再起のチャンスを生かせるか!? 犯罪アクションムービー『ザ・タウン』

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(C)2011 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC. AND LEGENDARY PICTURES
 スリリングで骨太な犯罪アクションとエモーショナルで繊細な人間ドラマが絶妙に絡み合い、先に公開された米国で批評家やメディアから大絶賛された話題作が、いよいよ日本の映画館を襲撃する。ベン・アフレックが監督・脚本・主演を務めた『ザ・タウン』だ(ワーナー・ブラザース映画配給、2月5日公開)。  全米一銀行強盗発生率の高い街、ボストン北東部のチャールズタウン。通称"タウン"で生まれ育ったダグ(アフレック)は、当然のように強盗を生業としてきた。ダグが率いる強盗一味は、裏社会の黒幕を介して内部情報を入手し、綿密な計画を立て、犯行現場に一切の痕跡を残さない完璧なプロ集団だ。  彼らがある銀行を襲撃した際、予定外に支店長クレアを人質に取る。無傷で解放したクレアに何か見られたかどうかを探るため、素顔を知られていないダグがさりげなく近づく。ダグは正体を隠したまま、またクレアも相手が強盗犯だと気づかぬまま、互いに惹かれ合い、愛し合う仲に。  街を出てクレアとの新しい人生を切望するダグは、仲間や裏社会とのしがらみを断ち切るための最後の仕事として、タウン史上最大の犯罪となるレッドソックススタジアム襲撃に臨む。  監督としては『ゴーン・ベイビー・ゴーン』(07年、日本未公開)に続いて2作目となる本作で、アフレックが徹底的にこだわったのは「本物のリアル」。地元住人や現職警官に加え、元銀行強盗や服役囚も撮影に参加。FBIや警察の協力も得たことで、強盗団とパトカーの激しいカーチェイスや、犯人一味と包囲した警察官らとの銃撃戦に真実味が増し、迫力満点のシーンの数々に思わず手に汗握ってしまうはず。  スピーディーに展開するアクションシーンと好対照なのが、ダグとクレアの関係を軸とした人間模様の丁寧な描写。ダグの父親、幼馴染みの強盗仲間、元恋人らとのやり取りを通じて、ダグがかつて夢に破れ、タウンという環境の中で犯罪に染まっていったことが明かされる。やがてクレアへの純粋な想いと、人生のセカンドチャンスに賭ける意志を知る頃には、多くの観客が主人公に感情移入し、絶体絶命の危機をどうにか乗り切ってほしいと願わずにはいられないだろう。  演技派で固めた共演陣のアンサンブルも見どころだ。強盗仲間でキレやすい激情タイプのジェム役には、『ハート・ロッカー』の主演で脚光を浴びたジェレミー・レナー。『それでも恋するバルセロナ』でスカーレット・ヨハンソンやペネロペ・クルスと共演したレベッカ・ホールは、クレア役でキャリアウーマンの知性と恋する女の純粋さを巧みに表現。1月に惜しまれつつ他界した英国出身の名バイプレーヤー、ピート・ポスルスウェイトも、穏やかだが凄みのあるタウンの黒幕ファーギーを怪演。  人生は往々にして理不尽で、思うようにいかないもの。それを宿命として受け入れ諦めるのか、それとも、希望を失わず再起のチャンスに賭けるのか。現状に悩み迷っている人ならきっと、本作のメッセージに「一歩を踏み出す勇気」をもらえることだろう。 (文=eiga.com編集スタッフ・高森郁哉) 「ザ・タウン」作品情報 <http://eiga.com/movie/55398/>
ゴーン・ベイビー・ゴーン アカデミー賞、ゴールデン・グローブ賞ノミネート作品です。 amazon_associate_logo.jpg
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おバカな凸凹コンビがてんやわんや! 真冬の最強バディ・ムービー

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 今週は、おバカでヤバい凸凹コンビが笑いと興奮と感動を与えてくれる、話題のバディ・ムービー新作をダブルでご紹介。1月22日に揃って公開される、痛快ヒーローアクションの『グリーン・ホーネット』と、爆笑ロードムービーの『デュー・デート 出産まであと5日! 史上最悪のアメリカ横断』の2本だ。  『グリーン・ホーネット』(ソニー・ピクチャーズエンタテインメント配給、3D上映あり)は、60年代の米ドラマの映画化作品。ロサンゼルスの大手新聞経営者の父が急死し、パーティー三昧の放蕩息子ブリットは突然、莫大な遺産と社長職を引き継ぐことに。正義感に目覚めたブリットは、亡父の運転手カトーが発明と武術の天才だと知り、2人で"悪を装い、悪を刺す"という掟破りの覆面ペア「グリーン・ホーネット」を結成。ロスを牛耳る悪党たちに立ち向かっていく。    人気コメディ俳優のセス・ローゲン(『無ケーカクの命中男/ノックトアップ』)が、従来のヒーロー像とは一線を画す、ユーモラスで人間味あふれる主人公を好演。ドラマ版で無名時代のブルース・リーが演じたカトー役を、演技に音楽とマルチに活躍する台湾のスター、ジェイ・チョウが演じている。主人公がお笑い系、助手が二枚目という組み合わせでの掛け合いや仲間割れも楽しい。  監督は、『エターナル・サンシャイン』『僕らのミライへ逆回転』など、ハートフルなストーリーテリングと、斬新なのに懐かしくて温かい映像が持ち味のミシェル・ゴンドリー。敵一味のスローモーションとカトーの超高速アクションを同期させた格闘シーンや、分割画面が立体化する3D映像など、新感覚の映像表現も見どころだ。  もう1本の『デュー・デート 出産まであと5日! 史上最悪のアメリカ横断』(ワーナー・ブラザース映画配給、R15+)は、生活も性格もまるで異なる赤の他人同士なのに、何の因果か一緒に長距離ドライブをする羽目になった男2人の珍道中を描くコメディ。  第一子誕生を5日後に控えたピーター(ロバート・ダウニー・Jr.)は、アトランタから妻が入院するロサンゼルスへ空路で向かうはずが、搭乗時のトラブルにより財布を盗まれ飛行機に乗れなくなる。空港でトラブルの元になった俳優志望の男イーサン(ザック・ガリフィアナキス)に誘われ、仕方なく車でロサンゼルスを目指すが――。  メガホンを取ったのは、前作の低予算コメディ『ハングオーバー! 消えた花ムコと史上最悪の二日酔い』が異例の特大ヒットとなり、日本でも劇場公開されて話題を呼んだトッド・フィリップス監督。前作のファンなら必見なのは言うまでもない。  エリート意識が鼻につくピーターと、天然なトラブルメーカーのイーサンが繰り広げるドタバタに、呆れつつも大笑いし、親子や人生のエピソードでホロリとして、いつの間にか2人に共感してしまうはず。寒さが身にしみるこの時期、「やっぱり仲間っていいよな」と温かな気持ちになれる映画を、ぜひ劇場でご覧いただきたい。 (文=eiga.com編集スタッフ・高森郁哉) 『デュー・デート 出産まであと5日! 史上最悪のアメリカ横断』作品情報 <http://eiga.com/movie/55399/> 『グリーン・ホーネット』作品情報 <http://eiga.com/movie/53837/>
ブロック・パーティー ゴンドリーと言えば。 amazon_associate_logo.jpg
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全米を震撼させたホラー映画「ネスト」

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 正月休みボケが続くアナタに、目がさめるようなこわ~いホラー映画はいかがだろうか。  今回紹介するのは、1月22日より公開される『ネスト』。かつてない恐怖の連続で全米を恐怖のドン底におとしいれたスーパーナチュラル・ホラー映画だ。主演をつとめるのは、あのケビン・コスナー。ケビン・コスナーといえば、『ダンス・ウィズ・ウルブス』で監督としてアカデミー賞に輝き、『ボディガード』『守護神』のなどの大ヒット作に出演してきたハリウッドを代表する名優。甘いマスクと渋~い演技で、世の女性のハートを鷲掴みにしてきた彼が、デビュー30周年を記念して、初のホラー映画に挑戦するというから驚きだ。  物語は、妻と離婚したばかりの小説家のジョン(ケビン・コスナー)が、思春期の娘ルイーサ(イバナ・バケロ)と7歳の息子サム(ガトリン・グリフィス)を連れ、サウス・カロライナの人里離れた一軒家に引っ越してくるところから始まる。自然に囲まれたその家で新たな生活を始めようとする3人。だが、その夜から、一家得体の知れない恐怖に見舞われることになる。  夜な夜な聞こえてくる物音と囁き声、そして闇に潜む怪しい気配、さらには家中に残された泥だらけの足跡......。やがて、ルイーサは夜になると家を抜け出し、近くにある古墳のような塚に向かい、泥だらけになって帰ってくるようになる。しかし、その丘は、"マウンド・ウォーカー"と呼ばれる太古から地中で生き続ける呪われた種族の巣窟(ネスト)だった。種の保存のため、新たなる女王を探し続ける彼らは、ルイーサを闇の世界へと引きずりこんだのだ。その事実を知ったジョンは、奪われた娘を奪還するため、彼らの巣窟へと向かう。果たしてジョンは、娘を無事に連れ戻すことができるのか――。  この作品で注目すべきは、やはり何といっても主演のケビン・コスナーその人だろう。娘を守ろうとする父親の姿は、存在感バツグン。とはいえ、子育てに苦悩したり、正体不明の敵に激しい恐怖の色を浮かべるなど、人間らしい表情を浮かべるケビンはこれまでの正義感一辺倒の演技とはまた違った姿を見せ、新鮮だ。
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 そして、古典的ともいえる手法で観客を恐怖のどん底の陥れるのも、この映画の見所でもあるだろう。前半では、一家を狙う敵の姿は一切明かされず、ただ暗闇や家の外から聴こえてくる微かな物音やうめき声のみでその存在が描写される。そこには、凝った映像表現などは何もない。だが、物音や気配のみというシンプルな表現方法が、かえってリアリティをもって観る者の恐怖をかき立てる。真夜中に自宅に居るとき、どこからか微かな物音が聴こえてきて恐怖で眠れなくなった――そんな誰しもが一度は経験したでことがあるだろう恐怖心を見事に利用して、物語はぐいぐいと進む。3Dだ何だと映像技術の躍進ばかりに力を入れる業界にとって、この古典的でシンプルな手法は、逆に目新しく感じることだろう。  なお、クライマックスには想像もしなかった衝撃のシーンが待っているので、最後の最後まで目を離さないでほしい。 『ネスト』は、2011年1月22日(土)池袋テアトルダイヤほかロードショー。 ●『ネストhttp://www.facebook.com/nestmoviejp 【関連記事】 アイデア光る秀作が続々公開『月に囚われた男』『第9地区』 『アバター』『ハート・ロッカー』の一騎打ち!? アカデミー賞ノミネート作品が続々公開 書道に剣道に大忙し! 成海璃子、日本の伝統芸道に真摯に挑む

