ゆりやんレトリィバァ『今、輝いている芸人No.1』受賞に困惑!? 「R-1負けたから、わけわからん状態……」

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 先日行われた『R-1ぐらんぷり2017』で、決勝に勝ち進み、「男友達と一緒にいるときのほうが生き生きしてる女子、何?」「ヤンキーがヴィトンの価値下げてる」などのあるあるネタで爆笑を生み出したゆりやんレトリィバァ。惜しくも優勝こそ逃したが、そのセンスとヴィジュアルのインパクトは、視聴者の心にしっかりと刻みつけられた。そんな彼女が『日清もちっと生パスタpresents! 今、輝いている芸人No.1』授与式に出席。お馴染みの「あの」ネタを披露しながら、今年のR-1を振り返った。
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 授賞式で感極まったセレブを演じる一人ネタでお馴染みのゆりやん。しかし、意外にも授賞式への出席は初めてらしい。「『今、輝いている芸人No.1』は、ゆりやんレトリィバァさんです!」と、司会者から名前が読み上げられると、涙を流しながらレッドカーペットを通り舞台に登場。トロフィーを片手に「カラオケ動画あげてる人どういうつもりやねん」「あいつむちゃくちゃ充電器借りにくるやん」と、スピーチネタを披露した。  このネタのための壮大な仕込みのような記者会見だが、ネタの中に「このオファーをもらったのはR-1決勝の前。優勝していたらNo.1として来ることができたけど、負けちゃったので、わけわからん状態」と自虐ネタを放り込む。そんなゆりやんに対して、司会者が「(R-1の)視聴者投票ではNo.1でしたから……」とフォローすると「こじつけやないか!」と激昂! 集まった記者やファンたちを爆笑の渦に巻き込み、壮大なコントは大成功した!
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 ところで、こんなコントを実現させてくれた、冷凍生パスタ市場で「No.1」(※)に輝く「日清もちっと生パスタ」のお味はいかがなものか? 98キロの巨体を揺らしながら早速試食すると、「すごいモチモチで美味しい! これ本当に冷凍なんですか!?」と大絶賛。もちろん、PRイベントに呼ばれたタレントが美味しいとコメントするのは当たり前。しかし、ゆりやんは、司会者が商品の説明をしている間も、美味なる生パスタを鼻息荒く喰らい続ける。「これ、めっちゃテンション上がります。女性のみなさんも好きな人に作ったら胃袋をつかめるはず!」とアピールした。  では、そんなゆりあんが、生パスタを一緒に食べて胃袋をつかみたい男性とは……? 記者から恋愛事情の話が振られると、ゆりやんからは、こんな答えが帰ってきた。
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「好きな人がいるのでその人と食べたいです。吉本の先輩で、名前は言えないんですが……(お笑いコンビ)アキナの山名(文和)さん」と、聞いてもいないのに相手の名前を公開し、積極的に求愛宣言! 以前、『金曜☆ロンドンハーツ』(テレビ朝日系)の企画で山名にガチ告白をしたものの、あっけなくその純愛が散った過去があるゆりやんだが、心の中ではまだ恋の炎は燃え続けている様子。生パスタになぞらえて「いつか好きな人のNo.1になりたいですね」と語ると、その見た目とはあまりの不釣り合いな台詞に思わず報道陣が失笑。するとすかさず、「何笑うてんねん!」と半ギレでツッコミ、記者会見を終了した。  2年連続R-1ぐらんぷり決勝戦に勝ち残り、芸人としては見事ブレイクを果たしたゆりやん。しかし、その恋路は、いまだに1回戦敗退が続いているようだ……。 ●日清もちっと生パスタ https://www.nissin.com/jp/products/brands/mochitto/ ※インテージSCI冷凍調理生パスタ市場(2015年1月~2016年11月金額ベース、ブランド別)【企業PR】

