深夜の政治放談? “永田町のエース”小泉進次郎に女性スキャンダル

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「週刊文春」3月22日号 中吊り広告より
第1位 「キムタク『スピード違反』で捕まっていた!」(「週刊文春」3月22日号) 第2位 「小泉進次郎議員 赤坂議員宿舎で美女と過ごした『ワケありの夜』」(「週刊ポスト」3月30日号) 第3位 「『アーンして』むかしラブラブいま介護-『シルバー川柳』傑作選」(同)  週刊誌が一時の勢いを失いつつあるようだ。「週刊現代」は一昨年、昨年上半期と順調に部数を上積みしてきたが、東日本大震災、島田紳助電撃引退騒動以降低迷して、今年に入ってもその傾向は止まらないようである。  刷り部数は60万部近くあるが、実売率はときどき50%台が出るそうだし、70%台がやっとだという。  そうしたこともあってか、発行元である講談社は社員の給料2割カットを組合側に提示したそうである。大手出版社がこのていたらくでは、出版不況はまだまだ出口が見えないようだ。  今週も大特集に見るべきものがなかったが、軽いものにキラリと光るものがあった。  第3位はポストの川柳を扱った記事だが、近頃は大変な川柳ブームだそうだ。サラリーマン川柳などは毎年恒例になったし、今回の全国有料老人ホーム協会が主催した「シルバー川柳」も秀逸なものが多くある。 「アーンして」 むかしラブラブ いま介護 誕生日 ローソク吹いて 立ちくらみ 居れば邪魔 出かけりゃ事故かと 気をもませ デザートは 昔ケーキで 今くすり 万歩計 半分以上が 探しもの  カード増え 暗証番号 裏に書き つまずいた ふと見た床に 段差なし 中身より 字の大きさで 選ぶ本 離れ住む 子らに病む日も 無事と書き 以下は老夫婦について詠んだ川柳。 あの世では お友達よと 妻が言い 厚化粧 笑う亭主は 薄毛症 共白髪 まっぴらごめんと 妻茶髪 妻が書く 老後の計画 俺イナイ 身内より 心が通う 介護の手 老後の寂しさを詠んだ川柳。 さびしくて 振り込め犯と 長電話 飲め飲めと 差し出されるのは 薬だけ 転んでは 泣いていた子が言う 「転ぶなよ」 私には次の川柳が身に沁みた。 飲み代が 酒から薬に かわる年  第2位は、いまや橋下徹人気に敵うのはこやつしかいないといわれる小泉進次郎に降りかかった女難スキャンダルである。  1月の某日深夜、佐々木希似の女性が赤坂議員宿舎の門をくぐり、小泉の部屋へ入って、人目をはばかるようにして宿舎を後にしたのは早朝4時だったというのだ。  ポストよくやったとほめてつかわしたいところだが、この記事、どこか奥歯に物が挟まった感じなのである。  この女性は地元のレジャー産業で働くS子、28歳。そこは結婚式などのイベントも開かれる場所だというから、貸しホールのようなところなのだろうか。お客からも従業員にも好かれる優秀な娘だそうだ。  いつ頃かわからないが、小泉が来たときに彼女が、自分のメールアドレスが載っている名刺を渡し、後日、小泉から丁寧なメールが届くようになったという。  1月中旬の夜、友人との会食が終わったS子は、小泉からのメールを待っていた。そこへ小泉から「今日、これから赤坂宿舎に来ない?」というメールが届き、「S子さんが小泉議員にいわれたままの住所をタクシー運転手につげ、議員宿舎の門をくぐったのは深夜11時だったという」  彼女が宿舎を出たのは早朝4時。ここまでは関係者への取材を元にその夜を再現したものだとことわっている。  しかし、このことが彼女の交際相手にわかり、大ゲンカになってしまったそうだ。  当のS子へもインタビューしている。宿舎へ行ったことは認めているが、部屋では「仕事の話とか、お話しさせていただきました」と語り、小泉から求められたのではという記者の不躾な質問には、「ないです。ノーコメントです」と答え、最後に「今は一切、小泉議員とは連絡を取っていません」と言っている。  宿舎に女性を招くこと自体は内規に触れるわけではない。だが、一昨年の3月、中井洽国家公安委員長(当時)が交際中の女性を招き入れたとき、小泉はこう批判した。 「もしも官舎に入れた部外者の方が外国の諜報機関とつながっていたらどうするんですか」  ポストは、永田町の将来を担う存在なのだから、深夜、女性と二人きりの「政治談義」はほどほどにと苦言を呈している。  これを読んで気になったのは、この情報をもたらしたのは誰なのかということである。小泉とのメールのやりとりや、彼女が議員宿舎へ行ったことは、ポスト編集部が独自に調べたことではない。  こういう場合、男に連れなくされた女が編集部にタレ込むケースはよくあることだが、彼女の言葉を読む限りそうではなさそうだし、このことで彼女に何か有利になることがあるとも思われない。  考えられるのは、彼女の交際相手がなんらかの意図をもって編集部に持ち込んだのではないかという線だが、その意図とはなんだったのだろうか。いまひとつスッキリしないが、ともあれ1月の深夜、議員宿舎で小泉進次郎が女性と5時間近くニ人きりでいたことは間違いないようである。  父親の純一郎は、猥談を好むかなりの女性好きであったようだが、子どもにもそのDNAが受け継がれているとすると、進次郎、思わぬスキャンダルで人気失墜ということもあるかもしれない。  今週のグランプリは文春の「キムタク捕まる」という記事。  捕まったというのはやや大げさだが、昨年9月29日に「千葉県内の千葉東金道路で四十キロ未満のスピード違反により県警高速道路交通警察隊の取り締まりを受けた」という。同乗していたのは愛人ではなく妻の工藤静香(残念!)で、九十九里浜でサーフィンをやるためのドライブ途中だった。  ちなみにキムタクのクルマはシボレーアストロ。米国製のミニバンタイプで、後部のドアからサーフボードを収容できる。すでに2005年で生産は終わっているが人気は高いという。  間の悪いことに、あのトヨタが国内需要の掘り起こしのために制作費数億円をかけたCMにキムタクが起用され、その大キャンペーンの始まる2週間前のことだったというのだ。  トヨタも頭を抱えたのではないか。 「CMでは安全運転に徹するキムタクだが、じつは当人がキャンペーン開始の約二週間前に交通違反をしておきながら、『運転する楽しさ』などと言っていたら、視聴者はどう思うだろう」(文春)  しかし、この「事件」は報道されることもなく、3本のCMは無事放送されるのだ。  そこには大トヨタから報道機関への圧力はなかったのだろうか。  トヨタ自動車広報部は今回の取材に対して、違反があった事実はすぐ後、代理店を通じて連絡があり、「代理店を通して今後の交通ルールの遵守を強くお願いしておきました」と答えている。  ジャニーズ事務所は文春が取材に動いた時点で、違反があったことを認めて謝罪している。  キムタクはTBS開局60周年記念ドラマ『南極大陸』が惨敗し、今度コケれば後はないといわれているそうだ。文春はこう結んでいる。 「人気回復を焦ってアクセルを吹かしすぎたのか」  この締めのうまさも含めて今週のグランプリである。 (文=元木昌彦)
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撮影/佃太平
●元木昌彦(もとき・まさひこ)
1945年11月生まれ。早稲田大学商学部卒業後、講談社入社。90年より「FRIDAY」編集長、92年から97年まで「週刊現代」編集長。99年インターネット・マガジン「Web現代」創刊編集長を経て、06年講談社退社。07年2月から08年6月まで市民参加型メディア「オーマイニュース日本版」(2006年8月28日創刊)で、編集長、代表取締役社長を務める。現「元木オフィス」を主宰して「編集者の学校」を各地で開催、編集プロデュースの他に、上智大学、法政大学、大正大学、明治学院大学などで教鞭を執る。 【著書】 編著「編集者の学校」(編著/講談社/01年)、「日本のルールはすべて編集の現場に詰まっていた」(夏目書房/03年)、「週刊誌編集長」(展望社/06年)、「孤独死ゼロの町づくり」(ダイヤモンド社/08年)、「裁判傍聴マガジン」(イーストプレス/08年)、「競馬必勝放浪記」(祥伝社/09年)、「新版・編集者の学校」(講談社/09年)「週刊誌は死なず」(朝日新聞社/09年)ほか
小泉進次郎の話す力 お話は得意です。 amazon_associate_logo.jpg
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「週刊現代」3月24日号 中吊り広告より
第1位 「山口組ほか連日の『極道サミット』そこで話し合われていること」(「週刊現代」3月24日号) 第2位 「広告と違い過ぎ!マック新作『ショボさ』に大批判」(「フライデー」3月23日号) 第3位 「江原啓之『中島知子さんにアドバイスしたこと』」(「週刊現代」同)  先週金曜日(3月9日)にビジネス情報誌「エルネオス」(http://www.elneos.co.jp/)でノンフィクション・ライター松田賢弥と対談した。小沢一郎が自民党の最年少幹事長になったときからだから、20余年もの間小沢のスキャンダルを追い続けてきた、ギネスブックもののライターである。  その日に行われた論告求刑公判で検察官役の指定弁護士側から「禁固3年」を求刑されたが、それをどう思うかと聞いてみた。彼は、今回の裁判で仮に無罪になったとしても、権力をカネに変えてきた小沢流の汚い政治手法が消え去るわけではないから、これからも引き続き追及していくと語った。  野中広務元自民党官房長官の言うように「あいつは税金を使って資産形成してきた政治家」であることを忘れてはいけない。親小沢の一部週刊誌が「それでも小沢は有罪判決」と、検察のトップや反小沢の政治家たちが小沢を有罪にしようと蠢いていると批判している。  たしかに甘い見通しで収賄事件に持ち込めると読んでいた東京地検特捜部のずさんな捜査は批判されてしかるべきではあるが、数十億ともそれ以上ともいわれる彼の不透明な蓄財の実態を明らかにするのは、メディアに課せられた責務であるはずだ。  土日(3月10日、11日)で長野県の栄村へ取材に行ってきた。この村は人口2,000人強で、その半分近くが高齢者である。名高い豪雪地帯で森宮野原駅には昭和45年に降った降雪量785センチを記念する柱が立っている。  この村が昨年3月12日の早朝3時59分に震度6強の地震に襲われたのだ。一部の地域では震度7を記録して家が壊れ、橋が崩落するなど甚大な被害を被った。しかし、それほどの大地震にもかかわらず死者はゼロだった。一人暮らしをしている78歳の女性はこう語ってくれた。 「その夜は東北の津波の被害をテレビで見ていて、大変なことが起きたんだと遅くまで起きていました。2時すぎに床に入りウトウトすると突然ドカーンというものすごい揺れが来て、家中のものが飛んだり倒れたりしました。ようやく地震が収まって寝室から出ようと思ったらドアが開かないの。そこらに散らばっている棒のようなもので叩いてもダメで、困ったなと思って、ふと気がついたら首に緊急通報のペンダントを掛けていることに気がつき、そのボタンを押したの。そうしたら外に向けて『私を助けてください』という声が鳴り出し、それがどんどん大きくなって、近所にいる人たちが『大丈夫か』と言いながら助け出してくれたのよ。あれがなかったらどうなっていたか」  そう言って涙ぐんだ。この緊急通報システムは「じしんたすけ」という名称で、栄村に住む一人暮らしの高齢者70人に村から貸し出されているのだ。一人暮らしの高齢者の命をどう守っていくのかは福祉政策の最重要課題の一つである。その典型的なモデルが栄村にあるので取材に行ってきたのだが、詳しいことはあらためて報告することにしたい。  さて、このところ売り物であるはずの巻頭特集に見るべきものがない。そこで今回は、小粒ながら面白く読んだ3本を選んでみた。  オセロ中島騒動はようやく収束へ向けて動き出し、女霊能者の「洗脳」から中島が抜け出せるのかに焦点が移ってきたようである。  私はスピリチュアリストなる者をまったく信じないが、「現代」の江原の言い分は、そういう類の人間が今回の事件をどう見ているかがわかって面白く読んだ。  江原のもとに、中島の友人がアドバイスを求めてきたのは昨年夏頃だったという。  江原はおおよそこのようにアドバイスしたという。中島は京都のお嬢さん育ちで、何不自由なく育ってきたのに、ふとしたきっかけで、親の言うとおりに生きてきたせいでこうなったと、不満を親の責任に転化してしまう。よくあるケースだが、連れ出すのは身内にしかできない。  ここから江原の口撃は「マインドコントロールは怖い」と連呼するワイドショーへと向かう。中島と霊能者の関係は依存と依存の「共依存」関係で、専門家がテレビでまことしやかに解説するほどの話ではないと話す。 「マスコミは占い師=悪、中島さん=被害者という図式を作って煽る。それでワイドショーの視聴率も上がるそうです。しかし、真っ当な大人に『この件の被害者は誰?』と訊いたら、きっとこう答えるでしょう。『家賃を滞納された大家さんなり管理会社』と。(中略)中島さん=被害者という図式には違和感を禁じえません。40歳になる大人が、好きで選んだ道です。そして、占い師と一緒に、第三者である大家さんに迷惑をかけた。二人は同罪なんです。私が恐ろしいのは占い師の洗脳などではなく、こうした当たり前のことを、ワイドショーで言う人が一人もいないことです」  また、件の女霊能者についてはニセモノだと言い切っている。 「この占い師はタチの悪い人です。そしてニセモノです。本物は『肉を食べなさい』とは言いません。あれしろ、これしろと命令する人はすべてニセモノです。私も含め、スピリチュアルな領域を生業にする人間の使命は、人々が自立して生きる手助けをすること。自立を阻んで依存させるなんて論外です」  江原の話に、細木何某と一緒にテレビに引っ張りだこだった過去の栄光への郷愁と、訳のわからない女霊能者のために、占いもスピリチュアルも一緒くたにされて、生活権を脅かされるのではないかという怯えを感じるのだが、私の深読みしすぎだろうか。  インタビューされる人間は、他者を批判することで自分の優位性・正当性を主張できると目論見ながら、読者には「同じ穴のムジナ」と思われてしまうことがある。それもインタビューの面白さである。  