巨匠イーストウッド監督の異色作! "あの世"はあるか?『ヒア アフター』

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クリント・イーストウッド監督の最新作『ヒア アフター』。『インビクタス/負けざる者たち』に続いて、マット・デイモンを主演に起用している。
(C) 2010 WARNER BROS.ENTERTAINMENT INC.
 現在80歳ながら、『チェンジリング』(09)、『グラン・トリノ』(09)、『インビクタス/負けざる者たち』(10)と近年ますます傑作・快作を連打しまくっている"御大"クリント・イーストウッド監督。撮影はほぼ1テイクという早撮りで、恐ろしく完成度の高い作品を生み出す。もはや、人間業と思えぬ領域に達している。そんな"映画の生き神さま"であるイーストウッド監督の第31作目となる最新作が『ヒア アフター』。日本語に訳すと"あの世"。臨死体験を味わった女性ジャーナリスト、死者とチャネリングする能力を持つ男性、双子の兄の突然の死に戸惑う少年、3人のドラマが交錯する異色の人間ドラマだ。    フランスで人気ニュース番組に出演している女性キャスターのマリー(セシル・ドゥ・フランス)は、番組プロデューサーで恋人でもあるディディエと共に東南アジアのリゾート地でバカンスを楽しんでいたところ、大津波に襲われる。九死に一生を得たマリーだが、意識不明の状態の際に光に包まれた不思議なビジョンを目撃した。いわゆる"臨死体験"だ。しかし、現役のニュースキャスターが"死後の世界"を口にすることを、ディディエをはじめ良識あるマスコミ関係者たちは良しとしない。結局、番組を降ろされたマリーは独自に研究を進めることになる。  一方、サンフランシスコで暮らす独身男のジョージ(マット・デイモン)は、自分に死者と交流する能力があることに悩んでいた。ジョージの噂を聞きつけて、「亡くなった家族ともう一度話しがしたい」と押し掛けてくる人が絶えない。"あの世"の存在に、生きている自分の実人生が振り回されることにジョージはうんざり。気分転換のためにイタリア料理の講習会に通い始め、美女メラニー(ブライス・ダラス・ハワード)といいムードになる。
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ジョージ(マット・デイモン)は子どもの頃に
入院してから、人に触れるだけで、その人と"あ
の世"の繋がりが見えてしまう不思議な能力を
持つようになった。
 そしてロンドンでは、双子の兄が事故死したことで、マーカス少年は心を閉ざしていた。いつも一緒にいた片割れがさよならも言わずに消え去った喪失感、明るく賢い兄ではなく愚図な弟である自分が生き残ったという罪悪感に苦しむ。もう一度兄に逢いたい一心で、マーカスは世間で評判の霊媒師とコンタクトを取ろうとするが、満足なお金を持っていない子どもは相手にされない。霊媒師はお金儲け目的のインチキばかりなことをマーカスは思い知らされる。やがて、パリのマリー、サンフランシスコのジョージ、ロンドンのマーカスは、運命に引き寄せられるように1カ所に集うことに。  ワーナーによると、『ヒア アフター』は〈死〉に直面した3人が出会い、〈生きる〉喜びを見つける"感動のヒューマンドラマ"であり、死者と繋がることをメインテーマにしたSFやファンタジー作品ではないそうだ。確かに、本作は『クイーン』(06)、『ラストキング・オブ・スコットランド』(06)、『フロスト×ニクソン』(08)といった史実劇を手掛けたピーター・モーガンの脚本作で、彼の脚本を読んだスティーブン・スピルバーグが『父親たちの星条旗』(06)、『硫黄島からの手紙』(07)でコンビを組んだイーストウッドを監督に指名したもの。イーストウッド発案の企画ではない。とはいっても、人間の"生"を掘り下げて描くことを命題とする作家や表現者ならば、現代人の"死生観"とじっくり向き合うことは必然だろう。ましてや、俳優・監督として、数多くの死に様を映画の中で見送ってきたイーストウッドである。"あの世"の描写は必要最低限にとどめてあるが、イーストウッドが、"生"と"死"の関係をどのように捉えているのかが興味深い。
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ロンドンで暮らす双子のジェイソンとマーカス
(ジョージ&フランキー・ハワード)。母親が
アルコール依存症のため、お互いに支え合って
生きてきた。
 物語の序盤で、マリーが体験する"臨死体験"とは一体どのようなものなのだろうか。ノンフィクション作家の立花隆がドキュメンタリー番組『臨死体験』(91年、NHKスペシャル)の放送後に収録できなかった取材資料を交えて上梓した著書『臨死体験』(文藝春秋)では、"臨死体験"は酸欠状態に陥った脳が見る幻覚症状という可能性があることに触れつつも、単なる幻覚とは言い切れない不思議な体験の数々を世界中の人たちが語っている。同書に登場する国際臨死体験研究協会の会長ケネス・リングによると、臨死体験者の多くは安らぎに満ちた気持ち良さ、体外離脱、暗闇(トンネル)の中に入る、光を見る、光の世界に入る、人生回顧、何らかの超越的存在との出会い、死んだ親族や知人との出会い......などを体験するらしい。ただし、自殺の場合は光を見る、光の世界に入る、超越的存在と出会うといった経験がほとんどないともある。  "生"と"死"の関係を考えさせる作品が最近少なくない。3月5日(土)からシネマライズ渋谷ほかで公開されるタイ映画『ブンミおじさんの森』は、輪廻転生する男が前世を語る物語だ。現在公開中の二宮和也&松山ケンイチ主演の『GANTZ』は地下鉄事故で亡くなった主人公たちが条件付きで蘇生を果たし、"生"の重みを噛み締める。人間の脳内イメージを形にする映画という表現手段は、"ヒア アフター"の世界を描くのに適した媒体なのだろう。  地方の寂れた映画館に入り、暗闇の中に映写室から一条の光が差し込む様子を眺めていると、遠い親戚の法事にでも参加しているような気分になる。哀しい思い出よりも、年末にみんなで集まって賑やかにモチをついたり、宴会の席で故人が顔を真っ赤にしていたなどの楽しかった記憶が甦る。映画を見るという行為は、自分の記憶を呼び起こし、記憶の中の住人たちと再会するということ、そして現在の自分自身を見つめ直すということでもあるようだ。イーストウッド監督の『ヒア アフター』を見て、そんなことを考えた。 (文=長野辰次) hear-after04.jpg 『ヒア アフター』 監督・製作・音楽/クリント・イーストウッド 製作総指揮/スティーブン・スピルバーグ 出演/マット・デイモン、セシル・ドゥ・フランス、ブライス・ダラス・ハワード、ジョージ&フランキー・ハワード 配給/ワーナー・ブラザース映画 2月19日(土)より丸の内ピカデリーほか全国ロードショー <http://www.hereafter.jp>
ユリイカ2009年5月号 特集=クリント・イーストウッド 生きる伝説。 amazon_associate_logo.jpg
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キレ味、喉ごしが違うアクション! 黒帯美少女の"涙拳"が炸裂『KG』

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ノーワイヤーで宙を舞う"カラテガール"こと武田梨奈。
スカートを覗こうとするヤツは容赦しないぞ!(c)2011 東映ビデオ アマゾンラテルナ
 現役女子高生ながら空手の有段者という経歴を引っさげ、『ハイキック・ガール!』(09)で主演デビューを飾った武田梨奈。細身のボディから繰り出すキレのあるハイキック、スタントを一切使わない爽快感に満ちたガチンコファイトでアクション映画愛好家たちのハートの渇きをたちまち潤してみせた。志穂美悦子の引退以降、長きにわたって空位となっていた和製アクション女優の誕生だった。『ハイキック・ガール!』同様に全アクションシーンをノーワイヤー、ノーCG、ノースタントで撮影したのが、武田梨奈主演作第2弾『KG カラテガール』だ。前作以上の強敵や見せ場が用意されている。    1991年6月生まれの武田梨奈の特技はヌンチャク。ネイルアートや英検じゃなくて、履歴書の特技欄はヌンチャクですよ! 空手歴は10歳から。父親が空手の大会で負けるのを見て、「私がお父さんのカタキをとる」との決意を抱き、空手道場に入門。プリクラやお菓子作りじゃなくて、敵討ちに情熱を捧げた10代ですよ! 現在、琉球少林流空手道月心会二段という黒帯保持者。痺れるようなプロフィールの持ち主じゃないですか。08年に映画プロデューサーの西冬彦氏に見出され、『ハイキッグ・ガール!』に初主演。同作の劇場公開時には生イベント"きみ、蹴られたいの? イクよ! 武田梨奈さんに蹴られたい人、集まれ~!!"と称して、観客の中から希望者にハイキックをプレゼントするというデンジャラスなファンサービスを敢行している。もちろん、参加者にはキックミットを持たせていたわけだが、彼女のハイキックを実際に浴びたファンは心身ともにジンジンと痺れまくった。
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洗脳されている実の妹・菜月(飛松陽菜)と
闘うはめになった彩夏(武田梨奈)。父親か
ら同じ空手を学び、実力はほぼ互角。どーする彩夏!?
 「モーニング娘。オーディション2005」の3次審査まで進んだ武田梨奈だが、ルックスはどちらかというと古風顔。切れ長の奥二重で、スクリーンの中の彼女は今にも泣きそうな表情で、襲いかかるヒットマンたちに鋭い突きと蹴りを見舞う。ひとり敵を倒すごとに、ひと粒の涙を流しているかのようだ。ジャッキー・チェンは酔えば酔うほどに強くなる『酔拳』(78)で一躍人気者になったが、武田梨奈の拳は"涙拳(るいけん)"と呼びたい。涙を流した分だけ、彼女はタフになる。そして、彼女が泣きはらした後には、悶絶した大男たちが累々と重なり合うことになる。  前作では"壊し屋"軍団との激闘を演じた武田梨奈だが、本作の敵はよりクレイジーだ。ヒロインの名前は、紅彩夏。少女時代の彩夏は、妹の菜月と共に父・紅達也(中達也)の道場で空手修行に励んでいた。そんな折、達也が持つ"伝説の黒帯"を手に入れるため、田川(堀部圭亮)率いる悪の組織が道場を襲撃。達也と彩夏を殺害し、菜月を拉致してしまう。時は流れ、彩夏(武田梨奈)は人知れず美しく成長。一度は殺された彩夏だったが、瀕死状態の父が最後の力を振り絞って喝を入れ、奇跡的に蘇生を果たしたのだ。  「なんでやねん!」「んなバカな!」という観客のツッコミを浴びながらも、物語はひるまず進行する。"伝説の黒帯"を手に入れた田川は世界の格闘界を牛耳り、いたいけな少年少女を殺人兵器に育て上げ、要人暗殺やテロを請け負う闇ビジネスで巨利を得ていた。一方、横浜のシネコンでアルバイトしていた彩夏は館内にいたひったくり犯を得意の空手技で撃退。その様子がネットで広まり、悪の組織の知るところとなる。自分が奪った黒帯が偽物だったことに気づいた田川は、怒り心頭。打倒彩夏のため、最凶の刺客を送り込む。それは幼いときに彩夏と生き別れた妹の菜月(飛松陽菜)だった。菜月は悪の組織によって洗脳された格闘マシンと化していた。同じ血が流れ、同じ空手を学んだ妹との対決を彩夏は余儀なくされる。"涙拳"はより悲壮感を増すのだった。
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"伝説の黒帯"を執拗に狙う悪の組織のボス(堀部
圭亮)。紅達也(中達也)の一撃を受け半身
不随になるも、障害者であることを盾にさらなる
ワルぶりを発揮。
 今回の見どころは、前作では型を披露するだけだった特技のヌンチャクを駆使してのガチンコアクション。また、妹の菜月を救出するために、悪の組織の地下アジトへ単身で殴り込みを掛けるシーンは、なぜか学生服。ミニスカでのハイキックや回し蹴りがノンストップで連打される。ゆるいストーリーとのギャップが激しい。スクリーンを息を詰めて凝視しすぎ、思わず呼吸困難に陥ってしまいそうだ。次世代アクションスター候補の飛松陽菜とのハイスピードバトルの他に、身長190cm体重95kg空手四段の猛者リチャード・ウィリアム・ヘセルトンと激突するクライマックスが待ち受けている。メジャー系アクション大作『SP 野望篇』『SP 革命篇』にも出演している堀部圭亮の無国籍風な悪役ぶりからも目が離せない  宣伝スタッフを通して武田梨奈にメールインタビューを申し込んだところ、10代の女の子らしいカワイイ手書き文字が綴られたPDFが返ってきた。ミニスカ姿でのアクションシーンは恥ずかしくなかった? というこちらの質問に対して、「前作『ハイキック・ガール!』もスカートだったので、慣れました(笑)。制服姿の女の子が戦うのって、ある意味かっこいいなと思いました。前回も体を張りましたが、今回はそれプラス、美しさや派手さを目指そうと、かなり高度な技にも挑んでいます」とカワイイ文字とは裏腹に頼もしい返答。  前作では「共演者の顔を蹴るのが辛い」と語っていたけど、それは克服できた? という質問には、「正直、克服できていません。一瞬でも間違うと大ケガになるので......。でも、たくさん練習して、共演者と信頼関係を築くことで撮影することができたんです」との真摯なコメントが書き込まれてあった。また、目標とする俳優にはジャッキー・チェンと武田鉄矢の名前を挙げ、稽古や撮影のない日は腹筋・背筋・ストレッチ運動を済ませてから、友達とお茶したり、カラオケしたり、健康ランドに行ったりしているとのこと。昭和世代を和ませる素顔ですなぁ。  クランクイン前の武田梨奈の練習風景を、『マッハ!!!!!!!!』(03)、『チョコレート・ファイター』(08)のプラッチャヤー・ピンゲーオ監督がタイから来日して見学している。『チョコレート・ファイター』のアイドル顔のヒロイン、ジージャとの"空手vs.ムエタイ"競演企画を西プロデューサーには進めてほしいところだ。勝新太郎と"片腕ドラゴン"ジミー・ウォングが対決した『新座頭市 破れ!唐人剣』(71)みたいに2バージョンのエンディングもいいじゃないか。すでに主演作第3弾『女忍 KUNOICHI』の公開が3月に控えている武田梨奈だが、ぜひともリアルアクション映画の復興にいっそうの活躍をしてもらいたい。  『KG』は現在、横浜ブルグ13と新宿バルト9の2館で上映中。"涙拳"という名の秘拳が、あなたのツボを直撃する! (文=長野辰次) kg4.jpg 『KG カラテガール』 監督/木村好克 脚本・アクション監督/西冬彦 主題歌「Ready Steady Go!」武田梨奈 出演/武田梨奈、飛松陽菜、中達也、横山一敏、リチャード・ウィリアム・ヘセルトン、入山法子、滝沢沙織、堀部圭亮 配給/CJ Entertainment Japan、ティ・ジョイ 2月5日より横浜ブルグ13、新宿バルト9ほか全国順次公開中 <www.t-joy.net/kg>
ハイキック・ガール! お見事! amazon_associate_logo.jpg
●深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】INDEX [第104回] 高齢化するニートはどこに行くのか? "戸塚校長"のその後『平成ジレンマ』 [第103回]堀北真希&高良健吾主演作『白夜行』闇に生きる"影男"の密やかなる喜び [第102回]園子温の劇薬ムービー『冷たい熱帯魚』"救いのない結末"という名の救い [第101回] NHKが放映しない"裏プロジェクトX" AV界のカリスマ監督『YOYOCHU』 [第100回]エロスとタブーを交配した"至高の美女" 禁断のサイエンスホラー『スプライス』 [第99回]2010年に活躍した女優を勝手に表彰! 満島ひかりに"面倒くさい女"大賞を [第98回]大人だって"ドラえもん"にいて欲しい 残念男の逆転劇『エリックを探して』 [第97回]平凡な高校生デイヴは2度変身する!原点回帰のヒーロー『キック・アス』 [第96回]村上春樹の超絶ベストセラーの映画化『ノルウェイの森』はどこにある? [第95回]実在した"奇妙な高額バイト"の顛末 心理サスペンス『エクスペリメント』 [第94回]"アル中"カメラマンの泣き笑い人生『酔いがさめたら、うちに帰ろう。』 [第93回]朝ドラと異なる映画『ゲゲゲの女房』ゴールなき"貧乏耐久"2人3脚走 [第92回]バラエティーでの実績は通用するか? テリー伊藤の初監督作『10億円稼ぐ』 [第91回] 不謹慎なる社会派エンタテイメント『裁判長!ここは懲役4年でどうすか』 [第90回]"世界のナベアツ"大阪府知事に就任! 政治コメディ『さらば愛しの大統領』 [第89回]自分の恋愛もプロデュースする女優、ドリュー・バリモア主演『遠距離恋愛』 [第88回]スタローンが立ち上げた"筋肉共和国"男たちの祭典『エクスペンダブルズ』 [第87回]元"おはガール"安藤聖の再起動ドラマ 就職氷河期を生きる『バカがウラヤマシイ』 [第86回]マイノリティーは"理想郷"を目指す。筒井文学の金字塔『七瀬ふたたび』 [第85回]清純派・佐藤寛子が美しく"変態"! 官能サスペンス『ヌードの夜──』 [第84回]死を意識して、ギラギラ輝く男たち! 三池節、大バクハツ『十三人の刺客』 [第83回] 女を食い物にする男どもは全員処刑! モダン社会の闇を暴く『ミレニアム』 [第82回] "企画AV女優"たちの青春残酷物語 性なる鎮魂劇『名前のない女たち』 [第81回]猫を見れば、人間社会が見えてくる! 世界の人気猫大集合『ネコを探して』 [第80回]原恵一監督の新作は辛口ファンタジー 退屈な"日常生活"を彩る『カラフル』 [第79回]米軍に実在した"超能力部隊"の真実!? ムー民、必見『ヤギと男と男と壁と』 [第78回]戦場から帰還した夫は"芋虫男"だった! ヤクザ監督の反戦映画『キャタピラー』 [第77回] 白ユリの花開くガールズの妖しい世界 H系ホラー『ジェニファーズ・ボディ』 [第76回] 爽やか系青春ゾンビ映画にホロリ......夏休みは『ゾンビランド』に集結せよ [第75回] "生きる"とは"見苦しい"ということ 藤沢周平の時代活劇『必死剣 鳥刺し』 [第74回]初恋の美少女は200歳の吸血鬼だった! 北欧産のホラー映画『ぼくのエリ』 [第73回] "三億円事件"の真相を解き明かす! 桜タブーに挑んだ『ロストクライム』 [第72回/特別編] 上映反対で揺れる問題作『ザ・コーヴ』"渦中の人"リック・オバリー氏の主張 [第71回] 女子にモテモテになる方法、教えます。軟派少年の実話物語『ソフトボーイ』 [第70回] 下町育ちの"北野少年"が見た現代社会 人間同士の食物連鎖『アウトレイジ』 [第69回] "リアルと虚構の狭間"を生きる男、アントニオ猪木初主演作『アカシア』 [第68回] ヒーローも神もいない現代社会の惨劇 井筒監督の問題作『ヒーローショー』 [第67回] アイドルが地獄で微笑む『戦闘少女』ギャグ×血しぶき×殺陣の特盛り丼! [第66回]アナーキーな"社歌"で生産性アップ! 満島ひかり大進撃『川の底からこんにちは』 [第65回]超ヘビー級なシリアス劇『プレシャス』"家族"という名の地獄から脱出せよ [第64回]乱れ咲く"悪の華"ゼブラクイーン! 仲里依紗が過激変身『ゼブラーマン2』 [第63回] オタク王が見出した"夢と現実"の接点 ティム・バートン監督作『アリス──』 [第62回] バッドテイストな感動作『第9地区』 アナタはエビ人間とお友達になれるか? [第61回]スコセッシ監督の犯罪アトラクション『シャッターアイランド』へようこそ! [第60回]宮崎あおいの"映画代表作"が誕生! 毒を呑んでも生き続けよ『ソラニン』 [第59回]"おっぱいアート"は世界を救えるか? 母乳戦士の記録『桃色のジャンヌ・ダルク』 [第58回]現代に甦った"梶原一騎ワールド"韓流ステゴロ映画『息もできない』 [第57回]命知らずの変態レポーター、中東へ! 史上最大のどっきり?『ブルーノ』 [第56回]仲里依紗がアニメから実写へと跳躍! 母娘2代の時空旅行『時をかける少女』 [第55回]ビグロー監督はキャメロンより硬派! 人間爆弾の恐怖『ハート・ロッカー』 [第54回] "空気を読む"若者の悲劇『パレード』楽しいルームシェア生活の行き先は? [第53回]社会の"生け贄"に選ばれた男の逃亡劇 堺雅人主演『ゴールデンスランバー』 [第52回]『男はつらいよ』の別エンディング? "寅さん"の最期を描く『おとうと』 [第51回]ひとり相撲なら無敵のチャンピオン! 童貞暴走劇『ボーイズ・オン・ザ・ラン』 [第50回]ヒース・レジャーが最後に見た夢の世界 理想と欲望が渦巻く『Dr.パルナサスの鏡』 [第49回]トニー・ジャーは本気なんジャー! CGなしの狂乱劇再び『マッハ!弐』 [第48回]全米"オシャレ番長"ズーイー、見参! 草食系に捧ぐ『(500日)のサマー』 [第47回]市川崑監督&水谷豊"幻の名作"『幸福』28年の歳月を経て、初のパッケージ化 [第46回]押井守監督、大いなる方向転換か? 黒木メイサ主演『アサルトガールズ』 [第45回]ドラッグ漬けの芸能関係者必見!"神の子"の復活を追う『マラドーナ』 [第44回] 暴走する"システム"が止まらない! マイケル・ムーア監督『キャピタリズム』 [第43回]"人は二度死ぬ"という独自の死生観『ガマの油』役所広司の監督ぶりは? [第42回]誰もが共感、あるあるコメディー! 2ちゃんねる発『ブラック会社』 [第41回]タラとブラピが組むと、こーなった!! 戦争奇談『イングロリアス・バスターズ』 [第40回]"涅槃の境地"のラストシーンに唖然! 引退を賭けた角川春樹監督『笑う警官』 [第39回]伝説の男・松田優作は今も生きている 20回忌ドキュメント『SOUL RED』 [第38回]海より深い"ドメスティック・ラブ"ポン・ジュノ監督『母なる証明』 [第37回]チャン・ツィイーが放つフェロモン爆撃 悪女注意報発令せり!『ホースメン』 [第36回]『ソウ』の監督が放つ激痛バイオレンス やりすぎベーコン!『狼の死刑宣告』 [第35回]"負け組人生"から抜け出したい!! 藤原竜也主演『カイジ 人生逆転ゲーム』 [第34回]2兆円ペット産業の"開かずの間"に迫る ドキュメンタリー『犬と猫と人間と』 [第33回]"女神降臨"ペ・ドゥナの裸体が神々しい 空っぽな心に響く都市の寓話『空気人形』 [第32回]電気仕掛けのパンティをはくヒロイン R15コメディ『男と女の不都合な真実』 [第31回]萩原健一、松方弘樹の助演陣が過剰すぎ! 小栗旬主演の時代活劇『TAJOMARU』 [第30回]松本人志監督・主演第2作『しんぼる』 閉塞状況の中で踊り続ける男の悲喜劇 [第29回]シビアな現実を商品化してしまう才女、西原理恵子の自叙伝『女の子ものがたり』 [第28回]"おねマス"のマッコイ斉藤プレゼンツ 不謹慎さが爆笑を呼ぶ『上島ジェーン』 [第27回]究極料理を超えた"極地料理"に舌鼓! 納涼&グルメ映画『南極料理人』 [第26回]ハチは"失われた少年時代"のアイコン  ハリウッド版『HACHI』に涙腺崩壊! [第25回]白熱! 女同士のゴツゴツエゴバトル 金子修介監督の歌曲劇『プライド』 [第24回]悪意と善意が反転する"仮想空間"細田守監督『サマーウォーズ』 [第23回]沖縄に"精霊が暮らす楽園"があった! 中江裕司監督『真夏の夜の夢』 [第22回]"最強のライブバンド"の底力発揮! ストーンズ『シャイン・ア・ライト』 [第21回]身長15mの"巨大娘"に抱かれたい! 3Dアニメ『モンスターvsエイリアン』 [第20回]ウディ・アレンのヨハンソンいじりが冴え渡る!『それでも恋するバルセロナ』 [第19回]ケイト姐さんが"DTハンター"に! オスカー受賞の官能作『愛を読むひと』 [第18回]1万枚の段ボールで建てた"夢の砦"男のロマンここにあり『築城せよ!』 [第17回]地獄から甦った男のセミドキュメント ミッキー・ローク『レスラー』 [第16回]人生がちょっぴり楽しくなる特効薬 三木聡"脱力"劇場『インスタント沼』 [第15回]"裁判員制度"が始まる今こそ注目 死刑執行を克明に再現した『休暇』 [第14回]生傷美少女の危険な足技に痺れたい! タイ発『チョコレート・ファイター』 [第13回]風俗嬢を狙う快楽殺人鬼の恐怖! 極限の韓流映画『チェイサー』 [第12回]お姫様のハートを盗んだ男の悲哀 紀里谷監督の歴史奇談『GOEMON』 [第11回]美人女優は"下ネタ"でこそ輝く! ファレリー兄弟『ライラにお手あげ』 [第10回]ジャッキー・チェンの"暗黒面"? 中国で上映禁止『新宿インシデント』 [第9回]胸の谷間に"桃源郷"を見た! 綾瀬はるか『おっぱいバレー』 [第8回]"都市伝説"は映画と結びつく 白石晃士監督『オカルト』『テケテケ』 [第7回]少女たちの壮絶サバイバル!楳図かずおワールド『赤んぼ少女』 [第6回]派遣の"叫び"がこだまする現代版蟹工船『遭難フリーター』 [第5回]三池崇史監督『ヤッターマン』で深田恭子が"倒錯美"の世界へ [第4回]フランス、中国、日本......世界各国のタブーを暴いた劇映画続々 [第3回]水野晴郎の遺作『ギララの逆襲』岡山弁で語った最後の台詞は...... [第2回]『チェンジリング』そしてイーストウッドは"映画の神様"となった [第1回]堤幸彦版『20世紀少年』に漂うフェイクならではの哀愁と美学

