サービスはそんなにヒドいのか!? ‟苦情は受け付けない”スカイマークに乗ってみた

skymark001.jpg  今年5月、「機内での苦情は一切受け付けません」などとするサービスコンセプトを示し、ネット上で話題を呼んだ航空会社・スカイマークエアラインズ。不満がある場合の連絡先として、同社の「お客様相談センター」と共に「消費者庁消費生活センター」の名を記したことで、東京都消費生活総合センターが同社に抗議。消費者庁も文章の回収を要請する意向を示したことから、同社の西久保慎一社長が同庁に謝罪する騒ぎに発展した。  容赦ない批判を浴びたスカイマークだが、確かにその安さは魅力的だ。羽田~福岡の片道料金を正規料金で比べると、全日空が3万6,870円に対して、スカイマークは1万9,800円だ。加えて、6月には毎週日曜日は全路線が片道1万円になるサービスを展開。好評だったようで、7月1日にも継続実施された。
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応対は問題ないけど、電車を降りてから
カウンターまで遠い……。
 消費者に、まるで「安かろう悪かろうなんだから、文句を言うな!」といっているかのようなスカイマークだが、そこまでヒドいサービスなのだろうか? 実際に搭乗してみることにした。  やってきたのは、早朝の羽田空港。どんな「安かろう悪かろう」なサービスが待っているのかと期待しながら、カウンターの行列へ。  案内係の女性は「こちらでお待ち下さい」と丁寧に説明してくれるし、カウンターの女性も「お待たせしました」と、きちんと挨拶してくれた。なんら問題なく、搭乗手続きは完了した。  なお、復路の福岡空港では、案内係の女性が「自動発券カウンターのほうが、ご自身で席を選べて便利ですよ」と、発券機の使い方を教えてくれた。なんだ、親切じゃないか。まったく拍子抜けである。  そのまま、なんのトラブルもないまま機内へ入り、着席。飛行機の入口に立っているCAも、深々とお辞儀をして乗客を迎入れている。出発前に行われる緊急時の説明も、マニュアル通りにこなしている様子だ。  ……結局、特筆すべき事態は何も起こらないまま、飛行機は目的地に到着した。空路ならではのドリンクサービスなどは一切ないのだが、そうしたサービスがないのは新幹線など鉄道路線でも同様。むしろ、ドリンクが出ないだけで運賃が安くなるのならば、そのほうがありがたい。それに、国内線ならば搭乗時間は2時間程度、座席の座り心地もあまり気にならない。
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初めてターミナルへバスで移動。
 多くの人が「2時間程度ならば、快適さよりも安さ」と感じているのだろうか、座席は往復共に満席であった。  ちなみに、復路の羽田空港では飛行機から降りた後に、バスでターミナルまで移動というレアな出来事に出会ったのだが、係員たちは乗客全員がターミナルに入るまでお辞儀をやめなかった。  実際、トラブルが起きた時に、どのような対処をしてくれるのかは気になるところだが、通常の搭乗であればまず問題ない。格安ではあるものの、腐っても航空会社。プロが整備をし、操縦しているワケだから、自家用車よりはよっぽど安全に違いない。  まあ、クレームするとしたら乗ってる飛行機が墜落する時くらいだね。 (取材・文=昼間 たかし)

航空専門誌『エアワールド』の竹内編集長に聞く 絶好調のJALにつきまとう不安要素とは?

