拡大する復興格差「みんな被災者なのに……街のバランスが大きく狂ってるように感じる」

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 東日本大震災の復興計画をまとめる「東日本大震災復興構想会議」が設立され、建築家の安藤忠雄氏や脚本家で元横綱審議委員会の内館牧子氏がメンバーに名を連ねたことで話題を集めている。  このような国家規模の復興計画とは別に、被災地では日々復興に向けて動きだしているが、被災者にとっては、いまだ「復興」に違和感があるという。  宮城県では例年通り新学期に合わせた教育委員会の人事異動が行われ、学校も再開された。しかし、現実には学校そのものが津波で流されてしまったり、避難先では学校が統合されているケースも多く、教師が一律に担任をもって授業をするわけにはいかない状態になっている。  ある学校関係者は、「同じ被災地でも、避難所になっている学校とそうではない学校の先生とではまったく違う」と語る。さらに「避難所になっている学校は授業どころではなく、片や何もない学校の先生は例年の新学期なんかよりはるかにのんびりしている」と教師の間でも差がつき始めている現状を教えてくれた。  このように、被災の状況によって新生活に差異が生まれ始めていることに危機感を抱く人は多い。仙台市内の親類の家で暮らすAさんは石巻市で被災し、自宅と職場を失った。そのAさんが感じているのが「復興格差」だという。 「同じ地域の被災者同士でもかなり温度差があるんです。うちはまだ電気やガス、水道が復旧していないのに、数軒隣の家の人はライフラインがそろっていて、普段通りの生活をしているんですよ。なんというか、街のバランスが大きく狂ってるように感じるんです。みんな同じ場所で被災したのにね」 kakusa02.jpg  さらにAさんによれば、石巻市内から車で10分ほどの距離にある街道沿いではパチンコ屋がフルタイムで営業していて、客も超満員だったりするという。  Aさんの知人のある男性は「うちは自宅が無事で、まとまった現金が家に置いてあったのですぐに中古車を購入できたんです。移動手段が確保できたことで、物資の買出しも被災から1週間ほどで可能になったので今はストレスはありません。むしろ、何もすることがないのがストレスですね。正直、今は退屈ですね」という。  こうした現状に違和感を抱いているのはAさんばかりではない。宮城県の沿岸部に住んでいるサラリーマンだったBさん(33歳)の勤め先は、今回の震災で社屋を失った。震災から2カ月近くが経過しても、いまだに仕事再開のめどが立たないという。 「仙台には週に2~3回行っていますが、町並みはだいぶ復興し始めている感じがする。だけど、仕事面ではどうかな。会社が使えないから自宅で仕事をしている人もいるけど、ほとんどの人はパソコンなどが全部流されてしまった」  Bさんが言うように、会社自体が津波で流されてしまった沿岸部では、いまだに復興する手段がない。小売業で在庫を失ったような会社はもちろんだが、多くの会社では仕事に必要なデータが入ったパソコンを失ってしまったことが足かせとなってしまっている。  ほかにも「東北地方の沿岸部に多かった水産関係の会社は軒並みアウト」と語るのは、石巻市で水産加工業者に資材を納品する会社に勤務していたCさん(40歳)だ。彼によれば、地場産業として宮城県の沿岸エリアの経済を支えていたのは漁業や水産加工業だった。 「同級生には水産加工会社の息子もいたんですが、本当に羽振りがよかったですよ。免許を取ったらすぐに高級車とか買ってもらってね。でも、いまじゃ会社と工場と自宅、全部が津波で流されてしまってどうやって復活すればいいのか本当に分からないし、いまだに何から手を付ければいいのかって言ってましたよ」  直接的なダメージを受けたのは沿岸部の会社だが、今後、取引先の関連会社などの倒産が増える可能性もある。自分一人だけが復興したとしても、それだけで社会は回らない。そのことを考えると、前向きになれない被災者も多いようだ。先ほどのAさんは不安を抱えた現在の気持ちを語ってくれた。 「生活面では不安だらけなんだよね。自宅が半壊して地元にとどまった人たちは1カ月くらいたったころから猛烈に将来の不安が襲ってきているんだよね。メンタル的に相当きつくなってる」  そのような状態にいる被災者にとって、遠くからの「頑張れ!」といった激励は精神的に追い詰められるだけだという。 「自分たちで乗り越えなければならないことは分かっている。お金があれば生活を立て直せるというような問題ではないのかもしれないけど、それは極論だからね。現金が残った人、仕事が残った人、それぞれに差がつくことは仕方ないのかもしれないね」  復興の進度は一律ではない。今後、震災によってもたらされた経済格差も被災した人たちの間で大きな問題になっていくことは間違いないだろう。 (取材・文=丸山ゴンザレス/http://ameblo.jp/maruyamagonzaresu/
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「地震兵器、世界企業の陰謀……」震災で"トンデモ/デマ"に救いを求める人々

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梶川ゆきこ公式サイトより
 現在、Twitterを中心に話題を集めている人物がいる。前広島県議会議員・梶川ゆきこ氏(統一地方選挙で落選)だ。 『今、日本は戦時下の非常事態にあることを認識すべき。自然界ではありえない地震だということは、「人工地震」でネット検索をかければ、実証データがでてきます。なぜか、ここにリンクで貼れないので、自分で確かめて下さい。日本のマスコミが報道することだけを信じるな!が、私のつぶやきの意図です』  この発言からも分かるように、梶川氏にとって先の東日本大震災はある種の陰謀であるとしているのだ。ほかにも彼女のTwitterでのつぶやきを一部抜粋すると...... 『阪神大震災は人工地震:「闇の支配者に握り潰された 世界を救う技術」ベンジャミン・フルフォード・著(講談社)より。地震兵器は新潟県中越沖地震、ミャンマー・サイクロンでもつかわれた。中国の四川省の大地震は、軍事施設の破壊が目的だった。』 『地震兵器HAARP http://r10.to/hBAkVb #r_blog [ 真実の暴露 ] ベンジャミン・フルフォード氏が英語で語っている内容が日本語に翻訳されたサイト。そろそろ、賢い日本国民、眼を開かなくては。こんな不自然な地震が自然界にあるのか?』 『私がカルトに洗脳されたんじゃないかと...心配されているみたいですが、そんなことありません。(^_^) 世の中には、物事の見方はいろいろあります。日本のように情報統制された社会で洗脳されている方が怖いです。