"理想の恋人"という偶像を破壊せよ 深夜番長の劇場デビュー作『モテキ』

moteki01.jpg
テレビドラマ版と同じく、久保ミツロウ原作&大根仁監督&森山未來主演で
バージョンアップされた映画『モテキ』。
31歳になった藤本幸世は真実の愛をつかめるか?
(C)2011映画「モテキ」製作委員会
 Perfume、フジファブリック、くるり、スチャダラパー、岡村靖幸......、J-POPの新旧ヒット曲を散りばめた映画『モテキ』。近年の日本映画で、ここまで多幸感に溢れた作品はそうないだろう。2010年7月~10月にテレビ東京系でオンエアされ、大反響を呼んだ深夜ドラマ『モテキ』のヘタレな主人公・藤本幸世のその後の姿が劇場版で描かれる。原作者・久保ミツロウがオリジナルストーリーを書き下ろし、『週刊真木よう子』『湯けむりスナイパー』(ともにテレビ東京系)など伝説の深夜ドラマを生み出した"深夜番長"大根仁監督が劇場版ならではのエロシーンをがっつりと盛り込んだ。大根監督にとっては初の劇場公開作となる。テレビ版をにぎわした野波麻帆、満島ひかり、松本莉緒、菊地凛子に代わって、新たに長澤まさみ、麻生久美子、仲里依紗、真木よう子が登場。タイプの異なる4人の美女たちが、ヘタレな草食系男子に尊い愛のレッスンを施す。  テレビ版では、気になる女子たちからメールや電話が相次ぎ、「ついにオレにも"モテ期"が来た!」と浮かれまくった29歳派遣社員・藤本幸世(森山未來)。4人の美女たちと超接近遭遇するも、自分からまるで行動しようとしない受け身な姿勢が原因で、結局は誰も選べずに独り身のまま最終回を迎えた。それから1年、無職状態が続いていた幸世だが、一念発起して就職活動を開始。知人である墨田(リリー・フランキー)のお情けで、ポップカルチャー専門ニュースサイト「natalie」の契約記者として働き始める。音楽好きな特性を活かせる仕事を見つけたことは元引きこもりの幸世にとっては大成長だが、当然ながら対人スキルがはなはだ低く、職場や取材先でポカばかり。現実逃避で始めたTwitterでサブカル雑誌「EYESCREAM」に勤める"殺人級の笑顔"を持つ松尾みゆき(長澤まさみ)と出会ったのを皮切りに、みゆきの親友の清楚なOL・枡元るみ子(麻生久美子)、初対面の幸世とひと晩を共にする小生意気なガールズバーの店員・愛(仲里依紗)、幸世をドSな言葉責めでいたぶる先輩記者の唐木素子(真木よう子)ら、これまでとはまた違ったタイプの美女たちとお近づきになる。セカンド・モテキの襲来かと喜ぶ幸世。男って学習能力が著しく低い動物であることを、しみじみと実感させる序盤である。
moteki02.jpg
Twitterを通じて飲み友達となる幸世(森山
未来)とみゆき(長澤まさみ)。森山と長澤
は『世界の中心で、愛をさけぶ』(04)以来
の共演。
 幸世ならずとも目移りしてしまう美女たちの中でも、ひと際セクシービームを発しているのが松尾みゆき役の長澤まさみだ。終電を逃したみゆきは幸世の部屋に泊まるが、その際にパジャマ代わりに着るのが「I LOVE TENGA」とプリントされたTシャツ。酔っぱらったみゆきが"TENGA"Tシャツを着て、微笑む姿がとてつもなく愛おしく感じられる。幸世にとっては、まさに目の前にヴィーナスが舞い降りてきた神話的瞬間だろう。長澤まさみは『ロボコン』(03)での好演の後、『世界の中心で、愛をさけぶ』(04)で大ブレイクを果たすが、長年『セカチュー』の亜紀の清純イメージがまといついた。今回の松尾みゆきは聖女でもなければ、悪女でもない。仕事でもプライベートでも、トライ&エラーを重ねる成長過程の極フツーの20代の女性だ。むしろ恋愛に関しては自分のダメさを自覚している。社会人のマナーとして、バタバタとあがく姿を人様にはさらさないように気をつけているだけだ。恋愛偏差値の低い幸世はそのことを理解できずにいる。  一方、幸世のヘタレ加減はますますエスカレート。優柔不断な幸世のことを「優しい人」と勘違いしている枡元るみ子(麻生久美子)から告白されてしまう。すごいよ、幸世。だが、幸世は恋愛において自分がイニシアチブを握る立場になった途端、別人のような傲慢野郎に変身する。自分より上の立場の人間の前では「どーせ、オレなんか」と卑屈な態度になる幸世だが、自分に対して献身的に尽くそうとする女性に「趣味が合わない」「重い」と冷酷な言葉の数々を浴びせる。麻生久美子には不幸な美女役がよく似合うが、大根監督は"裏ヒロイン"とも言える彼女のために名シーンを用意している。恋に破れてボロボロに傷ついたるみ子は、朝ひとりで牛丼屋に入り、どんぶりご飯をかき込む。それはそれは見事な勢いで。人間はパンだけでは生きていけないと言ったのはイエス・キリストだっけ? 『モテキ』も同じように説く。人間は恋愛だけで生きていくのではない。日々、ご飯を食べて、働いて、寝て、たまに同僚や友達との付き合い酒もしながら生きていく。当たり前だけど、大切なことが映画『モテキ』には描いてある。  映画『モテキ』は名台詞の宝庫だ。もやもや状態が続く幸世が、ももいろクローバーの曲に励まされて、本命の彼女に告白をしようとすると、先輩の唐木(真木よう子)は「待て。落ち込んだときに告白至上主義のアイドルソングを聴いて、コクりに行くのは危険だ」と諭す。J-POP満載の『モテキ』だが、実はメディアリテラシー的な一面が盛り込まれている。J-POPの耳ざわりのいいフレーズやノリのよさに背中を押されて、ひとりよがりな恋愛に突っ走って自爆した犠牲者たちがどれほどいることか。優れたポップチューンはドラッグと同じだ。その心地よさに陶酔し、自分の思い通りに進まない現実がうっとおしくなる。音楽だけでなく、コミック、アニメ、ゲーム、映画、ドラマ......、優れたエンターテイメントは人間を癒し、元気づけるのと同時に、都合の悪い現実を遠ざける副作用も伴うのだ。  映画『モテキ』のラスト、幸世はようやく見つけた真実の愛をつかもうと、暗い森の中を汗だくで走り、ドロドロになりながら懸命に手を伸ばす。苦心した末に幸世が捕まえたものは、ずっと頭の中で思い描いてきた"理想の恋人"ではない。それは傷つきやすく、ひどくわがままで、泣き虫なくせに強がってみせる、面倒くさい生身のひとりの女性だった。 (文=長野辰次) 『モテキ』 監督・脚本/大根仁 原作/久保ミツロウ 出演/森山未來、長澤まさみ、麻生久美子、仲里依紗、真木よう子、新井浩文、金子ノブアキ、リリー・フランキー 配給/東宝 9月23日(金)よりTOHOシネマズ六本木ヒルズほか全国ロードショー <http://www.moteki-movie.jp>
モテキ<Blu-ray BOX(5枚組)> いいな......。 amazon_associate_logo.jpg
●深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】INDEX [第135回]"城定秀夫監督、ブレイク前夜の予感! 闘争本能を呼び覚ます『タナトス』 [第134回]"人間失格"の道を選んだ映画監督の業 林由美香の最新主演作『監督失格』 [第133回]ホラ吹きのホラを見破る特異な職能 ポランスキー監督『ゴーストライター』 [第132回]芦田愛菜、6歳にして危険な魅力!? 子連れで全力疾走『うさぎドロップ』 [第131回]元"暴走族"が書いた旧友への鎮魂歌 青春懺悔録『アメイジング グレイス』 [第130回]V・ギャロ主演のサバイバルグルメ!? 『エッセンシャル・キリング』 [第129回]『キック・アス』より悪趣味で泣ける 中年男の悪ノリ暴走劇『スーパー!』 [第128回]この夏の清涼剤、地方少女のダンス成長記『あぜみちジャンピンッ!』 [第127回]竹ヤリで世界進出"スシタイフーン"『エイリアンVSニンジャ』ほか逆上陸 [第126回]イーモウ監督、久々のアイドル映画 中華的妹萌え『サンザシの樹の下で』 [第125回]ナタリー・ポートマン vs. ヘビメタ野郎 人気女優の隠し球『メタルヘッド』 [第124回]黒澤明の名作『生きる』のラテン版! ヤモメ男が残した遺産『BIUTIFUL』 [第123回]北国で93年間営業を続ける"大黒座"と町の記録『小さな町の小さな映画館』 [第122回]新幹線がすれ違う瞬間、願いが叶う? 小学生の目線で描かれた『奇跡』 [第121回]理想と情熱がもたらした"痛い現実" 青春の蹉跌『マイ・バック・ページ』 [第120回]胸に響く金言"プロとは手を抜くこと" 職人秘話『アトムの足音が聞こえる』 [第119回]危険な出会い、井口昇ミーツ仲村みう 悪夢の遊園地『富江 アンリミテッド』 [第118回]ナタリー・ポートマン"第1章"の終幕 虚実が攻め合う『ブラック・スワン』 [第117回]"セカイ"を旅立った少女の地底探検記 新海誠監督の新作『星を追う子ども』 [第116回] 美少女たちの輝きが脳裏から離れない。青春ムービー『魔法少女を忘れない』 [第115回] 恋愛が与える"陶酔"とリアルな"痛み"サブカル活劇『スコット・ピルグリム』 [第114回]妄想、空想、そして現実からの大脱走 美少女革命『エンジェル ウォーズ』 [第113回]"3.11"後の新しい映画モデルとなるか『劇場版 神聖かまってちゃん』の挑戦 [第112回]マスコミが讃えた"楽園"のその後、ひとりの少女の成長記録『愛しきソナ』 [第111回]閉鎖的な"村社会"をブチ破ったれ! 韓流サバイバル劇『ビー・デビル』 [第110回]"粋"を愛したフランスの伯父さん J・タチ主演『イリュージョニスト』 [第109回]自分にとって家族は敵か、味方か? オスカー2冠受賞『ザ・ファイター』 [第108回]コーエン兄弟『トゥルー・グリット』40年で変化した"米国のヒーロー像" [第107回]ジョニー・デップが愛した"極道記者" 『GONZO』奇人がスターだった時代 [第106回] 巨匠イーストウッド監督の異色作! "あの世"はあるか?『ヒア アフター』 [第105回] キレ味、喉ごしが違うアクション! 黒帯美少女の"涙拳"が炸裂『KG』 [第104回] 高齢化するニートはどこに行くのか? "戸塚校長"のその後『平成ジレンマ』 [第103回]堀北真希&高良健吾主演作『白夜行』闇に生きる"影男"の密やかなる喜び [第102回]園子温の劇薬ムービー『冷たい熱帯魚』"救いのない結末"という名の救い [第101回] NHKが放映しない"裏プロジェクトX" AV界のカリスマ監督『YOYOCHU』 [第100回]エロスとタブーを交配した"至高の美女" 禁断のサイエンスホラー『スプライス』 [第99回]2010年に活躍した女優を勝手に表彰! 満島ひかりに"面倒くさい女"大賞を [第98回]大人だって"ドラえもん"にいて欲しい 残念男の逆転劇『エリックを探して』 [第97回]平凡な高校生デイヴは2度変身する!原点回帰のヒーロー『キック・アス』 [第96回]村上春樹の超絶ベストセラーの映画化『ノルウェイの森』はどこにある? [第95回]実在した"奇妙な高額バイト"の顛末 心理サスペンス『エクスペリメント』 [第94回]"アル中"カメラマンの泣き笑い人生『酔いがさめたら、うちに帰ろう。』 [第93回]朝ドラと異なる映画『ゲゲゲの女房』ゴールなき"貧乏耐久"2人3脚走 [第92回]バラエティーでの実績は通用するか? テリー伊藤の初監督作『10億円稼ぐ』 [第91回] 不謹慎なる社会派エンタテイメント『裁判長!ここは懲役4年でどうすか』 [第90回]"世界のナベアツ"大阪府知事に就任! 政治コメディ『さらば愛しの大統領』 [第89回]自分の恋愛もプロデュースする女優、ドリュー・バリモア主演『遠距離恋愛』 [第88回]スタローンが立ち上げた"筋肉共和国"男たちの祭典『エクスペンダブルズ』 [第87回]元"おはガール"安藤聖の再起動ドラマ 就職氷河期を生きる『バカがウラヤマシイ』 [第86回]マイノリティーは"理想郷"を目指す。筒井文学の金字塔『七瀬ふたたび』 [第85回]清純派・佐藤寛子が美しく"変態"! 官能サスペンス『ヌードの夜──』 [第84回]死を意識して、ギラギラ輝く男たち! 三池節、大バクハツ『十三人の刺客』 [第83回] 女を食い物にする男どもは全員処刑! モダン社会の闇を暴く『ミレニアム』 [第82回] "企画AV女優"たちの青春残酷物語 性なる鎮魂劇『名前のない女たち』 [第81回]猫を見れば、人間社会が見えてくる! 世界の人気猫大集合『ネコを探して』 [第80回]原恵一監督の新作は辛口ファンタジー 退屈な"日常生活"を彩る『カラフル』 [第79回]米軍に実在した"超能力部隊"の真実!? ムー民、必見『ヤギと男と男と壁と』 [第78回]戦場から帰還した夫は"芋虫男"だった! ヤクザ監督の反戦映画『キャタピラー』 [第77回] 白ユリの花開くガールズの妖しい世界 H系ホラー『ジェニファーズ・ボディ』 [第76回] 爽やか系青春ゾンビ映画にホロリ......夏休みは『ゾンビランド』に集結せよ [第75回] "生きる"とは"見苦しい"ということ 藤沢周平の時代活劇『必死剣 鳥刺し』 [第74回]初恋の美少女は200歳の吸血鬼だった! 北欧産のホラー映画『ぼくのエリ』 [第73回] "三億円事件"の真相を解き明かす! 桜タブーに挑んだ『ロストクライム』 [第72回/特別編] 上映反対で揺れる問題作『ザ・コーヴ』"渦中の人"リック・オバリー氏の主張 [第71回] 女子にモテモテになる方法、教えます。軟派少年の実話物語『ソフトボーイ』 [第70回] 下町育ちの"北野少年"が見た現代社会 人間同士の食物連鎖『アウトレイジ』 [第69回] "リアルと虚構の狭間"を生きる男、アントニオ猪木初主演作『アカシア』 [第68回] ヒーローも神もいない現代社会の惨劇 井筒監督の問題作『ヒーローショー』 [第67回] アイドルが地獄で微笑む『戦闘少女』ギャグ×血しぶき×殺陣の特盛り丼! [第66回]アナーキーな"社歌"で生産性アップ! 満島ひかり大進撃『川の底からこんにちは』 [第65回]超ヘビー級なシリアス劇『プレシャス』"家族"という名の地獄から脱出せよ [第64回]乱れ咲く"悪の華"ゼブラクイーン! 仲里依紗が過激変身『ゼブラーマン2』 [第63回] オタク王が見出した"夢と現実"の接点 ティム・バートン監督作『アリス──』 [第62回] バッドテイストな感動作『第9地区』 アナタはエビ人間とお友達になれるか? [第61回]スコセッシ監督の犯罪アトラクション『シャッターアイランド』へようこそ! [第60回]宮崎あおいの"映画代表作"が誕生! 毒を呑んでも生き続けよ『ソラニン』 [第59回]"おっぱいアート"は世界を救えるか? 母乳戦士の記録『桃色のジャンヌ・ダルク』 [第58回]現代に甦った"梶原一騎ワールド"韓流ステゴロ映画『息もできない』 [第57回]命知らずの変態レポーター、中東へ! 史上最大のどっきり?『ブルーノ』 [第56回]仲里依紗がアニメから実写へと跳躍! 母娘2代の時空旅行『時をかける少女』 [第55回]ビグロー監督はキャメロンより硬派! 人間爆弾の恐怖『ハート・ロッカー』 [第54回] "空気を読む"若者の悲劇『パレード』楽しいルームシェア生活の行き先は? [第53回]社会の"生け贄"に選ばれた男の逃亡劇 堺雅人主演『ゴールデンスランバー』 [第52回]『男はつらいよ』の別エンディング? "寅さん"の最期を描く『おとうと』 [第51回]ひとり相撲なら無敵のチャンピオン! 童貞暴走劇『ボーイズ・オン・ザ・ラン』 [第50回]ヒース・レジャーが最後に見た夢の世界 理想と欲望が渦巻く『Dr.パルナサスの鏡』 [第49回]トニー・ジャーは本気なんジャー! CGなしの狂乱劇再び『マッハ!弐』 [第48回]全米"オシャレ番長"ズーイー、見参! 草食系に捧ぐ『(500日)のサマー』 [第47回]市川崑監督&水谷豊"幻の名作"『幸福』28年の歳月を経て、初のパッケージ化 [第46回]押井守監督、大いなる方向転換か? 黒木メイサ主演『アサルトガールズ』 [第45回]ドラッグ漬けの芸能関係者必見!"神の子"の復活を追う『マラドーナ』 [第44回] 暴走する"システム"が止まらない! マイケル・ムーア監督『キャピタリズム』 [第43回]"人は二度死ぬ"という独自の死生観『ガマの油』役所広司の監督ぶりは? [第42回]誰もが共感、あるあるコメディー! 2ちゃんねる発『ブラック会社』 [第41回]タラとブラピが組むと、こーなった!! 戦争奇談『イングロリアス・バスターズ』 [第40回]"涅槃の境地"のラストシーンに唖然! 引退を賭けた角川春樹監督『笑う警官』 [第39回]伝説の男・松田優作は今も生きている 20回忌ドキュメント『SOUL RED』 [第38回]海より深い"ドメスティック・ラブ"ポン・ジュノ監督『母なる証明』 [第37回]チャン・ツィイーが放つフェロモン爆撃 悪女注意報発令せり!『ホースメン』 [第36回]『ソウ』の監督が放つ激痛バイオレンス やりすぎベーコン!『狼の死刑宣告』 [第35回]"負け組人生"から抜け出したい!! 藤原竜也主演『カイジ 人生逆転ゲーム』 [第34回]2兆円ペット産業の"開かずの間"に迫る ドキュメンタリー『犬と猫と人間と』 [第33回]"女神降臨"ペ・ドゥナの裸体が神々しい 空っぽな心に響く都市の寓話『空気人形』 [第32回]電気仕掛けのパンティをはくヒロイン R15コメディ『男と女の不都合な真実』 [第31回]萩原健一、松方弘樹の助演陣が過剰すぎ! 小栗旬主演の時代活劇『TAJOMARU』 [第30回]松本人志監督・主演第2作『しんぼる』 閉塞状況の中で踊り続ける男の悲喜劇 [第29回]シビアな現実を商品化してしまう才女、西原理恵子の自叙伝『女の子ものがたり』 [第28回]"おねマス"のマッコイ斉藤プレゼンツ 不謹慎さが爆笑を呼ぶ『上島ジェーン』 [第27回]究極料理を超えた"極地料理"に舌鼓! 納涼&グルメ映画『南極料理人』 [第26回]ハチは"失われた少年時代"のアイコン  ハリウッド版『HACHI』に涙腺崩壊! [第25回]白熱! 女同士のゴツゴツエゴバトル 金子修介監督の歌曲劇『プライド』 [第24回]悪意と善意が反転する"仮想空間"細田守監督『サマーウォーズ』 [第23回]沖縄に"精霊が暮らす楽園"があった! 中江裕司監督『真夏の夜の夢』 [第22回]"最強のライブバンド"の底力発揮! ストーンズ『シャイン・ア・ライト』 [第21回]身長15mの"巨大娘"に抱かれたい! 3Dアニメ『モンスターvsエイリアン』 [第20回]ウディ・アレンのヨハンソンいじりが冴え渡る!『それでも恋するバルセロナ』 [第19回]ケイト姐さんが"DTハンター"に! オスカー受賞の官能作『愛を読むひと』 [第18回]1万枚の段ボールで建てた"夢の砦"男のロマンここにあり『築城せよ!』 [第17回]地獄から甦った男のセミドキュメント ミッキー・ローク『レスラー』 [第16回]人生がちょっぴり楽しくなる特効薬 三木聡"脱力"劇場『インスタント沼』 [第15回]"裁判員制度"が始まる今こそ注目 死刑執行を克明に再現した『休暇』 [第14回]生傷美少女の危険な足技に痺れたい! タイ発『チョコレート・ファイター』 [第13回]風俗嬢を狙う快楽殺人鬼の恐怖! 極限の韓流映画『チェイサー』 [第12回]お姫様のハートを盗んだ男の悲哀 紀里谷監督の歴史奇談『GOEMON』 [第11回]美人女優は"下ネタ"でこそ輝く! ファレリー兄弟『ライラにお手あげ』 [第10回]ジャッキー・チェンの"暗黒面"? 中国で上映禁止『新宿インシデント』 [第9回]胸の谷間に"桃源郷"を見た! 綾瀬はるか『おっぱいバレー』 [第8回]"都市伝説"は映画と結びつく 白石晃士監督『オカルト』『テケテケ』 [第7回]少女たちの壮絶サバイバル!楳図かずおワールド『赤んぼ少女』 [第6回]派遣の"叫び"がこだまする現代版蟹工船『遭難フリーター』 [第5回]三池崇史監督『ヤッターマン』で深田恭子が"倒錯美"の世界へ [第4回]フランス、中国、日本......世界各国のタブーを暴いた劇映画続々 [第3回]水野晴郎の遺作『ギララの逆襲』岡山弁で語った最後の台詞は...... [第2回]『チェンジリング』そしてイーストウッドは"映画の神様"となった [第1回]堤幸彦版『20世紀少年』に漂うフェイクならではの哀愁と美学