ラリー遠田の『R-1ぐらんぷり2016』評 王者・ハリウッドザコシショウの「破壊力と演出力」

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ハリウッドザコシショウ公式ブログより
 2016年3月6日、ピン芸日本一を決める『R-1ぐらんぷり2016』の決勝戦が行われた。大会にエントリーした3,786人の頂点に立ったのは、ハリウッドザコシショウ。決勝では、誇張の強すぎるものまねを次々にたたみかけていく2本のネタを披露。会場に集う観客を爆笑と興奮の渦に巻き込んだ。  ハリウッドザコシショウは数々の逸話に彩られた伝説的な芸人だ。多くの芸人や業界関係者が彼の芸に魅了され、ファンであることを公言している。芸に向き合う真摯な姿勢は後輩からも尊敬されている。荒削りで型破りなパフォーマンスを披露する芸人や一般人が次々に現れ、カルトな人気を誇っていた深夜番組『あらびき団』(TBS系)では、ハリウッドザコシショウは準レギュラーのような扱いでたびたび登場。番組内では「キングオブあらびき」の異名を取っていた。  私は今年の『R-1ぐらんぷり』の予選会場で、何度かハリウッドザコシショウのネタを生で見ている。そのときに印象的だったのは、広い会場の中で彼のネタに対する反応が人によって大きく分かれていたということだ。私はたまたま後方の席に陣取っていたので、客席全体の反応を見渡すことができた。観客の多くは彼のネタを見て、声をあげ、手を叩き、涙を流さんばかりに笑っている。ただ、一方で、全く無反応の人も一定数存在していた。恐らく、分かる人にとっては死ぬほど面白いが、分からない人にとってはまったく意味不明なのだろう。  笑いの好みというのは個人差が激しいので、他の芸人のネタでも多かれ少なかれそういうことはある。ただ、その違いが最もはっきり現れるのが、ハリウッドザコシショウのネタなのだ。実際、今回の『R-1』をテレビで見ていた人の中でも「これの何が面白いの?」という疑問を持った人もいるかもしれない。そういう人は決して特別ではなく、一定の割合で存在する。特に、ハリウッドザコシショウはずっと昔からそういうふうに思われがちな芸人であることは確かだ。  ただ、今年の『R-1』に挑む彼は明らかに「わかるヤツにだけわかればいい」などとは思っていなかったように見える。それはネタの構成にも現れている。「誇張しすぎたものまね」という得意のフォーマットの中で、極力わかりやすく、間口を広くしようとしている工夫が随所に見受けられた。  第一に、個々のネタの前振りが丁寧になっていた。例えば、ザキヤマ(アンタッチャブルの山崎弘也)のものまねをやるときにも、正しいものまねを見せた後でそれを誇張したバージョンを演じていた。元ネタが何であるのかわかりづらいものは、それをきちんと説明したりもしていた。  第二に、最初のネタが終わったところで、次のフリップをめくる前に「酔っぱらってないですからね」と念押しをして、自分が受け手を置き去りにしないというスタンスを明確に示していた。  第三に、ものまねの題材として昔のマンガなどのマイナーなものは選ばず、誰でも知っている有名なものばかりを並べた。特に、野々村竜太郎元県議など、多くの人に伝わりやすいような題材も積極的に採用。その上で、自分が今まで積み上げてきた笑いの根幹の部分はそのまま貫き通していた。  番組を録画している人は、ハリウッドザコシショウの1本目のネタが終わった直後に画面に映された、司会者、審査員、観客の反応を見返してみてほしい。あの場に居合わせた彼らの反応は、単に「面白かった」とか「笑えた」といった通常のレベルのものはなかった。まるで飛行機墜落事故の瞬間を間近で見た人のように、一様に「とんでもない光景を目撃した!」