シュール過ぎるにもほどがある!? 名脇役・小池が大活躍『小池さん!大集合』

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『小池さん!大集合』(復刊ドットコム)
 藤子不二雄先生の漫画にちょいちょい登場してくる名脇役・小池さんを知っているだろうか。そう、ラーメンばっかり食べているあの人!  チリチリパーマにメガネ、フニャフニャの口(通称・カレーパンマン口)という特徴だらけのルックスでズルズルーッとラーメンをすすっている姿は、昭和生まれ世代ならば一度は目にしたことがあることだろう。いや、それどころか意外と平成生まれの人たちにも認知されているからビックリなのだ。  脳の半分くらいは藤子不二雄関連のことで埋め尽くされている藤子脳なボクは、すごく若い子たちと漫画の話をしていても「ルフィがさぁ」くらいの感覚で「小池さんがさぁ」みたいな話をしてしまいがち。それでも「あー、ラーメン大好きの!」と、ちゃんと反応してくれるからね。  小池さんが藤子漫画に初登場したのは『オバケのQ太郎』なので、おそらく1960年代頃のこと。その後の作品にも登場しているとはいえ、やはり『忍者ハットリくん』『パーマン』など古い漫画が中心なのに、今のヤングにまで認知されているというのはスゴイ! ある意味、ルフィや悟空級の国民的キャラクターと言っても過言ではないだろう(いや、さすがに過言かそれは!?)。そういや、シャ乱Qの「ラーメン大好き小池さんの唄」なんちゅう曲もあったしねぇ……(ま、あれはかなり表層的にしか小池さんを理解していないビミョーな曲でしたが)。  そんな小池さんですが、一般的に持たれているイメージとしては、いっつもラーメン食ってるだけで、大した活躍もしないのに妙に気になってしまう脇役キャラクター……といったところでしょう。確かに、ほとんどの作品でそんな役回りだというのは事実なんだけど、実は小池さんが主人公となり、あまりラーメンも食わず、アクティブに活動している漫画作品というのもあるのだ。……しかも、結構いっぱい。  で、なんとこの度、復刊ドットコムから、そんな小池さんが主人公となっている藤子不二雄A先生の作品(藤子・F・不二雄先生も『カイケツ小池さん』『ウルトラ・スーパー・デラックスマン』という小池さんが主人公の作品を描かれているんですけどね)を一挙にまとめた作品集『小池さん!大集合』が刊行されたのだ。  どーしてこのタイミングで小池さん作品をまとめようと思ったのか、そもそも「小池さん」だけの作品集にどのくらい需要があるのか……いろいろと疑問は湧いてくるものの、小池さんファンにとっては(もちろん藤子漫画ファンにとっても)大歓迎な一冊と言わざるを得ないだろう!  なんせ、今回収録された『小池さんの奇妙な生活』『オレ係長補佐』『赤紙きたる』『ある暑中休暇』『ゲゲゲのゲー』『添乗さん』といった作品たちは、60~70年代にかけて発表されたものの、そのほとんどが単行本はもちろん、全集などにも収録されてこなかった作品たちなのだ。……やっぱり、パッとしないルックスのおじさんが主人公だけに、「単行本にするほどでもないか」とか思われてたのかなぁ? なので、どうしても読みたければ古本屋で掲載当時の雑誌を探し回るか、国会図書館にでも行くしかないという、なかなか過酷なハードルが課せられていた。そんな作品たちが新刊で手軽に読めるなんて、秀樹カンゲキッ!(昭和ノリ)  というわけで、藤子ファンを自称しているボクにとっても、ほとんどが未読の作品だったのだけれど、いざ読んでみると、これがまたイイ感じに奇妙な雰囲気を漂わせている怪作ばかりなの。時期的に、『オバQ』をはじめ『怪物くん』や『ハットリくん』など、子ども向けの作品が大ヒットし、その反動で『笑ゥせぇるすまん』『魔太郎がくる!!』といった、やや大人に向けたブラックユーモア路線の漫画を描きはじめていた頃なので、まあどの作品もブラック&シュール全開なのだ。  とくに『ゲゲゲのゲー』なんて、主人公のコイケさんがなんだかんだで酒を飲んで泥酔し、最終的に「ゲゲゲェー」とゲロ吐くだけというシュール過ぎるにもほどがあるストーリーなんだもん。