ジャーナリスト・武田徹が推挙 メディアの矛盾と欺瞞を突くドキュメンタリー映画

【サイゾーpremium】より ■武田徹(たけだ・とおる) [ジャーナリスト]1958年生まれ。恵泉女学園大学人文学部日本語日本文化学科教授。著書に『私たちはこうして「原発大国」を選んだ』(中公新書ラクレ)、『原発報道とメディア』(講談社現代新書)など。
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 今回、メディアのタブーに挑んだ映画を紹介するということで、メディアとは、ジャーナリズムとは何かという問いを、見る者に突きつけるドキュメンタリーを3本選びました。 『チョムスキーとメディア』【1】は、哲学者であり言語学者でもあるノーム・チョムスキーが延々としゃべり続けているのに圧倒されるのですが(苦笑)、テーマはマスメディアによって合意がいかに捏造されていくかということ。彼は作品内で、たとえばカンボジアの虐殺に比べて、ティモールの虐殺はなぜ西側諸国で報道されなかったのかといった問題を突き詰めながら、寡占状態となっているメディアが、国家の利益と一致する形で情報を出すことで、世間の合意が作られていくということを論証しようと試みます。ただし、先進国でそれは国家の検閲によるものではなく、マスメディアが持つシステムによって自然に行われていると訴える。マスメディアの中で現状に批判的な意見は少数派のものとして影響力を持てない。しかしそれでも言論の自由は大切で、彼はユダヤ人でありながら、ホロコースト否定論者に発言の機会を与えないメディアを批判します。言論の内容は肯定できなくても、言論の自由は保証されなくてはならないとする姿勢は極めて筋が通っています。メディアをとことん疑いながらも、人間は話せばいつかわかり合えるのだという理想を追い続けて話し続けるチョムスキーに、希望を感じさせられますね。 『311』【2】は、森達也ら4人の監督が、震災約2週間後にワゴン車に乗って東北に行き、各々カメラを回して現地の様子を撮影した作品。まず原発を撮りに行こうとするものの、装備が不十分で被爆しかねないので撤退、津波被害地域を見に行くことに。こうして彼らがうろたえるさまは、震災後、我先に現場入りしようとしたフリーのジャーナリストたちの姿をカリカチュアライズしているかのように見えます。最後は津波で多くの子どもが流された大川小学校に行って、遺体と遺族の対面のシーンを撮ろうとして、怒った住民から角材を投げつけられる。災害という大きな悲劇の前で、取材の正当性を主張して、悲しみにくれる人たちの心情を土足で踏みにじるメディアの暴力性を反面教師的に見せつけますが、同時に、それでも伝えることを諦めてはならず、歴史的事実を伝えていくべきだと訴えかけてくる内容です。  原発をめぐる作品としては、ドイツの原発関係施設を淡々と映し続けた『アンダー・コントロール』【3】も、示唆に富む作品です。巨大原発施設とそこで働く人々を見ているうちに、どうして人類が原発を求めたのかが言語を超えた説得力で迫ってくる。大きな力を制御したいというマッチョイズムが原発を生み出した根源であることが、表面的なイデオロギーを凌駕して伝わってきます。そして同時に自らが生み出した技術を制御しきれない人間の悲しさを感じる。脱原発にいち早く舵を切ったドイツですが、実は実際にそれを成し遂げる目途は立っていない。  では日本はどうか。3・11後、民主党は30年後に原発撤廃と言っていたのを、反原発派は30年も待てないと反対しているうちに、選挙に敗れ、自民党ではなし崩し的に原発再稼働へと進みつつあります。原子力の力を求めるマッチョイズムに、反原発の声の大きさで勝とうとする別のマッチョイズムで戦うことに問題があったのでは。反原発を主張する映画が多い中、限りなく静かなこの映画は原子力のあり方を見つめ直すヒントとなり得るように思います。 (構成/里中高志)
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【1】『チョムスキーとメディア』 監督:ピーター・ウィントニック、マーク・アクバー/出演:ノーム・チョムスキー/発売:トランスビュー(5040円) ノーム・チョムスキーが、民主主義のプロパガンダはマスメディアのシステムによって自然に行われると、問いを投げかけていく様子と行動を追い続ける。(92年公開)

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【2】『311』 監督、出演:森達也、綿井健陽、松林要樹、安岡卓治/マクザム(5040円) 4人の映像ジャーナリストが、震災をその目で確認したいという動機で被災地に入り、ビデオカメラを回すことで生まれた作品。遺族を前に撮影をする彼らは厳しい批判を浴びる。(11年公開)

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【3】『アンダー・コントロール』 監督:フォルカー・ザッテル/配給:ダゲレオ出版 福島第一原発事故を受けて、2022年末までに原発を完全に停止することを決めたドイツ。本作は福島原発事故以前から撮影され始めていた作品だが、ドイツにおける原発の終焉を記録した映画としての意味を持つことになった。(11年公開)

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殺された街、牛、心…福島警戒区域内で積み上がり続ける”屍”

【サイゾーpremium】より
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(写真/針谷 勉)
 福島第一原発から半径20キロ圏内は警戒区域に指定され、同区域内への立ち入りは法律で厳しく制限されている。原発事故前、同区域では牛約3500頭、豚約3万頭、鶏約44万羽が飼育されていたが、事故後は、鶏は全羽、牛や豚はその過半数が餓死した。生き残った家畜は、国の指示で殺処分が今も実施されている。  そんな中、自身の被ばくを顧みずに事故後も警戒区域に残り、牛の世話を続けている農家がいる。吉沢正巳(58歳)。吉沢の牧場から福島第一原発までは約14キロ、牧場から排気筒や復旧作業中のクレーン群が見える。 「ド~ン、ド~ンと2回、花火を打ち上げるような音がした」  2011年3月14日の3号機建屋の爆発音と立ち上る噴煙を目の当たりにした吉沢。だが、逃げ出さなかった。 「数日もすると、近所の牛舎では、痩せ細った牛が水や餌を求めて悲鳴を上げ、その隣では牛の死骸を豚が食べている。まさに地獄のような光景だった」  それから約1年8カ月たった今、吉沢の牧場では約400頭の牛が毎時約3マイクロシーベルトの環境下で飼育されている。被ばくした牛は、当然売り物にはならない。 「被ばく牛を原発事故の生き証人として、俺は牛と運命を共にする」  国は警戒区域内での牛の飼養どころか、餌の搬入さえ認めていない。牛は栄養失調に陥り、弱い個体から次々と死んでゆく。これまで約100頭が死んだ。写真は、牧場内にあるその”墓場”だ。昼間はカラスが、夜になると野良化した犬が、その死肉をむさぼりにやってくる。 「深い絶望の先には、きっと希望がある」――牛飼い吉沢の闘いは始まったばかりだ。 (針谷勉) 『警戒区域』 原発事故後、福島第一原発から半径20キロ圏内を警戒区域として設定。市町村長の許可がない立ち入りは禁止され、違反すると10万円以下の罰金又は拘留となる。
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■衝撃写真と物語!緊急出版 『原発一揆 警戒区域で闘い続ける~ベコ屋~の記録』 警戒区域内に取り残された牛たちの命を守るため、被ばく覚悟で牧場の維持を決意した吉沢正巳氏。彼が国や東電と闘いながら、絶望の淵で「希望の牧場」を生み出すまでの記録をまとめたフォトルポルタージュ『原発一揆』が、小社から発行された。本書には「原発事故の真実」が収められているが、ここに掲載した写真もその”一幕”だ。 著者/針谷勉 発行/サイゾー 価格/1365円 【「サイゾーpremium」では他にも『原発』を多角度からぶった斬る記事が満載です。】事故処理の下請けはヤクザだけじゃない!! 原発お膝元のイビツな利権構造新左翼がオルグしている!? 大手マスコミでタブー視される首相官邸前反原発デモの現場アウトローが語る原発労働の実態 久田将義×鈴木智彦「東電はヤクザを黙認している」
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巨大な“ケガレ”の一塊から被災者個々の声を浮き彫りにする、インタビュー集『ガレキ』

