「昨年は中学受験のため露出は控えめでしたが、現在は芸能活動に理解ある慶応中等部に入学したことで、以前のように仕事を入れているようです。近年で、子役からここまで順調に“成長”しているのは彼女くらいじゃないでしょうか」(テレビ局関係者) いまや、テレビで見ない日はないというくらい目覚ましい活躍を見せている芦田愛菜。 「子役からのブレークというのは芸能界でも王道中の王道ですが、彼女ほど見事に成長した人は、安達祐実さんくらいしか例がないんじゃないでしょうか。芦田さんのあとに続くといわれていた小林星蘭さんも、デビュー当時とはずいぶん印象が変わってしまいましたからね。いま活躍中の松岡茉優さんも子役時代はパッとしなかったのですが、NHK朝ドラ『あまちゃん』の出演を機にブレークしてますから、読めないところもあるんですよね」(芸能事務所関係者) その松岡と同時代に天才子役といわれていた美山加恋や大後寿々花とは、いまや完全に立場が逆転している。 「男性で子役から順調に成長したのは、神木隆之介クンくらいじゃないでしょうか。須賀健太クンも舞台等で活躍していますが、イケメンという感じではないですからね。子役は成長期に声や体形が変わってしまうことで、売れる、売れないがはっきりしてしまいます。そういう意味では、子役でブレークするも引退した大橋のぞみさんなんかは、ある意味、成功例かもしれませんね。現在活躍中の本田三姉妹も『あくまでスケート』が一番と言っていますからね」(広告代理店関係者) やはり、芦田愛菜は別格ということか。
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やっぱり芦田愛菜は別格!? ブレーク果たした松岡茉優と、逆転された“天才子役たち”の現在
「昨年は中学受験のため露出は控えめでしたが、現在は芸能活動に理解ある慶応中等部に入学したことで、以前のように仕事を入れているようです。近年で、子役からここまで順調に“成長”しているのは彼女くらいじゃないでしょうか」(テレビ局関係者) いまや、テレビで見ない日はないというくらい目覚ましい活躍を見せている芦田愛菜。 「子役からのブレークというのは芸能界でも王道中の王道ですが、彼女ほど見事に成長した人は、安達祐実さんくらいしか例がないんじゃないでしょうか。芦田さんのあとに続くといわれていた小林星蘭さんも、デビュー当時とはずいぶん印象が変わってしまいましたからね。いま活躍中の松岡茉優さんも子役時代はパッとしなかったのですが、NHK朝ドラ『あまちゃん』の出演を機にブレークしてますから、読めないところもあるんですよね」(芸能事務所関係者) その松岡と同時代に天才子役といわれていた美山加恋や大後寿々花とは、いまや完全に立場が逆転している。 「男性で子役から順調に成長したのは、神木隆之介クンくらいじゃないでしょうか。須賀健太クンも舞台等で活躍していますが、イケメンという感じではないですからね。子役は成長期に声や体形が変わってしまうことで、売れる、売れないがはっきりしてしまいます。そういう意味では、子役でブレークするも引退した大橋のぞみさんなんかは、ある意味、成功例かもしれませんね。現在活躍中の本田三姉妹も『あくまでスケート』が一番と言っていますからね」(広告代理店関係者) やはり、芦田愛菜は別格ということか。
子役→頭脳派→その次は……芦田愛菜にささやかれる“パコリーヌ”山尾志桜里との共通点
今春、大きな話題を集めたのが、芦田愛菜の慶應義塾中等部合格というニュース。幼少期から子役として活躍しつつ、わずか半年程度の受験勉強で最難関私立中学に合格したという吉報は多くの人を驚かせたが、一部では最近話題の“ある人”との共通点がささやかれている。 小学校入学前から、ドラマ、映画、CM、映画の吹き替えなど、大人以上の活躍を続けてきた芦田。ただでさえ勉強がおろそかになりがちな環境の中、学業も人並み以上の成果を残したことは驚嘆に値するが、中学合格後に出演したテレビ番組では、「医学系の道に進みたい」「病理医になりたい」と発言し、またしても周囲を驚かせた。この発言について、受験情報に通じるフリーライターはこう語る。 「慶應に入って『医学系に進みたい』ということは、当然目標は内部進学でしょう。しかし、慶應女子から慶應の医学部に進むためには、学年のTOP10に入っていないと推薦は取れません。秀才が集まる同校で、芸能活動をしながらTOP10に入るのは至難の業だと思います」 「二兎を追う者は一兎をも得ず」のことわざ通り、夢をつかむためには、いずれは芸能活動をあきらめねばならないのか? そういった例は、芦田が初めてではない。 「いま不倫問題で世間をにぎわせている“パコリーヌ”こと山尾志桜里議員は、もともと子役をしていました(当時は“菅野志桜里”)。ミュージカルの『アニー』といえば、毎回数千人が応募する子役界では最大規模のオーディションですが、山尾は見事にヒロインの座を射止め、小学6年から中学1年にかけて、“初代アニー”役を務めています。ちなみにダブルキャストのもう1人は、アントニオ猪木と倍賞美津子夫妻の娘でした。山尾は『アニー』に出た後に勉強にシフトし、東京学芸大附属高校から東京大学に現役で合格。司法試験合格後は検察官として働いていましたが、2009年に衆議院選挙に出馬して当選し、今に至っています」(週刊誌の芸能記者) 山尾の騒動が話題になる中、2人の姿を重ね合わせる人は少なくないようだ。Twitterには、「芦田愛菜は山尾志桜里と同じ末路をたどる運命な気がする」「山尾志桜里議員と芦田愛菜は非常にかぶる」といった声が登場。 「子役で成功する子どもは、高い目標を定めて、それを一つ一つクリアすることに喜びを感じるタイプ。山尾が『東大→司法試験→政治家』というルートをたどったように、芦田が『医師→政治家』という道を選んでも、なんら不思議はないでしょう。いささか気の早い話ですが、彼女の知名度を考えれば、出馬すれば当選は確実ですから、間違いなくアプローチはあるでしょうしね」(同) 確かに似通ったところが多い2人。まだ中1の芦田に不倫の話は早すぎるが、ぜひとも山尾と同じ轍を踏まぬよう気をつけてもらいたいものだ。こんな時代もありました
『山田孝之のカンヌ映画祭』最終話 映画『映画 山田孝之3D』に至る崩壊と再生と、それから芦田愛菜と……
ある日突然、「カンヌ映画祭の最高賞を目指す」を言い出した俳優・山田孝之。自らプロデューサーを買って出て“親殺し”をテーマとした作品の企画を立ち上げると、その主演に芦田愛菜を連れてきて、監督を務める山下敦弘を驚かせた。 しかし、そうして始まった『穢の森』の撮影は、クランクイン初日に空中分解。自らの理想にこだわりすぎる山田について行けず、監督・山下と主演・芦田が降板してしまった。これまで、日本映画大学校で勉強したり、実際にカンヌに行ってその雰囲気を感じ取ったり、『穢の森』にそっくりなタイトルの『殯の森』(2007)という作品で第60回カンヌ映画祭グランプリを受けた河瀬直美監督に叱られたり、マンガ家・長尾謙一郎に何枚ものイメージ画を描かせたり、長澤まさみを脱がせようとしたり……そうした努力(?)は、水泡に帰してしまった。 というわけで、最終話。「山田孝之 故郷へ帰る」を振り返る。 この映画のために作られた「合同会社カンヌ」の事務所は、荷物も片づけられて閑散としている。 現場崩壊から1週間後、山田孝之は故郷・鹿児島へ飛んでいた。最初に訪れたのは、薩摩川内市内の中学校。母校である川内南中学校に一歩足を踏み入れるだけで、山田にはこみ上げるものがあったようだ。同行スタッフに「どんなことを思い出しますか?」と問われても、「なんか、それこそこう、放課後……」と言ったきり言葉を継ぐことができない。 次に訪れたのは、生まれ育った実家だった。小型車でもすれ違えないほどの細い路地を抜けると、しかし、山田の生家は取り壊されて更地になっていた。 「なくなっちゃいましたね」 また、山田はこみ上げるものを抑えきれなくなる。山田は生家が取り壊されていたことを知らされていなかったという。 その更地に建っていた家を、なんとか思い出そうとしているのだろう。山田はここまでずっと着けていた黒いサングラスを外し、もう涙を隠そうともしない。玄関のタイル、父親と作ったベッドの部品……わずかに、思い出の残骸が次々に顔を見せてくれる。 「ああ、悔しい……もっと早く来ればよかったなぁ……」 山田は、父親が鹿児島市内で経営するダイニングバーを訪れる。ビールで乾杯。山田は更地の写真を父親に見せながら「すごい、いいとこだな、と思った」と言う。 父親が、山田の机は持ち出していたという。その引き出しから出てきたのは、卒業アルバムや卒業文集。「みんなの夢」というページには「カバディーの選手 山田孝之」とあった。 