しかも連載で、毎回そんなことやってるんだよ!? さすが藤子不二雄A(アヴァンギャルド)。  まあ、おなじみの小池さんが、売れない漫画家、うだつのあがらないサラリーマン、ツアー添乗員……とさまざまなシチュエーションに身を置いて、奇妙な出来事に巻き込まれていくという、この異色作品集『小池さん!大集合』。描く作品、描く作品がヒットを飛ばしていた脂の乗り切った時期のA先生が、メインストリームな作品ではとても描けない実験的な内容に挑戦している作品群としても、読む価値は高いのではないだろうか。  ただ『小池さん!大集合』と謳うならば、2000年代に入ってから突如としてゴルフ誌で連載がはじまった『ホアー!! 小池さん』も収録して欲しかった……(まあ、単行本が出てるけど)。この作品も「ゴルフ+小池さん+笑ゥせぇるすまん」といった雰囲気のかなり珍妙なゴルフ漫画で、精神集中するといきなり小池さんの顔が超リアルタッチ(超怖い!)に変貌したりと、いろんな意味でみどころの多い作品なので、未読の方は『小池さん!大集合』と併せてこちらもぜひ読んでもらいたいところ。「一体、小池さんって何者なんだぁーッ!?」と、ますます小池ワールドが混乱すること必至だ。  余談だけど、小池さんには実在のモデルがいるというのは有名な話。藤子不二雄先生がかつてトキワ荘に住んでいた頃の漫画家仲間・鈴木伸一さんがモデルとなっているのだ(後にアニメの道へ進み、アニメ界の大御所となっている)。
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杉並アニメーションミュージアムの柱には、
A先生直筆の「小池さん」が!
 しかし、なぜ鈴木伸一さんがモデルなのに「小池さん」なのか。実は、鈴木さんが居候していた家の大家さんの名前が「小池さん」だったのだ。なので、おバケのQ太郎に登場した時も「小池さんの家に居候している鈴木さん」という設定だったのだが、家の表札に「小池」と描かれていたため、ラーメン食ってるあのキャラクター自体が「小池さん」だと勘違いされ、それが定着してしまったということらしい。  ちなみにこの鈴木伸一さん、現在では杉並区にある「杉並アニメーションミュージアム」というアニメ博物館の館長を務めており、ちょいちょいミュージアムにも顔を出しているので、そこに通っていれば、もしかしたらあの「小池さん」の実物に会えるかもしれないぞ! ……それにしても鈴木さん、自分がモデルとなったキャラクターが「ゲゲゲェー」とゲロ吐きまくる漫画を読んで、どう思ってたんだろうなぁ~。 (文=北村ヂン)

シュール過ぎるにもほどがある!? 名脇役・小池が大活躍『小池さん!大集合』

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『小池さん!大集合』(復刊ドットコム)
 藤子不二雄先生の漫画にちょいちょい登場してくる名脇役・小池さんを知っているだろうか。そう、ラーメンばっかり食べているあの人!  チリチリパーマにメガネ、フニャフニャの口(通称・カレーパンマン口)という特徴だらけのルックスでズルズルーッとラーメンをすすっている姿は、昭和生まれ世代ならば一度は目にしたことがあることだろう。いや、それどころか意外と平成生まれの人たちにも認知されているからビックリなのだ。  脳の半分くらいは藤子不二雄関連のことで埋め尽くされている藤子脳なボクは、すごく若い子たちと漫画の話をしていても「ルフィがさぁ」くらいの感覚で「小池さんがさぁ」みたいな話をしてしまいがち。それでも「あー、ラーメン大好きの!」と、ちゃんと反応してくれるからね。  小池さんが藤子漫画に初登場したのは『オバケのQ太郎』なので、おそらく1960年代頃のこと。その後の作品にも登場しているとはいえ、やはり『忍者ハットリくん』『パーマン』など古い漫画が中心なのに、今のヤングにまで認知されているというのはスゴイ! ある意味、ルフィや悟空級の国民的キャラクターと言っても過言ではないだろう(いや、さすがに過言かそれは!?)。そういや、シャ乱Qの「ラーメン大好き小池さんの唄」なんちゅう曲もあったしねぇ……(ま、あれはかなり表層的にしか小池さんを理解していないビミョーな曲でしたが)。  