総合格闘技復帰も金銭トラブル絶えず……“韓流大巨人”チェ・ホンマンの現在

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「美女と野獣(シングル)」(韓国盤 Import)
 チェ・ホンマンを覚えているだろうか? 韓国の伝統格闘技シルム(大相撲)で日本の横綱に匹敵する“天下壮士”まで上り詰め、その実績を引っ提げて2005年、当時日本で大人気だったK-1に参戦。身長216cmの長身から繰り出すパンチでボブ・サップやセーム・シュルトに勝利して “進化する大巨人”と称され、とぼけ顔でテクノダンスを踊ったりするその愛嬌あふれるキャラクターも受けて人気者に。08年には『特命係長 只野仁 最後の劇場版』で映画デビューし、10年にはドラマ『怪物くん』でフランケンを演じるなど、芸能界でも引っ張りダコだった。  ただ、09年10月に日本の総合格闘技イベント『DREAM.11』でミノワマンと対戦して敗れて以来リングを離れ、韓国で芸能活動に専念。日本ではすっかりその名を聞かなくなったが、本国では12年10月に大統領選挙に出馬したパク・クネ支持を表明してセヌリ党に入党するなどして話題を集めた。  そんなチェ・ホンマンが最近、詐欺容疑で告訴されていることが明るみになった。ソウルの広津警察署が5月20日に発表した情報によると、チェ・ホンマンは13年12月に香港から知人の携帯電話に「急用で金が必要だ」とショートメールを送り、1億ウォン(約1,100万円)相当のお金を香港ドルで借りながらそれを返済していないという。14年10月にはほかの知人に同じような手口で2,500万ウォン(約275万円)を借り、それもまだ未返済。計1億2,500万ウォン(約1,375万円)相当の返済義務を怠っているとして、告訴されたのだ。  チェ・ホンマンは金を借りたことは認めているものの、「経済状況が悪くて返せていないだけ。詐欺を働こうとしたわけではなく、今後返していく計画だ」と弁明しているそうだが、メディアやファンの目は冷ややかだ。  というのも、チェ・ホンマンには近年、この手の金銭トラブルが絶えないのである。  例えば08年12月には、韓国で彼の歌手活動をマネジメントしていた芸能事務所から「2億ウォン(約2,200万円)の専属契約金を払ったにもかかわらず、10回予定していたテレビ出演を4回しかせず、ナイトクラブでの営業活動も履行しなかった」として1億ウォンの損害賠償を請求されているし、14年9月には韓国の総合格闘技イベント『レボリューション』でリング復帰する予定だったが、「前払いを約束したはずのファイトマネーが支払われていない」として試合当日にリングに上がることを拒否。さらに翌年10月には、自宅インテリアの撤去費用1,220万ウォン(約135万円)を支払わなかったとして民事訴訟を起こされて敗訴もしている。和解はしているが、11年には自身が経営する飲食店で客だった女子大生に暴行を加えたとして書類送検されたこともあった。このように、何かとトラブルが絶えないのだ。  それだけに前述の借金トラブルが明らかになっても、「またか」と呆れた反応が多く、むしろ一部では、さらなるトラブルが起こるのではないかと懸念する声もある。その懸念材料となっているのが、4月27日に発表されたチェ・ホンマンの格闘家復帰だ。  チェ・ホンマンは韓国の総合格闘技団体『Road FC』と契約し、5年ぶりにリングに戻ってくることを表明している。しかも、その復帰戦は同団体初の海外進出となる日本大会。7月25日に有明コロシアムで予定されているが、果たしてチェ・ホンマンは再びリングに立つのか? 金銭トラブルで、日本でもドタキャンとならねばいいのだが……。

“ムキムキ”ダウンタウン・松本人志に、格闘技関係者が熱視線「お笑い芸人で格闘技団体を……」

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松本人志Twitterより
 ダウンタウンの松本人志が、12日放送の『ワイドナショー』(フジテレビ系)の中で、日本の格闘技界に言及した。  「ボクシング界世紀の一戦」として全世界注目のマニー・パッキャオVSフロイド・メイウェザー戦のファイトマネーが総額300億円以上になると聞くと、松本は「スゴい2人ですが、ここまで上がるとは思わなかったですね」と仰天。続けて「あるところでは、こんなに(ファイトマネーが)上がっていくワケじゃないですか。でも今、日本の格闘技がどんどん衰退していってね」と指摘した。  先日、某格闘技を観戦したという松本は観客の少なさを嘆き、勝者の景品がスポーツタオル、ドリンク、グローブ、その中から1点を選ぶという形式に「そこは3つともあげてよ。勝ったんなら。今それぐらいね……」と悲嘆していた。  松本といえば、芸能界きっての“筋肉バカ”で有名。12年前から自己流で鍛え始め、ついにはベンチプレス100キロオーバーを達成したとされる。15日放送の『水曜日のダウンタウン』(TBS系)では、メキシコから来た謎のマスクマン“エル・チキンライス”に扮し、プロレスデビューも果たしているという。 「松本さんが体を鍛える理由は『家に誰かが忍び込んできた時、家族を守れるのは自分しかいない』というもの。裏を返せば、一触即発の事態になれば闘いもいとわないということ。格闘技界は今、深刻な人材不足で悩んでいる。当然、松本さんには熱視線が送られていますよ」とは格闘ライター。  松本がかわいがる後輩の今田耕司も10年以上の格闘技歴があり、品川庄司の品川祐もシュートボクシング経験者。また、ドランクドラゴンの鈴木拓は柔術を習い続けている。放送作家の1人は「現在、お笑い芸人で“格闘技団体”を結成する計画が水面下で進行中です。そうなれば、当然リーダーは松本さんでしょう」と話す。  業界に、新たな風を巻き起こすことができるか――。

“シブヤコール”がマレーシアを揺らした!! 世界メジャーが「格闘家・渋谷莉孔」を発見した夜

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(c)2015 ONE Championship
 異国の地で「シブヤコール」が巻き起こった――。3月13日、マレーシアの首都クアラルンプールで開催されたアジア最大の総合格闘技イベント『ONE Championship(旧称ONE FC)』に日本の地下格闘技出身の渋谷莉孔(29)が初参戦し、フライ級王者アドリアーノ・モラエス(26=ブラジル)とタイトルマッチを行った。「渋谷に勝ち目なし」と予想された試合だが、蓋を開けてみれば、フルラウンド(5分5ラウンド)までもつれる接戦に。結果は判定で敗れたが、アグレッシブかつトリッキーな戦いで王者を追い詰めた渋谷には、マレーシアの観衆も大興奮。試合後には早くも「出待ち・追っかけ」をする現地ファンが現れるなど、渋谷は一夜にしてONEのスターダムにのし上がった。  当日の模様をレポートする前に、渋谷莉孔の経歴を簡潔に振り返っておきたい。  街のチンピラとしてケンカに明け暮れていた渋谷は2008年、不良の格闘技イベント「THE OUTSIDER(アウトサイダー)」で格闘家デビュー。対戦相手を罵倒しながら血祭りに上げる猟奇的ファイトで話題を呼ぶ。その後、問題を起こしアウトサイダーを追放されてから、地下格闘技の世界で連戦連勝を重ねてきた渋谷が、地下から地上へ顔を覗かせたのは、昨年9月のことだった。「TTF CHALLENGE02」でメジャープロ団体・パンクラスのトップランカーを撃破。その衝撃冷めやらぬうちに、アジア最大の格闘技イベント『ONE Championship』からスカウトされ、このほど初参戦で世界タイトルマッチに挑むことになったのである。  まさに飛び級と呼ぶにふさわしい大出世だが、見ている側からすれば期待と不安が入り交じる。今回の対戦相手であるアドリアーノ・モラエスは、修斗南米王者からONEの世界フライ級王者となった格闘エリートで、MMA(総合格闘技)12勝1敗という戦績を誇る強豪中の強豪である。  渋谷贔屓であるはずの日本の格闘ファンからも「今回ばかりは相手が強過ぎる」「渋谷に勝ち目はない」との声が多く聞かれ、渋谷自身も戦前のインタビュー(記事参照)で、「俺は噛ませ犬」と自嘲するほどキャリアの差は歴然。ワンサイドゲームになる危険性を大いにはらんだマッチメイクだったのだ。    渋谷にオファーがあったのは今年の1月。それからわずか2カ月という急ピッチの準備期間を経て、決戦の3月13日を迎えた。
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 開場時刻の午後6時を過ぎると、クアラルンプールにある1万6,000人収容の「スタジアム・プトラ」には、マレー系、中華系、インド系のマレーシア人や、白人の観客らが続々と吸い込まれて行く。「マレーシアではMMAの人気が急上昇中。飲食店のテレビなどでも普通に放映されており、家族や友人と共に観戦する人も多い」(マレーシア人の観客の一人)とのことだ。  会場入りする人々を眺めていたら、今回渋谷を抜擢した張本人であるONE Championshipのビクター・クイ代表が通りがかったので、インタビューしてみた。
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ビクター・クイ代表
――あなたはなぜ今回、渋谷莉孔を抜擢したのか? クイ代表 今回は世界タイトルマッチということで、われわれはアジア中を回って、ファンが最も喜んでくれそうな挑戦者を探したところ、渋谷が一番ふさわしいという結論に至ったんだ。渋谷は本当にダイナミックでエキサイティングなファイター。ここマレーシアの観客を熱狂させることができるエンターテイナーであると私は確信したんだ。 ――今日のタイトルマッチは、どんな戦いになると予想するか? クイ代表 私は今夜の試合が、渋谷の人生にとって最も大きな戦いになると思っている。タイトルマッチだし、彼にとっては海外での初戦だ。これまで渋谷は四角いリングで、短いラウンドの戦いが中心だったと思うが、今回は円形のケージ(金網)リングだし、5分5ラウンドという長丁場。そういった形態やルールの違いがある上、彼には準備期間がわずかしかなかった点も大変だとは思う。だが、彼には失うものがないし、もし勝てばすべてを手に入れることができる。渋谷にとって今日の試合は人生最大のチャンスになるだろう。  クイ代表の期待の大きさを物語るように、会場内のロビーにはご覧のような巨大な看板が飾られるなど、初参戦なのに渋谷は破格の扱い。
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渋谷とモラエスが向き合う大看板
 そのロビーの一角に人垣ができていたので何事かと覗き込むと、「ミットめがけて10秒間に何回キックをできるか」というチャレンジコーナーが設けられていた。通りがかった人たちが入れ替わり立ち替わりこれに挑み、ギャラリーから拍手や歓声が上がる。マレーシアの人々はおしなべて、シラフでも陽気でフランクだ。果たして彼らは、遠い日本から来た渋谷のことを歓迎してくれるのだろうか……?  まずは大会開始直後の、全選手紹介の場面でその様子を探ってみる。ド派出なライトアップや打ち上げ花火などの演出の中、ステージの両脇から出場選手が続々と登場。「リクー、シブヤッ!」というアナウンスに合わせて渋谷も颯爽と現れるが、客席はまったくの無反応。「誰だコイツ?」といった感じだろうか。  その後、客席が八分方埋まった中、前座の試合が次から次へと消化されていく。地元マレーシアの選手が勝つたびに大歓声が上がり、客席が徐々に温まってきた。  そんな中、場内の大型ビジョンに本日のメインイベンターである王者モラエスの紹介VTRが流れると、大きな拍手と声援が。マレーシアの観衆にも大いに知られた存在なのだろう。  続いて、その対戦相手である渋谷の紹介VTRが流れる。「ジャパニーズ・バッドボーイ」というキャッチフレーズの後、渋谷が日本語でインタビューに応じている様子が字幕付きで流れ、ユニークなトレーニングに取り組む光景なども大画面に映し出されるが、客席はまたしても無反応。「初めて見るので好きも嫌いもなく、応援もブーイングもしようがない」といったところだろうが、それにしても寂し過ぎる反応だ。  その後もテンポよく試合が消化され、いよいよ本日のメインイベント、渋谷の出番となった。入場曲とともに、けたたましい英語の煽り文句が会場にこだまする。日本にいるときは、入場時に花道で雄叫びを上げたり、入場曲が流れてもなかなか入場しなかったりという“ツカミ”を得意とした渋谷だが、今回は、叫ぶでも焦らすでもなく、仏頂面で淡々と花道を進むのみ。
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(c)2015 ONE Championship
 入場時も客席の反応は薄かったが、ケージに入った後、名前がコールされ、渋谷がテレビカメラに向かってグローブを突き出すと、ここでようやくブーイングが起きた。一方のモラエスには大歓声。この会場が渋谷にとって、完全にアウェイであることを改めて思い知らされる。
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(c)2015 ONE Championship
 そうした客席の反応以上に心配になったのが、渋谷の表情である。大型ビジョンで見る限り、先月見たときとは、まるで別人だったのだ。2カ月で約20キロの減量をしたため、精悍になったというより、やつれた印象で、目元も眠そう。その顔でけだるそうにケージ内をウロつきながら、口角をヒクヒク痙攣させて、マウスピースを露出する仕草を連発。飢えた野良犬のような不気味さこそ漂うが、「急激な減量の反動でナーバスになっている」との前日情報もあったため、コンディションが心配になってくる。  しかし、それはまったくの杞憂に終わった。

