
「週刊文春」11月29日号 中吊り広告より
グランプリ
「織田裕二は『ゲイの街』8億円の不動産王だった!」(「週刊文春」11月29日号)
第2位
「国政にかまけて大阪市を疎かにした『橋下市長』の大罪」(「週刊新潮」11月29日号)
第3位
「『独立国家』を作った男・坂口恭平」(「週刊現代」12月8日号)
選挙戦突入直前、第三極の離合集散が目まぐるしい。各誌の議席予測を見てみよう。
文春は、久保田正志・政治広報システム研究所代表に予測をさせている。それによると、民主党86、自民党244、国民の生活が第一が16、みんなの党が21、維新が64と読んでいる。
週刊現代は「『橋下―石原維新』がこの選挙区でこんなに勝つ」の中で、前回選挙で自民党が獲得した119議席と同じぐらいの議席を得る可能性があると読んでいる。
週刊朝日は、政治評論家の森田実と田崎史郎に予測させている。森田は民主党93、自民党247、国民の生活が第一が19、みんなの党が23、維新が52。田崎は民主党110、自民党220、国民の生活が第一が10、みんなの党が30、維新が50である。
憲法改正、自衛隊を国防軍に名称変更など放言の目立つ安倍晋三自民党総裁のおかげで、野田民主党が当初よりも議席数を伸ばすのではないか。
維新は、橋下徹大阪市長がテレビに出て威勢のいいことをぶちあげてはいるが、石原代表の核兵器のシミュレーションをやるべきだなどという仰天発言で、ウルトラ右翼政党という顔が前面に出てきて、このままいけば人気は下降線をたどるに違いない。
維新は50議席前後というのが、私の周りにいる政治記者たちの感触である。
さて、今週の第3位は、一部では有名な人らしいが、政府に期待できないからと「独立国家」を熊本に作ってしまった坂口恭平(34)という痛快な男の話である。
建国のきっかけは原発事故。危険があるのに正確な情報を教えない、国民を守らない政府を見て、これは政府ではないと思い、生存権に特化した国と政府を作ってしまったのだ。 彼が目指したのは、土地と住宅からの解放。早稲田大学時代、建築学科に籍を置き、路上生活者たちの調査をした。彼らの中にはホームレスではなく、合法的に家を持っている人間がいた。調べてみると、係争の結果、誰も所有していない土地というのが都内にはいくつかあり、銀座にもあるということがわかった。それに、彼らにとって、段ボールハウスは寝室に過ぎないのだ。
図書館が本棚、公園は水場、スーパーは冷蔵庫。都市空間のすべてを自分の家と捉える発想があったことに気づいたという。そこから生み出したのがモバイルハウス。ベニヤ板だけで作った3畳間だけの小さな家だ。
モバイルハウスはリヤカーの車輪がついているのがミソで、これだけのことで車両扱いになる。建築基準法上の「家」ではないから、固定資産税はかからないし、建てるのに免許もいらない。
「実は僕も建築士の免許をもっているわけじゃない。これは『住む人自身が建ててみようよ』という提案なんです。モバイルハウスを売るのが目的じゃないので、図面もダダで配っています」
これなら材料費2~3万円だけで家が持てる。自分の生活はゼロから作れるんじゃないかと思い始めた。
昨年3月、坂口は東京を離れて故郷の熊本に戻った。福島第一原発事故で飛散した放射性物質を避けてのことだ。国民を守ろうとしない日本政府に愛想を尽かし、5月に新政府を樹立した。
「原発事故への対応を見て腸が煮えたぎったけど、不満は以前からあった。月給18万円の人がワンルームに住んで8万円も家賃を払うなんて異常。金のないやつは住む場所がなくてもいい、って話でしょう。もはや政府ではないと思った。だから、日本は無政府状態なんです。でも政府がないのはまずいから、自分が国を建てて、その国の内閣総理大臣になるしかないと」(坂口)
新政府は生存権を守るべく放射性物質からの避難を呼びかけ、0円で泊まれる避難場所を用意する。その中心がモバイルハウスだ。
使われていない土地を無償で借りてモバイルハウスを並べる。初期投資に2~3万円はかかるが、家賃はゼロ。井戸水を使い、自家発電を行えば、水道光熱費もゼロだ。
そこへ、構想に興味を持った熊本県知事直属の政策参与(現副知事)・小野泰輔が坂口を訪れる。新政府初の「外交」である。坂口はこう話す。
「モンテビデオ条約という国家の義務と権利について定めた条約があって、国家の条件は、国民、政府、領土、外交のできる能力の4つ、とある。僕はこれを本気で満たしてみようと思った」
坂口はTwitterのフォロワーを新政府の国民と定義していて、現時点で3万2,000人超、この半年で倍増したそうだ。
政府は作った。次に行ったのは、組閣。まず親交のある文化人類学者の中沢新一氏に電話し、文部大臣に任命。その後も、映画監督の鎌仲ひとみ氏を厚生労働大臣にした。近々、東京ミッドタウンにあるフリースペースの使用権を譲り受けて国会議事堂にするという。
坂口は、「ルールを破るのではなく視点をズラす」のだという。妻と4歳の子どもを持つ。収入は原稿料と、ドローイング(絵)の販売、それにカンパ。
面白い発想をする若者が出てきたものだ。
第2位は新潮の橋下大阪市長批判の記事。国政を目指すのはいいが、お膝元である大阪市が危うくなっているというのである。
「国政政党の代表が国会議員である必要はないと思っている」
そう強がってみせる橋下市長だが、その大阪で“二足のわらじ”を心配する市議は少なくないそうである。その上、選挙を前にして大阪市政は目に見えて滞り始めていると、中堅の市議はこう語っている。
「10月に開かれた“民生委員児童委員大会”は歴代市長が必ず出るのですが、橋下さんは政党回りを理由に欠席。また、大阪都構想を進める法定協議会の年内設置の見送りも早々に決めてしまったそうです。さらに改革の目玉にしていたバスの赤字路線の再編も来春に間に合わない。これでは、市政を後回しにしていると見られても仕方ありません」
橋下市長は、自分が忙しくなるのを見越してか府市統合本部に元官僚の古賀茂明や高橋洋一などのブレーン50人以上を送り込み、6月には自分の手足となる24人の区長を公募で選出したが、ベテラン市政担当記者によると、
「市長は市民のイベントなどにせっせと顔を出したりするものですが、橋下さんは端からそんな気はない。あの人は“仕組み”を変えるために市長になったのであって、本人の代わりを公募区長にやらせようと考えているのです」
市長の分身であるから、その力は強大だし、公募区長は副市長に次ぐ権限と予算を与えられている。給与も一般職職員の中で最高ランクの年収1400万円(市職員からの異動は1200万円)にもなるそうだ。
昨年12月に募集が始まると1,461人もの応募者が集まった。
最後は橋下市長や中田宏前横浜市長らが面接して選んだのが24人の新区長だが、彼らの評判がよくないと新潮は追及する。
城東の細井敦子区長(51)は、黒のピチッとしたミニスカートに濃い化粧、エルメスのバッグを提げて登庁するから、ついた渾名が「お水系」。
淀川の榊正文区長(44)は、笑福亭鶴瓶師匠に淀川の宣伝に一役買ってくれと頼み、自分は大阪でも淀川の人間でもないと断られたら、「偉そうにして。わしは淀川区長やど」と息巻いた。
都島の田畑龍生区長(37)は、区長公募で提出した論文に、東淀川区の同和地区を特定し、そこが原因で暗いイメージがあるかのような一文を書き、それが大阪市のホームページに載ってしまったのである。当然ながら部落解放同盟が見つけて、田端区長らを問い詰めている。
また浪速の玉置賢司区長(45)はTwitterに「近頃の日本は右翼があかん。政治家を殺したりせえへんようになった」「菅直人は殴らなあかん」と書き込んだことが明らかになった。
政治アナリストの伊藤惇夫は、橋下の動きを見ていると、今までやってきたことは国政に出るためのアリバイづくりではなかったのかと疑問を呈し、こう続ける。
「公募で決めた区長の評判がボロボロなのも、公募そのものが自分の名前を売るためのパフォーマンスだったからですよ」
衆議院選に出てくる維新の候補者は、大丈夫なのだろうか?
今週のグランプリは、織田裕二のゲイ疑惑(?)記事。
織田がゲイではないかというウワサは、以前からあったらしい。それは、彼がプライベートをまったく明かさないところからきているようだ。織田をよく知る映画関係者がこう話す。
「織田は私生活は親しい友人にも明かさないし、普段どんな暮らしをしているかもしゃべらない。本人も『ベタベタした人間関係は好きじゃない、馴れ合いはイヤだ』とはっきり言っていて、『共演者から住所を聞かれたんだけど、飲みに誘われたりするのを避けたいから、わざと嘘の住所を教えていた』と漏らしていました。かたくなで、他人を寄せつけないバリアはすさまじい」
文春は織田についてこう書いている。
「織田裕二、四十四歳。言わずと知れた、当代を代表する人気俳優である。『踊る大捜査線』シリーズの主演を務め、二○○三年公開の映画第二作目では日本映画歴代一位(アニメを除く)、百七十四億円の興行収入を叩き出している。今年九月に公開された『踊る大捜査線』のファイナル作も興行収入四十三億円を突破した。
一方、私生活は厚いベールに覆われており、親しく付き合っている芸能人も極めて限られている。二○一○年八月にモデルで美容研究家の野田舞衣子さんと電撃結婚しているが、その結婚生活もまったく見えてこない」
そんなプライベートを徹底して見せない織田が、はるか遠いアメリカ西海岸サンフランシスコの地にしばしば出没しているというのである。しかも、ここは有名なゲイタウンだというのだから、興味をそそられるではないか。
もう少し文春を引用してみよう。
「ゲイタウンというと、いわゆる『ゲイ・バー』のような店が並んでいる日本の新宿二丁目のようなイメージを持つかもしれないが、カストロストリートは、どちらかというと恵比寿や表参道のようなおしゃれな街にゲイ用のグッズショップなどが混在している。(中略)小誌記者が取材で訪れた際には、そのたもとの広場には、なんと、一糸まとわぬ全裸の男たちがたむろしていた。思わず目を疑ったが、この街では誰も驚かないし、眉をひそめる人もいない。日光浴なのか、一種のアピールなのか、定かではないが、ゲイの彼らは全裸にスニーカーという身なりで、新聞を読んだり、お茶を飲んだり、談笑したりして、“普段の生活”を楽しんでいるようだった。
『本来ならば、公然わいせつで警察が取り締まるのかもしれないけれど、そういうのはないですね。ここは開放的で自由。全裸のゲイは普通に見かける光景です。野放し状態だという批判もあるけれど、サンフランシスコはゲイのパワーが強いから、ある意味、権利として守られています』(カストロストリートの飲食店スタッフ)」
こうしたサンフランシスコに織田はたびたび現れ、スーパーマーケットで買い物をしたり、カフェで白人男性とお茶をしている姿が目撃されているという。
野田舞衣子との結婚も『踊る大捜査線』でタッグを組んだ仲間を含め、織田に近い関係者でさえ知らず、報道を見てみんな仰天したという。
「織田はお気に入りのサンフランシスコを自身の主演ドラマ『外交官・黒田康作』ロケ地にプッシュし、結婚発表後の一○年十月に現地で撮影をしたのです。共演の柴咲コウや香川照之らがダウンタウンにあるヒルトンホテルで撮影クルーと一緒に宿泊していたのに、織田だけは市内のどこか別の場所に泊まっていました。早朝集合場所に現れ合流し、ロケが終わるとなぜか別行動をとっていたのです」(現地のスタッフ)
そんな織田が足繁く通うサンフランシスコに何があるのだろう?
文春が現地で取材してみると、なんと織田は4棟もの高級アパートメントをそこに所有しているというのである。登記情報などによると、1997年10月から2008年にかけて購入していて、当時の為替レートで計算すると、総額8億1,950万円が投じられていると書いている。
そのいずれもが建築されてから100年も経っている年代物ばかりだから、不動産投機目的ではなく、相当なこだわりをもって織田が購入したことがわかる。地元不動産業者は、こうした物件はゲイの人たちが好みそうなものだと語っている。
入居している人間たちは一様に口を噤み、織田と共同で会社を設立している人間もノーコメントだ。
高倉健も撮影が終わると海外に出てしまう。日本より自由があるという理由だが、それだけではあるまいと憶測する人間も多くいる。
文春は織田がゲイ志向だと言っているわけではないが、人気者の気になる情報である。
(文=元木昌彦)
◆「週刊誌スクープ大賞」の過去記事はこちらから
「72」タグアーカイブ
「生存率は50~60%」急性呼吸不全を発症した中村勘三郎、本当の病状