高齢化するニートはどこに行くのか? "戸塚校長"のその後『平成ジレンマ』

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マスコミのカメラに対して、常に不敵な笑みを浮かべる「戸塚ヨットスクール」の戸塚宏校長。"教育や社会の荒廃は、マスコミが原因"だと語る。(c)2010東海テレビ放送
 訓練中に生徒2人が死亡、さらに訓練から逃れるためにフェリー船から海に飛び込んだ生徒2人が行方不明となった。1980年代に日本中を騒がせた「戸塚ヨットスクール事件」だ。83年に逮捕された戸塚宏ヨットスクール校長は「体罰は教育」と無罪を主張したが、裁判では傷害過失致死罪で懲役6年の実刑が下された。この事件をきっかけに教育界では"体罰"はタブーとなる。06年に戸塚校長は刑務所から出所し、ただちにヨットスクールに復帰。マスコミの大バッシングを受けたヨットスクールだが、手に負えなくなった子どもを預ける親は今も絶えることがない。戸塚校長復帰後のヨットスクールの内情を10カ月間にわたって密着取材したのが、東海テレビ放送制作のドキュメンタリー『平成ジレンマ』。10年5月に愛知・岐阜・三重の3県でローカル放映されたものに、取材期間中に飛び降り自殺した女子高生の火葬シーンなどテレビではオンエアできなかった映像を加えた完全版として劇場公開される。 「体罰を止めたために、教育に何が起きたのか。とんでもないことになったんじゃないのか。だから"体罰"は善だったんじゃないのか?」  番組の序盤で、戸塚校長は自身の講演会に集まった人たちに向かって問い掛ける。愛知県美浜町にある「戸塚ヨットスクール」には現在10名前後の訓練生が共同生活を送っている。かつては非行児が中心だったが、最近は20歳を過ぎたニートや引きこもりが多い。入学金315万円の他に毎月の生活費11万円を払わなくてはならないが、息子や娘の家庭内暴力に苦しむ親たちは藁にもすがる思いでヨットスクールに我が子を託する。未成年なら学校や児童相談所が対応してくれるが、成人したニートや引きこもりに対応してくれる施設は他にはないのだ。マスコミからバッシングという名の社会的制裁を受けたことでヨットスクールから体罰は消え、訓練内容は30年前に比べずいぶんと緩やかなものになった。その分、訓練期間は3カ月から1年と延びている。成人している訓練生たちは就労に備え自動車学校に通ったり、調理の実習に励むが、毎朝6時起床・夜10時就寝という規則正しい共同生活に耐えれず、途中で逃げ出してしまうことが多い。  09年10月、3階建てのヨットスクールの屋上から飛び降り自殺した17歳の女子高生の姿をカメラは記録している。入校前の彼女はイジメがきっかけで自宅に引きこもり、リストカットを繰り返していた。途方に暮れていた母親を見かねた戸塚校長が「自傷行為のある生徒は受け入れない」というヨットスクールの原則を曲げて入校させたのだ。同じ境遇の女子生徒と仲良くなり、明るい笑顔を見せていた。協調性を養うためのオカリナの練習にも、向精神薬で震える指で取り組んでいた。しかし、入校からわずか3日目で彼女は屋上から飛び降りてしまう。「また体罰があったのか?」とマスコミがヨットスクールに押し寄せる。唯一入室を許された番組のカメラがヨットスクール内で行なわれた葬儀の様子を映し出す。生徒たちが惜別のオカリナ合奏する中、いつも不敵な笑みを浮かべている戸塚校長が憔悴した表情で正座したまま固まっている。事務所ではヨットスクールを非難する電話が鳴り響く。
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戸塚校長は現在70歳。戸塚ヨットスクールが
無くなれば、ニートや引きこもりを受け入れる
"最後の受け皿"は日本社会から消滅すること
になる。
 09年7月から10年5月にかけてヨットスクールを密着取材した東海テレビ放送の齊藤潤一ディレクターが取材の発端について語った。 「ボクが中学生の頃に『戸塚ヨットスクール事件』が起き、悪いことすると『戸塚ヨットスクールに入れるぞ』とよく言われていました。そのヨットスクールが事件後も存続していることを知ってボク自身が驚いたのが、企画の始まりです。あれだけの騒ぎになったのに、なぜ今もあるのか? その理由を確かめるために戸塚校長にまず会って、ヨットスクールの取材を申し込みました。変なことを言ったら、ぶん殴られるんじゃないかと緊張しましたね(苦笑)。戸塚校長は『今の教育がダメになったのは、すべてマスコミのせいだ』とマスコミ批判を1時間ほどしゃべった後、最後に『撮りたければ、撮ればいい』と素っ気なくOKしてくれました。この人は懐が深いのか、それとも何も考えていないのか、どっちなんだろう? 戸塚校長の人間性の不思議さにも興味を持ちました。怖いもの見たさで、ヨットスクールの取材を始めた部分も正直あるかもしれません」  戸塚校長はカメラの前で、常にアルカイックスマイル然とした笑顔を見せている。齊藤ディレクターは"戸塚スマイル"をこう解説する。 「あの表情はマスコミ向けのものです。あの強気の態度のせいで、誤解されている部分が大きいでしょうね。本当は恥ずかしがり屋なんですが、マスコミの前では"舐められてたまるか"という気持ちをいつも持っているんです。毎週3~4日通い続けることで、ヨットスクール内はフリーパス状態でカメラを回せるようになり、女子高生の葬儀の様子もマスコミで唯一撮影することが許されました。戸塚校長からはことあるごとにマスコミ批判について聞かされましたが、こちらが教育問題について投げ掛けると、熱く語ってくれる人でもあるんです。でも、10カ月間取材した我々に対しても、最後まであの表情は変えませんでしたね」
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東海テレビの齊藤潤一ディレクター。「子ど
もの頃の躾が大事なことを実感しました。自分
にも小学生の娘がいます。でも、ヨットス
クールに預けるのは、ちょっと考えますね」と
実直に話す。
 "平成ジレンマ"と名付けた番組タイトルについて、齊藤ディレクターは語る。 「戸塚ヨットスクールは開校当初は将来のオリンピック選手を育てるための"ジュニアヨットスクール"という名称で、『その頃がいちばん楽しかった』と戸塚校長は話していました。たまたま参加した不登校児が小学校に通うようになったことをマスコミが報道したことから、全国から情緒障害児ばかりが預けられるようになり、生徒数が100人と膨れ上がったんです。事件が起きるとマスコミは一転して、バッシングしました。戸塚校長とヨットスクールを社会的に抹殺したわけです。でもマスコミは戸塚校長を非難するだけで、ヨットスクールの代わりに情緒障害児たちの受け皿になるものを作ろうと提案し、積極的に動いたようには思えません。『平成ジレンマ』というタイトルには、自分も今、所属するマスコミに対しての自省の意味も込めています。答えが簡単に出るものではありませんが、考えるきっかけになれればと思うんです」  といっても番組は、戸塚校長とヨットスクールを擁護するためのものではない。「擁護するつもりなら、最後は更生に成功した卒業生たちを並べて、爽やかな終わり方にしていたと思います」と齊藤ディレクターは言う。実際の番組のエンディングは更生したように見えた卒業生が紹介された職場から姿を消し、戸塚校長が「小さいときに教育しないと効果がない」と唱えているにも関わらず、40歳の引きこもりが新たに入校してくるシーンで終わりを告げる。戸塚校長は『平成ジレンマ』を観て、怒ることもなく、逆に齊藤ディレクターにねぎらいの言葉を掛けることもなかったそうだ。  劇場版ではエンドロール部分にワイプ画面として、訓練生が先輩から小突かれる様子、ヘッドロックを掛けられる様子なども映し出される。現在の戸塚ヨットスクールには体罰は存在せず、これはあくまでも生徒同士のスキンシップということらしい。このエンドロール部分の映像も、テレビ放映時には流されなかったものだ。訓練生、卒業生たちへの配慮から、劇場公開後のDVD化の予定はない。東海エリア以外の人たちにとっては、劇場での上映が唯一の機会となる。改めて問われる体罰の是非、年々高齢化するニート・引きこもり問題、マスメディアの在り方......、様々な問題が知恵の輪のごとく絡み合った"平成ジレンマ"はどうすれば解決の道に向かうことができるのだろうか。試写室が明るくなった後、途方もない絶望感が襲いかかってきた。 (文=長野辰次) heiseij04.jpg 『平成ジレンマ』 ナレーション/中村獅童 プロデューサー/阿武野勝彦 撮影/村田敦祟 音声/戸田達也 編集/山本哲二 監督/齊藤潤一  製作・著作・配給/東海テレビ放送 配給協力/東風 1月29日(土)より名古屋シネマテーク、2月5日(土)よりポレポレ東中野ほか全国順次公開  <http://www.heiseidilemma.jp> ●『平成ジレンマ』公開前夜祭 2月4日(金)『裁判長のお弁当』上映&トーク「テレビと映画、ドキュメンタリーの境界線」 18:30開場/19:00開演 会場/ポレポレ坐(ポレポレ東中野1Fのカフェ)  ゲスト/田中早苗(弁護士)、石井彰(放送作家)、阿武野勝彦(プロデューサー)、齊藤潤一(ディレクター) ●東海テレビドキュメンタリー〈傑作選〉 2月19日(土)『光と影 光市母子殺害事件・弁護団の300日』 2月20日(日)『罪と罰 娘を奪われた母 弟を失くした兄 息子を殺された父』 2月21日(月)『村と戦争』 2月22日(火)『約束 日本一のダムが奪うもの』 2月23日(水)『毒とひまわり 名張毒ぶどう酒事件の半世紀』 2月24日(木)『検事のふろしき』 2月25日(金)『裁判長のお弁当』 数々の受賞歴を持つ齊藤潤一ディレクターと阿武野勝彦プロデューサーのコンビ作を中心とした東海テレビ制作の力作ドキュメンタリーを特集上映 各日14:20~ 会場/ポレポレ東中野
戸塚ヨットスクールは、いま?現代若者漂流 著書/東海テレビ 岩波書店より2月4日(金)発売 amazon_associate_logo.jpg
●深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】INDEX [第103回]堀北真希&高良健吾主演作『白夜行』闇に生きる"影男"の密やかなる喜び [第102回]園子温の劇薬ムービー『冷たい熱帯魚』"救いのない結末"という名の救い [第101回] NHKが放映しない"裏プロジェクトX" AV界のカリスマ監督『YOYOCHU』 [第100回]エロスとタブーを交配した"至高の美女" 禁断のサイエンスホラー『スプライス』 [第99回]2010年に活躍した女優を勝手に表彰! 満島ひかりに"面倒くさい女"大賞を [第98回]大人だって"ドラえもん"にいて欲しい 残念男の逆転劇『エリックを探して』 [第97回]平凡な高校生デイヴは2度変身する!原点回帰のヒーロー『キック・アス』 [第96回]村上春樹の超絶ベストセラーの映画化『ノルウェイの森』はどこにある? [第95回]実在した"奇妙な高額バイト"の顛末 心理サスペンス『エクスペリメント』 [第94回]"アル中"カメラマンの泣き笑い人生『酔いがさめたら、うちに帰ろう。』 [第93回]朝ドラと異なる映画『ゲゲゲの女房』ゴールなき"貧乏耐久"2人3脚走 [第92回]バラエティーでの実績は通用するか? テリー伊藤の初監督作『10億円稼ぐ』 [第91回] 不謹慎なる社会派エンタテイメント『裁判長!ここは懲役4年でどうすか』 [第90回]"世界のナベアツ"大阪府知事に就任! 政治コメディ『さらば愛しの大統領』 [第89回]自分の恋愛もプロデュースする女優、ドリュー・バリモア主演『遠距離恋愛』 [第88回]スタローンが立ち上げた"筋肉共和国"男たちの祭典『エクスペンダブルズ』 [第87回]元"おはガール"安藤聖の再起動ドラマ 就職氷河期を生きる『バカがウラヤマシイ』 [第86回]マイノリティーは"理想郷"を目指す。筒井文学の金字塔『七瀬ふたたび』 [第85回]清純派・佐藤寛子が美しく"変態"! 官能サスペンス『ヌードの夜──』 [第84回]死を意識して、ギラギラ輝く男たち! 三池節、大バクハツ『十三人の刺客』 [第83回] 女を食い物にする男どもは全員処刑! モダン社会の闇を暴く『ミレニアム』 [第82回] "企画AV女優"たちの青春残酷物語 性なる鎮魂劇『名前のない女たち』 [第81回]猫を見れば、人間社会が見えてくる! 世界の人気猫大集合『ネコを探して』 [第80回]原恵一監督の新作は辛口ファンタジー 退屈な"日常生活"を彩る『カラフル』 [第79回]米軍に実在した"超能力部隊"の真実!? ムー民、必見『ヤギと男と男と壁と』 [第78回]戦場から帰還した夫は"芋虫男"だった! ヤクザ監督の反戦映画『キャタピラー』 [第77回] 白ユリの花開くガールズの妖しい世界 H系ホラー『ジェニファーズ・ボディ』 [第76回] 爽やか系青春ゾンビ映画にホロリ......夏休みは『ゾンビランド』に集結せよ [第75回] "生きる"とは"見苦しい"ということ 藤沢周平の時代活劇『必死剣 鳥刺し』 [第74回]初恋の美少女は200歳の吸血鬼だった! 北欧産のホラー映画『ぼくのエリ』 [第73回] "三億円事件"の真相を解き明かす! 桜タブーに挑んだ『ロストクライム』 [第72回/特別編] 上映反対で揺れる問題作『ザ・コーヴ』"渦中の人"リック・オバリー氏の主張 [第71回] 女子にモテモテになる方法、教えます。軟派少年の実話物語『ソフトボーイ』 [第70回] 下町育ちの"北野少年"が見た現代社会 人間同士の食物連鎖『アウトレイジ』 [第69回] "リアルと虚構の狭間"を生きる男、アントニオ猪木初主演作『アカシア』 [第68回] ヒーローも神もいない現代社会の惨劇 井筒監督の問題作『ヒーローショー』 [第67回] アイドルが地獄で微笑む『戦闘少女』ギャグ×血しぶき×殺陣の特盛り丼! [第66回]アナーキーな"社歌"で生産性アップ! 満島ひかり大進撃『川の底からこんにちは』 [第65回]超ヘビー級なシリアス劇『プレシャス』"家族"という名の地獄から脱出せよ [第64回]乱れ咲く"悪の華"ゼブラクイーン! 仲里依紗が過激変身『ゼブラーマン2』 [第63回] オタク王が見出した"夢と現実"の接点 ティム・バートン監督作『アリス──』 [第62回] バッドテイストな感動作『第9地区』 アナタはエビ人間とお友達になれるか? [第61回]スコセッシ監督の犯罪アトラクション『シャッターアイランド』へようこそ! [第60回]宮崎あおいの"映画代表作"が誕生! 毒を呑んでも生き続けよ『ソラニン』 [第59回]"おっぱいアート"は世界を救えるか? 母乳戦士の記録『桃色のジャンヌ・ダルク』 [第58回]現代に甦った"梶原一騎ワールド"韓流ステゴロ映画『息もできない』 [第57回]命知らずの変態レポーター、中東へ! 史上最大のどっきり?『ブルーノ』 [第56回]仲里依紗がアニメから実写へと跳躍! 母娘2代の時空旅行『時をかける少女』 [第55回]ビグロー監督はキャメロンより硬派! 人間爆弾の恐怖『ハート・ロッカー』 [第54回] "空気を読む"若者の悲劇『パレード』楽しいルームシェア生活の行き先は? [第53回]社会の"生け贄"に選ばれた男の逃亡劇 堺雅人主演『ゴールデンスランバー』 [第52回]『男はつらいよ』の別エンディング? "寅さん"の最期を描く『おとうと』 [第51回]ひとり相撲なら無敵のチャンピオン! 童貞暴走劇『ボーイズ・オン・ザ・ラン』 [第50回]ヒース・レジャーが最後に見た夢の世界 理想と欲望が渦巻く『Dr.パルナサスの鏡』 [第49回]トニー・ジャーは本気なんジャー! CGなしの狂乱劇再び『マッハ!弐』 [第48回]全米"オシャレ番長"ズーイー、見参! 草食系に捧ぐ『(500日)のサマー』 [第47回]市川崑監督&水谷豊"幻の名作"『幸福』28年の歳月を経て、初のパッケージ化 [第46回]押井守監督、大いなる方向転換か? 黒木メイサ主演『アサルトガールズ』 [第45回]ドラッグ漬けの芸能関係者必見!"神の子"の復活を追う『マラドーナ』 [第44回] 暴走する"システム"が止まらない! マイケル・ムーア監督『キャピタリズム』 [第43回]"人は二度死ぬ"という独自の死生観『ガマの油』役所広司の監督ぶりは? [第42回]誰もが共感、あるあるコメディー! 2ちゃんねる発『ブラック会社』 [第41回]タラとブラピが組むと、こーなった!! 戦争奇談『イングロリアス・バスターズ』 [第40回]"涅槃の境地"のラストシーンに唖然! 引退を賭けた角川春樹監督『笑う警官』 [第39回]伝説の男・松田優作は今も生きている 20回忌ドキュメント『SOUL RED』 [第38回]海より深い"ドメスティック・ラブ"ポン・ジュノ監督『母なる証明』 [第37回]チャン・ツィイーが放つフェロモン爆撃 悪女注意報発令せり!『ホースメン』 [第36回]『ソウ』の監督が放つ激痛バイオレンス やりすぎベーコン!『狼の死刑宣告』 [第35回]"負け組人生"から抜け出したい!! 藤原竜也主演『カイジ 人生逆転ゲーム』 [第34回]2兆円ペット産業の"開かずの間"に迫る ドキュメンタリー『犬と猫と人間と』 [第33回]"女神降臨"ペ・ドゥナの裸体が神々しい 空っぽな心に響く都市の寓話『空気人形』 [第32回]電気仕掛けのパンティをはくヒロイン R15コメディ『男と女の不都合な真実』 [第31回]萩原健一、松方弘樹の助演陣が過剰すぎ! 小栗旬主演の時代活劇『TAJOMARU』 [第30回]松本人志監督・主演第2作『しんぼる』 閉塞状況の中で踊り続ける男の悲喜劇 [第29回]シビアな現実を商品化してしまう才女、西原理恵子の自叙伝『女の子ものがたり』 [第28回]"おねマス"のマッコイ斉藤プレゼンツ 不謹慎さが爆笑を呼ぶ『上島ジェーン』 [第27回]究極料理を超えた"極地料理"に舌鼓! 納涼&グルメ映画『南極料理人』 [第26回]ハチは"失われた少年時代"のアイコン  ハリウッド版『HACHI』に涙腺崩壊! [第25回]白熱! 女同士のゴツゴツエゴバトル 金子修介監督の歌曲劇『プライド』 [第24回]悪意と善意が反転する"仮想空間"細田守監督『サマーウォーズ』 [第23回]沖縄に"精霊が暮らす楽園"があった! 中江裕司監督『真夏の夜の夢』 [第22回]"最強のライブバンド"の底力発揮! ストーンズ『シャイン・ア・ライト』 [第21回]身長15mの"巨大娘"に抱かれたい! 3Dアニメ『モンスターvsエイリアン』 [第20回]ウディ・アレンのヨハンソンいじりが冴え渡る!『それでも恋するバルセロナ』 [第19回]ケイト姐さんが"DTハンター"に! オスカー受賞の官能作『愛を読むひと』 [第18回]1万枚の段ボールで建てた"夢の砦"男のロマンここにあり『築城せよ!』 [第17回]地獄から甦った男のセミドキュメント ミッキー・ローク『レスラー』 [第16回]人生がちょっぴり楽しくなる特効薬 三木聡"脱力"劇場『インスタント沼』 [第15回]"裁判員制度"が始まる今こそ注目 死刑執行を克明に再現した『休暇』 [第14回]生傷美少女の危険な足技に痺れたい! タイ発『チョコレート・ファイター』 [第13回]風俗嬢を狙う快楽殺人鬼の恐怖! 極限の韓流映画『チェイサー』 [第12回]お姫様のハートを盗んだ男の悲哀 紀里谷監督の歴史奇談『GOEMON』 [第11回]美人女優は"下ネタ"でこそ輝く! ファレリー兄弟『ライラにお手あげ』 [第10回]ジャッキー・チェンの"暗黒面"? 中国で上映禁止『新宿インシデント』 [第9回]胸の谷間に"桃源郷"を見た! 綾瀬はるか『おっぱいバレー』 [第8回]"都市伝説"は映画と結びつく 白石晃士監督『オカルト』『テケテケ』 [第7回]少女たちの壮絶サバイバル!楳図かずおワールド『赤んぼ少女』 [第6回]派遣の"叫び"がこだまする現代版蟹工船『遭難フリーター』 [第5回]三池崇史監督『ヤッターマン』で深田恭子が"倒錯美"の世界へ [第4回]フランス、中国、日本......世界各国のタブーを暴いた劇映画続々 [第3回]水野晴郎の遺作『ギララの逆襲』岡山弁で語った最後の台詞は...... [第2回]『チェンジリング』そしてイーストウッドは"映画の神様"となった [第1回]堤幸彦版『20世紀少年』に漂うフェイクならではの哀愁と美学