「ずっとふざけてんな、俺」 通知表に並ぶのは「1」と「2」ばかり。遅刻は中3の2学期だけで41日を数えている。 「中学のアルバムはないんだよなぁ」 中学時代にスカウトされた山田は、卒業を前に上京している。 翌日、山田は父親を釣りに誘った。ほんの1週間前まで、山下敦弘を言葉の限り罵倒したり、芦田愛菜に刺すような視線で糾弾されたり、全身全霊で映画の現場に身を捧げていた姿は、そこにはない。桜島をバックに並ぶ親子は、ごく普通の地元住人に見える。 「生まれたときのこととか、覚えてる?」 ダイニングバーに場所を移し、山田は父に話を聞くことにした。どこにでもある、ひとりの子どもの出生エピソードが語られる。 山田はこのとき、父親が30年にわたって小説を書いては、新人賞に応募していたことを初めて知る。 「実験的な生き方が好きだったんだろうね」 そう振り返る父親に、「破滅的な感じの?」と山田が問いかける。 「まあ、実験がうまくいけば破滅にはいかないんだけど」 山田は1週間前、映画プロデューサーとして一度、破滅した。監督を現場から追い出し、主演女優に降板され、多くのスタッフに迷惑をかけた。実験が、うまくいかなかったのだ。故郷に戻り、生い立ちを振り返ることで、再び自分の人生を見つめ直そうとしているのだろう。 「まあ、謙虚に反省すれば?」 それは、山田がもっとも父親に言ってほしかった言葉だったはずだ。 2人の話は「山田が俳優になっていなかったら」という話題に及ぶ。「なんとなくできる仕事をしているだけ」と語る山田に、父親は「なんか独創的に、とんでもなく発想豊かに、何の分野かわからないけど、はちゃめちゃやってそうな気もする」と言う。父親は、山田以上に山田を理解していたようだ。 山田にもう、涙はない。「おもしろい人だなぁ」と父親を評し、「その人の息子だから」と気負いを捨てることができた。 さらに1週間後、合同会社カンヌに、芦田が山田を訪ねてきた。『穢の森』の現場が崩壊した最大の理由は、芦田が自ら降板を決めたことだった。山田は、山下が去った後、自ら監督をするつもりでいたのだ。それを理解している芦田、どこか所在なさげに、勧められたパイプイスに腰を下ろす。 「親父のことを知ったら、自分のことがどんどん見えてきて」 穏やかな表情で語りかける山田の変化は、芦田にも伝わっている。2週間前までは想像もできないような、柔らかい空気が合同会社カンヌに漂っている。 「自分で枷を付けてたんですよね、あの映画撮ってるとき、面白くなかったから」 その山田の告白に、芦田も思わず笑ってしまう。 「山田さんは、次、何をやりたいんですか?」 2週間前、「山田さん何がやりたいんですか?」と言い残して『穢の森』プロジェクトを断ち切った芦田が、優しく問いかける。芦田がこれを問いかける意味を、山田も、芦田本人も、よくわかっているはずだ。 「言うの、怖いんですけど……やっぱり僕は映画が作りたい。カンヌとかそういうの関係なく、僕が本気で面白いと思うものを作れば、みんな面白がってくれると思うんですよ」 小学6年生の芦田愛菜を相手に、山田孝之はずっと敬語でしゃべっていた。 番組のカメラは、撮影スタジオに移る。壁一面にグリーンの布が垂れ下がっている。クロマキー合成で新作映画を撮影するようだ。 山田は、監督を決めかねていた。 「会ってくれるかな、山下さん……」帰京後に芦田と対面したとき、山田は不安を吐露している。 スタジオに山下敦弘が現れる。ギクシャクした2人の間に芦田が入り、「監督の山下敦弘さん」「主演の山田孝之さんです」と、お互いを紹介してみせる。クランクインは10月20日、山田孝之の33回目の誕生日だった。 ひげをそり、すっかり俳優の顔になった山田がカメラの前に立ち、山下と芦田が並んでモニターを覗き込んでいる。山田と山下がケータリングの列に並び、芦田が盛り付けの手伝いをしている。そうして完成させた『映画 山田孝之3D』は、今年6月16日に東宝配給で公開が決定している。監督はこの番組同様、松江哲明と山下敦弘。もちろん、カンヌ映画祭にも正式に応募しているそうだ。 全12話にわたって放送された『山田孝之のカンヌ映画祭』は、今までに見たことのない番組だった。どこまでが決まっていて、どこまでがアドリブだったのかはわからないし、もはやそれはどうでもいいことだ。 この番組では、映画に関わるさまざまなプロたちの剥き出しの凄味が、確かに画面上に現れていた。山田孝之と山下敦弘という、すでに多くのキャリアを積み「好きなように仕事を選べる」立場にある2人の映画人が戯画的な役割に徹し、まるで子どものように「カンヌ、カンヌ」と騒ぎ立てることで、真摯だったりイイカゲンだったりする日本映画界の側面が次々に姿を現していた。そして最後には、自分たちを崩壊するまで追い込み、そこから再生してみせた。 「もっと自由にやっていい」 きっとこの番組は、すべての日本の映画人へのテーゼとして作られたのだろう。そして、芦田愛菜こそが女神だった。 (文=どらまっ子AKIちゃん)テレビ東京系『山田孝之のカンヌ映画祭』番組サイトより
『山田孝之のカンヌ映画祭』最終話 映画『映画 山田孝之3D』に至る崩壊と再生と、それから芦田愛菜と……
ある日突然、「カンヌ映画祭の最高賞を目指す」を言い出した俳優・山田孝之。自らプロデューサーを買って出て“親殺し”をテーマとした作品の企画を立ち上げると、その主演に芦田愛菜を連れてきて、監督を務める山下敦弘を驚かせた。 しかし、そうして始まった『穢の森』の撮影は、クランクイン初日に空中分解。自らの理想にこだわりすぎる山田について行けず、監督・山下と主演・芦田が降板してしまった。これまで、日本映画大学校で勉強したり、実際にカンヌに行ってその雰囲気を感じ取ったり、『穢の森』にそっくりなタイトルの『殯の森』(2007)という作品で第60回カンヌ映画祭グランプリを受けた河瀬直美監督に叱られたり、マンガ家・長尾謙一郎に何枚ものイメージ画を描かせたり、長澤まさみを脱がせようとしたり……そうした努力(?)は、水泡に帰してしまった。 というわけで、最終話。「山田孝之 故郷へ帰る」を振り返る。 この映画のために作られた「合同会社カンヌ」の事務所は、荷物も片づけられて閑散としている。 現場崩壊から1週間後、山田孝之は故郷・鹿児島へ飛んでいた。最初に訪れたのは、薩摩川内市内の中学校。母校である川内南中学校に一歩足を踏み入れるだけで、山田にはこみ上げるものがあったようだ。同行スタッフに「どんなことを思い出しますか?」と問われても、「なんか、それこそこう、放課後……」と言ったきり言葉を継ぐことができない。 次に訪れたのは、生まれ育った実家だった。小型車でもすれ違えないほどの細い路地を抜けると、しかし、山田の生家は取り壊されて更地になっていた。 「なくなっちゃいましたね」 また、山田はこみ上げるものを抑えきれなくなる。山田は生家が取り壊されていたことを知らされていなかったという。 その更地に建っていた家を、なんとか思い出そうとしているのだろう。山田はここまでずっと着けていた黒いサングラスを外し、もう涙を隠そうともしない。玄関のタイル、父親と作ったベッドの部品……わずかに、思い出の残骸が次々に顔を見せてくれる。 「ああ、悔しい……もっと早く来ればよかったなぁ……」 山田は、父親が鹿児島市内で経営するダイニングバーを訪れる。ビールで乾杯。山田は更地の写真を父親に見せながら「すごい、いいとこだな、と思った」と言う。 父親が、山田の机は持ち出していたという。その引き出しから出てきたのは、卒業アルバムや卒業文集。「みんなの夢」というページには「カバディーの選手 山田孝之」とあった。 「ずっとふざけてんな、俺」 通知表に並ぶのは「1」と「2」ばかり。遅刻は中3の2学期だけで41日を数えている。 「中学のアルバムはないんだよなぁ」 中学時代にスカウトされた山田は、卒業を前に上京している。 翌日、山田は父親を釣りに誘った。ほんの1週間前まで、山下敦弘を言葉の限り罵倒したり、芦田愛菜に刺すような視線で糾弾されたり、全身全霊で映画の現場に身を捧げていた姿は、そこにはない。桜島をバックに並ぶ親子は、ごく普通の地元住人に見える。 「生まれたときのこととか、覚えてる?」 ダイニングバーに場所を移し、山田は父に話を聞くことにした。どこにでもある、ひとりの子どもの出生エピソードが語られる。 山田はこのとき、父親が30年にわたって小説を書いては、新人賞に応募していたことを初めて知る。 「実験的な生き方が好きだったんだろうね」 そう振り返る父親に、「破滅的な感じの?」と山田が問いかける。 「まあ、実験がうまくいけば破滅にはいかないんだけど」 山田は1週間前、映画プロデューサーとして一度、破滅した。監督を現場から追い出し、主演女優に降板され、多くのスタッフに迷惑をかけた。