東日本大震災「現場はもう限界だ!」メーリングリストで叫ぶ医師たちのSOS

 死者・行方不明者が1万9,000人を超えた東日本大震災は、医療施設にも壊滅的な打撃を与えている。医薬品や燃料、治療に当たる医師や看護師らも不足する中で、現場からは「もう限界を超えている」との声が次々とあがっている。  窮状を訴えているのは、被災地の医師や現地に派遣された医療関係者らによるメーリングリスト(以下ML)「地震医療ネット」。過酷な状況下で命を落とす患者も後を絶たない中、追い詰められた現場医師らがこの15日に自然発生的に立ち上げたとされている。そのメールの中身は、どれも極めて深刻だ。救援物資が被災地へ届き始めたことを伝えるニュース映像をたびたび目にする一方で、その流れからまったく取り残されて「今日、明日が限界」と切実に訴える医療機関が数多くあるのだ。以下にそのMLのごく一部をご紹介する。まずは、ネット上で「茨城の情報がテレビでほとんど流れない! どうなってんだ!?」との声も聞かれる茨城県の病院から。 「病院機能低下の要因は断水と物流です。水不足は透析、手術、臨床検査などをストップさせ、物流麻痺は医薬品、医療材料、重油などの供給をストップさせました。電話がつながりにくく、病院間の連絡に支障をきたしています。断水地域でロタウイルス腸炎が増えてきました。ガソリン不足によるアクセス不良で小児の受診タイミングが遅れ始めています。余震とテレビにおける災害画像の反復が子どもの心へ影響を与え始めています」(茨城県霞ヶ浦の土浦共同病院・小児科医師 3月18日9:19のメールより)  この医師によれば、茨城県内の病院小児科29施設のうち、今回の地震で1施設が入院受け入れを現在中止し、10施設(34%)が外来機能を一部制限、さらに16施設(55%)が手術を制限せざるを得ない状態にあるという。これにより、地域の子どもたちの命が重大な危機にさらされているのである。  また、実際には深刻な事態に陥っていながら、避難勧告エリアに入っていないなどの理由で「物資が素通りして」いる施設も少なくない。以下は福島県「村松総合病院」医師のメールより。 「こちらは『他の地域ほどの惨状ではない』という印象をもたれており、報道されることもないのですが、非常に困惑しています。県には報告しておりますが、こちらの窮状が伝わらず、今のところ何もしてくれません。(略)物流が悪く、まだ先が見えません(略)食料も限界に近づいています。特にレトルト食品をせめて送ってもらえれば助かります」(3月18日12:20のメール)  こうした過酷な状況は、患者はもちろん医師たちにも大きなストレスとなって蓄積している。 「じわりじわりと、そろそろ職員の間でも健康障害を訴える人が出てきました(略)震災から一週間がすぎ、職員が倒れかけています。一般市民と同様に、職員も家族をなくして、それでも懸命に働いておりますので、疲労とともに精神状態もかなり不安定になってきています。現状では職員のケアまで手が回る状態ではなく、ボランティアで来てくださるカウンセラーの団体等の(心のケアの)情報を必死で求めている状態です」(3月18日16:38 秋田社会保険病院)  この他にも「(医師の)不用意な発言によりパニックになったナースがいる」(施設名不明)など、医療従事者らの精神状態は限界に近づいている。  さらに「石巻赤十字病院」からは次のような信じたくない声も届いている。 「避難所への支援が遅れているため、市内の店や住宅で略奪が頻発しています。日本でですよ!」(3月19日0:20のメールより)  まさに修羅場と化している被災地の医療現場。こうした現状を専門家はどう見るのか。「株式会社医療タイムス社」の元取締役で、医療問題に詳しいフリー記者の小野貴史氏は次のように言う。 「私の実家の茨城県の家屋も被災しました。不眠不休で懸命に治療にあたっている医療従事者には心から敬意を表します。これだけ想定外の事態となれば、政府の指揮命令系統には期待しないほうが現実的でしょう。柔軟な対応が必要です。有事において手続き原理主義は被害を拡大させるだけですから。情報は現場にあり、最も的確な判断ができるのは現場です。行政をあてにせずに民間同士・専門家同士のネットワークとフットワークをフルに活用する仕組みが有効です。その意味で、『地震医療ネット』のようなネットワークの情報を、関係者らは即座に活用して被災地の救援に動いてほしいと思っています」  おりしも厚労省は、病院同士で許可なく薬や医療機器のやりとりをしても薬事法違反にならないという特例を、地震発生からようやく一週間が経過したこの18日に定め、各都道府県に通知して被災地への援助を遅まきながら後押しした。