ダウンタウン浜田雅功が成し遂げた、「ツッコミの地位向上」という大偉業

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『クイック・ジャパン 104』(太田出版)
 1月3日、ダウンタウンの浜田雅功と、彼の息子でミュージシャンのハマ・オカモトがラジオ番組で初めての親子共演を果たした。ロックバンド・OKAMOTO’Sのベーシストで浜田の実子であるハマ・オカモトが、自身がパーソナリティーを務める『RADIPEDIA』(J-WAVE)のゲストとして父親である浜田を招いたことから“世紀の親子対談”が実現。実の親子らしい親しみにあふれたトークが展開された。それぞれが普段見せていない一面を明かした貴重な番組として、お笑いファン、音楽ファンの間でも大反響を巻き起こした。  昨年、結成30周年を迎えたダウンタウン。そのツッコミ担当である浜田の芸人としての功績については、今さら語るまでもないだろう。89年に東京進出して以来、ダウンタウンの一員として、あるいは司会者として、テレビの第一線をひた走り、数々の伝説を築いてきた。  ただ、そんな彼は、雑誌などのインタビュー取材でも自分についてあまり露骨に語りたがらない。自分のことはごく控えめに語るのみで、どちらかといえば相方である松本人志がいかに面白くて偉大な芸人であるかということを熱心に語り、それを生かすのが自分の仕事である、と繰り返すばかり。ただ、ここ数十年のお笑いの歴史をひも解いてみれば、ボケのスペシャリストとしての松本とは別に、浜田には浜田なりの歴史的意義というものがあったといえる。  浜田雅功の歴史的な意義――。それは、「ツッコミ」という概念を世の中に広めて、ツッコミの地位を向上させたことだ。もちろん、ダウンタウンの登場以前にも、漫才における「ボケ」と「ツッコミ」というものは存在していた。ただ、それがお笑いの専門用語から日常的な用語に変わり、その積極的な意味まで認められるようになったのは、間違いなく浜田の存在があってこそだろう。  例えば、80年頃の漫才ブームの時代に活躍した当時の若手漫才師の中では、ボケ主導型のコンビが多かった。ビートたけし、島田紳助、島田洋七など、才能を発揮してその後もテレビで長く活躍したのは、いずれもボケ担当のほうだった。彼らの相方でツッコミを担当した芸人たちは、ボケの話にただうなずくばかり。当時の人気番組『オレたちひょうきん族』(フジテレビ系)では、そんな地味で目立たないツッコミ担当の者たちを集めた「うなずきトリオ」というユニットまで結成されたほどだ。  ボケは残るが、ツッコミは消える。ダウンタウンの登場以前、ツッコミは日陰の存在だった。どうしても消えたくなかった浜田は、生き残りを賭けてツッコミの腕を磨いた。そして、東京に進出してからは、ツッコミという役割を背負ったままバラエティ番組で戦う、という決意をした。共演する大物芸能人たちを向こうに回して、彼らをボケ扱いして積極的にツッコミを放っていったのだ。これは革命的なことだった。  もちろん、共演者をイジるというのは浜田以前にもビートたけし、明石家さんま、島田紳助らもやっていたことである。ただ、彼らが主に行っていたのは、イジりそのもので笑いを生む、ボケ寄りのイジりだった。  浜田はあくまでもツッコミという役割にとどまったままで、共演者を果敢に攻め立てた。そして、それまでほかの芸人が手を出せなかったような領域にも、ズケズケと踏み込んでいった。『ダウンタウンDX』(日本テレビ系)では菅原文太、中尾彬、江守徹といった大物俳優にもツッコミを放ち、『HEY!HEY!HEY!』(フジテレビ系)では堂々と若手ミュージシャンの頭をはたいた。それは、死ぬ気で売るケンカだった。  浜田はタブーを破り、彼らをツッコミのターゲットとして矢面に立たせて、番組を盛り上げることに成功した。こうしてテレビの中でツッコミにも存在意義があるということを示したのだ。一か八かの戦いを制して、実力が認められ、浜田は史上初のツッコミ型司会者となった。  これ以降、ツッコミの地位は飛躍的に高まり、世間でもツッコミというものが評価されるようになった。そして、その後はバリエーション豊かなツッコミ芸人が続々とテレビで人気を得るようになった。  浜田雅功は、ツッコミ一筋の笑いの王様。松本という笑いの神を戴く王国を司る、血気盛んなお笑い界の帝王だ。 (文=お笑い評論家・ラリー遠田)

COWCOW 板の上で鍛え上げられた“スベリ知らず”の「間合いと顔芸」

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『COWCOW あたりまえ体操』よしもと
R&C
 多くの吉本芸人がテレビで活躍する現在でも、彼らの主戦場が舞台であることは変わらない。吉本では、どんなに売れっ子の芸人であっても、ほぼ例外なく定期的に劇場に出演しなければいけない。芸人として観客を楽しませる能力は、舞台の上でなければ身につかないからだ。  そんな吉本の劇場で「スベリ知らず」と噂されている中堅芸人がいる。親しみやすいキャラクターとわかりやすいネタ。自らの衣装をネタにした「どうも、伊勢丹の紙袋です」という鉄板のツカミを持つ男たち。COWCOWは、吉本を代表する実力派漫才師だ。  COWCOWというコンビの強みは、安定したキャラクターとネタを持ち、どんな客層にも柔軟に対応して笑いをとることができる、ということだ。そして彼らは、漫才の名手でありながら、漫才以外の飛び道具も豊富に備えている。『R-1ぐらんぷり2012』の優勝でも証明された多田健司の一発ギャグの破壊力。『R-1』決勝の常連だった山田與志の物真似とモノボケの職人芸。昔からあるフリップネタを進化させて、フリップに仕掛けた細工を次々に披露するという彼の手法は斬新だった。  そんな彼らの最新作にして最高傑作と呼ばれているのが「あたりまえ体操」だ。軽快なメロディに乗せて「右足出して左足出すと歩ける」などの当たり前のことが歌われていく。その音楽をバックにして、彼らは黙々と体操風のパントマイムを演じる。一度見たら忘れられない破壊力抜群のネタだ。最近世に出てきた歌ネタの中では、2700のネタに並ぶ強烈な存在感を持っている。  COWCOWがつかんでいるものは笑いの「間」である。彼らの持ちネタのひとつに、ひじでお互いをつつき合ってじゃれ合い、最後に2人で肩を組んで正面を向いてにっこり微笑む、というものがある。これは、ほとんど言葉も発さないで展開される小ネタでありながら、彼らの代名詞のようになっているものだ。このネタを成立させているのは、間合いそのものにある。ひじをつつきあってポーズを決める、ただそれだけのことを笑いに変えてしまうのは、それが何とも言えない心地よい間合いで繰り出されるからだ。  さらに言えば、彼らのネタは、一見とっつきやすく素人にも簡単に真似できそうに見えるが、実際にはなかなかできない。それは、彼らが「顔芸」というもうひとつの強力な武器を隠し持っているからだ。歌と動きをベースにしているので気付かれにくいかもしれないが、「あたりまえ体操」が笑いを生む最大のカギは、決めポーズを作るときのコミカルな表情と、それ以外のときの無表情とのギャップにある。「あたりまえ体操」という笑いの総合芸術の土台を支えているのは、顔芸の圧倒的なクオリティなのだ。もちろん、多田の一発ギャグにおいても、顔芸の要素は重要な位置を占めていることは言うまでもない。  ネタ作りへの姿勢、ピン芸への貪欲さ、新しい形のネタを次々に仕掛ける芸の幅広さなど、COWCOWの芸人としての基礎体力は並々ならぬものがある。すべての導火線が確実に笑いに結びついている。普通のタレントの人気には流行り廃りがあるが、COWCOWが人々の支持を得られなくなるところはもはや想像できない。劇場での安定感は群を抜いているし、新しい試みへの意欲も失っていない。COWCOWは、吉本が誇る至高のお笑い精密機械だ。 (文=お笑い評論家・ラリー遠田)

COWCOW 板の上で鍛え上げられた“スベリ知らず”の「間合いと顔芸」

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『COWCOW あたりまえ体操』よしもと
R&C
 多くの吉本芸人がテレビで活躍する現在でも、彼らの主戦場が舞台であることは変わらない。吉本では、どんなに売れっ子の芸人であっても、ほぼ例外なく定期的に劇場に出演しなければいけない。芸人として観客を楽しませる能力は、舞台の上でなければ身につかないからだ。  そんな吉本の劇場で「スベリ知らず」と噂されている中堅芸人がいる。親しみやすいキャラクターとわかりやすいネタ。自らの衣装をネタにした「どうも、伊勢丹の紙袋です」という鉄板のツカミを持つ男たち。COWCOWは、吉本を代表する実力派漫才師だ。  COWCOWというコンビの強みは、安定したキャラクターとネタを持ち、どんな客層にも柔軟に対応して笑いをとることができる、ということだ。そして彼らは、漫才の名手でありながら、漫才以外の飛び道具も豊富に備えている。『R-1ぐらんぷり2012』の優勝でも証明された多田健司の一発ギャグの破壊力。『R-1』決勝の常連だった山田與志の物真似とモノボケの職人芸。昔からあるフリップネタを進化させて、フリップに仕掛けた細工を次々に披露するという彼の手法は斬新だった。  そんな彼らの最新作にして最高傑作と呼ばれているのが「あたりまえ体操」だ。軽快なメロディに乗せて「右足出して左足出すと歩ける」などの当たり前のことが歌われていく。その音楽をバックにして、彼らは黙々と体操風のパントマイムを演じる。一度見たら忘れられない破壊力抜群のネタだ。最近世に出てきた歌ネタの中では、2700のネタに並ぶ強烈な存在感を持っている。  COWCOWがつかんでいるものは笑いの「間」である。彼らの持ちネタのひとつに、ひじでお互いをつつき合ってじゃれ合い、最後に2人で肩を組んで正面を向いてにっこり微笑む、というものがある。これは、ほとんど言葉も発さないで展開される小ネタでありながら、彼らの代名詞のようになっているものだ。このネタを成立させているのは、間合いそのものにある。ひじをつつきあってポーズを決める、ただそれだけのことを笑いに変えてしまうのは、それが何とも言えない心地よい間合いで繰り出されるからだ。  さらに言えば、彼らのネタは、一見とっつきやすく素人にも簡単に真似できそうに見えるが、実際にはなかなかできない。それは、彼らが「顔芸」というもうひとつの強力な武器を隠し持っているからだ。歌と動きをベースにしているので気付かれにくいかもしれないが、「あたりまえ体操」が笑いを生む最大のカギは、決めポーズを作るときのコミカルな表情と、それ以外のときの無表情とのギャップにある。「あたりまえ体操」という笑いの総合芸術の土台を支えているのは、顔芸の圧倒的なクオリティなのだ。もちろん、多田の一発ギャグにおいても、顔芸の要素は重要な位置を占めていることは言うまでもない。  ネタ作りへの姿勢、ピン芸への貪欲さ、新しい形のネタを次々に仕掛ける芸の幅広さなど、COWCOWの芸人としての基礎体力は並々ならぬものがある。すべての導火線が確実に笑いに結びついている。普通のタレントの人気には流行り廃りがあるが、COWCOWが人々の支持を得られなくなるところはもはや想像できない。劇場での安定感は群を抜いているし、新しい試みへの意欲も失っていない。COWCOWは、吉本が誇る至高のお笑い精密機械だ。 (文=お笑い評論家・ラリー遠田)

ミラクルひかる 単なる“歌うま”と一線を画すクオリティ──そのものまねに宿る「本物の矜持」

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『ミラクルひかる/swinution 』