実験が、うまくいかなかったのだ。故郷に戻り、生い立ちを振り返ることで、再び自分の人生を見つめ直そうとしているのだろう。 「まあ、謙虚に反省すれば?」 それは、山田がもっとも父親に言ってほしかった言葉だったはずだ。 2人の話は「山田が俳優になっていなかったら」という話題に及ぶ。「なんとなくできる仕事をしているだけ」と語る山田に、父親は「なんか独創的に、とんでもなく発想豊かに、何の分野かわからないけど、はちゃめちゃやってそうな気もする」と言う。父親は、山田以上に山田を理解していたようだ。 山田にもう、涙はない。「おもしろい人だなぁ」と父親を評し、「その人の息子だから」と気負いを捨てることができた。 さらに1週間後、合同会社カンヌに、芦田が山田を訪ねてきた。『穢の森』の現場が崩壊した最大の理由は、芦田が自ら降板を決めたことだった。山田は、山下が去った後、自ら監督をするつもりでいたのだ。それを理解している芦田、どこか所在なさげに、勧められたパイプイスに腰を下ろす。 「親父のことを知ったら、自分のことがどんどん見えてきて」 穏やかな表情で語りかける山田の変化は、芦田にも伝わっている。2週間前までは想像もできないような、柔らかい空気が合同会社カンヌに漂っている。 「自分で枷を付けてたんですよね、あの映画撮ってるとき、面白くなかったから」 その山田の告白に、芦田も思わず笑ってしまう。 「山田さんは、次、何をやりたいんですか?」 2週間前、「山田さん何がやりたいんですか?」と言い残して『穢の森』プロジェクトを断ち切った芦田が、優しく問いかける。芦田がこれを問いかける意味を、山田も、芦田本人も、よくわかっているはずだ。 「言うの、怖いんですけど……やっぱり僕は映画が作りたい。カンヌとかそういうの関係なく、僕が本気で面白いと思うものを作れば、みんな面白がってくれると思うんですよ」 小学6年生の芦田愛菜を相手に、山田孝之はずっと敬語でしゃべっていた。 番組のカメラは、撮影スタジオに移る。壁一面にグリーンの布が垂れ下がっている。クロマキー合成で新作映画を撮影するようだ。 山田は、監督を決めかねていた。 「会ってくれるかな、山下さん……」帰京後に芦田と対面したとき、山田は不安を吐露している。 スタジオに山下敦弘が現れる。ギクシャクした2人の間に芦田が入り、「監督の山下敦弘さん」「主演の山田孝之さんです」と、お互いを紹介してみせる。クランクインは10月20日、山田孝之の33回目の誕生日だった。 ひげをそり、すっかり俳優の顔になった山田がカメラの前に立ち、山下と芦田が並んでモニターを覗き込んでいる。山田と山下がケータリングの列に並び、芦田が盛り付けの手伝いをしている。そうして完成させた『映画 山田孝之3D』は、今年6月16日に東宝配給で公開が決定している。監督はこの番組同様、松江哲明と山下敦弘。もちろん、カンヌ映画祭にも正式に応募しているそうだ。 全12話にわたって放送された『山田孝之のカンヌ映画祭』は、今までに見たことのない番組だった。どこまでが決まっていて、どこまでがアドリブだったのかはわからないし、もはやそれはどうでもいいことだ。 この番組では、映画に関わるさまざまなプロたちの剥き出しの凄味が、確かに画面上に現れていた。山田孝之と山下敦弘という、すでに多くのキャリアを積み「好きなように仕事を選べる」立場にある2人の映画人が戯画的な役割に徹し、まるで子どものように「カンヌ、カンヌ」と騒ぎ立てることで、真摯だったりイイカゲンだったりする日本映画界の側面が次々に姿を現していた。そして最後には、自分たちを崩壊するまで追い込み、そこから再生してみせた。 「もっと自由にやっていい」 きっとこの番組は、すべての日本の映画人へのテーゼとして作られたのだろう。そして、芦田愛菜こそが女神だった。 (文=どらまっ子AKIちゃん)テレビ東京系『山田孝之のカンヌ映画祭』番組サイトより
『山田孝之のカンヌ映画祭』第11話 もう見てられない! 正論vs正論の正面衝突が痛すぎて……
山田孝之がカンヌ映画祭最高賞目指して、監督・山下敦弘や周りを巻き込み、自分勝手に突き進む。そんな、どこまでがドキュメンタリーなのかわからない「ドキュメンタリー風」番組。 親殺しの殺人者・らいせ役には芦田愛菜、母親の愛人役には演技素人のエロマンガ家が据えられた。そして、フルヌードが必要な母親役には長澤まさみをブッキングしてみたものの、あえなく「脱げない」と断られてしまったところが前回まで。今回は、そんなこんなで迎えた『穢の森』クランクイン初日の様子が描かれた。 ヌードを断り、番組のナレーションを引き受けた長澤によれば、この8月29日のクランクイン当日は山下監督の誕生日なのだという。 「山田プロデューサーの粋な計らいです」 と長澤。しかし、この日は山下監督にとって、もしかしたら映画人生で最悪の1日だったかもしれない。 「第11話 芦田愛菜 決断する」を振り返る。 撮影はクライマックスから始まるという。長澤まさみの代役として用意されたのは、全高3メートルはありそうなグロテスクなオブジェ。山田がマンガ家・長尾謙一郎に依頼して描かせたイメージボードそのものだが、上半身が異様に膨れ上がり、顔面は焼け焦げたように真っ黒で、目鼻の判別もできない状態。髪は金髪。芦田がそのドテッ腹に包丁を突き立てると、ぴょろろ~と乳首から水が飛び出す謎仕様だ。刺されたオブジェは、火柱を上げて爆発するのだそうだ。これにより「狂い死に」を表現しているらしい。改めて、長澤まさみの降板という判断は正しかったと感じてしまう。 山下と芦田は大喜びだが、リハ中も終始憮然とした表情の山田。ひと通り打ち合わせを見届けると、まずはカメラマン(是枝裕和監督とのコンビで数々の賞を受けている山崎裕だ)に「発泡スチロールの質感」について確認する。 さらに気に食わないのが、長尾のイメージボードそのままに作ってきたのに、サイズ感が足りないこと。確かに長尾の絵では、この「さちこ」は港湾に並ぶガントリークレーンより、はるかにでかい。たぶん50メートルとか、それくらいあるのだろう。それを作れというのか、山田。 乳首から出る水の勢いを増すことで妥協点を見出そうとする山下だが、山田は聞く耳を持たず、とりあえず「3倍くらいの大きさ」のオブジェを要求する。それには3週間の期間と、さらなる予算が必要になるというのに。 「これで撮りたい」と言い張る監督・山下と、「1回戻して(撤去して)もらっていいですよ」と、スタッフに撮影中断を指示するプロデューサー・山田。現場に険悪な空気が流れだす。右往左往するチーフ助監督に、ベテランカメラマン・山崎が「方向性が出ない、どうしようもない」と、穏やかな表情ながら吐き捨ててみせる。ものすごい緊迫感だ。 ■芦田愛菜をヘビに噛ませる 結局、「さちこ」は撤去された。 問題は、まだある。明日、芦田がヘビに噛まれるシーンがあり、そのヘビを確認することになる。 用意されたヘビは3匹。「噛まれたときにケガが小さいのはこれで、ものすごい大ケガしそうな可能性があるのはこちら」と、ヘビ担当者が淡々と説明する。芦田は、うろたえつつ「やってみます」と口にする。「明日までに仲良くなっておいて、甘噛みみたいな……ないですかね」と、与えられた条件の中で少しでも現実的な方法を模索しているようだ。小学校6年生。見上げたプロ根性である。 「血がけっこう、多く出るんです」という担当者の説明に、「それ、大丈夫? 芦田さん」と大丈夫なわけがない質問をぶつける山下。まずは自分が噛まれてみることにするが、案の定、血が多く出てしまう。「芦田さん、こんな感じ」と平静を装う山下だが、一同ドン引きである。 山下は、当然だが、噛まれるシーンを吹き替えにして、カットを割ることを提案。しかし山田は「ワンカットです」と、にべもない。 ■さらに険悪になっていく山田・山下コンビ さらに悪いことに、愛人役のエロマンガ家が一度は了承したはずの「火だるま」シーンを「ちょっと無理」と言い出した。「火傷とかのリスクがあると思うんですよね」そりゃそうだ。 スタントマンを用意することを提案する山下に対し、山田は「覚悟の問題だと思うんですよ」と、これも譲らない。「噛まれてくれたら、俺も噛まれます。燃えてくれたら俺も燃えますよ」と、なんの生産性もない提案をしてくる。 話は再び「さちこ」へ。3週間待ってでも巨大「さちこ」にこだわる山田と、予算や日程などの現実的な問題を加味しながら、あくまでこの日にクランクインしたい山下。出資者である山田ファンの稲垣さん(ガールズバー経営)からの振り込みも滞っており、映画そのものの完成も危ぶまれてきた。 この日、40歳を迎えた山下は大人として、数々の現場を仕切ってきたプロの映画人として、冷静に山田を説得しようと試みる。