「週刊新潮」11月22日号 中吊り広告より
注目記事1
「苦悶する『中村勘三郎』集中治療室の『人工肺』」(「週刊新潮」11月22日号)
注目記事2
「丹羽前駐中国大使 送別会の問題発言をすべて書く」(「週刊現代」12月1日号)
注目記事3
「高岡早紀7分間『精飲SEX』の失神アクメをスッパ抜く!」(「週刊アサヒ芸能」11月22日号)
注目記事4
「『日本人女性の外性器』私たちはここに感動しました」(「週刊現代」12月1日号)
特別付録
「各誌の解散・総選挙特集を読んでみた」
ようやく解散・総選挙になった。安倍晋三自民党総裁との党首討論で解散を明言するという奇襲攻撃に出た野田佳彦首相は、なかなかの迫力だった。慌てた安倍総裁は支離滅裂な受け答えで、この人の胆力のなさを暴露してしまったが、近年にない面白い国会中継であった。
都知事選挙とのダブルになったが、都知事選への関心が急速に失われ、これで自民党が推し、維新の会も推すであろう猪瀬直樹副知事の当選はほぼ間違いないだろう。
しかし、石原慎太郎前都知事と橋下徹大阪市長の変節はどうしたことだろう。あれだけ政策が合わなければ一緒にはやれないと言っていた橋下市長が、原発政策ひとつ取ってみても大きく違う石原たちと手を組むとは、野合などというレベルの話ではない。
橋下の正体見たりである。石原も持論をねじ曲げてまで橋下の軍門に下るとはどういう了見なのか。晩節を汚す、とはこういう生き方をいう。
だが、これだけはハッキリしている。もし万が一石原が総理になったら、橋下の言うことなど一顧だにしないだろう。新潮(11月8日号)が書いたように「『石原総理』なら譲らない『反米』『反中』『核武装』」を推し進め、日本を「別の国」にしてしまうはずだ。
今回の総選挙は、この石原・橋下連合がどこまで票を集めるのかが最大の関心事である。週刊朝日は「緊急議席予測」で政治評論家の森田実、野上忠興、選挙プランナー三浦博史に票読みをさせている。
森田は民主は75、自民は230、国民の生活が第一が15、みんなの党が25、維新が66と読む。
野上は民主党が70、自民党が227、国民の生活が第一が33、みんなの党が30、維新が65。
三浦は民主は92、自民は253、国民の生活が第一が11、みんなの党が23、維新が46である。
3人とも自民党が復活し、公明党と合わせると過半数に届くと見ている。
朝日の連載「ギロン堂」で田原総一朗は、小泉純一郎元首相の郵政民営化イエスかノーかの選挙の時のように、TPP参加か否かを争点に掲げ一点突破しようと、野田首相は考えているのではないかと見ている。だが、TPPを争点にするのは無理があるだろう。
現代は、選挙後に「安倍-橋下連立政権」ができるのではないかと読む。票読みでは、民主党が50議席の大惨敗、自民党は200議席に届かず、維新は75議席獲得するとしている。
新潮は「断末魔の『年内解散』」の中で、野田首相が突然解散に踏み切ったのは「約束は守る『良い人』でいたいから」だと、野田に近い民主党関係者に語らせている。
しかし、その結果は惨憺たるものになるという見方が多い。TPP参加をマニフェストに明記すれば、さらに十数人の離党者が出てくる。時間的にその選挙区へ候補者を立てられないから、
「仮に60以上の空白区を抱えたまま総選挙に突入したら悲惨ですよ。当然、比例区にも影響が出る。(中略)当選できるのはせいぜい60名程度。180人は落選すると言われています」(民主党関係者)
逆に浮かれているのは、安倍総裁。早くも「組閣名簿」を周囲に漏らしているというのだ。官房長官に側近の菅義偉幹事長代行、外務大臣に谷内正太郎元外務省事務次官、財務大臣に盟友の麻生太郎元総理だそうだ。
二審で無罪になった小沢一郎「国民の生活が第一」代表だが、こちらは年内選挙だと政党交付金がゼロだから「カネの問題が重くのしかかってくる」(政治部記者)そうだ。
同じように「日本維新の会」も、支持率低下と選挙資金の捻出で頭が痛いと書いている。
「240人を擁立するには、供託金だけで7億2,000万円が必要。維新にはそんな資金力はないので、橋下さんは候補者自身で賄うことを求めている。が、いざ選挙となった時、“やっぱり資金が捻出できない”という人が続出し、候補者の数が減る可能性もある」(市政担当記者)
総選挙後、野党に転落した民主党の顔になるのは、細野豪志政調会長だと読む。政調会長に決まった直後に若手・中堅議員十数人を集めて、勉強会=派閥をつくったそうだ。
週刊ポストは選挙よりも、民主党が大敗しても党に残る資金は200億円もあるというところに注目したり、民主党政権ができてからの官房機密費が、使われた13億3000万円を差し引いても30億円ぐらい残るのだから、即刻返納せよと、独自の視点で特集を組んでいる。
読んで感じるのは、今回の総選挙がさらなる政治混迷の始まりになるということである。ウルトラ保守の安倍や石原も嫌だが、民主党にはこりごりだし、女房にまで見捨てられた小沢一郎に入れる気にはならない。さて、どうしたものだろうか。
さて、現代が始めた「外性器」シリーズは、そこそこの注目を集めているのだろう。今週は週刊大衆でも、トップで「30カ国『行った!見た!試した!』世界の女性器大研究」をやっている。
今週、現代は女性たちの座談会を組んでいるが、これが意外に面白い。
「北原 週刊現代が『外性器』の特集をはじめて、何に感動したかといえば、まずこんなに堂々と『外性器』という言葉を、太文字でドンと出したことなんです。
なし子 袋とじでもない、普通のページで(笑)。
北原 そうそう。私は『女性が自分の欲望に素直になったらいけないのか、もっと自由に性を楽しんでもいいじゃないか』という疑問を持って、96年に女性目線で選んだバイブなどを女性向けに販売する『ラブピースクラブ』を立ち上げたんです。ところが、創業以来、取材を受けたりしたとき困っていたのが、私が『マンコ』と発言した部分がそのまま誌面に書いてもらえないことなんですよ。
ユキ 普段は、私たちみんな、そう言っているんですけどね。
満子 よそで友達と話すときは『あそこ』とかになるんですけど。ここではそう言うと怒られて(笑)。
北原 『なんで隠す必要があるの? おかしいじゃん』ってね(笑)。でもこのシリーズを読んで『普通に「外性器」「女性器」ならよかったんだ』と目から鱗が落ちたというか。いままであえて『マンコ』とはっきり言うことで世間の雰囲気に立ち向かってきたんだけど、メジャーな週刊誌が毎週『外性器』『女性器』と太文字で書いている。これでみんなが普通に『外性器がさあ』と言える世の中になるなら、面白いことになるぞ、と感じましたね。
なし子 でも、外性器特集と言いつつ、載っているのは膣のなかの写真だったりするんですよね。やっぱり外の写真はだめで(笑)」
北原というのは北原みのり、性教育の著作がある。なし子はろくでなし子、漫画家。ユキは25歳、満子は20代とある。
この外性器特集は、現代がリサーチした結果、女性読者が多くいることがわかったとリードに書いてある。
外性器という言葉が定着するのか? 私はもう少しキレイな言葉がいいと思うのだがね。
もう一本の軟派記事はアサ芸。女優・高岡早紀(39)のAVについての特集を組んでいる。篠山紀信が撮ったヘア・ヌード写真集の高岡の迫力バストは、その華麗な男性遍歴とともに語りぐさになっているそうである。
その魔性の女&美巨乳・高岡が、来年夏頃公開される映画『モンスター』で大胆な濡れ場に挑戦しているというのだ。
原作は百田尚樹の小説で、その大胆な艶技は、沢尻エリカが主演した『ヘルタースケルター』を凌ぐという。
そのために映画や、その後のDVD発売をめぐって、争いまで勃発しているというのである。
どんなシーンがあるのか。アサ芸からアノ場面を引用してみよう。
「国道沿いのラブホテルに吸い込まれる1台の車。人目を忍ぶようにホテルに入っていったのは、高岡早紀(39)と30代後半の男だ。場面が室内に切り替わる。と、円形のベッドをピンク色の照明が照らす中、男が高岡を抱いてキス。そして慌ただしくベッドに押し倒す。男の舌先を吸い返しながら、ハア、ハアと息を乱す高岡。男の手が豊満な乳房に伸びる。
「イヤ……」
そう言って高岡は手を振りほどこうとする。だが、男の手は離れない。それどころか、高岡の豊乳をグニュン、グニュンと執拗に操みしだくのだ。
やがて高岡は、体を起こされてワンピースを脱がされる。セクシーなTバックのパンティと、白い上乳がまる見えのピンクのハーフカップブラ姿だ。たちまち興奮した男のキスを背中に受けた高岡は、快感でビクンッと体を震わせる。
ブラが外されると神々しく輝く高岡の裸体があらわになる。何かに取りつかれたように、優しく円を描くように豊乳全体を操む男。(中略)
「男の人って、我慢できないんでしょう」
「口でしてあげる」
高岡はベッドに戻るとこう言って男の足元にひざまずき、男の腰のバスタオルを剥ぎ取る。ウブな感じを装おうとしたが、股間に顔をうずめ、くわえ始めると、舌を自然と駆使してありったけのテクで男を責めたてる」
アサ芸健在である。
3本目は現代の告発記事。11月14日に閉会した第18回中国共産党大会だが、それとともに北京を去った初の民間駐中国大使・丹羽宇一郎前大使が、在北京日本人記者クラブが主催して開かれた送別会で、以下のような問題発言をしたと報じている。
宴もたけなわになり、花束贈呈に続いて丹羽大使の締めの挨拶になった。
「日中関係の局面は、ここ最近で大きく変わった。これ以上中国と関係が悪くなったら、40年前の国交正常化前に戻ってしまう。そんな中で北京を離れるのは。正直言って心残りだ」
と、全体的な所感を述べていたが、まもなく離任という安心感もあってか、発言内容は次第に過激になっていったというのだ。
「だいたい日本政府は、『尖閣諸島について領土問題は存在しない』なんて言ってるだろう。いまどき『領土問題がない』なんて言ったら、世界中の笑いものだよ。こんな主張は、パンツを穿いてないのに、自分だけパンツを穿いてると主張しているようなものじゃないか。外国から見れば、日本がオチンチン丸出しで騒いでいるようなものなんだよ。つまり日本は裸の王様だ。こんな主張は、早く止めるべきだ!」
この発言に会場は凍りついたというのだ。
大使という肩書きで、日本の外交政策に楯をつく発言をしたというのは、確かに問題があるのだろう。それに例えに品がない。
もっと問題なのは、この発言を複数の記者が本社に送ったのに、過激な発言過ぎると掲載を見送ったことである。
丹羽大使(当時)とは、北京で会ったことがある。その前に南京で「南京大虐殺記念館」を見てきたので、私は反中国主義者ではないが、あれを見せられると、私のような者でも中国への嫌悪感を抑えられなくなったと話した記憶がある。
丹羽大使はそうですか、と頷いていた。民間大使らしく、気さくでソフトな話しぶりが印象に残っている。
日中関係が厳しい中、大使という重責から解き放たれたために、口が滑ったのだろうか。こういうことは新聞か雑誌に書いて、信を問うべきが筋であろう。
2本目は新潮の中村勘三郎の病状記事。文春もやっているが、新潮のほうが内容が濃い。
ところで、昨年の11月21日に立川談志師匠が亡くなって1年になる。早いものだ。毎年この頃になると、今日の高座で「芝浜」をやってくれるかなと期待しながら落語を聞きに行ったものである。
私事で恐縮だが、談志師匠を偲んでプロデュースした本『立川談志を聴け──涙がこぼれた「富久」を私は一生忘れない』(山本益博・プレジデント社)が先週初めに発売された。
中で、私と山本さんとで師匠の思い出を語り合っている。
談志師匠は若い人たちをかわいがった。爆笑問題の太田光もそうだが、一番かわいがり、人間としても役者としても評価していたのは中村勘三郎だったと思う。
その国民的な歌舞伎役者・十八代目中村勘三郎が病気で、それも重篤だというのである。
勘三郎は今年6月に食道がんが発見され、7月には無事手術も終わり、経過良好と見られていた。ところが急変し、その病院では設備が整っていないために転院したというのだ。
勘三郎はARDSを発症し、心肺停止に陥る恐れがあるので「エクモ」を使うためにICU(集中治療室)に運ばれたそうだ。
「『ARDS』とは『急性呼吸促迫症候群』の略称。『エクモ』とは、体外式膜型人工肺という医療装置のことだ。今年9月、いつ心肺停止に陥るやもしれぬ重篤な急性呼吸不全でこのICUに担ぎ込まれてきた患者こそ、他ならぬ勘三郎、その人である。彼がこの7月、食道ガンの切除手術を受けたことはご承知の通り。だが、施術した病院から、新たに別の病院へ転送されていた事実はほとんど知られていない。一体、何があったのか。転院先の大学病院の関係者が明かす。
『勘三郎さんは、手術後、重い肺炎を羅ってしまったのです。その後、さらに重篤なARDSを発症し、もはや酸素マスクや人工呼吸器など、肺に酸素を送り込む器具では酸欠状態が改善できず、予断を許さない容体に陥りました。これは肺で酸素と二酸化炭素を交換する場所である肺胞が浮腫を起こして機能しなくなり、“肺水腫”となる病態を指します。そこで体外に導いた血液に、直接、酸素を送り込む人工肺のエクモを使うことになったのです』
このエクモ、国際的な運用指針では、人工呼吸器による治療で低酸素状態が治らず、死亡率が8割以上と想定された時に使用を決断するとされている。いわば人工呼吸のための“最終手段”といった代物だ」(新潮)
談志師匠と同じ病気である。師匠が「寂しいからお前も来いよ」と呼んでいるのではないか。だが、まだ勘三郎は57歳。早すぎるよ師匠、もう少し待っててください。そう祈らずにはいられない。
勘三郎は女性にモテることでも当代一流だった。
「“遊びは芸の肥やし”とよくいう梨園の世界だが、その中でも勘三郎のモテぶりは海老蔵を凌駕するとさえ言われる。過去に浮名を流した相手として、道ならぬ恋に悩み、泥酔の末、京都のホテルで自殺未遂騒動まで起こした宮沢りえがよく知られている」(同)
それ以外にも牧瀬里穂や米倉涼子などとも浮き名を流した。
事務所の社長がこう語る。
「急性呼吸不全を発症したのは、8月末です。一般に生存率が50~60%以下だと言うのもその通り。この病気には薬もない。でもね、肺以外はいたって健康なんです。だから本人も必死になって復帰を目指し、頑張っているのです。ご飯を自力で食べられることもあるんですよ」
新潮も勘三郎の回復を祈り、こう結んでいる。
「勘三郎本人は寝たり覚めたりで、意識清明と混濁状態を繰り返す日々とされる。万一を案じ、病院につめている家族・親族が見守る中、苦悶の病床で強い意志のもと、懸命に生きる勘三郎。本人はもちろん、家族や関係者は今も奇跡を信じているのである」
今週は解散・選挙がらみの記事が多かったが、こうしたものは新聞、テレビが連日報じているから、どうしても後追いにならざるを得ない。それならば、ほかの話題を読ませてもらいたいと思うのは、読者の身勝手だろうか。
(文=元木昌彦)
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雑誌休刊騒動でゴタつく、出版界の大物Kの足元 - Business Journal(11月16日)
K氏と聞けば、40代以上の人は、80年代の人気アイドルH.Yらの出演する映画や、ミステリー作家の大御所S.Y原作の映画などの鮮烈な記憶がよみがえるのではないだろうか。80年代、大手出版社Kの社長として、出版と映画で一世を風靡した同氏は、コカイン密輸で逮捕・起訴された。服役して出所後、出版社を立ち上げ、現在社長を務めている。しかし、相変わらず同社のゴタゴタぶりばかりが聞こえてくるという。 出版業界関係者によれば、同社が発行する「月刊R」編集部の正社員1人と試用期間中の社員3人に、突然クビが宣告された。理由は雑誌の休刊だ。休刊が決まった直接の原因は、社内ですでにOKが出ていた表紙を、編集長が無断で修正してしまったことだった。編集部員の多くが止めたにもかかわらず、編集長が独断で踏み切ったのだが、印刷後に知ったK氏の逆鱗に触れ、「部数減だけなら目をつむるが、勝手なことをするなら雑誌はやめだ」とすぐに休刊が決まったという。 試用期間中の3人は、6カ月の試用期間を終えて正社員になる寸前だったため、「編集にこだわらないので、どの部署でもいいから異動を」と会社に直訴したが、いずれも経験不足や年齢を理由に拒否された。3人は東京労働局に相談に行き、正社員の1人はすぐに転職を決断したため、戦線離脱した。 労働局から会社にすぐに忠告があったが、会社側は業績悪化を理由に解雇の撤回を拒んだ。しかし、その1週間後、会社は複数の求人サイトに雑誌「P」などの編集部員を募集していた。社員の解雇と新規の募集を同時に行っていたのだ。 労働局の勧めで、3人は労働審判の申し立てをすることにした。労働審判は、労働者と使用者の間の紛争を解決する簡易的な調停で、労働審判官1人と労働審判員2人が立ち会い、無料で原則3回以内の審理を行う。 1回目の話し合いに会社側から専務など役員3人が出席し、事実確認と争点や証拠の整理が行われた。会社側はあくまで3人が試用期間であったことを理由に、賠償金を支払うつもりはないと強弁していた。編集部と付き合いのあったライターは、「審判官たちはちょっとニヤニヤしていて、『話し合いの余地なんかないでしょ』という表情だったらしいです」と話す。 2回目の審判では、審判官全員一致で会社側に非があるという意見と調停案が示された。「解雇を撤回しなければ、賠償金の支払いを命令することになりますよ」と審判官が言っても、会社側は解雇の撤回を拒否。「おそらく、会社側は強気で押せば相手がくじけると思ったのでしょう。専務が『あいつら殺してやる』と日本刀を振り回していたと、社内の人から聞きました」(前出のライター) 3回目の審判で、審判官から賠償金の具体的な金額が提示された。3人分合わせて約1000万円。審判官は会社側に対し「これで合意できなければ裁判になります」と言ったが、それでもなお会社側は拒否し続けた。個人では裁判費用を捻出できないと、高をくくっていたに違いない。「月刊R」創刊パーティーは六本木で盛大に
行われたが…(「Thinkstock」より)
●K氏に内緒で専務が暴走
労働審判での和解は、裁判上の和解と同じ効力(強制執行が可能)が発生する。しかし、会社側が拒否する以上どうしようもないので、3人は知り合いの弁護士に相談した。弁護士は会社側に請求書を送るも、なしのつぶて状態。次に弁護士は、専務に対し、「K社長に手紙で直訴しますよ」と連絡した。その途端、専務は態度を軟化させた。解雇その他の決定すべては、社長であるK氏に内緒でやっていたようなのだ。 専務はさすがに観念したらしく、「800万円でどうですか」と金額を値切りにかかってきたという。「その200万円って何なんだよーって、3人は笑っていました」(前出ライター)。もちろん、解雇された3人がそんな値切り交渉に応じるはずもなく、最終的に労働審判で示された金額を勝ち取った。 「R」編集部と付き合いのあったカメラマンは、次のように話す。 「3人のうち1人は、荷物をまとめて会社を出る日にエレベーターでK氏に会ったそうで、K氏は『よう、元気?』と、いつものように声をかけてきたそうです。あの会社は、K信奉者たちが経営している会社で、気に入らない社員はクビにして、すぐに新しく採用するというのが常態化しているんですね。ちなみに、3人のうち一番若かった子は、実家に戻ったと聞いています。あとの2人についてはわかりません」●渡辺謙の病気も治した!?
「月刊R」立ち上げ当初、K氏の意気込みは並々ならぬものだったらしい。スタッフ全員を六本木の三ツ星中華料理店の個室に連れて行き、ミニパーティーを催した。 「K氏は1人で来るのかと思いきや、若い女の子を連れてきたそうです。その子は、K氏が極秘結婚していたことが明らかになった40歳年下のAです。K氏は彼女を歌手であると紹介し、Aはその場で1曲歌ったとか。また、誰も聞いていないのに、『彼女は情熱的な詩を書くんだ』と、彼女とのなれ初めをうれしそうに話していたということです」(前出のカメラマン) 料理は食べきれないほどの量が運ばれてきた。Aが「食べられな~い」と残すと、K氏は駐車場で待機していた自分の運転手を呼んで、「Aが残したものは食べていいから」と言ったという。 同カメラマンが続ける。 「K氏は、この宴会で『UFOとコンタクトが取れるおかげでパワーが備わり、渡辺謙の白血病を治してやった』とも話していました。また、同氏は軽井沢に自分をご神体とした神社を持っていて、毎週、事務所の幹部がその神社の掃除に行くそうです。でも、『月刊R』の編集長はそれを拒んだので、K信奉者の幹部連中から編集部自体がにらまれていたという話もあります。加えて、年末に社内で紅白歌合戦をやるのが恒例ですが、編集部は校了で忙しく、参加していませんでした」 4人の解雇騒動は、そうした行為に対する腹いせだったのだろうか…。 (文=編集部) ■おすすめ記事 カネでOBを買収し、合併を目論む巨大新聞社を阻む“事情” HIS澤田会長が激白!ハウステンボス再建の秘訣は“運” 出生前診断騒動が欠く“普通に生きる”ダウン症の人たちの実態 ディズニーは法律まで変える!?TPPでヤバい知財分野 「マンション売れ残りの裏で」リノベーション古民家が人気のワケ出版社の信用が完全崩壊! 太田出版が『完全自殺マニュアル』スラップ訴訟で返り討ちに