 戦後最大の倒産とまでいわれた日本航空(JAL)の会社更生法申請から2年。「堕ちた翼」とまで揶揄された倒産航空会社が、早くも業績を回復させてナショナルフラッグの威厳を取り戻しつつある。  JALが先ごろ発表した「5カ年中期経営計画」によれば、中心となって再建を進めてきた稲盛和夫会長が名誉会長に退き、会長職に大西賢前社長が、新社長にはパイロット出身の植木義晴氏が就任。前社長で「整備畑」出身の大西氏に続く二代続けての"現場上がり"の社長となる。JALといえば、これまで現場の空気を知らない「経理畑」や「総務畑」出身者が長らくトップを務める時代が続き、これが要因の一つとなって経営を破たんさせた。その意味で、実務型の"できる"人物を二代続けてトップに据えた稲盛前会長の人事を、「社内の士気を高める」(業界紙)と評価する声は多い。  JALは2012年3月期連結決算の業績予想を、従来予想より400億円引き上げて1,800億円と上方修正。これは全日空(ANA)のほぼ倍にあたる数字だ。業績回復の理由として「一つには徹底したコスト削減が実を結んだ」と言うのは、航空専門誌『エアワールド』の竹内修編集長だ。 「JALの社員が札幌へ出張するような場合、仮に自社の直行便が一般客で満席の場合は、今まではANAの便などを利用していました。ところが、今は自社便でいったん大阪などを経由して、それから札幌へ行くなどの節約をしているようです。また、整備スタッフが使っている軍手などの消耗品も、今までのようにすぐに捨てずに大事に使うなど、いわば涙ぐましいまでの節約を続けています。もちろん、格安航空会社のLCCでは既に当然のことなのですが、あのJALが2年でここまで節約概念を身につけたという点は評価されていいのではないでしょうか」  また、社内の風通しも、官僚的要素が強かった以前とは比較にならないほどよくなったという。 「大ヒットしたアニメ映画『けいおん!』にJAL本社が協力しており、劇中にも鶴丸のマークが描かれたJALの機体が登場しているんですが、この人気に便乗したJALの関連会社「ジャルパック」が、映画の舞台となったロンドンにからめて「『けいおん!』ロンドンJALパックツアー」を企画して人気を集めています。こうしたかつてのJALでは見られなかった横の連携と、チャンスを最大限に活かして利益を上げていこうという姿勢も、企業の体質が変化してきた表れの一つだと言えるのではないでしょうか」(竹内氏)  しかしその一方で、不安要素もあると竹内氏は言う。 「JALは燃料効率のいい次世代旅客機、ボーイング787(ドリームライナー)を積極的に活用することで、アメリカのサンディエゴやフィンランドのヘルシンキへの便を新たに開設するとしています。ヘルシンキは欧州便の中では比較的短い時間で行けることもあって、意外に人気が高い。その意味で路線の開設そのものはアリだと思うのですが、肝心な787に最近不具合が見つかりました。ボーイング社は問題ないとコメントしていますが、不安を感じている関係者は多いはずです」  また、787の引渡しの遅れには、最近起きた"ある事故"の影響を指摘する声もある。というのも、アメリカのボーイング社の工場で昨年、工員がJALに引き渡す予定の「787」にひかれ、足を切断する事故があったとの情報が流れたのだ。車の納車を大安に選ぶほど縁起を重んじる日本人にとって、こうした機体を引き取ることには抵抗があるはずだ。  事実、この事故との関連は不明ながら、JALは787の引き渡しが当初の予定から大幅に遅れて3月末以降にずれこむとの見通しを明らかにしている。当初のJALの計画では、3月末に「成田―モスクワ線」など3路線に787を就航させる予定だったが、これらについては引き渡しの遅れにより既に延期が決まっている。また、4月22日に新たに開設される新生JALの象徴路線とも言うべき「成田―ボストン線」にも、787の納入が間に合わないとさえウワサされている。  不安要素は787の納期だけではない。業績回復を追い風に9月をめどに目指す再上場についても、巨額の債権放棄を強いられた金融機関の抵抗感は決して小さくないはずだ。竹内氏が続ける。 「いくら業績が回復したといっても、5,800億円の債権放棄と3,500億円の公的資金導入の結果であることは間違いないですから。再上場となれば金融機関は大量の新株購入を求められるわけで、釈然としない銀行が出てくるのも当然です。場合によっては、これが原因で再上場の時期がずれ込むことも考えられそうです」 (文=浮島さとし)
AIR WORLD (エア ワールド) 2012年 03月号 世界の航空宇宙ニュース満載。 amazon_associate_logo.jpg
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「観光にさらなる打撃」またまたサーチャージ値上げ! 日本の航空業界はどうなる!?

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気軽に海外旅行なんて夢のまた夢!?
