「引退なんかしません、彼は生涯やりますよ」 恩人が語っていた宮崎駿引退宣言の真相

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『プロフェッショナル 仕事の流儀スペシャル 宮崎 駿の仕事』
 9月1日、第70回ベネチア国際映画祭の公式会見でスタジオジブリの星野康二社長が明かした、宮崎駿監督引退の発表。新聞・テレビなどが大きく報じ、本日9月6日14時からは引退記者会見が行われることとなっている。一方で、今回の引退宣言について、アニメファンからは「またか」の声もあがっているのだ。  公式会見の席上で星野社長は「『風立ちぬ』を最後に宮崎監督は長編映画の製作から引退することを決めました」と発言し、監督から退くことを明らかにした。  これを受けて、新聞・テレビでは引退を惜しむ声も挙がっているが、一方でアニメファンからは「またか」「2年ぶり三度目」「引退後の監督作に期待」と引退を本気ととらない声も多数寄せられているのだ。  というのも、宮崎監督はこれまでも何度も引退をほのめかす発言を繰り返しているからだ。  1997年公開の『もののけ姫』の際には、制作中から「最後の作品になる」と口にして引退が取りざたされた。約14万枚にわたる原画・動画に自ら手を入れる過酷な作業が限界を感じさせたからだ。しかし、完成後には「区切りがついていない、何も納得していない自分に気付いた」と発言し、2001年の『千と千尋の神隠し』を制作している。『もののけ姫』公開直前の週刊誌『AERA』1997年7月21日号では「日本アニメ界の「巨匠」の最新作は、最終作でもある」と同作を紹介。取材に答えた宮崎監督は 「今は老害寸前。老害っていうのは、仕事をいくらでもできると思い込むことなんです。生涯この仕事をやって机にうつぶして死ぬんだって言うようになったら、かなりまずい。それに、私がしがみついていては、アニメ界で若者が育たない」  と発言しているのに、である。  この引退宣言を明確に撤回したのは1998年の淀川長治賞授賞式でのことだ。この席で宮崎監督は前年の引退宣言に対して「『引退』は、つい言ってしまったこと」と公式に撤回を宣言。 「こっちは、この作品を果たして完成できるのかという本当に追いつめられた状態だった。なのに、『次の作品は?』なんて聞かれるので、『次はない!』と言っちゃった。アニメーターとしてはもう年ですが、ほかの形でこれからもやれることをやっていきたい」  と、述べているのだ(1998年4月3日「朝日新聞」夕刊)。  作品ごとに全力を注ぎこみ燃え尽きるが、しばらくたつと再び制作意欲がわき上がってくることを宮崎監督は繰り返してきたのだ。  一般にはまだ無名だった宮崎駿の才能を見いだし『風の谷のナウシカ』の製作、スタジオジブリの設立にも関わった「恩人」である故・徳間康快氏(徳間書店初代社長)は『もののけ姫』完成後の引退騒動の過程で取材に対して、次のように答えている。 「引退なんかしません、彼は生涯やりますよ」(1998年4月1日「毎日新聞」朝刊) 『もののけ姫』完成後の引退宣言の背景には、金を回収しなければいけない状況から解放されて、好きな作品をつくりたいのではないかとの説も取りざたされた。同作の完成後、宮崎駿がジブリを退社し(その後復帰)、著作権管理会社「二馬力」を設立したのもそのためだったとされている。  今回、これまでにない公式の場での発言によって宮崎監督は、本当に重圧から解放されたはずだ。「公開すればヒットする大作」の監督から引退を宣言した宮崎監督。引退記者会見でどういった発言をするか注目が集まっているが、これからの作品に、さらに期待したい。 (文=昼間 たかし)