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宮城県女川町の現在の様子(2012年9月撮影)。
 大飯原発再稼働への是非が問われた2012年の夏。最も厳しい需給が見込まれた関西でも計画停電は回避されたが、再稼働が妥当であったか否かについての検討はまだ入り口の段階だ。  今年の春以降、その大飯原発再稼働に関わる議論が紛糾する中で、後景に押しやられてしまったトピックがある。それが、丸山佑介著『ガレキ』(ワニブックス)が再提起する、震災がれき広域処理の問題である。  2011年11月に東京都の石原慎太郎都知事が震災がれきの広域処理に反対する声に対して、「(放射線量などを)測ってなんでもないものを持ってくるんだから『黙れ』と言えばいい」と発言して賛否の声が巻き起こってから、今年5月に北九州市で起きた受け入れ反対の抗議騒動までの約200日間を本書は「ガレキ問題」と捉え、何ひとつ過去の問題になどなっていない震災がれきについて、再度目を向けることを促す。  『ガレキ』は東北各地の首長や元原発作業員、福島県で震災を経験した広域処理反対派市民など、被災地に暮らす人々を含めた多くのインタビューおよびルポルタージュで構成されている。原発再稼働問題の陰で、検証や議論が尽くされないままに世間的なトピックとしては収束してしまったように見える、がれき広域処理の問題を考え直すための記録となっている。  がれき広域処理問題が、受け入れ賛成か反対かという単純な二択に収斂してゆく中で忘れ去られがちになっているもので、著者が忘れるべきでないと強調したのは、膨大な量のがれきがただの廃棄物ではなく、人々の財産であったもの、日常に在ったことを思い起こさせる具体的な品々であるということだ。遠目には廃材と映るものが、近づいてみれば子どものおもちゃであり、洋服であり、家具や本のかけらである。  また、それは平穏な日常の記憶であると同時に、悲惨な大災害の爪痕でもある。岩手県陸前高田市の戸羽太市長は、目の前に取り残されているがれきはもともと市民の財産であると同時に、「自分の子どもを轢き殺した車が家の玄関に置いてあるようなもの」でもあると語る。かけがえのない日々の面影と、2011年3月11日の痛ましい記憶とが表裏一体になっている。震災がれきは、そんな複雑さをはらむものである。  本書の編集時点で、陸前高田市内の死者は1,555人、行方不明者232人。その中には、戸羽市長の愛妻も含まれている。家族を失い、町の舵取りに追われる中で我が子たちへのケアを満足にできない不甲斐なさを滲ませる戸羽市長の言葉は、いまだ何も決着していない被災地の日々を、読む者に強く認識させる。共感する、などと軽々に口にできるものではない。けれども、これらインタビューでそれぞれの立場から語られる言葉には、せめて敏感でありたい。  しかし、これが震災がれき問題として括られてしまうとき、被災地の息遣いへの配慮は失われ、忌避すべき巨大な一塊として扱われる。がれき受け入れの是非を問うことであったはずの論点が見失われ、判断基準が不明瞭なまま拒絶の意識ばかりが際立ち、ついにはその地で生活する人々をも否定してしまうような言葉が拡大してゆく。  言葉を発する側に被災地の人々そのものに向けているつもりなどなくとも、被災地に暮らす人々にとっては自身を否定する声として突き刺さってくるのだ。  本書に収められたインタビューで繰り返し映し出されるのは、そうした否定の声に傷つく人々の姿である。  拒絶され無配慮な言葉を投げられる震災がれきは、被災地の日々の暮らしのすぐ横に存在する。何よりがれきは彼らにとって、自分たちの暮らしの礎となる我が家だったものなのだ。「それ(がれき)を放射能で汚れたとか言われると、私たちが汚れているみたいな感じがする」という人々の声に、受け手はどれほどの想像力を働かせられるだろうか。  時に脊髄反射的ともいえる震災がれきへの拒否反応の根底に、著者は「ケガレ」の意識を読み取る。個人に明確な判断基準があるわけではなく、抽象的な感覚による不浄の意識が、科学的な根拠よりも先行して震災がれきへのイメージを生み出してしまう。間接的で確度の定かでない大量の情報のみによって作られていったケガレのイメージはそのまま肥大し、議論の入り込む余地が限りなく乏しい禁忌の意識を強固にしてゆく。この意識に多くの人たちが縛られていることにすら気がついていない。  著者が本書で震災がれきを「ガレキ」とカタカナ表記しているのは、がれき広域処理問題が本質からはぐれてゆく中で、そのようなケガレのニュアンスが、がれきという言葉に含まれるようになっていったという問題意識に基づいている。ケガレの意識に基づいた過剰な禁忌への疑念、そして再考を促すのが本書『ガレキ』である。  もっとも、著者はこの本を通じて、がれき広域処理の受け入れ賛成あるいは反対いずれかを促そうとしているわけではない。むしろ、単純化された回答を即座に出すような振る舞いから離れ、丁寧な議論をおこすための材料となる「当事者の記録」として扱われることこそが、この本の意図するところだろう。  そして何よりも、本書を通じ、過去の話題になってしまったかのような震災がれき広域処理について、まだ先に進むには多大な課題が残されている現在形の問題としてあらためて考えるためのきっかけとしたい。 (香月孝史/http://katzki.blog65.fc2.com/

「この社会情勢が続く限り、どこかでまた起こる?」2カ月間の“お祭りデモ”とはなんだったのか? 