「今のはなんだったの!?」といった意味の笑みを浮かべていた。爆笑の「爆」が爆発の「爆」と同じなのは偶然ではない。ハリウッドザコシショウの仕掛けた笑いの核爆弾は、確かにあの瞬間、閃光と共に爆発していたのだ。  会場にいた芥川賞作家の羽田圭介は、ハリウッドザコシショウのすごいところは「めちゃくちゃ偏った世界観をいきなりやってきて、それを受け取る側に有無を言わさず飲み込ませてしまう破壊力」だとコメント。さらに、それを支えているのは「ものすごい高い演技力と演出性」だと喝破した。私もこの見解に全面的に同意する。  ハリウッドザコシショウがピン芸の大会『R-1ぐらんぷり』で優勝することができたのは、もともとあった破壊力に加えて、それをわかりやすく多くの人に伝えるための演出力を身につけたからだ。「面白いことをやりたい」という自分の中からわき上がる衝動に向き合い、戦い続けてきたハリウッドザコシショウの24年の集大成。カルト芸人の頂上に君臨していた男がついに、表の世界でもピン芸人の頂点に立った。 (文=お笑い評論家・ラリー遠田)

ラリー遠田の『R-1ぐらんぷり2016』評 王者・ハリウッドザコシショウの「破壊力と演出力」

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R-1ぐらんぷり2016公式サイト
 2016年3月6日、ピン芸日本一を決める『R-1ぐらんぷり2016』の決勝戦が行われた。大会にエントリーした3,786人の頂点に立ったのは、ハリウッドザコシショウ。決勝では、誇張の強すぎるものまねを次々にたたみかけていく2本のネタを披露。会場に集う観客を爆笑と興奮の渦に巻き込んだ。  ハリウッドザコシショウは数々の逸話に彩られた伝説的な芸人だ。多くの芸人や業界関係者が彼の芸に魅了され、ファンであることを公言している。芸に向き合う真摯な姿勢は後輩からも尊敬されている。荒削りで型破りなパフォーマンスを披露する芸人や一般人が次々に現れ、カルトな人気を誇っていた深夜番組『あらびき団』(TBS系)では、ハリウッドザコシショウは準レギュラーのような扱いでたびたび登場。番組内では「キングオブあらびき」の異名を取っていた。  私は今年の『R-1ぐらんぷり』の予選会場で、何度かハリウッドザコシショウのネタを生で見ている。そのときに印象的だったのは、広い会場の中で彼のネタに対する反応が人によって大きく分かれていたということだ。私はたまたま後方の席に陣取っていたので、客席全体の反応を見渡すことができた。観客の多くは彼のネタを見て、声をあげ、手を叩き、涙を流さんばかりに笑っている。ただ、一方で、全く無反応の人も一定数存在していた。恐らく、分かる人にとっては死ぬほど面白いが、分からない人にとってはまったく意味不明なのだろう。  笑いの好みというのは個人差が激しいので、他の芸人のネタでも多かれ少なかれそういうことはある。ただ、その違いが最もはっきり現れるのが、ハリウッドザコシショウのネタなのだ。実際、今回の『R-1』をテレビで見ていた人の中でも「これの何が面白いの?」という疑問を持った人もいるかもしれない。そういう人は決して特別ではなく、一定の割合で存在する。特に、ハリウッドザコシショウはずっと昔からそういうふうに思われがちな芸人であることは確かだ。  ただ、今年の『R-1』に挑む彼は明らかに「わかるヤツにだけわかればいい」などとは思っていなかったように見える。それはネタの構成にも現れている。「誇張しすぎたものまね」という得意のフォーマットの中で、極力わかりやすく、間口を広くしようとしている工夫が随所に見受けられた。  第一に、個々のネタの前振りが丁寧になっていた。例えば、ザキヤマ(アンタッチャブルの山崎弘也)のものまねをやるときにも、正しいものまねを見せた後でそれを誇張したバージョンを演じていた。