日・仏アヴァンギャルド映画監督2人に映画オタクのミュージシャン、J・オルークが迫る

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(左から)ジム・オルーク、足立正生、フィリップ・グランドリュー
 1960年代に故・若松孝二とともに鮮烈な映画を次々と世に生み出し、若手芸術家の筆頭として注目されるも、やがて革命に身を投じた足立正生を、フランスの前衛映像作家フィリップ・グランドリューが撮影した異色のドキュメンタリー映画『美が私たちの決断をいっそう強めたのだろう/足立正生』が12月1日より公開中である。  タイトルは、2007年に足立正生が35年ぶりに監督した『幽閉者 テロリスト』の中で、主人公Mが軍事訓練で見た美しい高原について、「その美しさのせいで俺たちの決断も一段と強まったのかもしれない」と語るセリフから取られている。学生時代から足立作品の大ファンで、2006年に日本に移住してから足立氏と親交もある米国人ミュージシャンのジム・オルークが、2人の前衛映画監督にインタビューした。 足立正生 2人は会うの初めて? フィリップ・グランドリュー はい。 足立 ほんとに!? そうか。ジムは天才でクレイジーなやつだよ。アメリカ人であってもアメリカ人じゃない。 ジム・オルーク アイルランド人です。 グランドリュー アイルランド人で、ミュージシャンなのですね。 オルーク 『幽閉者 テロリスト』の音楽にも参加しました。 足立 そう、メインのメロディ部分(「りんごのテーマ」)を作ってくれて。彼の音楽、とても良いからぜひ聴いてみて。 グランドリュー ええ、必ず。 足立 (ジムに向かって)今日は2人でタッグを組んで、フィリップにいろいろ質問して、答えが充分じゃなければとっちめよう。 一同 (笑) オルーク グランドリュー監督は、足立さんを最初どのように知ったのですか? グランドリュー 4年前(08年)に、フランス大使館の主催で、僕のレトロスペクティブを渋谷アップリンクでやってくれたんです。その時に初めて足立さんと会いました。 足立 彼の映画を観て、僕はたちどころに彼のファンになった。だからそもそも僕たちの関係は、監督とファンという立場でスタートしたわけ。
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『美が私たちの決断をいっそう強めたのだろう』より
グランドリュー パリに戻って1~2年後、ある晩ニコル・ブルネーズ(前衛映画評論家・研究者)との食事の席で、闘う映画監督のシリーズを作る話になりました。政治的だけでなく美的にも闘っている映画監督たちです。その時、すぐに足立さんの名前が浮かんだ。お金が集まらなかったので、一人で日本へ行ってシャール・ラムロ(助監督兼通訳)と2人で4日間撮影して、2~3週間で編集しました。撮影で足立さんと一緒にいたときは、昔からの友人のような、近くにいるのがごく自然な気がしました。お互いのことをよく知らないのに、撮影はとても楽だった。ある意味、映画の中に2人でドライブしていったようなかんじでした。 オルーク あなたの短編やドキュメンタリーはまだ観ることができていないのですが、長編作品を観ると確かに足立さんと交わる部分があると思います。足立さんの作品が語られる際に、政治的な要素が主に着目されますが、もちろんそれも大事だけれど、僕が興味を抱いたのは映画監督としての足立さんでした。高校の時、アモス・ヴォーゲル(※1921-2012。多くの前衛映画作家をアメリカに知らしめた米国人シネアスト)の『破壊芸術としての映画(Film As A Subversive Art)』(1974年刊)という本で、足立さんの映画のスチールを見たのが最初です。 足立 彼は悪ガキだったから、きっと図書館で変なものを物色していたときに見つけたんだろう。 オルーク (笑)。その写真に何か心をつかまれるものがあったんです。それで足立さんが若松プロに入ってからの監督作と、脚本を担当された若松監督作品も観ました。足立さんの作品の映像は、他のどの日本人監督の映画よりも惹かれる何かがあった。日本語はまったくわからなかったけど、言語の壁を越えて映像の強さは僕に届いてきました。グランドリュー監督には、足立さんの映画はどのように映りましたか? グランドリュー 足立さんと僕が近いと感じる一番大きな点は、身体との関係です。どうやって身体を撮って、フレームして編集するか。物語などではなく感覚の問題で、それはこの映画でも足立さんが語っています。感覚のレベルでわれわれはとても近いと思うのです。僕は『鎖陰』(1963年)が足立さんの作品の中でも特に好きですが、足立さんの映画は完全なる彼の世界です。ベイルマンの世界、フェリーニの世界のように、力のある映画監督は自身の世界を創り出します。物語や登場人物の観点からではなく、光、身体、音などすべての側面において、完全な世界であるべきです。だから足立さんの映画に魅せられるのだと思います。
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『美が私たちの決断をいっそう強めたのだろう』より
オルーク 冒頭のブランコのシーンで、声も姿も確かにそこにはっきりあるのに、同時にとても幻影的なのが印象深かったです。その後の新宿駅のシーンは、ちなみに僕もその近くに住んでいるのですが、『新宿泥棒日記』(大島渚監督/田村孟、佐々木守、足立正生脚本/1969年)の最後のシーンと同じ場所ですね。あのシンプルなショットの中に、ある意味、足立さんのすべてが内包されているようでした。もちろん、映画の中に思考や洞察や議論が出てきてはいますが、映画全体が触覚的ですね。ほとんどの映画作家は、思考の流れに沿って、それを映像で表現しようとします。思考そのものになろうとするのではなく、表現しようとしてしまう。 グランドリュー それは映画の核心をつく論題でもあります。映画は、ある特定の瞬間において、自分自身といる手段でもあるわけです。たとえば、カメラで今、ここを撮るとします。さまざまな感情のバリエーションが存在し、可能性が果てしなくある。カメラでできる素晴らしいことというのは、すべては捉えられないけれど、一つの世界に、プロセスの中に入っていけることです。あのブランコのシーンの前に、足立さんの家の近くのお寺で撮影していました。その時まだ僕は、足立さんと一緒にいることの中に、自分の周囲の中に入っていくことができずにいました。足立さんに「撮影は終わりです」と言ったあと、奥さんと娘さんがやってきたので、一緒に小さな公園に行った。するとたちまちすべてが変わったんです。陽が沈みはじめて、光の加減が変わりつつあり、街に音楽(※17時の無線チャイム「夕焼け小焼け」)が流れてきて、足立さんと娘さんがブランコを漕いでいる、その中に私は入っていったのです。そして足立さんと一緒にいることも感じられた。足立さんは僕に、「どうしたらいいか、何を撮りたいか」など、いっさい訊かなかった。言葉は何も交わしませんでした。すなわち、映画を撮ることとは、自分がその時その場に、共にあることなのです。足立さんがどう感じていたかはわかりませんが……。 足立 ジョルジュ・バタイユはある時、通りを歩いていて意識を失った。すると目の前に、過去に自分が書いた哲学の書物や、美学的思想がすべて現れた。それと同じように、フィリップは僕がブランコのところで歌っているのを聞いて、とてもハッピーになったんだよ。とにかく、僕はシネマテークでの上映(※2010年10月~2011年2月、パリのシネマテーク・フランセーズでニコル・ブルネーズにより企画された足立正生の特集上映)には行けなかった。だから、フィリップとスカイプで話した。彼が「どんなドキュメンタリーにしましょうか」と訊くので、「そんなことは考えずに、ただ飛行機に乗ったときからデジタルカメラを頭にくくりつけてきて、帰りの飛行機がパリに着いたら外せばいい」と伝えた。でも彼には考えがあって、事前に何の会話もせず、いきなり僕の鼻毛と耳毛と眉毛と、飲んでる姿とタバコ吸ってる姿を撮りはじめるんだよ。 一同 (笑)
