30歳をすぎた男たちが定職に就かずに、自分たちが唯一熱くなれたヒップホップ道を極めんと東北を旅する『SRサイタマノラッパー~マイクの細道~』。川崎クラブチッタでのライブステージまで、残り3日間というカウントダウン状態を迎え、第7話は「SHO-GUNG」の中心メンバーであるIKKU(駒木根隆介)が「おいおい、そりゃねぇだろ~!」と全視聴者がツッコミを入れたくなる迷いを見せ始めた。単にドラマの後半戦を盛り上げるためのハードルではなく、IKKUのアイデンティティーに関わる重要な問題らしい。 前回に続いて、福島県猪苗代湖近くにある世にも珍しいヒップホップ寺「竹田寺」で修業を始めたIKKU、TOM(水澤紳吾)、MIGHTY(奥野瑛太)の3人。これまでグウタラ生活を送ってきた3人にとっては、朝早い寺での規則正しい生活はかなりしんどい。『SRサイタマノラッパー』(09)では東京に向かって走るトラックをBB弾で撃つという、狂気をはらんでいたTOMだったが、修業僧から水鉄砲で起こされるとは感慨深い。 このシーンを見ながら、近年の戸塚ヨットスクールの内情を追った東海テレビ製作のドキュメンタリー映画『平成ジレンマ』(11)をふと思い出した。かつては体罰指導で不登校児を更生させたことで話題になった戸塚ヨットスクールだが、傷害致死事件が起きて戸塚校長が刑務所送りになって以降は、体罰のない緩やかな指導スタイルに変わった。今でも高齢になった親がニートの子どもの将来を心配して、安くないスクール料を払って預けにくるケースが絶えない。ところが、預けられた生徒(いい大人)は起床時間や消灯時間がきちんと決まった寮での集団生活に耐えられずに逃げ出してしまう。IKKUたちは大丈夫だろうか。 1週間の修業に耐えれば、「竹田寺」の住職である兄タケダ先輩(上鈴木伯周)が新曲を作ってくれることから、ここから逃げ出すわけにはいかない。いやいやながら小雨の降る中、草刈りを始めるIKKUたち。そんな3人に対して、見張っていた戸塚校長が、いや赤鬼(市オオミヤ)が「違うっ!!」と喝を入れる。赤鬼役の市オオミヤさん、入江悠監督が撮った『ネオ・ウルトラQ』(WOWOW)の第11話「アルゴス・デモクラシー」ではテロリスト役で出てましたね。 赤鬼「お前らのラップには詩心がない。働きながら、詩を詠め。詩の世界は広く深い。見えるもの、見えないもの、すべてが対象だ。感じたことを言葉にしてみろ」 いかつい顔して、赤鬼はポエマーだった。赤鬼の言葉を素直に受け入れ、草刈りを再開するMIGHTYたち。 「草を刈らないとさッ、草を刈らないとさッ、イヤ~♪」 舶来の音楽だったヒップホップが、日本語の労働歌として地に根を張ったものへと変わっていく。「SHO-GUNG」の3人は新しいステージへの入口をようやく見つけたようだ。 その頃、温泉に入って元気を取り戻したカブラギ(皆川猿時)はトーコ(山本舞香)を連れて「竹田寺」へ到着。なぜかスケボーを手にして立っていた青鬼(野村周平)に「カブラギは失恋を乗り越えて、ひと回り大きな男になりました。福島での仕事を片付けてから迎えにくると3人に伝えてください」と伝言を頼む。青鬼がイケメンだったことから、トーコはカブラギと別れ、「竹田寺」に残ることに。本当にいいのか、竹田寺? こんなピチピチの女の子を禁欲生活中の修業僧たちの群れに放り込んだら、阿鼻叫喚地獄になるのではないか? それもまた修業の一環なのか? スケボーは「スケベボーズ」の隠語なのか? 最初は寺での規則正しい生活に慣れなかった「SHO-GUNG」とトーコだが、リズムに乗って掃除、洗濯、炊事に取り組むようになっていく。体が自然に動くようになってくると、気持ちがいい。「言葉は友達♪」を合い言葉に、IKKUたちは軽やかなラップが口から溢れ出してくる。壁に貼られた張り紙がクラブチッタでのライブまで、残り3日になったことを知らせている。 と、ここでIKKUのスマホの着信音が鳴り、大問題が発覚! 電話を掛けてきたのはIKKUの妹・茉美(柳ゆり菜)からだった。 茉美「お兄ちゃん、どこにいるの? 今週の日曜は私の結婚式だからね。忘れてないよね?」 妹からの電話に思わず絶句するIKKU。今週の日曜といえば、クラブチッタとバッティングしている。しかも、電話を代わった父親(斎藤暁)によれば「先方は京都のホテルを予約しくれているんだぞ」とのこと。 えっ、妹の結婚式は埼玉でやるんじゃないの!? きっと埼玉の結婚式場で「SHO-GUNG」として一曲かましてから、カブラギ号に乗って川崎へ猛ダッシュで向かうことになるんだろうと予想していたのに。京都から川崎への移動はさすがに容易ではない。妹の結婚式のことを完全に失念していたIKKUは激しく動揺し、第7話はエンディングまで無気力化してしまう。シリーズ後半戦はコメディ展開でクラブチッタまでイッキに突っ走るのかと思いきや、どうやらそうではないらしい。 座禅タイムは見逃せないシーンだった。第4話の雪(中村静香)、第6話のトーコの入浴シーンに続いて、今回はTOMの脳内妄想として、TOMの外人妻トリーシャ(コロウロレナ)が入浴姿を披露する。トリーシャは相変わらず、何語でしゃべっているのかよく分からない。MIGHTYは『SRサイタマノラッパー ロードサイドの逃亡者』(12)で遺恨を残した「極悪鳥」のことがフラッシュバックする。MIGHTYが首都圏に戻るということは、「極悪鳥」とニアミスする危険度が高まるということでもある。「極悪鳥」もクライマックスに向かって「SHO-GUNG」の前に不気味に立ちはだかる存在になりそう。そしてIKKUは座禅しても精神統一できないどころか、映像化できないほど頭の中はカオス状態に陥っていた。 座禅タイムが終わり、兄タケダ先輩から「翌朝には新しい曲を用意する」と告げられ、大喜びするTOMとMIGHTY。だが、やはりIKKUだけは浮かないまま。ここでようやくMIGHTYたちは、IKKUの妹の結婚式とライブが重なっていることを打ち明けられる。 MIGHTY「なんで言わなかったんだよ? これが最後だろ? ふざけんなよ!」 IKKUは「忘れてた。ごめん……」と弱々しく答えるだけ。ここまで『SRサイタマノラッパー』シリーズを見続けてきたファンは「なんで?」と驚いてしまう。IKKUにとってはラップだけが生き甲斐で、「SHO-GUNG」の仲間がいちばん大切だったのではなかったのか? 埼玉での閉塞的な暮らしを憎んで、ラップにその想いを叩きつけてきたのではなかったのか? サングラスをしていないIKKUのその無防備で虚ろな表情は、「SHO-GUNG」としてクラブチッタのステージに立つことよりも妹の結婚式に出席することに心が傾いていることを伝えている。IKKUはもはや「SHO-GUNG」ではなく、加賀谷郁美に戻っていた。 家族想いと言えば、聞こえはいい。だが、すごく嫌な言い方をすれば、クラブチッタのステージに立つことは一夜限りの打ち上げ花火。父親の命令に従って妹の結婚式に出席して家族としての最低限の役割を果たせば、IKKUはその後もニートとして実家で暮らし続けることができる。親が生きている間はその稼ぎや年金で食べさせてもらえ、親が死んだら実家を長男である自分のものにできる。埼玉の実家はなんだかんだ言っても、IKKUにとってどうしようもなく切り離すことのできないセーフティーネットなのだ。 IKKUがのほほんとラッパーになることを夢想し続けられたのも、実家があったからこそ。中世の宮廷画家たちが絵を描き続けられたのも王族というパトロンがいたから。「SHO-GUNG」を語る上で、IKKUの家族の存在は無視できない。これは『SRサイタマノラッパー』を撮り続けて10年になる入江監督自身にも言えることだ。『SR1』のIKKUの実家は入江監督の実家がそのまま使われている。また、『SR1』が全国各地で口コミ的に人気が広まり、入江監督は地方の劇場へ舞台あいさつに回り、このときの各地のファンの熱い想いに触れたことで、『SR』をシリーズ化することを思い立った。だがその結果、舞台あいさつに回っている期間はバイトなどができず、入江監督は東京のアパートを引き払って、埼玉の実家に一時避難している。入江監督にとっても実家は大切なセーフティーネットだった。 表現者がいかに自由に作品をつくろうとも、家族の問題からは死ぬまで解放されることはない。いや、墓のことを考えると、死んだ後も続く問題である。エドガー・アラン・ポー、オスカー・ワイルド、種田山頭火のように、流浪の果てに野垂れ死ぬ覚悟を誰もが持てるわけではないのだ。 最後にもうひとつ。お寺での夕食シーンで、それまで黙々と調理に励んでいたトーコは青鬼の計らいで、みんなと一緒に食事をすることになる。青森からずっとミニスカにブーツ姿がトーコの定番ファッションだったが、お寺での地味なジャージ姿もなかなかキュートだ。IKKUに呼ばれて、お盆を持って立ち上がるトーコはとても小さい笑みを浮かべる。1シーン1カットの長回しを多用するため、『マイクの細道』は1話におけるドラマ展開が超スローなのだが、1シーンの中で見せる演者の心の微妙な動きが伝わりやすいのが大きな魅力となっている。 IKKUの葛藤は解決し、トーコの青鬼への恋心は成就するのか? 次週、第8話が見逃せない。 (文=長野辰次)テレビ東京系『SRサイタマノラッパー~マイクの細道~』番組サイトより
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第6話で『孤独のグルメ Season6』にも痴漢冤罪が発生か? ゴローちゃんを驚かせた「ヤラシイネー」とは!
