「マスコミには清武の味方になる理由がないだけ! 巨人の裏金は他球団が悪い」エモやんが語る球界と巨人

【プレミアサイゾーより】
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(写真/丸山剛史)
──元選手であり、著作やスポーツ紙などで持論を展開してきた”エモやん”こと、プロ野球解説者の江本孟紀氏。彼は、巨人にまつわる一連の事件や現状をどのように見ているのだろうか。  清武(英利)さんの乱は、ただの内輪もめだよね。GM(ゼネラル・マネージャー)を清武さんにやらせてしまったのがそもそも問題だったんですよ。彼は読売新聞の社会部で部長をやっていて、大きな事件を追いかけたりしていたかもしれないけど、野球に関しては素人。それを育成制度が評価されて勘違いして、チームの編成や人事にまで首を突っ込むようになった。現場からしてみたら、「野球素人に何がわかるんだ」っていう気持ちが強いですよ。補強にしたって、使えない外国人選手を取ってきては、現場に押し付けて。原(辰徳)監督も大分不満がたまっていたはず。ほんとは熱血漢だったのかもしれないけど、結果球界と自分のイメージを悪くしただけでしたね。  そもそも、アメリカのメジャーリーグ(MLB)のように、GM制度を取り入れたいんだったら、まずは複数オーナー制にするなど、組織の作り方からMLBに倣うべきなんですよ。日本の場合は親会社が100%出資している球団に、上から出向してきた形だけのGMでしょう。結局親会社やオーナーの発言力が強くなるから、上辺だけの制度を取り入れたって上手くいくはずがない。清武さんがGMに就任した時に、僕は「清武さんは読売を退社して、GMとして巨人と契約するべきだ」って主張したんだけど、結局出向の形でGMになって、結果、こうなっちゃった。当時、偶然清武さんと飛行機で隣の席になったことがあって、乗っている間中、MLBのシステムに関してレクチャーもしたんだけどね。その時は感心してたのになぁ……。こんないざこざが起きた場合、MLBだったらコミッショナー【編註:各チーム、各団体の上に立ってその統制をとる最高権威者のこと】が最大の権限を持っているから、巨人に厳重注意したり、処分したりできるんだけど、日本の場合コミッショナーはただのお飾り。結局、巨人を筆頭に、12球団のオーナーの権限ですべてが決まってしまうんです。  この一連の件に関して、一部では「球界関係者は巨人が怖くて、ナベツネ(渡邉恒雄・読売新聞グループ本社会長兼主筆)のことをバッシングできないんだよ」って言う人もいるけど、この件では巨人に敵対するというよりも、清武さんの味方になる理由がないんだよね。ナベツネさんにも悪いところがあるのはわかってるけど、我々だって現場のことがわかっていない素人に対しての意地がある。日本シリーズ直前に会見を開くあたり、その感覚がズレているでしょう。本当に野球を愛している人間なら、大事な試合の前にあんな騒動を起こしたりしませんよ。  それに巨人って、本来は批判に対して懐が深いんですよ。僕もスポーツ紙なんかにいつもボロクソ書いていますけど、文句言われたことなんか一度もない。だから、巨人を恐れて批判しないっていうムードはないよね。そうそう、ナベツネさんって、あれだけ巨人のことをボロクソに書いている「夕刊フジ」のことも、意外と好きだったりするんですよ。ある記事を気に入って、その記者を読売新聞本社に呼んだりしたこともあるらしくて。ところが「夕刊フジ」は、当時清武さんから出入り禁止を食らっていてさ。それを聞いたナベツネさんの鶴の一声で、出禁が解除になった。でもその記者は、「出禁のほうが遠慮なくボロクソにできたんだけどねぇ。かえってやりづらくなったよ」なんてボヤいてましたけど(笑)。 ■「どこも買えないんだろ?」契約金問題の本当の事情  今回の件に関しては、”飼い犬に手を噛まれた”ナベツネさんを見てるのも面白いし、ナベツネさんも自分の発言がメディアに取り上げられて騒ぎになっているのを楽しんでいるところもあるでしょう(笑)。あの人はエンターテイナーだから。とはいえ、ナベツネさんも86歳。さすがにもう長くないし、巨人はナベツネさんが死んでからが問題だよ。あの人がいなくなっちゃうと、各球団が好き勝手言い始めると思う。だから、それまでにMLBのようなコミッショナーを頂点とした球界システムを整えておく必要がある。その場合もやはり、巨人が先頭に立って旗を振らないといけないと思うよ。  巨人は金満球団で、なんでも金にモノを言わせているという印象が強いけど、もともと10億円とも言われた阿部(慎之助)や高橋(由伸)の契約金や裏金疑惑に関しても、巨人だけを責められる話じゃない。そもそも、他球団が有望選手を巨人に取られないように裏金を渡し始めたんだから。FA(フリー・エージェント)制度で強引な補強をしていると言われている件も、他球団が年棒の高いFA選手を雇えないから巨人が手を挙げているだけ。「どうせどこも買えないんだろ?ウチは金あるから買うけど」みたいな(笑)。まだまだ、懐にも体力的にも巨人には余裕がある。やはり、巨人が率先して改革しないとプロ野球は変わらないですよ。ソフトバンクの孫(正義)さんや、楽天の三木谷(浩史)さんのような、新時代の経営者とか呼ばれてる人たちが参入してきて、大きく変えてくれるかなと思いきや、結局彼らだって、旧態依然としたシステムの中でしかやれていないでしょう? それがいい証拠です。  僕の年代だと、心の隅に”巨人願望”ってあるのよ。四国の田舎(高知)出身だから巨人しか知らなかったし、長嶋(茂雄)さんに憧れたりもした。僕が現役だった時代だって、毎日テレビ放送があって、後楽園球場に観客が5万人も入っていて、巨人はとても人気があった。世の中全体に「巨人に勝たせなきゃいけない!」っていう空気すらできてたからね。巨人と対戦してると、7回くらいから急にストライクゾーンが厳しくなったりして(笑)。審判が意識的にやっていたのかどうかはわからないけど、それだけ、巨人中心に野球界が回ってたんだよ。でも、僕は阪神タイガースに入って、巨人が”親の敵”みたいになっちゃった。だから、巨人愛は持っていないけど、球界を変革してくれることには、これからも期待してますよ。 (文/高橋ダイスケ) 江本孟紀(えもと・たけのり) 1947年、高知県生まれ。現役時代は南海ホークスや阪神タイガースで投手として活躍し、引退後は、野球解説者、政治家として活躍。エモやんの愛称で親しまれ、南海時代から、その歯に衣着せぬ物言いで人気を集めた。近著に『野村克也解体新書』(無双舎)、 『「アホ」がプロ野球を滅ぼす』(KKロングセラーズ)ほか。 【「サイゾーpremium」では他にも巨人タブーを暴く記事が満載!】『Gファイル』執筆者のジャーナリスト・武田賴政が指摘! 「球界が角界のように腐敗するかの分水嶺」スポーツライター永谷脩が苦言「ついに表面化した巨人軍の”カネ”と”驕り”」「週刊ベースボール」編集長・小林光男が語るファン心理 盟主だからこそ表に出た醜聞の意義とは?