【1ラウンド】


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(c)2015 ONE Championship
 ゴングが鳴ると、渋谷は背筋を伸ばした独特のサウスポースタイルでジリジリと間合いを詰め、まずは思い切りのいい左フックを打ち込む。その後も渋谷が前進を続けて、打撃の応酬に。モラエスの連打を何発か食らうが、渋谷は両ガードを下げたまま前進。モラエスはバックステップで距離を置く。  しばらくお見合い状態が続くが、渋谷は左腕をクルクル回す仕草を見せ、体を左右に揺さぶってから、モラエスのヒザに左ロー。負けじとモラエス、右ハイを渋谷の顔面に蹴り込み、続けざまに下半身に組み付いてテイクダウン。渋谷はモラエスの首を抱え必死にディフェンスするも、すぐさまバックを取られ、首にモラエスの腕が絡み付く。「あぁ、これで終わりか」というニュアンスの歓声と溜め息が交錯するが、渋谷はケージ際で踏ん張り、ブレイクが入る。
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(c)2015 ONE Championship

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(c)2015 ONE Championship
 再開後モラエスがフライングニー。効いていないとばかりに両腕を回しながら渋谷が再び距離を詰めると、客席から笑いが起きる。その後、渋谷がモラエスめがけて特攻するも、逆にバックを取られ、反転して逃れようとしたところマウントポジションを取られかけるが、これもブリッジで抜け出し、スタンドポジションに。客席から拍手が起きる。  残り1分。渋谷がワンツー、ミドルを繰り出すも空振り。逆にモラエスのミドルを食らう。それでもノーガードでズイズイ前進する渋谷に対し、客席から「なんだコイツは」といった感じの笑いとどよめきが起きる。  どうやら渋谷、コンディションはよさそうである。

【2ラウンド】

 開始早々ガード下げ気味で、ゼンマイ仕掛けのオモチャのようにジリジリと間合いを詰める渋谷に対し、笑いが起きる。常時後退しながら距離を取るモラエスが、タイミングを見計らって右ストレート。これがクリーンヒットするも、渋谷はなおもガードを下げたまま前進し、客席が大きくザワつく。  渋谷、モラエスのタックルを食らい、倒された上、バックを取られる。モラエスの腕が首に絡み付くも、踏ん張って立ち上がる渋谷。立ったまま打撃の応酬。手数は多い渋谷だが、なかなかクリーンヒットしない。
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(c)2015 ONE Championship
 大振りは駄目と悟ったか、渋谷はショートストレートを狙い澄ましたように放つも、モラエスはこれもスリッピングで避ける。モラエスが右ハイキックを放った瞬間、その背中に渋谷のミドルがヒットし、モラエス転倒。渋谷、モラエスの首を押さえて寝技に入りかけるが、モラエスはすぐに起き上がる。  立ったまま打撃の応酬。パンチが相打ち。モラエスは一瞬グラつくも、ワンツーをヒットさせながら前進。ケージ際に渋谷を追い込むが、渋谷はヒザ蹴りでこれを追い払い、スタンドで向き合う。  3分経過。モラエスの右ミドルがヒットするも、渋谷は髪をかき上げながらノーガードでまたしても距離を詰め、客席ザワザワ。渋谷のパンチが2発ほどクリーンヒットし、モラエスはたまらず渋谷の下半身に潜り込む。立ち上がりざまに渋谷の右ハイがモラエスにヒット。後退するモラエスに、追い打ちをかけるようにワンツースリー。  両者絡み付き、渋谷が再びケージを背負ったところで残り1分。渋谷、立ったままモラエスの左腕を取りキメにかかるがブレイク。その後、客席の反応を楽しむかのように、ガードを上げ下げしながらモラエスを挑発。モラエスの右ハイをかわしたのを機に、渋谷は一気に距離を詰める。焦ったモラエスが苦し紛れに放ったパンチ3発をすべて見切った渋谷、ノーガードのままニヤリと笑ってモラエスにじり寄ったところで、ゴング。客席がドッと沸く。

【3ラウンド】

 渋谷が距離を詰め、モラエスが後退する毎度の展開。小康状態が続き、レフェリーから「アクション」の声。モラエスが下がって両足が揃った隙に、渋谷はボディーに蹴りを打ち込むが、腰を押さえられ投げを食らい、バックを取られる。が、渋谷はクルリとすぐさま起き上がり、モラエスの左腕をキメにかかる。  下半身に絡み付いたモラエスが、渋谷を倒し、サイドポジションを取りかけたところで、渋谷がローブローをアピールし試合中断。  再開後、ブリッジで寝技から脱出した渋谷。通勤中のサラリーマンのような無防備な歩き方でモラエスとの距離を詰めると、客席から大声援が起きる。勢いづく渋谷がワンツースリー。続けざまに左ストレートをクリーンヒットさせるが、渋谷も右ストレートを食らう。  モラエス、渋谷のパンチをかわしながら下半身に抱きつき、倒すも、渋谷はもがいて立ち上がる。なおもしつこく後ろから絡み付くモラエス。ウザがる渋谷の表情が大画面に映ると、客席から笑いが起きる。  モラエス、バックポジションに入りかけるが、渋谷はまたしても反転。その応酬を何度か繰り返した末、チョークスリーパーを取られかけた渋谷がクルリと反転して上になると、この日一番の大歓声。
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(c)2015 ONE Championship
 渋谷はこれまでの鬱憤晴らしをするかのように、小刻みなパンチを20発あまり、モラエスの側頭部に打ち込み、客席が大きく沸く。そして左手でモラエスの頭を横向きに固定すると、右手でハンマーパンチの雨アラレ。体勢を整えてから、大振りのパンチも振り下ろす。  さらに寝技からの立ち上がりざまに、左ハイをモラエスの頭部に蹴り込む。その後、打撃の応酬が始まりかけたところでゴング。

【4ラウンド】

 伸びやかな打撃を繰り出しながら渋谷が前進。反撃しつつもバックステップで距離を取ろうとするモラエス。それを渋谷がノーガードで追いかける。モラエスのグローブがズレたため、試合中断。レフェリーに促されて自陣に戻る渋谷が、両手を上げて客席を煽ると、大声援が起きる。  試合再開後、ついに「シブヤコール」が起きるが、渋谷はモラエスに背後を取られ、ケージに押し込まれる。どうやら渋谷、会場の大型ビジョンを見て背後の様子を確かめているらしく、その表情がビジョンに映り、場内から笑いが起きる。「彼は楽しませてくれるねぇ」と英語実況。  膠着を逃れるべく、渋谷がヒザ蹴り。これを嫌ってモラエスが距離を置こうとすると、渋谷は笑みを浮かべながら追いかける。「シブヤコール」が再び起き、セコンドからも「打撃をまとめろ」の指示。  渋谷は重そうなパンチを一発ヒットさせるが、後が続かない。  逆にモラエス、飛び蹴りを渋谷の顔面にクリーンヒットさせる。そしてタックルして渋谷を持ち上げ、背中から思い切りマットに叩き付けるが、渋谷もフロントヘッドロックを外さなかったため、プロレス技のDDTのようになって会場騒然。
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 モラエス、ヘッドロックから逃れてバックを取る。渋谷、モラエスの腕を押さえ込んで必死のブロック。そして反転して渋谷が上になったところで、ドクターチェック。渋谷の左目の上からおびただしい出血が。  ドクターチェックを受ける間、渋谷は両手を振って「大丈夫」とアピール。セイムポジションで再開するなり、渋谷は左右のパンチを大量連打しゴング。自陣へ戻る際、渋谷は駆け回りながら何度もガッツポーズ。まだ試合が終わったわけでもないのに、勝ちを確信したかのように喜び、観衆も大いに盛り上がる。  最初は完全アウェイだった空気を、渋谷はわずか20分ほどのパフォーマンスで、ホーム同然に変えてしまった。

【5ラウンド】

 開始前、左目の出血を気にする素振りを見せる渋谷。いよいよファイナルラウンドのゴングが鳴るが、ほぼお見合い状態で1分経過。モラエスに押し込まれた渋谷、ケージを背負った状態で4~5発ヒザ蹴りを見舞うと、モラエスが悲鳴を上げて「ローブロー」をアピール。しばしブレイク。  再開後、互いに手数は減りつつも打撃の応酬。
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 残り2分40秒。渋谷はタックルを食らい、座った状態でバックを取られ、背後からモラエスの腕が首に伸びるピンチ。
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 ここで客席から大きな「シブヤコール」が巻き起こり、声援に後押しされた渋谷は巧みに体勢を入れ替えて上になると、モラエスの側頭部に小刻みなパンチを20発ほど打ち込む。そして寝たままモラエスの顔にヒジをグリグリ押しつけ、逃れようとするモラエスの頭部に、ヒザ蹴りやエルボースマッシュを荒々しく連打。  モラエス、右目の上を切ったようだ。  その後、両者立ち上がるも様子見が続く。残り30秒を切っても、互いにカウンター狙いなのか慎重な構え。ラスト10秒の声。モラエスがカポエイラキックを繰り出すもジャストミートせず、試合終了。  渋谷はセコンドの肩車で走り回りながら、何度もガッツポースして優勢をアピール。そして腕立て伏せをして余力もアピール。モラエスも負けじとバク宙を披露し、場内が沸く。
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【判定】