 7月6日、『12年ぶり復活!ものまね王座決定戦!芸能界日本一は誰だ?大激突トーナメントスペシャル』(フジテレビ系)が放送された。フジテレビのものまね番組はこれまでにも定期的に放送されていたのだが、「ものまね王座決定戦」というタイトルで、トーナメント形式で行われるのは実に12年ぶり。かつて「ものまね四天王」として一世を風靡した清水アキラ、栗田貫一といったベテラン勢から、ダブルネーム、渡辺直美といった若手組まで、幅広い層の実力派ものまね芸人たちが参戦。「ものまね王座決定戦」という伝説的な番組の名前を冠しているだけあって、出てくるものまね芸人たちもいつになく真剣。最近のものまね番組にはなかった心地よい緊張感を楽しむことができた。  ここで激闘を制して見事に優勝を果たしたのは、ミラクルひかる。宇多田ヒカルのものまねネタで知られる彼女は、トーナメントで毎回違うネタをかけて勝ち上がり、決勝でもmihimaru GTの「気分上々↑↑」を熱唱して、95点という高得点をマーク。圧倒的な実力を見せつけて栄冠を手にした。  ミラクルひかるの代表作は、言わずと知れた宇多田ヒカルのものまねである。宇多田のあの歌声を似せるだけでも簡単なことではないはずなのだが、ミラクルは歌を真似するばかりか、容姿や動きも限りなく本物に近付けた上に、普段のたどたどしいしゃべり方までうり二つに再現することができる。これは間違いなくものまねの歴史に残る名作だ。  ミラクルは、宇多田のものまねネタで有名になり、それ以降はものまね番組を中心に多数のバラエティ番組に出演するようになった。だが、彼女は、ものまね番組で必ずしも揺るぎないエース的な存在として認識されていたわけではなかった。なぜなら、ミラクルは、良くも悪くも「自分のやりたいネタをやる」ということにこだわりを持っていたからだ。  宇多田のものまねに代表されるいくつかのネタでは、すさまじく高いクオリティのものまねを見せるのだが、それ以外のネタで一気に振り切って笑いに走るときの思い切りの良さも群を抜いている。ものまね芸人が「悪意のこもったネタ」を演じることはたまにあるが、ミラクルの持ちネタのいくつかはそのレベルを超えている。悪意を盛りすぎて、もはや原型をとどめていないと思われるほどのレパートリーも数多く存在していて、そういうのをやるときほど誇らしげなそぶりを見せるようなところがあるのだ。  恐らく、ミラクルは「ものまねタレント」よりも「ものまね芸人」であるという自意識が強いタイプなのだと思う。単に似せるだけでは満足できず、自分なりの解釈や誇張を加えて、笑いどころを増やし、ときにはキャラクターが破綻するところまで暴走してみせる。そういう意味では、ミラクルは根っからの芸人気質なのだ。  そんな彼女が、今回の『ものまね王座決定戦』ではひと味違う一面を披露した。本気のパフォーマンスで、徹底して勝ちにこだわる姿勢を見せたのだ。その裏には、自分と同じような枠の女性ものまね芸人が増えていることに対する焦りと苛立ちが見え隠れしていた。  この日のミラクルの最高のネタは、準決勝で見せた「冬のオペラグラス」を歌う新田恵利のものまねだろう。元の歌を知っている人なら笑わずにはいられない再現性の高さ。新田のつたない歌声、微妙に外れる音程。それらを完璧に再現するという離れ業を演じたのだ。わざと下手に歌って笑わせるというのはたまにあるが、ほどほどに下手な歌をそのままほどほどに下手な状態で再現するというのはなかなかできることではない。ずば抜けた歌唱力の賜物だ。  うがった見方をすれば、このネタは、歌がうまいというだけでもてはやされている昨今の「ものまね新女王」と呼ばれたりしている後輩芸人に対する、ミラクルなりの宣戦布告でもあるのだろう。「本物のものまねっていうのは、こうやるんだよ!」と。  一視聴者の立場で言わせてもらえば、ものまね番組を見ていると「歌がうまいだけで別にそれほど似てはいないよね」とか、「それなりに似てはいるけど面白くはないし感動もしないよね」とか、そういうことを感じるときがたまにある。だが、ミラクルのネタにはそれがない。あふれるサービス精神、高いプロ意識、研ぎ澄まされた技術と発想力によって生み出された珠玉のものまねネタの数々。ミラクルひかるは、その負けん気の強さも含めて、ものまねに必要なあらゆる要素を持ちあわせている“奇跡”のものまね芸人だ。 (文=お笑い評論家・ラリー遠田) ●連載「この芸人を見よ!」INDEX 【第109回】スギちゃん  実直な人柄でチャンスをつかんだ「芸人再生工場の最終兵器」 【第108回】アンジャッシュ  “勘違いコント”のジャンルを築いた「コント職人のネクストステージ」 【第107回】2700  狂熱的に奏でられた「ナンセンスとリズムの融合」に笑いの根源を見る 【第106回】千鳥  いよいよ全国区に羽根を広げる「媚びない心」の切れ味 【第105回】渡辺直美 希代のドリームガールが見つけた「かわいいとブサイクの間にあるもの」 【第104回】ロバート コント日本一をかっさらった暴風雨・秋山竜次の芝居に宿る「殺気の正体」 【第103回】TKO 不遇を乗り越えたかつてのアイドル芸人が「太って咲かせた、もう一花」 【第102回】オアシズ それぞれにブスを昇華した「現実と空想のアンサンブル」 【第101回】スリムクラブ 最後のM-1を駆け抜けた「超スローテンポという革命」 【第100回】レイザーラモンRG  "吉本団体芸"が生んだ「強心臓のニューヒーロー」 【第99回】麒麟 5度の決勝進出が「M-1グランプリの申し子」をどう変えたか 【第98回】ピース 噛み合わない2つの破片が力ずくで組み上げた「笑いのパズル」 【第97回】次長課長 変幻自在のオールラウンダー河本を生かす、井上の「受け止めるツッコミ」 【第96回】 オセロ松嶋尚美 大先輩・鶴瓶に見初められ「褒められて咲いた大輪の花」 【第95回】 ダイノジ 雌伏16年──ついに訪れる「二頭の虎が目覚めるとき」 【第94回】 キングオブコメディ 極限の不運と"顔芸人"のレッテルを払拭して掴んだ「コント日本一」 【第93回】 山田邦子 史上初の「天下を取った女芸人」その栄光と転落のタレント人生 【第92回】エレキコミック 一度ハマるとクセになる!?「一点突破の納豆コント」 【第91回】野性爆弾 「遅れてきた吉本最終兵器」がブレイクを果たした秘密とは 【第90回】野沢直子 今振り返るカリスマ女芸人の「先駆者としての比類なき存在感」 【第89回】サバンナ 野生の勘で芸能界を疾走する「発展途上のロジカルモンスター」 【第88回】東京ダイナマイト 破壊なくして創造なし! ハチミツ流「笑いのセメントマッチ」 【第87回】トータルテンボス 進化を止めない本格派コンビを育てた「M-1急転直下の挫折劇」 【第86回】ロッチ  シンプルな構図でコントに魂を吹き込む「関係性のスペシャリティ」 【第85回】山崎邦正 ダウンタウンによって強制開花した「ヘタレの天才」が巻き起こす奇跡 【第84回】フルーツポンチ 確かな演技力でポストバブル世代に現出した「キザ男のリアリズム」 【第83回】よゐこ 爆発力と切れ味で支持層を拡大する「自然体のシュール」 【第82回】バッファロー吾郎 マニアック芸人の権化が極めた「もうひとつの天下」 【第81回】ドランクドラゴン 完璧な構築物に風穴を開けて回る「鈴木拓のガッカリ力」 【第80回】高田純次 還暦過ぎても華衰えぬ「日本一の適当男」が歩み続けた孤高の道程 【第79回】森三中  メンバーの結婚で進化する「ブスとブスとブスの関係性」 【第78回】Wコロン・ねづっち  「整いました!」なぞかけ芸が時代にハマった深い理由 【第77回】所ジョージ  突出した安定感を生み出すボーダレスな「私の世界」 【第76回】土田晃之  元ヤン、家電、ガンダム......でも嫌われない「ひな壇の神」の冴えたやりかた 【第75回】タカアンドトシ  非関西系漫才のツッコミ新境地「欧米か!」が生まれた理由 【第74回】キングコング西野亮廣  嫌われるには理由がある!? 天才を悩ませる「出た杭の憂鬱」 【第73回】椿鬼奴  虚栄心から自由になった女芸人の「自然体が放散する魅力」とは 【第72回】萩本欽一  テレビを作り、テレビに呑み込まれた「巨人の功罪」 【第71回】アンガールズ  キモカワ芸人が精緻に切り出した「人生のNGシーン」に宿る笑い 【第70回】エハラマサヒロ   「究極の器用貧乏芸人」が無限の笑いをコラージュする 【第69回】なだぎ武 R-1二連覇を成した演技派芸人の「本当の運命の出会い」とは 【第68回】いとうあさこ 悲観なき自虐を操る「アラフォー女性のしたたかなリアル」 【第67回】チュートリアル M-1完全優勝を勝ち取った「ひとつもボケない」漫才進化論 【第66回】松村邦洋 己を棄てて己を活かす「笑われる天才」が生きる道 【第65回】キャイ~ン・ウド鈴木 20年目の変わらぬ想い──「満面の笑顔で愛を叫ぶ」 【第64回】しずる 緻密なマーケティングと確かな演技力で突っ走る「腐女子枠のプリンス」 【第63回】青木さやか 仕事も家庭も......不器用に体現する「現代女性の映し鏡」 【第62回】 今田耕司 好きな司会者第3位にランクされる「代弁者としての3つの極意」 【第61回】我が家 「変幻自在のローテーション」が3人のキャラ薄をメリットに転化する 【第60回】ハライチ "ツッコミ"を棄てた関東M-1新世代が生み出す「面の笑い」とは? 【第59回】出川哲朗 稀代のリアクション芸人が「計算を超えた奇跡」を起こし続ける理由 【第58回】中川家 すべてはここから始まった!? 兄弟が奏でる「舞台芸と楽屋芸のハイブリッド」 【第57回】板尾創路 笑いの神に愛された男が泰然と歩む「天然と計算の境界線」 【第56回】清水ミチコ 対象者の心を浮き彫りにする「ものまねを超えた賢人の不真面目芸」 【第55回】とんねるず 暴れ放題で天下を取った「学生ノリと楽屋オチの帝王学」 【第54回】友近 孤高の女芸人が体現する「女としての業と生き様」 【第53回】ウンナン内村光良 受け継がれゆく遺伝子「終わらないコント愛」 【第52回】モンスターエンジン 結成2年でシーンを席巻する「高次元のバランス」 【第51回】関根勤 再評価される「妄想力」ひとり遊びが共感を呼ぶ2つの理由 【第50回】南海キャンディーズ しずちゃんを化けさせた山里亮太の「コンビ愛という魔法」 【第49回】フットボールアワー 無限の可能性を秘めた「ブサイクという隠れみの」 【第48回】ますだおかだ 「陽気なスベリ芸」という無敵のキャラクターが司る進化 【第47回】ナインティナイン あえて引き受ける「テレビ芸人としてのヒーロー像」 【第46回】インパルス タフなツッコミで狂気を切り崩す「極上のスリルを笑う世界」 【第45回】アンタッチャブル 「過剰なる気迫」がテレビサイズを突き抜ける 【第44回】おぎやはぎ 「場の空気を引き込む力」が放散し続ける規格外の違和感 【第43回】志村けん 「進化する全年齢型の笑い」が観る者を童心に帰らせる 【第42回】はるな愛 「すべてをさらして明るく美しく」新時代のオネエキャラ 【第41回】明石家さんま テレビが生んだ「史上最大お笑い怪獣」の行く末 【第40回】ブラックマヨネーズ コンプレックスを笑いに転化する「受け止める側の覚悟」 【第39回】笑い飯 Wボケ強行突破に見る「笑わせる者」としての誇りと闘争心 【第38回】笑福亭鶴瓶 愛されアナーキストが極めた「玄人による素人話芸」とは 【第37回】島田紳助 "永遠の二番手"を時代のトップに押し上げた「笑いと泣きの黄金率」 【第36回】東野幸治 氷の心を持つ芸人・東野幸治が生み出す「笑いの共犯関係」とは 【第35回】ハリセンボン 徹底した自己分析で見せる「ブス芸人の向こう側」 【第34回】FUJIWARA くすぶり続けたオールマイティ芸人の「二段構えの臨界点」 【第33回】ロンブー淳 の「不気味なる奔放」テレ朝『ロンドンハーツ』が嫌われる理由 【第32回】柳原可奈子 が切り拓くお笑い男女平等社会「女は笑いに向いているか?」 【第31回】松本人志 結婚発表で突如訪れたカリスマの「幼年期の終わり」 【第30回】はんにゃ アイドル人気を裏打ちする「喜劇人としての身体能力」 【第29回】ビートたけし が放った『FAMOSO』は新世紀版「たけしの挑戦状」か 【第28回】NON STYLE M-1王者が手にした「もうひとつの称号」とは 【第27回】ダチョウ倶楽部・上島竜兵 が"竜兵会"で体現する「新たなリーダー像」 【第26回】品川祐 人気者なのに愛されない芸人の「がむしゃらなリアル」 【第25回】タモリ アコムCM出演で失望? 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ミラクルひかる 単なる“歌うま”と一線を画すクオリティ──そのものまねに宿る「本物の矜持」

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『ミラクルひかる/swinution 』