これを受けて、医師の中には個人的な人脈を駆使し、地方議員を動かしながら地元のタクシー会社やバス会社を使い、病院から病院への医薬品の輸送を始めている例もあるという。「地震医療ネット」に関わる関係者は、この惨状を多くの人が知り、情報が拡散することで、輸送手段や人員を確保する道筋が開けることを期待している。患者や医療従事者に残されている体力にもはや余裕はない。 「疲労のピークである。休息のない仕事はミスも呼ぶ。人手が欲しい」(石巻市・相馬中央病院)  今も現場からは血の叫び声が届いている。 (文=浮島さとし) 【関連記事】 首都圏「食品や水は心配ない」スーパー・コンビニの品不足にメーカー回答 「暴走する善意」拡散か? 静観か? Twitterで助けを求められたらあなたならどうする? 災害現場の困ったちゃん!? ボランティアに求められる自己責任の大原則

「夏フェスはどうなる!?」相次ぐコンサート中止で音楽業界が迎える正念場

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『GO FES!2011』公式サイ
トより
 東北地方太平洋沖地震は音楽業界にも大きな影響を及ぼしている。小売店への流通経路確保が難しくなったことから、各社が3月後半予定だったCDを販売延期にしたほか、各種コンサート、イベントの中止も相次いだ。 「大震災直後から、電力が確保できない、交通網の混乱で客足が読めない、などの理由で、関東圏ではほとんどのコンサート興行がストップした状態です。AKB48の横浜アリーナ公演が中止となったほか、大型フェスティバルについても今週末予定だった『GO FES!』、4月に予定されていた『PUNKSPRING』『SPRINGROOVE』の中止が発表されました。現時点では、フジロックその他の夏フェスは開催予定と告知されたままですが、今後の見通しは不透明です」(イベント会社関係者)  CDの売れ行き低下と、音楽配信の伸び悩みで、コンサート興行は音楽業界で唯一の成長分野となっている。そのため、このような状況が長引くと、音楽業界自体の停滞につながりかねないとの見方も。 「近年、多くのバンドや歌手がコンサート中心に活動予定を組んでいますから、年間計画の変更は必至でしょう。また、大型イベントやフェスティバルは、各興行会社にとって経営の生命線となっています。もちろん、開催できない場合にそなえて各社は保険も掛けてはいますが、中止すれば手元資金の不足が生じかねず、海外アーティストの招へいを控えるなどの動きが広がる懸念もあります」(前出の関係者)  他方、GACKTが義援金を呼び掛ける基金「SHOW YOUR HEART」を設立するなど、ミュージシャンによる被災者支援の動きは広がっている。各レコード会社、興行会社の間では、大規模なチャリティーコンサートの開催構想も持ち上がっており、西日本を中心に開催地探しも行われている模様だ。 「今年はCDの売れ行き、コンサート動員ともに前年比割れは確実ですが、チャリティーコンサートなどの動きが広がれば、音楽界の活性化にもつながります。企画をまとめる各社のプロデューサーの手腕にかかっている面は大きいでしょう」(レーベル関係者)  ビジネス的には厳しい時期だが、社会貢献などで活動の余地が大いにある現在の音楽業界。ミュージシャンだけでなく、各社スタッフの奮起にも期待したい。 (文=端下義人)
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事故ひとつで高額賠償も? 停電で激増のにわか自転車通勤者がはらむ危険と解決策

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くれぐれもご注意を。
 今週は、自転車の交通事故がうなぎ昇りなのではないだろうか。  計画停電で不遇に置かれているのが、都内に通勤する人々だ。震災に加えて原発事故は先行きが見えないにも関わらず、会社は通常通り営業中。行きは、いつも以上に酷いラッシュに四苦八苦、帰りも帰りで電車は、まともにやってこない。  そこで急に増えているのが、にわか自転車通勤者たち。試しに、筆者も早起きして自転車でオフィス街へ走ってみたが、そこかしこに自転車、それもママチャリの姿が目立っている。  しかし、にわか自転車通勤者たちの自転車の交通マナーは、かなり悪質だ。もっとも目立つのは、歩道を猛スピードで疾走する人々。歩行者の間を、すり抜けて走る様子を見ていると、いつ衝突事故を起こしてもおかしくはなさそうだ。  かと思えば、歩行者を避けて路側帯を走っている自転車もいるのだが、両耳にイヤホンをはめたまま我が物顔で走っている若者、一歩でも会社に近づこうと信号待ちの車の間を、必死ですり抜けているママチャリのおじさんなどなど、いつ接触事故が起こるか見ているほうがハラハラしてしまう。  