アニメとかオタク文化とか地方あるいは傍流のアイディアにも私は耳を傾けます。』  どれも議員職にあった人間の発言としては目を疑うものばかりだ。だが、彼女自身は「ネットには、マスコミが伝えない情報もあります。情報をどう、読み解くかは、個々人の判断。」としている。その中で、人工地震を引き起こすとして梶川氏が紹介している地震兵器だが、実際にどのようなものなのであろうか。  まず、各種サイトのソースとされる「フォーブス」元アジア太平洋支局長のベンジャミン・フルフォード氏の主張だが、地震兵器は「HAARP」と呼ばれる。  この地震兵器についてはネット上でさまざまな意見が挙がってはいるが、現在、もっともらしく言われているものとしては「強い周波数を放射する兵器」だ。強力な電磁波は地殻や地下水に影響を与え振動や地割れを引き起こすという。  フルフォード氏によれば、これまでに世界の巨大地震でこの兵器が用いられた例として四川大地震、スマトラ沖地震、ハイチ地震などがあるという。また、日本国内でも阪神淡路大震災、新潟県中越沖地震もこの地震兵器HAARPによるものだという。この他にもHAARPは万能な攻撃力を持ち電磁波で電離層をかき回して大気を不安定にさせる気象兵器としての機能も有しており、2005年にアメリカに甚大な被害をもたらしたハリケーン「カトリーナ」がその例だという。  しかも、フルフォード氏の著作『図解 世界「闇の支配者」』(扶桑社)では、氏のジャーナリズム活動で闇の支配者が日本の金融業界に圧力をかけたことを暴露したことについて公安警察から「地震が起きるからそんなことを書くな」と警告されたことにも言及し、結果として直後に新潟県中越沖地震が発生したとしている。  ここまで紹介してきた「HAARP」の脅威だが、これはある巨大企業が深く関係している。それが年間売上4兆円を超す多国籍企業・ベクテル社だ。  ベクテル社は1898年の創業以来、世界中のインフラ建設を請け負っている。日本も例外ではなく関西では空港事業や都市計画に深く絡んでいる。それどころか、ベクテル社は青森県六ヶ所村の再処理工場建設にも参入している。  このようなことから、ベクテル社が巨大災害後の復興利権を勝ち取るためにHAARPを用いて巨大地震を起こしているとの説も巻き起こってしまう。  冒頭で紹介した梶川前議員が、興味本位か本気なのか真意の程は定かではない。仮に自分が信じていたとしても、世間が「陰謀」だと思うことは「デマ」と同じと受け取る人もいる。  東日本大震災の発生直後からネット(主にTwitter)のデマ情報に警告を発してきた評論家の荻上チキ氏などは、荻上式BLOGの中で「こうした、国をあげての騒動になるようなケースの場合、誤った陰謀論なども多く出回ります。(中略)政府や関連機関が情報を隠している可能性を検討するのは国民・市民として重要ですが、その懐疑を補強してくれるような『怪しい情報』に対しても無防備であってはならないので、常に『確かな一次ソース』の有無の確認などが重要である旨、繰り返しておきます。」と述べている。  現象と現象の間に不確定な要素があるとき説明するために「陰謀」と呼ばれる言葉が使われることがある。これは、理解できない、認められないことを納得するための手段にするためだ。今回の場合は、甚大な被害と巨大地震。それが地震兵器によって引き起こされたと説明することで、まったく非のない人々が被害を受けたことを納得するための要素として用いられている。しかも、被害を受けた人ではなく、それを冷静かつ客観的に見る余裕のある人たちが騒いでいるに過ぎない。実際、今回の大震災に巻き込まれた東日本の人間のみならず日本全体が、世界規模の陰謀とでも考えないと納得できない国民感情が少なからずあることだろう。  だが、地震の原因を誰かの「陰謀」だと決めつけても我々が直面している現実から逃れられないことを忘れてはならない。 (取材・文=丸山ゴンザレス/http://ameblo.jp/maruyamagonzaresu/
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被災地救援の「チーム陳」代表、陳光標が寄付金水増し疑惑でピンチ!?

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今年3月10日、雲南省地震の被災地を訪れた
陳光標氏と、氏から寄付された札束を手に
する被災者(現地メディアの報道より)。
 東日本大震災発生直後、私設救援隊を率いて被災地入りした中国人富豪、陳光標氏。日本でも「救援やってます!」と言わんばかりのキメキメポーズで撮影された彼らの活動の様子がネット上で話題となり、「チーム陳」という愛称も誕生した。  彼は中国ではかねてから慈善家として知られていた人物で、これまでに総額100億円を慈善活動に投じたと言われている。例えば東日本大震災の直前には台湾を訪れ、低所得者に対し約14億円を寄付し、中国・四川大地震の際にも60台もの建設機器を被災地に投入して救援に当たったほか、8,000万円を寄付したと主張している。   しかし、そんな陳氏の慈善活動に、 ニセモノ疑惑が浮上している。  中国紙「南方都市報」などの報道によると、 陳氏が主張する寄付金の額は、売名行為を目的に大幅に水増しされた金額であるというのだ。例えば、昨年のハイチ地震の際に陳氏は「中国青年基金会」と「中国人権基金会」を通し、被災地に約1億円の義援金を送ったとしているが、この2つの機関は実際には存在しないことが判明したという。また、陳氏が昨年、約2億7,000万円を寄付したというある団体は、7,800万円しか受け取っていないことも明らかになった。  こうした報道に対し陳氏は「98%ウソ。メディアはあら探しばかりだ」と反論しているが、寄付の金額が事実である証拠は呈示できていない。  しかし、金額の大小の問題はあれ、彼がかなり規模の大きい慈善活動を行っていることは確か。「やらない善よりやる偽善」という言葉もある。こうしたバッシングにめげず、パフォーマンスでも中身の伴った慈善活動ならば続けてもらいたいものだ。(文=高田信人)
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「"お祭り"デモは世界を変えるか?」活発化する反原発・脱原発運動に見る現代デモ事情

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東京藝術大学准教授・毛利嘉孝氏。