左が社会評論社の『完全自殺マニア』、右が太田出版の『完全自殺マニュアル』
太田出版といえば、サブカルチャー系の有名出版社。これまで、数々のパロディ本や著作権に関する書籍を出版しているこの会社が自社の本のパロディを許容せず「著作権侵害だ!」と裁判所に駆け込んだ挙げ句に、完敗する騒動が起こった。
争点となったのは、今年5月に社会評論社から出版された『完全自殺マニア』(著:相田くひを)。サブカル系編集者として名を轟かせる濱崎誉史朗氏が企画・編集したこの本の素晴らしさは以前、当サイトでも取り上げた通り(http://www.cyzo.com/2012/06/post_10880.html)。悪趣味とはいえ、よくできたパロディのはず。それを、よりにもよってパロディ本で儲けてきた出版社が訴えるという異常事態を追った。
■話し合いもなしに、突如内容証明がやってきた
『完全自殺マニア』に対して、太田出版から最初のアクションがあったのは、刊行間もない今年5月中旬のことだ。『完全自殺マニア』の著者・相田氏は、1999年に太田出版から『薬ミシュラン2』を出版した経歴がある。この時の担当編集者が、現・代表取締役社長の岡聡氏であった。相田氏は、岡氏から『薬ミシュラン』の続編を出そうという話を持ちかけられていたが、形にできないまま歳月が流れていた。そのことを申し訳ないと思っていた相田氏が、挨拶状をつけて『完全自殺マニア』を献本したのが事の始まりである。
担当編集の濱崎氏は、抗議の経緯を語る。
「送った翌日に、相田さん宛に太田出版から抗議文が届きました。さらに、その翌日には虎ノ門総合法律事務所(日本でも指折りの著作権に強い弁護士事務所である)から社会評論社宛に、不正競争防止法を根拠に絶版断裁を求める内容証明が届いたんです」
すわ一大事と思うところだが、濱崎氏はそのまま「放置していた」という。すると、1週間を過ぎた頃に、今度は絶版断裁を取り下げて「著作権法違反なので、カバーを取り替えるよう」要求する内容証明が届いたという。
「どうも、チーズ本対バター本事件の件を踏まえて、不正競争防止法だと勝てないと踏んだのではないか」
というのが、濱崎氏の読みだ。この2度目の内容証明にも濱崎氏は無視を決め込んだ。すると、10日後、今度は東京地裁から連絡がきた。太田出版が起こした頒布差し止め仮処分申立に対して、話を聞きたいというものだ。
「世間の太田出版に対するイメージとは真逆のことでしょう。仮にもサブカルチャーをやっている出版社が、いきなり国家権力に頼るなんて……」(濱崎氏)
■「思いつき」「レベルの低い編集」と主張する太田出版
こうして東京地裁を舞台に、双方は意見を戦わせることになった。当初、濱崎氏は「過激だけどパロディの範疇」と主張したが、太田出版側は認めなかった。さらに、太田出版の岡社長は、虎ノ門総合法律事務所経由で極めて攻撃的な「意見書」まで送付してきたのだ。
この中で岡社長は、差し止め請求を取った理由として「編集レベル、志が低すぎるということにつきます。これほど出版ということを軽く考えた事例に遭遇したことはありません」と主張。さらに「原稿を本にする段階で編集者の思いつきで世間的に認知度のある『完全自殺マニュアル』のデザインのみを模したというにすぎない」として「『完全自殺マニア』はパロディになっていない」というのだ。
この「意見書」は、後半になり、さらにヒートアップする。少々長くなるが引用してみよう。
「批評性などかけらもなく編集者の思いつきというレベルでデザインを模した『完全自殺マニア』をめぐる編集姿勢は、出版をなめているとしか思えません。自殺した人をも侮辱したものですし、ひいては『完全自殺マニア』の著者・相田くひを氏をもばかにした行為であると考えます。パロディというならば、もっと根性を据えて切り込むべきです。今回の最大の被害者は『完全自殺マニア』の著者自身かもしれません。相当の時間・労力をついやして書き上げたオリジナリティのある原稿を、編集者の『おふざけ』レベルで『完全自殺マニュアル』の亜流のようなものにされたのですから。このようなレベルの低い編集が何か冴えた思いつきであるかのような勘違いを見過ごすとこはできません」
この攻撃的な「意見書」からは、多くの疑問が湧いてくる。これまで、太田出版では多くのパロディ本を出版してきた。大森うたえもんの『ノルウェイの大森』、岩波文庫の装丁をパロディにしたブルボン小林の『ジュ・ゲーム・モア・ノン・プリュ』、そして、前述の『薬ミシュラン』はタイトルからして、ガイドブック『ミシュランガイド』のパロディであるし、装丁はアメリカでベストセラーになったHarold M. Silvermanの『The Pill Book』のパロディである。そうしたパロディを多用しておきながら、自社の出版物に対しては「批評性などかけらもなく」と断罪し、あまつさえ国家権力の手を借りて封じようとするやり方には、疑問を感じざるを得ない。濱崎氏によれば「『完全自殺マニュアル』の著者・鶴見済氏やデザイナーからは、なんのリアクションもない」という。
■軽重を判断するのは、読者の手に委ねられる
これに最も強く反論したのが、岡社長からは、ばかにされているとまで書かれた、当の『完全自殺マニア』著者の相田氏だ。相田氏は、さっそく岡社長の意見書をパロディにした陳述書を作成した。この中で、相田氏は語る。
「なぜ、今回に限り太田出版がそのような処置をとったか、端的に言うと、拙著の編集レベル、志が低すぎるということだそうですが、本書の企画は、13年前から太田出版をはじめ知遇を得た出版社複数に打診しましたが、全部、『完全自殺マニュアル』の社会的影響度の大きさからか、臆して断られてきました。チュニジア育ちの、日本の空気をあえて読まない変な編集者濱崎誉史朗氏と松田健二社長が根性を据えて決断した上で生まれた本であり、決して出版ということを軽く考えたものではありませんが、軽重を判断するのは読者であると著者は思います」
「単なるデザインのパロディにしかすぎない『完全自殺マニア』の表紙カバーを、批評性がない、『完全自殺防止マニュアル』(注:岡社長の意見書で批評性がある事例として記されている、ぶんか社のパロディ本)のように批評性のある内容にしろというのは、ちょっと無茶に思います」
「レベルの高い出版社の代表取締役が何か冴えた思いつきで、あの本は志が低い、根性がない、レベルが低い、だから裁判で差し止めすることを著者として見過ごすことはできません」
この陳述書に加えて、濱崎氏が「パロディを拡張する裁判にしたい」と宣言した経緯もあり、東京地裁はすぐに結論を出すことを避けて合議制に移行。いよいよ、本格的に論戦かと思いきや、太田出版側は相田氏の陳述書の提出後に弁護士任せにして、関係者は裁判に出廷しなくなったという。
そして、東京地裁の出した結論は、太田出版の訴えを認めないというものであった。
追記:
決定文が非常に長大なので、抜粋すると判断に齟齬が生じるとの指摘があったので掲載しません。社会評論社がサイトで全文を掲載予定。
■「言論・表現の自由」は口だけだったのが露呈
今回の事態で、太田出版は単に差し止め請求を却下されただけではない、大きなダメージを負った。
『完全自殺マニュアル』は全国的に賛否両論を生んだ問題作で、現在でも太田出版を代表する著作といえる。その思い入れがある本を「安易にパクられた」と憤る気持ちは、わからなくもない(しかも、自分の会社で本を出している著者が関わっていることも含めて)。
とはいえ、話し合いの席も持たずに、いきなり抗議文、そして東京地裁へ訴え出るという太田出版側のやり方には、疑問を持たざるを得ない。太田出版は、2010年の東京都青少年健全育成条例改定問題の際には、積極的に反対の声を上げた出版社である。しかし、「パロディになっていない」という私的な意見を、いきなり国家権力の手を借りて叩き潰そうとする今回のやり方は、まさにスラップ訴訟と呼ぶにふさわしいもの。同社の「言論・表現の自由」への態度は、この程度のものだったのかと疑問を抱かざるを得ない(サブカルチャー関連の文筆を糧にしてきた人々にとっては、これは「ルビコン川」かも)。この点で、太田出版という看板の信用は地に墜ちたといえる。著作権に関する書籍も数多く出版しているだけに、今後出版する著作権関連本では、この件をどのように記述するのか、気になるところだ。
なお、太田出版にコメントを求めたところ「弁護士と相談中のため、今のところはコメントすることはありません」との回答だった。
(取材・文=昼間たかし)
グラビアはどうでもいいけど、物の値段の変化にゾクゾクする!「GORO」1984年9月27日号

