「まるで90年代の夕方6時枠アニメ!?」『モーレツ宇宙海賊』の大器晩成ぶり

moretsu.jpg
StarChild『モーレツ宇宙海賊』
 番組改編期目前の6月が到来したということで、これから月末に向けて多くのアニメが続々とフィナーレを迎えることになる。その中でも、現在とくにアツい展開を見せているのが『モーレツ宇宙海賊』(MBSほか)だ。  ごく普通の女子高校生だった主人公・茉莉香が、死んだ父親が船長を務めていた海賊船・弁天丸の船長となり宇宙海賊として活躍するというスペースオペラ作品である本作は、放送開始当初こそ「地味だ」「展開が遅い」「古くさい」という意見が多勢を占め、Blu-ray&DVD第1巻の初動売り上げもそこそこヒットレベルの作品であった。  しかし、茉莉香が宇宙海賊として生きていくことを決意する序盤のヤマ場である第5話から、物語はグイグイと急展開。評判もじわじわと上昇。さらに通常は巻を追うごとに売り上げが下がっていくBlu-ray&DVDの初動売り上げ枚数は右肩上がりで増加するという、大器晩成ぶりを見せている。  そんな『モーレツ宇宙海賊』の魅力を挙げるとするならば、やはり丁寧な描写という点に尽きるだろう。何かとスピード感重視の昨今、アニメも第1話で視聴者の興味を引くようなネタを詰め込まないといけない、という暗黙の了解が制作側のみならずアニメファンの間にも定着しているように感じられるが、そんな時代の風潮に左右されることなく茉莉香が宇宙海賊になるまでを、実に序盤の5話を使ってじっくり描いている点がまず驚きである。確かにスロースタートとなった本作だが、そのおかげで茉莉香のみならず、弁天丸クルーのキャラクターもじっくり描くことが可能となり、後の物語に深みを持たせることに成功している。  また、アニメでは大ざっぱに処理されがちな電子戦や戦術、組織の描写、作品世界の歴史などをじっくりと描いている点も、スペースオペラ的に高ポイントである。練りに練られた設定や、リアルなSF描写にロマンを感じる視聴者も少なくないだろう。  これらの要素を2クールにわたってじっくり描き続けた本作は現在、物語最大のヤマ場を迎えている。海賊船を狙う謎の敵が宇宙を跋扈する中、茉莉香はスタンドプレーが基本の宇宙海賊を招集し、組織化することで状況に立ち向かおうとする。第1話ではまだどこにでもいる普通の女子高校生だった彼女が、いまや海賊たちを束ねるリーダーとして人心を集めているのだ。  物語のスタート時点からは想像もつかない展開となっているが、そこに至るまでの心情や成長が丁寧に描かれているため、この展開に違和感は少ない。むしろ茉莉香の成長ぶりに、ここまで作品に付き合ってきた視聴者は感動すら覚えるはずだ。  冒頭でも「古くさい」という視聴者のコメントもある、と紹介したが、確かに本作はテンポのいい会話劇や、女性キャラが多い作品にありがちな百合描写、カタルシスを得るためのトンデモ展開など、今のアニメならあって然るべき「お約束」は現行の他作品に比べれば少なめ。むしろ骨太なSFドラマや謀略劇。はたまた泥臭い学園ドラマなど、例えるならば「90年代の夕方6時枠」を思わせるちょっぴり懐かしい肌触りの作風となっている。だが、それをもって本作がつまらないと切り捨ててもいいのだろうか?  軽薄短小が良しとされる今のアニメシーンの中で、ここ最近は『Fate/Zero』『境界線上のホライゾン』『ヨルムンガンド』といった熱く重厚なドラマが展開されるテレビアニメが増えつつあり、好評を博している。またOVA作品の『機動戦士ガンダムUC』もガンダムブランドという強力なバックボーンもさることながら、劇中の歴史を脚本や舞台設定にうまく取り入れることでドラマに奥行きを持たせることに成功し、大ヒットを記録している。  