城定秀夫監督、ブレイク前夜の予感! 闘争本能を呼び覚ます『タナトス』

tanatosu01.jpg
"死の神"タナトスに魅入られたかのような本能的な闘いを演じる
リク(徳山秀典:画面左)と棚夫木(佐藤祐基)。
スピード感と荒々しさを感じさせる青春ボクシング映画だ。
(C)2011 竹原慎二・落合裕介・小学館/「タナトス」製作委員会
 街で何気なく定食屋に入って、ショウガ焼き定食を頼むとメチャメチャに美味しいことがある。特別な素材を使っているわけではないが、料理人の手際がいいのだろう。食べ易い大きさの豚肉に新鮮なショウガソースが絡み、刻みキャベツとのバランスもいい。みそ汁も手を抜いていない。36歳にして、すでに監督作が50本を越える"映像職人"城定秀夫監督の魅力を例えるなら、こんな感じだろう。城定監督作品には、定食屋で出会うショウガ焼き定食の輝きがある。グルメ本で紹介される機会は少ないが、お客の期待を裏切らない味わいがうれしい。  人情系エロス『デコトラ・ギャル奈美』(08)、学園ヤンキーもの『ガチバン』(08)、現代の小公女がAV業界で活躍するコメディ『18倫』(09)など主にVシネを戦場にしてキャリアを磨いてきた城定秀夫監督。エッチ系、不良もの、コメディ......と「何でも来い!」なオールラウンドプレイヤーだ。知る人ぞ知る存在だった城定監督にとって、新たなるジャンルへの挑戦となったのが、9月10日(土)よりユーロスペースにて劇場公開される『タナトス』。日本初のミドル級世界王者のベルトを巻いた竹原慎二原案のコミック『タナトス~むしけらの拳~』を実写化したドストレートな青春ボクシング映画となっている。
tanatosu02.jpg
未勝利のままプロの世界を去るメガトン山本
(渋川清彦)。栄光をつかむ男がいる影で、
人生の軌道修正を余儀なくされる大勢の男た
ちがいる。
 主人公はDVを振るう父親を半殺しにして家を出た不良少年・リク(徳山秀典)。幼い頃に母親に棄てられたトラウマもあり、他人に触れられるのを極度に嫌う狂犬のような男だ。強くなることだけが自分の存在証明だと思い、暴走族相手に殴り屋をやっている。そんなリクの前にまったく歯が立たない相手が現われた。公園で出くわしたボクシングのアマ選手・棚夫木(佐藤祐基)に、リクのパンチは一発もかすらない。怒り狂ったリクはボクシングジムまで殴り込むが、棚夫木の代わりを務めたメガトン山本(渋川清彦)に子供扱いされる。さらにリクは驚きの事実を知る。棚夫木は脳に障害があり、プロテストを受けることができない。メガトン山本に至ってはプロで1勝もできずにいる。ボクシングの世界はどんだけ凄いんだ。不良相手に負け知らずだったリクは愕然とする。  チャンピオンの素質に恵まれるもリングに立てない棚夫木、強靭なボディを誇りながら致命的に顎が弱いメガトン山本、狂犬のような闘争心を持つが家族どころか棲む家さえないリク。どうしようもない欠陥を抱えた3人の男がそろったことで、ドラマが大きく動き出す。山本のおせっかいで、リクは住み込みで働きながらボクシングのトレーニングを始める。まるで歯が立たなかった棚夫木に少しでも近づくために。一方の棚夫木にも転機が訪れる。棚夫木を手塩にかけて育ててきたジムの会長(升毅)は棚夫木をメキシコに連れていき、プロライセンスを取らせようと画策する。チャンピオンになることだけが生き甲斐だった棚夫木は目の色を変えて飛びつく。頭にパンチを浴びれば、植物人間化するか最悪死んでしまうにもかかわらず。狂った棚夫木のメキシコ行きを止めるため、トレーニングを始めて1カ月のリクが噛み付く。狂犬vs.狂拳の生涯一度きりのスパーリングが行なわれる。
tanatosu03.jpg
押し掛けマネージャーの千尋(平愛梨)。
家族の温かさを知らずに育ったリクにとって
は、世話好きな姉か妹のような存在だ。
 全8巻ある竹原慎二の原案コミックを102分の尺にまとめ込んだ城定監督の手腕が光る。脚本、編集も城定監督が兼ねている。メジャー系の作品に比べると、非常に限られた予算と撮影日数の作品だ。『あしたのジョー』(11)では伊勢谷友介が体脂肪率3%まで減量、市原隼人主演の『ボックス!』(10)では1R3分をノーカットで撮影......的なマスコミが記事にしやすい派手さもない。だが、ボクシングシーン前後のドラマ部分をきちっと描いていることで、男と男が自分の存在証明を賭けて生身で闘うことの重みが伝わってくる。  配給会社に「監督のコメントがほしい」と頼むと、新作の脚本を執筆中の城定監督がわざわざ出向いてくれた。何ともフッワークが軽く、腰の低い監督ではないか。城定監督は基本的に絵コンテを用意しないそうだ。面倒くさいからやらないのではなく、絵コンテを描くとそれに縛られてしまい、想定内のものしか撮れないからやらないそうだ。絵コンテを用意せず、自由度の高い撮影現場のほうが「奇跡のような画が撮れる瞬間がある」そうだ。脚本も自分で書くことが多いので、現場で脚本を開くこともなく、セリフもその場に合わせて自由に変えるという。
tanasosu04.jpg
年間8~10本のハイペースで撮り
続ける城定秀夫監督。「Vシネの
娯楽原理的な良さを活かしていき
たい」と語る
城定監督 「Vシネを含めると年間8~10本ペースで撮ってます。Vシネはギャラが安いんで、そのくらいの本数やらないと食べていけないんです。今回の『タナトス』はVシネより時間がかかったんで、今年は6~8本になりそうで厳しいですよ(苦笑)。もともとは20代の頃に基礎体力をつけるために受けられる仕事は全部受けていたのが、今も続いている感じです。低予算の作品は確かにシンドいけど、その分制約も少ないんで面白い。かといって、いつまでもビンボー自慢してられないんで、『タナトス』をきっかけにメジャー系の仕事も来ないかなーと密かに期待しています」  城定作品の主人公たちはどんなに辛酸を舐めても、最後には希望の光を見出すエンディングが多い。城定作品に触れると、観客は幸せな気持ちになれる。それが自分の作家性を観客に押し付けることのない城定監督のいちばんの作家性だろう。 城定監督 「シンプルなストーリーが好きなんです。ひねったストーリーよりも、シンプルな映画のほうがボク自身が客のひとりとして好きですね。あまり凝った物語だと、話の展開を追い掛けるのに神経を使ってしまって、せっかくの俳優の演技が楽しめないじゃないですか。作家性のこだわりも特にはないですね。単純に映画監督という職業に憧れていたんで、何か自分の考えを主張したいというより、作品を撮り続けることがボクには大事なんです。予算に関係なく、ひとつひとつの作品を手を抜かずに作っていきたい。映画って1人で作るもんじゃないんで、逆に手を抜くほうが難しいですよ。結局、一生懸命に作るほうが楽なんです」  気負うことなく、淡々と語る城定秀夫監督。この映像職人がブレイクする日が待ち遠しい。行列ができる店になっても、決して手を抜くことはないだろう。 (文=長野辰次) tana111.jpg 『タナトス』 原作/竹原慎二・落合裕介『タナトス~むしけらの拳~』(小学館ヤングサンデーコミックス刊) 監督・脚本・編集/城定秀夫 出演/徳山秀典、佐藤祐基、平愛梨、渋川清彦、古川雄大、大嶋宏成、大口兼悟、斉藤一平、白石朋也、秋本奈緒美、升毅、梅沢富美男 配給/ユナイテッド エンタテインメント 9月10日(土)より渋谷ユーロスペースにてレイトショー、10月1日(土)より名古屋シネマスコーレ、ムービーオンやまがた、10月8日(土)よりシネマート心斎橋にて公開 <http://www.thanatos-movie.com>
タナトス~むしけらの拳 1 じゃあの。 amazon_associate_logo.jpg
●深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】INDEX [第134回]"人間失格"の道を選んだ映画監督の業 林由美香の最新主演作『監督失格』 [第133回]ホラ吹きのホラを見破る特異な職能 ポランスキー監督『ゴーストライター』 [第132回]芦田愛菜、6歳にして危険な魅力!? 子連れで全力疾走『うさぎドロップ』 [第131回]元"暴走族"が書いた旧友への鎮魂歌 青春懺悔録『アメイジング グレイス』 [第130回]V・ギャロ主演のサバイバルグルメ!? 『エッセンシャル・キリング』 [第129回]『キック・アス』より悪趣味で泣ける 中年男の悪ノリ暴走劇『スーパー!』 [第128回]この夏の清涼剤、地方少女のダンス成長記『あぜみちジャンピンッ!』 [第127回]竹ヤリで世界進出"スシタイフーン"『エイリアンVSニンジャ』ほか逆上陸 [第126回]イーモウ監督、久々のアイドル映画 中華的妹萌え『サンザシの樹の下で』 [第125回]ナタリー・ポートマン vs. ヘビメタ野郎 人気女優の隠し球『メタルヘッド』 [第124回]黒澤明の名作『生きる』のラテン版! ヤモメ男が残した遺産『BIUTIFUL』 [第123回]北国で93年間営業を続ける"大黒座"と町の記録『小さな町の小さな映画館』 [第122回]新幹線がすれ違う瞬間、願いが叶う? 小学生の目線で描かれた『奇跡』 [第121回]理想と情熱がもたらした"痛い現実" 青春の蹉跌『マイ・バック・ページ』 [第120回]胸に響く金言"プロとは手を抜くこと" 職人秘話『アトムの足音が聞こえる』 [第119回]危険な出会い、井口昇ミーツ仲村みう 悪夢の遊園地『富江 アンリミテッド』 [第118回]ナタリー・ポートマン"第1章"の終幕 虚実が攻め合う『ブラック・スワン』 [第117回]"セカイ"を旅立った少女の地底探検記 新海誠監督の新作『星を追う子ども』 [第116回] 美少女たちの輝きが脳裏から離れない。青春ムービー『魔法少女を忘れない』 [第115回] 恋愛が与える"陶酔"とリアルな"痛み"サブカル活劇『スコット・ピルグリム』 [第114回]妄想、空想、そして現実からの大脱走 美少女革命『エンジェル ウォーズ』 [第113回]"3.11"後の新しい映画モデルとなるか『劇場版 神聖かまってちゃん』の挑戦 [第112回]マスコミが讃えた"楽園"のその後、ひとりの少女の成長記録『愛しきソナ』 [第111回]閉鎖的な"村社会"をブチ破ったれ! 韓流サバイバル劇『ビー・デビル』 [第110回]"粋"を愛したフランスの伯父さん J・タチ主演『イリュージョニスト』 [第109回]自分にとって家族は敵か、味方か? オスカー2冠受賞『ザ・ファイター』 [第108回]コーエン兄弟『トゥルー・グリット』40年で変化した"米国のヒーロー像" [第107回]ジョニー・デップが愛した"極道記者" 『GONZO』奇人がスターだった時代 [第106回] 巨匠イーストウッド監督の異色作! "あの世"はあるか?『ヒア アフター』 [第105回] キレ味、喉ごしが違うアクション! 黒帯美少女の"涙拳"が炸裂『KG』 [第104回] 高齢化するニートはどこに行くのか? "戸塚校長"のその後『平成ジレンマ』 [第103回]堀北真希&高良健吾主演作『白夜行』闇に生きる"影男"の密やかなる喜び [第102回]園子温の劇薬ムービー『冷たい熱帯魚』"救いのない結末"という名の救い [第101回] NHKが放映しない"裏プロジェクトX" AV界のカリスマ監督『YOYOCHU』 [第100回]エロスとタブーを交配した"至高の美女" 禁断のサイエンスホラー『スプライス』 [第99回]2010年に活躍した女優を勝手に表彰! 満島ひかりに"面倒くさい女"大賞を [第98回]大人だって"ドラえもん"にいて欲しい 残念男の逆転劇『エリックを探して』 [第97回]平凡な高校生デイヴは2度変身する!原点回帰のヒーロー『キック・アス』 [第96回]村上春樹の超絶ベストセラーの映画化『ノルウェイの森』はどこにある? [第95回]実在した"奇妙な高額バイト"の顛末 心理サスペンス『エクスペリメント』 [第94回]"アル中"カメラマンの泣き笑い人生『酔いがさめたら、うちに帰ろう。』 [第93回]朝ドラと異なる映画『ゲゲゲの女房』ゴールなき"貧乏耐久"2人3脚走 [第92回]バラエティーでの実績は通用するか? テリー伊藤の初監督作『10億円稼ぐ』 [第91回] 不謹慎なる社会派エンタテイメント『裁判長!ここは懲役4年でどうすか』 [第90回]"世界のナベアツ"大阪府知事に就任! 政治コメディ『さらば愛しの大統領』 [第89回]自分の恋愛もプロデュースする女優、ドリュー・バリモア主演『遠距離恋愛』 [第88回]スタローンが立ち上げた"筋肉共和国"男たちの祭典『エクスペンダブルズ』 [第87回]元"おはガール"安藤聖の再起動ドラマ 就職氷河期を生きる『バカがウラヤマシイ』 [第86回]マイノリティーは"理想郷"を目指す。筒井文学の金字塔『七瀬ふたたび』 [第85回]清純派・佐藤寛子が美しく"変態"! 官能サスペンス『ヌードの夜──』 [第84回]死を意識して、ギラギラ輝く男たち! 三池節、大バクハツ『十三人の刺客』 [第83回] 女を食い物にする男どもは全員処刑! モダン社会の闇を暴く『ミレニアム』 [第82回] "企画AV女優"たちの青春残酷物語 性なる鎮魂劇『名前のない女たち』 [第81回]猫を見れば、人間社会が見えてくる! 世界の人気猫大集合『ネコを探して』 [第80回]原恵一監督の新作は辛口ファンタジー 退屈な"日常生活"を彩る『カラフル』 [第79回]米軍に実在した"超能力部隊"の真実!? ムー民、必見『ヤギと男と男と壁と』 [第78回]戦場から帰還した夫は"芋虫男"だった! ヤクザ監督の反戦映画『キャタピラー』 [第77回] 白ユリの花開くガールズの妖しい世界 H系ホラー『ジェニファーズ・ボディ』 [第76回] 爽やか系青春ゾンビ映画にホロリ......夏休みは『ゾンビランド』に集結せよ [第75回] "生きる"とは"見苦しい"ということ 藤沢周平の時代活劇『必死剣 鳥刺し』 [第74回]初恋の美少女は200歳の吸血鬼だった! 北欧産のホラー映画『ぼくのエリ』 [第73回] "三億円事件"の真相を解き明かす! 桜タブーに挑んだ『ロストクライム』 [第72回/特別編] 上映反対で揺れる問題作『ザ・コーヴ』"渦中の人"リック・オバリー氏の主張 [第71回] 女子にモテモテになる方法、教えます。軟派少年の実話物語『ソフトボーイ』 [第70回] 下町育ちの"北野少年"が見た現代社会 人間同士の食物連鎖『アウトレイジ』 [第69回] "リアルと虚構の狭間"を生きる男、アントニオ猪木初主演作『アカシア』 [第68回] ヒーローも神もいない現代社会の惨劇 井筒監督の問題作『ヒーローショー』 [第67回] アイドルが地獄で微笑む『戦闘少女』ギャグ×血しぶき×殺陣の特盛り丼! [第66回]アナーキーな"社歌"で生産性アップ! 満島ひかり大進撃『川の底からこんにちは』 [第65回]超ヘビー級なシリアス劇『プレシャス』"家族"という名の地獄から脱出せよ [第64回]乱れ咲く"悪の華"ゼブラクイーン! 仲里依紗が過激変身『ゼブラーマン2』 [第63回] オタク王が見出した"夢と現実"の接点 ティム・バートン監督作『アリス──』 [第62回] バッドテイストな感動作『第9地区』 アナタはエビ人間とお友達になれるか? [第61回]スコセッシ監督の犯罪アトラクション『シャッターアイランド』へようこそ! [第60回]宮崎あおいの"映画代表作"が誕生! 毒を呑んでも生き続けよ『ソラニン』 [第59回]"おっぱいアート"は世界を救えるか? 母乳戦士の記録『桃色のジャンヌ・ダルク』 [第58回]現代に甦った"梶原一騎ワールド"韓流ステゴロ映画『息もできない』 [第57回]命知らずの変態レポーター、中東へ! 史上最大のどっきり?『ブルーノ』 [第56回]仲里依紗がアニメから実写へと跳躍! 母娘2代の時空旅行『時をかける少女』 [第55回]ビグロー監督はキャメロンより硬派! 人間爆弾の恐怖『ハート・ロッカー』 [第54回] "空気を読む"若者の悲劇『パレード』楽しいルームシェア生活の行き先は? [第53回]社会の"生け贄"に選ばれた男の逃亡劇 堺雅人主演『ゴールデンスランバー』 [第52回]『男はつらいよ』の別エンディング? "寅さん"の最期を描く『おとうと』 [第51回]ひとり相撲なら無敵のチャンピオン! 童貞暴走劇『ボーイズ・オン・ザ・ラン』 [第50回]ヒース・レジャーが最後に見た夢の世界 理想と欲望が渦巻く『Dr.パルナサスの鏡』 [第49回]トニー・ジャーは本気なんジャー! CGなしの狂乱劇再び『マッハ!弐』 [第48回]全米"オシャレ番長"ズーイー、見参! 草食系に捧ぐ『(500日)のサマー』 [第47回]市川崑監督&水谷豊"幻の名作"『幸福』28年の歳月を経て、初のパッケージ化 [第46回]押井守監督、大いなる方向転換か? 黒木メイサ主演『アサルトガールズ』 [第45回]ドラッグ漬けの芸能関係者必見!"神の子"の復活を追う『マラドーナ』 [第44回] 暴走する"システム"が止まらない! マイケル・ムーア監督『キャピタリズム』 [第43回]"人は二度死ぬ"という独自の死生観『ガマの油』役所広司の監督ぶりは? [第42回]誰もが共感、あるあるコメディー! 2ちゃんねる発『ブラック会社』 [第41回]タラとブラピが組むと、こーなった!! 戦争奇談『イングロリアス・バスターズ』 [第40回]"涅槃の境地"のラストシーンに唖然! 引退を賭けた角川春樹監督『笑う警官』 [第39回]伝説の男・松田優作は今も生きている 20回忌ドキュメント『SOUL RED』 [第38回]海より深い"ドメスティック・ラブ"ポン・ジュノ監督『母なる証明』 [第37回]チャン・ツィイーが放つフェロモン爆撃 悪女注意報発令せり!『ホースメン』 [第36回]『ソウ』の監督が放つ激痛バイオレンス やりすぎベーコン!『狼の死刑宣告』 [第35回]"負け組人生"から抜け出したい!! 藤原竜也主演『カイジ 人生逆転ゲーム』 [第34回]2兆円ペット産業の"開かずの間"に迫る ドキュメンタリー『犬と猫と人間と』 [第33回]"女神降臨"ペ・ドゥナの裸体が神々しい 空っぽな心に響く都市の寓話『空気人形』 [第32回]電気仕掛けのパンティをはくヒロイン R15コメディ『男と女の不都合な真実』 [第31回]萩原健一、松方弘樹の助演陣が過剰すぎ! 小栗旬主演の時代活劇『TAJOMARU』 [第30回]松本人志監督・主演第2作『しんぼる』 閉塞状況の中で踊り続ける男の悲喜劇 [第29回]シビアな現実を商品化してしまう才女、西原理恵子の自叙伝『女の子ものがたり』 [第28回]"おねマス"のマッコイ斉藤プレゼンツ 不謹慎さが爆笑を呼ぶ『上島ジェーン』 [第27回]究極料理を超えた"極地料理"に舌鼓! 納涼&グルメ映画『南極料理人』 [第26回]ハチは"失われた少年時代"のアイコン  ハリウッド版『HACHI』に涙腺崩壊! [第25回]白熱! 女同士のゴツゴツエゴバトル 金子修介監督の歌曲劇『プライド』 [第24回]悪意と善意が反転する"仮想空間"細田守監督『サマーウォーズ』 [第23回]沖縄に"精霊が暮らす楽園"があった! 中江裕司監督『真夏の夜の夢』 [第22回]"最強のライブバンド"の底力発揮! ストーンズ『シャイン・ア・ライト』 [第21回]身長15mの"巨大娘"に抱かれたい! 3Dアニメ『モンスターvsエイリアン』 [第20回]ウディ・アレンのヨハンソンいじりが冴え渡る!『それでも恋するバルセロナ』 [第19回]ケイト姐さんが"DTハンター"に! オスカー受賞の官能作『愛を読むひと』 [第18回]1万枚の段ボールで建てた"夢の砦"男のロマンここにあり『築城せよ!』 [第17回]地獄から甦った男のセミドキュメント ミッキー・ローク『レスラー』 [第16回]人生がちょっぴり楽しくなる特効薬 三木聡"脱力"劇場『インスタント沼』 [第15回]"裁判員制度"が始まる今こそ注目 死刑執行を克明に再現した『休暇』 [第14回]生傷美少女の危険な足技に痺れたい! タイ発『チョコレート・ファイター』 [第13回]風俗嬢を狙う快楽殺人鬼の恐怖! 極限の韓流映画『チェイサー』 [第12回]お姫様のハートを盗んだ男の悲哀 紀里谷監督の歴史奇談『GOEMON』 [第11回]美人女優は"下ネタ"でこそ輝く! ファレリー兄弟『ライラにお手あげ』 [第10回]ジャッキー・チェンの"暗黒面"? 中国で上映禁止『新宿インシデント』 [第9回]胸の谷間に"桃源郷"を見た! 綾瀬はるか『おっぱいバレー』 [第8回]"都市伝説"は映画と結びつく 白石晃士監督『オカルト』『テケテケ』 [第7回]少女たちの壮絶サバイバル!楳図かずおワールド『赤んぼ少女』 [第6回]派遣の"叫び"がこだまする現代版蟹工船『遭難フリーター』 [第5回]三池崇史監督『ヤッターマン』で深田恭子が"倒錯美"の世界へ [第4回]フランス、中国、日本......世界各国のタブーを暴いた劇映画続々 [第3回]水野晴郎の遺作『ギララの逆襲』岡山弁で語った最後の台詞は...... [第2回]『チェンジリング』そしてイーストウッドは"映画の神様"となった [第1回]堤幸彦版『20世紀少年』に漂うフェイクならではの哀愁と美学

"人間失格"の道を選んだ映画監督の業 林由美香の最新主演作『監督失格』

kantoku01.jpg
AV、ピンク映画を含め200本以上の作品に出演した人気女優・林由美香。
2005年に亡くなってからも『あんにょん由美香』『監督失格』
と主演作が作られている。(C)「監督失格」製作委員会
 庵野秀明プロデュース、平野勝之監督によるドキュメンタリー映画『監督失格』は、見終わった後にうちひしがれる。真剣に人を愛することが怖くなる。愛するものを失った人間の癒しがたい苦しみが映像の中に込められている。座席から立ち上がれなくなる。本作の主演は2005年6月26日に34歳の若さで急逝した女優・林由美香。松江哲明監督の『あんにょん由美香』(09)に続く最新主演作だ。平野監督にとっては11年ぶりの新作映画となる。  本作の前半は、傑作ドキュメンタリーとして誉れの高い『由美香』(97)のダイジェストだ。抜けないAV作品を撮る監督として活躍していた平野監督は妻がいながら人気女優・林由美香と恋人関係にあり、97年7月~8月に林由美香と北海道の最北端・礼文島まで自転車での撮影旅行に向かう。もともとはAV作品として撮影されていた『由美香』(AVタイトルは『わくわく不倫旅行』)だが、本作では自家製ウコン入りカップ麺を林由美香が顔を歪めて食べるシーンなどはカットしてある。でも、慣れない自転車の旅に疲れて泣き出すシーン、酔っぱらって宿泊している廃バスの中でおねしょしてしまうシーン、10代の頃は不仲だった母親の声を聞くために公衆電話を掛けるシーン......、カメラの前で素顔をさらす林由美香の生身の魅力がスクリーンに蘇る。再構成されても『由美香』の中の林由美香には、やはり目を惹き付けられる。なるほど、『ヱヴァンゲリヲン新劇場版』で自分の人生を狂わせた悪女"エヴァ"と3たび向き合っている庵野秀明プロデュース作品らしい。
kantoku02.jpg
平野勝之監督は恋人だった林由美香の死を
克服するため、のたうちまわりながらも
11年ぶりとなるドキュメンタリー制作
に着手する。
 北海道旅行中の平野監督はとことんバカだ。旅の目的地にゴールした直後、林由美香がそっけない態度だったことに怒って、彼女を平手でぶってしまう。観ている側は思わず心の中で叫ぶ、「そうじゃないだろう!」と。彼女はこの旅を通して、監督との関係が変わることを期待していたはずだ。でも、監督は身勝手だ。不倫しておきながら、彼女の前で平気で妻の話をする。ケンカの様子をカメラで撮りそびれた監督に対して、彼女は「監督失格だね」と精一杯毒づいてみせる。案の定、作品の完成後、2人は別れることになる。監督失格どころか、恋人失格だ。  女優・林由美香の魅力は、そのムキ出し感だ。体だけでなく、心もハダカになっていた。勝ち気に見えて、ムキ身なだけにとても傷つきやすかった。人にもっと愛されたくて、いまおかしんじ監督の『たまもの』(04)、女池充監督の『ビタースイート』(04)をはじめとする200本を越える出演作の中でたくさんの愛を振りまいてきた。淋しがり屋な反面、サービス精神旺盛なのは、小学生のときに両親が離婚したことも少なからず関係しているのだろう。恋人である平野監督のカメラに向かって「幸せだよ」とささやきながらも、どこか表情の片隅に淋しさの影が漂う。
kantoku03.jpg
林由美香を語る上で欠かせない人気AV監督
のカンパニー松尾。林由美香のマンション
に駆け付けるが、動揺のあまりカメラを満足
に回すことができない。
 平野監督は林由美香と別れた後も、彼女の残り香を求めるかのように北海道への自転車旅行を続け、"自転車三部作"となる『流れ者図鑑』(98)、『白 THE WHITE』(99)を公開する。しかし、林由美香という創作意欲を掻き立てる至高のミューズを手放したことから、平野監督は次第にスランプに陥り、新作を撮れなくなってしまう。人間は大事なものを失ってから、初めて失ったものの大きさに気づく。  『監督失格』の後半。恋人という季節を過ぎ、年齢を重ね、平野監督と林由美香はお互いに欠かせないパートナーであることを認識する。そして久しぶりの撮影を兼ねて、平野監督が再会を約束した林由美香の35歳の誕生日。平野監督は林由美香のマンションを訪ねるが、インターホンを鳴らしても返事がない。プロ意識の強い彼女は、これまで仕事をドタキャンしたことは一度もない。翌日になっても返事がない。不審に思った平野監督が、林由美香の母親に連絡し、部屋の中へと入る。異臭が立ち込め、彼女は部屋の奥で倒れていた。あまりにも唐突すぎる別れだった。平野監督に同行していた弟子のペヤングマキが、パニックに陥った平野監督、「どうしてだ! なぜなんだ! 由美香!」と絶叫する母親の姿をカメラに収める。さらに床に置かれたREC状態のカメラは、倒れ込んで泣きむせぶ母親を記録し続ける。平野監督と同様に元恋人であったAV監督のカンパニー松尾も知らせを聞いて駆け付け、救急車にストレッチャーが運ばれる様子を見て慟哭する。カメラは、愛が永遠に失われた瞬間を冷静に映し続ける。
kantoku014.jpg
由美香ママこと小栗冨美代さん。野方ホープの
社長。実の娘である林由美香と20代前半
まで疎遠だったが、その後和解し、仲良し親子
となっていたが......。
 弟子のペヤングマキがとっさに床に置いたカメラの画角が、恐ろしいほどに絶妙すぎる。北海道旅行の際に肝心な場面を撮りそびれ、「監督失格」と烙印を押された師匠の汚名を挽回して余りある瞬発的な行為だ。神がかり的と言っていい。しかし、あまりにもこのカメラ位置がベストアングルすぎたことから、騒動が巻き起きてしまう。林由美香の死亡事故に平野監督たちは関与していたのではないかと、由美香ママから勘ぐられてしまうのだ。マスコミにも平野監督が元恋人である女優の死体発見現場でカメラを回していたことを報じられる騒ぎとなった。このときのカメラに記録された問題映像は弁護士を介して、平野監督、映像会社、由美香ママの3者の間で封印することが決められる。  林由美香が亡くなって5年。どういう経緯で由美香ママが"封印映像"の使用を許可する気になったのか詳細は明かされない。由美香ママの表情から読み取るしかない。また、平野監督は本作を作ることで本当に林由美香を永遠に失った喪失感を克服でき、立ち直ることができたのかは不明だ。ときに身勝手で、感傷的で、不道徳で、ブザマな上に未完成なドキュメンタリーだ。でも、それが人間が生きるということなのか。割り切れない方程式なのか。フタのないパンドラの箱なのか。観客から「人間失格!」と後ろ指をさされる覚悟で、平野監督は本作を完成させた。「監督失格だね」と自分のことを呼んだ林由美香にもう一度応えるために。  今、充分に幸せな人はこの作品は見ないほうがいい。愛する者を失った哀しみの大きさに怯えながら生きることになるから。でも、本当の愛の大きさを実感してみたいと考える人は見るべきだろう。平野監督は愛を失うことで、その愛の大きさと重さを思い知った。これから彼は、失った愛を抱えながら修羅の道を進むことになる。 (文=長野辰次) kantoku05.jpg 『監督失格』 監督/平野勝之 プロデュース/庵野秀明 音楽/矢野顕子 出演/林由美香、小栗冨美代(由美香ママ)、カンパニー松尾 配給/東宝映像事業部 9月3日(土)よりTOHOシネマズ六本木ヒルズにて独占先行ロードショー、10月1日(土)より全国拡大ロードショー <http://k-shikkaku.com>
あんにょん由美香 由美香の足跡。 amazon_associate_logo.jpg
●深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】INDEX [第133回]ホラ吹きのホラを見破る特異な職能 ポランスキー監督『ゴーストライター』 [第132回]芦田愛菜、6歳にして危険な魅力!? 子連れで全力疾走『うさぎドロップ』 [第131回]元"暴走族"が書いた旧友への鎮魂歌 青春懺悔録『アメイジング グレイス』 [第130回]V・ギャロ主演のサバイバルグルメ!? 『エッセンシャル・キリング』 [第129回]『キック・アス』より悪趣味で泣ける 中年男の悪ノリ暴走劇『スーパー!』 [第128回]この夏の清涼剤、地方少女のダンス成長記『あぜみちジャンピンッ!』 [第127回]竹ヤリで世界進出"スシタイフーン"『エイリアンVSニンジャ』ほか逆上陸 [第126回]イーモウ監督、久々のアイドル映画 中華的妹萌え『サンザシの樹の下で』 [第125回]ナタリー・ポートマン vs. ヘビメタ野郎 人気女優の隠し球『メタルヘッド』 [第124回]黒澤明の名作『生きる』のラテン版! ヤモメ男が残した遺産『BIUTIFUL』 [第123回]北国で93年間営業を続ける"大黒座"と町の記録『小さな町の小さな映画館』 [第122回]新幹線がすれ違う瞬間、願いが叶う? 小学生の目線で描かれた『奇跡』 [第121回]理想と情熱がもたらした"痛い現実" 青春の蹉跌『マイ・バック・ページ』 [第120回]胸に響く金言"プロとは手を抜くこと" 職人秘話『アトムの足音が聞こえる』 [第119回]危険な出会い、井口昇ミーツ仲村みう 悪夢の遊園地『富江 アンリミテッド』 [第118回]ナタリー・ポートマン"第1章"の終幕 虚実が攻め合う『ブラック・スワン』 [第117回]"セカイ"を旅立った少女の地底探検記 新海誠監督の新作『星を追う子ども』 [第116回] 美少女たちの輝きが脳裏から離れない。青春ムービー『魔法少女を忘れない』 [第115回] 恋愛が与える"陶酔"とリアルな"痛み"サブカル活劇『スコット・ピルグリム』 [第114回]妄想、空想、そして現実からの大脱走 美少女革命『エンジェル ウォーズ』 [第113回]"3.11"後の新しい映画モデルとなるか『劇場版 神聖かまってちゃん』の挑戦 [第112回]マスコミが讃えた"楽園"のその後、ひとりの少女の成長記録『愛しきソナ』 [第111回]閉鎖的な"村社会"をブチ破ったれ! 韓流サバイバル劇『ビー・デビル』 [第110回]"粋"を愛したフランスの伯父さん J・タチ主演『イリュージョニスト』 [第109回]自分にとって家族は敵か、味方か? オスカー2冠受賞『ザ・ファイター』 [第108回]コーエン兄弟『トゥルー・グリット』40年で変化した"米国のヒーロー像" [第107回]ジョニー・デップが愛した"極道記者" 『GONZO』奇人がスターだった時代 [第106回] 巨匠イーストウッド監督の異色作! "あの世"はあるか?『ヒア アフター』 [第105回] キレ味、喉ごしが違うアクション! 黒帯美少女の"涙拳"が炸裂『KG』 [第104回] 高齢化するニートはどこに行くのか? "戸塚校長"のその後『平成ジレンマ』 [第103回]堀北真希&高良健吾主演作『白夜行』闇に生きる"影男"の密やかなる喜び [第102回]園子温の劇薬ムービー『冷たい熱帯魚』"救いのない結末"という名の救い [第101回] NHKが放映しない"裏プロジェクトX" AV界のカリスマ監督『YOYOCHU』 [第100回]エロスとタブーを交配した"至高の美女" 禁断のサイエンスホラー『スプライス』 [第99回]2010年に活躍した女優を勝手に表彰! 満島ひかりに"面倒くさい女"大賞を [第98回]大人だって"ドラえもん"にいて欲しい 残念男の逆転劇『エリックを探して』 [第97回]平凡な高校生デイヴは2度変身する!原点回帰のヒーロー『キック・アス』 [第96回]村上春樹の超絶ベストセラーの映画化『ノルウェイの森』はどこにある? [第95回]実在した"奇妙な高額バイト"の顛末 心理サスペンス『エクスペリメント』 [第94回]"アル中"カメラマンの泣き笑い人生『酔いがさめたら、うちに帰ろう。』 [第93回]朝ドラと異なる映画『ゲゲゲの女房』ゴールなき"貧乏耐久"2人3脚走 [第92回]バラエティーでの実績は通用するか? テリー伊藤の初監督作『10億円稼ぐ』 [第91回] 不謹慎なる社会派エンタテイメント『裁判長!ここは懲役4年でどうすか』 [第90回]"世界のナベアツ"大阪府知事に就任! 政治コメディ『さらば愛しの大統領』 [第89回]自分の恋愛もプロデュースする女優、ドリュー・バリモア主演『遠距離恋愛』 [第88回]スタローンが立ち上げた"筋肉共和国"男たちの祭典『エクスペンダブルズ』 [第87回]元"おはガール"安藤聖の再起動ドラマ 就職氷河期を生きる『バカがウラヤマシイ』 [第86回]マイノリティーは"理想郷"を目指す。筒井文学の金字塔『七瀬ふたたび』 [第85回]清純派・佐藤寛子が美しく"変態"! 官能サスペンス『ヌードの夜──』 [第84回]死を意識して、ギラギラ輝く男たち! 三池節、大バクハツ『十三人の刺客』 [第83回] 女を食い物にする男どもは全員処刑! モダン社会の闇を暴く『ミレニアム』 [第82回] "企画AV女優"たちの青春残酷物語 性なる鎮魂劇『名前のない女たち』 [第81回]猫を見れば、人間社会が見えてくる! 世界の人気猫大集合『ネコを探して』 [第80回]原恵一監督の新作は辛口ファンタジー 退屈な"日常生活"を彩る『カラフル』 [第79回]米軍に実在した"超能力部隊"の真実!? ムー民、必見『ヤギと男と男と壁と』 [第78回]戦場から帰還した夫は"芋虫男"だった! ヤクザ監督の反戦映画『キャタピラー』 [第77回] 白ユリの花開くガールズの妖しい世界 H系ホラー『ジェニファーズ・ボディ』 [第76回] 爽やか系青春ゾンビ映画にホロリ......夏休みは『ゾンビランド』に集結せよ [第75回] "生きる"とは"見苦しい"ということ 藤沢周平の時代活劇『必死剣 鳥刺し』 [第74回]初恋の美少女は200歳の吸血鬼だった! 北欧産のホラー映画『ぼくのエリ』 [第73回] "三億円事件"の真相を解き明かす! 桜タブーに挑んだ『ロストクライム』 [第72回/特別編] 上映反対で揺れる問題作『ザ・コーヴ』"渦中の人"リック・オバリー氏の主張 [第71回] 女子にモテモテになる方法、教えます。軟派少年の実話物語『ソフトボーイ』 [第70回] 下町育ちの"北野少年"が見た現代社会 人間同士の食物連鎖『アウトレイジ』 [第69回] "リアルと虚構の狭間"を生きる男、アントニオ猪木初主演作『アカシア』 [第68回] ヒーローも神もいない現代社会の惨劇 井筒監督の問題作『ヒーローショー』 [第67回] アイドルが地獄で微笑む『戦闘少女』ギャグ×血しぶき×殺陣の特盛り丼! [第66回]アナーキーな"社歌"で生産性アップ! 満島ひかり大進撃『川の底からこんにちは』 [第65回]超ヘビー級なシリアス劇『プレシャス』"家族"という名の地獄から脱出せよ [第64回]乱れ咲く"悪の華"ゼブラクイーン! 仲里依紗が過激変身『ゼブラーマン2』 [第63回] オタク王が見出した"夢と現実"の接点 ティム・バートン監督作『アリス──』 [第62回] バッドテイストな感動作『第9地区』 アナタはエビ人間とお友達になれるか? [第61回]スコセッシ監督の犯罪アトラクション『シャッターアイランド』へようこそ! [第60回]宮崎あおいの"映画代表作"が誕生! 毒を呑んでも生き続けよ『ソラニン』 [第59回]"おっぱいアート"は世界を救えるか? 母乳戦士の記録『桃色のジャンヌ・ダルク』 [第58回]現代に甦った"梶原一騎ワールド"韓流ステゴロ映画『息もできない』 [第57回]命知らずの変態レポーター、中東へ! 史上最大のどっきり?『ブルーノ』 [第56回]仲里依紗がアニメから実写へと跳躍! 母娘2代の時空旅行『時をかける少女』 [第55回]ビグロー監督はキャメロンより硬派! 人間爆弾の恐怖『ハート・ロッカー』 [第54回] "空気を読む"若者の悲劇『パレード』楽しいルームシェア生活の行き先は? [第53回]社会の"生け贄"に選ばれた男の逃亡劇 堺雅人主演『ゴールデンスランバー』 [第52回]『男はつらいよ』の別エンディング? "寅さん"の最期を描く『おとうと』 [第51回]ひとり相撲なら無敵のチャンピオン! 童貞暴走劇『ボーイズ・オン・ザ・ラン』 [第50回]ヒース・レジャーが最後に見た夢の世界 理想と欲望が渦巻く『Dr.パルナサスの鏡』 [第49回]トニー・ジャーは本気なんジャー! CGなしの狂乱劇再び『マッハ!弐』 [第48回]全米"オシャレ番長"ズーイー、見参! 草食系に捧ぐ『(500日)のサマー』 [第47回]市川崑監督&水谷豊"幻の名作"『幸福』28年の歳月を経て、初のパッケージ化 [第46回]押井守監督、大いなる方向転換か? 黒木メイサ主演『アサルトガールズ』 [第45回]ドラッグ漬けの芸能関係者必見!"神の子"の復活を追う『マラドーナ』 [第44回] 暴走する"システム"が止まらない! マイケル・ムーア監督『キャピタリズム』 [第43回]"人は二度死ぬ"という独自の死生観『ガマの油』役所広司の監督ぶりは? [第42回]誰もが共感、あるあるコメディー! 2ちゃんねる発『ブラック会社』 [第41回]タラとブラピが組むと、こーなった!! 戦争奇談『イングロリアス・バスターズ』 [第40回]"涅槃の境地"のラストシーンに唖然! 引退を賭けた角川春樹監督『笑う警官』 [第39回]伝説の男・松田優作は今も生きている 20回忌ドキュメント『SOUL RED』 [第38回]海より深い"ドメスティック・ラブ"ポン・ジュノ監督『母なる証明』 [第37回]チャン・ツィイーが放つフェロモン爆撃 悪女注意報発令せり!『ホースメン』 [第36回]『ソウ』の監督が放つ激痛バイオレンス やりすぎベーコン!『狼の死刑宣告』 [第35回]"負け組人生"から抜け出したい!! 藤原竜也主演『カイジ 人生逆転ゲーム』 [第34回]2兆円ペット産業の"開かずの間"に迫る ドキュメンタリー『犬と猫と人間と』 [第33回]"女神降臨"ペ・ドゥナの裸体が神々しい 空っぽな心に響く都市の寓話『空気人形』 [第32回]電気仕掛けのパンティをはくヒロイン R15コメディ『男と女の不都合な真実』 [第31回]萩原健一、松方弘樹の助演陣が過剰すぎ! 小栗旬主演の時代活劇『TAJOMARU』 [第30回]松本人志監督・主演第2作『しんぼる』 閉塞状況の中で踊り続ける男の悲喜劇 [第29回]シビアな現実を商品化してしまう才女、西原理恵子の自叙伝『女の子ものがたり』 [第28回]"おねマス"のマッコイ斉藤プレゼンツ 不謹慎さが爆笑を呼ぶ『上島ジェーン』 [第27回]究極料理を超えた"極地料理"に舌鼓! 納涼&グルメ映画『南極料理人』 [第26回]ハチは"失われた少年時代"のアイコン  ハリウッド版『HACHI』に涙腺崩壊! [第25回]白熱! 女同士のゴツゴツエゴバトル 金子修介監督の歌曲劇『プライド』 [第24回]悪意と善意が反転する"仮想空間"細田守監督『サマーウォーズ』 [第23回]沖縄に"精霊が暮らす楽園"があった! 中江裕司監督『真夏の夜の夢』 [第22回]"最強のライブバンド"の底力発揮! ストーンズ『シャイン・ア・ライト』 [第21回]身長15mの"巨大娘"に抱かれたい! 3Dアニメ『モンスターvsエイリアン』 [第20回]ウディ・アレンのヨハンソンいじりが冴え渡る!『それでも恋するバルセロナ』 [第19回]ケイト姐さんが"DTハンター"に! オスカー受賞の官能作『愛を読むひと』 [第18回]1万枚の段ボールで建てた"夢の砦"男のロマンここにあり『築城せよ!』 [第17回]地獄から甦った男のセミドキュメント ミッキー・ローク『レスラー』 [第16回]人生がちょっぴり楽しくなる特効薬 三木聡"脱力"劇場『インスタント沼』 [第15回]"裁判員制度"が始まる今こそ注目 死刑執行を克明に再現した『休暇』 [第14回]生傷美少女の危険な足技に痺れたい! タイ発『チョコレート・ファイター』 [第13回]風俗嬢を狙う快楽殺人鬼の恐怖! 極限の韓流映画『チェイサー』 [第12回]お姫様のハートを盗んだ男の悲哀 紀里谷監督の歴史奇談『GOEMON』 [第11回]美人女優は"下ネタ"でこそ輝く! ファレリー兄弟『ライラにお手あげ』 [第10回]ジャッキー・チェンの"暗黒面"? 中国で上映禁止『新宿インシデント』 [第9回]胸の谷間に"桃源郷"を見た! 綾瀬はるか『おっぱいバレー』 [第8回]"都市伝説"は映画と結びつく 白石晃士監督『オカルト』『テケテケ』 [第7回]少女たちの壮絶サバイバル!楳図かずおワールド『赤んぼ少女』 [第6回]派遣の"叫び"がこだまする現代版蟹工船『遭難フリーター』 [第5回]三池崇史監督『ヤッターマン』で深田恭子が"倒錯美"の世界へ [第4回]フランス、中国、日本......世界各国のタブーを暴いた劇映画続々 [第3回]水野晴郎の遺作『ギララの逆襲』岡山弁で語った最後の台詞は...... [第2回]『チェンジリング』そしてイーストウッドは"映画の神様"となった [第1回]堤幸彦版『20世紀少年』に漂うフェイクならではの哀愁と美学