堀北真希&高良健吾主演作『白夜行』闇に生きる"影男"の密やかなる喜び

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堀北真希、高良健吾主演で映画化された『白夜行』。『ALWAYS三丁目の夕日』(05)で人気を博した堀北にとっては、初の悪女役となる。(c)2011映画「白夜行」製作委員会
 人気ミステリー作家・東野圭吾が1999年に刊行した代表作『白夜行』(集英社)が堀北真希、高良健吾の主演で映画化された。80年、密室状態の廃ビルで起きた質屋の店主殺しを振り出しに、被害者の息子・亮司と容疑者の娘・雪穂の2人が暗い過去を引きずりながらも成長し、バブル前夜からバブル崩壊後の80~90年代をサバイブする物語だ。生き抜くために"悪女"に徹することを自分に課した雪穂をヒロインとする犯罪サスペンスであるのと同時に、彼女の素顔を唯一知る亮司の常軌を逸した献身的な行動を追った哀しいラブストーリーでもある。06年に山田孝之&綾瀬はるか主演で放映された連続ドラマ版『白夜行』(TBS系)は、視聴者が感情移入しやすいように亮司と雪穂が互いに感情を吐露し合う人間臭い側面が脚色されていたが、今回の映画版は原作本来の世界観にかなり忠実。雪穂と亮司の感情的な部分は極力排した、日本では珍しいハードボイルドタッチの作品に仕上げてある。堀北真希と高良健吾は、感情をあらわにせずに複雑な内面を表現するという難易度の高い演技に挑んだ。  『白夜行』のヒロイン・雪穂は、ある意味で天才的な女優だ。ビンボーな母子家庭に生まれた雪穂だが、誰もが振り向く美貌と常に一歩先を読む明晰な頭脳をフル活用して、周囲の人間の心を巧みにコントロールしてしまう。男も女も、雪穂の清純そうな顔立ちと忌まわしい過去にめげずに明るく振る舞う健気さにほだされてしまう。質屋殺しの容疑を掛けられた母親が不可解な死を遂げた後、雪穂は遠縁の女性の養女となり、茶道・華道をたしなみながらお嬢さま学校に通い、美少女ぶりに磨きを掛ける。有名大学に入学後は社交ダンス部の人気者となり、お金持ちの御曹司とお近づきになる。ここぞというときには自分の体を武器にすることも厭わない。養母、親友、交際相手の前でも決して仮面を外すことのない、"究極の悪女"なのだ。もちろん、人前で常に演技を続ける雪穂のうさん臭さに勘づく人間も少数派ながらいるのだが、雪穂の前に立ち塞がろうとする人間は、不思議なことに事故に巻き込まれ退場を余儀なくされる。大学を卒業した雪穂は資産家の息子と結婚し、豊かな財源をバックにファッション業界という大舞台に進出。美しき"悪の花"を咲かせる。
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成長した亮司を演じるのは、『蛇にピアス』
(08)、『ソラニン』(10)などで注目を集め
た高良健吾。今、映画界で最も多忙な若手演技派
男優だ。
 雪穂は的確な演技力と完璧なセルフプロデュース能力を身に付けた希代の悪女キャラだが、男は誰しも"プチ雪穂"に出会ったことがあるのではないだろうか。雪穂のような犯罪者でなくとも、悪女的な資質を持つ女性は少なくない。そして哀しいことに、男という単細胞生物は、この悪女という名の魔性のクリーチャーにメロメロに弱い。悪女は"聖女"の仮面を巧みに被って、運命の出会いを装って男に近づいてくる。周囲が「あの女はヤバいよ」と忠告しても、男は「オレにもようやくモテキが来た!」「あいつのことを分かってやれるのはオレだけなんだ」と聞く耳を持たない。まんまと悪女によって遠隔操作される。そして悪女は相手を利用できるだけ利用して、さらに利用度の高い次のターゲットへと乗り換える。精気を吸い取られた男は、後は鶏ガラスープに使われた鶏ガラのように、ポイッと棄てられるだけ。連ドラ版の綾瀬はるかといい、映画版の堀北真希といい、およそ悪女らしくない若手女優を起用しているのが、映像化された『白夜行』の見どころだ。綾瀬はるかが仮面が外れそうな危うさで視聴者を魅了したのに対し、堀北真希は絶えず仮面を意識させる緊張感のある芝居を持続させる。いずれにしろ、女優としては非常に演じがいのある役であることは間違いないだろう。  天才的な女優としての才能を持つ雪穂だが、いかんせん舞台の御膳立てをしてくれる"裏方"がどうしても必要となる。雪穂の影の部分、汚れ仕事を請け負っているのが、もうひとりの主人公だ。すでに原作小説の刊行から11年、テレビドラマも放映されているので、多少のネタバレは許してほしい。お互いに問題のある家庭環境で育った雪穂と亮司は、欲と虚言にまみれた大人の社会を生き抜くために、共生関係を結ぶ。美しさを誇る雪穂に危機が迫ると、闇の中でじっと息を潜めていた亮司が現われ、邪魔者を排除する。2人は一心同体の関係、ケンタウロスのような半人半獣のモンスターと化す。そして、成長を遂げた雪穂がさらに脚光を浴びれば浴びるほど、亮司はより深い影の存在となっていく。それでも亮司は幸せなのだ。不幸な生い立ちを持つ雪穂が、ドロドロの大人の社会で悪の花とはいえ、見事に"大輪の花"を咲かせたことが嬉しくて堪らない。闇の世界でしか生きられない"影男"の密やかな喜びである。
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物語の鍵となる少女時代の雪穂(福本史織)。
深川栄洋監督は『自転少年』(04)、『狼少女』
(05)、『半分の月がのぼる空』(10)など子役
の演出が抜群にうまい。
 雪穂と亮司が奇妙な共生関係にあることを察知したのは、刑事の笹垣(船越英一郎)。19年前に起きた質屋殺し事件が迷宮入りしたことがずっと気になっており、笹垣は事件関係者の足取りを追い続けていたのだ。純愛と呼ぶにはあまりにも歪み切った雪穂と亮司の関係を知った笹垣は慟哭する。自分がもっと早く事件の真相に気づいていれば、多くの犠牲者を出すことも、一心同体化した犯罪モンスターを生み出すことも防げたのではないかと。"2時間ドラマの帝王"の称号を持つ船越英一郎がテレビとはひと味違った深みのある演技で、映画に奥行きを与えている。子どもを病気で亡くした笹垣の父性的要素を盛り込むなど、原作の世界観を壊さずに手を加えた深川栄洋監督の手腕も評価したい。  映画版『白夜行』の公開に先立ち、同じく東野圭吾原作の『幻夜』がWOWOWで連続ドラマとしてオンエアされた。『幻夜』は東野ファンの間で、『白夜行』の姉妹編とも続編とも称されている作品で、こちらは深田恭子と塚本高史が主演している。深田恭子演じるミステリアスな美女"美冬"が新しいパートナーを手に入れて、さらなる悪女ぶりを発揮するストーリーだ。船越英一郎が年老いた元刑事役で最終話に出演しており、『白夜行』との関連性を匂わせるものになっている。映画版『白夜行』ではヒロインの雪穂は自分の本音を押し殺し続けるが、『幻夜』では男に寄生することでしか生きることのできない悪女の哀しみが見る者にジワジワと伝わってくる。下半身を失ったケンタウロスは、どうやって生きていけばいいのだろうか。 (文=長野辰次) byakuya04.jpg ●『白夜行』 原作/東野圭吾 監督/深川栄洋 出演/堀北真希、高良健吾、姜暢雄、緑友利恵、粟田麗、今井悠貴、福本史織、斎藤歩、中村久美、田中哲司、戸田恵子、船越英一郎  配給/ギャガ 1月29日(土)より全国公開 <http://byakuyako.gaga.ne.jp>
堀北真希 -ひこうきぐも- 真希ちゃんのためなら......! amazon_associate_logo.jpg
●深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】INDEX [第102回]園子温の劇薬ムービー『冷たい熱帯魚』"救いのない結末"という名の救い [第101回] NHKが放映しない"裏プロジェクトX" AV界のカリスマ監督『YOYOCHU』 [第100回]エロスとタブーを交配した"至高の美女" 禁断のサイエンスホラー『スプライス』 [第99回]2010年に活躍した女優を勝手に表彰! 満島ひかりに"面倒くさい女"大賞を [第98回]大人だって"ドラえもん"にいて欲しい 残念男の逆転劇『エリックを探して』 [第97回]平凡な高校生デイヴは2度変身する!原点回帰のヒーロー『キック・アス』 [第96回]村上春樹の超絶ベストセラーの映画化『ノルウェイの森』はどこにある? [第95回]実在した"奇妙な高額バイト"の顛末 心理サスペンス『エクスペリメント』 [第94回]"アル中"カメラマンの泣き笑い人生『酔いがさめたら、うちに帰ろう。』 [第93回]朝ドラと異なる映画『ゲゲゲの女房』ゴールなき"貧乏耐久"2人3脚走 [第92回]バラエティーでの実績は通用するか? テリー伊藤の初監督作『10億円稼ぐ』 [第91回] 不謹慎なる社会派エンタテイメント『裁判長!ここは懲役4年でどうすか』 [第90回]"世界のナベアツ"大阪府知事に就任! 政治コメディ『さらば愛しの大統領』 [第89回]自分の恋愛もプロデュースする女優、ドリュー・バリモア主演『遠距離恋愛』 [第88回]スタローンが立ち上げた"筋肉共和国"男たちの祭典『エクスペンダブルズ』 [第87回]元"おはガール"安藤聖の再起動ドラマ 就職氷河期を生きる『バカがウラヤマシイ』 [第86回]マイノリティーは"理想郷"を目指す。筒井文学の金字塔『七瀬ふたたび』 [第85回]清純派・佐藤寛子が美しく"変態"! 官能サスペンス『ヌードの夜──』 [第84回]死を意識して、ギラギラ輝く男たち! 三池節、大バクハツ『十三人の刺客』 [第83回] 女を食い物にする男どもは全員処刑! モダン社会の闇を暴く『ミレニアム』 [第82回] "企画AV女優"たちの青春残酷物語 性なる鎮魂劇『名前のない女たち』 [第81回]猫を見れば、人間社会が見えてくる! 世界の人気猫大集合『ネコを探して』 [第80回]原恵一監督の新作は辛口ファンタジー 退屈な"日常生活"を彩る『カラフル』 [第79回]米軍に実在した"超能力部隊"の真実!? ムー民、必見『ヤギと男と男と壁と』 [第78回]戦場から帰還した夫は"芋虫男"だった! ヤクザ監督の反戦映画『キャタピラー』 [第77回] 白ユリの花開くガールズの妖しい世界 H系ホラー『ジェニファーズ・ボディ』 [第76回] 爽やか系青春ゾンビ映画にホロリ......夏休みは『ゾンビランド』に集結せよ [第75回] "生きる"とは"見苦しい"ということ 藤沢周平の時代活劇『必死剣 鳥刺し』 [第74回]初恋の美少女は200歳の吸血鬼だった! 北欧産のホラー映画『ぼくのエリ』 [第73回] "三億円事件"の真相を解き明かす! 桜タブーに挑んだ『ロストクライム』 [第72回/特別編] 上映反対で揺れる問題作『ザ・コーヴ』"渦中の人"リック・オバリー氏の主張 [第71回] 女子にモテモテになる方法、教えます。軟派少年の実話物語『ソフトボーイ』 [第70回] 下町育ちの"北野少年"が見た現代社会 人間同士の食物連鎖『アウトレイジ』 [第69回] "リアルと虚構の狭間"を生きる男、アントニオ猪木初主演作『アカシア』 [第68回] ヒーローも神もいない現代社会の惨劇 井筒監督の問題作『ヒーローショー』 [第67回] アイドルが地獄で微笑む『戦闘少女』ギャグ×血しぶき×殺陣の特盛り丼! [第66回]アナーキーな"社歌"で生産性アップ! 満島ひかり大進撃『川の底からこんにちは』 [第65回]超ヘビー級なシリアス劇『プレシャス』"家族"という名の地獄から脱出せよ [第64回]乱れ咲く"悪の華"ゼブラクイーン! 仲里依紗が過激変身『ゼブラーマン2』 [第63回] オタク王が見出した"夢と現実"の接点 ティム・バートン監督作『アリス──』 [第62回] バッドテイストな感動作『第9地区』 アナタはエビ人間とお友達になれるか? [第61回]スコセッシ監督の犯罪アトラクション『シャッターアイランド』へようこそ! [第60回]宮崎あおいの"映画代表作"が誕生! 毒を呑んでも生き続けよ『ソラニン』 [第59回]"おっぱいアート"は世界を救えるか? 母乳戦士の記録『桃色のジャンヌ・ダルク』 [第58回]現代に甦った"梶原一騎ワールド"韓流ステゴロ映画『息もできない』 [第57回]命知らずの変態レポーター、中東へ! 史上最大のどっきり?『ブルーノ』 [第56回]仲里依紗がアニメから実写へと跳躍! 母娘2代の時空旅行『時をかける少女』 [第55回]ビグロー監督はキャメロンより硬派! 人間爆弾の恐怖『ハート・ロッカー』 [第54回] "空気を読む"若者の悲劇『パレード』楽しいルームシェア生活の行き先は? [第53回]社会の"生け贄"に選ばれた男の逃亡劇 堺雅人主演『ゴールデンスランバー』 [第52回]『男はつらいよ』の別エンディング? "寅さん"の最期を描く『おとうと』 [第51回]ひとり相撲なら無敵のチャンピオン! 童貞暴走劇『ボーイズ・オン・ザ・ラン』 [第50回]ヒース・レジャーが最後に見た夢の世界 理想と欲望が渦巻く『Dr.パルナサスの鏡』 [第49回]トニー・ジャーは本気なんジャー! CGなしの狂乱劇再び『マッハ!弐』 [第48回]全米"オシャレ番長"ズーイー、見参! 草食系に捧ぐ『(500日)のサマー』 [第47回]市川崑監督&水谷豊"幻の名作"『幸福』28年の歳月を経て、初のパッケージ化 [第46回]押井守監督、大いなる方向転換か? 黒木メイサ主演『アサルトガールズ』 [第45回]ドラッグ漬けの芸能関係者必見!"神の子"の復活を追う『マラドーナ』 [第44回] 暴走する"システム"が止まらない! マイケル・ムーア監督『キャピタリズム』 [第43回]"人は二度死ぬ"という独自の死生観『ガマの油』役所広司の監督ぶりは? [第42回]誰もが共感、あるあるコメディー! 2ちゃんねる発『ブラック会社』 [第41回]タラとブラピが組むと、こーなった!! 戦争奇談『イングロリアス・バスターズ』 [第40回]"涅槃の境地"のラストシーンに唖然! 引退を賭けた角川春樹監督『笑う警官』 [第39回]伝説の男・松田優作は今も生きている 20回忌ドキュメント『SOUL RED』 [第38回]海より深い"ドメスティック・ラブ"ポン・ジュノ監督『母なる証明』 [第37回]チャン・ツィイーが放つフェロモン爆撃 悪女注意報発令せり!『ホースメン』 [第36回]『ソウ』の監督が放つ激痛バイオレンス やりすぎベーコン!『狼の死刑宣告』 [第35回]"負け組人生"から抜け出したい!! 藤原竜也主演『カイジ 人生逆転ゲーム』 [第34回]2兆円ペット産業の"開かずの間"に迫る ドキュメンタリー『犬と猫と人間と』 [第33回]"女神降臨"ペ・ドゥナの裸体が神々しい 空っぽな心に響く都市の寓話『空気人形』 [第32回]電気仕掛けのパンティをはくヒロイン R15コメディ『男と女の不都合な真実』 [第31回]萩原健一、松方弘樹の助演陣が過剰すぎ! 小栗旬主演の時代活劇『TAJOMARU』 [第30回]松本人志監督・主演第2作『しんぼる』 閉塞状況の中で踊り続ける男の悲喜劇 [第29回]シビアな現実を商品化してしまう才女、西原理恵子の自叙伝『女の子ものがたり』 [第28回]"おねマス"のマッコイ斉藤プレゼンツ 不謹慎さが爆笑を呼ぶ『上島ジェーン』 [第27回]究極料理を超えた"極地料理"に舌鼓! 納涼&グルメ映画『南極料理人』 [第26回]ハチは"失われた少年時代"のアイコン  ハリウッド版『HACHI』に涙腺崩壊! [第25回]白熱! 女同士のゴツゴツエゴバトル 金子修介監督の歌曲劇『プライド』 [第24回]悪意と善意が反転する"仮想空間"細田守監督『サマーウォーズ』 [第23回]沖縄に"精霊が暮らす楽園"があった! 中江裕司監督『真夏の夜の夢』 [第22回]"最強のライブバンド"の底力発揮! ストーンズ『シャイン・ア・ライト』 [第21回]身長15mの"巨大娘"に抱かれたい! 3Dアニメ『モンスターvsエイリアン』 [第20回]ウディ・アレンのヨハンソンいじりが冴え渡る!『それでも恋するバルセロナ』 [第19回]ケイト姐さんが"DTハンター"に! オスカー受賞の官能作『愛を読むひと』 [第18回]1万枚の段ボールで建てた"夢の砦"男のロマンここにあり『築城せよ!』 [第17回]地獄から甦った男のセミドキュメント ミッキー・ローク『レスラー』 [第16回]人生がちょっぴり楽しくなる特効薬 三木聡"脱力"劇場『インスタント沼』 [第15回]"裁判員制度"が始まる今こそ注目 死刑執行を克明に再現した『休暇』 [第14回]生傷美少女の危険な足技に痺れたい! タイ発『チョコレート・ファイター』 [第13回]風俗嬢を狙う快楽殺人鬼の恐怖! 極限の韓流映画『チェイサー』 [第12回]お姫様のハートを盗んだ男の悲哀 紀里谷監督の歴史奇談『GOEMON』 [第11回]美人女優は"下ネタ"でこそ輝く! ファレリー兄弟『ライラにお手あげ』 [第10回]ジャッキー・チェンの"暗黒面"? 中国で上映禁止『新宿インシデント』 [第9回]胸の谷間に"桃源郷"を見た! 綾瀬はるか『おっぱいバレー』 [第8回]"都市伝説"は映画と結びつく 白石晃士監督『オカルト』『テケテケ』 [第7回]少女たちの壮絶サバイバル!楳図かずおワールド『赤んぼ少女』 [第6回]派遣の"叫び"がこだまする現代版蟹工船『遭難フリーター』 [第5回]三池崇史監督『ヤッターマン』で深田恭子が"倒錯美"の世界へ [第4回]フランス、中国、日本......世界各国のタブーを暴いた劇映画続々 [第3回]水野晴郎の遺作『ギララの逆襲』岡山弁で語った最後の台詞は...... [第2回]『チェンジリング』そしてイーストウッドは"映画の神様"となった [第1回]堤幸彦版『20世紀少年』に漂うフェイクならではの哀愁と美学