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清武の乱、契約金超過問題、トドメに原の1億円……紳士なんかじゃない! 巨人軍スキャンダル史

【プレミアサイゾーより】
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『私の愛した巨人』(ワック)
 “球界の紳士””球界の盟主”と呼ばれてきた読売巨人軍が、「週刊文春」6月28日号の報道に端を発するスキャンダルに、揺れている。かねてより同球団に対しては球界の内外から毀誉褒貶相半ばしてきたが、今回の事件や”清武の乱”といった騒動が相次ぐなど、一体巨人軍はどうしてしまったのか? 球界関係者や昔からのファン、あるいは球団を取材してきた人物たちは、今の巨人軍をどう捉えているのか。それぞれの立場からの視線によって、現在の”巨人像”を浮かび上がらせてみよう――。 「巨人軍は常に紳士たれ」「巨人軍は常に強くあれ」「巨人軍はアメリカ野球に追いつき、そして追い越せ」――これは、読売巨人軍の創設者たる読売新聞社主・正力松太郎が遺した「巨人軍憲章」だ。日米野球興行出場チーム「大日本東京野球倶楽部」(1934年発足)から、「東京巨人軍」と改称された36年に正力が示したこの訓示は、とっくの昔に消え去った昭和の夢といっていいだろう。  巨人が「紳士ではない」ということは、球団発足から今日に至るまでのさまざまなスキャンダルがそれを証明している。プロ野球史上最も有名な、巨人が引き起こした醜聞といえば、78年の「空白の一日」事件【註1】だろう。前年のドラフト会議にてクラウンライターライオンズ(当時)の指名を拒否し、アメリカに留学中だった江川卓と、野球協約の穴を突く形で電撃契約。ほか11球団のみならず、世間からの大非難を浴びた。その後も、85年のKKコンビドラフト事件【註2】、90年の桑田真澄野球賭博疑惑【註3】、97年の高橋由伸入団にまつわる裏金疑惑【註4】、99年の篠塚和典コーチ車庫飛ばし事件【註5】、04年の一場靖弘”栄養費”事件【註6】……と、”順調に”スキャンダルを積み重ねてきた。  そして11年から今年にかけて、またしても球界を揺るがすようなトラブルが、巨人を震源として立て続けに巻き起こっている。11年日本シリーズ(福岡ソフトバンクホークス対中日ドラゴンズ)開始の前日であった11月11日、清武英利球団代表(当時)が、「読売巨人軍のコンプライアンス上の重大な件」を告発する記者会見を開催した。内容は、来季の巨人のヘッドコーチ人事について、渡邉恒雄球団会長が不当に介入し、同氏の”鶴の一声”によって人事がめちゃくちゃにされている。渡邉氏による巨人軍・プロ野球の私物化を許すことはできない――というもの。オリンパス事件が世を騒がせていた折、「コンプライアンス上の」と言うから「すわ、野球賭博の告発か」などと色めき立った野球ファン・マスコミは、いささか肩透かしを食らった格好になった。のちに「清武の乱」と呼ばれることになるこの告発については、当事者たる清武氏の言葉も参照してほしいが、巨人を見舞ったスキャンダルはこの後も容赦なく続いている。 ■「清武さんへ」と題された異例の呼びかけの行方は?  さらに今年3月15日、朝日新聞朝刊の一面を、「巨人、6選手に契約金36億円 球界申し合わせ超過」という見出しが飾った。97年~04年度に入団した、阿部慎之助選手・野間口貴彦選手・高橋由伸選手・上原浩治選手・二岡智宏選手・内海哲也選手の6人に対し、球界で申し合わせた新人契約金の最高標準額(1億円+出来高払い5000万円)を超える契約を結んでいたことをすっぱ抜くスクープだった。確かに”申し合わせ”は厳密なルールではないし、違法行為でもない。かつて横浜ベイスターズ(現DeNA)や西武ライオンズにおいても、契約金の超過が発覚したことはある。しかし、前出の一場靖弘にまつわる”前科”もあり、また何よりこの「36億円」という額のあまりの大きさが、かねてより批判されてきた”金にものを言わせて選手を引っ張ってくる”という巨人のやり方をさらに強調し、世間の反発を呼び起こした。  そして6月21日、「週刊文春」(文藝春秋)が、原辰徳監督の不倫スキャンダルをスクープ。現役巨人選手だった88年、関西遠征に際して球団で宿泊していたホテル従業員の女性と不倫関係に陥り、06年にその女性の日記を持っているという男性2人から1億円を要求され、原監督がこれに応じたとする内容だった。日記には原以外にも、2人の巨人コーチ(88年当時は同球団選手)の名前が記されていたとされる。この報道が世に出るとすぐ原は「清武さんへ」と題する談話を発表。「巨人軍の選手、OB、関係者を傷つける報道が相次いでいます。たくさんの暴露が行われ、巨人軍関係者を混乱させ、選手、OBを苦しませています。(略)こんなことがなぜ続くのか。清武さんのほかに、いったいだれがいるのか」と、本件の情報元が清武氏であると名指しで非難した(清武氏はこうした巨人側の発言を名誉毀損とし、7月25日に提訴)。原を脅した男性2人は暴力団関係者とされ、うちひとりは現役選手の父と報じられている。さらには、この男性2人と原を仲介したのが、巨人出身である現横浜DeNAベイスターズ監督・中畑清であったという報道も飛び出し、暴力団排除の機運が上がり続ける世の中において、巨人のずさんな体質が露呈した格好となった。  巨人は確かに発足の当初から球界における別格であり、数々の伝説やスーパースターたちが彩る華やかな歴史があり、それゆえに異形の存在でもある。以降の本特集では、元プロ野球選手や読売新聞関係者、巨人を取材してきたジャーナリスト、そして熱烈なファンら、識者たちの目を通して、現在の巨人軍の姿を見ていきたい。そこに浮かび上がるのは、崩落寸前の”盟主”の看板か、かつての輝きが垣間見える栄光の残滓なのか――。 (文/松井哲朗) ■巨人裏面史 【註1】「空白の1日」事件(78年) 77年のドラフトでクラウンライターライオンズから1位指名された江川卓。指名を蹴って1年浪人するが、同球団の入団交渉権が切れた78年11月21日、突然巨人入りを発表。翌日にドラフト会議を控え、”空白の1日”となる同日であれば希望の球団に入団できるという野球協約の穴を突いた契約だった。当然大問題になり、ドラフト会議は大荒れ。結局、江川はいったん阪神に入団し、その後、小林繁とのトレードによって巨人入りを果たした。 【註2】KKコンビドラフト事件(85年) PL学園の同級生だった清原和博と桑田真澄。巨人入りを熱望する清原に対し、桑田は早稲田大学進学を表明。ドラフトの目玉は清原、桑田は回避との予測が立ったが、実際は巨人が桑田を1位指名。清原には巨人以外の6球団から指名が集中した。桑田・巨人間の密約の存在が囁かれた。 【註3】桑田真澄野球賭博疑惑(90年) スポーツメーカーの営業マンだった中牧昭二氏が、告発本『さらば桑田真澄、さらばプロ野球』(リム出版)で、アドバイザリー契約の見返りに桑田から多額の金品を要求されたと暴露。当時桑田が親しかったメンバーズクラブ社長に登板日を伝えていたような描写があったため、野球賭博に関与していたのでは、と疑惑に火がついた。 【註4】高橋由伸入団裏金疑惑(97年) 97年ドラフトの目玉・高橋由伸。スカウト合戦をヤクルトが制し、読売グループ傘下の報知新聞さえ「ヤクルトへの逆指名」と報じていたが、巨人へ逆指名入団。その後、高橋の父が所有する不動産が焦げついて莫大な借金を背負っていたこと、それを巨人サイドが肩代わりしたことが報じられる。 【註5】篠塚和典コーチ車庫飛ばし事件(99年) 99年10月15日、巨人軍出身でコーチを務めていた篠塚和典が、家宅捜索を受けた。所有者を偽ってナンバーを登録する、「車庫飛ばし」を行っていた容疑で経営者が逮捕された自動車販売会社の役員に名を連ねていたことから、こうした事態が勃発。同社は後藤組のフロント企業とされていたため、篠塚本人と裏社会の交友も取り沙汰された。 【註6】一場靖弘”栄養費”事件(04年) 明治大学野球部4年だった一場靖弘に、巨人が栄養費などと称して総額約200万円を渡していたことが発覚。球団オーナー渡邉恒雄と社長の土井誠、球団代表の三山秀昭らが引責辞任した。 【「サイゾーpremium」では他にも巨人タブーを暴く記事が満載!】「マスコミには清武の味方になる理由がないだけ! 巨人の裏金は他球団が悪い」エモやんが語る球界と巨人「責任転嫁ばっかりしてると選手に呆れられる」“球界の野良犬”愛甲猛が知る原スキャンダルと野球賭博「巨人の四番に女性問題がないわけがない」ビビる大木が嫌いになれない“1億円を払う”原の天然ぶり
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清武の乱、契約金超過問題、トドメに原の1億円……紳士なんかじゃない! 巨人軍スキャンダル史

【プレミアサイゾーより】