『GORO』1984年8月27日号(小学館)
本棚を探っていて、「なんでこの号を買ったんだろうか?」と記憶をたどってみて思い出した。戸川純のセクシーショットグラビアが掲載されているからだった。大学生の頃から遅れてきた世代だったことを思い出すと、胸が痛くなるよ……(なお、この号にはデビューしたばかりの故・戸川京子も掲載されておりマス)。
こうした雑誌を書店やヤフオクで買い集めようとすると、ネックになるのはグラビアページである。この号もグラビアの希少性ゆえに、えらい値段がした記憶がある。だが、いまや貴重なのは、グラビアよりもさまざまな広告とモノクロ記事にほかならない。
まずページをめくっていくと飛び込んでくるのは、パイオニアのCDコンポの広告である。時代的に、ミニコンポと呼ばれるジャンルが流行し始めた頃だが、パイオニアが売り出していたのが。ここに掲載されている「プライベート」シリーズであった。当時のミニコンポは、CDプレイヤー、ダブルカセットデッキ、チューナー、レコードプレイヤーなど、必要なものを予算と相談して購入する構成である。組み合わせの参考例として掲載されているのはアンプとプログラムチューナー、ダブルカセットデッキ、スピーカーシステムの組み合わせ。これでしめて22万9800円である。高い! 高いのだけれど、これだとCDデッキが付属していない。なので、その値段はというと、8万9000円である。さらに、当時誰もが大量に持っていたであろうレコードも再生できるようにしようとすれば、プラスで3万8000円となる。

今見ると、一周回ってデザインがカッコイイ!
この後、90年代は金色の製品が流行したの覚えている人はいるかな?
(画像をクリックすると拡大されます)
CDデッキだけで、パソコンがモニタ付属で購入できる値段である。というか、フルセットと同じカネを出せば、アップルストアでMacBook Airをフルカスタマイズで購入して、iPhoneとかiPadまで買ってもお釣りがくるではないか。物って安くなったんだな……と感じるよりほかない。
何より注目したいのは、この広告ページの文章である。引用してみよう。
1肩をよせながら、コンパクトディスクプレーヤーを
2手をにぎりながら、ダブルカセットデッキを
3好きだとささやきながら、プログラムチューナーを
4抱きしめながら、フルオートプレーヤーを
5キスしながら、プリメインアンプのボリウムを
……手元の集中ワイヤレスリモコンでできるというのが、ウリなのである。ここで気づかされるのは、まず音楽はカップルで聞くものという概念である。最近、大学生とかに話を聞いてみると、まず家にCDコンポがないのは当たり前。CDはパソコンで再生するもの、音楽はパソコンか携帯プレイヤーで聞くものになっている。“女のコを部屋まで連れ込めたら、まずは音楽スタート!”が、すでに過去のセオリーになってしまっているのだ。最近の若いカップルって、部屋に連れ込めたら、何から始めるのがセオリーなんだろうか……。

やっぱり、女子大=ナンパスポットという感覚こそが80年代の象徴だ。
「隔世の感」を感じる機械は、ページをめくるたびにある。バブル崩壊まで、男のステータスのひとつは車だったわけだが、物欲と性欲に満ちた雑誌だけあって、そのあたりの情報もちゃんと押さえている(やたらと、車の広告も満載だ)。
モノクロのトップ記事は「スクープNEWソアラ3.0GTエクスタシー・フォルムが見えてきた」というタイトルなのだが、リードの部分を引用してみよう。
<トヨタ3 M頂上作戦>がついに公然化した。それは『トヨタ・ツインカム神話/新世紀編』と題すべき、壮大な叙事詩のプロローグ。
3Mツインカム6=6M-GEU型のデビューに大げさに驚いているのではない。むしろ逆だ。6M型が“ツインカム6”であって、“ツインカム24”ではなかったこと。ソアラより先にクラウンに展開された事実に当惑したほどだ。

若者の車離れ……って言われるけれど、この時代のほうが
異常じゃないかと納得するページ。
……車の知識がない筆者には、何が書いてあるのかさっぱりわからない。車に詳しい人ならば「ああ、なるほど」という記述なのかもしれないけれど、これは専門誌じゃないのに。これだけで、車が若者の共通言語だったのだなと一目瞭然だ。この記事は「なぜ6M搭載1号車がソアラでなくなったか」といった解説が続くのだけれど、やっぱり何が書いてあるのか、よくわからん。もはや、一種の古文書になっているといっても過言ではない。
さらにページをめくるたびに趣味趣向の変化を、いくらでもうかがい知ることができる。この号には「総力追求/GIANTS再建プラン」という記事も掲載されているが、プロ野球巨人軍の凋落を検証する記事なんて、今ではあまり訴求力がないのではなかろうか。

とりあえず、かわいいモデルを配置しておきゃあいい感覚がうらやましい。
さらに「隔世の感」を感じさせるのは「電話はボクらのいちばん身近なアクティブメディア」と題された記事である。携帯電話がまったく普及していない時代なので、当然紹介されるのはちょっとオシャレな家庭用電話機なのだが、その中で最先端の商品として紹介されているのがパソコン用のヘッドセット。価格は1万円也。おまけに、音響カプラ不要でデーター通信できる機能を備えた電話機が3万円……やはり、物って安くなったんだなあと、しみじみ。