そんな小池さんですが、一般的に持たれているイメージとしては、いっつもラーメン食ってるだけで、大した活躍もしないのに妙に気になってしまう脇役キャラクター……といったところでしょう。確かに、ほとんどの作品でそんな役回りだというのは事実なんだけど、実は小池さんが主人公となり、あまりラーメンも食わず、アクティブに活動している漫画作品というのもあるのだ。……しかも、結構いっぱい。  で、なんとこの度、復刊ドットコムから、そんな小池さんが主人公となっている藤子不二雄A先生の作品(藤子・F・不二雄先生も『カイケツ小池さん』『ウルトラ・スーパー・デラックスマン』という小池さんが主人公の作品を描かれているんですけどね)を一挙にまとめた作品集『小池さん!大集合』が刊行されたのだ。  どーしてこのタイミングで小池さん作品をまとめようと思ったのか、そもそも「小池さん」だけの作品集にどのくらい需要があるのか……いろいろと疑問は湧いてくるものの、小池さんファンにとっては(もちろん藤子漫画ファンにとっても)大歓迎な一冊と言わざるを得ないだろう!  なんせ、今回収録された『小池さんの奇妙な生活』『オレ係長補佐』『赤紙きたる』『ある暑中休暇』『ゲゲゲのゲー』『添乗さん』といった作品たちは、60~70年代にかけて発表されたものの、そのほとんどが単行本はもちろん、全集などにも収録されてこなかった作品たちなのだ。……やっぱり、パッとしないルックスのおじさんが主人公だけに、「単行本にするほどでもないか」とか思われてたのかなぁ? なので、どうしても読みたければ古本屋で掲載当時の雑誌を探し回るか、国会図書館にでも行くしかないという、なかなか過酷なハードルが課せられていた。そんな作品たちが新刊で手軽に読めるなんて、秀樹カンゲキッ!(昭和ノリ)  というわけで、藤子ファンを自称しているボクにとっても、ほとんどが未読の作品だったのだけれど、いざ読んでみると、これがまたイイ感じに奇妙な雰囲気を漂わせている怪作ばかりなの。時期的に、『オバQ』をはじめ『怪物くん』や『ハットリくん』など、子ども向けの作品が大ヒットし、その反動で『笑ゥせぇるすまん』『魔太郎がくる!!』といった、やや大人に向けたブラックユーモア路線の漫画を描きはじめていた頃なので、まあどの作品もブラック&シュール全開なのだ。  とくに『ゲゲゲのゲー』なんて、主人公のコイケさんがなんだかんだで酒を飲んで泥酔し、最終的に「ゲゲゲェー」とゲロ吐くだけというシュール過ぎるにもほどがあるストーリーなんだもん。しかも連載で、毎回そんなことやってるんだよ!? さすが藤子不二雄A(アヴァンギャルド)。  まあ、おなじみの小池さんが、売れない漫画家、うだつのあがらないサラリーマン、ツアー添乗員……とさまざまなシチュエーションに身を置いて、奇妙な出来事に巻き込まれていくという、この異色作品集『小池さん!大集合』。描く作品、描く作品がヒットを飛ばしていた脂の乗り切った時期のA先生が、メインストリームな作品ではとても描けない実験的な内容に挑戦している作品群としても、読む価値は高いのではないだろうか。  ただ『小池さん!大集合』と謳うならば、2000年代に入ってから突如としてゴルフ誌で連載がはじまった『ホアー!! 小池さん』も収録して欲しかった……(まあ、単行本が出てるけど)。この作品も「ゴルフ+小池さん+笑ゥせぇるすまん」といった雰囲気のかなり珍妙なゴルフ漫画で、精神集中するといきなり小池さんの顔が超リアルタッチ(超怖い!)に変貌したりと、いろんな意味でみどころの多い作品なので、未読の方は『小池さん!大集合』と併せてこちらもぜひ読んでもらいたいところ。「一体、小池さんって何者なんだぁーッ!?」と、ますます小池ワールドが混乱すること必至だ。  余談だけど、小池さんには実在のモデルがいるというのは有名な話。藤子不二雄先生がかつてトキワ荘に住んでいた頃の漫画家仲間・鈴木伸一さんがモデルとなっているのだ(後にアニメの道へ進み、アニメ界の大御所となっている)。
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杉並アニメーションミュージアムの柱には、
A先生直筆の「小池さん」が!