「フライデー」は3月2日から期間限定で販売をはじめたマクドナルドの「レタス&ペッパーバーガー」が、看板に偽りありだと批判している。  このバーガーは120円。フライポテトとドリンクをとっても490円という安さだそうだ。私には「すき家」の250円の牛丼のほうがバリューがあるが、それはともかく、このバーガーのうたい文句は「シャキシャキのレタスとソースの絶妙なハーモニー」だそうだが、注文すると広告写真とあまりにも違うので、客から「だまされた」という批判が相次いでいるそうだ。  たしかに広告写真と比べると同じものだとは思えない。「ハンバーガーがしょんぼりしている」という評は言い得て妙である。  新宿区にある日本マクドナルドのPR部は、商品の具材料は同じだが、見た目で誤解を招いた可能性があると認め、「今後の表現については慎重に対応し、念のため正しいオペレーションを再確認するよう各店舗には伝えてあります」と答えている。  こうした「消費者の味方です」的な記事はどんどんやるべきである。マック側の言うとおり、写真にどれだけ近づけたものが提供されるようになったのか、フォローもちゃんとしてほしいものだ。  極道情報は「アサヒ芸能」や「大衆」、「実話」の専売特許になっているが、今週は珍しく「現代」が4頁の特集を組んでいる。  今年に入って、山口組の総本部長らが上京して稲川会の理事長と会談、山口組若頭補佐と住吉会渉外委員長が会談、道仁会会長が稲川会理事長、住吉会渉外委員長と会談、さらに山口組六代目・司組長と稲川会・清田会長の頂上会談が行われたのではないかという情報まである。  この「極道サミット」ともいうべき会談は、今国会で成立が予想されている第5次改正暴対法対策ではないかと捜査関係者が解説している。  この法律は暴力団にとって、のど元へ突き付けられた刃であるという。それは現在22団体ある「指定暴力団」の中からさらに悪質な「特定指定暴力団」を認定して、徹底的な法規制を行おうとするものだからである。  これまでは組の縄張り内で「みかじめ料」を要求しても中止命令などを出して、それに従わない場合は逮捕できることになっていたが、認定されるといきなり逮捕できるのだ。  また抗争を誘発するあらゆる行為に対しても、中止命令なしに逮捕することができる。現在は「特定指定」が濃厚だとみられているのは九州の4団体だが、山口組も指定される可能性があるそうだ。  アメリカからも「山口組は組織犯罪のウォルマート」といわれ、口座の金の没収など厳しく締め付けられるようになってきた。そのため09年から10年の1年間で1,700人もの構成員がシノギができず、上納金が払いきれずに組を抜けたそうだ。 「平の直参組長で月に約85万、幹部で95万、頭補佐などの幹部で105万円を毎月、本家に納めなければならん。その他、上部団体から毎月トイレットペーパーや、水なんかを市価の倍で買わされる。今までは山口組の金看板を出してシノギができたけど、一連の条例・法律でそれが使えんようになった訳よ」(山口組二次団体の幹部)  このままでは末端組合員の潜在化やマフィア化が進んでいくことになると、司組長自身が心配しているという。  ナンバー2の高山若頭は恐喝容疑で逮捕されているが、彼が会長を務める弘道会には全国の暴力団組織から恐れられている「十仁会」と呼ばれる特殊部隊が存在するといわれてきた。 「十仁会は十数年前にできたとされ、調査能力、索敵能力、襲撃能力に特化した部隊です。03年に弘道会と住吉会系の団体の間に起きた『北関東抗争』では、弘道会が敵の居場所を正確に把握して攻撃していますが、その背後で十仁会が暗躍したと言われています」(警視庁捜査関係者)  九州で起きている抗争では市民の命が危険にさらされる事態が起きている。「国が認めた暴力団」である警察が権力を振りかざして暴力団を徹底的に追い詰めると、彼らは生き残りをかけて死にものぐるいになり、流血事件が多発して多くの市民が巻き添えになりかねない。  昔から、アウトローは生かさず殺さず、が鉄則である。今の法規制は最後の逃げ道まで塞いでしまってはいないか。そんなことを考えさせてくれたこの記事が今週の第1位。 (文=元木昌彦)
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撮影/佃太平
●元木昌彦(もとき・まさひこ)
1945年11月生まれ。早稲田大学商学部卒業後、講談社入社。90年より「FRIDAY」編集長、92年から97年まで「週刊現代」編集長。99年インターネット・マガジン「Web現代」創刊編集長を経て、06年講談社退社。07年2月から08年6月まで市民参加型メディア「オーマイニュース日本版」(2006年8月28日創刊)で、編集長、代表取締役社長を務める。現「元木オフィス」を主宰して「編集者の学校」を各地で開催、編集プロデュースの他に、上智大学、法政大学、大正大学、明治学院大学などで教鞭を執る。 【著書】 編著「編集者の学校」(編著/講談社/01年)、「日本のルールはすべて編集の現場に詰まっていた」(夏目書房/03年)、「週刊誌編集長」(展望社/06年)、「孤独死ゼロの町づくり」(ダイヤモンド社/08年)、「裁判傍聴マガジン」(イーストプレス/08年)、「競馬必勝放浪記」(祥伝社/09年)、「新版・編集者の学校」(講談社/09年)「週刊誌は死なず」(朝日新聞社/09年)ほか
テレビ霊能者を斬る メディアとスピリチュアルの蜜月 江原さんに言われても……。 amazon_associate_logo.jpg
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どんぐりの背くらべ!? 元・名物編集長が斬る週刊誌小粒ネタ6連発

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「週刊ポスト」3月16日号 公式サイトより
どんぐり賞 「オセロ中島と木嶋佳苗、『洗脳』と『名器』の最強コラボに期待するぜ」(「週刊ポスト」3月16日号) 「『1日1食』で寿命が15%延びる!?」(同) 「フジテレビがヒタ隠す<火渡り>で老人に重傷を負わせた最低の番組」(「週刊文春」3月8日号) 「<大震災1年>喪失の夜を越えて」(「週刊新潮」3月8日号) 「『放射能コワイ』で暴騰する『東北除染30兆円利権』の争奪戦」(「週刊ポスト」3月16日号) 「遥かなる『文藝春秋』」(同)  どんぐり賞とは、はてな? と思われた方も多いと思う。帯&たすき賞にしようかとも思った。どんぐりは「どんぐりの背べ」、帯&たすきは「帯に短したすきに長し」の意である。  スクープでも佳作でもない、その下のクラスの記事だと思っていただきたい。  一番手は元「文藝春秋」編集長・白川浩司の連載である。前の「諸君」の時の思い出話も面白かったが、今回のは秀逸である。  なぜなら白川の怒りがもろに出ているからである。怒りの対象は同じ会社の「週刊文春」の某編集長に対してである。  前号では1993年当時、「週刊文春」が連続して美智子皇后バッシングをやり、そうしたことが重なり皇后が失語症になってしまった時のことについて書いている。  このニュースを聞いて白川の頭に浮かんだのは、かつて「中央公論」が深沢七郎の『風流夢譚』を掲載して、これに怒った少年が社長夫人とお手伝いを殺傷した事件だったという。  「週刊文春」は結局、「宮内庁への詫び状ともなんともつかぬ文章を掲載して、ひとまず皇室記事を終えた」(白川)が、その後、社長宅に銃弾が2発撃ち込まれる。  白川は、皇室の動静をあれこれ取り上げて売り上げを伸ばすやり方を痛烈に批判している。この時の「週刊文春」編集長は花田紀凱である。  今号では、翌年の6月に発売された「週刊文春」に掲載された『JR東日本に巣くう妖怪』について書いている。発売後JR東日本が「週刊文春」をキヨスクで売ることを拒否し、告訴合戦になった。結局、「週刊文春」は全面降伏して大きな謝罪広告を出さざるを得なくなるのである。  ここに書かれている内容はだいぶ前に白川のところにも来た怪文書まがいのものがベースになっており、白川はその内容を部員に調査させ、事実だと確認できたところまでしか掲載しなかった。なのに、その連載記事は「怪文書を元にした記事の主要部分において、取材不十分なままの強引ともいえるストーリーづくり」(白川)がなされたためにJRと紛争になり、敗北したのだ。  このJR批判の連載は花田編集長の時ではない。彼は、私の記憶では、その少し前に「マルコポーロ」編集長に異動している。だが、これだけの連載を用意するためにはかなりの取材時間があったことは間違いないだろう。  さすれば、花田が編集長在任中にこの企画が進んでいたと考えてもいいのではないか。白川はこの記事を作る前になぜ自分のところに聞きに来なかったのか、取材を含めて「あまりにも傲慢かつ愚昧であろう」と厳しく難じている。  またJR側との和解が長引いたのは役員の中にJRと戦うべしという強硬な主戦論者がいたのかもしれないと、「あのときの文藝春秋は、組織として明らかに壊れていたのではないか」と述懐している。  文藝春秋という会社は、講談社や小学館のようなオーナー企業ではない。いいところも多々あるが、そうした組織の常として派閥抗争は熾烈なものがあったと聞いている。その名残だろうか、名前こそ出してはいないが、かなり一方的な書き方である。  今は文藝春秋を離れ月刊「WiLL」をやっている花田編集長は、これを読んでどう思うのだろうか。ぜひ反論を含めて聞いてみたいものだ。  不可解なのはこの連載、9回で「最終回」である。まだまだ書くことはあると思うが、何か不都合なことでもあったのだろうか。  東日本大震災から早1年が経とうとしている。各誌もかなりのページを割いて特集を組んでいるが、異曲同工の記事が多い。  「ポスト」の記事は、福島第一原発20キロ圏内で始まった除染作業の待遇のよさから書き出している。かなりの重労働ではあるが1日2万円、4時間労働で、無料宿泊施設に泊まれて労災も適用される。  野田佳彦総理が「除染をしっかりすることが福島の再生につながる」と号令をかけ、費用を1兆円規模としたことから、除染利権の争奪戦が起きているのだという。政府が示した工程表は、14年3月末までに放射線量を半分にし、長期的には年間1ミリシーベルト以下を目指す。  だが、民家の屋根などの線量は3割程度しか下がらず、1ミリシーベルト以下まで除染するとなると20~30年はかかるから、その総額は30兆円にも上るだろうというのである。  大手ゼネコンにとってはよだれが垂れるおいしい話なのだ。しかし、ウクライナやベラルーシを訪れた福島県の調査団は、「除染を実施したがコストがかかりすぎて、効果がなかった」と報告している。  結局、ゼネコンだけが儲かることになりはしないか。そう「ポスト」は警鐘を鳴らしている。  「新潮」のワイド特集は19本。中にいくつか読むべきものがある。「瓦礫は拒否でも『さいたまスーパーアリーナ』隣に核廃棄物ドラム缶4万本」は、被災地の瓦礫受け入れを拒否しているさいたま市だが、スーパーアリーナに近い住宅街の地下に、核廃棄物ドラム缶が4万本も置かれているというのだ。この廃棄物が発覚したのは13年前。放置したのは三菱マテリアルで、同社の関係者が事情をこう話している。 「昭和63年頃まで、三菱マテリアル(当時は三菱金属)や三菱原子力工業などが、ここで核燃料や原子炉などの研究を行っていたのです。日本初の原子力船『むつ』の原子炉がここで設計されるなど、大宮の施設はいわば日本の原子力研究の一大拠点でした」  その後、親会社に吸収されたり茨城県東海村へ引っ越したりして、残ったのが三菱マテリアルだった。  「新潮」はさいたま市に対して、こう皮肉っている。 「アリーナの横にある大量の核廃棄物は、いずれどこかに処分を頼まなくてはならないかもしれない。そのとき何と言ってお願いするのだろうか」  絆、絆と掛け声ばかり掛けるが、住民の反対から瓦礫受け入れを表明しているのは4自治体しかないのはおかしいとも批判している。もっともである。  もう1本は「『補償金リッチ』で『避難準備区域』解除でも自宅に帰らない」という記事。  広野町では人口約5,500人のうち地元に戻った住民は約250人に過ぎない。それは東電から避難者に対して補償金が出るからで、帰宅すると支給が打ち切られてしまうからだ。  もはや補償金はある種の既得権になっていて、そうしたカネを使って遊ぶからパチンコや競輪場が賑わっている。そうした村民に「帰村宣言」を発表したのは川内村村長・遠藤雄幸氏である。 「与えられることに慣れ便利な都市生活を感じている村民が、働く意欲や耕作意欲、故郷に戻りたいという思いを失ってしまうのではないか、と危惧しています」  南相馬市の櫻井勝延市長もこう話す。 「復興とはふるさとに戻り、仕事をし、生活することです。東電の補償金がその妨げの要因になっていることは間違いない。(中略)生活を取り戻そうと努力する住民にこそ、補償金は使われなければならないのです」  もっともな意見だと思うが、ならば、国や自治体が東電に働きかけ、地元へ戻って昔の生活に復するまで補償金を払うことを求めたらいいのではないか。  週刊誌はもとより新聞、テレビでも震災1年を扱ったものが多くあるが、どれを見ても怒りが湧いてくるのは、まだ復興どころか復旧もほとんど進んでいないことである。国会は消費税増税などで駆け引きしていないで、まずは被災地の復旧・復興に目処をつけることに専念するべきであろう。  「文春」は、テレビのバラエティ番組で人身事故が多発しているのに、一向にそうしたバカ番組を止めようとしないテレビのアホさ加減を追及している。  2月2日、上越国際スキー場の150メートル・ハーフパイプ用の急斜面を、パンツ一丁のお笑いコンビ・ずんのやすが水上スキー用のゴムボートで滑り降り、物置小屋の屋根に激突した。  やすは腰椎破裂骨折、両下肢マヒなどの重傷を負った。この番組はフジテレビの『とんねるずのみなさんのおかげでした』だった。  フジテレビでは、タレントにロケット花火数千本を背負わせて着火し1カ月の火傷を負わせたり、クレーン車に吊り下げられたスタッフが落下して腰椎骨折したりという事故が絶えない。  今回問題になっているのはやや古い話だが、03年末から04年にかけて放送されたフジテレビの『退屈貴族』で起きた深刻な事故である。  出演者は一般人の74歳の独居老人。