今と書いていることが、そんなに変わらない。
ただ、この後のバブル期はアウトドアは敬遠されます
時代と共に、趣味趣向というものはまったく変化してしまうもの。かと思いきや、ページをめくっているうちに、そうじゃないものもあることを知れる。それは、小学館が現在も発行しているアウトドア雑誌「BE-PAL」の自社広告である。「BE-PAL」の創刊は1981年だが、この広告を見る限り、現在と扱っている内容がそうそう変わっていないように思える。アウトドアで訴求力のある内容は、常にウェアや道具、そして「どこに出かけて、何を楽しむか」という問題。「GORO」のような、若者が知りたい情報がすべて網羅されている軟派な雑誌が姿を消す一方で、アウトドア雑誌が30年近くも続くことになるなんて、いったい誰が予測できただろうか。
(文=昼間 たかし 文中敬称略)
■「100人にしかわからない本千冊」バックナンバー
【第10回】ロリコンはやっぱり永遠にロリコンだった……のか?『改訂版 ロリコン大全集』
【第9回】ホントに一生恨んでいるのか? 『吾妻ひでおに花束を』
【第8回】あっと驚くパロディ満載!「パロディ・マンガ大全集」
【第7回】“落としやすい”女のコがいる大学は……?「平凡パンチ」1980年6月9日号
【第6回】物欲と性欲、自己肯定感に満ちた30年前の大学生活「POPEYE」
【第5回】1991年、ボクらはこんなエロマンガを読んでいた「美少女漫画大百科」
【第4回】そして『孤独のグルメ』だけが残った......月刊「PANjA」とB級グルメの栄枯盛衰
【第3回】「いけないCOMIC」1985年1月号大特集 戸川純にただ単にミーハーしたいっ!
【第2回】あの頃、俺たちはこんな本でモテようとしていた『東京生活Qどうする?』
【第1回】超豪華"B級"文化人がロリコンで釣ってやりたい放題『ヘイ!バディー』終刊号
あの異色ブロガーが、“しょっぱい”出版ビジネスの闇に挑む
サイゾー新ニュースサイト「Business Journal」の中から、ユーザーの反響の大きかった記事をピックアップしてお届けしちゃいます!
■「Business Journal」人気記事(一部抜粋)
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あの異色ブロガーが、“しょっぱい”出版ビジネスの闇に挑む - Business Journal(11月13日)
自身のブログは総アクセス2200万PVをたたき出し、はてなブログのブックマークでは常に上位をキープ。2010年度アルファブロガー・アワードも受賞している、クレイジーワークス代表取締役総裁の村上福之氏が、10月、著書『ソーシャルもうええねん』(Nanaブックス)を出版した。 「ソーシャル蟻地獄に落ち込まない思考術」 をテーマとする本書は、発売前からAmazonビジネス書部門ランキングで2位となり、取次から「もっと刷って」と依頼が来るなど、異例の売れ行きとなっている。 その裏には、著者自身が、徹底して出版ビジネスの仕組みを研究し、出版業界関係者への取材を行うなど、「本が売れる」ための妥協なき取り組みがあった……。 そんな村上氏に、今回、本書のエッセンスに加えて、 「出版という“しょっぱい”ビジネス」 「『本を売る』にはどうすればよいのか?」 「エンジニアの生き方」 などについて語ってもらった。 ーー村上さんといえば、敏腕プログラマー/エンジニアとしてだけでなく、2010年度アルファブロガー・アワードを受賞するなどネット界でも著名であるにもかかわらず、今回の本が初めての著書だとか。少し意外でした。 村上福之氏(以下、村上) そうですか? 僕なんて、そんな大したヤツじゃないですから。まあ、ようやく本が出せたのは、素直にうれしいですけどね。 正直、これまでも本の依頼は何件か頂戴していました。ただ、「機会があれば、出しませんか?」という軽い社交辞令レベルの打診ばかりで、きちんと企画をまとめてオファーしてくださったのは、今回のNanaブックスさんが初めて。あと、これまでの依頼は「技術本を書いてほしい」というものばかりで、ブログ本を提案してくれたのもNanaブックスさんだけなんです。書き下ろしは面倒くさいな、という気持ちもあったので「これまで書いてきたブログをベースにまとめていきましょう」という提案は、ありがたかったです。 とはいえ、結局はずいぶん加筆修正もしたので、書き下ろしに近い内容になりました。それなりに大変だったので、途中「もうイヤ」「書けない」「執筆に飽きた」とフェイスブック経由で編集担当に泣き言ばかり送って、ずいぶん困らせたと思います。 ーーご苦労のかいあって、出足好調ですね。 村上 ありがとうございます。おかげさまで発売前に三刷となりました。取次が「もっと刷って」と取扱数を上乗せしてきた時はビックリしましたよ。発売前にAmazonのビジネス書ランキングで2位になったことも大きかったです。 ーー執筆や刊行に際して、ご自身でもビジネス書界隈の事情について、ずいぶん研究されたそうですね。刊行が近づくにつれて、ツイッターやフェイスブックで「出版ビジネスの闇が見えてきたな」「自分の文章なんてクソだと思ってる」など、ネガティブな発言、自虐的な発言が増えていきました。 村上 せっかく本を出すのだから、どうせなら少しでも多くの人に読んでほしいし、出版ビジネス、特にビジネス書のビジネスについて少しでも理解を深めたい……という思いがありました。いやーでも、調べれば調べるほど妙な世界ですね、ビジネス書って。 ーーそういった本音も含め、不安や葛藤を包み隠さずソーシャルメディア上で吐露していたのが印象的でした。 村上 まあ、それは僕が技術者だからでしょうね。技術者って、すべてのネガティブな可能性を予測して、ひとつひとつ潰していかないと満足しないというか、安心しない生き物なんですよ。なかなか楽観視はしない。というか、すべてのネガティブ要素を想定できるのが優秀なエンジニアだと思うので。 そのおかげで、エンジニアは慢性的にネガティブだからとかく精神を病んだりするし、優秀なエンジニアほど、どこかブッ壊れた変わり者だったりするワケです。ただ、プロジェクトの中で、いちばんネガティブじゃないと良いプログラマーにはなれないのも事実。あのビル・ゲイツだって「明日、会社潰れるかも。どうしよう……」って毎日考えている、という話だし。いやいや、アナタ世界一の富豪じゃんって。経営者でエンジニアなんて人は、ホントに毎日「会社が倒れるかも」と本気で考えて、どこか頭がおかしくなっているもの(笑)。そういう意味では、経営者には文系が向いているんでしょうね。 「とりあえずキラキラ女子を集めて、取引先を呼んで騒げばなんとかなるだろ、ワッハッハー」 「ここでわざと麻雀に負けておけば仕事は取れるだろ、ワッハッハー」 みたいに考えられるから。 で、本の話に戻すと、やっぱり自著についてもネガティブに捉えていたから、どうやればネガティブ要素を潰せるかを考えました。そこでトライ・アンド・エラーを重ねるのは時間もかかるし面倒くさいから、とにかく既存事例──他の版元や著者のやり方を徹底的にパクろうかなと。そういう発想で、ビジネス書の実情を調べ始めたんです。『ソーシャルもうええねん』
(Nanaブックス/村上福之)
●版元への不満をSNSで吐露
ーー版元であるNanaブックスにも、SNSでかなりあけすけに不満を述べたりしていましたよね。 村上 誤解を解いておくと、いまは版元さんと、とてもいい関係ですよ。ただ、途中では「死ねっ!」と思ったりしたこともあったりなかったり……。 Nanaブックスの販売事例をいろいろ伺っていると、ある本の返本率がありえない数字をたたき出していた。そこで、悩みに悩んで、「参考になる他社事例は積極的にパクろう。僕もいろいろ調べますから、そちらでもリサーチしてください」と協力をお願いしたんです。 ただ、出版ってホンマに儲からないビジネスなんだなと、調べるほどに痛感しましたよ。なんてショッボいビジネスなんだろう、と。なんとなく活気がありそうな印象のビジネス書界隈にしても、そんなに旨味のないジャンルであることが見えてきた。初版数千部だけで大して書店でも動かず、返本でごっそり倉庫に返ってくるなんて本も多いそうだしね。 ーー具体的に、どういった形でリサーチを進められたのですか? 村上 いわゆる出版大手からビジネス系に強いところまで、版元の人間に徹底してぶっちゃけトークを聞いて回ったんです。過去に原稿を書いたことがあるとか、取材を受けたことがあるとか、知り合いのツテを頼ったり、Twitterで聞いて回ったりとか、そういうところから。 例えば、 「取次からの支払いって、版元には何カ月後から入ってくるの?」 「取次への営業って、どうなってる?」 「配本計画って、ちゃんと作って取次に出してる?」 「この本、けっこう売れたみたいだけど、実売ってどのくらい?」 「本の帯に芸能人とか著名人がコメント出しているけど、この謝礼はどのくらい払った?」 「この本の広告費はいくら?」 「御社の発行部数や売上に対する広告費の割合って、何%くらいなの?」 ……などなど、とにかく気になることはなんでも、しつこいくらいに聞いて回った。 で、売れている本はこういう数字の内訳で、こういうカラクリや仕掛けなのか、ということがだんだん見えてきた。そこからできることをコピーしよう、ということで進めていきました。 それにしても、売るのがうまい版元ってホントにあるんだな、と感じましたね。「某ときめいちゃう片付け本」みたいな版元なら、それこそ白紙でも本が売れるんじゃなかろうかと。それくらい「売る」ことを意識している。ぶっちゃけ、とりあえずそれっぽい表紙を付けて、とりあえず文字で埋めて、電車広告をバンバン出して、『金スマ』みたいなテレビ番組に著者を出せば、どんな本でも売れるんじゃない? くらいに思いました。 売れている本は、そうやってちゃんと仕掛けているから売れている。でも、僕の本なんて、どう考えても3万部くらい売れたら御の字だろうと思うから。ビジネス書のビジネスって、そういうモンだと理解したんですよ。けっこうしょっぱい商売。実際、本なんか書いても、そうは儲からないですよ。それをとっかかりに名前を売って自分の本業にお客を引っ張ってきたり、講演やらセミナーやらで派生ビジネス展開しようとするビジネス書作家が多いのは、よくわかります。 この2カ月くらいで、出版ビジネスについてはずいぶん詳しくなりました。ワケもわからず、取次への営業に「僕も連れてけ!」と無理を言って、いざ出向いてみたら「えっ、著者が来たの? わざわざ連れてこないでよ」なんていやみを言われたこともある(苦笑)。制作を進めているときは、版元や編集担当に対して怒っていることも多かったけど、いま振り返ってみれば面白かったですよ。まあ、これを3回、4回と繰り返すとなると、僕は絶対に飽きるだろうなとも思いましたけどね。 それもこれも、結果的にはNanaブックスさんだからこそできたことだと、とても感謝しているんです。僕みたいな面倒くさい著者に、文句も言わんとちゃんと付き合ってくれたから。小さな版元だからこその小回りの良さもあったし、刊行数が大手みたいに多くないから、一冊に集中してもらえたのもよかった。……って、まだ終わってないですけどね。これから本を売っていかなきゃいけないし。●著者は書店営業に同行
ーー刊行直後から書店営業に何軒も同行したり、手書きPOPを書いたりされてますよね。大量に平積みされている書店も多いです。 村上 できることはなんでもしないと。書店へのあいさつ回りくらい、いくらでもやります。全国行脚してもいい、くらいの気持ちです。勝間和代さんの「書く努力の5倍、売る努力をする」じゃないけど、まあ、それくらいの努力は辞さない覚悟ですよ。 基本、僕はネットの人間なので、できることってネットの中のことが多いんです。それだけじゃダメで、これからはもっと、リアルで売っていく施策を考えなきゃいけない。この本の中に書いてあることって、ネットのコアユーザーとか、ネットでビジネスをしているような人間なら、普通に知っているような事柄が多い。だからこそ、もっと普通の人に読んでほしいんです。 ーー本の内容に目を移すと、ネット界隈、SNS界隈のぶっちゃけトークだけでなく、ジワジワと胸に迫ってくる話、真摯な気持ちになれるエピソードなどがちりばめられていて、グッときました。 村上 えっ、そうですか!? なんかすみません、こんなテキトーなヤツが書いたものなのに。 ーー例えば、会社を登記する際、空欄や記入ミスの多い申請書類を前に、法務局のおっちゃんが懇切丁寧に教えてくれた……のくだり。「これからもな、わからんかったら、人に聞いたらええんや。誰でもなんでも最初から、うまいこといくもんちゃうんやで。人生、勉強やで」というセリフがジワジワ染みました。 村上 1時間半もかけて、丁寧に付き合ったくれたええおっちゃんでしたけど、要するにヒマだったんでしょうね(笑)。 本の中にも書きましたけど、僕はホンマにアホなんで、とりあえずやってみて、わからなかったら人に聞く、てなことを繰り返してきただけなんですよ。 ーー村上さんの飾らない、正直な人柄は、本書の行間からも滲んできます。経歴だけを見ると、もっとカマすようなところがあってもおかしくない気がします。 村上 調子こいてカマしたりするの、大嫌いなんですよ。あと、僕は大手家電メーカーから社会人生活をスタートさせたので、そこでの経験が影響していると思う。大企業は、ひとつのプロジェクトに関わる人間が多いから、下手なことを言うと後でとんでもないことになるんです。たとえば開発の人間が「この商品、すごいぜ。こんな感じで高性能だぜ。世界一だ」なんて言ってしまうと、「そうか、そんなにスゴイのか。よっしゃ!」と宣伝やら営業の人間がワーッと動きだして、ポスターやパンフレットの制作、PR企画やキャンペーン企画などがどんどん立ち上がってしまう。 そんな状況でもし「あ、検証してみたらこんな不具合が発生したので、次期モデルでの実装は見送ります」なんて開発の人間が言いだしたりでもしたら、それこそみんなズッコケて大騒ぎになる。だから、まずは話半分くらいで様子を見るような感覚が身に付いてしまったかもしれませんね。大手企業のエンジニアとか、本当に慎重なタイプが多いですよ。臆面もなくカマせるような人って、大きな仕事に携わった経験がないのかもしれません。 そういう姿勢を大企業病的に揶揄したりする向きもあるかもしれないけど、一方では仕事に対する誠実さにもつながっている側面があるんですよね。ていうか、日本の大手企業は、基本的にはすごく誠実だと思いますよ。現場の人間は特にね。上のほうは、どうしても狡猾さとか腹黒さも必要悪として求められるところがあるから。 問題を起こしたくないから、起こっても最小限にとどめたいから、リスクヘッジのために控えめに捉えて、あまり大口をたたかず、謙虚に立ち振る舞う必要がある……と言ってしまえばそれまでだけど、そういう誠実さって、丁寧さや責任感を醸成するもの。 そもそも僕の場合、カマしたりせず、真面目に仕事をして、真面目に生きることって、元も子もない言い方をしてしまえば、そうするのがいちばん面倒くさくないからなんです。まあ、動機はどうあれ、できないことはできない。わからないことはわからない、と正直に言える姿勢はとても重要だと思う。ウソはつかない。正直にやる。そういうのって、大事ですよ。吹いたり、カマしてばかりで実態が伴わないと、最後は信用を失いますから。「僕はアホです。わからないんで教えてください」と言っているくらいでちょうどいい。●大企業or中小企業
ーー本書では「超大企業と未上場ベンチャーの違い」という一節があり、できること/できないこと、メリット/デメリットが対比されています。 村上 僕は別に「大企業がいい」「いやいや、中小企業がいい」とどちらかに肩入れするつもりはなくて、どちらにも良いトコ、悪いトコがあるよね、と言いたいだけ。大企業がいいか、小さなベンチャー企業がいいかなんて、人によりけりだから。欲をいえば、どちらも経験しておくといいかも、とは思う。どちらにせよ、軽々しくウソをつくクセ、ハッタリをカマすクセをつけず、法律を守って仕事をする意識を持つことが重要だったりしますよね。 ーー村上さんのお話を伺って、一見、はちゃめちゃなようで、実は非常に折目正しい印象を強くしたのですが、ご自身で考える自分の強み、自分のこだわりとは? 村上 そうだなぁ……「最終的には、お客さんのことをいちばんに考える」ところかな。働くのは、世のため人のためだと考えているので。自分の書いたプログラムを使ってくれるお客さん、末端のユーザーさんのことは、最後の最後にちゃんと考えて、ハズさないように作るとか、そういう意識はとても強いですね。 でも、そんなに難しいことじゃないですよ。たとえばプログラムなら、自分の書いたプログラムとお客さんの求めることをつなげるときに、そんなに凝ったことは必要ない。プログラムなんて俳句みたいなもので、無駄なものをそぎ落としていくと、非常にシンプル。それこそ「五・七・五」ですべて語れるくらいのことで。これは、僕がプログラマーだからというだけじゃなくて、どんな仕事にも通底するように思います。 とかくプログラマーは技術そのものが大好きで、面白いから、そこにハマってしまって、お客さんのことを考えられなくなってしまうんですよ。僕も若いときはそうだった。「ここのアルゴリズム、すごいんですよ。なんと………47行! 短いでしょ」「これまで7秒かかっていたローディングが、なんと………5秒になりました!」とか自慢するような。でも、それってお客さんにとってどれくらい大事なの、と。●技術は生身の人間が使う
ーー最も重要なのは、相手は温かみのある、生身の人間であることを忘れない、ということでしょうか。 村上 そうですね。僕は若いとき、家電メーカーにいたわけですが、たまにサービスセンターとかお客様相談センターから声が回ってくるんですよ。「動かない」「使いづらい」とか、ありがたいご指摘がいろいろ(苦笑)。若いころは本当に技術ばかり追い求めていたところがあったけど、そういう声を聞くと「ああ、自分の作った技術は、生身の人間であるお客様が使っているんだな」という至極当たり前のことに、あらためて気付かされたりするんですよね。 ネット企業でも同じで、ややもすると、お客様をメールやアクセスカウンター、アクセスログでしか把握していないような一面がある。でも、使っているのは生身の人間ですから。そういうことをリアルな感覚として意識できるかどうかは、どんな仕事でも大事でしょう。 あと、最初の会社を辞めて、人生に疲れて、しばらくオーストラリアでプラプラしていた時期があるんですが、それまでデジカメの開発に関わったりしても、自分でパチパチ撮ったりすることがなかった。友達も少ないし、外に遊びにもいかないし。 そんな男が、人生で初めて長期の海外滞在をして、観光地とかでいろいろな人が、自分が開発に関わったデジカメを使って家族や友達と楽しそうに写真を撮っているところを、初めて目の当たりにしたんです。「こんなクソ会社、辞めてやるわー」なんて勢いづいていたけど、自分が携わったカメラを大事に抱えて、家族で旅行に行って楽しく写真を撮っている人たちがいて、そのカメラで撮った写真は家族の思い出になっていき、家族のアルバムの一枚に加えられ、結婚式のスライドに使われて、そして、「おばあちゃんって、若い時きれいだったんだね」と孫に言われる……なんて物語を意識したら、あらためて、自分のしてきたことって何だったのだろう、と考え込んでしまったんですよ。 自分がプログラムしたSDカードのドライバで書き込んだデータが、この人たちの人生を刻んでいくんだな、なんて思ったら、なんだか泣けてきて。「47行です、5秒です」という世界もあるんだけど、基本的に技術というのは世のため人のためにあるんだな、と。そのときに痛感したんです。 そんな経験が、自分で何かモノを作るのであれば、人を喜ばせてナンボだな、という考え方の源になっている。文章を書く場合でも、どこかにそういった思いを抱いて筆を進めているように感じます。 話を戻せば、そもそも僕は大したエンジニアでもブロガーでもないので。技術だけですべてを語れるほど、僕は頭がよくない。あーでもないこーでもないと悩んだり迷ったりしているところをさらして、「アホやなぁ」と突っ込んでもらえているくらいでちょうどいいんですよ。 (構成=漆原直行) ■おすすめ記事 防衛省情報本部員も多数参加?のSNS秘密会は入会カンタン!? 何もせずに高額料金をふんだくる!? 詐欺SEO業者の手口 「原因は粉飾決算」テレビショッピングの日本直販の倒産 逃げ場無し!? 社員専用SNS普及の兆し これだけ読めばわかる!大統領オバマの“生まれ方”やっぱり老害? 読売を私物化するナベツネの違法行為告発で、読売帝国崩壊か