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『美が私たちの決断をいっそう強めたのだろう』より
足立 そのあと映画論や美学についてのインタビューも一応してくるんだけど、本気でやってないなと感じる。でも、だんだん彼はやりたいことをやろうとしているんだって、わかってくるわけ。僕の映画には出ていいけど、知らない人の映画には出ない、と言っていた女房と娘が、ある日の撮影後に来てブランコに乗っていたら、フィリップの態度と目つきが変わって、「いけた!」って言うんだよね。翌朝「もう一回撮りたい」と電話が来た。「なんだ?」って聞いたら、今度は独り言を言えと。「俺、人生で一度も独り言を言ったことはないから断る」って言ったら、それなら吸う息、吐く息、いびきでもいいって。そう言って本人が眠りだすんだよ。その寝顔を見ながら、昨日「いけた!」って言ったその先をやるんだなって分かる。つまり、もっと僕自身に迫ったやり方をするぞってこと。今まで撮ったものをいったん全部バラバラにして、存在との関わりで自分が得た感性で編集したいってことが伝わってくる。それで寝顔を見ながら、僕もいろいろ言い出すわけ、人生初めての独り言を(笑)。案の定、彼が自分の感性で「これを撮ろう」と思って撮った映像と独り言を、自分のコメントできちっとまとめている。あそこまで裸にされたことがないから、恥ずかしいんだよね。 オルーク 特に独り言のところが? 足立 そうそう。だけどしょうがないじゃん。それはもう彼の感性に全部預けたわけだから。リスペクトできてるから預けたんだし。想像していたよりも、少し面白くできていてよかったと思ってる(笑)。 グランドリュー 私は寝ていませんでしたよ。眼は閉じていたけど、寝てはいませんでした(笑)。 足立 だから僕は、彼の陰謀に引っかかったんだよ(笑)。 オルーク 自分が裸になって恥ずかしかったと言いましたが、私から見ると、ご自分のどの映画でも裸ですよ。 足立 それは結果としてね。自分の映画は結果としてそうなってるだけで。フィリップと僕がお互い裸になるならいいけど、僕だけ裸にされた。でも初めての貴重な体験だったよ。 グランドリュー 僕にとっては、足立さんが受け入れてくれた、その受け入れ方が美しかったんです。自分の思考に入り込んで、あちらに行ったりこちらに行ったりして、不思議につながっていくのです。 オルーク 確かにそのとおりで、この映画を観ていて興味深かったのは、全編を通じて足立さんが2人いるような感覚におちいったことです。弁証法的というか、しゃべっている足立さんと、それを見ている足立さんが、あちこちにいる感覚。考え方と感じ方が、絶え間なく動いている、その様を捉えているのが、この映画でとても印象的な点でした。
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(左から)フィリップ・グランドリュー、足立正生、ジム・オルーク
■『美が私たちの決断をいっそう強めたのだろう/足立正生』 政治的な前衛映画監督たちを被写体にしたドキュメンタリー・シリーズの第一作となる本作は、グランドリュー監督が2008年の初来日時に足立正生と対面し、意気投合したことが制作のきっかけとなった。このシリーズは、かつてフランスで放送されていたアンドレ・S・ラバルトとジャニーヌ・バザンによる伝説的TVドキュメンタリー『われらの時代のシネアストたち』へのオマージュでもある。 シリーズ企画:ニコル・ブルネーズ、フィリップ・グランドリュー 監督・撮影・編集:フィリップ・グランドリュー 助監督・通訳:シャール・ラムロ 音楽:フェルディナンド・グランドリュー プロデューサー:アニック・ルモニエ(Epileptic) 2011年/フランス/74分/HD/カラー、モノクロ/16:9/ステレオ 公式サイト:http://www.uplink.co.jp/bigawatashitachi/ 【関連企画】 『美が私たちの決断をいっそう強めたのだろう/足立正生』公開記念「特集/足立正生」 渋谷アップリンクにて開催 12月5日(水)18:30『女学生ゲリラ』 ※上映後トークショー トークゲスト:足立正生、東良美季(ライター) 12月7日(金)18:30『性遊戯』 12月9日(日)18:30『略称・連続射殺魔』 12月11日(火)18:30『女学生ゲリラ』 12月12日(水)18:30『性遊戯』 12月14日(金)18:30『重信房子、メイと足立正生のアナバシス そしてイメージのない27年間』 12月15日(土)20:30『略称・連続射殺魔』 詳細:http://www.uplink.co.jp/movie/2012/4838 ●フィリップ・グランドリュー 1954年生まれ。ベルギー国立高等視覚芸術放送技術院(INSAS)で映画を学ぶ。1976年に初のビデオ・インスタレーションを美術館で展示。1980年代からフランス国立視聴覚研究所(INA)と共同で新たな映像様式を創出しつづけ、作品はビデオアート、フィルムエッセイ、ドキュメンタリー、フィクションなど多岐分野にわたる。2007年にはマリリン・マンソンの依頼で、アルバム『Eat Me, Drink Me』収録曲「Putting Holes in Happiness」のPVを制作。2008年、東京とロンドンで大規模な特集上映が開催された。2012年度は米国ハーバード大学で、フィクション映画部門客員教授を務める。 ●足立正生 1939年生まれ。日本大学芸術学部映画学科在学中に自主制作した『鎖陰』で一躍脚光を浴びる。大学中退後、若松孝二の独立プロダクションに加わり、性と革命を主題にした前衛的なピンク映画の脚本を量産する。監督としても1966年に『堕胎』で商業デビュー。1971年、若松孝二とパレスチナへ渡り、『赤軍-PFLP・世界戦争宣言』を撮影。1974年、日本を離れ、パレスチナ解放闘争に身を投じる。1997年にレバノンで逮捕抑留され、3年の禁固刑ののち日本へ強制送還。2006年、赤軍メンバーの岡本公三をモデルにした『幽閉者 テロリスト』を発表した。 ●ジム・オルーク ミュージシャン。1969年、シカゴのアイルランド系の両親の元に生まれる。10代後半より即興演奏を始め、現代音楽とポスト・ ロックの橋渡し的な存在となる。2004年、ウィルコの『ゴースト・イズ・ボーン』でグラミー賞オルタナティヴ・ミュージック・アルバム部門最優秀プロデューサー受賞。1999年~2005年、ソニック・ユースのメンバーとして活動。また、V・ヘルツォークやO・アサイヤスといった映画監督の作品で音楽を担当。2006年より東京在住。