 福島第一原発事故に収束の見通しが立たない中、各地で反原発・脱原発を訴えるデモ運動が活発化している。中でも、震災から1カ月後の4月10日に東京・高円寺で行われたデモには約1万5,000人が集まり、Twitterなどネット上で大きな話題を呼んだ。  だがその一方で、新聞・テレビなどの大手メディアはこのデモを軒並みスルー。また、一部ネットメディアに報じられたレポートに対しても「単なるお祭りでは?」「遊んでいるだけにしか見えない」といった否定的な意見が散見された。  安保闘争や全共闘の時代には社会現象として一般にも強く訴求した「デモ」という行為は、現代においてどんな意味を持っているのか。果たしてデモ行進は、社会を変える求心力たり得るのか。『ストリートの思想』(NHK出版)の著者であり、音楽や美術などの現代文化やメディア、社会運動などの研究・批評を行っている東京藝術大学准教授・毛利嘉孝氏に話を聞いた。 ――毛利さんも「4.10高円寺デモ」に参加されたそうですが、まずは率直な印象を聞かせてください。 毛利嘉孝氏(以下、毛利) みんな「誰かと話をしたかったんだな」ということをすごく感じましたね。3月11日の震災以降、人が集まることが難しくなっていたし、報道を見ていると言論が抑圧されているように感じることもあって「このままじゃ日本がダメになるんじゃないか」という不安を抱えた人たちが集まっていた。僕自身も、外に出て誰かと話せるという開放感はありましたね。 ――確かに、震災からしばらくは"自粛ムード"もあって、外出を控えていた人が多かったように思います。では、そもそものデモの定義とはどんなものなのでしょうか。 毛利 民主主義を支えるひとつの表現形式だと思います。民主主義には、直接民主主義と間接民主主義という2つの形式がありますが、選挙で誰かを選んで政治をやらせるという間接民主主義を補完する役割が、デモにはあると思います。選挙では4年から6年間の代表を選びますが、その人にすべてを任せているわけではなくて、当然、状況が変われば民意も変わっていく。でも、それを示す方法って実はほとんどないんですよね。世論調査もありますが、調査機関によっては、どの程度信用できるのか分からない。これだけ世の中が複雑化してくると、直接的に何かを表現するような空間が必要で、デモはその場所として機能していると思います。
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高円寺のデモの様子。
──一種の抗議運動とは、また別の役割ということでしょうか。 毛利 何かに対しての直接的な"抗議"というよりは、もう少し大きな意味で社会を変えていくような機能だと思います。デモって、複雑なことはできなくて、基本的には「戦争反対」とか「原発なくせ」とかシングル・イシュー(一つの問題をめぐる政治運動)にしか対応できないんです。でも、これが重要になる瞬間があるんですよ。そうした状況では、デモは選挙以外にアクションが起こせる数少ない手段だと思います。  よく東電の前でデモをやればいいじゃないかという声がありますが、あれは直接的な抗議なんですよね。不特定多数の前でやることで、原発問題に興味のない人やあまり否定的ではない人たちに対して何か意見を訴えていく、世論をつくっていくという機能も、デモにはあります。 ──高円寺の話に戻りますが、ロックバンドやチンドン屋、パフォーマーの方も数多く参加していて、従来テレビなどで報道されてきた「デモ」とは違ったイメージを受け取った人も多かったようです。 毛利 昔はデモといえば左翼のもので、イデオロギー的な側面が強かった。社会党系や共産党系、労組をはじめ組織に属する人たちが中心だったんですよね。それが2003年の反イラク戦争デモくらいから、フリーター層を中心に作家やミュージシャンを巻き込んだ、組織に属さない形の今までとは違ったデモが形成されはじめ、世間の"デモアレルギー"のようなものは比較的少なくなってきていると感じます。  今回の高円寺に関して言えば、あの街はやっぱりサブカルチャーなんですよね。ロックミュージシャンやライブハウス、飲み屋が多いし、ヒッピー文化も残っているから、ああいうデモになったと思うんです。高円寺が持つ独特のくさみというのは多くの人に受け入れられないものかもしれないけれど、逆にそこが魅力的だったりする。だからこそ1万5,000人もの人が集まったんだと思います。 ──そうした雰囲気、「祝祭性」のようなものに対して、切実に原発を停めたいと思っている人や、反でも推進派でもない人の中には違和感を覚えた人も少なくなかったようです。 毛利 確かに、「もっと真面目にやれ」「代替エネルギーをどうするんだ」などの批判もありましたが、今回のデモを主宰した「素人の乱」の松本哉さんはそんなことは考えていない。彼はただ原発を停めたいだけでデモをやった。けれど、生真面目で知識がある人だけのものだった政治のすそ野を広げたということは、今回の高円寺デモの最大の功績だと思います。「素人の乱」がこれまで培ってきたデモのノウハウが生かされたと思いますよ。でも、それは生真面目な政治を否定するものでは決してありません。それはそういう議論の場所を別に確保していけばいいんじゃないでしょうか。  海外でも30万人規模のデモになれば、基本的には巨大レイブパーティーみたいなもんですよ。やっぱり生真面目な政治に特化しても、それだけでは人は集まらないんです。情動だとか楽しさだとか快楽だとかがあって、初めて人は動く。だからこそ、今はデモが祝祭的になっていると思うんですよ。 ──ドイツでは福島第一原発の事故を受けて、25万人が反原発デモに参加し、実際に原発が一時停止しました。日本でもこうした大規模デモが発生する可能性はあるんでしょうか。 毛利 反原発に関して言うと、やっぱりまだ多くの人が原発は必要だと思っていると思うんですよね。「簡単に停めるって言っても難しい」というのが大きな意味での国民のコンセンサスでしょう。多くの人にとってまだ問題にさえなっていない。それがこれまでデモに人が集まってこなかった、ひとつの要因ですよね。一種の無力感もあるのではないでしょうか。 ──その無力感の正体とは何なのでしょうか。 毛利 今までデモで何も変わってこなかったというのが大きいと思います。何かを変えた経験もないし、市民革命も一度も起こらなかった国ですから。外国からの外圧と上からの改革で乗り切ってきたわけで、こう言うと日本人の国民性という話になってしまいますが。  でも今回はさすがに「福島ちょっとまずいんじゃない?」という雰囲気が出てきている。だから今後、"統一行動デー"みたいなものはあると思いますよ。高円寺や下北沢、芝公園、東電前など分散化して最後にどこかで集まるとか。それぞれに1万人が集まれば10万ぐらいになりますからね。そこからさらに広がる可能性はあります。全然原発問題に関心のない人がそういうデモを見たら、「こんなにみんな反対しているのか」とショックを受けますよね。会社や学校では誰も「原発ヤバい」と言っていなくても、週末に街に出たらみんな反対している。そういうアピール力はあると思います。 ──デモが国を変えることもあり得そうですか? 毛利 一日に10万人集まれば変わってくると思いますよ。基本的に政治家にしてもメディアにしても、世間の意見には一定限度を超えるとどこかで従わざるを得ないので。