役所と癒着する悪質団体にも公的なお墨付き!? 「認定NPO」法改正が孕む危険性

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「特定非営利活動促進法の一部を改正する法律に
ついて」(内閣府)
 先頃の国税庁の調べによると、10月中に各地の国税局などで受けた認定NPO法人に関する相談件数は135件で、制度発足時からの累計相談件数が1万件を突破したことが明らかになった。これは認定NPO法人制度と寄付税制が6月に法改正されたことを受けてのものだが、この改正は被災地などで活動するNPOをサポートする一方で、不正の温床となっている悪質なNPOを助長する可能性も孕んでいる。  NPOとは「特定非営利活動法人」のことで、通常のNPOと「認定NPO」の2種類がある。両者の最大の違いは、寄付に関する税制。企業や個人が認定NPOに寄付する場合、寄付控除が認められている。そのため寄付が認定NPOに集中しやすいので、認定NPOは通常のNPOよりも資金調達が容易になるというメリットがある。だが、通常のNPOが申請書類に不備がない限り監督官庁に認証されるのに対して、認定NPOは条件面や手続き面など認証のためのハードルがこれまで非常に高かった。今回の法改正は認定NPOの基準を緩和し、その活動を促進しようというのが狙いだ。  とはいえ、世の中には必ずしも善良なNPOばかりが存在するわけではない。脱税やマネーロンダリングのトンネルとして暴力団のフロントNPOが設立されたり、最近では生活保護費をピンハネしたりするような貧困ビジネスに手を染める悪徳NPOも現実には存在するのだ。「オレがNPOをやっているのは、行政にうまく取り入りさえすれば働かなくても食っていけるからなんだよ」と、代表のS氏が運営するNPOもそんな悪質な団体の1つだ。  関東の某都市で活動するS氏のNPOの事業は、その大半が地方自治体などの行政絡みの案件である。自治体のポータルサイトや地域SNSの運営管理、自治体のパンフレットや冊子、ポスターの制作、自治体が主催するイベントの企画や事務局業務など......といった具合だ。 「NPOの活動範囲というのは社会に貢献できる分野に限られているんだけど、ウチは活動分野を『まちづくり』と銘打っているんで、地域に関わることなら何でもできるってわけ。そもそも、自治体絡みの仕事で地域に関わらないものなんてないわけだからさ。あと、引きこもりの若者の自立支援なんてのもやっているね。まあ、ニートの若い奴を事務所で預かっているだけなんだけど、それだけでお役所から自立支援絡みの仕事が入ってくるんだよ(笑)」(S氏)  まさに多岐にわたる仕事ぶりだが、雑居ビルの1室にある事務所で常勤なのは、S氏の他には彼の愛人である20代の事務職の女性のみ。その他の理事はすべて外部の者たちで、NPOを設立するための半ば名義貸しに近い状態。事務職の女性にしても日頃は電話番をする程度。こうした陣容で、どのようにして業務をこなしているのだろうか。 「そんなもん、業者に丸投げに決まっている。オレは役所との打ち合わせとか会議で、何となく全体を仕切っているような雰囲気でただしゃべるだけ(笑)。何の専門知識も技術もないわけだから、自分じゃ実務なんてできないし、そもそもやる気もない。自分が働かないで儲けるのがNPOの醍醐味なんだからさ(笑)」(同)  実は、S氏のNPOが自治体から請け負う仕事には「ある特徴」がある。それは、どの案件も価格が100万円を超えないということだ。通常、自治体など公共団体が民間業者と結ぶ契約では公平を期すために競争入札が行われるが、小額価格の場合は「随意契約」といって入札を行わずに自治体が任意で業者と契約を結ぶことが可能なのだ。都道府県やS氏のNPOが活動する政令指定都市では、価格が100万円以下の案件であれば随意契約を結ぶことができる。S氏が自治体から請け負う仕事もこうした随意契約によるものだが、随意契約は自治体側の担当者の裁量に任されるため、行政と民間業者との癒着を生みやすいという側面もある。 「『官民協働』なんてカッコつけてるけど、もう癒着も癒着(笑)。役所がオレのNPOに仕事を回すのは年間予算を消化したいからなんだよ。年度末が近づくと、役所も自分たちの部署に割り当てられた予算を消化しきれずに、半端な金額が残ってしまいそうなときがある。でも、それを使い切らないと、次年度の予算編成で余った分をカットされるわけさ。そこで、役所はパンフレットだのチラシだのどうでもいい仕事をでっち上げてオレのところに発注してくる。そして、仕事を請け負ったオレは突貫工事で年度内に仕事を仕上げるというわけ。仕事のクォリティ? そんなもん、適当に決まってるじゃん。予算を消化するためだけの仕事なんだから、誰も質なんて気にしないって(笑)」(同)  NPOを予算消化のための調整弁として利用する役所との癒着で多くの仕事を請け負っているとはいえ、100万円以下と価格が小額なだけに業者に仕事を丸投げしていては、S氏の手元にはいくらもカネが残らないのではないか。だが、そこにも利益を出すための「秘密」がある。それがインターンの存在だ。 「業者に丸投げといってもいわゆるプロにではなくて、マスコミ志望やIT企業志望の大学生とかをインターンとしてノーギャラで使うんだよ。