
3年半にわたってアイドルの常識を壊してきたBiSのメンバーたちだが、解散ドキュメンタリーで予想外の事態に追い込まれてしまう。
人気アイドルグループの解散ドキュメンタリーを怖いもの知らずのAV監督たちが撮り上げるとゆー、とんでもない無茶ぶりで話題を呼んでいる『劇場版BiSキャノンボール2014』。撮られるアイドルグループは2014年7月8日に横浜アリーナにファン8000人を集めて解散ライブを行なったBiS。そのメンバー6人を解散ライブの前日から3日間にわたって密着取材したのは、カンパニー松尾を隊長とする大ヒット作『劇場版テレクラキャノンボール2013』(14)で異能ぶりを発揮したハメ撮り師たち。全裸PVやメンバー間の内紛さえもネタにしたアイドルらしからぬ非常識さで人気を得たBiSと『テレクラキャノンボール』で蛮勇を馳せたAV監督たちを掛け合わせると、一体どんな化学合成が生じるのか? 立ち見客でごった返すテアトル新宿の初日は、BiSファンと『テレキャノ』マニアとの期待と不安が入り交じった熱気で包まれた。
もともとはスペースシャワーTVで放送するBiSの解散ドキュメンタリー番組として企画されたものだが、非常識さで売り出したBiSの解散をフツーにまとめてもつまらない。そこで白羽の矢が立ったのが、希代のハメ撮りAV監督として熱狂的なファンのいるカンパニー松尾だった。でも、カンパニー松尾はBiSのことを知らないし、密着取材するにも時間があまりない。一度は断ることを考えていた彼の頭の中に閃いたのは、AV監督たちがどれだけ素人女性をナンパできるかを競い合う『テレクラキャノンボール』のフォーマットをそのまま活用するというアイデアだった。折しも、『テレクラキャノンボール』はAV作品ながら映画館で大入り満員が続いていた。そして奇しくもBiSメンバーは6人、『テレキャノ』のハメ撮り師たちも6人! 横浜アリーナでの解散ライブの前日のリハーサル、リハーサル後の夜、そして解散ライブ直後までの完全密着ドキュメントが始まった。
『テレキャノ』でおなじみカンパニー松尾らハメ撮り監督たちとBiSのマネージャー渡辺淳之介、スペースシャワーTVの高根順次プロデューサーらが集まった男だけの企画会議がめちゃめちゃ楽しそうだ。いつもは素人の女の子や熟女たちを相手にしているハメ撮り師たちは、現役アイドルをマンツーマンで撮影することになって浮き足だっている。ちなみにBiSメンバーには『情熱大陸』みたいなキレイなドキュメンタリー番組だよ~と伝えているらしい。でも、まぁ、フツーに考えれば相手は現役アイドルで、しかも解散ライブを控えている。ハメ撮りはありえない。じゃあ、逆にルール設定しても構いませんよねと、カンパニー松尾らはうれしそうにBiSキャノンボール用の得点システムを決めていく。
+3P→セミヌード、電話番号ゲット、貴重な過去の話
+2P→涙、寝顔、キス、靴下の匂い嗅ぎ、おなら
+1P→寝起き、ほっぺハグ、ハグ、肩叩き、手つなぎ
ただし「やめてください」は−5P、渡辺マネージャーからのクレームはポイント剥奪か退場
スーパーボーナスポイント
+100P→ハメ撮り
+9P→オナニー
+7P→フェラ
+7P→ヌード
+5P→手こき

セクシーな肢体と男性客が狂喜する一瞬を提供してくれたのはコショージメグミ。彼女もまた思わぬ場面で、とんでもない目に。
いよいよ撮影当日。BiSメンバーをカメラで追う監督たちの組み合わせが決まった。まずは第1ステージ。BiSメンバーをそれぞれの愛車に乗せ、都内から横浜アリーナまで誰がいちばん早く到着するかを競い合う。限られた時間の中で、BiSとは初対面の監督たちは彼女たちとの距離感を会話で探っていく。マスクで顔を完全ガードしているリーダーのプー・ルイをどう攻めるか、熟女系を得意とするタートル今田は考えを巡らす。AV好きなファーストサマーウイカは、カンパニー松尾が自分を撮ることになってはしゃいでいる。いいムードだ。そして『BiSキャノンボール』のキーワードとなる「伝説を残したい」という言葉をテンテンコから引き出したのは、ビーバップみのるだった。テンテンコはこの「伝説を残したい」という自分のひと言によって、悪夢のような一夜を過ごすことになる。