今回の原発は停まらないと本当にヤバいけれど、現実的にはすぐに停まるものではない。いったん停止した後も15年とか20年かけて徐々に処理するしかないものだから、やっぱり反原発というよりは、脱原発というのがコンセンサスになっていくと思います。それをどうやって主張するかっていうと、当面デモくらいしかない。ネットで呼び掛けて署名を10万集めても、それだけで何も変わらない。実際に外に人が出て具体的に姿を見せないと変わらないと思います。10万人集まる段階でも、メディアが世論調査をしたら脱原発派は5割を切るかもしれませんが、10万人が街中に集まったときのインパクトはすごい。さらに、本格的にミュージシャンなど影響力のある人が入ってくるとだいぶ変わると思いますよ。今の時代、1人のカリスマが出てくることは難しいと思いますが、マスにアピールできる人たちが何人か出てくれば。 ――今、何かしたいけど何をしたらいいか分からないという人が多くいると思います。脱原発デモに参加したいという人が、自分に合ったデモを見つけるにはどうしたらいいのでしょうか? 毛利 ネットで情報を集めることもできるけど、やっぱりこういうのって人間関係なんですよ。行ったことがある人に聞くというのが一番ですね。明確な意見がなくても、実際に身体を動かして情報収集したり行動することには意味があると思いますよ。今はシュプレヒコールとかも無理に声を出さなくても構わないし、気軽に参加してみればいいんじゃないでしょうか。 ──気軽に参加してみてもいい。 毛利 最初は不真面目でもいいんですよ。最終的にどこにデモの到達点があるかというと、結局みんな楽しく生きたいわけですよね。楽しい世界を獲得したいのに、そのために必要以上に苦労するというのはあり得ないですよ。もともとお祭りやカーニバルっていうのは、普段自由に意見を言えないような民衆が爆発するという政治的なものだし、ボトムアップの民主的な政治の現れでもあると思いますよ。 (取材・文=編集部) ●もうり・よしたか 1963年、長崎県生まれ。京都大学経済学部卒業。ロンドン大学ゴールドスミス・カレッジにてPh.D(sociology)を取得。九州大学助教授などを経て、現在東京藝術大学音楽学部音楽環境創造科准教授。専攻は社会学、文化研究。著書に『文化=政治――グローバリゼーション時代の空間叛乱』(月曜社)、『ポピュラー音楽と資本主義』(せりか書房)、『ストリートの思想』(NHK出版)などがある。
ストリートの思想―転換期としての1990年代 デモも進化しているようです。 amazon_associate_logo.jpg
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原発事故は海外でどう受け取られているか 欧州でも注目される「FUKUSHIMA」の行方

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 サッカー欧州CLの取材で4月4日に日本を発ち、ミラノ(イタリア)、デュッセルドルフ(ドイツ)、ユトレヒト(オランダ)、マンチェスター(イギリス)などを回り、ベルリン(ドイツ)に来てから1週間が過ぎた。到着時は肌寒かったベルリンも、日に日に気温は上昇し、夏の到来を感じさせている。  さて、日本ではいまだ東日本大震災の余震が続き、福島第一原発の安定化に向けた作業もスムーズにいっていないと聞く。  もちろん、こちらヨーロッパでも連日大なり小なりテレビ・新聞等で日本の動向は報じられている。しかし、そこには出発前に日本で見聞きしていた情報と若干のズレがあるのは素人目にも明らかだ。    被災地の悲惨な状況や原発周辺のリアルな映像(防護服を着た作業員の活動状況や爆発後の建屋内の様子など)は、日本では目にしていなかった形で流れている。  そして、震災から1カ月が経過した現在では、復興に向けた動きというよりも圧倒的に報道量が多いのは原発問題。「FUKUSHIMA」という文字が、そこかしこで見受けられる。  事故レベルがチェルノブイリ原発(1986年)と同様の「レベル7」に上がった今、さまざまな比較がなされていることと思うが、イタリアの知人によれば「イタリアには事故後、チェルノブイリから流れてきた移民が海外駐在員の家で家政婦などをしていることが多いが、割と若いのに(30~40代)がんで亡くなっている人が多い」という。因果関係は不明だが、幼少期に両親ともども避難してきた世代ががんを発症していると考えてもおかしくない。  ドイツでは、最近チェルノブイリに撮影に行ったというカメラマンに会ったが、現在でも周囲30キロは隔離されており、廃炉となった原発には一般人は近づくことはできないという。  ベルリンのホテルマンは「ドイツ人はヨーロッパのほかのどの国民よりも原子力に対して批判的なんだ。こちらでは日本政府が真実を伝えていないとの報道もあった。廃炉にするにしても、チェルノブイリよりも大変で、ずっと長くかかるらしいね。十分、気をつけて」。  デンマークの友人からはこんなメールが来た。「デンマークのメディアはいま、この期に及んで原発頼みのエネルギー政策を変えようとしない日本政府の対応を、驚きを持って伝えています」と。  そういえば、出国便のKLMオランダ航空は搭乗2日ほど前になって急に「成田ーアムステルダム」便が関西国際空港経由になったと連絡してきた。震災の影響で、成田では食事や水などの物資の確保が難しいとの理由だったが、乗務員自体も全員関空で交代。つまりは、オランダ人スタッフも成田滞在を避けたかったようだ。  果たして、実態はどうか。困難な時だからこそ、報道に惑わされず、確かな情報に基づいた判断と行動を個々がすべきなのかもしれない。 (文=栗原正夫)
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「限界だから、この際、夢精しちゃおうかとも思うよ」被災地の性をめぐる実情

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東北一の歓楽街である仙台・国分町。徐々に人出は戻ってきているが、
老舗のストリップ劇場「仙台ロック」はいまだ休業中だ。