交通費も支給しないんで、実際は彼らにとっては赤字なんだけど、ウチで働くことが経験につながって就活に有利に働くと思っているから、タダでも喜んでやってくれるよ。質が問われるわけではないから、学生レベルのスキルで十分なんだよね。おかげで、こっちは丸儲けというわけさ(笑)」(同)  「非営利」ということで誤解されやすいのだが、一定の条件を満たせばNPOも収益事業を行うことは可能だし、関係者はそこから給与を得ることもできる。ただ、儲かった剰余金は次の事業のために活用されなければならず、関係者で山分けすることが許されていないだけだ。だが、S氏自身はNPOから一切の給与を得ていない。正確には、「得ていないことになっている」と言ったほうがいいだろうか。 「どうやって生活しているのかって? そんなもん、NPOの経費で処理しているに決まってるじゃないか。自宅マンションの家賃も食費も愛人との遊興費もすべて経費で賄っている。おかげで決算処理が大変だって、いつもアイツ(愛人)には叱られてる(苦笑)。外部の理事やインターンたちは、無報酬だと言うと尊敬の眼差しでオレのことを見るんだけど、じゃあ、なんでオレはこうやって生活できてるんだって思うんだけどね。『無報酬』なんていう美辞麗句は、ああいう善良な連中の空っぽの頭には美しく響くんだろうな(笑)。このNPOはオレの財布のようなものだよ」(同)  NPOのような公共性の強い団体はその活動に関してさぞかし監督官庁によるチェックが厳しいのだろうと思われがちだが、実際には監督官庁に決算書類などを年に1度提出するのみで、活動の実態が精査されるようなことはまずないと言っていい。つまり、ほぼノーチェックなのだ。いったんNPOを設立してしまえばあとはやりたい放題というわけで、ここに不正の温床が存在する。  「行政との癒着・随意契約・インターンはNPOで儲けるための『三種の神器』だね」とうそぶくS氏の団体のように行政に寄生する悪質なNPOは少なからず存在する。今回の法改正による認定NPOの基準緩和は、こうした悪徳NPOにも公的なお墨付きを与えかねないということを肝に銘じておくべきだろう。 (文=牧隆文)
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NPO法人に2,000万円が消えた! 世田谷区で補助金スキャダルが発覚

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"市民派"だったはずの保坂展人世田谷区長
も、なぜかこの問題への対応は鈍い。
 実態の伴わないNPO法人に、東京都の世田谷区が2,000万円もの補助金を投入した結果、事業が頓挫して補助金が消えただけでなく、区が事態の隠ぺい工作を重ねて責任逃れを図っていたことが、地元区議らの追求で発覚した。NPOと区との間に不透明な金の流れがないか捜査機関が関心を持っているとの情報もあり、事件は今後さらに広がりを見せる可能性もありそうだ。  舞台となったのは、世田谷区で計画されていた「二子玉川デジタル映像コンテンツ産業誘致集積支援事業」(以下、「デジコン支援事業」)。世田谷区内にある東宝スタジオ(成城)や円谷プロ(八幡山)などの既存の映像関連企業を、民間主導で二子玉川地区周辺に集積し、同地区をデジタルコンテンツ産業のメッカとして活性化を図ろうというもの。事業体は民間から公募し、区はそれに対して10年度2,000万円、11年度4,000万円、12年度3,000万円を上限として負担するというのが大きな流れだ。  ところが、公募で選ばれた「特定非営利活動法人ディジタル・コンテンツ・インスティテユート」(略称:「DCIn」・東京都品川区・太田直久理事長)は、区から10年度の補助金2,000万円を交付されながら、交付後わずか1カ月で事業の廃止を区に報告。区はこれを承認し、補助金の行方も責任の所在も曖昧なままという異常な事態に陥っている。  これを問題視した地元区議らが今年の夏以降、区に対して真相究明と関係書類の提出を再三にわたり求めてきたが、所管部署である産業政策部長や工業・雇用促進課長は、証拠となる書類の存在や事実関係を一貫して否定し続けてきた。  その後も区議による情報公開請求などの厳しい追及が続くと、区は10月の決算委員会最終日になり、ようやく一枚の文書の存在を明らかにした。それは、デジコン支援事業の失敗に関して、保坂展人区長がNPO法人の太田理事(当時・現理事長)と区役所の応接室で会談した内容を、同席した工業・雇用促進課長がメモした「会議録」である。区ではそれまで、「会議録」の存在はおろか、保坂区長と理事長とは「一度も会ったことがない」として、会談の事実そのものを認めていなかったのだ。  実はこの前夜、事件の調査に中心的な役割を果たしてきた世田谷区議の桃野よしふみ氏が、担当部課長の非協力的な対応に業を煮やし、「明日の委員会で区長に直接質問をする」と伝えていた。このままでは区長の虚偽答弁を避けられないと追い込まれた区側は、委員会最終日当日の朝という異常ともいえるギリギリの段階で、「会議録」の写しを苦渋の選択で全議員に配布したのである。
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工業・雇用促進課による会議録まで制作していた
