「犬になりてぇ……!」ペット目線で無防備女子に迫る写真集『Pet’s Eye』

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 お散歩中の犬を発見した途端、目を輝かせ「キャ~、可愛い~」と近付いてゆくキュートな女子。ミニスカートにも構わず、無防備にしゃがみ込んでジャレる姿を見て、「ああ~、俺も犬になりてぇ......」と思ったことはないだろうか。  そんな夢を叶えてくれるのが、ペット目線の写真集『Pet's Eye』(マイウェイ出版)だ。「女のコが一番無防備な姿を見せるのは、恋人の前じゃなくペットの前だ」をコンセプトに、ベッドの中はもちろん、着替え中やお風呂場、トイレの中まで......今まで見たことの無いペットならではの低く近いアングルと、女のコの"無意識"によって生み出されるひとコマは、まさしく新感覚のエロ。もちろんパンチラや胸チラなど直球エロも満載なのだが、それ以上に女のコの「素」に潜むエロパワーについて考えさせられる、意外と奥深い作品なのだ。
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 ちなみにこの写真集で立派に「素」を披露してくれているのは、上品な女優フェイスが可愛い壇蜜ちゃん、萌え萌えな妹系アイドル・藍谷莉穂ちゃん、クールビューティーが魅力の矢口瀬奈ちゃんとグラビアで人気の3人。しかし、顔はほとんど写っておらず、コンセプトに特化した贅沢な仕上がりとなっている。
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 この『Pet's Eye』が他のフェティッシュ系写真集と最も異なる点は、読者自身が欲深い人間のままでなく、欲を持たない純粋な存在である"動物"に扮してしまっているところ。故に「透明人間になったら何する?」という永遠のテーマにも似たえげつない妄想にも発展しやすく、男性にとってはニヤニヤの止まらない"罪深き写真集"といえる言えるだろう。  最後に、もしこの写真集にどっぷりハマッてしまったとしても、くれぐれも実家のペットに小型カメラをくくり付けて、普段しもしない散歩に意気揚々と出かけたりしないように。あ~、後世は猫になって、カワイコちゃんに飼われたい!! (文=林タモツ)
Pet's Eye このアングル! amazon_associate_logo.jpg
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「元素オタク」の本気を見た!『世界で一番美しい元素図鑑』

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『世界で一番美しい元素図鑑』
(著:セオドア・グレイ/創元社)
 すいへーりーべぼくのふね......高校の化学の授業で誰もが呪文のように唱えたフレーズ。これは周期表(元素を原子番号順に配列した表)を暗記するための語呂合わせだが、ド文系の僕にとっては、HとかHeとかLiとかBeとか、元素なんてものは退屈なアルファベットでしかなかった。  本書『世界で一番美しい元素図鑑』(原題『The Elements』)は、そんな元素を世界一美しく見せてやると豪語する本だ。ちなみに、本書の日本語版は紙の書籍に先んじてiPad用アプリとして流通しており、そちらは周期表からワンタッチでお目当ての元素に飛べたり、画像を指でぐりぐり回転させられたりと電子書籍ならではの機能で評判になった。  一方、紙の本は図鑑らしく見開き2ページでひとつの元素を紹介し、左ページいっぱいに純粋状態の元素を、右ページに解説および特徴的な化合物・応用製品を配置している。さすがに独創性では電書版に劣るものの、でかでかと印刷された元素写真もなかなかの迫力。で、掲載された数百点もの品々はすべて著者のセオドア・グレイ氏が「物理学の法則と人間の法律が所持を許す範囲」で収集したものだ。
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(C) 2010 Sogensha inc.All rights reserved.
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 純元素のほうは、−183℃で薄青色の液体になった酸素、高圧放電によって紫色に光るキセノン、ジャズピアニスト・佐藤允彦のアルバムタイトルで一部の和ジャズ好きに名前だけは知られるパラジウム、冷やすと自然に"角張ったじょうご"型の結晶を作るビスマスなど、どれも看板に偽りなしの美しさ。  化合物関係も、リチウム電池、フッ素入り歯磨き、スカンジウム・アルミニウム合金製の自転車フレーム、チタン製のボディピアスや人工関節、先端部にオスミウムを使ったレコード針、劣化ウラン弾など、まさに「元素コレクター」の面目躍如。  そして各解説文は科学書らしからぬ軽妙さで、たとえば塩素の項では、
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〈塩素は、第一次世界大戦中に凄惨な塹壕戦で毒ガスとして使われました。(中略)私は純粋な塩素をほんの少量吸い込んだことがあります。病院送りにはなりませんでしたが、瀬戸際までいきました。筆舌につくしがたい苦痛で、吸った瞬間、鼻にバーナーの炎を突っ込まれた感じがしました〉  などと物騒なことをさらっと書いている。かと思えば、 〈アンチモンの塊は、鋳造後に冷めていく際、小さな音でメロディーを聞かせてくれるのです。温度が下がる過程で内部の結晶が壊れたり横滑りしたりして、内側から塊をはじき、チベットの鉦のような響きを生み出しているのに違いありません〉  なんて妙にロマンチックになったりもする。
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 ところで、現在までに発見されている118の元素のなかには「キュリウム」や「アインスタイニウム」など人名にちなんだ元素名もある。が、当人が見つけたものではないらしい。理由は、業界内に「公的な場で目立ったり名誉欲を出したりしてはいけない」的な不文律があるうえに、新しい元素は大所帯の研究チームによって発見されているから。ゆえに、キュリー夫妻やアインシュタインのように、すでに鬼籍に入っていて、かつその名が元素に冠されても文句が出ない「無難な人物」が選ばれるのだとか。さらに、 〈名前を付ける作業には発見よりずっと長い時間がかかります。発見の関係者それぞれが発見の先取権を主張し、命名委員会で議論がつくされるまで誰も納得しようとしないのですから〉  と、なんだかノーベル賞受賞の順番待ち説にも似た、シラケた空気を残して本書は幕を下ろす。でも、実はこのへんの煩わしいエピソードが個人的には非常に面白かったりする。本書は「元素オタク」が自身のコレクションをぎゅうぎゅうに詰め込んだビジュアルブックであり、ポップでシニカルな科学エッセイでもある。 (文=須藤輝) ●セオドア・グレイ(Theodore Gray) 元素コレクター。本業は、数式処理システム「Mathematica®」や質問応答システム「Wolfram Alpha™」の開発で世界的に知られるコンピュータ・ソフトウェア会社ウルフラム・リサーチの共同創立者で、現在は同社ユーザーインターフェース技術部門責任者。サイエンスライターとしても活躍し、「ポピュラー・サイエンス」誌にコラムを長期連載している。周期表をテーマとしたウェブサイトperiodictable.comの主宰者として、大学、学校、博物館向けの写真入り周期表の制作などの普及活動を行っている。周期表(英語でperiodic table)をかたどって中にそれぞれの元素を収めた木製の机「周期表テーブル(Periodic Table Table)」(本書235ページ)を制作したことに対して、2002年、ユーモアにあふれる科学研究に与えられる「イグノーベル賞(化学部門)」を贈られている。 公式サイト<http://www.sogensha.co.jp/special/TheElements/index.html>
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童貞時代の複雑な感情が蘇る! エロいけどヌケない写真詩集『思春期』

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「触れたいのに触れられない」。高校時代のそんな淡い気持ちが蘇る写真集。
(c) Yuki Aoyama
 空に向かって跳ぶサラリーマンたちを収めた写真集『ソラリーマン』(ピエ・ブックス)や、女子高生の淡いフェティシズムを切り取った『スクールガール・コンプレックス』(イーストプレス)などで話題の写真家・青山裕企が、新作写真詩集『思春期』(ピエ・ブックス/谷郁雄氏と共著)を発表した。『スクールガール・コンプレックス』では写真の素材として女子高生を扱っていたが、今回の『思春期』ではより自然な舞台に置かれた女子高生の儚さ、美しさ、エロさなどに切り込んでいる。この、一見オシャレに見える写真集の裏にはどんなドロドロのリビドーが潜んでいるのか!? 青山さんに直撃してみた。 ――青山さんと言えば写真集『ソラリーマン』に代表されるように、おっさんがジャンプしている写真のイメージが強いですが、被写体として女子高生に興味を持つようになったきっかけは? 「もともとジャンプ写真ばっかり撮っていたんですが、2006年にグループ展をやったときのテーマが『変態』だったんですね。人が跳んでる写真って、どちらかというとサワヤカでポップじゃないですか。せっかく『変態』っていうテーマなので、今までと違うことをやろうかなと考えた時に出たのが女子高生だったんですよ」 ――『変態』と言えば女子高生だろうと! 「女子高生にしろサラリーマンにしろ、制服を着ている存在というのに興味があるんですね。都内で電車に乗っていると、サラリーマンや女子高生をよく見かけますけど、どこか無機質で記号っぽく見えるじゃないですか。そういうものを作品にしようと思って撮り始めました」
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(c) Yuki Aoyama
――ちなみに高校時代は共学でしたか。 「共学です。でも制服はブレザーで、市内でワースト3に入るくらいダサかったんですよ。だから高校時代は、それほど制服自体への執着ってなかったと思うんですけどね。まあ体操着とか、夏服のシャツに透けるブラとかはよく見てましたけど」 ――新作写真詩集『思春期』では夏服しか写してないですよね。ブレザーにはそれほど苦い思い出があると。 「まあそこは、肌の露出の関係で冬服だと隠れすぎちゃうっていうのもあるんですけど」 ――高校時代ってモテてましたか。 「中学までは完全にイケてないグループで、当然女子からは全く相手にされてなかったんですけど、高一の春になぜかクラスの女子からアタックされ、こっちが動揺する中、周りの盛り上がりに後押しされて、初めて付き合ったんですよ。でも、その女の子が......表現はよくないですけど、ヤリ手な子で。すぐに他の男子に乗り換えられ、一気に女性不信に陥ってしまいましたね」 ――じゃあ女子高生に対するイメージって、むしろ悪かったりするんですか。 「そんなことがありつつも、ひとりっ子だったこともあり、ずっと同世代の女性と交流がなかったんで、女性に対してものすごい幻想を抱いていて『神聖な存在だ』みたいに思っていました」 ――それ以外に高校時代の恋愛っていうのは......。
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(c) Yuki Aoyama
「大学受験の前日に同じバスに乗ってた女の子に一目惚れしました! しかも、その子が受験当日に同じ教室にいたんですよ。これは運命だと思うじゃないですか。なんとかして声をかけたいけど、そんな話術もない。しかも、実力的に試験には落ちると思ってたんで、今声をかけないと一生会うチャンスがない。そこで試験中ずっと作戦を考えて、終わって教室から出ていったところをつけていって、『財布を落としちゃったんで、帰りの交通費を貸してもらえませんか』って」 ――それは......完全に怪しいですね。 「でも彼女は疑いの目ひとつせずに『いいですよ』って! そこで完全に心を持ってかれましたね。彼女は現役で合格し、僕は浪人して一年後にその大学に入ったんですが、借りたお金を返すという名目で住所を聞き出していたので、その間ずっと文通をしていました」 ――告白はしたんですか。 「大学に入ってしばらくして、授業にも嫌気がさしはじめた頃に、キャンパスでその子と一年ぶりに再会したんですよ。でもそのとき横に知らない男の子がいて......。今考えれば、それだけでカップルって決めつけるなんてどうかしてるんですけど、当時は一年間膨らませ続けた思いでいっぱいいっぱいになっていたので『オレの大学生活はもう終わった!』って思っちゃって。その足で東京駅まで行ってしばらく失踪し、その後休学して旅に出ました(笑)。日本中を自転車で旅したんですけど、実はその時、旅先の風景を写真に収めたいなって思ってカメラを買ったのが、写真を始めたきっかけなんですよ」 ――じゃあ今の活動って、その子に影響された部分が大きいとも言えますね。 「旅に出たのは、それ以外にもいろいろな原因があったんですけどね。運動音痴でモテなくて、自分に自信がなかったっていうのがコンプレックスだったんで、あえて自転車で旅を......みたいな。まあ、制服に対してこだわりを持っている男子っていうのは、こういう感じで学生時代にモテてなかったケースが多いんじゃないかなって思います。制服を着た子と上手くコミュニケーションが取れなかったからこそ、それを引きずっているという」 ――そうですね、ボクも男子校だったんで制服には異常に執着してますからね! 今は撮影のときに上手くコミュニケーション取れてるんですか?