誠意をもって話す山下に「仕方ないです」「無理なんだったら無理です」と冷たく言い放つ山田。 小柄な山田が、さらに小柄な山下を見下しながら、 「意味のないこと、なんのためにやるんですか?」 「意味わかんないです」 「とりあえず撮りたいってことですか?」 「妥協しかないじゃないですか」 「とりあえず撮りたいんだったら好きなもん撮ればいいじゃないですか。いつもやってるように」 「一生カンヌ獲れないですよ。妥協妥協妥協じゃ」 さすがにここまで言われて、山下も黙っていない。 「それはちょっと失礼じゃない?」 ちょっとじゃない。すごく失礼だ。 「なんで俺の映画作りを否定すんの?」 「今までの俺の映画が全部クソってこと?」 山下も感情が高ぶってくる。それでも山田は止まらない。 「いいっす、もういいっす。帰っていいっすよ。いらないっす」 すわ、乱闘か、という雰囲気である。殴ってしかるべき場面だ。 「ホントに終わりなの、これで」 スタッフを集め、ここまで進めてきた企画に未練を残す山下の肩を叩き「ホントもういいっす」「もうやだ」と、山田はまるで子どものように駄々をこねて、山下を現場から追い出してしまう。 山田をブン殴るかわりに、全力疾走で現場をあとにする山下。自分の現場から、いの一番にいなくなる映画監督とは、どんな気分だろうか。スタッフたちも、山田の話より山下のほうが気になって仕方がない。 突如、森の向こうから爆発音がして、火柱が上がった。「さちこ」が燃えてしまったようだ。監督もいないし、「さちこ」もいない。これで、この日のクランクインは絶望的になってしまった。 ■芦田愛菜からの糾弾が突き刺さる 撮影は延期に。監督も自分でやることにした山田は、主演女優・芦田に「気持ちを切らさないで」と話そうとするが、その山田の言葉を聞かずに、芦田が山田を糾弾する。 「山田さん何がやりたいんですか?」 冷たい声だ。芸能界の先輩で、大人で、ついさっきから監督でもある山田に、芦田愛菜からの容赦ない視線が突き刺さる。山田は芦田に視線を合わせることができない。気まずい時間が流れる。鳥の声がする。 ちょこん、と愛らしく芦田は頭を下げ、「ごめんなさい」と言って踵を返した。この回の表題「芦田愛菜 決断する」は、『穢の森』からの降板を意味していた。 クランクインの20日前、山下と芦田が並んで打ち上げ花火を見上げ、その後ろでつまらなそうな山田が座っているシーンで今回はエンドロール。 「さちこ」が爆発炎上したことで、今回はより“フェイク”の部分が強調され、なんとか見通すことができた。これ、全部が全部ガチのマジだったら胃が痛すぎて見ていられなかっただろう。とにかく山田孝之の言っている理想論が全部正論だし、山下敦弘の言っている現実論も全部正論なのだ。正論と正論が正面衝突すると、相手の人格やキャリアを否定するところにまで到達してしまう。2人とも、そこまで言いたいわけじゃないのだ。ただ「完成」が見たいだけなのだ。映画のみならず、物作りに携わった経験のある人間にとっては、涙なくしては見られなかった回だったはずだ。 次回は最終回。「山田孝之 故郷へ帰る」のだそうだ。山田は、そして『穢の森』の監督であったのと同時にこの『山田孝之のカンヌ映画祭』というテレビプログラムでも松江哲明と並んで「監督」にクレジットされている山下は、どんな結末を用意しているのだろう。楽しみで仕方がない。 (文=どらまっ子AKIちゃん)『山田孝之のカンヌ映画祭』テレビ東京より
『山田孝之のカンヌ映画祭』第11話 もう見てられない! 正論vs正論の正面衝突が痛すぎて……
山田孝之がカンヌ映画祭最高賞目指して、監督・山下敦弘や周りを巻き込み、自分勝手に突き進む。そんな、どこまでがドキュメンタリーなのかわからない「ドキュメンタリー風」番組。 親殺しの殺人者・らいせ役には芦田愛菜、母親の愛人役には演技素人のエロマンガ家が据えられた。そして、フルヌードが必要な母親役には長澤まさみをブッキングしてみたものの、あえなく「脱げない」と断られてしまったところが前回まで。今回は、そんなこんなで迎えた『穢れの森』クランクイン初日の様子が描かれた。 ヌードを断り、番組のナレーションを引き受けた長澤によれば、この8月29日のクランクイン当日は山下監督の誕生日なのだという。 「山田プロデューサーの粋な計らいです」 と長澤。しかし、この日は山下監督にとって、もしかしたら映画人生で最悪の1日だったかもしれない。 「第11話 芦田愛菜 決断する」を振り返る。 撮影はクライマックスから始まるという。長澤まさみの代役として用意されたのは、全高3メートルはありそうなグロテスクなオブジェ。山田がマンガ家・長尾謙一郎に依頼して描かせたイメージボードそのものだが、上半身が異様に膨れ上がり、顔面は焼け焦げたように真っ黒で、目鼻の判別もできない状態。髪は金髪。芦田がそのドテッ腹に包丁を突き立てると、ぴょろろ~と乳首から水が飛び出す謎仕様だ。刺されたオブジェは、火柱を上げて爆発するのだそうだ。これにより「狂い死に」を表現しているらしい。改めて、長澤まさみの降板という判断は正しかったと感じてしまう。 山下と芦田は大喜びだが、リハ中も終始憮然とした表情の山田。ひと通り打ち合わせを見届けると、まずはカメラマン(是枝裕和監督とのコンビで数々の賞を受けている山崎裕だ)に「発泡スチロールの質感」について確認する。 さらに気に食わないのが、長尾のイメージボードそのままに作ってきたのに、サイズ感が足りないこと。確かに長尾の絵では、この「さちこ」は港湾に並ぶガントリークレーンより、はるかにでかい。たぶん50メートルとか、それくらいあるのだろう。それを作れというのか、山田。 乳首から出る水の勢いを増すことで妥協点を見出そうとする山下だが、山田は聞く耳を持たず、とりあえず「3倍くらいの大きさ」のオブジェを要求する。それには3週間の期間と、さらなる予算が必要になるというのに。 「これで撮りたい」と言い張る監督・山下と、「1回戻して(撤去して)もらっていいですよ」と、スタッフに撮影中断を指示するプロデューサー・山田。現場に険悪な空気が流れだす。右往左往するチーフ助監督に、ベテランカメラマン・山崎が「方向性が出ない、どうしようもない」と、穏やかな表情ながら吐き捨ててみせる。ものすごい緊迫感だ。 ■芦田愛菜をヘビに噛ませる 結局、「さちこ」は撤去された。 問題は、まだある。明日、芦田がヘビに噛まれるシーンがあり、そのヘビを確認することになる。 用意されたヘビは3匹。「噛まれたときにケガが小さいのはこれで、ものすごい大ケガしそうな可能性があるのはこちら」と、ヘビ担当者が淡々と説明する。芦田は、うろたえつつ「やってみます」と口にする。「明日までに仲良くなっておいて、甘噛みみたいな……ないですかね」と、与えられた条件の中で少しでも現実的な方法を模索しているようだ。小学校6年生。見上げたプロ根性である。 「血がけっこう、多く出るんです」という担当者の説明に、「それ、大丈夫? 芦田さん」と大丈夫なわけがない質問をぶつける山下。まずは自分が噛まれてみることにするが、案の定、血が多く出てしまう。「芦田さん、こんな感じ」と平静を装う山下だが、一同ドン引きである。 山下は、当然だが、噛まれるシーンを吹き替えにして、カットを割ることを提案。しかし山田は「ワンカットです」と、にべもない。 ■さらに険悪になっていく山田・山下コンビ さらに悪いことに、愛人役のエロマンガ家が一度は了承したはずの「火だるま」シーンを「ちょっと無理」と言い出した。「火傷とかのリスクがあると思うんですよね」そりゃそうだ。 スタントマンを用意することを提案する山下に対し、山田は「覚悟の問題だと思うんですよ」と、これも譲らない。「噛まれてくれたら、俺も噛まれます。燃えてくれたら俺も燃えますよ」と、なんの生産性もない提案をしてくる。 話は再び「さちこ」へ。3週間待ってでも巨大「さちこ」にこだわる山田と、予算や日程などの現実的な問題を加味しながら、あくまでこの日にクランクインしたい山下。出資者である山田ファンの稲垣さん(ガールズバー経営)からの振り込みも滞っており、映画そのものの完成も危ぶまれてきた。 この日、40歳を迎えた山下は大人として、数々の現場を仕切ってきたプロの映画人として、冷静に山田を説得しようと試みる。誠意をもって話す山下に「仕方ないです」「無理なんだったら無理です」と冷たく言い放つ山田。 小柄な山田が、さらに小柄な山下を見下しながら、 「意味のないこと、なんのためにやるんですか?」 「意味わかんないです」 「とりあえず撮りたいってことですか?」 「妥協しかないじゃないですか」 「とりあえず撮りたいんだったら好きなもん撮ればいいじゃないですか。いつもやってるように」 「一生カンヌ獲れないですよ。妥協妥協妥協じゃ」 さすがにここまで言われて、山下も黙っていない。 