 大手マスコミ報道ではうかがい知ることのできない被災地の現実の一つに、「性」の問題がある。被災者をおとしめると見なされ、タブー視されがちだが、「被災者」はもともと特別な存在だったわけではない。3月11日の震災で突然に日常を奪われ、「被災者」になってしまっただけなのだ。  実際に話を聞いてみると、震災発生直後は食欲と睡眠欲を満たすのに精いっぱいで性欲処理どころではなかったという。だが、多くの被災地で援助物資が届くようになれば、性欲が芽生えてくるのも当然の流れだろう。  今回の震災で最も大きな津波の被害を受けた地域の一つである宮城県女川町で、家族と暮らしている20代独身の男性(彼女なし)は、筆者が「性欲はたまっているんですか?」と質問すると「むしろ切実な問題」だと話してくれた。 「性欲を感じ出したのは震災から2週間後、肉親や親類の安否が確認できたあたりかな。日数が経過したからではなく気持ちが少しホッとしたというか、別のことが考えられるようになったからですかね」  彼が語るように、生活がある程度安定し気持ちに余裕が出てくれば、「性欲」は自然とよみがえってくる。それは誰もが持っている欲望であるのだから当然と言えばそうなのだが、ここで問題となるのが性欲の処理、オナニーだ。阪神淡路大震災の時にもこの問題は被災者を苦しめたという。  被災地の男性は、どうやってオナニーをしているのか。宮城県南部で被災したある男性は「オナニーは本当に困っている」と話してくれた。 「避難所に限った問題じゃないんですよ。津波の浸水で家の一階がやられて二階に家族全員が住んでいるし、親戚の家に疎開した人だって状況は同じ。一人になれる時間ってないんだよね。しかもネットだって携帯ぐらいしかないから、ズリネタも見られない。不謹慎と言われるかもしれないけど、オレにとっては本当に切実な問題なんだよ」
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津波によって一階部分が壊滅した民家。
現在も、避難所ではなく、こうした半壊住宅に暮らしている人々が数多くいるのだ。
 このように、プライベートな空間が存在しない避難生活ではオナニーをする場所の確保は困難を極める。いよいよ我慢できなくなってオナニーを実行する場合はトイレの中くらいしかないそうだ。  しかし、そのトイレの状況も芳しいものではない。現在は掃除当番が決められて改善されているところが多いが、避難所は震災発生直後から上下水道ともに断水していた。そのため大小便の悪臭がひどく、じっくりと落ち着いて性処理できるような状況ではなかった。しかし、復活した性欲には勝てないのが男の性。前出の宮城県南部の男性は切実な状況を教えてくれた。 「においがキツいので長居はしたくないのだけど、ぜいたくは言えない。半壊した家に暮らしている友達なんか『30過ぎて親にオナニーしているのがバレた!』って言っていたし。個室があるだけましなのかもね」  悪臭の漂うトイレのように過酷な状況下であろうと、ほかに避難してきている人がいる場所であろうと、そこでするしかないというのだ。さらにせっかく性欲の処理をしたとしても被災地で暮らす筆者の友人の中には、「オナニーしても妙な罪悪感というか、射精しても半分残ったような感覚があるね。こんな状態が続いてもう限界だから、この際夢精しちゃおうかとも思うよ。その方がまだいい」と話す人もいる。  被災地の男性が欲求不満と戦っている一方で、「オカズの緊急廃棄」も起きている。  親戚の安否確認で宮城県亘理郡を訪れた筆者は、エロ本やオナホールといったアダルトグッズの数々が投棄されている場所に出くわした。年代物のAV(ビデオテープやDVD)に加えてエロ漫画(劇画)、熟女物のエロ本、某アイドルの写真集といった幅広いラインナップで、所有していた人の趣味をうかがい知ることは難しいのに加えて、なぜこのように廃棄されているのか皆目見当がつかない。そこで同地域で被災者した30代の知人に尋ねてみた。
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荒野と化した町に廃棄されたエログッズの数々。
一見シュールだが、切実な光景でもある。
「エロ本はこの状況では捨てるしかない。今は親戚の家に疎開しているけど、たまに津波の被害を受けた家の片付けに戻るんだよね。その時にオレのコレクションしてきたエロ本とかが家族に見つからないように、エロ本だろうがエロビだろうが使いかけのローションだろうが、タンスの奥に隠しているエログッズは一気に捨てるしかないでしょ。中学生ならまだしも、30過ぎて見つかるのはキツいよね」  彼によれば、震災ゴミに交ぜたり、明け方に自宅に帰ってエログッズを取りまとめて近所の目立たない場所に投棄している男性がけっこういるそうだ。  笑い話のようにも聞こえるし、「どさくさまぎれに不法投棄は良くない」と正論で片付けることはできる。だが、考えてみてもらいたい。地震に耐えて命からがら津波から逃げ延びた若者たちの切実な悩みは、ライフラインや復興以外にも存在している。それは、被災者があの震災以前には普通の暮らしを営んでいた普通の人たちであるからにほかならない。被災者を特別視するのではなく、被災地以外の場所で暮らすわれわれと同じような生活がある日突然なくなったのだと考えることを忘れてはならない。  彼らが一日も早く元の暮らしに戻ることを切に願う。 (取材・文=丸山ゴンザレス/http://ameblo.jp/maruyamagonzaresu/
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「あれはいったい誰?」ACジャパン出演のVERBALにイメージダウンの危機

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YouTubeより
 何かと話題を呼んでいるACジャパン(旧公共広告機構)の震災関連CM。Jポップ界からはトータス松本、EXILEのHIRO、m-floのVERBALが「日本の力を、信じてる。」編に出演したが、いずれも評判が芳しくない。 「全国民にアピールすべきCMに、なぜこの3人なんでしょうか。同じCMに出たSMAPはともかく、EXILEのHIROはまるでVシネ俳優のようでしたし、スーツを着込んだm-floのVERBALなんて、ファンでも誰だか分からないほど(苦笑)。トータス松本は実績があるけど、Jポップ界の顔というほどの人気はありません。公共性の高いCMにふさわしい人選かどうか疑問です」(雑誌編集者)  CM関係者によれば、「日本の力を、信じてる。」編を制作したのは博報堂。同社のコネクションの中で、3名の出演が決まったというが、エイベックス所属のアーティストが2組含まれているのは注目に値する。 「エイベックスからは、『HIROが出るならVERBALもぜひ......』とのプッシュがあったようです。VERBALは熱心なクリスチャンで、社会貢献活動にも積極的ということも起用理由の一つですが、3月にソロアルバムを発表したばかりという点も見逃せません。m-floは実質活動休止状態ですから、ノーギャラのAC出演とはいえ、彼の社会派キャラをアピールするいい機会と考えたのではないでしょうか」(レーベル関係者)  もっとも、VERBALのCMについては「公務員かと思った」「スーツが変」と、普段のスタイリッシュなイメージとは違うとの声も多い。世間的には「あの謎の男はラッパーらしい」程度の認知にとどまっており、現時点ではソロアルバムのセールスも苦戦している。  トータス松本についても、イメージダウンを懸念する声が聞こえてくる。 「オンエア数が多くて話題になりましたが、その分、『出過ぎだ』『またか』とウンザリ感が広まってしまったのも事実です。矢沢永吉や坂本龍一らが大挙出演して『上を向いて歩こう』を歌ったサントリーのメッセージCMが好意的に迎えられたのとは対照的で、演出上の違いが明暗を分けましたね」(前出関係者)  ノーギャラで応援CMへの出演を決めた各人の心意気には誰もが拍手を送るところ。混乱期という事情もあるが、アーティストと呼ばれる人々のメディア露出の難しさが浮き彫りになった形だ。 (文=柴田道也)
