街ブラ番組『ウルトラ怪獣散歩』が起こす、怪獣×東京03という化学反応

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『ウルトラ怪獣散歩』(アプレックス)
「今回は北川町じゃなくて、鎌倉ですけど」  メフィラス星人、メトロン星人、ケムール人という3体の怪獣たちが、鎌倉の街をブラブラしている。しかし、このロケでメインとなるはずの重要文化財「鶴岡八幡宮」には入れない。  撮影交渉をしたスタッフによると、撮影NGの理由は「神社という神聖な場所に怪獣はそぐわない」というもの。  それを聞いたメトロン星人は「ぐうの音も出ない」と嘆き、ケムール人は「怪獣はしょせん、人間世界に入れてもらえない悲しい存在なんですから……」とつぶやいた。これは「空想特撮散歩シリーズ」と銘打たれた異色街ブラ番組『ウルトラ怪獣散歩』(CSフジテレビONE)である。もともと、2014年8月に特別番組として放送され、その後DVD化。今年5月22日からレギュラー化された。それに先立ち、5月20日深夜には地上波版が放送された。  昨年の特番では、メフィラス星人とザラブ星人、ダダが東京の下町、柴又を街ブラ。「頭が黒いから、直射日光大変なんですよ」グチるダダ。そのため、柴又の商店街で帽子を買うことに。そこで見つけたのは、白黒縞模様の帽子。体の模様とほとんど一緒で、ダダのために作られたんじゃないかという帽子だ。まるで帽子と一体化したかのようなダダの姿がなんともシュールで、おかしみがあった。  肝心の食レポでは、口元を隠す怪獣たち。地上波版ではその食レポ中、メトロン星人が言う。 「なんならアンヌ隊員も呼んだらどうだい?」 「いただきました!」 と興奮するメフィラス星人。もちろん『ウルトラセブン』第8話に登場するメトロン星人の名ゼリフだからだ。そこに、ケムール人は「アンヌ隊員のこと好きなんですか?」と茶々を入れる。否定するメトロン星人に、「顔赤くなってますよ」と指摘するケムール人。 「もともと赤いんだよ!」  怪獣たちの「声」を担当するのは東京03だ。高い演技力で、リアリティのある会話劇からなるコントを得意とする3人組。メフィラス星人は角田晃広、ザラブ星人やメトロン星人は飯塚悟志、ダダやケムール人は豊本明長が演じている。彼らが声を当てることで、怪獣たちは命を吹き込まれたようにイキイキと動き出す。東京03のコント同様、その会話にリアリティがあるからだ。もはや、それぞれの怪獣たちが、彼らが演じるキャラクターそのものの性格だったかのように見えてきてしまうのだ。  番組では、食レポで訪れたお店にちゃぶ台を用意して、メトロン星人に名場面を再現させたり、鎌倉の街のBGMに合うのは「サザン」か「TUBE」かで怪獣たちの間で論争が起こり、海岸で取っ組み合いのケンカ。夕暮れの「ウルトラファイト」状態になったりと、やりたい放題の遊びっぷり。  オープニング曲も「来たぞ われらの ウルトラマン♪」と歌う「ウルトラマンのテーマ」だし、サブタイトルも「メフィラス星人 メトロン星人 ケムール人登場」とおなじみの書体で書かれている。本家・円谷プロが関わっているだけあって、パロディもいちいち“本気”だ。『ウルトラ怪獣散歩』は、『ウルトラマン』のパロディと街ブラ番組のパロディが高次元で融合した番組なのだ。  街を楽しそうに歩く怪獣たちの姿は、一見シュールだ。だが、そこに東京03が演じる声が加わると、奇妙なリアリティが生み出される。一方、東京03は今でこそ徐々に活躍の場を広げているものの、ほんの少し前まで「テレビ向きでない」という烙印を押されていた。いまだに、テレビではその高い実力に見合うような活躍をしているとは言いがたい。その境遇は、「怪獣」だからという理由で撮影NGを食らい、「人間世界に入れてもらえない悲しい存在なんですから」と嘆く怪獣たちとどこか重なる。しかし、怪獣という、いわばポップなアイコンを通すと、その会話のやりとりの可笑しさが一気にテレビ的に映えていく。  怪獣×東京03という『ウルトラ怪獣散歩』の実験は、怪獣たちに新たなリアリティを、そして東京03にテレビ的なポップさを与える化学反応を起こしたのだ。 (文=てれびのスキマ <http://d.hatena.ne.jp/LittleBoy/>) 「テレビ裏ガイド」過去記事はこちらから

進化を続ける「ウルトラ」シリーズ 受け継がれる円谷プロのDNAとは?