「それはちょっと失礼じゃない?」 ちょっとじゃない。すごく失礼だ。 「なんで俺の映画作りを否定すんの?」 「今までの俺の映画が全部クソってこと?」 山下も感情が高ぶってくる。それでも山田は止まらない。 「いいっす、もういいっす。帰っていいっすよ。いらないっす」 すわ、乱闘か、という雰囲気である。殴ってしかるべき場面だ。 「ホントに終わりなの、これで」 スタッフを集め、ここまで進めてきた企画に未練を残す山下の肩を叩き「ホントもういいっす」「もうやだ」と、山田はまるで子どものように駄々をこねて、山下を現場から追い出してしまう。 山田をブン殴るかわりに、全力疾走で現場をあとにする山下。自分の現場から、いの一番にいなくなる映画監督とは、どんな気分だろうか。スタッフたちも、山田の話より山下のほうが気になって仕方がない。 突如、森の向こうから爆発音がして、火柱が上がった。「さちこ」が燃えてしまったようだ。監督もいないし、「さちこ」もいない。これで、この日のクランクインは絶望的になってしまった。 ■芦田愛菜からの糾弾が突き刺さる 撮影は延期に。監督も自分でやることにした山田は、主演女優・芦田に「気持ちを切らさないで」と話そうとするが、その山田の言葉を聞かずに、芦田が山田を糾弾する。 「山田さん何がやりたいんですか?」 冷たい声だ。芸能界の先輩で、大人で、ついさっきから監督でもある山田に、芦田愛菜からの容赦ない視線が突き刺さる。山田は芦田に視線を合わせることができない。気まずい時間が流れる。鳥の声がする。 ちょこん、と愛らしく芦田は頭を下げ、「ごめんなさい」と言って踵を返した。この回の表題「芦田愛菜 決断する」は、『穢れの森』からの降板を意味していた。 クランクインの20日前、山下と芦田が並んで打ち上げ花火を見上げ、その後ろでつまらなそうな山田が座っているシーンで今回はエンドロール。 「さちこ」が爆発炎上したことで、今回はより“フェイク”の部分が強調され、なんとか見通すことができた。これ、全部が全部ガチのマジだったら胃が痛すぎて見ていられなかっただろう。とにかく山田孝之の言っている理想論が全部正論だし、山下敦弘の言っている現実論も全部正論なのだ。正論と正論が正面衝突すると、相手の人格やキャリアを否定するところにまで到達してしまう。2人とも、そこまで言いたいわけじゃないのだ。ただ「完成」が見たいだけなのだ。映画のみならず、物作りに携わった経験のある人間にとっては、涙なくしては見られなかった回だったはずだ。 次回は最終回。「山田孝之 故郷へ帰る」のだそうだ。山田は、そして『穢れの森』の監督であったのと同時にこの『山田孝之のカンヌ映画祭』というテレビプログラムでも松江哲明と並んで「監督」にクレジットされている山下は、どんな結末を用意しているのだろう。楽しみで仕方がない。 (文=どらまっ子AKIちゃん)『山田孝之のカンヌ映画祭』テレビ東京より
『山田孝之のカンヌ映画祭』第10話 “大女優”長澤まさみは「脱ぐ」のか!? 山田孝之、決死の説得で……
山田孝之がカンヌ映画祭最高賞目指して、監督・山下敦弘や周りを巻き込み、自分勝手に突き進む。そんな、どこまでがドキュメンタリーなのかわからない「ドキュメンタリー風」番組。 これまで、芦田愛菜に殺人鬼役やらせたり、大手に出資してもらえなくて山田のただのファンの社長に数千万出資させたり、カンヌ常連監督・河瀬直美に、カンヌに寄せたあざとい映像を見せて叱られたり、前科者役を探すのに本物の前科者を集めてオーデションしかけたり(結局、可能性が高いだろうということで「無職」の人から探すことに譲歩)、村上淳に首吊り特訓させておいて歌が下手だと即日解雇したり、とにかく「どうかしちゃってる山田」を堪能させてくれた。 そして前回のラスト、打ち合わせ中に突然、長澤まさみが現れた……! それは、またしても勝手に決めた山田が、母親役として呼び寄せていたのだった。 「第10話 長澤まさみ 悩む」を振り返りたい。 長澤は芦田の母親役ということしか聞いていないらしく、山田とも久々だし、芦田とも共演してみたいとの思いでやってきたらしい。まだ詳しくは何も知らぬ彼女に、簡単なあらすじと特殊な映画の撮影方法が説明される。 あらすじとしては、父親と娘・らいせ(芦田)を殺しかけた母親・さちこ(長澤)と、その愛人・北村(オーディションで選んだ渡邊さん)に、奇跡的に助かったらいせが復讐を遂げる物語だ。 そして、その撮影方法とは、奇才漫画家・長尾謙一郎による十数枚からなる絵からイメージして、台本などなしで撮影に挑むという山田流。絵を「読んで」おくように言われ、思わず「読む?」と問い返してしまう長澤。 ■ちゃんと演出をする山下 問題は長尾の描いた最後の絵、狂い死に、裸のまま水死体となった母親・幸子。これをどう描くかをリハーサルしながら長澤を交えて作っていくらしい。 役の気持ちを問う芦田に「自分を産んでくれた育ててくれた母を、もう自分は殺すと決めてる。その気持ちが悲しい」と演出する山下。 よく考えたら、この番組始まって以来の山下のプロフェッショナルな一面だ。いつも演出や決定は山田に奪われており、これが本職としての山下の姿なのだが、普段ただの子分のようなダメ男イメージがすっかり染み込んでいるので、こうしたちゃんと「できる」姿を見せられると、ついきゅんとしてしまう。「ダメに思わせておいて、実は最後にちゃんと出来る」マギー(司郎)一門の手口である。 ■長澤まさみのすごさ 芦田に殺されかかった長澤が、恐怖に追い込まれ狂ってしまう演技。「狂い死ぬ」というのがキーらしい。 「私は何も悪くない! 私は何も悪くない!」 こんなこと言ったら失礼だが、その芝居がさすがなのだ。編集されているとはいえ、直前までの漠然とした打ち合わせや、ふわーと現れた雰囲気を見ているだけに、いきなり役を仕上げ、具体的に演じる役者のパワーをはっきりと感じる。先ほどの山下もそうだが、やはりプロの仕事を、プロのレベルでこうやって見せてくれるあたり、実にまっとうな「ドキュメンタリー」である。 金を出したので現場をうろうろしてる出資者の稲垣さん(ガールズバー経営)も、これを間近で観れるとはいい買い物だったはずだ。せめてそうあってほしい。 長澤の演技を絶賛する山下と山田。「見えましたよね」これはいい作品になるのではといった空気が広がる。 ■脱ぐのか、脱がないのか? ここで、先日の「前科者」オーディションで見事愛人の北村役を勝ち取った、渡邊元也(エロ漫画家)が到着。刺殺されてるのに「イテテテテテテテテ」と、まるで緊張感のない珍演技で相手役の芦田も笑ってしまうほどだったのだが、なぜか合格し、長澤と挨拶など交わしていやがる。長澤の輝けるキャリアの中で、最弱の相手役だろう。体育座りしてて長澤を見ながら発した「映画観てるみたい」とは正直な気持ちだろう。 しかし、ここで問題が。 ベッドシーンのリハーサルをする直前、山田と山下の会話から「今日は脱がせたらダメ」などとの内容が漏れて聞こえてくる。思わず「質問なんですけど、なんかこう、そういうシーンって、見えない感じ……ですよね?」と長澤が問う。 しかし、山田と山下は、「体がですか?」「見えない?」「プライド……?」とピンと来ていない様子。ついには長澤に「局部みたいなものが……」とまで言わせる始末。長澤は、全裸の絵を見て、あくまでイメージだと思っていたらしい。 しかし山田は「状況的に着衣ではない」「隠しはしないですよ?」と、断言する。視聴者は、この現場では彼が決めたことが絶対なのを知っている。そんなブルドーザーのような山田と、「やっぱ気になりますうー?」と抜かす無神経・山下の波状攻撃。 「そうなんですねー……」と困りながら言葉を選ぶ長澤と、その横で頷く、相手の素人・渡邊。まさか、自身初のフルヌードの対戦相手が素人のエロ漫画家だとは、夢にも思わなかっただろう。渡邊の目は怖いほど真剣だ。芝居下手なのに。 「ここまでストーリーがわからない中で、それ(ヌード)が必要なのかわからない」 長澤も判断しかねている感じだ。いや、おそらく「なし」なのだろうが、「今すぐには(返事は)難しいかなぁ……」と消極的だ。それはそうだろう。変な深夜番組の、変な映画で、変な顔の素人が相手だ(失礼)。これで引き受けでもしたら、それこそ長澤が変だ。 「今、この場では回答はできないかもしれない」と申し訳なさそうに答える女性マネジャーに、山田は「あー、それか」と吐き捨てる。意味ありげに「持ち帰って・社内で・話し合って・みたいなことですか?」と、さらに確認する。 山田は、所属する事務所に、どんな仕事をやるかの選択・判断は、山田自身に委ねさせてもらっていると『山田孝之の東京都北区赤羽』の中で語っていた。それは、今回の「長澤」という事例だけでなく、この手の回答を、かつて何度となく見てきたであろう。