都内の河川敷に灯油を撒いて火をつけ、10メートルほど並べられた段ボールの上をパンツ一丁の老人に渡らせたのである。  炎の中を少し歩いた老人は激痛に耐えきれず横に逸れた。その時すでに火傷は足裏から太ももにまで及んでいたという。老人は持参した軟膏をつけただけで歩くこともできず、ディレクターらが背負ってタクシーに乗せ自宅に送った。だが、2万円の出演料を払っただけで、なんら火傷の処置はしないままディレクターらは帰社してしまったのだ。  その後、老人の容体が悪化して老人の兄によって救急車で運ばれたが、火傷は全身の3割近くにまで達していた。警察が病院の通報でフジテレビ側に問い合わせをしたが、フジテレビは「該当するロケはない」と回答、警察は自傷事故として処理してしまった。  その後も老人は生死の境を彷徨う。信じられないことにフジテレビは、撮影から1カ月半近く経ってから、そのシーンを「東洋のランボー」と銘打って放送するのである。番組を見た視聴者からの「やり過ぎだ」という電話で初めて、フジテレビはそうしたロケがあったことに気づく。このテレビ局の危機管理はどうなっているのだろう。  この件で番組スタッフの事情聴取も処分もなかったそうだ。  老人は事故から4年後ぐらいに腎不全で死亡する。「文春」によると「腎機能の低下は火傷によってもたらされたもの」だという。記事はこう結んでいる。 「事故の検証を怠って隠蔽し続ける限り、同じことが再び繰り返されるに違いない」  昨今「『空腹』が人を健康にする」(南雲吉則著・サンマーク出版)という本が売れているそうだ。講談社プラスα新書の同じ著者による『50歳を超えても30代に見える生き方』も好調だという。  クリニックをやっている56歳の医師だが、骨年齢28歳、血管年齢26歳なのだそうだ。  この御仁、前は暴飲暴食で77キロまで太っていたそうだが、1日1食にしたらやせて生活習慣病も正常値になったという。彼によれば食事を40%減らせば寿命は1.5倍になるのだそうである。  以上は「現代」からの引用だが、「ポスト」によれば学術誌「ネイチャー」に掲載されて話題になっているのがサーチュイン遺伝子で、これは長寿遺伝子や若返り遺伝子と呼ばれるそうだ。  この遺伝子のスイッチを入れるには「腹ペコ」でガマンすること。その理由は、 「サーチュイン遺伝子は、空腹の状態、つまり摂取カロリーが減ると活性化する。これは動物としての防護機能と考えられ、食料が減って養分が足りなくなると、細胞レベルの損傷を防ぐために修復機能が活性化するというわけである」  老化の原因になる活性酸素は食物から作られるので、食べれば食べるほど活性酸素を取り込み、体を壊していくそうだ。  ここでも南雲医師が「腹六分目」「一汁一菜」にすれば健康で若くいられると言っている。毎日ひもじい思いをしてまで長生きしたいか、酒も好きなものも食べてそこそこの年まで生きるか。私は後者を取ってきたから年より老けて見えるし、体は生活習慣病の宝庫だが、致し方ないのだろう。  最後はビートたけしの連載「21世紀毒談」のひと言。メディアのオセロ中島に対するバカ騒ぎに対して。 「どう見たって、元気だったときより今の方が世の中の話題の中心にいるわけでね、かわいそうな言い方だけど、マスコミにとっちゃ『芸人・中島』より『マインドコントロールされたタレント』のほうがニーズがあったってことなんだよ。(中略)でも、テレビっていうのはつくづくいい加減だよ。最近まで、『あなたの前世がわかる』『オーラが見える』なんてインチキ臭い番組をジャンジャンやってやがったのに、いざこんな事件が起これば一転『霊能者はケシカラン』ってことになっちまうわけでね」  たけしはこの騒動は中島一世一代の大芝居ではないかと疑う。今後、告白本や独占インタビューに応じれば、「これから先、中島には大もうけのチャンスがジャンジャンあるってことなんだよ。芸能界復活どころか、これまでよりビッグになれる可能性だって十分あるね」と語っている。  3人の男を殺したとして裁判にかかっている木嶋佳苗とオセロ中島、同居していた女霊能者3人でスナックでも開けば大盛況間違いなし。そして、こういう本を出せばベストセラーも間違いなしだそうだ。「デブでもブスでも男を虜にする方法」。 (文=元木昌彦)
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撮影/佃太平
●元木昌彦(もとき・まさひこ)
1945年11月生まれ。早稲田大学商学部卒業後、講談社入社。90年より「FRIDAY」編集長、92年から97年まで「週刊現代」編集長。99年インターネット・マガジン「Web現代」創刊編集長を経て、06年講談社退社。07年2月から08年6月まで市民参加型メディア「オーマイニュース日本版」(2006年8月28日創刊)で、編集長、代表取締役社長を務める。現「元木オフィス」を主宰して「編集者の学校」を各地で開催、編集プロデュースの他に、上智大学、法政大学、大正大学、明治学院大学などで教鞭を執る。 【著書】 編著「編集者の学校」(編著/講談社/01年)、「日本のルールはすべて編集の現場に詰まっていた」(夏目書房/03年)、「週刊誌編集長」(展望社/06年)、「孤独死ゼロの町づくり」(ダイヤモンド社/08年)、「裁判傍聴マガジン」(イーストプレス/08年)、「競馬必勝放浪記」(祥伝社/09年)、「新版・編集者の学校」(講談社/09年)「週刊誌は死なず」(朝日新聞社/09年)ほか
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【関連記事】 ・震災から1年 地元を支えてきた被災地書店のその後「利用者は顧客ではなく広告主への商品?」Facebookの思わぬ落とし穴  ・ふとした気の迷いから犯罪者へ転落 元博報堂社員が見た地獄

震災から1年 地元を支えてきた被災地書店のその後

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「週刊ポスト」3月9日号 中吊り広告より
佳作 「3・11から1年 復興の書店」(「週刊ポスト」3月9日号) 佳作 「郡山4歳児と7歳児に『甲状腺がん』の疑い!」(「週刊文春」3月1日号) 佳作 「東電の賠償電話<秘>マニュアルの全容」(「週刊朝日」3月9日号)  週刊誌400円時代が来たようだ。「週刊現代」がいち早く400円にして「週刊ポスト」が追随した。「週刊新潮」が次号発売を特別定価390円にするし、「週刊文春」は特別定価だった380円を次号から定価にするとしている。  消費税増税に反対している週刊誌が、増税を待たず次々に値上げをするのは、読者には納得できないだろう。消費税が上がれば、その分を便乗値上げしてくることは間違いない。だが、内容が変わらず、読者に何の説明もなく値段を上げるのは、自分たちが批判している新聞の値上げと同じである。  私は、不景気で物の値段が下がっているのだから、ページ数を減らしてもいいから定価を下げたらどうかとさえ思っている。300円程度にして、各週刊誌が独自色を出しセグメントされた情報を出して競えば、部数は伸びないまでも低減傾向に歯止めがかかり、もう少し生き残っていけるのではないか。  メディアが一番いけないのは、他の企業のリストラや立て直し策の批判はするが、新聞もテレビも出版社も、生き残りに向けた努力をどれほどしているのか情報公開さえしないことである。  昔は、コーヒーとラーメンと週刊誌の値段が同じだった時代が長く続いていた。一時、コーヒーが値上がりした時代があったが、マックやドトールなどの出現により安くなり、今はラーメンが一番高くなった。  故・立川談志師匠は「ラーメン屋なんていうのはまともな料理をつくれない奴がやるもんだ」と常々言っていた。私も昨今、ラーメンが異常なほどもてはやされ、一部のラーメン職人には"食べさせてやる"という態度が透けて見えるのには辟易とする。だから、そうした能書きのうるさいラーメン屋には行かないことにしている。  それと同じと言っては失礼かもしれないが、今の週刊誌に400円の価値があるのだろうか。売れないから値段を上げるというのでは、読者離れがますます深刻化することになりはしないか。  さて、東日本大震災からもうすぐ1年になる。各誌に被災地や東電関連の記事が多い。その中で3本選んでみたが、残念ながら順位をつけるほど、これはという記事はなかった。よってすべてを佳作とした。  まずは「週刊朝日」の記事。福島第一原発の事故によって自主的に避難(その地域にとどまっていてもいい)した人たちへ東電による賠償が始まろうとしている。そうした人たちが手続きを含めて問い合わせる先の電話のオペレーターに大量の派遣社員が使われ、あきれたマニュアルで応対せよと研修されているというのだ。  賠償額は18歳以下の子どもと妊婦は一人40万円、それ以外は8万円。また南相馬市の一部、双葉町、飯舘村、大熊町などの住民には、精神的な苦痛に対する賠償として一人月額10万円、避難所にいる人には月12万円。  50代のYさんは登録していた派遣会社からメールがあり、2月13日から4日間行われた研修に参加した。研修の部屋には監視人らしき男性が数人立ち、配布された資料の持ち出しはおろか休憩中の私語も禁止された。  そこで言われたのは、お前たちの仕事は避難して困っている人たちを救うことではなく、送付した書類の問い合わせに答えることだけで、被災者に有利な情報を教える必要もないというものだった。  東電は被災者への対応として「親身・親切な賠償のための5つのお約束」を掲げているのに、実態はこうである。  また相手を刺激する言葉を使うなといわれ、言い換えるようにされた例はこうだ。×原発→○原子力発電。×放射能→○放射線。×放射能を浴びる→危険なイメージだから使うな。×想定外→積み上げた知見の甘さが引き起こしたものでございます。  こうしたNGワードばかりではなく、「電話に出たら低いトーンで会話を始めるように」、「被災者から、お前ら事故の詳しい内容を隠蔽しているだろうと言われたら、隠し事はございませんと平身低頭する」「電話口で怒りが収まらない相手には、『少々お待ちくださいませ』と言って、電話の保留ボタンを押せ」というのだ。  東電の賠償は、避難に要した宿泊費用や交通費などが違うのに一律はおかしいという声が被災者から上がっている。  賠償金額なども少なすぎると、私は思う。財界や財務省の東電に甘いやり方に対して、東電を破綻処理させて徹底的にリストラを行えという声も強くある。  これだけの事故を起こしても、ぬけぬけと電気料金値上げを言い張ったりする東電の甘えの構造は、一度ぶっ壊さないと直らないようである。  「週刊文春」の巻頭特集「郡山4歳児と7歳児に『甲状腺がん』の疑い!」は、こういう書き出しで始まっている。 「『今までにこんな例は見たことがありません』  超音波の画像を診た医師はそうつぶやいたという。7歳女児(検査当時・以下同)の小さな喉にある甲状腺に、8ミリの結節(しこり)が、微細な石灰化を伴ってみられたのだ」  北海道へ自主避難している親子309名(子ども139名、大人170名)を対象に昨年末から地元の内科医がボランティアで、甲状腺の超音波検査を行っている。  郡山から夫と離婚してまで避難してきた母親の7歳の姉に結節が見つかり、2歳の妹にも2ミリのものが見つかった。幸いなことに妹のほうはがんの疑いはなかった。  小児甲状腺がんは、チェルノブイリ原発事故で唯一公的に認められた被曝による健康被害である。旧ソ連のベラルーシでは事故までの10年間で7人だった子どもの甲状腺がんが、事故後は508人に上っている。  札幌で甲状腺超音波検査を実施した内科医はこう言っている。 「結節のあった7歳女児と4歳男児の2人に加え、19歳以上の『大人』9人の計11人に、甲状腺がんの疑いがありました。うち成人女性一人はすでに甲状腺がんが確定、切除手術を行うことも決まっています」  1月25日には福島県で第5回「県民健康管理調査検討委員会」(以後=検討委員会)が行われ、18歳以下の甲状腺エコー検査の結果が発表された。1,765名のうち26人に結節や嚢胞(のうほう)が見つかったが、「すべて良性」とされた。  福島県立医大の鈴木眞一教授は会見で「26名はいずれも6歳以上。5ミリ以上の結節、20ミリ以上の嚢胞が5歳以下で見つかることはありえない」と明言した。  先の内科医は年間2,000人ほど甲状腺の手術を行うというが、鈴木教授が言うように小学生に上がる前の子どもにできる可能性はほとんどないそうだ。だが、今回は発見されたのである。  避難してきた子どもたちはいずれも原発事故後3カ月以上福島で暮らしていた。  7歳の女児はその後の血液検査の結果「良性」と診断されたが、将来に不安が残ると母親は語っている。 「診てもらった北海道大学の先生も、今までに14歳未満でがんになった子どもを2回しか診たことがなく、『いつ、がんになるかわからない』と。でも、結節を切除してしまうと、今度は一生ホルモン剤を飲み続けないといけなくなるというのです」  福島県で行っている甲状腺検診は3年かけて一巡するが、甲状腺学会の関係者はこう疑問を呈している。 「動物実験ではたしかに被曝しても1年で発がんすることはないという結果が出ている。だが、チェルノブイリでは事故直後のデータをフォローしていないので、放射能に対して感受性の強い1歳や2歳の子どもが事故後1~2年後まで受診しなくても大丈夫だと言い切れるのだろうか」  しかもおかしなことに、福島では撮ったエコー写真を見せてもらうこともできない。それに県内でセカンドオピニオンを仰ぐことも困難なのだ。  それは「検討委員会」の座長・山下俊一福島県立医大副学長が全国の日本甲状腺学会員宛に「次回の検査を受けるまでの間に自覚症状等が出現しない限り、追加検査は必要がない」というメールを送っているからだ。  こうしたやり方に一人の甲状腺専門医は批判的だ。 「従来の理論では、1~2年ですぐに嚢胞や結節は大きくならないかもしれない。しかし、あくまでもそれは『これまで普段見てきたもの』を基準にした場合です。原発事故が起こった今、『今まで見たことがないもの』を見ている可能性がある。従来の基準が絶対とはいえないのでは」  この記事は重要な問題を告発しているのだが、残念ながら記事のインパクトが弱い。  