 しかし、なぜ鈴木伸一さんがモデルなのに「小池さん」なのか。実は、鈴木さんが居候していた家の大家さんの名前が「小池さん」だったのだ。なので、おバケのQ太郎に登場した時も「小池さんの家に居候している鈴木さん」という設定だったのだが、家の表札に「小池」と描かれていたため、ラーメン食ってるあのキャラクター自体が「小池さん」だと勘違いされ、それが定着してしまったということらしい。  ちなみにこの鈴木伸一さん、現在では杉並区にある「杉並アニメーションミュージアム」というアニメ博物館の館長を務めており、ちょいちょいミュージアムにも顔を出しているので、そこに通っていれば、もしかしたらあの「小池さん」の実物に会えるかもしれないぞ! ……それにしても鈴木さん、自分がモデルとなったキャラクターが「ゲゲゲェー」とゲロ吐きまくる漫画を読んで、どう思ってたんだろうなぁ~。 (文=北村ヂン)

ウソくささゼロ! 昭和の香り溢れる藤子不二雄の聖地巡礼

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我が家にあるのは中央公論社の愛蔵版。
 昨年、川崎市に「藤子・F・不二雄ミュージアム」がオープンし、藤子不二雄ファンにとって記念すべき1年だった。さらに2012年は、ドラえもんが誕生する2112年まで残り100年と、これまた記念すべき年である。だが、ちょっと待て。藤子ファンにとって、忘れてはならない作品といえば『まんが道』。富山県は高岡市で二人が出会い、志を立てて上京する自伝的物語は、地方から上京したすべての人にとってのバイブル。聖地のひとつトキワ荘は観光スポットになっているけど、高岡市はどうなっているのか? 行ってみたら驚いた!
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ヘッドマークがないので、まったくソソらない特急「はくたか」。
 『まんが道』で満賀道雄と才野茂は夜行列車に揺られて上京していたが、今では交通機関も発達し、かなり移動時間は短くなった。それでも、東京から富山県への道のりは遠い。最速の交通手段が飛行機といえば、その距離感が分かるだろうか。ただ、聖地を訪ねるのに飛行機では味気ない。鉄道で向かうなら、まず上越新幹線で越後湯沢駅へ向かうのが最も知られた路線だ。東京から越後湯沢までは1時間と十数分あまり。スキーシーズンを除けば、下車する客のほとんどが富山、金沢方面へと向かう人々だ。待っていた特急「はくたか」に乗って、越後湯沢からは北越急行ほくほく線を経由して列車は信越本線へと入っていく。この特急は、一部区間を最高時速160km/hで運転する在来線では最高速度の列車だが、それでも高岡へは2時間あまりかかる。ほくほく線内はトンネルも多くて車窓を楽しむというわけにはいかず、多少うんざりとし始めたころ、列車は北陸本線へと入っていく。ここからは、右に日本海、左に立山連峰の望める楽しい旅路へと変わる。 ■街には藤子先生が......溢れてなかった  さて、ようやくたどり着いた聖地・高岡市。駅を降りると、そこに広がっていたのは日本のあちこちにある寂れた地方都市と同じ光景だった。藤子不二雄の聖地だというのに、駅で目にした藤子キャラといえば『忍者ハットリくん』のゴーフルの看板だけだった。あぜんとしながら駅を出て路面電車へと乗り換える。ここの乗り場も先客は、孫を連れたおばあちゃんだけ。運転手と「孫が乗りたいっていうもんだからね......」と話していたところをみると、普段は利用する機会が少ないのだろう。
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駅で見つけた藤子キャラは、これだけ。
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路線存続のためとはいえ、全面コカコーラの広告ってどうよ?