 レフェリーの両脇に立つ両選手。渋谷は勝ちを確信しているのか、ガッツポーズのスタンバイをしながら、笑顔で判定を待つ。一方のモラエスはソワソワと落ち着きがない様子。  しかし、3-0でモラエスの判定勝ち。渋谷は顔しかめて肩を落とした。
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 モラエスの勝利者インタビューに続き、リング上でインタビューに応じた渋 谷は、「勝ったと思った」と悔しさをにじませながらも、「世界最強のアドリアーノをこんだけ追い詰めたのは世界で俺一人」と胸を張った。さらに「どんな大会でもどんな場所でも俺はケンカできる。もっと出してくれ。アイ・カムバック!」と叫び、大歓声を浴びながらリングを下りた。
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試合後のロビーでは、渋谷の看板の前で撮影をする人が続出
 試合翌朝――。選手が宿泊するホテルのレストランで、渋谷にインタビューを行った。左目の上を昨晩、2針縫ったという。インタビューには渋谷のセコンドを務めた大沢ケンジ(和術慧舟會HEARTS)代表にも同席してもらった。
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――おつかれさまでした。大健闘の試合内容についてはのちほどじっくりお聞きするとして、まずは入場シーンから振り返ります。渋谷選手にしてはおとなしい入場に思えましたが、その心は? 渋谷 完全に入っていました。まわりも「渋谷莉孔、完全に入った」「ここまで鳥肌の立つ入場は初めてだ」と言っていましたね。 ――なるほど、あれは集中状態に「入った」表情だったわけですね。緊張はしましたか? 渋谷 まったく。なんでかというと、心が強くなったからでしょう。 ――試合中、客席の反応は聞こえましたか? 渋谷 最初は笑われていましたよね。「なんだコイツ」って感じで。あぁ、笑われているな、と思っていたけど、3、4ラウンドでどんどんひっくり返って、「コイツ本物じゃん」みたいな感じの声援に変わっていった。俺が手を下げたり、ニヤッと笑ったりするたび、客席がワーッと沸いてすごかったですね。 ――左目はいつケガしたのでしょう? 渋谷 4ラウンドのハイキックです。俺、「相手は寝技が強い」と言っていたじゃないですか。ところが寝技はまったく強くなくて、力も全然ないし、パンチもたいしたことなかったけど、蹴りだけが予想外というか、「足の甲一個分」長かった。だから、完全に避け切ったはずなのにレバーに刺さったり、完全にスウェーしたはずなのに親指の爪が当たったり。ダメージはないけど届くのかよ、と。敗因はそれだけですね。 ――「モラエスの寝技は強くない」というのは意外です。 渋谷 俺には関節技は効かないんですよ(笑)。相当、軟体なんで。ヒジもそうだし、首もそう。ついでに言うと、俺には打撃も効きません。練習でも一度も効いたことがない。体が柔らかくてショックが分散されるから、脳が揺れないんですよね。 ――試合中、相手に怖さは感じましたか? 渋谷 まったく怖くなかったです。逆に相手が俺のことをめっちゃ怖がって、試合中ずっと下がっていましたよね。試合後にも病院で会ったんですけど、相手は俺のヒジ攻撃で目の上をケガしていたし、俺に蹴られたところが痛かったらしく、ずっと足を引きずっていて、俺のことを「デストロイヤー」と呼んでいましたよ(笑)。そんなわけで、全然「怖さ」は感じなかったですけど、「上手さ」は感じましたね。 ――具体的に何が上手かったですか? 渋谷 パンチを打つとき、顔を斜めにズラしながら打って来るんですよ。それに気付いたのは3ラウンド目でした。なんか(自分のパンチが)当たりづらいな、と思ったんですけど、相手は俺のパンチに合わせて、斜め下に頭をちょっとズラしながら打っていた。それをちゃんと試合中にもできているのは、さすがチャンピオンレベルって感じです。 ――戦っている当事者の率直な実感として、試合中、主導権はどちらが握っていましたか? 渋谷 2ラウンド目あたりからずっと、こっちが上回っているな、という感触がありました。相手の寝技も打撃も俺には効かなかったけど、相手が受けたダメージは、ハンパなかったと思う。ボディーなんか、完全に効いていましたから。5ラウンドでも、金的だって逃げていましたけど、あれ、ボディーに入っていましたから。俺がボディーにヒザ蹴りするたびに「ウッ」「ウッ」っていう苦しそうな声がすんごい漏れていた。だから俺はずっと、相手の腹を見て笑っていたら、相手はどんどん下がっていった。よっぽど痛かったんでしょうね(笑)。 ――渋谷選手が相手を終始飲み込んでいた、と。 渋谷 間違いないです。あと、先月のインタビューでも予告した通り「一本拳」で攻め続けて、相手が倒れかかった場面もありました。ガンガン行き過ぎて、ここが切れちゃいましたけど(笑)。
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「一本拳」のやり過ぎで、人差し指に裂傷が!
――しかし、最終ラウンドに限って言えば、余力はありそうなのに手数が少なかったのが、もったいなく思えました。 渋谷 相手の蹴りの長さに惑わされました。考え過ぎ。これはホント、大失敗。最後、もっと手数が多ければ、勝っていたかもしれませんね。 ――セコンドの大沢さんにお聞きします。モラエスの寝技は効かないかも、と気付いたのはいつですか? 大沢 僕らのほうが渋谷よりも先に、そう思ったんじゃないかな。戦前は、やられるとしたら寝技だろうな、と思っていたけど、1ラウンドも2ラウンドもバックポジョンを取られても逃げ切ったので、「これ、いけるじゃん!」と。ただ、寝技から逃げられると思ったことが、実は敗因でもあるんです。本当はタックルを切って打撃で勝負してほしかったけど、切るよりはバックを取らせて逃げちゃえばいいや、という感じになって、グラウンドの展開が長引いちゃって、判定に影響した部分もありますからね。 ――それにしても、渋谷選手はなぜあんなにも寝技をひっくり返すのが上手いのでしょうか? ブリッジの強さを指摘する声もありますが、大沢さんはどう思いますか? 技術的な解説をお願いします。
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大沢代表と渋谷
大沢 それがわかったら、みんながやれるわけで。それは本人に聞いてもらったほうがいいかも。まあ、ブリッジが強いのは確かだけど……。 渋谷 僕は前世が人間じゃなく、「橋」なのかもしれません。 大沢 うん、橋かもな(笑)。
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格闘界の智将マット・ヒュームも渋谷を激励。渋谷のファイトスタイルを気に入った様子だ
――言動のユニークさもまた渋谷選手の魅力ですが、試合中、ガードを下げながら進んで行くあのスタイルは、我流ですか? 渋谷 他では見たことがないですね。打って来てほしいんで、「来いよ」って感じで下げてみただけ。それで相手がやりづらいのかも。俺ってホント、“初見殺し”なんですよ。いつも一緒に練習している人はそうでもないだろうけど、初めての人にとっては、変化球過ぎてやりづらいみたいですね。 ――あの“ノーガード戦法”は、マレーシアの観客の心を確実につかんでいましたよ。 渋谷 日本と全然違いますね。日本だと、あそこまでのコールは起こらない。俺、外国向けの選手なのかな、って思いましたね。日本人はみんながいいって言わないと乗らないようなところがあるけど、外国人はいいものはいいって感じで、まっすぐに盛り上がってくれる。昨晩も、出待ちとか、すごかったですよ。大会終わって深夜2時ぐらいなのに、病院にまで車で追いかけて来ている人たちも大勢いて、病院出るときの声援がハンパじゃなかった。俺はアイドルか? と思いましたよ(笑)。 大沢 試合中も、誰も渋谷のことを知らない敵地の会場で、数千人が「シブヤコール」ですからね。これは本当にすごいことです。ただし、悔しさのほうが大きい。いい試合をしても負けちゃうと、すぐに忘れられちゃうんですよ。会場に来た人の印象には残るかもしれないけど、そうじゃない人たちは戦績しか見てくれないから、「結局負けたんでしょ?」で片付けられちゃうのが悔しい。 渋谷 いやでもまだこれ、序章なんで。ドラマでいうとまだ1、2話なのに、ゴールしちゃったらつまんないでしょう? 一度は落ちないと。1、2話で打ち切られる奴もいるけど、俺の場合、昨日のファイトで主催者にも観客にも気に入られたはずだから、打ち切りはない。いっぺん負けて落ちてからの展開があったほうがいいでしょう。本当に面白くなるのはこれからなので、まあ、見ていてくださいよ。  チンピラ上がりの格闘家、腕と度胸のタイマン行脚。そのサクセスストーリーはまだまだ続く――。 (取材・文=岡林敬太)

地下格闘技からアジア最強舞台へ──「俺は噛ませ犬」渋谷莉孔の“異例すぎる”挑戦に迫る!!