「週刊文春」11月15日号 中吊り広告より
グランプリ
「ナベツネの違法行為を暴露する読売現秘書部長『爆弾日記』公開!」(「週刊文春」11月15日号)
第2位
「橋下維新への『絶縁状』」(「週刊文春」11月15日号)
第3位
「東京都知事選 私が支持する候補 落ちてほしい候補」ほか2本(「週刊現代」11月24日号)
人間社会同様、ライバルに勝てず常にナンバー2にしかなれない馬がいる。1963年にメイズイが優勝した皐月賞、日本ダービーの2着馬だったグレートヨルカ。1964年のシンザンが勝った日本ダービー、菊花賞の2着馬ウメノチカラ。
今年の牝馬3冠馬・ジェンティルドンナの2着だったヴィルシーナもそうだった。
だからこそ、ジェンティルの出ない第37回エリザベス女王杯(G1・芝2200メートル、京都競馬場、重)は、この馬に勝たせてやりたいという判官贔屓もあって、断然の1番人気になった。だが、無情にも激しく降る雨に行き脚が鈍り、4コーナー手前から内田騎手は追い通しで直線に向いたが、持ち前の鋭い差し足は見られない。それでもゴールまで100メートルぐらいのところで先頭に立ったが、重得意の7番人気レインボーダリア(柴田善)に外から差され、首差の2着に敗れてしまった。
チャンネルを変えて、石川遼が2年ぶりに勝ったゴルフを見た。3打差で楽勝かと思われたが、最後は1打差まで詰め寄られ、かろうじて凌ぎきった。インタビューで「優勝することを忘れてしまった」と石川は涙ぐんだ。ヴィルシーナもゴールを過ぎて、おのが不運を嘆き、心で泣いていたのかもしれない。
寺山修司は「競馬が人生に似ているのではなく、人生が競馬に似ているのだ」と言った。人生という舞台で2番手にさえなれなかった私は、ヴィルシーナが晴れの舞台で先頭ゴールする姿を見てみたい、引退するまでこの馬を買い続けよう、そう思っている。
さて、こちらは予想通りだが、政治資金規正法違反の罪で強制起訴された「国民の生活が第一」代表・小沢一郎被告(70)の控訴審判決が今日(11月12日)あり、「東京高裁小川正持裁判長は、小沢氏を無罪とした一審・東京地裁判決を支持し、検察官役の指定弁護士による控訴を棄却した」(asahi.comより)
これで、事実上無罪が確定したと見ていいだろう。ポストが書いているように「『無罪判決』で始まる 小沢一郎の逆襲」とはならないと思うが、年内総選挙もささやかれだした中、彼の動きも注目である。
総選挙も気になるが、都民としては「ポスト石原がどうなるのか」に関心がある。石原が後継指名した猪瀬直樹副知事に松沢成文前神奈川県知事、宇都宮健児日本弁護士連合会前会長も出馬表明し、舛添要一参議院議員も出馬の構えだし、東国原英夫前宮崎県知事もギリギリで出るのではないかといわれている。
帯に短し襷に長しで本命不在だが、争点は長きにわたった石原都政を評価するのかどうかということになろう。現代は、舛添インタビューも含めて時機を得た特集を組んでいる。
石原が辞任した直後に自民党東京都連が電話で3,000人の緊急調査をした。猪瀬副知事がダントツトップで約50%の支持を得て、2位の東国原前宮崎県知事が約10%、次いでキャスターの安藤優子、小池百合子元環境相だったと全国紙の政治部記者が語っている。
現代は、各界50人の著名人に「誰が都知事にふさわしいか」をアンケートした。
最も支持を集めたのは、やはり猪瀬副知事で14票。2位には舛添参議院議員と宇都宮日本弁護士連合会前会長が7票、東国原前宮崎県知事は1票しかなかったという。猪瀬副知事の支持理由は、実務経験、行政への理解度、問題意識の高さだそうである。注目は、石原都政を評価したのは16人で、6割近くが批判的で、その人たちは宇都宮を支持しているという点だ。
自民党は猪瀬支持でいきたいそうだが、自民党都連との仲の悪さがどうなるのか、予断を許さないそうである。
石原と一橋大学から60年の付き合いだという高橋宏首都大学東京理事長と鈴木哲夫日本BS放送報道局長との対談のタイトルは、「石原慎太郎はタダのアホか それとも天才なのか」。
だが、親友である高橋が悪口を言うわけはなく、わずかにこの発言が気になるだけである。
「高橋 私は国政で新しい風を吹かせるには、最低でも国会議員30人くらいの勢力がないと無理だと考えています。石原は100人規模で人を集めてみせるなんて言っているけど、寝ぼけるんじゃないと言いたいね。30人どころか10人だって集まるかどうか」
高橋は「今回のようにバカみたいなことで晩節を汚してほしくない」とも言っている。石原人気が盛り上がらなくては、そのご威光をたっぷり浴びて知事になろうとしている猪瀬副知事にも逆風になりかねない。
以前から都知事を狙っている舛添参議院議員のインタビューは、批判が当を射ている。
「石原都政というのは、一言で言えば、常に仮想敵を作り、『敵と戦う正義の味方』の面をする典型的なポピュリズム政治でした。例えば、銀行を敵にして外形標準課税を導入し、分が悪くなると新銀行東京を創設しました。ところが1500億円もの損失を出しても、まったく責任を取ろうとしない。私が厚労相を務めていた時代には、都の社会保障を『税金の無駄遣い』と一刀両断して大幅カットし、社会保障の現場を大混乱に陥れた。私は個人的にも母親を介護した経験がありますが、単純な利害得失で図れないのが社会保障というものです。それなのに石原都知事は、弱者の視点に立つということができない政治家でした。そして最後は『悪の中国』という世論を喚起し、都の経済をメチャクチャにした。それにまんまと煽られた野田政権も問題ですが、問題の発端は石原前都知事です」
またこうも語っている。
「公職選挙法の規定によれば、都知事が任期途中で辞任した場合、50日以内に新たな都知事を選出することになっています。ところがこの規定は、病気や不慮の事故など、緊急事態を想定したもので、石原氏のような無責任な知事のためにある規定ではありません。そのため、非常に中途半端な都知事選にならざるを得ません。本来なら、石原都知事の任期は2015年4月までなので、次の都知事を目す候補者たちは、少なくもその半年から1年くらい前から、様々な立場の人の意見に耳を傾けながら、じっくりと自己の政策マニフエストを練り込んでいきます。ところがたった50日間では、落選中の政治家くらいしか手を挙げられません。都知事を目指しているような人たちは皆、それぞれの道で要職に就いているからです。これは、このような中途半端な形で都知事を選ばざるを得ない有権者に対しても、大変失礼な事です。こうした無責任さが露呈したため、都知事を辞任した石原氏は『新党を創る』と意気軒昂ですが、すっかり空回りしています。永田町では、石原氏に対する冷めたムードが充満して、誰かの名言ではありませんが、『晩節を汚した暴走老人』扱いです」
今週の選にはもれたが、週刊新潮が石原と元銀座のクラブの女性との間に隠し子がいて、現在30歳になると報じている。この話、フライデー(1996年3月1日号)でも報じられているように、有名な話ではある。
付き合ったのは、彼女が22歳、石原が49歳の頃だそうだ。だが、彼女が妊娠してしまうのだ。彼女は石原が泊まっているホテルに押しかけ「どうしてくれるのよ」とドアを叩き続けたが、石原は出てこなかったという。
その後は、石原プロの幹部が店のママと対応を協議したそうだ。24歳で彼女は子どもを産むが、石原がその子どもに会うことはなかったと、元同僚ホステスが語っている。
石原が子どもを認知したのは94年、11歳の時だった。その同僚ホステスが、その男の子のことをこう評している。
「子どもは身長が高く、見た目は慎太郎さんよりもどちらかというと裕次郎さん似のイケメンですよ」
今回、新潮は彼女の父親にも話を聞いている。
「孫はもう30歳になった。これまでアルバイトをあちこち転々としていたけれど、今年2月、“就職したよ”って電話を寄越した。“良かったね”と返事をしたが、孫の将来がどうなるか俺には分からない。ただ、就職するにあたって、あちらの厄介にはなりたくないとハッキリ言っていた。孫の心意気は俺にとっては、嬉しいと言うべきか、悲しいと言うべきか……」
石原は新潮の取材にこう答えている。
「彼女がこれまで何の仕事をしてきたかは聞いていない。でも、僕から金額は言わないが、養育費も学費も出し、自分では完璧に責任を果たしたつもりです。借金をしたり、物を売ったりして、必死におカネを作った。石原プロが僕の代わりに養育費を払ったかって? それは、ナンセンス。まったく違う。無責任な謀略情報が流れているなんて初めて聞きました。80歳の老人の昔の情事などに、永田町は関心なんてないんじゃないの……。でもね、あなたたちのおかげで息子から連絡が来て、今度、初めて会うことにしましたよ」
再び国政を目指し、ひよっとすると総理の座もありうると囁かれる注目人物だけに、こうした超旧聞も流れてくるのだろう。
想定内だったのか、石原の受け答えは平静で大人の対応である。新潮の取材がきっかけで息子との対面を果たすことになった石原は、息子に何と声をかけるのだろうか。
橋下徹大阪市長の「日本維新の会」との連携を含めて、石原の動静は注目である。
今週の第2位は、文春の子ども服メーカー「ミキハウス」木村皓一創業社長(67)の激白。
これまで橋下徹大阪市長と「日本維新の会」を支え続けてきたのにと、橋下と松井に怒っている。
「私は大阪を良くするためにと思って『維新の会』を支援し、橋下徹市長らを選挙に通すためにずいぶんカネも使ってきました。彼らは何にもせんでも選挙に通ったと勘違いしているようですが、大阪の地場の人々が手弁当で支援したからこそ、『維新』は圧倒的な支持を得たんです。しかし、彼らは人気にのぼせあがり、国政進出すると息巻いている。諌める人を次々に切り捨て、周囲にはモノをハッキリ言える人間が一人もいなくなった。橋下市長と松井一郎府知事、いまや二人は裸の王様です」
離合集散は世の習いとは言うものの、わが世を謳歌してきた橋下たちに、何かが起きているようである。木村はこうも語っている。
「橋下も松井も、経済については何も知らない。関電の株が紙クズになるようなこと言うんやから。関電の個人株主は、国債なみに安定してるからと買ってるお年寄りがほとんどでっせ。老後の安心がパーや。彼らも自分の株だったら、そんな無茶しないでしょう。市の株やから言うんです。経済を舐めとるわ。つい先日も、米国育ちのベンチャー起業家の講演会を催し、橋下にも聴きにくるよう言うたのに、『木村とは原発問題で意見が合わないから行かない」と断られた。まるで子供。僕に怒られるのが嫌なんやろな。知人の国会議員が何人も『橋下に会わせてくれ』と頼みにきたけど、僕は『何でそんなに橋下に会いたいねん。あんたの値打ち下げるだけや。利用されるだけやで』と遠ざけてきた。結局はそれが正しかった。それにしても橋下という男は運がいい。今回の石原新党にしても、うまいこと利用しよる。政策が一致せんから言うて自分だけいい子になって、完全に石原さんの負けやんか。
でも橋下の頭にあるのは票だけ。国民の幸せのことなど一つも考えてへん。国際社会に通じる人脈もビジョンもない。さらに言うなら、自分がない。風に流されてきただけの人物です。(中略)あんな男を国政に通したら絶対アカン。日本のためになりません」
あれだけ面倒見たのに自分のいうことを聞かない、という恨み節にも聞こえるが、支持者からこうした声が出てくるのは、早くも選挙前から組織に綻び始めた証左かもしれない。
今週のグランプリは、文春の巻頭特集「告発スクープ ナベツネの違法行為を暴露する読売現秘書部長『爆弾日記』公開!」である。
タイトルがすごい。大メディアのトップが違法行為とは聞き捨てならないが、文春はこう書き始める。
「今から八年前、二〇〇四年のことである。警視庁公安部公安総務課で、ある情報が駆け巡った。『渡辺恒雄読売新聞主筆が運転免許更新のために必要な高齢者講習を受講せずに済ませるよう、読売新聞幹部が警視庁に依頼した。渡辺氏は同年五月三十日に七十八歳を迎えており、本件事案は四月三十日から五月三十日までの一カ月以内に発生した模様』この情報は二○○四年六月、小誌記者にもたらされたが、警視庁幹部は完全否定したため、それ以上、取材を進めることはなかった」
だが、今回決定的な証拠となる文書を入手したというのだ。それは、この件で中心的役割を果たした、当時の読売新聞警視庁記者クラブキャップ・山腰高士(現・読売新聞東京本社秘書部長)の「日記」だった。
この日記は当時、社会部に在籍していた人物から提供されたものだという。
反ナベツネ、社会部記者というとすぐに清武英利元読売巨人軍取締役球団代表が浮かぶが。
高齢者講習とは道路交通法改正により、75歳以上の高齢者に義務づけられたもの(2002年に70歳以上に改正)で、座学による講義、シミュレーターによる反応検査、運転実習などを各1時間ずつ計3時間受けなくてはいけない。これは高齢者の死亡事故件数の増加のためであった。偽りやその他の不正な手段により交付を受けた者は、1年以下の懲役か30万円以下の罰金に処せられる(今回のケースは時効になっている)。
天皇陛下も例外ではないという。しかしナベツネは、部下に「めんどくさい手続きを省いてほしい」と命じ、当時の広報部長などが奔走することになる。教習所の社長に頼み込み、渡辺主筆は何とか出向いたものの、わずか10分で免許の更新を受けたという。
私の知人も最近講習を受けてきたが、1日仕事になるといっていた。世の不正を告発する大新聞のトップがこんなことをしてはいけない。
文春はこう結んでいる。
「本誌が今回公表した日記からは、違法行為に加担せざるを得なかった記者たちの苦悩が読みとれる。警察権力の監視役である現場の記者たちの報道倫理をねじ曲げた渡辺氏の罪はあまりに重い」
私はこれを読んで、ノンフィクション作家・本田靖春が読売新聞を辞めるきっかけになった「正力コーナー」のことを思い出した。
「正力コーナー」とは、当時社長だった正力松太郎の要請によって、彼の動静を毎日のように紙面を使って報じたことをいうのだが、本田はこれを紙面の私物化だと批判し、やめさせるべきだと同僚に説いて回るが、誰も正力を恐れて声を上げなかった。
そんな読売に嫌気がさして、本田は読売を辞めることを決意する。
文春を読む限り、正力、務台光雄と続いてきた読売私物化は、渡辺主筆になって、さらにひどくなっているようだ。
当然ながら「読売新聞東京本社は8日、同日発売の週刊文春(11月15日号)に掲載された『ナベツネの違法行為を暴露する読売現秘書部長「爆弾日記」公開!』と題する記事について、改ざん・捏造(ねつぞう)の疑いのある記録や出所不明の資料をもとにしており、事実と全く異なる記述によって名誉が著しく毀損されたとする抗議書を、発行元の文芸春秋に送付した。
今後、同誌や記録の盗み出しなどにかかわった人物に対し、刑事、民事上の法的措置を講じる。(中略)引用された『日記』には、秘書部長も含め関係者の認識とは全く異なる記述が多数ある。秘書部長は当時、警視庁記者クラブのキャップとしてパソコンで業務記録をつけていたが、『日記』は、この業務記録を何者かが違法・不正な手段で盗み出し、データの一部を改ざん・捏造したものである疑いが強い。渡辺会長の運転免許更新についても、警視庁に不当な依頼をした事実は一切なく、所定通り教習所に出向き、高齢者講習を受けるなど適切な手続きを踏んでいた。抗議書では、『現秘書部長「爆弾日記」公開!』とする見出しについて、現職の秘書部長があたかも内部情報を自ら積極的に暴露したかのような印象を与える狡猾(こうかつ)かつ悪意に満ちた表現であり、秘書部長個人の名誉も毀損していると指摘した。さらに週刊文春は先月中旬以降、秘書部長や多数の社会部員に対して行った取材および、グループ本社広報部への質問で、この『日記』や出所不明の資料の存在について意図的に隠し、一切触れなかった。抗議書は、そうした取材・報道姿勢も『悪質、異常、アンフェアであり、報道倫理に反する』としている」(2012年11月8日12時53分 読売新聞)
読売側はまた、今回のことは清武氏がやったと言いたいようだが、これが事実だとしたら、事件は時効でも、大メディアを牛耳る最高幹部にあってはならない「醜聞」である。
それに抗議するなら、本人の承諾なしで「日記」が掲載された山腰高士読売新聞東京本社秘書部長ではないのか。
事実が違うなら堂々と指摘すればいいのに、表に出てこないのはどういう理由からなのか。一企業の人間としては、致命的な情報流出である。渡辺帝国の崩壊を予感させる記事だと、私には思える。
千丈の堤も蟻の一穴から始まる。これが渡辺主筆の命取りになるかもしれない。
(文=元木昌彦)
ロリコンはやっぱり永遠にロリコンだった……のか?『改訂版 ロリコン大全集』