 今回の聖地巡礼では、最近流行のキャラクターの銅像だとかの類を避けて「同じ空気を吸うこと」に重きをおいていたのだが、実のところ、かなり困難だということに途中で気づいた。もっとも困ったのは、藤子・F・不二雄先生の旧宅跡探しだ。事前に位置は把握して置いたのだが、特に道案内もあるわけでなく、旧宅跡自体も渋めの倉庫があるだけ。国民的漫画家が住んでいた場所だというのに、案内もないというのはちょっと寂しいものだ。それでも道は当時のままだろうから、多少はノスタルジックな気分に触れることもできる。藤子不二雄(A)先生の旧宅跡も同じく、なんら聖地であることを示すものもない。これはちょっと悲しいことだ。
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ここがF先生の旧宅跡。まず観光客が来るようなところではない様子。
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こちらはA先生の旧宅跡。意外に駅の近くに住んでいたんですね。
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『まんが道』に登場する文苑堂は、今でも営業中。
   そして高岡大仏も、ちょっと残念スポット。『まんが道』読者には、満賀道雄が憧れのマドンナ霧野涼子さんが見知らぬ男とキスする瞬間を目撃してしまう名場面の舞台だ。てっきり、街角の道沿いにあるのかと想像していたが、ちゃんと参道があって台座の部分に入るには拝観料も必要。中に入ると、なぜか地獄を描いた絵が並んでいて、いくつもさい銭箱が......。信心深い人は、一つ一つにおさい銭を入れていくのかもしれないが、かえって信心深さが失われていく。
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予想外に綺麗でびっくりする高岡大仏。
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なぜか台座の下は地獄巡りの絵が続く。
■濃厚な昭和の香りが漂う街  さほど宣伝していなくても、きっと「藤子不二雄先生は高岡の誇り」みたいな感じの観光案内とかがあるかと思いきや、あまりになんにもなかったので、ちょっとがっかりした気分。しかし、路面電車を降りて、聖地を探しながら街を歩いていると、次第に妙な味がジワジワと染みこんできた。
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し、渋すぎる看板。いったいいつからある飲み屋街なんだろうか......。
 まず「これは渋い!」と驚いたのは、さっさと拝観を終えて、人通りもほとんどない道を歩いていて見つけた「大仏飲食店街」。サビが目立つ看板の向こうにあるのは、新宿ゴールデン街を彷彿とさせるような渋すぎる飲み屋街だ。街そのものが、昭和が続いているような雰囲気を漂わせているのだけれど、ここだけ昭和どころか終戦直後のバラックから、変わっていないのではないか(違ったら失礼)と、思うほど。一見には敷居の高いエリアだが、どのような客が集まるのか、機会があれば見てみたいエリアだ。
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ここで飲めるようになるには相当修行が必要そうだ。
 さらに渋さを漂わせていたのは、高岡駅とその前にあるビル。「駅前ビル」と、そのままな名前の看板が掲げられたビルは、これまた昭和のまま時が止まったような建物。飲食店とサラ金が同居しているだけならまだしも、なぜか神社まで同居している。一歩間違えると、廃墟系のマニアが喜びそうなくたびれ具合なのに、現役で使われているのがレベルが高い。
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まったく飾り気のない「駅前ビル」という名称がイイ!
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ビルの中に神社があるのは、どういう事情なんだ?