『コクリコ坂から』公開も客入りは不穏!? スタジオジブリにつきまとう不安要素

──気になるあのニュースをただ読む以上に、さらなる知識を知りたいそんなアナタのために、話が100倍(当社比)膨らむ" プレミアム"な記事をサイゾー目線で厳選レビュー
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『BRUTUS特別編集 スタジオジブリ』
 今月16日に、スタジオジブリの最新アニメーション映画『コクリコ坂から』が封切られました。国民的アニメスタジオの最新作が公開されたとあって大きな話題となるも、オープニング成績及び、公開2週目の7月23、24日の全国動員ランキング(興行通信社調べ)では、ともに3位にとどまり、大人しい立ち上がりといったところです。 『コクリコ坂から』は1963年の横浜を舞台に、数奇な運命に翻弄される少女と少年の青春を描いた物語。ジブリの鈴木敏夫プロデューサーは、本作が日活映画にもなった『青い山脈』に影響を受けていると明言したり、今月6日に行われた先行試写会では、監督の宮崎吾朗氏がジブリは「しばらくファンタジーから離れると思う」と発言するなど、従来のジブリ作品とは一味違った作品に仕上がっています。  ジブリは現在、積極的なプロモーション活動を展開しており、主題歌を手がける手嶌葵のライブ「手嶌葵360°ライヴ in nicofarre」を、ニコニコ動画のドワンゴが手がけるライブハウス・ニコファーレにて開催。ネットを中心に話題を呼びました。また、2010年の『借りぐらしのアリエッティ』公開時に特集を組んだ「BRUTUS」(マガジンハウス)が、16日に当該記事を再編集したムック『BRUTUS特別編集 スタジオジブリ』を発売するなど、メディアでのジブリ作品に対する注目度は依然として高いといえるでしょう。  しかし、そんなジブリにも近年、後継者問題や訴求力の低下といった問題が指摘されています。そこで、今回のレベルアップ案内では、ジブリをめぐるさまざまな記事をピックアップ! ジブリ社長のありがた~いご経歴から大ヒットの『崖の上のポニョ』のツッコミどころ、台頭する気鋭のアニメ映画監督インタビューまでをご紹介。スタジオジブリは国民的アニメスタジオであり続けられるのか!? 表に出てこない裏側を追った。 【PickUp記事】 宮台真司が語る『コクリコ坂から』と父性の関係──不自由を引き受けた先にある希望と未来 2010年10月号(プレミアサイゾー) 【プレミアムな関連記事】 [レベル1:スタジオジブリの内幕] ジブリに新社長誕生! そのとき前社長・鈴木Pは...... 2008年2月2日付(日刊サイゾー) ディズニーとも仲良しでスタジオジブリは安泰? 関係者も苦笑 創価学会とスタジオジブリの意外な接点! 2008年3月7日付(日刊サイゾー) ジブリも信者数では負けていないかも スタジオジブリはピクサーを目指す? ようやく道筋のついた"宮﨑駿の継承"の方法 2010年10月号(プレミアサイゾー) やっぱり世襲制は止めたほうが吉? スタジオジブリはもう死に体!? 関係者も嘆く国民的アニメスタジオの危機 2011年8月号(プレミアサイゾー) 実は綱渡り状態ってなんで!? [レベル2:今振り返る『ポニョ』をめぐる騒動] 『崖の上のポニョ』地上波初登場も30%割れで日本テレビ局内は真っ青!? 2010年2月9日付(日刊サイゾー) テレビ離れのせいか、作品のせいか...... 日本人は、「宮崎駿」を、まったくワカッテナイ!? 賛否評論な宮崎作品の正当性を批評家たちが問う 2008年11月号(プレミアサイゾー) 『ポニョ』を著名な論者たちがメッタ斬り! 「ポニョの故郷」で起きた環境問題とジブリの沈黙 2008年10月号(プレミアサイゾー) 『ポニョ』の聖地巡礼、危うし [レベル3:ジブリを超える!? 次世代の監督たち] "ポストジブリ"細田守監督が放つ珠玉のアニメーション『サマーウォーズ』 2009年7月31日付(日刊サイゾー) 映画賞総なめでジブリも射程範囲内に? 「同じことばっかりやってて、面白い?」細田守監督が"家族肯定"に挑んだ理由とは? 2009年8月号(プレミアサイゾー) 劇場版映画の体たらくに喝を入れる! 【新海誠】"新海流"映像美の中、繰り広げられる打撃戦と"孤独"! 2011年5月号(プレミアサイゾー) ジブリみたいな映像はワザとだった!? プレミアサイゾー http://www.premiumcyzo.com/