そう考えると、じわじわと上がっている『モーレツ宇宙海賊』のソフト売り上げと評価は、見応えある丁寧な作品に対する期待と、ゆるい萌え&日常系アニメは飽きてきたよ、というアニメファンからの無言のメッセージというのは深読みのしすぎだろうか。  放送開始時点と現在の『モーレツ宇宙海賊』の評価の転換は、アニメファンの求める作品像の変化の兆しなのかもしれない。 (文=龍崎珠樹) ■バックナンバー 【第13回】もはや“声優アイドルフェス”!? アニソン重鎮不在の「アニサマ2012」に不安の声 【第12回】「期待外れ?」「これぞ京アニ?」 賛否両論『氷菓』の本当の見どころ 【第11回】「燃え上がれ、俺の小宇宙よ!」前作ファンもニヤリ『聖闘士星矢Ω』 【第10回】「見たかったのはコレジャナイ!?」声優アイドルアニメ『夏色キセキ』に早くも黄色信号 【第9回】大コケの『機動戦士ガンダムAGE』を徹底検証! 求められる新たな「ガンダム像」とは? 【第8回】アニメ業界の新トレンド!? “分割2クール作品”急増の裏事情 【第7回】ついに世代交代!? 若手アイドル声優が続々歌手デビュー 【第6回】AKB48 vs 声優アイドルユニット アニメ界もついにアイドル戦国時代突入か!? 【第5回】一流アニメファンなら女児向け作品もチェックせよ!? 『スマイルプリキュア!』 【第4回】過激なピンク描写が男子の下半身を直撃!『アマガミSS+ plus』 【第3回】今クール話題の学園モノを徹底分析!『男子高校生の日常』『Another』 【第2回】ロボット好き必見! 洗練されたメカたちが大活躍『輪廻のラグランジェ』 【第1回】水樹奈々が歌いながらバトル!? 「戦うヒロイン」アニメに大注目!

「まるで90年代の夕方6時枠アニメ!?」『モーレツ宇宙海賊』の大器晩成ぶり

moretsu.jpg
StarChild『モーレツ宇宙海賊』
 番組改編期目前の6月が到来したということで、これから月末に向けて多くのアニメが続々とフィナーレを迎えることになる。その中でも、現在とくにアツい展開を見せているのが『モーレツ宇宙海賊』(MBSほか)だ。  ごく普通の女子高校生だった主人公・茉莉香が、死んだ父親が船長を務めていた海賊船・弁天丸の船長となり宇宙海賊として活躍するというスペースオペラ作品である本作は、放送開始当初こそ「地味だ」「展開が遅い」「古くさい」という意見が多勢を占め、Blu-ray&DVD第1巻の初動売り上げもそこそこヒットレベルの作品であった。  しかし、茉莉香が宇宙海賊として生きていくことを決意する序盤のヤマ場である第5話から、物語はグイグイと急展開。評判もじわじわと上昇。さらに通常は巻を追うごとに売り上げが下がっていくBlu-ray&DVDの初動売り上げ枚数は右肩上がりで増加するという、大器晩成ぶりを見せている。  そんな『モーレツ宇宙海賊』の魅力を挙げるとするならば、やはり丁寧な描写という点に尽きるだろう。何かとスピード感重視の昨今、アニメも第1話で視聴者の興味を引くようなネタを詰め込まないといけない、という暗黙の了解が制作側のみならずアニメファンの間にも定着しているように感じられるが、そんな時代の風潮に左右されることなく茉莉香が宇宙海賊になるまでを、実に序盤の5話を使ってじっくり描いている点がまず驚きである。確かにスロースタートとなった本作だが、そのおかげで茉莉香のみならず、弁天丸クルーのキャラクターもじっくり描くことが可能となり、後の物語に深みを持たせることに成功している。  また、アニメでは大ざっぱに処理されがちな電子戦や戦術、組織の描写、作品世界の歴史などをじっくりと描いている点も、スペースオペラ的に高ポイントである。