ホラ吹きのホラを見破る特異な職能 ポランスキー監督『ゴーストライター』

ghost01.jpg
ユアン・マクレガー主演の政治サスペンス『ゴーストライター』。
誰が敵か味方か分からない状況に怯える主人公を描くと、
ロマン・ポランスキー監督は抜群にうまい。
(C)2010 SUMMIT ENTERTAINMENT, LLC. ALL RIGHTS RESERVED.
 映画史上もっとも波乱に満ち、スキャンダラスな生涯を送るロマン・ポランスキー監督。ポーランド人の両親はナチスによって強制収容所に送り込まれ、戦時下を逃げ惑う少年期を過ごした。ハリウッドに招かれて撮ったホラー映画『ローズマリーの赤ちゃん』(68)がヒットし、幸福期を迎えたポランスキー監督だったが、彼の子どもを身籠っていた妻シャロン・テートは1969年にカルト教団の襲撃に遭い惨殺。『チャイナタウン』(74)で復活を遂げるが、13歳の少女への淫行罪で77年に逮捕。その保釈中に「海外でロケがある」と偽って、米国を脱出。欧州へ逃亡し、『テス』(79)、『赤い航路』(92)、『戦場のピアニスト』(02)と名作、話題作を産み落としてきた。2009年にチューリヒ映画祭で生涯功労賞を受賞するためにスイス空港に到着したところ、米国司法の要請を受けたスイス当局によって拘留されたことは記憶に新しい。ユアン・マクレガー主演の『ゴーストライター』は、拘留中のポランスキー監督がポストプロダクションの指示を出して完成に至った作品。ポランスキー監督の代表作は、どれも"いわくつき"ばかり。本作もまたいわくつきとなったが、見応え充分な政治サスペンスとなっている。  ユアン・マクレガーが演じるロンドン在住の主人公は名前がない。主人公の職業は"ゴーストライター"。もっぱらタレントやスポーツ選手をインタビューして、面白おかしく自伝にまとめている。ゴーストライターの名前が本にクレジットされることはない。自分は表に出ず、本人の"分身"となって1冊の本に仕上げ、出版業界を渡り歩いてきた。そんな主人公の元に、ギャラ25万ドルという破格の仕事が寄せられる。前英国首相のアダム・ラング(ピアーズ・ブロズナン)の回顧録の依頼だが、1カ月以内に仕上げろという。すでにラングへのインタビューは済んでおり、草稿に手を加えるだけでいい。しかし、ギャラが相場から大きくかけ離れている仕事ほど、怪しいものはない。この仕事はどうも臭う、ぷんぷん臭う。なんせ、前任のゴーストライターはフェリーから落ちて溺死体として海岸に打ち上げられているのだ。編集者たちにうまく言いくるめられ、渋々と主人公は米国の離島にあるラングの別荘へ向かった。折しも、ラングが在職中にイスラム系過激派をテロ容疑で不当に逮捕し、CIAに引き渡した疑いが持ち上がる。出版社はこの話題に乗じて発売するから、締め切りを2週間繰り上げろと無茶ぶりを言ってくる始末だ。
ghost02.jpg
『007』シリーズで英国の誇るヒーローを演じ
てきたピアーズ・ブロズナンが前英国首相役。
ダイコンチックな演技が今回のキャラには
ぴったり。
 ラングの別荘に到着した主人公は前任者の書いた草稿に目を通すが、これが酷い出来。ラングの家系が延々と書かれた序文で、誰も読む気がしない代物。首相退任後も多忙なラングを捕まえて、改めてインタビューを始める。想像したよりもラングは気さくで、「自分が政治にのめり込んだきっかけは、ひとりの美しい女性との出会い。その女性に惹かれて、彼女のいる政党に入ったんだ」と語り始めた。その女性はルース・ラング(オリヴィア・ウィリアムズ)。ラングの妻だ。後の女房となる女性のハートを射止めるために、政治家になったというわけだ。人間味のある、なかなか良いエピソードではないか。冒頭に持ってくると、キャッチーかもしれない。だが、主人公の心のアンテナが囁く。このエピソードはフェイクだ、うまく出来過ぎていると。ペテン師のペテンを見破れるのは同業のペテン師だけだ。長年、ゴーストライターとしてホラ吹きたちの自伝づくりに協力してきた主人公は、ラングが自分の過去を捏造しようとしていることを察する。  『スター・ウォーズ』シリーズでは"ジェダイの騎士"を演じたユアン・マクレガーだが、本作ではただのライター稼業。主人公の武器は嘘と事実を嗅ぎ分ける嗅覚と人一倍旺盛な探究心、そして手元にある資料から取材相手の思考パターンを読み取ることだ。地元の漁師に話を聞くと、フェリーから落ちた溺死体は海岸には打ち上がらないという。さらに主人公がラングの別荘にあったゲスト用の車に乗ると、カーナビゲーションに前の利用者の記録が残っていた。ナビゲーションはフェリーの発着場へと誘う。どうやら、前の利用者は溺死した前任のゴーストライターらしい。前任者はどういうルートを辿って本当のゴーストにされてしまったのか、主人公は恐る恐るナビゲーションの声に従う......。
ghost03.jpg
ラングの秘書アメリア(キム・キャトラル)は
ラング、ラングの妻ルースとドロドロの三角
関係。取材を続けるうちに、面倒な人間関係に
巻き込まれる。
 日本でのゴーストライターといえば、高視聴率を記録した大河ドラマの脚本家にゴースト疑惑が持ち上がる騒ぎとなった。ベテランの人気ミュージシャンも、まるで違ったタイプの新曲を書き上げる度にゴースト疑惑が持ち上がる。もちろん、出版業界もゴーストでいっぱいだ。出版不況から、ネームバリューのないライター名義で本を発売するよりも、タレントや有名人の名前で売る傾向がますます強まっている。ゴーストを引き受ける側も自分の名前で出版して売れないより、有名人の話題性でベストセラーとなって多めの印税を手にしたほうがいい。食べていくために、名より実を獲れだ。その代わり、ゴーストになったら、余計な自己主張や野心は捨てなくてはいけない。ゴーストから作家にうまく転身できたのは、林真理子、重松清とわずかな成功例だけだ。影の存在であるゴーストから表の世界へと抜け出すのは、本作も現実も同じように容易ではない。  本作はポランスキー監督が拘留中の第60回ベルリン映画祭で銀熊賞(最優秀監督賞)を受賞した。ポランスキー監督が市民権を持つフランスがスイスに働き掛けたこともあって、ポランスキー監督は結局のところ米国司法に引き渡されることなく2010年7月に10カ月間にわたる軟禁状態を解かれ、自由の身となった。ポランスキー監督がその生涯を自伝として赤裸々にカミングアウトすれば、ベストセラーは間違いないだろう。ポランスキー監督の自伝なら、ゴーストでも構わないというライターがわらわらと名乗り出るに違いない。スキャンダラスな巨匠とゴーストライターとの虚々実々なやりとりも、ぜひ映画化してほしい。ポランスキーの抱える心の闇にどこまで迫れるのか、スリリングなものになるはずだ。 (文=長野辰次) ghost04.jpg 『ゴーストライター』 原作/ロバート・ハリス 脚本/ロバート・ハリス、ロマン・ポランスキー 出演/ユアン・マクレガー、ピアース・ブロスナン、キム・キャトラル、オリヴィア・ウィリアムズ、トム・ウィルキンソン、ティモシー・ハットン、ロバート・パフ、ジェームズ・ベルーシ、イーライ・ウォラック 配給/日活 8月27日(土)よりヒューマントラストシネマ有楽町、ヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国ロードショー公開 <http://ghost-writer.jp>
戦場のピアニスト [Blu-ray] 名作。 amazon_associate_logo.jpg
●深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】INDEX [第132回]芦田愛菜、6歳にして危険な魅力!? 子連れで全力疾走『うさぎドロップ』 [第131回]元"暴走族"が書いた旧友への鎮魂歌 青春懺悔録『アメイジング グレイス』 [第130回]V・ギャロ主演のサバイバルグルメ!? 『エッセンシャル・キリング』 [第129回]『キック・アス』より悪趣味で泣ける 中年男の悪ノリ暴走劇『スーパー!』 [第128回]この夏の清涼剤、地方少女のダンス成長記『あぜみちジャンピンッ!』 [第127回]竹ヤリで世界進出"スシタイフーン"『エイリアンVSニンジャ』ほか逆上陸 [第126回]イーモウ監督、久々のアイドル映画 中華的妹萌え『サンザシの樹の下で』 [第125回]ナタリー・ポートマン vs. ヘビメタ野郎 人気女優の隠し球『メタルヘッド』 [第124回]黒澤明の名作『生きる』のラテン版! ヤモメ男が残した遺産『BIUTIFUL』 [第123回]北国で93年間営業を続ける"大黒座"と町の記録『小さな町の小さな映画館』 [第122回]新幹線がすれ違う瞬間、願いが叶う? 小学生の目線で描かれた『奇跡』 [第121回]理想と情熱がもたらした"痛い現実" 青春の蹉跌『マイ・バック・ページ』 [第120回]胸に響く金言"プロとは手を抜くこと" 職人秘話『アトムの足音が聞こえる』 [第119回]危険な出会い、井口昇ミーツ仲村みう 悪夢の遊園地『富江 アンリミテッド』 [第118回]ナタリー・ポートマン"第1章"の終幕 虚実が攻め合う『ブラック・スワン』 [第117回]"セカイ"を旅立った少女の地底探検記 新海誠監督の新作『星を追う子ども』 [第116回] 美少女たちの輝きが脳裏から離れない。青春ムービー『魔法少女を忘れない』 [第115回] 恋愛が与える"陶酔"とリアルな"痛み"サブカル活劇『スコット・ピルグリム』 [第114回]妄想、空想、そして現実からの大脱走 美少女革命『エンジェル ウォーズ』 [第113回]"3.11"後の新しい映画モデルとなるか『劇場版 神聖かまってちゃん』の挑戦 [第112回]マスコミが讃えた"楽園"のその後、ひとりの少女の成長記録『愛しきソナ』 [第111回]閉鎖的な"村社会"をブチ破ったれ! 韓流サバイバル劇『ビー・デビル』 [第110回]"粋"を愛したフランスの伯父さん J・タチ主演『イリュージョニスト』 [第109回]自分にとって家族は敵か、味方か? オスカー2冠受賞『ザ・ファイター』 [第108回]コーエン兄弟『トゥルー・グリット』40年で変化した"米国のヒーロー像" [第107回]ジョニー・デップが愛した"極道記者" 『GONZO』奇人がスターだった時代 [第106回] 巨匠イーストウッド監督の異色作! "あの世"はあるか?『ヒア アフター』 [第105回] キレ味、喉ごしが違うアクション! 黒帯美少女の"涙拳"が炸裂『KG』 [第104回] 高齢化するニートはどこに行くのか? "戸塚校長"のその後『平成ジレンマ』 [第103回]堀北真希&高良健吾主演作『白夜行』闇に生きる"影男"の密やかなる喜び [第102回]園子温の劇薬ムービー『冷たい熱帯魚』"救いのない結末"という名の救い [第101回] NHKが放映しない"裏プロジェクトX" AV界のカリスマ監督『YOYOCHU』 [第100回]エロスとタブーを交配した"至高の美女" 禁断のサイエンスホラー『スプライス』 [第99回]2010年に活躍した女優を勝手に表彰! 満島ひかりに"面倒くさい女"大賞を [第98回]大人だって"ドラえもん"にいて欲しい 残念男の逆転劇『エリックを探して』 [第97回]平凡な高校生デイヴは2度変身する!原点回帰のヒーロー『キック・アス』 [第96回]村上春樹の超絶ベストセラーの映画化『ノルウェイの森』はどこにある? [第95回]実在した"奇妙な高額バイト"の顛末 心理サスペンス『エクスペリメント』 [第94回]"アル中"カメラマンの泣き笑い人生『酔いがさめたら、うちに帰ろう。』 [第93回]朝ドラと異なる映画『ゲゲゲの女房』ゴールなき"貧乏耐久"2人3脚走 [第92回]バラエティーでの実績は通用するか? テリー伊藤の初監督作『10億円稼ぐ』 [第91回] 不謹慎なる社会派エンタテイメント『裁判長!ここは懲役4年でどうすか』 [第90回]"世界のナベアツ"大阪府知事に就任! 政治コメディ『さらば愛しの大統領』 [第89回]自分の恋愛もプロデュースする女優、ドリュー・バリモア主演『遠距離恋愛』 [第88回]スタローンが立ち上げた"筋肉共和国"男たちの祭典『エクスペンダブルズ』 [第87回]元"おはガール"安藤聖の再起動ドラマ 就職氷河期を生きる『バカがウラヤマシイ』 [第86回]マイノリティーは"理想郷"を目指す。筒井文学の金字塔『七瀬ふたたび』 [第85回]清純派・佐藤寛子が美しく"変態"! 官能サスペンス『ヌードの夜──』 [第84回]死を意識して、ギラギラ輝く男たち! 三池節、大バクハツ『十三人の刺客』 [第83回] 女を食い物にする男どもは全員処刑! モダン社会の闇を暴く『ミレニアム』 [第82回] "企画AV女優"たちの青春残酷物語 性なる鎮魂劇『名前のない女たち』 [第81回]猫を見れば、人間社会が見えてくる! 世界の人気猫大集合『ネコを探して』 [第80回]原恵一監督の新作は辛口ファンタジー 退屈な"日常生活"を彩る『カラフル』 [第79回]米軍に実在した"超能力部隊"の真実!? ムー民、必見『ヤギと男と男と壁と』 [第78回]戦場から帰還した夫は"芋虫男"だった! ヤクザ監督の反戦映画『キャタピラー』 [第77回] 白ユリの花開くガールズの妖しい世界 H系ホラー『ジェニファーズ・ボディ』 [第76回] 爽やか系青春ゾンビ映画にホロリ......夏休みは『ゾンビランド』に集結せよ [第75回] "生きる"とは"見苦しい"ということ 藤沢周平の時代活劇『必死剣 鳥刺し』 [第74回]初恋の美少女は200歳の吸血鬼だった! 北欧産のホラー映画『ぼくのエリ』 [第73回] "三億円事件"の真相を解き明かす! 桜タブーに挑んだ『ロストクライム』 [第72回/特別編] 上映反対で揺れる問題作『ザ・コーヴ』"渦中の人"リック・オバリー氏の主張 [第71回] 女子にモテモテになる方法、教えます。軟派少年の実話物語『ソフトボーイ』 [第70回] 下町育ちの"北野少年"が見た現代社会 人間同士の食物連鎖『アウトレイジ』 [第69回] "リアルと虚構の狭間"を生きる男、アントニオ猪木初主演作『アカシア』 [第68回] ヒーローも神もいない現代社会の惨劇 井筒監督の問題作『ヒーローショー』 [第67回] アイドルが地獄で微笑む『戦闘少女』ギャグ×血しぶき×殺陣の特盛り丼! [第66回]アナーキーな"社歌"で生産性アップ! 満島ひかり大進撃『川の底からこんにちは』 [第65回]超ヘビー級なシリアス劇『プレシャス』"家族"という名の地獄から脱出せよ [第64回]乱れ咲く"悪の華"ゼブラクイーン! 仲里依紗が過激変身『ゼブラーマン2』 [第63回] オタク王が見出した"夢と現実"の接点 ティム・バートン監督作『アリス──』 [第62回] バッドテイストな感動作『第9地区』 アナタはエビ人間とお友達になれるか? [第61回]スコセッシ監督の犯罪アトラクション『シャッターアイランド』へようこそ! [第60回]宮崎あおいの"映画代表作"が誕生! 毒を呑んでも生き続けよ『ソラニン』 [第59回]"おっぱいアート"は世界を救えるか? 母乳戦士の記録『桃色のジャンヌ・ダルク』 [第58回]現代に甦った"梶原一騎ワールド"韓流ステゴロ映画『息もできない』 [第57回]命知らずの変態レポーター、中東へ! 史上最大のどっきり?『ブルーノ』 [第56回]仲里依紗がアニメから実写へと跳躍! 母娘2代の時空旅行『時をかける少女』 [第55回]ビグロー監督はキャメロンより硬派! 人間爆弾の恐怖『ハート・ロッカー』 [第54回] "空気を読む"若者の悲劇『パレード』楽しいルームシェア生活の行き先は? [第53回]社会の"生け贄"に選ばれた男の逃亡劇 堺雅人主演『ゴールデンスランバー』 [第52回]『男はつらいよ』の別エンディング? "寅さん"の最期を描く『おとうと』 [第51回]ひとり相撲なら無敵のチャンピオン! 童貞暴走劇『ボーイズ・オン・ザ・ラン』 [第50回]ヒース・レジャーが最後に見た夢の世界 理想と欲望が渦巻く『Dr.パルナサスの鏡』 [第49回]トニー・ジャーは本気なんジャー! CGなしの狂乱劇再び『マッハ!弐』 [第48回]全米"オシャレ番長"ズーイー、見参! 草食系に捧ぐ『(500日)のサマー』 [第47回]市川崑監督&水谷豊"幻の名作"『幸福』28年の歳月を経て、初のパッケージ化 [第46回]押井守監督、大いなる方向転換か? 黒木メイサ主演『アサルトガールズ』 [第45回]ドラッグ漬けの芸能関係者必見!"神の子"の復活を追う『マラドーナ』 [第44回] 暴走する"システム"が止まらない! マイケル・ムーア監督『キャピタリズム』 [第43回]"人は二度死ぬ"という独自の死生観『ガマの油』役所広司の監督ぶりは? [第42回]誰もが共感、あるあるコメディー! 2ちゃんねる発『ブラック会社』 [第41回]タラとブラピが組むと、こーなった!! 戦争奇談『イングロリアス・バスターズ』 [第40回]"涅槃の境地"のラストシーンに唖然! 引退を賭けた角川春樹監督『笑う警官』 [第39回]伝説の男・松田優作は今も生きている 20回忌ドキュメント『SOUL RED』 [第38回]海より深い"ドメスティック・ラブ"ポン・ジュノ監督『母なる証明』 [第37回]チャン・ツィイーが放つフェロモン爆撃 悪女注意報発令せり!『ホースメン』 [第36回]『ソウ』の監督が放つ激痛バイオレンス やりすぎベーコン!『狼の死刑宣告』 [第35回]"負け組人生"から抜け出したい!! 藤原竜也主演『カイジ 人生逆転ゲーム』 [第34回]2兆円ペット産業の"開かずの間"に迫る ドキュメンタリー『犬と猫と人間と』 [第33回]"女神降臨"ペ・ドゥナの裸体が神々しい 空っぽな心に響く都市の寓話『空気人形』 [第32回]電気仕掛けのパンティをはくヒロイン R15コメディ『男と女の不都合な真実』 [第31回]萩原健一、松方弘樹の助演陣が過剰すぎ! 小栗旬主演の時代活劇『TAJOMARU』 [第30回]松本人志監督・主演第2作『しんぼる』 閉塞状況の中で踊り続ける男の悲喜劇 [第29回]シビアな現実を商品化してしまう才女、西原理恵子の自叙伝『女の子ものがたり』 [第28回]"おねマス"のマッコイ斉藤プレゼンツ 不謹慎さが爆笑を呼ぶ『上島ジェーン』 [第27回]究極料理を超えた"極地料理"に舌鼓! 納涼&グルメ映画『南極料理人』 [第26回]ハチは"失われた少年時代"のアイコン  ハリウッド版『HACHI』に涙腺崩壊! [第25回]白熱! 女同士のゴツゴツエゴバトル 金子修介監督の歌曲劇『プライド』 [第24回]悪意と善意が反転する"仮想空間"細田守監督『サマーウォーズ』 [第23回]沖縄に"精霊が暮らす楽園"があった! 中江裕司監督『真夏の夜の夢』 [第22回]"最強のライブバンド"の底力発揮! ストーンズ『シャイン・ア・ライト』 [第21回]身長15mの"巨大娘"に抱かれたい! 3Dアニメ『モンスターvsエイリアン』 [第20回]ウディ・アレンのヨハンソンいじりが冴え渡る!『それでも恋するバルセロナ』 [第19回]ケイト姐さんが"DTハンター"に! オスカー受賞の官能作『愛を読むひと』 [第18回]1万枚の段ボールで建てた"夢の砦"男のロマンここにあり『築城せよ!』 [第17回]地獄から甦った男のセミドキュメント ミッキー・ローク『レスラー』 [第16回]人生がちょっぴり楽しくなる特効薬 三木聡"脱力"劇場『インスタント沼』 [第15回]"裁判員制度"が始まる今こそ注目 死刑執行を克明に再現した『休暇』 [第14回]生傷美少女の危険な足技に痺れたい! タイ発『チョコレート・ファイター』 [第13回]風俗嬢を狙う快楽殺人鬼の恐怖! 極限の韓流映画『チェイサー』 [第12回]お姫様のハートを盗んだ男の悲哀 紀里谷監督の歴史奇談『GOEMON』 [第11回]美人女優は"下ネタ"でこそ輝く! ファレリー兄弟『ライラにお手あげ』 [第10回]ジャッキー・チェンの"暗黒面"? 中国で上映禁止『新宿インシデント』 [第9回]胸の谷間に"桃源郷"を見た! 綾瀬はるか『おっぱいバレー』 [第8回]"都市伝説"は映画と結びつく 白石晃士監督『オカルト』『テケテケ』 [第7回]少女たちの壮絶サバイバル!楳図かずおワールド『赤んぼ少女』 [第6回]派遣の"叫び"がこだまする現代版蟹工船『遭難フリーター』 [第5回]三池崇史監督『ヤッターマン』で深田恭子が"倒錯美"の世界へ [第4回]フランス、中国、日本......世界各国のタブーを暴いた劇映画続々 [第3回]水野晴郎の遺作『ギララの逆襲』岡山弁で語った最後の台詞は...... [第2回]『チェンジリング』そしてイーストウッドは"映画の神様"となった [第1回]堤幸彦版『20世紀少年』に漂うフェイクならではの哀愁と美学