『改訂版 ロリコン大全集』群雄社出版、
1983年(時勢を鑑み、編集部で修正を
入れております)
どれだけ目を背けても、日本のオタク文化は、ロリコン(実写含む)とは切り離すことができない。オタク文化の愛好者が、近年問題になっている「児童ポルノ」と称される虐待の結果としての生産物を楽しんでいると主張したいわけではない。オタク文化が、その源流において少女愛と同居していたことだけは、紛れもない事実である。今回紹介するのは、その時代性を象徴する貴重な資料である。
多数の少女ヌードが掲載されている本書だが、そこは興味ないし、掲載したら「日刊サイゾー」もろとも通報されかねない(念のため、表紙も修正済み)。それに、単なる子どものハダカに、今のところは資料的価値を見いだせない。それよりも大切なのは、ページをめくった先にある作品群である。
少女ヌードのページが一段落した後に始まるのは、吾妻ひでおによる漫画『仁義なき黒い太陽 ロリコン篇』だ。この短編は、当時のロリコン界隈の人脈をネタにした不条理漫画である。「フリーロリコン もとFP組 緒方」が路上でロリコン本を売っているシーンから始まる物語は、「ロリコン界ではすでに神格化した存在である蛭児神建は人気美少女画家・内山亜紀と手を組み、関東統一を目指していち早くコマを進めていた」となり、「早坂えむ」に「岡田としお」「破李拳竜」とか、名前の一部を換えているのと換えていないのと、ごっちゃになりながら何もまとまらずに「第一部完」となる。まさに、本書のカオスさを象徴する作品だ。