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円谷プロダクション公式サイトより
 日本を代表する特撮ヒーロー「ウルトラマン」。1966年の初代『ウルトラマン』以来、実に46年にわたり特撮のみならず、漫画、アニメなどメディアの壁を超えて新作が作り続けられている国民的ヒーローだ。  3月24日からは、AKB48が地球を守るという新機軸を打ち出し、各方面から話題を呼んでいる劇場最新作『ウルトラマンサーガ』が公開される。シリーズ初となる隊員がすべて女性という設定や3D公開、新旧3人のウルトラマンのコラボなど、誰も見たことがない「ウルトラマン」の仕掛けが満載だ。  映画のほかにも、ウルトラ怪獣がコントをする『ウルトラゾーン』や、「月刊ヒーローズ」で連載中のコミック「ULTRAMAN」、往年のテレビシリーズ『ウルトラQ』がカラーになって甦ったり……と次々に意表を突く驚きの展開を繰り広げている。  そこにきて、中学2年生の美少女ウルトラマンが登場するというライトノベル『ウルトラマン妹(シスターズ)』(PHP研究所、スマッシュ文庫)の発表には日本全土が衝撃に揺れた。我が国のテレビ史とともに歩んできた“メインカルチャー”の代表である「ウルトラマン」が、ライトノベル、萌え、妹などサブカルチャー的な手段で展開されるなんて!  「ウルトラ」シリーズを制作する円谷プロダクションは一体どうなってしまったのか? なぜ、今サブカルチャーとウルトラマンが急接近したのか!?   ということで、今回、円谷プロダクションの担当者にその真意を聞いてみた。 *** ──『ウルトラマン妹』のようなオタク的、二次創作的な作品が、円谷プロダクションから公式で発表されたことに非常に驚きました。 「『ウルトラマン妹』はPHP研究所との間で立ち上がったライトノベル企画ですが、当初はそこまで話題になるとは思ってはいませんでした。ただ、サブカルチャー的な方向性で『ウルトラマン』を展開するというのは『ウルトラマン妹』が最初というわけではなく、実は相当前からやっているんです」 ──例えば、どんな事例があるのでしょうか。
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コミケで発売された同人誌。
「まず、昨年夏に開催されたコミックマーケット80にて、ウルトラマンの同人誌的な本が頒布されました。そこで、現在『月刊ヒーローズ』(ヒーローズ)でコミック版『ULTRAMAN』を連載している清水栄一さんと下口智裕さんや、『GTO』の藤沢とおるさんやヒロモト森一さんがイラストを描き下ろしてくださいました。  そのコミック版『ULTRAMAN』のウルトラマンは、従来のツルッとした外見ではなく、メカ的な装甲をまとったデザインになっています。最近の映画でもウルトラマンゼロが装甲をまとい、武器を手にしています。これはマーチャンダイジングや映画の企画開発という側面もあるのですが、最近の、特にガンダムなどのロボットアニメを経てウルトラマンにたどりついた人からすると、そんなに違和感なく受け入れられているような気がします。  そういう意味で1980年代、平成になってからそれぞれの作り手が自分の得意とする技法を作品に盛り込んだり、著名な監督や脚本家の方々が『ウルトラ』シリーズに参加していることを考えると、すでに制作レベルでいい物を作ろう、面白い物を作ろう、今の若い人に受ける要素を取り込んでいこうと考えているから、こういう風な流れになっているんじゃないかと思います」 ──「面白いものを作ろう」という発想で「ウルトラ」シリーズを制作している、というお話から考えると、怪獣がコントを繰り広げる『ウルトラゾーン』(DVD Vol.1発売中)という番組が生まれた理由も分かる気がします。
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『ULTRAMAN』
(「月刊ヒーローズ」にて連載中)