芦田愛菜、6歳にして危険な魅力!? 子連れで全力疾走『うさぎドロップ』

usagidrop001.jpg
松山ケンイチが珍しく普通のサラリーマンを演じた『うさぎドロップ』。
撮影時6歳だった芦田愛菜は完成された女の子走りを見せる。
(c)2011『うさぎドロップ』製作委員会
 SABU監督作品の主人公たちは、とにかくガムシャラに走る。ヤクザから逃げるため、自分に付きまとう悪運を振り払うため、『弾丸ランナー』(96)の田口トモロヲも、『アンラッキー・モンキー』(98)の堤真一も、『トラブルマン』(テレビ東京系)の加藤成亮も、みんな走りながらアドレナリンを噴出し、ランナーズハイになって、さらに走り続ける。前作『蟹工船』(09)でちょっとコサックダンスにも挑戦してみたが、新作『うさぎドロップ』の主人公・ダイキチ(松山ケンイチ)もやっぱり全力で疾走する。これまでのSABU作品は後ろを振り返らずに自分の息が切れるまで走り切ればよかったが、今回はそうはいかない。6歳の女の子・りん(芦田愛菜)を連れて、もしくは抱っこしながら走らなくてならないのだ。自分のペースで走れない分、これまで以上にキツい走りだ。でも、ダイキチがりんの手を握ると、相手は手を握り返してくれる。シンドイけれど、ダイキチは笑いながら走り続ける。  物語の中心となるりんを演じるのは、ただいま日本でいちばんの売れっ子女優・芦田愛菜。ファーストシーンは喪服姿での登場だ。6歳児に喪服とは反則技ではないか。製作陣は初々しい演技を求め、子役経験の浅い子を探していたそうだが、『Mother』(日本テレビ系)に出演していた芦田愛菜の実力がズバ抜けており、2,000人の中からオーディションで選ばれている。おねしょして、「これは汗!」と言い訳する仕草、髪を結んでもらって喜ぶ表情、内緒でお遊戯の稽古をする姿......。目に入れても痛くないほど、かわいい愛菜ちゃんのオンパレードだ。ダイキチの家に来て初めての朝、オニギリを作る場面は母性すら感じさせる。姉さん女房の小雪と入籍して間もない松ケンも、育児を体験中のSABU監督も、愛菜ちゃんの演技と思わせない役への自然な溶け込みぶりにゾッコンだったようだ。6歳にして恐るべき魔性の女である。
usagidrop002.jpg
祖父の隠し子・りん(芦田愛菜)を引き取ったダイ
キチ(松山ケンイチ)。年下の叔母の面倒を見
るため、それまでの独身生活が一変する。
 原作は宇仁田ゆみの同名コミック(祥伝社)で、前半部分にあたる第1部の映画化。突然6歳の少女と暮らすことになった普通の独身サラリーマンのドタバタ&成長を描いている。主人公のダイキチ(松山ケンイチ)が祖父の葬式に出るために実家に戻ったところ、祖父に隠し子がいたことが発覚する。そのワケありな少女・りん(芦田愛菜)を親戚一同誰も引き取ろうとしないので、一本気な性格のダイキチは思わず、りんに「オレんちに来るか」と声を掛ける。りんに毎朝起こされ、ダイキチの生活は激変。ダイキチはりんを保育園へ連れていき、それから猛ダッシュで会社に向かう。丁度、仕事が面白くなってきた時期だったが、残業はスルーして、ダイキチはりんの待つ保育園へと走る。それまでの気ままな独身生活は吹っ飛び、りんの送り迎えだけで体はクタクタ。合コンにも行けないし、自宅でエッチなサイトにもアクセスできない。でも、これまでのひとりぼっちのダラダラした生活よりも、温かみのある今の暮らしがそう悪いものにはダイキチには感じられない。  それまで仕事中心の生活を理由にして、彼女も作れずにいた不器用な男・ダイキチに子育てが可能なのか。ダイキチの母親(風吹ジュン)は「子育てで、どれだけ自分の人生を犠牲にしたことか」と愚痴っていた。ダイキチは、りんの母子手帳を手掛かりにりんの母親を探し当てる。りんの母親・正子(キタキマユ)はダイキチの祖父の家政婦で、駆け出し中の漫画家だった。その後、漫画家としての勝負作を描くチャンスが巡ってきたため、りんの育児を放棄したのだ。ダイキチの会社の先輩・後藤さん(池脇千鶴)も妊娠・出産を機に、閑職へ異動した。結局、ダイキチも上司に相談して、出世コースの営業職から残業の少ない倉庫での在庫管理へと異動することになる。子どもの面倒を見ることは相当なエネルギーを使うことは、すでに実感できた。でも、子育てとは、自分の時間や人生を犠牲にすることなのか。男であり、女性との付き合いもそう多くない普通のサラリーマンのダイキチには、よく分からない。とりあえず、りんに毎朝起こされ、保育園まで走るのが日課となる。  やがて、保育園でダイキチに頼りになるママ友ができる。りんと仲良しの腕白坊主・コウキ(佐藤瑠生亮)の母親ゆかり(香里奈)だ。ゆかりは夫を早くに亡くし、女手ひとつでコウキを育てている。りんが熱を出して、ダイキチがおろおろしていると、「保護者が落ち着いて」と適切なアドバイスをくれる。父親の記憶がほとんどないコウキはダイキチになつく。家は別々だが、ダイキチとりん、ゆかりとコウキの4人はひとつの"疑似家族"のような存在になっていく。ダイキチの妹(桐谷美玲)も気になるらしく、電話をちょくちょく掛けてくる。あれだけダイキチの子育てに反対していた母親だが、ダイキチがりんを実家に連れていくと、りんの前では絵に描いたようなニコニコ顔のおばあちゃんとなる。ダイキチはいろんな人に自分たちは支えられていることに気づく。
usagidrop003.jpg
保育園で知り合ったゆかり(香里奈)はシングル
マザー。育児経験のないダイキチにとって頼り
になる存在となる。
 『うさぎドロップ』では父親は終身雇用の職場に勤め、母親が専業主婦として育児を担当するという、従来の家族モデルとは大きく異なった新しい家庭の姿が描かれる。1999年に放映された内館牧子脚本によるドラマ『週末婚』(TBS系)では平日は別々に過ごし、週末だけ一緒に暮らすことでアツアツの男女関係を保つ新しい夫婦像が提案された。結局、"週末婚"は「夫婦として熟成されない」と内館牧子自身が結論づけたが、家族の在り方が多様化してきていることを感じさせた。  では『うさぎドロップ』で描かれる、新しい"疑似家族"の形態は成功するのかと言えば、やはりそう上手くはいかない。全9巻の原作コミックでは第2部となる5巻から、りんとコウキは高校生に一気に成長し、無邪気だった保育園児時代とは異なるややこしい関係が待ち受けている。兄妹同然の仲良しで育ったために、りんとコウキは辛い目に遭う。ゆかりに恋心を抱いて独身を続けていたダイキチも、手痛い経験をすることになる。でも、それはコミックで描かれる、もっと先の話。映画の中のダイキチには未来のことは分からない。将来になって後悔しないよう、そのときのベストの選択をするしかない。  朝になり、ダイキチはりんの手を取って保育園へと走る。横を見ると、ゆかりもコウキの手を引いて走っている。視線を広げれば、他の人たちも同じようにハンド・イン・ハンドしながら走っている。子ども手当はどうなるのかとか、もっと企業側は子育てに理解を示す職場にならないのかとか、ダイキチにはすぐにはどうしようもならないことが多い。それでも慌ただしく走りながら、この世の中はそんなに悪いことばかりではないんじゃないかと思えてくる。育児よりも仕事を選んだ正子は、りんの手の温かさを知っているのだろうか。まだ数か月しか経っていないはずなのに、りんの握り返す手の力が前より強くなったようにダイキチは感じる。 (文=長野辰次) usagidrop004.jpg 『うさぎドロップ』 原作/宇仁田ゆみ 脚本/林民夫、SABU 監督/SABU 出演/松山ケンイチ、香里奈、芦田愛菜、桐谷美玲、キタキマユ、佐藤瑠生亮、綾野剛、木村了、高畑淳子、池脇千鶴、風吹ジュン、中村梅雀  配給/ショウゲート 8月20日(土)より渋谷シネクイント、新宿ピカデリーほか全国公開 http://www.usagi-drop.com (c)2011『うさぎドロップ』製作委員会
弾丸ランナー SABU監督流疾走映画の原点。 amazon_associate_logo.jpg
●深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】INDEX [第131回]元"暴走族"が書いた旧友への鎮魂歌 青春懺悔録『アメイジング グレイス』 [第130回]V・ギャロ主演のサバイバルグルメ!? 『エッセンシャル・キリング』 [第129回]『キック・アス』より悪趣味で泣ける 中年男の悪ノリ暴走劇『スーパー!』 [第128回]この夏の清涼剤、地方少女のダンス成長記『あぜみちジャンピンッ!』 [第127回]竹ヤリで世界進出"スシタイフーン"『エイリアンVSニンジャ』ほか逆上陸 [第126回]イーモウ監督、久々のアイドル映画 中華的妹萌え『サンザシの樹の下で』 [第125回]ナタリー・ポートマン vs. ヘビメタ野郎 人気女優の隠し球『メタルヘッド』 [第124回]黒澤明の名作『生きる』のラテン版! ヤモメ男が残した遺産『BIUTIFUL』 [第123回]北国で93年間営業を続ける"大黒座"と町の記録『小さな町の小さな映画館』 [第122回]新幹線がすれ違う瞬間、願いが叶う? 小学生の目線で描かれた『奇跡』 [第121回]理想と情熱がもたらした"痛い現実" 青春の蹉跌『マイ・バック・ページ』 [第120回]胸に響く金言"プロとは手を抜くこと" 職人秘話『アトムの足音が聞こえる』 [第119回]危険な出会い、井口昇ミーツ仲村みう 悪夢の遊園地『富江 アンリミテッド』 [第118回]ナタリー・ポートマン"第1章"の終幕 虚実が攻め合う『ブラック・スワン』 [第117回]"セカイ"を旅立った少女の地底探検記 新海誠監督の新作『星を追う子ども』 [第116回] 美少女たちの輝きが脳裏から離れない。青春ムービー『魔法少女を忘れない』 [第115回] 恋愛が与える"陶酔"とリアルな"痛み"サブカル活劇『スコット・ピルグリム』 [第114回]妄想、空想、そして現実からの大脱走 美少女革命『エンジェル ウォーズ』 [第113回]"3.11"後の新しい映画モデルとなるか『劇場版 神聖かまってちゃん』の挑戦 [第112回]マスコミが讃えた"楽園"のその後、ひとりの少女の成長記録『愛しきソナ』 [第111回]閉鎖的な"村社会"をブチ破ったれ! 韓流サバイバル劇『ビー・デビル』 [第110回]"粋"を愛したフランスの伯父さん J・タチ主演『イリュージョニスト』 [第109回]自分にとって家族は敵か、味方か? オスカー2冠受賞『ザ・ファイター』 [第108回]コーエン兄弟『トゥルー・グリット』40年で変化した"米国のヒーロー像" [第107回]ジョニー・デップが愛した"極道記者" 『GONZO』奇人がスターだった時代 [第106回] 巨匠イーストウッド監督の異色作! "あの世"はあるか?『ヒア アフター』 [第105回] キレ味、喉ごしが違うアクション! 黒帯美少女の"涙拳"が炸裂『KG』 [第104回] 高齢化するニートはどこに行くのか? "戸塚校長"のその後『平成ジレンマ』 [第103回]堀北真希&高良健吾主演作『白夜行』闇に生きる"影男"の密やかなる喜び [第102回]園子温の劇薬ムービー『冷たい熱帯魚』"救いのない結末"という名の救い [第101回] NHKが放映しない"裏プロジェクトX" AV界のカリスマ監督『YOYOCHU』 [第100回]エロスとタブーを交配した"至高の美女" 禁断のサイエンスホラー『スプライス』 [第99回]2010年に活躍した女優を勝手に表彰! 満島ひかりに"面倒くさい女"大賞を [第98回]大人だって"ドラえもん"にいて欲しい 残念男の逆転劇『エリックを探して』 [第97回]平凡な高校生デイヴは2度変身する!原点回帰のヒーロー『キック・アス』 [第96回]村上春樹の超絶ベストセラーの映画化『ノルウェイの森』はどこにある? [第95回]実在した"奇妙な高額バイト"の顛末 心理サスペンス『エクスペリメント』 [第94回]"アル中"カメラマンの泣き笑い人生『酔いがさめたら、うちに帰ろう。』 [第93回]朝ドラと異なる映画『ゲゲゲの女房』ゴールなき"貧乏耐久"2人3脚走 [第92回]バラエティーでの実績は通用するか? テリー伊藤の初監督作『10億円稼ぐ』 [第91回] 不謹慎なる社会派エンタテイメント『裁判長!ここは懲役4年でどうすか』 [第90回]"世界のナベアツ"大阪府知事に就任! 政治コメディ『さらば愛しの大統領』 [第89回]自分の恋愛もプロデュースする女優、ドリュー・バリモア主演『遠距離恋愛』 [第88回]スタローンが立ち上げた"筋肉共和国"男たちの祭典『エクスペンダブルズ』 [第87回]元"おはガール"安藤聖の再起動ドラマ 就職氷河期を生きる『バカがウラヤマシイ』 [第86回]マイノリティーは"理想郷"を目指す。筒井文学の金字塔『七瀬ふたたび』 [第85回]清純派・佐藤寛子が美しく"変態"! 官能サスペンス『ヌードの夜──』 [第84回]死を意識して、ギラギラ輝く男たち! 三池節、大バクハツ『十三人の刺客』 [第83回] 女を食い物にする男どもは全員処刑! モダン社会の闇を暴く『ミレニアム』 [第82回] "企画AV女優"たちの青春残酷物語 性なる鎮魂劇『名前のない女たち』 [第81回]猫を見れば、人間社会が見えてくる! 世界の人気猫大集合『ネコを探して』 [第80回]原恵一監督の新作は辛口ファンタジー 退屈な"日常生活"を彩る『カラフル』 [第79回]米軍に実在した"超能力部隊"の真実!? ムー民、必見『ヤギと男と男と壁と』 [第78回]戦場から帰還した夫は"芋虫男"だった! ヤクザ監督の反戦映画『キャタピラー』 [第77回] 白ユリの花開くガールズの妖しい世界 H系ホラー『ジェニファーズ・ボディ』 [第76回] 爽やか系青春ゾンビ映画にホロリ......夏休みは『ゾンビランド』に集結せよ [第75回] "生きる"とは"見苦しい"ということ 藤沢周平の時代活劇『必死剣 鳥刺し』 [第74回]初恋の美少女は200歳の吸血鬼だった! 北欧産のホラー映画『ぼくのエリ』 [第73回] "三億円事件"の真相を解き明かす! 桜タブーに挑んだ『ロストクライム』 [第72回/特別編] 上映反対で揺れる問題作『ザ・コーヴ』"渦中の人"リック・オバリー氏の主張 [第71回] 女子にモテモテになる方法、教えます。軟派少年の実話物語『ソフトボーイ』 [第70回] 下町育ちの"北野少年"が見た現代社会 人間同士の食物連鎖『アウトレイジ』 [第69回] "リアルと虚構の狭間"を生きる男、アントニオ猪木初主演作『アカシア』 [第68回] ヒーローも神もいない現代社会の惨劇 井筒監督の問題作『ヒーローショー』 [第67回] アイドルが地獄で微笑む『戦闘少女』ギャグ×血しぶき×殺陣の特盛り丼! [第66回]アナーキーな"社歌"で生産性アップ! 満島ひかり大進撃『川の底からこんにちは』 [第65回]超ヘビー級なシリアス劇『プレシャス』"家族"という名の地獄から脱出せよ [第64回]乱れ咲く"悪の華"ゼブラクイーン! 仲里依紗が過激変身『ゼブラーマン2』 [第63回] オタク王が見出した"夢と現実"の接点 ティム・バートン監督作『アリス──』 [第62回] バッドテイストな感動作『第9地区』 アナタはエビ人間とお友達になれるか? [第61回]スコセッシ監督の犯罪アトラクション『シャッターアイランド』へようこそ! [第60回]宮崎あおいの"映画代表作"が誕生! 毒を呑んでも生き続けよ『ソラニン』 [第59回]"おっぱいアート"は世界を救えるか? 母乳戦士の記録『桃色のジャンヌ・ダルク』 [第58回]現代に甦った"梶原一騎ワールド"韓流ステゴロ映画『息もできない』 [第57回]命知らずの変態レポーター、中東へ! 史上最大のどっきり?『ブルーノ』 [第56回]仲里依紗がアニメから実写へと跳躍! 母娘2代の時空旅行『時をかける少女』 [第55回]ビグロー監督はキャメロンより硬派! 人間爆弾の恐怖『ハート・ロッカー』 [第54回] "空気を読む"若者の悲劇『パレード』楽しいルームシェア生活の行き先は? [第53回]社会の"生け贄"に選ばれた男の逃亡劇 堺雅人主演『ゴールデンスランバー』 [第52回]『男はつらいよ』の別エンディング? "寅さん"の最期を描く『おとうと』 [第51回]ひとり相撲なら無敵のチャンピオン! 童貞暴走劇『ボーイズ・オン・ザ・ラン』 [第50回]ヒース・レジャーが最後に見た夢の世界 理想と欲望が渦巻く『Dr.パルナサスの鏡』 [第49回]トニー・ジャーは本気なんジャー! CGなしの狂乱劇再び『マッハ!弐』 [第48回]全米"オシャレ番長"ズーイー、見参! 草食系に捧ぐ『(500日)のサマー』 [第47回]市川崑監督&水谷豊"幻の名作"『幸福』28年の歳月を経て、初のパッケージ化 [第46回]押井守監督、大いなる方向転換か? 黒木メイサ主演『アサルトガールズ』 [第45回]ドラッグ漬けの芸能関係者必見!"神の子"の復活を追う『マラドーナ』 [第44回] 暴走する"システム"が止まらない! マイケル・ムーア監督『キャピタリズム』 [第43回]"人は二度死ぬ"という独自の死生観『ガマの油』役所広司の監督ぶりは? [第42回]誰もが共感、あるあるコメディー! 2ちゃんねる発『ブラック会社』 [第41回]タラとブラピが組むと、こーなった!! 戦争奇談『イングロリアス・バスターズ』 [第40回]"涅槃の境地"のラストシーンに唖然! 引退を賭けた角川春樹監督『笑う警官』 [第39回]伝説の男・松田優作は今も生きている 20回忌ドキュメント『SOUL RED』 [第38回]海より深い"ドメスティック・ラブ"ポン・ジュノ監督『母なる証明』 [第37回]チャン・ツィイーが放つフェロモン爆撃 悪女注意報発令せり!『ホースメン』 [第36回]『ソウ』の監督が放つ激痛バイオレンス やりすぎベーコン!『狼の死刑宣告』 [第35回]"負け組人生"から抜け出したい!! 藤原竜也主演『カイジ 人生逆転ゲーム』 [第34回]2兆円ペット産業の"開かずの間"に迫る ドキュメンタリー『犬と猫と人間と』 [第33回]"女神降臨"ペ・ドゥナの裸体が神々しい 空っぽな心に響く都市の寓話『空気人形』 [第32回]電気仕掛けのパンティをはくヒロイン R15コメディ『男と女の不都合な真実』 [第31回]萩原健一、松方弘樹の助演陣が過剰すぎ! 小栗旬主演の時代活劇『TAJOMARU』 [第30回]松本人志監督・主演第2作『しんぼる』 閉塞状況の中で踊り続ける男の悲喜劇 [第29回]シビアな現実を商品化してしまう才女、西原理恵子の自叙伝『女の子ものがたり』 [第28回]"おねマス"のマッコイ斉藤プレゼンツ 不謹慎さが爆笑を呼ぶ『上島ジェーン』 [第27回]究極料理を超えた"極地料理"に舌鼓! 納涼&グルメ映画『南極料理人』 [第26回]ハチは"失われた少年時代"のアイコン  ハリウッド版『HACHI』に涙腺崩壊! [第25回]白熱! 女同士のゴツゴツエゴバトル 金子修介監督の歌曲劇『プライド』 [第24回]悪意と善意が反転する"仮想空間"細田守監督『サマーウォーズ』 [第23回]沖縄に"精霊が暮らす楽園"があった! 中江裕司監督『真夏の夜の夢』 [第22回]"最強のライブバンド"の底力発揮! ストーンズ『シャイン・ア・ライト』 [第21回]身長15mの"巨大娘"に抱かれたい! 3Dアニメ『モンスターvsエイリアン』 [第20回]ウディ・アレンのヨハンソンいじりが冴え渡る!『それでも恋するバルセロナ』 [第19回]ケイト姐さんが"DTハンター"に! オスカー受賞の官能作『愛を読むひと』 [第18回]1万枚の段ボールで建てた"夢の砦"男のロマンここにあり『築城せよ!』 [第17回]地獄から甦った男のセミドキュメント ミッキー・ローク『レスラー』 [第16回]人生がちょっぴり楽しくなる特効薬 三木聡"脱力"劇場『インスタント沼』 [第15回]"裁判員制度"が始まる今こそ注目 死刑執行を克明に再現した『休暇』 [第14回]生傷美少女の危険な足技に痺れたい! タイ発『チョコレート・ファイター』 [第13回]風俗嬢を狙う快楽殺人鬼の恐怖! 極限の韓流映画『チェイサー』 [第12回]お姫様のハートを盗んだ男の悲哀 紀里谷監督の歴史奇談『GOEMON』 [第11回]美人女優は"下ネタ"でこそ輝く! ファレリー兄弟『ライラにお手あげ』 [第10回]ジャッキー・チェンの"暗黒面"? 中国で上映禁止『新宿インシデント』 [第9回]胸の谷間に"桃源郷"を見た! 綾瀬はるか『おっぱいバレー』 [第8回]"都市伝説"は映画と結びつく 白石晃士監督『オカルト』『テケテケ』 [第7回]少女たちの壮絶サバイバル!楳図かずおワールド『赤んぼ少女』 [第6回]派遣の"叫び"がこだまする現代版蟹工船『遭難フリーター』 [第5回]三池崇史監督『ヤッターマン』で深田恭子が"倒錯美"の世界へ [第4回]フランス、中国、日本......世界各国のタブーを暴いた劇映画続々 [第3回]水野晴郎の遺作『ギララの逆襲』岡山弁で語った最後の台詞は...... [第2回]『チェンジリング』そしてイーストウッドは"映画の神様"となった [第1回]堤幸彦版『20世紀少年』に漂うフェイクならではの哀愁と美学