母親が仮名なのは仕方ないとしても、郡山の子どもに甲状腺異常を発見した北海道の内科医の名前が出ていないのはどうしたことなのか。  こうした記事を書く場合、信ぴょう性を担保するためには実名報道が必須である。内科医は実名を出すことで何か不都合なことでもあるのだろうか。  甲状腺の専門医が匿名なのも解せないが、こうした報道は継続していくことが重要である。続報に期待したい。  さて、東日本大震災のあと「日本を信じよう」と表紙に打って話題になった「ポスト」は今週号で、ぶち抜き85ページの大特集「被災地と原発の真実」を組んでいる。  まず初めに2ページにわたる編集部の主張が載っている。その意気や良しだが、放射能と原発についてはこれまでの主張を繰り返していて、新しい情報はない。  それよりも、ポストが震災以後一貫して続けてきた、被災地の書店のその後を興味深く読んだ。  復興へ向けて歩み出した書店で売れている本は、他の土地で売れている本とはひと味違う。『大きな字の常用国語辞典』(学習研究社)は年配者が必要だとして買い求めるそうだ。仮設住宅ではいくつもの鍋を持つわけにはいかず、圧力鍋が売れたそうだが、圧力鍋のためのレシピ本も売れた。  お世話になった人たちへ手紙を書こうと「手紙の書き方とマナー」といった内容の本も売れ筋。「10年日記」のような将来を設計する本も問い合わせが多かった。釜石の遺体安置所を巡るルポ『遺体―震災、津波の果てに』(新潮社)は、死者がどう処置されたのか知るために買われたのではないかと、釜石市の書店店長が語っている。  飯舘村の日常を紹介した『までいの力』(SEEDS出版)も読まれているそうだ。 「までいとは"思いやり"といった意味で使われる方言です。(中略)飯舘村はいま、人が住めない場所になってしまいましたが、"までいの力"があればいつか必ず立ち上がれると思う」(飯舘村の書店の元副店長)  岩手県山田町の「大手書店」は、昨年6月から小さな店舗で営業を再開した。本も文房具もなく、当初はお祭り用のクジや景品を並べていたという。書店の娘・大手恵美子はこ言う。 「自分がこの町に残って何ができるかと考えた時、やっぱり本しかないという思いがあったからです。できることと言えば、考えることしかなかった。駄目だな、やんなきゃな、ってずっと考えていたんです」  釜石で一番古い書店だった「桑畑書店」はかつて70坪あったが、今は9坪。店主の桑畑眞一は、瓦礫の中から見つけ出した定期購読者のリストを頼りに、病院や美容院などを回った。津波で流されてしまったこの辺りは人が少なくなってしまったが、ノンフィクション・ライターや市長を招いてシンポジウムや絵本の読み聞かせの会などをやっている。  気仙沼市の大槌町のショッピングモールに昨年12月22日、化学薬品メーカーで働いていたサラリーマン夫婦が素人書店を始めた。その名は「一頁書店」。素晴らしいネーミングではないか。 「本の一頁目はとても大切ですよね。最初の一歩という気持ちを大切にしていこう、と思ったんです」  そう妻の木村里美が語っている。  南相馬市の「おおうち書店」の店主・大内一俊は、同市が屋内避難を指示されていた3月に書店を続けようと思った。それは、店のシャッターを開け、床に散らばった本や雑誌を棚に戻していると、街から避難しなかった人たちが少しずつ集まってくるようになったからだ。客は4分の1に減って、若い女性や子どもの多くが避難したため、女性誌やファッション誌は売れなくなったが、地図が売れるようになった。  お客の数は減っているのに、書店の売り上げは伸びているという。それは、ほかに開いている店がないことと、東電からの賠償金があるため、震災前より売れる本の単価が高くなり、週刊誌を3冊も買い込んでいく客がいるそうである。  飯舘村にある村営書店「ほんの森いいたて」には、書店の窓に「きっといつか再オープンするぞ!!」と書いた紙が貼られている。  IAEAが飯舘村で高濃度の放射性物質を検出して発表したのは3月30日だった。元副店長の高橋みほりはこう話す。 「閉店するとき、絶対また会おうね、再開したら買いに来るからねと言われながら、みんなと抱き合ってお別れしたんです。それだけ愛されていた本屋なんだなって思ったし、震災からの短い期間だったけれど、続けてきてよかったと感じました」  こうした人たちに支えられて本や雑誌が読者の手に届き、読まれていることを、出版に携わる人間一人一人がもう一度真剣に考える必要があるだろう。何を届けなくてはいけないかということを。 (文=元木昌彦)
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撮影/佃太平
●元木昌彦(もとき・まさひこ)
1945年11月生まれ。早稲田大学商学部卒業後、講談社入社。90年より「FRIDAY」編集長、92年から97年まで「週刊現代」編集長。99年インターネット・マガジン「Web現代」創刊編集長を経て、06年講談社退社。07年2月から08年6月まで市民参加型メディア「オーマイニュース日本版」(2006年8月28日創刊)で、編集長、代表取締役社長を務める。現「元木オフィス」を主宰して「編集者の学校」を各地で開催、編集プロデュースの他に、上智大学、法政大学、大正大学、明治学院大学などで教鞭を執る。 【著書】 編著「編集者の学校」(編著/講談社/01年)、「日本のルールはすべて編集の現場に詰まっていた」(夏目書房/03年)、「週刊誌編集長」(展望社/06年)、「孤独死ゼロの町づくり」(ダイヤモンド社/08年)、「裁判傍聴マガジン」(イーストプレス/08年)、「競馬必勝放浪記」(祥伝社/09年)、「新版・編集者の学校」(講談社/09年)「週刊誌は死なず」(朝日新聞社/09年)ほか
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「利用者は顧客ではなく広告主への商品?」Facebookの思わぬ落とし穴

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「ニューズウィーク日本版」2月22日号
第1位 「SNS フェイスブックの落とし穴」(「ニューズウィーク日本版」2月22日号) 第2位 「『メモ』を巡る夫婦の肖像――田中防衛相異聞」(「週刊新潮」2月23日号) 第3位 「無毛ヌード時代を始めよう」(「週刊現代」3月3日号)  2月18日朝日新聞朝刊のオピニオンページに「スキャンダラスな政治」と題してノンフィクション・ライターの西岡研介がこんなことを話している。 「今、政治スキャンダル報道は読まれていないと感じています。市井の人々の怒りを喚起できていない。それどころか、社会の共感すら得られていない。何で、こうなったんやろって思ってます」  竹下登や野中広務のようなタフで魅力的な政治家がいなくなり、小物政治家ばかりになったことでスキャンダルも薄っぺらになった一方、「小泉純一郎さんや橋下徹さんみたいな、けんか上手で発信力に優れた政治家に僕らは勝てんのです。だって彼らはタレント、スターやから。こと情報発信においては、素人はスターには勝たれへんのです」  小泉や橋下がスターで情報発信力があるから、メディア、特に雑誌メディアが勝てないというのは合点がいかない。要は、小泉のときは仮想敵を作り、「ぶっ潰す」というキャッチフレーズのまやかしをひっくり返すだけの論理をメディア側が持てないで翻弄されてしまった。橋下の場合も「それがどうした」と切り返せる程度のスキャンダルしか掘り起こせていないからではないか。  小泉元首相の構造改革の誤りは、西岡があげているようにNHKスペシャルの『ワーキングプア』や『無縁社会』なども含めて、さまざまなメディアで検証されつつある。  橋下市長の唯我独尊的大風呂敷も、必ず自ら口から出まかせで掘った落とし穴があるはずである。小泉ブームのときのような失敗に懲りて、じっくり腰を据えて橋下という人間を調べ、取材を尽くしてほしい。  そうしたスキャンダルを乗り越えて橋下がこのまま突き進んでいくのなら、危ういところは多々あるが、もしかすると希代の宰相になる器なのかもしれない。  そのはるか手前で、西岡ともあろう敏腕スキャンダル記者が「勝てへん」とあきらめないでほしいと思うのだ。  さて今週は特集に見るものがなく、グランプリ以外は小粒なラインナップになってしまった。  第3位は「週刊現代」の袋とじ。ヘア・ヌードから無毛ヌード時代がきたというのが「現代」の主張(?)らしい。  昔、無毛はパイパンなどといわれて貴重だったが、昨今ではヨーロッパを中心に、当たり前になってきているというのだ。確かに「生理のとき、蒸れなくて楽なんです」「元彼に毛じらみをうつされたんですよ」という悩みから解放されることもあるのだろう。「脱毛エステ」なるものもできているようだ。  「ワンダーアップ上野店」の宮原千晴店長は、「当店ではハイジニーナ脱毛まで希望される女性が多いですね」と言う。ハイジニーナ脱毛とはVライン=デルタ地帯、Iライン=性器周辺、Oライン=肛門周辺のすべてを無毛にすることだ。  このVIOすべてをしてもらうコースはなんと13万9,000円である。  しかしカメラマンからすると、無毛ヌードはヘア・ヌードよりも撮り方が難しいそうだ。 「毛で性器が隠れるので、ヘア・ヌードはそれほど工夫はいりません。しかし、無毛の女性の場合、縦のラインを見せずにいかに無毛であることを表現するかが難しい。ライティングや撮る角度など、写真家の腕が試されるんです」(カメラマン・小倉一真)  われわれの世代が若い頃、古本屋から買ってきたアメリカ直輸入の「PLAYBOY」は宝物だった。ドキドキしながら見たピンナップガールの大事なところは、ほとんどが黒く塗り潰されていたが、そうではないヌードもいくつか拝めた。それは無毛かそれに近い産毛のような薄いヘアで、まだティーンエージャーかと思うほど幼く見える女性だった。  性器はもちろん見えないが、ヘアが写っていなければワイセツではないと判断されたのだろうか。確かにそのヌードを見て、若い頃の自分でも十分には発情しなかった。  世は草食系男子が増えているといわれるのに、猥褻さが薄れて清潔感あふれる女性ばかりでは、ますますこの国の少子化に歯止めがかからなくなってしまうと「憂慮」するのは余計なお世話か。  2位は「新潮」のモノクログラビア3ページ。1ページ目は田中直紀防衛相のカミさんである田中真紀子が近所のスーパーマーケットで買い物する姿を撮っている。  マスクをして買い物するメモをじっと眺めている姿がフツーの主婦らしくていい。ここで鯛の切り身、切り干し大根やらしめて5,000円あまり買ったという。  さて、一方の夫君は防衛大臣になってから袋叩きにあっているが、以下は国会の委員会審議中に秘書官が田中防衛相に手渡したメモの内容である。  「新潮」が望遠で撮って、安保や防衛にかかわる重大情報かと「解読」したらアレレレレ~ッ。 「この薬は1日1回です また良くならない場合は別の薬もあるので相談して下さい とのことです。昼食は何を注文しますか? (1)サンドイッチ (2)おにぎり (3)カレー (4)定食 (5)カツ丼」  自民党議員の間では、官僚の言いなりの田中防衛相を評して、腹話術の人形のようだから「政界のいっこく堂」といわれているそうだ。  いくらなんでも、これでは田中防衛相がかわいそうではないか。彼が防衛問題はおろか経済や金融にはまったく関心もなく知識もないのは、誰でも知っていたことではないのか。それは彼が無知だったからではない。これまでの全人生をひたすら妻・真紀子のポチとして生きてきた結果である。  田中角栄が田中直紀を娘・真紀子の夫にしたのは、従順で娘にかしずく男だと見て取ったからだ。その役割を忠実にこなして生きてきただけの男を、防衛という重要な大臣に指名した野田佳彦総理に全責任がある。  憲法もろくに読んだことのない史上最低の防衛大臣などとメディアはこき下ろすが、彼にしてみれば防衛はおろか大臣の椅子など欲しがったことは、これまで一度もなかったのではないか。71歳にもなって、バカだアホだと言われなくてはいけない田中防衛相の哀れな姿をテレビで見るたびに、落涙しそうになる。  田中防衛相よ、早く辞表を出して議員も辞め、一主夫になったほうがいい。あなたは背広に議員バッチよりエプロン姿のほうが似合うと思うよ。  今週のグランプリに輝いたのはニューズウィーク日本版の「Facebook」批判記事である。  新規の株式公開(上場)を米証券取引委員会に申請した「Facebook」の時価総額は最大1,000億ドル(約7兆6,000億円)に上るとみられている。  「Google」をも上回り急拡大するSNSの怪物サイトについて、個人情報の観点からこれほど鋭く斬り込んだ記事は、私が知る限り日本ではなかった。  私も「Facebook」に1年以上前に登録したが、まだ1度も開いたことがない。それは、このサイトに付きまとうある種のいかがわしさだったが、この記事を読んでその正体がよくわかった。  まずは、以前アップルの創業者スティーブ・ジョブズになりすましたブログで名を馳せた『ニューズウィーク』のテクノロジー担当記者ダニエル・ライオンズが、今度は「Facebook」のマーク・ザッカーバーグに扮して書いた手紙。これがすこぶる面白い。 「実を言えば私どもは、皆さんのプライバシーを守ることには何の関心もありません。あると信じている皆さんは、私どもの想定外の愚か者です。もちろん私どもは最初から、皆さんが相当の愚か者だと想定していました。考えてもみてください。私どもの事業が成り立つのは、ひたすら皆さんの行動を追い掛け回し、その情報を広告主に売っているからです。この事実に、まさかお気付きでないとか? 皆さんは私どもの顧客ではありません。私どもの売る商品です。私どもが皆さんを守ると言うのは、養鶏業者が『ニワトリに快適な暮らしをさせる』と約束するようなもの。所詮は口先だけ、本気ではありません。(中略)そもそもインターネット上のビジネスは、皆さんがサービスを利用するに当たり、現金の代わりに自分の個人情報で支払うという斬新なビジネスモデルによって成り立っています」  「プライバシーはクソです」とも言っている。  「Facebook」は利用者が流したその人間や友達の大量な情報をまとめ、分析し、広告主に売りつけているのだ。  しかも、同社は個人情報に関するルールを次々に変更し、利用者がますます多くの個人情報を暴露しなければいけないように仕向けている。  