「そうですね。この感覚はもともと、プロレス風のナレーションを入れて怪獣同士の格闘を流すという『ウルトラファイト』(1970年放送)が確立した時点から存在していて、知的な人がクールに笑ってくれるオフビートな感覚、言い換えれば、作家性と呼ばれる感覚は、常に意識しています。僕らみたいな40~50代の人たちが『ウルトラマンって絶対こうだよ』って言うかもしれないけど、20~30代くらいの作家さんたちは、彼らがその時に新しい、面白いと思う演出にいろいろと挑戦しているんです。その一方で、過去作品の演出などを上手に引用したりしているのを考えると、結局どれが本流だとか亜流だとかはあまり関係ないんじゃないかなと思います。そこに、メインカルチャーとサブカルチャーが絶妙にひっくり返る感覚を覚えますね」 ――なるほど。 「ネット上で企業が“エイプリルフールを遊ぶ”ということがまだ一般的ではなかった2005年に、“バルタン星人に円谷プロ公式HPがジャックされた”という企画を試したのが最初のエイプリルフール企画なのですが、以降、毎年その年の注目度の高いネタで作り込むようになりました。2010年は、1日限定でウルトラヒーローや怪獣たちがつぶやく円谷ッター(ツブッター)というものをTwitterと連動して行ったり、『ウルトラマンナイスの部屋』という番組をニコニコ生放送で配信しました。相当チャレンジングな企画でしたが、そのおかげでエイプリルフールのアワードを2つも受賞させていただきました。“セルフパロディで新しいカルチャーを生み出した”というところを評価していただけたのだと思います。エイプリルフールにこだわらず、これからも新しいことをやっていきたいと思っています」
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『ウルトラゾーン 1』(キングレコード)
──「ウルトラマン」は新しい作品やキャラクターを生み出すだけでなく、カルチャーそのものに対して大きな影響を与えているんですね。作品単体で考えても、以前のシリーズのヒーローが勢ぞろいした『ウルトラマンA(エース)』、海外で制作された『ウルトラマンG(グレート)』、あるいはイケメン俳優を主人公に据えた平成『ウルトラマン』シリーズなど、後のほかの特撮作品でも行われた試みが、実は相当早い段階で「ウルトラ」シリーズで行われていたわけですしね。 「創業者の円谷英二は『特撮の神様』と言われていますが、高度な特撮技術だけでなく、“誰もやったことのないことをやってしまう”という部分が真骨頂だったのだと思います。私たち現スタッフも、世の中の皆さんをあっと言わせたり、楽しませたいと考えています。もし、私たちが歴史ある作品を抱えて守りに入るようなことがあれば、天国の英二さんから『何やってるの?』と言われてしまうのではないかと思います。  時代は変わってゆきますし、新しいファンの方やウルトラマンをご覧になったことがない世代の方もいますので、常に新しい手法を模索していくことが必要だと思います」 ──劇場映画最新作『ウルトラマンサーガ』ではAKB48が全員女性隊員の防衛チームとして出演しますが、それも「新しいことへの挑戦」という文脈になるのでしょうか。 「『ウルトラ』シリーズの原点である『ウルトラQ』は、意外に子ども目線で描かれていたと思いませんか? その子どもの目線と、現場で状況に対処する大人の間に立って子どもたちを守ろうとする10代の女の子の原点が江戸川由利子だと考えると、『ウルトラ』シリーズの系譜から考えると正統な作り方だと思います。そういう意味では原点回帰している部分もあります」
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(c)「ウルトラマンサーガ」製作委員会
──確かに! 秋元才加さんなんて、見た目も格好いいしイメージ的に江戸川由利子を演じた桜井浩子さんに通じるものを感じます。新作と旧作の復刻という二輪で、これからも「ウルトラマン」は展開していくということですね。 「これは桜井浩子さんも言っていますが、今後も最初の『ウルトラQ』のDNAを少しでも受け継いで『ウルトラ』シリーズが続いてくれたらうれしいと思っています。キャラクター・マネジメントを考える時に一番怖いのがキャラクターの陳腐化です。つまり、普通になってしまうことなんです。例えばイベント会場で見られる光景ですが、怪獣やウルトラマンが出てくると、アイドルさながらに『キャー!』と言われますし、安心してCMにも使うことができる。それは登場以来、見てくださる方々に脈々と刻まれた信頼感や懐かしさ。言わば、親と一緒にいる気持ちのようなもので、日本人の本質に迫るものと言えます。