都内のタクシー運転手に聞いたところ「路上駐車している車があると、それに沿って自転車も隣の車線にはみ出してくるので、特に危ない。いつもよりも、運転には気を使っている」という。  突然の自転車通勤者の増加が、道路事情を悪化させているのは間違いない。 ●歩行者との事故で高額賠償も  恐ろしいのは、自動車よりも歩行者との接触事故だ。自転車が絡む交通事故は09年のデーターで15万6,373件と交通事故全体の21.2%を絞めている(警察庁調べ)。うち、自転車の過失が大きいと認められた事故は2万4,627件。多くは、無謀な自転車が歩行者に衝突し負傷させたものなのだが、そうした場合、高額な賠償が迫られる。中には、訴訟となり5,000万円超の高額賠償を命じられたケースもある。道路交通法で自転車は「車両」とされており車道走行が原則。歩道を走行している時点で、どんなに歩行者に非があっても自転車側の過失の割合が高くなってしまうのだ。  近年ブームに乗って増加してきた自転車通勤だが、事故を防ぐためにもヘルメット、グローブの着用は必須。ところが、にわか自転車通勤者たちは「たかが数日のこと」と思っているのか、自分の身を守ることも不十分だ。都内の自転車専門店に聞いてみたが「ヘルメットやグローブの売り上げには、さほど変化はない」とのこと。ママチャリでは仰々しく見えてしまうかも知れないが、万が一のためにヘルメットは着用しておきたいものだ。  にわかに急増したことで、ちょっと混乱を引き起こしている自転車通勤者だが、彼らばかりに非があるわけではない。日本では、自転車専用レーンを設置する道路は少なく、自転車はこれまでも自動車と歩行者の狭間で不便を強いられてきた。自転車が電車を乗り継ぐよりも便利な移動手段であることは間違いない。これを好機として、自転車通勤者が増加し、インフラが整備されることも期待したい。  ただ、我が身を守るのは必要最低限の行為、歩道走行をせず、ヘルメット等を着用すると共に、日本サイクリング協会等の自転車保険に加入することはしておきたい。
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首都圏「食品や水は心配ない」スーパー・コンビニの品不足にメーカー回答

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 東日本大震災の影響で首都圏では"想定外"の食品不足が起きている。現在、スーパーやコンビニなどの棚から水やパン、ラーメンなど一部の食品がほぼ消える事態が頻発しているのだ。ところが品薄となった食品のメーカーに確認すると、その供給能力が極端に落ちたというワケではない様子。一部で「水道水が汚染されるから飲んではいけない」といった流言飛語やお騒がせメールなども飛び交うなか、人々の不安感が募り「万が一何かがあったら」と大量に買いだめする人々が増えているのが"食品消失"の主な原因となっているようなのだ。  「すみません、もう売るものがほとんどないんです」  都内は世田谷区内にある大手スーパー「SEIYU」の一店舗では14日、駐車場の入り口を閉め、ガードマンが訪れる顧客にこう説明して帰している。  首都圏のスーパーやコンビニなどでは、11日の地震の直後から「水やラーメンなどを大量に買い込むお客さんがいた」(スーパー店員)という。そして後から来た消費者も、品薄となった棚を見て不安にかられることで「念のために」と買い込むことになり、さらに需給がひっ迫する悪循環に陥っているようなのだ。  特に不足が目立つのは、非常用ともなる水やラーメン、パンなどだ。  実際、スーパーで水を買いそびれた主婦は「知人から石油化学工場の火災や原子力発電所の爆発などで水道水が汚染されるから飲んではいけない、といった内容のメールが回ってきたりしています。それで、まさかとは思うけど、やっぱり心配なので、少し水を多めに買っておこうと思って来たのだけど......。でも皆さん同じこと考えているんですね」と話すと、違う店へと脚を向けた。  そのうえ14日には、東京電力が計画停電に踏み切ったことなどを受け、昼間に店を閉める大手スーパーなども出始め、その結果、スーパー周辺の小売店やコンビニなどにも通常以上に人が流れて、地場の小さな食料品店などでも一部の品物が消えてしまった。  水やパンが完全に売り切れていたコンビニで店長は、パンなどは地震の直後から「発注した品物が十分に入らなくなった」と語り、水やスポーツ飲料が消えた14日からは「残っていたお茶の類も急に売れ始めた」という。また今後も「うーん、次の入荷がいつになるか分からないんですよ」(店長)と苦笑した。  