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(c)2015 ONE Championship
 地下から世界へ、驚異のスピード出世である。昨年9月にパンクラスのトップランカーを破る番狂わせを演じた地下格闘技出身の渋谷莉孔(29)がなんと、今年の3月13日にマレーシアのクアラルンプールで行われるアジア最大の総合格闘技イベント『ONE Championship(旧称ONE FC)』のメインカードでタイトルマッチに挑むことが決まった。プロでの実績がほとんどない“地下格上がり”の選手がONE Championshipに出場するだけでも驚きだが、いきなりメイン、しかもタイトルマッチというのは異例の大抜擢だ。ただならぬ強運ぶりを発揮し続ける渋谷だが、今回の相手は、運だけではどうにもならない最強王者のアドリアーノ・モラエス。果たして勝機はあるのか、ないのか? 「俺は噛ませ犬」と自嘲しつつ、静かに牙を研ぐ渋谷に話を聞いた。 ――日本のトップファイター・青木真也らが主戦場とするONE Championshipに、渋谷莉孔が参戦。しかもフライ級王者のアドリアーノ・モラエスといきなりタイトルマッチを行うとの第一報を聞いたときは、失礼ながら、アゴが外れるほど驚きました。 渋谷 自分もビックリしましたよ(笑)。ウソでしょ? こんなことあるの? って。 ――昨年9月にTTF CHALLENGE02でパンクラス・スーパーフライ級1位の古賀靖隆を破ったこともビッグサプライズでしたが(記事参照)、その興奮冷めやらぬうちに、飛び級で世界デビューです。いったいどのような経緯で、ONE Championshipへの出場が決まったのでしょうか? 渋谷 スカウトですね。去年の夏、ONE Championshipの代表(ビクター・クイ)がUFCの日本大会を見るために来日し、ついでに東京や大阪のジム回りをしたらしいんですが、そのときたまたま自分の存在が目に留まったみたいです。アドリアーノが強すぎて、対戦相手がなかなか見つからなくて困っていたときに、「あ、ちょうどいい奴がいた!」みたいな(笑)。 ――ビクター・クイ代表が視察に来ていた場面を覚えていますか? 渋谷 いや、まったく。なにしろこのジム(渋谷が所属する和術彗舟會HEARTS)、見学者もジム生も外国人がめちゃくちゃ多いですから、今日も誰かしら外国人が来ているなーって感じで、それが誰なのかまではいちいち把握していませんからね。その日にオファーがあったなら記憶に残ったでしょうけど、オファーがあったのはだいぶあとだし。 ――いつオファーがあったんですか? 渋谷 最初に契約の打診が来たのは、今年の1月10日ごろです。大沢ケンジさん(和術彗舟會HEARTS代表)のところに連絡があって、大沢さんから「ONE Championshipから選手契約の話が来ているけど、どうする?」と聞かれたんで、「やります!」と即答しました。前から外国に行きたいと思っていましたから。で、そのときはまだ対戦相手が決まっていなかったんですけど、契約書にサインして渡したら、後日、日本のエージェントから「とんでもないことになりました! アドリアーノ・モラエスとメインでタイトルマッチです!」っていう電話がかかってきたんですよ。
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――そのときの心境は? 渋谷 これはヤバイことになったな……と、大沢さんと2人で5秒ぐらい固まりました。実はONE Championshipの選手の中で、コイツとだけはやりたくないなと思っていたのが、アドリアーノだったんですよ。勝てるわけがないから、さすがにこれは断ろう……と最初は思ったんですけど、これを断ると次がないんじゃないか? という話になり、「じゃあ、受けるか」と。受けた俺もすごいなと自分で思いますよ(笑)。 ――TTFのときといい、今回といい、キャリアを考えたらあり得ない大抜擢が続いています。渋谷選手は、不思議な何かを持っていますね。 渋谷 そうですね、そういう運みたいなのは昔からけっこう強いんで。人生上1枚だけ買った宝くじで10万円を当てましたし、20年間、毎年買っているおみくじも大吉しか引いたことがありません。自分でもちょっと怖いな、って思います。 ――ONE Championshipのことは、以前からよくご存知でしたか? 渋谷 よく知っていました。たぶん自分が行ける最高峰はONE Championshipで、行けるとしたら5年後くらいかな、と思っていたんですが、その時期が大幅に早まりましたね。 ――アドリアーノ・モラエスのことも以前からご存知で? 渋谷 はい、YouTubeでよく見ていました。漆谷(康宏)選手やランボー(宏輔)選手という日本の強い選手が、いずれもアドリアーノに完敗しているから、「UFC以外で、こんなに強い奴がいるんだ」と思って見ていました。 ――アドリアーノ・モラエスは、どんなファイターですか? 渋谷 動画で見る分には、打撃は遅くて大振りだなーって感じだけど、それでもよく当たるんですよね。あとは、寝技で押さえ込む際のコントロールがものすごく上手い。ガッチリ組むんじゃなく、相手を泳がせながら遊ぶように絞め上げていく。あと、ハートも強そう。打たれてもすぐに打ち返して来るし、普通なら一呼吸置きたいところなのに、そこで攻めて来るんだ? っていう場面も多い。コイツはけっこう気持ちが強いな、という印象ですね。穴も少ないです。 ――そんな強豪に渋谷選手をぶつけた、主催者の意図をどう読みますか? 渋谷 誰がどう見ても、俺は噛ませ犬でしょうね(笑)。まあでも、牙だけはしっかり作っておかないと。噛ませ犬でも、牙さえあれば、なんかあるかもしれないじゃないですか。牙がない噛ませ犬だと、ただのショーになっちゃうけど、牙や爪があれば、そのへんの子犬がライオンに勝つことだって考えられる。だから今、牙を作っているところですね。 ――戦術や練習方法についてはのちほど伺うとして、その前に、ONE Championshipと結んだ契約の内容について教えてください。 渋谷 3年契約で、6試合です。勝ったらどんどん試合数が10試合とかに増えていくみたいです。
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――ファイトマネーはどうですか? 渋谷 日本のメジャー団体の現役チャンピオンよりも多いですね。日本の中堅プロ選手のX倍ぐらいの金額からスタートして、勝つごとに倍々ゲームでファイトマネーが増えていきます。さらにONEウォリアーボーナスというのもあって、その日一番会場を盛り上げた選手に500万円のボーナスが出るらしいので、ベルトと同時にそっちも狙っていきますよ。 ――なんという厚待遇! 他の格闘家たちが、うらやましがっているんじゃないですか? 渋谷 「こんなビッグチャンスがあるんだね」「ツイてるね」「運良く、いいところに入ったね」などの声をよく聞きます。 ――運も実力のうち、と言いますけどね。 渋谷 どんなに強くても、めぐって来ない人にはチャンスはめぐって来ませんからね。 ――ビッグマネーをつかむため、是が非でも初戦をモノにしたいところでしょうが、「渋谷に勝ち目はない」との予想が多く、渋谷選手のコーチである大沢さんも「逃げるのが上手い渋谷だけど、今回ばかりは寝たら逃げられそうにない」と語っています。 渋谷 レスリングと寝技については、以前よりもディフェンス力がついたと思います。ただ、今回はさらにその上を行く相手なので、レスリングや寝技を使う場面はおそらくないと思います。もう打撃で勝負するしかない。グーで殴ってもしょうがないから、今回は「一本拳」で行こうと思っています。 ――一本拳とは? 渋谷 こうやって中指だけを突き出して、そこにパワーを一点集中させる殴り方です。自分がケガをするリスクもあるけど、当たれば相手に与えるダメージも大きい。自分の指が折れてもいいから、一本拳で行こうかなと。蹴りも普通、スネとか足の甲で蹴るけど、今回は親指だけで蹴ってやろうかなと思っています。
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一撃KOの可能性を秘めた「一本拳」。ルール上、反則ではない。
――渋谷選手はギブアップ負けの経験はありますか? 渋谷 一度もないです。 ――もし今回、絞め技で落とされそうになったり、関節技で骨を折られそうになったりしたら、どうします? 渋谷 経験がないのでわからないですけど、腕の1本や2本、惜しくはないですね。 ――今回の会場はマレーシアの首都クアラルンプールにある、プトラ・スタジアムです。慣れない外国で試合をすることへの戸惑いは? 渋谷 そういう不安を排除するために、先日、隣国のシンガポールに行って、しっかり土台を作って来ましたよ。シンガポールとマレーシアは気候や食文化が近いので、どうやってトレーニングして、どう体重を落としたらいいか、などをいろいろ調べつつ、向こうの日本人ともけっこうパイプを作ってきました。結果、自分は近々、シンガポールに移住することになると思います。シンガポールはONE Championshipの本拠地だし、3年契約だから、何度も行ったり来たりするよりも、移住しちゃったほうがいいんじゃないかと。シンガポールは法人税も安いんで、格闘技をやりながら向こうで商売を始めてもいいし。 ――アドリアーノ・モラエスはブラジル人ですが、渋谷選手はこれまで外国人と戦った経験は? 渋谷 試合では一度もないです。なので先日、シンガポールのジムでブラジル人とたくさん練習してきました。 ――本番まで1カ月を切りましたが、減量は順調ですか? 渋谷 規定の125ポンド(56.7キロ)まで、あと10キロです。ちょっと今回、減量が厳しいですね。初めて筋トレをして体を大きくしたので、体重を落とすのに苦労しています。でも筋トレしたおかげで、それまでほとんどできなかった懸垂や腕立てを、半永久的に続けられるようになりましたけどね。 ――これまで筋トレをしたことがなかったんですか? 渋谷 負けたらやろう、と思っていたんですけど、5年以上負けなかったんで、やる機会がなかったんですよ。でも今回はさすがにやらないと負けが見えているから、自主的に始めました。 ――ジムでは筋トレ以外に、どんなトレーニングを行っていますか? 渋谷 1カ月を切ったので、普通のトータルスパーリングはもうやめて、劣勢な状態からのスパーリングを中心にやっています。あえてパンチをもらったりとか、あえてバックを取られたりとか、あえて倒されてみたりとか、そういう劣勢の状態からスタートするようにしています。
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破竹の勢いの渋谷には、成長企業も注目。相手が見た瞬間にチャットや動画・写真が消えるアプリ「BUZZ POP」で知られるWEBサービス企業のGanapati社が今回、渋谷のコスチュームを一社提供することになった。渋谷は「BUZZ POP」のアフターエフェクトとしても登場。アプリ内で自分の撮った動画と渋谷を合成することもできる。渋谷にボコボコにされたい人は必見である。http://www.ganapatiplc.com
――渋谷選手は「作戦を立てて戦うタイプ」ですが、短時間での勝負と長時間の勝負、どっちをイメージしていますか? 渋谷 そのへんは決めていません。早く終わらそうとして長引いたりすると、気分的に落ちると思うんですよ。長・短両方考えつつ、ありとあらゆる劣勢から、どうひっくり返すか、というトレーニングを重ねています。 ――現在の心理状態を教えてください。 渋谷 相手のことはよく考えたら別に、そんなに怖くないかなーって感じですね。ぶっちゃけ、どこでぶっ飛ばされても同じなんで。路上のケンカでぶっ飛ばされようが、後楽園ホールでぶっ飛ばされようが、海外のでっかい舞台のメインでぶっ飛ばされようが、痛みは一緒。2~3人の前でぶっ飛ばされようが、1万人の前でぶっ飛ばされようが、恥をかくレベルもそんなに変わらないと思うんですよ。いい意味で開き直っているから、そんなに緊張はしていません。 ――もちろん、ぶっ飛ばされるのではなく、一本拳でぶっ飛ばす展開を期待していますよ。 渋谷 実は俺、引き運だけじゃなく、当て運も強いんですよ。ヘタクソなパンチがこれまでけっこう当たっているから、もしかしてもしかするかもしれませんよ。 ――楽しみにしています!  日刊サイゾーでは、当日の試合の模様を現地から速報する予定である。 (取材・文)岡林敬太 【大会告知】 イベント名/ONE Championship 大会名/Age of Champions 会期/3月13日(金)19時~(現地時間) 会場/プトラ・スタジアム(マレーシア・クアラルンプール) http://www.onefc.com/

今度はパンクラスだ! “不良の格闘技大会”THE OUTSIDERがプロとの交流戦を活発化!!

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左から樋口武大、啓之輔、前田日明RINGS代表、黒石高大
 6日、“不良の格闘技大会”『THE OUTSIDER』を主催するリングス代表の前田日明らが都内で会見を行い、12月7日に横浜文化体育館で開催される『RINGS/THE OUTSIDER ~SPECIAL~』について発表した。  今大会の目玉は、総合格闘技の老舗「パンクラス」からプロ選手を招聘し、アウトサイダーの“不良”たちが迎え撃つ『THE OUTSIDER×パンクラス対抗戦』。3名のパンクラシストが、アウトサイダーのリングに立つことになるという。  会見には、対抗戦に出場する2人も登壇。『THE OUTSIDER』に第1回大会から参戦し、同大会の顔ともいえる65-70級王者“格闘彫師”啓之輔は、パンクラス清水ダイキとの対戦に「パンクラスには自分のジムから移籍して頑張っている選手もいるので、よく知っている。今回はきっちり勝って、次はアウトサイダーの代表としてパンクラスのリングに上がりたい」と、冷静に語った。  また、同65-70kg級王者の樋口武大は、アウトサイダー出身の金太郎と対戦。両者は2011年に対戦し、樋口が腕十字で勝利しているが、「そのとき、(金太郎に)『あまり極まっていなかった』と言われて、ストップも少し早かったので、試合後すぐに再戦の約束をしました。いい試合がしたい」と気合を込めた。  さらにもう1試合、今年6月のプロ対抗戦でZSTの上田厚志を下した経験を持つRYOが、パンクラスで12年にネオブラッドトーナメント準優勝を果たした西川純矢と対戦する。  会見には、アウトサイダーで屈指の人気を誇る“ハマの狂犬”黒石高大も出席。今回は、米軍対抗戦でジョセフ・ハンと対戦することになるが、「(アメリカ人選手と)練習することもある。バネが強いし、イヤだな、怖いなというのもあるけど、今回は地元なのでスカッと勝ちたい。スカッと勝ちます!」と、爽やかな笑顔を見せた。  第1回大会から数えて7年目となるアウトサイダーについて、前田は「最初はチキンレースみたいな試合がほとんどだったが、腕力にプライドを持っている連中なので、自然と技術を研鑽してレベルが上がっている。今年をスタートラインにプロと交流させ、いずれは団体の王者クラスを下すようになっていくと思う」と、その未来像を語った。  また会見後の囲み取材では、前田が「問題を起こした選手」と呼ぶ元アウトサイダーの渋谷莉孔が、今年9月にパンクラス1位の古賀靖隆を大番狂わせで下したことに話題が及ぶと、「結果を聞いて驚いた」という前田に対し、黒石が「すごいっすよね!」と興奮気味にまくしたて、前田が「お前のほうが強いよ」と返す一幕もあった。  リングスによると、現在までに発表されているアウトサイダーとパンクラスのカードは3試合だが、さらに追加カードが発表される可能性もあるという。 ●RINGS/THE OUTSIDER ~SPECIAL~ 日時: 2014年12月7日(日) 13時開場・14時試合開始 会場: 横浜文化体育館(神奈川県横浜市中区不老町2-7) TEL 045-641-5741 チケット: VIP席 1万5,000円(SOLD OUT) SRS席 1万2,000円 RS席 1万円 A席(二階) 6,000円 チケットぴあ Pコード827-571 Lコード 33702 問い合わせ: 株式会社RINGS TEL/FAX 03-3461-6698(受付時間10時~18時)