今週の『孤独のグルメ Season6』(テレビ東京系)では、どんな飯テロが!? というわけで、1週間のご無沙汰を経てゴローちゃんこと井之頭五郎(松重豊)がやってきたのは、高田馬場。今回は、のっけから腹が減っております。ちょうど昼飯の時間。女のコたちに人気のメロンパンに、腹の虫が騒いでたまりません。 とはいえ、いくら腹が減ってはいたとしても、仕事を優先するのがゴローちゃんの素敵なところ。かくして、やってきたのは「正道会館」。あれ、空手道場にゴローちゃんはなんの用事が? これは道場破りか? ゴローちゃんの必殺アームロックに敵う相手が、世界に何人もいるとはけっして思えません。 というわけで、お届け物を届ける相手の師範代は高橋努。その気迫になぜかビビってしまうゴローちゃんなのです。 なんと高橋、これから意中の女性に告白するためのプレゼントを、ゴローちゃんに注文していたというわけです。そんな個人的なプレゼントのためのアンティーク雑貨も、注文次第できちんとあつらえるゴローちゃん。ホントに、小商いにも手を抜かない人ですねえ。 しかし、ここで驚きが。 道場にやってきたのは、昼飯時。練習中だからと、隅っこで待って仕事も終了。そして、時間は3時半。いやいや、いくらなんでも待たされすぎでしょう……。それとも、高橋のために用意した雑貨が2ケタ万円とかで、今日はもう仕事を上がってよいムードだったのか? ともあれ「腹ががらんどうだ」と、いつも通りに飢えの表情へと至ったゴローちゃん。さっそく店探しを初めます。 しかし、この時間に開いている店など、そんなにありません。でも「ここも準備中」とつぶやきながら通りがかるのが「やきとん みつぼ」。いや、ここ居酒屋だからさあ。 この時間帯は、仕事で外回りをする人ならわかる、魔の時間帯。なにせ世の中にはランチタイムが終わったら、一旦店を閉めてしまうところが多いんですから。だいたい、負けた気分になって牛丼屋に入ってしまったりするもの。でも、ゴローちゃんは、そんな敗北主義者ではありません。きちんと店を見つけます。 そして目に入ったのは「ノング・インレイ」。 そこはミャンマーはシャン料理店。いや、この店、けっこう物好きには知られている店です。それは昆虫料理を食べられるから! ああ、ほかの料理も美味いことこの上ない、結構なメジャー店です、ハイ。 さて「通し営業か~」と救われた気分で、看板に近寄るゴローちゃん。ミャンマーとかシャン料理という不思議な響きに、ちょっと様子見をしますが、店の人に見つかって入店。 ちょっとぎこちない様子で座るゴローちゃん。 「まったく未知の相手、ミャンマー出身のシャン。どこからどう攻めたらいいのか……」 と、いつも通りメニューを見渡すゴローちゃんですが、「竹虫」「小コオロギ」という言葉に恐れおののきます。メニューには写真付きで載ってはいますけど、画面には映さず。なんでも食らうゴローちゃんですが、さすがに空腹に食べ慣れない虫を注ぎ込むのは遠慮したいということか。 というわけで、比較的おとなしめのメニューを、あれこれと迷い始めるゴローちゃん。「パクチー大盛り、そういうのもあるのか」などとつぶやきながら、迷うことひとしきり。 「スタンダードがわかんないだけに……」 と、とてもフツーな反応です。ですから、まずは店の人に聞いてみましょうと、ゴローちゃん。 「あの~、シャンってなんですか?」 当然、店の人からは「シャン族の食べる物」と返されます。 「それじゃあ、全然わかんないよ……」 困惑の末にゴローちゃんの注文したのは、シャン風高菜漬け炒めを豚で。お茶っ葉のサラダと餅米。 「味も量も未知数だし、ひとまずこれで相手の出方を見よう」 確かに、どんな量が出てくるのか謎すぎます。いや、たとえ食べきれない量でも、食べ尽くしてくれるのがゴローちゃんでしょうけど。 食べ慣れないミャンマー料理に、あれこれと興味津々のゴローちゃん。別の客が使っている調味料などにも興味津々です。 そして、ついにやってくる最初の皿は茶葉サラダ。視聴者視点からも、おそらくは驚くような見た目。なにしろ、サラダなのに茶色なのですから。 「初ミャンマー。ちょいピリ辛……トマト豆茶葉」 視聴者にもわかりやすく、説明してくれる言葉がとても素敵なゴローちゃん。 「なんだろう。食べたことないのに懐かしいような味……これ、すっごくおいしいんじゃないかな」 「サラダというより、スナックを食べているような味」 そして、材料を炒めている心地よい音と画像を挿入して、シャン風高菜漬け炒めが登場。同時に運ばれて来た、餅米は、ちょっと容器が特殊。おそらく蒸し器なのでしょうけど、開け方に困るゴローちゃん。 ようやく皿に置いてから「でも、このサイズ感かあ……」。むむ、これはゴローちゃんの胃袋には足りないということか? そりゃそうでしょう。シャン風高菜漬け炒め。見ただけで丼飯がかき込める雰囲気。 「あ、こちらはガツンとオカズ味だ」 心地よい音楽と共に、食事シーン。 「ほうら、合う合う餅米がおいしい」 「高菜が餅米を呼び、餅米が高菜を呼ぶ。たかもちたかもち止まらない。シャンの攻撃が止まらない」 しかし、その攻撃も一瞬。なぜなら、餅米は、予想外に小さなサイズだったのですから。 「こうなることは、最初からわかっていた」 まずは、餅米のおかわりを投入。 「ならば、今度はこうして……」 ここでゴローちゃんが編み出したのは、炒め物の皿に餅米をあけて、よーくまぜまぜ。 「こういう返し技はどうだ。オレ流、シャンへの逆襲」 なんという新たな、正道食いでしょう。 「いいじゃないか、これで五分と五分だ」 しっかし、まぜまぜの具合が視聴者にも食欲をそそる具合に。なんで、こんな上手な混ぜ方ができるのか。松重ゴローの技か、あるいはスタッフが心得ているのか。 「ミャンマーの街の食堂って、こんな感じかな」 こうして、満足をしたと思いきや、餅米がミニサイズのためでしょうか。まだまだ、ゴローちゃんは本気を出していません。 「まだ、腹六分目……」 そして手に取るメニュー!! 「麺に変えるか、米で押すか」 そして「牛スープそば」を注文するゴローちゃん。出てきた若い店員は「春雨ですか?」と。ゴローちゃんも視聴者も「??」となります。 そうこうしていると、出てきたおばちゃん。張り紙を指さして「この牛スープそばですか?」と言います。どうも、日本語で書いてあるものとミャンマー語で書いてあるのは、別の牛スープそばの様子。なんだかわからないけど「この、牛スープそばをください」というゴローちゃん。 高田馬場にいるはずが、遙かな異境に足を踏み入れた気分ですね。 待っている間、かしましい女性客たちのテーブルに並んでる料理を眺めてしまうゴローちゃん。「ヤラシイネー」と言われてビックリ。ここで説明されますがミャンマー語では「ヤラシイネー」は「おいしいね」の意味だそうです。 思わず、ゴローちゃんも痴漢冤罪? と思った瞬間でありました。 ともあれ、今回は演出なのか、ちょっと大根な演技で次々とミャンマー人らしき客が入ってきます。 「孤立無援、ミャンマー包囲網」 これも、知らない外国料理の店ならではの醍醐味でしょう。 かくて運ばれてきた牛スープそばは、フォーに似た食べ物。一口すすって「等身大のおいしさだ」とつぶやくゴローちゃん。 そんなゴローちゃんが提案する通な食べ方として、器に移してちょっとずつテーブルの上の調味料をかけること。 「シャン通気分に、うまさマシマシ」 「野菜と肉のシャキトウなせめぎ合いが、こたえられない」 「深いなあ、シャンの森」 「もうちょっと、ミャンマー奥地に踏み込んでみるか」 唐辛子の酢漬けなど、さまざまな調味料を試すはいいけどむせてしまい「いかん、深入りしすぎた」とゴローちゃん。 「これ、いろいろと入れて、育てれば育てるほど美味さで応えてくれる」 さらに育てようと、パクチー追加もしちゃうゴローちゃん。 「最終的な味付けは食べる人に委ねるおおらかさ」 「ミャンマーの人の知恵と優しさを感じる一杯だ……」 とにかく大満足で、食べ尽くした様子のゴローちゃん。でも、残り3分ほどの時間で、まだ「大満足」には追加がありました。 「ごちそうさま」とはいいつつも、別のテーブルに運ばれてきたパフェに興味津々。メニューを開けば、ミルクティーと揚げパンのセットを注文してしまうのであります。 そんな揚げパンは、ミルクティーにつけて食べるのがオススメ。 「うん、いいね……。日本の発想では揚げ物をお茶につけないよな。でも、食べてみるとほっこりする……」 こうして、大満足の特上を楽しみきったゴローちゃん。 次々と行ってみたくなる店を登場させるこの番組でもありますが、今回はさらに行ってみたい度の高い、お店のセレクトだったのではないでしょうか。何せ、未知の味だというのに、すべてがおいしそう。それに、ゴローちゃんは忌避したけど、虫料理を試してみたいという人も多いのではありませんか? ひとまず「ヤラシイネー」という言葉だけは、覚えておきましょう。 (文=昼間たかし)テレビ東京系『孤独のグルメ Season6』番組サイトより
『SRサイタマノラッパー~マイクの細道~』第6話 1シーンに凝縮されたIKKUらが東北を旅する意味
東北道を縦断するロードムービー『SRサイタマノラッパー~マイクの細道~』。自分たちに直接関わること以外には関心のなかった「SHO-GUNG」のメンバーが、被災地にどう向き合うのか気になっていた視聴者も多かったはずだ。2011年4月、入江悠監督は『SRサイタマノラッパー』(09)、『SRサイタマノラッパー2 女子ラッパー☆傷だらけのライム』(10)に続く新作『劇場版 神聖かまってちゃん ロックンロールは鳴り止まないっ』(11)の劇場公開を控えていた。大震災の直後であり、公開は延期すべきという声も上がるピリピリした緊張感の中で、『ロックンロールは鳴り止まないっ』は上映された。先行き不透明な社会状況に不安を感じている人たちへ、ほんの少しでも励ましになれればいい―そんな想いでの上映だったと思う。 その後、入江監督は『SRサイタマノラッパー ロードサイドの逃亡者』(12)で震災後ますます経済格差が顕著になっていく下流社会を描いているが、メジャー系の作品では震災について直接的に触れる機会はなかった。震災から6年。入江監督、そして入江監督の分身でもある「SHO-GUNG」の3人はようやく被災地に立つことになった。 トラック運転手・カブラギを演じる皆川猿時は、岩手を舞台にしたNHK朝ドラ『あまちゃん』(13)では磯野先生役を好演した。そんな皆川をはじめとする『マイクの細道』のメインキャスト5人が「がんばろう!釜石」と大きな看板が立てられた被災地で黙って手を合わせる姿が遠景で映し出される。わずか数秒のシーンだったが、津波に遭った湾岸部はまだ更地のままで復興途上なことが伝わってくる。『マイクの細道』の後半戦の始まりとなる第6話は被災地から幕を開けた。 今回もシリーズ序盤の恒例となっていた夢はじまりはなし。IKKU(駒木根隆介)やTOM(水澤紳吾)たちはクラブチッタのステージに立つという現実的な夢の実現に向かって一直線なことが分かる。そして才能がなければ、努力する根性もないダメ人間の集まりでもある「SHO-GUNG」だが、唯一の長所といえるのは他人の痛みをきちんと感じることができるということ。表現者として、また人間としていちばん大切なことだろう。 前回の終わり、『SR1』で死んだはずの伝説のトラックメーカー、タケダ先輩は実は双子で、お兄ちゃんが福島にいることが判明。IKKUたちはカブラギ(皆川猿時)に頼んで福島に立ち寄ることに。周囲に憚ることなく、遠野のドブロク屋の看板娘・雪(中村静香)に猛烈にアプローチしていたカブラギは、前回見事に振られてしまった。泣きたいときは泣いたほうがいい。雪景色で美しい猪苗代湖で入水自殺を図ろうとするカブラギ。「古池や蛙飛び込む水の音」という名句を江戸時代の俳人・松尾芭蕉は残しているが、裸になって泣き叫びながら湖に飛び込もうとするカブラギはカエルというよりも、ゾウアザラシ。しかも盛りの付いた。ここまで見苦しさを全身で表現できる人間はそういない。 泣き叫ぶゾウアザラシを、懸命になだめるIKKUやトーコ(山本舞香)。ウマの合わなかった顔ぶれだったはずが、苦楽を共にして次第に旅の仲間となってきたようだ。気分転換に猪苗代湖の遊覧船に乗る一行。MIGHTY(奥野瑛太)たちが船内で兄タケダはどこにいるのか売店のおばちゃんに聞き込みをしていると、甲板ではまだ落ち込んだままのカブラギへトーコが思い切りシェイクしたコーラ缶を手渡している。