暴力とエロスとフェティシズムが炸裂『ドラゴン・タトゥーの女』

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『ドラゴン・タトゥーの女』
 今週紹介する映画は、スリリングな展開に思わず引き込まれて時が経つのを忘れてしまう、ハリウッド傑作サスペンスの2作品だ。  2月10日に封切られる『ドラゴン・タトゥーの女』は、スウェーデン発の世界的ベストセラー・ミステリーを映画化した『ミレニアム ドラゴン・タトゥーの女』(2009)のハリウッドリメイク。オピニオン誌『ミレニアム』のジャーナリスト・ミカエルは、富豪一族の長・ヘンリックから40年前に少女ハリエットが失踪した事件の真相究明を依頼される。調査に乗り出したミカエルは、パンクファッションの下にドラゴンのタトゥーを忍ばせた天才女性ハッカーのリスベットと共に、一族の巨大な闇に迫っていく。  監督は『セブン』(1995)『ファイト・クラブ』(99)のデビッド・フィンチャー。ミカエル役のダニエル・クレイグは期待通りの安定した演技で存在感を示すが、さらに出色なのが、『ソーシャル・ネットワーク』(10)に続きフィンチャー作品のヒロインを演じたルーニー・マーラ。前作の清楚な美人女子大生役から一転、モヒカンに眉脱色に鼻ピアスという超過激な変身ぶりに加え、レイプやセックスの場面ではフルヌードも披露。まさに渾身の演技は、先月発表された第84回アカデミー賞主演女優部門ノミネートも当然。本作はさらに撮影賞、編集賞、録音賞、音響編集賞と計5部門にノミネートされている。作品冒頭では、音楽ビデオ畑出身のフィンチャー監督らしい、暴力・エロス・フェティシズムのイメージが炸裂する官能的なタイトルロールにもぜひ注目してほしい。  続いては、2月17日公開の近未来SFアクションサスペンス『TIME タイム』。科学技術の進歩によりすべての人間の成長が25歳で止まり、その先は腕に埋め込まれた体内時計が示す余命時間だけ生きられる時代。時間が唯一の"通貨"になり、貧困層は余命が限られる一方、富裕層はほぼ永遠に 生きながらえる。貧困街で暮らす青年ウィル(ジャスティン・ティンバーレイク)は、ある裕福な男を助けたことで100年の時間を譲り受け、富裕層の居住区に潜入。大富豪の娘シルビア(アマンダ・セイフライド)と出会い、時間監視局員に追跡されながらも、時間に支配された世界に立ち向かおうとする。  『ガタカ』(97)『トゥルーマン・ショー』(98)のアンドリュー・ニコル監督が、SF的な設定とサスペンスフルな筋立てに哲学的なテーマを盛り込む独特の作風を今回も発揮。ことわざの「時は金なり」を文字通りに受け止めて映像化したらこうなった、というだけでなく、「限られた時間の人生にはどんな意義があるのだろう」「そもそもお金ってなんだろう。通貨ってなんだろう」といった問いを観客に投げかける。とはいえ、難しいことを考えなくても、気軽にアクションサスペンスを楽しむのももちろん自由。キリアン・マーフィ、オリビア・ワイルドといった助演陣もそれぞれ魅力的で、演技のアンサンブルも合わせて味わいたい。 (文=映画.com編集スタッフ・高森郁哉) 『ドラゴン・タトゥーの女』作品情報 <http://eiga.com/movie/56065/> 『TIME タイム』作品情報 <http://eiga.com/movie/57415/>
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【関連記事】 ・スウェーデン版とは一味違う? フィンチャー監督『ドラゴン・タトゥーの女』女を食い物にする男どもは全員処刑! モダン社会の闇を暴く『ミレニアム』超異質ゾンビ映画『ライフ・イズ・デッド』主演のヒガリノちゃんに急接近!

暴力とエロスとフェティシズムが炸裂『ドラゴン・タトゥーの女』

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 今週紹介する映画は、スリリングな展開に思わず引き込まれて時が経つのを忘れてしまう、ハリウッド傑作サスペンスの2作品だ。  2月10日に封切られる『ドラゴン・タトゥーの女』は、スウェーデン発の世界的ベストセラー・ミステリーを映画化した『ミレニアム ドラゴン・タトゥーの女』(2009)のハリウッドリメイク。オピニオン誌『ミレニアム』のジャーナリスト・ミカエルは、富豪一族の長・ヘンリックから40年前に少女ハリエットが失踪した事件の真相究明を依頼される。調査に乗り出したミカエルは、パンクファッションの下にドラゴンのタトゥーを忍ばせた天才女性ハッカーのリスベットと共に、一族の巨大な闇に迫っていく。  監督は『セブン』(1995)『ファイト・クラブ』(99)のデビッド・フィンチャー。ミカエル役のダニエル・クレイグは期待通りの安定した演技で存在感を示すが、さらに出色なのが、『ソーシャル・ネットワーク』(10)に続きフィンチャー作品のヒロインを演じたルーニー・マーラ。前作の清楚な美人女子大生役から一転、モヒカンに眉脱色に鼻ピアスという超過激な変身ぶりに加え、レイプやセックスの場面ではフルヌードも披露。まさに渾身の演技は、先月発表された第84回アカデミー賞主演女優部門ノミネートも当然。本作はさらに撮影賞、編集賞、録音賞、音響編集賞と計5部門にノミネートされている。作品冒頭では、音楽ビデオ畑出身のフィンチャー監督らしい、暴力・エロス・フェティシズムのイメージが炸裂する官能的なタイトルロールにもぜひ注目してほしい。  続いては、2月17日公開の近未来SFアクションサスペンス『TIME タイム』。科学技術の進歩によりすべての人間の成長が25歳で止まり、その先は腕に埋め込まれた体内時計が示す余命時間だけ生きられる時代。時間が唯一の"通貨"になり、貧困層は余命が限られる一方、富裕層はほぼ永遠に 生きながらえる。貧困街で暮らす青年ウィル(ジャスティン・ティンバーレイク)は、ある裕福な男を助けたことで100年の時間を譲り受け、富裕層の居住区に潜入。大富豪の娘シルビア(アマンダ・セイフライド)と出会い、時間監視局員に追跡されながらも、時間に支配された世界に立ち向かおうとする。  『ガタカ』(97)『トゥルーマン・ショー』(98)のアンドリュー・ニコル監督が、SF的な設定とサスペンスフルな筋立てに哲学的なテーマを盛り込む独特の作風を今回も発揮。ことわざの「時は金なり」を文字通りに受け止めて映像化したらこうなった、というだけでなく、「限られた時間の人生にはどんな意義があるのだろう」「そもそもお金ってなんだろう。通貨ってなんだろう」といった問いを観客に投げかける。とはいえ、難しいことを考えなくても、気軽にアクションサスペンスを楽しむのももちろん自由。キリアン・マーフィ、オリビア・ワイルドといった助演陣もそれぞれ魅力的で、演技のアンサンブルも合わせて味わいたい。 (文=映画.com編集スタッフ・高森郁哉) 『ドラゴン・タトゥーの女』作品情報 <http://eiga.com/movie/56065/> 『TIME タイム』作品情報 <http://eiga.com/movie/57415/>
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ジャック・スパロウが帰ってきた! 『パイレーツ・オブ・カリビアン 生命の泉』

 自由気ままなお調子者だが、宝探しの冒険を何より愛し、列強の海軍から海の怪物までどんな敵にも決して負けない海賊、キャプテン・ジャック・スパロウが帰ってきた! ジョニー・デップ主演の人気シリーズ第4弾、『パイレーツ・オブ・カリビアン 生命(いのち)の泉』が5月20日に日米同時公開となる。  前作『パイレーツ・オブ・カリビアン ワールド・エンド』(2007)のラストで示唆された、永遠の命をもたらすという伝説の「生命(いのち)の泉」。その場所を記した地図を持つジャックは、かつて恋仲だった女海賊アンジェリカと再会する。彼女もまた、父親であり黒魔術を操る史上最恐の海賊"黒ひげ"とともに生命の泉を目指していた。  一方、黒ひげに復讐心を抱く元海賊のバルボッサは、英国王に取り入り今では海軍将校。バルボッサ率いる英国海軍の船と、英国王が対抗心を燃やすスペイン海軍もそれぞれ、生命の泉へとかじを切る。泉の魔力を得るために必要とされる聖杯と「人魚の涙」を手に入れ、伝説の泉にたどり着くのは果たして誰か。ジャックとアンジェリカは、波乱に満ちた冒険の旅を共にする中で再び恋に落ちるのか?  過去のシリーズ3作を監督したゴア・バービンスキーからメガホンを引き継いだのは、映画監督デビュー作『シカゴ』(03)でアカデミー賞6部門を受賞したロブ・マーシャル。旧3作ではCGを多用したド派手な海上バトルや異形のモンスターなどケレン味あふれる演出が目立ったが、今作では主要キャラたちの愛憎入り交じる関係を丁寧に描くドラマと、決闘や脱出劇などで身体動作をダイナミックに見せるリアルなアクションが核となっており、大人向けの冒険活劇へと成長した印象だ。シリーズ初となる3D映像も、立体感の強調よりも、自然な没入感を重視した作りになっている。  オーランド・ブルームとともに同シリーズを卒業したキーラ・ナイトレイに代わり、新ヒロインのアンジェリカを演じるのはペネロペ・クルス。ジャックとの真剣勝負をはじめ、男勝りの腕と激しい気性の中にも豊かな愛情を秘めた女海賊役を熱演している。シリーズ常連のバルボッサを演じるジェフリー・ラッシュ(『英国王のスピーチ』公開中)、黒ひげ役のイアン・マクシェーンらベテラン俳優の渋い存在感も味わい深い。  若い宣教師と禁断の恋に落ちる人魚シレーナ役のアストリッド・ベルジェ=フリスベは、カタルーニャ人とフランス系アメリカ人のハーフというエキゾチックな顔立ちで個性を放つ。ただ、海賊と人魚たちの遭遇シーンで最初に登場する人魚タマラ役、ジェマ・ワードの方が日本ではなじみ深いだろう。"ドール顔スーパーモデル"として世界的に人気を集め、日本でも化粧品のコマーシャルに起用された。ジェマのような超絶美女に誘惑されたら、海賊が心を奪われるのも仕方ないというもの。出演シーンこそ短いが、今後さらなる大役を射止めてその魅力をたっぷり披露してもらいたいものだ。 (文=eiga.com編集スタッフ・高森郁哉) 『パイレーツ・オブ・カリビアン 生命(いのち)の泉』作品情報 <http://eiga.com/movie/54518/>
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上半期公開作ベストワン!? ポートマンが華麗に舞う『ブラック・スワン』