園子温の劇薬ムービー『冷たい熱帯魚』"救いのない結末"という名の救い

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"動物好きに悪い人はいない"なんて誰が言った? ペットショップを経営する村田は、気のいいオッチャンという表の顔とは別に、邪魔者は消すという冷酷な裏の顔を持っていた。
(c)NIKKATSU
 『紀子の食卓』(06)で吉高由里子、『愛のむきだし』(09)で満島ひかり......とフレッシュスターを輩出してきた園子温監督が、R18指定の新作『冷たい熱帯魚』でまたまたフレッシュスターを生み出した。いや、フレッシュスターというよりは、フレッシュモンスターを解き放ったと言うべきか。'90年代に起きた"愛犬家連続殺人事件"をはじめ実在の犯罪事件を組み合わせた『冷たい熱帯魚』で、ニコニコ顔で殺人を重ねる庶民派俳優・でんでんの怪演ぶりが突出している。一見、人の良さそうな熱帯魚屋のオヤジだが、自分に逆らう人間は何のためらいもなく血祭りに上げてしまうシリアルキラーとしての裏の顔を持つ男なのだ。強烈なエロス&バイオレンス映画ながら、あまりに怖すぎて、ポン・ジュノ監督の『グエムル 漢江の怪物』(06)のように思わず笑ってしまうブラックコメディーでもある。テレビでレギュラー番組を持つ人気タレントを起用したがる近年の日本映画の流れから大きく逸脱した衝撃作だ。  本作の主人公は、小さな熱帯魚店を営む平凡な中年男・社本(吹越満)。若い巨乳妻・妙子(神楽坂恵)と再婚したが、先妻との間に生まれた娘・美津子(梶原ひかり)との折り合いが悪く、家庭内の空気は極めて重い。そんな折、美津子がスーパーマーケットで万引き騒ぎを起こし、警察沙汰になりそうなところを丸く収めてくれたのが村田(でんでん)だった。派手な経営で知られる大型熱帯魚店「アマゾンゴールド」のオーナーである村田は面倒見がよく、すっかり社本一家は魅了される。村田は人を惹き付けるカリスマ性の持ち主だった。社本一家を完全に手なずけた段階で、村田は本当の素顔を見せる。違法ビジネスで金儲けしていた村田は、妻の愛子(黒沢あすか)と組んで、邪魔者を次々と毒殺していたのだ。すでに村田夫妻の周辺では、30人以上の人間が行方不明となっていた。村田は「ボディを透明にしちまえば、警察には捕まらねぇよ」とのたまい、バラバラにした死体の処理を社本に手伝わせる。気の弱い社本はなすがままに共犯者に仕立てられ、ズブズブと"血の池地獄"へとハマっていく。
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不思議なカリスマ性を持つ村田(でんでん)。
園子温監督いわく「実在の事件の犯人、ボクが
被害に遭った口の巧い詐欺師など複数の犯罪者
像を組み合わせた」。言わば"怪しい人物の
集合体"だそうだ。
 にっこり笑顔で殺人を犯す村田を演じた でんでんは、30年のキャリアを持つ名バイプレイヤー。90年代に舞台『星屑の町』で注目され、『湯けむりスナイパー』(テレビ東京系)の陽気な番頭、『ゴールデンスランバー』(10)の涙もろい巡査など、人のいいオッチャンを演じることが圧倒的に多い。人間臭さからヤクザ役を演じることはあるものの、ここまでの本格的悪役は初。巻き込まれ型の主人公を演じた吹越満といい、底力を発揮したでんでんといい、俳優のネームバリューに捕われずにキャスティングを決めた園子温監督の英断が冴える。でんでんにとっても普段とまるで違う大役での映画出演は、役者冥利だったに違いない。また、園子温監督作はシナリオが重視され、役者がシナリオ上の台詞をアドリブかと思わせるほど自然に口にできるようになるまで撮り直すことで知られていたが、今回はコメディアン出身のでんでんの持ち味を活かすために、あえてアドリブ演技を求めたそうだ。「オレはいつだって勝新太郎だ!」などの村田ギャグは、でんでんがその場で考えたもの。園監督は、でんでんのことを「日本のジム・キャリー」と誉め讃える。  妻の愛子と共に猟奇殺人の限りを尽くした村田は、警察に捕まれば死刑確実。今さら守るべき法律も社会的モラルもない。あらゆる束縛から解放されている村田夫妻には性のモラルもなく、毎日を欲望のおもむくままに面白おかしくゲラゲラと大笑いしながら生きている。社本一家だけでなく、いつの間にかスクリーンを見ている我々も、誰にも気兼ねせずに自由気ままに暮らす村田夫妻の快楽ライフに危険な魅力を感じ出してしまう。フィクションの世界だから許される"背徳の輝き"がそこにはある。
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村田の妻・愛子は、これまた強度のマゾ体質の
クレイジーな女。『六月の蛇』(03)で美しい
姿態を披露した黒沢あすかが、今回も熱演&妖演!
 園子温監督は、代表作である『紀子の食卓』や『愛のむきだし』でどん底に陥った家族が懸命に再生しようとする様をドラマにしてきた。『冷たい熱帯魚』の社本も、娘の美津子や妻の妙子に危害が及ぶのを恐れ、村田夫妻の言いなりとなる。しかし、秘密を知ってしまった社本も、やがては村田夫妻から"ボディを透明に"されてしまうことは明白。意を決した社本は反撃に出ようとするが、それがさらにサイアクの結果を呼び寄せることに......。  2010年11月の「東京フィルメックス」で『冷たい熱帯魚』がプレミア上映された後、園子温監督にコメントをもらう機会があった。今まで以上にシニカルな結末について、園監督はこう語った。「確かに『紀子の食卓』『愛のむきだし』も家族の再生の物語だけど、その2作は娘や息子の立場で描いたもの。今回の『冷たい熱帯魚』は社本という父親の視点で描いたことが大きかったように思いますね。大人は今さら愛とか希望なんかなくても生きていけるんです」「日本映画で希望を持たせるようなエンディングの作品を見るとガッカリする。気分が悪くなる。"人生捨てたもんじゃないよ"と変に救いを持たせるより、"愛とか希望なんかあるかよ、そんなものにこだわらずに生きてみろよ"とハッキリ言ったほうがボクはすっきりする。ボク自身も『冷たい熱帯魚』を完成させて、とてもスッキリしましたから」。愛や希望といった甘っちょろい言葉では救えない人もいる。それが園子温監督の考えだ。  救いのない結末をくっきり描くことで、日本映画の新しい可能性を切り開いてみせた『冷たい熱帯魚』。ただし、水槽の中でぬくぬく生きる熱帯魚のような生活を過ごす人間には、あまりに刺激が強い作品かもしれない。 (文=長野辰次) tsumetai04.jpg『冷たい熱帯魚』 監督/園子温 脚本/園子温、高橋ヨシキ 出演/吹越満、でんでん、黒沢あすか、神楽坂恵、梶原ひかり、渡辺哲  +R18 配給/日活 1月29日(土)よりテアトル新宿ほか全国公開 <http://www.coldfish.jp>
愛のむきだし 名作です。 amazon_associate_logo.jpg
●深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】INDEX [第101回] NHKが放映しない"裏プロジェクトX" AV界のカリスマ監督『YOYOCHU』 [第100回]エロスとタブーを交配した"至高の美女" 禁断のサイエンスホラー『スプライス』 [第99回]2010年に活躍した女優を勝手に表彰! 満島ひかりに"面倒くさい女"大賞を [第98回]大人だって"ドラえもん"にいて欲しい 残念男の逆転劇『エリックを探して』 [第97回]平凡な高校生デイヴは2度変身する!原点回帰のヒーロー『キック・アス』 [第96回]村上春樹の超絶ベストセラーの映画化『ノルウェイの森』はどこにある? [第95回]実在した"奇妙な高額バイト"の顛末 心理サスペンス『エクスペリメント』 [第94回]"アル中"カメラマンの泣き笑い人生『酔いがさめたら、うちに帰ろう。』 [第93回]朝ドラと異なる映画『ゲゲゲの女房』ゴールなき"貧乏耐久"2人3脚走 [第92回]バラエティーでの実績は通用するか? テリー伊藤の初監督作『10億円稼ぐ』 [第91回] 不謹慎なる社会派エンタテイメント『裁判長!ここは懲役4年でどうすか』 [第90回]"世界のナベアツ"大阪府知事に就任! 政治コメディ『さらば愛しの大統領』 [第89回]自分の恋愛もプロデュースする女優、ドリュー・バリモア主演『遠距離恋愛』 [第88回]スタローンが立ち上げた"筋肉共和国"男たちの祭典『エクスペンダブルズ』 [第87回]元"おはガール"安藤聖の再起動ドラマ 就職氷河期を生きる『バカがウラヤマシイ』 [第86回]マイノリティーは"理想郷"を目指す。筒井文学の金字塔『七瀬ふたたび』 [第85回]清純派・佐藤寛子が美しく"変態"! 官能サスペンス『ヌードの夜──』 [第84回]死を意識して、ギラギラ輝く男たち! 三池節、大バクハツ『十三人の刺客』 [第83回] 女を食い物にする男どもは全員処刑! モダン社会の闇を暴く『ミレニアム』 [第82回] "企画AV女優"たちの青春残酷物語 性なる鎮魂劇『名前のない女たち』 [第81回]猫を見れば、人間社会が見えてくる! 世界の人気猫大集合『ネコを探して』 [第80回]原恵一監督の新作は辛口ファンタジー 退屈な"日常生活"を彩る『カラフル』 [第79回]米軍に実在した"超能力部隊"の真実!? ムー民、必見『ヤギと男と男と壁と』 [第78回]戦場から帰還した夫は"芋虫男"だった! ヤクザ監督の反戦映画『キャタピラー』 [第77回] 白ユリの花開くガールズの妖しい世界 H系ホラー『ジェニファーズ・ボディ』 [第76回] 爽やか系青春ゾンビ映画にホロリ......夏休みは『ゾンビランド』に集結せよ [第75回] "生きる"とは"見苦しい"ということ 藤沢周平の時代活劇『必死剣 鳥刺し』 [第74回]初恋の美少女は200歳の吸血鬼だった! 北欧産のホラー映画『ぼくのエリ』 [第73回] "三億円事件"の真相を解き明かす! 桜タブーに挑んだ『ロストクライム』 [第72回/特別編] 上映反対で揺れる問題作『ザ・コーヴ』"渦中の人"リック・オバリー氏の主張 [第71回] 女子にモテモテになる方法、教えます。軟派少年の実話物語『ソフトボーイ』 [第70回] 下町育ちの"北野少年"が見た現代社会 人間同士の食物連鎖『アウトレイジ』 [第69回] "リアルと虚構の狭間"を生きる男、アントニオ猪木初主演作『アカシア』 [第68回] ヒーローも神もいない現代社会の惨劇 井筒監督の問題作『ヒーローショー』 [第67回] アイドルが地獄で微笑む『戦闘少女』ギャグ×血しぶき×殺陣の特盛り丼! [第66回]アナーキーな"社歌"で生産性アップ! 満島ひかり大進撃『川の底からこんにちは』 [第65回]超ヘビー級なシリアス劇『プレシャス』"家族"という名の地獄から脱出せよ [第64回]乱れ咲く"悪の華"ゼブラクイーン! 仲里依紗が過激変身『ゼブラーマン2』 [第63回] オタク王が見出した"夢と現実"の接点 ティム・バートン監督作『アリス──』 [第62回] バッドテイストな感動作『第9地区』 アナタはエビ人間とお友達になれるか? [第61回]スコセッシ監督の犯罪アトラクション『シャッターアイランド』へようこそ! [第60回]宮崎あおいの"映画代表作"が誕生! 毒を呑んでも生き続けよ『ソラニン』 [第59回]"おっぱいアート"は世界を救えるか? 母乳戦士の記録『桃色のジャンヌ・ダルク』 [第58回]現代に甦った"梶原一騎ワールド"韓流ステゴロ映画『息もできない』 [第57回]命知らずの変態レポーター、中東へ! 史上最大のどっきり?『ブルーノ』 [第56回]仲里依紗がアニメから実写へと跳躍! 母娘2代の時空旅行『時をかける少女』 [第55回]ビグロー監督はキャメロンより硬派! 人間爆弾の恐怖『ハート・ロッカー』 [第54回] "空気を読む"若者の悲劇『パレード』楽しいルームシェア生活の行き先は? [第53回]社会の"生け贄"に選ばれた男の逃亡劇 堺雅人主演『ゴールデンスランバー』 [第52回]『男はつらいよ』の別エンディング? "寅さん"の最期を描く『おとうと』 [第51回]ひとり相撲なら無敵のチャンピオン! 童貞暴走劇『ボーイズ・オン・ザ・ラン』 [第50回]ヒース・レジャーが最後に見た夢の世界 理想と欲望が渦巻く『Dr.パルナサスの鏡』 [第49回]トニー・ジャーは本気なんジャー! CGなしの狂乱劇再び『マッハ!弐』 [第48回]全米"オシャレ番長"ズーイー、見参! 草食系に捧ぐ『(500日)のサマー』 [第47回]市川崑監督&水谷豊"幻の名作"『幸福』28年の歳月を経て、初のパッケージ化 [第46回]押井守監督、大いなる方向転換か? 黒木メイサ主演『アサルトガールズ』 [第45回]ドラッグ漬けの芸能関係者必見!"神の子"の復活を追う『マラドーナ』 [第44回] 暴走する"システム"が止まらない! マイケル・ムーア監督『キャピタリズム』 [第43回]"人は二度死ぬ"という独自の死生観『ガマの油』役所広司の監督ぶりは? [第42回]誰もが共感、あるあるコメディー! 2ちゃんねる発『ブラック会社』 [第41回]タラとブラピが組むと、こーなった!! 戦争奇談『イングロリアス・バスターズ』 [第40回]"涅槃の境地"のラストシーンに唖然! 引退を賭けた角川春樹監督『笑う警官』 [第39回]伝説の男・松田優作は今も生きている 20回忌ドキュメント『SOUL RED』 [第38回]海より深い"ドメスティック・ラブ"ポン・ジュノ監督『母なる証明』 [第37回]チャン・ツィイーが放つフェロモン爆撃 悪女注意報発令せり!『ホースメン』 [第36回]『ソウ』の監督が放つ激痛バイオレンス やりすぎベーコン!『狼の死刑宣告』 [第35回]"負け組人生"から抜け出したい!! 藤原竜也主演『カイジ 人生逆転ゲーム』 [第34回]2兆円ペット産業の"開かずの間"に迫る ドキュメンタリー『犬と猫と人間と』 [第33回]"女神降臨"ペ・ドゥナの裸体が神々しい 空っぽな心に響く都市の寓話『空気人形』 [第32回]電気仕掛けのパンティをはくヒロイン R15コメディ『男と女の不都合な真実』 [第31回]萩原健一、松方弘樹の助演陣が過剰すぎ! 小栗旬主演の時代活劇『TAJOMARU』 [第30回]松本人志監督・主演第2作『しんぼる』 閉塞状況の中で踊り続ける男の悲喜劇 [第29回]シビアな現実を商品化してしまう才女、西原理恵子の自叙伝『女の子ものがたり』 [第28回]"おねマス"のマッコイ斉藤プレゼンツ 不謹慎さが爆笑を呼ぶ『上島ジェーン』 [第27回]究極料理を超えた"極地料理"に舌鼓! 納涼&グルメ映画『南極料理人』 [第26回]ハチは"失われた少年時代"のアイコン  ハリウッド版『HACHI』に涙腺崩壊! [第25回]白熱! 女同士のゴツゴツエゴバトル 金子修介監督の歌曲劇『プライド』 [第24回]悪意と善意が反転する"仮想空間"細田守監督『サマーウォーズ』 [第23回]沖縄に"精霊が暮らす楽園"があった! 中江裕司監督『真夏の夜の夢』 [第22回]"最強のライブバンド"の底力発揮! ストーンズ『シャイン・ア・ライト』 [第21回]身長15mの"巨大娘"に抱かれたい! 3Dアニメ『モンスターvsエイリアン』 [第20回]ウディ・アレンのヨハンソンいじりが冴え渡る!『それでも恋するバルセロナ』 [第19回]ケイト姐さんが"DTハンター"に! オスカー受賞の官能作『愛を読むひと』 [第18回]1万枚の段ボールで建てた"夢の砦"男のロマンここにあり『築城せよ!』 [第17回]地獄から甦った男のセミドキュメント ミッキー・ローク『レスラー』 [第16回]人生がちょっぴり楽しくなる特効薬 三木聡"脱力"劇場『インスタント沼』 [第15回]"裁判員制度"が始まる今こそ注目 死刑執行を克明に再現した『休暇』 [第14回]生傷美少女の危険な足技に痺れたい! タイ発『チョコレート・ファイター』 [第13回]風俗嬢を狙う快楽殺人鬼の恐怖! 極限の韓流映画『チェイサー』 [第12回]お姫様のハートを盗んだ男の悲哀 紀里谷監督の歴史奇談『GOEMON』 [第11回]美人女優は"下ネタ"でこそ輝く! ファレリー兄弟『ライラにお手あげ』 [第10回]ジャッキー・チェンの"暗黒面"? 中国で上映禁止『新宿インシデント』 [第9回]胸の谷間に"桃源郷"を見た! 綾瀬はるか『おっぱいバレー』 [第8回]"都市伝説"は映画と結びつく 白石晃士監督『オカルト』『テケテケ』 [第7回]少女たちの壮絶サバイバル!楳図かずおワールド『赤んぼ少女』 [第6回]派遣の"叫び"がこだまする現代版蟹工船『遭難フリーター』 [第5回]三池崇史監督『ヤッターマン』で深田恭子が"倒錯美"の世界へ [第4回]フランス、中国、日本......世界各国のタブーを暴いた劇映画続々 [第3回]水野晴郎の遺作『ギララの逆襲』岡山弁で語った最後の台詞は...... [第2回]『チェンジリング』そしてイーストウッドは"映画の神様"となった [第1回]堤幸彦版『20世紀少年』に漂うフェイクならではの哀愁と美学