 7月6日、『12年ぶり復活!ものまね王座決定戦!芸能界日本一は誰だ?大激突トーナメントスペシャル』(フジテレビ系)が放送された。フジテレビのものまね番組はこれまでにも定期的に放送されていたのだが、「ものまね王座決定戦」というタイトルで、トーナメント形式で行われるのは実に12年ぶり。かつて「ものまね四天王」として一世を風靡した清水アキラ、栗田貫一といったベテラン勢から、ダブルネーム、渡辺直美といった若手組まで、幅広い層の実力派ものまね芸人たちが参戦。「ものまね王座決定戦」という伝説的な番組の名前を冠しているだけあって、出てくるものまね芸人たちもいつになく真剣。最近のものまね番組にはなかった心地よい緊張感を楽しむことができた。  ここで激闘を制して見事に優勝を果たしたのは、ミラクルひかる。宇多田ヒカルのものまねネタで知られる彼女は、トーナメントで毎回違うネタをかけて勝ち上がり、決勝でもmihimaru GTの「気分上々↑↑」を熱唱して、95点という高得点をマーク。圧倒的な実力を見せつけて栄冠を手にした。  ミラクルひかるの代表作は、言わずと知れた宇多田ヒカルのものまねである。宇多田のあの歌声を似せるだけでも簡単なことではないはずなのだが、ミラクルは歌を真似するばかりか、容姿や動きも限りなく本物に近付けた上に、普段のたどたどしいしゃべり方までうり二つに再現することができる。これは間違いなくものまねの歴史に残る名作だ。  ミラクルは、宇多田のものまねネタで有名になり、それ以降はものまね番組を中心に多数のバラエティ番組に出演するようになった。だが、彼女は、ものまね番組で必ずしも揺るぎないエース的な存在として認識されていたわけではなかった。なぜなら、ミラクルは、良くも悪くも「自分のやりたいネタをやる」ということにこだわりを持っていたからだ。  宇多田のものまねに代表されるいくつかのネタでは、すさまじく高いクオリティのものまねを見せるのだが、それ以外のネタで一気に振り切って笑いに走るときの思い切りの良さも群を抜いている。ものまね芸人が「悪意のこもったネタ」を演じることはたまにあるが、ミラクルの持ちネタのいくつかはそのレベルを超えている。悪意を盛りすぎて、もはや原型をとどめていないと思われるほどのレパートリーも数多く存在していて、そういうのをやるときほど誇らしげなそぶりを見せるようなところがあるのだ。  恐らく、ミラクルは「ものまねタレント」よりも「ものまね芸人」であるという自意識が強いタイプなのだと思う。単に似せるだけでは満足できず、自分なりの解釈や誇張を加えて、笑いどころを増やし、ときにはキャラクターが破綻するところまで暴走してみせる。そういう意味では、ミラクルは根っからの芸人気質なのだ。  そんな彼女が、今回の『ものまね王座決定戦』ではひと味違う一面を披露した。本気のパフォーマンスで、徹底して勝ちにこだわる姿勢を見せたのだ。その裏には、自分と同じような枠の女性ものまね芸人が増えていることに対する焦りと苛立ちが見え隠れしていた。  この日のミラクルの最高のネタは、準決勝で見せた「冬のオペラグラス」を歌う新田恵利のものまねだろう。元の歌を知っている人なら笑わずにはいられない再現性の高さ。新田のつたない歌声、微妙に外れる音程。それらを完璧に再現するという離れ業を演じたのだ。わざと下手に歌って笑わせるというのはたまにあるが、ほどほどに下手な歌をそのままほどほどに下手な状態で再現するというのはなかなかできることではない。ずば抜けた歌唱力の賜物だ。  うがった見方をすれば、このネタは、歌がうまいというだけでもてはやされている昨今の「ものまね新女王」と呼ばれたりしている後輩芸人に対する、ミラクルなりの宣戦布告でもあるのだろう。「本物のものまねっていうのは、こうやるんだよ!」と。  一視聴者の立場で言わせてもらえば、ものまね番組を見ていると「歌がうまいだけで別にそれほど似てはいないよね」とか、「それなりに似てはいるけど面白くはないし感動もしないよね」とか、そういうことを感じるときがたまにある。だが、ミラクルのネタにはそれがない。あふれるサービス精神、高いプロ意識、研ぎ澄まされた技術と発想力によって生み出された珠玉のものまねネタの数々。ミラクルひかるは、その負けん気の強さも含めて、ものまねに必要なあらゆる要素を持ちあわせている“奇跡”のものまね芸人だ。 (文=お笑い評論家・ラリー遠田) ●連載「この芸人を見よ!」INDEX 【第109回】スギちゃん  実直な人柄でチャンスをつかんだ「芸人再生工場の最終兵器」 【第108回】アンジャッシュ  “勘違いコント”のジャンルを築いた「コント職人のネクストステージ」 【第107回】2700  狂熱的に奏でられた「ナンセンスとリズムの融合」に笑いの根源を見る 【第106回】千鳥  いよいよ全国区に羽根を広げる「媚びない心」の切れ味 【第105回】渡辺直美 希代のドリームガールが見つけた「かわいいとブサイクの間にあるもの」 【第104回】ロバート コント日本一をかっさらった暴風雨・秋山竜次の芝居に宿る「殺気の正体」 【第103回】TKO 不遇を乗り越えたかつてのアイドル芸人が「太って咲かせた、もう一花」 【第102回】オアシズ それぞれにブスを昇華した「現実と空想のアンサンブル」 【第101回】スリムクラブ 最後のM-1を駆け抜けた「超スローテンポという革命」 【第100回】レイザーラモンRG  "吉本団体芸"が生んだ「強心臓のニューヒーロー」 【第99回】麒麟 5度の決勝進出が「M-1グランプリの申し子」をどう変えたか 【第98回】ピース 噛み合わない2つの破片が力ずくで組み上げた「笑いのパズル」 【第97回】次長課長 変幻自在のオールラウンダー河本を生かす、井上の「受け止めるツッコミ」 【第96回】 オセロ松嶋尚美 大先輩・鶴瓶に見初められ「褒められて咲いた大輪の花」 【第95回】 ダイノジ 雌伏16年──ついに訪れる「二頭の虎が目覚めるとき」 【第94回】 キングオブコメディ 極限の不運と"顔芸人"のレッテルを払拭して掴んだ「コント日本一」 【第93回】 山田邦子 史上初の「天下を取った女芸人」その栄光と転落のタレント人生 【第92回】エレキコミック 一度ハマるとクセになる!?「一点突破の納豆コント」 【第91回】野性爆弾 「遅れてきた吉本最終兵器」がブレイクを果たした秘密とは 【第90回】野沢直子 今振り返るカリスマ女芸人の「先駆者としての比類なき存在感」 【第89回】サバンナ 野生の勘で芸能界を疾走する「発展途上のロジカルモンスター」 【第88回】東京ダイナマイト 破壊なくして創造なし! ハチミツ流「笑いのセメントマッチ」 【第87回】トータルテンボス 進化を止めない本格派コンビを育てた「M-1急転直下の挫折劇」 【第86回】ロッチ  シンプルな構図でコントに魂を吹き込む「関係性のスペシャリティ」 【第85回】山崎邦正 ダウンタウンによって強制開花した「ヘタレの天才」が巻き起こす奇跡 【第84回】フルーツポンチ 確かな演技力でポストバブル世代に現出した「キザ男のリアリズム」 【第83回】よゐこ 爆発力と切れ味で支持層を拡大する「自然体のシュール」 【第82回】バッファロー吾郎 マニアック芸人の権化が極めた「もうひとつの天下」 【第81回】ドランクドラゴン 完璧な構築物に風穴を開けて回る「鈴木拓のガッカリ力」 【第80回】高田純次 還暦過ぎても華衰えぬ「日本一の適当男」が歩み続けた孤高の道程 【第79回】森三中  メンバーの結婚で進化する「ブスとブスとブスの関係性」 【第78回】Wコロン・ねづっち  「整いました!」なぞかけ芸が時代にハマった深い理由 【第77回】所ジョージ  突出した安定感を生み出すボーダレスな「私の世界」 【第76回】土田晃之  元ヤン、家電、ガンダム......でも嫌われない「ひな壇の神」の冴えたやりかた 【第75回】タカアンドトシ  非関西系漫才のツッコミ新境地「欧米か!」が生まれた理由 【第74回】キングコング西野亮廣  嫌われるには理由がある!? 天才を悩ませる「出た杭の憂鬱」 【第73回】椿鬼奴  虚栄心から自由になった女芸人の「自然体が放散する魅力」とは 【第72回】萩本欽一  テレビを作り、テレビに呑み込まれた「巨人の功罪」 【第71回】アンガールズ  キモカワ芸人が精緻に切り出した「人生のNGシーン」に宿る笑い 【第70回】エハラマサヒロ   「究極の器用貧乏芸人」が無限の笑いをコラージュする 【第69回】なだぎ武 R-1二連覇を成した演技派芸人の「本当の運命の出会い」とは 【第68回】いとうあさこ 悲観なき自虐を操る「アラフォー女性のしたたかなリアル」 【第67回】チュートリアル M-1完全優勝を勝ち取った「ひとつもボケない」漫才進化論 【第66回】松村邦洋 己を棄てて己を活かす「笑われる天才」が生きる道 【第65回】キャイ~ン・ウド鈴木 20年目の変わらぬ想い──「満面の笑顔で愛を叫ぶ」 【第64回】しずる 緻密なマーケティングと確かな演技力で突っ走る「腐女子枠のプリンス」 【第63回】青木さやか 仕事も家庭も......不器用に体現する「現代女性の映し鏡」 【第62回】 今田耕司 好きな司会者第3位にランクされる「代弁者としての3つの極意」 【第61回】我が家 「変幻自在のローテーション」が3人のキャラ薄をメリットに転化する 【第60回】ハライチ "ツッコミ"を棄てた関東M-1新世代が生み出す「面の笑い」とは? 【第59回】出川哲朗 稀代のリアクション芸人が「計算を超えた奇跡」を起こし続ける理由 【第58回】中川家 すべてはここから始まった!? 兄弟が奏でる「舞台芸と楽屋芸のハイブリッド」 【第57回】板尾創路 笑いの神に愛された男が泰然と歩む「天然と計算の境界線」 【第56回】清水ミチコ 対象者の心を浮き彫りにする「ものまねを超えた賢人の不真面目芸」 【第55回】とんねるず 暴れ放題で天下を取った「学生ノリと楽屋オチの帝王学」 【第54回】友近 孤高の女芸人が体現する「女としての業と生き様」 【第53回】ウンナン内村光良 受け継がれゆく遺伝子「終わらないコント愛」 【第52回】モンスターエンジン 結成2年でシーンを席巻する「高次元のバランス」 【第51回】関根勤 再評価される「妄想力」ひとり遊びが共感を呼ぶ2つの理由 【第50回】南海キャンディーズ しずちゃんを化けさせた山里亮太の「コンビ愛という魔法」 【第49回】フットボールアワー 無限の可能性を秘めた「ブサイクという隠れみの」 【第48回】ますだおかだ 「陽気なスベリ芸」という無敵のキャラクターが司る進化 【第47回】ナインティナイン あえて引き受ける「テレビ芸人としてのヒーロー像」 【第46回】インパルス タフなツッコミで狂気を切り崩す「極上のスリルを笑う世界」 【第45回】アンタッチャブル 「過剰なる気迫」がテレビサイズを突き抜ける 【第44回】おぎやはぎ 「場の空気を引き込む力」が放散し続ける規格外の違和感 【第43回】志村けん 「進化する全年齢型の笑い」が観る者を童心に帰らせる 【第42回】はるな愛 「すべてをさらして明るく美しく」新時代のオネエキャラ 【第41回】明石家さんま テレビが生んだ「史上最大お笑い怪獣」の行く末 【第40回】ブラックマヨネーズ コンプレックスを笑いに転化する「受け止める側の覚悟」 【第39回】笑い飯 Wボケ強行突破に見る「笑わせる者」としての誇りと闘争心 【第38回】笑福亭鶴瓶 愛されアナーキストが極めた「玄人による素人話芸」とは 【第37回】島田紳助 "永遠の二番手"を時代のトップに押し上げた「笑いと泣きの黄金率」 【第36回】東野幸治 氷の心を持つ芸人・東野幸治が生み出す「笑いの共犯関係」とは 【第35回】ハリセンボン 徹底した自己分析で見せる「ブス芸人の向こう側」 【第34回】FUJIWARA くすぶり続けたオールマイティ芸人の「二段構えの臨界点」 【第33回】ロンブー淳 の「不気味なる奔放」テレ朝『ロンドンハーツ』が嫌われる理由 【第32回】柳原可奈子 が切り拓くお笑い男女平等社会「女は笑いに向いているか?」 【第31回】松本人志 結婚発表で突如訪れたカリスマの「幼年期の終わり」 【第30回】はんにゃ アイドル人気を裏打ちする「喜劇人としての身体能力」 【第29回】ビートたけし が放った『FAMOSO』は新世紀版「たけしの挑戦状」か 【第28回】NON STYLE M-1王者が手にした「もうひとつの称号」とは 【第27回】ダチョウ倶楽部・上島竜兵 が"竜兵会"で体現する「新たなリーダー像」 【第26回】品川祐 人気者なのに愛されない芸人の「がむしゃらなリアル」 【第25回】タモリ アコムCM出演で失望? 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アンジャッシュ “勘違いコント”のジャンルを築いた「コント職人のネクストステージ」