それは長澤どうこうではなく、一部の役者や事務所や映画会社、ひいては旧態依然とした業界の悪しき慣習などに対する苛立ちの蓄積を表しているようにも見えた。 ■エロ漫画家・渡邊という男 山下は、カンヌのために「魂」を込めたいと、長澤に全部出してほしいと説得する。 その流れで「もちろん渡邊さんも全部出すでしょ?」と目の前にたたずむ素人の決意までも引き合いにだすが、長澤はピンときていない。当たり前だ。長澤を抱ける千載一遇のチャンスだからか、とっさに「もちろん脱ぎます」と即答する素人・渡邊。 しかし、渡邊が火だるまで殺されるシーンもスタントなしでやるんだと「初耳」の決定事項を聞かされ、目を丸くする。エロにつられて安請け合いしたら、火だるまにされるという、もはやおとぎ話。 長澤と全裸で芝居することも「初めて聞いた」はずなのに、火だるまを聞いたときだけ「初めて聞いたんですけど」と食ってかかる姿は、煩悩の塊。さすがエロ漫画家。 山下は、さらりと最後に爆死することまで付け足し「これできたら、スタントマンの仕事とかめっちゃくるかも」と余計なリクルートを斡旋する。細かった渡邊の目はリアルな「死の危機」を耳にして以来、ずっと刮目している。ちなみにこのやり取りの最中の、長澤の目は死んでいた。かわいそう。 ■あの手この手で「脱がせ」にかかる! 長澤が脱ぐのに抵抗がある理由として「昔はいいと思っていた」が「大人になって見え方が美しいものなのか?」と自分で疑問があると言う。 一旦返事を持ち帰ることになった長澤に、例の絵を全て渡すが、おそらく断るのを決めているだろう長澤は気まずそうだ。 後日、東宝に場所を移しての打ち合わせ。ここで、長澤 VS 山山コンビの激しい脱がせの攻防が繰り広げられる。 まず、「全裸が必要条件の一番だと言われたらお断りした方がいいのかも」と先制パンチを繰り出す長澤に、 ・一番ではない。一番は気持ち。(山田) ・この前のリハを見て逆に服が邪魔だと思った。(山下) と、やり返す2人。徹底抗戦のかまえ。 映画の規模の大きい小さいでは決めているわけではないと長澤が断言する。では理由は何か。 山下が仕掛ける。見えて当然のシーンでも無理に隠す日本映画を不自然に感じたことないか? それを「僕ら」で変えていきたいんだと、続く日本映画のために、パイオニアとして先陣切ってやってやるんだと、大義をちらつかせる。 さらには「俺も現場で全裸で演出してもいいですよ」と、長澤にとってどうでもいいことを言い出す。長澤は、先日の渡邊が火だるまになるのを聞いたときと同じ顔だ。 どさくさに紛れて「カンヌって、そういうやり方らしいんですよ?」と結構な嘘まで言っていた。 普段、山下を困らせてばかりの山田も「日本だとそういうのないから」「こっから先、(映画の)誤魔化しがきかなくなる」「脱ぐことで強さ・気持ち・表情が出る」と、かつてないほどの協力体制。北風と太陽が手を組み、なりふり構わず女性を脱がそうとしているような必死さだ。 さらには「一瞬」「ちらっと」「片方」など、一口アイスをもらおうとしてる子どものような言葉を口にして、長澤に怪しまれてしまう。 ついには、「僕らは男として長澤さんの裸を見たいわけじゃなくて、映画を作る上で、さちこに脱いで欲しいんです」と余計に怪しい言葉まで口にしてしまう。言えば言うほど、脱がせたい感があふれる2人。 結局「なんか身体だけなのかなーって」と、ますます長澤に警戒されてしまうはめに。がんばれ2人とも! ・リアルな丸見えな感じだと引くのでは? 内容が頭に入らないのでは? ・「今の私が脱ぐとストーリー関係なく、そこだけしか注目されないということがわかったから」「今やるべきことではないと思う」 以上の理由を口にする長澤の決意は固そうだ。 ■全裸→ナレーションに変更 話し合いを終え、席を立つ山下の「じゃあ」という言葉に、もう降板するつもりの長澤は「すいません」、山下は「よろしくお願いします」。噛み合わない。 直後、「こうして、私が映画に出演することはなくなりましたが、流れでこの番組のナレーションは引き受けることになりました」との経緯が長澤本人の声で説明される。まさか裸と引き換えのナレーションだったとは。しかし残念。 そして、長澤の代わりは巨大な「像」を使い、それを「さちこ」として撮影することに。その「像」のビジュアルはおそらく長尾作で、巨大な球に近い全裸、その乳首から水が噴き出してるという前衛的なもの。 「これをいじると、また違うって言い出すから」と、この通り忠実に再現するように助監督に発注の指示を出す山下。山田を見越してのことなのは言うまでもない。 そしてついに、8月29日クランクイン当日を迎えたところで次週へ。 次週は「第11話 芦田愛菜 決断する」 ふざけつつも、「もしも長澤まさみが知り合いに無理なヌードをお願いされたら?」という、よくできたドキュメンタリーを見せてくれた今回。クランクイン5日前にする作業とは思えないが、いよいよ撮影が始まる。 あのまま、村上淳や長澤まさみが出演していたら、十分メジャーでも勝負できそうな豪華さなのだが、山田はそれをよしとしなかった。それを蹴ってでもこだわった内容。果たして映画は完成するのか? 5月の「カンヌ」は期待していいのか? いよいよ残りあと2回。 (文=柿田太郎)テレビ東京系『山田孝之のカンヌ映画祭』番組サイトより
『山田孝之のカンヌ映画祭』第9話 通底する山田孝之の“強靭な覚悟”と、芦田愛菜の“奇妙なひと夏”
突如カンヌ映画祭で最高賞を受賞したいと言い出した山田孝之と、彼に巻き込まれた人々との映画『穢の森』制作過程を追った、ドキュメンタリーのような、ドキュメンタリーじゃないような番組。 殺人鬼役にいきなり芦田愛菜を連れてきたり、自身のただのファンの社長に資金を出資させたり、その金でフランスのカンヌ事務局に押しかけちゃったりと、基本「どうかしちゃってる山田」に、監督を頼まれた盟友・山下敦弘が振り回されるという図式で、主に展開してきた。 前回は、山田が、犯罪者役に本物の前科のある人を使いたいと言い出したり、特に説明しないで父親役に俳優の村上淳を連れてきて、いきなり首吊りの特訓を押し付け戸惑わせたり、かなりの面白回だった。 そして今回は「第9話 村上淳 木になる」を振り返る。 ■『バイプレイヤーズ』の名前が3人も 「殺されかけ、森で目を覚ました芦田演じる少女らいせに、殺そうとした犯人が母親であると教える森の木々。」の「木」の役を誰にするかのキャスティング(配役)会議。 ホワイトボードには、候補の名前がずらりと並ぶ。市村正親、木下ほうか、田中泯などのリアルな「木」感あるチョイスに混じり、内田裕也や樹木希林(たまたま夫妻)や美輪明宏らのレジェンドの名前も。さらに、大杉漣、田口トモロヲ、松重豊の名前も。彼らは全員、テレ東系で、この番組のひと枠前に放映されている、同じくドキュメント風のドラマ『バイプレイヤーズ』に本人役で出演しているメンバーだ。 この『山田カンヌ』は昨年の夏に撮影されているので偶然だとは思うが、『バイプレイヤーズ』の「もしも6人の名脇役がシェアハウスで暮らしたら」というコンセプトの「名脇役」具合を証明する形となった。 ちなみに、同じフェイクドキュメンタリーとしてくくられる両番組だが、この『バイプレイヤーズ』はどちらかというと本人を使ったセルフパロディで、アドリブもあるだろうが基本はしっかりとドラマであり、『山田カンヌ』のドキュメタリー感を90だとすると、『バイプレイヤーズ』のそれは40くらいで、いい意味で安心していられる。放送時間的にも、『バイプレイヤーズ』で肩慣らし→『山田カンヌ』でリアルにハラハラ、といった感じだろうか。今さらだが。 しかも次回9話の『バイプレイヤーズ』に村上淳がゲスト出演することが決定。もはや、どこまでが偶然なのかわからないようなリンクをみせる。 出資者の稲垣社長(ガールズバー経営)から「主題歌に使って欲しい」と送られてきた、お店の女の子たちで作られたグループ「G-girls」のCDを、再生開始10秒で停止、即ボツにする山田。まだ歌にも差し掛かかってないので「いちおう全部聞かなくて大丈夫?」と確認する山下に、「いや、『ない』じゃないですか絶対」と吐き捨てるように全否定。確かに公開されたパイロットフィルムには絶対合わなそうな、ブレイクビーツのようなケミカルブラザーズのような音ではあったが、容赦がない。 ちなみに個人的に続きが聞きたくなり「G-girls」でも、CDタイトル「きまぐれバスローブ」でも、両方グーグル検索をかけてみたが、どちらも一件もヒットなし。グラビアユニット「G-Girls」がガンガンヒットする。 ■首吊りのアザができるほど練習したのに 出演オファーを受け、首を吊る父親役を吹き替えなしで演ってほしいとの山田の真剣な想いに応えるため、個人的に首吊りの特訓をしてきた村上淳が稽古場に登場。