 高岡駅の駅ビルも、くたびれた具合が濃厚な渋さを味わせてくれる建物だ。いくつも空きテナントがあるので建て替え予定でもあるのかと思ったら、「テナント募集中」の張り紙があるので単に店子がいないだけのようだ。建物の最奥には、昭和を濃縮したような喫茶店も。コーヒーの味もしっかり昭和をしているし、駅ビルなのに一見客がおらず常連らしき客で溢れているのも独特の光景だ。
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空きテナントのほうが多い駅前ビルなんて初めてだよ。
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催事場にも人の姿は少ない。休日になると、人出はあるのか?
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東京だとサブカルスポットとして注目されそうな喫茶店。
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『まんが道』読者なら、おみくじをひくのはちょっと怖い神社だ。
 
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こ、このポスター欲しい。
 この街には渋さだけでなく珍スポットも。『まんが道』でいく度も登場する射水(いみず)神社がある古城公園の動物園が、それだ。文章だと伝えるのが難しいが、なぜか鳥の三角関係を写真で解説していたり、手作り感溢れる妙な解説が満載なのだ。この動物園、入園料無料のため子どもたちで賑わっていたのだが、この解説を見て子どもたちはどう思うのだろうか......。
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この動物園。楽しい職場なのは間違いないよ。
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だから、どうしたいんだ......?
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こんな独特のセンスが溢れてます。  
 純粋な気持ちで聖地巡礼をしようと思ったら、妙な物ばかりに出会ってしまった取材。やはり東京で出会う、ウソくさいレトロ感と違い、もはや地方でなければ出会えない、リアルな感覚の昭和がそこにはあった。こんな街がまだ日本のあちこちにあるハズ。今年も都会の喧噪を離れて、未だ見ぬ昭和の残像を追っていくぞ! (取材・文=昼間 たかし)
るるぶ富山 立山 黒部 五箇山 白川郷'11~'12 アツイぜ、富山。 amazon_associate_logo.jpg
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知る人ぞ知る、国民的人気漫画!? 藤子不二雄の下世話パロディー『ブッチュくん全百科』

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『ブッチュくん全百科』(講談社)
 ご存じ、阿蘇子元夫と不死本浩のコンビからなる漫画家・無事故無事雄(むじこぶじお)先生の代表作『ブッチュくん』。宇宙船の故障で地球にやってきて、ヨン太くんの家に居候しているドスケベ宇宙人・ブッチュくんが、小脇に抱えた4次元ポシェットから秘密道具を取り出して、みんなの夢と性的欲求をかなえてくれるユカイでエロスな漫画だ。全22巻の漫画単行本は総売上部数なんと8,000万部! テレビアニメや映画版も絶好調と、今や国民的人気漫画としての地位を不動のものとしている。  ......って、そんな漫画知らねーよ。オレの気づかないところで、そんなヒット作が生まれていたとは! ニートで引きこもりなオレだけど、漫画だけにはちょいと詳しいと思ってたのに。悔しいのう、悔しいのう! ......なんてショックを受けている人もご安心を。この『ブッチュくん』は、『バカドリル』(扶桑社)などで知られる天久聖一&タナカカツキが生み出した架空の漫画なのだ。まあ、ほとんどの漫画は架空のお話を描いているもんだが、『ブッチュくん』に関しては漫画の存在自体が架空。どの雑誌にも連載していないし、単行本も全ゼロ巻。もちろんアニメもやってるわけない。  