女の子の発した何気ない言動を見逃すことなく、がっちり食らいついていくハメ撮り監督の研ぎ澄まされた狩猟センサーに脱帽だ。第2ステージ。横浜アリーナでのリハーサルを終え、くたくたになっているBiSメンバーを近くのホテルまで各監督たちが送り届ける。横浜の夜景が見渡せるシティホテルの部屋は、どれもツイン。ベッドが2つ用意されている。各メンバーがOKさえすれば監督は朝までずっと密着取材できるのだ。メンバーは明日の解散ライブに備え、1分でも1秒でも早くベッドで眠りに就きたい。カメラで撮られていることを気にせず、下着姿になり、すっぴんを晒す。彼女たちのアイドルとしてのギリギリの結界とその結界の突破口を懸命に探し出そうとする監督たちとのせめぎあいが大きな見どころとなる。そして、その結界を平気で踏み越える狂人がいた! テンテンコから「伝説を残したい」という言葉を引き出したビーバップみのるだ。「僕と一緒に伝説を作ろう」と延々と粘る。ビーバップの考える伝説とは、“BiSなりのハメ撮り”である。ハメ撮りがダメなら、顔射させて。ホテルの窓の外は明るくなってきた。このままでは一睡もできずに解散ライブに臨まなくてはいけない……。悲壮感を漂わせたテンテンコは、ビーバップの提案した妥協案に協力するはめになる。
映画の撮影や写真を撮ることを、英語で表現するとshootになる。銃で狙い撃つことと、カメラで被写体を撮ることは同義語なのだ。撮るか撮られるか、撮影とは被写体とカメラマンとのタイマン勝負である。ビーバップみのるは自分が担当するアイドルのドキュメンタリーを「伝説に残る」ものにしようと一線を踏み越えてまで被写体を追い詰めていく。ホテルの一室で逃げ場のないテンテンコはBiS専用ラインで「死にたい……」とつぶやく。このシーンだけ見ると、ビーパップは大事な解散ライブを数時間後に控えたアイドルに極悪非道に振る舞う悪人に映る。だが、ドキュメンタリー取材とは、被写体の都合のいいときだけ、空気のように優しく寄り添うものではない。カメラが介在することで、被写体の意識はどうしても変化する。映像には被写体とカメラマンとの関係性がどうしようもなく映り込む。ドキュメンタリー撮影(もっと広く言えば取材するという行為全般)は、相手を容易に傷つけてしまうし、自分も返り血を浴びることになる。でも、そうやってガチで関係性を築いていくことでしか、観る者の心に響く作品を残すことはできない。『BiSキャノンボール』はそのことを改めて実証してみせる。

ヌルいアイドルドキュメンタリーで終わらせるわけにはいかない。カンパニー松尾ら6人のAV監督たちは最後の最後まで粘り腰を見せる。
最終ステージとなる横浜アリーナでの解散ライブ当日。ホテルでの出来事が知れ渡り、騒ぎとなる。AVに詳しいファーストサマーウイカが今回のドキュメンタリーは『情熱大陸』などではなく、『テレクラキャノンボール』だと気づいたのだ。騙されたこと、仲間がろくに眠らせてもらえずに解散ライブに上がらなくてはいけなかったことに、ウイカが大激怒する。ファンだったはずのカンパニー松尾に喰ってかかる。そして、その様子をカンパニー松尾はカメラに収め続ける。
結果、『BiSキャノンボール』はBiSメンバー6人の普段は見せない素顔に迫り、メンバーそれぞれの個性をくっきりと浮かび上がらせた。そして、テンテンコはアイドル界にひとつの伝説を残すことになった。『BiSキャノンボール』はアイドル映画の臨界点を塗り替えたといっていい。グループアイドルブームを反映したアイドル映画が続々と企画されているが、本作を上回る作品を生み出すのは簡単ではないだろう。
(文=長野辰次)
『劇場版BiSキャノンボール2014』
監督/カンパニー松尾 出演/プー・ルイ、コショージメグミ、ヒラノノゾミ、テンテンコ、ファーストサマーウイカ、カミヤサキ、渡辺淳之介、カンパニー松尾、バクシーシ山下、ビーバップみのる、タートル今田、梁井一、嵐山みちる、平澤大輔 配給/SPACE SHOWER NETWORKS 2月7日よりテアトル新宿ほか全国順次公開中(18歳以上のみ鑑賞可能)
(c)SPACE SHOWER NETWORKS INC
http://bis-cannon.jp