ビル・ゲイツ、S.ジョブズよりもスゴい!? 世界最年少億万長者の成功と孤独『Facebook』

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 非モテのオタク学生がネット起業で大成功して、25歳で世界最年少の億万長者に――。世界最大のソーシャルネットワーキングサービス「Facebook」の創設者、マーク・ザッカーバーグの半生を一言で表せば、そんなところだろうか。『ソーシャル・ネットワーク』(ソニー・ピクチャーズエンタテインメント配給、1月15日公開)は、この若き天才の成功と裏切りの物語を映画化した話題作だ。  2003年のある夜、ハーバード大学でコンピュータ科学を専攻する19歳のマーク(ジェシー・アイゼンバーグ)は、ガールフレンドのエリカに振られた腹いせに、女子の顔をランク付けするサイトを作ろうと思い立つ。学内のサーバーをハッキングし女子学生の写真を集めて開設したサイトは、わずか2時間で2万2000アクセスを集めるが、大学側から半年の観察処分を受ける。  ハーバードで一躍有名人になったマークは、エリート学生のウィンクルボス兄弟らから持ちかけられた話にヒントを得て、親友のエドゥアルド(アンドリュー・ガーフィルド)とともに、学内の友人を増やすためのネットワーキング・サービス「Facebook」を開発。Facebookの人気はたちまち他大学にも広がっていく。  音楽ファイル共有サイト「ナップスター」の創設者ショーン(ジャスティン・ティンバーレイク)が経営参加したことで、大型の資金調達にも成功し、Facebookは先行するサービスの利用者数を追い抜き世界最大のSNSへと急成長。だがその過程で、マークやショーンと意見の合わないエドゥアルドは追放される。やがてマークは、アイデアを盗まれたと主張するウィンクルボス兄弟と、創業者としての権利を求めるエドゥアルドから、2件の訴訟を起こされてしまう。  本作の監督は、『セブン』『ファイト・クラブ』で知られる映像派の鬼才デビッド・フィンチャー。訴訟の当事者たちがそれぞれ回想する過去のいきさつをフラッシュバックで多角的に描き出し、緻密な台詞劇で緊張と興奮を高めていく。昨秋から米国などで公開が始まり、1月上旬までに30の映画賞で86冠を達成するなど高い評価を獲得。アカデミー賞の有力候補と目されている。  実世界で(主に女性との)人間関係に問題を抱えていたからこそ、ネットの世界で友達を作るツールを誰より必要としていた主人公。アイデアが形になり、ビジネスとして成功していく過程に観客もワクワクし、Facebookを一緒に立ち上げた親友を裏切った後の孤独感が切々と伝わってくる。  出演陣の注目株は、エリカを演じた知的な美女、ルーニー・マーラ。出演シーンは多くないが、フィンチャー監督が大いに気に入り、次作のリメイク版「ミレニアム ドラゴン・タトゥーの女」の主役に大抜擢。日本での人気も急上昇しそうな新進女優だ。 (文=eiga.com編集スタッフ・高森郁哉) 「ソーシャル・ネットワーク」作品情報 <http://eiga.com/movie/55273/>
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エロスとタブーを交配した"至高の美女" 禁断のサイエンスホラー『スプライス』

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『CUBE キューブ』の奇才ヴィンチェンゾ・ナタリ監督の最新作『スプライス』。遺伝子の組み換えで誕生した美しき新生命体ドレンを演じるのは、フランスの美人女優デルフィーヌ・シャネアック。纏足みたいに細い足首がたまらんです。
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 デビュー作『CUBE キューブ』(97)で今まで誰も見たことのない斬新な映像世界を体験させてくれたヴィンチェンゾ・ナタリ監督の最新作『スプライス』は、驚きに溢れた久々の会心作となっている。遺伝子工学をモチーフにしたサイエンスホラーである本作を、ヴィンチェンゾ監督は大ヒット作『キューブ』の次回作として発表するつもりだった。少年期にコミックアーティストを夢見ていたヴィンチェンゾ監督は遺伝子実験によって誕生する異形のクリーチャーたちのデザイン画を入念に準備していたが、予算が掛かりすぎることから製作費の目処がたたずに製作は見送りに。だが、完成まで10年以上の歳月を費やしたことで、ヴィンチェンゾ監督ならではのユニークさに加え、エロティックかつ人間のモラルに問い掛けるひと筋縄で済まないサスペンスドラマに仕上がった。  クライヴ(エイドリアン・ブロディ)とエルサ(サラ・ポーリー)は科学者夫婦。動物の遺伝子を組み合わせることで製薬会社にとって有益な新種の生命体を生み出す実験を続けてきた。ある日、エルサは遺伝子操作の実験中に、人間の遺伝子を加えるとどうなるのかという好奇心に捕われる。クローン人間を作ることは禁じられているが、これは他にも多種多様な動物の遺伝子が交じっており、クローン人間とは言えないのではないか。反対していた夫のクライヴも結局は科学者としての興味が倫理観に勝ってしまい、エルサの実験を止めることができない。どんな実験結果が出てくるのか、自分の目で確かめてみたいのだ。そうして生まれてきたのが"新生命体ドレン"。爬虫類とも鳥類とも両生類とも判別できない奇妙な生態のドレンだったが、驚異的な成長を遂げ、次第に神秘的な美しさをたたえた女性へと変態していく。エルサは母性的な愛情をドレンに注ぎ、クライヴは抗いがたい危険な魅力をドレンに感じるようになっていく。成長したドレンは天使なのか悪魔なのか? クライヴとエルサの運命は大きく狂い始める。  世界初のクローン羊ドリー(1997~2003)は飼育係が巨乳女優ドリー・パートンに因んで命名したそうだが、本作のヒロインであるドレンはエルサがNERDとデザインされたTシャツを着ていたことから名付けられる。知能を持ち始めたドレンが初めて発した言語がNERD(まぬけ、変わり者、オタク)だったのだ。そこでエルサはNERDの配列を変えて、DRENと新生命体に名付ける。成長過程のドレンはめちゃめちゃカワイイ。だが、ライオンの赤ちゃん然り、人間の赤ちゃん然り、非力な幼年期をそのカワイさを武器として身を守る生き物ほど、成長後は恐ろしい存在に育つもの。大人になったドレンはエルサとクライヴ夫婦の科学者としてのモラルを揺さぶるだけでなく、人類全体に影響を及ぼしかねない魔物になっていく。NERDを逆から読んだDRENという名前に込められたメッセージは意味深である。
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科学者のエルサ(サラ・ポーリー)は幼少期に
母親から虐待されたトラウマがあり、子どもが産
めずにいた。ドレンを我が子のようにかわいがる。
 ケン・ラッセル監督の『アルタード・ステーツ/未知への挑戦』(79)、クリストファー・ウォーケン主演の『ブレインストーム』(83)デヴィッド・クローネンバーグ監督の『ザ・フライ』(86)、H・R・ギーガーがクリーチャーデザインを担当した『スピーシーズ 種の起源』(95)といったSFホラー愛好家には堪らない本作だが、上半身は美女で足首は細くて纏足(てんそく)状態、サソリのような鋭い尻尾を有し、エクスタシーを感じると翼が生えてくるドレンは好き嫌いがハッキリ分かれるキャラクターだろう。ドレンちゃんのことを「今までに見たことのないタイプ。超カワイイ!」と感じる人の目には地上に降りてきた天使のように映り、「どこがカワイイの? グロくてキモいよ」と感じる人には悪魔のように毒々しく映るはずだ。  ちなみに"お蔵入り企画"と化していた本作の製作総指揮を買って出たのは、『ヘルボーイ』(04)、『パンズ・ラビリンス』(06)のギレルモ・デル・トロ監督。いかにもデル・トロ作品らしい、奇妙なクリーチャーたちが本作を彩る。冒頭には先輩格の新生命体ジンジャー&フレッドが登場するが、ジンジャー&フレッドの容姿がもろに"男性器"と"女性器"だったり、物語の後半には科学者のモラルうんぬん以上に近親相姦&獣姦を連想させるシーンも用意されている。多分、本作の企画がお蔵入り状態となっていたのは、そんなアンモラルな部分が"良識ある投資家"たちに敬遠されたためだろう。デル・トロいわく「真のホラーとは、道徳的に危険なもの」とのこと。日本のアニメや特撮シリーズを少年期に見て育ったデル・トロさんは、よ~く分かってらっしゃる。奇才ヴィンチェンゾ監督のイメージ通りに撮れる環境をセッティングしてあげたデル・トロ氏にも座布団を差し上げたい。  タイトルとなっているspliceは「接合、結合、結婚」という意味だが、「キネマ旬報」(98年9月上旬号)に『CUBE キューブ』日本公開時のヴィンチェンゾ監督のインタビュー記事が掲載されており、興味深い。その記事の中でヴィンチェンゾ監督はこう語っている。「影響を受けた監督はキューブリック、ヒッチコック、クローネンバーグ、リンチ、フェリーニ、ブニュエルといったところかな。リンチに関しては感性に近しい部分があるみたいで、僕の作品がリンチの世界に似すぎないようにずっと努力してきたぐらいなんだよ。リンチの『イレイザーヘッド』は、僕の大好きな映画の1本だしね」
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『戦場のピアニスト』(02)のエイドリアン・
ブロディと『死ぬまでにしたい10のこと』(03)
のサラ・ポーリー共演。善人顔した2人がとんでも
ないことをやらかすところが、本作のキャスティング
のミソですな。
 なるほど、キューブリックの革新性、観客の目を惹き付けるヒッチコック演出、クローネンバーグのグロテスクさ、リンチの悪夢感、ジンジャー&フレッドはフェリーニの晩年のタイトルだし、ブニュエル特有の背徳感も本作には漂うではないか。ついでに言うなら、ヴィンチェンゾ監督は日本では三池崇史監督がお気に入りらしい。奇妙なクリーチャーが出てくるところや攻め込んだB級感は、三池作品とも似ている。ヴィンチェンゾ監督が撮りたくて撮りたくてたまらなかった『スプライス』は、映画史に名前を残す世界の巨匠たちの遺伝子を結合させた作品なのかもしれない。  巨乳女優にちなんだ名前を与えられたクローン羊のドリーは、研究室でどんな夢を見ながら6歳の生涯を終えたのだろうか。人間ではない新生命体として生まれたにも関わらず人間のモラルを押しつけられるドレンは、冷たい水槽の底でどんな将来を思い描いていたのだろうか。ただ自分の本能や感情に素直に生きているだけなのに、どうして親代わりのエルサとクライヴが自分の存在に困惑しているのか、ドレンにはちっとも理解できない。ドレンにとっては、自分の生まれてきた世界そのものが『CUBE キューブ』のような不条理さに満ちた監獄みたいに映っていたはずだ。 (文=長野辰次) sprices04.jpg 『スプライス』 監督・脚本/ヴィンチェンゾ・ナタリ 製作総指揮/ギレルモ・デル・トロ、ジョエル・シルバー 撮影監督/永田鉄男 出演/エイドリアン・ブロディ、サラ・ポーリー、デルフィーヌ・シャネアック  配給/クロックワークス 1月8日(土)より新宿バルト9ほかにて全国ロードショー <http://www.splice-movie.jp>