ヤンキー娘なりの歪んだ励まし方である。船の室内と室外で2つの小さなドラマが1シーン1カットの長回しで同時に進行する。何げないけど、深夜ドラマならではのおかしみを感じさせる演出シーンだ。 いよいよ一行は兄タケダがいるらしい竹田寺へ。ここはなんと世界で唯一のヒップホップ寺であり、ラップ音楽で己を見つめ、世界と向き合うために若者たちが修業に励んでいた。もはやここは東北ではなく、日本でもない、『少林寺三十六房』(78)の世界。香港カンフー映画が大好きな入江監督らしい。IKKUが『西遊記』に出てくる猪八戒に見えてくる。まぁ、後はネズミ男と前科もののヤンキーだけど。孫悟空のいない『西遊記』だな。 ヒップホップ寺で修業中の「五福星」と呼ばれるスキンヘッドの小僧たちと火花を散らし、ラップバトルとなる「SHO-GUNG」。 TOM「欲しいのはおニューなトラックだけ。タケダ先輩に会いたいだけだ♪」 必死に韻を踏んで「五福星」と競り合う「SHO-GUNG」だったが、「五福星」のカルト教団ばりの頑強さに、大苦戦。IKKUは二の句も継げず、四苦八苦……! ここで入江監督のメジャー進出第1作『日々ロック』(14)に主演した野村周平が登場。「五福星」たちの兄弟子になる青鬼(野村周平)のとりなしで、「SHO-GUNG」は竹田寺を開山した兄タケダ(上鈴木伯周)との面会を許される。病気で亡くなったヤング・タケダ先輩と同じように体が弱そうな兄タケダ。IKKUたちはライブ用に曲を作ってほしいと頭を下げるが、兄タケダの声は弟以上に小さくて返事がまるで聞き取れない。「お前らのラップ聞いた。ショボい。もう曲も作ってないし。お前ら帰れ。他の道、歩め」と物凄く小っちゃい声でディスられてしまう。 MIGHTY「俺らのラップがショボいのは分かってんだよ。でも1回、1回だけステージに立たねぇと終われねぇんだよ!」 目の前にようやく見えてきた夢を諦めることができないMIGHTYが悲痛な叫び声を上げる。クラブチッタのステージに立つという目標は、もうIKKU、TOM、MIGHTYたち3人だけの夢ではなくなっている。無限の才能を持ちながらヤング・タケダ先輩は、ショボい「SHO-GUNG」に新曲を残して、あの世へと旅立っていった。遠野でカッパの神様への奉納ライブを一緒にやった溝口(松尾論)はラップの道を断念して、地元で生きることを選択した。夢を叶えることができなかった様々な人たちの想いを「SHO-GUNG」は背負って、ここ福島まで辿り着いた。何をやっても中途半端だった3人は今、初めて熱く燃えている。 一方、トーコに誘われて、カブラギは近くの湯治場へ。一時は生きる希望を完全に喪失していたカブラギだったが、露天風呂に入ってリフレッシュし、トーコいる女湯を覗き見するまでに心も下半身も元気に回復する。ドスケベ、上等! 震災のあった東北を旅する『マイクの細道』だが、こんなエロい役が許されるのは福島出身の怪優・皆川猿時だからこそ。『あまちゃん』の磯野先生のみならず、『あまちゃん』のチーフディレクターを務めた井上剛監督が撮った『LIVE!LOVE!SING! 生きて愛して歌うこと 劇場版』(15)でもコメディリリーフとして活躍した。エロモードに入った彼の100kg近いメタボな体型が、生きる喜びに満ち溢れている。入浴姿を覗かれたトーコだが、自分が誰かの役に立っていることがちょっとうれしい。いつも苦虫を噛み潰したような表情をしていたトーコも、すっかり自然な笑顔を見せるようになった。 そして、埼玉のIKKUの実家では、妹・茉美(柳ゆり菜)がもうすぐ結婚するという話題でもちきり。音信不通な不肖の兄IKKUは、完全に『男はつらいよ』の寅さん状態。多分、妹の結婚式とクラブチッタのライブは日程が重なっているに違いない。竹田寺で1週間のお試し修業に挑戦することになったIKKUたちは、兄タケダに新曲を作ってもらうことができるのか。そしてダブルブッキングしているだろう妹の結婚式とクラブチッタのライブのスケージュルをうまく縫うことができるのか。クラブチッタという名のネクストステージへの道のりは、まだまだ遠い! (文=長野辰次)テレビ東京系『SRサイタマノラッパー~マイクの細道~』番組サイトより
『孤独のグルメ Season6』第5話 すわ、殺人事件か……!? 回転寿司で、濃すぎるゲストとタイアップまで!
さて、今回もやってきました。深夜の飯テロ番組『孤独のグルメ Season6』(テレビ東京系)。今回の食材は回転寿司。 回転寿司といえば、やはり思い出すのは原作の神回。まあ、この作品に関しては原作はすべてが神回なのですが。今回は回転寿司がどのように扱われるのか……。期待と共にチャンネルを回しましょう。 ゴローちゃんこと井之頭五郎(松重豊)が営業にやってきたのは、世田谷区太子堂。これまた、なんか用がなければ東京都民でも近寄ることがなさそうな街。個人事業主のゴローちゃん。どんな小商いでも颯爽として訪れるフットワークの軽さが成功の秘訣です、多分。 さて、いざお店に入れば、中にいるのは山下リオ……が、泣いているという演出。ここで、いったいどんなシナリオなんだ? と、視聴者をドキドキさせようという狙いでしょうか。 しっかし、山下リオはかわいい。そして、泣いているリオはもっとかわいい……。制作陣はいろいろとわかっている人たちですね、相変わらず。 でも、仕事に来て相手先で人が泣いてたら、フツーにドン引きの反応ですよね。 「失礼しました……えーっなになに……」 OPを挟んで、物語は再開。こちらはステンドグラス店。どうも、ゴローちゃんが何かの発注に来た様子。そして、リオが泣いていたのは、映画を見て感動のあまりということ。 なるほど、お店は暇なのでしょう。 そんなお店で、昼日中からリオが見て泣いていた映画は『仁義なき戦い 広島死闘編』。共感を求めてくるようなリオの語りに、ゴローちゃんも苦笑いするしかありません。 そして、ようやく明らかになる今回の訪問の目的。うん、なんか冒頭からちょっと溜めが長い。溜めが長いということは、爆発力もいつも以上の予感。 今回ゴローちゃんが求めるのはフロアスタンド。大阪の分譲住宅のモデルハウスで扱うものだということです。 そこに店の奥からリオの祖父・若林豪が「あんた、釣り好き?」と現れます。この顔を見ると何か事件が起こりそうな気がしますが、なぜか、執拗にゴローちゃんを釣りに誘う若林。一方、リオはステンドグラス教室に誘うしで、ゴローちゃんも「なんなんだ、この人たち」と、苦虫をかみつぶすしかありません。 そんな時間を過ごせば、やってくるのは空腹。 「何を狙う、俺が釣り上げるべき食い物はなんだ」 ちゃんと、小芝居が伏線にはなっている絶妙なセンス。太子堂界隈のわんさかとある食い物屋を、ケモノのような目で物色したゴローちゃんは、ついに到達します。 「そうか、釣りとくればこれじゃないか」 首都圏の人にはおなじみの回転寿司チェーン「すし台所家」。 「座っているだけで回遊してくる魚を釣り放題だ」 さあ、原作でも「最後の2枚が……」と、ラストの満足感ある煙草で一服するコマが印象的だった回転寿司回。『事件屋稼業』をも彷彿とさせるハードボイルドな物語は、ドラマでどのように描かれるのか。 まず、湯飲みに描かれた寿司の絵を見て「随分かわいいな」などと、初めてでもない回転寿司に物珍しさを感じるゴローちゃん。いきなり、粉茶を入れすぎる大失敗。それに懲りたのか、ガリは「こんなもんかと」控え目に。 「よーし、今日はなんで口火を切るかな。順当にマグロからいくか……」 「赤身で小手調べだッ」 食べ物屋さんで「小手調べ」なんて言葉を使えるのも、ゴローちゃんくらいのものでしょう。 「うーん、回転らしいマグロ色だ。うん、美味い大丈夫」 「ふっ、うーん、これで120円は安い……」 「この店、アタリかも……」 いや、台所家は回転寿司の中でも、安くてうまさが際立つ部類のチェーンなんですよね、実際。アタリとかいっている場合じゃなくて常識ですよ、はい。 ポジション取りのミスに気づきつつも「遠慮なく注文してくださいね」の職人さんの声にホッとして、イカを注文するゴローちゃん。 「いつも行く寿司店とは大違いだが、酒も呑まない俺には、こっちのほうが気軽で居心地がいい」 ひそかに回らない寿司が標準となっている自分を自慢するゴローちゃん、いったい、誰に自慢を? 回転寿司でも丼もののメニューが増えていることを不思議に思いながら、まずは周囲を観察しつつ食べ進めるゴローちゃん。 「けっこう入ってるな、人気店なんだ」 次は鯖か鰺かと、一瞬悩むゴローちゃんですが、光りもの三種を見つけてさっそくオーダー。 「呑兵衛には昼呑み天国か……」 などと、今回はまた観察の時間が長め。まだまだ、音楽は通常モードで溜めの時間が続きます。 続くオーダーは真鯛の潮汁。その間にも隣の客が頼んだ鉄火丼がちょっと気になったりと、落ち着かないのがゴローちゃんです。 「胃が染みる、癒やされる……」 などと、周囲を観察していれば、そこには、あぶり大トロをオーダーする女性が。 「あの人、高い皿ばっかり……」 「値段に惑わされるな、己の直感を信じて……」 直感の注文の炙り穴子は正解。 そこに、隣の席の客が立つのですが、2人で1万6,800円。「そんなに食ったのか」と驚きながらも、なぜか決意を固めるゴローちゃん。 大赤えびはネタの大きさに四苦八苦しつつも満足。「これで300円で大丈夫か」となぜか、お店を心配する優しいゴローちゃんです。 そして、そろそろかかってくるエンジン。そのスタートは、まぐろ三種。 「回転寿司店の贅沢食い まぐろ三貫で580円」 と満足したつもりが、鉄火丼をおかわりする隣の客に驚きを。 で、ここで突然のインターミッション。かにサラダ軍艦を入れて、ここまで9枚。まだいけるということで、箸休めにもう一品は茶碗蒸し。 「茶碗蒸しは、いつだって優しい。お、銀杏もちゃんと入ってる」 そして、隣に新たな客・岡本麗が入ってきたのを合図にするかのように特上ウニを注文。しょうゆを垂らせば、特上ウニは極上ウニへ。 ならばと、次の注文をしようとしたところに「限定のトロハマチ入ります!」の声が。 なぜか、客がここぞとばかりにトロハマチを注文。 しかし、タイミングを逃してしまうゴローちゃん。ぜんぜん、トロハマチが来ません。そこで本領を発揮するのが、岡本麗。 「すみません、さっきから注文してるんですけど!」 なるほど『はぐれ刑事純情派』(テレビ朝日系)でおなじみの、押せ押せなオバサン役がここでも生かされているというわけか。この人、昔は日活ロマンポルノで縛られたり凌辱されまくってたんですけど、演技の幅広いな……。 そんな岡本、ちゃんとゴローちゃんの注文が通ってないのを職人に。 「困ったときはお互い様ですから」 この『はぐれ刑事純情派』的な親切もいいんですけど、今回はマダム風なキャラなので、妙にインパクトのあるマダム風な食べ方をしているのが、気になります。 ならば、次は胃袋の破裂までなにを、と思いきや、ゴローちゃん締めに入ってきました。 「回転寿司もいいもんだ」 「思いも寄らないネタが飛び出してくるし、楽しいメシも食えた」 ま、まさか、これで終わり? 「ふっ、楽しみすぎだろ」 と、周囲の客に対しての、なんかよくわからない優越感。 そして、会計しようとしたところに、入ってきたのはやたらにぎやかな濱田岳。というか、いきなり20時台のドラマ『釣りバカ日誌 Season2 ~新米社員 浜崎伝助~』とタイアップ。 「何がオススメですか?」 と聞く濱田に対して、岡本は口に物を含んだまま「トロハマチ」。 そして、濱田は真鯛の皿を何枚も取りながら…… 「真鯛か、釣りたかったな、釣りたかったな」 それぞれの役者が、これでもかと演技を繰り出すのですが、口に物を含んだまま「トロハマチ」という、泥臭さ全開の演技をできる岡本は圧倒的ではありませんか。 回転寿司店を舞台に、どんな展開になるのかと思いきや、ゴローちゃんがゲストの引き立て役という印象の強かった今回。インパクトのあるゲストとの絡みを上手に魅せることができるのも、松重ゴローならではの魅力でしょうか。 しっかし、あらためて「台所家はうまい」と感じることのできる回転寿司回でありました。 (文=昼間たかし)テレビ東京系『孤独のグルメ Season6』番組サイトより
『SRサイタマノラッパー~マイクの細道~』第5話 カッパとパンチラとの異次元セッションの開幕!