 中東情勢の混迷や、福島第一原発の事故を受けての世界的な「原発離れ」による原油価格高騰のあおりを受けて、飛行機代がまた上がる。全日本空輸(以下、ANA)では、6月発券分から国際線の燃油サーチャージを値上げすると発表。上げ幅は1,000~7,500円程度で、これにより運賃に上乗せされるサーチャージ(片道1人分)は、北米やヨーロッパで2万5,000円(現行1万7,500円)、ハワイで1万6,000円(同1万1,000円)となる。  また、日本航空(以下、JAL)でも6月から同規模の値上げを行う予定で、これによるサーチャージは北米やオセアニアで2万5,000円(現行1万7,500円)、グアムで8,000円(現行5,000円)、タイやシンガポールで1万3,000円(同8,500円)となる見込み。さらに、外資系航空会社も軒並み値上げを表明している。  各航空会社が一斉にサーチャージの値上げに動くのは、2月の引き上げ(500円~3,500円程度)に続き、今年に入り早くも2回目。路線によっては「昨年末の運賃より1万円以上高くなる便も少なくない」(都内旅行代理店)という。  ローコストキャリア(LCC)と呼ばれる格安航空会社が国内にも急速に浸透しつつある中、今回の値上げがそうしたニーズ拡大に逆風になることはないだろうか。  これについて、今回の値上げで打撃を受けるのは「LCCよりは、正規料金に近い価格でビジネス客を相手にしている大手キャリアのほうが大変」と言うのは、航空専門誌「エアワールド」編集長の竹内修氏だ。 「LCCの利用者は、多少値上げされても他に選択肢はありません。その反面、これまでビジネスクラスで社員を出張に行かせていた企業は、ただでさえ経費削減が求められるのに、これ以上値段が上がるなら出張自体の数を減らすか、出張をするにしても価格の安いエコノミークラスの利用が増えるでしょう。こうした動きが進めば、エコノミーでも高いからLCCを使えという流れにもなりかねません」  さらに3月の震災以降、海外からのビジネス客が減少を続けていることも大きな不安要素だ。 「従って、こうした高価格ゾーンを収益の柱としている大手エアラインにとっては苦しい展開が予想されます。LCCとしてはむしろ、富裕層から流れ込んでくる新たな顧客層が見込めるかもしれません」  総じて"負け組"に甘んじていると言われている航空業界だが、その中でも業態による勝ち負けの二分化が予想されるというわけだ。  また、昨年秋から国際便の運行が一部復活し、「成田より便利な国際空港として今後に大きな期待がかかる羽田空港」(前出の旅行代理店)に、こうした値上げの動きはどんな影響をあたえるのだろうか。竹内氏が言う。 「羽田で国際便が認可されたといっても、北米便やヨーロッパ便の発着は早朝や深夜の時間帯に限定されています。出発が早朝6時ならチェックインは4時ごろまで。となると電車やバスはまだ走ってないので、ホテルに前泊する必要がある。しかも行き先がニューヨークの場合、羽田を6時に出ると時差の関係で到着が朝5時ごろ。あまりの不便さに利用者数は伸びていません。それどころか、欧米のエアラインの中には事実上の撤退を検討している会社もあるという噂です」  各社とも表向きは大震災の影響による「一時的な運休」としてはいるが、利用客が伸びず、儲からない羽田の国際便から、これを契機にフェイドアウトしたいというのが本音のようだ。今回の値上げがこうしたネガティブな動きにさらなる拍車がかかるということなのか。 「ただ、JALやANAと提携関係にあるエアラインは、契約上の問題で自社の一存で撤退するわけにはいきませんし、将来の羽田の発着枠の拡大をにらむと、今ここでフェイドアウトの決断をするのは難しい。今回の値上げで即撤退や運休を決めるエアラインが出てくることはないと思いますが、このままサーチャージが高い水準にとどまれば、前述したように、羽田がメインターゲットにしている企業の海外出張者の数も減少します。苦しい状況になることは間違いないでしょう。逆に、値上げをしない、あるいはしても小額の中東系航空会社は有利になるかもしれません」  また、今回の値上げで打撃をこうむるのは、航空会社よりも観光業界全体だと竹内氏は予測する。 「今年は稼ぎ時のゴールデンウィークが震災の影響で低調でしたので、ホテルや旅館はなんとか夏休みで盛り返したいと考えていたはず。今回の値上げで出鼻をくじかれた感は否めません。震災で激減した中国人旅行者が最近になってようやく戻ってきたといわれていましたが、彼らの旅行形態は大半が極めて低価格のパックツアー。6,000円、7,000円の値上げは正直痛い。観光業界としては間違いなく逆風でしょう」  原油価格が上がればチケットの値段も上昇し、震災やテロが起これば不安感から利用者は激減する。一見、華やかに見える航空業界が、実は極めて不確かな要素に左右される"水商売"的なビジネスである実態が、今回の値上げであらためて露呈したと言えるだろう。 (文=浮島さとし)
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HISとスカイマークが"貧乏人"相手の商売から脱却!