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(c)2010 Twentieth Century Fox
 今週は、ハリウッドのスター女優の輝きを銀幕で堪能できる珠玉の映画2作品を紹介したい。まず1本目の『ブラック・スワン』(公開中、R15+)は、ナタリー・ポートマンが第83回米アカデミー賞で主演女優賞を獲得し、早くも今年上半期公開作ベストワンの声さえ聞かれる超話題作だ。  ニューヨークのバレエ団に所属するニナ(ポートマン)は、元ダンサーの母とアパートで暮らしながら、バレエ一筋で遊びや恋愛とは無縁の人生を送っていた。そんなニナに、長年の念願だった「白鳥の湖」の主役を踊るチャンスが訪れる。だが、演出家の高い要求とハードな練習、奔放な新人バレリーナ・リリー(ミラ・クニス)へのライバル意識と疑念、過干渉な母親との確執が重なって大きなプレッシャーに。やがてニナは、現実と妄想の境界を見失い、心の闇にとらわれていく。  少女時代にバレエを学び、撮影前の10カ月間に連日5時間の猛特訓をこなしたポートマンは、見事な舞踊シーンを披露。痛々しいほどの緊張感に満ちた稽古場面から、悪魔が乗り移ったかのような鬼気迫る「黒鳥」の舞まで、表情と身体表現が一体となった鮮烈なパフォーマンスはもはや芸術の域。端正な顔立ちが不安や苦悩に揺れ動くさまや、いくつかの官能的なシーンも含め、全身全霊で打ち込んだポートマンの存在感は見る者の脳裏に忘れ難い残像を残すことだろう。  監督のダーレン・アロノフスキーは、『レクイエム・フォー・ドリーム』(2000)で薬物依存により精神のバランスを失う人々を、『レスラー』(08)で肉体を唯一の武器として闘い自らを破滅へ追い込む男を描いてきた。同監督が過去に扱ってきたこれらのテーマの集大成という面もある今作は、単に美しいだけのバレエ映画では決してない。CGを駆使したホラー風味の演出も印象的で、そうした部分も含めじっくり味わっていただきたい。  2本目は趣を変えて、アマンダ・セイフライド主演の明るくさわやかな恋愛ドラマ『ジュリエットからの手紙』(5月14日公開)。結婚を控えた記者志望のアメリカ人女性ソフィは、シェイクスピア作「ロミオとジュリエット」の舞台となったイタリア・ヴェローナを訪問し、ジュリエットに恋愛アドバイスを求める手紙に返信するボランティアグループと出会う。そこでソフィが偶然見つけた50年前の手紙に返信すると、手紙の主の老婦人クレアと孫のチャーリーがやって来る。ソフィとチャーリーは、クレアの初恋の男性を探す旅に同行するのだが......。  メリル・ストリープと共演した『マンマ・ミーア!』(08)の大ヒットで若手スターの筆頭格に躍り出たセイフライドは、ほかにも出演作の『クロエ』(5月28日公開)、『赤ずきん』(6月10日公開)が相次いで封切られるなど、まさに今が旬の女優。金髪に小顔、コンパクトにまとまった愛らしい目鼻立ちの彼女は、恋愛と仕事に悩みながらもポジティブに行動するソフィ役にぴったり。モデル出身でスタイル抜群、健康的な魅力を放つたたずまいが、イタリアの古風な街や美しい農村部の風景によく映える。  クレアが昔の恋人を見つけられるどうか、若い二人の恋の行方は、といった物語への興味もさることながら、手紙と言葉の持つ「力」を再認識させてくれる本作は、メール世代の若者には新鮮に、それ以上の世代には懐かしく受け止められるはず。優しさと切なさ、示唆と教訓に富むハートウォーミングな感動作だ。 (文=eiga.com編集スタッフ・高森郁哉) 「ブラック・スワン」作品情報 <http://eiga.com/movie/55751/> 「ジュリエットからの手紙」作品情報 <http://eiga.com/movie/55523/>
マンマ・ミーア! ミーア! amazon_associate_logo.jpg
【関連記事】 ナタリー・ポートマン"第1章"の終幕 虚実が攻め合う『ブラック・スワン』 "セカイ"を旅立った少女の地底探検記 新海誠監督の新作『星を追う子ども』 ヒット間違いなし!? 2011年夏のイチオシ映画