40~50代の人には懐古的に訴えるし、若い人には新規性や革命的、チャレンジ精神を推し出す感じで表現できるといいんじゃないかなと考えています」 ***  『ウルトラマン妹』の登場は突然変異ではなく、「ウルトラ」シリーズ全体を貫くコンセプトの中から自然発生的に生まれた企画であり、そこに息づく「魂」はシリーズの原点『ウルトラQ』から何も変わらず存在しているのだ。担当者の言葉からは、それを強く感じることができた。  「新しいもの」「驚き」「好奇心」「探究心」……。そんなフロンティア精神に満ちた「ウルトラ」シリーズは、今後もさまざまなプラットホームで僕たちの心を魅了し続けることだろう。 (取材・文=有田シュン) ●『ウルトラマンサーガ』 謎の侵略者・バット星人によって占領されてしまった地球を舞台にウルトラマンゼロ・ウルトラマンダイナ・ウルトラマンコスモスが、地球人たちと力を合わせて希望と平和を取り戻す。 出演/DAIGO、つるの剛士、杉浦太陽 秋元才加、宮澤佐江、佐藤すみれ、梅田彩佳、増田有華、小林香菜、島田晴香ほか  声の出演/宮野真守、東国原英夫 監督/おかひでき 特技監督/三池敏夫  脚本/長谷川圭一  音楽/原文雄  制作/円谷プロダクション 配給/松竹 製作/「ウルトラマンサーガ」製作委員会 3月24日(土)全国ロードショーhttp://www.ultramansaga.com/
ウルトラマン妹 キターーー!!! amazon_associate_logo.jpg
ウルトラゾーン 1 [Blu-ray] 各地で話題沸騰中。 amazon_associate_logo.jpg
【関連記事】 ・「これが円谷の本気!?」ローカル局限定のウルトラパロディー『ウルトラゾーン』が熱い!!合体のロマンに全国の男子がハマりまくった! 「合体シリーズ」「ミニ合体シリーズ」今昔物語男子だって着せ替えしたいんです、プロテクターを! 「聖闘士聖衣大系」今昔物語練り続けて25年! 家族の絆を繋ぐ遊べるお菓子「ねるねるねるね」秘話!「ブームはウチが作る!」TOKYO MXと"悪を許す"沖縄の方言ヒーロー『琉神マブヤー』の挑戦

進化を続ける「ウルトラ」シリーズ 受け継がれる円谷プロのDNAとは?

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円谷プロダクション公式サイトより
(c)円谷プロ
 日本を代表する特撮ヒーロー「ウルトラマン」。1966年の初代『ウルトラマン』以来、実に46年にわたり特撮のみならず、漫画、アニメなどメディアの壁を超えて新作が作り続けられている国民的ヒーローだ。  3月24日からは、AKB48が地球を守るという新機軸を打ち出し、各方面から話題を呼んでいる劇場最新作『ウルトラマンサーガ』が公開される。シリーズ初となる隊員がすべて女性という設定や3D公開、新旧3人のウルトラマンのコラボなど、誰も見たことがない「ウルトラマン」の仕掛けが満載だ。  映画のほかにも、ウルトラ怪獣がコントをする『ウルトラゾーン』や、「月刊ヒーローズ」で連載中のコミック「ULTRAMAN」、往年のテレビシリーズ『ウルトラQ』がカラーになって甦ったり……と次々に意表を突く驚きの展開を繰り広げている。  そこにきて、中学2年生の美少女ウルトラマンが登場するというライトノベル『ウルトラマン妹(シスターズ)』(PHP研究所、スマッシュ文庫)の発表には日本全土が衝撃に揺れた。我が国のテレビ史とともに歩んできた“メインカルチャー”の代表である「ウルトラマン」が、ライトノベル、萌え、妹などサブカルチャー的な手段で展開されるなんて!  「ウルトラ」シリーズを制作する円谷プロダクションは一体どうなってしまったのか? なぜ、今サブカルチャーとウルトラマンが急接近したのか!?   ということで、今回、円谷プロダクションの担当者にその真意を聞いてみた。 *** ──『ウルトラマン妹』のようなオタク的、二次創作的な作品が、円谷プロダクションから公式で発表されたことに非常に驚きました。 「『ウルトラマン妹』はPHP研究所との間で立ち上がったライトノベル企画ですが、当初はそこまで話題になるとは思ってはいませんでした。ただ、サブカルチャー的な方向性で『ウルトラマン』を展開するというのは『ウルトラマン妹』が最初というわけではなく、実は相当前からやっているんです」 ──例えば、どんな事例があるのでしょうか。