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慶應義塾大学教授・小熊英二氏。
 今夏、霞が関の官邸前周辺では異様な事態が起こっていた。毎週金曜日の18時から20時の2時間、脱原発を求める人々が続々と集まり、「再稼働反対!」「子どもを守れ!」というシュプレヒコールと共に、ジャンベやドラムの音が鳴り響く。いかにもな雰囲気の活動家や主婦、子ども連れの母親、スーツを着たサラリーマン、フリーター風の若者……。お手製のプラカードや旗を掲げ、それぞれのスタイルで官邸に向かって抗議する。それは、ひと昔前の過激なデモとは180度異なる、自由でにぎやかで、それでいて“もしかしたら何か変わるかもしれない”という、妙な期待感を感じさせる光景だった。  このデモを主催しているのは、首都圏反原発連合というグループだ。今年3月末のスタート時の参加人数は、わずか300人程度。その後、回を重ねるごとに1000、3000、5000、1万と増え、大飯原発再稼働を間近に控えた6月25日には10万とも20万ともいわれる人々が集まり、その後、約2カ月にわたってお祭り騒ぎとなった。  いったいこの“お祭り”デモとはなんだったのか? 慶應義塾大学教授で、著書『社会を変えるには』(講談社現代新書)で日本の社会運動の歴史や3.11以降の日本の社会情勢について記している小熊英二氏に話を聞いた。 ――小熊さんは震災以降、さまざまな脱原発デモに参加されていますが、官邸前デモを主催している首都圏反原発連合(反原連)とは、どのような関係なのでしょうか? 小熊英二氏(以下、小熊) 官邸前デモには今年の6月から通っています。反原連はそれまで別々にやっていた13のグループが集まってできていますが、官邸前に参加する前から彼らの半分くらいの人は、昨年来の別のデモで一緒に歩いたことがあったので、お互いに顔は知っていました。とはいえ、私が大学教授だと知らない人も多かったと思います。「デモでよく見る人だから」ということで信用されたんでしょう。 ――8月22日に行われた反原連と野田首相との面会の際には、仲介人としてご出席されました。どういった経緯で面会が実現したのでしょうか? 小熊 反原連は以前から首相に要請文を渡そうとしていましたが、うまくいかなかった。どうにか展望が開けないかという相談を、スタッフの一人から7月下旬に受けたんです。それで、私は今年5月に菅直人さんに戦後史のレクチャーをして面識があったので、こんなに民衆から声が出ているのだから、政治がなんらかの形で応えたほうがいいと連絡を取った。菅さんは最初「私が会いましょうか?」と言いましたが、それでは陳情みたいになってしまう。そこでまず7月末に、菅さんなど脱原発志向の超党派議員と、反原連の対話集会を公開で行ったんです。そこで反原連側が「首相に会わせてほしい」と強く訴えて、菅さんは「わかりました」と応えた。それから3日して電話があって、「首相が会ってもいいと言っている」ということになったんです。 ――組織化されていないグループの代表があのような形で首相面会を果たすとは、驚きました。しかも、その様子をすべて中継するなんて。 小熊 そういう前例を作ることは、大きな意味があると思っていました。短時間でしたが、大組織でもない民衆運動が首相を引っ張り出した例は、近代日本にはないし、世界的にもほとんどない。それは大きなことですよ。それにあれは、政府の側からすると、大きな先例を作った。これから先、例えばTPPの反対運動などが盛り上がったら、農協の全国組織の会長でなくても首相と会える、そういう先例がある、となるわけです。政治も官僚も、先例があるかないかで動きますからね。日本の政治に影響を与えたことは間違いない。 ――それは、野田首相個人に対しても同じでしょうか? 小熊 野田さんは、あの場では表情を崩さずに無難なことを話していましたが、十分影響を受けていると思いますよ。この3~4カ月の間に民主党はもちろん、議会のいろいろな会派も脱原発に寄ってきて、大きな争点になった。資源エネルギー庁や電力関係の人たちは、首相面会なんて絶対にやらせたくない、首相と会うのは電事連の代表とか経団連の代表だけ、ということにしておきたかったはずです。そういう抵抗がある中で、会わざるを得ない状況になってしまった、というのはデモの成果です。  また政治家というのは、意外と対面した人物に影響されるものです。街頭演説をすると、20分くらいで街の雰囲気や反応を肌でつかむそうですからね。あの面談で、いかにもごく普通の人から、「野田さんに期待していたのに、がっかりした。あんた男でしょ、官邸から出てきて会いなさいよ!」とか言われたわけです。今後、原発関連で重要な決断を下さなければならない時には、野田さんはあの顔がちらつくでしょうね。 ――官邸前デモは、大飯原発再稼働を間近に控えた6月下旬から9月にかけて大盛り上がりとなり、10万人とも20万人ともいわれる人々が集まりました。ある種の“ブーム”ともいえるお祭り的な騒ぎでしたが、ここまで盛り上がった要因はどこにあるのでしょうか? 小熊 官邸前が注目されたのはすごく単純な話で、政治家や大手マスコミの政治部記者の目に入ってきたからです。2011年からデモは数多く起きていたのに、彼らはほとんど知らなかったので、今年の6月になって急にデモが出てきたと思ったらしい。それで一気に報道もされたから、急にブームが起きたように思われたんでしょう。実際には、去年からの積み重ねと連続の中で、官邸前デモが起きたのですけれどね。  人が集まった最も大きな要因は、20年も経済が低迷して、雇用も家族も不安定になっているのに、政治がまったく機能していない、と不信感が募っていたことでしょう。そんなところに起こった原発事故の対応は、誰がどう見てもお粗末だった。情報公開も足りないし、政府は手続きさえ済ませればいいと考えている、と思われてしまった。それではどこの国だって、何か起こらないほうがおかしい。外国の報道はそんな感じですし、官邸周辺に毎週何万人も集まったら、それは相当まずい事態だと普通なら考えます。無視できない事態になってしまったから、首相がデモ主催者と面会せざるを得なくなった。そういう当たり前のことを、当たり前に受け止められない人が、「日本でそんなことが起こるはずがない」とか「ただのブームだ」とか言うんでしょう。 ――そんな“お祭り”デモですが、一時期に比べると、徐々に参加者の熱が冷めてきてしまっている印象があります。7月上旬までは、車道以外は比較的どこからでも抗議可能だったのが、デモエリアが3カ所に分けられ人数が分散されている影響もあるのかもしれませんが、20~30代の若い層の参加者が減ってきている気がします。 小熊 デモが“お祭り”なのは、最近はどこの国でも共通です。またデモに限らず、お祭り的なものは、1~2カ月したらピークを過ぎます。何年も同じ場所で同じ状態が続くなんてありえない。