さらに背筋が寒くなる事実があると書いている。「Facebook」は、会員たちが同サイトにログインしていないときも、どのサイトを訪れていたのか追跡していたことを、渋々認めたという。  2年前に、「Facebook」が会員向けに選別して送り付ける大量の広告を分析すれば、その会員が同性愛者であることを推認できるという調査が発表されている。  上場すればこの傾向がますます強くなると警告する。 「ソーシャル・ネットワーキングの世界を動かす現在のビジネスモデルでは、サービス提供者は利用者の私生活をひたすら詮索するしかない。株式を公開すれば利益の最大化を求める投資家の圧力が増すから、この傾向はさらに強まるだろう」  そして筆者は、どうしても「Facebook」を利用したいのなら、唯一の安全策は常に自分を「検閲」し続けるしかないという。ソーシャルメディアは表現を奨励するのではなく萎縮させる力となるのだ。  こうしたビジネスモデルは「Google」も同じだ。先日、60あまりのサービスの利用者情報をすべてシェアできるように個人情報のルールを変更した。Twitterも同様なビジネスモデルを構築しようとしている。  それでも実名を基本とする「Facebook」が一番プライバシーの敵になるとして、こう激しく批判している。 「フェイスブックはいつもこうだ。長い間、同社はユーザーの個人情報を広告主と共有することはないと主張してきた。だが、実際には、そんなことは最初からやっていたのだ。筆者は25年にわたってテクノロジー分野の取材を続けてきたが、これほど楽々と、恥ずかしげもなく明らかな嘘をつく会社は初めてだ」  こうしたIT企業の常として、情報公開はしないし記者会見で自由な質疑に応じることもない。こうしたことに注意を払わないユーザーに、これでは「Facebook」の思うツボだと注意を促し、こう締めくくる。 「はっきり言おう。利用者はフェイスブックの顧客ではない。広告主に売る商品だ。フェイスブックを使うなとは言うまい。だが使うときには、自分が誰に、何を売り渡そうとしているのかをよく考えてほしい」  日本でも「Facebook」の利用者が1,000万人になったそうだ。だが、日本人は自分の個人情報がどう侵害、利用されているのか無関心な国民である。  先頃、野田政権が、国民に1人ずつ番号を付けて納税記録や社会保障などの個人情報を管理する「共通番号制度(マイナンバー)」を導入するための法案を閣議決定した。いわゆる「国民総背番号制」である。  あきれたことに朝日新聞は2月19日の社説で「国や地方の財政は厳しい。所得や資産に応じてきちんと納税してもらい、本当に必要な人に漏れなく給付が行き渡るようにしなければならない。(中略)制度の必要性では、与野党の間に大きな争点はないだろう。一体改革と切り離して議論を進めてはどうか」と賛意を表明したのである。  その上、「番号制をめぐっては過去に納税者番号として何度か浮上し、懐を探られることへの反発から頓挫してきた歴史がある」とも書いている。  「国民総背番号制」は懐を探られるから反対したのではない。個人のプライバシーを権力側に一方的にすべて握られることへの「警戒心」から反対したのである。  個人情報やプライバシー保護に関心がないから、個人情報保護法のような最悪の法律が成立し、教育現場や福祉の現場で情報を共有できない深刻な事態が起きているのだ。  IT評論家なる者の多くに、ネットやSNSが拡がればバラ色の世界が拡がるなどとたわけたことを抜かしている輩がいるが、これからの時代は一つ間違えばジョージ・オーウェルが『1984』で描いたような監視国家になる。「Google」や「Facebook」はそのお先棒を担いでいるのではないか。  そうした現実をこの記事は教えてくれる。こうした痛烈な警告記事をこの国のメディアでも読んでみたいものである。 (文=元木昌彦)
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撮影/佃太平
●元木昌彦(もとき・まさひこ)
1945年11月生まれ。早稲田大学商学部卒業後、講談社入社。90年より「FRIDAY」編集長、92年から97年まで「週刊現代」編集長。99年インターネット・マガジン「Web現代」創刊編集長を経て、06年講談社退社。07年2月から08年6月まで市民参加型メディア「オーマイニュース日本版」(2006年8月28日創刊)で、編集長、代表取締役社長を務める。現「元木オフィス」を主宰して「編集者の学校」を各地で開催、編集プロデュースの他に、上智大学、法政大学、大正大学、明治学院大学などで教鞭を執る。 【著書】 編著「編集者の学校」(編著/講談社/01年)、「日本のルールはすべて編集の現場に詰まっていた」(夏目書房/03年)、「週刊誌編集長」(展望社/06年)、「孤独死ゼロの町づくり」(ダイヤモンド社/08年)、「裁判傍聴マガジン」(イーストプレス/08年)、「競馬必勝放浪記」(祥伝社/09年)、「新版・編集者の学校」(講談社/09年)「週刊誌は死なず」(朝日新聞社/09年)ほか
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「漫画・アニメのせいで子どもが犯される」「文章も禁止」過激発言満載の児ポ法規制推進派院内集会

 2月14日、衆議院第一議員会館で院内集会「国際エクパット事務局長来日 今こそグローバルスタンダードへ! 児童買春・児童ポルノ禁止法(以下、児ポ法)の改正に向けて」がECPAT/ストップ子ども買春の会(以下、エクパット)の主催で開催された。エクパットの院内集会は、昨年の6月以来のことだ。  この日の集会は、撮影・録音・Twitter禁止、パソコンの使用も禁止というものものしい雰囲気で始まった。冒頭あいさつに立った、エクパット代表の宮本潤子氏は「ぜひとも今国会で改正を行い、子どもたちを残虐な虐待・性暴力から守る法律にしてもらうことを願っている。今一度、全部の政党が子どものために立ち上がってくれればと心から願います。この20年間、ひとつ進歩したことはNGOだけでなく、行政とNGO、ザ・ボディショップのような民間セクター、この問題を改善しようと思っている日本旅行業協会、インターネット協会、そしてスウェーデン大使館、日本ユニセフ協会、ヤフー株式会社のような様々な組織が私たちと共に立ち上がってくれていることです」と力強くあいさつした。続いて登壇した、スウェーデン大使館参事官のカイ・レイニウス氏は、児童ポルノの取締りには国際協調が欠かせないとして、次のように語る。 「世界中のインターネットで配信される児童ポルノだけでも、毎年10億ドルを売り上げていると思われる。犯罪組織は、積極的に子どもを犠牲にしている。捜査機関が働きやすい環境をつくるためには、国際協調が欠かせない。(児童ポルノについて)世界ではさまざまな解釈がなされているが、スウェーデン当局は単純所持禁止によって犯罪活動に対して以前よりも積極的に対応できるようになった。複雑な論点があるので、日本に単純所持に反対する意見があるのは不思議には思わない。スウェーデンでも国民による熱い議論の末に実施できるようになった。その中で出版の自由、表現の自由も論点になった。しかし、表現の自由以上に、子どもの人権擁護が重要だとして国民の合意が得られた。日本もスウェーデンと同じ議論のプロセスを歩んでいると思う」。 ■漫画・アニメは性的虐待を「誘発している」どころか「利用されている」  さて、この集会のメインスピーカーともいえる、国際エクパット事務局長のキャサリン・スピーク氏は「子どもポルノ根絶に向けた国際ECPATの取り組み」と題して講演を行った。スピーク氏は、子どもの商業的性的搾取の定義を改めて解説した上で、正確な把握は不可能としながらも「ILO(国際労働機関)の報告によれば、2002年には世界中でおよそ180万人の子どもが買春またはポルノによる性的搾取の被害にあっているとされている」「子どもや青少年の性的搾取に対する社会的な許容も増加している」「商業目的の子どもポルノは年間数十億ドルの産業規模である」「インターネット上に100万枚以上の子どもポルノ画像が存在する」「児童虐待の既存の手法はインターネットの普及によって、より手軽で危険の少ないものになってしまっている」「ウェブサイトに提示されている画像の児童虐待の深刻さが増しており、被害に遭う子どもの年齢もより幼くなっている」と報告。その上で、日本政府に対しては「子どもを守るために、国際的な基準と最善の取り組みを参考にしながら、法案の作成を行うよう求める。 「表現の自由はあらゆる国において絶対的ではなく、制限の下にあるものである。社会全体が表現の自由に対する制限を認識するのは、特にそれが他の価値や権利と矛盾する場合である。子どもたちが性的搾取から自由な状態の中に生きる権利は、表現の自由に優先されるべき権利の一つである」  これに続く発言はさらに踏み込んだものだった。国際エクパットが、成人向け漫画やアニメに対するスタンスを明らかにしたからである。 「たとえ成人向け内容の物において描写される子どもが実在しないとしても、こうしたヴァーチャルの子ども虐待画像は実際に子どもたちが性的に虐待あるいは搾取を受ける危険を高めている」(スピーク氏)  すなわち、成人向け漫画などを通じて、実在の子どもたちが被害を受ける可能性があると指摘するのだ。スピーク氏は具体的な危険例として「子どもの性的搾取についての社会的許容を推奨している」「子どもとの性的行為を正常であるかのように思わせている」「画像が急速かつ広範囲に流布されるのに寄与している」「子どもの性的虐待描写物への需要を増大させている」そして最後に、「ヴァーチャルな子ども虐待画像は子どもを手なづけたり、誘惑する際に用いられている」とした。 ■漫画・アニメだけではダメ! 「文章も音声も規制対象に」  続いて登壇した国際エクパットの法律担当スタッフ、フランソワ・エックセヴィエ・スーチェ氏も「子どもポルノ/子ども虐待画像と闘うための鍵となる法的な問題と課題への理解に向けて」と題した報告の中で「ヴァーチャルな子どもポルノ」について言及した。スーチェ氏は「児童の売買、児童買春及び児童ポルノに関する児童の権利に関する条約の選択議定書」「サイバー犯罪に関する条約」「欧州評議会子どもの性的搾取及び性的虐待からの保護条約」を論拠に、ヴァーチャルな画像や表現も犯罪にあたると主張する。そして、「ヴァーチャルな子どもポルノ」の問題点として、 「そのような視覚的画像は、虐待者の子どもへの不適切な感情や行為を増大し、また子どもの性的虐待や性的搾取に対する社会的許容を生み出す。さらに、これらの描写物が性目的のために子どもたちを誘い出す行為に用いられる」  と、先のスピーク氏の発言を補強する形で述べた。その上で、フィリピン・カナダ・アイルランド・ニュージーランドなどで既に「ヴァーチャルな子どもポルノ」が犯罪となっていると解説。 「子どもの性的行為への関与を助長する、あるいは描写する音声や文章は、犯罪とされるべきである。同時に、関連する国際的な法的基準によれば、子どもを表現した漫画、アニメ、コンピューターゲーム、デッサンなどは禁止されるべきである」(スーチェ氏)  最後に登壇した日本ユニセフ協会広報室長の中井裕真氏は、インターネットのブロッキングが非常に進んできたことに言及し、 「児童ポルノに対する取り組みは、止まっているのではなく進んでいる。ただ、法改正の部分だけは取り残されている」  と、重ねて単純所持禁止の導入を訴えた。 ■単純所持を禁止するために「ウラの人間関係を調整中」  これまでになく、漫画・アニメなど「ヴァーチャルな子どもポルノ」に対する規制にまで踏み込んだこの集会。その最大の目的は、国会議員に向けたアピールだ。日頃の活動の成果なのか、多くの国会議員の発言もあった。  公明党副代表の松あきら参議院議員は 「いったい何年、児童ポルノ法の会議をしなければならないのか。私たち公明党と自民党で単純所持禁止の改正案はもう出している。けれども、残念ながら、その法案が通らない。与野党関係なく、一刻も早く単純所持の禁止を盛り込んだ改定を行いたい」  と力強く述べる。同じく公明党の富田茂之衆議院議員は2年半前の児童ポルノ法改定をめぐる協議における合意点を振り返り、政権交代があってから民主党が、改定の協議に応じなくなったと批判する。 「2年半前の話し合いでは『みだりに児童ポルノを所持してはならない』『ことさらに児童の性的な部位が強調されていること。性的な部位はでん部なども含む』ことは合意していた。また、所持の禁止に関しても"自己の意志によって所持・保管するに至ったもの"であり、かつ当該者であることが明らかに認められるものに限るという文言を挿入することも合意していた。既に所持しているものの取り扱い以外は合意に達していた。協議ができれば、いつでも単純所持の罰則付き禁止は行える」  と、民主党への働きかけを呼びかけた。政権与党でもある民主党を力強く批判する自民・公明党の国会議員。中でも過激だったのが、衆議院の青少年問題に関する特別委員会の理事でもある、自由民主党のあべ俊子衆議院議員だ。質疑応答の際の「民主党に働きかければ、法改正はすぐに行われるのか」という質問に対して、あべ議員は次のように答えた。 「民主党の中に、何人かの表現の自由などを主張される方がいる。これは、その方々をみんなで嗅ぎつけて、なんとかなるものなのかも含めて、いま裏の人間関係を含めて調整しているところです。(表現の自由を主張する議員は)理論的なところではなく、個人的な価値観で指摘している」  いったい「裏の人間関係」とは、どういうものだろうか?  質疑応答では、「バーチャルな児童ポルノと子どもの相関関係を示している文献があれば、教えてほしい」という質問も。対する答えは「残念ながら、明確なものは存在しない」というものであった。 ■規制に慎重な人々を閉め出した目的はどこにあるのか  今回の集会が昨年6月の集会と大きく異なったのは、まず第一に漫画やアニメなど「ヴァーチャルな子どもポルノ」にも、大きく踏み込む形で発言が行われたことだ。そして、もう一つ、集会参加が事前申込み制となっていたこと。その上で、児ポ法改定に慎重な立場を取る市民団体関係者の申込みに対しては「エクパットの趣旨に賛同している方向けの集会」であるという理由で、参加を拒否していることもわかっている。そこまで、集会を秘密にする必然性が、どこにあったのか甚だ疑問である。また、この日、幾人かの登壇者が発言したが、6月には児童ポルノ禁止の熱心な活動家であるスウェーデンのシルヴィア王妃が来日する予定だ。07年に彼女が来日した際にもスウェーデン大使館では児童ポルノの規制強化を求めるシンポジウムを開催している。6月には、ひとつの大きな山があるかもしれない。 (取材・文=昼間たかし)  