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HISに買収された後、経営改善化が進むハウ
ステンボス。営業利益の黒字化も近いと見られ
ている。
   国内線格安航空会社のスカイマークと、その大株主である旅行大手のエイチ・アイ・エス(HIS)の両社が、ここ最近興味深い動きを見せている。  まずは昨年2月、経営再建問題で揺れていた長崎県佐世保市の大型リゾート施設「ハウステンボス」を、HISが約20億円を出資して支援すると発表。続いて11月には、国内線限定で展開してきたスカイマーク社が、2014年を目処に国際線への参入を表明。これへ向けて「空飛ぶ豪華客船」と呼ばれる1機280億円の超大型旅客機「A380」の6機購入も明らかにした。「つぶれそうなテーマパークをなんで今!?」「スカイマークの経営規模を考えたら6機購入は無謀すぎ」と、一部業界やネット上では物議を醸した。  そして昨年12月、HISは保有するスカイマーク株300万株を売却し、約31億円の売却益を特別損益として計上したことが今年になって明るみに。さらに、再建に取り組んできたハウステンボスが、長崎~上海を結ぶカジノ船の購入へ向けて動いていたことも分かり、すでに船の所有会社「テンボスクルーズ パナマ」を、昨年12月に設立済みであることも明らかになった。  社名に「パナマ」とあるのは船籍をパナマに置き、公海上でカジノ営業を行うことで日中両国の法的問題をクリアするため。同社では「船は2~3万トン級の予定」「年間50万人の利用を目指す」(HIS広報)と鼻息は荒い。  潰れそうな大型テーマパークの買収→国内線から国際線への参入→大型旅客機の購入表明→カジノビジネスへの参入......。  これらの点を結ぶことで浮かび上がる両社の狙いとは何なのか? 「HISがハウステンボスを支援すると聞いたときは『なぜ?』という声が業界内でも多数でしたが、カジノ船を運行するとなれば話が通じます」  そう語るのは、航空専門誌「エアワールド」編集長の竹内修氏だ。竹内氏は、HISがこれまで格安旅行の薄利多売で利益を上げてきたビジネスモデルから、中流層から富裕層を睨んだ国際観光ビジネスへの転換を図ろうとしているのでは、と推測する。 「航空ビジネスって派手に見えますけど、原油価格が高騰すれば燃料サーチャージが上乗せされてチケット価格が上昇したり、『9.11』のようなテロが起これば利用客は大幅に落ち込んだりと、不確かな要素が大きいんです。そんな水商売的事情でスカイマークの利用客が減れば、海外旅行をビジネスの柱とする大株主のHISも当然苦しくなるわけです」  つまり、航空会社(スカイマーク)も旅行会社(HIS)も、構造的には水商売的な要素が大きい業態であり、両社がその構造から脱却を試みているというのだ。 「しかも日本国内では若年層の海外旅行離れが進んでいて、これまでこうした層をターゲットに格安航空券を売って成長してきたHISにとって、市場の将来性は期待できなくなりつつあります。そんな中で、勢いのある中国の富裕層を狙って確実に利益が出るギャンブル船を運航し、その流れでハウステンボスに団体客を継続して運び込む。ハウステンボスは事実上、HISの独壇場ですから、宿泊から食事、物販までほぼ独占できる。今も湯布院(大分県)などは中国人観光客が多く、すでに下地はある。形になれば大きなビジネスになるでしょう」
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世界のポルシェ代理店で最も売り上げ成績が
いいと言われる上海支店。写真のパノラマターボ
は249万元(約3,100万円)と日本の販売価
格の1.5倍近いが、「よく売れてます」(現地
コンサル)とのこと。中国の勢いを感じさせる。
 では、スカイマークによるA380の購入表明と、HISによるスカイマーク株売却についてはどう見るのか。実はスカイマークは当初、導入を決めたA380をドル箱路線に集約させ、これまで通り薄利多売で利益を出す(記事参照)と見られていたが、最近はやや事情が変わりつつあるという。竹内氏が続ける。 「A380は二階建ての大型旅客機で、全席エコノミーにすれば700席以上を設置できます。ところが、どうやらスカイマークの西久保社長は、座席をビジネスクラスとプレミアム・エコノミーのみに絞った高級路線で展開する意向を持っているとの話もあります。