“青春の墓場”を求めて、埼玉生まれのヒップホップグループ「SHO-GUNG」が東北道を旅する『SR サイタマノラッパー~マイクの細道~』。前回に続いて岩手県遠野を舞台にした第5話は、TVシリーズ前半戦のクライマックスとも言えるエロスと超常現象をラップでひとまとめにしたおかしなおかしな祭典となった。 トラック運転手のカブラギ(皆川猿時)に奪われていたスマホをようやく返してもらったIKKU(駒木根隆介)たちは、2週間後に川崎クラブチッタで行なわれるライブイベントの出演者の中に「SHO-GUNG」の名前を見つけ歓喜する。クラブでライブデビューすることが、彼らの夢だったので、第2話から第4話まで続いた“夢はじまり”は今回はなし。後はクラブチッタ出演が“夢オチ”にならないことを願うばかりだ。 ライブ出演が決まったからには、一刻も早く川崎に向かいたい。ところが独身生活の長いカブラギは雪(中村静香)のことをすっかり気に入り、どぶろく屋に婿入りしてもいいアピールを朝食の席で繰り返す。このままではいつまでも遠野で足止めをくらい、しかもMIGHTY(奥野瑛太)はカッパの神様の呪いでチンコ痛に悩まされたままだ。 いつもは長いものには巻かれろ気質のTOM(水澤紳吾)だが、このときのTOMは違った。カブラギの耳元で「昨晩、いいものを見ましたよね」と囁く。雪の入浴姿を窓から覗き見していたことをネタに、カブラギを脅すTOM。自分もしっかり見てたくせに。TOMもだてに性風俗店が乱立する北関東でおっぱいパブやガールズバーで働いていたわけではなかった。面倒くさいオッサンたちを懐柔するノウハウを身に付けていた。あの頼りなさが身の上だったTOMが、何だか少しだけ輝いてみえる。クラブチッタのステージに立つという明確な道が見えてきたことで、日和見主義のTOMも変わってきたことを感じさせるエピソードだ。 一行はMIGHTYがカッパの神様から呪いを掛けられた「めがね橋」へと再び出向き、カッパの神様の怒りを沈めようとする。ここで一行が思い出したのは、雪のおじいちゃん(樋浦勉)が口にしていた「歌は祝い、歌は呪い」という言葉。IKKUたちが魂を込めたリリックを放つには、やはりラップしかない。「カッパとラッパー、俺たち仲間です〜♪」とTOMがラップで呼び掛けるが川面は静かなまま。そこへ「遠野のカッパはエロカッパで有名だ。必要なのはエロコミュニケーションだ」と訳知り顔で現われたのは、自称「遠野出身で、いちばん有名なラッパー」の溝口(松尾諭)だった。 IKKU役の駒木根隆介、カブラギ役の皆川猿時、そして『シン・ゴジラ』(16年)の「君が落ち着け」の名台詞で一躍有名になった松尾論。小太り系の男優がやたら多い『マイクの細道』。重心が低い彼らが出ていることで、ドラマ自体も地に足が着いた印象を受ける。あんこ型の彼らは都会では暑苦しくても、雪国にはよく似合う。そういえば数年前、体重100kgある巨漢ばかり集まった男性ボーカルグループ「デブ・レパード」が存在したけど、彼らは今どうしているだろうか。 溝口にレクチャーされ、エロカッパを振り向かせるためには女の子の力も必要なこと知るIKKUたち。「SHO-GUNG」vs伝説の妖怪・河童! 『SR サイタマノラッパー~マイクの細道~』の世界が、白石晃士監督の『戦慄怪奇ファイル コワすぎ!【人食い河童伝説】』とリミックスされていく。そんな溝口の話を聞きながらも、地元名物ほうとうに舌鼓を打つIKKU。これまでにも『SRサイタマノラッパー ロードサイドの逃亡者』(12)では宇都宮ギョーザを、『マイクの細道』の第1話、第2話ではマグロ料理を黙々と平らげたIKKUだが、ここにきて「ほうとうが胃の中に入ると体が芯からポカポカする。これはハッピーのマグマだ」と彦摩呂ばりに言葉が口からこぼれ落ちてくる。どうやらIKKUもライブに向けて、トドのような体の中を様々なリリックが駆け巡っているようだ。 溝口の助言に従い、カッパにまるで興味のないトーコの機嫌をとろうと必死な「SHO-GUNG」。伝説のタケダ先輩(上鈴木伯周)に曲を作ってもらうために頭を下げたこと以外、まともに他人にお願いをしたことのないIKKUも低姿勢で年下のトーコに接する。夢を実現するためには、つまらないプライドは邪魔になるだけ。旅を続ける中で、MIGHTYもTOMもIKKUもそれぞれが少しずつ変化を遂げている。 「よく見たら、二階堂ふみに似ている」とトーコのことをヨイショするMIGHTY。ここでトーコを演じている山本舞香情報を。山本舞香は1997年生まれの鳥取県出身。宮沢りえ、蒼井優、夏帆らを輩出した「三井のリハウスガール」として2011年にCMデビュー。くっきりしたつぶらな瞳は、確かに二階堂ふみを彷彿させる。入江悠監督は『劇場版 神聖かまってちゃん ロックンロールは鳴り止まないっ』(11)、『日々ロック』(14)と二階堂ふみをヒロインに起用しおり、この系統の女優が好みらしい。『マイクの細道』ではヤンキー役の山本舞香だが、初主演映画『桜ノ雨』(16)では奥手な女子高生役を繊細に演じており、女優としての将来性を感じさせる逸材なのだ。 そして、いよいよシリーズ前半戦の総決算となる「めがね橋」ライブの開幕。河原に祭壇とキュウリを用意し、「SHO-GUNG」に加え、雪の元彼であることが判明した溝口もMCとして参加。溝口はラッパーを目指して遠野から東京に出たものの、夢破れて帰ってきた。雪と寄りを戻し、どぶろく屋の借金を2人で返していくという。溝口にとっては、これがラップ納めだ。さらに溝口と復縁してご機嫌な雪、いやいやながらトーコもダンサーを務めることに。 IKKUたちが新しい自分たちの歌を見つける旅でもある『マイクの細道』。今回はロケ地が遠野ということもあり、民俗学的な視点から音楽や芸能というジャンルのルーツを探っていくことになる。溝口によれば、この奉納ライブは「天岩戸」伝説みたいなものだという。「天岩戸」は日本神話のひとつで、“太陽神”アマテラスオオミカミがご機嫌ななめ状態で岩戸の中に引き篭った際、困った他の神さまたちはアメノウズメを岩戸の前で歌い踊らせてアマテラスオオミカミを誘き出したという。「天岩戸」伝説は芸能・お祭りの事始めであり、アメノウズメは日本芸能界における芸能人第1号でもある。その「天岩戸」伝説を、遠野のエロカッパを相手に再現しようというのだ。 雪のおじいちゃんが言っていたように「歌は祈り」であり、「歌は呪い」でもある。歌は人々に刹那的に夢や希望を与え、ささくれた心を癒してくれる。だが、ドラッグの過剰摂取と同じで、歌の世界で描かれた夢や運命の恋人探しに取り憑かれてしまうと、下手すれば一生を台無しにしかねない。心に響く歌や言葉は薬にもなるが、使用方法を誤ると中毒症状に陥ってしまう。曲がりなりにもMC(マスター・オブ・セレモニー)を名乗るのなら、そのことは肝に銘じておきたい。MIGHTYのチンコに掛けられた呪いを解き、溝口の東京で破れた夢を供養するため、「SHO-GUNG」withミゾグチ&YUKI+TOKOの一度かぎりのセッションが始まる。 「歌え、祝え、祝え、呪え♪」と溝口が煽り、「SHO-GUNG」のメンバーがマイク代わりのキュウリを手にフリースタイルのラップを繋げていく。バックで踊っている雪の弾けっぷりがいい。さすが中村静香、初代ドロリッチガール! たわわなバストが右へ左へとウェーブを奏でる。ノリノリの雪に感化され、やる気のなかったトーコもグルーヴに身を委ね、体を揺らし始める。これまで一度も笑顔を見せたことのないトーコが、踊りと共に初めて明るい表情を見せた。「SHO-GUNG」と溝口だけでなく、実家からずっと離れることができずにいた雪もトーコも、胸の奥に仕舞い込んでいた感情が澱のように溜まっていた。そんな淀んだ感情が、セッションの盛り上がりと共に浄化されていく。 「プチョヘンザ~♪ カッパヘンザ~♪」 雪とトーコのダンスに引き寄せられ、カッパの神様がついに出現。カッパの神様は頭の上の皿を「キュキュッ」と鳴らし、「SHO-GUNG」たちのステージに応えてみせる。そして一陣の風と共に、めくれ上がる雪とトーコのスカート。トーコのパンティーはピンク、そして雪は名前の通り純白のパンティーだ。紅白そろって、縁起がいい。カッパの神様も大満足。かくしてMIGHTYのチンコの呪いは収まった。ドントハレ〜♪ 雪山に残したトラックを修理していた間に、ふいに現われた溝口が雪のハートをがっちりゲットしたことを知って、どよ〜んと落ち込むカブラギ。そんなカブラギの背中をバンバン叩きながら「また、いい人に出逢えるから大丈夫だって」と励ますトーコ。ヤンキー娘トーコがすごくいい女に思えてくる。 遠野民話の終わりの決め文句「どんと晴れ(めでたし、めでたし)」のような大団円を迎えた第5話。だが、最後の最後に意外な事実が明らかになる。溝口も伝説のタケダ先輩を知っており、しかもまだ生きているという。タケダ先輩は実は双子の兄弟で、『SR1』で亡くなったタケダ先輩はヤングタケダであり、お兄ちゃんが福島で暮らしているとのこと。オープニング映像に登場していたタケダ先輩は幽霊ではなく、お兄ちゃんだったのだ。『仁義なき戦い』シリーズの松方弘樹、『男たちの挽歌』シリーズのチョウ・ユンファもびっくりな急展開。 クラブデビューという目標が定まり、旅の途中のトラブルで結束力を固めた「SHO-GUNG」。あと彼らに必要なのは、新しい彼らに相応しい新しい曲である。次回、新しい出逢いとさらなる試練が待ち受ける福島編への期待が高まる。 (文=長野辰次)テレビ東京系『SRサイタマノラッパー~マイクの細道~』番組サイトより
『SRサイタマノラッパー~マイクの細道~』第5話 カッパとパンチラとの異次元セッションの開幕!