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「漫画・アニメのせいで子どもが犯される」「文章も禁止」過激発言満載の児ポ法規制推進派院内集会

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 2月14日、衆議院第一議員会館で院内集会「国際エクパット事務局長来日 今こそグローバルスタンダードへ! 児童買春・児童ポルノ禁止法(以下、児ポ法)の改正に向けて」がECPAT/ストップ子ども買春の会(以下、エクパット)の主催で開催された。エクパットの院内集会は、昨年の6月以来のことだ。  この日の集会は、撮影・録音・Twitter禁止、パソコンの使用も禁止というものものしい雰囲気で始まった。冒頭あいさつに立った、エクパット代表の宮本潤子氏は「ぜひとも今国会で改正を行い、子どもたちを残虐な虐待・性暴力から守る法律にしてもらうことを願っている。今一度、全部の政党が子どものために立ち上がってくれればと心から願います。この20年間、ひとつ進歩したことはNGOだけでなく、行政とNGO、ザ・ボディショップのような民間セクター、この問題を改善しようと思っている日本旅行業協会、インターネット協会、そしてスウェーデン大使館、日本ユニセフ協会、ヤフー株式会社のような様々な組織が私たちと共に立ち上がってくれていることです」と力強くあいさつした。続いて登壇した、スウェーデン大使館参事官のカイ・レイニウス氏は、児童ポルノの取締りには国際協調が欠かせないとして、次のように語る。 「世界中のインターネットで配信される児童ポルノだけでも、毎年10億ドルを売り上げていると思われる。犯罪組織は、積極的に子どもを犠牲にしている。捜査機関が働きやすい環境をつくるためには、国際協調が欠かせない。(児童ポルノについて)世界ではさまざまな解釈がなされているが、スウェーデン当局は単純所持禁止によって犯罪活動に対して以前よりも積極的に対応できるようになった。複雑な論点があるので、日本に単純所持に反対する意見があるのは不思議には思わない。スウェーデンでも国民による熱い議論の末に実施できるようになった。その中で出版の自由、表現の自由も論点になった。しかし、表現の自由以上に、子どもの人権擁護が重要だとして国民の合意が得られた。日本もスウェーデンと同じ議論のプロセスを歩んでいると思う」。 ■漫画・アニメは性的虐待を「誘発している」どころか「利用されている」  さて、この集会のメインスピーカーともいえる、国際エクパット事務局長のキャサリン・スピーク氏は「子どもポルノ根絶に向けた国際ECPATの取り組み」と題して講演を行った。スピーク氏は、子どもの商業的性的搾取の定義を改めて解説した上で、正確な把握は不可能としながらも「ILO(国際労働機関)の報告によれば、2002年には世界中でおよそ180万人の子どもが買春またはポルノによる性的搾取の被害にあっているとされている」「子どもや青少年の性的搾取に対する社会的な許容も増加している」「商業目的の子どもポルノは年間数十億ドルの産業規模である」「インターネット上に100万枚以上の子どもポルノ画像が存在する」「児童虐待の既存の手法はインターネットの普及によって、より手軽で危険の少ないものになってしまっている」「ウェブサイトに提示されている画像の児童虐待の深刻さが増しており、被害に遭う子どもの年齢もより幼くなっている」と報告。その上で、日本政府に対しては「子どもを守るために、国際的な基準と最善の取り組みを参考にしながら、法案の作成を行うよう求める。 「表現の自由はあらゆる国において絶対的ではなく、制限の下にあるものである。社会全体が表現の自由に対する制限を認識するのは、特にそれが他の価値や権利と矛盾する場合である。子どもたちが性的搾取から自由な状態の中に生きる権利は、表現の自由に優先されるべき権利の一つである」  これに続く発言はさらに踏み込んだものだった。国際エクパットが、成人向け漫画やアニメに対するスタンスを明らかにしたからである。 「たとえ成人向け内容の物において描写される子どもが実在しないとしても、こうしたヴァーチャルの子ども虐待画像は実際に子どもたちが性的に虐待あるいは搾取を受ける危険を高めている」(スピーク氏)  すなわち、成人向け漫画などを通じて、実在の子どもたちが被害を受ける可能性があると指摘するのだ。スピーク氏は具体的な危険例として「子どもの性的搾取についての社会的許容を推奨している」「子どもとの性的行為を正常であるかのように思わせている」「画像が急速かつ広範囲に流布されるのに寄与している」「子どもの性的虐待描写物への需要を増大させている」そして最後に、「ヴァーチャルな子ども虐待画像は子どもを手なづけたり、誘惑する際に用いられている」とした。 ■漫画・アニメだけではダメ! 「文章も音声も規制対象に」  続いて登壇した国際エクパットの法律担当スタッフ、フランソワ・エックセヴィエ・スーチェ氏も「子どもポルノ/子ども虐待画像と闘うための鍵となる法的な問題と課題への理解に向けて」と題した報告の中で「ヴァーチャルな子どもポルノ」について言及した。スーチェ氏は「児童の売買、児童買春及び児童ポルノに関する児童の権利に関する条約の選択議定書」「サイバー犯罪に関する条約」「欧州評議会子どもの性的搾取及び性的虐待からの保護条約」を論拠に、ヴァーチャルな画像や表現も犯罪にあたると主張する。そして、「ヴァーチャルな子どもポルノ」の問題点として、 「そのような視覚的画像は、虐待者の子どもへの不適切な感情や行為を増大し、また子どもの性的虐待や性的搾取に対する社会的許容を生み出す。さらに、これらの描写物が性目的のために子どもたちを誘い出す行為に用いられる」  と、先のスピーク氏の発言を補強する形で述べた。その上で、フィリピン・カナダ・アイルランド・ニュージーランドなどで既に「ヴァーチャルな子どもポルノ」が犯罪となっていると解説。 「子どもの性的行為への関与を助長する、あるいは描写する音声や文章は、犯罪とされるべきである。同時に、関連する国際的な法的基準によれば、子どもを表現した漫画、アニメ、コンピューターゲーム、デッサンなどは禁止されるべきである」(スーチェ氏)  最後に登壇した日本ユニセフ協会広報室長の中井裕真氏は、インターネットのブロッキングが非常に進んできたことに言及し、 「児童ポルノに対する取り組みは、止まっているのではなく進んでいる。ただ、法改正の部分だけは取り残されている」  と、重ねて単純所持禁止の導入を訴えた。 ■単純所持を禁止するために「ウラの人間関係を調整中」  これまでになく、漫画・アニメなど「ヴァーチャルな子どもポルノ」に対する規制にまで踏み込んだこの集会。その最大の目的は、国会議員に向けたアピールだ。日頃の活動の成果なのか、多くの国会議員の発言もあった。  公明党副代表の松あきら参議院議員は 「いったい何年、児童ポルノ法の会議をしなければならないのか。私たち公明党と自民党で単純所持禁止の改正案はもう出している。けれども、残念ながら、その法案が通らない。与野党関係なく、一刻も早く単純所持の禁止を盛り込んだ改定を行いたい」  と力強く述べる。同じく公明党の富田茂之衆議院議員は2年半前の児童ポルノ法改定をめぐる協議における合意点を振り返り、政権交代があってから民主党が、改定の協議に応じなくなったと批判する。 「2年半前の話し合いでは『みだりに児童ポルノを所持してはならない』『ことさらに児童の性的な部位が強調されていること。性的な部位はでん部なども含む』ことは合意していた。また、所持の禁止に関しても"自己の意志によって所持・保管するに至ったもの"であり、かつ当該者であることが明らかに認められるものに限るという文言を挿入することも合意していた。既に所持しているものの取り扱い以外は合意に達していた。協議ができれば、いつでも単純所持の罰則付き禁止は行える」  と、民主党への働きかけを呼びかけた。政権与党でもある民主党を力強く批判する自民・公明党の国会議員。中でも過激だったのが、衆議院の青少年問題に関する特別委員会の理事でもある、自由民主党のあべ俊子衆議院議員だ。質疑応答の際の「民主党に働きかければ、法改正はすぐに行われるのか」という質問に対して、あべ議員は次のように答えた。 「民主党の中に、何人かの表現の自由などを主張される方がいる。これは、その方々をみんなで嗅ぎつけて、なんとかなるものなのかも含めて、いま裏の人間関係を含めて調整しているところです。(表現の自由を主張する議員は)理論的なところではなく、個人的な価値観で指摘している」  いったい「裏の人間関係」とは、どういうものだろうか?  質疑応答では、「バーチャルな児童ポルノと子どもの相関関係を示している文献があれば、教えてほしい」という質問も。対する答えは「残念ながら、明確なものは存在しない」というものであった。 ■規制に慎重な人々を閉め出した目的はどこにあるのか  今回の集会が昨年6月の集会と大きく異なったのは、まず第一に漫画やアニメなど「ヴァーチャルな子どもポルノ」にも、大きく踏み込む形で発言が行われたことだ。そして、もう一つ、集会参加が事前申込み制となっていたこと。その上で、児ポ法改定に慎重な立場を取る市民団体関係者の申込みに対しては「エクパットの趣旨に賛同している方向けの集会」であるという理由で、参加を拒否していることもわかっている。そこまで、集会を秘密にする必然性が、どこにあったのか甚だ疑問である。また、この日、幾人かの登壇者が発言したが、6月には児童ポルノ禁止の熱心な活動家であるスウェーデンのシルヴィア王妃が来日する予定だ。07年に彼女が来日した際にもスウェーデン大使館では児童ポルノの規制強化を求めるシンポジウムを開催している。6月には、ひとつの大きな山があるかもしれない。 (取材・文=昼間たかし)  

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ふとした気の迷いから犯罪者へ転落 元博報堂社員が見た地獄

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第1位 「東大地震研 平田教授の『正体』」(「週刊文春」2月16日号) 第2位 「博報堂元社員が明かす『わが転落の記』」(「週刊現代」2月25日号) 第3位 「福島『求人』職種の危険度と賃金 被災地のハローワーク」(「AERA」2月20日号)  天皇陛下の玉体、それも心臓にメスが入ることになったことで号外まで出された。  2月11日から東大病院に入院され心臓の精密検査を受けていたが、薬やカテーテルによるステント治療ではなく、詰まった血管に迂回路をつくるバイパス手術をすることになった。  「週刊新潮」の「『天皇陛下』心臓にメスが入る日」によれば、「一番左端の左冠動脈左回旋枝はほぼ9割方ふさがっているのです。もう一本も相当程度、狭窄が進んでしまっている。しかも場所が悪いため、すでにステントを入れるのは不可能なのです」(東大病院関係者)  天皇の体は「冠動脈の狭窄や動脈硬化ばかりか、不整脈も患われ、心臓は悲鳴を上げている状態だというのである」(新潮)  体に負担がかかる手術になるそうだが、無事終わることを祈りたい。  今週の3位は、東日本大震災の被災地で起きていることを「求人」というキーワードから探ってみようという「AERA」の記事。  南相馬市の中心地にあるJR原ノ町駅前のホテルは復興関連の人々でごった返しているが、深刻なのは人手不足である。  放射能が怖くて20代から30代の女性が来てくれないのだ。時給700円ということもあるかもしれないが、経営的にそれ以上は無理だという。  しかし、有効求人倍率は復興事業支援策予算約11兆7,000億円もあって、福島県相双地区の場合、求職者数549人に対して求人数は1.7倍の962人ある。  被災地の求人数では、最も多いのが医療福祉で全体の19.1%、次いで建設が18.2%。  しかし、11月から求人を始めた福島市内の建設機器レンタル業者によると、時給800円でもさっぱりだという。ほかにわりのいい仕事があるからだ。  それは放射能の除染関連。防護服を着用しなくても済む一般住宅などの除染関連だと月給20万円ほど、放射線量の高い区域などでの直接的な原発事故関連作業だと25万円以上になる。  ハローワークで調べてみると、現場を2カ月から3年くらいかけて移動しながら、瓦礫撤去や構造物の解体、手作業による物資の積み込みの仕事は、1日の実働は4時間で月給は27万6,000円から34万5,000円。宿泊食事付きだ。だが「履歴書に必ず血液型と緊急の連絡先を記入」という特記事項が付いている。  この求人を出しているゼネコン傘下の零細業者は「30人の定員に全国から150人ほど応募があった。ただし、安全のため40歳以上の男性に限定しています」と話している。  原発から20キロ圏内の警戒区域で空き巣パトロールの仕事もある。3交代で24時間体制。従事しているのは地元消防団の人たちが多いという。日給は7,000円ほど。  樹木の伐採の求人も多い。だが山の急斜面での伐採は危険を伴うし、伐採時に放射性物質が飛び散る危険も加わる。林野庁が出した現場監督と調査を手がける係長の求人は月給24万6,800円から40万1,800円。  専門技術を必要とされる職種は当然ながら高賃金。例えば宮大工は、基本給の3倍の月給最高34万5,000円までを支給する建築会社(いわき市)がある。  ほかには放射線測定員が基本給16万から24万。韓国語や中国語の翻訳などの仕事もある。韓国語の翻訳員が基本給17万4,300円。中国語の通訳が基本給14万0,080円。  求人票からは復興が進まない分野も見えてくる。福島県内の漁協は操業を自粛しているために求人はゼロ。  少し違う視点から物事を見る。週刊誌ならではの記事である。  第2位は「週刊現代」の詐欺で捕まった元博報堂社員の告白である。