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省エネを高く評価された東京電力 2月に受賞決定の「第20回地球環境大賞」を辞退へ

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「地球環境大賞」公式サイトより
 瞬時に東北地方の太平洋側を壊滅状態に陥れた東日本大震災。こうした未曾有の災害時こそ、取材記者を大量に動員できる大手新聞・テレビの真価が問われるところだが、そんな中、ひそかに「しまった!」と首脳陣が頭を抱えているメディアグループがある。 「『地球環境大賞』を主催しているフジサンケイグループです。20回目となる記念すべき今年の大賞受賞者になんと東京電力を選んでしまい、対応に大わらわのようです」(大手紙幹部)  「地球環境大賞」とは、1992年に産業界を主な対象にフジサンケイグループが立ち上げだ顕彰制度。秋篠宮殿下が名誉総裁を務める財団法人「世界自然保護基金ジャパン」の特別協力も得ており、ホームページによれば「環境に関する顕彰制度として日本でもっとも権威と格式をもつ」のだそうだ。 「審査員には、有馬朗人・元東大学長のほか権威をズラリとそろえていて、なるほど、"格式"ある賞の体裁を取っています。しかし産業界を主な対象にしているだけあり、大企業が順繰りで受賞している仲間内の催しという感じ。東電にしてみたら、20年目にしてようやくめぐってきた栄冠でした」(同前出)  受賞決定は、今年2月のこと。受賞者には財界を代表する企業がズラリと居並び、そのトップに東電が輝いた。その受賞理由は、こう説明された。 「川崎火力発電所(川崎市川崎区)に隣接する工場を新設の配管で結び、発電時に発生した蒸気を各工場に供給、熱源として再利用できる仕組みを構築し大幅な省エネを実現した。審査委員からは『既存のシステムを変えて省エネを図るものであり、大変効果的だ』(合志陽一・筑波大学監事)、『企業の境界線を超えた面的な省エネ活動の好事例』(椋田哲史・日本経団連常務理事)など、周辺地域を視野に入れた取り組みが高く評価された」  要するに、「省エネ」「CO2(二酸化炭素)削減」を金科玉条のようにうたい、この物差しにかなう取り組みこそ優良企業の証しだと言わんばかりなのだ。  しかし、今となっては悪いジョークでしかないだろう。受賞決定翌月の3月、東電は原発事故を引き起こし、放射性物質をまき散らしているのだ。  この状況に「環境大賞」はあまりにも不釣り合いだろう。目に付きやすい小手先の「省エネ」事業に取り組み、企業イメージをアピールしようと腐心するあまり、結果的には自然環境そのものを破滅へと導く形になってしまっている。  今回の震災と福島第一原発事故を受けて、フジ側は4月5日に予定されていた授賞式を延期すると同時に、東電の受賞を取り消すかどうか判断を迷っていたようだ。  13日になって、東電・清水社長が会見で、この受賞について「辞退する方向で調整したい」とし、主催のフジ側も、東電側から辞退の意向があることを認めた上で「今後、顕彰制度の趣旨に照らし合わせて、審査委員会ならびに顕彰制度委員会に諮り、正式決定する」とコメントしている。  審査委員長の有馬氏は、今回の受賞決定に際して「環境問題の解決に向けた各社の活動は年々深化しており、温暖化防止に向けたCO2の削減はもとより、生物多様性の保全など取り組みにも幅が出てきた」と語ったが、その見識こそ、あらためて問われることになるだろう。
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「やせた犬、ノイローゼの馬……」震災1カ月 原発5km圏内で見た被災動物の悲劇

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避難指示区域に取り残された飼い犬たち。力なく歩き回っていた。
 3月11日に発生した東日本大震災の巨大津波によって、日本は未曾有の危機を迎えている。人間社会の便利さを支える電力。それを生み出す発電所の事故によって、交通・産業・環境などにさまざまな被害がもたらされた。その陰に、見過ごすことのできない別の被害者がいる。それは福島第一原発周辺のエリアに取り残された動物たちだ。  震災から約1カ月後の被ばく被災地を歩いたフリージャーナリストの丸山ゴンザレス氏に、5km圏内に残された動物たちの現状を聞いた。 ――被災地、それも福島原発の5km圏内に入ることは可能だったんですか? 丸山ゴンザレス(以下、丸山) 4月3日(日)の時点では、意外なほどあっさりたどり着くことができました。最初は出身地の宮城にいる母に持病の薬を届けにいったのですが、流れで福島入りして「ここまで来たら福島原発の近くまで行ってみよう。どうせ近くまで行ったら検問があるだろうし、そこで引き返そう」と思ったわけです。 ――具体的にはどのようなルートを取ったのですか? 丸山 宮城の南部エリアから国道6号線をひたすら南下しました。途中で津波や地震のダメージで寸断されている道路がありましたけど、そこを迂回して再び6号に合流するってだけで、基本は同じ道を進みましたね。
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道路状況は壊滅的
――5km圏内に入ったとのことですが、原発周辺の様子はどうだったんですか? 丸山 5km圏内には、簡単に入ることができました。検問があったり、立ち入り禁止になっていたら引き返そうと思っていたんです。ところが、道路は封鎖されていないどころか、人が居ないんですよね。警備している警官にも一度しか会いませんでした。その警察官は「気をつけてね。危ないから」と言っただけで、強制的にオレを戻すわけでもなく、そのまま立ち去って行きました。道路事情が本当に悪く、道が崩落している個所も多くて、それを回避しながら進んでいたら「双葉町」の看板が出てきて「入っちゃったんだ......」というのが正直な感想でした。 ――噂では聞いていましたが、それほど簡単に入れるものなんですね。実際、どの辺りまで行かれたんでしょうか。 丸山 避難指示の出ている20km圏内にある双葉町内と福島第一原発の作業員通用口、裏門ですね。そこから少し迂回して第二原発横を抜けて行きました。そこも警備は皆無でしたよ。あまりに安易に近づけたんで、いくら非常時とはいえ、セキュリティー面での問題はあるんじゃないかとも思いました。双葉町は完全なゴーストタウンでした。6号沿いにはお店などもあるんですが、それも人が居ないだけで、割ときれいなまま。それで、町の中を車で回っていたら、何か動く物が見えたんで近づいてみると、犬の群れだったんですよ。