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 “球界の紳士””球界の盟主”と呼ばれてきた読売巨人軍が、「週刊文春」6月28日号の報道に端を発するスキャンダルに、揺れている。かねてより同球団に対しては球界の内外から毀誉褒貶相半ばしてきたが、今回の事件や”清武の乱”といった騒動が相次ぐなど、一体巨人軍はどうしてしまったのか? 球界関係者や昔からのファン、あるいは球団を取材してきた人物たちは、今の巨人軍をどう捉えているのか。それぞれの立場からの視線によって、現在の”巨人像”を浮かび上がらせてみよう――。 「巨人軍は常に紳士たれ」「巨人軍は常に強くあれ」「巨人軍はアメリカ野球に追いつき、そして追い越せ」――これは、読売巨人軍の創設者たる読売新聞社主・正力松太郎が遺した「巨人軍憲章」だ。日米野球興行出場チーム「大日本東京野球倶楽部」(1934年発足)から、「東京巨人軍」と改称された36年に正力が示したこの訓示は、とっくの昔に消え去った昭和の夢といっていいだろう。  巨人が「紳士ではない」ということは、球団発足から今日に至るまでのさまざまなスキャンダルがそれを証明している。プロ野球史上最も有名な、巨人が引き起こした醜聞といえば、78年の「空白の一日」事件【註1】だろう。前年のドラフト会議にてクラウンライターライオンズ(当時)の指名を拒否し、アメリカに留学中だった江川卓と、野球協約の穴を突く形で電撃契約。ほか11球団のみならず、世間からの大非難を浴びた。その後も、85年のKKコンビドラフト事件【註2】、90年の桑田真澄野球賭博疑惑【註3】、97年の高橋由伸入団にまつわる裏金疑惑【註4】、99年の篠塚和典コーチ車庫飛ばし事件【註5】、04年の一場靖弘”栄養費”事件【註6】……と、”順調に”スキャンダルを積み重ねてきた。  そして11年から今年にかけて、またしても球界を揺るがすようなトラブルが、巨人を震源として立て続けに巻き起こっている。11年日本シリーズ(福岡ソフトバンクホークス対中日ドラゴンズ)開始の前日であった11月11日、清武英利球団代表(当時)が、「読売巨人軍のコンプライアンス上の重大な件」を告発する記者会見を開催した。内容は、来季の巨人のヘッドコーチ人事について、渡邉恒雄球団会長が不当に介入し、同氏の”鶴の一声”によって人事がめちゃくちゃにされている。渡邉氏による巨人軍・プロ野球の私物化を許すことはできない――というもの。オリンパス事件が世を騒がせていた折、「コンプライアンス上の」と言うから「すわ、野球賭博の告発か」などと色めき立った野球ファン・マスコミは、いささか肩透かしを食らった格好になった。のちに「清武の乱」と呼ばれることになるこの告発については、当事者たる清武氏の言葉も参照してほしいが、巨人を見舞ったスキャンダルはこの後も容赦なく続いている。 ■「清武さんへ」と題された異例の呼びかけの行方は?  さらに今年3月15日、朝日新聞朝刊の一面を、「巨人、6選手に契約金36億円 球界申し合わせ超過」という見出しが飾った。97年~04年度に入団した、阿部慎之助選手・野間口貴彦選手・高橋由伸選手・上原浩治選手・二岡智宏選手・内海哲也選手の6人に対し、球界で申し合わせた新人契約金の最高標準額(1億円+出来高払い5000万円)を超える契約を結んでいたことをすっぱ抜くスクープだった。確かに”申し合わせ”は厳密なルールではないし、違法行為でもない。かつて横浜ベイスターズ(現DeNA)や西武ライオンズにおいても、契約金の超過が発覚したことはある。しかし、前出の一場靖弘にまつわる”前科”もあり、また何よりこの「36億円」という額のあまりの大きさが、かねてより批判されてきた”金にものを言わせて選手を引っ張ってくる”という巨人のやり方をさらに強調し、世間の反発を呼び起こした。  そして6月21日、「週刊文春」(文藝春秋)が、原辰徳監督の不倫スキャンダルをスクープ。現役巨人選手だった88年、関西遠征に際して球団で宿泊していたホテル従業員の女性と不倫関係に陥り、06年にその女性の日記を持っているという男性2人から1億円を要求され、原監督がこれに応じたとする内容だった。日記には原以外にも、2人の巨人コーチ(88年当時は同球団選手)の名前が記されていたとされる。この報道が世に出るとすぐ原は「清武さんへ」と題する談話を発表。「巨人軍の選手、OB、関係者を傷つける報道が相次いでいます。たくさんの暴露が行われ、巨人軍関係者を混乱させ、選手、OBを苦しませています。(略)こんなことがなぜ続くのか。清武さんのほかに、いったいだれがいるのか」と、本件の情報元が清武氏であると名指しで非難した(清武氏はこうした巨人側の発言を名誉毀損とし、7月25日に提訴)。原を脅した男性2人は暴力団関係者とされ、うちひとりは現役選手の父と報じられている。さらには、この男性2人と原を仲介したのが、巨人出身である現横浜DeNAベイスターズ監督・中畑清であったという報道も飛び出し、暴力団排除の機運が上がり続ける世の中において、巨人のずさんな体質が露呈した格好となった。  巨人は確かに発足の当初から球界における別格であり、数々の伝説やスーパースターたちが彩る華やかな歴史があり、それゆえに異形の存在でもある。以降の本特集では、元プロ野球選手や読売新聞関係者、巨人を取材してきたジャーナリスト、そして熱烈なファンら、識者たちの目を通して、現在の巨人軍の姿を見ていきたい。そこに浮かび上がるのは、崩落寸前の”盟主”の看板か、かつての輝きが垣間見える栄光の残滓なのか――。 (文/松井哲朗) ■巨人裏面史 【註1】「空白の1日」事件(78年) 77年のドラフトでクラウンライターライオンズから1位指名された江川卓。指名を蹴って1年浪人するが、同球団の入団交渉権が切れた78年11月21日、突然巨人入りを発表。翌日にドラフト会議を控え、”空白の1日”となる同日であれば希望の球団に入団できるという野球協約の穴を突いた契約だった。当然大問題になり、ドラフト会議は大荒れ。結局、江川はいったん阪神に入団し、その後、小林繁とのトレードによって巨人入りを果たした。 【註2】KKコンビドラフト事件(85年) PL学園の同級生だった清原和博と桑田真澄。巨人入りを熱望する清原に対し、桑田は早稲田大学進学を表明。ドラフトの目玉は清原、桑田は回避との予測が立ったが、実際は巨人が桑田を1位指名。清原には巨人以外の6球団から指名が集中した。桑田・巨人間の密約の存在が囁かれた。 【註3】桑田真澄野球賭博疑惑(90年) スポーツメーカーの営業マンだった中牧昭二氏が、告発本『さらば桑田真澄、さらばプロ野球』(リム出版)で、アドバイザリー契約の見返りに桑田から多額の金品を要求されたと暴露。当時桑田が親しかったメンバーズクラブ社長に登板日を伝えていたような描写があったため、野球賭博に関与していたのでは、と疑惑に火がついた。 【註4】高橋由伸入団裏金疑惑(97年) 97年ドラフトの目玉・高橋由伸。スカウト合戦をヤクルトが制し、読売グループ傘下の報知新聞さえ「ヤクルトへの逆指名」と報じていたが、巨人へ逆指名入団。その後、高橋の父が所有する不動産が焦げついて莫大な借金を背負っていたこと、それを巨人サイドが肩代わりしたことが報じられる。 【註5】篠塚和典コーチ車庫飛ばし事件(99年) 99年10月15日、巨人軍出身でコーチを務めていた篠塚和典が、家宅捜索を受けた。所有者を偽ってナンバーを登録する、「車庫飛ばし」を行っていた容疑で経営者が逮捕された自動車販売会社の役員に名を連ねていたことから、こうした事態が勃発。同社は後藤組のフロント企業とされていたため、篠塚本人と裏社会の交友も取り沙汰された。 【註6】一場靖弘”栄養費”事件(04年) 明治大学野球部4年だった一場靖弘に、巨人が栄養費などと称して総額約200万円を渡していたことが発覚。球団オーナー渡邉恒雄と社長の土井誠、球団代表の三山秀昭らが引責辞任した。 【「サイゾーpremium」では他にも巨人タブーを暴く記事が満載!】「マスコミには清武の味方になる理由がないだけ! 巨人の裏金は他球団が悪い」エモやんが語る球界と巨人「責任転嫁ばっかりしてると選手に呆れられる」“球界の野良犬”愛甲猛が知る原スキャンダルと野球賭博「巨人の四番に女性問題がないわけがない」ビビる大木が嫌いになれない“1億円を払う”原の天然ぶり
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清武英利元巨人軍球団代表が『巨魁』に込めた本当の思いとは? 出版差し止め請求とナベツネが書いた大きな嘘

【プレミアサイゾーより】  2011年に起きた「清武の乱」にはじまる一連の騒動について綴られた『巨魁』が、今年3月に発売された。同書の著者であり、本騒動の中心人物である清武英利氏は、今なお、もうひとりの主人公、ナベツネの標的にされ続けている。『巨魁』に込められた思いと、4月に読売が起こした同氏の復刻本差し止め訴訟について、清武氏があらためて口を開いた──。
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(写真/奥山智明)
──清武さんが書かれた『巨魁』は、今まで噂されながらもあまり表に出てこなかった、渡邉恒雄氏の読売巨人軍内における横暴が描かれていました。2004年に清武さんが球団代表・編成本部長に就任して以降、問題と感じたのはどういったところですか? 清武英利(以下、清武) 渡邉さんが、ルールやコーチ、選手、ファンを無視して読売巨人軍を絶対支配しようとしていたところです。読売巨人軍は読売新聞の子会社のひとつですが、超優良企業だし、取締役会もある。なのに、重要事項や1億円以上の決裁となると、本社代表取締役の事前承認を受けないといけないという異例の定款があるんです。僕が告発しようとした時に「破滅だぞ」と言ってきたのは、子会社としての独立性を認めていないからでしょう。  それと、僕もそうでしたが、巨人の上層部は本社から来た役員ばかりだった。子会社に来たら子会社のことをまず考えないといけない。でもそんな状態だから、役員も親会社のほうばかりを見るようになってしまう。ほとんどの社員は生え抜きなのに、そんな上層部を見ていたら、やりがいなんて生まれませんよね。 ──長く現場から離れていた江川卓さんを突然ヘッドコーチにするというのは、とても無茶な話に感じたんですが、渡邉さんはどの程度野球を理解していたんでしょうか? 清武 桃井氏(恒和・現球団社長)に聞いたんですが、「今さら聞けないんだが、セカンドとショートはどっちがファーストに近いんだ?」と言っていたことがあるらしいんですよ(笑)。それくらい、野球についてはほとんど知らないと思いますよ。僕が知っていることとして言えるのは、あれだけ口を出していても、巨人の会議には一度も出たことはないんです。