練りに練られた設定や、リアルなSF描写にロマンを感じる視聴者も少なくないだろう。  これらの要素を2クールにわたってじっくり描き続けた本作は現在、物語最大のヤマ場を迎えている。海賊船を狙う謎の敵が宇宙を跋扈する中、茉莉香はスタンドプレーが基本の宇宙海賊を招集し、組織化することで状況に立ち向かおうとする。第1話ではまだどこにでもいる普通の女子高校生だった彼女が、いまや海賊たちを束ねるリーダーとして人心を集めているのだ。  物語のスタート時点からは想像もつかない展開となっているが、そこに至るまでの心情や成長が丁寧に描かれているため、この展開に違和感は少ない。むしろ茉莉香の成長ぶりに、ここまで作品に付き合ってきた視聴者は感動すら覚えるはずだ。  冒頭でも「古くさい」という視聴者のコメントもある、と紹介したが、確かに本作はテンポのいい会話劇や、女性キャラが多い作品にありがちな百合描写、カタルシスを得るためのトンデモ展開など、今のアニメならあって然るべき「お約束」は現行の他作品に比べれば少なめ。むしろ骨太なSFドラマや謀略劇。はたまた泥臭い学園ドラマなど、例えるならば「90年代の夕方6時枠」を思わせるちょっぴり懐かしい肌触りの作風となっている。だが、それをもって本作がつまらないと切り捨ててもいいのだろうか?  軽薄短小が良しとされる今のアニメシーンの中で、ここ最近は『Fate/Zero』『境界線上のホライゾン』『ヨルムンガンド』といった熱く重厚なドラマが展開されるテレビアニメが増えつつあり、好評を博している。またOVA作品の『機動戦士ガンダムUC』もガンダムブランドという強力なバックボーンもさることながら、劇中の歴史を脚本や舞台設定にうまく取り入れることでドラマに奥行きを持たせることに成功し、大ヒットを記録している。  そう考えると、じわじわと上がっている『モーレツ宇宙海賊』のソフト売り上げと評価は、見応えある丁寧な作品に対する期待と、ゆるい萌え&日常系アニメは飽きてきたよ、というアニメファンからの無言のメッセージというのは深読みのしすぎだろうか。  放送開始時点と現在の『モーレツ宇宙海賊』の評価の転換は、アニメファンの求める作品像の変化の兆しなのかもしれない。 (文=龍崎珠樹) ■バックナンバー 【第13回】もはや“声優アイドルフェス”!? アニソン重鎮不在の「アニサマ2012」に不安の声 【第12回】「期待外れ?」「これぞ京アニ?」 賛否両論『氷菓』の本当の見どころ 【第11回】「燃え上がれ、俺の小宇宙よ!」前作ファンもニヤリ『聖闘士星矢Ω』 【第10回】「見たかったのはコレジャナイ!?」声優アイドルアニメ『夏色キセキ』に早くも黄色信号 【第9回】大コケの『機動戦士ガンダムAGE』を徹底検証! 求められる新たな「ガンダム像」とは? 【第8回】アニメ業界の新トレンド!? “分割2クール作品”急増の裏事情 【第7回】ついに世代交代!? 若手アイドル声優が続々歌手デビュー 【第6回】AKB48 vs 声優アイドルユニット アニメ界もついにアイドル戦国時代突入か!? 【第5回】一流アニメファンなら女児向け作品もチェックせよ!? 『スマイルプリキュア!』 【第4回】過激なピンク描写が男子の下半身を直撃!『アマガミSS+ plus』 【第3回】今クール話題の学園モノを徹底分析!『男子高校生の日常』『Another』 【第2回】ロボット好き必見! 洗練されたメカたちが大活躍『輪廻のラグランジェ』 【第1回】水樹奈々が歌いながらバトル!? 「戦うヒロイン」アニメに大注目!

豪華声優陣が競演! 『モーレツ宇宙海賊』アフレコ中の小松未可子&花澤香菜を直撃!!