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(c) Yuki Aoyama
「いや、やっぱり撮影するときも恥ずかしくって......。今はちょっと慣れましたけど、知らない女の子とスタジオに入って、制服を着てもらうっていう時点で、もはやプレイですからね。どこか赤面しながら撮ってますよ」 ――思春期のドキドキ感が蘇ってきた、みたいな。 「顔を写さないんで、撮るときにもモデルの子と目が合うことはないっていうのもポイントですね。だからこそじっと見つめられるんですよ。教室で斜め前の女の子を見つめている感じ。しかもブラが透けてたりしたら、必死で目に焼き付けてたじゃないですか、そんな気持ちを写真上で再現したいと思っています。世の中にはエッチな写真って氾濫しているんで、単純に女子高生をいやらしい性的対象としては扱いたくなくて、かといってすごくキレイに芸術的に......っていうだけでもない」 ――好きな子の透けブラを死ぬほど見るけどそれでオナニーはしないぞ、みたいな。 「そういう高校時代の複雑な感情に似ていますね。この写真集を見てエロいって思う人は多いとは思うんですが、でもヌケない。女子高生って、いやらしいものでありつつ、神聖なものでもあると思っているので、そう簡単におかずにはさせないぞっていうのは意識しています」 ――この年になればエロ本でもエロビデオでも平気で買えますけど、この写真集を見るのはちょっと恥ずかしさを感じますからね。 「そんなに露出が強いわけじゃないけど、すごくエロく感じる。それって、当時思ってた淡いエロさが蘇ってるんだと思いますよ」 ――それでは今後、撮っていきたい題材があったら教えて下さい。 「日本的なものですね。サラリーマンとか女子高生っていうのも実に日本らしい存在じゃないですか。海外のサラリーマンがジャンプしてる写真も撮ったことがあるんですけど、格好良すぎるんですよ。スーツの広告みたいで違和感がない。海外もいろいろ巡った結果、やっぱり日本って面白いなって思っています」 (取材・文・写真=北村ヂン) aoyamayuki.jpg ●あおやま・ゆうき 1978年愛知県名古屋市育ち。サラリーマンや女子高校生など"日本社会における記号的な存在"をモチーフとし、自分自身の父親像や思春期観などにユーモアを取り入れながら制作している。07年「キヤノン写真新世紀」優秀賞(南條史生選)受賞。著書に『ソラリーマン』(ピエブックス)『スクールガール・コンプレックス』(イーストプレス)がある。 <http://yukiao.jp/> グループ展『写真三銃士 2010』 会期:11月19日(金)~ 28日(日) 会場:新宿眼科画廊 住所:160-0022 東京都新宿区新宿5-18-11 電話:03-5285-8822 開催時間:12:00 - 20:00(最終日は17:00まで) 休廊日:木曜日 協賛:キヤノン株式会社 * 入場無料 * 写真鼎談(yukaicamera on USTREAM):11月20日(土)16:00 ~17:00 * アーティストレセプション:11月20日(土)17:00 ~20:00 * 写真三銃士写真集「誓約」発売(A5, 白黒, 80ページ, 700円, 100部限定)
思春期 女子高生とは、永遠にイノセントな存在なのです。 ピエ・ブックス刊/定価:1890円 amazon_associate_logo.jpg
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タイ人の想像力はハンパない! 究極のB級スポット満載『HELL 地獄の歩き方』

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(c) Kyoichi Tsuzuki
 デフレ不況に空前の円高と、低迷が続く日本の景気。そんな世の中に不安を抱いてか、若い女性を中心にパワースポットめぐりがブームになっている。神様仏様にもすがりたくなる気持ちは分からないでもないが、そんなパワースポットとは真逆をゆく、世界初(!)の地獄の歩き方を記した写真集『HELL』(洋泉社)が発売された。著者は、日本、そして世界のロードサイドに埋もれたアート、カルチャーを追い続けている都築響一氏。そんな都築氏が今回注目したのが、地獄庭園だ。  地獄とは最強にネガティブな場所、それ以外のなんでもない。しかし世の中には、そんな誰もが絶対に行きたくないスポットNo.1である地獄を、わざわざ手間ヒマかけて再現している人々がいる。彼らはプロのアーティストではなく、地元のコンクリート職人や寺の信者たち、そして時には子どもたちというケースも。まったくの素人ゆえ、"止まりどころを知らない"強烈な地獄の世界が作り上げられているのだ。  日本をはじめ、世界各国にはさまざまな地獄めぐりスポットはあるものの、そのなかでも群を抜いているのが、微笑みの国・タイだ。タイは国民の約95%が仏教徒というほどの仏教国。在家信者に向けた通俗仏教書と言われる「トイプーム」によると、宇宙には3つの世界(三界)、「欲界」、「色界」、「無色界」がある。「欲界」は、天、人間、阿修羅、餓鬼、畜生、地獄に分かれており、地獄庭園のジオラマもこの三界の説く世界観に基づいている。在家信者が守るべき戒律「五戒」を守らなければ悪いことが待っている、という因果応報観を現しているのだ。
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(c) Kyoichi Tsuzuk
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(c) Kyoichi Tsuzuk
 本書の中には16カ所の地獄庭園が紹介されているが、どの庭園の造形物もグロテクス極まりない。「プレート」と呼ばれる死者の霊、冥界の人間たちが悶え苦しむ姿が、これでもかというほどリアルに表現されている。とくに彼らの目の据わり方、血走り方はハンパない。「こんな地獄に行きたくない」と身が引き締まる思いがするのは確かだが、その強烈なインパクトに腹の底から笑いがこみ上げてくる。  そして先日、この本の発売を記念したトークイベントが、青山ブックセンター六本木店で行われた。    そもそも、都築氏と地獄庭園の出会いは10年以上前。バンコクのホテルで現地の雑誌を眺めていると、ページの片隅におどろおどろしい立体地獄庭園の写真が載っていた。その写真に衝撃を受けた都築氏はすぐさまフロントで場所を突き止め、その足で現地に向かったという。
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独特の語り口調で地獄庭園の魅力を語る、
都築氏。会場は爆笑の渦だった。
「地獄庭園は『地球の歩き方』にはもちろん載っていないし、『ロンリ―プラネット』にも載っていない。『タイの田舎めぐり』みたいなタイ語のガイドブックでも一言も触れられていない。僕らにとってはB級の面白スポットだけれど、タイ人にとってはB級以下。観光地でもなんでもない、見下されるかわいそうなスポットなんです。本の中で紹介している場所はどこも情報がまったくなかった。それでタイ人の友達を総動員して、最初はバンコクに住んでる友達に聞くんだけど、英語が通じるような高い教育を受けているようなヤツらは、こういうものを知らない。『昔聞いたことはあるけど、行ったことはない』『なんでそんな場所に行くの? タイにはもっときれいな寺院はいっぱいあるよ』と言われる始末」 そこで、友人たちに各地の観光案内所に片っ端から電話をかけてもらい、地道に一カ所ずつ探しあてていったという。まるで宝探し状態。タイ人からみれば、さぞかし変わり者の日本人だったことだろう。イベントではタイ以外にも日本や台湾、そして中国本土にある"地獄スポット"もスライドショーで紹介された。 「聖書だろうが仏典だろうが、どこの宗教でも考えることは大体一緒。天国はバリエーションがあまりなくて、キレイな女の人がいるとか、おいしいごはんがタダでいっぱい食べられるとか、寿命が永遠みたいな感じ。退屈で平凡な描写しかできない。でも地獄にはバリエーションがある。みんな痛いのは嫌だから、なるべく痛いこととか嫌なことを考えていくと、人類は一つのところに行きつくのかもしれない。だからどこの地獄にも力が入っている。これって人間の不思議なところ」
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(c) Kyoichi Tsuzuk
 「タイしかり台湾しかり、ごはんとエステがよければ地獄もいい」というのは都築氏の持論だが、それにしても観光名所でもなんでもなく、タイ人にさえ知られていない地獄庭園。一体誰に向けて作られたものなのだろうか。 「地元の人が子どもを連れていって、そこで戒律を教えるわけです。『生き物を大切にしなさい、親の言うことは聞きなさい。そうしないとこうなるよ』という教育の場所なんです。子どもを怖がらせるために作られているんだけど、実際、子どもは大喜びして走りまわっている場合がほとんど。これで泣くのは4歳まで」  地獄庭園のコンセプトは寺の一番偉い僧侶が考えるらしいのだが、仏教のほかタイの精霊信仰とも絶妙にミックスされ、もはやなんだか分からない境地に達している場所も少なくない。また、小銭を入れると造形物が動き出す細工がされているものもあり、もっぱら寺の小銭稼ぎの場となっていることも。  「素人がやっているだけに、止まりどころを知らない。ここまでやることはないだろう、っていうのが多い。思いついたらとにかく作っちゃう。この考え方がすばらしい。グロもあるけどもちろんエロもある。タイは厳格な上座部仏教徒ですが、売春産業は盛ん。でもポルノはダメ。それなのに性器なんかばっちり作っている。あんまりにもリアルに作りすぎちゃうから地元のおばあさんとかから反感もあるけど、地獄のリアリティを出すにはこれは欠かせないということで説得したとか。それくらいちゃんと作っている。プロジェクト・イン・アビリティ精神というか、やる気がなくなるまでやり続けるって精神はすばらしいですね」
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(c) Kyoichi Tsuzuk
 こういった地獄庭園はバンコク周辺にはなく、たいてい田舎に作られている。だだっ広い土地に無数の「プレート」たちが何の脈絡もなく作られ、誰に見られるわけでもないのに、現在も延々と拡張され続けている。それらは例外なくまったくケアされておらず、それが地獄庭園の独特な雰囲気をさらに演出するのに一役買っているのかも知れない。 「これがタイの田舎にあって誰も行かないから六本木で笑われているけど、これが東京都現代美術館みたいなところにあったらパーフェクトに現代美術なわけよ。で、タイ人の名前なんかつけてりゃ、「おぉー」ってことになる。地獄庭園ってすごく面白いけど、素人が作って場所も場所だってことで、ぜんぜん美術だと思われていないものの典型。考えてみると、僕はここ30年ほどずっとそんなことをやってきた。秘宝館、ラブホ、暴走族しかり、バリエーションに過ぎないのかもという気もする。アートって不思議だよね。場所によってB級になったり、美術館にあると笑っちゃいけないものになる。一体基準はどこにあるのかって毎回思う」  これまでと同じアプローチでタイを旅したらどうなるか、ということで誕生した今回の写真集『HELL』。ただし、地獄庭園への具体的な住所や行き方は記載されていないのでご注意を。都築氏いわく、「この寺に行きたいってホテルのフロント係に言ったときに、『あぁ、それね。はい、パンフレット』って言われた時点で君の旅は負け」だそうです。 (取材・文=編集部)
HELL ~地獄の歩き方<タイランド編> 続編にも期待! amazon_associate_logo.jpg
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写真家・野口克也が空の上で考えたもう一つの東京

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空から見たTOKYOはこんなにも美しかった!