元"暴走族"が書いた旧友への鎮魂歌 青春懺悔録『アメイジング グレイス』

amazing01.jpg
1990年代を駆け抜けた暴走族たちの青春とその後を描いた
『アメイジング グレイス ~儚き男たちへの詩~』。
暴走族の集会シーンには150台を越える熱きバイカーが集まった。
(c)2010 LEONE
 暴走族として青春時代を送った男たちの絆と別れを描いた『アメイジング グレイス ~儚き男たちへの詩~』。後半とても印象に残るシーンがある。18歳で暴走族を卒業して新宿でヤクザになったタイセイは久しぶりに故郷に戻り、懐かしいバイクに股がる。田んぼの中の一本道を走りながら、タイセイはシートの上に立ち上がって両手を広げる。まるで大きな十字架が田んぼの中を横切っているかのようだ。この生身の十字架は事故で死んでしまった暴走族の仲間、家族に迷惑ばかり掛けてきた10代の頃の自分自身、そして現実はまるで違った自分の中で思い描いていた淡い未来......、そんな一切合切をすべて弔っているかのようだ。原作&脚本を手掛けた白川蓮は元暴走族だけに、『アメイジング グレイス』には体験者ならではの"生の叫び"が刻まれている。試写を観てしばらくし、白川蓮と会うことになった。顔出しNGということだが、ヤバい男なのだろうか。約束の日、彼は時間通りに現われた。かなり律儀な性格らしい。そして彼はこう言った。『アメイジング グレイス』はどうしても書かなくちゃいけない物語だったんですと。
amazing02.jpg
常にクールな総長のレン(窪塚俊介)だが、
死んだ仲間のために供花を密かに用意して
いた。
 賛美歌の曲名をタイトルにした本作は、ヤクザの父親を持つクールな暴走族の総長・レン(窪塚俊介)とそんなレンに憧れの気持ちを抱き続けるタイセイ(宮田大三)の2人が暴走族をやめた後、現実社会に飲み込まれていく様を中心に描いたものだ。実際に15歳から18歳まで暴走族として過ごした白川蓮によると、この物語は26歳のときに書き上げたものだという。小説や映画にすることを目的で書いたものではなかった。自分の記憶の中で暴走族時代に仲間と過ごした思い出がどんどん美しく純化されていく一方で、トラウマとなっている闇の部分がドロドロと心の中に沈殿し、そのギャップに心が引き裂かれそうだった。このままでは自分はダメになってしまうという想いで、コピー用紙の裏側に連日書き殴り続けた。慣れない作業だったが文章を書くことで主観として記憶されていた思い出を客観視できるようになった。書いているうちに記憶が次々と鮮明に蘇り、一緒にバカやって大笑いしていた仲間、病院や警察に深夜でも出掛けられるように常に枕元に着替えを用意していた両親、敵対していた他のグループのヤツら、ひと筋縄ではいかなかったヤクザたち......自分の周りにいた人間がそのとき何を考えていたのか、初めてちゃんと見つめることができるようになった。  白川蓮は90年代にある暴走族に入り、最後の1年は副総長を務めたそうだ。彼によると、80年代の暴走族は一種のファッションとしてポピュラーな存在となっていたが、80年代後半になると警察の取り締まりが厳しくなり、90年代の暴走族には気合いの入ったヤツしか残らなかったそうだ。暴走族に入るのは親がいなかったり、イジメに遭っていたり、在日だったりと、何らかの影を持っているヤツらが多かったが、その分仲間同士でバカをやるときは弾けて、メチャメチャに陽気だったらしい。駐車してある車の上にウンコしたり、パチンコ店の宣伝カーに乗ってナンパに向かったり、『アメイジング グレイス』の前半で描かれるおバカエピソードは、ほぼ実体験に基づいたものだ。ときどき先輩が"シメ会"と称して、後輩全員並ばせて一方的に殴った。時には理由もなく理不尽に殴られることもあり、最初は街の不良で鳴らした30人いた同期は数カ月後にはわずか5人に減ってしまった。私生活でも、先輩に命じられてパチンコ店に早朝から並んで席を取ったり、警察の目を欺くためにバイクのカラーリングを集会当日に変えるなどロクに寝る暇もないシンドい生活が続いたが、警察やヤクザも絡む修羅場をくぐり抜けるうちに同期の絆は次第に太くなっていった。
amazing03.jpg
いつも自分の前を走るレンに対し、タイセイ
(宮田大三)は憧れと同時にライバル心
を抱く。
 青春時代に終わりが来たかのように、レンやタイセイたちは仲間を事故死で失う。実際に白川蓮も、同期の一人が事故で亡くなっている。毎年命日には亡くなった仲間の実家に焼香に上がっていたが、「うちの息子も生きていれば、あんたたちと同い年で......」と泣かれてしまうので3年目以降は行きづらくなってしまった。この物語を書いている途中も、結婚して幸せそうな家庭を持っていた友人が妻や子どもを残して自殺してしまった。他の仲間たちは「あいつが死んだ分まで頑張る」と言っていたが、自分は頑張れないと感じたそうだ。あいつの分まで頑張れたら、あいつが生きていた意味はなんなんだと。お通夜から戻って、書いている途中の文章を読み直していたら、自分の過去まで死んでしまったような気がしてきた。それじゃあダメだと思い直し、せめてこの物語だけは最後まで書き上げようと決めた。3週間目に物語は書き終わり、コピー用紙の枚数は3,000枚に達していた。  白川蓮も死にかけた体験があるそうだ。彼らのいた暴走族は盗み、カツアゲ、シンナー、女をバイクの後ろに乗せることなどは厳しく禁止されていたが、後輩のひとりが裏でシンナーの売買をやっていたことをOBが知り、副総長だった白川は監督不行き届きということでシメ上げられた。後輩たちの前でボコボコにされ、鼓膜が破れ、手足の骨が折れた。頭を金属バットでフルスイングされた瞬間、目の前が真っ暗になり「あぁ、オレはこのまま死ぬんだな」と思ったという。集中治療室に運び込まれ、一命は取り留めた。死にかけたのに、それでもと白川は言葉を繋ぐ。「不良をやっていればこれもしょうがないことなんです。でも、金属バットとかはダメだけど、素手で殴られている分には、拳を通して伝わってくるものがあるんですよ。あっ、この先輩はただのストレス発散で後輩を殴っているだけだなとか、ケジメをつけるために愛情を持って殴ってくれているなとか」。彼らがいた暴走族はすでに自主解散してしまったが、今でも夏になると集まってバーベキューをしたり海へ行ったりする。また、祝い事があると年代に関係なく一堂がそろうそうだ。殴り、殴られ、バイクの排気音を体に感じることで暴走族の見えない絆は深まっていく。
amazing04.jpg
レンとタイセイの幼なじみのシズク(神田
沙也加)。ピアニストという自分の道に
向かって進む。
 映画の後半、レンは地元のヤクザに、レンにライバル心を燃やすタイセイは上京して新宿のヤクザの舎弟となる。だが、ヤクザ社会の、少なくとも底辺の末端たちが暗躍する部分はレンやタイセイが考えていたような仁義を重んじる世界ではなかった。これが大人社会への通過儀礼なのか。手を汚しちまった2人に哀しいスレ違いが訪れる。暴走族とヤクザの関係についても尋ねてみた。暴走族には"ケツ持ち"として地元の若いヤクザが基本的に付いているそうだ。敵対する暴走族と抗争になった場合、向こうからヤクザが出てくることもあり、仕方なくこちらもヤクザに"ケツ持ち"を頼まざるを得ない。中には敵対する暴走族側のヤクザと自分たちの"ケツ持ち"をしているヤクザとが口裏を合わせて、ささいなトラブルでも膨大な手打ち金を要求されることもある。ヤクザが作ったステッカーを法外な値段で買い取らされることもある。自分たちのいる暴走族のOBがヤクザになることが多く、断れないのだ。警察が暴走族を厳しく取り締まるようになったのは、ヤクザと暴走族との結びつきが一般化し、暴走族がヤクザ予備軍になってしまったことからだそうだ。  美しい思い出もドロドロの体験もひっくるめて、フルスロットで駆け抜けたレンとタイセイのズタボロになった姿に、「Amazing Grace」の厳粛なメロディーが被る。この曲は奴隷船の船長だった英国人ジョン・ニュートンが、後に牧師となって自分の体験を回想しながら書き上げたものだ。白川蓮は物語の後半を書き進めている際に、たまたま「Amazing Grace」を耳にして主題歌に使うことに決めた。「Amazing Grace」の中でも1番の歌詞が特にお気に入りだという。その歌詞は"Was blind,but now I see."(かつて見えなかった目が、今は見える)というものだ。生きているからこそ、見ることができるんです。白川蓮はそう言った。 (文=長野辰次) amazing05.jpg 『アメイジング グレイス ~儚き男たちへの詩~』 製作総指揮/久保和明 原作・脚本/白川蓮 主題歌/神田沙也加「Amazing Grace」 監督/川野浩司 出演/窪塚俊介、宮田大三、神田沙也加、鎌苅健太、粟島瑞丸、上吉原陽、大嶋宏成、畑山隆則、宮地真緒、折山みゆ、永山たかし、ベンガル、加藤沙耶香、吉木りさ、吉田仁美、泉原豊、大嶋記胤、江藤純、佐藤貢三、森羅万象、諏訪太郎、鳥肌実、渋川清彦、美保純  配給/グアパ・グアポ 8月13日(土)よりシネマート六本木ほか全国順次公開 <http://www.leone.co.jp/amazing-grace> ※原作小説「アメイジング グレイス ~儚き男たちへの詩~」(エベイユ刊)は8月11日(木)より発売。 <http://eveil-jp.net/book/book_19.html>
湘南爆走族 完全版(1) やっぱ、コレっしょ? amazon_associate_logo.jpg
●深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】INDEX [第130回]V・ギャロ主演のサバイバルグルメ!? 『エッセンシャル・キリング』 [第129回]『キック・アス』より悪趣味で泣ける 中年男の悪ノリ暴走劇『スーパー!』 [第128回]この夏の清涼剤、地方少女のダンス成長記『あぜみちジャンピンッ!』 [第127回]竹ヤリで世界進出"スシタイフーン"『エイリアンVSニンジャ』ほか逆上陸 [第126回]イーモウ監督、久々のアイドル映画 中華的妹萌え『サンザシの樹の下で』 [第125回]ナタリー・ポートマン vs. ヘビメタ野郎 人気女優の隠し球『メタルヘッド』 [第124回]黒澤明の名作『生きる』のラテン版! ヤモメ男が残した遺産『BIUTIFUL』 [第123回]北国で93年間営業を続ける"大黒座"と町の記録『小さな町の小さな映画館』 [第122回]新幹線がすれ違う瞬間、願いが叶う? 小学生の目線で描かれた『奇跡』 [第121回]理想と情熱がもたらした"痛い現実" 青春の蹉跌『マイ・バック・ページ』 [第120回]胸に響く金言"プロとは手を抜くこと" 職人秘話『アトムの足音が聞こえる』 [第119回]危険な出会い、井口昇ミーツ仲村みう 悪夢の遊園地『富江 アンリミテッド』 [第118回]ナタリー・ポートマン"第1章"の終幕 虚実が攻め合う『ブラック・スワン』 [第117回]"セカイ"を旅立った少女の地底探検記 新海誠監督の新作『星を追う子ども』 [第116回] 美少女たちの輝きが脳裏から離れない。青春ムービー『魔法少女を忘れない』 [第115回] 恋愛が与える"陶酔"とリアルな"痛み"サブカル活劇『スコット・ピルグリム』 [第114回]妄想、空想、そして現実からの大脱走 美少女革命『エンジェル ウォーズ』 [第113回]"3.11"後の新しい映画モデルとなるか『劇場版 神聖かまってちゃん』の挑戦 [第112回]マスコミが讃えた"楽園"のその後、ひとりの少女の成長記録『愛しきソナ』 [第111回]閉鎖的な"村社会"をブチ破ったれ! 韓流サバイバル劇『ビー・デビル』 [第110回]"粋"を愛したフランスの伯父さん J・タチ主演『イリュージョニスト』 [第109回]自分にとって家族は敵か、味方か? オスカー2冠受賞『ザ・ファイター』 [第108回]コーエン兄弟『トゥルー・グリット』40年で変化した"米国のヒーロー像" [第107回]ジョニー・デップが愛した"極道記者" 『GONZO』奇人がスターだった時代 [第106回] 巨匠イーストウッド監督の異色作! "あの世"はあるか?『ヒア アフター』 [第105回] キレ味、喉ごしが違うアクション! 黒帯美少女の"涙拳"が炸裂『KG』 [第104回] 高齢化するニートはどこに行くのか? "戸塚校長"のその後『平成ジレンマ』 [第103回]堀北真希&高良健吾主演作『白夜行』闇に生きる"影男"の密やかなる喜び [第102回]園子温の劇薬ムービー『冷たい熱帯魚』"救いのない結末"という名の救い [第101回] NHKが放映しない"裏プロジェクトX" AV界のカリスマ監督『YOYOCHU』 [第100回]エロスとタブーを交配した"至高の美女" 禁断のサイエンスホラー『スプライス』 [第99回]2010年に活躍した女優を勝手に表彰! 満島ひかりに"面倒くさい女"大賞を [第98回]大人だって"ドラえもん"にいて欲しい 残念男の逆転劇『エリックを探して』 [第97回]平凡な高校生デイヴは2度変身する!原点回帰のヒーロー『キック・アス』 [第96回]村上春樹の超絶ベストセラーの映画化『ノルウェイの森』はどこにある? [第95回]実在した"奇妙な高額バイト"の顛末 心理サスペンス『エクスペリメント』 [第94回]"アル中"カメラマンの泣き笑い人生『酔いがさめたら、うちに帰ろう。』 [第93回]朝ドラと異なる映画『ゲゲゲの女房』ゴールなき"貧乏耐久"2人3脚走 [第92回]バラエティーでの実績は通用するか? テリー伊藤の初監督作『10億円稼ぐ』 [第91回] 不謹慎なる社会派エンタテイメント『裁判長!ここは懲役4年でどうすか』 [第90回]"世界のナベアツ"大阪府知事に就任! 政治コメディ『さらば愛しの大統領』 [第89回]自分の恋愛もプロデュースする女優、ドリュー・バリモア主演『遠距離恋愛』 [第88回]スタローンが立ち上げた"筋肉共和国"男たちの祭典『エクスペンダブルズ』 [第87回]元"おはガール"安藤聖の再起動ドラマ 就職氷河期を生きる『バカがウラヤマシイ』 [第86回]マイノリティーは"理想郷"を目指す。筒井文学の金字塔『七瀬ふたたび』 [第85回]清純派・佐藤寛子が美しく"変態"! 官能サスペンス『ヌードの夜──』 [第84回]死を意識して、ギラギラ輝く男たち! 三池節、大バクハツ『十三人の刺客』 [第83回] 女を食い物にする男どもは全員処刑! モダン社会の闇を暴く『ミレニアム』 [第82回] "企画AV女優"たちの青春残酷物語 性なる鎮魂劇『名前のない女たち』 [第81回]猫を見れば、人間社会が見えてくる! 世界の人気猫大集合『ネコを探して』 [第80回]原恵一監督の新作は辛口ファンタジー 退屈な"日常生活"を彩る『カラフル』 [第79回]米軍に実在した"超能力部隊"の真実!? ムー民、必見『ヤギと男と男と壁と』 [第78回]戦場から帰還した夫は"芋虫男"だった! ヤクザ監督の反戦映画『キャタピラー』 [第77回] 白ユリの花開くガールズの妖しい世界 H系ホラー『ジェニファーズ・ボディ』 [第76回] 爽やか系青春ゾンビ映画にホロリ......夏休みは『ゾンビランド』に集結せよ [第75回] "生きる"とは"見苦しい"ということ 藤沢周平の時代活劇『必死剣 鳥刺し』 [第74回]初恋の美少女は200歳の吸血鬼だった! 北欧産のホラー映画『ぼくのエリ』 [第73回] "三億円事件"の真相を解き明かす! 桜タブーに挑んだ『ロストクライム』 [第72回/特別編] 上映反対で揺れる問題作『ザ・コーヴ』"渦中の人"リック・オバリー氏の主張 [第71回] 女子にモテモテになる方法、教えます。軟派少年の実話物語『ソフトボーイ』 [第70回] 下町育ちの"北野少年"が見た現代社会 人間同士の食物連鎖『アウトレイジ』 [第69回] "リアルと虚構の狭間"を生きる男、アントニオ猪木初主演作『アカシア』 [第68回] ヒーローも神もいない現代社会の惨劇 井筒監督の問題作『ヒーローショー』 [第67回] アイドルが地獄で微笑む『戦闘少女』ギャグ×血しぶき×殺陣の特盛り丼! [第66回]アナーキーな"社歌"で生産性アップ! 満島ひかり大進撃『川の底からこんにちは』 [第65回]超ヘビー級なシリアス劇『プレシャス』"家族"という名の地獄から脱出せよ [第64回]乱れ咲く"悪の華"ゼブラクイーン! 仲里依紗が過激変身『ゼブラーマン2』 [第63回] オタク王が見出した"夢と現実"の接点 ティム・バートン監督作『アリス──』 [第62回] バッドテイストな感動作『第9地区』 アナタはエビ人間とお友達になれるか? [第61回]スコセッシ監督の犯罪アトラクション『シャッターアイランド』へようこそ! [第60回]宮崎あおいの"映画代表作"が誕生! 毒を呑んでも生き続けよ『ソラニン』 [第59回]"おっぱいアート"は世界を救えるか? 母乳戦士の記録『桃色のジャンヌ・ダルク』 [第58回]現代に甦った"梶原一騎ワールド"韓流ステゴロ映画『息もできない』 [第57回]命知らずの変態レポーター、中東へ! 史上最大のどっきり?『ブルーノ』 [第56回]仲里依紗がアニメから実写へと跳躍! 母娘2代の時空旅行『時をかける少女』 [第55回]ビグロー監督はキャメロンより硬派! 人間爆弾の恐怖『ハート・ロッカー』 [第54回] "空気を読む"若者の悲劇『パレード』楽しいルームシェア生活の行き先は? [第53回]社会の"生け贄"に選ばれた男の逃亡劇 堺雅人主演『ゴールデンスランバー』 [第52回]『男はつらいよ』の別エンディング? "寅さん"の最期を描く『おとうと』 [第51回]ひとり相撲なら無敵のチャンピオン! 童貞暴走劇『ボーイズ・オン・ザ・ラン』 [第50回]ヒース・レジャーが最後に見た夢の世界 理想と欲望が渦巻く『Dr.パルナサスの鏡』 [第49回]トニー・ジャーは本気なんジャー! CGなしの狂乱劇再び『マッハ!弐』 [第48回]全米"オシャレ番長"ズーイー、見参! 草食系に捧ぐ『(500日)のサマー』 [第47回]市川崑監督&水谷豊"幻の名作"『幸福』28年の歳月を経て、初のパッケージ化 [第46回]押井守監督、大いなる方向転換か? 黒木メイサ主演『アサルトガールズ』 [第45回]ドラッグ漬けの芸能関係者必見!"神の子"の復活を追う『マラドーナ』 [第44回] 暴走する"システム"が止まらない! マイケル・ムーア監督『キャピタリズム』 [第43回]"人は二度死ぬ"という独自の死生観『ガマの油』役所広司の監督ぶりは? [第42回]誰もが共感、あるあるコメディー! 2ちゃんねる発『ブラック会社』 [第41回]タラとブラピが組むと、こーなった!! 戦争奇談『イングロリアス・バスターズ』 [第40回]"涅槃の境地"のラストシーンに唖然! 引退を賭けた角川春樹監督『笑う警官』 [第39回]伝説の男・松田優作は今も生きている 20回忌ドキュメント『SOUL RED』 [第38回]海より深い"ドメスティック・ラブ"ポン・ジュノ監督『母なる証明』 [第37回]チャン・ツィイーが放つフェロモン爆撃 悪女注意報発令せり!『ホースメン』 [第36回]『ソウ』の監督が放つ激痛バイオレンス やりすぎベーコン!『狼の死刑宣告』 [第35回]"負け組人生"から抜け出したい!! 藤原竜也主演『カイジ 人生逆転ゲーム』 [第34回]2兆円ペット産業の"開かずの間"に迫る ドキュメンタリー『犬と猫と人間と』 [第33回]"女神降臨"ペ・ドゥナの裸体が神々しい 空っぽな心に響く都市の寓話『空気人形』 [第32回]電気仕掛けのパンティをはくヒロイン R15コメディ『男と女の不都合な真実』 [第31回]萩原健一、松方弘樹の助演陣が過剰すぎ! 小栗旬主演の時代活劇『TAJOMARU』 [第30回]松本人志監督・主演第2作『しんぼる』 閉塞状況の中で踊り続ける男の悲喜劇 [第29回]シビアな現実を商品化してしまう才女、西原理恵子の自叙伝『女の子ものがたり』 [第28回]"おねマス"のマッコイ斉藤プレゼンツ 不謹慎さが爆笑を呼ぶ『上島ジェーン』 [第27回]究極料理を超えた"極地料理"に舌鼓! 納涼&グルメ映画『南極料理人』 [第26回]ハチは"失われた少年時代"のアイコン  ハリウッド版『HACHI』に涙腺崩壊! [第25回]白熱! 女同士のゴツゴツエゴバトル 金子修介監督の歌曲劇『プライド』 [第24回]悪意と善意が反転する"仮想空間"細田守監督『サマーウォーズ』 [第23回]沖縄に"精霊が暮らす楽園"があった! 中江裕司監督『真夏の夜の夢』 [第22回]"最強のライブバンド"の底力発揮! ストーンズ『シャイン・ア・ライト』 [第21回]身長15mの"巨大娘"に抱かれたい! 3Dアニメ『モンスターvsエイリアン』 [第20回]ウディ・アレンのヨハンソンいじりが冴え渡る!『それでも恋するバルセロナ』 [第19回]ケイト姐さんが"DTハンター"に! オスカー受賞の官能作『愛を読むひと』 [第18回]1万枚の段ボールで建てた"夢の砦"男のロマンここにあり『築城せよ!』 [第17回]地獄から甦った男のセミドキュメント ミッキー・ローク『レスラー』 [第16回]人生がちょっぴり楽しくなる特効薬 三木聡"脱力"劇場『インスタント沼』 [第15回]"裁判員制度"が始まる今こそ注目 死刑執行を克明に再現した『休暇』 [第14回]生傷美少女の危険な足技に痺れたい! タイ発『チョコレート・ファイター』 [第13回]風俗嬢を狙う快楽殺人鬼の恐怖! 極限の韓流映画『チェイサー』 [第12回]お姫様のハートを盗んだ男の悲哀 紀里谷監督の歴史奇談『GOEMON』 [第11回]美人女優は"下ネタ"でこそ輝く! ファレリー兄弟『ライラにお手あげ』 [第10回]ジャッキー・チェンの"暗黒面"? 中国で上映禁止『新宿インシデント』 [第9回]胸の谷間に"桃源郷"を見た! 綾瀬はるか『おっぱいバレー』 [第8回]"都市伝説"は映画と結びつく 白石晃士監督『オカルト』『テケテケ』 [第7回]少女たちの壮絶サバイバル!楳図かずおワールド『赤んぼ少女』 [第6回]派遣の"叫び"がこだまする現代版蟹工船『遭難フリーター』 [第5回]三池崇史監督『ヤッターマン』で深田恭子が"倒錯美"の世界へ [第4回]フランス、中国、日本......世界各国のタブーを暴いた劇映画続々 [第3回]水野晴郎の遺作『ギララの逆襲』岡山弁で語った最後の台詞は...... [第2回]『チェンジリング』そしてイーストウッドは"映画の神様"となった [第1回]堤幸彦版『20世紀少年』に漂うフェイクならではの哀愁と美学 【関連記事】