「すいません、1位に勝っちゃいました(笑)」パンクラストップを撃破した渋谷莉孔“大金星”のワケ

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 格闘界の常識を覆すビッグサプライズが起きた。地下格闘技出身でプロ経験わずか3戦目の選手が、メジャープロ団体「パンクラス」のトップランカーを撃破したのである。大番狂わせを演じたのは、アマチュア総合格闘技イベント「THE OUTSIDER(アウトサイダー)」でデビュー後、地下格闘技を渡り歩いてきた渋谷莉孔(29)。かつては奇抜な不良的言動で話題になることが多かった渋谷だが、いまや格闘技の実力のみで世界へ羽ばたこうとしている。パンチもキックもキャラクターも「アウトサイダーに出ていたころとは完全に別人」と自負する渋谷に話を聞いた。 ――9月13日に東京・Coconeriホールにて開催された「TTF CHALLENGE 02」で、パンクラス・スーパーフライ級1位の古賀靖隆選手に勝利(延長判定3-0)。「大金星」「大番狂わせ」との声も多いですが、本人としては? 渋谷 実は最初から勝算はありました。試合前、動画で相手のKO勝ちのシーンを見たら、パンチが大振りだったんで、「あ、これは見えるな。寝技になんなきゃ打撃で勝てるな」と思いました。試合前にジムの先生とかからも、「お前のほうが強い」と言われていたし。一般的に見たら「どう考えても負ける」という試合かもしれないけど、自分的にはそこまでの差があるとは思わなかったです。実際、試合をやっている最中も、相手のことを「全然強くないな」と思いました。ただ、「(タックルが)しつこいな」っていうのはありましたけど。 ――ベテランの格闘ライターいわく、「キャリアが違いすぎるので、普通なら絶対に組まれないカード」とのことでした。どういう経緯であの試合が決まったのでしょう? 渋谷 知り合いのブッカーから、自分にオファーがあったんですよ。「TTF CHALLENGE」と大会名にあるように、経験が浅い選手にもチャレンジの機会を与えようという趣旨だったみたいです。こういうマッチメイクはいいですよね。自分みたいな奴が埋もれているってことが、わかるじゃないですか。 ――当日、会場にいた世界トップクラスの寝業師・青木真也選手が、「アウトサイダー出身の選手が今日勝った試合が凄く良い試合だった。普通に強かったし練習してる人の試合でした」とTwitterで評価をしていました。 渋谷 光栄ですね。 ――渋谷選手の「タックルを切る技術」を評価する声も多いです。 渋谷 切る技術っていうより、それ以前に対戦相手が、自分の打撃が完全に効いて、心が折れているのがわかりましたね。「ちょっと待ってくれよ……」って顔をしていたのがよくわかりました。
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古賀を攻め立てる渋谷。(c)TTF CHALLENGE
――打撃の威力が増したのでしょうか? 渋谷 パンチもキックも、アウトサイダーに出ていたころとは、完全に別人だと思います。自分ってけっこう寝技のイメージがあるでしょうけど、寝技はぶっちゃけ、地下格(闘技)対策で使っていただけ。地下格って試合数がやたらと多いじゃないですか。試合した翌週にまた試合したりとか。そんな中、ケガをしたくないから、サクッと勝つには寝技が一番なんですよ。そういう理由で、ずっと打撃は封印していたんですが、その打撃の技術がここ最近、さらにレベルアップしたのが自分でもわかります。 ――なぜでしょう? 渋谷 今回の試合の約1カ月前から、大沢ケンジさんが代表を務める「和術彗舟會HEARTS」というジムに本格的に通うようになったんですが、そこでいろいろと考え方が変わったのが大きいですね。昨年末から別のところでムエタイも習っていたんですけど、それを総合格闘技で応用するコツなどを、わずか1カ月で体得した感じですね。 ――大沢さんは指導者として何が優れていますか? 渋谷 教え方がとにかく上手いし、頭がいいですね。大沢さんはかつて、修斗やDREAM、アメリカのWECなどで活躍した選手で、日本の格闘界の知将と呼ばれているんですが、実際、作戦を立てるのが上手い。自分も地下格時代からわりと作戦を立てて戦うタイプだったんで、そのへんも大いに参考になります。あとは人柄もいいんで、UFCの選手とかも、たくさん教わりにくるんですよ。そういう一流選手と技術交換もできるんで、非常に恵まれた環境ではありますね。
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延長戦の末、3-0の判定で渋谷が勝利。(c)TTF CHALLENGE
――ところで昨年6月のアウトサイダーに出て以来、しばらく表舞台から遠ざかっていたようですが、この間、何をしていたのでしょう? 渋谷 ホント、なんもしてないっすよ。遊んでいました。友達のジムにたまに通ったり、いろんな地下格に出たりはしていましたが、いずれも趣味みたいなもんですね。地下格に関していえば、応援してくれるみんなを喜ばせたいから出ていただけ。ついでにいうとアウトサイダーも自分にとっては遊びだったんで、あのころもトレーニングはほとんどしていなかった。今回生まれて初めて必死で1カ月間練習してみて、その成果がいきなり出たからうれしいですね。 ――今後の展望は? 渋谷 1位を倒しちゃいましたが、パンクラスに出ようかな、って気持ちはあります。パンクラス側も、自分のことを欲しいんじゃないですかね。実は以前にも、パンクラスに出るチャンスはあったんですけど、そのときは邪魔が入って話が流れました。ある格闘界の実力者に「選手生命長くないから挑戦したい」と相談したら、「じゃあ引退するか、死んじまえ」みたいなことを言われて、話を潰されちゃったんですよ。その人には「お前なんかがパンクラスで勝てるわけない」とも言われたんですけど、すいません、1位に勝っちゃいました(笑)。
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「和術彗舟會HEARTS」の大沢ケンジ代表(左)は、渋谷の技術を以下のように評する。「渋谷の長所は『逃げるのが上手い』ところと、『打撃の距離感がいい』ところですね。特に寝技などから逃げる技術に関しては、この階級ではトップクラス。逆に短所は、打撃にせよ寝技にせよ『技が雑』なところです。直す気があれば直るんでしょうけど、雑さを好む選手もいるので、こればっかりは本人次第ですね」。
――その人の一言が、渋谷選手の闘争心に火をつけたとも言えそうですね。 渋谷 ですね。おかげで踏ん切りがついたし、逆に頑張れた。こないだの試合中、「プロとしてやっていける」という確信を得たので、今は毎日練習浸けで、格闘家として生きています。今後はパンクラス、DEEP、修斗などのメジャー団体でベルトを狙ってもいいし、海外からもオファーが来ているんで、そっちでやってもいいかなと思うんですけど、まだまだ穴が大きいんで、大沢先生からゴーサインが出ないんですよ。 ――穴というのは? 渋谷 レスリングと寝技ですね。自分は打撃だけ特出したタイプなんで、特に海外に行ったら強いレスラーが山ほどいるから、今のまんまだと通用しない。戦争でいったら、ライフルはあるけどヘルメットはないわ靴もないわ、っていう状態。せめて防弾チョッキぐらいは持って行こうよ、という感じですね。
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「和術彗舟會HEARTS」(わじゅつけいしゅうかい・はーつ)
新宿駅・代々木駅の近く。キックボクシング・柔術・グラップリング・MMA(総合格闘技)などのクラスがある。インストラクターは日本トップクラスのMMAファイターや柔術帯取得者ばかり。マットスペースは都心有数の広さで、格闘技以外でも、フリートレーニングやフィットネスで楽しく運動できる。
東京都渋谷区代々木2-20-12 呉羽小野木ビル1階A号
TEL 03-6383-4057
http://www.hearts-mma.com
――アウトサイダーに戻る気はもうないですか? 渋谷 ないですね。戻ったところで、もう相手がいないですよ。街で声をかけてくれるファンの方もそうだけど、いまだに「あ、アウトサイダーの渋谷さんだ!」と言われます。この「アウトサイダーの」っては、いつまで付くんだろう? というのが悩みの種。主戦場をしっかり作らないと、きっといつまでも付いて回るんでしょうね。そこが歯がゆいところです。 ――次の試合は決まっていますか? 渋谷 10月13日にアクロス福岡で開催される「HEAT in Fukuoka」に参戦しますけど、相手が弱すぎるので、観光に行くようなもんですね。「なんでパンクラスの1位を下したあとにコイツと?」という相手です。本当は違う奴とやる予定だったんですけど、自分がパンクラス1位に勝った翌日に「ケガをした」とか言ってキャンセルしてきたから、急遽そいつに変わったんです。正直、今やるレベルの相手じゃないけど、古賀をKOできなかった悔しさもあるので、憂さ晴らしにそいつを血祭りに上げます(笑)。旅行でストレス発散してきます。 (取材・文=岡林敬太/撮影=長谷英史) shibusmile.jpg 「HEAT in Fukuoka」 2014年10月13日 (月・祝) 開場/16:30 開始/17:00 会場/福岡・アクロス福岡 チケット料金/SRS席15,000円 RS席10,000円 S席7,000円 自由席5,000円 ※当日券は各席500円増し。 チケット販売/チケットぴあ 問い合わせ先/HEAT事務局 TEL 052-734-8866 HEAT公式サイト/http://heatofficial.com