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●深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】INDEX [第99回]2010年に活躍した女優を勝手に表彰! 満島ひかりに"面倒くさい女"大賞を [第98回]大人だって"ドラえもん"にいて欲しい 残念男の逆転劇『エリックを探して』 [第97回]平凡な高校生デイヴは2度変身する!原点回帰のヒーロー『キック・アス』 [第96回]村上春樹の超絶ベストセラーの映画化『ノルウェイの森』はどこにある? [第95回]実在した"奇妙な高額バイト"の顛末 心理サスペンス『エクスペリメント』 [第94回]"アル中"カメラマンの泣き笑い人生『酔いがさめたら、うちに帰ろう。』 [第93回]朝ドラと異なる映画『ゲゲゲの女房』ゴールなき"貧乏耐久"2人3脚走 [第92回]バラエティーでの実績は通用するか? テリー伊藤の初監督作『10億円稼ぐ』 [第91回] 不謹慎なる社会派エンタテイメント『裁判長!ここは懲役4年でどうすか』 [第90回]"世界のナベアツ"大阪府知事に就任! 政治コメディ『さらば愛しの大統領』 [第89回]自分の恋愛もプロデュースする女優、ドリュー・バリモア主演『遠距離恋愛』 [第88回]スタローンが立ち上げた"筋肉共和国"男たちの祭典『エクスペンダブルズ』 [第87回]元"おはガール"安藤聖の再起動ドラマ 就職氷河期を生きる『バカがウラヤマシイ』 [第86回]マイノリティーは"理想郷"を目指す。筒井文学の金字塔『七瀬ふたたび』 [第85回]清純派・佐藤寛子が美しく"変態"! 官能サスペンス『ヌードの夜──』 [第84回]死を意識して、ギラギラ輝く男たち! 三池節、大バクハツ『十三人の刺客』 [第83回] 女を食い物にする男どもは全員処刑! モダン社会の闇を暴く『ミレニアム』 [第82回] "企画AV女優"たちの青春残酷物語 性なる鎮魂劇『名前のない女たち』 [第81回]猫を見れば、人間社会が見えてくる! 世界の人気猫大集合『ネコを探して』 [第80回]原恵一監督の新作は辛口ファンタジー 退屈な"日常生活"を彩る『カラフル』 [第79回]米軍に実在した"超能力部隊"の真実!? ムー民、必見『ヤギと男と男と壁と』 [第78回]戦場から帰還した夫は"芋虫男"だった! ヤクザ監督の反戦映画『キャタピラー』 [第77回] 白ユリの花開くガールズの妖しい世界 H系ホラー『ジェニファーズ・ボディ』 [第76回] 爽やか系青春ゾンビ映画にホロリ......夏休みは『ゾンビランド』に集結せよ [第75回] "生きる"とは"見苦しい"ということ 藤沢周平の時代活劇『必死剣 鳥刺し』 [第74回]初恋の美少女は200歳の吸血鬼だった! 北欧産のホラー映画『ぼくのエリ』 [第73回] "三億円事件"の真相を解き明かす! 桜タブーに挑んだ『ロストクライム』 [第72回/特別編] 上映反対で揺れる問題作『ザ・コーヴ』"渦中の人"リック・オバリー氏の主張 [第71回] 女子にモテモテになる方法、教えます。軟派少年の実話物語『ソフトボーイ』 [第70回] 下町育ちの"北野少年"が見た現代社会 人間同士の食物連鎖『アウトレイジ』 [第69回] "リアルと虚構の狭間"を生きる男、アントニオ猪木初主演作『アカシア』 [第68回] ヒーローも神もいない現代社会の惨劇 井筒監督の問題作『ヒーローショー』 [第67回] アイドルが地獄で微笑む『戦闘少女』ギャグ×血しぶき×殺陣の特盛り丼! [第66回]アナーキーな"社歌"で生産性アップ! 満島ひかり大進撃『川の底からこんにちは』 [第65回]超ヘビー級なシリアス劇『プレシャス』"家族"という名の地獄から脱出せよ [第64回]乱れ咲く"悪の華"ゼブラクイーン! 仲里依紗が過激変身『ゼブラーマン2』 [第63回] オタク王が見出した"夢と現実"の接点 ティム・バートン監督作『アリス──』 [第62回] バッドテイストな感動作『第9地区』 アナタはエビ人間とお友達になれるか? [第61回]スコセッシ監督の犯罪アトラクション『シャッターアイランド』へようこそ! [第60回]宮崎あおいの"映画代表作"が誕生! 毒を呑んでも生き続けよ『ソラニン』 [第59回]"おっぱいアート"は世界を救えるか? 母乳戦士の記録『桃色のジャンヌ・ダルク』 [第58回]現代に甦った"梶原一騎ワールド"韓流ステゴロ映画『息もできない』 [第57回]命知らずの変態レポーター、中東へ! 史上最大のどっきり?『ブルーノ』 [第56回]仲里依紗がアニメから実写へと跳躍! 母娘2代の時空旅行『時をかける少女』 [第55回]ビグロー監督はキャメロンより硬派! 人間爆弾の恐怖『ハート・ロッカー』 [第54回] "空気を読む"若者の悲劇『パレード』楽しいルームシェア生活の行き先は? [第53回]社会の"生け贄"に選ばれた男の逃亡劇 堺雅人主演『ゴールデンスランバー』 [第52回]『男はつらいよ』の別エンディング? "寅さん"の最期を描く『おとうと』 [第51回]ひとり相撲なら無敵のチャンピオン! 童貞暴走劇『ボーイズ・オン・ザ・ラン』 [第50回]ヒース・レジャーが最後に見た夢の世界 理想と欲望が渦巻く『Dr.パルナサスの鏡』 [第49回]トニー・ジャーは本気なんジャー! CGなしの狂乱劇再び『マッハ!弐』 [第48回]全米"オシャレ番長"ズーイー、見参! 草食系に捧ぐ『(500日)のサマー』 [第47回]市川崑監督&水谷豊"幻の名作"『幸福』28年の歳月を経て、初のパッケージ化 [第46回]押井守監督、大いなる方向転換か? 黒木メイサ主演『アサルトガールズ』 [第45回]ドラッグ漬けの芸能関係者必見!"神の子"の復活を追う『マラドーナ』 [第44回] 暴走する"システム"が止まらない! マイケル・ムーア監督『キャピタリズム』 [第43回]"人は二度死ぬ"という独自の死生観『ガマの油』役所広司の監督ぶりは? [第42回]誰もが共感、あるあるコメディー! 2ちゃんねる発『ブラック会社』 [第41回]タラとブラピが組むと、こーなった!! 戦争奇談『イングロリアス・バスターズ』 [第40回]"涅槃の境地"のラストシーンに唖然! 引退を賭けた角川春樹監督『笑う警官』 [第39回]伝説の男・松田優作は今も生きている 20回忌ドキュメント『SOUL RED』 [第38回]海より深い"ドメスティック・ラブ"ポン・ジュノ監督『母なる証明』 [第37回]チャン・ツィイーが放つフェロモン爆撃 悪女注意報発令せり!『ホースメン』 [第36回]『ソウ』の監督が放つ激痛バイオレンス やりすぎベーコン!『狼の死刑宣告』 [第35回]"負け組人生"から抜け出したい!! 藤原竜也主演『カイジ 人生逆転ゲーム』 [第34回]2兆円ペット産業の"開かずの間"に迫る ドキュメンタリー『犬と猫と人間と』 [第33回]"女神降臨"ペ・ドゥナの裸体が神々しい 空っぽな心に響く都市の寓話『空気人形』 [第32回]電気仕掛けのパンティをはくヒロイン R15コメディ『男と女の不都合な真実』 [第31回]萩原健一、松方弘樹の助演陣が過剰すぎ! 小栗旬主演の時代活劇『TAJOMARU』 [第30回]松本人志監督・主演第2作『しんぼる』 閉塞状況の中で踊り続ける男の悲喜劇 [第29回]シビアな現実を商品化してしまう才女、西原理恵子の自叙伝『女の子ものがたり』 [第28回]"おねマス"のマッコイ斉藤プレゼンツ 不謹慎さが爆笑を呼ぶ『上島ジェーン』 [第27回]究極料理を超えた"極地料理"に舌鼓! 納涼&グルメ映画『南極料理人』 [第26回]ハチは"失われた少年時代"のアイコン  ハリウッド版『HACHI』に涙腺崩壊! [第25回]白熱! 女同士のゴツゴツエゴバトル 金子修介監督の歌曲劇『プライド』 [第24回]悪意と善意が反転する"仮想空間"細田守監督『サマーウォーズ』 [第23回]沖縄に"精霊が暮らす楽園"があった! 中江裕司監督『真夏の夜の夢』 [第22回]"最強のライブバンド"の底力発揮! ストーンズ『シャイン・ア・ライト』 [第21回]身長15mの"巨大娘"に抱かれたい! 3Dアニメ『モンスターvsエイリアン』 [第20回]ウディ・アレンのヨハンソンいじりが冴え渡る!『それでも恋するバルセロナ』 [第19回]ケイト姐さんが"DTハンター"に! オスカー受賞の官能作『愛を読むひと』 [第18回]1万枚の段ボールで建てた"夢の砦"男のロマンここにあり『築城せよ!』 [第17回]地獄から甦った男のセミドキュメント ミッキー・ローク『レスラー』 [第16回]人生がちょっぴり楽しくなる特効薬 三木聡"脱力"劇場『インスタント沼』 [第15回]"裁判員制度"が始まる今こそ注目 死刑執行を克明に再現した『休暇』 [第14回]生傷美少女の危険な足技に痺れたい! タイ発『チョコレート・ファイター』 [第13回]風俗嬢を狙う快楽殺人鬼の恐怖! 極限の韓流映画『チェイサー』 [第12回]お姫様のハートを盗んだ男の悲哀 紀里谷監督の歴史奇談『GOEMON』 [第11回]美人女優は"下ネタ"でこそ輝く! ファレリー兄弟『ライラにお手あげ』 [第10回]ジャッキー・チェンの"暗黒面"? 中国で上映禁止『新宿インシデント』 [第9回]胸の谷間に"桃源郷"を見た! 綾瀬はるか『おっぱいバレー』 [第8回]"都市伝説"は映画と結びつく 白石晃士監督『オカルト』『テケテケ』 [第7回]少女たちの壮絶サバイバル!楳図かずおワールド『赤んぼ少女』 [第6回]派遣の"叫び"がこだまする現代版蟹工船『遭難フリーター』 [第5回]三池崇史監督『ヤッターマン』で深田恭子が"倒錯美"の世界へ [第4回]フランス、中国、日本......世界各国のタブーを暴いた劇映画続々 [第3回]水野晴郎の遺作『ギララの逆襲』岡山弁で語った最後の台詞は...... [第2回]『チェンジリング』そしてイーストウッドは"映画の神様"となった [第1回]堤幸彦版『20世紀少年』に漂うフェイクならではの哀愁と美学