そもそも、エアバスの営業担当者は当初、スカイマーク向けに別の旅客機の営業をかけに行ったらしいのですが、西久保社長はなぜか超大型のA380に食いついたので驚いたというんです。しかもそれからすぐに、西久保社長は他のエアラインのA380にお忍びで乗ってみたらしく、同機の快適さに大満足して導入を決めたようです」  スカイマークの西久保社長はA380の持つ広さや静かさなどを体感し、これを活かしてランクアップしたビジネス客などをターゲットに、新たなビジネスモデルを模索している可能性があるというのだ。しかし、もしそうならば、同じ高価格ビジネスを狙う両社はさらなるシナジー効果が期待できるのでは? 「スカイマークはすべてのビジネススタイルを高価格層に移行するわけではありませんから。格安運行はこれまで通り続けるでしょう。また、これもあくまでも予想ですが、スカイマークは他社のビジネスクラスやプレミアム・エコノミーよりは安い価格設定とするために、チケットは主にネットでの直販でさばくことになりそうです。そうなればHISは関与の余地が少なくなります。さらにスカイマークは近い将来、東証に上場する構想を持っていますが、その際には増資を行う可能性が高く、一時的とはいえ株価は下がります。こうした観点からHISがスカイマーク株を今が売り時として、ある程度の量までなら手放しても問題ないと考えたとしても不思議ではありません」(注:持ち株比率は14.33%から10.05%に下がったが、売却後も売却前と変わらず第2位株主)  つまり、国内市場に限界を感じたHISは、中国人富裕層などの獲得へ向けてビジネスモデルを方向転換し、スカイマークとは一定の距離感を保ちつつも、シナジー効果が薄れた同社株を一部売却し、そこで得た資金をカジノ船の運営などの新規ビジネスに投入。さらに、日本人にとっては距離感のある長崎のハウステンボスへ中国人観光客を大量に運び込み、宿泊や外食、物品販売などへお金を落とさせる――。  思えばHISの平林社長は08年の就任会見で、「これまで成功してきたビジネスモデルをすべて見直し、ゼロベースから新たに形を作り上げる」と発言。今にして思えば意味深なコメントと言えなくもない。  いずれにせよ、石原東京都知事や橋本大阪府知事が熱望しながらいまだに実現の糸口も見えない国内のカジノビジネス。しちめんどくさい許認可権や業界のしがらみがいっさい及ばない公海上で、早ければ今年の夏にはさっさと運行を開始するというHIS。「天下り経営者たちが寄ってたかって会社を潰してしまったJALでは逆立ちしても真似できないプラン」(某旅行代理店)であることは間違いない。  1980年に格安航空券の販売からスタートし、JTBとも肩を並べる総合旅行会社へと成長を続けてきたHIS。かたやHISが株式公開で得た資金で96年に子会社として設立したスカイマーク(現在は売却)。不況と好機が混沌とするこの時代に、両社は新たな局面を迎えているようだ。 (文=浮島さとし)
日本カジノ戦略 カジノ詐欺にあったことがあります。 amazon_associate_logo.jpg
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ホントにできるの? 専門家が分析する「スカイマーク国際線進出」の可能性

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スカイマークオフィシャルサイトより
 上海まで片道4,000円!、マレーシアまでの直行便が5,000円!!――一昔前なら考えられなかった激安価格で飛行機に乗れる「ローコストキャリア」(LCC)が世界的に市場を拡大する中、日本国内線のLCCとして定着したスカイマークが、2014年を目処に、ついに国際線へ参入すると発表。航空業界を激震させている。  スカイマークでは、一人当たりの運賃を抑えるために1機約280億円の「空飛ぶ豪華客席」と呼ばれるオール2階建ての超大型旅客機「A380」を6機購入するとしているが、「スカイマークの経営規模を考えると無謀。購入資金もどこから引っ張ってくるのか」(航空ライター)と危惧する声もある。  一般にLCCは、パイロットに外国人や他社の退職者を再雇用して人件費を抑え、キャビンアテンダントも制服も簡素化してトイレ掃除を自ら行うなど、徹底したコスト圧縮により低価化を実現している。「牛丼の安売り合戦みたいな薄利多売の世界」(同)だけあって、今回の大型機大量購入が高すぎる買い物となる可能性は否定できない。  