なんと首にはうっすらと特訓の「跡」が見える。 自作の首吊り用のロープも持参し、いよいよリハーサル。しかし、その直前「首(のアザ)も心配なんで」という理由で、あっさり村上の役を父親から「木」に変えてしまう山田。 芦田に語りかける木々の木の役だと説明を受けるが、「木として?」と、ピンときていない村上。そりゃそうだろう、父親から急に植物に退化されたのだ。 アザができるほどの特訓の成果がどうなったかも知ることができない我々視聴者と、披露することも語ることも許されぬまま、もう次の役の説明を浴びせかけられる村上。お互い狐につままれたよう。 失礼な配役変更にもかかわらず「重要な役だったら、ワンシーンでも木でも僕は全然(いいです)」と、村上はどこまでも真摯な対応を見せる。 まだ急な変更に納得できず、父親役を模索しようとする山下と、「とりあえずなんか、その『首(吊り)』はもうやめましょうよ? 責任とれないですよ?」と理不尽この上ない逆ギレをみせる山田。ヘビーな「トムとジェリー」。結局、父親役は、首くくり栲象が演じることに。 ■リハーサル1回目 らいせ(芦田)と木(村上)の会話。両手を枝のように広げ、何本もの木を演じる村上。 「その木たちは、全員らいせの味方なんじゃ~」 山下が途中、BGMをイメージして、「ブップップ、ブップップ……」と下手くそなボイスパーカッションらしきものをかぶせる。一見、学芸会のようだが、こういうもんだと言われたら納得してしまうかもしれない。 ■リハーサル2回目 プロット(おおまかなあらすじ)の言葉を元に、歌ってみようと芦田が提案。ここで驚いたのが、芦田の歌が上手いということだ。カラオケ的なうまさではなく、歌詞にメロディをつけて表現する才能というか、芦田の地肩の強さが垣間見える。 映画のプロットを元に「あたしーはママに捨てられてー 地面に寝ていて気付いたのー」と、その場でメロディをつけて歌い上げていくのだが、まるで藤圭子の「夢は夜ひらく」の出だしのようで、雰囲気に驚かされる。改めて底が見えない女優・芦田愛菜。芦田がどんなものでも即興でミュージカル風に歌い上げる深夜ラジオのコーナーがあったら、聞いてみたいものだ。 しかし、「俺はいいなーと思った」と村上芦田を褒める山下に対し、山田の表情は硬い。 ■村上淳、「クビ」になる 休憩中、メジャーと同じような作品ばかりの日本のインディー映画制作を危惧したり、バンクーバー・カンヌ・ベルリンと各映画祭に行かせてもらったがカンヌ(河瀬直美監督作品にて参加)を「映画祭のチャンピオン」だと強く感じたと熱く語る村上は、首のアザが痛むことを「プロデューサー(山田)に言わないで」と気遣う優しさも忘れない。 そんなナイスガイ村上に対し、山田は「ハッキリ言うと、歌唱力がちょっときつい」という理由で、あっさり降板してもらうことを決める。つまりクビだ。 父親役としてアザができるほど首吊り特訓させられる→披露することなく急遽「木」にされて変な歌を歌わされる→下手だからクビ。怒ってもいいと感じた。 そんな惨劇もつゆ知らず、外の公園でブランコに乗りながら「シェパードは本当に頭がいい」という犬トークで盛り上がる芦田と、渦中の人・村上。首・木・クビのコンボが炸裂しているのに。 村上が降板を告げられたシーンこそなかったものの、またあの「狐につままれたムラジュン」の顔をしたのだろうか? と不謹慎な期待をしてしまうのは、きっとこの番組に麻痺しているからだろう。 しかし、毎回驚くのは山田の覚悟だ。ふざけるにしても、意固地になるにしても、演じてできる範囲を超えた、誤解されることなど微塵も恐れていない、見世物に生きる者の、生き様としての覚悟を強く感じる。この番組を最も生々しく感じさせる理由ではないだろうか。ちなみに芦田はラブラドールレトリバーも「結構好き」とのこと。 ■ナパーム弾を使おうとする山田 後日、食事会を兼ねた打ち合わせ。絵コンテ的な絵を描いてくれていた奇才の漫画家・長尾謙一郎からクライマックスをイメージした残りの絵が届く。「炎に包まれ燃えさかる北沢(母親の愛人)」、そして「大爆破され、燃え上がる森林」の2枚。予算や仕込みの時間の問題から、森を燃やすのは難しいと山下らスタッフは懸念するが、山田はどこ吹く風。 「ナパームで考えたらー」などと、日本への爆撃やベトナム戦争で実際に使われた油脂焼夷弾を用いる構想を口にする。芦田の安全のため反対されるが「そんなの、みんな役者やってますから」と譲らない山田。ドルフ・ラングレンあたりを基準にしているのだろうか。 さらに山田は、芦田演じる主人公らいせを、より錯乱状態にするために「でかい蜂に刺されるとか、蛇に噛まれるとか」と、『たけしのお笑いウルトラクイズ』のような方向性を口にする。 「いや、試しますよ、もちろん? 蛇でいくとなっても、いきなり噛ませないですよ?」と、真剣なフォローを入れるが、そこじゃない。さすがの芦田も「なるべく応えたいとは思ってるんですけどー……」と、ギスらない程度に抵抗を見せる。毎回言ってるが、本当に受験合格おめでとうと言いたい。これで不合格だったら、受け取る意味合いが変わってくる。 ここで山下が、プロットと絵を元に脚本家に書いてもらった「台本」を山田に提示する。この番組内で、山田に対し独断で動く山下は初めてだが、山田は「結局同じやり方じゃないですか? (台)本、もとに映画作っちゃうと」「俺は見ないっすよ」と、あっさり拒否、一人退席してしまう。気まずそうな芦田。 後日、芦田(12)が山下(40)を神社に呼び出す。どんどん同級生のようになっていく2人。 山田の暴走を、芦田は懸念しているようだ。 「山田さんがどんどん一人先に進んでいっちゃうと、きっとスタッフの皆さんも気持ちはついて行きたいって思ってるのに、どうしたらいいんだろうって、すごく困ってらっしゃると思うので、そうなっちゃうといい作品は作れないんじゃないかな……」 最後、肝心なところを近所を走る電車の通過音で聞き逃す山下。 「いい作品はー、作れないんじゃないかとおー」 「あ『作れない』ね?」 2人しておみくじで大吉を引いて、「大吉しか出ないんじゃ」とケタケタ笑う芦田。なにげないカットだが、この番組はむちゃくちゃなことを見せておきながら、こういう「日常」の差し込み方が見事で、本当に単館系の映画のよう。番組自体の監督を務める山下と松江哲明だからこそ出せるバランスだろう。 ■長澤まさみ登場にガールズバーの社長が その次の日、出資者の稲垣さん(ガールズバー経営)を交えて、山を燃やすシーンの美術打ち合わせが行われた。 予算以上に、問題は燃やす許可の降りる山(森)がないということ。 「芦田さんの友達とかでいない? そういう山とか? 同級生で」 「すいません、あんま聞いたことない」 あまりにロケ地が見つからないため、思わず芦田にまで尋ねる山下。 そこへ、おそるおそる女性が入ってくる。 「おつかれさまでーす……」 長澤まさみだ! 山田以外みんな驚いている。急に現れたスターの対応に、バタバタし出すスタッフ。 思わず、「マジか、おい」とニヤつき、意識し出す素人・稲垣社長。仕方ない。ADの男性ですら気づいた瞬間、目を見開いていたほどだ。 長澤に芦田の母親・さちこ役をやってもらうことが山田から発表される。ずっとナレーションを担当していた長澤まさみの登場に、ネットの反応も盛り上がる。さきほどの村上淳の理不尽なクビを哀れむ雰囲気は、粉々に砕け散り、それもまた悲しい。 ■時をかける芦田愛菜 ここでエンディング。今回は評判のいい、いつもの「スカート」の曲ではなく、芦田が練習で歌ったアカペラがそのまま使用される。蝉の声を伴奏に、口ずさむように歌う儚さが、いよいよ大詰めにさしかかるであろう今後を静かに期待させる。 この番組は、山田の覚悟を土台に突き進む一方で、ある少女が過ごした奇妙なひと夏の記録としての側面も増してきた。芦田と、山田や山下ら大人の過ごす時間の速さは違う。気づけば第2話くらいまでランドセルを背負っていた芦田の面影はもはやなく、用意された空間を飛び越えて響いてくる芦田の笑い声や歌声は、つい、どこまでが「ドキュメンタリー」なのかと勘ぐって見てしまう番組の中において、とてもリアルに輝く。もはや十分に、芦田の代表作と言っていいだろう。 「第10話 長澤まさみ 悩む」のHP予告動画では、長澤が露出を迫られたり、そして第8話のオーデション(記事参照)で登場した、笑いながら死ぬ演技が斬新だったエロ漫画家の渡邊さん(素人)と共演しているようだ。 まさか、あの激戦の「犯罪者」オーデションを勝ち抜いたのだろうか? 一番下手だったのに! (文=柿田太郎)テレビ東京系『山田孝之のカンヌ映画祭』番組サイトより