NHKが放映しない"裏プロジェクトX" AV界のカリスマ監督『YOYOCHU』

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現役AV監督・代々木忠の半生を振り返ることで日本のアダルト産業の歴史を検証していくドキュメンタリー映画『YOYOCHU』。子どもにはピカチュウを、大人にはヨヨチュウを。
(C) 2010 ゴールド・ビュー/スターサンズ/石岡正人
 田口トモロヲがナレーションを務めるドキュメンタリー映画『YOYOCHU SEXと代々木忠の世界』は、国営放送NHKでは放映されることのない"裏プロジェクトX"だ。戦後間もない小倉で不良少年として鳴らした代々木忠は、その後、華道の世界から極道の世界へ、さらにストリップの興行師、ピンク映画の製作へと転身を続ける。"日活ロマンポルノ裁判"では9年間に及んだ係争を経て無罪を勝ち取り、1981年に「アテナ映像」を設立しAV製作に乗り出す。ヨヨチュウの半生は、そのまま日本のアダルト産業の歴史でもある。ヨヨチュウが監督した愛染恭子主演ビデオ『本番生撮り 淫欲のうずき』(81)は家電店がVHSデッキ購入者への特典にしたことから、爆発的な人気を呼んだ。VHS対ベータの規格戦争において、『淫欲のうずき』はVHS勝利に大きく寄与したと言われる。  AV作品ながら劇場公開された『ザ・オナニー』(82)をはじめスキャンダラスかつエロティックなヒット作を次々と放ってきたヨヨチュウだが、ヨヨチュウ作品の特徴はやはりただの"抜き"ビデオではなく、男と女の間にある"性"の深遠さをとことんまで掘り下げた型破りなドキュメンタリーとしての面白さだろう。『多重人格そして性』(97)に至っては、七重人格の女性・泉みゆきがAV撮影中に人格交替する様子を記録した貴重な資料映像となっている。『多重人格そして性』は、98年に『マルチエイジ・レボリューション』(情報センター出版局)として書籍化されており、これを読むと多重人格障害の実状に驚くだけでなく、ヨヨチュウの人間としての懐の深さにも驚かせられる。多重人格に悩む泉みゆきに対し、ヨヨチュウは「必然性があって、多重人格になったのだろう」と多重人格であることをそのまま受け止めるのだ。基本人格に他の人格を統合させようとは考えずに、幼少期にトラウマを負ったことで彼女の中で生まれた各人格をヨヨチュウは全肯定して接する。『多重人格そして性』に登場した泉みゆきに限らず、多くの女性たちが度量の広いヨヨチュウを信頼し、安心感を覚える。ヨヨチュウが見守る中、女たちは生まれたまんまの姿となり、男優たちに抱かれ、オーガズムに達する。そしてヨヨチュウは、モラルやトラウマから解放された彼女たちの歓喜の表情をビデオカメラに収める。それがヨヨチュウ作品だ。
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出演者とのコミュニケーションを大切にする代
々木監督。面接を充分に重ねることで出演者の
本音や悩みを聞き出した上で、カメラを回す。
 AV界のカリスマ監督であるヨヨチュウに、本誌サイゾー2月号(1月18日発売)でインタビューする機会に恵まれた。チャネリングや催眠術でも知られるヨヨチュウだけにどんな怪しい人物かと身構えてアテナ映像に向かったところ、出迎えたヨヨチュウは今年72歳になるとは思えないほどキリッとしたダンディーなオヤジさんであった。インタビュアーの目をしっかりと見据えた上で、こちらの問い掛けに対して、全部うなずいてみせるわけですよ。例えば「なんで代々木監督の元には多重人格者をはじめ、変わった人たちが集まるんでしょう?」と尋ねると、「それはだねぇ、ボクはチャネリングをやっているから分かるんだけど、同じような想いを持っている人間同士はやはり離れたところにいても引き合ってしまうものなんだよ」。また、「AVはトラウマを抱えた女性の受け皿でもある?」という質問に対しては、「確かにそういう一面もあるし、AVに出演する女性はみんなトラウマを抱えていると言い切るライターもいますね。でも、ボクに言わせれば、現代人はみんな心の問題や悩みを抱えているんです。AVというのは、本音を見せる媒体。その人の持っているトラウマや悩みまで、全部ビデオカメラで映し撮ってしまうんで、たまたまそういう部分が目立っているだけでしょう」と穏やかな口調で答える。なるほど、現代人は職場でも学校でも家庭でも、自分自身をさらけ出せる場所がどこにもないのかもしれない。ヨヨチュウ作品で、身も心もさらけ出した女性たちの素顔がラストカットで晴れ晴れと輝いて見えるのは、そのためなのか。
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93年に始まり、現在も続く代々木監督の人気シ
リーズ『ザ・面接』。出演した女性たちは、
男優たちとの温かみのあるSEXを経験するこ
とで、普段見せない痴態を見せることに。
 累計販売本数は700万本、監督した作品数は500本を超え、現在も現役AV監督として、人気シリーズ『ザ・面接』をはじめ月いちペースで新作を発表し続けているヨヨチュウ。かつていた極道の世界は今や経済ヤクザが跋扈し、もやは自分が居た任侠の世界ではないという。かといって、建前と本音があまりにも違いすぎる堅気の世界にも自分は存在できないと。虚と実の狭間であるAVの世界が、ヨヨチュウが生きるのにいちばん適しているのだそうだ。だが、その一方、"抜く"ためのSEXもどきが氾濫してしまった今のAV業界をヨヨチュウは憂いている。かつては豊田薫、バクシーシ山下、カンパニー松尾、伊勢鱗太朗、望月六郎、村西とおる......といった個性派監督たち、日比野達郎、速水健二、加藤鷹、チョコボール向井、太賀麻郎......といった強者男優たちがAV界には群雄割拠していたが、今ではどのメーカーもマニュアルに従って"抜き"ビデオだけを撮るようになってしまい、まったく新しい人材が育っていない状態だと指摘する。強いては今の日本社会そのものが、本音で向かい合うことや心の篭ったSEXの営みをやめてしまった危機的状況ではないかと警鐘を鳴らす。  ヨヨチュウのトークはさらに熱を帯び、やがてスピリチュアル系の世界へと羽ばたく。人間は大脳だけでなく、自分の感情や本能に忠実になることで、想像以上のパワーを発揮できるという。また、オーガズムを経験することで、単に生きる喜びを知るだけでなく、物事を鳥瞰して見ることができ、空からのメッセージもキャッチすることができるようになるという。凄すぎるよ、ヨヨチュウ! ヨヨチュウの世界を体感することは、宇宙旅行を体験するのと同じくらい刺激的なのだ。ヨヨチュウという名の深遠なる宇宙を体験してみたい方は、ぜひ映画館で『YOYOCHU』に触れてみてほしい。地上波テレビでは放映されることのない、歴史的資料価値の高いエロ映像と本音満載のドキュメンタリーに釘付けになるに違いない。 (文=長野辰次) yoyo07.jpg 『YOYOCHU SEXと代々木忠の世界』 監督/石岡正人 ナレーション/田口トモロヲ 出演/代々木忠、笑福亭鶴瓶、槇村さとる、和田秀樹、藤本由香里、加藤鷹、愛染恭子、村西とおる、高橋がなり  配給/スターサンズ +R18 1月22日(土)より銀座シネパトス、渋谷アップリンクXほか全国ロードショー <http://www.yoyochu.com>
マルチエイジ・レボリューション 驚愕のドキュメント。 amazon_associate_logo.jpg
●深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】INDEX [第100回]エロスとタブーを交配した"至高の美女" 禁断のサイエンスホラー『スプライス』 [第99回]2010年に活躍した女優を勝手に表彰! 満島ひかりに"面倒くさい女"大賞を [第98回]大人だって"ドラえもん"にいて欲しい 残念男の逆転劇『エリックを探して』 [第97回]平凡な高校生デイヴは2度変身する!原点回帰のヒーロー『キック・アス』 [第96回]村上春樹の超絶ベストセラーの映画化『ノルウェイの森』はどこにある? [第95回]実在した"奇妙な高額バイト"の顛末 心理サスペンス『エクスペリメント』 [第94回]"アル中"カメラマンの泣き笑い人生『酔いがさめたら、うちに帰ろう。』 [第93回]朝ドラと異なる映画『ゲゲゲの女房』ゴールなき"貧乏耐久"2人3脚走 [第92回]バラエティーでの実績は通用するか? テリー伊藤の初監督作『10億円稼ぐ』 [第91回] 不謹慎なる社会派エンタテイメント『裁判長!ここは懲役4年でどうすか』 [第90回]"世界のナベアツ"大阪府知事に就任! 政治コメディ『さらば愛しの大統領』 [第89回]自分の恋愛もプロデュースする女優、ドリュー・バリモア主演『遠距離恋愛』 [第88回]スタローンが立ち上げた"筋肉共和国"男たちの祭典『エクスペンダブルズ』 [第87回]元"おはガール"安藤聖の再起動ドラマ 就職氷河期を生きる『バカがウラヤマシイ』 [第86回]マイノリティーは"理想郷"を目指す。筒井文学の金字塔『七瀬ふたたび』 [第85回]清純派・佐藤寛子が美しく"変態"! 官能サスペンス『ヌードの夜──』 [第84回]死を意識して、ギラギラ輝く男たち! 三池節、大バクハツ『十三人の刺客』 [第83回] 女を食い物にする男どもは全員処刑! モダン社会の闇を暴く『ミレニアム』 [第82回] "企画AV女優"たちの青春残酷物語 性なる鎮魂劇『名前のない女たち』 [第81回]猫を見れば、人間社会が見えてくる! 世界の人気猫大集合『ネコを探して』 [第80回]原恵一監督の新作は辛口ファンタジー 退屈な"日常生活"を彩る『カラフル』 [第79回]米軍に実在した"超能力部隊"の真実!? ムー民、必見『ヤギと男と男と壁と』 [第78回]戦場から帰還した夫は"芋虫男"だった! ヤクザ監督の反戦映画『キャタピラー』 [第77回] 白ユリの花開くガールズの妖しい世界 H系ホラー『ジェニファーズ・ボディ』 [第76回] 爽やか系青春ゾンビ映画にホロリ......夏休みは『ゾンビランド』に集結せよ [第75回] "生きる"とは"見苦しい"ということ 藤沢周平の時代活劇『必死剣 鳥刺し』 [第74回]初恋の美少女は200歳の吸血鬼だった! 北欧産のホラー映画『ぼくのエリ』 [第73回] "三億円事件"の真相を解き明かす! 桜タブーに挑んだ『ロストクライム』 [第72回/特別編] 上映反対で揺れる問題作『ザ・コーヴ』"渦中の人"リック・オバリー氏の主張 [第71回] 女子にモテモテになる方法、教えます。軟派少年の実話物語『ソフトボーイ』 [第70回] 下町育ちの"北野少年"が見た現代社会 人間同士の食物連鎖『アウトレイジ』 [第69回] "リアルと虚構の狭間"を生きる男、アントニオ猪木初主演作『アカシア』 [第68回] ヒーローも神もいない現代社会の惨劇 井筒監督の問題作『ヒーローショー』 [第67回] アイドルが地獄で微笑む『戦闘少女』ギャグ×血しぶき×殺陣の特盛り丼! [第66回]アナーキーな"社歌"で生産性アップ! 満島ひかり大進撃『川の底からこんにちは』 [第65回]超ヘビー級なシリアス劇『プレシャス』"家族"という名の地獄から脱出せよ [第64回]乱れ咲く"悪の華"ゼブラクイーン! 仲里依紗が過激変身『ゼブラーマン2』 [第63回] オタク王が見出した"夢と現実"の接点 ティム・バートン監督作『アリス──』 [第62回] バッドテイストな感動作『第9地区』 アナタはエビ人間とお友達になれるか? [第61回]スコセッシ監督の犯罪アトラクション『シャッターアイランド』へようこそ! [第60回]宮崎あおいの"映画代表作"が誕生! 毒を呑んでも生き続けよ『ソラニン』 [第59回]"おっぱいアート"は世界を救えるか? 母乳戦士の記録『桃色のジャンヌ・ダルク』 [第58回]現代に甦った"梶原一騎ワールド"韓流ステゴロ映画『息もできない』 [第57回]命知らずの変態レポーター、中東へ! 史上最大のどっきり?『ブルーノ』 [第56回]仲里依紗がアニメから実写へと跳躍! 母娘2代の時空旅行『時をかける少女』 [第55回]ビグロー監督はキャメロンより硬派! 人間爆弾の恐怖『ハート・ロッカー』 [第54回] "空気を読む"若者の悲劇『パレード』楽しいルームシェア生活の行き先は? [第53回]社会の"生け贄"に選ばれた男の逃亡劇 堺雅人主演『ゴールデンスランバー』 [第52回]『男はつらいよ』の別エンディング? "寅さん"の最期を描く『おとうと』 [第51回]ひとり相撲なら無敵のチャンピオン! 童貞暴走劇『ボーイズ・オン・ザ・ラン』 [第50回]ヒース・レジャーが最後に見た夢の世界 理想と欲望が渦巻く『Dr.パルナサスの鏡』 [第49回]トニー・ジャーは本気なんジャー! CGなしの狂乱劇再び『マッハ!弐』 [第48回]全米"オシャレ番長"ズーイー、見参! 草食系に捧ぐ『(500日)のサマー』 [第47回]市川崑監督&水谷豊"幻の名作"『幸福』28年の歳月を経て、初のパッケージ化 [第46回]押井守監督、大いなる方向転換か? 黒木メイサ主演『アサルトガールズ』 [第45回]ドラッグ漬けの芸能関係者必見!"神の子"の復活を追う『マラドーナ』 [第44回] 暴走する"システム"が止まらない! マイケル・ムーア監督『キャピタリズム』 [第43回]"人は二度死ぬ"という独自の死生観『ガマの油』役所広司の監督ぶりは? [第42回]誰もが共感、あるあるコメディー! 2ちゃんねる発『ブラック会社』 [第41回]タラとブラピが組むと、こーなった!! 戦争奇談『イングロリアス・バスターズ』 [第40回]"涅槃の境地"のラストシーンに唖然! 引退を賭けた角川春樹監督『笑う警官』 [第39回]伝説の男・松田優作は今も生きている 20回忌ドキュメント『SOUL RED』 [第38回]海より深い"ドメスティック・ラブ"ポン・ジュノ監督『母なる証明』 [第37回]チャン・ツィイーが放つフェロモン爆撃 悪女注意報発令せり!『ホースメン』 [第36回]『ソウ』の監督が放つ激痛バイオレンス やりすぎベーコン!『狼の死刑宣告』 [第35回]"負け組人生"から抜け出したい!! 藤原竜也主演『カイジ 人生逆転ゲーム』 [第34回]2兆円ペット産業の"開かずの間"に迫る ドキュメンタリー『犬と猫と人間と』 [第33回]"女神降臨"ペ・ドゥナの裸体が神々しい 空っぽな心に響く都市の寓話『空気人形』 [第32回]電気仕掛けのパンティをはくヒロイン R15コメディ『男と女の不都合な真実』 [第31回]萩原健一、松方弘樹の助演陣が過剰すぎ! 小栗旬主演の時代活劇『TAJOMARU』 [第30回]松本人志監督・主演第2作『しんぼる』 閉塞状況の中で踊り続ける男の悲喜劇 [第29回]シビアな現実を商品化してしまう才女、西原理恵子の自叙伝『女の子ものがたり』 [第28回]"おねマス"のマッコイ斉藤プレゼンツ 不謹慎さが爆笑を呼ぶ『上島ジェーン』 [第27回]究極料理を超えた"極地料理"に舌鼓! 納涼&グルメ映画『南極料理人』 [第26回]ハチは"失われた少年時代"のアイコン  ハリウッド版『HACHI』に涙腺崩壊! [第25回]白熱! 女同士のゴツゴツエゴバトル 金子修介監督の歌曲劇『プライド』 [第24回]悪意と善意が反転する"仮想空間"細田守監督『サマーウォーズ』 [第23回]沖縄に"精霊が暮らす楽園"があった! 中江裕司監督『真夏の夜の夢』 [第22回]"最強のライブバンド"の底力発揮! ストーンズ『シャイン・ア・ライト』 [第21回]身長15mの"巨大娘"に抱かれたい! 3Dアニメ『モンスターvsエイリアン』 [第20回]ウディ・アレンのヨハンソンいじりが冴え渡る!『それでも恋するバルセロナ』 [第19回]ケイト姐さんが"DTハンター"に! オスカー受賞の官能作『愛を読むひと』 [第18回]1万枚の段ボールで建てた"夢の砦"男のロマンここにあり『築城せよ!』 [第17回]地獄から甦った男のセミドキュメント ミッキー・ローク『レスラー』 [第16回]人生がちょっぴり楽しくなる特効薬 三木聡"脱力"劇場『インスタント沼』 [第15回]"裁判員制度"が始まる今こそ注目 死刑執行を克明に再現した『休暇』 [第14回]生傷美少女の危険な足技に痺れたい! タイ発『チョコレート・ファイター』 [第13回]風俗嬢を狙う快楽殺人鬼の恐怖! 極限の韓流映画『チェイサー』 [第12回]お姫様のハートを盗んだ男の悲哀 紀里谷監督の歴史奇談『GOEMON』 [第11回]美人女優は"下ネタ"でこそ輝く! ファレリー兄弟『ライラにお手あげ』 [第10回]ジャッキー・チェンの"暗黒面"? 中国で上映禁止『新宿インシデント』 [第9回]胸の谷間に"桃源郷"を見た! 綾瀬はるか『おっぱいバレー』 [第8回]"都市伝説"は映画と結びつく 白石晃士監督『オカルト』『テケテケ』 [第7回]少女たちの壮絶サバイバル!楳図かずおワールド『赤んぼ少女』 [第6回]派遣の"叫び"がこだまする現代版蟹工船『遭難フリーター』 [第5回]三池崇史監督『ヤッターマン』で深田恭子が"倒錯美"の世界へ [第4回]フランス、中国、日本......世界各国のタブーを暴いた劇映画続々 [第3回]水野晴郎の遺作『ギララの逆襲』岡山弁で語った最後の台詞は...... [第2回]『チェンジリング』そしてイーストウッドは"映画の神様"となった [第1回]堤幸彦版『20世紀少年』に漂うフェイクならではの哀愁と美学