二軍のグラウンドに来たこともないし、キャンプにも来なかった。試合も、高い位置の席からしか見ていない。つまり、野球が身近な存在の人ではなかったんです。だってお客さんはヘッドコーチを見に球場に来ると思います? それでも、「江川を連れてくるんだ」って言われたら、なかなか逆らえないんです。 ──『巨魁』は、清武さんが行った巨人改革の本でもあります。清武さんが球団代表に就任されたのは、04年に起きた一場靖弘選手をめぐる裏金事件を受けて、渡邊さんをはじめ、上層部が解任されたことがきっかけですが、なぜこのような問題が起きたのでしょうか? 清武 渡邉さんがオーナーの時代というのが長く続いて、大金をかけて四番バッターばかりを集めた大艦巨砲主義になっていました。金にモノを言わせるという、そのやり方のつけが、一場事件に表れたんだと思いますよ。そもそも大金を使っているのに、渡邉オーナー時代はあまり優勝していないんですね。負けているのに、責任を取って辞めなかった。上が責任を取らないような組織じゃ、強くなれません。 ──まさにその時期、たとえば、97年には高橋由伸選手に6億5000万円、98年には上原浩治選手、二岡智宏選手にそれぞれ5億円、00年には阿部慎之助選手に10億円……と、球界で申し合わせた最高標準額を超える新人契約金を巨人が払っていたことを、今年3月に朝日新聞が報道じましたよね。 清武 上限がなかったからと言っているけど、それは嘘ですよね。申し合わせでもルールはルール。野球だってルールがあるから成り立つのに、ルールを台無しにしてなんぼでも払ってしまうようなトップがいるから問題なんです。1億円以上の決裁が行われているんだから、当然渡邉さんが事前承認していたはずなのに、問題をすり替えて責任を取らないんです。 ──もっと問題にするべきことなのに、その後の報道があまりされていないのはなぜでしょうか? 清武 報道がない理由は、僕にはわかりません。ただ、スポーツマスコミというのはひとつの村なんです。スポーツ村というのはすごく閉鎖的で、異分子を追い出そうとする傾向がある。彼らにとって巨人というのは大きなネタだから、取材できなくなると困ってしまう。だから、弱きをくじき強きに巻かれるようなことをしてしまう。スポーツ記者の一部は、平気で事実をねじ曲げて書いたりもするんです。そういう雰囲気は、スポーツの世界にはあっちゃダメ。なんのために記者をやっているのか。ジャーナリズムの世界に戻った人間として、嘆かわしいと思いますよ。 ■「携帯電話の履歴を開示しろ!」 嘘の陳述書も書かせる読売の手口 ──マスコミの報道では、「ナベツネ同様の権力志向」「現場がわかっていない」など、清武さんに対して否定的な意見も見かけますね。 清武 マスコミといっても、どこのマスコミかによりますよ。スポーツ関連の媒体を持っていないところで行ったあるアンケートでは、僕への支持率が圧倒的というのもありましたし。でも先ほど言ったように、スポーツマスコミは村社会だから、巨人の意向に反したことはなかなか書けない。それとテレビのコメンテーターなんかは日テレにも出る可能性があるから、渡邉さんのことを悪く言えない。彼らは印象で語っているとしか思えないけどね。 ──仮に渡邉さんに反論があったとしても、読売が清武さんにスラップ【編註:SLAPP・大きな企業や団体が、個人や比較的弱い団体に対して恫喝的訴訟を行うこと】を繰り返しているところをみると、まるで説得力がありませんよね。 清武 僕個人に対して3つ(1つは取り下げ)、僕らの本を出した七つ森書館に対して3つ訴訟を起こされました。特に僕個人に対しては「契約金の問題が報道されたのは、意図的に僕が秘密書類を暴露したのだから、僕の私物の携帯電話の履歴を開示しろ」とまで訴えたわけです。取材源の秘匿が生命線である新聞社が、そんなことをやるなんておかしいですよね。  しかしそのおかげで、同様に反感を持っていた読売の中の人たちが、自分にもやられるんじゃないかってビビってしまった。それだけじゃなく、僕の友人や関係者がみんな恐怖心を抱く。裁判を起こせば僕らは疲弊するし、向こうは漏洩防止と批判の封じ込めになるわけです。 ──七つ森書館に対しての3つの訴訟は、清武さんたちが社会部時代の00年に新潮社から出した『会長はなぜ自殺したか』の復刻を差し止めようと、「契約の無効」「著作権」「名誉権」を持ちだして、今年4月に行われました。同書は総会屋への不正融資をめぐる第一勧銀・宮崎邦次元会長の自殺の真相と当時の金融腐敗を追った内容であり、今回の一連の騒動とはなんの関係もありません。読売側は何を根拠にしているんですか? 清武 契約の無効については、復刻本の窓口になっていた当時の社会部筆頭次長が、復刊に関して会社の許可を得ていなかった、ということを根拠にしています。著作権についても、すでに締結していたものでしたが、これも締結はしていなかった、と。彼は、「上司に相談せずやってしまった」という陳述書を書かされたようですが、そんなことあるわけがないでしょう。でも彼以外にも、清武班と呼ばれた僕の元部下たちが、新聞記者としての矜持を捨て去って読売の意図に沿った陳述書を書いているんです。私の告発前に、すべて許可は取れていた話なのに。七つ森書館は5人くらいの小さな出版社で、訴訟費用を考えると本当に気の毒だと思いますよ。  それから、すでに七つ森書館が勝訴した名誉権については、昔の事件なのに実名が出てくることが問題だと言い出したんです。15年前の事件なのに、実名を出すことはプライバシーの侵害に当たると。そんなことを言っていたら、田中角栄だって実名で書けなくなりますよ(笑)。ノンフィクションだけじゃなく、すべての出版物が当てはまってしまうし、新聞の縮刷版だって全部黒塗りにしなきゃいけなくなる。大新聞社がそんな馬鹿馬鹿しいことを言っちゃダメでしょう。 ──ちなみに、今号はタブー破りの本特集なんですが、今回の件を踏まえ、巨人や読売、渡邉さんのタブーについて迫った本は何かありますか? 清武 読んでもらいたいのは、前澤猛さんの『表現の自由が呼吸していた時代ー1970年代読売新聞の論説』(コスモヒルズ)。前澤さんは読売新聞の論説委員だったんですが、渡邉さんと論説委員会で戦って飛ばされた人なんです。渡邉さんは「俺は裁判で負けたことがない」って豪語しているけど、前澤さんとの裁判は実質負けている。とても根性がある方だと思いますし、非常に冷静に書かれている本です。  それと魚住昭さんの『渡邉恒雄 メディアと権力』(講談社文庫)も立派な本ですね。僕は、魚住さんとは対談もしていて、単行本にまとまる予定です。 ──渡邉さんの『わが人生記~青春・政治・野球・大病』(中公新書ラクレ)には、渡邉さんのプロ野球改革論が掲載されています。「プロ野球は文化的公共財だ」とも書かれていましたが、この論文をどのように感じられましたか? 清武 その続きを書いてもらいたいものですね。物事は、言い続けたり書き続けたりしないと意味がない。でも本人はすぐ忘れちゃうんです。ある時は文化的公共財だというけど、ある時はまったく逆のようなことをいう。『君命も受けざる所あり~私の履歴書』(渡邉恒雄・日本経済新聞出版社)には「私の後継者の本命が内山(斉・元読売新聞社長)君」と書いてあります。でも去年辞めさせられてしまいました。本当にプロ野球を改革しないといけないと思うなら、改革し続けないといけないんです。僕が渡邉さんを告発して9カ月です。僕がやり始めたことが広がって、おかしくなっている読売の実態をわかってもらえた部分もあると思います。でもまだまだ8カ月では短い。2年かかっても3年かかっても、最後まで続けていこうと思っています。 (文/大熊 信)
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清武英利(きよたけ・ひでとし) 1950年、宮崎県生まれ。立命館大学卒業後、読売新聞社に入社。社会部記者として、警視庁、国税庁などを担当。04年に読売巨人軍球団代表兼編成本部長に就任し、11年からは、専務取締役球団代表兼GM・編成本部長・オーナー代行を務めた。著書に、『会長はなぜ自殺したか』(共著/七つ森書館)、『「巨人軍改革」戦記』(新潮社)など。 『巨魁』 清武英利/ワック出版(12年)/1600円 11年11月11日、当時読売巨人軍球団代表であった清武氏は、巨人のコーチ人事をめぐり、ナベツネこと渡邉恒雄球団会長が不当介入したことを告発した。本書では、同氏が自身の球団代表就任からナベツネに対する内部告発に至った経緯と、巨人軍、そして野球への思いを綴っている。 【「サイゾーpremium」では他にも巨人関連の記事が満載!】巨人軍契約金問題を新聞業界再々編につなげる朝日の深慮遠謀ついに赤西軍団入り情報も? 原辰徳を悩ませる不肖の息子と六本木の武勇伝"入団したくない球団"ナンバーワンは千葉ロッテ!? 12球団ドラフトの傾向と実力
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清武英利元巨人軍球団代表が『巨魁』に込めた本当の思いとは? 出版差し止め請求とナベツネが書いた大きな嘘

【プレミアサイゾーより】  2011年に起きた「清武の乱」にはじまる一連の騒動について綴られた『巨魁』が、今年3月に発売された。同書の著者であり、本騒動の中心人物である清武英利氏は、今なお、もうひとりの主人公、ナベツネの標的にされ続けている。『巨魁』に込められた思いと、4月に読売が起こした同氏の復刻本差し止め訴訟について、清武氏があらためて口を開いた──。
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(写真/奥山智明)