デートに困ったらこれを見ろ! 女のコが喜ぶテッパンムービー

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 クリスマスが来れば、いよいよ年末年始のホリデーシーズンに突入。この時期、カップルで楽しめる映画、特に女性を誘って見れば喜ばれること請け合いの新作2本を紹介したい。  まずは現在公開中の『バーレスク』(ソニー・ピクチャーズエンタテインメント配給)。世界中の音楽ファンを魅了するディーバ、クリスティーナ・アギレラが映画初主演を果たしたゴージャスなエンタテインメントだ。  アイオワの田舎町でバー勤めをしていたアリ(アギレラ)は、得意の歌でスターになることを夢見て大都会ロサンゼルスへ。大人向けのセクシーなショーを毎夜上演するラウンジ『バーレスク』で働こうと決め、半ば強引に店のウェイトレスとなる。経営者で伝説のスターのテス(シェール)は、アリの熱意に根負けし、しぶしぶ彼女をバックダンサーに昇格させる。ある夜、音響トラブルに見舞われたステージを救うため、とっさに肉声で歌い出すアリ。その歌声に、店内の誰もが耳を奪われる。テスに歌唱力を認められたアリは、一気にその才能を開花させていく。  ストーリーはハリウッド映画の王道で、夢を追って田舎から都会に出てきた若者が、努力と才能によって成功するという典型的なアメリカン・ドリーム。とは言え、アギレラの圧倒的な歌唱力と輝く魅力が、このありがちな物語に説得力を与えている。アギレラ自身、本業のコンサートではパワフルな"エロカッコいい"パフォーマンスを売りにしているので、映画後半で披露するゴージャスなショーの主役も堂に入ったもの。  音楽界と映画界の両方で輝かしいキャリアを築いてきたシェールと、アギレラの新旧ディーバ共演に加え、クリステン・ベル、スタンリー・トゥッチといった人気の若手や演技派が脇を固める。美声の歌姫とセクシーなダンサーたちが繰り広げる華麗なショーと、期待通りの大団円へ向かう展開は、鑑賞後のハッピーな余韻を約束してくれる。音楽好き、ダンス好きなら文句なく楽しめるし、目標に向かって力強く生きる女性像は、特に同性の観客に勇気を与えてくれるはずだ。  続いての一本は、12月23日公開の『きみがくれた未来』(東宝東和配給)。ザック・エフロン主演、バー・スティアーズ監督という『セブンティーン・アゲイン』(09)のコンビによるファンタジー風味のヒューマンドラマだ。  高校時代、ヨットレースの名選手で将来を嘱望されていたチャーリー(エフロン)は、自ら運転する車の事故で弟サムを失う。罪悪感に苦しむチャーリーの前に、死んだはずのサムが姿を現す。チャーリーは驚きながらも、兄弟の日課だったキャッチボールを続けるとサムに誓い、約束を守るためにヨットも進学も諦めてしまう。5年後、毎夕弟が現れる墓地の管理人となって静かに暮らしていたチャーリーの人生は、かつての同級生テス(アマンダ・クルー)と再会したことで変わり始める。  愛する人を失った悲しみを、いかにして乗り越えるか。そんな普遍的なテーマを、幽霊譚と組み合わせて感動的に描く本作。エフロンの憂いをたたえたイケメンぶりに、ファンならずとも女性の観客は歓喜するはずだが、男性陣はくれぐれも嫉妬したりしないように。「どんな苦難も愛の力で克服できる」という明快なメッセージは、大切な人との絆を深めるのに役立ってくれることだろう。 (文=eiga.com編集スタッフ・高森郁哉) 『バーレスク』作品情報 <http://eiga.com/movie/55277/> 『きみがくれた未来』作品情報 <http://eiga.com/movie/55365/>
バーレスク オリジナル・サウンドトラック こっちもなかなか。 amazon_associate_logo.jpg
【関連記事】 師走の忙しさを吹っ飛ばせ! 痛快アクション映画で気分をリフレッシュ! 平凡な高校生デイヴは2度変身する!原点回帰のヒーロー『キック・アス』 村上春樹の超絶ベストセラーの映画化『ノルウェイの森』はどこにある?