エロスとタブーを交配した"至高の美女" 禁断のサイエンスホラー『スプライス』

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『CUBE キューブ』の奇才ヴィンチェンゾ・ナタリ監督の最新作『スプライス』。遺伝子の組み換えで誕生した美しき新生命体ドレンを演じるのは、フランスの美人女優デルフィーヌ・シャネアック。纏足みたいに細い足首がたまらんです。
(c)2008 SPLICE(COPPERHEART)PRPDUCTION INC.-GAUMONT
 デビュー作『CUBE キューブ』(97)で今まで誰も見たことのない斬新な映像世界を体験させてくれたヴィンチェンゾ・ナタリ監督の最新作『スプライス』は、驚きに溢れた久々の会心作となっている。遺伝子工学をモチーフにしたサイエンスホラーである本作を、ヴィンチェンゾ監督は大ヒット作『キューブ』の次回作として発表するつもりだった。少年期にコミックアーティストを夢見ていたヴィンチェンゾ監督は遺伝子実験によって誕生する異形のクリーチャーたちのデザイン画を入念に準備していたが、予算が掛かりすぎることから製作費の目処がたたずに製作は見送りに。だが、完成まで10年以上の歳月を費やしたことで、ヴィンチェンゾ監督ならではのユニークさに加え、エロティックかつ人間のモラルに問い掛けるひと筋縄で済まないサスペンスドラマに仕上がった。  クライヴ(エイドリアン・ブロディ)とエルサ(サラ・ポーリー)は科学者夫婦。動物の遺伝子を組み合わせることで製薬会社にとって有益な新種の生命体を生み出す実験を続けてきた。ある日、エルサは遺伝子操作の実験中に、人間の遺伝子を加えるとどうなるのかという好奇心に捕われる。クローン人間を作ることは禁じられているが、これは他にも多種多様な動物の遺伝子が交じっており、クローン人間とは言えないのではないか。反対していた夫のクライヴも結局は科学者としての興味が倫理観に勝ってしまい、エルサの実験を止めることができない。どんな実験結果が出てくるのか、自分の目で確かめてみたいのだ。そうして生まれてきたのが"新生命体ドレン"。爬虫類とも鳥類とも両生類とも判別できない奇妙な生態のドレンだったが、驚異的な成長を遂げ、次第に神秘的な美しさをたたえた女性へと変態していく。エルサは母性的な愛情をドレンに注ぎ、クライヴは抗いがたい危険な魅力をドレンに感じるようになっていく。成長したドレンは天使なのか悪魔なのか? クライヴとエルサの運命は大きく狂い始める。  世界初のクローン羊ドリー(1997~2003)は飼育係が巨乳女優ドリー・パートンに因んで命名したそうだが、本作のヒロインであるドレンはエルサがNERDとデザインされたTシャツを着ていたことから名付けられる。知能を持ち始めたドレンが初めて発した言語がNERD(まぬけ、変わり者、オタク)だったのだ。そこでエルサはNERDの配列を変えて、DRENと新生命体に名付ける。成長過程のドレンはめちゃめちゃカワイイ。だが、ライオンの赤ちゃん然り、人間の赤ちゃん然り、非力な幼年期をそのカワイさを武器として身を守る生き物ほど、成長後は恐ろしい存在に育つもの。大人になったドレンはエルサとクライヴ夫婦の科学者としてのモラルを揺さぶるだけでなく、人類全体に影響を及ぼしかねない魔物になっていく。NERDを逆から読んだDRENという名前に込められたメッセージは意味深である。
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科学者のエルサ(サラ・ポーリー)は幼少期に
母親から虐待されたトラウマがあり、子どもが産
めずにいた。ドレンを我が子のようにかわいがる。
 ケン・ラッセル監督の『アルタード・ステーツ/未知への挑戦』(79)、クリストファー・ウォーケン主演の『ブレインストーム』(83)デヴィッド・クローネンバーグ監督の『ザ・フライ』(86)、H・R・ギーガーがクリーチャーデザインを担当した『スピーシーズ 種の起源』(95)といったSFホラー愛好家には堪らない本作だが、上半身は美女で足首は細くて纏足(てんそく)状態、サソリのような鋭い尻尾を有し、エクスタシーを感じると翼が生えてくるドレンは好き嫌いがハッキリ分かれるキャラクターだろう。ドレンちゃんのことを「今までに見たことのないタイプ。超カワイイ!」と感じる人の目には地上に降りてきた天使のように映り、「どこがカワイイの? グロくてキモいよ」と感じる人には悪魔のように毒々しく映るはずだ。  ちなみに"お蔵入り企画"と化していた本作の製作総指揮を買って出たのは、『ヘルボーイ』(04)、『パンズ・ラビリンス』(06)のギレルモ・デル・トロ監督。いかにもデル・トロ作品らしい、奇妙なクリーチャーたちが本作を彩る。冒頭には先輩格の新生命体ジンジャー&フレッドが登場するが、ジンジャー&フレッドの容姿がもろに"男性器"と"女性器"だったり、物語の後半には科学者のモラルうんぬん以上に近親相姦&獣姦を連想させるシーンも用意されている。多分、本作の企画がお蔵入り状態となっていたのは、そんなアンモラルな部分が"良識ある投資家"たちに敬遠されたためだろう。デル・トロいわく「真のホラーとは、道徳的に危険なもの」とのこと。日本のアニメや特撮シリーズを少年期に見て育ったデル・トロさんは、よ~く分かってらっしゃる。奇才ヴィンチェンゾ監督のイメージ通りに撮れる環境をセッティングしてあげたデル・トロ氏にも座布団を差し上げたい。  タイトルとなっているspliceは「接合、結合、結婚」という意味だが、「キネマ旬報」(98年9月上旬号)に『CUBE キューブ』日本公開時のヴィンチェンゾ監督のインタビュー記事が掲載されており、興味深い。その記事の中でヴィンチェンゾ監督はこう語っている。「影響を受けた監督はキューブリック、ヒッチコック、クローネンバーグ、リンチ、フェリーニ、ブニュエルといったところかな。リンチに関しては感性に近しい部分があるみたいで、僕の作品がリンチの世界に似すぎないようにずっと努力してきたぐらいなんだよ。リンチの『イレイザーヘッド』は、僕の大好きな映画の1本だしね」
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『戦場のピアニスト』(02)のエイドリアン・
ブロディと『死ぬまでにしたい10のこと』(03)
のサラ・ポーリー共演。善人顔した2人がとんでも
ないことをやらかすところが、本作のキャスティング
のミソですな。
 なるほど、キューブリックの革新性、観客の目を惹き付けるヒッチコック演出、クローネンバーグのグロテスクさ、リンチの悪夢感、ジンジャー&フレッドはフェリーニの晩年のタイトルだし、ブニュエル特有の背徳感も本作には漂うではないか。ついでに言うなら、ヴィンチェンゾ監督は日本では三池崇史監督がお気に入りらしい。奇妙なクリーチャーが出てくるところや攻め込んだB級感は、三池作品とも似ている。ヴィンチェンゾ監督が撮りたくて撮りたくてたまらなかった『スプライス』は、映画史に名前を残す世界の巨匠たちの遺伝子を結合させた作品なのかもしれない。  巨乳女優にちなんだ名前を与えられたクローン羊のドリーは、研究室でどんな夢を見ながら6歳の生涯を終えたのだろうか。人間ではない新生命体として生まれたにも関わらず人間のモラルを押しつけられるドレンは、冷たい水槽の底でどんな将来を思い描いていたのだろうか。ただ自分の本能や感情に素直に生きているだけなのに、どうして親代わりのエルサとクライヴが自分の存在に困惑しているのか、ドレンにはちっとも理解できない。ドレンにとっては、自分の生まれてきた世界そのものが『CUBE キューブ』のような不条理さに満ちた監獄みたいに映っていたはずだ。 (文=長野辰次) sprices04.jpg 『スプライス』 監督・脚本/ヴィンチェンゾ・ナタリ 製作総指揮/ギレルモ・デル・トロ、ジョエル・シルバー 撮影監督/永田鉄男 出演/エイドリアン・ブロディ、サラ・ポーリー、デルフィーヌ・シャネアック  配給/クロックワークス 1月8日(土)より新宿バルト9ほかにて全国ロードショー <http://www.splice-movie.jp>
CUBE キューブ あら、安い! amazon_associate_logo.jpg
●深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】INDEX [第99回]2010年に活躍した女優を勝手に表彰! 満島ひかりに"面倒くさい女"大賞を [第98回]大人だって"ドラえもん"にいて欲しい 残念男の逆転劇『エリックを探して』 [第97回]平凡な高校生デイヴは2度変身する!原点回帰のヒーロー『キック・アス』 [第96回]村上春樹の超絶ベストセラーの映画化『ノルウェイの森』はどこにある? [第95回]実在した"奇妙な高額バイト"の顛末 心理サスペンス『エクスペリメント』 [第94回]"アル中"カメラマンの泣き笑い人生『酔いがさめたら、うちに帰ろう。』 [第93回]朝ドラと異なる映画『ゲゲゲの女房』ゴールなき"貧乏耐久"2人3脚走 [第92回]バラエティーでの実績は通用するか? テリー伊藤の初監督作『10億円稼ぐ』 [第91回] 不謹慎なる社会派エンタテイメント『裁判長!ここは懲役4年でどうすか』 [第90回]"世界のナベアツ"大阪府知事に就任! 政治コメディ『さらば愛しの大統領』 [第89回]自分の恋愛もプロデュースする女優、ドリュー・バリモア主演『遠距離恋愛』 [第88回]スタローンが立ち上げた"筋肉共和国"男たちの祭典『エクスペンダブルズ』 [第87回]元"おはガール"安藤聖の再起動ドラマ 就職氷河期を生きる『バカがウラヤマシイ』 [第86回]マイノリティーは"理想郷"を目指す。筒井文学の金字塔『七瀬ふたたび』 [第85回]清純派・佐藤寛子が美しく"変態"! 官能サスペンス『ヌードの夜──』 [第84回]死を意識して、ギラギラ輝く男たち! 三池節、大バクハツ『十三人の刺客』 [第83回] 女を食い物にする男どもは全員処刑! モダン社会の闇を暴く『ミレニアム』 [第82回] "企画AV女優"たちの青春残酷物語 性なる鎮魂劇『名前のない女たち』 [第81回]猫を見れば、人間社会が見えてくる! 世界の人気猫大集合『ネコを探して』 [第80回]原恵一監督の新作は辛口ファンタジー 退屈な"日常生活"を彩る『カラフル』 [第79回]米軍に実在した"超能力部隊"の真実!? ムー民、必見『ヤギと男と男と壁と』 [第78回]戦場から帰還した夫は"芋虫男"だった! ヤクザ監督の反戦映画『キャタピラー』 [第77回] 白ユリの花開くガールズの妖しい世界 H系ホラー『ジェニファーズ・ボディ』 [第76回] 爽やか系青春ゾンビ映画にホロリ......夏休みは『ゾンビランド』に集結せよ [第75回] "生きる"とは"見苦しい"ということ 藤沢周平の時代活劇『必死剣 鳥刺し』 [第74回]初恋の美少女は200歳の吸血鬼だった! 北欧産のホラー映画『ぼくのエリ』 [第73回] "三億円事件"の真相を解き明かす! 桜タブーに挑んだ『ロストクライム』 [第72回/特別編] 上映反対で揺れる問題作『ザ・コーヴ』"渦中の人"リック・オバリー氏の主張 [第71回] 女子にモテモテになる方法、教えます。軟派少年の実話物語『ソフトボーイ』 [第70回] 下町育ちの"北野少年"が見た現代社会 人間同士の食物連鎖『アウトレイジ』 [第69回] "リアルと虚構の狭間"を生きる男、アントニオ猪木初主演作『アカシア』 [第68回] ヒーローも神もいない現代社会の惨劇 井筒監督の問題作『ヒーローショー』 [第67回] アイドルが地獄で微笑む『戦闘少女』ギャグ×血しぶき×殺陣の特盛り丼! [第66回]アナーキーな"社歌"で生産性アップ! 満島ひかり大進撃『川の底からこんにちは』 [第65回]超ヘビー級なシリアス劇『プレシャス』"家族"という名の地獄から脱出せよ [第64回]乱れ咲く"悪の華"ゼブラクイーン! 仲里依紗が過激変身『ゼブラーマン2』 [第63回] オタク王が見出した"夢と現実"の接点 ティム・バートン監督作『アリス──』 [第62回] バッドテイストな感動作『第9地区』 アナタはエビ人間とお友達になれるか? [第61回]スコセッシ監督の犯罪アトラクション『シャッターアイランド』へようこそ! [第60回]宮崎あおいの"映画代表作"が誕生! 毒を呑んでも生き続けよ『ソラニン』 [第59回]"おっぱいアート"は世界を救えるか? 母乳戦士の記録『桃色のジャンヌ・ダルク』 [第58回]現代に甦った"梶原一騎ワールド"韓流ステゴロ映画『息もできない』 [第57回]命知らずの変態レポーター、中東へ! 史上最大のどっきり?『ブルーノ』 [第56回]仲里依紗がアニメから実写へと跳躍! 母娘2代の時空旅行『時をかける少女』 [第55回]ビグロー監督はキャメロンより硬派! 人間爆弾の恐怖『ハート・ロッカー』 [第54回] "空気を読む"若者の悲劇『パレード』楽しいルームシェア生活の行き先は? [第53回]社会の"生け贄"に選ばれた男の逃亡劇 堺雅人主演『ゴールデンスランバー』 [第52回]『男はつらいよ』の別エンディング? "寅さん"の最期を描く『おとうと』 [第51回]ひとり相撲なら無敵のチャンピオン! 童貞暴走劇『ボーイズ・オン・ザ・ラン』 [第50回]ヒース・レジャーが最後に見た夢の世界 理想と欲望が渦巻く『Dr.パルナサスの鏡』 [第49回]トニー・ジャーは本気なんジャー! CGなしの狂乱劇再び『マッハ!弐』 [第48回]全米"オシャレ番長"ズーイー、見参! 草食系に捧ぐ『(500日)のサマー』 [第47回]市川崑監督&水谷豊"幻の名作"『幸福』28年の歳月を経て、初のパッケージ化 [第46回]押井守監督、大いなる方向転換か? 黒木メイサ主演『アサルトガールズ』 [第45回]ドラッグ漬けの芸能関係者必見!"神の子"の復活を追う『マラドーナ』 [第44回] 暴走する"システム"が止まらない! マイケル・ムーア監督『キャピタリズム』 [第43回]"人は二度死ぬ"という独自の死生観『ガマの油』役所広司の監督ぶりは? [第42回]誰もが共感、あるあるコメディー! 2ちゃんねる発『ブラック会社』 [第41回]タラとブラピが組むと、こーなった!! 戦争奇談『イングロリアス・バスターズ』 [第40回]"涅槃の境地"のラストシーンに唖然! 引退を賭けた角川春樹監督『笑う警官』 [第39回]伝説の男・松田優作は今も生きている 20回忌ドキュメント『SOUL RED』 [第38回]海より深い"ドメスティック・ラブ"ポン・ジュノ監督『母なる証明』 [第37回]チャン・ツィイーが放つフェロモン爆撃 悪女注意報発令せり!『ホースメン』 [第36回]『ソウ』の監督が放つ激痛バイオレンス やりすぎベーコン!『狼の死刑宣告』 [第35回]"負け組人生"から抜け出したい!! 藤原竜也主演『カイジ 人生逆転ゲーム』 [第34回]2兆円ペット産業の"開かずの間"に迫る ドキュメンタリー『犬と猫と人間と』 [第33回]"女神降臨"ペ・ドゥナの裸体が神々しい 空っぽな心に響く都市の寓話『空気人形』 [第32回]電気仕掛けのパンティをはくヒロイン R15コメディ『男と女の不都合な真実』 [第31回]萩原健一、松方弘樹の助演陣が過剰すぎ! 小栗旬主演の時代活劇『TAJOMARU』 [第30回]松本人志監督・主演第2作『しんぼる』 閉塞状況の中で踊り続ける男の悲喜劇 [第29回]シビアな現実を商品化してしまう才女、西原理恵子の自叙伝『女の子ものがたり』 [第28回]"おねマス"のマッコイ斉藤プレゼンツ 不謹慎さが爆笑を呼ぶ『上島ジェーン』 [第27回]究極料理を超えた"極地料理"に舌鼓! 納涼&グルメ映画『南極料理人』 [第26回]ハチは"失われた少年時代"のアイコン  ハリウッド版『HACHI』に涙腺崩壊! [第25回]白熱! 女同士のゴツゴツエゴバトル 金子修介監督の歌曲劇『プライド』 [第24回]悪意と善意が反転する"仮想空間"細田守監督『サマーウォーズ』 [第23回]沖縄に"精霊が暮らす楽園"があった! 中江裕司監督『真夏の夜の夢』 [第22回]"最強のライブバンド"の底力発揮! ストーンズ『シャイン・ア・ライト』 [第21回]身長15mの"巨大娘"に抱かれたい! 3Dアニメ『モンスターvsエイリアン』 [第20回]ウディ・アレンのヨハンソンいじりが冴え渡る!『それでも恋するバルセロナ』 [第19回]ケイト姐さんが"DTハンター"に! オスカー受賞の官能作『愛を読むひと』 [第18回]1万枚の段ボールで建てた"夢の砦"男のロマンここにあり『築城せよ!』 [第17回]地獄から甦った男のセミドキュメント ミッキー・ローク『レスラー』 [第16回]人生がちょっぴり楽しくなる特効薬 三木聡"脱力"劇場『インスタント沼』 [第15回]"裁判員制度"が始まる今こそ注目 死刑執行を克明に再現した『休暇』 [第14回]生傷美少女の危険な足技に痺れたい! タイ発『チョコレート・ファイター』 [第13回]風俗嬢を狙う快楽殺人鬼の恐怖! 極限の韓流映画『チェイサー』 [第12回]お姫様のハートを盗んだ男の悲哀 紀里谷監督の歴史奇談『GOEMON』 [第11回]美人女優は"下ネタ"でこそ輝く! ファレリー兄弟『ライラにお手あげ』 [第10回]ジャッキー・チェンの"暗黒面"? 中国で上映禁止『新宿インシデント』 [第9回]胸の谷間に"桃源郷"を見た! 綾瀬はるか『おっぱいバレー』 [第8回]"都市伝説"は映画と結びつく 白石晃士監督『オカルト』『テケテケ』 [第7回]少女たちの壮絶サバイバル!楳図かずおワールド『赤んぼ少女』 [第6回]派遣の"叫び"がこだまする現代版蟹工船『遭難フリーター』 [第5回]三池崇史監督『ヤッターマン』で深田恭子が"倒錯美"の世界へ [第4回]フランス、中国、日本......世界各国のタブーを暴いた劇映画続々 [第3回]水野晴郎の遺作『ギララの逆襲』岡山弁で語った最後の台詞は...... [第2回]『チェンジリング』そしてイーストウッドは"映画の神様"となった [第1回]堤幸彦版『20世紀少年』に漂うフェイクならではの哀愁と美学