元ネタが何であるのかわかりづらいものは、それをきちんと説明したりもしていた。  第二に、最初のネタが終わったところで、次のフリップをめくる前に「酔っぱらってないですからね」と念押しをして、自分が受け手を置き去りにしないというスタンスを明確に示していた。  第三に、ものまねの題材として昔のマンガなどのマイナーなものは選ばず、誰でも知っている有名なものばかりを並べた。特に、野々村竜太郎元県議など、多くの人に伝わりやすいような題材も積極的に採用。その上で、自分が今まで積み上げてきた笑いの根幹の部分はそのまま貫き通していた。  番組を録画している人は、ハリウッドザコシショウの1本目のネタが終わった直後に画面に映された、司会者、審査員、観客の反応を見返してみてほしい。あの場に居合わせた彼らの反応は、単に「面白かった」とか「笑えた」といった通常のレベルのものはなかった。まるで飛行機墜落事故の瞬間を間近で見た人のように、一様に「とんでもない光景を目撃した!」「今のはなんだったの!?」といった意味の笑みを浮かべていた。爆笑の「爆」が爆発の「爆」と同じなのは偶然ではない。ハリウッドザコシショウの仕掛けた笑いの核爆弾は、確かにあの瞬間、閃光と共に爆発していたのだ。  会場にいた芥川賞作家の羽田圭介は、ハリウッドザコシショウのすごいところは「めちゃくちゃ偏った世界観をいきなりやってきて、それを受け取る側に有無を言わさず飲み込ませてしまう破壊力」だとコメント。さらに、それを支えているのは「ものすごい高い演技力と演出性」だと喝破した。私もこの見解に全面的に同意する。  ハリウッドザコシショウがピン芸の大会『R-1ぐらんぷり』で優勝することができたのは、もともとあった破壊力に加えて、それをわかりやすく多くの人に伝えるための演出力を身につけたからだ。「面白いことをやりたい」という自分の中からわき上がる衝動に向き合い、戦い続けてきたハリウッドザコシショウの24年の集大成。カルト芸人の頂上に君臨していた男がついに、表の世界でもピン芸人の頂点に立った。 (文=お笑い評論家・ラリー遠田)

祝優勝!じゅんいちダビッドソンは「『R-1』優勝しても売れない」を覆せるか

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じゅんいちダビッドソン オフィシャルブログ「じゅんいちダビッドソンのワールドクラス」
 2月10日、ピン芸日本一を決める「R-1ぐらんぷり2015」の決勝が行われた。決勝は、予選を勝ち抜いた9人に敗者復活戦から勝ち上がった3人を加えた12人で行われ、サッカー日本代表の本田圭佑のものまねで知られるじゅんいちダビッドソンが二度目の決勝進出で優勝を果たした。  出場芸人たちは皆、この大会に照準を絞って、1年かけてネタを磨き上げてきている。だが、そんな彼らの熱意とは裏腹に、「R-1」という大会そのものは年々苦しい状況に追い込まれてきている。そもそも、毎年行われているのに、大会自体の認知度がなかなか上がらない。世間では誰が優勝したのか覚えられていないことが多いし、優勝者がその後テレビにたくさん出て売れっ子になるとも限らない。昨年(2014年)の大会では、史上最低の7.2%(関東地区)という視聴率を記録してしまった。今年の大会では東洋水産も冠スポンサーから降りてしまい、「R-1」は興行としても窮地に立たされていたのだ。  にもかかわらず、そんな中で行われた「R-1ぐらんぷり2015」は、例年にない盛り上がりを見せた。ここ数年でも最もレベルが高く、視聴者の満足度も高い大会になっていたのではないだろうか。大会が盛り上がったのはもちろん、出場する芸人や出演者、制作スタッフの力によるものだ。ただ、それだけではなく、複合的な要因が組み合わさった結果、ちょうどいい形の大会になっていたのではないかと思う。  世間では「R-1で優勝しても売れない」などとよく言われる。