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コミケで発売された同人誌。
「まず、昨年夏に開催されたコミックマーケット80にて、ウルトラマンの同人誌的な本が頒布されました。そこで、現在『月刊ヒーローズ』(ヒーローズ)でコミック版『ULTRAMAN』を連載している清水栄一さんと下口智裕さんや、『GTO』の藤沢とおるさんやヒロモト森一さんがイラストを描き下ろしてくださいました。  そのコミック版『ULTRAMAN』のウルトラマンは、従来のツルッとした外見ではなく、メカ的な装甲をまとったデザインになっています。最近の映画でもウルトラマンゼロが装甲をまとい、武器を手にしています。これはマーチャンダイジングや映画の企画開発という側面もあるのですが、最近の、特にガンダムなどのロボットアニメを経てウルトラマンにたどりついた人からすると、そんなに違和感なく受け入れられているような気がします。  そういう意味で1980年代、平成になってからそれぞれの作り手が自分の得意とする技法を作品に盛り込んだり、著名な監督や脚本家の方々が『ウルトラ』シリーズに参加していることを考えると、すでに制作レベルでいい物を作ろう、面白い物を作ろう、今の若い人に受ける要素を取り込んでいこうと考えているから、こういう風な流れになっているんじゃないかと思います」 ──「面白いものを作ろう」という発想で「ウルトラ」シリーズを制作している、というお話から考えると、怪獣がコントを繰り広げる『ウルトラゾーン』(DVD Vol.1発売中)という番組が生まれた理由も分かる気がします。
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『ULTRAMAN』
(「月刊ヒーローズ」にて連載中)
「そうですね。この感覚はもともと、プロレス風のナレーションを入れて怪獣同士の格闘を流すという『ウルトラファイト』(1970年放送)が確立した時点から存在していて、知的な人がクールに笑ってくれるオフビートな感覚、言い換えれば、作家性と呼ばれる感覚は、常に意識しています。僕らみたいな40~50代の人たちが『ウルトラマンって絶対こうだよ』って言うかもしれないけど、20~30代くらいの作家さんたちは、彼らがその時に新しい、面白いと思う演出にいろいろと挑戦しているんです。その一方で、過去作品の演出などを上手に引用したりしているのを考えると、結局どれが本流だとか亜流だとかはあまり関係ないんじゃないかなと思います。そこに、メインカルチャーとサブカルチャーが絶妙にひっくり返る感覚を覚えますね」 ――なるほど。 「ネット上で企業が“エイプリルフールを遊ぶ”ということがまだ一般的ではなかった2005年に、“バルタン星人に円谷プロ公式HPがジャックされた”という企画を試したのが最初のエイプリルフール企画なのですが、以降、毎年その年の注目度の高いネタで作り込むようになりました。2010年は、1日限定でウルトラヒーローや怪獣たちがつぶやく円谷ッター(ツブッター)というものをTwitterと連動して行ったり、『ウルトラマンナイスの部屋』という番組をニコニコ生放送で配信しました。相当チャレンジングな企画でしたが、そのおかげでエイプリルフールのアワードを2つも受賞させていただきました。“セルフパロディで新しいカルチャーを生み出した”というところを評価していただけたのだと思います。エイプリルフールにこだわらず、これからも新しいことをやっていきたいと思っています」
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『ウルトラゾーン 1』(キングレコード)