「すいません、1位に勝っちゃいました(笑)」パンクラストップを撃破した渋谷莉孔“大金星”のワケ

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 格闘界の常識を覆すビッグサプライズが起きた。地下格闘技出身でプロ経験わずか3戦目の選手が、メジャープロ団体「パンクラス」のトップランカーを撃破したのである。大番狂わせを演じたのは、アマチュア総合格闘技イベント「THE OUTSIDER(アウトサイダー)」でデビュー後、地下格闘技を渡り歩いてきた渋谷莉孔(29)。かつては奇抜な不良的言動で話題になることが多かった渋谷だが、いまや格闘技の実力のみで世界へ羽ばたこうとしている。パンチもキックもキャラクターも「アウトサイダーに出ていたころとは完全に別人」と自負する渋谷に話を聞いた。 ――9月13日に東京・Coconeriホールにて開催された「TTF CHALLENGE 02」で、パンクラス・スーパーフライ級1位の古賀靖隆選手に勝利(延長判定3-0)。「大金星」「大番狂わせ」との声も多いですが、本人としては? 渋谷 実は最初から勝算はありました。試合前、動画で相手のKO勝ちのシーンを見たら、パンチが大振りだったんで、「あ、これは見えるな。寝技になんなきゃ打撃で勝てるな」と思いました。試合前にジムの先生とかからも、「お前のほうが強い」と言われていたし。一般的に見たら「どう考えても負ける」という試合かもしれないけど、自分的にはそこまでの差があるとは思わなかったです。実際、試合をやっている最中も、相手のことを「全然強くないな」と思いました。ただ、「(タックルが)しつこいな」っていうのはありましたけど。 ――ベテランの格闘ライターいわく、「キャリアが違いすぎるので、普通なら絶対に組まれないカード」とのことでした。どういう経緯であの試合が決まったのでしょう? 渋谷 知り合いのブッカーから、自分にオファーがあったんですよ。「TTF CHALLENGE」と大会名にあるように、経験が浅い選手にもチャレンジの機会を与えようという趣旨だったみたいです。こういうマッチメイクはいいですよね。自分みたいな奴が埋もれているってことが、わかるじゃないですか。 ――当日、会場にいた世界トップクラスの寝業師・青木真也選手が、「アウトサイダー出身の選手が今日勝った試合が凄く良い試合だった。普通に強かったし練習してる人の試合でした」とTwitterで評価をしていました。 渋谷 光栄ですね。 ――渋谷選手の「タックルを切る技術」を評価する声も多いです。 渋谷 切る技術っていうより、それ以前に対戦相手が、自分の打撃が完全に効いて、心が折れているのがわかりましたね。「ちょっと待ってくれよ……」って顔をしていたのがよくわかりました。
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古賀を攻め立てる渋谷。(c)TTF CHALLENGE
――打撃の威力が増したのでしょうか? 渋谷 パンチもキックも、アウトサイダーに出ていたころとは、完全に別人だと思います。自分ってけっこう寝技のイメージがあるでしょうけど、寝技はぶっちゃけ、地下格(闘技)対策で使っていただけ。地下格って試合数がやたらと多いじゃないですか。試合した翌週にまた試合したりとか。そんな中、ケガをしたくないから、サクッと勝つには寝技が一番なんですよ。そういう理由で、ずっと打撃は封印していたんですが、その打撃の技術がここ最近、さらにレベルアップしたのが自分でもわかります。 ――なぜでしょう? 渋谷 今回の試合の約1カ月前から、大沢ケンジさんが代表を務める「和術彗舟會HEARTS」というジムに本格的に通うようになったんですが、そこでいろいろと考え方が変わったのが大きいですね。昨年末から別のところでムエタイも習っていたんですけど、それを総合格闘技で応用するコツなどを、わずか1カ月で体得した感じですね。 ――大沢さんは指導者として何が優れていますか? 渋谷 教え方がとにかく上手いし、頭がいいですね。大沢さんはかつて、修斗やDREAM、アメリカのWECなどで活躍した選手で、日本の格闘界の知将と呼ばれているんですが、実際、作戦を立てるのが上手い。自分も地下格時代からわりと作戦を立てて戦うタイプだったんで、そのへんも大いに参考になります。あとは人柄もいいんで、UFCの選手とかも、たくさん教わりにくるんですよ。そういう一流選手と技術交換もできるんで、非常に恵まれた環境ではありますね。
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延長戦の末、3-0の判定で渋谷が勝利。(c)TTF CHALLENGE
――ところで昨年6月のアウトサイダーに出て以来、しばらく表舞台から遠ざかっていたようですが、この間、何をしていたのでしょう? 渋谷 ホント、なんもしてないっすよ。遊んでいました。友達のジムにたまに通ったり、いろんな地下格に出たりはしていましたが、いずれも趣味みたいなもんですね。地下格に関していえば、応援してくれるみんなを喜ばせたいから出ていただけ。ついでにいうとアウトサイダーも自分にとっては遊びだったんで、あのころもトレーニングはほとんどしていなかった。今回生まれて初めて必死で1カ月間練習してみて、その成果がいきなり出たからうれしいですね。 ――今後の展望は? 渋谷 1位を倒しちゃいましたが、パンクラスに出ようかな、って気持ちはあります。パンクラス側も、自分のことを欲しいんじゃないですかね。実は以前にも、パンクラスに出るチャンスはあったんですけど、そのときは邪魔が入って話が流れました。ある格闘界の実力者に「選手生命長くないから挑戦したい」と相談したら、「じゃあ引退するか、死んじまえ」みたいなことを言われて、話を潰されちゃったんですよ。その人には「お前なんかがパンクラスで勝てるわけない」とも言われたんですけど、すいません、1位に勝っちゃいました(笑)。
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「和術彗舟會HEARTS」の大沢ケンジ代表(左)は、渋谷の技術を以下のように評する。「渋谷の長所は『逃げるのが上手い』ところと、『打撃の距離感がいい』ところですね。特に寝技などから逃げる技術に関しては、この階級ではトップクラス。逆に短所は、打撃にせよ寝技にせよ『技が雑』なところです。直す気があれば直るんでしょうけど、雑さを好む選手もいるので、こればっかりは本人次第ですね」。
――その人の一言が、渋谷選手の闘争心に火をつけたとも言えそうですね。 渋谷 ですね。おかげで踏ん切りがついたし、逆に頑張れた。こないだの試合中、「プロとしてやっていける」という確信を得たので、今は毎日練習浸けで、格闘家として生きています。今後はパンクラス、DEEP、修斗などのメジャー団体でベルトを狙ってもいいし、海外からもオファーが来ているんで、そっちでやってもいいかなと思うんですけど、まだまだ穴が大きいんで、大沢先生からゴーサインが出ないんですよ。 ――穴というのは? 渋谷 レスリングと寝技ですね。自分は打撃だけ特出したタイプなんで、特に海外に行ったら強いレスラーが山ほどいるから、今のまんまだと通用しない。戦争でいったら、ライフルはあるけどヘルメットはないわ靴もないわ、っていう状態。せめて防弾チョッキぐらいは持って行こうよ、という感じですね。
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「和術彗舟會HEARTS」(わじゅつけいしゅうかい・はーつ)
新宿駅・代々木駅の近く。キックボクシング・柔術・グラップリング・MMA(総合格闘技)などのクラスがある。インストラクターは日本トップクラスのMMAファイターや柔術帯取得者ばかり。マットスペースは都心有数の広さで、格闘技以外でも、フリートレーニングやフィットネスで楽しく運動できる。
東京都渋谷区代々木2-20-12 呉羽小野木ビル1階A号
TEL 03-6383-4057
http://www.hearts-mma.com
――アウトサイダーに戻る気はもうないですか? 渋谷 ないですね。戻ったところで、もう相手がいないですよ。街で声をかけてくれるファンの方もそうだけど、いまだに「あ、アウトサイダーの渋谷さんだ!」と言われます。この「アウトサイダーの」っては、いつまで付くんだろう? というのが悩みの種。主戦場をしっかり作らないと、きっといつまでも付いて回るんでしょうね。そこが歯がゆいところです。 ――次の試合は決まっていますか? 渋谷 10月13日にアクロス福岡で開催される「HEAT in Fukuoka」に参戦しますけど、相手が弱すぎるので、観光に行くようなもんですね。「なんでパンクラスの1位を下したあとにコイツと?」という相手です。本当は違う奴とやる予定だったんですけど、自分がパンクラス1位に勝った翌日に「ケガをした」とか言ってキャンセルしてきたから、急遽そいつに変わったんです。正直、今やるレベルの相手じゃないけど、古賀をKOできなかった悔しさもあるので、憂さ晴らしにそいつを血祭りに上げます(笑)。旅行でストレス発散してきます。 (取材・文=岡林敬太/撮影=長谷英史) shibusmile.jpg 「HEAT in Fukuoka」 2014年10月13日 (月・祝) 開場/16:30 開始/17:00 会場/福岡・アクロス福岡 チケット料金/SRS席15,000円 RS席10,000円 S席7,000円 自由席5,000円 ※当日券は各席500円増し。 チケット販売/チケットぴあ 問い合わせ先/HEAT事務局 TEL 052-734-8866 HEAT公式サイト/http://heatofficial.com

ハント vs ネルソンほか、五味、山本KID、秋山、堀口、中井りんらトップファイターがUFCに参戦!

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撮影=後藤秀二
 2014年9月20日に、さいたまスーパーアリーナで行われる総合格闘技イベント『UFC FIGHT NIGHT JAPANA 2014』の記者発表会が、6月26日に東京・新宿のパークハイアット東京で開催された。  会見には当日のメインカードとなるマーク・ハント、ロイ・ネルソンのヘビー級2選手をはじめ、日本から五味隆典、堀口恭司、女子選手の中井りんが登場。会見は、このために来日したUFC社長のデイナ・ホワイトが中心となり、質疑応答がなされた。 _MG_2084.jpg  ホワイトは「日本は、MMA(総合格闘技)発祥の地といっても過言ではない特別な国。その日本に戻って来られてうれしい」と語った。また、壇上には先日現役を引退した「修斗」のスター選手・佐藤ルミナもおり、UFCと修斗がバンタム・フェザー級を対象にした新シリーズのプロジェクトで提携するというサプライズな発表も(詳細は後日発表予定)。 _MG_2178.jpg  この日、発表された対戦カードは、マーク・ハント vs ロイ・ネルソン、堀口恭司 vs クリス・カリアソ、中井りん vs ミーシャ・テイトの3カード。特に、日本人初の女性UFCファイターとなる中井は、いきなりUFCバンタム級3位のテイトとの対戦という好カード。ホワイトも「この一戦に勝利すれば、中井の名前を世界中が知ることになるだろう」と、中井に大きな期待を寄せていた。  ほか、当日会場には姿を現さなかったものの、約2年半ぶりの試合となる山本“KID”徳郁と秋山成勲の参戦も発表された。  メインとなるハントとネルソンはお互いに「エキサイティングな試合になるだろう」とコメント。スタンディングの打ち合いほか、寝技にも定評のある二人の試合だけに、どのような決着が見られるか楽しみなところだ。 _MG_2170.jpg _MG_2148.jpg  また、対戦相手の決まっていない五味は「世界ランキングに絡んでいきたいので、ファンに納得してもらえる相手をリクエストしている」と、やる気は十分。すでにUFCで2勝をあげている堀口は「エキサイティングな試合にしたい」と言葉少な目ながら、日本での試合に自信をのぞかせた。  また、当日は“体調不良”により会見を欠席した山本KIDに関してホワイトは「彼はなぜ欠席したかは分からないけど(笑)、ユライア・フェイバーとの試合も考えている」と、バンタム級の強者との対戦をにおわせた。  いまや世界中の格闘技シーンの頂点に立つUFC。その最高の舞台で、五味、中井ら日本人選手の試合を間近で見られるチャンスを、逃さないように! (取材・文=高橋ダイスケ) 『UFC FIGHT NIGHT JAPANA 2014』 開催日:2014年9月20日 場所:さいたまスーパーアリーナ 出場選手:マーク・ハント、ロイ・ネルソン、五味隆典、堀口恭司、山本“KID”徳郁、秋山成勲、中井りんほか チケット:VIP席10万円、RS席2万4,000円、S席9,800円(すべて税込み)