ナタリー・ポートマン"第1章"の終幕 虚実が攻め合う『ブラック・スワン』

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バレリーナのニナ(ナタリー・ポートマン)は、苦闘の末に黒鳥役を
自分のものにする。ダークサイドに引込まれたアミダラ姫みたい。
(c)2010Twentieth Century Fox
 13歳のときに『レオン』(94)で衝撃的デビューを飾ったナタリー・ポートマン。『スターウォーズ』エピソード1~3(99~05)ではアミダラ姫を演じ、知名度は抜群。ハーバード大学を卒業した知性に加え、『Vフォー・ヴェンデッタ』(06)ではスキンヘッドになり、『クローサー』(04)ではストリッパー役、『宮廷画家ゴヤは見た』(06)では廃人役に果敢に挑むなど、与えられた役に情熱を注ぎ自分のものにする根性もある。ただし、女優としてあまりに生真面目な性格が災いして、どの作品でも平均点以上の高評価を受けるものの、デビュー作を上回る代表作を残すことができずにいた。天才少女として世に出てしまった優等生のジレンマってヤツですな。そんな格好の素材を手に入れたのが、ダーレン・アロノフスキー監督。『レスラー』(08)で"過去の人"ミッキー・ロークを再生してみせたアロノフスキー監督が、ナタリー・ポートマンに対して同じようなセミ・ドキュメンタリーの手法を再び使ったのが『ブラック・スワン』。完全なる"2匹目のドジョウ"狙いだが、これが見事に成功した。20代の終わりを迎えたナタリー・ポートマンにアカデミー賞主演女優賞をもたらしている。  10カ月掛けて毎日5時間のトレーニングに励んだというナタリー・ポートマンが今回演じたのは、NYの人気バレエ団に所属するバレリーナ・ニナ役。元バレリーナである母親と小さな頃から二人三脚で稽古を続け、実力は充分にあるが、ブレイクすることができずにいる。長年、バレエ団の看板を背負ってきたプリマのベス(ウィノナ・ライダー)が引退することになり、次回公演「白鳥の湖」は若手から新しいプリマが抜擢されることになった。ルックスもよく、キャリアもあるニナはプリマの有力候補のひとりだ。しかし、演出家のルロイ(ヴァンサン・カッセル)はニナに冷たく言い放つ。「キミは白鳥役は完璧に演じることができる。だが、黒鳥役を表現することができない」と。小さな頃から母ひとり娘ひとりで練習漬けの生活を送ってきたニナには、女性としての色気、人間的な面白みが欠けていたのだ。あまりに図星な指摘を受け、ナタリー・ポートマン演じるニナは動揺を隠せない。
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ルロイ(ヴァンサン・カッセル)はセクハラ
野郎か、それとも鬼演出家なのか。ニナの周囲
にいる人間それぞれの二面性が描かれている。
 バレエの人気演目である「白鳥の湖」は、ひとりのバレリーナが清純なお姫さまの化身である白鳥と、魔性の化身である黒鳥の2役を演じ分けるのが見どころ。いわば聖女と娼婦という真逆の役を、同じ舞台で演じ分けなくてはならない難しい内容なのだ。男性経験の少ないニナに対し、演出家のルロイは「オレが大人の女への手ほどきをしてやろう」とエロい目つき&手つきでセクハラ攻撃を仕掛けてくる。黒鳥パートをセクシーかつ奔放に演じる新人・リリー(ミラ・クニス)もライバルとして現われる。辛うじてニナはプリマに選ばれるものの、今度は想像以上のプレッシャーに押し潰されそうになる。白い肌にジンマシンが浮かび、ニナは無意識のうちに掻きむしってしまい、日を追うごとに血まみれになっていく。さらには自分のドッペルゲンガーと出会うなど、どんどん妄想の世界に引きずり込まれてしまう。  ニナがこっそりルージュを盗むほど、憧れ続けた旧プリマのベスを演じたのは、ウィノナ・ライダー。『ビートルジュース』(88)、『シザーハンズ』(90)などに出演し、10代の頃は絶大な人気を誇ったアイドル女優だった。『シザーハンズ』で恋人役を演じたジョニー・デップと離別してから、次第に人気が下降していき、30歳になって万引き事件を起こす転落人生を味わっている。本作では身も心もルロイに捧げ、プリマを務めてきたものの、浮気性のルロイと破局してからは一気に下降人生をたどってしまう"終わった女"を生々しく演じている。  一時期は人気を博したものの、私生活のつまずきから身を崩してしまう旧プリマ役にウィノナ・ライダー、優等生イメージの殻をなかなか破れずにもがく新プリマ役にナタリー・ポートマン。アロノフスキー監督は露骨なまでに新旧人気女優のパブリックイメージを、そのまんま劇中に持ち込んでいる。物語という虚構の中に現実を織り交ぜる。さらにナタリー・ポートマン演じるニナは、公演が近づくにつれ、ますます悪夢と現実の区別がつかなくなっていく。夢かうつつか、ライバルであるリリーと同じベッドでレズプレイに及んでしまう。そして、ついに「白鳥の湖」は幕を上げ、舞台という虚構がニナというちっぽけな現実を丸ごと飲み込んでしまう。
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ナタリー・ポートマンは13歳までバレエを
習っていたが、今回の役作りのために1日5
時間の水泳とバレエの特訓を10か月間続けた。
 ライバルのリリーに役を奪われるんじゃないか、自分の母親は娘がプリマに選ばれたことに嫉妬しているのではないか。周囲の人間のネガティブな面ばかり目に入り、ニナは身も心のズタボロ状態。そんな体調で、舞台に立てるのか? いや、ニナは半ば狂気に取り憑かれながら、舞台に出ることに固執する。それまでのいい子ちゃんから、何が何でも「白鳥の湖」の主役の座は手離さないという欲望がドス黒く渦巻き、遅ればせながら優等生のニナの中に自我が芽生える。コンディションは最悪だ。でも、どんな状況でも舞台を演じ切ってみせるのがプロフェッショナルの仕事であり、プリマである証明なのだ。『レスラー』でミッキー・ローク演じる老レスラーが心臓疾患を抱えながらリングに上がったように、ニナも自分の肉体を犠牲にして舞台中央でクルクルと踊り続ける。  もはやニナが立つ舞台は虚構でも現実でもない。その両者の向こう側にある彼岸の境地で、役と一体化したニナは力強く羽ばたく。彼岸の境地では、もう白鳥だろうが黒鳥だろうが、それは大した問題ではない。ニナはたった1回きりの舞台を演じ切るために、自分の演じる役と心中する。彼岸の境地に建てられた特設舞台には、未来とか過去という時間の概念はないのだ。誰にも真似できない、ニナだけが演じられる一生一代の大舞台である。観客は、ただただ唖然として見入るしかない。  『ブラック・スワン』を演じ切ったナタリー・ポートマンは、念願のオスカー像を手中に収めただけでなく、リードダンサー役で共演したベンジャミン・ミルピエの子供を身籠るという二重の喜びを手にした。虚実が渾然となった作品を最後まで演じ切ることで、公私ともにナタリー・ポートマンは大人の女優に転身することに成功した。そして、それはなんだかんだ言っても『レオン』や『ビューティフル・ガールズ』(96)で眩しく輝いていた"アイドル女優"の消滅でもあり、ナタリー・ポートマン自身の青春期の幕引きでもあった。  ひとりのアイドル女優が舞台の上で死んだ。そして、彼女は大人の女優として甦った。 (文=長野辰次) swan04.jpg 『ブラック・スワン』 監督/ダーレン・アロノフスキー 振り付け/ベンジャミン・ミルピエ 出演/ナタリー・ポートマン、ヴァンサン・カッセル、ミラ・クニス、バーバラ・ハーシー、ウィノナ・ライダー 配給/20世紀フォックス映画 5月11日(水)よりTOHOシネマズ日劇ほか全国ロードショー <http://www.blackswan-movie.jp>
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●深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】INDEX [第116回]"セカイ"を旅立った少女の地底探検記 新海誠監督の新作『星を追う子ども』 [第115回] 美少女たちの輝きが脳裏から離れない。青春ムービー『魔法少女を忘れない』 [第115回] 恋愛が与える"陶酔"とリアルな"痛み"サブカル活劇『スコット・ピルグリム』 [第114回]妄想、空想、そして現実からの大脱走 美少女革命『エンジェル ウォーズ』 [第113回]"3.11"後の新しい映画モデルとなるか『劇場版 神聖かまってちゃん』の挑戦 [第112回]マスコミが讃えた"楽園"のその後、ひとりの少女の成長記録『愛しきソナ』 [第111回]閉鎖的な"村社会"をブチ破ったれ! 韓流サバイバル劇『ビー・デビル』 [第110回]"粋"を愛したフランスの伯父さん J・タチ主演『イリュージョニスト』 [第109回]自分にとって家族は敵か、味方か? オスカー2冠受賞『ザ・ファイター』 [第108回]コーエン兄弟『トゥルー・グリット』40年で変化した"米国のヒーロー像" [第107回]ジョニー・デップが愛した"極道記者" 『GONZO』奇人がスターだった時代 [第106回] 巨匠イーストウッド監督の異色作! "あの世"はあるか?『ヒア アフター』 [第105回] キレ味、喉ごしが違うアクション! 黒帯美少女の"涙拳"が炸裂『KG』 [第104回] 高齢化するニートはどこに行くのか? "戸塚校長"のその後『平成ジレンマ』 [第103回]堀北真希&高良健吾主演作『白夜行』闇に生きる"影男"の密やかなる喜び [第102回]園子温の劇薬ムービー『冷たい熱帯魚』"救いのない結末"という名の救い [第101回] NHKが放映しない"裏プロジェクトX" AV界のカリスマ監督『YOYOCHU』 [第100回]エロスとタブーを交配した"至高の美女" 禁断のサイエンスホラー『スプライス』 [第99回]2010年に活躍した女優を勝手に表彰! 