こう言われてしまうのは、「R-1」でチャンピオンになり、そこから飛躍的に仕事を増やしてきた例が過去に存在しているからだ。ほっしゃん。、博多華丸、なだぎ武の3人はその例に当てはまる。だが、その後の「R-1」では、優勝者が必ずしも飛躍的に仕事を増やすとは限らなくなってきている。そして、そうなってからの「R-1」の歴史もかなり長くなってしまった。  その結果、出場する芸人の側にもこの大会を応援するお笑いファンの側にも、ある程度のあきらめの感情が生まれてきた。優勝したからといって、必ずしも爆発的に売れるとは限らない。状況が一気に変わるとは限らない。それでも、この大会には意味がある。そう思う人だけが「R-1」に出ているし、「R-1」を楽しみにしている。いわば、ゼロ年代後半にあった熱狂的なお笑いブームが一段落して、「R-1」の注目度も下がり、「R-1」で売れるという神話も崩壊していく中で、出る側も見る側もあきらめの境地に達したことで、いい意味で肩の力が抜けて、素直に大会そのものを楽しめるようになってきたのだ。  それをさらに後押ししたのが、「R-1」の審査システムが変わったことだ。「R-1」の審査は毎年のようにマイナーチェンジが行われる。今年は敗者復活戦が導入された。しかも、決勝進出者9人に対して敗者復活者が3人もいるという異例の事態。そして、審査員は5人に絞られ、視聴者によるデータ投票も導入された。これらの改革によって、従来とはシステムが大きく変わり、勝ち方がはっきり見えなくなった。つまり、「審査員にハマれば勝ち」という一元的な基準がなくなり、緊張感のある真剣勝負という雰囲気が薄れてきたのだ。  今までは、真剣勝負としてさんざん煽りたてることで、かえって結果に納得がいかない視聴者からの反発を生んだり、そこで勝った人がなぜ売れないのか、評価されないのか、といった不平不満を引き起こしていた。今年のシステムではその感じがかなり薄れている。準決勝で敗れた芸人が敗者復活で勝ち上がる可能性も残されているし、決勝の審査は審査員と視聴者の両者で行われるので評価が偏りにくい。そのあいまいさこそが、気楽に楽しめる大会の空気を作っていた。  出場者の顔ぶれもバランスが良かった。ピン芸人として名の知れたエハラマサヒロ、あばれる君に加えて、前年王者のやまもとまさみもいた。そして、年末年始のお笑い系特番で活躍していた厚切りジェイソン、とにかく明るい安村のような注目株も出ていたし、ゆりやんレトリィバァ、マツモトクラブという新世代芸人の活躍も見応えがあった。結果的に優勝をさらったのは昨年プチブレイクしていた、じゅんいちダビッドソン。本田のものまねキャラでありながら、単なるものまね芸にとどまらず、ネタそのものをしっかり作り込んできたことが勝因だろう。  そもそも、優勝者が売れるという神話も、真剣勝負の緊張感も、「R-1」という大会や番組そのものが面白くなるために本質的な部分ではない。「R-1」とは、視聴者目線でいえば、単に「面白くて上質なピン芸がたくさん見られる特番」であるにすぎない。そして、それが一番のセールスポイントでもあるのだ。大量生産・大量消費の一発芸的なネタを見たいなら「コストコ行ってこい!」。「R-1」には、徹底的に作り込まれた極上のピンネタが揃っている。危機的状況から土俵際の粘りを見せた今年の「R-1」は、大会の原点に立ち返るような満足度の高いイベントだった。 (文=お笑い評論家・ラリー遠田)

「2人のチャンピオン」――お笑い評論家・ラリー遠田の『R-1ぐらんぷり2012』観戦記

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『COWCOWコントライブ 1 』
(よしもとアール・アンド・シー)