この連載、吾妻ひでおを取り上げることが多いけど。かつては巨人だったんだなあ……。
(画像をクリックすると拡大されます)

無駄な知識しか手に入らない用語集だけど面白いです。
「とにかく“大全集”の看板に偽りなく、ロリコンに関するものは全部詰め込みました」と各々のページが主張し、とくに実生活では役立たない無駄な知識を、懇切丁寧に教えてくれる。「ロリコン用語の基礎知識」なんかは、まさにそう。「スクール水着」の項目では「新宿区立富久小学校のスクール水着は黄色だそうだ。おまけに赤と黄色のダンダラの帽子をかぶるんだそうで、こういうのは許せないような気がする」と書き手が主張を始め、「破瓜」の項目では「少女凌辱の儀式」と、ゆがんだ性癖を露わにしてくるではないか……。いや、こんなこと書いているヤツが、発行から30年近くたっているのにまだ逮捕されたとは聞かないから、よほどヤバイ性癖の持ち主でもやっぱり現実世界では一線引いているんじゃないかと納得してしまう。

川本と高桑常寿による写真も……って写真のページは公開できませんョ!

結局のところ、オタク文化を語る時に二次創作のエロパロは切り離せないと納得だよ。
そのことをさらに納得させてくれるのは、後半に収録の「幼女嗜好 特別出張版」だ。「幼女嗜好」は当時、コミケなどで頒布されて話題だったトンデモないロリコン同人誌だ。ここで収録されているのは「プティ・アンジェ無惨」。当時、ロリコンに人気だったアニメ『女王陛下のプティ・アンジェ』のヒロインが、好き放題輪姦される内容である。こんなカオスな本に寄稿している執筆者には、さべあのま、米澤嘉博、杉浦日向子、このま和歩、高取英らの名が並ぶ。本書に象徴されるような80年代の「なんでもアリ」が、その後のサブカルチャーを多様化させてきたことは、明らかであろう。
■そして、ロリコンは永遠に……
本書は「改訂版」の文字が入っているように、底本になっているのは1982年に都市と生活社から発行された蛭児神建が編集したものである。対して、群雄社出版の発行になっている本書は、編集発行人が川本耕次に代わっている。川本は、近著に昨年発行された『ポルノ雑誌の昭和史』(ちくま新書)がある、伝説的なエロ本の編集者だ。けれど、近年では、毒づき方が特徴の人気サイト「ネットゲリラ」の中の人と説明したほうがわかりやすいだろう。かつてはエロ本の名編集者として知られて、昭和史に名を刻んだ川本だが、現在は静岡県で企業人として活躍中だ。筆者も、名刺交換した時に「なんかの社長っぽい人だな」と思ったら、ホントに社長だった。エロ本畑を歩いた挙げ句に、これほど華麗に異業種に転身できた人は寡聞にして聞かない。80年代の人士も、そろそろ「死人列伝」の様相を呈してきている。一度、この世界に足を踏み入れて、まともな死に方をできた人は少ない。そこを出発点に「坂の上の雲」やらを追いかけることができたのは、高取英とか、限られた人物くらいだろう。塩山芳明の『出版奈落の断末魔―エロ漫画の黄金時代』(アストラ)は、そうした悲惨な人々の人生の貴重な記録である(塩山もエロ漫画編集の仕事だけで、娘を大学まで行かせたから、現代では勝ち組)。

『ポルノ雑誌の昭和史』ちくま新書、2011年

『出版奈落の断末魔―エロ漫画の黄金時代』アストラ、2009年

『おたくの本』宝島社、1989年

『出家日記―ある「おたく」の生涯』角川書店、2005年
それにしても、この世界は業が深い。伝説のロリコンと称された蛭児神建が、ブームの最中に雑誌「プチ・パンドラ」(一水社)の編集長を引き受けて、病んで業界を去った顛末は、1989年に出版された別冊宝島のベストセラー『おたくの本』(宝島社)や蛭児神建(元)名義で執筆された『出家日記―ある「おたく」の生涯』(角川書店)に詳しい。それらに記されているように、現在も僧侶を生業としている蛭児神だが、いまだにロリコンを過去のものとはできていない。6月に同人誌即売会MGMで彼に会ったとき「久しぶりに、こんなものを作ってみました」と茶封筒に入れたコピー同人誌をこっそりと手渡された。中に入っていた同人誌のタイトルは『幼女嗜好 FINAL』。10部だけ作ってきたというその同人誌は、扱われているヒロインが現代化しているが、描かれる嗜好は過去のものと変わらない(本人も、茶封筒に包んでこっそり配布していたから、画像はナシで。欲しい人は、どっかの同人即売会で本人を見つけるのがよいかと)。僧侶となってもなお消えない煩悩。もはや、それは賞賛する以外、どうともできない。
いくら業界から足を洗っても、この世界の業の深さからは逃れることはできないらしい。
(文=昼間 たかし 文中敬称略)
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かえって朝日の差別体質を隠蔽する結果に? 大阪・八尾市の「週刊朝日」閲覧禁止措置の是非

「週刊朝日」(朝日新聞出版)
10月26日号
編集長の更迭にまで及んだ、「週刊朝日」(朝日新聞出版)10月26日号掲載の佐野眞一氏の連載「ハシシタ・奴の本性」の問題。大阪府八尾市では市教育委員会が、市立図書館で連載ページの閲覧を禁止する措置が取られることになった。
当該記事の差別性は明らかだが、図書館が閲覧禁止措置を取ることは大きな問題だ。これまでも、図書館がなんらかの理由で閲覧を禁止するたびに、権利と人権をめぐり論争が繰り返されてきた。しかし今回は、あまりそうした議論が聞こえてこない。その理由は、問題になったのが「週刊朝日」だからだった。
公共図書館において、人権やプライバシーを侵害しているとの理由で閲覧が制限される事件。あるいは、市民の側から「こんな本はけしからん!」と閲覧制限、あるいは廃棄を要求する事件は、何年かに一度は必ず起き、その度に世間の注目を集めてきた。1997年には、写真週刊誌「FOCUS」(新潮社)が、神戸連続児童殺傷事件の記事で被疑者の少年の顔写真を掲載、全国の図書館で閲覧制限の措置が取られるなどの話題になった。
2000年には、女性向け総合ライフスタイル誌「クロワッサン」(マガジンハウス)が、ペットを扱った特集の中で特定の職業を差別する表現を用いて大問題になり、やはり全国的に図書館が閲覧を制限した。02年には、「新潮」(新潮社)1994年9月号に掲載された、柳美里の小説『石に泳ぐ魚』が、モデルとされた人物から出版差し止め訴訟を起こされ最高裁がこれを認めたことを受け、国立国会図書館が利用禁止措置を取った。この件では、日本図書館協会が「憲法に定められた国政調査権の存する国会の議員をも含めた、完全な閲覧禁止措置には深い危惧をいだく」として、利用禁止措置の見直しを要望している。
その上で、今回の八尾市の閲覧禁止措置を、図書館関係者はどう見ているのか?
「(閲覧禁止措置は)かえって朝日新聞(「週刊朝日」の出版元である朝日新聞出版も含めて)の差別体質を、隠蔽してしまうのではないかと危惧しています」
と話すのは、日本図書館協会・図書館の自由委員会委員長の西河内靖泰氏。さらに西河内氏は、これまでの経験から今回の閲覧禁止の問題が広がらない理由を次のように話す。
「これまで、図書館で閲覧禁止の問題が起こったときに、だいたい火をつけて回るのは、朝日新聞。でも、今回ばかりは自分のところの話だから動かない。私のところにも、取材に来たのは共同通信くらいですね……」
さらに、関西圏の図書館では閲覧禁止まで行かなくても、カウンターに保管して請求しない限りは読めない措置を取っているところが多いという。やはり、記事の内容が問題なのかと思いきや、事情は少し違っているようだ。
「盗まれたり破られたりすることを防ぐためです。現に、大阪の河内長野市では該当記事のページが破られる事件が起きています。また、Amazonでもプレミアがついているくらいですから、盗難に遭うのを恐れている図書館も多いですよ」(西河内氏)
実は、政治や人権などが絡む問題では、わざわざ図書館に来て、本を破壊する人もまれに現れる。90年の富山県立図書館の図録事件だ。これは、富山県立近代美術館を舞台にした「昭和天皇コラージュ事件」に関連するもの。「昭和天皇コラージュ事件」は、同美術館で展示された昭和天皇と女性のヌード写真とをコラージュした「美術作品」が、大問題となったもの。美術館が、作品が収録された図録を廃棄したため、残部は県立図書館のものだけ。図書館は、これを公開することを決定したが、公開初日にいの一番に駆けつけた人物が、いきなり該当ページを破り捨てたという。
いずれにしても、人権の問題ゆえに閲覧が制限され、それがかえって企業の差別体質を隠蔽して、救われる結果になっているのは皮肉だ。この問題は、作家一個人の筆がすべった問題でないことを、あらためて指摘しておきたいものだ。
(取材・文=昼間たかし)