現実にいない女の子の設定を考えてアイドルとして売り出すバーチャル・アイドルというのは、古くは『伊集院光のオールナイトニッポン』から生み出された芳賀ゆいや、ホリプロが大金突っ込んで大コケした伊達杏子、CGアイドルのテライユキ、最近では初音ミクをはじめとするボーカロイド勢など、結構たくさんいるのだが、設定だけしか存在しないバーチャル・漫画というのは他に類を見ないのではないだろうか。  で、そんな『ブッチュくん』関連で唯一実際に存在するのが今回発売された『ブッチュくん全百科(おーるひゃっか)』(講談社)。小学生のころ、みんな持っていたコロタン文庫の『ドラえもん全百科』あたりをベースにしたと思われる構成の本書には、架空の単行本全巻解説やアニメ放送リスト、キャラクター大図鑑、さらには大量に発売されている(という設定の)キャラクター・グッズまで、ありもしない漫画『ブッチュくん』の情報がギッシリと詰め込まれている。  大ざっぱにいってしまえば、『ブッチュくん』とはセクシャルな方面に特化した『ドラえもん』といった話で(ルックスは『オバケのQ太郎』かな)、まあこの手の『ドラえもん』エロ・パロディー漫画というのは同人誌の世界ではよくありそうなネタではあるのだけれど、ふざけてチョロッと描いたパロディーとは設定の細かさがケタ違いなのだ。  のび太くんっぽいヨン太くん、しずかちゃんっぽいヒカルちゃん、ジャイアンっぽい傷ゴリラ、スネ夫っぽいチビアラブなど、膨大な数の藤子不二雄キャラっぽい登場人物たちや秘密道具(モテモテグッズ)、名場面の数々など、ここまで詳細な設定を考えるんだったらオリジナル漫画を一冊描いた方がラクなんじゃないの!? と思ってしまうくらい。  とはいえ、やはりちゃんとした漫画を描くとなると、話のつじつま合わせやら何やらいろいろと面倒くさいことも多い。その点、設定オンリーの漫画なら、前後の流れとか関係なくオイシイところだけ作ればいいじゃん! とばかりに、『北斗の拳』『ドラゴンボール』『幸せの黄色いハンカチ』、はてはつげ義春の『紅い花』など、見境ナシでいろんな作品をパクッ......モチーフにした名場面が紹介されており、全般的にくだらないエロ・パロディーばかりなのに、なんだかすごくいい漫画のような気分になってきて、存在しない漫画『ブッチュくん』が妙に読みたくてたまらなくなってしまう。  そこで、『ブッチュくん全百科』の後半には「幻の名作」「最新書き下ろし」と称した2作の短編漫画が掲載されているのだが、大人になった正ちゃんたちとオバケのQ太郎との別れを描いた感動作「劇画・オバQ」を彷彿とさせる「ヨン太、夏の幻影」、さらに初老に突入したヨン太くんの悲哀を描いた「ブッチュくん2010」と、どちらも子ども時代をすっ飛ばして、いきりなり大人時代の話!  この手のストーリーって、長期連載で描かれた子ども時代の楽しいエピソードがあってこそ感動できるもんなんだと思っていたのだが、延々と設定を読まされて全22巻を読破したような気分になっている状態で読むと、それだけでなんとなーくウルッときてしまうのだ。あ、漫画って設定だけあればよかったんだ......。  もともと、この『ブッチュくん全百科』は1999年に『ブッチュくんオール百科』(ソニーマガジンズ)として発売されたものの、「設定資料集のみの漫画」という設定が理解されなかったのか、当時は驚くほど売れなかったという。しかし、今はインターネットなどでパロディー文化も一般化してきたし、今度こそ売れるんじゃ!? ということで、大幅に書き直しした上で復刊されることになったんだとか。確かに、設定だけは存在しているものの、実態は存在しない『ブッチュくん』。ネット上でいろんな人があれやこれやと口を出して作り上げていくのにはピッタリな素材といえそう。  架空の漫画のくせに存在するオフィシャルサイト( http://butchu-kun.com/ )では『ブッチュくん』アニメ主題歌が公開されていたり、Tシャツ通販サイト「TEE PARTY」( http://teeparty.jp/butchu-kun/ )でブッチュくんTシャツが販売されていたりと、今後もわけの分からない展開をしていきそうな『ブッチュくん』! 是非とも、うっすらと注目しておいてもらいたい漫画(?)だ。 (文=北村ヂン)
ブッチュくん全百科 妄想炸裂! amazon_associate_logo.jpg
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