とはいえ経緯としては、昨年4月から高円寺の人たちの主催で盛り上がったデモは半年で一区切りを迎え、これで終わりかなと思っていたところに、今度は別の主催で官邸前に集まった。官邸前しか見てないマスコミは、一時のブームだったと思うかもしれませんが、全体から見れば脈動みたいなものです。経済停滞と政治の機能不全という状況は変わっていないし、どこかでまた何か起こると思いますよ。 ――“お祭り”でも、原発再稼働が広がらないためのリミッターとして機能したのでしょうか? 小熊 それは間違いないですね。日本ではここ半世紀、こういう経験がなかったものだから、社会運動の効果に懐疑的というか、何が起こっているのか、みんなよくわかってない。けれど外国のことだと思ってみれば、こんなに停滞して不満が高まっていた国で、官庁街に毎週何万人も集まったら、影響がないはずがないでしょう。大飯原発の再稼働は、福島原発事故から1年たってほとぼりも冷めたようだし、もう大丈夫だろうと形式的な手続きを踏んでやったわけですが、そうしたらあんな騒ぎになってしまったというのは、政治家にとって怖いことですよ。「日本の政治家だけは例外だ」ということはない。 ――9月14日のエネルギー・環境会議では、首相の口から「2030年代に原発ゼロ」という方針が打ち出され、国際原子力機関(IAEA)年次総会でも国際社会に発表されました。この政府の政策転換に対しても、官邸前デモをはじめとする一連の反原発デモの効力があったのでしょうか? 小熊 結果としてはそうでしょう。とはいえ、野田さんが当面気にしていたのは民主党内の脱原発派議員だったはずです。しかし、その数は絶対多数ではない。彼らも離党したら党内での影響力がなくなるから、あまり党の方針に反することを大声では言えない。でも、そういう議員たちが「官邸前に何万人もの人が来ています。これは聞くべきじゃないですか?」と圧力をかけられるようになった。少数派の議員集団が腹の底で思っているというレベルだったものが、声を大にして発言できるようになり、さらにそれを聞かなければならない雰囲気に動いていくというのは、デモや世論がなかったら起きないことです。もちろん、それは議会内だけを見ている政界記者たちに言わせれば、野田さんは原発と消費税とTPPとオスプレイの四正面作戦になってしまうのは避けたいから脱原発に傾いたのだとか、民主党がこれ以上分裂するのは避けたいから脱原発派の議員の主張を一部聞いたのだとか、いろいろ言うと思いますよ。でもそれは、議会内だけ見ていればそう見える、というだけのことであって、デモがなかったら動かなかったことですからね。 ――一方で、この「2030年代に原発ゼロ」発言に対しては、具体的なプランが示されていなかったり、閣議決定が見送られるなど、本当に実現されるのか疑問視する声も多いですね。 小熊 繰り返しになりますが、今の日本は20年も経済低迷して雇用情勢も悪い、かなりまずい状態です。そのなかで、世論調査でも7~8割の人が脱原発を支持している。今年の夏は、原発を2基動かしただけで電力は足りてしまい、それが既成事実になってしまった。この情勢で、どんどん原発を推進します、なんて政策に簡単に戻れるはずがない。その結果としてゼロにすると決めたけれど、利害のある各方面の調整が難しい。だから、公式方針としては言えることが限定されるというのは、いいことだとは思いませんが、理解はできます。  また現実には、ただちにすべての原発を止めた国なんてない。スウェーデンは1980年に2010年までに国内の12基を全廃すると決めたけれど、今のところ2基減っただけです。ドイツも2002年に「脱原発法」が制定され、2021年までに当時稼働中の17基を全廃すると決めたけれど、その後に稼働年数が延長された。福島の事故を受けて、やっぱり段階的にやめると転換しましたが、まだ紆余曲折があるかもしれません。ただ日本は、幸か不幸か本当に全部止まった状態を一度経験してしまったので、これらの国より早く脱原発する可能性も高いかもしれない。声を大きくしていけば、実現できるレベルだと思います。 ――テレビや新聞の報道では、このまま原発依存を続けるのか、脱原発路線を目指すのか、いまだに混迷を極めている感がありますが、社会は動いているといえるのでしょうか? 小熊 物事は多元方程式のように進んでいきます。それは、デモをやったけれどすぐに原発が止まらなかった、じゃあ意味がない、というほど単純なものではないし、すぐには結果が見えづらい。けれど、水面下では確実に影響しています。  またデモに参加した経験を持った人は、また何かあれば動きます。数十万人単位でデモ経験者が生まれ、社会の中でも忌避感が薄れたというのは無視できないですよ。経験者の中から自分で運動を主催する人も出てくるだろうし、政治家を目指す人もいるかもしれない。  この事故が20~30年前の、原発も伸び盛りで日本経済も全盛だった時期に起こっていたら、おそらく情勢は違っていたと思いますが、今は違う。東大の原子力工学科が、2001年には造船学科や鉱山学科と合併になってしまったくらい、原発産業はもともと行き詰まっていた。政治家も、自民党全盛期は遠く過ぎ、町内会や商工会を地盤固めすれば当選できるといった、今までのやり方が通用しなくなったことはわかっている。今回の再稼働にしても、経団連と電力会社に話をつけて、官庁に情報を集めてもらい、県知事と地方議員が地元の商工会や町内会を固めれば、それで大丈夫と思って判断したけれど大反発を食らった。もう昔のやり方は通用しない。そして彼らが把握できていない無党派層が、デモに来ているわけですからね。 ――それでは今後、日本はどうなっていくのでしょうか? 小熊 だんだん普通の先進国に近づいていくでしょう。日本が先進国の中で「ユニーク」と呼ばれた特徴、例えば経済的に先進国化したのに政治や政治意識のレベルが低いまま、という状態があった最大の要因は、ほかの先進国が不況の中で政治意識が上がっていった1970~80年代に景気が良かったことです。経済が良かったから、政治が三流でも、消費だけやって社会に無関心でも済んだ、というだけです。その時期に作られた、終身雇用とか公共事業とかの仕組みが崩れれば、“普通の先進国”になるというのは自然の成り行きです。“普通の先進国”の現状が明るいものかどうかに関して疑問符が付きますが、今以上に自分で物事を判断して、自分で動くことが求められるでしょう。だったら、今のうちから、デモに参加したり自分で声を上げたりする練習をしておいたほうがいいと思いませんか? (文=編集部) ●おぐま・えいじ 1962年、東京生まれ。87年、東京大学農学部卒業。出版社勤務を経て、98年、東京大学総合文化研究科国際社会科学専攻博士課程修了。現在、慶應義塾大学総合政策学部教授。著書に『1968』『<民主>と<愛国>』『<日本人>の境界』『単一民族神話の起源』(以上、新曜社)、『日本という国』(イーストプレス)、『私たちはいまどこにいるのか―小熊英二時評集』(毎日新聞社)などがある。