『山田孝之のカンヌ映画祭』第8話 山田孝之の「前科のある人間」求めすぎ問題と、山下敦弘への異常な愛情
突如「カンヌ映画祭」で最高賞を受賞したいと言い出た山田孝之と、彼に巻き込まれた人々との映画制作過程を追った、ドキュメンタリーのような、そうじゃないような番組。 殺人鬼役に芦田愛菜を連れてきたり、自身のファンの社長に資金を出させたり、その金でフランスのカンヌ事務局に押しかけちゃったりと、基本「どうかしちゃってる山田」に、監督を頼まれた盟友・山下敦弘が振り回されるという図式で、主に展開してきた。 しかし、アドバイスを聞くべくカンヌ映画祭常連の河瀬直美監督と出会ったあたりから急展開。カンヌに寄せた映画作りを否定され、その返す刀で彼女の短編映画へ出演依頼されるなど、初めてやりこめられる山田。後日、その短編の撮影現場で彼はいろいろな思いが交錯し、号泣してしまった。 「第8話 山田孝之 キャスティングをする」を振り返る。 ■父親役が決定! 前回の後半、漫画家の長尾謙一郎に発注していた画コンテが届いたと、またも勝手に話をすすめる山田。画コンテというより、ただの芸術作品のような見事な「絵」と、それをそのまま撮るのではなく「インスピレーション」を「ニュアンス」で撮影するという、山田独自の撮影の提案に困惑する山下とスタッフ。それを受けてのキャスティング(配役)打ち合わせ。 自分を殺しかけた母親と、その愛人に復讐する少女というあらすじの紹介で「そして母親は狂い死ぬのであった」とナレーションする長澤まさみが怖い。 しかも、その際の絵は「全裸で水に浮かぶ水死体の両乳首から、噴水のごとく液体が噴出している」というもの。見事すぎる絵を画コンテとするのは黒澤明が有名だが、山田は、そのままは撮影しないと言った。果たしてどう撮影するのか。 絵によると母親役は基本全裸なのだが、スタッフの心配にも「大丈夫じゃないっすか」と山田は楽観的だ。さらに父親役は村上淳で決まっていることが山田から告げられる。山田はどんどん決めていく。 さらに、母の愛人役の男性(北村)は前科がある設定なので、実際に前科のある人間を集めてオーデションしたいと言い出した。真顔だ。山下や助監督が、静かに、刺激しないように、それをやんわりと回避させようとする暗黙の空気がたまらない。 なかなか折れず「本物」にこだわる山田に対し、山下は折衷案として「無職の人」を募集し、その中から探せばいいのでは? と提案する。なかなかの偏見だ。「可能性は高いかもしれないですね、定職についてるよりは」はっきりと言い放つ山田。THE・差別。 かと思えば、素人の人とお芝居したことがないという芦田に対し「大丈夫です、みんな常にしてるから、お芝居は」と、なんかいいことを言う。振り幅がすごい。 ■「犯罪者」オーデション オーデション当日、12名の無職=犯罪者予備軍が集められた。簡単な自己紹介のあと、目をつむらせ顔を伏せて挙手を求める。 「前科のある方とかいますかー?」 内容の重さに反して、極めて雑な方法で調査がなされる。残念ながら(?)この中には、そのような人がいないことがわかる。 「では捕まったことはないけど窃盗したことがある方?」 無職ゆえに、取り調べされる候補者のみなさん。さすがにプライバシーに配慮したのか、すかさず、いかにもなカンヌ土産の小さなトロフィーがアップになる。思わず金のトロフィーに写り込んでいないかと心配になる。 「職務質問を受けたことがある方?」 ふるいの網が広げられ、ほとんどの候補者が手を挙げる。なぜか罠にかけられたように感じてしまう。今時、都市で暮らせば職務質問くらいされることは普通にあり得るのだが、ここではそんな常識は通用しない。 そしてずっと気になるのが、一連の質問の最中、まったく目をつむらず、目を見開いたまま前を見据える人が3人もいることだ。目を見開いたままそっと挙手をする人、目を見開いたままにっこりカメラ目線の者など、だてに無職をやっていない。 そして、彼らとおそらく至近距離で目が合っているのに、そのまま「取り調べ」を続行する、ずさんな運営側。審査席には第4話(記事参照)以来久々登場、金ヅルこと、サインと写真だけで2,000マン円出資した「ただのファン」稲垣さん(ガールズバー経営)の姿も。長髪に、髭面、浅黒い肌。「I loveカンヌ」Tシャツを着て優しく微笑む姿は、失礼ながら最も前科持ちが似合う風貌だ。 ■演技審査 笑いながら殺される人 引き続き、刃物で襲いかかる芦田(役名・らいせ)に、刺し殺されるという演技審査。爆笑。見た目幼い女優芦田の演技が本域なため、余計にその落差が際立つ。 ・お年寄り「どしたの? どしたの? 愛菜ちゃん? うぐっ。……愛菜ちゃんだめだよ……こうなっちゃう」随時、愛菜ちゃん呼ばわり。 ・前職不明の男「え? なになに? どうしたのリセちゃん、……じゃねーや? 誰だ」 ・芦田「ぐおおーー!!」元エロ漫画家「イテテテテテ」芦田「ぐおおああーーーー!!」「イテテテテテテテテテ」笑顔で全然死なない。 もうコントだ。芦田も爆笑。 山田の「いろんな死に方があるね?」に対し「はい、楽しいです」悪気なく答える芦田。貴族の遊びのようだ。 後日、青空の下、4人に絞っての2次審査。不死身の元エロ漫画家が残っているのが目に飛び込んでくる。 ここで、仮の母親役を、山下にやらせる山田。この番組を観続けていると、本当に山田は山下が好きなんだなと思ってしまう。縛っていた長髪をほどき、髭ヅラの山下(母親)が愛人(北本)役の男性と身体を重ねる。そこへ、目を覚ましてやってきた芦田(らいせ)が襲いかかる。愛人が襲われる様子を、木の陰から見つめる山下。愛人が殺された後、らいせに襲われる山下。逃げる山下。もう、どうやっても母親は山下にしか見えない。 そして、愛人刺殺後、オーデション的にはもういいはずなのに、逐一「や~~~!」と三文芝居を見せてくれる山下。追いかける芦田。観せられる我々。 ついにはオーデションそっちのけで、山田が山下に演技指導しだす。「みなさんできてますもん。山下さん、ちょけてるから」いじめる山田。夏の日。蝉が鳴く。 ある日、大人になった芦田は、受験で大変だったこの夏を、異次元の仕事をしたこの日々を、淡く思い出すのだろうか。どう記憶されるのだろうか。この後、思春期にさしかかる芦田が迷い込んだ白昼夢。 「イテテテテテ、ヤメテ、イテテテテテ」エロ漫画家だ。 蝉が鳴く。ずっと蝉のTシャツの山下。太陽の下、一番長く使われたのは山下の芝居だった。 ■首を吊る村上淳 そして、別の日。第3話(記事参照)に登場した、首くくり栲象の国立の家にて、首を吊るパフォーマンスにあっけにとられる村上淳。村上だけ「え? いいの?」という感じで、一人だけどうしていいかキョロキョロしている。ともに観ている山田山下芦田らは一度見ているので耐性があるのだが、村上の困った様子がひしひしと伝わる。 数分首を吊り、パッと地面に降り立った瞬間、偶然だろう、すぐとなりの高校のチャイムが大音量で鳴り響く。息を整える栲象を見つめる村上。彼のための特別授業が始まった。 「これをムラジュンさんに、やってもらいたい」と突然言われる村上。おそらく詳しいことは何も告げられず、ここへ連れて来られたのだろう。 「5分いかなくても3分くらい(首を)吊れるようになるまで、練習してもらえたらな」と切り出された村上は思わず言う。 「……僕、首吊ったことないよ?」そうでしょうとも。 「あ、なので!」「今から訓練をしていただいて」当然のように促す山田と山下。地獄の授業。 戸惑いがおさまらぬ村上が栲象に問う。 「結構、これって吊れるもんですか?」 「ああ、吊れますね」(笑顔) もう、防波堤の会話だ。ハゼでも釣ったかのような栲象。「集中してやって7年かかった」という。 ここで村上が素直な疑問を呈す。 「僕が吊られてるシーンは栲象さんがやっていただいて、っていうのはダメなんですよね」 それに対し、「吹き替えってことですか?」 「ダメというか、村上さんはそれでいいのかなって」 この言葉に山田の本気を感じ取った村上は、監督がやれというならやると、すかさず決意。縄を受け取る。毎日の鍛錬法として、首吊り実践はもちろんのこと、喉の筋肉を1日1,000回動かすことと言われ、その回数に驚く村上のTシャツには「グッドフェローズ(いいやつ)」と書かれていた。 次週予告「第9話 村上淳、木になる」 相変わらず、エンディングで悪夢などなかったかのようにスイカとそうめんを食べる一同。ここで浄化される。 そして、9話にしてサブタイトルから、山田孝之が消えた。後半にさしかかっても勢いの落ちないどころか、ますます展開が読めなくなる。しかもあらすじ(プロット)もカンヌにあってもなんらおかしくない作り。5月のカンヌに期待が膨らんできてしまう。 (文=柿田太郎)テレビ東京系『山田孝之のカンヌ映画祭』番組サイトより