V・ギャロ主演のサバイバルグルメ!? 『エッセンシャル・キリング』

ek01.jpg
ヴィンセント・ギャロが83分間、ひたすら逃げ続ける
異色サバイバルアクション『エッセンシャル・キリング』。
(c)Skopia Film, Cylinder Production, Element Pictures, Mythberg Films,
Syrena Films, Canal+ Poland. All rights reserved.
 ヴィンセント・ギャロ主演のサバイバルサスペンス『エッセンシャル・キリング』は、中東のゲリラ兵に扮したギャロが全編83分間、まったく台詞なしでひたすら逃げ続けるという異色作だ。ストーカー男の純愛を描いた『アンナと過ごした四日間』(08)で17年間の沈黙を破ったポーランド出身の"流浪する巨匠"イエジー・スコリモフスキ監督の新作となる。スコリモフスキ監督自身は、本作を「シルベスター・スタローンの『ランボー』(82)とタルコフスキー映画を足して割ったような作品」と分かりやすく説明している。まぁ、『バッファロー'66』(98)、『ブラウン・バニー』(03)のヴィンセント・ギャロ主演作ですから、フツーなわけないですな。  奇妙なサバイバル劇は、アフガニスタンらしき荒涼とした台地から幕を開ける。洞窟に潜んでいたムハンマド(ヴィンセント・ギャロ)はバズーカ砲で米兵を吹き飛ばす。まさしくギャロ版『ランボー』かと思わせるド派手オープニングだ。しかし、戦争映画のマッチョヒーローと違って、ムハンマドは追跡してきたヘリコプターの砲撃に遭い、あっけなく米軍の捕虜となる。収容所に囚われたムハンマドは厳しい拷問責めとなるが、決して口を開こうとしない。英語も母国語もいっさい話さないので、ムハンマドの正体は分からない。軍用機で別の収容所へ輸送されるが、その途中で護送車がスリップ事故を起こして、ムハンマドは脱走してしまう。風景はアフガニスタンとまるで違い、あたり一面に雪が降り積もっている。どうやら、世界各地にあると噂されるCIAの秘密収容所のひとつである北欧支部へ送り込まれるところだったらしい。土地勘のまるでないムハンマドは民間人を殺害した上で衣服を剥ぎ取り、雪に覆われた森の中へと逃げ込む。
ek02.jpg
ヴィンセント・ギャロが米軍相手に一人で
戦うド派手なオープニング。ギャロ主演で
『ランボー』シリーズをリメイクしたら、
こんな感じ?
 米軍の追っ手が迫る中、ムハンマドは森の奥へ奥へと逃げ込む。冬の森の中にはまったく食べ物がない。空腹に苦しむムハンマドは雪を掘り起こし、土の中のアリの巣を見つけ、アリをつまんで口に放り込む。アリだけでは空腹は満たされず、木の皮を剥いでむさぼり喰う。森の中でなぜか手付かずで赤い木の実が残っていたので有り難くいただくと、バッドトリップして幻覚に悩まされる。さらには赤ちゃんに母乳を飲ませていた女性に襲い掛かり、オッパイにしゃぶりつく。ゲリラ兵として対米国戦に参加していたムハンマドだが、森の中に迷い込んだムハンマドはもはや人間ではなく、一匹の野生動物と化す。イデオロギーのためではなく、自分が生き延びるために必要不可欠な殺戮(エッセンシャル・キリング)を重ねることになる。  本作でベネチア映画祭審査員特別賞と最優秀男優賞の二冠に輝いたギャロだが、中にはアラブ兵に見えないという批評もあった。だが、スコリモフスキ監督に言わせると、「もしかしたら、米国生まれで中東に移り住んだのかも知れない。あえて正体が分からないよう、曖昧にしている」とのこと。2009年のカンヌ映画祭でギャロが歩いていたところ、「野生動物のような歩き方をする男だ」とその後ろをたまたま歩いていたスコリモフスキ監督は感じ、書き上げて間もない『エッセンシャル・キリング』の台本をその場で渡したそうだ。2時間後にはギャロから「自分は雪の多いバッファロー出身だから、雪の上を裸足で走っても平気だ」と猛烈に出演をアピールされ、本作のキャスティングが決定したという。
ek03.jpg
傷ついたムハンマド(ヴィンセント・ギャロ)
を、人妻マーガレット(エマニュエル・セニ
エ)は無言で迎え入れる。セニエはロマン・
ポランスキー監督の奥様です。
 まったく見知らぬ環境に放り出され、空腹に耐えかねたムハンマドがアリをつまんで喰うシーンが印象に残る。ニコラス・ケイジは売り出し中の頃に『バンパイア・キッス』(90)でゴキブリを食べてみせたが、ギャロのことだから役づくりのために実際にアリを食べていてもおかしくない。しかし、アリは一体どんな味がするのか。昆虫食研究の日本での第一人者である三橋淳氏の著書『虫を食べる人びと』(平凡社)を読むと、昭和32年ごろには信州(昆虫食の本場!)で"チョコアンリ"という名のアリの入ったチョコレート菓子が製造され、もっぱら米国に輸出されていたそうだ。山間部で採集したアカアリをサラダ油で揚げてチョコレートを絡めたもので、アリに由来する酸味とチョコレートの甘みがうまく調和され、人気があったと記述されている。ただし、生きたアリには強い蟻酸があり、そのまま食べると消化器官を痛める可能性もあるので、公園でアリを見つけても、ギャロを真似て踊り喰いするのはやめた方が無難だ。
ek04.jpg
右にいるのが俳優として『イースタン・プロ
ミス』(07)などにも出演しているスコリ
モフスキ監督。政治的な事情などから欧米各国を
流浪した経験が本作に投影されている。
 一時期は関西方面にも逆輸入されていたというチョコアンリの味覚も気になるところだが、ムハンマドのその後に話題を戻そう。母乳を口にしてからのムハンマドはそれまでの凶暴な野生動物的な行動から変化が現われる。説明的な台詞もナレーションもないため勝手に推測するしかないのだが、それまで米軍の追跡を恐れて森の奥深くへと逃げ込んでいたムハンマドは物心がついたのか人肌が恋しくなったのか、灯りが点いた民家へと近づく。その民家は運良く主人が不在で、口の利けない夫人(エマニュエル・セニエ)が玄関で倒れ込んでいたムハンマドを介抱する。夫人の目には、ムハンマドは血まみれの殺戮者ではなく、一匹の傷ついた迷い犬のように映る。夫人は言語によるコミュニケーションに頼らない分、物事の本質を直感的に感じ取る。ムハンマドが何者であるかを詮索することなく、黙って温かい飲み物と寝床を提供する。飢えた野生動物と化していたムハンマドは、優しい母性に触れたことで、その立ち位置が大きく変わる。怒りと恐怖に取り憑かれていたムハンマドは、夫人の前では家族のもとへ帰りたがっている無力な男の子へと変貌していく。  さて、この無言の逃亡劇には、どんなクライマックスが待ち受けているのだろうか。観客が息を潜めて構えていると、スコリモフスキ監督はその裏を突くかのように唐突に幕を降ろす。再び放浪の身となるムハンマドに劇的なラストシーンは与えられない。ムハンマドは映画の中をさまよい続けることを宿命づけられる。もしかしたら、いつかムハンマドは家族のもとに帰りつく日が訪れるかもしれない。でも、それは多分、米国と中東の間の紛争が終わるときだろう。その日まで、ムハンマドの放浪はずっと続く。 (文=長野辰次) ek05.jpg 『エッセンシャル・キリング』 監督・脚本・製作/イエジー・スコリモフスキ 脚本・製作/エヴァ・ピャスコフスカ プロデューサー/ジェレミー・トーマス、アンドリュー・ロー 出演/ヴィンセント・ギャロ、エマニュエル・セニエ 配給/紀伊国屋書店、マーメイドフィルム 7月30日(土)より渋谷シアターイメージフォーラムほか全国順次公開 <http://www.eiganokuni.com/EK>
バッファロー'66 言わずと知れた代表作。 amazon_associate_logo.jpg
●深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】INDEX [第129回]『キック・アス』より悪趣味で泣ける 中年男の悪ノリ暴走劇『スーパー!』 [第128回]この夏の清涼剤、地方少女のダンス成長記『あぜみちジャンピンッ!』 [第127回]竹ヤリで世界進出"スシタイフーン"『エイリアンVSニンジャ』ほか逆上陸 [第126回]イーモウ監督、久々のアイドル映画 中華的妹萌え『サンザシの樹の下で』 [第125回]ナタリー・ポートマン vs. ヘビメタ野郎 人気女優の隠し球『メタルヘッド』 [第124回]黒澤明の名作『生きる』のラテン版! ヤモメ男が残した遺産『BIUTIFUL』 [第123回]北国で93年間営業を続ける"大黒座"と町の記録『小さな町の小さな映画館』 [第122回]新幹線がすれ違う瞬間、願いが叶う? 小学生の目線で描かれた『奇跡』 [第121回]理想と情熱がもたらした"痛い現実" 青春の蹉跌『マイ・バック・ページ』 [第120回]胸に響く金言"プロとは手を抜くこと" 職人秘話『アトムの足音が聞こえる』 [第119回]危険な出会い、井口昇ミーツ仲村みう 悪夢の遊園地『富江 アンリミテッド』 [第118回]ナタリー・ポートマン"第1章"の終幕 虚実が攻め合う『ブラック・スワン』 [第117回]"セカイ"を旅立った少女の地底探検記 新海誠監督の新作『星を追う子ども』 [第116回] 美少女たちの輝きが脳裏から離れない。青春ムービー『魔法少女を忘れない』 [第115回] 恋愛が与える"陶酔"とリアルな"痛み"サブカル活劇『スコット・ピルグリム』 [第114回]妄想、空想、そして現実からの大脱走 美少女革命『エンジェル ウォーズ』 [第113回]"3.11"後の新しい映画モデルとなるか『劇場版 神聖かまってちゃん』の挑戦 [第112回]マスコミが讃えた"楽園"のその後、ひとりの少女の成長記録『愛しきソナ』 [第111回]閉鎖的な"村社会"をブチ破ったれ! 韓流サバイバル劇『ビー・デビル』 [第110回]"粋"を愛したフランスの伯父さん J・タチ主演『イリュージョニスト』 [第109回]自分にとって家族は敵か、味方か? オスカー2冠受賞『ザ・ファイター』 [第108回]コーエン兄弟『トゥルー・グリット』40年で変化した"米国のヒーロー像" [第107回]ジョニー・デップが愛した"極道記者" 『GONZO』奇人がスターだった時代 [第106回] 巨匠イーストウッド監督の異色作! "あの世"はあるか?『ヒア アフター』 [第105回] キレ味、喉ごしが違うアクション! 黒帯美少女の"涙拳"が炸裂『KG』 [第104回] 高齢化するニートはどこに行くのか? "戸塚校長"のその後『平成ジレンマ』 [第103回]堀北真希&高良健吾主演作『白夜行』闇に生きる"影男"の密やかなる喜び [第102回]園子温の劇薬ムービー『冷たい熱帯魚』"救いのない結末"という名の救い [第101回] NHKが放映しない"裏プロジェクトX" AV界のカリスマ監督『YOYOCHU』 [第100回]エロスとタブーを交配した"至高の美女" 禁断のサイエンスホラー『スプライス』 [第99回]2010年に活躍した女優を勝手に表彰! 満島ひかりに"面倒くさい女"大賞を [第98回]大人だって"ドラえもん"にいて欲しい 残念男の逆転劇『エリックを探して』 [第97回]平凡な高校生デイヴは2度変身する!原点回帰のヒーロー『キック・アス』 [第96回]村上春樹の超絶ベストセラーの映画化『ノルウェイの森』はどこにある? [第95回]実在した"奇妙な高額バイト"の顛末 心理サスペンス『エクスペリメント』 [第94回]"アル中"カメラマンの泣き笑い人生『酔いがさめたら、うちに帰ろう。』 [第93回]朝ドラと異なる映画『ゲゲゲの女房』ゴールなき"貧乏耐久"2人3脚走 [第92回]バラエティーでの実績は通用するか? テリー伊藤の初監督作『10億円稼ぐ』 [第91回] 不謹慎なる社会派エンタテイメント『裁判長!ここは懲役4年でどうすか』 [第90回]"世界のナベアツ"大阪府知事に就任! 政治コメディ『さらば愛しの大統領』 [第89回]自分の恋愛もプロデュースする女優、ドリュー・バリモア主演『遠距離恋愛』 [第88回]スタローンが立ち上げた"筋肉共和国"男たちの祭典『エクスペンダブルズ』 [第87回]元"おはガール"安藤聖の再起動ドラマ 就職氷河期を生きる『バカがウラヤマシイ』 [第86回]マイノリティーは"理想郷"を目指す。筒井文学の金字塔『七瀬ふたたび』 [第85回]清純派・佐藤寛子が美しく"変態"! 官能サスペンス『ヌードの夜──』 [第84回]死を意識して、ギラギラ輝く男たち! 三池節、大バクハツ『十三人の刺客』 [第83回] 女を食い物にする男どもは全員処刑! モダン社会の闇を暴く『ミレニアム』 [第82回] "企画AV女優"たちの青春残酷物語 性なる鎮魂劇『名前のない女たち』 [第81回]猫を見れば、人間社会が見えてくる! 世界の人気猫大集合『ネコを探して』 [第80回]原恵一監督の新作は辛口ファンタジー 退屈な"日常生活"を彩る『カラフル』 [第79回]米軍に実在した"超能力部隊"の真実!? ムー民、必見『ヤギと男と男と壁と』 [第78回]戦場から帰還した夫は"芋虫男"だった! ヤクザ監督の反戦映画『キャタピラー』 [第77回] 白ユリの花開くガールズの妖しい世界 H系ホラー『ジェニファーズ・ボディ』 [第76回] 爽やか系青春ゾンビ映画にホロリ......夏休みは『ゾンビランド』に集結せよ [第75回] "生きる"とは"見苦しい"ということ 藤沢周平の時代活劇『必死剣 鳥刺し』 [第74回]初恋の美少女は200歳の吸血鬼だった! 北欧産のホラー映画『ぼくのエリ』 [第73回] "三億円事件"の真相を解き明かす! 桜タブーに挑んだ『ロストクライム』 [第72回/特別編] 上映反対で揺れる問題作『ザ・コーヴ』"渦中の人"リック・オバリー氏の主張 [第71回] 女子にモテモテになる方法、教えます。軟派少年の実話物語『ソフトボーイ』 [第70回] 下町育ちの"北野少年"が見た現代社会 人間同士の食物連鎖『アウトレイジ』 [第69回] "リアルと虚構の狭間"を生きる男、アントニオ猪木初主演作『アカシア』 [第68回] ヒーローも神もいない現代社会の惨劇 井筒監督の問題作『ヒーローショー』 [第67回] アイドルが地獄で微笑む『戦闘少女』ギャグ×血しぶき×殺陣の特盛り丼! [第66回]アナーキーな"社歌"で生産性アップ! 満島ひかり大進撃『川の底からこんにちは』 [第65回]超ヘビー級なシリアス劇『プレシャス』"家族"という名の地獄から脱出せよ [第64回]乱れ咲く"悪の華"ゼブラクイーン! 仲里依紗が過激変身『ゼブラーマン2』 [第63回] オタク王が見出した"夢と現実"の接点 ティム・バートン監督作『アリス──』 [第62回] バッドテイストな感動作『第9地区』 アナタはエビ人間とお友達になれるか? [第61回]スコセッシ監督の犯罪アトラクション『シャッターアイランド』へようこそ! [第60回]宮崎あおいの"映画代表作"が誕生! 毒を呑んでも生き続けよ『ソラニン』 [第59回]"おっぱいアート"は世界を救えるか? 母乳戦士の記録『桃色のジャンヌ・ダルク』 [第58回]現代に甦った"梶原一騎ワールド"韓流ステゴロ映画『息もできない』 [第57回]命知らずの変態レポーター、中東へ! 史上最大のどっきり?『ブルーノ』 [第56回]仲里依紗がアニメから実写へと跳躍! 母娘2代の時空旅行『時をかける少女』 [第55回]ビグロー監督はキャメロンより硬派! 人間爆弾の恐怖『ハート・ロッカー』 [第54回] "空気を読む"若者の悲劇『パレード』楽しいルームシェア生活の行き先は? [第53回]社会の"生け贄"に選ばれた男の逃亡劇 堺雅人主演『ゴールデンスランバー』 [第52回]『男はつらいよ』の別エンディング? "寅さん"の最期を描く『おとうと』 [第51回]ひとり相撲なら無敵のチャンピオン! 童貞暴走劇『ボーイズ・オン・ザ・ラン』 [第50回]ヒース・レジャーが最後に見た夢の世界 理想と欲望が渦巻く『Dr.パルナサスの鏡』 [第49回]トニー・ジャーは本気なんジャー! CGなしの狂乱劇再び『マッハ!弐』 [第48回]全米"オシャレ番長"ズーイー、見参! 草食系に捧ぐ『(500日)のサマー』 [第47回]市川崑監督&水谷豊"幻の名作"『幸福』28年の歳月を経て、初のパッケージ化 [第46回]押井守監督、大いなる方向転換か? 黒木メイサ主演『アサルトガールズ』 [第45回]ドラッグ漬けの芸能関係者必見!"神の子"の復活を追う『マラドーナ』 [第44回] 暴走する"システム"が止まらない! マイケル・ムーア監督『キャピタリズム』 [第43回]"人は二度死ぬ"という独自の死生観『ガマの油』役所広司の監督ぶりは? [第42回]誰もが共感、あるあるコメディー! 2ちゃんねる発『ブラック会社』 [第41回]タラとブラピが組むと、こーなった!! 戦争奇談『イングロリアス・バスターズ』 [第40回]"涅槃の境地"のラストシーンに唖然! 引退を賭けた角川春樹監督『笑う警官』 [第39回]伝説の男・松田優作は今も生きている 20回忌ドキュメント『SOUL RED』 [第38回]海より深い"ドメスティック・ラブ"ポン・ジュノ監督『母なる証明』 [第37回]チャン・ツィイーが放つフェロモン爆撃 悪女注意報発令せり!『ホースメン』 [第36回]『ソウ』の監督が放つ激痛バイオレンス やりすぎベーコン!『狼の死刑宣告』 [第35回]"負け組人生"から抜け出したい!! 藤原竜也主演『カイジ 人生逆転ゲーム』 [第34回]2兆円ペット産業の"開かずの間"に迫る ドキュメンタリー『犬と猫と人間と』 [第33回]"女神降臨"ペ・ドゥナの裸体が神々しい 空っぽな心に響く都市の寓話『空気人形』 [第32回]電気仕掛けのパンティをはくヒロイン R15コメディ『男と女の不都合な真実』 [第31回]萩原健一、松方弘樹の助演陣が過剰すぎ! 小栗旬主演の時代活劇『TAJOMARU』 [第30回]松本人志監督・主演第2作『しんぼる』 閉塞状況の中で踊り続ける男の悲喜劇 [第29回]シビアな現実を商品化してしまう才女、西原理恵子の自叙伝『女の子ものがたり』 [第28回]"おねマス"のマッコイ斉藤プレゼンツ 不謹慎さが爆笑を呼ぶ『上島ジェーン』 [第27回]究極料理を超えた"極地料理"に舌鼓! 納涼&グルメ映画『南極料理人』 [第26回]ハチは"失われた少年時代"のアイコン  ハリウッド版『HACHI』に涙腺崩壊! [第25回]白熱! 女同士のゴツゴツエゴバトル 金子修介監督の歌曲劇『プライド』 [第24回]悪意と善意が反転する"仮想空間"細田守監督『サマーウォーズ』 [第23回]沖縄に"精霊が暮らす楽園"があった! 中江裕司監督『真夏の夜の夢』 [第22回]"最強のライブバンド"の底力発揮! ストーンズ『シャイン・ア・ライト』 [第21回]身長15mの"巨大娘"に抱かれたい! 3Dアニメ『モンスターvsエイリアン』 [第20回]ウディ・アレンのヨハンソンいじりが冴え渡る!『それでも恋するバルセロナ』 [第19回]ケイト姐さんが"DTハンター"に! オスカー受賞の官能作『愛を読むひと』 [第18回]1万枚の段ボールで建てた"夢の砦"男のロマンここにあり『築城せよ!』 [第17回]地獄から甦った男のセミドキュメント ミッキー・ローク『レスラー』 [第16回]人生がちょっぴり楽しくなる特効薬 三木聡"脱力"劇場『インスタント沼』 [第15回]"裁判員制度"が始まる今こそ注目 死刑執行を克明に再現した『休暇』 [第14回]生傷美少女の危険な足技に痺れたい! タイ発『チョコレート・ファイター』 [第13回]風俗嬢を狙う快楽殺人鬼の恐怖! 極限の韓流映画『チェイサー』 [第12回]お姫様のハートを盗んだ男の悲哀 紀里谷監督の歴史奇談『GOEMON』 [第11回]美人女優は"下ネタ"でこそ輝く! ファレリー兄弟『ライラにお手あげ』 [第10回]ジャッキー・チェンの"暗黒面"? 中国で上映禁止『新宿インシデント』 [第9回]胸の谷間に"桃源郷"を見た! 綾瀬はるか『おっぱいバレー』 [第8回]"都市伝説"は映画と結びつく 白石晃士監督『オカルト』『テケテケ』 [第7回]少女たちの壮絶サバイバル!楳図かずおワールド『赤んぼ少女』 [第6回]派遣の"叫び"がこだまする現代版蟹工船『遭難フリーター』 [第5回]三池崇史監督『ヤッターマン』で深田恭子が"倒錯美"の世界へ [第4回]フランス、中国、日本......世界各国のタブーを暴いた劇映画続々 [第3回]水野晴郎の遺作『ギララの逆襲』岡山弁で語った最後の台詞は...... [第2回]『チェンジリング』そしてイーストウッドは"映画の神様"となった [第1回]堤幸彦版『20世紀少年』に漂うフェイクならではの哀愁と美学

『キック・アス』より悪趣味で泣ける 中年男の悪ノリ暴走劇『スーパー!』

super01.jpg
"赤い稲妻"クリムゾンボルトを名乗り、
街の悪党どもに襲い掛かるフランク(レイン・ウィルソン)。
どー見ても、お前が変質者だよ! Crimson Bolt,LLC(c)2010
 B級のパチモノ映画と思ってスルーしちゃうと、後悔する感動作。それがジェームズ・ガン監督の『スーパー!』だ。冴えない主人公が美少女を相棒になりきりヒーローに扮して悪を退治するって、ヒット作『キック・アス』(10)のまんま。いや、確かに『キック・アス』的なコメディー設定なんだけど、内容はむしろポール・シュレイダー脚本&マーティン・スコセッシ監督の『タクシードライバー』(76)に近い。自分こそが正義だという妄想に取り憑かれた中年男が、街にはびこる悪党どもに正義の鉄槌を下す。中年男の崇高な使命感とお手製のアップリケを貼付けたチープな赤い衣装とのギャップが哀愁混じりの苦笑を誘う。おもろうて、やがて哀しきバイオレンスアクション映画なのだ。"悪趣味だけど、泣ける"SFホラー映画『スリザー』(06)でデビューしたジェームズ・ガン監督のオリジナル脚本に、『Gガール 破壊的な彼女』(06)のレイン・ウィルソン、『JUNO/ジュノ』(07)のエレン・ペイジ、『アルマゲドン』(98)のリヴ・タイラーら豪華キャストが賛同し、脚本執筆から6年ごしで『スーパー!』は完成した。米国での劇場公開は単館系でのひっそりとしたものだったが、VOD視聴率は大手配給会社IFC社史上最高の数字を稼いでいる。
super02.jpg
エレン・ペイジ扮する"ボルティー"。
あんまりセクシーじゃないところが、
逆に男心をソソるのだ。
 ファミレスで働く中年男・フランク(レイン・ウィルソン)の唯一の自慢は、美人妻・サラ(リヴ・タイラー)が家で待っていること。だが、サラは薬物依存癖があり、ドラッグの売人・ジョッグ(ケヴィン・ベーコン)のもとへと去っていく。貞淑な妻サラは凶悪なジョッグに脅され、自分を巻き込まないように姿を消したと思い込んだフランクは、天の声(電波)をキャッチして正義の味方クリムゾンボルト(赤い稲妻)に変身する。ま、変身するといっても、手縫いの赤い衣装にメタボ体型のお肉を詰め込むだけなんだけど。もちろん"キック・アス"と同様に特殊能力はゼロ。人一倍あるのは、「自分こそが正義」という揺るがない思い込みのみ。でも、いきなりジョッグのアジトを襲撃するのは気が重いので、まずは路地裏をうろつく露出狂や行列に割り込むマナー知らずの野郎どもに、後ろからスパナで殴り掛かる。相手の不意を突くのが、クリムゾンボルトの常套手段。正義のヒーローを自称するには、あまりにも姑息だよ。
super03.jpg
フランクが愛して止まない妻・サラ(リヴ・
タイラー)。こんな美人妻がいたら、男は
間違いなくおかしくなります。
 フランクがひとりで自警活動をやっているうちは、まだ良かった。フランクの怪しげな行動を知ったアメコミオタクの少女リビー(エレン・ペイジ)が勝手にクリムゾンボルトの相棒ボルティーを名乗って、コスチューム姿で付きまとうようになる。バットマンにロビン、キック・アスにヒットガールというわけだ。興奮ぎみのリビーに煽られるかっこうで、お尻に火を点けられたフランクはついにジョッグ一味に立ち向かうことを決意する。『JUNO』『ローラーガールズ・ダイアリーズ』(09)の若手演技派女優エレン・ペイジが"変態よい子"リビー役を嬉々として演じている。ピチピチッとしたコスチューム姿で「とりあえず記念に、一発エッチしようよ」とフランクにエロく迫る、頭のイッちゃった女の子リビー役は、出世作『ハードキャンディ』(05)での援交少女に匹敵する怪演ぶりだ。  『キック・アス』の主人公は10代の若者ならではの正義感に駆られての行動であり、大人への成長の過程としての一抹の爽やかさがエンディングに漂っていたのに比べ、『スーパー!』のフランクは分別があって然るべき中年男である。法の及ばない悪事に対し、自分なりに正義の鉄槌を下す行為は当然ながら危険を伴う。フランクとリビーが小悪党相手に暴力を振るい、自分たちの行為に酔いしれる姿は、ドラッグ中毒患者と変わらない。素人同士の2人が組むことで、行動は次第にエスカレートしてゆき、大きな犠牲を払うことになる。井筒和幸監督の『ヒーローショー』(10)で、ささいなケンカから大悲劇に発展していく過程とも似ている。
super04.jpg
右側の赤いヤツが"出たがり屋"
のジェームズ・ガン監督。脚本家
として『スクービー・ドゥー』(02)、
『ドーン・オブ・ザ・デッド』(04)
などのヒット作あり。
 『仮面ライダーV3』(73~74年、毎日放送)に主演した宮内洋に以前、話を聞いたことがある。正義のヒーローを演じることは子どもたちへの影響力が大きいことを自覚しており、人目につくところではタバコ、飲酒、立ちションなどは控えていたそうだ。また、『仮面ライダーV3』は日本だけでなく海外でも絶大な人気を誇っていた。香港ではテレビ放映を見た小さな子どもたちがV3を真似て、マンションから次々と飛び降りるという事故が相次ぎ、すぐさま放映が打ち切られている。正義のヒーローに扮することで得られる陶酔感は、しばし取り返しのつかない惨劇を招く。  『スーパー!』のクライマックス、引くに引けなくなったフランクとリビーはドラッグの取り引きの真っ最中のジョッグ邸を襲撃する。フランクの愛妻サラを救出するために。フランクとリビーが高倉健と鶴田浩二に見えてくる、ゾクゾクする討ち入りシーンだ。だが、武装したジョッグの子分たちとの抗争は、想像以上の血の嵐を呼び寄せる。弾丸が飛び交い、硝煙が立ち込め、肉片が飛び散る。やがて、血の暴風雨が立ち去り、静かな朝が訪れる。血の代償として、フランクは思い知る。暴力や生と死のギリギリ感がもたらす刹那的な快感よりも、生き続けていくことの痛みのほうがずっとずっと重いということを。 (文=長野辰次) super05.jpg 『スーパー!』 脚本・監督/ジェームズ・ガン 音楽/タイラー・ベイツ 出演/レイン・ウィルソン、エレン・ペイジ、リヴ・タイラー、ケヴィン・ベーコン 配給/ファインフィルムズ 7月30日(土)よりシアターN渋谷、新宿武蔵野館ほか全国順次公開 R15+ <http://www.finefilms.co.jp/super>
キック・アス Blu-ray(特典DVD付2枚組) 本家。 amazon_associate_logo.jpg
●深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】INDEX [第128回]この夏の清涼剤、地方少女のダンス成長記『あぜみちジャンピンッ!』 [第127回]竹ヤリで世界進出"スシタイフーン"『エイリアンVSニンジャ』ほか逆上陸 [第126回]イーモウ監督、久々のアイドル映画 中華的妹萌え『サンザシの樹の下で』 [第125回]ナタリー・ポートマン vs. ヘビメタ野郎 人気女優の隠し球『メタルヘッド』 [第124回]黒澤明の名作『生きる』のラテン版! ヤモメ男が残した遺産『BIUTIFUL』 [第123回]北国で93年間営業を続ける"大黒座"と町の記録『小さな町の小さな映画館』 [第122回]新幹線がすれ違う瞬間、願いが叶う? 小学生の目線で描かれた『奇跡』 [第121回]理想と情熱がもたらした"痛い現実" 青春の蹉跌『マイ・バック・ページ』 [第120回]胸に響く金言"プロとは手を抜くこと" 職人秘話『アトムの足音が聞こえる』 [第119回]危険な出会い、井口昇ミーツ仲村みう 悪夢の遊園地『富江 アンリミテッド』 [第118回]ナタリー・ポートマン"第1章"の終幕 虚実が攻め合う『ブラック・スワン』 [第117回]"セカイ"を旅立った少女の地底探検記 新海誠監督の新作『星を追う子ども』 [第116回] 美少女たちの輝きが脳裏から離れない。青春ムービー『魔法少女を忘れない』 [第115回] 恋愛が与える"陶酔"とリアルな"痛み"サブカル活劇『スコット・ピルグリム』 [第114回]妄想、空想、そして現実からの大脱走 美少女革命『エンジェル ウォーズ』 [第113回]"3.11"後の新しい映画モデルとなるか『劇場版 神聖かまってちゃん』の挑戦 [第112回]マスコミが讃えた"楽園"のその後、ひとりの少女の成長記録『愛しきソナ』 [第111回]閉鎖的な"村社会"をブチ破ったれ! 韓流サバイバル劇『ビー・デビル』 [第110回]"粋"を愛したフランスの伯父さん J・タチ主演『イリュージョニスト』 [第109回]自分にとって家族は敵か、味方か? オスカー2冠受賞『ザ・ファイター』 [第108回]コーエン兄弟『トゥルー・グリット』40年で変化した"米国のヒーロー像" [第107回]ジョニー・デップが愛した"極道記者" 『GONZO』奇人がスターだった時代 [第106回] 巨匠イーストウッド監督の異色作! "あの世"はあるか?『ヒア アフター』 [第105回] キレ味、喉ごしが違うアクション! 黒帯美少女の"涙拳"が炸裂『KG』 [第104回] 高齢化するニートはどこに行くのか? "戸塚校長"のその後『平成ジレンマ』 [第103回]堀北真希&高良健吾主演作『白夜行』闇に生きる"影男"の密やかなる喜び [第102回]園子温の劇薬ムービー『冷たい熱帯魚』"救いのない結末"という名の救い [第101回] NHKが放映しない"裏プロジェクトX" AV界のカリスマ監督『YOYOCHU』 [第100回]エロスとタブーを交配した"至高の美女" 禁断のサイエンスホラー『スプライス』 [第99回]2010年に活躍した女優を勝手に表彰! 満島ひかりに"面倒くさい女"大賞を [第98回]大人だって"ドラえもん"にいて欲しい 残念男の逆転劇『エリックを探して』 [第97回]平凡な高校生デイヴは2度変身する!原点回帰のヒーロー『キック・アス』 [第96回]村上春樹の超絶ベストセラーの映画化『ノルウェイの森』はどこにある? [第95回]実在した"奇妙な高額バイト"の顛末 心理サスペンス『エクスペリメント』 [第94回]"アル中"カメラマンの泣き笑い人生『酔いがさめたら、うちに帰ろう。』 [第93回]朝ドラと異なる映画『ゲゲゲの女房』ゴールなき"貧乏耐久"2人3脚走 [第92回]バラエティーでの実績は通用するか? テリー伊藤の初監督作『10億円稼ぐ』 [第91回] 不謹慎なる社会派エンタテイメント『裁判長!ここは懲役4年でどうすか』 [第90回]"世界のナベアツ"大阪府知事に就任! 政治コメディ『さらば愛しの大統領』 [第89回]自分の恋愛もプロデュースする女優、ドリュー・バリモア主演『遠距離恋愛』 [第88回]スタローンが立ち上げた"筋肉共和国"男たちの祭典『エクスペンダブルズ』 [第87回]元"おはガール"安藤聖の再起動ドラマ 就職氷河期を生きる『バカがウラヤマシイ』 [第86回]マイノリティーは"理想郷"を目指す。筒井文学の金字塔『七瀬ふたたび』 [第85回]清純派・佐藤寛子が美しく"変態"! 官能サスペンス『ヌードの夜──』 [第84回]死を意識して、ギラギラ輝く男たち! 三池節、大バクハツ『十三人の刺客』 [第83回] 女を食い物にする男どもは全員処刑! モダン社会の闇を暴く『ミレニアム』 [第82回] "企画AV女優"たちの青春残酷物語 性なる鎮魂劇『名前のない女たち』 [第81回]猫を見れば、人間社会が見えてくる! 世界の人気猫大集合『ネコを探して』 [第80回]原恵一監督の新作は辛口ファンタジー 退屈な"日常生活"を彩る『カラフル』 [第79回]米軍に実在した"超能力部隊"の真実!? ムー民、必見『ヤギと男と男と壁と』 [第78回]戦場から帰還した夫は"芋虫男"だった! ヤクザ監督の反戦映画『キャタピラー』 [第77回] 白ユリの花開くガールズの妖しい世界 H系ホラー『ジェニファーズ・ボディ』 [第76回] 爽やか系青春ゾンビ映画にホロリ......夏休みは『ゾンビランド』に集結せよ [第75回] "生きる"とは"見苦しい"ということ 藤沢周平の時代活劇『必死剣 鳥刺し』 [第74回]初恋の美少女は200歳の吸血鬼だった! 北欧産のホラー映画『ぼくのエリ』 [第73回] "三億円事件"の真相を解き明かす! 桜タブーに挑んだ『ロストクライム』 [第72回/特別編] 上映反対で揺れる問題作『ザ・コーヴ』"渦中の人"リック・オバリー氏の主張 [第71回] 女子にモテモテになる方法、教えます。軟派少年の実話物語『ソフトボーイ』 [第70回] 下町育ちの"北野少年"が見た現代社会 人間同士の食物連鎖『アウトレイジ』 [第69回] "リアルと虚構の狭間"を生きる男、アントニオ猪木初主演作『アカシア』 [第68回] ヒーローも神もいない現代社会の惨劇 井筒監督の問題作『ヒーローショー』 [第67回] アイドルが地獄で微笑む『戦闘少女』ギャグ×血しぶき×殺陣の特盛り丼! [第66回]アナーキーな"社歌"で生産性アップ! 満島ひかり大進撃『川の底からこんにちは』 [第65回]超ヘビー級なシリアス劇『プレシャス』"家族"という名の地獄から脱出せよ [第64回]乱れ咲く"悪の華"ゼブラクイーン! 仲里依紗が過激変身『ゼブラーマン2』 [第63回] オタク王が見出した"夢と現実"の接点 ティム・バートン監督作『アリス──』 [第62回] バッドテイストな感動作『第9地区』 アナタはエビ人間とお友達になれるか? [第61回]スコセッシ監督の犯罪アトラクション『シャッターアイランド』へようこそ! [第60回]宮崎あおいの"映画代表作"が誕生! 毒を呑んでも生き続けよ『ソラニン』 [第59回]"おっぱいアート"は世界を救えるか? 母乳戦士の記録『桃色のジャンヌ・ダルク』 [第58回]現代に甦った"梶原一騎ワールド"韓流ステゴロ映画『息もできない』 [第57回]命知らずの変態レポーター、中東へ! 史上最大のどっきり?『ブルーノ』 [第56回]仲里依紗がアニメから実写へと跳躍! 母娘2代の時空旅行『時をかける少女』 [第55回]ビグロー監督はキャメロンより硬派! 人間爆弾の恐怖『ハート・ロッカー』 [第54回] "空気を読む"若者の悲劇『パレード』楽しいルームシェア生活の行き先は? [第53回]社会の"生け贄"に選ばれた男の逃亡劇 堺雅人主演『ゴールデンスランバー』 [第52回]『男はつらいよ』の別エンディング? "寅さん"の最期を描く『おとうと』 [第51回]ひとり相撲なら無敵のチャンピオン! 童貞暴走劇『ボーイズ・オン・ザ・ラン』 [第50回]ヒース・レジャーが最後に見た夢の世界 理想と欲望が渦巻く『Dr.パルナサスの鏡』 [第49回]トニー・ジャーは本気なんジャー! CGなしの狂乱劇再び『マッハ!弐』 [第48回]全米"オシャレ番長"ズーイー、見参! 草食系に捧ぐ『(500日)のサマー』 [第47回]市川崑監督&水谷豊"幻の名作"『幸福』28年の歳月を経て、初のパッケージ化 [第46回]押井守監督、大いなる方向転換か? 黒木メイサ主演『アサルトガールズ』 [第45回]ドラッグ漬けの芸能関係者必見!"神の子"の復活を追う『マラドーナ』 [第44回] 暴走する"システム"が止まらない! マイケル・ムーア監督『キャピタリズム』 [第43回]"人は二度死ぬ"という独自の死生観『ガマの油』役所広司の監督ぶりは? [第42回]誰もが共感、あるあるコメディー! 2ちゃんねる発『ブラック会社』 [第41回]タラとブラピが組むと、こーなった!! 戦争奇談『イングロリアス・バスターズ』 [第40回]"涅槃の境地"のラストシーンに唖然! 引退を賭けた角川春樹監督『笑う警官』 [第39回]伝説の男・松田優作は今も生きている 20回忌ドキュメント『SOUL RED』 [第38回]海より深い"ドメスティック・ラブ"ポン・ジュノ監督『母なる証明』 [第37回]チャン・ツィイーが放つフェロモン爆撃 悪女注意報発令せり!『ホースメン』 [第36回]『ソウ』の監督が放つ激痛バイオレンス やりすぎベーコン!『狼の死刑宣告』 [第35回]"負け組人生"から抜け出したい!! 藤原竜也主演『カイジ 人生逆転ゲーム』 [第34回]2兆円ペット産業の"開かずの間"に迫る ドキュメンタリー『犬と猫と人間と』 [第33回]"女神降臨"ペ・ドゥナの裸体が神々しい 空っぽな心に響く都市の寓話『空気人形』 [第32回]電気仕掛けのパンティをはくヒロイン R15コメディ『男と女の不都合な真実』 [第31回]萩原健一、松方弘樹の助演陣が過剰すぎ! 小栗旬主演の時代活劇『TAJOMARU』 [第30回]松本人志監督・主演第2作『しんぼる』 閉塞状況の中で踊り続ける男の悲喜劇 [第29回]シビアな現実を商品化してしまう才女、西原理恵子の自叙伝『女の子ものがたり』 [第28回]"おねマス"のマッコイ斉藤プレゼンツ 不謹慎さが爆笑を呼ぶ『上島ジェーン』 [第27回]究極料理を超えた"極地料理"に舌鼓! 納涼&グルメ映画『南極料理人』 [第26回]ハチは"失われた少年時代"のアイコン  ハリウッド版『HACHI』に涙腺崩壊! [第25回]白熱! 女同士のゴツゴツエゴバトル 金子修介監督の歌曲劇『プライド』 [第24回]悪意と善意が反転する"仮想空間"細田守監督『サマーウォーズ』 [第23回]沖縄に"精霊が暮らす楽園"があった! 中江裕司監督『真夏の夜の夢』 [第22回]"最強のライブバンド"の底力発揮! ストーンズ『シャイン・ア・ライト』 [第21回]身長15mの"巨大娘"に抱かれたい! 3Dアニメ『モンスターvsエイリアン』 [第20回]ウディ・アレンのヨハンソンいじりが冴え渡る!『それでも恋するバルセロナ』 [第19回]ケイト姐さんが"DTハンター"に! オスカー受賞の官能作『愛を読むひと』 [第18回]1万枚の段ボールで建てた"夢の砦"男のロマンここにあり『築城せよ!』 [第17回]地獄から甦った男のセミドキュメント ミッキー・ローク『レスラー』 [第16回]人生がちょっぴり楽しくなる特効薬 三木聡"脱力"劇場『インスタント沼』 [第15回]"裁判員制度"が始まる今こそ注目 死刑執行を克明に再現した『休暇』 [第14回]生傷美少女の危険な足技に痺れたい! タイ発『チョコレート・ファイター』 [第13回]風俗嬢を狙う快楽殺人鬼の恐怖! 極限の韓流映画『チェイサー』 [第12回]お姫様のハートを盗んだ男の悲哀 紀里谷監督の歴史奇談『GOEMON』 [第11回]美人女優は"下ネタ"でこそ輝く! ファレリー兄弟『ライラにお手あげ』 [第10回]ジャッキー・チェンの"暗黒面"? 中国で上映禁止『新宿インシデント』 [第9回]胸の谷間に"桃源郷"を見た! 綾瀬はるか『おっぱいバレー』 [第8回]"都市伝説"は映画と結びつく 白石晃士監督『オカルト』『テケテケ』 [第7回]少女たちの壮絶サバイバル!楳図かずおワールド『赤んぼ少女』 [第6回]派遣の"叫び"がこだまする現代版蟹工船『遭難フリーター』 [第5回]三池崇史監督『ヤッターマン』で深田恭子が"倒錯美"の世界へ [第4回]フランス、中国、日本......世界各国のタブーを暴いた劇映画続々 [第3回]水野晴郎の遺作『ギララの逆襲』岡山弁で語った最後の台詞は...... [第2回]『チェンジリング』そしてイーストウッドは"映画の神様"となった [第1回]堤幸彦版『20世紀少年』に漂うフェイクならではの哀愁と美学