前田日明激白!「警察は地下格闘技を潰す方針」7年目の苦悩と不変の理念

maedaakira0618.jpg  リングス・前田日明が主催するアマチュア総合格闘技大会『THE OUTSIDER』(以下、アウトサイダー)。暴走族、チーマー、ギャングなどの「不良」をリングで戦わせ、格闘技を通じた更生を促すイベントとして人気を集めているが、7年目に突入した今、前田は何を思うのか? 昨年起きた乱入事件の顛末と余波、大会維持の苦労と今後の展望、そして多くの不良と接することで学んだ子育ての神髄などを、格闘王が語り尽くす! ──2008年3月に産声を上げたアウトサイダーも、いよいよ7年目に突入。安定期に入ったと言えるのでは? 前田日明(以下、前田) 全然安定期に入ってないですね。やはり世間の目ですよね。以前から何も変わってなくて……。昨年9月の大阪大会で事件【編注:大阪の地下格闘技団体『強者』の関係者がアウトサイダーの会場に乱入し暴れた事件】があって、世間が我々をどういうふうに見ていたのかということを、強く再確認しましたね。選手から一銭も取らずに、安いチケット料金で応援団も入りやすくして、選手のやる気を出すために賞金まで出して……。ランニングコストを入れると、ディファ有明なんかでは満員になっても赤字ですよ。そういう大会をコツコツ真面目にやってきたつもりなんですけど、世間はそうは見てくれていなかった。 ──と申しますと? 前田 事件のあと、スポンサーが3分の2、いなくなりました。放映権料も減額です。正直言って、興行を維持するのが苦しい状態ですよ。だから今、スポンサー探しに孤軍奮闘してますけど、これがなかなか……。 ──スポンサーを降りた人たちの声は? 前田 みな、コンプライアンスの問題だと言いますね。格闘技を通じた不良更生という大会趣旨を重々承知の上で協賛してくれていたはずなのに、今さらなんで? とビックリですよ。 ──前田さんは一貫して、コンプライアンスを徹底していますよね? 前田 徹底してますよ。今回の事件についても完全に対処しました。事情聴取のために大阪府警の方々が東京まで何度も来てくれたし、自分らも大阪まで何度も足を運びました。 ──昨年12月の大阪大会は厳戒態勢でしたね。 前田 アウトサイダーが用意したセキュリティーは110名。全員プロです。警察も90名ほど来て、機動隊のバスも2台。警察からも「サミットができる」と言われましたよ(笑)。 ──結局、あの乱入事件の犯人たちは、何が目的だったのでしょう? 前田 俺を挑発して、暴れさせたかったんでしょう。俺が問題を起こせば、アウトサイダーが興行を打てなくなる。彼らは自分たちの団体から、アウトサイダーに選手が流れるのを恐れて、アウトサイダーを潰しにかかった。やり方が用意周到でしたね。ある一班が外で不法駐車して警察を巻き込んで暴れる、別の一班が近くのマンションから消化器を盗んで会場でぶちまける、そして別の一班が消防署に「火事です」と通報する……といった感じに、分担して計画的にやったみたいですね。 ──事件後も、彼らから嫌がらせは? 前田 ありましたよ、いっぱい。昨年12月の大会前には、地元・大阪の選手全員や、うちの中心選手に、「(アウトサイダーには)出るな」という脅しが入りました。結果、地元の選手も出ない、地元選手の応援団のチケットも売れない、さらには警備上の問題で2階席も使えないという三重苦で、アウトサイダーの資金を全部吐き出しちゃった感じですね。今はなんとか存続させるために必死でやってます。俺、今年の1月から給料を取ってないんですよ。本当に。
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選手からの信頼も厚い
■アウトサイダーにはヤクザのヤの字もない ──今回の事件を踏まえて、地下格闘技とアウトサイダーの違いをあらためて教えてください。 前田 地下格(闘技)は結局、金儲けじゃないですか。リングサイド、いくらですか? 3万とか5万円とかで売ってるでしょう? アウトサイダーは1万円ですよ。地下格で賞金、いったいいくらですか? 出ないでしょう。そのくせ彼らは選手たちに切符を売るノルマを課して、売りに行っても売れないから暴れたりする。うち、そんなことしませんよ。リングスのほうから何枚売ってくれとか一度もない。あり得ない。 ──その他、違うポイントは? 前田 少なくとも、人から感謝されることはあっても、非難されることはないですね。過去にいろんな親御さんから感謝の手紙をもらったこともありますし。それに、地下格はほぼ例外なくヤクザとつながってるけど、うちはそういうつながりは一切ない。なんなら自分の身辺調査をすればいいですよ。ヤクザのヤの字も出てきませんから。うち、選手に弁護士もいるんですよ。弁護士が、黒い大会に出るわけがないでしょう。 ──アウトサイダーで名を売ったあと、各分野で活躍している選手も多いですね。 前田 黒石(高大)は俳優として頑張って前田敦子のPVにまで出るようになったし、武井(勇輝)なんかはアパレルの世界で成功してる。そういう選手が、地下格にいますか? 選手に正当な道を歩ませるような大会が、ありますか? ないでしょ。せいぜいヤクザの言いなりになって暴力振るって、逮捕される子が出るぐらいのもんでしょう。 ──乱入事件の実行犯らも続々と逮捕されていますね。 前田 警察は地下格を全部潰していく方針らしいですね。うちでも使ってるあるレフェリーは、いろんな地下格でもレフェリーをやってたらしいんですけど、先日とうとう彼にも警察から指導が入りました。「もし今後も地下格でレフェリーをするなら、暴力団と利益を共有する密接交際者と認定する」と。そうなると、銀行取引や保険取引が一切できなくなるんですよ。 ──警察はそこまで来てますか。 前田 来てます。 ──そんな中、アウトサイダーにもゲスト来場し、前田さんとも親しかった出版プロデューサーの高須基仁さんが、地下格闘技の興行に乗り出すという話があります。 前田 あれも結局、警察に潰された連中が、自分たちでは興行を打てないから、高須さんに目を付けて、担ぎ上げただけのことでしょう。高須さん、わかってないんですよ。一度そういう(密接交際者の)認定を受けちゃうと、彼が経営するモッツ出版も終わりますよ。本当にヤバい。軽い気持ちでやると、えげつないことになりますよ。それぐらい暴力団排除条例はハンパじゃないです。それをみんな、わかってない。わかってるのはヤクザだけです。だからヤクザは半グレの子たちを手先として使うんです。そこへノコノコ、高須さんのようなノリのいいおひとよしが来たら、まさに飛んで火に入る夏の虫ですよ。 ──高須さんの主催大会は8月に開催予定らしいです。 前田 やったところで大赤字ですよ。そのへんのガキンチョの集まりに、誰が3万や5万出します? 1万円でさえ、チケットを売るのは大変なのに。アウトサイダーがこうして何年も続いてるのは、利益を度外視してやってるからですよ。金がなくなれば、身銭を切ってるからですよ。 ──そうまでして続けたいと思う動機は? 前田 動機もクソもないですよ。アウトサイダーをやるまでは、平成の満ち足りた世の中で何をグレることがあるんだろうと不思議だったんですけど、よくよく話を聞くと、本当に不幸な連中も大勢いるんですよね。例えば宮永(一輝)っていう選手は、生まれてこの方、父親の顔も母親の顔も知らない。そのくせ彼は「若いときは両親を恨んだが、今は元気で幸せでいてほしい」なんてことを、リング上でスピーチしたんですよ。彼は以前、実家らしき場所を探して訪ねていったら門前払いされたこともあるのに、そういうけなげなことを言う。これは不幸の闇が深いな、と。なんとかしてやんないといけないな、と。アウトサイダーを通じて、そういう子たちに寄り添ってやりたいんです。 ──アウトサイダーの出場者に話を聞くと、前田さんのことを「心の父」と思っている選手が多いです。 前田 確かに、親に反抗するみたいな感じで突っ張ってくる子が多いですよね(笑)。彼らと付き合って、ひとつわかったことがあってね。子どもを育てるときに一番大事なことは何かというと、その子の反抗期に親が真摯に受け止めてあげることなんですよ。あとは、幼児期のスキンシップ。幼児期の深い傷は、人格的なトラウマになる。そして反抗期の受け止め方を間違えると、その子はもう価値観がひっくり返ってしまって、あらぬ方向に行ってしまうんですよね。 ──具体的に、どう受け止めるべきだと考えますか? 前田 ダメなことはダメだということを、はっきり教えてやるべきですよ。親はね、特に父親は、自分の子どもに対して、これを言ったら嫌われるだとか、これをしたら嫌われるだとか、そんなことはどうでもいいんですよ。父親の言うことを理解してもらうのは、父親が死んだあとでいいんです。でも言わなきゃいけないし、やらなきゃいけないんですよ。言って聞かなきゃ、殴らなきゃいけないんです。 ■6月22日大会の見どころは? ──選手に説教したことは? 前田 しょっちゅうです。このあいだも、ある選手の応援団がリングに椅子を投げ込んで、それがラウンドエンジェルに当たった事件があったんです。で、ラウンドエンジェルの所属事務所から、賠償だなんだで100万200万請求される事態になって……。だから、椅子を投げた奴と、その友人の選手を呼びつけて土下座させて、2時間みっちり説教しました。 ──一件落着しましたか? 前田 一件落着させました。ちゃんと金も出させました。何百万ではないけどね。二人とも猛省してましたよ。椅子を投げた奴は26歳。小2で父親を亡くすなど複雑な家庭で育ってはいるんだけど、それにしたって26歳にもなって何をやってるんだ、と。女手ひとつでお前を育ててきた母親の気持ちを考えたことがあるのか、と。思いっきり怒りましたよ。 ──いろいろと大変ですね……。 前田 昔は構われすぎて反抗して一時的に不良になるけど、ある程度の年齢になったら親の言ってることの意味がわかって、「あ、俺、格好わりーな」と気付いて更生するパターンが多かった気がするんです。それが今は、放任主義の名の下の無関心なんですよね。子どもに対して。精神的な捨て子が多いんですよ。だからみんな、根を下ろす場所を探してる。だけど根を下ろせない。だから不安定なんです。自分の好きなことをやりたいけど、それさえもわからない。それを見つけたところで、根を下ろせるかどうか不安なんです。 ──不良の質が昔と変わってきている、と。 前田 昔の不良には帰る場所があった。「家」ですよ。頑固オヤジに5~6発ドツかれるけど、謝れば家に入れてくれる。今はそれさえもない。家に帰っても真っ暗で誰もいない、っていうケースが多いんですよ。 ──そういう若者たちにとって、アウトサイダーが「家」になっているのかもしれませんね。父親役ともいえる前田さんが2時間本気で説教すると、人の心は変わるものですか? 前田 変わると思いますよ。俺ははっきり言いますからね。ダメなもんはダメ、ならぬことはなりませぬ、と。椅子を投げた奴も刺青入った不良でしたけど、俺に叱られて泣いてましたよ。きっとこれまで真摯に向き合ってくれる大人がいなかったんでしょう。子どもって、ムキになって向き合ってほしいんですよ。生の感情でね。怒ったなら怒った感情で怒ってほしいし、褒めるなら褒める感情で褒めてほしい。怒ってるのに褒めるとかのウソは俺も嫌だし、子どもたちにも逆効果ですよ。 ──そんなアウトサイダーですが、6月22日にディファ有明で行われる次回大会では、初めて女子選手が出場しますね? 前田 更生はいいけど、なんで男女差別するのか? と言われて、それもそうだな、と(笑)。俺は感覚が古い部分もあって、女の子が殴り合って顔が腫れるのはどうなんかな、見てられないな、と最初は思ったんだけど、いろんな人に話を聞いたら、今は女性モデルがボクシングをやるような時代ですよ、と言われて。ああ、そういう時代なのか、と。 ──女子選手は、どこで探したんですか? 前田 公募しました。一人は武井(勇輝)の道場からのエントリーです。女子の試合は初めてなんで、危険要素をなるべく減らして、とりあえず1試合、様子見でやってみます。で、回を追うごとに女子の試合を増やしていって、応募者が増えてきたら女の子だけの大会をやっても面白いかもね。 ──そのほか、近未来のビジョンは? 前田 不良だけに限定せず、まだ見ぬ才能を発掘して世に送り出す場として定着させていって、やがてアウトサイダーという大会を海外にも広めていけたらいいですね。 (取材・文=岡林敬太) 【次回大会告知】 『THE OUTSIDER第31戦』 2014年6月22日(日曜日)東京・ディファ有明 14:00開場(予定)15:00開始(予定) SRS席/10,000円 RS席/7,000円 S席/6,000円 リングス公式サイト http://www.rings.co.jp