“青春の墓場”を求めて、埼玉生まれのヒップホップグループ「SHO-GUNG」が東北道を旅する『SR サイタマノラッパー~マイクの細道~』。前回に続いて岩手県遠野を舞台にした第5話は、TVシリーズ前半戦のクライマックスとも言えるエロスと超常現象をラップでひとまとめにしたおかしなおかしな祭典となった。 トラック運転手のカブラギ(皆川猿時)に奪われていたスマホをようやく返してもらったIKKU(駒木根隆介)たちは、2週間後に川崎クラブチッタで行なわれるライブイベントの出演者の中に「SHO-GUNG」の名前を見つけ歓喜する。クラブでライブデビューすることが、彼らの夢だったので、第2話から第4話まで続いた“夢はじまり”は今回はなし。後はクラブチッタ出演が“夢オチ”にならないことを願うばかりだ。 ライブ出演が決まったからには、一刻も早く川崎に向かいたい。ところが独身生活の長いカブラギは雪(中村静香)のことをすっかり気に入り、どぶろく屋に婿入りしてもいいアピールを朝食の席で繰り返す。このままではいつまでも遠野で足止めをくらい、しかもMIGHTY(奥野瑛太)はカッパの神様の呪いでチンコ痛に悩まされたままだ。 いつもは長いものには巻かれろ気質のTOM(水澤紳吾)だが、このときのTOMは違った。カブラギの耳元で「昨晩、いいものを見ましたよね」と囁く。雪の入浴姿を窓から覗き見していたことをネタに、カブラギを脅すTOM。自分もしっかり見てたくせに。TOMもだてに性風俗店が乱立する北関東でおっぱいパブやガールズバーで働いていたわけではなかった。面倒くさいオッサンたちを懐柔するノウハウを身に付けていた。あの頼りなさが身の上だったTOMが、何だか少しだけ輝いてみえる。クラブチッタのステージに立つという明確な道が見えてきたことで、日和見主義のTOMも変わってきたことを感じさせるエピソードだ。 一行はMIGHTYがカッパの神様から呪いを掛けられた「めがね橋」へと再び出向き、カッパの神様の怒りを沈めようとする。ここで一行が思い出したのは、雪のおじいちゃん(樋浦勉)が口にしていた「歌は祝い、歌は呪い」という言葉。IKKUたちが魂を込めたリリックを放つには、やはりラップしかない。「カッパとラッパー、俺たち仲間です〜♪」とTOMがラップで呼び掛けるが川面は静かなまま。そこへ「遠野のカッパはエロカッパで有名だ。必要なのはエロコミュニケーションだ」と訳知り顔で現われたのは、自称「遠野出身で、いちばん有名なラッパー」の溝口(松尾諭)だった。 IKKU役の駒木根隆介、カブラギ役の皆川猿時、そして『シン・ゴジラ』(16年)の「君が落ち着け」の名台詞で一躍有名になった松尾論。小太り系の男優がやたら多い『マイクの細道』。重心が低い彼らが出ていることで、ドラマ自体も地に足が着いた印象を受ける。あんこ型の彼らは都会では暑苦しくても、雪国にはよく似合う。そういえば数年前、体重100kgある巨漢ばかり集まった男性ボーカルグループ「デブ・レパード」が存在したけど、彼らは今どうしているだろうか。 溝口にレクチャーされ、エロカッパを振り向かせるためには女の子の力も必要なこと知るIKKUたち。「SHO-GUNG」vs伝説の妖怪・河童! 『SR サイタマノラッパー~マイクの細道~』の世界が、白石晃士監督の『戦慄怪奇ファイル コワすぎ!【人食い河童伝説】』とリミックスされていく。そんな溝口の話を聞きながらも、地元名物ほうとうに舌鼓を打つIKKU。これまでにも『SRサイタマノラッパー ロードサイドの逃亡者』(12)では宇都宮ギョーザを、『マイクの細道』の第1話、第2話ではマグロ料理を黙々と平らげたIKKUだが、ここにきて「ほうとうが胃の中に入ると体が芯からポカポカする。これはハッピーのマグマだ」と彦摩呂ばりに言葉が口からこぼれ落ちてくる。どうやらIKKUもライブに向けて、トドのような体の中を様々なリリックが駆け巡っているようだ。 溝口の助言に従い、カッパにまるで興味のないトーコの機嫌をとろうと必死な「SHO-GUNG」。伝説のタケダ先輩(上鈴木伯周)に曲を作ってもらうために頭を下げたこと以外、まともに他人にお願いをしたことのないIKKUも低姿勢で年下のトーコに接する。夢を実現するためには、つまらないプライドは邪魔になるだけ。旅を続ける中で、MIGHTYもTOMもIKKUもそれぞれが少しずつ変化を遂げている。 「よく見たら、二階堂ふみに似ている」とトーコのことをヨイショするMIGHTY。ここでトーコを演じている山本舞香情報を。山本舞香は1997年生まれの鳥取県出身。宮沢りえ、蒼井優、夏帆らを輩出した「三井のリハウスガール」として2011年にCMデビュー。くっきりしたつぶらな瞳は、確かに二階堂ふみを彷彿させる。入江悠監督は『劇場版 神聖かまってちゃん ロックンロールは鳴り止まないっ』(11)、『日々ロック』(14)と二階堂ふみをヒロインに起用しおり、この系統の女優が好みらしい。『マイクの細道』ではヤンキー役の山本舞香だが、初主演映画『桜ノ雨』(16)では奥手な女子高生役を繊細に演じており、女優としての将来性を感じさせる逸材なのだ。 そして、いよいよシリーズ前半戦の総決算となる「めがね橋」ライブの開幕。河原に祭壇とキュウリを用意し、「SHO-GUNG」に加え、雪の元彼であることが判明した溝口もMCとして参加。溝口はラッパーを目指して遠野から東京に出たものの、夢破れて帰ってきた。雪と寄りを戻し、どぶろく屋の借金を2人で返していくという。溝口にとっては、これがラップ納めだ。さらに溝口と復縁してご機嫌な雪、いやいやながらトーコもダンサーを務めることに。 IKKUたちが新しい自分たちの歌を見つける旅でもある『マイクの細道』。今回はロケ地が遠野ということもあり、民俗学的な視点から音楽や芸能というジャンルのルーツを探っていくことになる。溝口によれば、この奉納ライブは「天岩戸」伝説みたいなものだという。「天岩戸」は日本神話のひとつで、“太陽神”アマテラスオオミカミがご機嫌ななめ状態で岩戸の中に引き篭った際、困った他の神さまたちはアメノウズメを岩戸の前で歌い踊らせてアマテラスオオミカミを誘き出したという。「天岩戸」伝説は芸能・お祭りの事始めであり、アメノウズメは日本芸能界における芸能人第1号でもある。その「天岩戸」伝説を、遠野のエロカッパを相手に再現しようというのだ。 雪のおじいちゃんが言っていたように「歌は祈り」であり、「歌は呪い」でもある。歌は人々に刹那的に夢や希望を与え、ささくれた心を癒してくれる。だが、ドラッグの過剰摂取と同じで、歌の世界で描かれた夢や運命の恋人探しに取り憑かれてしまうと、下手すれば一生を台無しにしかねない。心に響く歌や言葉は薬にもなるが、使用方法を誤ると中毒症状に陥ってしまう。曲がりなりにもMC(マスター・オブ・セレモニー)を名乗るのなら、そのことは肝に銘じておきたい。MIGHTYのチンコに掛けられた呪いを解き、溝口の東京で破れた夢を供養するため、「SHO-GUNG」withミゾグチ&YUKI+TOKOの一度かぎりのセッションが始まる。 「歌え、祝え、祝え、呪え♪」と溝口が煽り、「SHO-GUNG」のメンバーがマイク代わりのキュウリを手にフリースタイルのラップを繋げていく。バックで踊っている雪の弾けっぷりがいい。さすが中村静香、初代ドロリッチガール! たわわなバストが右へ左へとウェーブを奏でる。ノリノリの雪に感化され、やる気のなかったトーコもグルーヴに身を委ね、体を揺らし始める。これまで一度も笑顔を見せたことのないトーコが、踊りと共に初めて明るい表情を見せた。「SHO-GUNG」と溝口だけでなく、実家からずっと離れることができずにいた雪もトーコも、胸の奥に仕舞い込んでいた感情が澱のように溜まっていた。そんな淀んだ感情が、セッションの盛り上がりと共に浄化されていく。 「プチョヘンザ~♪ カッパヘンザ~♪」 雪とトーコのダンスに引き寄せられ、カッパの神様がついに出現。カッパの神様は頭の上の皿を「キュキュッ」と鳴らし、「SHO-GUNG」たちのステージに応えてみせる。そして一陣の風と共に、めくれ上がる雪とトーコのスカート。トーコのパンティーはピンク、そして雪は名前の通り純白のパンティーだ。紅白そろって、縁起がいい。カッパの神様も大満足。かくしてMIGHTYのチンコの呪いは収まった。ドントハレ〜♪ 雪山に残したトラックを修理していた間に、ふいに現われた溝口が雪のハートをがっちりゲットしたことを知って、どよ〜んと落ち込むカブラギ。そんなカブラギの背中をバンバン叩きながら「また、いい人に出逢えるから大丈夫だって」と励ますトーコ。ヤンキー娘トーコがすごくいい女に思えてくる。 遠野民話の終わりの決め文句「どんと晴れ(めでたし、めでたし)」のような大団円を迎えた第5話。だが、最後の最後に意外な事実が明らかになる。溝口も伝説のタケダ先輩を知っており、しかもまだ生きているという。タケダ先輩は実は双子の兄弟で、『SR1』で亡くなったタケダ先輩はヤングタケダであり、お兄ちゃんが福島で暮らしているとのこと。オープニング映像に登場していたタケダ先輩は幽霊ではなく、お兄ちゃんだったのだ。『仁義なき戦い』シリーズの松方弘樹、『男たちの挽歌』シリーズのチョウ・ユンファもびっくりな急展開。 クラブデビューという目標が定まり、旅の途中のトラブルで結束力を固めた「SHO-GUNG」。あと彼らに必要なのは、新しい彼らに相応しい新しい曲である。次回、新しい出逢いとさらなる試練が待ち受ける福島編への期待が高まる。 (文=長野辰次)テレビ東京系『SRサイタマノラッパー~マイクの細道~』番組サイトより
『孤独のグルメ Season6』第4話 深夜の飯テロ界の地球破壊爆弾! 焼肉が早くも投下