この夏の清涼剤、地方少女のダンス成長記『あぜみちジャンピンッ!』

azemichi01.jpg
田舎の女子中学生ユーキ(大場はるか)がハンディを乗り越えて、
ダンス特訓に励む『あぜみちジャンピンッ!』。
浜崎あゆみへの楽曲提供で知られる長尾大(D・A・I)が
音楽を担当。(c)アイマックス
 15歳の少女・ユーキは、自分の胸の中で何かが弾けるのを感じた。繁華街の大型ビジョンから、プロのダンスチームのPVが流れるのを見た瞬間のできごとだった。ユーキは聴覚障害があり、そのときどんな音楽が流れていたのかは分からない。でも、ダンサーたちがリズムカルに自分の体を自在にしなやかに動かしている姿が、ユーキの中でずっと眠っていたものを目覚めさせたのだ。ユーキはさっそく大型ビジョンで流れていた人気ダンスチーム"RIP GIRLS"のDVDを手に入れ、自宅で視聴する。音が聴こえないので、ボリュームをMAXにした上でスピーカーを直接床に置き、体でその振動を感じる。これだ。ユーキがずっと探していたものは、このビートなんだ。うれしくなったユーキは、見よう見まねでDVDの映像に合わせて体を動かす。ユーキは自分の体が初めて自分のものになったような気がして、笑いが止まらない。新潟県魚沼地方を舞台にしたダンス少女の青春ストーリー『あぜみちジャンピンッ!』はこうして始まる。
azemichi02.jpg
聾学校の校舎の屋上でクラスメイトたちと
昼食を摂るユーキ。ダンスに夢中なユーキは、
友達の手話が目に入らない。
 ユーキは母ひとり娘ひとりの家庭で育った。母が懸命に働いてくれるお陰で、生活自体には不自由していない。聾学校は小学部と中学部が併設されており、クラスメイトたちは小学部からずっと一緒で、みんな仲良しだ。ユーキは小学部の子どもたちの面倒見がいいと先生たちの評判もいい。でも、優等生のユーキはずっと何かが足りない気がしていた。それは父親がいないせいか、聴覚障害のせいか、田舎で暮らしているせいなのかはよく分からない。ダンスに目覚めたユーキは、近所の空き地でラジカセを鳴らしながら練習している女の子たちのアマチュアダンスチーム"Jumping Girls"の様子を遠くから眺めるようになる。彼女たちは障害を持たない普通の女の子たちのダンスチームだ。ユーキは眺めるだけで、それ以上は距離を縮めることはできずにいた。ある日、不思議なことが起きる。Jumping Girlsのリーダー・麗奈が「ダンス、好きなの?」とユーキに声を掛けてきたのだ。麗奈はなぜか手話ができた。麗奈に手を引かれたユーキは、みんなの前で一度見ただけのダンスを再現する。頭でなく、体で動きを覚えるユーキは飲み込みが誰よりも早かった。かくして、ユーキはJumping Girlsの一員に迎え入れられる。家庭や学校以外で初めての仲間ができた。ユーキはうれしくて、たまらない。ユーキの前に広がる田んぼがキラキラと輝いて見える。
azemichi03.jpg
麗奈(普天間みさき)を中心にしたダンス
チーム"Jumping Girls"。地元の大会で入賞
して、全国大会出場を目指す。
 『あぜみちジャンピンッ!』で主人公のユーキを演じるのは、2008年の撮影時は15歳だったジュニアアイドルの大場はるか。女優&サインボーカルダンサーとして活動する大橋ひろえの手話指導を受けて、聴覚障害を持つダンサーを演じた。障害を持つ者と持たない者との交流が重要なモチーフとなっているが、むしろ本作のいちばんの主題は感情表現を初めて自分のものにできた少女の純粋な喜びだろう。それまで母親(渡辺真紀子)に「いつもニコニコ笑ってなさい」と教えられてきたユーキだが、ダンスと出会うことで心の躍動や揺れ動きを全身を使って表現する喜びを知る。台詞のないユーキの感動を、大場はるかがハツラツと演じる。4カ月間にわたるダンス&演技レッスンを経て、新潟ロケに臨んだそうだ。本作が3作目となる若手の西川文恵監督は10代を中心にしたキャストたちとクランクイン直前にぶつかり合うこともあったが、全編を瑞々しく描いている。映画の完成度を問うよりも、成長過程にあるスタッフ&キャストの初々しさを楽しむ作品かもしれない。  ユーキが通う聾学校の描写も新鮮だ。授業中、先生が黒板に向かっていると、女子生徒たちは手話で「放課後、みんなでモンジャ焼きを食べに行こうよ」と盛り上がる。手話なので授業中も私語し放題なのだ。小学部と中学部の子どもたちが休み時間に一緒に遊んでいる様子も、何だか楽しげである。また、本作は全編に字幕を入れるために全体的に画角が広めにとってあり、ユーキたちが暮らす新潟の田園風景がゆったりと広がり、田んぼの先には青々とした山々が連なっている。ユーキがあぜ道でジャンプすると、指先が青空まで届いてしまいそうだ。
azemichi04.jpg
ダンス大会でソロ部門に挑むことになった
ユーキ。ステージの上では誰も手を差し伸べ
てはくれない。
 やがて田んぼの稲が実り始め、ユーキのダンスはずいぶんと上達した。ダンス大会も近い。しかし、好事魔多し。聾学校で仲良くしていた下級生から「最近、聴者とばっかり仲良くしている」と裏切り者扱いされる。肝心のJumping Girlsでも問題が発生する。これまでユーキとチームメイトとの間に入って手話通訳をしてくれていた麗奈が足を痛めてしまい、チームを去っていく。自分をチームに誘ってくれた麗奈を失い、ユーキは急に不安になる。麗奈が去った後のチームを仕切るサブリーダーの美希は「ユーキが来てから、チームの和が乱れ始めた」とユーキに辛くあたる。家庭でも聾学校でも大事に大事に扱われてきたユーキにとって、経験したことのない大きな試練だ。それまでの爽やかなドラマ展開から一転して、女同士の嫉妬、八つ当たり、無視、無理解といったドロドロの不協和音が流れ出す。  アイドル映画の巨匠チャン・イーモウ監督の『至福のとき』(02)では、イーモウ監督に見出された新人女優ドン・ジエが視覚障害の女の子ウーインを健気に演じた。工場が閉鎖されて行き場所のない失業者たちは、目の不自由な少女ウーインのためにマッサージパーラーを廃工場内に建てる。マッサージパーラーが廃材で組み立てた張りぼてなことはウーインには内緒だ。お金を持っていない失業者たちは紙で作ったニセ札を持って、張りぼてのマッサージパーラーに通う。とんでもない詐欺行為だが、ウーインは彼らの払うお金がニセ札だと知りながら、せっせとマッサージに励む。報酬がニセ札とはいえ、実家を離れて社会の中で初めて働くことがウーインには無性に楽しいのだ。本作のユーキも同じような体験をする。実社会で初めて厳しい洗礼を浴びたユーキは、美希たちに対して本気で怒る。それまで、困ったことがあってもニコニコ笑ってやり過ごしていたユーキにとって、生まれて初めて自分の中で眠っていた感情を爆発させた瞬間だった。ユーキはいつの間にか、Jumping Girlsの大人しいお客さまではなく、チームを左右する重要なメンバーとなっていたのだ。  矢口史靖監督の『ウォーターボーイズ』(01)、『スウィングガールズ』(04)と同様に、ダンス大会の本番がクライマックスとなる。ユーキの心臓はもう最高にドッキンドッキンしている。ステージ上では、さらなるトラブルがユーキに降り掛かる。それでもユーキはチームメイトと体の動きをシンクロさせることで、自分の体の中にビートが流れるのを感じる。ユーキが感じるビートは特別ゲストとして来場したRIP GIRLSのメンバーや客席に集まったギャラリーたちにも伝播していき、ひとつの大きなグルーヴとなって会場全体を包みこむ。それはユーキだけの経験でなく、その場に居合わせたみんなが身震いするような新鮮なビートだった。 (文=長野辰次) azemichi05.jpg 『あぜみちジャンピンッ!』 監督・原案・編集/西川文恵 脚本/田中智章 撮影/丸池納 手話監修/大橋ひろえ 音楽/D・A・I 出演/大場はるか、普天間みさき、梅本静香、上杉みあゆみ、兵藤さや、工藤あゆり、松本あやか、立花あんり、池田光咲、川元みく、山中友恵、小島あん、星れいら、小林寧子、天川紗織、遠藤雅、渡辺真紀子 配給/ヴォストーク 7月23日(土)よりポレポレ東中野にて公開 ※ポレポレ東中野では8月19日(金)まで平日朝8:50からの上映が900円均一になる「スーパーモーニング&シエスタ」を実施中 <http://www.aze-michi.com>
スウィングガールズ スペシャル・エディション 青春。 amazon_associate_logo.jpg
●深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】INDEX [第127回]竹ヤリで世界進出"スシタイフーン"『エイリアンVSニンジャ』ほか逆上陸 [第126回]イーモウ監督、久々のアイドル映画 中華的妹萌え『サンザシの樹の下で』 [第125回]ナタリー・ポートマン vs. ヘビメタ野郎 人気女優の隠し球『メタルヘッド』 [第124回]黒澤明の名作『生きる』のラテン版! ヤモメ男が残した遺産『BIUTIFUL』 [第123回]北国で93年間営業を続ける"大黒座"と町の記録『小さな町の小さな映画館』 [第122回]新幹線がすれ違う瞬間、願いが叶う? 小学生の目線で描かれた『奇跡』 [第121回]理想と情熱がもたらした"痛い現実" 青春の蹉跌『マイ・バック・ページ』 [第120回]胸に響く金言"プロとは手を抜くこと" 職人秘話『アトムの足音が聞こえる』 [第119回]危険な出会い、井口昇ミーツ仲村みう 悪夢の遊園地『富江 アンリミテッド』 [第118回]ナタリー・ポートマン"第1章"の終幕 虚実が攻め合う『ブラック・スワン』 [第117回]"セカイ"を旅立った少女の地底探検記 新海誠監督の新作『星を追う子ども』 [第116回] 美少女たちの輝きが脳裏から離れない。青春ムービー『魔法少女を忘れない』 [第115回] 恋愛が与える"陶酔"とリアルな"痛み"サブカル活劇『スコット・ピルグリム』 [第114回]妄想、空想、そして現実からの大脱走 美少女革命『エンジェル ウォーズ』 [第113回]"3.11"後の新しい映画モデルとなるか『劇場版 神聖かまってちゃん』の挑戦 [第112回]マスコミが讃えた"楽園"のその後、ひとりの少女の成長記録『愛しきソナ』 [第111回]閉鎖的な"村社会"をブチ破ったれ! 韓流サバイバル劇『ビー・デビル』 [第110回]"粋"を愛したフランスの伯父さん J・タチ主演『イリュージョニスト』 [第109回]自分にとって家族は敵か、味方か? オスカー2冠受賞『ザ・ファイター』 [第108回]コーエン兄弟『トゥルー・グリット』40年で変化した"米国のヒーロー像" [第107回]ジョニー・デップが愛した"極道記者" 『GONZO』奇人がスターだった時代 [第106回] 巨匠イーストウッド監督の異色作! "あの世"はあるか?『ヒア アフター』 [第105回] キレ味、喉ごしが違うアクション! 黒帯美少女の"涙拳"が炸裂『KG』 [第104回] 高齢化するニートはどこに行くのか? "戸塚校長"のその後『平成ジレンマ』 [第103回]堀北真希&高良健吾主演作『白夜行』闇に生きる"影男"の密やかなる喜び [第102回]園子温の劇薬ムービー『冷たい熱帯魚』"救いのない結末"という名の救い [第101回] NHKが放映しない"裏プロジェクトX" AV界のカリスマ監督『YOYOCHU』 [第100回]エロスとタブーを交配した"至高の美女" 禁断のサイエンスホラー『スプライス』 [第99回]2010年に活躍した女優を勝手に表彰! 満島ひかりに"面倒くさい女"大賞を [第98回]大人だって"ドラえもん"にいて欲しい 残念男の逆転劇『エリックを探して』 [第97回]平凡な高校生デイヴは2度変身する!原点回帰のヒーロー『キック・アス』 [第96回]村上春樹の超絶ベストセラーの映画化『ノルウェイの森』はどこにある? [第95回]実在した"奇妙な高額バイト"の顛末 心理サスペンス『エクスペリメント』 [第94回]"アル中"カメラマンの泣き笑い人生『酔いがさめたら、うちに帰ろう。』 [第93回]朝ドラと異なる映画『ゲゲゲの女房』ゴールなき"貧乏耐久"2人3脚走 [第92回]バラエティーでの実績は通用するか? テリー伊藤の初監督作『10億円稼ぐ』 [第91回] 不謹慎なる社会派エンタテイメント『裁判長!ここは懲役4年でどうすか』 [第90回]"世界のナベアツ"大阪府知事に就任! 政治コメディ『さらば愛しの大統領』 [第89回]自分の恋愛もプロデュースする女優、ドリュー・バリモア主演『遠距離恋愛』 [第88回]スタローンが立ち上げた"筋肉共和国"男たちの祭典『エクスペンダブルズ』 [第87回]元"おはガール"安藤聖の再起動ドラマ 就職氷河期を生きる『バカがウラヤマシイ』 [第86回]マイノリティーは"理想郷"を目指す。筒井文学の金字塔『七瀬ふたたび』 [第85回]清純派・佐藤寛子が美しく"変態"! 官能サスペンス『ヌードの夜──』 [第84回]死を意識して、ギラギラ輝く男たち! 三池節、大バクハツ『十三人の刺客』 [第83回] 女を食い物にする男どもは全員処刑! モダン社会の闇を暴く『ミレニアム』 [第82回] "企画AV女優"たちの青春残酷物語 性なる鎮魂劇『名前のない女たち』 [第81回]猫を見れば、人間社会が見えてくる! 世界の人気猫大集合『ネコを探して』 [第80回]原恵一監督の新作は辛口ファンタジー 退屈な"日常生活"を彩る『カラフル』 [第79回]米軍に実在した"超能力部隊"の真実!? ムー民、必見『ヤギと男と男と壁と』 [第78回]戦場から帰還した夫は"芋虫男"だった! ヤクザ監督の反戦映画『キャタピラー』 [第77回] 白ユリの花開くガールズの妖しい世界 H系ホラー『ジェニファーズ・ボディ』 [第76回] 爽やか系青春ゾンビ映画にホロリ......夏休みは『ゾンビランド』に集結せよ [第75回] "生きる"とは"見苦しい"ということ 藤沢周平の時代活劇『必死剣 鳥刺し』 [第74回]初恋の美少女は200歳の吸血鬼だった! 北欧産のホラー映画『ぼくのエリ』 [第73回] "三億円事件"の真相を解き明かす! 桜タブーに挑んだ『ロストクライム』 [第72回/特別編] 上映反対で揺れる問題作『ザ・コーヴ』"渦中の人"リック・オバリー氏の主張 [第71回] 女子にモテモテになる方法、教えます。軟派少年の実話物語『ソフトボーイ』 [第70回] 下町育ちの"北野少年"が見た現代社会 人間同士の食物連鎖『アウトレイジ』 [第69回] "リアルと虚構の狭間"を生きる男、アントニオ猪木初主演作『アカシア』 [第68回] ヒーローも神もいない現代社会の惨劇 井筒監督の問題作『ヒーローショー』 [第67回] アイドルが地獄で微笑む『戦闘少女』ギャグ×血しぶき×殺陣の特盛り丼! [第66回]アナーキーな"社歌"で生産性アップ! 満島ひかり大進撃『川の底からこんにちは』 [第65回]超ヘビー級なシリアス劇『プレシャス』"家族"という名の地獄から脱出せよ [第64回]乱れ咲く"悪の華"ゼブラクイーン! 仲里依紗が過激変身『ゼブラーマン2』 [第63回] オタク王が見出した"夢と現実"の接点 ティム・バートン監督作『アリス──』 [第62回] バッドテイストな感動作『第9地区』 アナタはエビ人間とお友達になれるか? [第61回]スコセッシ監督の犯罪アトラクション『シャッターアイランド』へようこそ! [第60回]宮崎あおいの"映画代表作"が誕生! 毒を呑んでも生き続けよ『ソラニン』 [第59回]"おっぱいアート"は世界を救えるか? 母乳戦士の記録『桃色のジャンヌ・ダルク』 [第58回]現代に甦った"梶原一騎ワールド"韓流ステゴロ映画『息もできない』 [第57回]命知らずの変態レポーター、中東へ! 史上最大のどっきり?『ブルーノ』 [第56回]仲里依紗がアニメから実写へと跳躍! 母娘2代の時空旅行『時をかける少女』 [第55回]ビグロー監督はキャメロンより硬派! 人間爆弾の恐怖『ハート・ロッカー』 [第54回] "空気を読む"若者の悲劇『パレード』楽しいルームシェア生活の行き先は? [第53回]社会の"生け贄"に選ばれた男の逃亡劇 堺雅人主演『ゴールデンスランバー』 [第52回]『男はつらいよ』の別エンディング? "寅さん"の最期を描く『おとうと』 [第51回]ひとり相撲なら無敵のチャンピオン! 童貞暴走劇『ボーイズ・オン・ザ・ラン』 [第50回]ヒース・レジャーが最後に見た夢の世界 理想と欲望が渦巻く『Dr.パルナサスの鏡』 [第49回]トニー・ジャーは本気なんジャー! CGなしの狂乱劇再び『マッハ!弐』 [第48回]全米"オシャレ番長"ズーイー、見参! 草食系に捧ぐ『(500日)のサマー』 [第47回]市川崑監督&水谷豊"幻の名作"『幸福』28年の歳月を経て、初のパッケージ化 [第46回]押井守監督、大いなる方向転換か? 黒木メイサ主演『アサルトガールズ』 [第45回]ドラッグ漬けの芸能関係者必見!"神の子"の復活を追う『マラドーナ』 [第44回] 暴走する"システム"が止まらない! マイケル・ムーア監督『キャピタリズム』 [第43回]"人は二度死ぬ"という独自の死生観『ガマの油』役所広司の監督ぶりは? [第42回]誰もが共感、あるあるコメディー! 2ちゃんねる発『ブラック会社』 [第41回]タラとブラピが組むと、こーなった!! 戦争奇談『イングロリアス・バスターズ』 [第40回]"涅槃の境地"のラストシーンに唖然! 引退を賭けた角川春樹監督『笑う警官』 [第39回]伝説の男・松田優作は今も生きている 20回忌ドキュメント『SOUL RED』 [第38回]海より深い"ドメスティック・ラブ"ポン・ジュノ監督『母なる証明』 [第37回]チャン・ツィイーが放つフェロモン爆撃 悪女注意報発令せり!『ホースメン』 [第36回]『ソウ』の監督が放つ激痛バイオレンス やりすぎベーコン!『狼の死刑宣告』 [第35回]"負け組人生"から抜け出したい!! 藤原竜也主演『カイジ 人生逆転ゲーム』 [第34回]2兆円ペット産業の"開かずの間"に迫る ドキュメンタリー『犬と猫と人間と』 [第33回]"女神降臨"ペ・ドゥナの裸体が神々しい 空っぽな心に響く都市の寓話『空気人形』 [第32回]電気仕掛けのパンティをはくヒロイン R15コメディ『男と女の不都合な真実』 [第31回]萩原健一、松方弘樹の助演陣が過剰すぎ! 小栗旬主演の時代活劇『TAJOMARU』 [第30回]松本人志監督・主演第2作『しんぼる』 閉塞状況の中で踊り続ける男の悲喜劇 [第29回]シビアな現実を商品化してしまう才女、西原理恵子の自叙伝『女の子ものがたり』 [第28回]"おねマス"のマッコイ斉藤プレゼンツ 不謹慎さが爆笑を呼ぶ『上島ジェーン』 [第27回]究極料理を超えた"極地料理"に舌鼓! 納涼&グルメ映画『南極料理人』 [第26回]ハチは"失われた少年時代"のアイコン  ハリウッド版『HACHI』に涙腺崩壊! [第25回]白熱! 女同士のゴツゴツエゴバトル 金子修介監督の歌曲劇『プライド』 [第24回]悪意と善意が反転する"仮想空間"細田守監督『サマーウォーズ』 [第23回]沖縄に"精霊が暮らす楽園"があった! 中江裕司監督『真夏の夜の夢』 [第22回]"最強のライブバンド"の底力発揮! ストーンズ『シャイン・ア・ライト』 [第21回]身長15mの"巨大娘"に抱かれたい! 3Dアニメ『モンスターvsエイリアン』 [第20回]ウディ・アレンのヨハンソンいじりが冴え渡る!『それでも恋するバルセロナ』 [第19回]ケイト姐さんが"DTハンター"に! オスカー受賞の官能作『愛を読むひと』 [第18回]1万枚の段ボールで建てた"夢の砦"男のロマンここにあり『築城せよ!』 [第17回]地獄から甦った男のセミドキュメント ミッキー・ローク『レスラー』 [第16回]人生がちょっぴり楽しくなる特効薬 三木聡"脱力"劇場『インスタント沼』 [第15回]"裁判員制度"が始まる今こそ注目 死刑執行を克明に再現した『休暇』 [第14回]生傷美少女の危険な足技に痺れたい! タイ発『チョコレート・ファイター』 [第13回]風俗嬢を狙う快楽殺人鬼の恐怖! 極限の韓流映画『チェイサー』 [第12回]お姫様のハートを盗んだ男の悲哀 紀里谷監督の歴史奇談『GOEMON』 [第11回]美人女優は"下ネタ"でこそ輝く! ファレリー兄弟『ライラにお手あげ』 [第10回]ジャッキー・チェンの"暗黒面"? 中国で上映禁止『新宿インシデント』 [第9回]胸の谷間に"桃源郷"を見た! 綾瀬はるか『おっぱいバレー』 [第8回]"都市伝説"は映画と結びつく 白石晃士監督『オカルト』『テケテケ』 [第7回]少女たちの壮絶サバイバル!楳図かずおワールド『赤んぼ少女』 [第6回]派遣の"叫び"がこだまする現代版蟹工船『遭難フリーター』 [第5回]三池崇史監督『ヤッターマン』で深田恭子が"倒錯美"の世界へ [第4回]フランス、中国、日本......世界各国のタブーを暴いた劇映画続々 [第3回]水野晴郎の遺作『ギララの逆襲』岡山弁で語った最後の台詞は...... [第2回]『チェンジリング』そしてイーストウッドは"映画の神様"となった [第1回]堤幸彦版『20世紀少年』に漂うフェイクならではの哀愁と美学