 3月20日、ピン芸人日本一を決める『R-1ぐらんぷり2012』が開催された。3,612人の出場者の中から勝ち抜いて優勝を果たしたのはCOWCOW多田健二。得意のギャグを連発していくネタで安定して笑いを取り、優勝の栄冠と賞金500万円を手にした。  だが、今回の『R-1』では多田以外にもう1人のヒーローが生まれた。それは、決勝の最終決戦で1票差で優勝を逃したスギちゃんである。彼は優勝こそ果たせなかったものの、圧倒的なインパクトで強烈な印象を残し、今大会の台風の目となった。スギちゃんの破壊力は圧倒的だった。彼が披露したのは、自分がいかにワイルドであるかを自慢するという不思議な漫談ネタ。ネタが終わった後、出演者も観客もその場にいた多くの人がスギちゃんのキャラクターの虜になっていた。本来なら公正な立場で進行役を務めなくてはいけないはずの司会の雨上がり決死隊の2人ですら、「~だぜぇ」というスギちゃんの口調を思わず真似していたほどだ。  スギちゃんは決勝進出が決まったときに号泣し、決勝で最終決戦進出を果たしたときにも泣き、しまいにはCOWCOW多田が優勝した瞬間に多田の涙に思わずもらい泣きまでしていた。その飾らない純朴な人柄も彼の魅力だ。スギちゃんはネタが面白いというだけではなく、その親しみやすいキャラクターで見る者を魅了して、場の空気を完全に支配していた。2本目のネタ中には何度か小さなミスもあったのだが、それも温かく受け入れてもらえるくらいの雰囲気がすでにできあがっていた。準優勝のスギちゃんは、会場の空気をつかんだという点では「もう1人のチャンピオン」と言っても差し支えがないほどの活躍ぶりだった。  とはいえ、そんなスギちゃんの猛追をギリギリのところで振り切った多田も見事だった。彼が決勝で見せた2本のネタは、いずれも優勝を意識して磨き上げられたプロの芸だった。1本目では、五十音が書かれた箱から球を取り出して、その頭文字で始まるギャグを次々に演じていった。2本目では、くじ引きでお題を選び、そのお題に沿ったギャグを連発。ひとつひとつのギャグのクオリティが高く、それを効果的に聞かせるネタの枠組みもよくできていた。うまくガードを下げさせて、懐に入ったところで威力のあるパンチを連打する。理想的な試合運びで最初から最後まで爆笑を取り続けた彼は、隙のない“王者の戦い”を実践したといえるだろう。  本人の話によると、くじ引きで引いたギャグを披露していくというフォーマットを作ったのは、相方である山田與志のアドバイスによるものだという。山田は『R-1』の常連であり、これまで4度も決勝の舞台に立ちながら惜しくも優勝を逃していた。多田は相方の助けを借りて、コンビとして雪辱を果たした。これはこれで見事な優勝劇だ。  多田とスギちゃんをはじめとして、決勝に進んだ12人の芸人はいずれも、クオリティの高いネタでプロとしての誇りを見せつけていた。結果的に多田は記録に残る王者となり、スギちゃんは記憶に残る王者となった。2人のチャンピオンが制した『R-1ぐらんぷり2012』は見応えがあった。 (文=お笑い評論家・ラリー遠田)
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【関連記事】 ・お笑い評論家・ラリー遠田の『R-1ぐらんぷり2012』完全予想! 今年の優勝者は......『R-1ぐらんぷり2011』覇者・佐久間一行が"信じきったもの"とはエハラマサヒロ 「究極の器用貧乏芸人」が無限の笑いをコラージュするなだぎ武 R-1二連覇を成した演技派芸人の「本当の運命の出会い」とは【お笑い評論家・ラリー遠田】2011お笑い界 総まとめ!「賞レース編」

「2人のチャンピオン」――お笑い評論家・ラリー遠田の『R-1ぐらんぷり2012』観戦記

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『COWCOWコントライブ 1 』
(よしもとアール・アンド・シー)