afureko01.jpg
 『学園戦記ムリョウ』や『シゴフミ』といった個性的な作品の監督として知られる一方で、『機動戦艦ナデシコ』や『宇宙のステルヴィア』などの宇宙SFものを手がけてきた佐藤竜雄。今冬は後者に近い『モーレツ宇宙海賊』を監督することになった(MBS、TOKYO MXほかで1月放送開始)。  『モーレツ宇宙海賊』は笹本祐一のSFライトノベル『ミニスカ宇宙海賊』(朝日ノベルズ刊)を原作にしたテレビアニメ。海明星に住む普通の女子高生が宇宙海賊船の船長になる──といった筋書きからも想像できるように、痛快なコメディー路線だ。声優の芸幅の広さを生かしやすいとみたか、豪華声優陣をこれでもかと注ぎ込んできたが、過日、アフレコ時に取材の場が設けられ、ヒロイン加藤茉莉香役の小松未可子、謎の転校生チアキ・クリハラ役の花澤香菜、ふたりがメインキャストを代表してメディアの質問に答えた。
0808marika.jpg
加藤茉莉香(声・小松未可子)。
(c)2011 笹本祐一/朝日新聞出版・モーレツ
宇宙海賊製作委員会(「ミニスカ宇宙海賊」
朝日新聞出版・朝日ノベルズ)
小松未可子(以下、小松)「加藤茉莉香はヨット部に在籍する普通の女子高生だったんですが、ある日突然『宇宙海賊船・弁天丸の船長になってくれ』と言われてから、女子高生兼宇宙海賊船長として、奮闘しつつ成長していくことになる女の子です。最初は探りさぐりといった感じで演じていたんですが、音響監督の明田川仁さんに『セリフの終わりに音符をつけるようなイメージで』と言われてからは、彼女を演じるためのコツを掴んだような感じがしています。茉莉香は明朗快活というか、何も考えていないようなあっけらかんとした性格なんですが、すごく芯の強い部分や自信をもっている女の子だったりもするので、そういう部分も出していけたらと思っていました」 花澤香菜(以下、花澤)「チアキは茉莉香と同い年で、いきなり彼女の通う高校に転入してくる謎めいた感じの女の子です。サバサバした男勝りな雰囲気だったりするんですが、人付き合いがあんまり得意じゃないとのことだったので、茉莉香と話をするときも何か牽制しているような、疑ってかかっているような、そんな感じを意識しながら演じました」  印象の残ったシーンについて尋ねると、こういう答えが返って来た。 小松「結構いろいろあったんですけど、憶えているのは茉莉香が夢を見ているシーンで、某ロボットアニメの主人公風に演じてくれと言われたところでしょうか(笑)。それにはビックリしました。ほかにも結構おおげさな感じでとか、いつもの茉莉香と違うなってすぐ分かるようなちょっと大人っぽい感じでとか、普段あまり使っていない演技の引き出しを開けていただいたことが多かったです。
afureko02.jpg
チアキ・クリハラ(声・花澤香菜)
 諸事情で某になっているが、だいたい想像がつくとおりのアレ。で、最近いろいろな作品でキレ芸を披露しているこの方はやっぱりという感じ。 花澤「チアキちゃんはノセるとすぐにノっかっちゃうキャラなんですね。なので、ノっかったときには、キレ芸を見せたりとか、すごい浮かれてしまったりとか、キャラになりきったりとか、そういういろんな彼女の一面が出てきたりもしたので、演じていて楽しかったです」  「キレてないですよ!」的なアドリブが出たのかどうか!? どのくらいアナーキーな現場だったのかが気になるが......。    作品の内容は「宇宙が舞台ということもあってすごく壮大で。あとキャラクターがすごく個性的で、第1話にしてこんなに個性が際立つのかとビックリしていました」(小松)、「海賊って言うぐらいだから、戦闘が続くのかなって思っていたんですが、私のイメージとしては加藤茉莉香というひとりの女子高生が成長していく姿を純粋に追っている作品だなという感じがしています」(花澤)と、ちょっとこれだけでは想像がつかないが、声優陣に劣らずメインスタッフにもビッグネームが名を連ねており(ex:アニメーションキャラクター原案はあきまんが担当)、映像化に際して気合が入っている感は伝わってきた。  佐藤監督はやはり今期の冬アニメである『輪廻のラグランジェ』の総監督も務めており、なんと11月27日には新宿ロフトプラスワンで『モーレツ宇宙海賊』との合同イベントを開催するという。    監督をゲストがいじり倒すと言いつつ、スターチャイルドとバンダイビジュアル、2大レーベルの垣根を超えたコラボレーション(いや、バトルか!?)という側面もあり、この公式の仕事ぶりから漂ってくる危険な感じは一体なんなのだろうか。  まずは第1話を、固唾を飲んで見守りたい。
ミニスカ宇宙海賊7 蒼白の髑髏星 最新刊は25日発売。 amazon_associate_logo.jpg
【関連記事】 【東京国際アニメ祭2011秋】革命的アニメ『TIGER & BUNNY』大ブレークの種明かし 警察まで巻き込み......『あの花』聖地巡礼で盛り上がる秩父市の"仕掛け" 多忙を極める磯光雄監督も登壇!『電脳コイル』夏期特別授業開講