──清武さんが書かれた『巨魁』は、今まで噂されながらもあまり表に出てこなかった、渡邉恒雄氏の読売巨人軍内における横暴が描かれていました。2004年に清武さんが球団代表・編成本部長に就任して以降、問題と感じたのはどういったところですか? 清武英利(以下、清武) 渡邉さんが、ルールやコーチ、選手、ファンを無視して読売巨人軍を絶対支配しようとしていたところです。読売巨人軍は読売新聞の子会社のひとつですが、超優良企業だし、取締役会もある。なのに、重要事項や1億円以上の決裁となると、本社代表取締役の事前承認を受けないといけないという異例の定款があるんです。僕が告発しようとした時に「破滅だぞ」と言ってきたのは、子会社としての独立性を認めていないからでしょう。  それと、僕もそうでしたが、巨人の上層部は本社から来た役員ばかりだった。子会社に来たら子会社のことをまず考えないといけない。でもそんな状態だから、役員も親会社のほうばかりを見るようになってしまう。ほとんどの社員は生え抜きなのに、そんな上層部を見ていたら、やりがいなんて生まれませんよね。 ──長く現場から離れていた江川卓さんを突然ヘッドコーチにするというのは、とても無茶な話に感じたんですが、渡邉さんはどの程度野球を理解していたんでしょうか? 清武 桃井氏(恒和・現球団社長)に聞いたんですが、「今さら聞けないんだが、セカンドとショートはどっちがファーストに近いんだ?」と言っていたことがあるらしいんですよ(笑)。それくらい、野球についてはほとんど知らないと思いますよ。僕が知っていることとして言えるのは、あれだけ口を出していても、巨人の会議には一度も出たことはないんです。二軍のグラウンドに来たこともないし、キャンプにも来なかった。試合も、高い位置の席からしか見ていない。つまり、野球が身近な存在の人ではなかったんです。だってお客さんはヘッドコーチを見に球場に来ると思います? それでも、「江川を連れてくるんだ」って言われたら、なかなか逆らえないんです。 ──『巨魁』は、清武さんが行った巨人改革の本でもあります。清武さんが球団代表に就任されたのは、04年に起きた一場靖弘選手をめぐる裏金事件を受けて、渡邊さんをはじめ、上層部が解任されたことがきっかけですが、なぜこのような問題が起きたのでしょうか? 清武 渡邉さんがオーナーの時代というのが長く続いて、大金をかけて四番バッターばかりを集めた大艦巨砲主義になっていました。金にモノを言わせるという、そのやり方のつけが、一場事件に表れたんだと思いますよ。そもそも大金を使っているのに、渡邉オーナー時代はあまり優勝していないんですね。負けているのに、責任を取って辞めなかった。上が責任を取らないような組織じゃ、強くなれません。 ──まさにその時期、たとえば、97年には高橋由伸選手に6億5000万円、98年には上原浩治選手、二岡智宏選手にそれぞれ5億円、00年には阿部慎之助選手に10億円……と、球界で申し合わせた最高標準額を超える新人契約金を巨人が払っていたことを、今年3月に朝日新聞が報道じましたよね。 清武 上限がなかったからと言っているけど、それは嘘ですよね。申し合わせでもルールはルール。野球だってルールがあるから成り立つのに、ルールを台無しにしてなんぼでも払ってしまうようなトップがいるから問題なんです。1億円以上の決裁が行われているんだから、当然渡邉さんが事前承認していたはずなのに、問題をすり替えて責任を取らないんです。 ──もっと問題にするべきことなのに、その後の報道があまりされていないのはなぜでしょうか? 清武 報道がない理由は、僕にはわかりません。ただ、スポーツマスコミというのはひとつの村なんです。スポーツ村というのはすごく閉鎖的で、異分子を追い出そうとする傾向がある。彼らにとって巨人というのは大きなネタだから、取材できなくなると困ってしまう。だから、弱きをくじき強きに巻かれるようなことをしてしまう。スポーツ記者の一部は、平気で事実をねじ曲げて書いたりもするんです。そういう雰囲気は、スポーツの世界にはあっちゃダメ。なんのために記者をやっているのか。ジャーナリズムの世界に戻った人間として、嘆かわしいと思いますよ。 ■「携帯電話の履歴を開示しろ!」 嘘の陳述書も書かせる読売の手口 ──マスコミの報道では、「ナベツネ同様の権力志向」「現場がわかっていない」など、清武さんに対して否定的な意見も見かけますね。 清武 マスコミといっても、どこのマスコミかによりますよ。スポーツ関連の媒体を持っていないところで行ったあるアンケートでは、僕への支持率が圧倒的というのもありましたし。でも先ほど言ったように、スポーツマスコミは村社会だから、巨人の意向に反したことはなかなか書けない。それとテレビのコメンテーターなんかは日テレにも出る可能性があるから、渡邉さんのことを悪く言えない。彼らは印象で語っているとしか思えないけどね。 ──仮に渡邉さんに反論があったとしても、読売が清武さんにスラップ【編註:SLAPP・大きな企業や団体が、個人や比較的弱い団体に対して恫喝的訴訟を行うこと】を繰り返しているところをみると、まるで説得力がありませんよね。 清武 僕個人に対して3つ(1つは取り下げ)、僕らの本を出した七つ森書館に対して3つ訴訟を起こされました。特に僕個人に対しては「契約金の問題が報道されたのは、意図的に僕が秘密書類を暴露したのだから、僕の私物の携帯電話の履歴を開示しろ」とまで訴えたわけです。取材源の秘匿が生命線である新聞社が、そんなことをやるなんておかしいですよね。  しかしそのおかげで、同様に反感を持っていた読売の中の人たちが、自分にもやられるんじゃないかってビビってしまった。それだけじゃなく、僕の友人や関係者がみんな恐怖心を抱く。裁判を起こせば僕らは疲弊するし、向こうは漏洩防止と批判の封じ込めになるわけです。 ──七つ森書館に対しての3つの訴訟は、清武さんたちが社会部時代の00年に新潮社から出した『会長はなぜ自殺したか』の復刻を差し止めようと、「契約の無効」「著作権」「名誉権」を持ちだして、今年4月に行われました。同書は総会屋への不正融資をめぐる第一勧銀・宮崎邦次元会長の自殺の真相と当時の金融腐敗を追った内容であり、今回の一連の騒動とはなんの関係もありません。読売側は何を根拠にしているんですか? 清武 契約の無効については、復刻本の窓口になっていた当時の社会部筆頭次長が、復刊に関して会社の許可を得ていなかった、ということを根拠にしています。著作権についても、すでに締結していたものでしたが、これも締結はしていなかった、と。彼は、「上司に相談せずやってしまった」という陳述書を書かされたようですが、そんなことあるわけがないでしょう。でも彼以外にも、清武班と呼ばれた僕の元部下たちが、新聞記者としての矜持を捨て去って読売の意図に沿った陳述書を書いているんです。私の告発前に、すべて許可は取れていた話なのに。七つ森書館は5人くらいの小さな出版社で、訴訟費用を考えると本当に気の毒だと思いますよ。  それから、すでに七つ森書館が勝訴した名誉権については、昔の事件なのに実名が出てくることが問題だと言い出したんです。15年前の事件なのに、実名を出すことはプライバシーの侵害に当たると。そんなことを言っていたら、田中角栄だって実名で書けなくなりますよ(笑)。ノンフィクションだけじゃなく、すべての出版物が当てはまってしまうし、新聞の縮刷版だって全部黒塗りにしなきゃいけなくなる。大新聞社がそんな馬鹿馬鹿しいことを言っちゃダメでしょう。 ──ちなみに、今号はタブー破りの本特集なんですが、今回の件を踏まえ、巨人や読売、渡邉さんのタブーについて迫った本は何かありますか? 清武 読んでもらいたいのは、前澤猛さんの『表現の自由が呼吸していた時代ー1970年代読売新聞の論説』(コスモヒルズ)。前澤さんは読売新聞の論説委員だったんですが、渡邉さんと論説委員会で戦って飛ばされた人なんです。渡邉さんは「俺は裁判で負けたことがない」って豪語しているけど、前澤さんとの裁判は実質負けている。とても根性がある方だと思いますし、非常に冷静に書かれている本です。  それと魚住昭さんの『渡邉恒雄 メディアと権力』(講談社文庫)も立派な本ですね。僕は、魚住さんとは対談もしていて、単行本にまとまる予定です。 ──渡邉さんの『わが人生記~青春・政治・野球・大病』(中公新書ラクレ)には、渡邉さんのプロ野球改革論が掲載されています。「プロ野球は文化的公共財だ」とも書かれていましたが、この論文をどのように感じられましたか? 清武 その続きを書いてもらいたいものですね。物事は、言い続けたり書き続けたりしないと意味がない。でも本人はすぐ忘れちゃうんです。ある時は文化的公共財だというけど、ある時はまったく逆のようなことをいう。『君命も受けざる所あり~私の履歴書』(渡邉恒雄・日本経済新聞出版社)には「私の後継者の本命が内山(斉・元読売新聞社長)君」と書いてあります。でも去年辞めさせられてしまいました。本当にプロ野球を改革しないといけないと思うなら、改革し続けないといけないんです。僕が渡邉さんを告発して9カ月です。僕がやり始めたことが広がって、おかしくなっている読売の実態をわかってもらえた部分もあると思います。でもまだまだ8カ月では短い。2年かかっても3年かかっても、最後まで続けていこうと思っています。 (文/大熊 信)
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清武英利(きよたけ・ひでとし) 1950年、宮崎県生まれ。立命館大学卒業後、読売新聞社に入社。社会部記者として、警視庁、国税庁などを担当。04年に読売巨人軍球団代表兼編成本部長に就任し、11年からは、専務取締役球団代表兼GM・編成本部長・オーナー代行を務めた。著書に、『会長はなぜ自殺したか』(共著/七つ森書館)、『「巨人軍改革」戦記』(新潮社)など。 『巨魁』 清武英利/ワック出版(12年)/1600円 11年11月11日、当時読売巨人軍球団代表であった清武氏は、巨人のコーチ人事をめぐり、ナベツネこと渡邉恒雄球団会長が不当介入したことを告発した。本書では、同氏が自身の球団代表就任からナベツネに対する内部告発に至った経緯と、巨人軍、そして野球への思いを綴っている。 【「サイゾーpremium」では他にも巨人関連の記事が満載!】巨人軍契約金問題を新聞業界再々編につなげる朝日の深慮遠謀ついに赤西軍団入り情報も? 原辰徳を悩ませる不肖の息子と六本木の武勇伝"入団したくない球団"ナンバーワンは千葉ロッテ!? 12球団ドラフトの傾向と実力