平凡なサラリーマンがふとした気の迷いから、犯罪者に転落していった。身につまされる。  本間龍(49歳)は1989年に博報堂に入社し、一貫して営業を担当。  転落のきっかけは得意先企業からパンフレット制作の仕事を受注したことからだった。  その費用1,000万円が、向こうの社長の「期末を超えた請求はびた一文払わない」という身勝手な主張により回収できなくなってしまったのだ。  そのとき上司に話していればよかったのに、異動させられるかもしれないという恐怖心から言い出せなかった。  転勤先の北陸から戻って子どもが小さかったこともあり、なんとか陰で穏便に処理したいと思っているとき、博報堂の上場が話題になり、株の上場話を元に金を借りようと思い立つ。  自分が持っている株が上場になれば2,000万円ほどになる。それで返済すればいいと、大学の後輩やサークルの仲間に持ちかけて1,000万円作るのだ。  それをきっかけに彼の評価は上がり、電通が独占的に扱っていた大手石油会社の仕事を博報堂に持ってくるなどの成果を上げる  そうなるとほかの部門のスタッフのケアをしなければならず、得意先などにも身銭を切ってご馳走することも多くなる。  そしてお決まりの女性関係。10歳年下の派遣で来ていた人妻と理無い仲になり、夜仕事が終わってからの食事、ホテル代、タクシー代と嵩んでくる。  そうして彼はまた、博報堂の未公開株の購入を友人知人に持ちかけ、集めた額は2,000万円を超えてしまうのである。  それでも出て行く金は増え続け詐取した分を注ぎ込んでも足りず、ついに闇金に手を出してしまう。40社から800万円くらい借り、返済が滞ると自宅にも会社にも「コラァ、本間を出せや!」と催促の電話が入る。とても仕事どころではなくなる。  そうして2005年2月に博報堂が上場されるが、持ち株は2,000万円どころか800万円にしかならなかった。  上場から1年近く経って、もはやだまし続けるのは限界と、一人に「未公開株の話、実はウソだったんだ」と泣きながら告白する。  妻にも打ち明けるが、総額を知った彼女は離婚を切り出す。借りていた二人から合計1,800万円で告訴され、会社を退職し、妻子が出ていった数日後に詐欺容疑で逮捕されるのである。  懲役2年の実刑判決が出て、未決勾留期間を差し引いた1年4カ月服役し、08年10月に出所する。  馬鹿な奴だというのは容易い。だがサラリーマンを経験した人間には、彼と自分との違いはほんの僅かなものだと知っている。  1,000万円の未回収金を上司に相談していれば、始末書か異動で済んだのだろう。それを隠すために儲け話をでっち上げて金を借り、それがうまくいったことで仕事もうまく回り出し、借金が雪だるまのように大きくなっていく。  私にもクレジットカードで、それに近い経験がある。当座の資金にと借りた10万20万があっという間に100万を超す。  それを返すために新たにクレジットカードを作る。そうして借金は増え続ける。私が曲がりなりにも躓かなかったのは、気が小さかったからである。  彼ほどの金額でなくても、金銭的な問題で悩んでいるサラリーマンがいたら、これを読んで、すぐ上司に相談したほうがいい。そうすれば最悪「解雇」になるだけである。  今週のグランプリは、読売新聞1月23日付の「首都圏直下型 4年以内に70%」の発信元になった東大地震研究所平田直教授から、以下の言を引き出した「週刊文春」の記事である。 「だからね。その数字に意味はないって何度も言っているでしょ。五年~七年というのも僕のヤマ勘ですよ、ヤマ勘!」  読売の記事を受けて大騒ぎになり、他紙や週刊誌、テレビが追随した。平田教授も連日メディアに出て「解説」したため、首都圏はパニック状態になっているのだ。この数字がヤマ勘だったとは。  この数字に対する異論が次々に出てきた。京都大学防災研究所の遠田晋次准教授は明らかにこの数字は高すぎるという。  震災から今年1月21日までに首都圏で起きたM3以上の地震回数を、東大と同じと思われる計算方法でM7地震が起こる確率を計算してみたところ、「5年以内に起こる確立は28%」になったという。  なぜこんなに開きが出るのか。それは東大がとったデータは震災から9月10日までで、関東で頻繁に地震が起きていたときのものだったからだ。その後から現在まで地震の回数は減ってきている。  批判は身内からも出ていて、地震研のホームページには「平田直教授の伝え方、あるいは記事の書かれ方のいずれかの問題によって、(略)正確でない表現や記述不足がありました」と平田教授と読売新聞両方が批判されているのである。  平田教授は毎日新聞のインタビューにこう答えている。 「(今回の報道は)誤解を招きやすい報道でしたけれども、関東地方の油断に警鐘を鳴らす意義はあった」  東大地震研の学者が確たる根拠もなくて警鐘を鳴らすとは、地震研の名が廃る。  日本の今年度の地震調査研究関係予算は135億円、来年度の概算要求額は460億円を超えるが、それを牛耳っているのが東大地震研なのだ。  だが、地震研は地震観測一辺倒で、阪神淡路大震災が起きてからも、「予知は不可能だから、地震現象の基礎研究に重点を移す」としてしまった。 「そもそも『地震ムラ』は予知にはまったく手をつけてこなかったのです」(上田誠也東大名誉教授)  東日本大震災が起きて「地震学者たちは何をしていたのか」という批判が出てきたため、あわてて「予知モドキ」が出てきたのだそうだ。  つまり、自分たちのアリバイ証明として派手な花火を打ち上げたということらしい。  原発事故で原発ムラへの批判が噴出したが、地震ムラも東大地震研が牛耳っていて、「成果をほとんど挙げなくても、潤沢な予算を得ることが出来たのですから、学問として発展するはずがありません」(島村英紀元北大地震火山研究観測センター長)  こうした連中のひと言で右往左往する自分が情けない。だが、これから10年ぐらいの間に大地震が来ることは間違いないようだ。  いい加減な地震予知などで一喜一憂せずに、いつ来てもいいように寝室のタンスやテレビなどを固定し、非常時用の食料、水の用意、家族との集合場所などは早急に決めておく必要があるはずだ。あとは運否天賦。どこでそのときを迎えるかは誰にもわからないのだから。 (文=元木昌彦)
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撮影/佃太平
●元木昌彦(もとき・まさひこ)
1945年11月生まれ。早稲田大学商学部卒業後、講談社入社。90年より「FRIDAY」編集長、92年から97年まで「週刊現代」編集長。99年インターネット・マガジン「Web現代」創刊編集長を経て、06年講談社退社。07年2月から08年6月まで市民参加型メディア「オーマイニュース日本版」(2006年8月28日創刊)で、編集長、代表取締役社長を務める。現「元木オフィス」を主宰して「編集者の学校」を各地で開催、編集プロデュースの他に、上智大学、法政大学、大正大学、明治学院大学などで教鞭を執る。 【著書】 編著「編集者の学校」(編著/講談社/01年)、「日本のルールはすべて編集の現場に詰まっていた」(夏目書房/03年)、「週刊誌編集長」(展望社/06年)、「孤独死ゼロの町づくり」(ダイヤモンド社/08年)、「裁判傍聴マガジン」(イーストプレス/08年)、「競馬必勝放浪記」(祥伝社/09年)、「新版・編集者の学校」(講談社/09年)「週刊誌は死なず」(朝日新聞社/09年)ほか
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財政危機のギリシャに学べ!? これからの時代を生き抜く生活防衛の基礎知識

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「フライデー」2月17日号
第1位 「白昼堂々! 浅野忠信・仲里依紗『抱擁&キス!の大阪デート一部始終』」(「フライデー」2月17日号) 第2位 「下り坂『日本』を歩く 生活防衛の基礎知識」(「週刊新潮」2月9日号) 第3位 「『たかがコミック』とは言わせない」(「ニューズウィーク日本版」2月8日号)  今年に入って、私が気になっているいくつかの言葉を紹介してみたい。  まずは「週刊金曜日」1月13日号のインタビューでの辺見庸の言葉。 「大震災の以前から、大きなパラダイム(枠組み)の変化はすでにあったのです。震災がそれを暴いてくれた。この国のマスコミ、文芸、市民運動を含めて、戦後しばらくは、状況に対する否定的な思惟というものがありましたが、八十年代ごろから現状を倦まずに批判し疑っていくという理念の芽を打ち消してきたのです。やがて疑問を持つこと自体を封じ、肯定的な思惟を強いるようになってきた。今回の出来事はそのことを明らかにしました。(中略)関東大震災では戒厳令が敷かれ、それ自体法的にもデタラメな戒厳令ではあったのだけれど、今はどうでしょう。自分たちで『心の戒厳令』を敷いてくれている。使用言語を限定するとか、テレビCMをやめるとか。国家権力が強制したわけでもないのに、みんな整然と下からのファシズムをやっている。(中略)『おずからのファシズム』です。それに対する言い知れぬ薄気味悪さ、耐えがたさ。そうしたものが『眼の壁』(詩集。第42回高見順賞を受賞した=筆者注)を執筆しているとき、心の底に流れていましたね」  次は経済評論家の内橋克人。朝日新聞1月8日付けのインタビューより。 「米国はじめ国内外の最強の秩序形成者に抵抗する力もなく、生活に追われて政治的な難題に真正面から対峙するゆとりもない。同時に、精神のバランスを維持するために『うっぷん晴らし政治』を渇望する。政治の混乱を面白がり、自虐的に、極めて反射的に、表面的に評価して、選挙権を行使する。大阪市の橋下徹市長の『ハシズム現象』も貧困マジョリティーの心情的瞬発力に支えられている面が大きい。(中略)民主政治を基盤とする国でのヒーロー待望論ほど異常なものはない。日本古来の『頂点同調主義』に加え、異議を唱える者を排除する『熱狂的等質化現象』が一体となる。『うっぷん晴らし政治』の渇望を満たそうとすれば、1930年代の政治が繰り返される。グローバリズムが生み出した『貧困ファシズム』の培地となりかねない」  最後は京都大学大学院教授・佐伯啓思の『反・幸福論』(新潮社)から。 「これから、かつて百年少し前に起きたのと似た様々な混乱、軋轢が生まれてくることは確実です。ロシア、中国、それからアメリカを中心とした激しい資源の争奪戦。食料の争奪戦も起きるでしょう。(中略)しかし日本が同じようなむき出しの力の争奪戦に入っても、勝てるわけがない。だとすれば、やはり日本的な価値観を掲げる以外にないのではないでしょうか。その価値観のベースになるのは、道義であり、京都学派的な言い方をすれば、『無』や『空』といった日本的精神だろうと思います。自由を極端に主張しない。自然権としての平等や人権ということも声高には主張しない。欲望の気のままな解放も主張しないし、競争というものも節度を持った枠内でしか認めない。これが本来の日本的精神です。調和を求め、節度を求め、自己を抑制することを知り、他人に配慮する。これを、今の世の中で実践するのは非常に難しいことです。しかし、これら日本的な精神に基づいた価値観を打ち出していく以外に、われわれの取るべき道はありません。それは間違いない」  今年は政治的にも経済的にも、昨年以上に厳しい混乱の時期が続くといわれている。そこで問われるのは一人一人がこの国をどうしたらいいのか、どう変えたらいいのかという確固たる「価値観」である。他人任せにしないで、おのおのの責任で考えることが一層求められることは間違いない。  今週も各誌が大地震特集を組んでいる。それもいつ大地震が来るかという予測記事ではなく、大地震が来たときにどう生き延びることができるのかという「具体策」に踏み込んでいる。  「4年以内に70%!『東京直下型大地震』死中の活」(週刊新潮)や「M8M9大地震 日本破滅 最悪の1週間はこうなる!」(週刊文春)が代表的である。  大地震ものを取り上げなければと思って各誌読んでみたが、内容的にはどれも似たり寄ったりで、これはというのがない。そこで今週は、読んで陰々滅々となる大地震記事とは少し違う記事を取り上げてみた。  まず「ニューズウィーク」の記事。バンドデネシ(BD)ってみなさん知ってましたか? フランスやベルギーのコミックのことなんですね。  書き出しは、昨年10月にロンドンで国際フェスティバルが開かれ、世界のコミックの有名作家が一堂に会したということから。  フランス語圏内と英米のコミックに対する認識のどこが違うかといえば、「リスぺクトの有無」だという。BDはフランス語圏内では長い歴史を誇り、「9番目の芸術」といわれているそうだ。  しかし、英米の意識も25年ほど前から変化した。そのきっかけになったのが、アート・スピーゲルマンの『マウスーアウシュヴィッツを生き延びた父親の物語』だそうだ。  これは図書館や大学の蔵書になりピューリッツア賞も受賞した。  以来、批評家もコミック作家の独創性に注目せざるを得なくなって、グラフィックノベルはフィクションや歴史、個人史を伝える重要なアートになりつつあるのだそうだ。  昨年秋には、イラン大統領選後の混乱の中、行方不明になった息子を捜す物語『ザハラの天国』(アミール)が12カ国で出版された。  哲学者バートランド・ラッセルが数学の真理を追究する『ロジコミックス』が25カ国でベストセラーになった。  現代ではスーパーヒーローものが衰え、女性の読者と作家が増えている。マウスのスピーゲルマンはコミックを「すべてを本質的に凝縮する」「絵による物語」と定義する。  コミックの一コマは教会のステンドグラスの窓で、そこには物語が詰まっている。  グラフィックノベルはアートとしても大きな可能性を秘めているが、パレスチナやボスニアの紛争ルポをアメリカで初めてコミック化したジョー・サッコが重視するのは「ドキュメンタリー機能」だという。  コミックは軽やかに時間を遡り、絵の力によって、難民キャンプや爆撃を受けた町の様子を、読者の意識に浸透させることができるからだ。  先ほどのアミールにとってグラフィックノベルは「究極の大衆メディア」で、「ストーリーを伝える上で最も早くて安くて便利な方法」だという。  エジプトではコミックの出版点数が急増しているそうである。