「日本は原発を放棄するな」“米国の対日要求”驚愕の内容

 サイゾー新ニュースサイト「Business Journal」の中から、ユーザーの反響の大きかった記事をピックアップしてお届けしちゃいます! ■「Business Journal」人気記事(一部抜粋) 国内ユーザー数でFacebookに抜かれたmixiの行く末と逆転策 第2のリクルート事件? “疑惑まみれ”JAL再上場の舞台裏 醜い男の嫉妬と内部崩壊が招いたシャープの経営危機 ■特にオススメ記事はこちら! 「日本は原発を放棄するな」“米国の対日要求”驚愕の内容 - Business Journal(9月19日)
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リチャード・リー・アーミテージ氏。
「wikipedia」より。
「日本は原子力発電を放棄してはいけない。原発の慎重な再稼働こそが、日本にとって責任ある正しい選択である。日本がロシア、韓国、フランス、そして中国に立ち遅れる事態はさけるべきであり、日米両国は連携を強化し、福島原発事故の教訓に基づき国内外における原子炉の安全設計および規制の実施面でリーダーシップを発揮すべき」  8月15日、日本の終戦記念日に発表された米国戦略国際問題研究所(CSIS)のリチャード・アーミテージ元国務副長官、ジョセフ・ナイ・ハーバード大学教授を共同座長とした「アーミテージ・ナイ報告書」(以下、アーミテージ報告書)は、日本に原子力発電の維持を強力に迫っている。  元軍人で国務副長官だったアーミテージと「ソフトパワー」の生みの親であるジョセフ・ナイ教授がまとめた「アーミテージ報告書」は、事実上の米国による対日要求だ。過去、2000年10月、07年2月と2回出されており、ときどきの日本の政権・政策に大きな影響力を発揮してきた。それだけに、今回の同報告書の内容も、いずれ日本の政策に大きな影響を与える可能性があり、その内容を十分に注視しておく必要がある。  今回のアーミテージ報告書は、これまで以上に強烈だ。そのキーワードは「Tier-one Nation」(一流国)。報告書の冒頭から、「(日本は)一流国であり続けたいと思うのか、それとも二流国に甘んじるつもりなのか。後者であれば、この報告書を読むだけ無駄だ」と、日本に対して一流国であることを厳しく要求している。その背景には、米国と同盟関係にある国は、“一流国”であることを求める米国の厳しい姿勢がある。  日本の現状について、少子高齢化が進む中で、GDP比200%を超える政府債務を抱え、政治情勢は6年間に6人の首相が就くという不安定なものと指摘。日米関係の現状を「漂流の時代」と表現している。  最近の日本に関する議論では、「危機」「困難」「先送り」といった言葉が使われ、衰退の過程にある兆候が表れている。しかし、世界3位の経済大国であり、消費者市場では中国の2倍の規模を誇る日本には、一流国であり続ける能力があるとし、日本がその影響力を遺憾なく発揮していくことが重要だと述べている。  そして、具体的な対日要求とも言うべき提言事項としては、冒頭の原子力発電を放棄することなく、原子力発電分野でリーダーシップを発揮すべき、というもののほか、エネルギー関係では、石油については、「日本にとって中東情勢の安定は重要であり、イランの核開発問題を始めとする脅威に立ち向かう国際社会の努力により積極的に参加するべきである」としている。  さらに、貿易関係については、「環太平洋連携協定(TPP)への参加に加え、北米自由貿易協定(NAFTA)加盟国との間で、包括的エネルギー安全保障協定を締結し、日米間の提携を強化することを提言している。  同報告書では、韓国との領土問題、中国との領土問題についても言及。韓国については「日米韓の(関係)強化は不可欠」とした上で、「歴史問題を巡る日韓の緊張緩和に向け、トラック2(民間レベル)の対話を拡大し、解決に向けた合意形成に努める必要がある」とし、中国については、「中国が“核心的利益”を尖閣諸島や南シナ海にまで拡大する可能性に備え、日米両国は対策を講じなければならない」としている。  さらに軍事面では、「米陸軍・海兵隊と日本の自衛隊は、共同での機敏な作戦展開に向け、戦術、装備、通信などに関する共通性および両用性の向上を行うべき」とし、軍事面での日米間の協力強化を打ち出している。また、地域の安全保障における日本の役割について、「イランがホルムズ海峡封鎖を意図した場合には、日本は単独でも掃海艇を派遣すべき」といった注文も付けている。  日本では民主党、自民党の両党内部が党首選などでガタついており、さらに、総選挙の可能性もあることから、国内ではこのアーミテージ報告書への反響は意外に小さい。しかし、日米同盟の行方、米国の対日要求ということで中国、韓国などが非常に興味を示している。  1年後、2年後の将来、この報告書の提言が日本の姿を変えている可能性は十分にある。賢明な読者は、ぜひ、アーミテージ報告書の内容に注目していてほしい。 (文=鷲尾香一/ジャーナリスト) ■「Business Journal」人気記事(一部抜粋) 国内ユーザー数でFacebookに抜かれたmixiの行く末と逆転策 第2のリクルート事件? “疑惑まみれ”JAL再上場の舞台裏 醜い男の嫉妬と内部崩壊が招いたシャープの経営危機 イケメン講師もやって来る!? 女性の「自宅で習い事」需要増 パンケーキ戦争が勃発! 「bills」ほか仕掛け人はこの面々 失策続きだった郵便事業会社 日本郵便発足は大丈夫か? 面接で「採用したい」と思わせる学生の9割が女性?

東芝は原発ビジネスから撤退!? 三菱・日立はどうするのか?