(c) Katsuya NOGUCHI
 建設中の東京スカイツリーはにょきにょきと育ち、めまぐるしく変わり続ける都市・東京。そんな東京の夜景を上空から見下ろした写真集『発光都市TOKYO』(三才ブックス)が発売され話題となっている。上空1万フィートから見下ろす東京の夜景は圧巻の一言に尽き、六本木、歌舞伎町、羽田空港に平和島など、いつもの見慣れた東京とはまた別の景色が広がっている。この写真集の著者が、空撮紀行番組『空から日本を見てみよう』(テレビ東京系)などのテレビ番組でも活躍する航空写真家・野口克也さんだ。「年間700時間は空の上にいる」という彼が眺めた東京の夜とは?  「東京の夜は格段に美しいんですよ。美しくもあり同時に迫力も感じます。この感覚はちょっと言葉にしづらいものがあります」と話す野口さんは東京生まれ。空から見る東京の街は、幼い頃から親しんだ地上からの視点とはまったく異なっているという。「当然の話ですが、明るい場所は人工の場所、暗い場所は自然の場所です。光で溢れる東京の夜景にぽっかりと空いた明治神宮や新宿御苑などの闇は、さながらブラックホールのように思えてくるんです」という比喩は航空写真家ならではだろう。
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(c) Katsuya NOGUCHI
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(c) Katsuya NOGUCHI
 元々、"普通"の写真家を志し、世界各国を訪れていた野口さん。しかし、幼い頃からパイロットになるという夢を諦めきれず、日本に戻りライセンスを取得。そして、フォトグラファー兼パイロットという特殊な肩書きを武器に、空撮写真の専門家として一躍その存在を知られるようになる。普通のパイロットの2倍にもなる年間700時間以上も各地の空を飛び回り、日本を中心に都市や自然を撮影し続けているというから、その熱意には敬服するばかりだ。ところで、その裏には人知れない苦労も存在するのだろうか? 「やっぱり寒いことですね。空を飛んでいるので、地上とは比べ物にならないくらい寒いんです。また、フォトグラファーとしての苦労は、フレームを決めることでしょうか。地上での撮影と異なり作画の自由度がある種無限にあるので、うっかりするとボーっと見とれてしまって、スピードも求められているのに考え込んでしまうのです」と、その悩みも空撮ならでは。しかし、そこまでして野口さんが空の上から表現したいものとは何だろうか?
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(c) Katsuya NOGUCHI
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(c) Katsuya NOGUCHI
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(c) Katsuya NOGUCHI
「建物や都市なども地上にいれば、地面の上からの視点からしか見ることができません。僕は、空撮ならではの構図や、地上では絶対に見ることができない場所・カタチなどを探し続けて飛び続けています」  そんな唯一無二の表現方法を獲得した野口さんが、今後、空撮をしてみたい都市は上海とドバイだという。「上海は猥雑な中国の雰囲気を残しながらも急速にビジネス都市として発展した街なので、その両面を併せ持っているところが魅力的です。また、ドバイは高層ビルが建ち並んでいるので、空撮写真ならではの三次元的な絵作りに挑戦したくなります」というから、今後の活躍も楽しみだ。  最後に、生まれ育った東京について、野口さんはこう述べる。 「都市は生き物なんです。人という細胞の動きによって、衰退する場所もあれば栄える場所もあります。栄えた場所は三次元的にも大きくなっていくんです。それが如実に現れているのが東京だと思います」
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(c) Katsuya NOGUCHI
 地面にへばりついているだけでは何も分からない。翼の生えた写真家、野口克也の写真は、もう一つの東京を写すために、今日も空を飛ぶ。 (文=萩原雄太[かもめマシーン]) ●のぐち・かつや 1971年東京都出身。写真学校を中退し、当時民主化の波が押し寄せていた東欧諸国へ赴く。日本に帰国後、パイロットのライセンスを取得。その後、ヘリコプター航空会社のカメラマンとして航空写真、空撮映像カメラマンとして全国各地を飛びながら作品を創作する。作品集に『江ノ電ミニチュア散歩』(三才ブックス)、『空から見た"おもちゃ"の街―Tokyo Miniature Collection』(文芸社ビジュアルアート)など。 <http://ameblo.jp/aerophotographer/>
『発光都市TOKYO』 空撮カメラマン・野口克也氏が"東京の夜景"を捉えた写真集。地上の我々にとって見慣れた東京の風景も、光と闇の世界として新たな視点を見せる。発行/三才ブックス、価格/2,100円(税込) amazon_associate_logo.jpg
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「二十年経ってやっと自分の写真になった」 森山大道が見た東南アジア

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「次はメキシコシティを撮りたい」と語る森山氏。御年72歳とはとても思えない。
「僕は街頭スナップ写真家だから」  写真家・森山大道氏は、自身のことをそう呼ぶ。モノクロでコントラストが強く、ギラっと締まった印象的な黒。粒子の粗さ、躍動感、ダイナミックな構図。犬、子ども、人、野菜、動物、商店......。街のあらゆる存在が森山氏の撮影対象となり、一枚一枚の写真から街の呼吸が伝わってくる。世界中の街を歩き回り、その姿をカメラに収めてきた森山氏。今回上梓した写真集『THE TROPICS』は、自身が二十数年前に撮影した、タイ・ベトナム・ラオスなど東南アジアの写真をまとめた一冊。なぜ、当時の写真をこの時期に本にまとめたのか。写真集出版の経緯と併せて、森山氏の街の歩き方について、写真についてお話を伺った。 ──まずは、写真を撮影された当時のお話をお伺いしたく。なぜ東南アジアに行かれることになったのでしょう? 森山大道氏(以下、森山) 最初は、僕の写真学校の教え子だった写真家の瀬戸正人くんという人がいて。彼はタイ生まれということもあって、よくタイに行っていて、その話を聞いていたんです。本の後書きにも書いたんだけど、当時の僕は北方思考を持っていて、何かと北に行きがちだった。だけど、瀬戸くんからの話を聞いて、南の方にも少しだけ惹かれる思いがあって、まずは行きたいという気持ちが湧いてきたんですね。僕は暑いところが好きじゃなかったんだけど(笑)。撮りたいというよりも、行きたいと。 ──東南アジアに降り立った時の印象はどうでしたか? 森山 まあ、当然のように面白かったわけ(笑)。何が面白かったかというと、常に僕が興味あるのは「人間が渾然といる場所」。街を歩いていると、子どもがゴロゴロたくさんいて、犬も猫もごちゃごちゃいる、人もいる生活もある。その雑多にいろいろなものが混在している感じが面白くなっちゃったの。