さて、今回も朝まで空腹に耐える準備をしながらチャンネルを合わせる『孤独のグルメ Season6』(テレビ東京系)。もう、飯テロの絨毯爆撃に朝まで耐えるのは止めました。最初から、番組を観ると腹が減るという前提で準備をしておくことにします。 とりわけ、深夜にもかかわらず油ギトギトの料理はオススメ。皆さんも、豚バラ肉なんかをフライパンで焼く準備とか、しておきましょう……。 さて、今回、ゴローちゃんこと井之頭五郎(松重豊)がやってきたのは、東京都は東大和市。東京都の水源地として重要な多摩湖を有する街。戦前は、日立航空機の工場があり、戦争遺跡もあることで、その手のファンには知られた街ではありますが、都民でも用がなければ立ち寄ることはない街でしょう。 そんな街の駅に降り立ったゴローちゃん。花束を手に向かったは、手塚理美の営むカーテン店さん。手塚が足を骨折したので、お見舞いでの訪問だそう。 「仕事で国分寺まで来たから電話したら~」 というゴローちゃんですが、国分寺から東大和に行こうとしたら、西武国分寺線か多摩湖線か、どちらにしても、ちょい面倒くさいルート。それでも、顔を出そうとするマメさが、商売の秘訣といったところでしょうか。 しかし、2人の関係。かなり気安い友人といった雰囲気。過去にどのようなことがあったのでしょうか……。 手塚に結婚しないのかと聞かれたりするゴローちゃん。出かけようとした中3になる手塚の息子の成長ぶりに驚き、手塚に「あのとき、ゴローさんに告白しておけばな」とか言われて、自分の人生をいろいろと考えてしまいます。 でも、ガラにもないことを考えれば腹が減るもの。そして、迷い込むのは住宅地。 「方向を誤ったか……店がない」 今回も住宅地へと迷い込むゴローちゃん。ええ、東大和市って街道沿い以外はガチで住宅ばかりの街なんですよね……。 もはや店を見つけるのを断念し、青梅街道を駅へと戻ろうとするゴローちゃん。 「焼肉でも食いたい気分になってるぞ……」 そんなゴローちゃんの目の前に現れたのは……。 「うそ、焼肉。食いたいという気分になった矢先に出会えるとは、おまけにいい暖簾を垂らしているじゃあないか」 さあ、今回の焼肉店は、まさにこの番組にお似合いの店構え。炭火がどーのとか、ナンタラカンタラの熟成肉とか、オシャレはキーワードとは無縁。昔ながらの、ガスで焼く街場の焼肉店なのであります。 「一人なんですけど……」 「こちらのお席にどうぞ」 案内された4人掛けのテーブルを一人で使って。さあ来るか。「溶鉱炉」か「うぉおおん」か! さて、そんな店に貼られているのは、こんな一文。 「看板娘『みゆ』がいましたらぜひ! なんでも聞いてください」 「タン塩看板娘の大好物です。命をかけるほどおいしいです」 今回、看板娘を演じるのは白石聖ですが、リアルのほうもかわいいと、ネットでは現在進行形で評判になっております。 さて、ホルモンかカルビかと悩むゴローちゃん。いきなり「イベリコ豚って手もあるか……」。 いきなりイベリコ豚とか、今回のゴローちゃんは、空腹で相当混乱している様子。 それでもメニューだけでなく、貼られたオススメの張り紙にも目を通すゴローちゃん。 「命をかけるほどおいしいです……日本語おかしいだろ」 とはいうものの、タン塩推しに乗っかってしまうゴローちゃん。さらに、別のお客の様子を見ながら選択肢は増えていきます。 「よし、第一弾いくか……」 さあ、何からいくかと思ったゴローちゃん。 「あの、カイノミってなんですか?」 これも張り紙でのオススメ品。白石演じる店員は「油がサッパリしていて……」など、丁寧に教えてくれるのです。 まずは、上タン塩とカイノミのタレ。そして、アゴ=豚のアゴをタレ。ついでにサニーレタスとサンチュセットも投入です。飲み物は当然、ウーロン茶から。 さあ、運ばれてきた肉をゴローちゃんは、どう並べていくのか。 「タン塩はタレで焼き網が汚れる前に焼くのが鉄則だ」 「少し焼きすぎかなくらいがおいしい……ホント」 「ここは、おつまみキャベツで飢えをしのごう」 なるほど、原作で神回といえる焼肉。ゴローちゃんの名ゼリフも止まりません。 「んん、ほんとだ。少し焼きすぎかなくらい、正解。肉は焼くほどに固くなるもんだと思い込んでいた」 タン塩への感動で早くも、食のリミッターは振り切れてしまったか。まだ残りのタン塩があるというのに、豚のアゴも焼き始めてしまいます。 「さて、アゴだ。おお、こういう感じ。いや、いいよ、しょっぱうまい。ちょっカリカリとして、こちらのアゴも使わせる……」 続いて野菜を巻き始めれば、もう止まりません。 青唐辛子とにんにくを乗せて……。 「おお、これは青唐にんにく、ズルイ」 キムチも一緒に巻けば……。 「おお、これもナイス。薬味がいろいろあるから自由自在だ」 「ここで、よく焼きタン塩。ウエルダンならぬウエルタン」 至福の焼肉に、ついにこんな言葉も。 「命は賭けられんが、仕事の1つや2つ、すっぽかして来てもいいほどうまいよ、みゆちゃん」 感動はしても、まだグルメは始まったばかり。カイノミを焼き網に置き、ゴローちゃんは腕まくりして、本気の食モードへ。 「くぅ~、何このフワフワ。このタレいい。つけ込み方も絶にして妙。これは早くライスも頼まなきゃ肉に対して申し訳ない」 ライスは中に抑えて、韓国のりを追加したゴローちゃん。まだ、理性は働いているということか。 「ううむ、うまい。史上最強のタッグが、オレの口の中で大暴れしている。これはカルビとかロースとは別次元のうまさだ」 誰もが知っている焼肉に白いご飯という最強の組み合わせ。この飯テロは、ほぼ地球破壊爆弾が落ちたようなものですよ、はい。 さらにカイノミも野菜巻きにして、違う食感で食らい尽くすゴローちゃん。 「ほうら、素晴らしいにんにくパンチ。タレの味に磨きをかけるがごとし!!!!」 そして、さらに広がる無限の胃袋。 「野菜も米も潤沢に残ってる。追加肉いこう……となれば、あれだ」 注文したのはザブトンのタレ。その間も、カイノミを焼き、韓国のりを手で摘まむゴローちゃん。 「ここは最果て、東大和の焼肉店か……」 なぜか黄昏れるゴローちゃん。最果てとか、東大和市民に失礼。今じゃ、モノレールもあるというのにぃ!! かくて、やってきたのは、巨大で四角いザブトン。 「おお、さすが特選カルビ。食べ応えも超高級ザブトンだ。どんどんガバガバ食べたくなる、ドンガバチョな肉だ……」 「味付け肉はタレをつけるというステップがスキップされていて楽だ。最近の飛行機の搭乗手続きみたいというか……」 さて、やはり焼肉回ということなのでしょうか。今回は、ゴローちゃんのかっこむシーンがけっこう長めな印象。 「今日のオレ、大金星だ。胃袋の国技館では、今、歓喜のザブトンが舞っている」 もはや、歓喜の名言は止まることなく、視聴者を深夜にもかかわらず焼肉店へと誘う破壊力で攻めてくるのでした。 かくて満足したゴローちゃん「今日は、よく眠れそうだぞ……」と、店を後にするのでありました。 さすが焼肉回ならではの、神がかったセリフ回しと食いっぷりで魅せてくれたゴローちゃん。何はともあれ、高そうな背広でも構わず焼肉店に入ってしまう剛胆さを、見習いたいものだと思いました。 (文=昼間たかし)テレビ東京系『孤独のグルメ Season6』番組サイトより
『SRサイタマノラッパー~マイクの細道~』第4話 トーコの名言「夢にしがみつくと息苦しいんだよ」
あめゆじゅとてちてけんじゃ、あめゆじゅとてちてけんじゃ。37歳の若さで亡くなった宮沢賢治が『永訣の朝』に記した魂のリリックだ。『銀河鉄道の夜』『注文の多い料理店』など傑作童話や数々の詩を残した宮沢賢治だが、生涯を独身で通したため素人童貞だったと言われている。「SHO-GUNG」の不動のオリジナルメンバーであるIKKU(駒木根隆介)もまた、以前より童貞疑惑が囁かれている。唯我独尊の道を歩んだグレートな詩人・宮沢賢治の波長とシンクロしたのか、IKKUをはじめとする「SHO-GUNG」一行は宮沢賢治が“イーハトーボ”と呼んだ岩手県へと突入する第4話。深夜ドラマらしくお色気シーンとオカルト色もうっすら漂うカオティックな回となっている。 滝に打たれていた裸のIKKUが「あっ、見えた!」と叫ぶオープニング。前回、TOM(水澤紳吾)と共に新しい「SHO-GUNG」には新しい曲が必要だと確かめ合ったIKKU。新曲の構想が思い浮かんだのか。意気揚々とビキニ姿のセクシー美女たちを従え、泡風呂へトドのように飛び込んでいく。美女たちにせがまれて「俺の生ラップは高ぇぞ~」と言いながらも、目尻を下げて「マイクでつかんだどん詰まりの夢とビッグなマネー、そしてビッグな胸ぇ♪」と隣りの美女のおっぱいをタップする。 もちろん、第2話、第3話から続く夢はじまりなのだが、IKKUの見る夢はテレ東の深夜ドラマ枠ということもあって、どこかしょぼい。IKKU本人はアメリカンドリームを手に入れたギャングスタ・ラッパーばりの酒池肉林シーンのつもりだろうが、どうもエロ雑誌やパチンコ雑誌の巻末によく掲載されていた「パワーストーンのお陰で僕にも彼女ができました! 宝くじが当たりました!」と冴えない男が札束風呂に入っている怪しい広告にしか見えない。 IKKUは高校時代に同級生だった小暮千夏(みひろ)と仲が良かったが、高校を中退した千夏が東京に上京してAV女優になってしまい、同世代の女性とSEXに関しては複雑な感情を抱いている。IKKUがクラブチッタでライブデビューを果たす前に、童貞から卒業して大人の男になれるかどうかも『マイクの細道』の裏テーマとして追っていきたい。 IKKUの童貞臭ただよう夢が終わり、本編の始まり。カブラギが運転するトラックは岩手県に入ったものの、雪山で突然止まってしまう。故障原因が分からず、ブチ切れたカブラギがTOMやMIGHTY(奥野瑛太)たちをしばいていると、大間の実家を飛び出して、トラックの荷台に隠れていたトーコ(山本舞香)が姿を現わす。ここ岩手県遠野にて『マイクの細道』の道中を共にするメインキャストが一堂に揃った。 雪山で言い争っていても仕方ないので、「SHO-GUNG」一行は助けを求めて人里を目指すことに。そこで見えてきたのは悪代官によって手篭めにされる村娘、ではなく借金取りの取り立てに喘ぐ地元のどぶろく屋の娘・雪(中村静香)だった。