満島ひかりに"面倒くさい女"大賞を [第98回]大人だって"ドラえもん"にいて欲しい 残念男の逆転劇『エリックを探して』 [第97回]平凡な高校生デイヴは2度変身する!原点回帰のヒーロー『キック・アス』 [第96回]村上春樹の超絶ベストセラーの映画化『ノルウェイの森』はどこにある? [第95回]実在した"奇妙な高額バイト"の顛末 心理サスペンス『エクスペリメント』 [第94回]"アル中"カメラマンの泣き笑い人生『酔いがさめたら、うちに帰ろう。』 [第93回]朝ドラと異なる映画『ゲゲゲの女房』ゴールなき"貧乏耐久"2人3脚走 [第92回]バラエティーでの実績は通用するか? テリー伊藤の初監督作『10億円稼ぐ』 [第91回] 不謹慎なる社会派エンタテイメント『裁判長!ここは懲役4年でどうすか』 [第90回]"世界のナベアツ"大阪府知事に就任! 政治コメディ『さらば愛しの大統領』 [第89回]自分の恋愛もプロデュースする女優、ドリュー・バリモア主演『遠距離恋愛』 [第88回]スタローンが立ち上げた"筋肉共和国"男たちの祭典『エクスペンダブルズ』 [第87回]元"おはガール"安藤聖の再起動ドラマ 就職氷河期を生きる『バカがウラヤマシイ』 [第86回]マイノリティーは"理想郷"を目指す。筒井文学の金字塔『七瀬ふたたび』 [第85回]清純派・佐藤寛子が美しく"変態"! 官能サスペンス『ヌードの夜──』 [第84回]死を意識して、ギラギラ輝く男たち! 三池節、大バクハツ『十三人の刺客』 [第83回] 女を食い物にする男どもは全員処刑! モダン社会の闇を暴く『ミレニアム』 [第82回] "企画AV女優"たちの青春残酷物語 性なる鎮魂劇『名前のない女たち』 [第81回]猫を見れば、人間社会が見えてくる! 世界の人気猫大集合『ネコを探して』 [第80回]原恵一監督の新作は辛口ファンタジー 退屈な"日常生活"を彩る『カラフル』 [第79回]米軍に実在した"超能力部隊"の真実!? ムー民、必見『ヤギと男と男と壁と』 [第78回]戦場から帰還した夫は"芋虫男"だった! ヤクザ監督の反戦映画『キャタピラー』 [第77回] 白ユリの花開くガールズの妖しい世界 H系ホラー『ジェニファーズ・ボディ』 [第76回] 爽やか系青春ゾンビ映画にホロリ......夏休みは『ゾンビランド』に集結せよ [第75回] "生きる"とは"見苦しい"ということ 藤沢周平の時代活劇『必死剣 鳥刺し』 [第74回]初恋の美少女は200歳の吸血鬼だった! 北欧産のホラー映画『ぼくのエリ』 [第73回] "三億円事件"の真相を解き明かす! 桜タブーに挑んだ『ロストクライム』 [第72回/特別編] 上映反対で揺れる問題作『ザ・コーヴ』"渦中の人"リック・オバリー氏の主張 [第71回] 女子にモテモテになる方法、教えます。軟派少年の実話物語『ソフトボーイ』 [第70回] 下町育ちの"北野少年"が見た現代社会 人間同士の食物連鎖『アウトレイジ』 [第69回] "リアルと虚構の狭間"を生きる男、アントニオ猪木初主演作『アカシア』 [第68回] ヒーローも神もいない現代社会の惨劇 井筒監督の問題作『ヒーローショー』 [第67回] アイドルが地獄で微笑む『戦闘少女』ギャグ×血しぶき×殺陣の特盛り丼! [第66回]アナーキーな"社歌"で生産性アップ! 満島ひかり大進撃『川の底からこんにちは』 [第65回]超ヘビー級なシリアス劇『プレシャス』"家族"という名の地獄から脱出せよ [第64回]乱れ咲く"悪の華"ゼブラクイーン! 仲里依紗が過激変身『ゼブラーマン2』 [第63回] オタク王が見出した"夢と現実"の接点 ティム・バートン監督作『アリス──』 [第62回] バッドテイストな感動作『第9地区』 アナタはエビ人間とお友達になれるか? [第61回]スコセッシ監督の犯罪アトラクション『シャッターアイランド』へようこそ! [第60回]宮崎あおいの"映画代表作"が誕生! 毒を呑んでも生き続けよ『ソラニン』 [第59回]"おっぱいアート"は世界を救えるか? 母乳戦士の記録『桃色のジャンヌ・ダルク』 [第58回]現代に甦った"梶原一騎ワールド"韓流ステゴロ映画『息もできない』 [第57回]命知らずの変態レポーター、中東へ! 史上最大のどっきり?『ブルーノ』 [第56回]仲里依紗がアニメから実写へと跳躍! 母娘2代の時空旅行『時をかける少女』 [第55回]ビグロー監督はキャメロンより硬派! 人間爆弾の恐怖『ハート・ロッカー』 [第54回] "空気を読む"若者の悲劇『パレード』楽しいルームシェア生活の行き先は? [第53回]社会の"生け贄"に選ばれた男の逃亡劇 堺雅人主演『ゴールデンスランバー』 [第52回]『男はつらいよ』の別エンディング? "寅さん"の最期を描く『おとうと』 [第51回]ひとり相撲なら無敵のチャンピオン! 童貞暴走劇『ボーイズ・オン・ザ・ラン』 [第50回]ヒース・レジャーが最後に見た夢の世界 理想と欲望が渦巻く『Dr.パルナサスの鏡』 [第49回]トニー・ジャーは本気なんジャー! CGなしの狂乱劇再び『マッハ!弐』 [第48回]全米"オシャレ番長"ズーイー、見参! 草食系に捧ぐ『(500日)のサマー』 [第47回]市川崑監督&水谷豊"幻の名作"『幸福』28年の歳月を経て、初のパッケージ化 [第46回]押井守監督、大いなる方向転換か? 黒木メイサ主演『アサルトガールズ』 [第45回]ドラッグ漬けの芸能関係者必見!"神の子"の復活を追う『マラドーナ』 [第44回] 暴走する"システム"が止まらない! マイケル・ムーア監督『キャピタリズム』 [第43回]"人は二度死ぬ"という独自の死生観『ガマの油』役所広司の監督ぶりは? [第42回]誰もが共感、あるあるコメディー! 2ちゃんねる発『ブラック会社』 [第41回]タラとブラピが組むと、こーなった!! 戦争奇談『イングロリアス・バスターズ』 [第40回]"涅槃の境地"のラストシーンに唖然! 引退を賭けた角川春樹監督『笑う警官』 [第39回]伝説の男・松田優作は今も生きている 20回忌ドキュメント『SOUL RED』 [第38回]海より深い"ドメスティック・ラブ"ポン・ジュノ監督『母なる証明』 [第37回]チャン・ツィイーが放つフェロモン爆撃 悪女注意報発令せり!『ホースメン』 [第36回]『ソウ』の監督が放つ激痛バイオレンス やりすぎベーコン!『狼の死刑宣告』 [第35回]"負け組人生"から抜け出したい!! 藤原竜也主演『カイジ 人生逆転ゲーム』 [第34回]2兆円ペット産業の"開かずの間"に迫る ドキュメンタリー『犬と猫と人間と』 [第33回]"女神降臨"ペ・ドゥナの裸体が神々しい 空っぽな心に響く都市の寓話『空気人形』 [第32回]電気仕掛けのパンティをはくヒロイン R15コメディ『男と女の不都合な真実』 [第31回]萩原健一、松方弘樹の助演陣が過剰すぎ! 小栗旬主演の時代活劇『TAJOMARU』 [第30回]松本人志監督・主演第2作『しんぼる』 閉塞状況の中で踊り続ける男の悲喜劇 [第29回]シビアな現実を商品化してしまう才女、西原理恵子の自叙伝『女の子ものがたり』 [第28回]"おねマス"のマッコイ斉藤プレゼンツ 不謹慎さが爆笑を呼ぶ『上島ジェーン』 [第27回]究極料理を超えた"極地料理"に舌鼓! 納涼&グルメ映画『南極料理人』 [第26回]ハチは"失われた少年時代"のアイコン  ハリウッド版『HACHI』に涙腺崩壊! [第25回]白熱! 女同士のゴツゴツエゴバトル 金子修介監督の歌曲劇『プライド』 [第24回]悪意と善意が反転する"仮想空間"細田守監督『サマーウォーズ』 [第23回]沖縄に"精霊が暮らす楽園"があった! 中江裕司監督『真夏の夜の夢』 [第22回]"最強のライブバンド"の底力発揮! ストーンズ『シャイン・ア・ライト』 [第21回]身長15mの"巨大娘"に抱かれたい! 3Dアニメ『モンスターvsエイリアン』 [第20回]ウディ・アレンのヨハンソンいじりが冴え渡る!『それでも恋するバルセロナ』 [第19回]ケイト姐さんが"DTハンター"に! オスカー受賞の官能作『愛を読むひと』 [第18回]1万枚の段ボールで建てた"夢の砦"男のロマンここにあり『築城せよ!』 [第17回]地獄から甦った男のセミドキュメント ミッキー・ローク『レスラー』 [第16回]人生がちょっぴり楽しくなる特効薬 三木聡"脱力"劇場『インスタント沼』 [第15回]"裁判員制度"が始まる今こそ注目 死刑執行を克明に再現した『休暇』 [第14回]生傷美少女の危険な足技に痺れたい! タイ発『チョコレート・ファイター』 [第13回]風俗嬢を狙う快楽殺人鬼の恐怖! 極限の韓流映画『チェイサー』 [第12回]お姫様のハートを盗んだ男の悲哀 紀里谷監督の歴史奇談『GOEMON』 [第11回]美人女優は"下ネタ"でこそ輝く! ファレリー兄弟『ライラにお手あげ』 [第10回]ジャッキー・チェンの"暗黒面"? 中国で上映禁止『新宿インシデント』 [第9回]胸の谷間に"桃源郷"を見た! 綾瀬はるか『おっぱいバレー』 [第8回]"都市伝説"は映画と結びつく 白石晃士監督『オカルト』『テケテケ』 [第7回]少女たちの壮絶サバイバル!楳図かずおワールド『赤んぼ少女』 [第6回]派遣の"叫び"がこだまする現代版蟹工船『遭難フリーター』 [第5回]三池崇史監督『ヤッターマン』で深田恭子が"倒錯美"の世界へ [第4回]フランス、中国、日本......世界各国のタブーを暴いた劇映画続々 [第3回]水野晴郎の遺作『ギララの逆襲』岡山弁で語った最後の台詞は...... [第2回]『チェンジリング』そしてイーストウッドは"映画の神様"となった [第1回]堤幸彦版『20世紀少年』に漂うフェイクならではの哀愁と美学