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『アンジャッシュ ベストネタライブ』
(アニプレックス)
 4月10日、アンジャッシュの渡部建が『ホメ渡部の「ホメる技術」7』(プレジデント社)を出版した。お笑い界随一のホメ上手として知られる彼が、仕事や恋愛に役立つ「ホメる技術」の極意をつづっている。  東京・東高円寺に事務所を構えるプロダクション人力舎は、実力派の若手コント芸人を多数輩出していることで知られている。『キングオブコント』チャンピオンに輝いた東京03、キングオブコメディ、そして同大会ファイナリストのラバーガール、鬼ヶ島。個性豊かで確かな技術を備えたコント芸人が何組も在籍しているのだ。そんな「人力舎=コント」というパブリックイメージの原点になっているのは、アンジャッシュの存在だろう。彼らは人力舎のお笑い養成所「スクールJCA」の1期生・2期生であり、緻密に計算されたネタ作りには定評があった。コントを武器にして『爆笑オンエアバトル』(NHK)、『エンタの神様』(日本テレビ系)などのネタ番組に出演して人気を獲得。2000年代のお笑いブームの中心で活躍を続けて、「コント芸人」の代名詞ともいえる存在となった。  彼らの得意ネタは、通称「勘違いコント」と呼ばれる。2人の人間が、それぞれの置かれた状況を勘違いしたままで噛み合わない会話を進めていく、というもの。例えば、バイトの面接に来た男性役の児嶋一哉が、店員役の渡部と対面する。ちょっとした行き違いから渡部は児嶋のことを万引き犯と思い込んでいて、厳しい態度を取る。渡部が「君は見るからに(万引きを)やりそうだな」と言うと、児嶋はほめられていると思い込んで「ありがとうございます!」と返す。すると渡部が「ほめてないよ!」と怒鳴って、噛み合わないやりとりが延々と続いていく。この種のスタイリッシュな「勘違いコント」が彼らの十八番だった。  「スタイリッシュなコント職人」というコンビでのイメージを生かして、渡部はソロ活動でさらなるステップアップを成し遂げた。恋愛心理学に精通した彼は、お笑い界には珍しいスマートなモテキャラとして知られるようになった。一方の児嶋は、最近になって芸人たちのイジられ役としてブレイクしてきている。彼は、バラエティで何もできずに挙動不審な様子を見せて、馴染みの芸人たちにさんざんイジられる。いわば、一種のスベリキャラとして注目される存在になったのだ。  児嶋のスベリキャラは、ほかの芸人とは種類が違う。例えば、ますだおかだの岡田圭右のように、自ら積極的にギャグを放ってスベりに行くタイプでもないし、狩野英孝のようにほかの人がイジらずにはいられない愛すべき天然ボケというタイプでもない。児嶋がイジられるときには、必ずといっていいほど場の空気が凍り付く。ザキヤマ(山崎弘也)やおぎやはぎが児嶋をイジり始めると、周りに不穏が空気が漂い始める。そのときの観客や視聴者は「こんなきちんとした人をイジるのはかわいそう」と心配しているわけでもなければ、「ここまでダメな人をイジって笑いになるのか?」と不安がっているわけでもない。ただ、児嶋本人がイジられることに対して異常なほど構えてしまうため、その素振りが自然に見る側の気持ちを圧迫するのである。  その後、児嶋はイジりを嫌がり、イジられるのを必死で拒否しようとした挙げ句、最後に「うぉい!」などと自暴自棄にキレてみせる。それでもやっぱりウケないものはウケない。相変わらず場は凍り付いたまま。ただ、そこまでしてウケないこと自体が、笑いに飢えた芸人やお笑いファンからすると面白くて仕方がないので、彼らはそこで初めてニヤリと笑う。児嶋はイジリとイジメの境界線上で危ういバランスを取りながら、新たな形のスベリキャラを演じているのだ。  世間では「渡部が売れたおかげで、児嶋も脚光を浴びるようになった」と思われがちだが、実はそうとも言い切れない。「きっちりしたコントをやるアンジャッシュ」という世間のイメージを覆したのは、むしろスベリキャラの児嶋のほうだ。児嶋があえて隙を見せて、イジられる方向に一気にアクセルを踏んだことが、アンジャッシュ再ブレイクのきっかけとなった。  実際のところ、恋愛、グルメなどに精通し、端正な顔立ちでなんでも器用にこなす渡部は、見方によっては鼻持ちならない人物でもある。ただ、彼が世間にそう思われていないのは、それを紛らわすために児嶋が絶好の位置につけているからだ。児嶋は渡部の計算高さといやらしさを紛らわす、煙幕の役割を果たしている。渡部が児嶋を引き上げたというのも事実だが、児嶋が渡部を守っているというのもまた一面の真理なのだ。  コントの職人から、互いの個性を高め合う存在へ。「コント王国」としての人力舎の礎を築いたアンジャッシュの牙城は、まだまだ揺らぎそうにない。 (文=お笑い評論家・ラリー遠田) ●連載「この芸人を見よ!」INDEX 【第107回】2700  狂熱的に奏でられた「ナンセンスとリズムの融合」に笑いの根源を見る 【第106回】千鳥  いよいよ全国区に羽根を広げる「媚びない心」の切れ味 【第105回】渡辺直美 希代のドリームガールが見つけた「かわいいとブサイクの間にあるもの」 【第104回】ロバート コント日本一をかっさらった暴風雨・秋山竜次の芝居に宿る「殺気の正体」 【第103回】TKO 不遇を乗り越えたかつてのアイドル芸人が「太って咲かせた、もう一花」 【第102回】オアシズ それぞれにブスを昇華した「現実と空想のアンサンブル」 【第101回】スリムクラブ 最後のM-1を駆け抜けた「超スローテンポという革命」 【第100回】レイザーラモンRG  "吉本団体芸"が生んだ「強心臓のニューヒーロー」 【第99回】麒麟 5度の決勝進出が「M-1グランプリの申し子」をどう変えたか 【第98回】ピース 噛み合わない2つの破片が力ずくで組み上げた「笑いのパズル」 【第97回】次長課長 変幻自在のオールラウンダー河本を生かす、井上の「受け止めるツッコミ」 【第96回】 オセロ松嶋尚美 大先輩・鶴瓶に見初められ「褒められて咲いた大輪の花」 【第95回】 ダイノジ 雌伏16年──ついに訪れる「二頭の虎が目覚めるとき」 【第94回】 キングオブコメディ 極限の不運と"顔芸人"のレッテルを払拭して掴んだ「コント日本一」 【第93回】 山田邦子 史上初の「天下を取った女芸人」その栄光と転落のタレント人生 【第92回】エレキコミック 一度ハマるとクセになる!?「一点突破の納豆コント」 【第91回】野性爆弾 「遅れてきた吉本最終兵器」がブレイクを果たした秘密とは 【第90回】野沢直子 今振り返るカリスマ女芸人の「先駆者としての比類なき存在感」 【第89回】サバンナ 野生の勘で芸能界を疾走する「発展途上のロジカルモンスター」 【第88回】東京ダイナマイト 破壊なくして創造なし! ハチミツ流「笑いのセメントマッチ」 【第87回】トータルテンボス 進化を止めない本格派コンビを育てた「M-1急転直下の挫折劇」 【第86回】ロッチ  シンプルな構図でコントに魂を吹き込む「関係性のスペシャリティ」 【第85回】山崎邦正 ダウンタウンによって強制開花した「ヘタレの天才」が巻き起こす奇跡 【第84回】フルーツポンチ 確かな演技力でポストバブル世代に現出した「キザ男のリアリズム」 【第83回】よゐこ 爆発力と切れ味で支持層を拡大する「自然体のシュール」 【第82回】バッファロー吾郎 マニアック芸人の権化が極めた「もうひとつの天下」 【第81回】ドランクドラゴン 完璧な構築物に風穴を開けて回る「鈴木拓のガッカリ力」 【第80回】高田純次 還暦過ぎても華衰えぬ「日本一の適当男」が歩み続けた孤高の道程 【第79回】森三中  メンバーの結婚で進化する「ブスとブスとブスの関係性」 【第78回】Wコロン・ねづっち  「整いました!」なぞかけ芸が時代にハマった深い理由 【第77回】所ジョージ  突出した安定感を生み出すボーダレスな「私の世界」 【第76回】土田晃之  元ヤン、家電、ガンダム......でも嫌われない「ひな壇の神」の冴えたやりかた 【第75回】タカアンドトシ  非関西系漫才のツッコミ新境地「欧米か!」が生まれた理由 【第74回】キングコング西野亮廣  嫌われるには理由がある!? 天才を悩ませる「出た杭の憂鬱」 【第73回】椿鬼奴  虚栄心から自由になった女芸人の「自然体が放散する魅力」とは 【第72回】萩本欽一  テレビを作り、テレビに呑み込まれた「巨人の功罪」 【第71回】アンガールズ  キモカワ芸人が精緻に切り出した「人生のNGシーン」に宿る笑い 【第70回】エハラマサヒロ   「究極の器用貧乏芸人」が無限の笑いをコラージュする 【第69回】なだぎ武 R-1二連覇を成した演技派芸人の「本当の運命の出会い」とは 【第68回】いとうあさこ 悲観なき自虐を操る「アラフォー女性のしたたかなリアル」 【第67回】チュートリアル M-1完全優勝を勝ち取った「ひとつもボケない」漫才進化論 【第66回】松村邦洋 己を棄てて己を活かす「笑われる天才」が生きる道 【第65回】キャイ~ン・ウド鈴木 20年目の変わらぬ想い──「満面の笑顔で愛を叫ぶ」 【第64回】しずる 緻密なマーケティングと確かな演技力で突っ走る「腐女子枠のプリンス」 【第63回】青木さやか 仕事も家庭も......不器用に体現する「現代女性の映し鏡」 【第62回】 今田耕司 好きな司会者第3位にランクされる「代弁者としての3つの極意」 【第61回】我が家 「変幻自在のローテーション」が3人のキャラ薄をメリットに転化する 【第60回】ハライチ "ツッコミ"を棄てた関東M-1新世代が生み出す「面の笑い」とは? 【第59回】出川哲朗 稀代のリアクション芸人が「計算を超えた奇跡」を起こし続ける理由 【第58回】中川家 すべてはここから始まった!? 兄弟が奏でる「舞台芸と楽屋芸のハイブリッド」 【第57回】板尾創路 笑いの神に愛された男が泰然と歩む「天然と計算の境界線」 【第56回】清水ミチコ 対象者の心を浮き彫りにする「ものまねを超えた賢人の不真面目芸」 【第55回】とんねるず 暴れ放題で天下を取った「学生ノリと楽屋オチの帝王学」 【第54回】友近 孤高の女芸人が体現する「女としての業と生き様」 【第53回】ウンナン内村光良 受け継がれゆく遺伝子「終わらないコント愛」 【第52回】モンスターエンジン 結成2年でシーンを席巻する「高次元のバランス」 【第51回】関根勤 再評価される「妄想力」ひとり遊びが共感を呼ぶ2つの理由 【第50回】南海キャンディーズ しずちゃんを化けさせた山里亮太の「コンビ愛という魔法」 【第49回】フットボールアワー 無限の可能性を秘めた「ブサイクという隠れみの」 【第48回】ますだおかだ 「陽気なスベリ芸」という無敵のキャラクターが司る進化 【第47回】ナインティナイン あえて引き受ける「テレビ芸人としてのヒーロー像」 【第46回】インパルス タフなツッコミで狂気を切り崩す「極上のスリルを笑う世界」 【第45回】アンタッチャブル 「過剰なる気迫」がテレビサイズを突き抜ける 【第44回】おぎやはぎ 「場の空気を引き込む力」が放散し続ける規格外の違和感 【第43回】志村けん 「進化する全年齢型の笑い」が観る者を童心に帰らせる 【第42回】はるな愛 「すべてをさらして明るく美しく」新時代のオネエキャラ 【第41回】明石家さんま テレビが生んだ「史上最大お笑い怪獣」の行く末 【第40回】ブラックマヨネーズ コンプレックスを笑いに転化する「受け止める側の覚悟」 【第39回】笑い飯 Wボケ強行突破に見る「笑わせる者」としての誇りと闘争心 【第38回】笑福亭鶴瓶 愛されアナーキストが極めた「玄人による素人話芸」とは 【第37回】島田紳助 "永遠の二番手"を時代のトップに押し上げた「笑いと泣きの黄金率」 【第36回】東野幸治 氷の心を持つ芸人・東野幸治が生み出す「笑いの共犯関係」とは 【第35回】ハリセンボン 徹底した自己分析で見せる「ブス芸人の向こう側」 【第34回】FUJIWARA くすぶり続けたオールマイティ芸人の「二段構えの臨界点」 【第33回】ロンブー淳 の「不気味なる奔放」テレ朝『ロンドンハーツ』が嫌われる理由 【第32回】柳原可奈子 が切り拓くお笑い男女平等社会「女は笑いに向いているか?」 【第31回】松本人志 結婚発表で突如訪れたカリスマの「幼年期の終わり」 【第30回】はんにゃ アイドル人気を裏打ちする「喜劇人としての身体能力」 【第29回】ビートたけし が放った『FAMOSO』は新世紀版「たけしの挑戦状」か 【第28回】NON STYLE M-1王者が手にした「もうひとつの称号」とは 【第27回】ダチョウ倶楽部・上島竜兵 が"竜兵会"で体現する「新たなリーダー像」 【第26回】品川祐 人気者なのに愛されない芸人の「がむしゃらなリアル」 【第25回】タモリ アコムCM出演で失望? 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2700 狂熱的に奏でられた「ナンセンスとリズムの融合」に笑いの根源を見る