IKKUたちは助けに走り出すこともなく、騒ぎが落ち着いてから店で一服させてもらうことに。ケンカには異様に弱いIKKUとTOMらしい冷静な判断である。 雪がぽっちゃりした色白美人だったことからカブラギは舞い上がってしまい、『トラック野郎』のくせに何故か『男はつらいよ』の寅さんのように仁義を切り出す。そんなカブラギのトンチンカンぶりを、「うふふ」と笑顔で受け止める雪。東北人の人のよさを感じさせる。 雪のおじいちゃんを演じているのは樋浦勉。岡本喜八監督や今村昌平監督の映画によく出ていたベテラン俳優で、最近は北野武監督の『龍三と七人の子分たち』(15)でステッキを振り回して暴れ回っていた。その樋浦勉さん演じる半分ボケかかったおじいちゃんによると、カブラギのトラックが止まったのは、カッパさまの祟りであり、それはMIGHTYが近くの小川で立ちションをしたからだという。ここ、遠野は民俗学者・柳田國男の『遠野物語』でも知られる妖怪伝承が数多く言い伝えられる土地だった。 お店が暇なので、雪の案内で「SHO-GUNG」たち一行は遠野のカッパ出没スポットを歩いて回ることに。『SRサイタマノラッパー』が急に白石晃士監督の低予算ホラーシリーズ『戦慄怪奇ファイル コワすぎ!』の世界へと変調していく。TOMこと水澤紳吾がゲスト主演した『戦慄怪奇ファイル 超コワすぎ! FILE02 暗黒綺譚!蛇女の怪』は超名作なので、未見の人はぜひGW中にレンタルしてみてほしい。 カッパ淵に到着したものの、特に不審な様子はなし。次に一行が向かったのは「めがね橋」。JR釜石線が「めがね橋」を渡る風光明媚な場所だ。雪いわく「ここを走る列車を見て、宮沢賢治は『銀河鉄道の夜』を書いたらしいです」とのこと。この景観が不朽の名作『銀河鉄道の夜』を生み、さらに『銀河鉄道の夜』に感銘した松本零士がSFアニメの金字塔『銀河鉄道999』を描くことになる。遠野は民俗学の故郷であるだけでなく、男のロマンを掻き立てるパワースポットなのかもしれない。 と、ここで視聴者へのサービスカットが!! 観光地めぐりに興味なさそうなトーコのスカートが突風に煽られ、中の赤い下着がチラッと見える。入江悠監督は『SR』三部作で硬派なイメージがあるが、同じテレビ東京系で2013年にオンエアされた連ドラ版『みんな!エスパーだよ!』では園子温監督と共に盛大にパンチラ祭りを開催していた人でもあった。深夜ドラマらしい、サービスカットは大歓迎である。 雪の家で夕食をごちそうになった上に泊めてもらうという、IKKUたちは徹底的に人の好意に甘える達人でもある。カッパ騒動に終始した遠野の夜も更け、みんなが寝静まった後、ひとりバスタブの湯につかる雪。 「あ~、気持ぢい~。お風呂がいぢばん幸せよ~」 東北弁でひとりごちる雪の無防備さが堪らない。Fカップの美乳グラビアアイドルとして人気を博した中村静香の生唾ボディが、テレ東の深夜ドラマで花開く。さすが、初代ドロリッチガールにして、『ゴッドタン』(テレビ東京系)の「飲み姿かわいいグランプリ」王者だけあって、男の目線を釘づけにして離さない。 そんな雪の入浴姿を、修学旅行中の中学生のように窓の隙き間から必死で覗き見するカブラギと元おっぱいパブ店員であるTOM。『水戸黄門』(TBS系)のお銀(由美かおる)の入浴シーンのように、できれば今後もゲスト女優の入浴シーンはお約束としてお願いしたい。ベタかもしれないが、過去の国民的大ヒットシリーズから鉄板要素を吸収していくことも、入江悠監督にとっての旅の目的だろうから。 カブラギとTOMがデコトラ以上に下半身をギンギンにさせている一方、庭先ではもうひとつのドラマが進行していた。寝付けなかったのかトーコが夜空に浮かぶ月を眺めていると、カッパさまの呪いでチンコが痛くて、やはり寝付けずにいたMIGHTYが何やら話し掛けている。「SHO-GUNG」の中ではいちばんイケメンではあるMIGHTYは大間で観光ガイドとして過ごしていた間に、トーコと何か関係があったのか? 思わせぶりな月夜のシーンである。 メガネ中年・マキノ(村杉蝉之介)との結婚を嫌って、実家から家出してきたトーコ。そんなトーコに「何か心配事があるなら……」と優しさを見せるMIGHTY。夕食前には自主的にラップの練習を始めるなど、劇場版第1作『SRサイタマノラッパー』(09)の脳みそ空っぽだった頃とは別人のようではないか。 だが、MIGHTYから気遣われたことが、トーコは気に喰わない。 トーコ「いい年齢して、ラップなんて恥ずかしいんだよ。しがみつくものがねぇから、ラップにしがみついてるだけでしょ? そーゆーヤツがいると、しがみつくものがねぇヤツは苦しくなるんだよ、しがみつくものが見つかってねぇヤツを追い詰めるんだよ! 頼むから『負けました。夢諦めました』って、酒呑んで、愚痴って、泣いててよ、ずっと。マジでラップとか息苦しいんだよッ」 夢を追いかけている人間が近くにいると、夢を持たない人間や棄てた人間はうっとおしくて仕方ない。北野武監督が青春時代の終焉を描いた『キッズ・リターン』(96)では新人王を目指してボクシングの特訓に励むシンジ(安藤政信)を、ロートルボクサー(モロ師岡)が酒や煙草を教えて、ぬるま湯地獄へと引きづり込んでいった。夢が眩しければ眩しいほど、周囲の人間や本人まで傷つけてしまう。大事な夢と才能は、日本刀のようにきちんとサヤに収めておきたい。 逆ギレしたトーコに対して、MIGHTYが返す言葉がまた身に沁みる。 MIGHTY「おめーがやりてぇことは、おめーが見つけるしかねぇんだよ」 以前のMIGHTYならトーコに対して逆ギレ返しをしていたところだが、すぐには素直になれないトーコの蹴りをMIGHTYは股間でがっちり受け止めてみせる。当然ながらMIGHTYは悶絶することになるが、彼が充分に大人に成長したことを感じさせるひと幕だった。 『SRサイタマノラッパー』の劇場公開から8年。IKKU役の駒木根隆介は大ヒット映画『愛の渦』(14)でメインキャストのひとりを演じ、TOMこと水澤紳吾はメジャーやインディーズを問わずに活躍し、秋葉原無差別殺傷事件を題材にした主演作『ぼっちゃん』(13)では素晴しい名演技を披露している。MIGHTYこと奥野瑛太はメジャー大作『3月のライオン』で主演の神木隆之介と将棋盤を挟んで熱いバトルを演じてみせた。6月に犯罪サスペンス『22年目の告白 私が殺人犯です』の公開が控えている入江悠監督だけでなく、「SHO-GUNG」を演じる3人の俳優たちもそれぞれ自分の生きる道を懸命に模索しているところだ。新生「SHO-GUNG」のライブステージがより楽しみに思えて仕方ない。 (文=長野辰次)テレビ東京系『SRサイタマノラッパー~マイクの細道~』番組サイトより
『孤独のグルメ Season6』第3話 谷村美月の店員がたまらない! 今回は「スープカレー」1食で満足でした
いよいよ第3話となりました、深夜の飯テロ最終兵器『孤独のグルメ Season6』(テレビ東京系)。たとえ食欲を呼び覚まされて我慢ができずに、夜食を食べた後に後悔をすることになったとしても……見ないで後悔するよりはマシ。食に対するゴローちゃんこと井之頭五郎(松重豊)の情熱に共鳴することができるのならば、体重の1キロや2キロはどうってことないではありませんか。 かくて、今回ゴローちゃんがやってきたのは、目黒区。権之助坂を歩き、到着したのはプリンセスガーデンホテル。ロケに借りたお礼も込めてか、画面いっぱいにホテル名が。 昔の番組では、タイアップということで、登場人物がやってきた施設名を連呼したりするものも多かったのですが、今どきこんな番組も珍しい。あと、国際情勢の裏舞台に詳しい人は「ゴローちゃんも、いろいろと手広いなあ……」と、さまざまな想像力が膨らみます。いやいや、きっと制作者にそんな意図はありません。 新たなクライアントなのか、気合を入れてやってきたゴローちゃん。今回の取引相手であるホテルの担当者は、山崎樹範。吉井怜と結婚してシアワセなはずですが、画面の中の山崎は、けっこう厳しい顔。それものはず、ゴローちゃんの提案が期待外れだったそうで、リテイクを要求してくるのです。 相当、ゴローちゃんに期待していたのでしょうか。えらく熱いダメ出しの一幕。無難な提案をしてしまった自分に、ゴローちゃんも反省することしきり。 いやいや、ホテル全館をリニューアルするための提案。うまくいけば、相当な利益になるのは、想像に難くありません。ゴローちゃんが苦渋の表情になるのも当たり前……。それにしても、仕事に疲れた週末の夜に、こんな仕事の苦悩を思い出させるシーンを挿入するのはいったい? いや、きっと、これは爆発に向けての「溜め」のシーン。『ドラゴンヘッド』なら、トンネルの中。『進撃の巨人』なら、訓練兵団のあたりです。 あまりの悔しさにボーッと歩いていたゴローちゃんですが、やはり空腹には気づきます。そして、今日も始まる、忘れることのできない言葉の応酬。 「空きっ腹でいい仕事ができるはずない。よし、店を探そう」 どういうことか、目黒の住宅街に迷い込んでしまったゴローちゃん。そこで見つけるのは「薬膳スープカレー Shania(シャナイア)」。目黒というには随分と離れた、恵比寿ガーデンプレイス近くの住宅街にひっそりとたたずむお店。ゴローちゃんのみならず、視聴者もびっくりするような立地。しかも、番組公式サイトによれば、4月30日から1カ月ほどリニューアルのため休業予定。番組で放映されるということは、当然行列ができて儲けが待っているというのに、休業。何か信頼が置ける店ではありませんか! 裏路地の一軒家を改造したと思しき、店の外観。ひさしの上には赤い猫のぬいぐるみ。 ありますよね。このタイプの、店主が奇人で料理以外にもエンタテインメントを提供している系のワクワクさせてくれる店。店の人がキャラ立ちしている店というのは「料理の値段だけで、こんなに楽しませてもらっていいのかな」と素敵な気分になること請け合いです。 