もちろん街を歩くときにはカメラを持って撮影していたけれど、積極的に撮って本を出そうとは思っていなかった。でも、歩けば歩くほど面白くなっちゃって、たくさん撮ってしまった。最初にタイに行った後も、瀬戸くんに案内してもらってタイやラオス、ベトナムにも行って、結構撮りました。だけど、写真集を作るとか、自分の表現として発表しようとは思えなかった。 ──撮りたいけど本にはしたくないと。なぜそう思われたのでしょう? daidomoriyama02.jpg 森山 変な話だけどさ、面白い写真が撮れ過ぎるの(笑)。それは妙な感じで、自分の身体にきちんと入っていないっていうのかな。あの当時はまだ面白いとか珍しいとか、そういう気分で撮っていたから自分の撮った写真の実感みたいなものがなくて、写真と僕がまだ繋がっていなかった。当時、僕は渋谷の宮益坂に小さなプライベートギャラリーを持っていて、そこでプライベートに20~30点展示するという、小さな展覧会をやりました。それで、自分の中で東南アジアは一回終わっていたんです。 ──久々にネガを見て、このように写真集にまとめようと思われたのは何かきっかけがあったのでしょうか? 森山 ネガのケースにはタイトルが書かれているから、写真を整理する度にその文字を見ていて。中身を見たい気もするけど、なんとなくそのままにしてしまうってことを繰り返していて。ある時ふとネガを見て、写真から伝わってくる印象が変わって見えたんです。二十年以上の時間を経て自分と対面しているから、当時の自分の心情みたいなものがどこか薄れていて、写された対象だけが浮かび上がってきた。つまり写されたものだけが、しっかりと定着されていたように思えた。そんな風に自分の写真を見られるようになった。それで、東南アジアの写真集を作ってみようと、講談社の方に相談して実現しました。 ──写真って改めて見るとその当時の思い出が蘇ると言いますが、森山さんのそれはちょっと違うのでしょうか。時間を経て改めて見た時に、感情がなくなって写真を客観的に見られる。物質として写真が残るというのが面白いなと。 森山 全ての写真、特にスナップ写真というのは、最終的にはすべて記録として収れんされるんです。撮った時は撮った時の勢いや温度感があるけど、時間が経つと違った見方ができる。自分が撮ったものでも、再び出会った時に、違うコンテキストを見出すことができる。その構造が写真の一番の強度で面白いところだと思う。 ──撮影時に街に向かっていく時はどんなお気持ちなのでしょう? 森山 現場にいるときには暑いしさ、混沌としていて、そんな中で撮影すると既に自分が、ある種感電している状態で、街を探るセンサーみたいになっているから、あんまりいろんなことは考えないよね。身体的な感覚でヒートした状態になっている。もちろん撮る瞬間の思考はあるんだけど圧倒的に体感しながら撮っている。 ──写真を撮るときに街の人とのコミュニケーションはあるのでしょうか? それとも消えた存在になって撮っているのでしょうか? 森山 僕はほとんど対話はしないからね。理想は自分の存在を消したいところだけど、実際はカメラ持ったおじさんが単にいるってことだからね(笑)。小さいカメラを使ったりするくらいで。人間は、カメラのレンズという冷たい機械的なものに結構敏感なんだよね。深夜の新宿歌舞伎町でも、カメラを持って撮っていると、一瞬みんなふっと警戒する。視線を反らされたり、睨まれたりするよね。カメラっていうのはそういうヤバイ装置でさ。
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『THE TROPICS』より (c) Daido Moriyama
──写真を見ていると、ふっと写真家がいない瞬間があると思いました。 森山 写されたもの、その時に写された対象のエッジが際立つんだろうね。さっき話したその時の写真家の思いや気持ちがそぎ落とされて対象だけが浮かび上がってくる。撮るときの理論とか理屈とかはあるかもしれないけど、十年、二十年経つとそんなもんはさっと消えちゃうわけよ。特に街頭スナップ写真の場合は。 ──撮った写真を写真集に組んでいく時の作業というのは、どういう気持ちでページにしていくんですか? 本をめくるというのは時間を伴うものだと思うんですが、そういう時間軸のようなものは意識されてはいないのでしょうか? 森山 僕の場合はすべてではないけれど、基本的にストーリーを作るということはしない。もともとストーリーのある写真を撮っていないからね、街頭のスナップだから。だからページを繰るときの、ある種のインパクトやダイナミズムを大切にしている。時間はほとんど意識していなくて、あんまり重要じゃない。時間軸というよりも、すべてをシャッフルして、街の渾然、渾沌とした感じを見せる。今回はアートディレクターの町口覚さんに全部任せています。僕は数点この写真は入れて欲しいという話をしただけ。町口さんは町口さんで自分の哲学があって、それがとてもうまくいったということですね。 ──撮影される際に、惹かれる土地の特徴みたいなものはあるのでしょうか? 森山 それはね、人間が渾然といる場所。そうすると生活が見えるとかあるからね。圧倒的に街。街以外に興味はないよね。雑多に混在している場所。ということですよね、街であり都市である。そして野良犬がいっぱいいて、子どもがうろうろしているような。最近はそういう街も少なくなったけどね。日本でもちょっとローカルに行くと、街に人がいない。昔はもうちょっと人がいたよね。 ──いま興味のある街はどこでしょう? 森山 やっぱ東京だよ。僕が日本人だということの掛け値を抜かしたとしても、世界的に見ても東京なんじゃないかな。NYから帰ってきても、イタリアから帰ってきても、東京って変な街だねって思う。その「変さ」っていうのは僕にとっては魅力なわけ。今も、来年出そうと思って、東京の町を撮っているけど飽きないな。あと、外国ではメキシコシティに行きたいね。 ──常に好奇心を持って街に向かっていく、森山さんが放つエネルギーみたいなものを私たちは本から受け取っているような気もします。 森山 それは、エネルギーっていうよりも欲望なんじゃない? 僕の中には欲望があるんだよ。そこから出てくるんだよね、撮りたい気分、撮る対象との一瞬の衝突もね。だからスタティックな写真なんか撮ってたら街なんか撮れないのね。街にひっかき回されるからね。そうした外からの刺激を受けながら、それにリアクションしていって写真を撮る。
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『THE TROPICS』より (c) Daido Moriyama