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『2700 BEST ALBUM 「SINGLES」』
(よしもとアール・アンドシー)
 お笑いの世界では、古くから音楽ネタというジャンルがあった。正確にいえば、今“お笑い”と呼ばれているものの一部は、音楽というジャンルから派生してきたということになるかもしれない。ギター漫談、替え歌、ダンスネタなど、音楽ネタを専門にする芸人はこれまでにも大勢いた。  そんな音楽ネタの革命児として近年、脚光を浴びているのが2700である。2700は、八十島とツネの2人から成るお笑いコンビ。2008年にコンビを結成した彼らは、最近になって急成長を遂げてブレイクを果たした。10年に『オールザッツ漫才』FootCutバトル優勝、11年には『キングオブコント』で準優勝を果たすなど、華々しい活躍を見せている。芸人たちがお笑い色の強い音楽パフォーマンスを見せるライブ番組『バカソウル』(テレビ東京系)でも、彼らは音楽ネタのカリスマとしてエース級の活躍をしている。  彼らは、自分たちのネタを「リズムネタ」と呼んでいる。黒のスーツに身を包んだ八十島が、リズムに乗せてアカペラで自作の歌を熱唱する。それに合わせて、ホットパンツ姿で一昔前のアイドルのようなファッションをしたツネがひたすら踊りまくる。八十島の自作ソングの歌詞は「右ひじ左ひじ交互に見て」「つま先のアイドル」「鎖骨がティリティ」など、意味がつかみにくいナンセンスなものばかり。ただ、それに合わせて迷いなく全力で踊るツネの姿を見ていると、理屈抜きに笑いがこみ上げてくる。彼らの奏でる音楽のリズムに乗っているうちに、彼らの笑いのリズムにも自然と乗せられてしまうのだ。  彼らの音楽ネタが、それまでのほかの芸人の音楽ネタと一線を画するのは、徹底してリズムに特化して音楽そのもので笑わせるネタであるということだ。例えば、同じ音楽ネタでも、はなわの「佐賀県」、牧伸二の「やんなっちゃった」などは、歌詞そのものが初めからネタとして成立していて、それを歌に乗せて聞かせるという形式になっている。  だが、2700は違う。2700が笑わせようとしているポイントは、まさにリズムそのものにある。彼らはリズムしか信じていない。例えば、はなわの「佐賀県」は、文字で書かれた歌詞を見ても笑えるし、それ自体がネタとして仕上がっている。だが、2700のネタにはそれがない。彼らのネタの面白さは、演じられたその瞬間にだけ生じる「ノリ」のようなものに、全面的に依存している。彼らが自分たちのネタを「リズムネタ」と称しているのはもっともなことだ。確かに、そこにはリズムしかない。2人の表情や動き、歌詞などは、あくまでもリズムを補完するものでしかない。主役はリズムなのだ。  また、彼らは、いわゆるコントや漫才を演じる際にも、それらを無理矢理「リズムネタ」の枠に押し込んで、リズムネタとして演じ切ってしまう。ややナンセンス気味の歌詞をリズムだけで押し切り、それで笑いを取るというのはかなり高度な技術が求められる。また、そのリズムに乗れるかどうかは人それぞれであるため、リスクが高いようにも見える。実際、2700のネタのどこが面白いのかわからないと感じる人もいるかもしれない。  だが、冷静に考えてみれば、笑いとはそもそも、そういうものではないだろうか。人によって好きな音楽の好みが分かれるように、何を面白いと感じるかは人それぞれ違う。だから、リズムネタの伝道師である2700に迷いはない。彼らの頭の中では「リズム=笑い」という等式が完全に成り立っている。あるリズムで観客を乗せられなかったら、また別のリズムを奏でるだけ。彼らにとって笑いとは実にシンプルなものだ。「新ネタ」ならぬ「新曲」を量産して、リズムネタのパイオニアとして勢いに乗る2700は、お笑い界屈指のヒットメーカーである。 (文=お笑い評論家・ラリー遠田) ●連載「この芸人を見よ!」INDEX 【第106回】千鳥  いよいよ全国区に羽根を広げる「媚びない心」の切れ味 【第105回】渡辺直美 希代のドリームガールが見つけた「かわいいとブサイクの間にあるもの」 【第104回】ロバート コント日本一をかっさらった暴風雨・秋山竜次の芝居に宿る「殺気の正体」 【第103回】TKO 不遇を乗り越えたかつてのアイドル芸人が「太って咲かせた、もう一花」 【第102回】オアシズ それぞれにブスを昇華した「現実と空想のアンサンブル」 【第101回】スリムクラブ 最後のM-1を駆け抜けた「超スローテンポという革命」 【第100回】レイザーラモンRG  "吉本団体芸"が生んだ「強心臓のニューヒーロー」 【第99回】麒麟 5度の決勝進出が「M-1グランプリの申し子」をどう変えたか 【第98回】ピース 噛み合わない2つの破片が力ずくで組み上げた「笑いのパズル」 【第97回】次長課長 変幻自在のオールラウンダー河本を生かす、井上の「受け止めるツッコミ」 【第96回】 オセロ松嶋尚美 大先輩・鶴瓶に見初められ「褒められて咲いた大輪の花」 【第95回】 ダイノジ 雌伏16年──ついに訪れる「二頭の虎が目覚めるとき」 【第94回】 キングオブコメディ 極限の不運と"顔芸人"のレッテルを払拭して掴んだ「コント日本一」 【第93回】 山田邦子 史上初の「天下を取った女芸人」その栄光と転落のタレント人生 【第92回】エレキコミック 一度ハマるとクセになる!?「一点突破の納豆コント」 【第91回】野性爆弾 「遅れてきた吉本最終兵器」がブレイクを果たした秘密とは 【第90回】野沢直子 今振り返るカリスマ女芸人の「先駆者としての比類なき存在感」 【第89回】サバンナ 野生の勘で芸能界を疾走する「発展途上のロジカルモンスター」 【第88回】東京ダイナマイト 破壊なくして創造なし! ハチミツ流「笑いのセメントマッチ」 【第87回】トータルテンボス 進化を止めない本格派コンビを育てた「M-1急転直下の挫折劇」 【第86回】ロッチ  シンプルな構図でコントに魂を吹き込む「関係性のスペシャリティ」 【第85回】山崎邦正 ダウンタウンによって強制開花した「ヘタレの天才」が巻き起こす奇跡 【第84回】フルーツポンチ 確かな演技力でポストバブル世代に現出した「キザ男のリアリズム」 【第83回】よゐこ 爆発力と切れ味で支持層を拡大する「自然体のシュール」 【第82回】バッファロー吾郎 マニアック芸人の権化が極めた「もうひとつの天下」 【第81回】ドランクドラゴン 完璧な構築物に風穴を開けて回る「鈴木拓のガッカリ力」 【第80回】高田純次 還暦過ぎても華衰えぬ「日本一の適当男」が歩み続けた孤高の道程 【第79回】森三中  メンバーの結婚で進化する「ブスとブスとブスの関係性」 【第78回】Wコロン・ねづっち  「整いました!」なぞかけ芸が時代にハマった深い理由 【第77回】所ジョージ  突出した安定感を生み出すボーダレスな「私の世界」 【第76回】土田晃之  元ヤン、家電、ガンダム......でも嫌われない「ひな壇の神」の冴えたやりかた 【第75回】タカアンドトシ  非関西系漫才のツッコミ新境地「欧米か!」が生まれた理由 【第74回】キングコング西野亮廣  嫌われるには理由がある!? 天才を悩ませる「出た杭の憂鬱」 【第73回】椿鬼奴  虚栄心から自由になった女芸人の「自然体が放散する魅力」とは 【第72回】萩本欽一  テレビを作り、テレビに呑み込まれた「巨人の功罪」 【第71回】アンガールズ  キモカワ芸人が精緻に切り出した「人生のNGシーン」に宿る笑い 【第70回】エハラマサヒロ   「究極の器用貧乏芸人」が無限の笑いをコラージュする 【第69回】なだぎ武 R-1二連覇を成した演技派芸人の「本当の運命の出会い」とは 【第68回】いとうあさこ 悲観なき自虐を操る「アラフォー女性のしたたかなリアル」 【第67回】チュートリアル M-1完全優勝を勝ち取った「ひとつもボケない」漫才進化論 【第66回】松村邦洋 己を棄てて己を活かす「笑われる天才」が生きる道 【第65回】キャイ~ン・ウド鈴木 20年目の変わらぬ想い──「満面の笑顔で愛を叫ぶ」 【第64回】しずる 緻密なマーケティングと確かな演技力で突っ走る「腐女子枠のプリンス」 【第63回】青木さやか 仕事も家庭も......不器用に体現する「現代女性の映し鏡」 【第62回】 今田耕司 好きな司会者第3位にランクされる「代弁者としての3つの極意」 【第61回】我が家 「変幻自在のローテーション」が3人のキャラ薄をメリットに転化する 【第60回】ハライチ "ツッコミ"を棄てた関東M-1新世代が生み出す「面の笑い」とは? 【第59回】出川哲朗 稀代のリアクション芸人が「計算を超えた奇跡」を起こし続ける理由 【第58回】中川家 すべてはここから始まった!? 兄弟が奏でる「舞台芸と楽屋芸のハイブリッド」 【第57回】板尾創路 笑いの神に愛された男が泰然と歩む「天然と計算の境界線」 【第56回】清水ミチコ 対象者の心を浮き彫りにする「ものまねを超えた賢人の不真面目芸」 【第55回】とんねるず 暴れ放題で天下を取った「学生ノリと楽屋オチの帝王学」 【第54回】友近 孤高の女芸人が体現する「女としての業と生き様」 【第53回】ウンナン内村光良 受け継がれゆく遺伝子「終わらないコント愛」 【第52回】モンスターエンジン 結成2年でシーンを席巻する「高次元のバランス」 【第51回】関根勤 再評価される「妄想力」ひとり遊びが共感を呼ぶ2つの理由 【第50回】南海キャンディーズ しずちゃんを化けさせた山里亮太の「コンビ愛という魔法」 【第49回】フットボールアワー 無限の可能性を秘めた「ブサイクという隠れみの」 【第48回】ますだおかだ 「陽気なスベリ芸」という無敵のキャラクターが司る進化 【第47回】ナインティナイン あえて引き受ける「テレビ芸人としてのヒーロー像」 【第46回】インパルス タフなツッコミで狂気を切り崩す「極上のスリルを笑う世界」 【第45回】アンタッチャブル 「過剰なる気迫」がテレビサイズを突き抜ける 【第44回】おぎやはぎ 「場の空気を引き込む力」が放散し続ける規格外の違和感 【第43回】志村けん 「進化する全年齢型の笑い」が観る者を童心に帰らせる 【第42回】はるな愛 「すべてをさらして明るく美しく」新時代のオネエキャラ 【第41回】明石家さんま テレビが生んだ「史上最大お笑い怪獣」の行く末 【第40回】ブラックマヨネーズ コンプレックスを笑いに転化する「受け止める側の覚悟」 【第39回】笑い飯 Wボケ強行突破に見る「笑わせる者」としての誇りと闘争心 【第38回】笑福亭鶴瓶 愛されアナーキストが極めた「玄人による素人話芸」とは 【第37回】島田紳助 "永遠の二番手"を時代のトップに押し上げた「笑いと泣きの黄金率」 【第36回】東野幸治 氷の心を持つ芸人・東野幸治が生み出す「笑いの共犯関係」とは 【第35回】ハリセンボン 徹底した自己分析で見せる「ブス芸人の向こう側」 【第34回】FUJIWARA くすぶり続けたオールマイティ芸人の「二段構えの臨界点」 【第33回】ロンブー淳 の「不気味なる奔放」テレ朝『ロンドンハーツ』が嫌われる理由 【第32回】柳原可奈子 が切り拓くお笑い男女平等社会「女は笑いに向いているか?」 【第31回】松本人志 結婚発表で突如訪れたカリスマの「幼年期の終わり」 【第30回】はんにゃ アイドル人気を裏打ちする「喜劇人としての身体能力」 【第29回】ビートたけし が放った『FAMOSO』は新世紀版「たけしの挑戦状」か 【第28回】NON STYLE M-1王者が手にした「もうひとつの称号」とは 【第27回】ダチョウ倶楽部・上島竜兵 が"竜兵会"で体現する「新たなリーダー像」 【第26回】品川祐 人気者なのに愛されない芸人の「がむしゃらなリアル」 【第25回】タモリ アコムCM出演で失望? 既存イメージと「タモリ的なるもの」 【第24回】ケンドーコバヤシ 「時代が追いついてきた」彼がすべらない3つの理由 【第23回】カンニング竹山 「理由なき怒りの刃」を収めた先に見る未来 【第22回】ナイツ 「星を継ぐ者」古臭さを武器に変えた浅草最強の新世代 【第21回】立川談志 孤高の家元が歩み続ける「死にぞこないの夢」の中 【第20回】バカリズム 業界内も絶賛する「フォーマット」としての革新性 【第19回】劇団ひとり 結婚会見に垣間見た芸人の「フェイクとリアル」 【第18回】オードリー 挫折の末に磨き上げた「春日」その比類なき存在 【第17回】千原兄弟 東京進出13年目 「真のブレイク」とは 【第16回】狩野英孝 「レッドカーペットの申し子」の進化するスベリキャラ 【第15回】サンドウィッチマン 「ドラマとしてのM-1」を体現した前王者 【第14回】小島よしお 「キング・オブ・一発屋」のキャラクター戦略 【第13回】U字工事 M-1決勝出場「北関東の星」が急成長を遂げた理由 【第12回】江頭2:50 空気を読んで無茶をやる「笑いの求道者」 【第11回】バナナマン 実力派を変革に導いた「ブサイク顔面芸」の衝撃 【第10回】山本高広 「偶像は死んだ」ものまね芸人の破壊力 【第09回】東京03 三者三様のキャラクターが描き出す「日常のリアル」 【第08回】ジャルジャル 「コント冬の時代」に生れ落ちた寵児 【第07回】爆笑問題・太田光 誤解を恐れない「なんちゃってインテリ」 【第06回】世界のナベアツ 「アホを突き詰める」究極のオリジナリティ 【第05回】伊集院光 ラジオキングが磨き上げた「空気を形にする力」 【第04回】鳥居みゆき 強靭な妄想キャラを支える「比類なき覚悟」 【第03回】くりぃむしちゅー有田哲平 が見せる「引き芸の境地」 【第02回】オリエンタルラジオ 「華やかな挫折の先に」 【第01回】有吉弘行 が手にした「毒舌の免罪符」