「スープカレーか……最後に食べたのいつだっけ。ま、今の俺には薬が必要だ」 そう「薬膳」の文字を見つめて入店するゴローちゃん。店内は若いカップルや女性客で、そこそこ。 さあ、とメニューを開いたゴローちゃんは、まず驚き。優しい手書きのメニューは手順がいっぱい。スープのベースや具材、辛さにライスの種類などを順番に選ぶようになっています。 「全部生薬入り、生薬ってなんだっけ」 ひとつひとつ吟味していくゴローちゃん。 「辛さね。辛いのは好きだが、初めての店では辛さの基準がわからない。かといって中辛というのも弱腰、臆病者、事なかれ主義だ」 「……最後はライス、見えた!」 パンッとメニューを閉じつつ、早口で注文をするゴローちゃん。しかし、そこに予想外の出来事が。 「スープカレーは、20分ほどお時間をいただきますが」 そう答える店員は、谷村美月。谷村美月が店員だったら、一日中だって待っちゃうよ! と、筆者は思うのですが、ゴローちゃんの空腹は店員が誰であろうと関係ありません。 「えっ、20分っ!」 ほとんど素の驚きを見せるゴローちゃん。 「この空きっ腹に20分のお預けはキツイ」 メニュー変更かと思いきや、来た。サイドメニューで小腹を満たしながら待つ作戦です。 ここで、店員・谷村「辛さはどうしますか」と、返すのですが、店はさほど混んでないのに「いっぱいいっぱい」感のある雰囲気を醸し出してます。なんというか、少々精神不安定そうな演技。どういうキャラ作りの結果なんでしょう。もしや「俺はカレーの神だーーーっ!」系のカレーじゃないよね? 「あ、チキンカレーとザンギ。鶏がダブってしまった。焦って取り乱してしまった」 一人でボケて、一人で鼻で笑うゴローちゃん。ようやく見渡す店の中は、あちらもこちらも猫の絵や雑貨でいっぱい。 「店主はかなりの猫モノとみた」 心を落ち着かせて待とうとするゴローちゃんですが、後ろでは食事を楽しむカップルや、別の客に運ばれてくる料理。どんな料理が運ばれてくるのかと待ち構えてくると、やってきたのは、ザンギ。 「空腹がマイナスまで落ち込んだ腹を、このザンギでとりあえずゼロ地点にまで戻す」 今回はひたすらに空腹だったゴローちゃん。とにかく、腹を慰めようと食べ続けます。 「おかずにもおやつにもなりそうな、マルチなザンギだ。こういう男に俺はなりたい」 そうしてついに、やってきましたスープカレー。 なんとも具材が多くて……。しかも食欲を刺激しまくる彩り。そんなものを深夜の画面に映すなんて……(今回は放送直後に録画で観たのですが、筆者はここでコンビニに走りました)。 まず一口目はスープから。 「あーーーーーーーー、これは、うまいっ!」 空腹+うまさのなせる技か、今回のゴローちゃんは、いつにも増して徹底的に演技で表現をしようとしているのです。 「このライスひたし食い、たまんない」 「ピーマンがまたいい、合う」 「いろいろ入ってるから、カレーと名乗りつつも、ちゃんこというかブイヤベースというか鍋的な楽しさもある。しかも、お薬でもあるという」 止まるところなく、ひたすらに口に運び続けるゴローちゃん。ザンギで空腹を慰めたからでしょうか。今日は、まだ落ち着いて食べているような気がします。 「カレーっちゃカレーだが、いわゆるカレーとは別物だ。でもうまい」 そして、後半。ついに上着を脱いで本格的な態勢に入ったゴローちゃん。底に沈んでいる大根に驚きます。カレーに大根。カレー味のおでん。これは、ぜひ自宅でも試してみたいものです。しかも、エリンギとかカブとか、けっこう面白い具材も入っているとは。うまいのは間違いありません。 しかし、この一食で止まらないのがゴローちゃん。 「よし、後半戦はちょっと攻めてみるか」 「あの、トッピングって途中で追加できますか」 「大丈夫ですよ」 「じゃ、温玉をお願いします」 うん、ゴローちゃんもスゴいけど、谷村のなんか精神的に不安定そうな演技もたまりません。いったい、なんなんだ……。 かくて残り三分の一ほどのカレーに投入される温泉卵。徹底的かき混ぜて、まろやかな味をさらに楽しみます。 「おっと、スープの旨さにライスが遅れを取っている」 そう、やはりグッチャグチャにかき混ぜてこそ、カレーは美味いのです。 「よぉし……」 かくて、来ましたあの音楽。 「まさに、今日の俺が出会うべき料理を、俺は食べることができた……」 止まることなく食べ続けるゴローちゃん。 「ああ、うまかった大満足」 と、今日は、このいっぱいでお終い……にはならない。 「あのすみません、メニュー見せてもらえますか?」 目をつけたのはバニラアイスでした。 「こういう店にはおいしいスイーツがあると思ったんだよな」 八角の入った独特のバニラアイスに感動するゴローちゃん。食べすぎることもなく、満足して食を終えたのであります。 今回は、抑えめの演技を繰り出してきたゴローちゃん。谷村演じる店員が、絶妙な奇人感を出していたのが、店にうまくマッチしていたと思います。メシそのものだけでなく、なんだかわからないけど、ただならぬゲストの存在感で、おなかがいっぱいになった第3話でした。 (文=昼間たかし)テレビ東京系『孤独のグルメ Season6』番組サイトより
まるでドラッグ……退廃的ムードを醸し出す『100万円の女たち』の中毒性
男を中心に、5人の女が食卓を囲んでいる。年齢も風貌もバラバラ。一人はセーラー服姿だし、一人は全裸だ。 彼女たちは、男が用意した夕食を食べながら、その料理にダメ出しをしている。 全裸の女は言う。 「味がぼんやりしてる。アナタみたい」 昨今のドラマでは『カルテット』(TBS系)や『バイプレイヤーズ』(テレビ東京系)、『住住』(日本テレビ系)など、いわゆるシェアハウスものが急増している。そんな中、同じジャンルでありながら、まったく違うムードを醸し出しているのが、この『100万円の女たち』(テレビ東京系)である。 本作は、これも急増している、ネット動画サービスと連携した制作スタイル。Netflixと共同で制作する、新たなドラマ枠「木ドラ25」の第1弾だ。 原作は『俺はまだ本気出してないだけ』の青野春秋が「ビッグコミックスピリッツ」(小学館)に連載していた同名マンガ。 売れない小説家・道間慎が、自宅の一軒家に「家賃」100万円を持って突然押しかけてきた5人の美女たちと奇妙な共同生活を送るというストーリー。 主人公の慎を演じるのは、ドラマでは見かけない顔だ。それもそのはず、映画『君の名は。』の主題歌「前前前世」の大ヒットが記憶に新しいロックバンド、RADWIMPSのボーカル・野田洋次郎なのだ。売れない小説家らしい、地味でさえない雰囲気を見事に表現している。 5人の女の中で、今のところ最も目立っている白川美波役の女性もドラマではあまり見かけないが、(なにしろ、部屋ではずっと全裸なので)強烈に印象に残る存在だ。彼女は福島リラ。主にファッションモデルとして活動し、女優としては映画『ウルヴァリン: SAMURAI』でハリウッドデビュー。その後、NHK大河ドラマ『軍師官兵衛』などにも出演している。 この普段見慣れない2人の強烈な存在感が、本作をミステリアスで新鮮な味わいにしている。 松井玲奈、我妻三輪子、武田玲奈、新木優子が演じるほかの4人の女も、それぞれ個性的で、何やら秘密を持っていそうな雰囲気だ。 夕食を食べ終えると、家に迷い込んだ猫の名前を決めようということになった。「たま」やら「漱石」やら案を出し合う、普通なら幸福感あふれるはずのシーンも、どこか不穏だ。常に緊張感が漂っている。 慎が何気なく女たちに子どもの頃の猫にまつわる思い出を訊こうとすると、「質問はしない約束でしょ」と一蹴される。 この共同生活には、いくつかのルールがあるのだ。 「女たちへの質問は禁止」 「女たちの部屋に入るのは禁止」 「夕食は全員一緒に食べる」 「女たちの世話は慎が全部やる」 「家賃は毎月100万円」 女たちはみな、「招待状」を受け取ってやってきたというが、もちろん慎が出したわけではない。誰が、どんな目的で彼女たちを集めたのかはまったくわからない。 彼女たちはなんらかの過去や秘密を抱えていそうだが、慎もまた壮絶なものを抱えている。 彼の書く小説には、人が死ぬシーンが出てこないという。なぜなら、彼の父親(リリー・フランキー)が、殺人犯だからだ。 「想像できる? 自分の父親が母親を殺しちゃうなんて」 父親は、自分の妻(つまり慎の母)とその不倫相手を殺害。さらに、駆けつけた警察官も殺害。死刑判決を受けているのだ。そのせいなのか、慎の自宅には繰り返し「死ね」「人殺し」などといったFAXが送られてくる。 こうしたサスペンス要素のほかに、このドラマの雰囲気を決定付けているのは、エロティックなムードだ。 そもそもがハーレム状態な上、慎は高級ソープランドに通っている。さらに第2話で、美波は慎の「価値観がぐるぐる揺れている」からいい小説が書けないのだと、秘密にしていた自分の職場へ慎を連れて行く。美波は、高級コールガールクラブのオーナーだったのだ。このクラブのコールガールには人気アイドルグループの一人が在籍しており、そのアイドルの値段は、なんと一晩1,000万円だという。 「質より人気という付加価値に弱い人間は、腐るほどいるの。特に、この国には」 こうした謎が謎を呼ぶサスペンスもののドラマは、その秘密を知りたいから次を見たくなる。だが、このドラマは、ちょっと違う。もちろんそうした意味で続きを見たいという欲求もあるにはあるが、それ以上に、なんだか中毒性があるのだ。 ドラマの画面から醸し出される強烈な退廃的ムードと緊張感を味わうと、理屈ではなく、またそれを味わいたくなる。 価値観がぐるぐる揺れる、麻薬のようなドラマなのだ。 (文=てれびのスキマ http://d.hatena.ne.jp/LittleBoy/) ◆「テレビ裏ガイド」過去記事はこちらから 『人生でムダなことばかり、みんなテレビに教わった』(文藝春秋) スキマさんの新刊出ました木ドラ25『100万円の女たち』(テレビ東京)