大人だって"ドラえもん"にいて欲しい 残念男の逆転劇『エリックを探して』

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イエローカード続きの人生を送る中年男エリック(スティーヴ・エヴェッツ)の前に、サッカー界の英雄エリック・カントナが出現。ハッパの吸いすぎか?
(C)Canto Bros. Productions, Sixteen Films Ltd, Why Not Productions SA, Wild Bunch SA, Channel Four Television Corporation,France 2 Cinema, BIM Distribuzione, Les Films du Fleuve, RTBF (Television belge), Tornasol Films MMIX
 "イマジナリーフレンド"とは空想上の友達。幼年期に自分だけのイマジナリーフレンドを持つことで、寂しさや不安を紛らわせながら成長していく子どもは少なくない。藤子不二雄原作の『オバケのQ太郎』や『ドラえもん』も、思春期を迎える前の主人公・正太やのび太にとってのイマジナリーフレンドだと言えるだろう。子どもたちは成長するに従って実社会でのコミュニケーション能力を身に付け、イマジナリーフレンドと別れていく。しかし、最近では大人たちの気苦労がずいぶんと増えてしまった。仕事や家族の問題、将来に不安を抱えていても、大人には気軽に相談する相手がいない。ドラえもんのように発明品をポケットから出してくれなくてもいい。ただ、自分の悩みや愚痴を聞いて、ポンと背中を押してほしいのだ。そこで登場するのが"大人のためのイマジナリーフレンド"である。イギリスの巨匠ケン・ローチ監督の最新作『エリックを探して』は、人生に落伍しかかった中年男がイマジナリーフレンドに励まされて自分を取り戻していくハートフルなコメディとなっている。  マンチェスターで暮らすエリック(スティーヴ・エヴェッツ)はバツ2の冴えない郵便局員。若い頃はダンス大会で優勝し、ダンスのパートナーを務めてくれた町いちばんの美女リリーと結ばれ、人生はバラ色だった。だが、リリーが妊娠していることがわかり、エリックは混乱してしまう。このまま家庭に収まって平和な一生を過ごせるのか。気づいたらエリックはリリーの待つ家とは反対方向へと走ってしまっていた。その後、別の女性と再婚するも、再婚相手は連れ子の息子2人を残してトンズラ。ダンス大会で優勝した思い出のブルー・スエード・シューズはとっくに何処かに消えてしまった。大好きだったサッカーチーム「マンチェスター・ユナイテッド」の観戦も、チケットが値上がりしたこともありご無沙汰している。血の繋がらない息子2人を養うためにエリックは毎日働いているようなものだが、兄のライアンは街のギャングと付き合い、弟のジェスは不登校状態。父親をなめきっている息子2人にエリックは怒り心頭。自分は何のために生きているのか、エリックにはさっぱり分からない。
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ケン・ローチ監督は就労問題を扱った『この
自由な世界で』(07)などシリアスな作品が
多いけど、今回は肩の力の抜けた軽快なコメディ
っすよ。
 エリックが情緒不安定になったことを心配して、郵便局の仕事仲間たちがあれこれと心配する。自己啓発本マニアの同僚ミートボールに薦められ、仲間たちと一緒に「師と仰ぐカリスマ」を頭の中に思い描く。フィデル・カストロ、ネルソン・マンデラ、マハトマ・ガンジー、サミー・デイヴィス・Jr.......。そんな中でエリックの口から出た名前は、エリック・カントナだった。マンチェスター・ユナイテッドの90年代のエースストライカーで、荒っぽい気性ながらマンチェスター・ユナイテッドに黄金時代をもたらした大英雄だ。同じエリックという名前でも、サッカー選手のエリックは華麗なゴールを次々と決め、悪質な観客やマスコミから売られたケンカはしっかり買い、ファンの記憶の中で鮮明に輝き続けている。それに比べて、今の自分はどうなんだ? 職場の仲間たちが帰った後、エリックはハッパを少々吸いながらポスターの中の"キング・エリック"に語りかける。そしてエリックが振り返ると、髭面の颯爽とした男が立っていた。あのエリック・カントナが自分の前に立っていたのだ。  自分に自信が持てない残念な男エリックが、いつも以上に落ち込んでいたのには理由があった。最近、別れた最初の妻リリー(ステファニー・ビショップ)と大学に通う娘のことで久々に会う約束をしたのだが、30年経ってもリリーは美しいまま、いや知性と優雅さを身にまとい、若い頃よりも洗練された女性になっているのだ。怖じ気づいたエリックは約束をすっぽ抜かして敵前逃亡してしまう。昔のように、またパニック状態に陥ってしまったのだ。自分の人生を全否定し、消極的になっているエリックに対し、"キング・エリック"は「すべては美しいパスから始まる」「サイコロを振らなくては目は出ない」「チームメイトを信頼せよ」などのアドバイスを送る。敬愛するスター選手の存在に励まされ、エリックはヨレヨレで不格好ながらもリリーや息子たちに向かって懸命にシュートを放つ。果たして空想上の人物の助言は、エリックの実人生を変えることができるのだろうか。
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30年ぶりに再会したエリックと最初の妻リリー。
リリーにとって別れた元夫エリックはもはやどう
でもいい存在だったが......。
 大人のためのイマジナリーフレンドが登場する映画と言えば、ウディ・アレン主演&脚本の『ボギー!俺も男だ』(72)。ハンフリー・ボガート主演の『カサブランカ』(42)を偏愛するバツイチ男が、ハンフリー・ボガートにそっくりなトレンチコートの男に励まされるコメディだ。みうらじゅん原作、田口トモロヲ監督の『アイデン&ティティ』(03)は売れる音楽か自分が本当にやりたい音楽かで悩むロック青年の前に、ボブ・ディランそっくりな男が現われ、ロックの真理を問い掛けてくる。92年から上演されている劇団キャラメルボックスの人気舞台『また逢おうと竜馬は言った』は、司馬遼太郎の歴史小説『竜馬がゆく』を愛読する気弱なサラリーマンが悩む度に坂本竜馬が現われて喝を入れるというお話。イマジナリーフレンドが活躍するのは、何も映画や舞台の中だけではない。作家の村上春樹は執筆に煮詰まった際には、空想上のウナギに意見を求めるそうだ。『アンネの日記』のアンネ・フランクは、空想上の親友キティーに毎日手紙を書くことで、ナチスドイツによるユダヤ人狩りの恐怖に耐え続けた。  大人にもなってイマジナリーフレンドを持つなんてバカげていると思うなかれ。日常から隔離された映画館で映画を見るという行為をボクらが繰り返しているのも、映画というフィクションの世界の中で、子どもの頃に憧れていたヒーローや美女、いつの間にか別れてしまったイマジナリーフレンドたちと再会することを無意識に願っているからではないだろうか。のび太にドラえもん、郵便局員のエリックにエリック・カントナが付いているように、自分の中に何でも相談できる親友や理想の師匠を持つことでずいぶんと日常の風景が変わってくるはずだ。 (文=長野辰次) eric05.jpg 『エリックを探して』 監督/ケン・ローチ 脚本/ポール・ラヴァティ 出演/スティーヴ・エヴェッツ、エリック・カントナ、ジョン・ヘンショウ、ステファニー・ビショップ 配給/マジックアワー+IMJエンタテインメント  12月25日(土)よりBunkamuraル・シネマ、ヒューマントラスト有楽町ほか全国ロードショー <http://www.kingeric.jp>
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●深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】INDEX [第97回]平凡な高校生デイヴは2度変身する!原点回帰のヒーロー『キック・アス』 [第96回]村上春樹の超絶ベストセラーの映画化『ノルウェイの森』はどこにある? [第95回]実在した"奇妙な高額バイト"の顛末 心理サスペンス『エクスペリメント』 [第94回]"アル中"カメラマンの泣き笑い人生『酔いがさめたら、うちに帰ろう。』 [第93回]朝ドラと異なる映画『ゲゲゲの女房』ゴールなき"貧乏耐久"2人3脚走 [第92回]バラエティーでの実績は通用するか? テリー伊藤の初監督作『10億円稼ぐ』 [第91回] 不謹慎なる社会派エンタテイメント『裁判長!ここは懲役4年でどうすか』 [第90回]"世界のナベアツ"大阪府知事に就任! 政治コメディ『さらば愛しの大統領』 [第89回]自分の恋愛もプロデュースする女優、ドリュー・バリモア主演『遠距離恋愛』 [第88回]スタローンが立ち上げた"筋肉共和国"男たちの祭典『エクスペンダブルズ』 [第87回]元"おはガール"安藤聖の再起動ドラマ 就職氷河期を生きる『バカがウラヤマシイ』 [第86回]マイノリティーは"理想郷"を目指す。筒井文学の金字塔『七瀬ふたたび』 [第85回]清純派・佐藤寛子が美しく"変態"! 官能サスペンス『ヌードの夜──』 [第84回]死を意識して、ギラギラ輝く男たち! 三池節、大バクハツ『十三人の刺客』 [第83回] 女を食い物にする男どもは全員処刑! モダン社会の闇を暴く『ミレニアム』 [第82回] "企画AV女優"たちの青春残酷物語 性なる鎮魂劇『名前のない女たち』 [第81回]猫を見れば、人間社会が見えてくる! 世界の人気猫大集合『ネコを探して』 [第80回]原恵一監督の新作は辛口ファンタジー 退屈な"日常生活"を彩る『カラフル』 [第79回]米軍に実在した"超能力部隊"の真実!? ムー民、必見『ヤギと男と男と壁と』 [第78回]戦場から帰還した夫は"芋虫男"だった! ヤクザ監督の反戦映画『キャタピラー』 [第77回] 白ユリの花開くガールズの妖しい世界 H系ホラー『ジェニファーズ・ボディ』 [第76回] 爽やか系青春ゾンビ映画にホロリ......夏休みは『ゾンビランド』に集結せよ [第75回] "生きる"とは"見苦しい"ということ 藤沢周平の時代活劇『必死剣 鳥刺し』 [第74回]初恋の美少女は200歳の吸血鬼だった! 北欧産のホラー映画『ぼくのエリ』 [第73回] "三億円事件"の真相を解き明かす! 桜タブーに挑んだ『ロストクライム』 [第72回/特別編] 上映反対で揺れる問題作『ザ・コーヴ』"渦中の人"リック・オバリー氏の主張 [第71回] 女子にモテモテになる方法、教えます。軟派少年の実話物語『ソフトボーイ』 [第70回] 下町育ちの"北野少年"が見た現代社会 人間同士の食物連鎖『アウトレイジ』 [第69回] "リアルと虚構の狭間"を生きる男、アントニオ猪木初主演作『アカシア』 [第68回] ヒーローも神もいない現代社会の惨劇 井筒監督の問題作『ヒーローショー』 [第67回] アイドルが地獄で微笑む『戦闘少女』ギャグ×血しぶき×殺陣の特盛り丼! [第66回]アナーキーな"社歌"で生産性アップ! 満島ひかり大進撃『川の底からこんにちは』 [第65回]超ヘビー級なシリアス劇『プレシャス』"家族"という名の地獄から脱出せよ [第64回]乱れ咲く"悪の華"ゼブラクイーン! 仲里依紗が過激変身『ゼブラーマン2』 [第63回] オタク王が見出した"夢と現実"の接点 ティム・バートン監督作『アリス──』 [第62回] バッドテイストな感動作『第9地区』 アナタはエビ人間とお友達になれるか? [第61回]スコセッシ監督の犯罪アトラクション『シャッターアイランド』へようこそ! [第60回]宮崎あおいの"映画代表作"が誕生! 毒を呑んでも生き続けよ『ソラニン』 [第59回]"おっぱいアート"は世界を救えるか? 母乳戦士の記録『桃色のジャンヌ・ダルク』 [第58回]現代に甦った"梶原一騎ワールド"韓流ステゴロ映画『息もできない』 [第57回]命知らずの変態レポーター、中東へ! 史上最大のどっきり?『ブルーノ』 [第56回]仲里依紗がアニメから実写へと跳躍! 母娘2代の時空旅行『時をかける少女』 [第55回]ビグロー監督はキャメロンより硬派! 人間爆弾の恐怖『ハート・ロッカー』 [第54回] "空気を読む"若者の悲劇『パレード』楽しいルームシェア生活の行き先は? [第53回]社会の"生け贄"に選ばれた男の逃亡劇 堺雅人主演『ゴールデンスランバー』 [第52回]『男はつらいよ』の別エンディング? "寅さん"の最期を描く『おとうと』 [第51回]ひとり相撲なら無敵のチャンピオン! 童貞暴走劇『ボーイズ・オン・ザ・ラン』 [第50回]ヒース・レジャーが最後に見た夢の世界 理想と欲望が渦巻く『Dr.パルナサスの鏡』 [第49回]トニー・ジャーは本気なんジャー! CGなしの狂乱劇再び『マッハ!弐』 [第48回]全米"オシャレ番長"ズーイー、見参! 草食系に捧ぐ『(500日)のサマー』 [第47回]市川崑監督&水谷豊"幻の名作"『幸福』28年の歳月を経て、初のパッケージ化 [第46回]押井守監督、大いなる方向転換か? 黒木メイサ主演『アサルトガールズ』 [第45回]ドラッグ漬けの芸能関係者必見!"神の子"の復活を追う『マラドーナ』 [第44回] 暴走する"システム"が止まらない! マイケル・ムーア監督『キャピタリズム』 [第43回]"人は二度死ぬ"という独自の死生観『ガマの油』役所広司の監督ぶりは? [第42回]誰もが共感、あるあるコメディー! 2ちゃんねる発『ブラック会社』 [第41回]タラとブラピが組むと、こーなった!! 戦争奇談『イングロリアス・バスターズ』 [第40回]"涅槃の境地"のラストシーンに唖然! 引退を賭けた角川春樹監督『笑う警官』 [第39回]伝説の男・松田優作は今も生きている 20回忌ドキュメント『SOUL RED』 [第38回]海より深い"ドメスティック・ラブ"ポン・ジュノ監督『母なる証明』 [第37回]チャン・ツィイーが放つフェロモン爆撃 悪女注意報発令せり!『ホースメン』 [第36回]『ソウ』の監督が放つ激痛バイオレンス やりすぎベーコン!『狼の死刑宣告』 [第35回]"負け組人生"から抜け出したい!! 藤原竜也主演『カイジ 人生逆転ゲーム』 [第34回]2兆円ペット産業の"開かずの間"に迫る ドキュメンタリー『犬と猫と人間と』 [第33回]"女神降臨"ペ・ドゥナの裸体が神々しい 空っぽな心に響く都市の寓話『空気人形』 [第32回]電気仕掛けのパンティをはくヒロイン R15コメディ『男と女の不都合な真実』 [第31回]萩原健一、松方弘樹の助演陣が過剰すぎ! 小栗旬主演の時代活劇『TAJOMARU』 [第30回]松本人志監督・主演第2作『しんぼる』 閉塞状況の中で踊り続ける男の悲喜劇 [第29回]シビアな現実を商品化してしまう才女、西原理恵子の自叙伝『女の子ものがたり』 [第28回]"おねマス"のマッコイ斉藤プレゼンツ 不謹慎さが爆笑を呼ぶ『上島ジェーン』 [第27回]究極料理を超えた"極地料理"に舌鼓! 納涼&グルメ映画『南極料理人』 [第26回]ハチは"失われた少年時代"のアイコン  ハリウッド版『HACHI』に涙腺崩壊! [第25回]白熱! 女同士のゴツゴツエゴバトル 金子修介監督の歌曲劇『プライド』 [第24回]悪意と善意が反転する"仮想空間"細田守監督『サマーウォーズ』 [第23回]沖縄に"精霊が暮らす楽園"があった! 中江裕司監督『真夏の夜の夢』 [第22回]"最強のライブバンド"の底力発揮! ストーンズ『シャイン・ア・ライト』 [第21回]身長15mの"巨大娘"に抱かれたい! 3Dアニメ『モンスターvsエイリアン』 [第20回]ウディ・アレンのヨハンソンいじりが冴え渡る!『それでも恋するバルセロナ』 [第19回]ケイト姐さんが"DTハンター"に! オスカー受賞の官能作『愛を読むひと』 [第18回]1万枚の段ボールで建てた"夢の砦"男のロマンここにあり『築城せよ!』 [第17回]地獄から甦った男のセミドキュメント ミッキー・ローク『レスラー』 [第16回]人生がちょっぴり楽しくなる特効薬 三木聡"脱力"劇場『インスタント沼』 [第15回]"裁判員制度"が始まる今こそ注目 死刑執行を克明に再現した『休暇』 [第14回]生傷美少女の危険な足技に痺れたい! タイ発『チョコレート・ファイター』 [第13回]風俗嬢を狙う快楽殺人鬼の恐怖! 極限の韓流映画『チェイサー』 [第12回]お姫様のハートを盗んだ男の悲哀 紀里谷監督の歴史奇談『GOEMON』 [第11回]美人女優は"下ネタ"でこそ輝く! ファレリー兄弟『ライラにお手あげ』 [第10回]ジャッキー・チェンの"暗黒面"? 中国で上映禁止『新宿インシデント』 [第9回]胸の谷間に"桃源郷"を見た! 綾瀬はるか『おっぱいバレー』 [第8回]"都市伝説"は映画と結びつく 白石晃士監督『オカルト』『テケテケ』 [第7回]少女たちの壮絶サバイバル!楳図かずおワールド『赤んぼ少女』 [第6回]派遣の"叫び"がこだまする現代版蟹工船『遭難フリーター』 [第5回]三池崇史監督『ヤッターマン』で深田恭子が"倒錯美"の世界へ [第4回]フランス、中国、日本......世界各国のタブーを暴いた劇映画続々 [第3回]水野晴郎の遺作『ギララの逆襲』岡山弁で語った最後の台詞は...... [第2回]『チェンジリング』そしてイーストウッドは"映画の神様"となった [第1回]堤幸彦版『20世紀少年』に漂うフェイクならではの哀愁と美学