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『2700 BEST ALBUM 「SINGLES」』
(よしもとアール・アンドシー)
 お笑いの世界では、古くから音楽ネタというジャンルがあった。正確にいえば、今“お笑い”と呼ばれているものの一部は、音楽というジャンルから派生してきたということになるかもしれない。ギター漫談、替え歌、ダンスネタなど、音楽ネタを専門にする芸人はこれまでにも大勢いた。  そんな音楽ネタの革命児として近年、脚光を浴びているのが2700である。2700は、八十島とツネの2人から成るお笑いコンビ。2008年にコンビを結成した彼らは、最近になって急成長を遂げてブレイクを果たした。10年に『オールザッツ漫才』FootCutバトル優勝、11年には『キングオブコント』で準優勝を果たすなど、華々しい活躍を見せている。芸人たちがお笑い色の強い音楽パフォーマンスを見せるライブ番組『バカソウル』(テレビ東京系)でも、彼らは音楽ネタのカリスマとしてエース級の活躍をしている。  彼らは、自分たちのネタを「リズムネタ」と呼んでいる。黒のスーツに身を包んだ八十島が、リズムに乗せてアカペラで自作の歌を熱唱する。それに合わせて、ホットパンツ姿で一昔前のアイドルのようなファッションをしたツネがひたすら踊りまくる。八十島の自作ソングの歌詞は「右ひじ左ひじ交互に見て」「つま先のアイドル」「鎖骨がティリティ」など、意味がつかみにくいナンセンスなものばかり。ただ、それに合わせて迷いなく全力で踊るツネの姿を見ていると、理屈抜きに笑いがこみ上げてくる。彼らの奏でる音楽のリズムに乗っているうちに、彼らの笑いのリズムにも自然と乗せられてしまうのだ。  彼らの音楽ネタが、それまでのほかの芸人の音楽ネタと一線を画するのは、徹底してリズムに特化して音楽そのもので笑わせるネタであるということだ。例えば、同じ音楽ネタでも、はなわの「佐賀県」、牧伸二の「やんなっちゃった」などは、歌詞そのものが初めからネタとして成立していて、それを歌に乗せて聞かせるという形式になっている。  だが、2700は違う。2700が笑わせようとしているポイントは、まさにリズムそのものにある。彼らはリズムしか信じていない。例えば、はなわの「佐賀県」は、文字で書かれた歌詞を見ても笑えるし、それ自体がネタとして仕上がっている。だが、2700のネタにはそれがない。彼らのネタの面白さは、演じられたその瞬間にだけ生じる「ノリ」のようなものに、全面的に依存している。彼らが自分たちのネタを「リズムネタ」と称しているのはもっともなことだ。確かに、そこにはリズムしかない。2人の表情や動き、歌詞などは、あくまでもリズムを補完するものでしかない。主役はリズムなのだ。  また、彼らは、いわゆるコントや漫才を演じる際にも、それらを無理矢理「リズムネタ」の枠に押し込んで、リズムネタとして演じ切ってしまう。ややナンセンス気味の歌詞をリズムだけで押し切り、それで笑いを取るというのはかなり高度な技術が求められる。また、そのリズムに乗れるかどうかは人それぞれであるため、リスクが高いようにも見える。実際、2700のネタのどこが面白いのかわからないと感じる人もいるかもしれない。  だが、冷静に考えてみれば、笑いとはそもそも、そういうものではないだろうか。人によって好きな音楽の好みが分かれるように、何を面白いと感じるかは人それぞれ違う。だから、リズムネタの伝道師である2700に迷いはない。彼らの頭の中では「リズム=笑い」という等式が完全に成り立っている。あるリズムで観客を乗せられなかったら、また別のリズムを奏でるだけ。彼らにとって笑いとは実にシンプルなものだ。「新ネタ」ならぬ「新曲」を量産して、リズムネタのパイオニアとして勢いに乗る2700は、お笑い界屈指のヒットメーカーである。 (文=お笑い評論家・ラリー遠田) ●連載「この芸人を見よ!」INDEX 【第106回】千鳥  いよいよ全国区に羽根を広げる「媚びない心」の切れ味 【第105回】渡辺直美 希代のドリームガールが見つけた「かわいいとブサイクの間にあるもの」 【第104回】ロバート コント日本一をかっさらった暴風雨・秋山竜次の芝居に宿る「殺気の正体」 【第103回】TKO 不遇を乗り越えたかつてのアイドル芸人が「太って咲かせた、もう一花」 【第102回】オアシズ それぞれにブスを昇華した「現実と空想のアンサンブル」 【第101回】スリムクラブ 最後のM-1を駆け抜けた「超スローテンポという革命」 【第100回】レイザーラモンRG  "吉本団体芸"が生んだ「強心臓のニューヒーロー」 【第99回】麒麟 5度の決勝進出が「M-1グランプリの申し子」をどう変えたか 【第98回】ピース 噛み合わない2つの破片が力ずくで組み上げた「笑いのパズル」 【第97回】次長課長 変幻自在のオールラウンダー河本を生かす、井上の「受け止めるツッコミ」 【第96回】 オセロ松嶋尚美 大先輩・鶴瓶に見初められ「褒められて咲いた大輪の花」 【第95回】 ダイノジ 雌伏16年──ついに訪れる「二頭の虎が目覚めるとき」 【第94回】 キングオブコメディ 極限の不運と"顔芸人"のレッテルを払拭して掴んだ「コント日本一」 【第93回】 山田邦子 史上初の「天下を取った女芸人」その栄光と転落のタレント人生 【第92回】エレキコミック 一度ハマるとクセになる!?「一点突破の納豆コント」 【第91回】野性爆弾 「遅れてきた吉本最終兵器」がブレイクを果たした秘密とは 【第90回】野沢直子 今振り返るカリスマ女芸人の「先駆者としての比類なき存在感」 【第89回】サバンナ 野生の勘で芸能界を疾走する「発展途上のロジカルモンスター」 【第88回】東京ダイナマイト 破壊なくして創造なし! ハチミツ流「笑いのセメントマッチ」 【第87回】トータルテンボス 進化を止めない本格派コンビを育てた「M-1急転直下の挫折劇」 【第86回】ロッチ  シンプルな構図でコントに魂を吹き込む「関係性のスペシャリティ」 【第85回】山崎邦正 ダウンタウンによって強制開花した「ヘタレの天才」が巻き起こす奇跡 【第84回】フルーツポンチ 確かな演技力でポストバブル世代に現出した「キザ男のリアリズム」 【第83回】よゐこ 爆発力と切れ味で支持層を拡大する「自然体のシュール」 【第82回】バッファロー吾郎 マニアック芸人の権化が極めた「もうひとつの天下」 【第81回】ドランクドラゴン 完璧な構築物に風穴を開けて回る「鈴木拓のガッカリ力」 【第80回】高田純次 還暦過ぎても華衰えぬ「日本一の適当男」が歩み続けた孤高の道程 【第79回】森三中  メンバーの結婚で進化する「ブスとブスとブスの関係性」 【第78回】Wコロン・ねづっち  「整いました!」なぞかけ芸が時代にハマった深い理由 【第77回】所ジョージ  突出した安定感を生み出すボーダレスな「私の世界」 【第76回】土田晃之  元ヤン、家電、ガンダム......でも嫌われない「ひな壇の神」の冴えたやりかた 【第75回】タカアンドトシ  非関西系漫才のツッコミ新境地「欧米か!」が生まれた理由 【第74回】キングコング西野亮廣  嫌われるには理由がある!? 天才を悩ませる「出た杭の憂鬱」 【第73回】椿鬼奴  虚栄心から自由になった女芸人の「自然体が放散する魅力」とは 【第72回】萩本欽一  テレビを作り、テレビに呑み込まれた「巨人の功罪」 【第71回】アンガールズ  キモカワ芸人が精緻に切り出した「人生のNGシーン」に宿る笑い 【第70回】エハラマサヒロ   「究極の器用貧乏芸人」が無限の笑いをコラージュする 【第69回】なだぎ武 R-1二連覇を成した演技派芸人の「本当の運命の出会い」とは 【第68回】いとうあさこ 悲観なき自虐を操る「アラフォー女性のしたたかなリアル」 【第67回】チュートリアル M-1完全優勝を勝ち取った「ひとつもボケない」漫才進化論 【第66回】松村邦洋 己を棄てて己を活かす「笑われる天才」が生きる道 【第65回】キャイ~ン・ウド鈴木 20年目の変わらぬ想い──「満面の笑顔で愛を叫ぶ」 【第64回】しずる 緻密なマーケティングと確かな演技力で突っ走る「腐女子枠のプリンス」 【第63回】青木さやか 仕事も家庭も......不器用に体現する「現代女性の映し鏡」 【第62回】 今田耕司 好きな司会者第3位にランクされる「代弁者としての3つの極意」 【第61回】我が家 「変幻自在のローテーション」が3人のキャラ薄をメリットに転化する 【第60回】ハライチ "ツッコミ"を棄てた関東M-1新世代が生み出す「面の笑い」とは? 【第59回】出川哲朗 稀代のリアクション芸人が「計算を超えた奇跡」を起こし続ける理由 【第58回】中川家 すべてはここから始まった!? 兄弟が奏でる「舞台芸と楽屋芸のハイブリッド」 【第57回】板尾創路 笑いの神に愛された男が泰然と歩む「天然と計算の境界線」 【第56回】清水ミチコ 対象者の心を浮き彫りにする「ものまねを超えた賢人の不真面目芸」 【第55回】とんねるず 暴れ放題で天下を取った「学生ノリと楽屋オチの帝王学」 【第54回】友近 孤高の女芸人が体現する「女としての業と生き様」 【第53回】ウンナン内村光良 受け継がれゆく遺伝子「終わらないコント愛」 【第52回】モンスターエンジン 結成2年でシーンを席巻する「高次元のバランス」 【第51回】関根勤 再評価される「妄想力」ひとり遊びが共感を呼ぶ2つの理由 【第50回】南海キャンディーズ しずちゃんを化けさせた山里亮太の「コンビ愛という魔法」 【第49回】フットボールアワー 無限の可能性を秘めた「ブサイクという隠れみの」 【第48回】ますだおかだ 「陽気なスベリ芸」という無敵のキャラクターが司る進化 【第47回】ナインティナイン あえて引き受ける「テレビ芸人としてのヒーロー像」 【第46回】インパルス タフなツッコミで狂気を切り崩す「極上のスリルを笑う世界」 【第45回】アンタッチャブル 「過剰なる気迫」がテレビサイズを突き抜ける 【第44回】おぎやはぎ 「場の空気を引き込む力」が放散し続ける規格外の違和感 【第43回】志村けん 「進化する全年齢型の笑い」が観る者を童心に帰らせる 【第42回】はるな愛 「すべてをさらして明るく美しく」新時代のオネエキャラ 【第41回】明石家さんま テレビが生んだ「史上最大お笑い怪獣」の行く末 【第40回】ブラックマヨネーズ コンプレックスを笑いに転化する「受け止める側の覚悟」 【第39回】笑い飯 Wボケ強行突破に見る「笑わせる者」としての誇りと闘争心 【第38回】笑福亭鶴瓶 愛されアナーキストが極めた「玄人による素人話芸」とは 【第37回】島田紳助 "永遠の二番手"を時代のトップに押し上げた「笑いと泣きの黄金率」 【第36回】東野幸治 氷の心を持つ芸人・東野幸治が生み出す「笑いの共犯関係」とは 【第35回】ハリセンボン 徹底した自己分析で見せる「ブス芸人の向こう側」 【第34回】FUJIWARA くすぶり続けたオールマイティ芸人の「二段構えの臨界点」 【第33回】ロンブー淳 の「不気味なる奔放」テレ朝『ロンドンハーツ』が嫌われる理由 【第32回】柳原可奈子 が切り拓くお笑い男女平等社会「女は笑いに向いているか?」 【第31回】松本人志 結婚発表で突如訪れたカリスマの「幼年期の終わり」 【第30回】はんにゃ アイドル人気を裏打ちする「喜劇人としての身体能力」 【第29回】ビートたけし が放った『FAMOSO』は新世紀版「たけしの挑戦状」か 【第28回】NON STYLE M-1王者が手にした「もうひとつの称号」とは 【第27回】ダチョウ倶楽部・上島竜兵 が"竜兵会"で体現する「新たなリーダー像」 【第26回】品川祐 人気者なのに愛されない芸人の「がむしゃらなリアル」 【第25回】タモリ アコムCM出演で失望? 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千鳥 いよいよ全国区に羽根を広げる「媚びない心」の切れ味