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ゴーストタウンと化した"原発の町"
「原子力明るい未来のエネルギー」の文字が空しい
――双葉町には動物たちが取り残されていたと? 丸山 そうなんです、明らかに飼い犬でした。首輪から数センチほど鎖がぶら下がっている犬が結構多いんですよ。おそらく現地に取り残された飼い犬たちを、消防か警察の人間が、少しでも生きられるように断ち切ったんでしょうね。住人たちがいかに緊急的な避難をさせられたのかうかがい知れました。  印象的だったのは、犬たちの反応です。オレのように突然現れた人間に擦り寄ってくることもあれば、警戒して距離を取ったり、ひたすら不信感をあらわにするように吠えてくるなど、同じ群れでも反応はさまざまでした。いずれも人間にどう接していいのか分からなくなっているんでしょうね。犬種からしても、もともとの群れではなくて自然発生的に集まっているんでしょう。犬たちも寂しいんじゃないでしょうか。 ――犬たちは自分たちで餌を確保しているんですか。それとも飼い主が餌を持ってきているんでしょうか。 丸山 餌は食べていない感じでした。見た目でやせているのが分かります。それでも何カ所かに、誰かが置いていった餌がありました。冷蔵庫の残り物っぽい感じで、ミートボールとか魚の切り身、スナック菓子なんかです。飲み水は、おそらく雨水なんかがたまった水たまりでなんとかしのいでいるんじゃないでしょうか。 ――ほかにも取り残されていた動物たちはいましたか。 丸山 犬のほかに目立ったのは猫の死骸です。餓死したのか、車にはねられたのか、それとも両方なのかは分かりませんが、道路沿いに死骸が多かった。この地域では牛も放牧されていましたが、これは小屋から解き放たれて街中を歩き回っていました。  衝撃的だったのは馬小屋です。ここには死骸が何頭分かあったのですが、生き残っている馬も10頭以上は居ました。その馬たちがノイローゼになっているようで、悲惨でしたね。小屋につながれたままの馬たちは最低限の身動きしかできずに、首が伸びる範囲にある餌は食い尽くして、餌の置いてあった床を何度も鼻でこすっていたんです。食べ物を探しているのかもしれないですね。飢えとストレスから狭い小屋の中で暴れた馬も居たようで、首や足にケガをしているようでした。ほかにも、ひたすら首を上下に振り続けているだけの馬も居ました。  この状況は、避難エリアである以上、この先取り上げられることはないのかもしれないと思い、立ち去ることがためらわれました。しかし、私自身も放射能の影響が気になりますので、長居できなかったのが正直なところです。  だから、住人に「戻ってきて何とかしろ」なんてとても言えません。でもペットや家畜や競走馬は、人間と一緒にしか生きられない命です。ほかにもっと方法はなかったのか、そのことを考えてしまうばかりですね。
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馬舎に取り残された馬たち。よく見ると、自ら打ちつけたのか、体中が傷ついている。
 いまだ収束の見通しが付かない原発問題の陰で、置き去りにされた動物たちも犠牲者と言えるだろう。そして、その悲惨な状況もまた、現在進行形なのである。
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田原総一朗が「震災報道」に見た既存メディアの問題点と可能性とは【3】

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【1】【2】はこちらから 浮島さとし(以下、浮島) 田原さんご自身のお話に戻るんですが、今でこそ政治評論の重鎮としてご活躍ですが、お若いころはかなりメチャクチャをされてたというお話を耳にします。 田原総一朗(以下、田原) どうかな。例えば、どんな? 浮島 あの、元全共闘のヒッピーが全裸で行った結婚式の取材で、花嫁がノリで列席者全員とセックスすることになり、田原さんも花嫁に請われてその場でセックスしたという話は、あれはガセですか。 田原 しましたね。スタッフもみんな。それで、そのまま撮ってオンエアしましたよ。 浮島 そうですか(笑)。じゃ、ニュージャージー州でマフィアに取材を申し込んだら、マフィアの人間がビリヤード台を指して、この場で売春婦とセックスしたら取材を受けてやると言われて、実際にその場でヤったというのも本当ですか。なんかセックスの話ばかりで恐縮ですが。 田原 本当ですよ。だって取材するためだからしょうがない。取材はなんでもありですよ。 浮島 よくその状態で●●●が立ちますね......。ビビったりしなかったんですか。 田原 なんでビビるの? 浮島 なんでって、周りにマフィアがいるからです。 田原 だって、こっちは取材をしたいんですよ。そのためにはなんでもやりますよ。あのね、取材ってのは最終的にどこか命を張るという部分がないとダメですよ。だから向こうもこっちを信用する。そういうもんです。 浮島 今のお話で思い出したのですが、先日、(政治評論家の)三宅久之さんとお会いしたときに、70年代に起きた「西山事件」についてお聞きしたんです。当時、毎日の記者だった西山氏が、外務省の女性職員と懇ろになって沖縄返還協定に絡んだ機密情報を入手し、それをスクープとして出した。三宅さんは当時、毎日新聞デスクで西山記者の上司だった。 田原 あの時は取材方法が問題視されて、毎日新聞が世論からも同業他社からも批判されましたね。最後には男と女のスキャンダルに話が矮小化されてしまった。 浮島 三宅さんによると、その時ただ一人味方してくれたのが、ナベツネさん(渡辺恒雄・読売新聞社主)だったそうです。記者仲間の飲み会の場で「おまえら、おマ●コまでしてスクープ取ってこれるのか! オレのライバルは西山だけだ!」と言ってくれたと。ナベツネさんといえば今回のプロ野球開幕強行発言で男を下げましたが、これは若かりしころの男前なお話だなと。 田原 だってねえ、取材っていうのは、方法が三つあるの。盗むか、だますか、買収するかなんですよ。その意味で、西山事件は批判されるような問題では全然ない。 浮島 今、日本で盗撮のような手法で取材をして、仮に重大な反社会的行為の事実を引き出したとしても、当局以上に視聴者やネットユーザから取材した側に批判が来ますよね。