2010年に活躍した女優を勝手に表彰! 満島ひかりに"面倒くさい女"大賞を

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『川の底からこんにちは』『悪人』『モテキ』でも好演した満島ひかりの主演作『カケラ』。旬の女優・満島の今まで見せたことのないフェティッシュな魅力が詰め込まれている。
(c)ゼロ・ピクチュアズ
 年の瀬ということで今回は趣向を変えて、2010年に映画界で活躍したミューズたちをプレイバック。現在もっとも目が離せない若手女優といえば、『愛のむきだし』『プライド』(09)でブレイクした満島ひかり。2010年も潰れかけたシジミ工場を建て直す『川の底からこんにちは』、桜沢エリカ原作のガールズムービー『カケラ』の2本に主演、賞レースの本命『悪人』では事件の鍵を握る性悪女・石橋佳乃役を好演、さらに大根仁監督の深夜ドラマ『モテキ』(テレビ東京系、DVDリリース中)では神聖かまってちゃんの「ロックンロールは鳴り止まないっ」を絶唱するという弾けっぷりを見せた。もう、満島ひかりが止まらないって感じですな。『川の底から』では「どーせ、私は中の下ですから」と自己否定しながら、川の底でキラリと光る。うざいけど、チャーミング。むかつくけど、ベリキュート。満島ひかりは、面倒くさい女を演じさせたら日本一! 謹んで満島ひかりさんに、日本映画"面倒くさい女"大賞を進呈します。  12月22日にDVDリリースされた『カケラ』は、女子大生・ハルちゃん(満島ひかり)とメディカルアーティストのリコ(中村映里子)との親友以上、レズ未満の微妙な関係を描いた作品。奥田瑛二の長女で、ロンドン&NY留学を経験した安藤モモ子の監督デビュー作だが、表参道近辺を舞台にした桜沢エリカの原作コミック『ラブ・ヴァイブス』(祥伝社)を思い切って脚色。大塚・早稲田近辺に舞台を置き換え、70~80年代のATG作品を思わせる邦画テイストな作品に仕立てている。満島は得意としているハイテンション演技を封印して、「好きになるのに男も女も関係ない」と公言するリコの積極さに戸惑う地味めな女子大生・ハルちゃんをフワフワと演じている。満島の付けるブラとパンティーは上下バラバラだったり、最後に着るワンピースも満島に絶妙に似合わないようにデザインするなど、安藤監督の繊細な演出が見どころ。  実は安藤監督がもうひとりのヒロイン・中村映里子を現場で付きっきりで演出していたため、あえて放置状態にされていた満島ひかりは撮影後半で蓄積したモヤモヤが爆発し、安藤監督とマジでケンカを始めたそうだ。「もう撮影やめよ。いいよ、帰って。映画も終わり」「そんな無責任な監督でいいんですかッ」と安藤監督と満島の間でガチな言葉がぶつかり、胸ぐらをつかまんばかりの迫力だったらしい(本人たちの談)。もっとも、近くでケンカを見守っていたスタッフの「その感情を溜め込んだ感じが、ハルちゃんじゃない?」のひと言で2人はピタッとケンカを止めたそうだが。劇中でもヒートアップしたハルちゃんとリコが居酒屋で激ビンタし合うシーンがあり、女同士のケンカの壮絶さを伺わせる。本気モードで怒っている女性に、男は迂闊に近づけませんよ。
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ボーイフレンドのいる大学生のハル(満島ひか
り)だが、ミステリアスなリコ(中村映里子)
に引き寄せられていく。満島はてっきりリコ役
を演じると思っていたそうだが、ふだんと真逆
のフワフワした役に挑んだ。
 また、『カケラ』で話題を呼んだのが、劇中で満島ひかりがワキ毛を無防備に見せているシーン。安藤監督いわく「優柔不断そうに見えるハルちゃんだが、実はしっかり生きている芯の強い子」という演出意図らしいが、人気女優の脇からヘアが伸びているシーンはインパクト大。ネットで"満島ひかり"と検索すると、もれなく"ワキ毛"が関連キーワードとして出てくるので、本人的にはけっこー気にしている様子。でもまぁ、『川の底から』の新鋭・石井裕也監督との入籍、おめでとうございます。新藤兼人&乙羽信子夫妻のように今後も二人三脚で日本映画史に名作を残してください。  2010年の上半期を猛ダッシュで駆け抜けたのは、仲里依紗。実写版『時をかける少女』(DVDリリース中)で母親想いの健気な高校生を演じた直後に、三池崇史監督の『ゼブラーマン ゼブラシティの逆襲』(DVDリリース中)で"悪の化身"ゼブラクイーンに変身し、レディー・ガガばりのセクシーダンス&ボーカルを披露した。本人に聞いたところ「自分じゃないみたい。撮影中は役に集中してて、記憶が全然ないんですよ~」というからスゴい。"多重人格女優"と呼んでいいですか。大竹しのぶが四重人格者を演じたNHKドラマ『存在の深き眠り』(96)をリメイクする際は、ぜひ仲里依紗主演作としてお願いしたい。"最多出演女優賞"を贈りたいのは谷村美月。青春ボクシング映画『ボックス!』(DVDリリース中)でぽっちゃりした女子マネジャー、三池監督の時代劇『十三人の刺客』では稲垣吾郎演じるバカ殿に手込めにされる人妻、阪本順治監督の『行きずりの街』ではスーパーマーケットのお勤め品を漁るどんよりした女の子。さらに秋以降にはクリクリの坊主頭を披露した実録闘病もの『おにいちゃんのハナビ』、業界コメディ『明日やること ゴミ出し 愛想笑い 恋愛。』、現在公開中の文芸オムニバス『海炭市叙景』と3作連続で主演。よく働くなぁと感心していたら、「大阪の実家にいたときのほうが、高校に通いながらだったので大変でした。今は仕事に専念できるから楽なんです」とニッコリ微笑むのだった。ええ子やなぁ。
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『カケラ』でも微妙なレズシーンがあるので、満島
ひかりファンは見逃せません。
 "エロス系アカデミー賞"があればノミネート確実なのが、『ヌードの夜 愛は惜しみなく奪う』の佐藤寛子、『アウトレイジ』(DVDリリース中)と『nude』の渡辺奈緒子。『ヌードの夜 愛は惜しみなく奪う』は、『花と蛇』(04)、『花と蛇2 パリ 静子』(05)の石井隆監督からのオファーに脱アイドルを図る佐藤寛子がしっかり応えたもの。佐藤寛子をインタビューした際に「杉本彩は『花と蛇2』に主演したときに、"肉体をさらせない者に、魂をさらせるわけがない"という名言を残したけど......」と振ると、「脱げば、魂をさらせるわけではないと思うんです」とさらりと返答。大胆ヌードを披露しながらも、インテリジェンスを感じさせる女優ですな。石井隆監督に続いて、彼女の魅力を存分に引き出す骨のある監督が現われて欲しいところ。渡辺奈緒子主演の『nude』(1月17日DVDリリース)はAVから引退したみひろの自伝小説の映画化。演技力はまだまだ発展途上中の渡辺奈緒子だが、『nude』ではAV女優みひろに少しでも近づくためにフルヌードで男優との3Pなどの過激シーンに体当たりで挑んだ。メイキング映像を見ると、AVに出演するかどうかで悩むシーンをリアルに撮るために、小沼雄一監督が「渡辺さんの演技はまったくなってない。本当に主演でいいの?」と厳しい言葉を浴びせている。監督の愛のムチに、奥歯を噛み締めた演技で応える彼女のガッツに思わずもらい泣き。『nude』『アウトレイジ』で見せた度胸の良さで、これからの飛躍を期待してます。  最後にもうひとり、2010年の活躍を特筆したいのが中村ゆり。ホラー映画『恐怖』(DVDリリース中)ではマッドサイエンティストの母親(片平なぎさ)からオカルト手術のモルモットにされる長女、佐藤純彌監督のシリアス時代劇『桜田門外ノ変』では主人公(大沢たかお)の身代わりで拷問死する芸者、公開中の『ばかもの』では新興宗教の教祖に全財産を貢いでしまう信者。身内から利用され、裏切られ、見捨てられるという、美人なのに幸せに縁遠い役ばかり。これまで木村多江、麻生久美子が十八番としていた"幸薄き女"のポジションを、今では中村ゆりが受け継いだ感がある。世の中の不条理を一気に引き受ける"身代わり地蔵"みたいで神々しいじゃないですか。ありがたや、ありがたや。  年末のドサクサに好き勝手なこと言って、女優のみなさんごめんなさい。映画ファンを魅了した女優の方々のさらなるご活躍を楽しみにしています! (文=長野辰次) 『カケラ』 原作/桜沢エリカ 監督・脚本/安藤モモ子 撮影/石井浩一 音楽/ジェームズ・イハ 出演/満島ひかり、中村映里子、津川雅彦、かたせ梨乃、光石研、根岸季依、志茂田景樹、大堀恵 発売・販売元/アミューズソフト DVDレンタル&発売中 <http://love-kakera.jp>
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●深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】INDEX [第98回] 大人だって"ドラえもん"にいて欲しい 残念男の逆転劇『エリックを探して』 [第97回]平凡な高校生デイヴは2度変身する!原点回帰のヒーロー『キック・アス』 [第96回]村上春樹の超絶ベストセラーの映画化『ノルウェイの森』はどこにある? [第95回]実在した"奇妙な高額バイト"の顛末 心理サスペンス『エクスペリメント』 [第94回]"アル中"カメラマンの泣き笑い人生『酔いがさめたら、うちに帰ろう。』 [第93回]朝ドラと異なる映画『ゲゲゲの女房』ゴールなき"貧乏耐久"2人3脚走 [第92回]バラエティーでの実績は通用するか? テリー伊藤の初監督作『10億円稼ぐ』 [第91回] 不謹慎なる社会派エンタテイメント『裁判長!ここは懲役4年でどうすか』 [第90回]"世界のナベアツ"大阪府知事に就任! 政治コメディ『さらば愛しの大統領』 [第89回]自分の恋愛もプロデュースする女優、ドリュー・バリモア主演『遠距離恋愛』 [第88回]スタローンが立ち上げた"筋肉共和国"男たちの祭典『エクスペンダブルズ』 [第87回]元"おはガール"安藤聖の再起動ドラマ 就職氷河期を生きる『バカがウラヤマシイ』 [第86回]マイノリティーは"理想郷"を目指す。筒井文学の金字塔『七瀬ふたたび』 [第85回]清純派・佐藤寛子が美しく"変態"! 官能サスペンス『ヌードの夜──』 [第84回]死を意識して、ギラギラ輝く男たち! 三池節、大バクハツ『十三人の刺客』 [第83回] 女を食い物にする男どもは全員処刑! モダン社会の闇を暴く『ミレニアム』 [第82回] "企画AV女優"たちの青春残酷物語 性なる鎮魂劇『名前のない女たち』 [第81回]猫を見れば、人間社会が見えてくる! 世界の人気猫大集合『ネコを探して』 [第80回]原恵一監督の新作は辛口ファンタジー 退屈な"日常生活"を彩る『カラフル』 [第79回]米軍に実在した"超能力部隊"の真実!? ムー民、必見『ヤギと男と男と壁と』 [第78回]戦場から帰還した夫は"芋虫男"だった! ヤクザ監督の反戦映画『キャタピラー』 [第77回] 白ユリの花開くガールズの妖しい世界 H系ホラー『ジェニファーズ・ボディ』 [第76回] 爽やか系青春ゾンビ映画にホロリ......夏休みは『ゾンビランド』に集結せよ [第75回] "生きる"とは"見苦しい"ということ 藤沢周平の時代活劇『必死剣 鳥刺し』 [第74回]初恋の美少女は200歳の吸血鬼だった! 北欧産のホラー映画『ぼくのエリ』 [第73回] "三億円事件"の真相を解き明かす! 桜タブーに挑んだ『ロストクライム』 [第72回/特別編] 上映反対で揺れる問題作『ザ・コーヴ』"渦中の人"リック・オバリー氏の主張 [第71回] 女子にモテモテになる方法、教えます。軟派少年の実話物語『ソフトボーイ』 [第70回] 下町育ちの"北野少年"が見た現代社会 人間同士の食物連鎖『アウトレイジ』 [第69回] "リアルと虚構の狭間"を生きる男、アントニオ猪木初主演作『アカシア』 [第68回] ヒーローも神もいない現代社会の惨劇 井筒監督の問題作『ヒーローショー』 [第67回] アイドルが地獄で微笑む『戦闘少女』ギャグ×血しぶき×殺陣の特盛り丼! [第66回]アナーキーな"社歌"で生産性アップ! 満島ひかり大進撃『川の底からこんにちは』 [第65回]超ヘビー級なシリアス劇『プレシャス』"家族"という名の地獄から脱出せよ [第64回]乱れ咲く"悪の華"ゼブラクイーン! 仲里依紗が過激変身『ゼブラーマン2』 [第63回] オタク王が見出した"夢と現実"の接点 ティム・バートン監督作『アリス──』 [第62回] バッドテイストな感動作『第9地区』 アナタはエビ人間とお友達になれるか? [第61回]スコセッシ監督の犯罪アトラクション『シャッターアイランド』へようこそ! [第60回]宮崎あおいの"映画代表作"が誕生! 毒を呑んでも生き続けよ『ソラニン』 [第59回]"おっぱいアート"は世界を救えるか? 母乳戦士の記録『桃色のジャンヌ・ダルク』 [第58回]現代に甦った"梶原一騎ワールド"韓流ステゴロ映画『息もできない』 [第57回]命知らずの変態レポーター、中東へ! 史上最大のどっきり?『ブルーノ』 [第56回]仲里依紗がアニメから実写へと跳躍! 母娘2代の時空旅行『時をかける少女』 [第55回]ビグロー監督はキャメロンより硬派! 人間爆弾の恐怖『ハート・ロッカー』 [第54回] "空気を読む"若者の悲劇『パレード』楽しいルームシェア生活の行き先は? [第53回]社会の"生け贄"に選ばれた男の逃亡劇 堺雅人主演『ゴールデンスランバー』 [第52回]『男はつらいよ』の別エンディング? "寅さん"の最期を描く『おとうと』 [第51回]ひとり相撲なら無敵のチャンピオン! 童貞暴走劇『ボーイズ・オン・ザ・ラン』 [第50回]ヒース・レジャーが最後に見た夢の世界 理想と欲望が渦巻く『Dr.パルナサスの鏡』 [第49回]トニー・ジャーは本気なんジャー! CGなしの狂乱劇再び『マッハ!弐』 [第48回]全米"オシャレ番長"ズーイー、見参! 草食系に捧ぐ『(500日)のサマー』 [第47回]市川崑監督&水谷豊"幻の名作"『幸福』28年の歳月を経て、初のパッケージ化 [第46回]押井守監督、大いなる方向転換か? 黒木メイサ主演『アサルトガールズ』 [第45回]ドラッグ漬けの芸能関係者必見!"神の子"の復活を追う『マラドーナ』 [第44回] 暴走する"システム"が止まらない! マイケル・ムーア監督『キャピタリズム』 [第43回]"人は二度死ぬ"という独自の死生観『ガマの油』役所広司の監督ぶりは? [第42回]誰もが共感、あるあるコメディー! 2ちゃんねる発『ブラック会社』 [第41回]タラとブラピが組むと、こーなった!! 戦争奇談『イングロリアス・バスターズ』 [第40回]"涅槃の境地"のラストシーンに唖然! 引退を賭けた角川春樹監督『笑う警官』 [第39回]伝説の男・松田優作は今も生きている 20回忌ドキュメント『SOUL RED』 [第38回]海より深い"ドメスティック・ラブ"ポン・ジュノ監督『母なる証明』 [第37回]チャン・ツィイーが放つフェロモン爆撃 悪女注意報発令せり!『ホースメン』 [第36回]『ソウ』の監督が放つ激痛バイオレンス やりすぎベーコン!『狼の死刑宣告』 [第35回]"負け組人生"から抜け出したい!! 藤原竜也主演『カイジ 人生逆転ゲーム』 [第34回]2兆円ペット産業の"開かずの間"に迫る ドキュメンタリー『犬と猫と人間と』 [第33回]"女神降臨"ペ・ドゥナの裸体が神々しい 空っぽな心に響く都市の寓話『空気人形』 [第32回]電気仕掛けのパンティをはくヒロイン R15コメディ『男と女の不都合な真実』 [第31回]萩原健一、松方弘樹の助演陣が過剰すぎ! 小栗旬主演の時代活劇『TAJOMARU』 [第30回]松本人志監督・主演第2作『しんぼる』 閉塞状況の中で踊り続ける男の悲喜劇 [第29回]シビアな現実を商品化してしまう才女、西原理恵子の自叙伝『女の子ものがたり』 [第28回]"おねマス"のマッコイ斉藤プレゼンツ 不謹慎さが爆笑を呼ぶ『上島ジェーン』 [第27回]究極料理を超えた"極地料理"に舌鼓! 納涼&グルメ映画『南極料理人』 [第26回]ハチは"失われた少年時代"のアイコン  ハリウッド版『HACHI』に涙腺崩壊! [第25回]白熱! 女同士のゴツゴツエゴバトル 金子修介監督の歌曲劇『プライド』 [第24回]悪意と善意が反転する"仮想空間"細田守監督『サマーウォーズ』 [第23回]沖縄に"精霊が暮らす楽園"があった! 中江裕司監督『真夏の夜の夢』 [第22回]"最強のライブバンド"の底力発揮! ストーンズ『シャイン・ア・ライト』 [第21回]身長15mの"巨大娘"に抱かれたい! 3Dアニメ『モンスターvsエイリアン』 [第20回]ウディ・アレンのヨハンソンいじりが冴え渡る!『それでも恋するバルセロナ』 [第19回]ケイト姐さんが"DTハンター"に! オスカー受賞の官能作『愛を読むひと』 [第18回]1万枚の段ボールで建てた"夢の砦"男のロマンここにあり『築城せよ!』 [第17回]地獄から甦った男のセミドキュメント ミッキー・ローク『レスラー』 [第16回]人生がちょっぴり楽しくなる特効薬 三木聡"脱力"劇場『インスタント沼』 [第15回]"裁判員制度"が始まる今こそ注目 死刑執行を克明に再現した『休暇』 [第14回]生傷美少女の危険な足技に痺れたい! タイ発『チョコレート・ファイター』 [第13回]風俗嬢を狙う快楽殺人鬼の恐怖! 極限の韓流映画『チェイサー』 [第12回]お姫様のハートを盗んだ男の悲哀 紀里谷監督の歴史奇談『GOEMON』 [第11回]美人女優は"下ネタ"でこそ輝く! ファレリー兄弟『ライラにお手あげ』 [第10回]ジャッキー・チェンの"暗黒面"? 中国で上映禁止『新宿インシデント』 [第9回]胸の谷間に"桃源郷"を見た! 綾瀬はるか『おっぱいバレー』 [第8回]"都市伝説"は映画と結びつく 白石晃士監督『オカルト』『テケテケ』 [第7回]少女たちの壮絶サバイバル!楳図かずおワールド『赤んぼ少女』 [第6回]派遣の"叫び"がこだまする現代版蟹工船『遭難フリーター』 [第5回]三池崇史監督『ヤッターマン』で深田恭子が"倒錯美"の世界へ [第4回]フランス、中国、日本......世界各国のタブーを暴いた劇映画続々 [第3回]水野晴郎の遺作『ギララの逆襲』岡山弁で語った最後の台詞は...... [第2回]『チェンジリング』そしてイーストウッドは"映画の神様"となった [第1回]堤幸彦版『20世紀少年』に漂うフェイクならではの哀愁と美学