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10年12月の東芝の広報ページ。まさかこの後にあんな“新たな
展開”があるとは誰も思わなかったであろう……。(「東芝HP」より)
 日本の原発輸出はどうなるのか――。ロシア・ウラジオストクで開かれたアジア太平洋経済協力会議(APEC)の首脳会議は9月9日、「原子力の安全かつ確実な利用の確保」を明記した首脳宣言を採択した。この首脳宣言は東芝、日立製作所、三菱重工業の有力原発メーカー3社を抱える日本にとって、2011年の東京電力福島第1原発事故以降、停滞する原発の輸出拡大の契機となるはずだった。  だが、日本政府は革新的エネルギー・環境戦略で「脱・原発依存」を打ち出している。将来の原子力発電の比率について、民主党の提言を踏まえ「2030年代に原発稼働ゼロ社会を目指す」としている。 「国内では脱原発だが、海外向けには原発輸出を奨励」。内向けと外向けでは、完全に矛盾しており、政府の方針は実にわかりにくい。  原発の輸出は民間だけがんばれといっても難しい。受注競争では相手国政府への働きかけが重要だ。特に新興国では政権中枢に実権が集中しており、トップの意向が受注の成否を大きく左右する。  ベトナムの原発を受注したロシアは、プーチン首相(当時、現・大統領)自らハノイ入りし、ロシア製の原子力潜水艦を提供した。日本が優先交渉権を得ているトルコの原発計画では、韓国の李明博(イミョンバク)大統領が直接訪問してトルコ首相と会談を行うなど、猛烈な巻き返しを図っている。  もはや、国の支援なくして原子力発電所の争奪戦では勝ち残れない。国内向けと釈明したとしても脱原発が原発輸出の足かせになるのは確実だ。  定まらない国の原発政策の狭間で東芝は揺れ動いている。東芝にとって原子力発電事業は「選択と集中」の輝かしい成果だからである。  経営戦略にも流行語がある。「選択と集中」は、その最たるものだ。80年代、世界最大のコングロマリット(複合企業)、米ゼネラル・エレクトリック(GE)のジャック・ウェルチCEO(最高経営責任者)がシェアで1、2位の事業に経営資源を集中し、それ以外は撤退もしくは売却する「選択と集中」で業績を上げた。そして90年代後半から、主力の事業にヒトとカネを集中する「選択と集中」が日本の経営者の合言葉となった。 「選択と集中」で名前を売ったスター経営者は東芝社長の西田厚聰氏(現・会長)である。圧巻は06年2月の米原子力プラント大手、ウエスチングハウス(WH)の買収だ。大本命と目されたのがWHと古くから取引がある三菱重工業だった。日本の業界関係者は「買収価格は2000億円から、どんなに高くても3000億円」と見ていたが、東芝は相場の2倍以上の6200億円の買収価格を提示して、最終コーナーで三菱重工を抜き去り大逆転に成功した。  勝者となった西田社長は半導体と原子力発電事業を経営の二本柱に掲げた。東芝は総合電機だが圧倒的にナンバーワンといえる分野はなかった。「選択と集中」を進めた結果、半導体は国内首位で世界三位(当時)、原発は世界首位に躍り出た。 ●日本の原発輸出に吹き荒れる向かい風  原発は一基つくれば、そのメンテナンスで食っていける美味しいビジネスといわれていたが、リスクは原発事故と背中合わせである。東芝の原発事業は、11年3月11日の東日本大震災前には受注残が14基(中国4基、米国8基、日本2基)あった。原発の売上高は「目標として掲げた1兆円を、2年前倒しして2014年3月期に達成する」と、ものすごい鼻息だった。  だが、東京電力福島第1原子力発電所の事故以来、世界の原発市場は一変。新規計画のキャンセルや見直しが相次いだ。  東芝は11年9月、WHの株式20%を追加取得すると発表した。売り手は米エンジニアリング大手のショー・グループで取得金額は1250億円。ショーは東芝が06年にWHを買収した際、WH株20%を保有することで合意。その際、資金調達のために発行した社債の償還期限前にショー側が東芝にWH株式の買い取りを請求できる契約があったとされる。原発事故を受け、このビジネスの先行きに見切りをつけたショーは、WH株式の買い取りを東芝に求めたということだ。  WHの株主構成は東芝が発行済み株式の67%、ショーが20%、カザフスタンの国営原子力事業会社カザトムプロムが10%、IHIが3%。ショーの分を追加取得すれば東芝の持ち株比率は87%に上昇する。 「WH株追加取得」の報道を受け、11年9月6日の東京株式市場で東芝の株価は急落し、2年5カ月ぶりに300円を割り込んだ。この期に及んで原発事業に1250億円の追加投資をするのはリスクが大きすぎると投資家は懸念したのだ。  結局、東芝は追加取得を断念した。ショーは2013年1月までにWH株式を手放すことにしている。しかし売却に関してショーは自分では売る力がないので東芝が仲介することになる。だが、前途は多難だ。 「東芝 原発受注へ企業連合 米子会社株売却、出資募る」(読売新聞8月14日付朝刊)というスクープ記事(!?)が出た。東芝が67%保有しているWH株式のうち16%を、新興国と強いパイプを持つ米国の原子力関連企業などに売却するという内容だ。  国際的な企業連合を形成するという前向きのトーンの報道だったが、WH株式の売却は「東芝が原子力事業の比重を下げるためのもの」との観測が浮上した。「撤退説」まで取り沙汰された。東芝は「WH株は50%以上を維持する方針」として撤退説を完全に否定した。しかし、株式市場はそれで納得したわけではない。「経営上のリスクを考えたら原発の比重を下げざるを得ないだろう。近い将来、原発事業から撤退するところが出てきても何ら不思議ではない」(重電担当の証券アナリスト)  原発の受注は、官民一体となったオールジャパンで取り組まなければ勝ち目はない。政府が建て前として脱原発の方針を打ち出した以上、官民一体となった海外での売り込みはできなくなる。少なくとも表向きはそうなる。  6年前の専務時代に自らWH買収を手がけた東芝の佐々木則夫社長(63)の新しい「選択と集中」に関心が集まる。そして、東芝、日立、三菱重工の日本の原発事業はどうなるのだろうか。 (文=編集部) ■「Business Journal」人気記事(一部抜粋) 自国企業なのに株急落!? 反日風潮に巻き込まれた中国企業達 面接で「採用したい」と思わせる学生の9割が女性? 「ソフトバンクは成功例」危ない300社が落ちたLBOの罠 オンボロなエアコンが“大人気”の米国では、ユニクロは高級品? 祇園の“おもてなし”をIT化!?にみるSNS成功のヒント 「日本は原発を放棄するな」“アーミテージ報告書”驚愕の内容 大阪市職員語る「橋下市長は手柄横取りで、ミスは職員のせい」

東芝は原発ビジネスから撤退!? 三菱・日立はどうするのか?