 3月20日、ピン芸人日本一を決める『R-1ぐらんぷり2012』が開催された。3,612人の出場者の中から勝ち抜いて優勝を果たしたのはCOWCOW多田健二。得意のギャグを連発していくネタで安定して笑いを取り、優勝の栄冠と賞金500万円を手にした。  だが、今回の『R-1』では多田以外にもう1人のヒーローが生まれた。それは、決勝の最終決戦で1票差で優勝を逃したスギちゃんである。彼は優勝こそ果たせなかったものの、圧倒的なインパクトで強烈な印象を残し、今大会の台風の目となった。スギちゃんの破壊力は圧倒的だった。彼が披露したのは、自分がいかにワイルドであるかを自慢するという不思議な漫談ネタ。ネタが終わった後、出演者も観客もその場にいた多くの人がスギちゃんのキャラクターの虜になっていた。本来なら公正な立場で進行役を務めなくてはいけないはずの司会の雨上がり決死隊の2人ですら、「~だぜぇ」というスギちゃんの口調を思わず真似していたほどだ。  スギちゃんは決勝進出が決まったときに号泣し、決勝で最終決戦進出を果たしたときにも泣き、しまいにはCOWCOW多田が優勝した瞬間に多田の涙に思わずもらい泣きまでしていた。その飾らない純朴な人柄も彼の魅力だ。スギちゃんはネタが面白いというだけではなく、その親しみやすいキャラクターで見る者を魅了して、場の空気を完全に支配していた。2本目のネタ中には何度か小さなミスもあったのだが、それも温かく受け入れてもらえるくらいの雰囲気がすでにできあがっていた。準優勝のスギちゃんは、会場の空気をつかんだという点では「もう1人のチャンピオン」と言っても差し支えがないほどの活躍ぶりだった。  とはいえ、そんなスギちゃんの猛追をギリギリのところで振り切った多田も見事だった。彼が決勝で見せた2本のネタは、いずれも優勝を意識して磨き上げられたプロの芸だった。1本目では、五十音が書かれた箱から球を取り出して、その頭文字で始まるギャグを次々に演じていった。2本目では、くじ引きでお題を選び、そのお題に沿ったギャグを連発。ひとつひとつのギャグのクオリティが高く、それを効果的に聞かせるネタの枠組みもよくできていた。うまくガードを下げさせて、懐に入ったところで威力のあるパンチを連打する。理想的な試合運びで最初から最後まで爆笑を取り続けた彼は、隙のない“王者の戦い”を実践したといえるだろう。  本人の話によると、くじ引きで引いたギャグを披露していくというフォーマットを作ったのは、相方である山田與志のアドバイスによるものだという。山田は『R-1』の常連であり、これまで4度も決勝の舞台に立ちながら惜しくも優勝を逃していた。多田は相方の助けを借りて、コンビとして雪辱を果たした。これはこれで見事な優勝劇だ。  多田とスギちゃんをはじめとして、決勝に進んだ12人の芸人はいずれも、クオリティの高いネタでプロとしての誇りを見せつけていた。結果的に多田は記録に残る王者となり、スギちゃんは記憶に残る王者となった。2人のチャンピオンが制した『R-1ぐらんぷり2012』は見応えがあった。 (文=お笑い評論家・ラリー遠田)
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『R-1ぐらんぷり2011』覇者・佐久間一行が"信じきったもの"とは

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「東洋水産R-1ぐらんぷり2011」
公式サイト
 2月11日、ピン芸日本一を決める「R-1ぐらんぷり2011」の決勝戦が行われた。8名の芸人によって争われた決勝を勝ち抜いて、見事に優勝を果たしたのは佐久間一行。「ほんわか王子」の異名を持つさわやかな笑顔と明るいキャラクターが売りの佐久間が、過去最多となる3,572名の出場者の頂点に立った。  今回のR-1決勝は、今までとは違う新しいシステムが導入されていた。最初に全員がネタを演じて採点されるという形ではなく、トーナメント形式で一対一の戦いを続けて優勝者を決める、という形に変更されていたのだ。