──自分たちが普段生活していると慢心してしまって、外からの刺激に対して敏感に反応できない。写真を撮るという行為を通してそういった刺激に対して敏感になっていくというか。 森山 さっきエネルギーって言ったじゃない。もしそこにエネルギーがあるとしたら、そのエネルギーを作るのは街に出て写真を撮ることなんだよね。その中にしかエネルギーって生まれてこないから。あの、とにかく圧倒的にいろんなものがあるでしょう。だからちょっと理屈っぽくなるけれど、日常ってのは異常が集積している世界だから、どこ見ても異常なわけ。一枚変わればね。そういうところの行ったり来たりが面白い。写真ってのはその人のその時の経験だからさ。また、見る人ですべて解読のコードが変わる。自分の写真でも、見るタイミングによっても見方が変わる。それが面白いんだよね。 ──なるほど。確かに同じ写真でも、自分の精神状態で見方が全然違いますよね。そういう意味でも、この写真集はいろんな見方ができると思います。 森山 そうだね。パラパラとどこから読んでもいいし。だってさ、いろいろと考えてみたってしょうがないじゃない? 僕の写真は昔から難しいって言われていたんだけど、写っているのを見ればいいじゃないって思うわけ。シンプルに感じてもらえればいいと思う。もちろんコンセプチュアルな写真家の作品は、解読するためのコードがあると思うんだけど、スナップはね、目に入った部分だけを見ていればいいんだと思う。この写真集は、現代のタイの人たちにも見てもらいたいなと、現地の人の感想を聞いてみたいね。 ──ありがとうございました。森山さんの精力的な活動を見ているとこちらも元気が出てきます。 森山 だってさ、他に面白いことないじゃない。ごちゃごちゃした街に入っていって写真を撮ることだけがいちばんワクワクできる。ゴールデン街も飽きたしさ、俺、酒飲まなくなっちゃったから。勝手なもんで。写真がつまんなくなって酒が面白くなるよりいいんじゃない(笑)。 (取材・文=上條桂子) ●もりやま・だいどう 1938年大阪府生まれ。高校在学中から商業デザイン会社に勤め、後にフリ-の商業デザイナ-として独立。1960年、22歳の時に写真家・岩宮武二のスタジオに入り、翌61年に上京。細江英公の助手となる。以後「カメラ毎日」や「アサヒグラフ」「アサヒカメラ」などで活躍。「アレ、ブレ、ボケ」と形容されるハイコントラストや粗粒子画面の荒々しい写真表現は60~70年代の日本の写真界に一石を投じた代表作に『日本劇場写真帖』(68)、『狩人』、『写真よさようなら』(72)、『光と影』(82) 『サン・ルゥへの手紙』(90)、 『Daido hysteric』シリーズ(93~97)、『新宿』(02)、『記録』シリーズ(72~)など。 オフィシャルサイト<http://www.moriyamadaido.com/>
THE TROPICS 1980 年~90 年にかけて、東南アジアで撮影されながらも未発表のままお蔵入りしていた写真を集めた写真集。人々の息遣いや臭いまでもが感じられる森山節炸裂の圧倒的で濃密な世界。リアルで過酷な日常、ダイナミックな生命力にあふれた二十 年前のアジアの姿。 定価:本体7,500円(税別)/講談社刊 amazon_associate_logo.jpg
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【ドボク対談】大山顕×西澤丞『Build the Future』はアイドル写真集だ!(後編)

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大阪大学レーザーエネルギー学研究センターのターゲットチャンバー室。
■前編はこちら ■『Build the Future』はアイドル写真集だ! 大山 取材の許可もらうのも大変ですけど、こうやって写真集にするのも大変じゃないですか。あのー、編集さんいる前でなんですけど、写真集って儲からないじゃないですか(笑)。 西澤 儲かんないっすよねー(笑)。 大山 だから写真家と編集者とが、悪巧みというか、共犯関係みたいにならないと写真集ってできないですよね。ぼくは、自分が写真集出すにあたってそれが素敵だなって思ってるんです。かっこいい! って編集者さんが惚れ込んじゃう、みたいな。七井(『Build the Future』の担当編集)さんはもともと好きなんですか、こういうの? 七井 西澤さんの写真がすごい好きで。実は、前の会社にいるときも西澤さんの写真集を出させていただいて。
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こちらは『Deep Inside』より。
大山 あー!『Deep Inside』(求龍堂)も七井さんなんだ! そうなんだ! 今回どうやって企画通したんですか? 七井 とにかく西澤さんの写真を見てもらいました。通常は企画書を出して説明するんですけど、この企画は西澤さんにA3で大きく写真をプリントしてもらって、「とにかく見てください!」と。 大山 どうでした、そのときの反応? 七井 写真を見た瞬間に、「やってみよう!」みたいな。 大山 あー! それ素晴らしいですね! あ、じゃあ企画通したときは西澤さんはすでに撮り終わっていたわけですよね。撮影に同行してないんですね。 七井 そうなんです、行ってないんです。 大山 それ、悔しくないですか(笑)。 西澤 でも、本物見てもこんな風になってないから「なんだよこれかよ」ってなっちゃうかもしれない。 大山 あー、分かります分かります。工場もねー、実際以上に美しく撮ってるので実際見に行って「写真と違う......」っていう人多いです。写真って嘘つきだからなー。 七井 そうなんです、樋口(真嗣)監督が帯で書いてくださっている言葉がすごく分かりやすいんですけど、たぶん社会科見学だけだとこの衝撃は得られないっていうのが本当で。西澤さんの目で切り取ってるこの写真で見たほうが、たぶん実際に見るよりもかっこよく見えちゃってるかも。 大山 そうそう。そういえばこの『Build the Future』見て思ったのは、「この写真って"なに写真"なんだろう?」ってことだったんですよ。単純に、いわゆるアート写真ってのがあって、もう一方に報道とかドキュメンタリー写真っていうものがあるとしたら、西澤さんのこの写真はどっちなんだろう? って。たぶん大きく言えばドキュメンタリーなんだろうけど、でもいま言ってたように、忠実に撮るようで忠実じゃないわけじゃないですか。かっこよく撮って「どう? かっこいいよね!」って。 西澤 単純に言っちゃえばそうなんだよね。 大山 で、ぼく気がついた。「これ、アイドル写真だ!」って。 西澤 あーなるほど。 大山 実際のアイドル見たらあんまりきれいじゃなかったよ、っていうのと同じ。でも、かわいいのは確かで、現場で盛り上がっちゃうっていうのと同じで。腑に落ちたんですよね。 七井 なるほどー、分かりやすい。そうですね。
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「レーザーディスクガラス保持治具の精密洗浄風景/
ここでは超純水を使った手作業での洗浄が行われる」(本書より)
■「耐震写真集」出したいですよね 大山 さっきの前書きの話ですけど、日本っていうところにやっぱりこだわりはあります? 西澤 そうですねー。自分の住んでいる国だからね。これから世界にいくようになれば、世界に変わるのかもしんないけど。 七井 でも、博士たちの話を聞きにいったときに、日本人ならではだなって思ったのがあって。日本て耐震構造を必ず設計に入れてる。 大山 おおー。 七井 海外ではそういうの想定してないので、震度3くらいでポロっといっちゃう。 大山 そうそう! 日本の高架橋のスペックもすごいんですよ。それがまたビジュアルに現れてて。初めて上海の高速道路の高架見たとき、おいおいそんなペラッペラで、大丈夫かよって、思った。でも地震なかったらあれで十分なんでしょうね。日本の見慣れてると、びっくりする。団地もそうなんだよなー。 西澤 そうかー。 大山 「耐震写真集」出したいですよね。 西澤 耐震!(笑)大山さんなんてぼくよりマニアックだと思うよ(笑)。 大山 いやいやいやいや(笑)。 西澤 だってほら、『高架下建築』(洋泉社)でしたっけ? すごいマニアックだなーと思ってさー。しかもよく企画通したなと思ってさ。 大山 いやでも、あれニフティの「デイリーポータルZ」で記事にしたら、アップされて30分後に編集者さんから出版打診のメールが来たんですよ。「こういう写真集が作りたくて、仕事を変えた者です」みたいなひと言が添えられて(笑)。