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10年12月の東芝の広報ページ。まさかこの後にあんな“新たな
展開”があるとは誰も思わなかったであろう……。(「東芝HP」より)
 日本の原発輸出はどうなるのか――。ロシア・ウラジオストクで開かれたアジア太平洋経済協力会議(APEC)の首脳会議は9月9日、「原子力の安全かつ確実な利用の確保」を明記した首脳宣言を採択した。この首脳宣言は東芝、日立製作所、三菱重工業の有力原発メーカー3社を抱える日本にとって、2011年の東京電力福島第1原発事故以降、停滞する原発の輸出拡大の契機となるはずだった。  だが、日本政府は革新的エネルギー・環境戦略で「脱・原発依存」を打ち出している。将来の原子力発電の比率について、民主党の提言を踏まえ「2030年代に原発稼働ゼロ社会を目指す」としている。 「国内では脱原発だが、海外向けには原発輸出を奨励」。内向けと外向けでは、完全に矛盾しており、政府の方針は実にわかりにくい。  原発の輸出は民間だけがんばれといっても難しい。受注競争では相手国政府への働きかけが重要だ。特に新興国では政権中枢に実権が集中しており、トップの意向が受注の成否を大きく左右する。  ベトナムの原発を受注したロシアは、プーチン首相(当時、現・大統領)自らハノイ入りし、ロシア製の原子力潜水艦を提供した。日本が優先交渉権を得ているトルコの原発計画では、韓国の李明博(イミョンバク)大統領が直接訪問してトルコ首相と会談を行うなど、猛烈な巻き返しを図っている。  もはや、国の支援なくして原子力発電所の争奪戦では勝ち残れない。国内向けと釈明したとしても脱原発が原発輸出の足かせになるのは確実だ。  定まらない国の原発政策の狭間で東芝は揺れ動いている。東芝にとって原子力発電事業は「選択と集中」の輝かしい成果だからである。  経営戦略にも流行語がある。「選択と集中」は、その最たるものだ。80年代、世界最大のコングロマリット(複合企業)、米ゼネラル・エレクトリック(GE)のジャック・ウェルチCEO(最高経営責任者)がシェアで1、2位の事業に経営資源を集中し、それ以外は撤退もしくは売却する「選択と集中」で業績を上げた。そして90年代後半から、主力の事業にヒトとカネを集中する「選択と集中」が日本の経営者の合言葉となった。 「選択と集中」で名前を売ったスター経営者は東芝社長の西田厚聰氏(現・会長)である。圧巻は06年2月の米原子力プラント大手、ウエスチングハウス(WH)の買収だ。大本命と目されたのがWHと古くから取引がある三菱重工業だった。日本の業界関係者は「買収価格は2000億円から、どんなに高くても3000億円」と見ていたが、東芝は相場の2倍以上の6200億円の買収価格を提示して、最終コーナーで三菱重工を抜き去り大逆転に成功した。  勝者となった西田社長は半導体と原子力発電事業を経営の二本柱に掲げた。東芝は総合電機だが圧倒的にナンバーワンといえる分野はなかった。「選択と集中」を進めた結果、半導体は国内首位で世界三位(当時)、原発は世界首位に躍り出た。 ●日本の原発輸出に吹き荒れる向かい風  原発は一基つくれば、そのメンテナンスで食っていける美味しいビジネスといわれていたが、リスクは原発事故と背中合わせである。東芝の原発事業は、11年3月11日の東日本大震災前には受注残が14基(中国4基、米国8基、日本2基)あった。原発の売上高は「目標として掲げた1兆円を、2年前倒しして2014年3月期に達成する」と、ものすごい鼻息だった。  だが、東京電力福島第1原子力発電所の事故以来、世界の原発市場は一変。新規計画のキャンセルや見直しが相次いだ。  東芝は11年9月、WHの株式20%を追加取得すると発表した。売り手は米エンジニアリング大手のショー・グループで取得金額は1250億円。ショーは東芝が06年にWHを買収した際、WH株20%を保有することで合意。その際、資金調達のために発行した社債の償還期限前にショー側が東芝にWH株式の買い取りを請求できる契約があったとされる。原発事故を受け、このビジネスの先行きに見切りをつけたショーは、WH株式の買い取りを東芝に求めたということだ。  WHの株主構成は東芝が発行済み株式の67%、ショーが20%、カザフスタンの国営原子力事業会社カザトムプロムが10%、IHIが3%。ショーの分を追加取得すれば東芝の持ち株比率は87%に上昇する。 「WH株追加取得」の報道を受け、11年9月6日の東京株式市場で東芝の株価は急落し、2年5カ月ぶりに300円を割り込んだ。この期に及んで原発事業に1250億円の追加投資をするのはリスクが大きすぎると投資家は懸念したのだ。  結局、東芝は追加取得を断念した。ショーは2013年1月までにWH株式を手放すことにしている。しかし売却に関してショーは自分では売る力がないので東芝が仲介することになる。だが、前途は多難だ。 「東芝 原発受注へ企業連合 米子会社株売却、出資募る」(読売新聞8月14日付朝刊)というスクープ記事(!?)が出た。東芝が67%保有しているWH株式のうち16%を、新興国と強いパイプを持つ米国の原子力関連企業などに売却するという内容だ。  国際的な企業連合を形成するという前向きのトーンの報道だったが、WH株式の売却は「東芝が原子力事業の比重を下げるためのもの」との観測が浮上した。「撤退説」まで取り沙汰された。東芝は「WH株は50%以上を維持する方針」として撤退説を完全に否定した。しかし、株式市場はそれで納得したわけではない。「経営上のリスクを考えたら原発の比重を下げざるを得ないだろう。近い将来、原発事業から撤退するところが出てきても何ら不思議ではない」(重電担当の証券アナリスト)  原発の受注は、官民一体となったオールジャパンで取り組まなければ勝ち目はない。政府が建て前として脱原発の方針を打ち出した以上、官民一体となった海外での売り込みはできなくなる。少なくとも表向きはそうなる。  6年前の専務時代に自らWH買収を手がけた東芝の佐々木則夫社長(63)の新しい「選択と集中」に関心が集まる。そして、東芝、日立、三菱重工の日本の原発事業はどうなるのだろうか。 (文=編集部) ■「Business Journal」人気記事(一部抜粋) 自国企業なのに株急落!? 反日風潮に巻き込まれた中国企業達 面接で「採用したい」と思わせる学生の9割が女性? 「ソフトバンクは成功例」危ない300社が落ちたLBOの罠 オンボロなエアコンが“大人気”の米国では、ユニクロは高級品? 祇園の“おもてなし”をIT化!?にみるSNS成功のヒント 「日本は原発を放棄するな」“アーミテージ報告書”驚愕の内容 大阪市職員語る「橋下市長は手柄横取りで、ミスは職員のせい」