現代人の愛のかたち? 甘酸っぱさとほろ苦さが交際する恋愛映画

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「抱きたいカンケイ」(C)2011 DW Studios L.L.C. All Rights Reserved.
 今週公開される2本の恋愛映画は、一方がコミカルで他方がシリアス、味わいはまるで異なるが、いずれも現代の愛のかたちを端的に切り取った作品だ。  まず1本目は、ナタリー・ポートマンとアシュトン・カッチャーが共演した恋愛コメディー『抱きたいカンケイ』(4月22日公開)。病院勤務医のエマ(ポートマン)とテレビ番組アシスタントのアダム(カッチャー)は、10代のころに出会い、その後偶然の再会を重ねてきたものの、顔見知り程度の仲。ところがある日、ふたりは一線を越えて肉体関係を持ってしまう。仕事が多忙を極め、自称「恋愛アレルギー」でもあるエマは、面倒な束縛や嫉妬を抜きにしたセックス・フレンドの関係をアダムに提案。メールで相手を呼び出してはあわただしく抱き合うという付き合いを順調に続けるが、やがてそれぞれの感情に変化が訪れて......。   『レオン』(94)の美少女の印象が強いポートマンも、今やすっかり大人の演技派女優になり、『ブラック・スワン』(5月11日公開)では第83回アカデミー賞主演女優賞を獲得。従来はシリアスな役どころが多かった彼女だが、今作ではコメディエンヌぶりを発揮。優秀なのに鈍くさいところもあり、恋愛は苦手なのにセックスは大好きという、少々イタいが愛らしいキャラクターをさわやかに演じている。  対するカッチャーは、この手のラブコメはお手のものといったところ。ポートマンとの掛け合いも楽しいが、オクテな同僚ルーシー(レイク・ベル)と急接近する場面などでも、爆笑の中の甘さと切ない演技が印象に残る。  これとは対照的に、4月23日に公開される『ブルーバレンタイン』(R15+指定)では、あるカップルの恋愛と結婚生活が切々と描かれる。高校を中退し塗装の仕事に就いたディーンと、苦学の末に資格を取って病院で忙しく働くシンディは、娘のフランキーと3人暮らし。夫婦は互いに不満を抱えているが、平穏な日常を壊すことを恐れ口に出せない。出会ったころは若く、互いに相手に夢中で、夢と希望に満ちていた。消えてしまいそうな愛を取り戻そうと、ディーンはある行動に出るが......。  シンディ役のミシェル・ウィリアムズは、本作での胸に迫る演技で今年のアカデミー主演女優賞にノミネートされ、ポートマンと競い合った。ディーン役のライアン・ゴズリングは、『ラースと、その彼女』(07)でラブドールを恋人にする青年を演じており、優しいがナイーブで社会にうまく適合できない男がハマリ役。  よき夫、よき親であることに充足する男と、そんな相手に満たされぬ思いを募らせる女。昔なら男女逆の例が多かっただろうが、昨今はこうしたカップルも少なくないのでは。既婚者や長年交際している相手がいる人が見ると、身につまされる部分も多々ありそうだ。  甘酸っぱいレモンケーキのような『抱きたいカンケイ』と、ほろ苦いビターチョコレートにも似た『ブルーバレンタイン』。好みの味を選ぶもよし、食べ比べるのももちろんアリだろう。 (文=eiga.com編集スタッフ・高森郁哉) 「抱きたいカンケイ」作品情報 <http://eiga.com/movie/55795/> 「ブルーバレンタイン」作品情報 <http://eiga.com/movie/55894/>
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【関連記事】 恋愛が与える"陶酔"とリアルな"痛み"サブカル活劇『スコット・ピルグリム』 空想世界でセーラー服姿の美少女が大暴れ! 『エンジェル ウォーズ』 巨匠クロード・シャブロルの遺作! 恋愛サスペンス『引き裂かれた女』

巨匠クロード・シャブロルの遺作! 恋愛サスペンス『引き裂かれた女』

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 ゴダールやトリュフォーらと共にヌーベルバーグを代表する監督として活躍し、2010年に惜しまれつつ他界した巨匠クロード・シャブロル。同監督が最晩年期に手がけた恋愛サスペンス『引き裂かれた女』が4月9日より、渋谷シアター・イメージフォーラムにて公開後、全国順次公開される。  テレビ局でお天気キャスターを務めるガブリエルは、快楽主義者の著名作家シャルルと出会い、肉体関係を持つようになる。一方、親の遺産を相続し遊び暮らす美青年のポールも、ガブリエルを見初めて言い寄るが、食事を共にする程度の仲から進展しない。  シャルルから快楽の手ほどきを受け、愛にのめり込むガブリエル。だが、シャルルに距離を置かれ落ち込んでいるところへ、ポールから旅行に誘われたガブリエルは、旅先でポールの求婚を受けてしまう......。  2人の男に愛され、引き裂かれるような恋愛に苦悩するヒロインを演じるのは、フランソワ・オゾン監督の『スイミング・プール』(03)で大胆なヌードとセックスシーンを披露したリュディヴィーヌ・サニエ。本作での性的な描写は上品で間接的なものにとどまるが、美しい顔立ちの中にも少女のようなあどけなさが残る彼女の魅力を存分に堪能できることには変わりない。  シャルル役には、『トランスポーター』シリーズのトボけた警部役でおなじみのフランソワ・ベルレアン。ポールを演じるのは、ミヒャエル・ハネケ監督『ピアニスト』(01)でカンヌ国際映画祭男優賞を受賞したブノワ・マジメル。  物語は、20世紀初頭のアメリカで実際に起きたスキャンダラスな事件をもとに、主要人物3人の関係と出来事を現代のフランスを舞台に再構築したもの。ただし、愛憎入り乱れる三角関係の結末は知らない方が、"フランスのヒッチコック"の異名を持つシャブロル監督の意表を突く演出をより一層楽しめるだろう。あまりの唐突さにぼう然となるラストシーンには、タイトルにつながるユーモアが込められていて、哀しさとおかしさが相半ばする複雑な感慨が後に残る。  恋をしているときは誰でも不安定になり、2人の異性の間で気持ちが揺れ動くというのもよくあること。その点で、ヒロインの心情に女性のみならず男性も大いに共感できる物語であり、心を狂わせる愛の魔力をあらためて思い知らせてくれる作品でもある。 (文=eiga.com編集スタッフ・高森郁哉) 『引き裂かれた女』作品情報  <http://eiga.com/movie/55935/>
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【関連記事】 決定しているだけで4本も......「はやぶさ」効果で宇宙映画ブームが来る!? "3.11"後の新しい映画モデルとなるか『劇場版 神聖かまってちゃん』の挑戦 はかない青春の残酷さと切なさ 『わたしを離さないで』

