなく、ノンアルコールのティーパーティーって!? さらに「私に贈るメリー・クリスマス」というアオリと共に紹介される自分用のプレゼントも、ブランドバッグやルブタンのハイヒールではなく、ウェッジ・ウッドのマグカップ(全柄セット)……。 堅実な「GINGER」女子たちはクリスマスだからって浮かれたり、心を乱されたりしないようです。
ちなみに誌面を通して登場した男性は、岩ちゃん(三代目J Soul Brothers・岩田剛典)のみ。おそらく、読者にとっては“愛でる対象”の男性なのでしょうが、それにしたって写真集の宣伝記事なわけで、潔いほど、恋愛に夢を見させない超現実主義な女性誌です。追い討ちをかけるように「今月のGINGERさん」として紹介されているのが、世界を股にかけてグローバルに働くシングルマザー……。確かに彼女の経歴や生き方は素晴らしいし、見習うべき部分もあるかもしれませんが、ちょっと極端すぎやしませんか!? 子どもや夫が登場しないことからも、独身アラサーがターゲットの雑誌であることは明白なんですが、「結婚」「恋愛」というワードはザッと見た限り見当たらず、ファッションページにかろうじて、「彼とのデート設定」のコーディネート写真が1枚だけ発見できました。ちなみに「モテ」というワードについては「モテライナーリキッド」の広告記事のみ!!
レギュラーエッセイ陣は、山田詠美と田中みな実という色恋沙汰を語らせるのにピッタリな2人にもかかわらず、それぞれ「岩井志麻子のヒョウ柄の話」と「一人でゴキブリを倒した話」をしていて……ねぇ! もっと話すことあったよね? 一体編集部はどんな依頼しているのか気になるばかりです。それとも、それが「GINGER」の正解なんでしょうか。
今のアラサー世代といえば、物心ついた頃から日本はずっと不景気で、世間を揺るがす事件や震災をリアルタイムで経験してきた世代です。もしかすると、超現実主義なのはそのせいもあるのかもしれませんが、もっと夢を見させてくれないと、ちっともスパークできないと思うのは私だけでしょうか。
(橘まり子)