→この顛末はサイゾーウーマン『気鋭の女性編集者たちにとっての「ドボク・エンタテイメント」とは』でどうぞ!http://www.cyzowoman.com/2009/09/post_981.html
西澤 すごいね(笑)、運命の出逢いだなー。 七井 いやーそういうことですよ、そういうことですよ! 西澤 あと面白いのが、例えばこの写真ね、改修作業に入っちゃうからもう見れないの。今度は超伝導のコイル使うらしい。 大山 おおー! 七井 研究が終わるとどんどん崩してっちゃったり、解体しちゃうので、けっこう儚いんですよ。 大山 そっかそっか! それ面白いな! 確かに、実験器具なんですよね、施設っていうより道具なんだなー! 西澤 装置もどんどん変わってるんですよ。どんどん改修して実験の精度をあげてってるから。 七井 やっぱりアイドル写真集ですよ、16歳の今はここしかないんです!(笑) 一同 うまいなー!(笑)。
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那珂核融合研究所のJT-60。現在も日々、改修を繰り返している。
 どうでしょうか。ぼくとしては「ちゃんと取材企画書書こう!」って反省した有意義な雑談、じゃなくてインタビューでした。取材後、「飲みながら話した方がよかったかもね」なんて話も。すみません。いや、でも本当に有意義なお話しでした。編集さんとの関係も素敵。うらやましい。  そして"アイドル写真集"である『Build the Future』、本当にかっこいいのでみなさんぜひ買ってみてください!  あ、あと、チャンバー室の写真(この記事のトップ)を見ながらこんな会話も: 西澤 これもね、普段は装置を保護するジャケットがかかってるの。でもどうしてもそのジャケット外したときに撮りたいから、メンテナンスのときに呼んでくださいってお願いしたんですよ。 大山 やっぱりアイドル写真ですね(笑)。 西澤 そうそう、脱がしちゃった。着てちゃ画にならないから、って(笑)。 (取材・構成=大山顕) ohyama_nishizawa01.jpg ●にしざわ・じょう(写真左) 自動車メーカーデザイン室、撮影プロダクション勤務を経て2000年よりフリー。広告、広報の写真撮影を行っているが、なかでも、科学技術、工業技術の撮影には定評があり、その写真は国内外のクリエーターに影響を与えている。 http://joe-nishizawa.jp/ ●おおやま・けん(写真右) 公営団地を紹介するWEBサイト「住宅都市整理公団」総裁。団地や工場のほかにもジャンクション、水道管、螺旋階段、高架下建築、地下鉄ホーム、駅のパイプ群など幅広い鑑賞趣味を持つ。写真集『ジャンクション』、著書『団地の見究』ほか。 http://danchidanchi.com/
Build the Future この本の中には、科学の子の、「夢」がある。(出渕裕氏) amazon_associate_logo.jpg
【関連記事】 「工場に萌えるということ」先駆者2人が語る工場鑑賞の美学 硬派な土木建造物を丸ごと集めた写真集『ドボク・サミット』 "ままならないかわいさ"『高架下建築』の魅力が詰まった写真集

【ドボク対談】大山顕×西澤丞『Build the Future』はアイドル写真集だ!(前編)

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核融合科学研究所の大型ヘリカル装置内部。
写真集『Build the Future』より
 みなさんこんにちは。大山です。ぼくは工場や団地やジャンクションを撮って写真集出したりしている人間です。要するに、一般的に写真家と呼ばれる職業ですね。そう、今回なぜだか一介の写真家であるぼくが、インタビューをしました。しかも写真家に!  インタビューする相手は、先日素晴らしい写真集『Build the Future』(太田出版)を出版された西澤丞さん。ぼくの尊敬する写真家です。2006年に発表された写真集『Deep Inside』(求龍堂)では建設中の高速道路や原子力発電所の内部などが収められていて、これがものすごくかっこいい。ぼくの大好きな写真集のひとつ。  で、今回の『Build the Future』でも核融合研究施設や加速器研究施設など、ふつう入ってみることのできない空間の、超かっこいい写真を撮っておられます。  うらやましい!  インタビューは正直気が引けてたんですが、どうやったらこういう写真が撮れるのか、この際そこらへんを聞いてみたい! という下心もあって西澤さんと対談してきました。  そう、これ、インタビューじゃなくて対談、いや、雑談かも。 ■「かっこいい!」って言っちゃう 大山 『Build the Future』拝見しました。これ、本当かっこいいですね! 西澤 ありがとうございます(笑)。 大山 こんなにかっこいいものを目の前にしながら、どんな感じで撮ってるんですか? 「うおー!」とか言っちゃいません? 西澤 「かっこいい!」って言っちゃう。言いながら撮ってるよ。 大山 やっぱり(笑)。 西澤 例えばこの表紙の場所、実は2回行ってるんですよ。1回目はあまりのかっこよさに舞い上がっちゃって、人物を入れて撮影するのを逃しちゃったの(笑)。 大山 あはは(笑)。 西澤 それが表紙。 大山 舞い上がっちゃって撮るの忘れたって、いい話だなー。なんかこう、勇気づけられる。で、現場にいらっしゃる研究者の方々はそういう「かっこいい!」っていう感想をどう受け取ってるんですかね。 西澤 現場の方々は見慣れちゃってるから、かっこいいと思ってないんですよ。面白いのは、ぼくは研究者ではなく素人なんで、かっこいいと思ったとこだけ撮るじゃないですか。それは研究の本質じゃないところだったりする。で、現場の博士たちは「そこはそんなに重要じゃないんだけどなー」みたいな目線を送ってくる(笑)。 大山 ああ、分かる分かる。ぼくも工場に招かれて、かっこいいなあと思ったもの撮ってると「それよりこっちの方を見てもらいたいんですけど......」って言われる。博士たちは西澤さんが撮った写真見ても「これがかっこいいのかー。分からないなー」って感じなんですかね? 西澤 撮影したあと、「こんな風に撮らせていただきました」ってメールで写真送るんですよ。そうすると少し反応が変わる。で、こうやって本が出ると「撮ってくれて、ありがとう!」ってなる。 大山 おおー。 西澤 こういう施設って、今までこういう写真集にはなってないじゃないですか。だから、みなさんどういう感じに写るのか想像ができない。で、実際こういう形で目の当たりにして初めて、ちょっと理解できるんでしょうね。 大山 みんなもっと撮ればいいのにね、こういうの。もしかして、自分でも写真撮り始めちゃう現場の方いらっしゃるんじゃないですか? 西澤 いると思いますよ。 大山 それはやっぱり「かっこいい!」って思ってるんですかね。 西澤 うん、だと思いますよ。 大山 それいいな、それいい。
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「大型ヘリカル装置の超伝導コイルは液体ヘリウムで冷却されており、
その液体ヘリウムを制御するためのバルブ」(本書より)