はかない青春の残酷さと切なさ 『わたしを離さないで』

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『わたしを離さないで』(c)2010 Twentieth Century Fox
 わが国を襲った未曾有の天災によって多くの命が奪われ、日常生活への無条件の信頼も大きく損なわれた。こんな時、自分の暮らしぶりや生きることの意味を、映画を通じて異なる視点から見つめ直すことも気持ちの助けになるのではないだろうか。  現在公開中の『わたしを離さないで』は、カズオ・イシグロの同名小説を、『17歳の肖像』のキャリー・マリガン、『パイレーツ・オブ・カリビアン』シリーズのキーラ・ナイトレイ、『ソーシャル・ネットワーク』のアンドリュー・ガーフィールドの共演で映画化した作品だ。  外界から隔絶され豊かな自然に囲まれた寄宿学校ヘールシャム。仲良しのキャシー(マリガン)、ルース(ナイトレイ)、トミー(ガーフィールド)は、絵や詩の創作活動に励みながら、「特別な子ども」として育てられた。18歳で学校を出て農場のコテージで共同生活を始めるが、恋愛感情から彼らの関係も変化していく。3人はヘールシャムの秘密に迫り、定められた運命に立ち向かおうとするが......。  作品の世界には、あるSF的な設定があり、それがヘールシャムの謎と寄宿生たちの運命に関係している。美しいイギリスの田園地帯を背景に、切ないラブストーリー・衝撃のミステリー・命の意味への問いかけという要素が絡み合いながら展開する本作。ストーリーが進むにつれて、隠された真実が少しずつ明かされていく。三者三様の生き様の中で、悲しみを抑えながら過酷な運命に静かに向き合うキャシーの姿が特に印象に残る。  趣は異なるが、ソフィア・コッポラ監督の新作『SOMEWHERE』(4月2日公開)も、自分の生き方を見つめ直すための気づきをもたらしてくれる一本だ。  ハリウッドにあるスター御用達の伝説的ホテル「シャトー・マーモント」で、華やかなセレブライフを送りながらも、むなしさを感じている映画俳優のジョニー・マルコ。前妻から預けられた11歳の娘クレオと穏やかな日々を過ごすうち、心境に変化が訪れる。  監督自身が父フランシス・フォード・コッポラと過ごしたシャトー・マーモントでの思い出や、2児の母となった実感を投影したという本作。享楽的なホテル暮らしを惰性で続けながら、どこか居場所のなさを感じているジョニーを、『バック・ビート』『パブリック・エネミーズ』のスティーヴン・ドーフが好演している。  クレオ役のエル・ファニングは、言わずと知れたダコタ・ファニングの妹。かつて天才子役として名をはせたダコタが新作『ランナウェイズ』で大人の女性に変ぼうしてみせたのに対し、エルは今がまさに旬の美少女。フィギュアスケートのシーンで発揮されるスラリと伸びやかな肢体、会話の中やプールの水中で見せる天使のように愛くるしい表情など、彼女の魅力を心ゆくまで鑑賞できる作品でもある。 (文=eiga.com編集スタッフ・高森郁哉) 「わたしを離さないで」作品情報 <http://eiga.com/movie/55678/> 「SOMEWHERE」作品情報 <http://eiga.com/movie/55730/>
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勝利を信じて闘い抜け! 困難に立ち向かう不屈の闘志『ザ・ファイター』

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 東日本大震災の甚大な被害とその影響で、日本中が悲しみと不安に覆われている今日この頃。心の支えになるような何かを映画に求めるとしたら、困難に立ち向かう不屈の闘志だろうか、それとも気持ちやすらぐ癒やしだろうか。  3月26日公開の『ザ・ファイター』は、実在の名ボクサーとその兄を題材にした感動の人間ドラマ。マサチューセッツ州ローウェルに住む元ボクサーのディッキーは、かつてはスター選手とも戦う町の英雄だったが、麻薬に溺れ自堕落な日々を送っている。そんな兄にボクシングを教わったミッキーは、兄がトレーナー、過保護な母親がマネジャーという体制で試合に臨むが、対戦相手に恵まれず一向に勝てない。だが、恋人との出会いと兄の逮捕が転機となり、順調に勝利を重ね、ついには世界タイトルマッチへの挑戦が決まる。そしてちょうどその頃、兄が刑務所から出所する......。    努力家で真面目な弟と、天才肌でお調子者の兄という好対照のふたりを、プロ並みのトレーニングを3年続けて撮影に臨んだマーク・ウォールバーグと、役作りで13キロ減量し髪を抜き歯並びまで変えたクリスチャン・ベールがそれぞれ熱演。ベールと母親役のメリッサ・レオが先月の米アカデミー賞で助演男優賞、助演女優賞をそろって受賞したことも話題となった。  メガホンを取ったのは、『スリー・キングス』のデビッド・O・ラッセル監督。試合のシーンでは、対戦相手に本物のプロボクサーを、撮影にテレビ中継スタッフを起用するこだわりぶり。テレビ画面風の処理を施したショットの挿入も相まって、リング上で実際に行われているファイトを生中継で観戦しているかのような迫力だ。家族と恋人に支えられ、長く苦しい時に耐え、勝利を信じて戦い抜く主人公の姿は、観客の心を振るわせ、明日への活力をもたらしてくれることだろう。  アツイ映画もいいけれど、心を和ませてくれるような作品が見たいという向きには、現在公開中の『ファンタスティック Mr. Fox』がおすすめだ。『チョコレート工場の秘密』で知られるロアルド・ダールの原作小説を、『ザ・ロイヤル・テネンバウムズ』『ライフ・アクアティック』のウェス・アンダーソン監督がストップモーション・アニメで映画化した。  野生のキツネMr.Foxは盗みのプロで、農家からニワトリやアヒルを失敬していたが、妻のMrs.Foxの妊娠と、罠にかかり絶体絶命のピンチに陥ったのを機に足を洗う。数年後、妻と息子の3人で穴ぐら生活を送りながら新聞記者として働くMr.Foxは、見晴らしのいい丘に立つ大木の家への引っ越しを決意。しかし丘の向こうには、意地悪な金持ちの農場主3人が住んでいた。泥棒稼業に復活し、人間たちの農場から獲物を盗むことを繰り返すMr.Foxら動物たちと、激怒してキツネを捕獲しようとする人間との穴ほり合戦が始まる。  これまで実写映画でもアンダーソン監督が一貫して表現してきた箱庭的な世界観と、愛らしい動物のパペットを1コマずつ動かして撮影したストップモーション・アニメの相性は抜群。作り手の愛情が伝わってくるパペットの造形と動きは、眺めているだけで自然と笑みがこぼれてしまう。動物対人間の冒険活劇も心躍るが、夫婦愛、親子愛もしっかり描かれており、大人から子どもまで幅広い世代が楽しめる作品だ。 (文=eiga.com編集スタッフ・高森郁哉)
スリー・キングス 特別版 コンバットアドベンチャー。 amazon_associate_logo.jpg
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