ムバラク前大統領がエジプト初のコミックの出版を禁止したことへの反動で、アラブの春の一環と捉えられているそうだ。  文化評論家のマヤ・ヤッギはこう結んでいる。 「アートと行動主義というコミックの持つ2つの可能性が、人々に理解されるようになってきた。ブログやFacebookやTwitterと同じく、グラフィックノベルは革命を起こす武器になりそうだ」  何と日本のマンガと違うことだろう。電子書籍で一番手っ取り早くカネになりそうなのはマンガだと、マンガを持っている出版社は期待しているようだが、日本のマンガが受け入れられるのはごくごく小さな地域だけかもしれない。  マンガが世界的な認知を受け、広がっていくためには、漫画家の問題認識やドキュメンタリー性が必要になってくるのではないか。そうでないとマンガも「ガラパゴス化」していってしまう。  五木寛之の『下山の思想』(幻冬舎)が売れている。謳い文句は「再び世界の経済大国をめざす道はない。敗戦から見事に登頂を果たした今こそ、実り多き『下山』を思い描くべきではないか。『下山』とは諦めの行動でなく新たな山頂に登る前のプロセスだ」というのだ。  新たな山頂というのが何を指しているのかわからないが、もはや昔のようなバブル時代は望みようがないし、望むべきではない。  そこでこの下山の時代をどう生きていくのかは、一人一人にとって大難問である。週刊誌にその類の記事が多くあるが、今週の新潮の記事は一番役に立ちそうである。  第2位は「新潮」の「下り坂『日本』を歩く 生活防衛の基礎知識」。まずは「今やるべきは『資産』『ローン』『保険』の棚卸し作業」だと書かれている。 「生命保険を払いすぎている家庭が多いようですが、大黒柱が他界しても、子どもが18歳になるまで国から遺族年金が出る。夫名義の住宅ローンがあっても、たいていの家庭は団体信用生命保険に加入しているので、ローン残高は相殺される」  だから借金は極力返して家計をスリム化しろというのだ。  誠に真っ当な意見だ。さらにいえば、何千万の生命保険などに加入するより、その同じ額を毎月積み立てておいたほうがいい。早く死にたいなら別だが、満期になって戻ってくるカネは全額ではないのだ。  個人的には、生命保険は詐欺集団だと思いたくなるほど酷い仕組みになっている。だが若いときは、万が一を考えてしまう。そこが生命保険会社につけ込まれるのである。ご用心を!  メガバンクに金を預けても1年の金利は雀の涙。しかし、先日話題になった静岡銀行インターネット支店の「スーパー定期(1年もの)」なら金利は0.7%に跳ね上がる。ここは早々と目標額に達して終わってしまったが、探せば地方にはまだまだあるそうだ。  例えば、香川銀行のインターネット支店「セルフうどん支店」では1年ものの定期預金が0.5%。愛媛銀行のネット支店「四国八十八カ所支店」でも1年ものの定期が同じ0.5%。すぐにチェックしてみたらどうか。  インフレ対策にはコインパーキングがお奨めだそうだ。業者と組んで自宅の庭をコインパーキングにして自動販売機でも置けば、自販機1台で毎月5万円以上の利益を上げられるかもしれないというのだ。  国際的な話としては、建築基準が厳しくてなかなか新築が許可されないイギリス・ロンドンでは不動産価格はここ30年右肩上がりだそうだ。  廃屋をリフォームして値をつり上げて転売するのが財テクの主流だそうで、1,000万円で買って部屋を3つ増築した後、1億円で転売することも珍しくない。  かの地は外国人が不動産を手放した際、1物件に限り売却益は非課税になるそうだ。カネがありあまっている人はやってみたらいかがか。  金はまだまだ上がるそうである。 「過去にあった金の上昇相場では80年1月にピークを迎え、875ドルを記録しています。当時から比べると現在の物価は約2.5倍。これに合わせれば、金価格は2,200ドルまで上昇する余地がある」(ファイナンシャルプランナー深野康彦)  まあ、私はいくら金があっても金は買わないがね。  オフショア生保をご存じだろうか? 日本に支社や子会社を置いていないため自分から海外に行って手続きをしなくてはいけない生保なのだが、香港などで人気の元本保証の養老保険は、外資なので米ドルか香港ドルだが、月々3万円程度から始められ、5~25年の満期が設定されていて、利回りのよいものだと年利4.75%で複利運用してくれる。  45歳のサラリーマンが月3万円ずつ積み立てると65歳になれば運用益だけで500万円近くになる。リスクがまったくないわけではないそうだが、月々3万円ならやってみてもいいかもしれない。  ネットオークションは消費税もかからず、うまくやれば家計の足しになる。落札額で迷う人は「オークファン」というサイトがあり、楽天やヤフー、モバオクなどのネットオークションに出品されている商品の落札価格が調べられる。リスクもあるが、家計の助けになること間違いないそうだ。  その他に「ギリシャから学ぶ国破れて山河あり」は、財政破綻したギリシャや夕張がどれほど酷いことになったかを知ることで学べ、と言っている。 「こんな赤字国なのに、世界的に高水準の生活をしているのがおかしいんです。現在の生活水準を2割落として貯蓄に回し、最低でも現在の年収分の貯蓄を作る。ギリシャの人たちのように慌てないために、いずれ来る財政破綻に備えて、今から生活水準を下げておくのです」(東京福祉大学大学院水谷研治教授)  これからの「大変な時代」を生き抜くためには、きれいごとだけではダメで、絞った雑巾をさらに絞るような努力と知恵が必要なようである。もののあわれを感じさせる特集だ。  今週のグランプリは「フライデー」の記事。  浅野忠信(38)は渡辺謙に続いて世界的な俳優への道を歩き始めている。  出演作は70本以上。主演映画『モンゴル』でアメリカアカデミー賞にノミネートされたし、この冬キアヌ・リーブスと共演した『47RONIN』が公開される。  私生活では、95年に6歳年上のシンガー・Charaとできちゃった婚の末に入籍したが、2009年夏に子どもの親権を放棄して離婚した。 「別れる前、彼に女性の影があった。つまり、浅野の不倫が離婚の一因なんです」(テレビ局関係者)  その彼女とも別れて16歳年下の仲里依紗(22)と交際中なのだ。仲はスウェーデン人の祖父譲りの端正なルックスで人気の若手女優。昨年は映画『モテキ』で好演し、現在はフジテレビ系の月9ドラマ『ラッキーセブン』に出演中。  1月下旬の午後3時過ぎ。大阪の「アメリカ村」に真っ黒なサングラスを掛けたUKロック調なカップルが現れたと書いている。  あちこちウインドショッピングを楽しんだ後、心斎橋筋の商店街を北上。カフェに入り、通りに面したソファに並んで座り1時間ほどくつろぐ。  御堂筋のランドマーク、大丸前で信号待ち、手をつないでいた2人が見つめ合い、浅野が仲を引き寄せ、仲も両手で抱きつき、浅野が彼女の唇にチュッ! 一度顔を離すも再びチュッ!  この後、新幹線ホームで帰る仲を送って名残を惜しむ浅野。周囲を気にせず抱き合う。  とまあ、こうしたシーンが5枚の写真でバッチリ写っているのだ。  すごいのは巻頭の写真。浅野と仲が、まるで記念写真を撮るかのように正面を向いて写っている。  浅野は仲の肩に腕をまわし少し笑っている。とてもいい写真だ。これは2人も欲しがるのではないか。お見事フライデー!  最後に気になった記事を書いておきたい。  「週刊朝日」に吉本興業の中田カウスのインタビューが載っている。カウスがビートたけしと暴力団との本当の仲を話したとあるので期待して読んだが、まったくの期待外れだった。  「週刊文春」でたけしがカウスにハメられて渡辺山口組五代目組長(当時)に会わされたと告白していたことについて、会わせたことは認めたが、偶然会ったので意図的ではないし、組長とは20年近く会っていないと話している。  どちらの言い分が正しいのかはわからないが、全体がカウスの弁明で、勝手な言い分をそのまま載せただけのお粗末なインタビューである。  吉本興業を牛耳っているといわれる怪しい芸人の「疑惑」に切り込まなければ、この男を出してくる意味がない。「朝日」よ、猛省を。  「週刊ポスト」が東日本大震災の弔慰金(命の値段)に民と官で相当な開きがあると告発している。民間人は800万円で公務員は2660万円だそうである。なんたる格差。公務員には民間の大企業並みの見舞金や援護金が支払われ、それと別に市町村共済組合や関連公益団体から弔慰金が出るのだ。それらを合計すると、驚くほどの格差が出る。自分の命を落として中国人研修生20名を救った女川町の水産加工会社佐藤充専務にも、公的な補償は800万円なのだ。こんな官民格差があっていいはずがない。「ポスト」はいいところを指摘した。 (文=元木昌彦)
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撮影/佃太平
●元木昌彦(もとき・まさひこ)
1945年11月生まれ。早稲田大学商学部卒業後、講談社入社。90年より「FRIDAY」編集長、92年から97年まで「週刊現代」編集長。99年インターネット・マガジン「Web現代」創刊編集長を経て、06年講談社退社。07年2月から08年6月まで市民参加型メディア「オーマイニュース日本版」(2006年8月28日創刊)で、編集長、代表取締役社長を務める。現「元木オフィス」を主宰して「編集者の学校」を各地で開催、編集プロデュースの他に、上智大学、法政大学、大正大学、明治学院大学などで教鞭を執る。 【著書】 編著「編集者の学校」(編著/講談社/01年)、「日本のルールはすべて編集の現場に詰まっていた」(夏目書房/03年)、「週刊誌編集長」(展望社/06年)、「孤独死ゼロの町づくり」(ダイヤモンド社/08年)、「裁判傍聴マガジン」(イーストプレス/08年)、「競馬必勝放浪記」(祥伝社/09年)、「新版・編集者の学校」(講談社/09年)「週刊誌は死なず」(朝日新聞社/09年)ほか
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「起こるべくして起こった?」無関係の母子写真を……共同通信社が放った大誤報の裏側

 共同通信社といえば、全国47都道府県の県庁所在地と主要都市、および海外の主要都市に自社の記者を配置し、国内外のニュース・写真・記事関連データを全国の新聞・NHKを含むテレビ各局・ラジオ局に配信する非営利の通信社としてメディア関係者の間で知られている。 「非営利なだけに、ニュース提供を受ける加盟社が出資して運営され、特に北海道新聞、中日新聞、西日本新聞の出資比率が高い。加盟する目的は自社の記者がカバーできない取材内容を紙面に載せるためで、特に地方紙・スポーツ紙・夕刊紙・地方局には重宝がられ、共同の記事の読者・視聴者は数千万人に及ぶだろう」(全国紙社会部記者)  ただ、その反面、「もし、共同が誤報を配信した場合、必然的にそれが事実として信じられてしまう」(同)という状況だが、その共同通信社が、世間を騒がせている事件でとんでもない大誤報を放ってしまった。  その事件とは、昨年9月に発生した大分県日出(ひじ)町のスーパーに駐められた車から江本琴音ちゃん(当時2歳)が行方不明になった事件。母親の江本優子容疑者が琴音ちゃんの遺体を遺棄したことを供述。供述通り遺体が見つかり、5日夜に死体遺棄容疑で逮捕されたが、なんと、同社が優子容疑者と琴音ちゃんとして配信した写真が、2人とも別人で、加盟社がそのままの本人の写真として配信してしまったのだ。 「逮捕状をとったニュースが5日の午後9時ごろに共同で流れ、午後10時に逮捕のニュースが流れた。最初に送られて来た写真は琴音ちゃんのみの写真で、それを使おうとしたが、同10時ごろに問題の母子の写真が来た。当然、母子の写真を載せたほうが読者の関心を引くので、掲載。ところが、翌日正午過ぎになんと『配信した写真の母親は別人』との訂正記事が送られて来てしまい、社内は騒然。『さすがに、子どものほうは大丈夫だろう』と思っていたら、夕方になって『子どもも別人』との訂正記事が送られて来た。とんでもない大誤報だったが、母子同時に確認できないとはなんとも情けない。訂正記事が流れた時間が時間だっただけに、夕刊各紙も刷り上がった誤った母子の写真が掲載されてしまった」(地方紙デスク)  最近の同社の誤報といえば、10年10月に開催されたサッカー日本代表の国際親善試合「キリンチャレンジカップ」の原稿に社内で原稿を監修する運動部デスク(次長)が、知人女性に聞いたコメントをまるで当日会場で女性サポーターに聞いたように書き加えて配信。地方紙4紙が試合翌日の朝刊に掲載してしまい、その後、社内の「捏造(ねつぞう)があった」との指摘で調査委員会が事実を調査。次長は「締め切りが迫っていたので加筆した」と説明したため、同社は同月付で運動部長と次長の2人を厳重注意処分とし、次長を編集局以外の部署へ異動。運動部員の大幅な人事異動もしていたことが翌年8月に発覚した。  今回の写真誤配信について、同社の近藤順夫ビジュアル報道センター長は「重大なミスを犯し、関係者と読者に多大な迷惑をおかけしたことをおわびします」とのコメントを発表。写真は琴音ちゃんが行方不明になったとされた直後、記者が入手したが、実際その写真に2人は写っておらず、記者が確認作業を怠ったのが原因としているが、同社内外からは「いつかこういうことが起きても仕方ないと思った」との声が聞こえてきている。 「全体的に記者の質が低下している。通信社という性質上、自分が取材したものがダイレクトに紙面に反映されず、ここ数年給料は頭打ち。おまけに、駆け出しのうちは地方をたらい回しにされ、ボツになってしまうことが多いので、優秀で取材意欲にあふれた人材は給料や待遇のいい全国紙・出版社・NHKや民放キー局に転職してしまう。残った人材の中でも、地方の支局はまだ社歴の浅い記者や、一線を退いた記者が多くモチベーションが上がらず。そんな悪循環が社内で繰り返されるうちに、今回のような大誤報を配信してしまった。関係した部署や記者はいくらなんでもクビにはならないだろうが、かつてないほどの厳重処分が下されるだろう」(別の全国紙デスク)  全国に事件の当事者のように顔をさらされた母子はたまったものではないだろうが、世間的に同社の信頼が地に落ちたことは間違いなさそうだ。
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