師走の忙しさを吹っ飛ばせ! 痛快アクション映画で気分をリフレッシュ!

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12/18より、渋谷シネセゾン他全国順次ロードショー
(C)KA Films LP. All Rights Reserved.
 挨拶回りに年末進行、忘年会にクリスマスと、何かと気ぜわしく心身の疲れも溜まりがちな師走。こんな時期だからこそ、別世界へといざなってくれる痛快なアクション映画で気分すっきりリフレッシュといきたい。  まずは、1982年に初めてデジタルCGを本格的に導入し、以降のクリエイターたちに多大な影響を与えたSFアドベンチャー『トロン』から、実に28年ぶりの3D版続編となる『トロン:レガシー』(ディズニー配給、12月17日公開)。  デジタル界のカリスマ、ケビン・フリン(ジェフ・ブリッジス)が息子サムを残し謎の失踪を遂げてから20年後。たくましい青年に成長したサム(ギャレット・ヘドランド)は、父から届いたメッセージに導かれ、コンピューター内部の仮想空間に入り込む。そこでは、若き日の父の姿をしたプログラム"クルー"が独裁者として君臨していた。闘技場でプログラムたちと死闘を繰り広げるサムは、謎の美女クオラ(オリビア・ワイルド)に救出され、この世界に閉じこめられていた父と再会。現実世界への帰還を試みるサムたちに、クルーの魔の手が迫る。  本作の見どころは何と言っても、クリアな3Dの奥行き感を伴う未来的デザインの仮想世界で描かれる、VFXを駆使したスタイリッシュでスピーディーなバトルアクションだ。前作でメインの戦闘ツールだったオートバイ風"ライト・サイクル"でのチーム戦に加え、記憶装置を兼ねる円盤状の武器"ディスク"を投げ合う戦い、"ライト・ジェット"での空中戦など、アクションのタイプも多様化して目が離せない。3D映像の臨場感のおかげで、自分が仮想空間に入り込んでゲームをしているかのような興奮を味わえる。  ブリッジスの若返った顔は、俳優の表情をキャプチャーしてデジタルデータ化し、CGで加工してから俳優の顔面に合成するという、『ベンジャミン・バトン 数奇な人生』でも使われた技術で実現。音楽を担当するダフト・パンクがDJ役で出演しているのもファンにはうれしいところ。クオラ役のワイルドやジェム役のボー・ギャレットといったクールな美女たちも、ボディにぴったりフィットしたスーツをまといフェティッシュな魅力を振りまいている。  A級アクション超大作の風格を誇る『トロン:レガシー』に対し、B級感を漂わせながらもコミカルな青春物語と過激なアクションのケミストリーで稀有な傑作に仕上がった等身大ヒーロー映画が、12月18日公開の『キック・アス』(カルチュア・パブリッシャーズ配給、R-15指定)だ。  ニューヨークに住むデイブ(アーロン・ジョンソン)は、特技もなく女の子にも無視されるヘタレ高校生だが、正義感だけは人一倍。アメコミ好きでスーパーヒーローに憧れる気持ちが高じ、ネット通販で買ったコスチュームを着て"キック・アス"と名乗り行動を開始する。最初のミッションでいきなり瀕死の重傷を負うも、後遺症で痛みを感じない体に。復帰後、チンピラ集団を相手に孤軍奮闘する姿がネット動画で公開されると、一躍時の人となる。そんなデイブの前に、愛する妻を奪った地元マフィアに復讐するため、格闘と武器の訓練を積んできたビッグ・ダディ(ニコラス・ケイジ)とその娘ヒット・ガール(クロエ・モレッツ)が現れ、事態は思いもよらぬ展開に。  『ウォンテッド』の原作グラフィックノベルも手がけた人気作家、マーク・ミラーによる同名コミックを、『スターダスト』のマシュー・ボーン監督が映画化。ミラーが十代の頃の自分を投影したという主人公が、暴力にビビリながらも勇気を振り絞って悪に立ち向かい、人として男として成長していく姿に、ついつい笑いながらも共感を覚えることだろう。  娘に過酷な特訓を施すアブない父親役のケイジもハマっているが、本作の最高のキャスティングはその娘を演じたクロエ・モレッツ。無垢な笑顔でバタフライナイフをくるくる回し、キュートなコスチューム姿で下品な言葉を吐いては銃や刀剣で悪人どもをブチ殺す。主人公より見せ場が多い華麗で過激なアクションシーンは、ポップなBGMとの組み合わせも絶妙。映画史上最もヤバい美少女アクションヒロインの誕生に、日本でもクロエファンが急増するはず。すでに製作が決定した続編も含め、今後の活躍が楽しみな13歳だ。 (文=eiga.com編集スタッフ・高森郁哉) 「トロン:レガシー」作品情報 <http://eiga.com/movie/55210/> 「キック・アス」作品情報 <http://eiga.com/movie/55484/>
トロン いま見ても面白い。 amazon_associate_logo.jpg
【関連記事】 平凡な高校生デイヴは2度変身する!原点回帰のヒーロー『キック・アス』 村上春樹の超絶ベストセラーの映画化『ノルウェイの森』はどこにある? 実在した"奇妙な高額バイト"の顛末 心理サスペンス『エクスペリメント』