そこで、航空専門誌「AIR WORLD」編集長の竹内修氏に、スカイマーク社が国際線へ進出する狙いと今後の可能性について聞いてみた。「今回の件は我々にとっても寝耳に水で(笑)。あくまで推測という枠の中でご理解いただきたい」との前提のもと、以下の通りの回答をもらった。 ――スカイマーク社が国際線へ参入する最大の目的は? 竹内氏(以下、竹内) 大株主である「HIS」とのシナジー効果への期待、ということもあると思いますが、それとは別に、日本のLCCが国交省主導のもとでANA(全日空)の系列に入っていく中で、独立したエアラインとしての地位を保つという明確な意思表示という意味はあるかもしれませんね。 ――機体の購入が「高すぎる買い物」とする指摘もあります。 竹内 おそらく、いったんリース会社が購入した機体を借りることになると思います。そういう形で航空機を導入している会社は珍しくありません。一部の報道で言われているような1,000億円以上の投資が必要となることはないでしょう。しかも航空機の価格というのは、実はあってないようなところもありまして、「日本のエアライン初の国際線LCC」という効果を期待して、ある程度の値引きがされているはずです。資金調達は、巷で報道されているとおり、増資で行うことになるでしょうね。 ――具体的な路線がまだ発表されていませんが。 竹内 今のところ、成田~ロンドン、フランクフルト、シアトル線などの名が取りざたされています。「A380」は世界最大の大型旅客機で、座席数も多いですから、搭乗率の高い、いわゆる「ドル箱路線」に投入するのではないかと思います。また、HISや海外の航空会社と共同でチケットを販売し、高い搭乗率が期待できるハワイ線や、スカイマークの航空機の整備を委託している台湾路線などへ投入する可能性はあると思います。 ――今月4日にカンタス航空(オーストラリア)で緊急着陸する事故があり、その機体が「A380」でした。 竹内 あの事故はエンジントラブルによるとの見方が有力視されていますが、「A380」のエンジンは、カンタス航空やシンガポール航空の機体が装備する「ロールス・ロイス」社製のほかに、「エールフランス」社の機体などが装備する「エンジン・アライアンス」製のエンジンを選択することも可能です。発注時にエアラインが選択できるんですね。仮にですが「ロールス・ロイス」のエンジンが心配なら、もう一つのエンジンを選べばいいだけです。 ――スカイマークの試みがビジネス的に成功する鍵は? 竹内 成田と羽田の発着枠を確保できるかどうかは鍵になりますね。大型旅客機のA380は地方の中小空港で運航不可能ですし、かといって関西や名古屋といった空港を発着する便しか運航できないようでは旅客の数からして採算が合いません。また、魅力ある航空路線のチョイスも重要です。いくら安くても「そんな国、行かないよ」という路線では座席数を埋めることは難しいでしょうから。 ――既存キャリアのJAL(日本航空)やANA(全日空)への影響は? 竹内 仮にスカイマークが今回成功を収めた場合、これまで「A380」の導入を時期尚早として見送り続けてきたANAが、真剣に導入を検討することになるかもしれません。ただ、現時点ではスカイマークが本当に国際線へ参入できるかは予断を許しません。資金面も含めて障害となるハードルは少なくありませんからね。  * * *  ここ数年で急速に存在感を増してきたLCC。背景には、国同士の乗り入れを自由に開放しようというオープンスカイ協定が結ばれたことと、航空業界のサービスが二極化している点があげられる。エールフランスなどの大手キャリアがビジネスクラスで高い単価で利益をあげる一方、これまで飛行機に乗ったことがないような層を狙い、薄利多売で利益を出すのがLCCだ。国内大手のANA(全日空)でも、香港の投資会社との共同出資によるLCCへの参入をこのほど発表。「現行運賃の半額を目指す」(ANA)と鼻息は荒い。しかし、前述のとおり「牛丼の安売り合戦みたいな薄利多売の世界」だけあり、無策なままに価格競争に参戦することは危険だと指摘する専門家は多い。ある関係者は次のように言う。 「吉野家のほうが松屋より数十円高いけど、吉野家の味を求める客を相手に牛丼の質と価格をキープしていく、というやり方もあるでしょう。LCCも、しっかりとしたマーケティング戦略の中で自社の独自カラーをどう創造していけるかが鍵になると思います」 (文=浮島さとし)
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