「アニメがあったから、道を踏み外さなかった」“世界最強のオタク”を目指す格闘家・岡倫之の壮絶な半生

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撮影=後藤秀二
 空手、柔道、レスリング、サンボ、ビーチレスリング、グラップリング、パンクラチオンなど数々の格闘技に挑戦し、国内外の大会で次々と優勝を決めている新進格闘家・岡倫之。彼の動向が、今ネット上を大きくにぎわせている。公開されたプロモーションビデオでは、まるで肉食獣を思わせるワイルドな闘いぶりを見せる一方、アニメやゲームに登場する美少女キャラグッズに囲まれたプライベートな姿を惜しげもなく披露。大会に出場すれば、『ミルキィホームズ』や『ラブライブ!』など人気アニメの美少女がほほえむシャツやグッズに身を包んでバッチリ入賞を決めるという具合に、格闘技にも、アニメファンとしても全力投球。4月25、26日に開催されたアジアパンクラチオン選手権大会でも、2部門でそれぞれ3位に入賞。『ミルキィホームズ』グッズ装着で授賞式に臨み、大きな話題を呼んだ。  そんな「世界最強のオタク」を目指す岡選手だが、この4月1日から新日本プロレスの親会社としてプロレス界をけん引する株式会社ブシロードに入社したばかり。新人研修を受けつつ、レスリングでのオリンピック出場を目指すというハードな日々を送っている。そんなピカピカの新卒社会人でもある岡選手に、そのオタク人生と格闘家としての目標を聞いてみた! ■輝かしき、その戦績! ──萌えキャラや声優ネタが詰まったブログやPVで一躍話題を集めた岡選手ですが、本当にお好きなんですね(取材時には、2012年に開催された声優ユニット・ミルキィホームズ武道館ライブグッズのTシャツ姿で登場)。 岡倫之 選手(以下、岡) (ちょっと照れながら)大好きですね。 ──もともとブシロードという会社の存在は知っていましたか?  はい。昔から知っていました。僕が大学1年か2年の時に、冗談で「アニメの会社だし名前もかっこいいし、いずれはブシロードに所属して試合に出たい」なんて言っていたんです。ただの冗談だったのですが、それが実現するとは……。 (一同笑)
ネット上で話題になったPV
 ブシロードに近づきたいからこういうキャラ付けをしている、とか言われたりもするんですけど、ブシロードが新日本プロレスの親会社になったことも当時は全然知りませんでしたし、このライブ(Tシャツを指しながら)があった時も全然知りませんでした。最初のきっかけは、2012年6月に「ブシロードクラブ」[註]の永田裕志監督が大学に来て、今度ブシロードが新しくクラブを立ち上げるというお話を聞いた時です。僕の父親は自衛隊員だったんですが、自衛隊はレスリングが強かったので、当時は自分も自衛隊に入ろうと思っていたんです。なので、その時はあまり気には留めませんでした。でも、2012年12月のコミックマーケットでブシロードの木谷高明社長にお会いし、「この人についていきたい」「ブシロードに入りたい」と思うようになりました。 ──なるほど。そんな岡選手ですが、先に出会ったのはアニメと格闘技のどちらだったのでしょうか?  格闘技ですね。小学生の頃に空手と柔道を始めて、レスリングを始めたのは高校生の時です。大学に入ってからはビーチレスリング、サンボ、グラップリング、パンクラチオンに挑戦して、今は総合格闘技をやっています。 ──それぞれ輝かしい成績を残していますね。  まず、大学1年の時に大洗でのビーチレスリングに参加したんですが、その時は1回戦負けでした。その後、4年で再挑戦し、優勝と最優秀選手賞をいただきました。それ以外だと、3年の時にサンボのユニバーシアードで優勝したほか、グラップリング、パンクラチオンの大会でもそれぞれ優勝しました。 ──岡選手といえば、アニメグッズに身を包んで大会に出場し、その姿が話題になることも多いです。  大学4年の時に出場した大洗のビーチレスリングでは、『ガールズ&パンツァー』の舞台ということで、ガルパンのウエアを着て参加しました。それと今年2月9日に『ラブライブ!』のコンサートがあったのですが、ちょうどサンボの試合とかぶってしまい参加できなかったので、気分だけ味わおうと『ラブライブ!』のシャツを着て参加しました。その時にネットで「世界最強のラブライバー」と、ちょっと話題になりました(笑)。 ■明日への活力だったアニメ
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憧れの選手は、長島☆自演乙☆雄一郎選手。
──アニメは、いつ頃から見るようになったのでしょうか?  小学生の時から子どもなりにアニメは好きだったんですけど、本格的に目覚めたのは中1の時に見た『スクールランブル』です。かわいい女の子がたくさん出てきて、そして主役を張るっていうアニメは当時あまり見たことがなくて、一気にのめり込んでしまいました。中学生ということでお金はあまりなかったんですけど、DVDも全巻そろえました。あとは兄にも協力してもらって、コミックスの限定版とかも集めました。そして中3の時に『涼宮ハルヒの憂鬱』が始まって、これもすごくハマりましたね。 ──中学時代に洗礼を受けちゃったわけですね。その後、高校ではどんなオタクライフを送られたのでしょうか?  高校時代はレスリング漬けの生活でしたし、僕も全国優勝を狙っていたので全然アニメを見られませんでした。一日中練習をして、帰宅したらちょっとアニメを見る、という感じでした。ただ、その頃『らき☆すた』は見ていて、舞台は埼玉だったんですよね。僕の通っていた高校も埼玉だったので、毎年、鷲宮神社には初詣に行っていました。  ただ実は、アニメオタクということと、気弱な性格ということで、高校までずっといじめを受けていまして……。当時、すでにレスリングでも成績を多少残していたのですが、「こいつは図体ばかりだ」「いつでも倒せる」ということで、……不良の人から10数人がかりでリンチを受けたりというのもあれば、物を隠されたり捨てられたり、陰険ないじめも受けました。 ──そうだったんですね。いじめに遭っても、アニメ好きを貫いてこられたのはなぜでしょうか?  逆につらいからこそ、その世界に逃げていたってことでしょうね。レスリングもつらくて、学校生活もつらくて、でも道を踏み外さないで今まで生きてこられたのは、アニメがあったからこそだと思います。アニメを見ている時だけは嫌なことを全部忘れられて、ただ楽しかったんです。こういう主人公になりたいとか、こういう青春を送りたいとか思いながら高校3年間を乗り切りました。 ──アニメが明日への活力だった。  僕にとってはそうでした。だから、どちらかというとスポーツではなく、アニメで精神力を鍛えられたのかな。全国大会で優勝するという目標もありましたし、明日も嫌なことがあるかもしれないけど、いつかアニメの中のような青春が訪れるんだろうと思いながら頑張りました。その結果、ブシロードという会社に入ることになったわけですが、これも運命だと勝手に思っています。それに、アニメ好きを貫いたといっても、高校生までは隠れオタクだったんです。でも、どこからか漏れていじめの対象になったりしたので、逆に大学からは堂々とするようになりました。  というのも、全国大会などを通して世の中にはいろいろな人がいるということを知り、人に合わせて生きても仕方がない。もし自分を出して嫌われたとしても、もうその人とは縁がなかったとあきらめるようになりました。それよりも、本当の自分をいいと思ってくれる人が本当の友達だと思うようになりまして、大学からはアニメオタクの部分をどんどん出していくようにしました。最初の頃は否定的な人も多かったんですが、それでも貫き通していったら、だんだんと認めてもらえるようになりました。 ■世界最強のオタクを目指して!
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この日のために、剃り込みを。もちろん『ミルキーホームズ』のM!
──当初は格闘技の世界に、オタク趣味を持ち込むことに対する拒否感もあったということでしょうか?  そういうのもあったと思います。アニメといえば、なよなよしたものという固定観念があったのも事実だと思います。確かに、男らしさというものからはかけ離れているとは思いますけど、主人公が夢をあきらめなかったり、仲間との絆を大切にしたりしている姿からはいろいろと学ぶことは多いですし、見る人によっては教科書になると思います。だから、先入観で物事を決めるのはよくないです。実際にアニメを見てつまらないと思うなら仕方がないのですが、見もしないで否定するということは、その人自身も何も学ぶことがないということじゃないでしょうか。  僕自身、現在いろいろな格闘技をやっているわけですが、それに対して「お前は何がやりたいんだ」「そんなことでオリンピックには行けない」という方もいるんです。でも、それこそやってみないと分からないじゃないかと思っています。もちろん一つの競技を極めてトップを狙うのもいいと思うんですが、僕は僕なりの強さを見だしたいと思っています。 ──岡選手がさまざまな競技で頂点を目指す理由は、なんなのでしょうか?  そもそも高校の頃に「レスリングが強いからって調子に乗るな。お前なんてレスリングがなかったら、ただのデブなオタクだ」と言われたことがありまして、じゃあレスリング以外も極めてやろうと思ったことがきっかけですね。レスリング以外の道も極めたら、それは強さの証明になるんじゃないかなと。今はまだまだ証明しきれてないですね。もっと成績を残していきたいです。みんなが「無理だ」と言うことも、頑張ればやれないことはない、というアニメの主人公たちが教えてくれたことです。そういう姿って、本当に格好いいと思っているんです。ほかの人は、この道は確率的に難しいからやめようとか思うかもしれないけど、僕はバカなのでそんな確率とかは考えずに、やれる限りとことんやっていきたいです。 ──まさに、少年漫画の主人公みたいな生き様ですね! そんな岡選手の目標を教えてください。  世界最強のオタクになることです。世界最強というのは強さだけではなく、知名度もある選手になるということでもあります。今、プロレスはすごく盛り上がってはいるのですが、プロレスファン以外には意外と選手の名前くらいしか知られていなかったりします。レスリングだと吉田沙保里選手は知っているけどルールはよく知られていない、というような状況が多くあるように思います。いくら強くても、スポーツを認知する人が増えないと意味はないわけです。スポーツ選手というのは、いわば看板を背負って闘う存在ですので、ブシロードという宣伝力の強い会社を通じて岡という人間やレスリングのことをもっと知ってもらって、応援もしてもらって、一緒に盛り上がっていけるように頑張っていきたいと思います。 ──力強いコメントありがとうございます! そんな岡選手のおすすめアニメはなんですか?  『ミルキィホームズ』ですね。これはもう永久に続いてほしいです。今日の髪形も、『ミルキィホームズ』のMと、メンバー4人を意味する4本ラインを入れてもらいました。初の武道館ライブの時も、当時は週7日の練習があってほとんどイベントなどには行けなかったんですけど、この日ばかりはなんとかスケジュールを縫って参加しました。その代わり、大学4年の12月に引退してからは、今まで行けなかった分を取り戻すようにいろんなイベントに参加しました。この1月から3月は、人生最大のオタ充期間でしたね。その時に生まれて初めてオタク友達もできて、楽しさを分かち合ったり、好きなアニメについて語り合ったりしました。やっぱりライブって楽しいですよね。 ──最後に、ブシロードでやってみたいことを教えてください。  たくさんあるんですが、まずはミルキィホームズさんと一緒にお仕事をしたいと思っています! そして、プロデビューできたあかつきには、皆さんが歌ったり踊ったりしている中でリングに入場したいと思います! ──ちなみに、一番推しているメンバーはどなたですか?  徳井青空さんです。元気があるけどしっかりしている部分もあって、思わず応援したくなるんですよね。 ──ミルキィホームズのメンバーと共演される日を、楽しみにしています! ありがとうございました。 (取材・文=有田シュン[シティコネクション]) ※註 2012年7月にスタートした、オリンピック出場を目指すアマチュアレスリング選手の育成を目的とするブシロードによるプロジェクト。本人の希望があれば、将来的にプロレスラーへの転向も可能。4月より岡選手も所属。 ●岡倫之公式ブログ「オカロード」 <http://ameblo.jp/nihon0612/>