平凡な高校生デイヴは2度変身する!原点回帰のヒーロー『キック・アス』

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決して変質者ではありません。地味な高校生デイヴ(アーロン・ジョンソン)は
小遣いで買ったウェットスーツを着込んで、なりきりヒーロー"キック・アス"を名乗る。
(c)2009 KA FILMS LP.ALL RIGHTS RESERVED.
 世間の常識をキックアス! 周囲の視線なんかキックアス! 安全な場所から批評するヤツらをキックアス! ついでに昨日までの自分にもキックアス! バイオレンス描写の過激さから日本のみならず本国アメリカでも公開が危ぶまれたアクション映画『キック・アス』。しかし、やり過ぎアクションシーンとは裏腹に、映画を見終わった後にはスコーンと突き抜けた爽快感が溢れる。最年少最凶スーパーヒロイン"ヒットガール"を演じたクロエ・グレース・モレッツの魅力は後日公開の「プレミアサイゾー」をご覧になっていただくとして、お友達感覚120%な等身大のスーパーヒーロー"キック・アス"の悪戦苦闘ぶりに思わず男泣きしてしまうのだ。  主人公のデイヴ(アーロン・ジョンソン)は平凡で目立たない高校生。同じクラスに好きな女の子ケイティがいるが、自分からまともに声を掛けることもできずにいる。やることと言えば、女教師をオカズにオナニーするかコミック好きな地味な男友達同士でオタク談義に花を咲かせることぐらい。パッとしない毎日を過ごすデイヴだが、ふとあることを思いつく。コミックの中のスーパーヒーローにただ憧れているだけじゃなくて、自分自身がスーパーヒーローになればいいじゃんと。スーパーヒーローを愛する気持ちは誰よりもある。ならば、正義を愛するその精神を現実社会で実践するべきじゃないのか。まるで現代に生まれ変わった大塩平八郎と化したデイヴ。呆れ顔の友達を尻目に、デイヴはさっそくネット注文した緑と黄色のウェットスーツ&マスクに身を包み、なりきりヒーロー"キック・アス"となる。スーパーマンのように空を飛ぶことも、スパイダーマンのようにクモの糸を放出することもない、特殊能力ゼロの新ヒーローの誕生である。
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へなちょこヒーローのキック・アスの窮地を度々
救うヒットガール。マーク・ミラー原作の
『ウォンテッド』(08)のアンジェリーナ・
ジョリー&ジェームズ・マカヴォイを思わせる関係だ。
 いつからスーパーヒーローは特殊能力を持っていなくてはいけないことになったんだろうか。世界初のスーパーヒーローとして1938年に生まれた『スーパーマン』は、故郷クリプトン星と地球の重力などの違いから飛行能力や怪力を発揮しているのであって、元々クリプトン星では普通の人である。日本のスーパーヒーロー第1号である『月光仮面』(58~59年/TBS系)はサングラスと白いターバンで顔を隠しているだけで、まるっきし特殊能力は持ち合わせていない。『仮面ライダー』(71~73年/毎日放送)だって原作者・石ノ森章太郎が生きていた頃は武器を持つことなく、丸腰で怪人たちと戦っていた。平成仮面ライダーたちがさまざまな武器を持って戦うようになったのは、少子化にあえぐ玩具メーカーを儲けさせるためだろう。特殊能力や特殊な武器を持つことは、本来はスーパーヒーローの必須条件ではなかったのだ。『キック・アス』の主人公デイヴは学校の勉強はからきしだが、スーパーヒーローにとって一番大切なものは何かということをちゃんと知っていた。  ネットの世界でアバターを手に入れた人が別人格に変わるように、デイヴも顔を隠したキック・アスのコスチュームを着ることで、煮え切らない高校生からハジきれキャラクターに変身を遂げる。匿名性を手に入れたことで、デイヴの中で長年蓄積されながらも普段は気恥ずかしくて口にできない"正義を愛する心"がバクハツする。もちろん、デイヴは運動神経や格闘術に優れているわけではないので、キック・アスに変身したところで所詮は見かけ倒しちゃんで、街のギャングたちにボコボコにされる。痛いよ、血が出るよ、格好悪いよ。それでも、デイヴは懲りずにキック・アスへの変身を続ける。スーパーヒーローとなって正義を実践するのが気持ちいいのだ。そして、普段のデイヴとしては決して味わえないハラハラドキドキ感が忘れられなくなる。  デイヴのアバターだったはずのキック・アスだが、デイヴ自身にも変化が現われ始める。ちょっとした自信と大きな勇気が宿ったデイヴは、ポジティブな性格に変わっていく。最初はホモと勘違いされたものの、憧れのケイティともいい感じに。まぁ、結果オーライで人生初のガールフレンドをゲットする。やったね、デイヴ。しかも、YouTubeでキック・アスの動画へのアクセスが殺到し、正体不明のキック・アスは街で評判の存在に。これまで周囲の視線を気にしながら生きてきたデイヴだが、キック・アスというアバターを手に入れたことで実人生が大きく変わっていくことになる。  ただし、高校生のボランティアヒーローであるキック・アスにとって知名度のアップは両刃の剣。デイヴは自分の行動が評価されたことを素直に喜ぶが、キック・アスの活躍を面白く思わないマフィアのボスから目を付けられてしまう。愛するガールフレンドもせっかくできたことだし、これまでのような命知らずな行動はできませんよ。ティーンエイジャー特有のイノセントな正義感からキック・アスに変身していたデイヴは、ここで決断を迫られる。10代の頃のやんちゃな思い出として幕を降ろすのか、それともさらなる上のステージへと進むのか。
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父親からの英才教育を受け、悪人どもを次々と
処刑していく"ヒットガール"ことミンディ
(クロエ・グレース・モレッツ)。彼女が成長し
ないうちに、早くパート2の製作を!
 さらに、デイヴに大きな影響を与える存在が現われる。デイヴとは対照的な、生まれながらの人間兵器"ヒットガール"ことミンディ(クロエ・グレース・モレッツ)である。見た目はかわいい11歳の少女だが、マフィアに殺された母親の敵を討つために父親"ビッグ・ダディ"(ニコラス・ケイジ)から徹底的に格闘教育を受け、悪人に対してナイフを振り下ろし、拳銃の引き金を引くことに全くの躊躇がない。武器の扱い方に手慣れたヒットガールに、へっぴり腰のキック・アスは度々のピンチを救われる。自分の信じる正義のために弾丸をぶっ放すことに疑問を持たないヒットガールが存在することで、敵に立ち向かう際にイチイチ悩み、戸惑うキック・アスの"まともさ"がくっきりとクローズアップされる。  ヒットガールのキャッチーさに目を奪われがちだが、生身の等身大ヒーローであるキック・アスが悩み続けることで、クレイジーなバトルの中でも"生身の痛み"が伝わってくる。デイヴが感じるその痛みは、少年期から大人へ成長するのに伴う精神的な痛みでもある。デイヴはキック・アスのコスチュームを身に付けずとも、一連のドタバタを通して痛みの分かる大人へと変身を遂げていたのだ。ただの悪趣味なバイオレンス映画とは異なる青春映画として、『キック・アス』をお薦めしたい。 (文=長野辰次) kikc04.jpg 『キック・アス』 原作・総指揮/マーク・ミラー 監督/マシュー・ヴォーン 出演/アーロン・ジョンソン、クロエ・グレース・モリッツ、ニコラス・ケイジ 配給/カルチュア・パブリッシャーズ 12月18日(土)よりシネセゾン渋谷ほか全国順次公開 +R15 <http://www.kick-ass.jp>
スーパーマン ディレクターズカット版 元祖! amazon_associate_logo.jpg
●深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】INDEX [第96回]村上春樹の超絶ベストセラーの映画化『ノルウェイの森』はどこにある? [第95回]実在した"奇妙な高額バイト"の顛末 心理サスペンス『エクスペリメント』 [第94回]"アル中"カメラマンの泣き笑い人生『酔いがさめたら、うちに帰ろう。』 [第93回]朝ドラと異なる映画『ゲゲゲの女房』ゴールなき"貧乏耐久"2人3脚走 [第92回]バラエティーでの実績は通用するか? テリー伊藤の初監督作『10億円稼ぐ』 [第91回] 不謹慎なる社会派エンタテイメント『裁判長!ここは懲役4年でどうすか』 [第90回]"世界のナベアツ"大阪府知事に就任! 政治コメディ『さらば愛しの大統領』 [第89回]自分の恋愛もプロデュースする女優、ドリュー・バリモア主演『遠距離恋愛』 [第88回]スタローンが立ち上げた"筋肉共和国"男たちの祭典『エクスペンダブルズ』 [第87回]元"おはガール"安藤聖の再起動ドラマ 就職氷河期を生きる『バカがウラヤマシイ』 [第86回]マイノリティーは"理想郷"を目指す。筒井文学の金字塔『七瀬ふたたび』 [第85回]清純派・佐藤寛子が美しく"変態"! 官能サスペンス『ヌードの夜──』 [第84回]死を意識して、ギラギラ輝く男たち! 三池節、大バクハツ『十三人の刺客』 [第83回] 女を食い物にする男どもは全員処刑! モダン社会の闇を暴く『ミレニアム』 [第82回] "企画AV女優"たちの青春残酷物語 性なる鎮魂劇『名前のない女たち』 [第81回]猫を見れば、人間社会が見えてくる! 世界の人気猫大集合『ネコを探して』 [第80回]原恵一監督の新作は辛口ファンタジー 退屈な"日常生活"を彩る『カラフル』 [第79回]米軍に実在した"超能力部隊"の真実!? ムー民、必見『ヤギと男と男と壁と』 [第78回]戦場から帰還した夫は"芋虫男"だった! ヤクザ監督の反戦映画『キャタピラー』 [第77回] 白ユリの花開くガールズの妖しい世界 H系ホラー『ジェニファーズ・ボディ』 [第76回] 爽やか系青春ゾンビ映画にホロリ......夏休みは『ゾンビランド』に集結せよ [第75回] "生きる"とは"見苦しい"ということ 藤沢周平の時代活劇『必死剣 鳥刺し』 [第74回]初恋の美少女は200歳の吸血鬼だった! 北欧産のホラー映画『ぼくのエリ』 [第73回] "三億円事件"の真相を解き明かす! 桜タブーに挑んだ『ロストクライム』 [第72回/特別編] 上映反対で揺れる問題作『ザ・コーヴ』"渦中の人"リック・オバリー氏の主張 [第71回] 女子にモテモテになる方法、教えます。軟派少年の実話物語『ソフトボーイ』 [第70回] 下町育ちの"北野少年"が見た現代社会 人間同士の食物連鎖『アウトレイジ』 [第69回] "リアルと虚構の狭間"を生きる男、アントニオ猪木初主演作『アカシア』 [第68回] ヒーローも神もいない現代社会の惨劇 井筒監督の問題作『ヒーローショー』 [第67回] アイドルが地獄で微笑む『戦闘少女』ギャグ×血しぶき×殺陣の特盛り丼! [第66回]アナーキーな"社歌"で生産性アップ! 満島ひかり大進撃『川の底からこんにちは』 [第65回]超ヘビー級なシリアス劇『プレシャス』"家族"という名の地獄から脱出せよ [第64回]乱れ咲く"悪の華"ゼブラクイーン! 仲里依紗が過激変身『ゼブラーマン2』 [第63回] オタク王が見出した"夢と現実"の接点 ティム・バートン監督作『アリス──』 [第62回] バッドテイストな感動作『第9地区』 アナタはエビ人間とお友達になれるか? [第61回]スコセッシ監督の犯罪アトラクション『シャッターアイランド』へようこそ! [第60回]宮崎あおいの"映画代表作"が誕生! 毒を呑んでも生き続けよ『ソラニン』 [第59回]"おっぱいアート"は世界を救えるか? 母乳戦士の記録『桃色のジャンヌ・ダルク』 [第58回]現代に甦った"梶原一騎ワールド"韓流ステゴロ映画『息もできない』 [第57回]命知らずの変態レポーター、中東へ! 史上最大のどっきり?『ブルーノ』 [第56回]仲里依紗がアニメから実写へと跳躍! 母娘2代の時空旅行『時をかける少女』 [第55回]ビグロー監督はキャメロンより硬派! 人間爆弾の恐怖『ハート・ロッカー』 [第54回] "空気を読む"若者の悲劇『パレード』楽しいルームシェア生活の行き先は? [第53回]社会の"生け贄"に選ばれた男の逃亡劇 堺雅人主演『ゴールデンスランバー』 [第52回]『男はつらいよ』の別エンディング? "寅さん"の最期を描く『おとうと』 [第51回]ひとり相撲なら無敵のチャンピオン! 童貞暴走劇『ボーイズ・オン・ザ・ラン』 [第50回]ヒース・レジャーが最後に見た夢の世界 理想と欲望が渦巻く『Dr.パルナサスの鏡』 [第49回]トニー・ジャーは本気なんジャー! CGなしの狂乱劇再び『マッハ!弐』 [第48回]全米"オシャレ番長"ズーイー、見参! 草食系に捧ぐ『(500日)のサマー』 [第47回]市川崑監督&水谷豊"幻の名作"『幸福』28年の歳月を経て、初のパッケージ化 [第46回]押井守監督、大いなる方向転換か? 黒木メイサ主演『アサルトガールズ』 [第45回]ドラッグ漬けの芸能関係者必見!"神の子"の復活を追う『マラドーナ』 [第44回] 暴走する"システム"が止まらない! マイケル・ムーア監督『キャピタリズム』 [第43回]"人は二度死ぬ"という独自の死生観『ガマの油』役所広司の監督ぶりは? [第42回]誰もが共感、あるあるコメディー! 2ちゃんねる発『ブラック会社』 [第41回]タラとブラピが組むと、こーなった!! 戦争奇談『イングロリアス・バスターズ』 [第40回]"涅槃の境地"のラストシーンに唖然! 引退を賭けた角川春樹監督『笑う警官』 [第39回]伝説の男・松田優作は今も生きている 20回忌ドキュメント『SOUL RED』 [第38回]海より深い"ドメスティック・ラブ"ポン・ジュノ監督『母なる証明』 [第37回]チャン・ツィイーが放つフェロモン爆撃 悪女注意報発令せり!『ホースメン』 [第36回]『ソウ』の監督が放つ激痛バイオレンス やりすぎベーコン!『狼の死刑宣告』 [第35回]"負け組人生"から抜け出したい!! 藤原竜也主演『カイジ 人生逆転ゲーム』 [第34回]2兆円ペット産業の"開かずの間"に迫る ドキュメンタリー『犬と猫と人間と』 [第33回]"女神降臨"ペ・ドゥナの裸体が神々しい 空っぽな心に響く都市の寓話『空気人形』 [第32回]電気仕掛けのパンティをはくヒロイン R15コメディ『男と女の不都合な真実』 [第31回]萩原健一、松方弘樹の助演陣が過剰すぎ! 小栗旬主演の時代活劇『TAJOMARU』 [第30回]松本人志監督・主演第2作『しんぼる』 閉塞状況の中で踊り続ける男の悲喜劇 [第29回]シビアな現実を商品化してしまう才女、西原理恵子の自叙伝『女の子ものがたり』 [第28回]"おねマス"のマッコイ斉藤プレゼンツ 不謹慎さが爆笑を呼ぶ『上島ジェーン』 [第27回]究極料理を超えた"極地料理"に舌鼓! 納涼&グルメ映画『南極料理人』 [第26回]ハチは"失われた少年時代"のアイコン  ハリウッド版『HACHI』に涙腺崩壊! [第25回]白熱! 女同士のゴツゴツエゴバトル 金子修介監督の歌曲劇『プライド』 [第24回]悪意と善意が反転する"仮想空間"細田守監督『サマーウォーズ』 [第23回]沖縄に"精霊が暮らす楽園"があった! 中江裕司監督『真夏の夜の夢』 [第22回]"最強のライブバンド"の底力発揮! ストーンズ『シャイン・ア・ライト』 [第21回]身長15mの"巨大娘"に抱かれたい! 3Dアニメ『モンスターvsエイリアン』 [第20回]ウディ・アレンのヨハンソンいじりが冴え渡る!『それでも恋するバルセロナ』 [第19回]ケイト姐さんが"DTハンター"に! オスカー受賞の官能作『愛を読むひと』 [第18回]1万枚の段ボールで建てた"夢の砦"男のロマンここにあり『築城せよ!』 [第17回]地獄から甦った男のセミドキュメント ミッキー・ローク『レスラー』 [第16回]人生がちょっぴり楽しくなる特効薬 三木聡"脱力"劇場『インスタント沼』 [第15回]"裁判員制度"が始まる今こそ注目 死刑執行を克明に再現した『休暇』 [第14回]生傷美少女の危険な足技に痺れたい! タイ発『チョコレート・ファイター』 [第13回]風俗嬢を狙う快楽殺人鬼の恐怖! 極限の韓流映画『チェイサー』 [第12回]お姫様のハートを盗んだ男の悲哀 紀里谷監督の歴史奇談『GOEMON』 [第11回]美人女優は"下ネタ"でこそ輝く! ファレリー兄弟『ライラにお手あげ』 [第10回]ジャッキー・チェンの"暗黒面"? 中国で上映禁止『新宿インシデント』 [第9回]胸の谷間に"桃源郷"を見た! 綾瀬はるか『おっぱいバレー』 [第8回]"都市伝説"は映画と結びつく 白石晃士監督『オカルト』『テケテケ』 [第7回]少女たちの壮絶サバイバル!楳図かずおワールド『赤んぼ少女』 [第6回]派遣の"叫び"がこだまする現代版蟹工船『遭難フリーター』 [第5回]三池崇史監督『ヤッターマン』で深田恭子が"倒錯美"の世界へ [第4回]フランス、中国、日本......世界各国のタブーを暴いた劇映画続々 [第3回]水野晴郎の遺作『ギララの逆襲』岡山弁で語った最後の台詞は...... [第2回]『チェンジリング』そしてイーストウッドは"映画の神様"となった [第1回]堤幸彦版『20世紀少年』に漂うフェイクならではの哀愁と美学