──「ウルトラマン」は新しい作品やキャラクターを生み出すだけでなく、カルチャーそのものに対して大きな影響を与えているんですね。作品単体で考えても、以前のシリーズのヒーローが勢ぞろいした『ウルトラマンA(エース)』、海外で制作された『ウルトラマンG(グレート)』、あるいはイケメン俳優を主人公に据えた平成『ウルトラマン』シリーズなど、後のほかの特撮作品でも行われた試みが、実は相当早い段階で「ウルトラ」シリーズで行われていたわけですしね。 「創業者の円谷英二は『特撮の神様』と言われていますが、高度な特撮技術だけでなく、“誰もやったことのないことをやってしまう”という部分が真骨頂だったのだと思います。私たち現スタッフも、世の中の皆さんをあっと言わせたり、楽しませたいと考えています。もし、私たちが歴史ある作品を抱えて守りに入るようなことがあれば、天国の英二さんから『何やってるの?』と言われてしまうのではないかと思います。  時代は変わってゆきますし、新しいファンの方やウルトラマンをご覧になったことがない世代の方もいますので、常に新しい手法を模索していくことが必要だと思います」 ──劇場映画最新作『ウルトラマンサーガ』ではAKB48が全員女性隊員の防衛チームとして出演しますが、それも「新しいことへの挑戦」という文脈になるのでしょうか。 「『ウルトラ』シリーズの原点である『ウルトラQ』は、意外に子ども目線で描かれていたと思いませんか? その子どもの目線と、現場で状況に対処する大人の間に立って子どもたちを守ろうとする10代の女の子の原点が江戸川由利子だと考えると、『ウルトラ』シリーズの系譜から考えると正統な作り方だと思います。そういう意味では原点回帰している部分もあります」
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(c)2011「ウルトラマンサーガ」製作委員会
──確かに! 秋元才加さんなんて、見た目も格好いいしイメージ的に江戸川由利子を演じた桜井浩子さんに通じるものを感じます。新作と旧作の復刻という二輪で、これからも「ウルトラマン」は展開していくということですね。 「これは桜井浩子さんも言っていますが、今後も最初の『ウルトラQ』のDNAを少しでも受け継いで『ウルトラ』シリーズが続いてくれたらうれしいと思っています。キャラクター・マネジメントを考える時に一番怖いのがキャラクターの陳腐化です。つまり、普通になってしまうことなんです。例えばイベント会場で見られる光景ですが、怪獣やウルトラマンが出てくると、アイドルさながらに『キャー!』と言われますし、安心してCMにも使うことができる。それは登場以来、見てくださる方々に脈々と刻まれた信頼感や懐かしさ。言わば、親と一緒にいる気持ちのようなもので、日本人の本質に迫るものと言えます。40~50代の人には懐古的に訴えるし、若い人には新規性や革命的、チャレンジ精神を推し出す感じで表現できるといいんじゃないかなと考えています」 ***  『ウルトラマン妹』の登場は突然変異ではなく、「ウルトラ」シリーズ全体を貫くコンセプトの中から自然発生的に生まれた企画であり、そこに息づく「魂」はシリーズの原点『ウルトラQ』から何も変わらず存在しているのだ。担当者の言葉からは、それを強く感じることができた。  「新しいもの」「驚き」「好奇心」「探究心」……。そんなフロンティア精神に満ちた「ウルトラ」シリーズは、今後もさまざまなプラットホームで僕たちの心を魅了し続けることだろう。 (取材・文=有田シュン) ●『ウルトラマンサーガ』 謎の侵略者・バット星人によって占領されてしまった地球を舞台にウルトラマンゼロ・ウルトラマンダイナ・ウルトラマンコスモスが、地球人たちと力を合わせて希望と平和を取り戻す。 出演/DAIGO、つるの剛士、杉浦太陽 秋元才加、宮澤佐江、佐藤すみれ、梅田彩佳、増田有華、小林香菜、島田晴香ほか  声の出演/宮野真守、東国原英夫 監督/おかひでき 特技監督/三池敏夫  脚本/長谷川圭一  音楽/原文雄  制作/円谷プロダクション 配給/松竹 製作/「ウルトラマンサーガ」製作委員会 3月24日(土)全国ロードショーhttp://www.ultramansaga.com/
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【関連記事】 ・「これが円谷の本気!?」ローカル局限定のウルトラパロディー『ウルトラゾーン』が熱い!!合体のロマンに全国の男子がハマりまくった! 「合体シリーズ」「ミニ合体シリーズ」今昔物語男子だって着せ替えしたいんです、プロテクターを! 「聖闘士聖衣大系」今昔物語練り続けて25年! 家族の絆を繋ぐ遊べるお菓子「ねるねるねるね」秘話!「ブームはウチが作る!」TOKYO MXと"悪を許す"沖縄の方言ヒーロー『琉神マブヤー』の挑戦

「これが円谷の本気!?」ローカル局限定のウルトラパロディー『ウルトラゾーン』が熱い!!