よくわからないが、かっこいい。
■「泣ける企画書を書くんですよ」 大山 実は今回ぼくが一番お聞きしたいのは......こういう施設って、どうやって入れてもらって撮影許可もらったんですか? 西澤 (笑)それはねー、企画書書いて、泣き落としですよ。 大山 泣き落とし!(笑) 具体的にどう泣き落とすんですか? 西澤 いやーもう、泣ける企画書を書くんですよ。 大山 それは西澤さんご本人が。 西澤 もちろんもちろん、自分で書く。 大山 それはもちろん撮りたいがための言葉ではなくて、本気ですよね。 西澤 いやマジですよ、マジマジマジ。ぼくは博士みたいに研究はできないけど、撮影して発表するっていうスキルがある。そこでぼくのやるべきことがあるなっていう。博士たちの研究を通訳して発表するような、そんな感じですね。 大山 かっこいい写真一枚で説得力があるっていうのはありますよね。そういうのもっと利用したいですよね。 西澤 そう。海外ではすごく上手に写真を政治の道具に使ってるじゃないですか。 大山 そうそう! アメリカの新聞社のサイトとか、写真かっこいいんですよね。 西澤 うまいんだよねー。使い方もよけりゃ撮り方もうまいしさー。あーゆうの見てると、すごいくやしいんだよ。 大山 そう、すごいくやしい! 西澤 フランスなんてカメラマンを雇って核融合施設の写真をかっこよく撮らせて、世界中に送ってるんですよ。しかもそのカメラマンが日本の施設にも来るらしいんだよ。なんで向こうのやつがこっちにきて撮るんだよって!(笑) 大山 俺にやらせろ! って。 西澤 そうそう、俺にやらせろって思うよね、本当に。
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那珂核融合研究所。「高周波加熱装置の導波管/プラズマを加熱する為に、
1本あたり1000kWの高周波を伝送する」(本書より)
■「『かっこいい!』ってやられちゃうといいなー」 大山 実はこの写真集でぼくが一番グっときたのは、前書きなんですよ。これすごくいい文章で、たぶん、このインタビュー記事で書くべきことがあるとしたら、もうこの前書きにぜんぶ凝縮されてるな、と思って。 西澤 悩んだ、これ書くの何日もかかった。 大山 最後の段落で「この国にとって重要な~」ってあるじゃないですか。つまり、こういうことですよね。 西澤 それくらいのこと言う人、いま必要だと思うもん。 大山 現場に行ってそこで働いている方の話し聞くと、やっぱり感動しちゃいますよね。 西澤 そうそう。感動しちゃってこういう文章になっちゃうんだよね。これ必要なのか必要じゃないのか、日本はどこへ投資するのか、って考えながら撮るじゃないですか。 大山 おおー! 西澤 そうすると、勉強しないと撮れなくなっちゃうんです。博士たちの物理の話もよく分かんないんだけど、それが何を目的にやってるかっていうことは自分で把握しとかないと、本にならないんです。ぼくが理解しないと読者にも伝えられないと思ってる。 大山 すごいなー。やっぱりこれ見て、かっこいいなーって、たとえば、高校生とかが思って、こういう研究施設で働いてみたいとか、っていうのが......。 西澤 そうそうそう、それ。 大山 うんうん! ぼくも時々ね、『工場萌え』(東京書籍)買ってくれた大学生が、あれがきっかけで工場の研究所に働くことにしましたって言ってくださることがあって。 西澤 それ、うれしいじゃないですか! 大山 そう、すごくうれしいの。 西澤 それですよ。 七井(この本の編集者さん) ちょうど一昨日、高校の図書館さんから注文がきてました。 大山 ああ! いいな! 西澤 それいいね! いいですね。高校生くらいがみて「かっこいい!」ってやられちゃうといいなー。ぜひやられちゃってほしいなー。 大山 あー、ぼく、ちゃんと企画書書いて取材申し込むのやったほうがいいな、っていま反省した。このインタビューの収穫はそれだな。 西澤 そこかい!(笑) (後編につづく/取材・構成=大山顕) ohyama_nishizawa01.jpg ●にしざわ・じょう(写真左) 自動車メーカーデザイン室、撮影プロダクション勤務を経て2000年よりフリー。広告、広報の写真撮影を行っているが、なかでも、科学技術、工業技術の撮影には定評があり、その写真は国内外のクリエーターに影響を与えている。 http://joe-nishizawa.jp/ ●おおやま・けん(写真右) 公営団地を紹介するWEBサイト「住宅都市整理公団」総裁。団地や工場のほかにもジャンクション、水道管、螺旋階段、高架下建築、地下鉄ホーム、駅のパイプ群など幅広い鑑賞趣味を持つ。写真集『ジャンクション』、著書『団地の見究』ほか。 http://danchidanchi.com/
Build the Future 「もう、シビレるっ!」としか云えません。(庵野秀明監督) amazon_associate_logo.jpg
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歴史的瞬間を追体験する──重大事件を報じた写真集『世界を変えた100日』

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『世界を変えた100日 写真がとらえた
歴史の瞬間』
(日経ナショナルジオグラフィック社)
 サッカーファンは、「リオネル・メッシの試合に立ち会えたのは幸運だ」とよく彼のプレーを讃える。マラドーナしかり、スポーツ選手の輝ける時期はほんのわずかな間でしかない。今しか見ることができないもの、その瞬間を目撃することは、刺激的で、とても幸運なことだ。  世界を揺るがす事件に遭遇するのは、もっと稀なこと。この年、この月、この日に何が起こったのか。『世界を変えた100日 写真がとらえた歴史の瞬間』は、歴史的大事件の瞬間をとらえた報道写真集だ。米ナショナルジオグラフィック誌と報道写真の殿堂・ゲッティイメージズから厳選した250余枚の写真と解説が、事件を生々しく伝える。古くは1851年5月1日「第一回万国博覧会」から、近年では2005年8月29日「ハリケーン・カトリーナ」まで、写真という技術が生まれてからおよそ150年の間に起こった100の事件が掲載されている。装丁は白地に文字だけと、ごくシンプル。評論家・佐藤優も推薦する重厚な一冊だ。  「リンカーン大統領暗殺実行犯の処刑」「原爆投下直後の広島の街」など戦慄の場面を切り取る一方、「エイズに罹患した子どもを抱きしめるローマ法王」など心温まる写真もある。「キング牧師の演説」では、人いきれもそのままに群集の熱狂を伝える。「マチュピチュの発見」や「プレスリー、テレビに出演」など、ただの政治史にとどまらず、幅広い分野を取り扱っているのも興味深い。  この本の優れている点は、恣意的でないことにある。フラットな記述と一枚の写真で切り取られた事実は、鈍器のような破壊力に満ちている。第一線のカメラマンによってフィルムに焼き付けられた歴史の瞬間を追体験しよう。世界は明日、変わるかもしれない。 (文=平野遼) ・ニック・ヤップ 写真を通して歴史をひもとく分野などで、約40冊の著作がある。また、英国BBCのテレビやラジオの番組制作やニューヨ-ク・タイムズのコラム執筆の経験を持つ。
世界を変えた100日 写真がとらえた歴史の瞬間 これがフォトジャーナリズムってやつ。 amazon_associate_logo.jpg
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