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『千鳥の白いピアノを山の頂上に運ぶ』
(よしもとアール・アンドシー)
 関西を拠点に活動している千鳥が、ついに東京進出を果たしつつある。この4月からは22時台に進出した『ピカルの定理』(フジテレビ系)でもレギュラーメンバーの仲間入りを果たした。関西ではロケ芸人として名が知られていた千鳥の勇姿を、全国ネットで見かける機会も少しずつ増えてきている。  千鳥が漫才の祭典『M-1グランプリ』で初めて決勝の舞台に立ったのは2003年。その印象は強烈なものだった。1番手として舞台に上がった彼らが披露したネタは、司会の今田耕司から「エロ漫才」と呼ばれる衝撃的な代物だった。  ボケ担当の大悟は、ツッコミ担当の相方のノブを女性役にして、幼なじみの女の子と虫取りに行った思い出を再現する。その設定で話が進んでいく中で、不意に大悟は女の子の胸に止まった虫を捕るふりをして彼女の胸を触る。そんな彼をノブ演じる女の子がやんわりとたしなめる演技も妙に生々しい。客席は静まり返り、百戦錬磨の審査員たちもただ苦笑いを浮かべるばかりだった。全国ネットの漫才番組にあえてこんなネタをぶつけてくるところに、千鳥の芸人としてのこだわりの一端がうかがえる。この年、千鳥は決勝で最下位の9位。それ以降も、決勝には三度上がっているが9位、6位、8位という結果に終わっている。  そんな彼らが漫才の全国大会で華麗な復活を遂げたのは11年。『THE MANZAI』に出場した彼らは決勝に駒を進め、そこで爆笑を勝ち取った。決勝16組の中から最終4組にまで勝ち残り、3位入賞を果たした。ここで自分たちの漫才の面白さを見せつけた千鳥は、ようやく全国区への足がかりをつかんだ。  彼らの漫才師としての特徴は、第一にネタの種類が豊富であるということ。彼らの漫才には決まったパターンのようなものがほとんどなく、ひとつひとつのネタが違っている。ひとつのボケを何度も繰り返して用いるネタもあれば、わかりやすい笑いどころをあえて設けないストーリー性の高いネタもあるし、リズミカルなしゃべりの掛け合いで笑わせるネタもある。設定が奇抜なものから下ネタ交じりのものまで、とにかく圧倒的に種類が豊富なのだ。  また、彼らの漫才の技術も折り紙付きだ。チンピラのような怪しい雰囲気を持つボケの大悟は、岡山弁のよどみない語り口で一瞬にして自分の世界を作ってしまう。また、ツッコミのノブは、抜き身の日本刀のように鋭い大悟のボケに対して、いなすようにして優しくツッコミをいれる。シンプルな訂正ツッコミをするだけでなく、ボケを否定せず聞き流すこともあるし、ツッコミのフレーズをひとひねりして笑いを増幅させることもある。一見温厚そうなノブのえびす顔の奥には、漫才サイボーグとしての確かな技術が潜んでいるのだ。  ただ、千鳥の漫才で最も注目すべきは、その堂々とした姿勢だ。彼らは決して観客に媚びない。大悟は自分が面白いと思うものに対して揺るぎない信念を持ち、それを荒削りな状態でやや無造作に観客にぶつけてみせる。恐らく彼にとって漫才とは、自分の生き方を表現することなのだ。  だからこそ、大悟の放つボケにはほかの漫才師にはない、生き生きとした魅力がある。それを受け止めて、できるだけわかりやすい形にして観客に提示するのが相方のノブの役目だ。ノブはツッコミという形で常識を提示して、大悟の狂気が暴走するのをギリギリのところで引き留めているのだ。  千鳥の2人の関係性は、バンジージャンプを試みる人とそれを支える命綱にたとえられる。大悟が無謀にも崖の上から飛び降りると、そんな彼をノブは命綱として必死でつなぎ止めようとする。このスリリングな関係こそが、千鳥の漫才がはらんでいるゾクゾクするような魅力の源泉だ。彼らは、全国区のテレビで自分たちの持ち味である「媚びない笑い」をどこまで進化させることができるのだろうか。 (文=お笑い評論家・ラリー遠田) ●連載「この芸人を見よ!」INDEX 【第105回】渡辺直美 希代のドリームガールが見つけた「かわいいとブサイクの間にあるもの」 【第104回】ロバート コント日本一をかっさらった暴風雨・秋山竜次の芝居に宿る「殺気の正体」 【第103回】TKO 不遇を乗り越えたかつてのアイドル芸人が「太って咲かせた、もう一花」 【第102回】オアシズ それぞれにブスを昇華した「現実と空想のアンサンブル」 【第101回】スリムクラブ 最後のM-1を駆け抜けた「超スローテンポという革命」 【第100回】レイザーラモンRG  "吉本団体芸"が生んだ「強心臓のニューヒーロー」 【第99回】麒麟 5度の決勝進出が「M-1グランプリの申し子」をどう変えたか 【第98回】ピース 噛み合わない2つの破片が力ずくで組み上げた「笑いのパズル」 【第97回】次長課長 変幻自在のオールラウンダー河本を生かす、井上の「受け止めるツッコミ」 【第96回】 オセロ松嶋尚美 大先輩・鶴瓶に見初められ「褒められて咲いた大輪の花」 【第95回】 ダイノジ 雌伏16年──ついに訪れる「二頭の虎が目覚めるとき」 【第94回】 キングオブコメディ 極限の不運と"顔芸人"のレッテルを払拭して掴んだ「コント日本一」 【第93回】 山田邦子 史上初の「天下を取った女芸人」その栄光と転落のタレント人生 【第92回】エレキコミック 一度ハマるとクセになる!?「一点突破の納豆コント」 【第91回】野性爆弾 「遅れてきた吉本最終兵器」がブレイクを果たした秘密とは 【第90回】野沢直子 今振り返るカリスマ女芸人の「先駆者としての比類なき存在感」 【第89回】サバンナ 野生の勘で芸能界を疾走する「発展途上のロジカルモンスター」 【第88回】東京ダイナマイト 破壊なくして創造なし! ハチミツ流「笑いのセメントマッチ」 【第87回】トータルテンボス 進化を止めない本格派コンビを育てた「M-1急転直下の挫折劇」 【第86回】ロッチ  シンプルな構図でコントに魂を吹き込む「関係性のスペシャリティ」 【第85回】山崎邦正 ダウンタウンによって強制開花した「ヘタレの天才」が巻き起こす奇跡 【第84回】フルーツポンチ 確かな演技力でポストバブル世代に現出した「キザ男のリアリズム」 【第83回】よゐこ 爆発力と切れ味で支持層を拡大する「自然体のシュール」 【第82回】バッファロー吾郎 マニアック芸人の権化が極めた「もうひとつの天下」 【第81回】ドランクドラゴン 完璧な構築物に風穴を開けて回る「鈴木拓のガッカリ力」 【第80回】高田純次 還暦過ぎても華衰えぬ「日本一の適当男」が歩み続けた孤高の道程 【第79回】森三中  メンバーの結婚で進化する「ブスとブスとブスの関係性」 【第78回】Wコロン・ねづっち  「整いました!」なぞかけ芸が時代にハマった深い理由 【第77回】所ジョージ  突出した安定感を生み出すボーダレスな「私の世界」 【第76回】土田晃之  元ヤン、家電、ガンダム......でも嫌われない「ひな壇の神」の冴えたやりかた 【第75回】タカアンドトシ  非関西系漫才のツッコミ新境地「欧米か!」が生まれた理由 【第74回】キングコング西野亮廣  嫌われるには理由がある!? 天才を悩ませる「出た杭の憂鬱」 【第73回】椿鬼奴  虚栄心から自由になった女芸人の「自然体が放散する魅力」とは 【第72回】萩本欽一  テレビを作り、テレビに呑み込まれた「巨人の功罪」 【第71回】アンガールズ  キモカワ芸人が精緻に切り出した「人生のNGシーン」に宿る笑い 【第70回】エハラマサヒロ   「究極の器用貧乏芸人」が無限の笑いをコラージュする 【第69回】なだぎ武 R-1二連覇を成した演技派芸人の「本当の運命の出会い」とは 【第68回】いとうあさこ 悲観なき自虐を操る「アラフォー女性のしたたかなリアル」 【第67回】チュートリアル M-1完全優勝を勝ち取った「ひとつもボケない」漫才進化論 【第66回】松村邦洋 己を棄てて己を活かす「笑われる天才」が生きる道 【第65回】キャイ~ン・ウド鈴木 20年目の変わらぬ想い──「満面の笑顔で愛を叫ぶ」 【第64回】しずる 緻密なマーケティングと確かな演技力で突っ走る「腐女子枠のプリンス」 【第63回】青木さやか 仕事も家庭も......不器用に体現する「現代女性の映し鏡」 【第62回】 今田耕司 好きな司会者第3位にランクされる「代弁者としての3つの極意」 【第61回】我が家 「変幻自在のローテーション」が3人のキャラ薄をメリットに転化する 【第60回】ハライチ "ツッコミ"を棄てた関東M-1新世代が生み出す「面の笑い」とは? 【第59回】出川哲朗 稀代のリアクション芸人が「計算を超えた奇跡」を起こし続ける理由 【第58回】中川家 すべてはここから始まった!? 兄弟が奏でる「舞台芸と楽屋芸のハイブリッド」 【第57回】板尾創路 笑いの神に愛された男が泰然と歩む「天然と計算の境界線」 【第56回】清水ミチコ 対象者の心を浮き彫りにする「ものまねを超えた賢人の不真面目芸」 【第55回】とんねるず 暴れ放題で天下を取った「学生ノリと楽屋オチの帝王学」 【第54回】友近 孤高の女芸人が体現する「女としての業と生き様」 【第53回】ウンナン内村光良 受け継がれゆく遺伝子「終わらないコント愛」 【第52回】モンスターエンジン 結成2年でシーンを席巻する「高次元のバランス」 【第51回】関根勤 再評価される「妄想力」ひとり遊びが共感を呼ぶ2つの理由 【第50回】南海キャンディーズ しずちゃんを化けさせた山里亮太の「コンビ愛という魔法」 【第49回】フットボールアワー 無限の可能性を秘めた「ブサイクという隠れみの」 【第48回】ますだおかだ 「陽気なスベリ芸」という無敵のキャラクターが司る進化 【第47回】ナインティナイン あえて引き受ける「テレビ芸人としてのヒーロー像」 【第46回】インパルス タフなツッコミで狂気を切り崩す「極上のスリルを笑う世界」 【第45回】アンタッチャブル 「過剰なる気迫」がテレビサイズを突き抜ける 【第44回】おぎやはぎ 「場の空気を引き込む力」が放散し続ける規格外の違和感 【第43回】志村けん 「進化する全年齢型の笑い」が観る者を童心に帰らせる 【第42回】はるな愛 「すべてをさらして明るく美しく」新時代のオネエキャラ 【第41回】明石家さんま テレビが生んだ「史上最大お笑い怪獣」の行く末 【第40回】ブラックマヨネーズ コンプレックスを笑いに転化する「受け止める側の覚悟」 【第39回】笑い飯 Wボケ強行突破に見る「笑わせる者」としての誇りと闘争心 【第38回】笑福亭鶴瓶 愛されアナーキストが極めた「玄人による素人話芸」とは 【第37回】島田紳助 "永遠の二番手"を時代のトップに押し上げた「笑いと泣きの黄金率」 【第36回】東野幸治 氷の心を持つ芸人・東野幸治が生み出す「笑いの共犯関係」とは 【第35回】ハリセンボン 徹底した自己分析で見せる「ブス芸人の向こう側」 【第34回】FUJIWARA くすぶり続けたオールマイティ芸人の「二段構えの臨界点」 【第33回】ロンブー淳 の「不気味なる奔放」テレ朝『ロンドンハーツ』が嫌われる理由 【第32回】柳原可奈子 が切り拓くお笑い男女平等社会「女は笑いに向いているか?」 【第31回】松本人志 結婚発表で突如訪れたカリスマの「幼年期の終わり」 【第30回】はんにゃ アイドル人気を裏打ちする「喜劇人としての身体能力」 【第29回】ビートたけし が放った『FAMOSO』は新世紀版「たけしの挑戦状」か 【第28回】NON STYLE M-1王者が手にした「もうひとつの称号」とは 【第27回】ダチョウ倶楽部・上島竜兵 が"竜兵会"で体現する「新たなリーダー像」 【第26回】品川祐 人気者なのに愛されない芸人の「がむしゃらなリアル」 【第25回】タモリ アコムCM出演で失望? 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千鳥 いよいよ全国区に羽根を広げる「媚びない心」の切れ味