宮台真司が語る『コクリコ坂から』と父性の関係──不自由を引き受けた先にある希望と未来

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「『コクリコ坂から』はポスト震災の
価値観に耐えうる物語だ」として、評
価する宮台真司氏。(写真撮影/田中
まこと)
──本誌連載陣であり、映画フリークとしても知られる社会学者・宮台真司氏に、社会学的な観点から『コクリコ坂から』について語ってもらった。  東日本大震災の後に発表される作品は、作り手の意図とは関係なく、どうしてもポスト震災、震災後の社会についてどう考えているのか? ということが問われてしまいます。『コクリコ坂から』は、そのハードルを見事にクリアしていると思いました。  主人公である海や俊は、異父兄妹かもしれないという自身の生い立ちや貧しい家庭環境など、自分で選択ができない不自由の中にいる。そして、それが宿命であるかのように、彼らに覆いかぶさってきます。それは歴史ある部室棟・カルチェラタンを守ろうとする連中もまったく同じです。彼女たちは、自身の出自や家族、歴史といった、入れ替えや選択が不可能な「規定されたもの」を、あえて「引き受け」つつ、それに抗いながら、未来に進もうとする。その姿はとても凛々しい。  宮崎吾朗監督の前作『ゲド戦記』は、「父さえいなければ、生きられると思った。」というコピーに表れているように、自分の抱える問題を解決することが自分のいる世界を救うことに直結する、いわゆる"セカイ系"の単なるメンヘラによる父殺しの話でしたが、『コクリコ坂から』はそうではない。海が亡くなった父に向けて毎日旗を揚げていることに象徴されるように、父親を忘れられない、あるいは父親を忘れるということが何を意味するのか、を明確に意識して描かれています。
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スタジオジブリはもう死に体!? 関係者も嘆く国民的アニメスタジオの危機

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原作の『コクリコ坂から』
──宮崎駿監督の実子である宮崎吾朗氏が監督を務め、物議をかもした『ゲド戦記』から早5年。吾朗監督の新作『コクリコ坂から』が公開された。駿パパとのタッグで作り上げた本作は、またも酷評の嵐になるのか? それともスタジオジブリ新時代の到来を告げる嚆矢となるのだろうか!?  日本アニメ界が世界に誇るアニメーション監督・宮崎駿。その愛息・宮崎吾朗が初監督作品『ゲド戦記』を発表した2006年からちょうど5年。待望の第2回監督作品『コクリコ坂から』が、今月16日より全国東宝系にて封切られた。  いわゆるアニメファン向けの"アニメ"とは一線を画し、国民的アニメ映画の供給源として確固たる地位を築き上げているスタジオジブリ(以下、ジブリ)。吾朗氏が監督、脚本(丹羽圭子と共作)を一手に手掛け、鈴木敏夫プロデューサーが提案した「主人公・アレンによる父殺し」というセンセーショナルなアニメオリジナルのエピソードに話題が集中した問題作『ゲド戦記』に続く新作ということで、本記事が世に出ている頃にはすでに劇場に足を運んだ読者もいるだろう。  話題作を継続的に発表し続けるジブリだが、かねてよりいくつかの問題点が指摘されている。  85年より宮崎駿と盟友・高畑勲を中心として、アニメ制作を行ってきたジブリが、これまでに発表した長編アニメ映画は17作。そのうち、2人が監督した作品は12作に上る。  高畑勲の作風は、『火垂るの墓』(88年)『おもひでぽろぽろ』(91年)に代表されるような、重く地味なものが多く、かと思えばファミリー向けに制作された『ホーホケキョ となりの山田くん』(99年)は記録的な客の不入りとなり、公開翌年の00年度2月期決算では21億円の特別損失を計上するという壊滅的な結果を生んでしまった。
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