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tvk『ウルトラゾーン』公式サイトより
 2012年3月に映画『ウルトラマンサーガ』の公開が決定した「ウルトラマン」シリーズ。だが、映画とはまったく別に、ひそかに人気を集めている新たなウルトラシリーズがあることをご存じだろうか。  その名も、『ウルトラゾーン』(tvk/毎週日曜日 23:00~23:30ほか)。といっても、ウルトラマンは登場しない。主役となるのはウルトラシリーズで登場している「怪獣」たちで、「バラエティー番組」なのだ。  本物の円谷怪獣が登場するコントパートや本格特撮ドラマパート、新造形の「ウルトラQ」怪獣によるコメディーなど、さまざまなコーナーからなる30分の番組なのだが、これが単なるおふざけじゃない!  コントパートはヘタなお笑い番組よりもずっと面白いし、怪獣知識は本当にマニアックなものばかり。かつてはパロディーNGだった印象があるウルトラシリーズだが、いつからか他社のパロディー商品などが出始め、とうとう自ら本気でやり始めたのだろうか。  しかも、これだけ面白いのに、tvk、テレ玉、チバテレ、サンテレビ、メ~テレという地方局の合同制作!! どうなってるの?  番組の企画を手がけたキングレコード専務取締役で、円谷プロダクション取締役の大月俊倫氏に聞いた。 「今のウルトラは流行りの戦隊ものと違い、女性ファンが少ないのが現状です。ここで大きな差がついていることは明白。多くの女性ファンを引きつけた『戦国鍋TV』のスタッフにウルトラの大ファンがおりまして、彼の『ウルトラでコントできないかな?』という一言が、番組の発想の始まりです」  番組自体は特に女性ファンを意識して制作しているものではないが、現状ではウルトラシリーズ始まって以来の女性ファン層を獲得しつつあるそうで、『戦国鍋TV』スタッフによるキモかわいい怪獣の表現や演出が、女性ファンに大いにアピールしているという。 「正直、番組の放送がスタートするまではウルトラのコアファンから総スカンを食らう覚悟でおりました。しかし第1話の放送が始まってみると、『久しぶりにウルトラらしいウルトラの番組』『円谷の本気を見た』といったような感想や評価をいただきました。Twitter等でもかなり大きく盛り上がっており、こちらでも往年のウルトラファンはもとより、若い女性層のツイートも急増しております」  大変な「力作」にもかかわらず、地方局のみの放送というスタイルに関しては、次のように説明する。 「『戦国鍋TV』のスタッフとキャストをそのまま引き継いだ番組ですので、ローカル局での放送という考え方もあるのですが、実は私がローカル局好きである、というのが大きく作用しております(笑)。チャンネルを回せばパッと見られる番組もいいですが、見られない番組があってもいいと思うのです。すごく面白いバラエティー番組が人知れずひっそりと放送されている状況が、私が望む状況です」  ところで、番組は第6話(11月20日放送)より、それまでの放送回とは大きく雰囲気が変わっており、それから最終回までは混沌の世界、まさしく「ウルトラゾーン」と化すそうだ。 「6話は、特殊技術も担当する田口清隆監督によるオールロケーションのドラマ『The Love』です。これぞまさしく昭和40年代、これぞまさしくウルトラの世界が展開します。7話以降はシリアスドラマあり、5話までのスタッフによる怪獣特捜隊基地と豪華セット、ウルトラ怪獣と実力派キャストによるコントあり、そして映画『電人ザボーガー』の制作チームによる新造型怪獣のショートムービーが入ります。こちらはセットコントと違い、日本全国津々浦々で昭和40年代風のレトロな場所を背景に、新造型のM1号、ケムール人、そしてラゴンが、面白おかしくて少し切ないウルトラなコントを繰り出します。また、合成カットの多用により特撮ミニドラマともいえるシュールな画面になっております」  ちなみに、「番組が好きで支持してくれている人の輪がどんどん広がったあかつきには、ファンの集会なども実現してみたい」と大月氏は語る。2クールのみ、ローカル局のみの、限定的ウルトラ新バラエティーが、今後ますます暴れてくれそうだ。
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【関連記事】 「固定ファンが離れれば終わり」テレビドラマ"定番シリーズ枠"の不確かな未来 「キレ芸」→「イジラレ」で再ブレークのカンニング竹山を現場の放送作家が絶賛中 「ブームはウチが作る!」TOKYO MXと"悪を許す"沖縄の方言ヒーロー『琉神マブヤー』の挑戦