つまり、決勝で優勝するには、3本のネタを仕上げていかなくてはならない、ということになる。  佐久間が勝利した理由は、このルール変更を踏まえて、優勝するための作戦を緻密に構築したことにあると思う。それは具体的にはどういうことだったのか、ポイントは2つある。  第一に、3本それぞれ違った形のネタを用意してきた、ということ。一般に、お笑いの賞レースで2本以上のネタを演じなくてはいけないとき、それは消耗戦の様相を呈することになる。1本の自信作を何とかひねり出すことはできても、2本作るのはそう簡単ではない。ましてや、3本となるとますます至難の業だ。  2~3本立て続けに同じ芸人のネタを見せられると、どうしても見る側の集中力は下がり、笑いの量も減っていってしまう。それを極力防ぐためには、ネタの形式を変えて、飽きさせないようにするしかない。佐久間は、それぞれ毛色の違ったネタを3本演じたことで、決勝の2戦目、3戦目を順調に勝ち上がることができた。  第二に、3本のネタを演じる順番にこだわった、ということだ。3本のネタをどう組み立てるかということについては、いろんな考え方がある。基本的には、トーナメント形式だと一度負けてしまえば終わりなのだから、自信のあるネタはなるべく早めにぶつけておくべきだ、ということは言える。恐らく、佐久間もそれを考えて、1本目に自信作である「井戸」を持ってきたのだろう。  ただ、そこには恐らく、もう1つ別の狙いもあった。それは、あえて1本目に変則的なネタを見せることで、次のネタへの期待感を煽る、ということだ。彼は、ピン芸のセオリーを覆すような変わった形のネタをあえて最初に演じることで、「佐久間一行」という芸人の存在を強烈に印象付けて、興味を引こうとしたのだ。  それは、野球の投手が、最後に決め球で打ち取るために、初球に見せ球を投げるようなもの。または、ミステリー作家が、最後の謎解きを鮮やかに見せるために、序盤に伏線を張るようなものだ。  実際、佐久間が選んだその作戦は、決勝の戦いが進むにつれて少しずつ効果を現してきた。彼は、1戦目を「井戸」の不可思議なネタで勝ち抜いたのち、2戦目にも違った形の独創的なネタを持ってきた。日本語をしゃべらないインディアンが、フリップを使って自分なりのあるあるネタを披露する、というもの。これはこれで、「フリップネタ」「あるあるネタ」「インチキ外国語ネタ」という、定番のフォーマットを無理矢理3つ組み合わせてまとめたような、趣向を凝らしたネタだった。  佐久間が2戦目を勝ち抜いたとき、恐らく視聴者や観客の多くは、佐久間が優勝するのではないかという予感を感じ取っていたことだろう。彼の3戦目の相手となったAMEMIYAは、それまでの2戦で同じような形の歌ネタを披露。着実に笑いは取っていたが、3戦目もそのパターンで来るだろうということが誰の目にも見えていた。  だが、佐久間の3本目は、見えなかった。そして、それに対する見る側の期待はいい意味で高まっていた。佐久間だけは、3本目にどんなネタをやってくるのかわからない。だから、わくわくしてそれを待とう。多くの人がそんな気分で彼のネタを見守っていたに違いない。  満を持して披露されたのは「中学校の休み時間」。幼虫の手触りを恐れる男子中学生が、そのことだけでひたすら想像を膨らませていく、というもの。それは、彼にしかできない斬新なネタだった。  これまでの佐久間には、伝わりにくいネタを演じるときに、「つたわれー」と自分で言う定番ギャグのようなものがあった。だが、今回のR-1決勝では、彼はそのフレーズを一度も口にすることはなかった。伝わらないかもしれない不思議なネタが、説明抜きに必ず通じると強く信じた。その信念の強さこそが、彼にR-1の栄冠をもたらした最後の決め手になったのだろう。 (文=お笑い評論家・ラリー遠田)
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