大人だって"ドラえもん"にいて欲しい 残念男の逆転劇『エリックを探して』

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イエローカード続きの人生を送る中年男エリック(スティーヴ・エヴェッツ)の前に、サッカー界の英雄エリック・カントナが出現。ハッパの吸いすぎか?
(C)Canto Bros. Productions, Sixteen Films Ltd, Why Not Productions SA, Wild Bunch SA, Channel Four Television Corporation,France 2 Cinema, BIM Distribuzione, Les Films du Fleuve, RTBF (Television belge), Tornasol Films MMIX
 "イマジナリーフレンド"とは空想上の友達。幼年期に自分だけのイマジナリーフレンドを持つことで、寂しさや不安を紛らわせながら成長していく子どもは少なくない。藤子不二雄原作の『オバケのQ太郎』や『ドラえもん』も、思春期を迎える前の主人公・正太やのび太にとってのイマジナリーフレンドだと言えるだろう。子どもたちは成長するに従って実社会でのコミュニケーション能力を身に付け、イマジナリーフレンドと別れていく。しかし、最近では大人たちの気苦労がずいぶんと増えてしまった。仕事や家族の問題、将来に不安を抱えていても、大人には気軽に相談する相手がいない。ドラえもんのように発明品をポケットから出してくれなくてもいい。ただ、自分の悩みや愚痴を聞いて、ポンと背中を押してほしいのだ。そこで登場するのが"大人のためのイマジナリーフレンド"である。イギリスの巨匠ケン・ローチ監督の最新作『エリックを探して』は、人生に落伍しかかった中年男がイマジナリーフレンドに励まされて自分を取り戻していくハートフルなコメディとなっている。  マンチェスターで暮らすエリック(スティーヴ・エヴェッツ)はバツ2の冴えない郵便局員。若い頃はダンス大会で優勝し、ダンスのパートナーを務めてくれた町いちばんの美女リリーと結ばれ、人生はバラ色だった。だが、リリーが妊娠していることがわかり、エリックは混乱してしまう。このまま家庭に収まって平和な一生を過ごせるのか。気づいたらエリックはリリーの待つ家とは反対方向へと走ってしまっていた。その後、別の女性と再婚するも、再婚相手は連れ子の息子2人を残してトンズラ。ダンス大会で優勝した思い出のブルー・スエード・シューズはとっくに何処かに消えてしまった。大好きだったサッカーチーム「マンチェスター・ユナイテッド」の観戦も、チケットが値上がりしたこともありご無沙汰している。血の繋がらない息子2人を養うためにエリックは毎日働いているようなものだが、兄のライアンは街のギャングと付き合い、弟のジェスは不登校状態。父親をなめきっている息子2人にエリックは怒り心頭。自分は何のために生きているのか、エリックにはさっぱり分からない。
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ケン・ローチ監督は就労問題を扱った『この
自由な世界で』(07)などシリアスな作品が
多いけど、今回は肩の力の抜けた軽快なコメディ
っすよ。
 エリックが情緒不安定になったことを心配して、郵便局の仕事仲間たちがあれこれと心配する。自己啓発本マニアの同僚ミートボールに薦められ、仲間たちと一緒に「師と仰ぐカリスマ」を頭の中に思い描く。フィデル・カストロ、ネルソン・マンデラ、マハトマ・ガンジー、サミー・デイヴィス・Jr.......。そんな中でエリックの口から出た名前は、エリック・カントナだった。マンチェスター・ユナイテッドの90年代のエースストライカーで、荒っぽい気性ながらマンチェスター・ユナイテッドに黄金時代をもたらした大英雄だ。同じエリックという名前でも、サッカー選手のエリックは華麗なゴールを次々と決め、悪質な観客やマスコミから売られたケンカはしっかり買い、ファンの記憶の中で鮮明に輝き続けている。それに比べて、今の自分はどうなんだ? 職場の仲間たちが帰った後、エリックはハッパを少々吸いながらポスターの中の"キング・エリック"に語りかける。そしてエリックが振り返ると、髭面の颯爽とした男が立っていた。あのエリック・カントナが自分の前に立っていたのだ。  自分に自信が持てない残念な男エリックが、いつも以上に落ち込んでいたのには理由があった。最近、別れた最初の妻リリー(ステファニー・ビショップ)と大学に通う娘のことで久々に会う約束をしたのだが、30年経ってもリリーは美しいまま、いや知性と優雅さを身にまとい、若い頃よりも洗練された女性になっているのだ。怖じ気づいたエリックは約束をすっぽ抜かして敵前逃亡してしまう。昔のように、またパニック状態に陥ってしまったのだ。自分の人生を全否定し、消極的になっているエリックに対し、"キング・エリック"は「すべては美しいパスから始まる」「サイコロを振らなくては目は出ない」「チームメイトを信頼せよ」などのアドバイスを送る。敬愛するスター選手の存在に励まされ、エリックはヨレヨレで不格好ながらもリリーや息子たちに向かって懸命にシュートを放つ。果たして空想上の人物の助言は、エリックの実人生を変えることができるのだろうか。
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30年ぶりに再会したエリックと最初の妻リリー。
リリーにとって別れた元夫エリックはもはやどう
でもいい存在だったが......。
 大人のためのイマジナリーフレンドが登場する映画と言えば、ウディ・アレン主演&脚本の『ボギー!俺も男だ』(72)。ハンフリー・ボガート主演の『カサブランカ』(42)を偏愛するバツイチ男が、ハンフリー・ボガートにそっくりなトレンチコートの男に励まされるコメディだ。みうらじゅん原作、田口トモロヲ監督の『アイデン&ティティ』(03)は売れる音楽か自分が本当にやりたい音楽かで悩むロック青年の前に、ボブ・ディランそっくりな男が現われ、ロックの真理を問い掛けてくる。92年から上演されている劇団キャラメルボックスの人気舞台『また逢おうと竜馬は言った』は、司馬遼太郎の歴史小説『竜馬がゆく』を愛読する気弱なサラリーマンが悩む度に坂本竜馬が現われて喝を入れるというお話。イマジナリーフレンドが活躍するのは、何も映画や舞台の中だけではない。作家の村上春樹は執筆に煮詰まった際には、空想上のウナギに意見を求めるそうだ。『アンネの日記』のアンネ・フランクは、空想上の親友キティーに毎日手紙を書くことで、ナチスドイツによるユダヤ人狩りの恐怖に耐え続けた。  大人にもなってイマジナリーフレンドを持つなんてバカげていると思うなかれ。日常から隔離された映画館で映画を見るという行為をボクらが繰り返しているのも、映画というフィクションの世界の中で、子どもの頃に憧れていたヒーローや美女、いつの間にか別れてしまったイマジナリーフレンドたちと再会することを無意識に願っているからではないだろうか。のび太にドラえもん、郵便局員のエリックにエリック・カントナが付いているように、自分の中に何でも相談できる親友や理想の師匠を持つことでずいぶんと日常の風景が変わってくるはずだ。 (文=長野辰次) eric05.jpg 『エリックを探して』 監督/ケン・ローチ 脚本/ポール・ラヴァティ 出演/スティーヴ・エヴェッツ、エリック・カントナ、ジョン・ヘンショウ、ステファニー・ビショップ 配給/マジックアワー+IMJエンタテインメント  12月25日(土)よりBunkamuraル・シネマ、ヒューマントラスト有楽町ほか全国ロードショー <http://www.kingeric.jp>
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●深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】INDEX [第97回]平凡な高校生デイヴは2度変身する!原点回帰のヒーロー『キック・アス』 [第96回]村上春樹の超絶ベストセラーの映画化『ノルウェイの森』はどこにある? [第95回]実在した"奇妙な高額バイト"の顛末 心理サスペンス『エクスペリメント』 [第94回]"アル中"カメラマンの泣き笑い人生『酔いがさめたら、うちに帰ろう。』 [第93回]朝ドラと異なる映画『ゲゲゲの女房』ゴールなき"貧乏耐久"2人3脚走 [第92回]バラエティーでの実績は通用するか? テリー伊藤の初監督作『10億円稼ぐ』 [第91回] 不謹慎なる社会派エンタテイメント『裁判長!ここは懲役4年でどうすか』 [第90回]"世界のナベアツ"大阪府知事に就任! 政治コメディ『さらば愛しの大統領』 [第89回]自分の恋愛もプロデュースする女優、ドリュー・バリモア主演『遠距離恋愛』 [第88回]スタローンが立ち上げた"筋肉共和国"男たちの祭典『エクスペンダブルズ』 [第87回]元"おはガール"安藤聖の再起動ドラマ 就職氷河期を生きる『バカがウラヤマシイ』 [第86回]マイノリティーは"理想郷"を目指す。筒井文学の金字塔『七瀬ふたたび』 [第85回]清純派・佐藤寛子が美しく"変態"! 官能サスペンス『ヌードの夜──』 [第84回]死を意識して、ギラギラ輝く男たち! 三池節、大バクハツ『十三人の刺客』 [第83回] 女を食い物にする男どもは全員処刑! モダン社会の闇を暴く『ミレニアム』 [第82回] "企画AV女優"たちの青春残酷物語 性なる鎮魂劇『名前のない女たち』 [第81回]猫を見れば、人間社会が見えてくる! 世界の人気猫大集合『ネコを探して』 [第80回]原恵一監督の新作は辛口ファンタジー 退屈な"日常生活"を彩る『カラフル』 [第79回]米軍に実在した"超能力部隊"の真実!? ムー民、必見『ヤギと男と男と壁と』 [第78回]戦場から帰還した夫は"芋虫男"だった! ヤクザ監督の反戦映画『キャタピラー』 [第77回] 白ユリの花開くガールズの妖しい世界 H系ホラー『ジェニファーズ・ボディ』 [第76回] 爽やか系青春ゾンビ映画にホロリ......夏休みは『ゾンビランド』に集結せよ [第75回] "生きる"とは"見苦しい"ということ 藤沢周平の時代活劇『必死剣 鳥刺し』 [第74回]初恋の美少女は200歳の吸血鬼だった! 北欧産のホラー映画『ぼくのエリ』 [第73回] "三億円事件"の真相を解き明かす! 桜タブーに挑んだ『ロストクライム』 [第72回/特別編] 上映反対で揺れる問題作『ザ・コーヴ』"渦中の人"リック・オバリー氏の主張 [第71回] 女子にモテモテになる方法、教えます。軟派少年の実話物語『ソフトボーイ』 [第70回] 下町育ちの"北野少年"が見た現代社会 人間同士の食物連鎖『アウトレイジ』 [第69回] "リアルと虚構の狭間"を生きる男、アントニオ猪木初主演作『アカシア』 [第68回] ヒーローも神もいない現代社会の惨劇 井筒監督の問題作『ヒーローショー』 [第67回] アイドルが地獄で微笑む『戦闘少女』ギャグ×血しぶき×殺陣の特盛り丼! [第66回]アナーキーな"社歌"で生産性アップ! 満島ひかり大進撃『川の底からこんにちは』 [第65回]超ヘビー級なシリアス劇『プレシャス』"家族"という名の地獄から脱出せよ [第64回]乱れ咲く"悪の華"ゼブラクイーン! 仲里依紗が過激変身『ゼブラーマン2』 [第63回] オタク王が見出した"夢と現実"の接点 ティム・バートン監督作『アリス──』 [第62回] バッドテイストな感動作『第9地区』 アナタはエビ人間とお友達になれるか? [第61回]スコセッシ監督の犯罪アトラクション『シャッターアイランド』へようこそ! [第60回]宮崎あおいの"映画代表作"が誕生! 毒を呑んでも生き続けよ『ソラニン』 [第59回]"おっぱいアート"は世界を救えるか? 母乳戦士の記録『桃色のジャンヌ・ダルク』 [第58回]現代に甦った"梶原一騎ワールド"韓流ステゴロ映画『息もできない』 [第57回]命知らずの変態レポーター、中東へ! 史上最大のどっきり?『ブルーノ』 [第56回]仲里依紗がアニメから実写へと跳躍! 母娘2代の時空旅行『時をかける少女』 [第55回]ビグロー監督はキャメロンより硬派! 人間爆弾の恐怖『ハート・ロッカー』 [第54回] "空気を読む"若者の悲劇『パレード』楽しいルームシェア生活の行き先は? [第53回]社会の"生け贄"に選ばれた男の逃亡劇 堺雅人主演『ゴールデンスランバー』 [第52回]『男はつらいよ』の別エンディング? "寅さん"の最期を描く『おとうと』 [第51回]ひとり相撲なら無敵のチャンピオン! 童貞暴走劇『ボーイズ・オン・ザ・ラン』 [第50回]ヒース・レジャーが最後に見た夢の世界 理想と欲望が渦巻く『Dr.パルナサスの鏡』 [第49回]トニー・ジャーは本気なんジャー! CGなしの狂乱劇再び『マッハ!弐』 [第48回]全米"オシャレ番長"ズーイー、見参! 草食系に捧ぐ『(500日)のサマー』 [第47回]市川崑監督&水谷豊"幻の名作"『幸福』28年の歳月を経て、初のパッケージ化 [第46回]押井守監督、大いなる方向転換か? 黒木メイサ主演『アサルトガールズ』 [第45回]ドラッグ漬けの芸能関係者必見!"神の子"の復活を追う『マラドーナ』 [第44回] 暴走する"システム"が止まらない! マイケル・ムーア監督『キャピタリズム』 [第43回]"人は二度死ぬ"という独自の死生観『ガマの油』役所広司の監督ぶりは? [第42回]誰もが共感、あるあるコメディー! 2ちゃんねる発『ブラック会社』 [第41回]タラとブラピが組むと、こーなった!! 戦争奇談『イングロリアス・バスターズ』 [第40回]"涅槃の境地"のラストシーンに唖然! 引退を賭けた角川春樹監督『笑う警官』 [第39回]伝説の男・松田優作は今も生きている 20回忌ドキュメント『SOUL RED』 [第38回]海より深い"ドメスティック・ラブ"ポン・ジュノ監督『母なる証明』 [第37回]チャン・ツィイーが放つフェロモン爆撃 悪女注意報発令せり!『ホースメン』 [第36回]『ソウ』の監督が放つ激痛バイオレンス やりすぎベーコン!『狼の死刑宣告』 [第35回]"負け組人生"から抜け出したい!! 藤原竜也主演『カイジ 人生逆転ゲーム』 [第34回]2兆円ペット産業の"開かずの間"に迫る ドキュメンタリー『犬と猫と人間と』 [第33回]"女神降臨"ペ・ドゥナの裸体が神々しい 空っぽな心に響く都市の寓話『空気人形』 [第32回]電気仕掛けのパンティをはくヒロイン R15コメディ『男と女の不都合な真実』 [第31回]萩原健一、松方弘樹の助演陣が過剰すぎ! 小栗旬主演の時代活劇『TAJOMARU』 [第30回]松本人志監督・主演第2作『しんぼる』 閉塞状況の中で踊り続ける男の悲喜劇 [第29回]シビアな現実を商品化してしまう才女、西原理恵子の自叙伝『女の子ものがたり』 [第28回]"おねマス"のマッコイ斉藤プレゼンツ 不謹慎さが爆笑を呼ぶ『上島ジェーン』 [第27回]究極料理を超えた"極地料理"に舌鼓! 納涼&グルメ映画『南極料理人』 [第26回]ハチは"失われた少年時代"のアイコン  ハリウッド版『HACHI』に涙腺崩壊! [第25回]白熱! 女同士のゴツゴツエゴバトル 金子修介監督の歌曲劇『プライド』 [第24回]悪意と善意が反転する"仮想空間"細田守監督『サマーウォーズ』 [第23回]沖縄に"精霊が暮らす楽園"があった! 中江裕司監督『真夏の夜の夢』 [第22回]"最強のライブバンド"の底力発揮! ストーンズ『シャイン・ア・ライト』 [第21回]身長15mの"巨大娘"に抱かれたい! 3Dアニメ『モンスターvsエイリアン』 [第20回]ウディ・アレンのヨハンソンいじりが冴え渡る!『それでも恋するバルセロナ』 [第19回]ケイト姐さんが"DTハンター"に! オスカー受賞の官能作『愛を読むひと』 [第18回]1万枚の段ボールで建てた"夢の砦"男のロマンここにあり『築城せよ!』 [第17回]地獄から甦った男のセミドキュメント ミッキー・ローク『レスラー』 [第16回]人生がちょっぴり楽しくなる特効薬 三木聡"脱力"劇場『インスタント沼』 [第15回]"裁判員制度"が始まる今こそ注目 死刑執行を克明に再現した『休暇』 [第14回]生傷美少女の危険な足技に痺れたい! タイ発『チョコレート・ファイター』 [第13回]風俗嬢を狙う快楽殺人鬼の恐怖! 極限の韓流映画『チェイサー』 [第12回]お姫様のハートを盗んだ男の悲哀 紀里谷監督の歴史奇談『GOEMON』 [第11回]美人女優は"下ネタ"でこそ輝く! ファレリー兄弟『ライラにお手あげ』 [第10回]ジャッキー・チェンの"暗黒面"? 中国で上映禁止『新宿インシデント』 [第9回]胸の谷間に"桃源郷"を見た! 綾瀬はるか『おっぱいバレー』 [第8回]"都市伝説"は映画と結びつく 白石晃士監督『オカルト』『テケテケ』 [第7回]少女たちの壮絶サバイバル!楳図かずおワールド『赤んぼ少女』 [第6回]派遣の"叫び"がこだまする現代版蟹工船『遭難フリーター』 [第5回]三池崇史監督『ヤッターマン』で深田恭子が"倒錯美"の世界へ [第4回]フランス、中国、日本......世界各国のタブーを暴いた劇映画続々 [第3回]水野晴郎の遺作『ギララの逆襲』岡山弁で語った最後の台詞は...... [第2回]『チェンジリング』そしてイーストウッドは"映画の神様"となった [第1回]堤幸彦版『20世紀少年』に漂うフェイクならではの哀愁と美学

平凡な高校生デイヴは2度変身する!原点回帰のヒーロー『キック・アス』

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決して変質者ではありません。地味な高校生デイヴ(アーロン・ジョンソン)は
小遣いで買ったウェットスーツを着込んで、なりきりヒーロー"キック・アス"を名乗る。
(c)2009 KA FILMS LP.ALL RIGHTS RESERVED.
 世間の常識をキックアス! 周囲の視線なんかキックアス! 安全な場所から批評するヤツらをキックアス! ついでに昨日までの自分にもキックアス! バイオレンス描写の過激さから日本のみならず本国アメリカでも公開が危ぶまれたアクション映画『キック・アス』。しかし、やり過ぎアクションシーンとは裏腹に、映画を見終わった後にはスコーンと突き抜けた爽快感が溢れる。最年少最凶スーパーヒロイン"ヒットガール"を演じたクロエ・グレース・モレッツの魅力は後日公開の「プレミアサイゾー」をご覧になっていただくとして、お友達感覚120%な等身大のスーパーヒーロー"キック・アス"の悪戦苦闘ぶりに思わず男泣きしてしまうのだ。  主人公のデイヴ(アーロン・ジョンソン)は平凡で目立たない高校生。同じクラスに好きな女の子ケイティがいるが、自分からまともに声を掛けることもできずにいる。やることと言えば、女教師をオカズにオナニーするかコミック好きな地味な男友達同士でオタク談義に花を咲かせることぐらい。パッとしない毎日を過ごすデイヴだが、ふとあることを思いつく。コミックの中のスーパーヒーローにただ憧れているだけじゃなくて、自分自身がスーパーヒーローになればいいじゃんと。スーパーヒーローを愛する気持ちは誰よりもある。ならば、正義を愛するその精神を現実社会で実践するべきじゃないのか。まるで現代に生まれ変わった大塩平八郎と化したデイヴ。呆れ顔の友達を尻目に、デイヴはさっそくネット注文した緑と黄色のウェットスーツ&マスクに身を包み、なりきりヒーロー"キック・アス"となる。スーパーマンのように空を飛ぶことも、スパイダーマンのようにクモの糸を放出することもない、特殊能力ゼロの新ヒーローの誕生である。
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へなちょこヒーローのキック・アスの窮地を度々
救うヒットガール。マーク・ミラー原作の
『ウォンテッド』(08)のアンジェリーナ・
ジョリー&ジェームズ・マカヴォイを思わせる関係だ。
 いつからスーパーヒーローは特殊能力を持っていなくてはいけないことになったんだろうか。世界初のスーパーヒーローとして1938年に生まれた『スーパーマン』は、故郷クリプトン星と地球の重力などの違いから飛行能力や怪力を発揮しているのであって、元々クリプトン星では普通の人である。日本のスーパーヒーロー第1号である『月光仮面』(58~59年/TBS系)はサングラスと白いターバンで顔を隠しているだけで、まるっきし特殊能力は持ち合わせていない。『仮面ライダー』(71~73年/毎日放送)だって原作者・石ノ森章太郎が生きていた頃は武器を持つことなく、丸腰で怪人たちと戦っていた。平成仮面ライダーたちがさまざまな武器を持って戦うようになったのは、少子化にあえぐ玩具メーカーを儲けさせるためだろう。特殊能力や特殊な武器を持つことは、本来はスーパーヒーローの必須条件ではなかったのだ。『キック・アス』の主人公デイヴは学校の勉強はからきしだが、スーパーヒーローにとって一番大切なものは何かということをちゃんと知っていた。  ネットの世界でアバターを手に入れた人が別人格に変わるように、デイヴも顔を隠したキック・アスのコスチュームを着ることで、煮え切らない高校生からハジきれキャラクターに変身を遂げる。匿名性を手に入れたことで、デイヴの中で長年蓄積されながらも普段は気恥ずかしくて口にできない"正義を愛する心"がバクハツする。もちろん、デイヴは運動神経や格闘術に優れているわけではないので、キック・アスに変身したところで所詮は見かけ倒しちゃんで、街のギャングたちにボコボコにされる。痛いよ、血が出るよ、格好悪いよ。それでも、デイヴは懲りずにキック・アスへの変身を続ける。スーパーヒーローとなって正義を実践するのが気持ちいいのだ。そして、普段のデイヴとしては決して味わえないハラハラドキドキ感が忘れられなくなる。  デイヴのアバターだったはずのキック・アスだが、デイヴ自身にも変化が現われ始める。ちょっとした自信と大きな勇気が宿ったデイヴは、ポジティブな性格に変わっていく。最初はホモと勘違いされたものの、憧れのケイティともいい感じに。まぁ、結果オーライで人生初のガールフレンドをゲットする。やったね、デイヴ。しかも、YouTubeでキック・アスの動画へのアクセスが殺到し、正体不明のキック・アスは街で評判の存在に。これまで周囲の視線を気にしながら生きてきたデイヴだが、キック・アスというアバターを手に入れたことで実人生が大きく変わっていくことになる。  ただし、高校生のボランティアヒーローであるキック・アスにとって知名度のアップは両刃の剣。デイヴは自分の行動が評価されたことを素直に喜ぶが、キック・アスの活躍を面白く思わないマフィアのボスから目を付けられてしまう。愛するガールフレンドもせっかくできたことだし、これまでのような命知らずな行動はできませんよ。ティーンエイジャー特有のイノセントな正義感からキック・アスに変身していたデイヴは、ここで決断を迫られる。10代の頃のやんちゃな思い出として幕を降ろすのか、それともさらなる上のステージへと進むのか。
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父親からの英才教育を受け、悪人どもを次々と
処刑していく"ヒットガール"ことミンディ
(クロエ・グレース・モレッツ)。彼女が成長し
ないうちに、早くパート2の製作を!
 さらに、デイヴに大きな影響を与える存在が現われる。デイヴとは対照的な、生まれながらの人間兵器"ヒットガール"ことミンディ(クロエ・グレース・モレッツ)である。見た目はかわいい11歳の少女だが、マフィアに殺された母親の敵を討つために父親"ビッグ・ダディ"(ニコラス・ケイジ)から徹底的に格闘教育を受け、悪人に対してナイフを振り下ろし、拳銃の引き金を引くことに全くの躊躇がない。武器の扱い方に手慣れたヒットガールに、へっぴり腰のキック・アスは度々のピンチを救われる。自分の信じる正義のために弾丸をぶっ放すことに疑問を持たないヒットガールが存在することで、敵に立ち向かう際にイチイチ悩み、戸惑うキック・アスの"まともさ"がくっきりとクローズアップされる。  ヒットガールのキャッチーさに目を奪われがちだが、生身の等身大ヒーローであるキック・アスが悩み続けることで、クレイジーなバトルの中でも"生身の痛み"が伝わってくる。デイヴが感じるその痛みは、少年期から大人へ成長するのに伴う精神的な痛みでもある。デイヴはキック・アスのコスチュームを身に付けずとも、一連のドタバタを通して痛みの分かる大人へと変身を遂げていたのだ。ただの悪趣味なバイオレンス映画とは異なる青春映画として、『キック・アス』をお薦めしたい。 (文=長野辰次) kikc04.jpg 『キック・アス』 原作・総指揮/マーク・ミラー 監督/マシュー・ヴォーン 出演/アーロン・ジョンソン、クロエ・グレース・モリッツ、ニコラス・ケイジ 配給/カルチュア・パブリッシャーズ 12月18日(土)よりシネセゾン渋谷ほか全国順次公開 +R15 <http://www.kick-ass.jp>
スーパーマン ディレクターズカット版 元祖! amazon_associate_logo.jpg
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