名言ありドラマあり 職人ワザに唸る『ニッポン工場の鳥肌技術』

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『ニッポン工場の鳥肌技術』
(スコラマガジン)
 電車の窓から見かける灰色や錆色をした建物。一部のマニアを除けば、地味で無機質な雰囲気漂う工場の姿に気を留める人などほとんどいないだろう。  しかし一口に「工場」といっても、一歩中に足を踏み入れれば、身近なあんなものから、名前どころか存在することすら知らないディープな部品まで、取り扱われるモノはさまざま。そしてその製作過程には職人による技術が詰まった、めくるめく世界が繰り広げられている。  実際に工場の中に入ることはなかなか難しいが、それをのぞき見ることができるのが、この『ニッポン工場の鳥肌技術』(スコラマガジン)だ。  「誌上工場見学」と称された誌面をめくっていくだけでも、マンホール・かんな・ラバーマスク・へら絞り・義肢など、紹介されている製品・技術の多様さに驚きを覚える。「よく見るものだけど、こんなふうに作られているんんだ」という再発見と、「こんな技術があったんだ」という新鮮さが入り混じるラインナップである。  また、豊富なカラー写真も「これがあの製品になるの?」というアハ体験の宝庫。複雑なつくりの製造マシンや、小さな部品、鮮やかなオレンジ色に熱されて形を変える最中の鉄などを、完成品とじっくり見比べることができるのは、まさに「工場見学」の醍醐味だ。  「工場萌え」と言われるような、工場の佇まいに惹かれる人だけでなく、普段は工場に興味がない人ほど、現場のそこここに散らばるこれらの「センス・オブ・ワンダー」を強く感じるだろう。  そして、もうひとつの見どころは、本書で「鳥肌ポイント」とうたわれる職人たちの製品・技術に対するこだわりだ。  取材中にふと見つけた製造品の小さなバリ(はみ出した部分)取りに熱中し、記者をそっちのけにしてしまう技術者が紹介されているが、職人たちは皆そのように、自分の取り扱う製品・技術に対して、高い意識を持っている。その意識と熟練の手技で、日々安定したクオリティーを提供し続けている職人たちから出る言葉の説得力は、どんな偉人よりも確かなもの。  例えば、包丁をつくり続けて65年の鍛冶職人の「鉄と対話せなあかん」という言葉、爪を切った跡や細かい毛まで持ち主に合わせて再現したリアルな義肢をつくる製作所の「(使う人と)たくさんお話しして、人柄を知る」というモットー、新幹線や飛行機にも使われる「絶対に緩まないナット」を考え出した社長の「努力していない人に神さんはヒントを教えてくれませんのや」という一言など、モノに裏付けられた言葉には唸るしかない。  工場が持つ無骨な見た目とは裏腹に、写真あり、ドラマあり、名言ありの鮮やかな絵巻物のような1冊。次に工場を見かけたら、中の様子思いを馳せてしまうこと請け合いだ。 (文=萌えしゃン)
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