のに、世田谷区はその存在を否定し続けてきた。
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 こうした区の対応に対し、「虚偽の答弁を繰り返しながら情報隠ぺいを図ってきた行為は許し難い」と憤るのは、同じく真相究明を続けてきた世田谷区議歴13年の田中優子氏だ。 「区はようやく『会議録』を提出しましたが、例えばこの書類だけで、担当課長は3つの嘘をついていました。ひとつは、区長と太田理事とは『一度も会ったことがない』と繰り返していたのに、実際は会っていたこと。ふたつ目は、会ったことを認めた後も、『会議録やメモはない』と言い張っていたのに、メモが存在したこと。最後にメモの存在が発覚した後も、『備忘録しかない。議事録はない』と言っていたのに、メモをもとにパソコンで作られたワード文書が出てきました。嘘を塗り重ねてきた区の対応は、議会軽視であるとともに区民への背信行為です。許されることではありません」  決算委員会では保坂区長と板垣正幸・秋山由美子の両副区長が、これまでの虚偽報告について謝罪をする異例の事態となった。もっとも、区長は一連の虚偽対応はあくまで課長の独断で行われたものと主張し、「なぜ課長が独断で嘘をつく理由があるのか」との質問には「わからない」と回答。また、課長の直属の上司にあたる産業政策部長も、課長に対する「指導不足」を謝罪したものの、課長に虚偽対応をする旨の指示は「出していない」と否定し、「会議録」の存在についても「記憶にない」との答弁に終始した。  しかし、課長が残した会議録には、区長や両副区長、産業政策部長が出席していたことが記録されている。彼らは全員、同じ応接室で課長が記録を取っていたことに気付かなかったとでもいうのだろうか。  ましてや役所という組織の性格上、こうした重要な会議の場で記録を残さないなどありえることではない。「会議録の存在を知らなかった」などという説明は到底通らない。となれば、世田谷区のトップ4人が議会で虚偽答弁を行った疑いが、極めて濃くなったといえるだろう。  それにしても、情報開示請求に対して「ない」と拒み続け、ボロが出始めると嘘を塗り重ねていく世田谷区の姿勢は、自治体の情報公開の原則から見ても恥ずべき行為と言う他ない。ましてや、今回の事件は「NPOゴロによる補助金詐欺」(区関係者)という刑事事件の可能性も否定できず、ひいてはNPOから区へ金銭のキックバックさえも疑われる極めて疑わしい図式である。区は呑気に書類の隠ぺいなどしている場合だろうか。  一方、事件の存在や一連の虚偽回答が表に出た以上、世田谷区はせめて事実究明には積極的な動きを見せ始めたのだろうか。また、NPO法人に対して現在、どのような弁済請求を行っているのだろうか。  これについて、「区がNPOと結んだ弁済契約は、恐ろしくゆるい内容です。貴重な税金を取り戻そうという真剣な姿勢がまるで見えません」とあきれるのは、前出の桃野議員だ。 「私が入手した弁済契約書によると、区が弁済を求めているのはDCInに交付した2,000万円全額ではなく、DCInが現在保有している財産の3分の2にあたる956万円だけなのです。しかも、返済は月々わずか16万円の5年払いで、保証人もつけていません。それほどゆるい条件にもかかわらず、現時点での弁済状況は最初の一回分だけ。その後の支払いは履行されていないのです」  あまりに杜撰なNPOと呑気で無反省な世田谷区。彼らは2,000万円という公金が消えた事実を一体どう捉えているのだろうか。また、世田谷区がここまで生ぬるい対応をNPOに取り続ける理由は果たして何なのだろうか。これについて、ある区の関係者は匿名を条件に次のように答えてくれた。 「普通に推測すれば、理由は2つ。ひとつはDCInと世田谷区の間に金銭に絡んだ不適切な関係性があったこと。もうひとつは、区職員にとっては税金なんて他人の金。いくら溶けようが、痛くも痒くもないんでしょう。これだけディスクロージャー(情報公開)が叫ばれて情報がダダ漏れになっている時代に、いまだにコソコソと情報隠ぺいする役所の体質には呆れかえるしかないですね」
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2009年と10年に総務省からDCInに渡った計約2億円の
補助金の問題点を指摘する「AERA」の記事。
 実は、NPO法人のDCInが補助金絡みで問題視されたのは今回が初めてではない。09年と10年に総務省の「ICTふるさと元気事業」などの2つの事業で、DCInへの交付が決まっていた1億9,900万円の補助金及び委託事業費に対し、今年3月1日に同省が補助金適正化23条に基づく異例の立ち入り検査を実施したことを、雑誌「AERA」(朝日新聞出版)3月14日号が、「総務省デタラメ予算配分」と題する記事で報じている。こうした経歴を持つ団体をあえて選んで多額の補助金を交付し、全額返済を求めない世田谷区の対応に謎は深まるばかりだ。  桃野区議らは、これまで区が虚偽の説明を続けながら事実の隠ぺいを図ってきたことを厳しく非難したうえで、事件の全容解明に向けた第三者機関による調査・検証を強く要求している。 (文=浮島さとし)
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