「おまえら法律に違反してネタ取ってるじゃないか」と。 田原 だろうね、でも叩かれてもいいじゃない。昔ね、アメリカのあるスーパーが腐った肉をミンチにして商品として売ってるという噂があって、アメリカのテレビ局の人間がスーパーの店員に化けてカメラを持ち込んで、腐った肉を加工してる現場の撮影に成功して放送したの。そしたらそれがドキュメンタリーの権威ある賞を取った。 浮島 それはすごいですが、訴訟をされたりとかは。 田原 もちろん訴えられた(笑)。しかも裁判に負けた。で、僕はその取材をした責任者を取材したの。「負けたね、やっぱり違法だね」って。そしたら「そうですね」って。「これからどうする、もうしないの」と聞いたら「方法がまずかった。もっとバレない方法でやる」と。 浮島 コンプライアンスもクソもない(笑)。でも取材方法としては正しいと。もっとも、コンプライアンス自体が悪いわけじゃないですしね。法令遵守は必要なのであって、その解釈がゆがんで独り歩きしていることが問題ということで。 田原 西武ライオンズに東尾修っていうピッチャーがいたでしょ。彼に「ボークの定義って何だ」って聞いたの。そしたら、「アンパイアがボークと言ったらボークです」と。「あなたはボークしないの」と聞いたら、「バレないようにやるんだ」と。そういうもんです。 浮島 圧力に萎縮せずに、したたかに一貫してやり続ける姿勢が求められると。 田原 あと、楽しむことも大事じゃないかな。僕も裁判起こされたりしたけど、誤解を恐れずに言えば、裁判そのものはすごく面白かった。そしたら弁護士がね、こんなの面白がるの田原さんぐらいしかいないって。 浮島 ああ、なるほど。実は田原さんが提訴された時もすぐに事務所にインタビューを申し込んだんです。絶対に今は断られると思ったら、秘書の方は「田原は全然OKだ」と。でも、弁護士がNG出すかもしれないとおっしゃるので、担当弁護士の●●さんに電話で聞いたんです。そしたら●●弁護士も「田原先生は絶対OK出しちゃうと思うけど、今は遠慮してもらえますか」と言ってました。今のお話を伺って、なんか、そのときの空気が理解できました(笑)。 田原 ああ、●●さんがね。そんなことがあったの。 浮島 田原さんといえば『朝まで生テレビ』(テレビ朝日系)です。1980年代後半のかなり初期の放送を、学生だった私は友人と見ていた記憶があるのですが、田原さんが討論のテーマに予定されていなかった天皇制の問題を急に語り始めたんです。当時は天皇制といえば、今とは比較にならないくらいタブー視されていて、テレビで正面から議論するなんてあり得なかった。だから、見ているこちらにも「この司会者、何かやり出したぞ!」とびっくりして。あれ、確信犯ですよね。最初から企んでたのですか? 田原 あれはね、あのとき昭和天皇のご容態が思わしくないころで、今ここで天皇制の議論を避けるのはどう考えてもはおかしいだろうと、前もって局のプロデューサーに持ちかけたんですよ。そしたら彼も悩んでたけど、やっぱり無理だと。だから分かったと。その代わり、「生放送だから、たまたま話がそっちへ流れてしまうことは、アクシデントとしてはあり得るよね、その場合の責任は僕が持つしかないよね」と言ったの。そしたら彼は黙ってた(笑)。それを僕は暗黙の了承と受け取った。 浮島 あのとき田原さんが「今、天皇陛下が......」と切り出した途端、パネラーの間に緊張が走ったのが画面を見ていてもわかりました。猪瀬(直樹)さんですら動揺してましたから。田原さんも視線を盛んにチラチラとスタッフの方に動かしていて、スタジオが右往左往している空気が伝わってきたのを鮮明に覚えています。結局、栗本慎一郎さん(当時:明治大学教授)が「聞いてない!」って顔を真っ赤にして退席しちゃうし。あれはしびれましたね。 田原 しかけてナンボですからね。テレビというものは。 浮島 「朝生」はご自身で構成を考えるのですか。 田原 そう。全部こちらでやる。出演者もほとんど自分で選びます。で、このメンバーだか、ら、だいたいこういう話の流れで、という感じで。ついでにスポンサーまで自分で見つけてくることがありますよ。 浮島 その構成通りにいくものですか? 田原 一回もいったことない。むしろ、いきそうになるとこっちからかき回すから。当たり障りない答えばかりされるとつまらないでしょ。 浮島 スポンサーという言葉が出ましたが、よく「スポンサーの圧力」という言葉が使われますよね。スポンサーや広告代理店から電話がかかってきて「番組やめろ」みたいな。朝生では実際のところどうなんですか。 田原 あのね、スポンサーだって出資している以上は視聴率には敏感だけど、圧力をかけて番組をつぶすなんてことはまずありませんよ。それを言ってる局の人間がいたら、ただの言い訳。自分の力の無さを責任転嫁してると思っていい。そりゃね、トヨタ批判をする番組をトヨタのスポンサードでは作れませんよ。でも、そういう極端な形でない限り、スポンサーは文句なんて言ってきませんよ。 浮島 『朝生』を長くやってこられて、局のスタッフも世代交代してきて変化もお感じになると思うのですが、何か一貫したテーマとして掲げているものはありますか。 田原 まぁ、全体的に昔よりやりづらくなったけど一言で言えば、やりにくいものをどこまでやるかがテーマですかね。さっきもあなたが言ったけど、コンプライアンス部の監視体制も厳しいしね。 浮島 正直言って、段々つまらなくなってきたんじゃないですか。 田原 それはないでしょ。僕はね、テレビ局の監視体制が強まってくるのは、半ば歓迎してるの。つまりケンカでしょ。ケンカする局面がいっぱい出てくるっていうのは楽しいことだよ。 浮島 でも、昔はできたことができなくなると、自分の伝えたいものとは違う番組になるとか。 田原 それはならないでしょう。こういうふうにやってできなければ、こっちからやるか、あっちからやるか。要はやりようですよ。 浮島 それを若いスタッフやディレクターさんに伝えていかれるのですか。 田原 いつも言ってますよ。僕は昔から言ってるの、民放のディレクターなんてのは自分の表現したいことができるはずがないって。なぜなら、テレビは総務省が監督官庁として完全に管理してるから。スポンサーもいるから視聴率も無視できない、上層部からの圧力だってある。三重に縛られてるんです。じゃあ、自分のやりたいことが全然できないかというと、逆に考えれば三重に縛られてるから面白いんだって。縛りの中でいかに自分のやりたいことをやるか。縛りがないところでやりたいなら同人誌が一番縛りがないからね。でも、それじゃ面白くないでしょ。やっぱり文句を言われるから面白いんですよ。
今だから言える日本政治の「タブー」 ウソも隠蔽もいいかげんにして。 amazon_associate_logo.jpg
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