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盟友・三宅久之氏が語る渡邉恒雄の本当の(?)顔「傲岸不遜なだけでトップなんて務まらない」

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三宅久之氏
 清武英利元巨人軍GMと渡邉恒雄会長の法廷闘争が、いよいよ2月2日から東京地裁で始まる。騒動の一連のあらましや裁判の行方についてはすでにお伝えしてきた通り(※記事参照1)。特に、元読売新聞社会部記者でジャーナリストの大谷昭宏氏からは、読売OBの視点も交えながら、渡邉氏に対する厳しい声を伝えてもらった(※記事参照2)。  一方、毎日新聞OBで政治評論家の三宅久之氏は、政治記者として、デスクとして、渡邉氏と同時代を生き抜いてきた一人。渡邉氏の最大の理解者とも見られている三宅氏は、刎頚の友である渡邉氏の今回の騒動をどう見ているのか。(聞き手/浮島さとし) ――いわゆる「清武問題」をどうご覧になりますか。 三宅久之氏(以下、三宅) 最初は「重要なコンプライアンス違反の問題により文部省で会見」だなんて聞いたので、大変なことになると思いましたよ。とっさに浮かぶのは脱税か暴力団、もしくはドラフトの裏金あたりだから。そしたら、なんてことはない、社内人事のコップの中の嵐みたいな話でね。世間様に公表する話ではない。上司とソリが合わなきゃ独立するか、女房子どものために我慢するしかない。 ――このことについて渡邉会長と話はされましたか。 三宅 当然、詳しく聞きましたよ。清武氏から見せられた書類というのも見たけど、5枚のうちの最初の3枚が巨人軍改革に関するコンセプトか何かで、後ろ2枚が人事について。コーチが誰々とかね。そのときナベちゃんは6時過ぎに出なければならない用事があったので、簡単に聞いて「わかった、そこに置いといてくれ」と。細かに聞いたわけではないと言うんだね。江川(卓)の件については、それより早い時期に原監督のほうから「ヘッドコーチにしたい」と持ってきたと。「江川のほうが年上じゃないか」と聞くと、原監督は「かまいません」と。ただ、ヘッドはすでに岡崎(郁)がいるから、「助監督ではどうだ」と聞くと、「それでもいい」と。つまり、監督がそういうふうに訪ねてくることもあるし、時間があれば誰とでも会うし、いろんな話をする。コンプライアンスなんて次元の話じゃないと。それが彼の説明でしたね。 ――三宅さんからご覧になって、渡邉会長とはどんな人物ですか。 三宅 テレビでしか彼を知らない人たちは「ナベツネは傲慢だ」としか見ていないようだけど、彼は大変な勉強家でインテリですからね。記者時代から彼はとにかく勉強していた。政治部に入って4〜5年で政治の専門書を3冊出していますし、政治学界にも通用する本を楽々と書ける知識人なんですよ。たしかにテレビで、彼がパイプをくわえてる姿なんか見ると、まるで傲岸無礼がネクタイ締めてるみたいだけど(笑)、あれは意識的に悪ぶって半分楽しんでますね。本当は、神経が細やかな人間。義理人情に非常に厚いしね。 ――「傲慢」のイメージが強い渡邉氏が実は義理人情に厚いと聞くと、意外に感じる人も多いと思います。 三宅 「山里会」という政治評論家の勉強会がありましてね、今では政治家も山里会へ呼ばれれば一人前と言われるくらいになったんですが、元は私とナベちゃん、早坂茂三、俵孝太郎ら昔のライバル記者だった連中が4〜5人で集まって酒なんか飲んでたのが始まりだったんです。早坂はかつて東京タイムズの記者で、あそこは小さい会社で社用車なんかなかったから、ナベちゃんや我々が車で取材に行くときに、東京タイムズを回って早坂を拾ってあげたりしていたんですよ。 ――ライバルでありながら助け合っていた。 三宅 そう。その早坂が2004年に死んだとき、事情があって葬式が出せなかったんですよ。早坂には戸籍上の奥さんがいたけど長く別居状態で、別の女性と事実上の夫婦生活を送っていましてね。そして彼が死んだとき、同居していた女性が喪主になることを正妻がどうしてもOKしなかった。葬儀も出さないと。そしたらナベちゃんが「おい、久ちゃん(三宅氏)、我々で友人葬をやってやろうよ、骨を折ってくれないか」と言うわけです。それで私が早坂の家に電話をかけ、「いろいろ事情もおありだと思いますが、我々でやらせてもらえないか」と頼んだんだけど、どうしても首を縦に振らない。結局、東京では葬儀が出せなかったんですが、ナベちゃんは最後まで気にかけていた。彼をよく知る我々にとって、渡邉恒雄というのはそういう人物なんですよ。傲岸不遜なだけで新聞社のトップなんて務まるものではない。 ――その一方で、裏切った人間には冷酷な仕打ちをするという話も聞きます。 三宅 彼は昭和43年にワシントン支局長になるんですが、この人事は社内の序列でいえば栄転なんだけど、政治部長を目指していた彼にとっては事実上の左遷だったんですね。当時の政治部内には「渡邉派」と呼ばれるグループがあって、アメリカ在任中もナベちゃんに手紙で社内の情報を知らせていた人もいた。こういう人たちを、ナベちゃんは帰国後に政治部長を経て段々に偉くなり、実権を握ってから、みんな要職につけましたよ。その反面、「渡邉の時代は終わった」と去って行った連中には冷たかったね。まぁ、そういう面もすべて含めて渡邉恒雄だということなんですよ。 ●関連書籍/『別冊宝島1846 渡辺恒雄の虚像と実像』 <http://tkj.jp/book?cd=20184601>
渡辺恒雄の虚像と実像 (別冊宝島) 裸の王様? amazon_associate_logo.jpg
【関連記事】 ・巨人・清武問題「飼い犬に手を噛まれたナベツネ」ファン不在の泥仕合はいつまで続くのか巨人クーデターで改めて糾弾される"悪役"ナベツネ マスコミには優しかった!?「独裁者はどっちだ」巨人軍クーデター騒動 世間を味方につけた清武代表に夕刊各紙が総攻撃

盟友・三宅久之氏が語る渡邉恒雄の本当の(?)顔「傲岸不遜なだけでトップなんて務まらない」

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三宅久之氏
 清武英利元巨人軍GMと渡邉恒雄会長の法廷闘争が、いよいよ2月2日から東京地裁で始まる。騒動の一連のあらましや裁判の行方についてはすでにお伝えしてきた通り(※記事参照1)。特に、元読売新聞社会部記者でジャーナリストの大谷昭宏氏からは、読売OBの視点も交えながら、渡邉氏に対する厳しい声を伝えてもらった(※記事参照2)。  一方、毎日新聞OBで政治評論家の三宅久之氏は、政治記者として、デスクとして、渡邉氏と同時代を生き抜いてきた一人。渡邉氏の最大の理解者とも見られている三宅氏は、刎頚の友である渡邉氏の今回の騒動をどう見ているのか。(聞き手/浮島さとし) ――いわゆる「清武問題」をどうご覧になりますか。 三宅久之氏(以下、三宅) 最初は「重要なコンプライアンス違反の問題により文部省で会見」だなんて聞いたので、大変なことになると思いましたよ。とっさに浮かぶのは脱税か暴力団、もしくはドラフトの裏金あたりだから。そしたら、なんてことはない、社内人事のコップの中の嵐みたいな話でね。世間様に公表する話ではない。上司とソリが合わなきゃ独立するか、女房子どものために我慢するしかない。 ――このことについて渡邉会長と話はされましたか。 三宅 当然、詳しく聞きましたよ。清武氏から見せられた書類というのも見たけど、5枚のうちの最初の3枚が巨人軍改革に関するコンセプトか何かで、後ろ2枚が人事について。コーチが誰々とかね。そのときナベちゃんは6時過ぎに出なければならない用事があったので、簡単に聞いて「わかった、そこに置いといてくれ」と。細かに聞いたわけではないと言うんだね。江川(卓)の件については、それより早い時期に原監督のほうから「ヘッドコーチにしたい」と持ってきたと。「江川のほうが年上じゃないか」と聞くと、原監督は「かまいません」と。ただ、ヘッドはすでに岡崎(郁)がいるから、「助監督ではどうだ」と聞くと、「それでもいい」と。つまり、監督がそういうふうに訪ねてくることもあるし、時間があれば誰とでも会うし、いろんな話をする。コンプライアンスなんて次元の話じゃないと。それが彼の説明でしたね。 ――三宅さんからご覧になって、渡邉会長とはどんな人物ですか。 三宅 テレビでしか彼を知らない人たちは「ナベツネは傲慢だ」としか見ていないようだけど、彼は大変な勉強家でインテリですからね。記者時代から彼はとにかく勉強していた。政治部に入って4〜5年で政治の専門書を3冊出していますし、政治学界にも通用する本を楽々と書ける知識人なんですよ。たしかにテレビで、彼がパイプをくわえてる姿なんか見ると、まるで傲岸無礼がネクタイ締めてるみたいだけど(笑)、あれは意識的に悪ぶって半分楽しんでますね。本当は、神経が細やかな人間。義理人情に非常に厚いしね。 ――「傲慢」のイメージが強い渡邉氏が実は義理人情に厚いと聞くと、意外に感じる人も多いと思います。 三宅 「山里会」という政治評論家の勉強会がありましてね、今では政治家も山里会へ呼ばれれば一人前と言われるくらいになったんですが、元は私とナベちゃん、早坂茂三、俵孝太郎ら昔のライバル記者だった連中が4〜5人で集まって酒なんか飲んでたのが始まりだったんです。早坂はかつて東京タイムズの記者で、あそこは小さい会社で社用車なんかなかったから、ナベちゃんや我々が車で取材に行くときに、東京タイムズを回って早坂を拾ってあげたりしていたんですよ。 ――ライバルでありながら助け合っていた。 三宅 そう。その早坂が2004年に死んだとき、事情があって葬式が出せなかったんですよ。早坂には戸籍上の奥さんがいたけど長く別居状態で、別の女性と事実上の夫婦生活を送っていましてね。そして彼が死んだとき、同居していた女性が喪主になることを正妻がどうしてもOKしなかった。葬儀も出さないと。そしたらナベちゃんが「おい、久ちゃん(三宅氏)、我々で友人葬をやってやろうよ、骨を折ってくれないか」と言うわけです。それで私が早坂の家に電話をかけ、「いろいろ事情もおありだと思いますが、我々でやらせてもらえないか」と頼んだんだけど、どうしても首を縦に振らない。結局、東京では葬儀が出せなかったんですが、ナベちゃんは最後まで気にかけていた。彼をよく知る我々にとって、渡邉恒雄というのはそういう人物なんですよ。傲岸不遜なだけで新聞社のトップなんて務まるものではない。 ――その一方で、裏切った人間には冷酷な仕打ちをするという話も聞きます。 三宅 彼は昭和43年にワシントン支局長になるんですが、この人事は社内の序列でいえば栄転なんだけど、政治部長を目指していた彼にとっては事実上の左遷だったんですね。当時の政治部内には「渡邉派」と呼ばれるグループがあって、アメリカ在任中もナベちゃんに手紙で社内の情報を知らせていた人もいた。こういう人たちを、ナベちゃんは帰国後に政治部長を経て段々に偉くなり、実権を握ってから、みんな要職につけましたよ。その反面、「渡邉の時代は終わった」と去って行った連中には冷たかったね。まぁ、そういう面もすべて含めて渡邉恒雄だということなんですよ。 ●関連書籍/『別冊宝島1846 渡辺恒雄の虚像と実像』 <http://tkj.jp/book?cd=20184601>
渡辺恒雄の虚像と実像 (別冊宝島) 裸の王様? amazon_associate_logo.jpg
【関連記事】 ・巨人・清武問題「飼い犬に手を噛まれたナベツネ」ファン不在の泥仕合はいつまで続くのか巨人クーデターで改めて糾弾される"悪役"ナベツネ マスコミには優しかった!?「独裁者はどっちだ」巨人軍クーデター騒動 世間を味方につけた清武代表に夕刊各紙が総攻撃

読売社会部OBでジャーナリストの大谷昭宏氏が勧告する「ナベツネ辞任のススメ」

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大谷昭宏氏
 昨年11月の清武英利元読売巨人軍GMの突然の会見に端を発した「清武の乱」。闘争の舞台はいよいよ法廷へ移されることに。東京地裁が第一回口頭弁論の期日を2月2日に指定したのは既報の通り(記事参照)。裁判の争点は、清武氏を解任した読売新聞社側の行為に正当性が認められるかどうかに絞られそうだ。  清武氏といえば、かつて読売新聞社会部記者として大企業の暗部に潜り込み、数々の経済スキャンダルをスッパ抜いてきた武勇伝の持ち主。今回の清武氏の「乱」がそんな記者魂の発露から来ていると指摘するのは、同じく元読売新聞社会部記者でジャーナリストの大谷昭宏氏だ。同じ読売OBでジャーナリストの大谷氏の目に、今回の騒動はどう映っているのか。都内某所で大谷氏に聞いた。(聞き手/浮島さとし) ――いわゆる「清武の乱」をどうご覧になりますか。 大谷氏(以下、大谷) 私は渡邉(恒雄)会長に問題があったと考えています。報道ではコーチ人事について、「清武君とは会ったけど詳しくは聞いていない」と言い訳しているようですが、これはずるいやりかたでね。事実は認めて本質は認めない。彼はいつもこのやり方をするんだけど、渡したほうは相手が当然見るものと理解するんであって(編注:昨年10月20日に清武氏が桃井前オーナーとともに渡邉会長を訪ねて提出した、来季の巨人軍コーチ人事等を記した文書のこと)、見てないなら「詳細は後日議論して結論を出そう」くらい言わなければ、部下はたまったもんじゃない。どこの会社にもいるじゃないですか、「俺は聞いてねえよ」って言い逃れして責任を下になすりつけるバカな上司が。それと同じですよ。 ――清武さんも大谷さんも読売新聞の社会部出身です。 大谷 といっても、彼はどちらかというと企業の内情や不正を書いたりする世界。第一勧業銀行総会屋事件や山一證券の破たんスクープなどが有名ですね。私は捜査一課の担当で、切った張ったの人殺しの世界だから(笑)。だから記者としてジャンルは違うんだけど、理解できる部分はありますよ。彼が記者時代に書いたスクープで、証券会社や金融機関のトップの首が飛んだわけですが、こうした情報は企業内部でわずかな良識派とも言える人たちの勇気ある告発がもとになっている。そういう取材を続けてきた彼が、「ナベツネが相手だから」と自己保身に走ってしまったら、かつて告発してくれた人たちからすれば、「お前の社会正義は何だったんだ」という話になる。つまり、彼自身が企業政治にどう挑むのかという、その答えが今回の「乱」だったのではないか。彼の記者としてのDNAが目覚めたんだと、私はそう理解していますけどね。 ――渡邉恒雄という方は、敵が多い反面、ファンも多いように感じます。 大谷 「じじい」特有のかわいさがあるんですよ(笑)。新聞記者に揉みくちゃにされて「清武より暴力的だ!」なんて言ったりしてるけど、VTRをよく見ると「君らの苦労もわかる。おれも記者だったし、散々やってきたよ」なんて最後に言ってるわけ。そうすると記者はホロっときて「なかなかいい爺さんじゃねえか」となる。まさに食えない「じじい」というわけでね(笑)。昔から人たらしなんですよ。政治部の若手記者時代は大野伴睦さんという大物代議士を転がし、中曽根康弘さんを転がし、散々「じじ殺し」をしてのしあがってきた。そういう人心掌握術は、(田中)角栄さんに似ているところがあるね。 ――大谷さんは元大阪読売の記者でしたが、渡邉さんはどんな方でしたか。 大谷 僕は大阪の社会部育ちだけど、ナベツネという存在を意識したときは副社長になってたかな。もちろん彼は東京本社だし、立場上も直接やりとりすることはなかったけど、当時の社長は大阪本社を作った務台(光雄)さん。だから、彼は大阪をすごくかわいがってくれた。ところが、ナベツネからすれば、大阪は自分の言うことを聞かない。なので、次々と自分の息のかかった人間を大阪に送り込んできた。あと、彼の社会部嫌いは筋金入りで、「社会部帝国主義」なんて言ってみたり、社会部記者を「紅衛兵」って呼んでみたりね(笑)。自分を可愛がってくれた大野さんや中曽根さんを社会部が嗅ぎまわったり批判したりすると、「おまえら紅衛兵なんか糞の役にも立たねえじゃねえか、政治家なんて少々のことは目をつぶって育てていくんだ」と言ったりね(笑) ――読売批判をすると関連メディアから仕事が来なくなるというのは本当ですか。 大谷 僕は今でも大阪の読売テレビからは声がかからないんですよ。日本テレビには出るけどね。たまに事情を知らない読売テレビの若い人間がオファーしてくるんで、「上司に確認してみたか」と聞くと、数日してから「申し訳ありません......」と(笑)。別に渡邉さんが命令してるわけじゃない。部下が気を使って自主規制しているんでしょう。ただ、こういうことを部下にさせてしまうことが問題なんですよ。今、彼の周りにはイエスマンしかいない。今回の騒動で裁判なんて愚行に走ったのも、もし氏家(齊一郎・日本テレビ元会長)さんが生きてたら「ナベちゃん、やめとけ」くらいのことは言ったと思いますよ。そういう仲間や側近を育ててこなかったことが、彼の最大の罪なんですよ。 ●関連書籍/『別冊宝島1846 渡辺恒雄の虚像と実像』 <http://tkj.jp/book?cd=20184601>
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巨人軍史上最悪の騒動から浮かび上がる最後の独裁者・ナベツネの実像


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『別冊宝島1846 渡辺恒雄の虚像と実像』
(宝島社)
 日本一の人気球団・読売ジャイアンツを舞台にした平成最大のお家騒動。闘いのステージは、双方が提訴し合うという泥沼の法廷合戦へ。東京地裁はこのほど、第一回口頭弁論の期日を2月2日に指定した。ここ最近、やや沈静化していたかに見えた「清武の乱」への社会的注目度も、裁判の進行とともに再び高まることになりそうだ。  訴訟の争点について、企業法務に詳しいA弁護士は「争点はただ一点。清武英利氏の解任行為に正当な理由があったかどうか」と説明する。  訴訟内容を簡単に整理すると、読売側が訴訟の根拠としているのは、清武氏の行動が取締役として「忠実義務」と「善管注意義務」に違反しており、従って解任は妥当だというもの。一方、清武氏側は解任に「正当な理由」はないと主張し、ゆえに本来得られていたはずの報酬と、読売側からの反論で傷つけられた名誉に対する慰謝料として、合わせて約6,000万円を請求するというものだ。A弁護士が言う。 「今回のように双方が提訴し合う場合は、二つの訴訟を別々にやると大変なので、併合審理といって一つの裁判として進めます。本来なら立証責任は原告側にありますが、今回は双方が提訴しているので、こういう場合は裁判官が争点を整理して、『あなたのほうがこれを立証しなさい』と裁判の方向を決めます。一般に読売側のほうが社会的立場は強いですから、司法における弱者救済の原則からも、裁判所は読売側に立証責任を求める形になるでしょう」  つまり読売側にすれば、これまでの清武氏の言動が、取締役の忠実義務や善管注意義務に違反し、これが渡辺恒雄会長や読売グループの名誉を毀損したと立証できれば、「解任の正当性」が証明できるということになる。取締役解任の正当性が認められた判例では、企業情報を顔見知りの記者に漏らした取締役や、職責に耐えられないほど心身に支障をきたしていた役員などの例がある。