竹ヤリで世界進出"スシタイフーン"『エイリアンVSニンジャ』ほか逆上陸

sushi01.jpg
『AVN/エイリアンVSニンジャ』タイトルのまんま、凶悪エイリアンと忍者が激突。
米国人が好きそうなストレートなアクション時代劇だ。
(C)2010 SUSHI TYPHOON/NIKKATSU
 竹ヤリで北米大陸に攻め込んでやれ! 21世紀の現代に、そんなムチャなプロジェクトが発動した。それが日活の海外向けレーベル"SUSHI TYPHOON"だ。1本あたり約5,000万円という低予算ながら、「自分の撮りたい作品を自由に撮る」という監督の情熱と過酷な撮影現場を乗り切ったスタッフ&キャストのド根性の化合物でどこまで海外で通用するのかやってやろうじゃないのという無鉄砲な試みである。しかし、バットは振ってみなくちゃ分からない。『ドカベン』の男・岩鬼の初打席初球ホームランばりに、第1弾からガツンと手応えがあった。ニンジャ映画を得意とする千葉誠治監督とアクション監督の第一人者・下村勇二がタッグを組んだ『AVN/エイリアンVSニンジャ』が早々にハリウッドリメイクが決まったのだ。続いて作られた特殊造形のスペシャリスト・西村喜廣監督による壮大なるゾンビ映画『ヘルドライバー』、石川賢の原作コミックを『VERSUS』(00)の坂口拓主演で実写化した『極道兵器』、山口雄大監督のカルトなデビュー作『地獄甲子園』(02)をさらに過激に進化させた『デッドボール』の3作品も現在、世界各地のファンタスティック系映画祭で絶賛上映中とのこと。そして、この4作品が"SUSHI TYPHOONまつり"と銘打って今夏、日本で一挙逆上陸公開されることになった。  この無謀なるレーベル"SUSHI TYPHOON"の発案者は、日活の千葉善紀プロデューサー。ギャガ在籍時には三池崇史監督にヤクザ映画の怪作『極道戦国志 不動』(96)を撮らせ、日活でも三池監督と組んで実写版『ヤッターマン』(08)を作った要注意人物。園子温監督の大ヒット作『冷たい熱帯魚』は、海外では"SUSHI TYPHOON"レーベル扱いとなっている。そして"SUSHI TYPHOON"を立ち上げるきっかけとなった井口昇監督の『片腕マシンガール』(07)、西村喜廣監督のデビュー作『東京残酷警察』(08)のプロデューサーでもある。見事なほどに、どれもイッちゃってる作品ばかりですよ。ゾンビの足が自然とショッピングモールに向かうように、いつの間にか自分の足も怪しげな作品ばかり作っている千葉プロデューサーのもとに向かっているのだった。
sushi02.jpg
『ヘルドライバー』
モデル出身の原裕美子が日本刀型チェーン
ソーでゾンビ軍団をぶった斬る。"ゾンビ
カー""ゾンビジェット機"は必見もの。
(C)2010 SUSHI TYPHOON/ NIKKATSU
 米国資本によって製作され、井口昇監督の異能ぶりがノーリミットで発揮された『片腕マシンガール』。日本でも逆輸入公開され話題となったが、北米市場では何とDVD10万枚をセールスする大ヒットを記録したそうだ。 千葉 「10万枚以上売れたんじゃないですか。でも残念なことに権利はすべて出資した米国のメディアブラスターズ社にあったので、日活側は大ヒットの恩恵を被ることができなかったんです(苦笑)。そこで日活の新レーベルとして"SUSHI TYPHOON"を立ち上げたわけです。でも、『片腕マシンガール』のように自由に作らせてもらえるというのは、ボクらにとってすごく有り難いことでもあったんです。何で『片腕マシンガール』があんなに面白かったかというと、"米国がお金を出してくれるから自由に作っていいんだ"とボクが開き直れたことが大きかった。日本から少しでもお金が入っていたら、もっと有名な女優を出そうとか、血しぶきの量は抑えた方がいいかなとか考えてしまう。映倫のことも意識します。プロデューサーとして、どうしても安全なほうに寄ってしまう。日本で売るにはどうするか考えるわけです。まぁ、商売ですから当然そうですよね(笑)。でもね、今の日本の映画製作は言ってみれば妥協の産物なんですよ。妥協して、妥協して......。本当にやりたいことがあっても、いろんな人が関わって、キャスティングが決まっていくうちにどんどんねじ曲がって、違った方向になってしまう。その点、『片腕マシンガール』はお金を出してくれたメディアブラスターズ社とボクとで直接やりとりでき、ボクから井口監督に話を振ったら、翌日にはシノプスが送られてきた。当時の井口監督は携帯メールでシノプスを書いていました(笑)。そのスピード感がよかった。主演女優もオーディションのその場で決めちゃいましたしね」
sushi03.jpg
『極道兵器』
『魁!!男塾』(08)で剣桃太郎を演じたアクシ
ョン俳優・坂口拓の監督&主演作。ぜひアイ
アンマンと戦ってください。(C)2010
KEN ISHIKAWA/Dynamic Planning-YAKUZA
WEAPON Film Partners
 『片腕マシンガール』『東京残酷警察』の製作費は各4,000万円だったそうだが、今回の"SUSHI TYPHOON"4作品の製作費はそれぞれ5,000万円とちょっぴり上乗せ。とはいえ、この規模の予算で北米マーケットを目指すとは竹ヤリで攻め込むようなものではないか? 千葉 「ハハハ、確かに竹ヤリで討ち入るようなものです(笑)。ハリウッドなんて製作費100億円なんて作品がザラですからね。まぁ、西村監督率いる西村映造の特殊造形と鹿角剛司さんのVFXが頼りです。でも、だから面白いと思うんです。ハリウッドの真似を5億~10億円の予算でやっても敵いません。いかに向こうのヤツらが見たことのないものを見せられるかということ。直球では勝てないから、変化球で勝負するしかない。その点、井口監督や西村監督は誰も見たことのないような魔球を投げますから(笑)。日本ならではのオリジナル性で勝負しなくちゃ。でもね『AVN/エイリアンVSニンジャ』のリメイクは正直、ボクらが驚いた(笑)。まぁ、リメイクといっても向こうはコンセプトが欲しいだけ。アイデアと映画のエッセンス3~4つしか要らないわけですよ。こちらから内容に関して口を出すつもりはありません。どんなハリウッドリメイクになるのか楽しみですし、"SUSHI TYPOON"に注目してもらえるいいタイミングで話が来たなと喜んでいます
sushi04.jpg
『デッドボール』
こちらも坂口拓主演作。清純派女優・星野真里
がなぜか生粋のメガネ少年役で出演。意外とハ
マってます。(C)2010 SUSHI TYPHOON/
NIKKATSU
 『片腕マシンガール』のヒット後、セーラー服の美少女によるサバイバルアクションというパチモノ作品が続出したが、"SUSHI TYPHOON"は作品のコンセプトを海外に売って稼ごうと狙っているわけではないようだ。 千葉 「計算ずくで動いてるわけじゃないんです(苦笑)。でも、今の日本映画界には井口監督や西村監督をはじめ、面白い映画を撮れる人材がいるわけですよ。といっても、彼らは日本映画界ではメインストリームにはなれない。それはボクにも理解できる(笑)。なら、彼らに面白い作品をどんどん作ってもらって、海外へ売ることでビジネスになるのなら、ボクは彼らと一緒に仕事がしたい。また"SUSHI TYPHOON"から、さらに若い監督たちが出てきてくれればいい。ボクがVシネマを作っていた頃は若い監督が出てきて、その中から三池崇史監督が飛び出してきた。そういう現場が今の日本映画にはないんです。若い映像作家に"SUSHI TYPHOON"の作品を観てもらって、"あっ、こんなバカなことをやってもいいんだ"と感じてもらえればいい。"テレビ局に頭を下げなくても映画は作れるんだ"と思ってほしいんです」  映画ファンがむせび泣くような言葉を口にする千葉プロデューサー。だが、米国のDVDマーケットは近年縮小が激しい。そんな中で"SUSHI TYPHOON"は1作品あたり5万本のDVDセールスを目標にしている。かなり高いハードルだが、そのへんの勝算はどうなのか? 千葉 「米国のDVDマーケットは、『片腕マシンガール』の頃と比べると二分の一程度になってしまっている。DVDを扱ってる店が次々と潰れてるんです。NYのタイムズスクエアにあったHMVも閉店しました。これはボクにも予想外。でも、DVDの代わりにダウンロードの伸びがすごいんです。ここにチャンスがあるんじゃないかと考えています。ゲームをやってる連中なら、『AVN/エイリアンVSニンジャ』は気になるだろうし、『パイレーツ・オブ・カリビアン』とかのタイトル群の中に『YAKUZA WEAPON』(極道兵器)ってタイトルがあれば、ちょっとダウンロードしてみようかという気になるはず。これからは分かりやすいコンセプトとタイトルであることは、より重要でしょう
sushi05.jpg
(C)2010 SUSHI TYPHOON/NIKKATSU
 世界各地にあるファンタスティック系映画祭をただ今、監督たちとドサ回り中の千葉プロデューサー。井口監督や西村監督がフンドシ姿で舞台挨拶するのに負けじと、千葉プロデューサーも忍者装束で登壇するなどサービス精神旺盛な方なのだ。 千葉 「日本では今は"ゆうばり国際ファンタスティック映画祭"しかないけれど、世界各地にファンタスティック映画祭は数え切れないほどあって、熱狂的に迎え入れられています。昨年のファンタアジア映画祭(モントリオール)でプレミア上映された『AVN/エイリアンVSニンジャ』なんて、会場の外までスタンディングオベーションの騒ぎが聞こえてきました。『ヘルドライバー』の西村監督は海外では"天才"と呼ばれています。ちなみに三池監督は"神"です(笑)。三池監督の参戦も決まっています。先日もカンヌ映画祭で赤じゅうたんを歩いた直後の三池監督と『"SUSHI TYPHOON"、どんなのにします?』なんて話をしました(笑)。三池監督はうれしいことに『オレはVシネで育ったから、Vシネをやりたいんだ』と言ってくれているんです。メジャーで活躍する今の三池監督がまったくリミッターなしで撮ったら、一体どんな作品が生まれるのか。楽しみじゃないですか(笑)」  "SUSHI TYPHOON"の魅力は、Vシネ全盛期にはまだ高価で手が出せなかったCGなどのデジタルツールとVシネ的な奇想さ&ガッツを組み合わせたもののようだ。異能のクリエイターたちの「撮りたいものを撮る」という初期衝動で、世界を舞台にどこまで突っ走ることができるのか? 7月23日(土)~8月19日(金)、銀座シネパトスでは監督やキャストたちの来場を含め、連日のイベントを企画している。10月にはエース・井口昇監督の新作『電人ザボーガー』の日本公開も控えている。"SUSHI TYPHOON"の行方に注目せよ! (文=長野辰次) 【SUSHI TYPHOONまつり】 『AVN/エイリアンVSニンジャ』 監督・脚本・編集/千葉誠治 アクション監督/下村勇二、園村健介 出演/三元雅芸、柏原収史、土平ドンペイ、肘井美佳、小越勇輝、樋浦勉 PG12 『ヘルドライバー』 監督・脚本・キャラクターデザイン・編集/西村喜廣 VFXスーパーバイザー/鹿角剛司 出演/原裕美子、しいなえいひ、柳憂怜、波岡一喜、岸建太朗、久住みず希、鳥肌実、ガナルカナルタカ R15+ 『極道兵器』 原作/石川賢 監督/坂口拓、山口雄大 特殊造型・特殊メイク/西村喜廣 出演/坂口拓、鶴見辰吾、黒川芽以、仁科貴、西明彦、山中アラタ、鷲巣あやの、ペ・ジョンミン、泉カイ、麿赤兒、村上淳 R15+ 『デッドボール』 監督・脚色/山口雄大 脚本/戸梶圭太 出演/坂口拓、星野真里、蜷川みほ、須賀貴匡、ペ・ジョンミン、播田美保、ミッキー・カーチス、山寺宏一、田山涼成 R15+ 4作品ともに7月23日(土)より銀座シネパトスほか全国順次ロードショー 配給/日活 ※銀座シネパトスでの公開期間中は初日舞台挨拶を含め、連日イベントを企画しているので公式HPもしくは公式ツイッターをチェックされたし! <http://www.sushi-typhoon.com/jp>
片腕マシンガール 暴れまくり。 amazon_associate_logo.jpg
●深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】INDEX [第126回]イーモウ監督、久々のアイドル映画 中華的妹萌え『サンザシの樹の下で』 [第125回]ナタリー・ポートマン vs. ヘビメタ野郎 人気女優の隠し球『メタルヘッド』 [第124回]黒澤明の名作『生きる』のラテン版! ヤモメ男が残した遺産『BIUTIFUL』 [第123回]北国で93年間営業を続ける"大黒座"と町の記録『小さな町の小さな映画館』 [第122回]新幹線がすれ違う瞬間、願いが叶う? 小学生の目線で描かれた『奇跡』 [第121回]理想と情熱がもたらした"痛い現実" 青春の蹉跌『マイ・バック・ページ』 [第120回]胸に響く金言"プロとは手を抜くこと" 職人秘話『アトムの足音が聞こえる』 [第119回]危険な出会い、井口昇ミーツ仲村みう 悪夢の遊園地『富江 アンリミテッド』 [第118回]ナタリー・ポートマン"第1章"の終幕 虚実が攻め合う『ブラック・スワン』 [第117回]"セカイ"を旅立った少女の地底探検記 新海誠監督の新作『星を追う子ども』 [第116回] 美少女たちの輝きが脳裏から離れない。青春ムービー『魔法少女を忘れない』 [第115回] 恋愛が与える"陶酔"とリアルな"痛み"サブカル活劇『スコット・ピルグリム』 [第114回]妄想、空想、そして現実からの大脱走 美少女革命『エンジェル ウォーズ』 [第113回]"3.11"後の新しい映画モデルとなるか『劇場版 神聖かまってちゃん』の挑戦 [第112回]マスコミが讃えた"楽園"のその後、ひとりの少女の成長記録『愛しきソナ』 [第111回]閉鎖的な"村社会"をブチ破ったれ! 韓流サバイバル劇『ビー・デビル』 [第110回]"粋"を愛したフランスの伯父さん J・タチ主演『イリュージョニスト』 [第109回]自分にとって家族は敵か、味方か? オスカー2冠受賞『ザ・ファイター』 [第108回]コーエン兄弟『トゥルー・グリット』40年で変化した"米国のヒーロー像" [第107回]ジョニー・デップが愛した"極道記者" 『GONZO』奇人がスターだった時代 [第106回] 巨匠イーストウッド監督の異色作! "あの世"はあるか?『ヒア アフター』 [第105回] キレ味、喉ごしが違うアクション! 黒帯美少女の"涙拳"が炸裂『KG』 [第104回] 高齢化するニートはどこに行くのか? "戸塚校長"のその後『平成ジレンマ』 [第103回]堀北真希&高良健吾主演作『白夜行』闇に生きる"影男"の密やかなる喜び [第102回]園子温の劇薬ムービー『冷たい熱帯魚』"救いのない結末"という名の救い [第101回] NHKが放映しない"裏プロジェクトX" AV界のカリスマ監督『YOYOCHU』 [第100回]エロスとタブーを交配した"至高の美女" 禁断のサイエンスホラー『スプライス』 [第99回]2010年に活躍した女優を勝手に表彰! 満島ひかりに"面倒くさい女"大賞を [第98回]大人だって"ドラえもん"にいて欲しい 残念男の逆転劇『エリックを探して』 [第97回]平凡な高校生デイヴは2度変身する!原点回帰のヒーロー『キック・アス』 [第96回]村上春樹の超絶ベストセラーの映画化『ノルウェイの森』はどこにある? [第95回]実在した"奇妙な高額バイト"の顛末 心理サスペンス『エクスペリメント』 [第94回]"アル中"カメラマンの泣き笑い人生『酔いがさめたら、うちに帰ろう。』 [第93回]朝ドラと異なる映画『ゲゲゲの女房』ゴールなき"貧乏耐久"2人3脚走 [第92回]バラエティーでの実績は通用するか? テリー伊藤の初監督作『10億円稼ぐ』 [第91回] 不謹慎なる社会派エンタテイメント『裁判長!ここは懲役4年でどうすか』 [第90回]"世界のナベアツ"大阪府知事に就任! 政治コメディ『さらば愛しの大統領』 [第89回]自分の恋愛もプロデュースする女優、ドリュー・バリモア主演『遠距離恋愛』 [第88回]スタローンが立ち上げた"筋肉共和国"男たちの祭典『エクスペンダブルズ』 [第87回]元"おはガール"安藤聖の再起動ドラマ 就職氷河期を生きる『バカがウラヤマシイ』 [第86回]マイノリティーは"理想郷"を目指す。筒井文学の金字塔『七瀬ふたたび』 [第85回]清純派・佐藤寛子が美しく"変態"! 官能サスペンス『ヌードの夜──』 [第84回]死を意識して、ギラギラ輝く男たち! 三池節、大バクハツ『十三人の刺客』 [第83回] 女を食い物にする男どもは全員処刑! モダン社会の闇を暴く『ミレニアム』 [第82回] "企画AV女優"たちの青春残酷物語 性なる鎮魂劇『名前のない女たち』 [第81回]猫を見れば、人間社会が見えてくる! 世界の人気猫大集合『ネコを探して』 [第80回]原恵一監督の新作は辛口ファンタジー 退屈な"日常生活"を彩る『カラフル』 [第79回]米軍に実在した"超能力部隊"の真実!? ムー民、必見『ヤギと男と男と壁と』 [第78回]戦場から帰還した夫は"芋虫男"だった! ヤクザ監督の反戦映画『キャタピラー』 [第77回] 白ユリの花開くガールズの妖しい世界 H系ホラー『ジェニファーズ・ボディ』 [第76回] 爽やか系青春ゾンビ映画にホロリ......夏休みは『ゾンビランド』に集結せよ [第75回] "生きる"とは"見苦しい"ということ 藤沢周平の時代活劇『必死剣 鳥刺し』 [第74回]初恋の美少女は200歳の吸血鬼だった! 北欧産のホラー映画『ぼくのエリ』 [第73回] "三億円事件"の真相を解き明かす! 桜タブーに挑んだ『ロストクライム』 [第72回/特別編] 上映反対で揺れる問題作『ザ・コーヴ』"渦中の人"リック・オバリー氏の主張 [第71回] 女子にモテモテになる方法、教えます。軟派少年の実話物語『ソフトボーイ』 [第70回] 下町育ちの"北野少年"が見た現代社会 人間同士の食物連鎖『アウトレイジ』 [第69回] "リアルと虚構の狭間"を生きる男、アントニオ猪木初主演作『アカシア』 [第68回] ヒーローも神もいない現代社会の惨劇 井筒監督の問題作『ヒーローショー』 [第67回] アイドルが地獄で微笑む『戦闘少女』ギャグ×血しぶき×殺陣の特盛り丼! [第66回]アナーキーな"社歌"で生産性アップ! 満島ひかり大進撃『川の底からこんにちは』 [第65回]超ヘビー級なシリアス劇『プレシャス』"家族"という名の地獄から脱出せよ [第64回]乱れ咲く"悪の華"ゼブラクイーン! 仲里依紗が過激変身『ゼブラーマン2』 [第63回] オタク王が見出した"夢と現実"の接点 ティム・バートン監督作『アリス──』 [第62回] バッドテイストな感動作『第9地区』 アナタはエビ人間とお友達になれるか? [第61回]スコセッシ監督の犯罪アトラクション『シャッターアイランド』へようこそ! [第60回]宮崎あおいの"映画代表作"が誕生! 毒を呑んでも生き続けよ『ソラニン』 [第59回]"おっぱいアート"は世界を救えるか? 母乳戦士の記録『桃色のジャンヌ・ダルク』 [第58回]現代に甦った"梶原一騎ワールド"韓流ステゴロ映画『息もできない』 [第57回]命知らずの変態レポーター、中東へ! 史上最大のどっきり?『ブルーノ』 [第56回]仲里依紗がアニメから実写へと跳躍! 母娘2代の時空旅行『時をかける少女』 [第55回]ビグロー監督はキャメロンより硬派! 人間爆弾の恐怖『ハート・ロッカー』 [第54回] "空気を読む"若者の悲劇『パレード』楽しいルームシェア生活の行き先は? [第53回]社会の"生け贄"に選ばれた男の逃亡劇 堺雅人主演『ゴールデンスランバー』 [第52回]『男はつらいよ』の別エンディング? "寅さん"の最期を描く『おとうと』 [第51回]ひとり相撲なら無敵のチャンピオン! 童貞暴走劇『ボーイズ・オン・ザ・ラン』 [第50回]ヒース・レジャーが最後に見た夢の世界 理想と欲望が渦巻く『Dr.パルナサスの鏡』 [第49回]トニー・ジャーは本気なんジャー! CGなしの狂乱劇再び『マッハ!弐』 [第48回]全米"オシャレ番長"ズーイー、見参! 草食系に捧ぐ『(500日)のサマー』 [第47回]市川崑監督&水谷豊"幻の名作"『幸福』28年の歳月を経て、初のパッケージ化 [第46回]押井守監督、大いなる方向転換か? 黒木メイサ主演『アサルトガールズ』 [第45回]ドラッグ漬けの芸能関係者必見!"神の子"の復活を追う『マラドーナ』 [第44回] 暴走する"システム"が止まらない! マイケル・ムーア監督『キャピタリズム』 [第43回]"人は二度死ぬ"という独自の死生観『ガマの油』役所広司の監督ぶりは? [第42回]誰もが共感、あるあるコメディー! 2ちゃんねる発『ブラック会社』 [第41回]タラとブラピが組むと、こーなった!! 戦争奇談『イングロリアス・バスターズ』 [第40回]"涅槃の境地"のラストシーンに唖然! 引退を賭けた角川春樹監督『笑う警官』 [第39回]伝説の男・松田優作は今も生きている 20回忌ドキュメント『SOUL RED』 [第38回]海より深い"ドメスティック・ラブ"ポン・ジュノ監督『母なる証明』 [第37回]チャン・ツィイーが放つフェロモン爆撃 悪女注意報発令せり!『ホースメン』 [第36回]『ソウ』の監督が放つ激痛バイオレンス やりすぎベーコン!『狼の死刑宣告』 [第35回]"負け組人生"から抜け出したい!! 藤原竜也主演『カイジ 人生逆転ゲーム』 [第34回]2兆円ペット産業の"開かずの間"に迫る ドキュメンタリー『犬と猫と人間と』 [第33回]"女神降臨"ペ・ドゥナの裸体が神々しい 空っぽな心に響く都市の寓話『空気人形』 [第32回]電気仕掛けのパンティをはくヒロイン R15コメディ『男と女の不都合な真実』 [第31回]萩原健一、松方弘樹の助演陣が過剰すぎ! 小栗旬主演の時代活劇『TAJOMARU』 [第30回]松本人志監督・主演第2作『しんぼる』 閉塞状況の中で踊り続ける男の悲喜劇 [第29回]シビアな現実を商品化してしまう才女、西原理恵子の自叙伝『女の子ものがたり』 [第28回]"おねマス"のマッコイ斉藤プレゼンツ 不謹慎さが爆笑を呼ぶ『上島ジェーン』 [第27回]究極料理を超えた"極地料理"に舌鼓! 納涼&グルメ映画『南極料理人』 [第26回]ハチは"失われた少年時代"のアイコン  ハリウッド版『HACHI』に涙腺崩壊! [第25回]白熱! 女同士のゴツゴツエゴバトル 金子修介監督の歌曲劇『プライド』 [第24回]悪意と善意が反転する"仮想空間"細田守監督『サマーウォーズ』 [第23回]沖縄に"精霊が暮らす楽園"があった! 中江裕司監督『真夏の夜の夢』 [第22回]"最強のライブバンド"の底力発揮! ストーンズ『シャイン・ア・ライト』 [第21回]身長15mの"巨大娘"に抱かれたい! 3Dアニメ『モンスターvsエイリアン』 [第20回]ウディ・アレンのヨハンソンいじりが冴え渡る!『それでも恋するバルセロナ』 [第19回]ケイト姐さんが"DTハンター"に! オスカー受賞の官能作『愛を読むひと』 [第18回]1万枚の段ボールで建てた"夢の砦"男のロマンここにあり『築城せよ!』 [第17回]地獄から甦った男のセミドキュメント ミッキー・ローク『レスラー』 [第16回]人生がちょっぴり楽しくなる特効薬 三木聡"脱力"劇場『インスタント沼』 [第15回]"裁判員制度"が始まる今こそ注目 死刑執行を克明に再現した『休暇』 [第14回]生傷美少女の危険な足技に痺れたい! タイ発『チョコレート・ファイター』 [第13回]風俗嬢を狙う快楽殺人鬼の恐怖! 極限の韓流映画『チェイサー』 [第12回]お姫様のハートを盗んだ男の悲哀 紀里谷監督の歴史奇談『GOEMON』 [第11回]美人女優は"下ネタ"でこそ輝く! ファレリー兄弟『ライラにお手あげ』 [第10回]ジャッキー・チェンの"暗黒面"? 中国で上映禁止『新宿インシデント』 [第9回]胸の谷間に"桃源郷"を見た! 綾瀬はるか『おっぱいバレー』 [第8回]"都市伝説"は映画と結びつく 白石晃士監督『オカルト』『テケテケ』 [第7回]少女たちの壮絶サバイバル!楳図かずおワールド『赤んぼ少女』 [第6回]派遣の"叫び"がこだまする現代版蟹工船『遭難フリーター』 [第5回]三池崇史監督『ヤッターマン』で深田恭子が"倒錯美"の世界へ [第4回]フランス、中国、日本......世界各国のタブーを暴いた劇映画続々 [第3回]水野晴郎の遺作『ギララの逆襲』岡山弁で語った最後の台詞は...... [第2回]『チェンジリング』そしてイーストウッドは"映画の神様"となった [第1回]堤幸彦版『20世紀少年』に漂うフェイクならではの哀愁と美学