高い放射線量を計測したロックインジャパンと激安会場費の関係

【プレミアサイゾーより】
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(写真/有高唯之)
 8月3日~5日、音楽出版社のロッキング・オンが企画制作する「ROCK IN JAPAN FES.2012」が茨城県の国営ひたち海浜公園で行われた。  このフェスに関しては、福島第一原発の事故が起こった2011年に「原発近くでフェスをする必要があるのか?」と一部ファンから反発が起こり、この動きと呼応して「東海村JCO事故後の地元のイメージアップのために誘致され、会場費もタダ同然」という噂が流れている。  本誌では、この件について、国営常陸海浜公園事務所そして関東地方整備局などに問い合わせたが、現在明確な回答を得られていない。  一方、今年のフェスに際しても会場の一部で国の基準値を超える放射線量を計測し、公園側は除染を敢行。 「7月20日に表土剥ぎが完了した西口エリア⑤の放射線量を測定しました。測定の結果0・166μSv/hとなり0・23μSv/hを下回りました」(公園HP)としている。  しかし、実際に公園をガイガーカウンターを携えて計測すると、園内通路などでは確かに0・15μSv/hと、都内とさほど変わらない。  だが、メインステージ「GRASS STAGE」正面の林では、0・5μSv/h超を計測。最高で0・9μSv/hに到達するところもあった。園内各所で、国の定める基準値を超える放射線量を計測したのだ。  この結果を見て、事故後の福島原発周辺を取材するライターは「例えば都内市街地の数値よりは高いですが、ナーバスになるほどではない。相馬市あたりと同じくらいの値で、市民は普通に生活をしてるわけですから、問題ないはずです」と話す。  だが、開催2日前でも国の定める基準値を超えた数値が、園内各所で出ているという事実は、フェスの対応が不十分であることを示している。反原発フェス「NO NUKES」の制作にも携わる割には、少し認識が甘くはないだろうか。 (編集部) 『ロックインジャパンフェスティバル』 2000年から始まる夏フェス。企画制作するロッキング・オンの影響で、出演はすべて邦楽アーティストとなっている。主催はニッポン放送。 ■ロッキンオンとフェス事業 不況の出版業界の中でも、音楽系雑誌の凋落は著しく発行部数も、広告収入も落ち込み続ける一方だ。老舗音楽誌「ロッキング・オン・ジャパン」も例外ではないが、近年はフェス制作事業に力を入れており、ごく一部で成果を上げている。音楽フェスだけでなく、11年から「食」がテーマの「まんパク」を開催。こちらも開催は、国営公園だった。 【「サイゾーpremium」では他にも話題のニュース記事が満載!】TSUTAYAのCCCとのキケンな提携で爆速ヤフーがついに衰退する!?あの恐喝・レイプ報道は"芸能界のドン"から息子への愛のムチなのか沢尻エリカ"大麻疑惑"の追求なし 平穏無事だったエイベックスの株主総会
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高い放射線量を計測したロックインジャパンと激安会場費の関係

【プレミアサイゾーより】
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(写真/有高唯之)
 8月3日~5日、音楽出版社のロッキング・オンが企画制作する「ROCK IN JAPAN FES.2012」が茨城県の国営ひたち海浜公園で行われた。  このフェスに関しては、福島第一原発の事故が起こった2011年に「原発近くでフェスをする必要があるのか?」と一部ファンから反発が起こり、この動きと呼応して「東海村JCO事故後の地元のイメージアップのために誘致され、会場費もタダ同然」という噂が流れている。  本誌では、この件について、国営常陸海浜公園事務所そして関東地方整備局などに問い合わせたが、現在明確な回答を得られていない。  一方、今年のフェスに際しても会場の一部で国の基準値を超える放射線量を計測し、公園側は除染を敢行。 「7月20日に表土剥ぎが完了した西口エリア⑤の放射線量を測定しました。測定の結果0・166μSv/hとなり0・23μSv/hを下回りました」(公園HP)としている。  しかし、実際に公園をガイガーカウンターを携えて計測すると、園内通路などでは確かに0・15μSv/hと、都内とさほど変わらない。  だが、メインステージ「GRASS STAGE」正面の林では、0・5μSv/h超を計測。最高で0・9μSv/hに到達するところもあった。園内各所で、国の定める基準値を超える放射線量を計測したのだ。  この結果を見て、事故後の福島原発周辺を取材するライターは「例えば都内市街地の数値よりは高いですが、ナーバスになるほどではない。相馬市あたりと同じくらいの値で、市民は普通に生活をしてるわけですから、問題ないはずです」と話す。  だが、開催2日前でも国の定める基準値を超えた数値が、園内各所で出ているという事実は、フェスの対応が不十分であることを示している。反原発フェス「NO NUKES」の制作にも携わる割には、少し認識が甘くはないだろうか。 (編集部) 『ロックインジャパンフェスティバル』 2000年から始まる夏フェス。企画制作するロッキング・オンの影響で、出演はすべて邦楽アーティストとなっている。主催はニッポン放送。 ■ロッキンオンとフェス事業 不況の出版業界の中でも、音楽系雑誌の凋落は著しく発行部数も、広告収入も落ち込み続ける一方だ。老舗音楽誌「ロッキング・オン・ジャパン」も例外ではないが、近年はフェス制作事業に力を入れており、ごく一部で成果を上げている。音楽フェスだけでなく、11年から「食」がテーマの「まんパク」を開催。こちらも開催は、国営公園だった。 【「サイゾーpremium」では他にも話題のニュース記事が満載!】TSUTAYAのCCCとのキケンな提携で爆速ヤフーがついに衰退する!?あの恐喝・レイプ報道は"芸能界のドン"から息子への愛のムチなのか沢尻エリカ"大麻疑惑"の追求なし 平穏無事だったエイベックスの株主総会
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「出社したのは10日程度……」反原発の山本太郎 もう“サラリーマン”辞めていた

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 反原発運動を続ける俳優の山本太郎が、社員として勤務していた太陽光発電施工事業を展開する企業「ソーラーリフォーム」を、7月17日をもって契約満了で退社していたことがわかった。  ソーラー社は、太陽光発電システムをウェブで販売していくことを事業の柱に、今年1月に設立された企業。この時期に、同社の清水勇介社長が山本と知り合い、「自然エネルギーを普及させていきたい」という思いが一致した上に、反原発活動開始以降、仕事が激減していた山本の安定した収入源確保のため、同社への入社が決まった。  山本は4月18日に同社の入社式に出席し、営業部へ配属されていた。契約期間は当初から3カ月の予定で、その際、山本は「法人契約が取れたら大きいですね」と語っていた。だが、ソーラー社の関係者によると、実際には、3カ月間の契約期間中に出社したのは10日ほどで、社内研修を受けるまでにとどまり、営業活動はしなかったようだ。  それでいて、「待遇は幹部社員クラスだった」(同社関係者)というのだから、ソーラー社からしてみたら、高い買い物のように映る。だが、同社関係者は「入社式の模様は、テレビやネットニュースで大きく取り上げられた。当社は事業を開始したばかりで、知名度ゼロだったのに、そのおかげで、ホームページにアクセスが殺到した。現在の当社の売り上げは、彼の入社なしでは考えられなかった」と語っており、「広告塔」として、十分すぎるほど元はとれたようだ。  ソーラー社は、山本に契約延長の意向を伝えたが、山本は「本業(芸能活動)が忙しくなってきたから」と、これを断り、契約満了を迎えたという。  ソーラー社への入社以降、5月には自身の結婚、6月には実姉が大麻取締法違反で逮捕されるなど、本業以外の話題ばかり先行してしまった山本だが、本業が多忙になってきたというのはなにより。ワイルドなキャラが魅力だった彼には、スーツ姿で笑顔を振りまく「サラリーマン山本太郎」はやっぱり似合わなかった!?