こうした事例と比較した場合、今回の清武氏の行動は「正当性」という点でどう判断されるのか。A弁護士が続ける。 「読売側が解任の正当性を立証するのは、一般が思うほど簡単ではない。たとえば、江川卓入閣の暴露が営業上の秘密にあたるかは、その情報が、【1】非公知で、【2】有用で、【3】秘密事項として管理されていた、という『営業秘密の3要素』を満たしている必要があります。渡辺会長が当初言っていたような『原監督と話題にあがった程度』とか『正式ではない話』ならば、営業上の秘密とまでは認定されない可能性もあります」  ということは、逆に考えれば「江川入閣」が営業上の秘密であることを立証するには、渡辺会長や原辰徳監督、江川氏らが、この件をどれほど現実的に認識していたかを、法廷で証明する必要に迫られる可能性もある。となれば、原監督や江川氏らが証人として出廷を求められる必然性は十分にある。この点を最も危惧するのは、ジャーナリストの大谷昭宏氏だ。 「争点のキーパーソンが原監督や江川氏となれば、本人に尋問しなければ裁判にならない。となれば、裁判所としても一回は法廷に呼んで話を聞こう、となる。そうなれば一番恥をかくのは読売側で、一番の被害者は野球ファンです。シーズン中に監督とヘッドコーチが法廷に呼ばれるなんて前代未聞。どこがファンを大事にしているんだ、という話にもなります。だから、実は読売は、訴訟を起こして逆に窮地に追い込まれている面もあるわけです」  さらに問われるのは、監督らが出廷する可能性までを、渡辺会長が想定していたのかという点だ。もし想定していたのであれば、ファン無視の許されざる暴挙であり、仮に想定できていなかったのであれば、もはや老害と言われてもしかたがないだろう。  また、読売側が今回、先に法廷闘争に持ち込んだ手法を、法律論とは別に企業のあり方として疑問を呈するのは、企業コンサルティング会社(株)ブランド・コアCEOで武蔵野学院大学客員教授の福留憲治氏だ。 「多くの弁護士は、相談を受ければ弁護費用を稼ぐために裁判を勧めるでしょうが、言うまでもなく訴状の内容はすべて公開情報になりますから、訴訟が長引けばさまざまな事実が表に出てきて、場合によっては読売グループのイメージが失墜する可能性も考えられます」  とはいえ、今回の裁判が清武氏側にとって厳しいというのは多くの識者の一致した意見。『菊とバット』(文藝春秋)などの著書で知られるジャーナリストのロバート・ホワイティング氏は、清武氏には一部同情しながらも、主張にはやや無理があると考えている。 「読売ホールディングスは巨人軍の100%親会社ですから、その親会社の役員が子会社の事業活動に口をはさむのは、どの会社でもあることです。いいか悪いかは別にして、これを重大なコンプライアンス違反と裁判で主張するのは無理があるでしょう」  また、別の角度から「ナベツネ有利」を予測するのは先のA弁護士だ。 「渡辺さんが今回依頼した『TMI総合法律事務所』(東京都港区)は、元最高裁判事が3名も天下りをして顧問弁護士となっている大手事務所。裁判所が公平だなんていうのは幻想で、力のある事務所に手心をくわえる判決が多いというのは公然の事実です。この時点で『ナベツネの勝ちだな』とウワサしている同業者は多いですよ(笑)」  ともあれ、渡辺会長が原監督らの出廷も顧みずに提訴に突き進んだ行為を、暴挙と批判する声は多い。たとえ勝訴しても得られるものは少なく、リスクはあまりに大きい。「最後の独裁者」が、晩節を汚してまで求めているものは一体何なのか。着地点はもはや、本人にすら見えていないのかもしれない。 (文=浮島さとし) ●関連書籍/『別冊宝島1846 渡辺恒雄の虚像と実像』 <http://tkj.jp/book?cd=20184601>
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巨人軍史上最悪の騒動から浮かび上がる最後の独裁者・ナベツネの実像

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『別冊宝島1846 渡辺恒雄の虚像と実像』
(宝島社)
 日本一の人気球団・読売ジャイアンツを舞台にした平成最大のお家騒動。闘いのステージは、双方が提訴し合うという泥沼の法廷合戦へ。東京地裁はこのほど、第一回口頭弁論の期日を2月2日に指定した。ここ最近、やや沈静化していたかに見えた「清武の乱」への社会的注目度も、裁判の進行とともに再び高まることになりそうだ。  訴訟の争点について、企業法務に詳しいA弁護士は「争点はただ一点。清武英利氏の解任行為に正当な理由があったかどうか」と説明する。  訴訟内容を簡単に整理すると、読売側が訴訟の根拠としているのは、清武氏の行動が取締役として「忠実義務」と「善管注意義務」に違反しており、従って解任は妥当だというもの。一方、清武氏側は解任に「正当な理由」はないと主張し、ゆえに本来得られていたはずの報酬と、読売側からの反論で傷つけられた名誉に対する慰謝料として、合わせて約6,000万円を請求するというものだ。A弁護士が言う。 「今回のように双方が提訴し合う場合は、二つの訴訟を別々にやると大変なので、併合審理といって一つの裁判として進めます。本来なら立証責任は原告側にありますが、今回は双方が提訴しているので、こういう場合は裁判官が争点を整理して、『あなたのほうがこれを立証しなさい』と裁判の方向を決めます。一般に読売側のほうが社会的立場は強いですから、司法における弱者救済の原則からも、裁判所は読売側に立証責任を求める形になるでしょう」  つまり読売側にすれば、これまでの清武氏の言動が、取締役の忠実義務や善管注意義務に違反し、これが渡辺恒雄会長や読売グループの名誉を毀損したと立証できれば、「解任の正当性」が証明できるということになる。取締役解任の正当性が認められた判例では、企業情報を顔見知りの記者に漏らした取締役や、職責に耐えられないほど心身に支障をきたしていた役員などの例がある。こうした事例と比較した場合、今回の清武氏の行動は「正当性」という点でどう判断されるのか。A弁護士が続ける。 「読売側が解任の正当性を立証するのは、一般が思うほど簡単ではない。たとえば、江川卓入閣の暴露が営業上の秘密にあたるかは、その情報が、【1】非公知で、【2】有用で、【3】秘密事項として管理されていた、という『営業秘密の3要素』を満たしている必要があります。渡辺会長が当初言っていたような『原監督と話題にあがった程度』とか『正式ではない話』ならば、営業上の秘密とまでは認定されない可能性もあります」  ということは、逆に考えれば「江川入閣」が営業上の秘密であることを立証するには、渡辺会長や原辰徳監督、江川氏らが、この件をどれほど現実的に認識していたかを、法廷で証明する必要に迫られる可能性もある。となれば、原監督や江川氏らが証人として出廷を求められる必然性は十分にある。この点を最も危惧するのは、ジャーナリストの大谷昭宏氏だ。 「争点のキーパーソンが原監督や江川氏となれば、本人に尋問しなければ裁判にならない。となれば、裁判所としても一回は法廷に呼んで話を聞こう、となる。そうなれば一番恥をかくのは読売側で、一番の被害者は野球ファンです。シーズン中に監督とヘッドコーチが法廷に呼ばれるなんて前代未聞。どこがファンを大事にしているんだ、という話にもなります。だから、実は読売は、訴訟を起こして逆に窮地に追い込まれている面もあるわけです」  さらに問われるのは、監督らが出廷する可能性までを、渡辺会長が想定していたのかという点だ。もし想定していたのであれば、ファン無視の許されざる暴挙であり、仮に想定できていなかったのであれば、もはや老害と言われてもしかたがないだろう。  また、読売側が今回、先に法廷闘争に持ち込んだ手法を、法律論とは別に企業のあり方として疑問を呈するのは、企業コンサルティング会社(株)ブランド・コアCEOで武蔵野学院大学客員教授の福留憲治氏だ。 「多くの弁護士は、相談を受ければ弁護費用を稼ぐために裁判を勧めるでしょうが、言うまでもなく訴状の内容はすべて公開情報になりますから、訴訟が長引けばさまざまな事実が表に出てきて、場合によっては読売グループのイメージが失墜する可能性も考えられます」  とはいえ、今回の裁判が清武氏側にとって厳しいというのは多くの識者の一致した意見。『菊とバット』(文藝春秋)などの著書で知られるジャーナリストのロバート・ホワイティング氏は、清武氏には一部同情しながらも、主張にはやや無理があると考えている。 「読売ホールディングスは巨人軍の100%親会社ですから、その親会社の役員が子会社の事業活動に口をはさむのは、どの会社でもあることです。いいか悪いかは別にして、これを重大なコンプライアンス違反と裁判で主張するのは無理があるでしょう」  また、別の角度から「ナベツネ有利」を予測するのは先のA弁護士だ。 「渡辺さんが今回依頼した『TMI総合法律事務所』(東京都港区)は、元最高裁判事が3名も天下りをして顧問弁護士となっている大手事務所。裁判所が公平だなんていうのは幻想で、力のある事務所に手心をくわえる判決が多いというのは公然の事実です。この時点で『ナベツネの勝ちだな』とウワサしている同業者は多いですよ(笑)」  ともあれ、渡辺会長が原監督らの出廷も顧みずに提訴に突き進んだ行為を、暴挙と批判する声は多い。たとえ勝訴しても得られるものは少なく、リスクはあまりに大きい。「最後の独裁者」が、晩節を汚してまで求めているものは一体何なのか。着地点はもはや、本人にすら見えていないのかもしれない。 (文=浮島さとし) ●関連書籍/『別冊宝島1846 渡辺恒雄の虚像と実像』 <http://tkj.jp/book?cd=20184601>
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