村上春樹の超絶ベストセラーの映画化『ノルウェイの森』はどこにある?

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松山ケンイチ、菊地凛子主演『ノルウェイの森』。
大学生のワタナベは自殺した親友の恋人・直子と再会し、交際を始める。
(c)2010「ノルウェイの森」村上春樹/アスミック・エース、フジテレビジョン
 1987年に刊行され、累計1,000万部を突破した村上春樹の世界的ベストセラー小説『ノルウェイの森』が、23年の時間を経て映画化された。主人公のワタナベに松山ケンイチ、直子に菊地凛子、緑に新人の水原希子、自殺した親友キズキに高良健吾というキャスティングだ。処女作『風の歌を聴け』が81年に大森一樹監督、小林薫主演で映画化されて以降、村上春樹の長編小説は映像化されることはなかったが、フランス在住のトラン・アン・ユン監督が原作にほぼ忠実に映画化することで完成に漕ぎ着けた。『空気人形』(09)の撮影監督マーク・リー・ピンビンのカメラワークが本作でも冴え、'60年代の東京、そしてワタナベと直子が再会する山奥の療養所のシーンを美しく撮り上げている。  1969年。高校で唯一の親友だったキズキを亡くしたワタナベ(松山ケンイチ)は、大学進学をきっかけに知り合いのいない東京で寮生活を始める。大学では学生運動が盛り上がっていたが、ワタナベは人との関わり合いを避けるように過ごしていた。そんな折、キズキの恋人だった直子(菊地凛子)と再会。心に空いた穴をお互いに埋め合うかのように2人は付き合い始める。直子の20歳の誕生日、ワナタベは直子の部屋でひと晩を過ごすことに。だが、その日以来、直子はワタナベの前から姿を消す。山奥の療養所に直子がいることを知ったワタナベは、彼女宛ての手紙を書き連ねる。直子のことを想う一方、ワタナベは大学の同級生・緑(水原希子)の明るさにも魅了され始めていた。  "喪失感"がテーマとされる村上作品だが、トラン監督も同じく喪失感を抱える映像作家。1962年にホーチミン市近郊の町で生まれたトラン監督はベトナム戦争の戦火から逃れるため、75年にフランスに亡命している。いわば、故郷の喪失者だ。『青いパパイヤの香り』(93)、『夏至』(00)と失われた故郷の思い出を度々モチーフにしている。バイオレンスに突き動かされる現代人の狂気を都市奇譚を交えて美しい映像の中で描いた『アイ・カム・ウィズ・レイン』(08)などは、近年の村上作品と符丁の合う作品だろう。
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直子とは対照的に生命力に溢れた緑。モデル
出身の水原希子がフレッシュな魅力を放っている。
 ベストセラー小説の映像化は、原作ファンの思い入れが強い分どうしても好き嫌いが分かれるが、少なくとも日本人監督ではなく、トラン監督を起用したことで、日本映画特有のウエットさを抑えることに成功している。『ノルウェイの森』が描く世界は美しくはあるが、懐かしく甘くノスタルジックな世界ではないのだ。また、日本の芸能界のことはまったく知らないトラン監督のために、ほぼ全キャストにわたってオーディションが行なわれたことも、本作のプラスポイントに挙げたい。主演の松山ケンイチもすんなり決まったわけではない。松山のオーディション用ビデオを見て最初は難色を示していたトラン監督だが、面談を通して松山の純朴さを感じ、ワタナベ役に選んでいる。原作の大ファンだった菊地凛子の場合は菊地からオーディションに名乗りを挙げ、ビデオ段階で完全な役づくりを行ない念願の直子役をもぎ取った。  ワタナベの同級生・緑役の水原希子も、オーディションの恩恵を受けたひとり。ファッション誌の人気モデルとして活躍する水原だが、演技はまったくの未経験。松山と菊地のパートなど、すでに撮影が始まっていたにも関わらず、緑役のオーディションは難航を極めていた。そんなとき、女性誌のグラビアで微笑む水原の写真をトラン監督が気に入り、急遽面談に。初めて会うトラン監督に対し「ハ~イ!」と挨拶するなど、物怖じしない性格で緑役をゲットしたラッキーガールだ。  「キネマ旬報」(12月下旬号)で水原希子をインタビューしたが、明るい緑と同様に水原自身も人見知りしない陽気な女の子だ。スクリーンの中で終始笑顔を振りまいている水原だが、実は彼女は複雑なアイデンティティーの持ち主。米国テキサス生まれで神戸育ちの彼女は12歳から雑誌「Seventeen」(集英社)などのモデルを務めてきたが、小学5年生のときに米国人の父親と韓国人の母親が離婚しており、水原は自分の居場所はどこなのかとかなり悩んだ時期があるという。ナイーブな問題を抱えながらも、積極的に仕事に打ち込むことで自分の居場所を切り開いていった水原を、トラン監督は「希子は緑に似ているよ」と抜擢に至った。  それにしても、タイトルとなっている"ノルウェイの森"とはどこにあるのだろうか。北欧のノルウェイに行っても、正しい意味での"ノルウェイの森"は存在しない。なぜなら、元々ビートルズが歌った「ノルウェーの森」の日本語訳が誤訳だからだ。原題の「Norwegian Wood」は、直訳すると"ノルウェイ産の木材"。ノルウェイ家具に囲まれた部屋に住むガールフレンドとの逢瀬をジョン・レノンが歌ったもの。ジョン・レノンの意味深な歌詞とジョージ・ハリソンがシタールを幻想的にかき鳴らしていることから、日本では「ノルウェーの木材」「ノルウェーの家具」と直されることなく、誤訳(意訳)である「ノルウェーの森」として一般化していった。だから、"ノルウェイの森"は世界中どこを探しても実在しない。村上春樹流にいえば、"ノルウェイの森"とは形而上学的存在なのだ。  そんな形而上学の"不思議な森"に、実に多くの人が迷い込む。学校や職場の人間関係につまずいた者、恋愛や結婚生活の破綻がきっかけで道から転げ落ちた者、家族との折り合いが悪くて家にいられなくなった者......。街から遠く離れた、深くて暗い森の中に知らず知らずに迷い込む。人間社会で傷つきながら生きていくより、この森の中で静かに暮らすほうがいいと森から出てこない若者たちが大勢いる。森から何とか脱出した者も、森に入る前と出た後では確実に変わってしまう。森を出る際に、大切な何かを失ってしまうのだ。  『ノルウェイの森』でも主人公ワタナベの周囲にいる人たちは、次々と森の中へ消えていく。大切な直子だけでも守ろうとワタナベは懸命に直子を森の外へと連れ出そうとするが、かえってワタナベは自分の無力さを思い知らされる。仲間たちは美しい姿のまま、森の中へと消えていった。それでもワタナベは生きていかなくてはいけない。希望もない、明るい未来をイメージすることもできない。それでもワタナベは森の外で生きていく。胸の奥に失った何かを抱えながら。  23年前には理解できなかった原作小説のラストが、今なら少しは分かる気がする。 (文=長野辰次) 『ノルウェイの森』 原作/村上春樹 脚本・監督/トラン・アン・ユン 撮影/マーク・リー・ピンビン 音楽/ジョニー・グリーンウッド 出演/松山ケンイチ、菊地凛子、水原希子、高良健吾、霧島れいか、初音映莉子、玉山鉄二 PG12 配給/東宝 12月11日(土)より日本公開 <http://www.norway-mori.com> 
ノルウェイの森 上 好き嫌いが分かれますが。 amazon_associate_logo.jpg
●深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】INDEX [第95回]実在した"奇妙な高額バイト"の顛末 心理サスペンス『エクスペリメント』 [第94回]"アル中"カメラマンの泣き笑い人生『酔いがさめたら、うちに帰ろう。』 [第93回]朝ドラと異なる映画『ゲゲゲの女房』ゴールなき"貧乏耐久"2人3脚走 [第92回]バラエティーでの実績は通用するか? テリー伊藤の初監督作『10億円稼ぐ』 [第91回] 不謹慎なる社会派エンタテイメント『裁判長!ここは懲役4年でどうすか』 [第90回]"世界のナベアツ"大阪府知事に就任! 政治コメディ『さらば愛しの大統領』 [第89回]自分の恋愛もプロデュースする女優、ドリュー・バリモア主演『遠距離恋愛』 [第88回]スタローンが立ち上げた"筋肉共和国"男たちの祭典『エクスペンダブルズ』 [第87回]元"おはガール"安藤聖の再起動ドラマ 就職氷河期を生きる『バカがウラヤマシイ』 [第86回]マイノリティーは"理想郷"を目指す。筒井文学の金字塔『七瀬ふたたび』 [第85回]清純派・佐藤寛子が美しく"変態"! 官能サスペンス『ヌードの夜──』 [第84回]死を意識して、ギラギラ輝く男たち! 三池節、大バクハツ『十三人の刺客』 [第83回] 女を食い物にする男どもは全員処刑! モダン社会の闇を暴く『ミレニアム』 [第82回] "企画AV女優"たちの青春残酷物語 性なる鎮魂劇『名前のない女たち』 [第81回]猫を見れば、人間社会が見えてくる! 世界の人気猫大集合『ネコを探して』 [第80回]原恵一監督の新作は辛口ファンタジー 退屈な"日常生活"を彩る『カラフル』 [第79回]米軍に実在した"超能力部隊"の真実!? ムー民、必見『ヤギと男と男と壁と』 [第78回]戦場から帰還した夫は"芋虫男"だった! ヤクザ監督の反戦映画『キャタピラー』 [第77回] 白ユリの花開くガールズの妖しい世界 H系ホラー『ジェニファーズ・ボディ』 [第76回] 爽やか系青春ゾンビ映画にホロリ......夏休みは『ゾンビランド』に集結せよ [第75回] "生きる"とは"見苦しい"ということ 藤沢周平の時代活劇『必死剣 鳥刺し』 [第74回]初恋の美少女は200歳の吸血鬼だった! 北欧産のホラー映画『ぼくのエリ』 [第73回] "三億円事件"の真相を解き明かす! 桜タブーに挑んだ『ロストクライム』 [第72回/特別編] 上映反対で揺れる問題作『ザ・コーヴ』"渦中の人"リック・オバリー氏の主張 [第71回] 女子にモテモテになる方法、教えます。軟派少年の実話物語『ソフトボーイ』 [第70回] 下町育ちの"北野少年"が見た現代社会 人間同士の食物連鎖『アウトレイジ』 [第69回] "リアルと虚構の狭間"を生きる男、アントニオ猪木初主演作『アカシア』 [第68回] ヒーローも神もいない現代社会の惨劇 井筒監督の問題作『ヒーローショー』 [第67回] アイドルが地獄で微笑む『戦闘少女』ギャグ×血しぶき×殺陣の特盛り丼! [第66回]アナーキーな"社歌"で生産性アップ! 満島ひかり大進撃『川の底からこんにちは』 [第65回]超ヘビー級なシリアス劇『プレシャス』"家族"という名の地獄から脱出せよ [第64回]乱れ咲く"悪の華"ゼブラクイーン! 仲里依紗が過激変身『ゼブラーマン2』 [第63回] オタク王が見出した"夢と現実"の接点 ティム・バートン監督作『アリス──』 [第62回] バッドテイストな感動作『第9地区』 アナタはエビ人間とお友達になれるか? [第61回]スコセッシ監督の犯罪アトラクション『シャッターアイランド』へようこそ! [第60回]宮崎あおいの"映画代表作"が誕生! 毒を呑んでも生き続けよ『ソラニン』 [第59回]"おっぱいアート"は世界を救えるか? 母乳戦士の記録『桃色のジャンヌ・ダルク』 [第58回]現代に甦った"梶原一騎ワールド"韓流ステゴロ映画『息もできない』 [第57回]命知らずの変態レポーター、中東へ! 史上最大のどっきり?『ブルーノ』 [第56回]仲里依紗がアニメから実写へと跳躍! 母娘2代の時空旅行『時をかける少女』 [第55回]ビグロー監督はキャメロンより硬派! 人間爆弾の恐怖『ハート・ロッカー』 [第54回] "空気を読む"若者の悲劇『パレード』楽しいルームシェア生活の行き先は? [第53回]社会の"生け贄"に選ばれた男の逃亡劇 堺雅人主演『ゴールデンスランバー』 [第52回]『男はつらいよ』の別エンディング? "寅さん"の最期を描く『おとうと』 [第51回]ひとり相撲なら無敵のチャンピオン! 童貞暴走劇『ボーイズ・オン・ザ・ラン』 [第50回]ヒース・レジャーが最後に見た夢の世界 理想と欲望が渦巻く『Dr.パルナサスの鏡』 [第49回]トニー・ジャーは本気なんジャー! CGなしの狂乱劇再び『マッハ!弐』 [第48回]全米"オシャレ番長"ズーイー、見参! 草食系に捧ぐ『(500日)のサマー』 [第47回]市川崑監督&水谷豊"幻の名作"『幸福』28年の歳月を経て、初のパッケージ化 [第46回]押井守監督、大いなる方向転換か? 黒木メイサ主演『アサルトガールズ』 [第45回]ドラッグ漬けの芸能関係者必見!"神の子"の復活を追う『マラドーナ』 [第44回] 暴走する"システム"が止まらない! マイケル・ムーア監督『キャピタリズム』 [第43回]"人は二度死ぬ"という独自の死生観『ガマの油』役所広司の監督ぶりは? [第42回]誰もが共感、あるあるコメディー! 2ちゃんねる発『ブラック会社』 [第41回]タラとブラピが組むと、こーなった!! 戦争奇談『イングロリアス・バスターズ』 [第40回]"涅槃の境地"のラストシーンに唖然! 引退を賭けた角川春樹監督『笑う警官』 [第39回]伝説の男・松田優作は今も生きている 20回忌ドキュメント『SOUL RED』 [第38回]海より深い"ドメスティック・ラブ"ポン・ジュノ監督『母なる証明』 [第37回]チャン・ツィイーが放つフェロモン爆撃 悪女注意報発令せり!『ホースメン』 [第36回]『ソウ』の監督が放つ激痛バイオレンス やりすぎベーコン!『狼の死刑宣告』 [第35回]"負け組人生"から抜け出したい!! 藤原竜也主演『カイジ 人生逆転ゲーム』 [第34回]2兆円ペット産業の"開かずの間"に迫る ドキュメンタリー『犬と猫と人間と』 [第33回]"女神降臨"ペ・ドゥナの裸体が神々しい 空っぽな心に響く都市の寓話『空気人形』 [第32回]電気仕掛けのパンティをはくヒロイン R15コメディ『男と女の不都合な真実』 [第31回]萩原健一、松方弘樹の助演陣が過剰すぎ! 小栗旬主演の時代活劇『TAJOMARU』 [第30回]松本人志監督・主演第2作『しんぼる』 閉塞状況の中で踊り続ける男の悲喜劇 [第29回]シビアな現実を商品化してしまう才女、西原理恵子の自叙伝『女の子ものがたり』 [第28回]"おねマス"のマッコイ斉藤プレゼンツ 不謹慎さが爆笑を呼ぶ『上島ジェーン』 [第27回]究極料理を超えた"極地料理"に舌鼓! 納涼&グルメ映画『南極料理人』 [第26回]ハチは"失われた少年時代"のアイコン  ハリウッド版『HACHI』に涙腺崩壊! [第25回]白熱! 女同士のゴツゴツエゴバトル 金子修介監督の歌曲劇『プライド』 [第24回]悪意と善意が反転する"仮想空間"細田守監督『サマーウォーズ』 [第23回]沖縄に"精霊が暮らす楽園"があった! 中江裕司監督『真夏の夜の夢』 [第22回]"最強のライブバンド"の底力発揮! ストーンズ『シャイン・ア・ライト』 [第21回]身長15mの"巨大娘"に抱かれたい! 3Dアニメ『モンスターvsエイリアン』 [第20回]ウディ・アレンのヨハンソンいじりが冴え渡る!『それでも恋するバルセロナ』 [第19回]ケイト姐さんが"DTハンター"に! オスカー受賞の官能作『愛を読むひと』 [第18回]1万枚の段ボールで建てた"夢の砦"男のロマンここにあり『築城せよ!』 [第17回]地獄から甦った男のセミドキュメント ミッキー・ローク『レスラー』 [第16回]人生がちょっぴり楽しくなる特効薬 三木聡"脱力"劇場『インスタント沼』 [第15回]"裁判員制度"が始まる今こそ注目 死刑執行を克明に再現した『休暇』 [第14回]生傷美少女の危険な足技に痺れたい! タイ発『チョコレート・ファイター』 [第13回]風俗嬢を狙う快楽殺人鬼の恐怖! 極限の韓流映画『チェイサー』 [第12回]お姫様のハートを盗んだ男の悲哀 紀里谷監督の歴史奇談『GOEMON』 [第11回]美人女優は"下ネタ"でこそ輝く! ファレリー兄弟『ライラにお手あげ』 [第10回]ジャッキー・チェンの"暗黒面"? 中国で上映禁止『新宿インシデント』 [第9回]胸の谷間に"桃源郷"を見た! 綾瀬はるか『おっぱいバレー』 [第8回]"都市伝説"は映画と結びつく 白石晃士監督『オカルト』『テケテケ』 [第7回]少女たちの壮絶サバイバル!楳図かずおワールド『赤んぼ少女』 [第6回]派遣の"叫び"がこだまする現代版蟹工船『遭難フリーター』 [第5回]三池崇史監督『ヤッターマン』で深田恭子が"倒錯美"の世界へ [第4回]フランス、中国、日本......世界各国のタブーを暴いた劇映画続々 [第3回]水野晴郎の遺作『ギララの逆襲』岡山弁で語った最後の台詞は...... [第2回]『チェンジリング』そしてイーストウッドは"映画の神様"となった [第1回]堤幸彦版『20世紀少年』に漂うフェイクならではの哀愁と美学