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『千鳥の白いピアノを山の頂上に運ぶ』
(よしもとアール・アンドシー)
 関西を拠点に活動している千鳥が、ついに東京進出を果たしつつある。この4月からは22時台に進出した『ピカルの定理』(フジテレビ系)でもレギュラーメンバーの仲間入りを果たした。関西ではロケ芸人として名が知られていた千鳥の勇姿を、全国ネットで見かける機会も少しずつ増えてきている。  千鳥が漫才の祭典『M-1グランプリ』で初めて決勝の舞台に立ったのは2003年。その印象は強烈なものだった。1番手として舞台に上がった彼らが披露したネタは、司会の今田耕司から「エロ漫才」と呼ばれる衝撃的な代物だった。  ボケ担当の大悟は、ツッコミ担当の相方のノブを女性役にして、幼なじみの女の子と虫取りに行った思い出を再現する。その設定で話が進んでいく中で、不意に大悟は女の子の胸に止まった虫を捕るふりをして彼女の胸を触る。そんな彼をノブ演じる女の子がやんわりとたしなめる演技も妙に生々しい。客席は静まり返り、百戦錬磨の審査員たちもただ苦笑いを浮かべるばかりだった。全国ネットの漫才番組にあえてこんなネタをぶつけてくるところに、千鳥の芸人としてのこだわりの一端がうかがえる。この年、千鳥は決勝で最下位の9位。それ以降も、決勝には三度上がっているが9位、6位、8位という結果に終わっている。  そんな彼らが漫才の全国大会で華麗な復活を遂げたのは11年。『THE MANZAI』に出場した彼らは決勝に駒を進め、そこで爆笑を勝ち取った。決勝16組の中から最終4組にまで勝ち残り、3位入賞を果たした。ここで自分たちの漫才の面白さを見せつけた千鳥は、ようやく全国区への足がかりをつかんだ。  彼らの漫才師としての特徴は、第一にネタの種類が豊富であるということ。彼らの漫才には決まったパターンのようなものがほとんどなく、ひとつひとつのネタが違っている。ひとつのボケを何度も繰り返して用いるネタもあれば、わかりやすい笑いどころをあえて設けないストーリー性の高いネタもあるし、リズミカルなしゃべりの掛け合いで笑わせるネタもある。設定が奇抜なものから下ネタ交じりのものまで、とにかく圧倒的に種類が豊富なのだ。  また、彼らの漫才の技術も折り紙付きだ。チンピラのような怪しい雰囲気を持つボケの大悟は、岡山弁のよどみない語り口で一瞬にして自分の世界を作ってしまう。また、ツッコミのノブは、抜き身の日本刀のように鋭い大悟のボケに対して、いなすようにして優しくツッコミをいれる。シンプルな訂正ツッコミをするだけでなく、ボケを否定せず聞き流すこともあるし、ツッコミのフレーズをひとひねりして笑いを増幅させることもある。一見温厚そうなノブのえびす顔の奥には、漫才サイボーグとしての確かな技術が潜んでいるのだ。  ただ、千鳥の漫才で最も注目すべきは、その堂々とした姿勢だ。彼らは決して観客に媚びない。大悟は自分が面白いと思うものに対して揺るぎない信念を持ち、それを荒削りな状態でやや無造作に観客にぶつけてみせる。恐らく彼にとって漫才とは、自分の生き方を表現することなのだ。  だからこそ、大悟の放つボケにはほかの漫才師にはない、生き生きとした魅力がある。それを受け止めて、できるだけわかりやすい形にして観客に提示するのが相方のノブの役目だ。ノブはツッコミという形で常識を提示して、大悟の狂気が暴走するのをギリギリのところで引き留めているのだ。  千鳥の2人の関係性は、バンジージャンプを試みる人とそれを支える命綱にたとえられる。大悟が無謀にも崖の上から飛び降りると、そんな彼をノブは命綱として必死でつなぎ止めようとする。このスリリングな関係こそが、千鳥の漫才がはらんでいるゾクゾクするような魅力の源泉だ。彼らは、全国区のテレビで自分たちの持ち味である「媚びない笑い」をどこまで進化させることができるのだろうか。 (文=お笑い評論家・ラリー遠田) ●連載「この芸人を見よ!」INDEX 【第105回】渡辺直美 希代のドリームガールが見つけた「かわいいとブサイクの間にあるもの」 【第104回】ロバート コント日本一をかっさらった暴風雨・秋山竜次の芝居に宿る「殺気の正体」 【第103回】TKO 不遇を乗り越えたかつてのアイドル芸人が「太って咲かせた、もう一花」 【第102回】オアシズ それぞれにブスを昇華した「現実と空想のアンサンブル」 【第101回】スリムクラブ 最後のM-1を駆け抜けた「超スローテンポという革命」 【第100回】レイザーラモンRG  "吉本団体芸"が生んだ「強心臓のニューヒーロー」 【第99回】麒麟 5度の決勝進出が「M-1グランプリの申し子」をどう変えたか 【第98回】ピース 噛み合わない2つの破片が力ずくで組み上げた「笑いのパズル」 【第97回】次長課長 変幻自在のオールラウンダー河本を生かす、井上の「受け止めるツッコミ」 【第96回】 オセロ松嶋尚美 大先輩・鶴瓶に見初められ「褒められて咲いた大輪の花」 【第95回】 ダイノジ 雌伏16年──ついに訪れる「二頭の虎が目覚めるとき」 【第94回】 キングオブコメディ 極限の不運と"顔芸人"のレッテルを払拭して掴んだ「コント日本一」 【第93回】 山田邦子 史上初の「天下を取った女芸人」その栄光と転落のタレント人生 【第92回】エレキコミック 一度ハマるとクセになる!?「一点突破の納豆コント」 【第91回】野性爆弾 「遅れてきた吉本最終兵器」がブレイクを果たした秘密とは 【第90回】野沢直子 今振り返るカリスマ女芸人の「先駆者としての比類なき存在感」 【第89回】サバンナ 野生の勘で芸能界を疾走する「発展途上のロジカルモンスター」 【第88回】東京ダイナマイト 破壊なくして創造なし! ハチミツ流「笑いのセメントマッチ」 【第87回】トータルテンボス 進化を止めない本格派コンビを育てた「M-1急転直下の挫折劇」 【第86回】ロッチ  シンプルな構図でコントに魂を吹き込む「関係性のスペシャリティ」 【第85回】山崎邦正 ダウンタウンによって強制開花した「ヘタレの天才」が巻き起こす奇跡 【第84回】フルーツポンチ 確かな演技力でポストバブル世代に現出した「キザ男のリアリズム」 【第83回】よゐこ 爆発力と切れ味で支持層を拡大する「自然体のシュール」 【第82回】バッファロー吾郎 マニアック芸人の権化が極めた「もうひとつの天下」 【第81回】ドランクドラゴン 完璧な構築物に風穴を開けて回る「鈴木拓のガッカリ力」 【第80回】高田純次 還暦過ぎても華衰えぬ「日本一の適当男」が歩み続けた孤高の道程 【第79回】森三中  メンバーの結婚で進化する「ブスとブスとブスの関係性」 【第78回】Wコロン・ねづっち  「整いました!」なぞかけ芸が時代にハマった深い理由 【第77回】所ジョージ  突出した安定感を生み出すボーダレスな「私の世界」 【第76回】土田晃之  元ヤン、家電、ガンダム......でも嫌われない「ひな壇の神」の冴えたやりかた 【第75回】タカアンドトシ  非関西系漫才のツッコミ新境地「欧米か!」が生まれた理由 【第74回】キングコング西野亮廣  嫌われるには理由がある!? 天才を悩ませる「出た杭の憂鬱」 【第73回】椿鬼奴  虚栄心から自由になった女芸人の「自然体が放散する魅力」とは 【第72回】萩本欽一  テレビを作り、テレビに呑み込まれた「巨人の功罪」 【第71回】アンガールズ  キモカワ芸人が精緻に切り出した「人生のNGシーン」に宿る笑い 【第70回】エハラマサヒロ   「究極の器用貧乏芸人」が無限の笑いをコラージュする 【第69回】なだぎ武 R-1二連覇を成した演技派芸人の「本当の運命の出会い」とは 【第68回】いとうあさこ 悲観なき自虐を操る「アラフォー女性のしたたかなリアル」 【第67回】チュートリアル M-1完全優勝を勝ち取った「ひとつもボケない」漫才進化論 【第66回】松村邦洋 己を棄てて己を活かす「笑われる天才」が生きる道 【第65回】キャイ~ン・ウド鈴木 20年目の変わらぬ想い──「満面の笑顔で愛を叫ぶ」 【第64回】しずる 緻密なマーケティングと確かな演技力で突っ走る「腐女子枠のプリンス」 【第63回】青木さやか 仕事も家庭も......不器用に体現する「現代女性の映し鏡」 【第62回】 今田耕司 好きな司会者第3位にランクされる「代弁者としての3つの極意」 【第61回】我が家 「変幻自在のローテーション」が3人のキャラ薄をメリットに転化する 【第60回】ハライチ "ツッコミ"を棄てた関東M-1新世代が生み出す「面の笑い」とは? 【第59回】出川哲朗 稀代のリアクション芸人が「計算を超えた奇跡」を起こし続ける理由 【第58回】中川家 すべてはここから始まった!? 兄弟が奏でる「舞台芸と楽屋芸のハイブリッド」 【第57回】板尾創路 笑いの神に愛された男が泰然と歩む「天然と計算の境界線」 【第56回】清水ミチコ 対象者の心を浮き彫りにする「ものまねを超えた賢人の不真面目芸」 【第55回】とんねるず 暴れ放題で天下を取った「学生ノリと楽屋オチの帝王学」 【第54回】友近 孤高の女芸人が体現する「女としての業と生き様」 【第53回】ウンナン内村光良 受け継がれゆく遺伝子「終わらないコント愛」 【第52回】モンスターエンジン 結成2年でシーンを席巻する「高次元のバランス」 【第51回】関根勤 再評価される「妄想力」ひとり遊びが共感を呼ぶ2つの理由 【第50回】南海キャンディーズ しずちゃんを化けさせた山里亮太の「コンビ愛という魔法」 【第49回】フットボールアワー 無限の可能性を秘めた「ブサイクという隠れみの」 【第48回】ますだおかだ 「陽気なスベリ芸」という無敵のキャラクターが司る進化 【第47回】ナインティナイン あえて引き受ける「テレビ芸人としてのヒーロー像」 【第46回】インパルス タフなツッコミで狂気を切り崩す「極上のスリルを笑う世界」 【第45回】アンタッチャブル 「過剰なる気迫」がテレビサイズを突き抜ける 【第44回】おぎやはぎ 「場の空気を引き込む力」が放散し続ける規格外の違和感 【第43回】志村けん 「進化する全年齢型の笑い」が観る者を童心に帰らせる 【第42回】はるな愛 「すべてをさらして明るく美しく」新時代のオネエキャラ 【第41回】明石家さんま テレビが生んだ「史上最大お笑い怪獣」の行く末 【第40回】ブラックマヨネーズ コンプレックスを笑いに転化する「受け止める側の覚悟」 【第39回】笑い飯 Wボケ強行突破に見る「笑わせる者」としての誇りと闘争心 【第38回】笑福亭鶴瓶 愛されアナーキストが極めた「玄人による素人話芸」とは 【第37回】島田紳助 "永遠の二番手"を時代のトップに押し上げた「笑いと泣きの黄金率」 【第36回】東野幸治 氷の心を持つ芸人・東野幸治が生み出す「笑いの共犯関係」とは 【第35回】ハリセンボン 徹底した自己分析で見せる「ブス芸人の向こう側」 【第34回】FUJIWARA くすぶり続けたオールマイティ芸人の「二段構えの臨界点」 【第33回】ロンブー淳 の「不気味なる奔放」テレ朝『ロンドンハーツ』が嫌われる理由 【第32回】柳原可奈子 が切り拓くお笑い男女平等社会「女は笑いに向いているか?」 【第31回】松本人志 結婚発表で突如訪れたカリスマの「幼年期の終わり」 【第30回】はんにゃ アイドル人気を裏打ちする「喜劇人としての身体能力」 【第29回】ビートたけし が放った『FAMOSO』は新世紀版「たけしの挑戦状」か 【第28回】NON STYLE M-1王者が手にした「もうひとつの称号」とは 【第27回】ダチョウ倶楽部・上島竜兵 が"竜兵会"で体現する「新たなリーダー像」 【第26回】品川祐 人気者なのに愛されない芸人の「がむしゃらなリアル」 【第25回】タモリ アコムCM出演で失望? 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