死の匂いをメディアが排除する! ジャーナリストが見た軍事的リアリズム【前編】

──若手専門家による、半熟社会をアップデートする戦略提言
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■今月の提言 「政治も今後の安保論議も 自衛隊が持つ現実性に学べ!」 ゲスト/田上順唯[フリージャーナリスト]  1954年の創設以来、数々の議論を呼んできた自衛隊。東日本大震災では、救援活動や原発事故への対応などをめぐり、活躍がクローズアップされた。これを機に、彼らを取り巻く状況や議論の争点も変わってゆくだろう。自衛隊への密着取材を続けてきたジャーナリスト・田上順唯氏と、そうした動きの内実と今後の展開を考える。 荻上 本連載ではここ2回、東日本大震災に関連するテーマとして、被災地での復興支援や医療に関する問題を取り上げました。それらの課題に加えて、被災地での救助活動などを通じてあらためてクローズアップされているのが、なんといっても自衛隊という存在です。  言うまでもなくこの国は、憲法9条との矛盾をはらんだ自衛隊という機関をめぐり、肯定的な立場と否定的な立場とに別れ、それぞれのイデオロギーに基づく綱引きや論争を伝統芸のように続けてきました。それは、原発問題のスイシン派とハンタイ派以上に強力で、固着的なものでもあった。ただ、今回の震災での災害救助活動ひとつとっても、そうした価値論争とは別のレベルで、現地のニーズへの対応や組織の在り方などが適切だったかどうか、現実に即した議論も必要になります。それはもちろん、「対災害」を含めた、日本の安全保障の問題をこれから長期的にどう議論していくべきなのかという大きな論点のもと、丁寧に行われなくてはなりません。    そこで今回は、主に安全保障の問題に取り組まれ、自衛隊の取材も続けておられるフリージャーナリストの田上順唯さんをお招きしました。まず、田上さんが実際に被災地で取材された中で見聞きした、隊員の災害派遣に対する意識がどうだったのかをお聞かせいただけますか。 田上 宮城の被災地に行ったのは4月11日でした。現地も混乱しているので、事前に情報を集め、現地の自衛隊部隊にお邪魔しましたが、彼らの口からよく出てきたのは「これは有事だ」ということ。日本では「有事」という言葉は、国と国との武力衝突に限った狭い意味でしかイメージされず、特に左翼の人々は強いアレルギーを持っていますが、現場の隊員にとっては、自然災害であっても敵からの攻撃であっても、国民の生命財産に対する破壊という意味では同じです。実際、災害派遣でやっていることは、まず偵察隊が情報を収集し、本隊を呼んで補給線を確立して......といった作戦行動であり、外国から攻められた場合とでは、弾を撃つか撃たないかの違いしかない。  なので、お会いした自衛隊の方たちは、「我々はライフルをスコップに持ち替えて戦っている」という認識を皆お持ちで、さらには「自分たちが国の最後の砦。ここでどうにかせねば、復興のフの字も始まらない」という、背水の陣で臨む高いモチベーションを感じました。 ■冷戦構造崩壊を経て変化したドクトリン 荻上 戦後の長い間、「有事」という概念は日本人にとって非常に日常から遠いものでした。しかし3・11以後は、被災地との距離感にもよりますが、少なくとも日本国内に「有事こそが日常」になった人たちも相当な割合でいて、節電などの形で国民全体が共有する感覚が生まれたと思います。「社会」や「国家」を強く意識せざるをえない環境の中で、逆に3・11以前から潜んでいた、「平時」にも抱えていた諸問題が露骨に顕在化するケースが見受けられたのですが、今回の自衛隊の災害派遣についてはいかがでしょうか。 田上 自衛隊に割かれた防衛予算が諸外国に比べて高いとずっと言われていますが、その大部分が人件費と糧食費なんですよね。それを除いた正面装備に回されるお金が、総額として多いのか少ないのかはわかりませんが、現場レベルで適切な配分がされていないのは確かだと思います。  自衛隊の装備品は部隊単位ごとに編成表で定められていて、例えば普通科(歩兵)中隊なら小銃何丁、機関銃何丁、対戦車ロケット何門というように、書類上では配備されていることになっています。しかし、実際には予算がつかなくて配備されていない、あるいはゲリラなどに対処する一線部隊に貸し出されていたりして本当は「アレもないコレもない」というケースが非常に多いんです。  今回の災害派遣に即して言えば、いかなる地形地物も克服する上で機械化が不可欠でしたが、ジープやヘリの数が足りずに運用に支障が出たり、施設科(工兵)部隊のショベルカーなどの重機が足りず、結果的にスピードが要求される発災直後の救助活動で人力に頼らざるを得ず、人員に過度の負担が集中しました。そういう部隊レベルの具体的な問題は山ほど明らかになったでしょう。 荻上 では、ここ数年は国際情勢や国家財政の悪化を理由に、「軍縮」の動きが取り沙汰されていましたが、そうした議論への見直しなどが起こるのでしょうか。
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