だが、店内の棚がガラガラ状態で、出入り口で顧客の出入りの制限までしていた小規模な食品店で話を聞くと、意外な答えが返ってきた。 「いやぁ、うちの倉庫に品物は十分にあるし、新しい品物も入って来ている。ただ、お客さんが一時的に殺到し過ぎたんで、品物が補充できなかった。それで今、少し入店を待ってもらっているだけ。全然、心配ないですよ」  そこで、多くの店から消えていた水、パン、ラーメンについて、それぞれの大手企業に供給能力の確認してみると、やはり大規模な生産停止などは起きていないようだ。  飲料水の「天然水」で30%近いトップシェアを持つサントリーは、「天然水」を製造している山梨県の白州水工場について、「地震による被害はなく、生産が落ちているということはありません」(広報担当者)と断言。もちろん関西地方の工場にも問題はない。  ただ、同社では自主的に東北を中心とした被災地に100万本の飲料水を送ることを決めるなど、他社も含めて被災地への供給が優先されている部分があるほか、地震のせいで「物流に多少混乱が出ている」(同)ことなどで、首都圏での流通に支障が出ている可能性は否定できないという。  とは言え、水不足の一番要因は「この1日~2日、お客様がお店に殺到したことではないでしょうか」(同)とも話しており、基本的に生産能力が落ちているわけではないので、時間が経てば品不足は解消されると見るべきだろう。  パンについては、製パン業界トップの山崎製パンに話を聞いた。すると、確かに被災地にある「仙台工場が停止している」(広報)という。ただし、仙台で作られたパンが流通していた「東北の販売店網もほぼ壊滅してしまった」(同)ため、反対に、それが首都圏の流通に影響する話ではないのだという。  同社では、その他、東日本で地震が発生した金曜と土曜に操業を停止していた工場もあるともいうが、仙台を除けば、いずれも日曜以降、生産を再開している。  このため、首都圏でのパン不足について「他社さんのことまでは分かりませんけど、供給能力の不足というよりも、お客様の買う量が増えていることの影響が大きいのではないでしょうか」(同)と話している。  今後についても、被災地への出荷を優先することや計画停電の影響など不確定な要素があり、首都圏への供給が「減ることも考えられなくない」とはいうのだが、やはり根本的に生産能力が失われたわけではないので、多少の混乱はあっても品不足はいずれ収まると見るべきだろう。  一方、即席めん最大手の日清食品では、国内にある4つの工場のうち、茨城県の取手市にある関東工場が、地震の被害で生産を停止しているという。  また、東北から関東の各地にある倉庫や物流の拠点で「商品の荷崩れや水没などがあったことで供給が減少したところもありました」(広報担当者)ともいう。  関東工場については、今週半ばから来週の操業再開を目指して「復旧作業を進めています」(同)という状況だ。  確かに即席めんの国内シェアで約40%を誇る同社の主力工場の一つが停止すれば、その影響は小さくはないのかもしれない。だが、国内の即席めんメーカーは数多く、すべてのメーカーの即席めんが売り切れるのは消費者の買いだめのせいとみるべきで、日清食品の生産量も近々には戻る見通しだ。  気象庁がマグニチュード7.0クラスの余震への警戒を訴え、福島の原発事故も収束のするメドが立たない今、確かに「備えあれば憂いなし」と食品を買いだめする心理も分からなくはない。しかし、こうした非常事態だからこそ譲り合いの精神も必要だろう。  未曾有の事態に、どこかの業者が買占めでもしている可能性なども含め、食品流通の混乱はしばらく続くのだろう。そして、こうした状況を早期に改善する大きな要素は、一人ひとりが過度な買いだめを控えることと思われるのだが......。
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「暴走する善意」拡散か? 静観か? Twitterで助けを求められたらあなたならどうする?

※日刊サイゾーは省エネ運転中です。  未曾有の被害となった今回の巨大地震。携帯電話がほとんど使えなくなる一方、TwitterやSkype、Viberといった比較的新しいネットツールが活躍した。特にTwitterでは、各ユーザーの安否情報だけでなく、避難所や公共交通機関の運行情報など、さまざまな情報の共有の場としてフル回転している模様だ。  その一方でとんでもないデマや災害関連のチェーンメールも数多く発生。中でも、ある人物を発信元とした"事件"がネットユーザーを賑わせた。 「余震が......腹の怪我が激痛を発し始めた。死んでしまう。痛い。サーバーの角が、破れた腹にめり込んでいるのがわかる(略)死にたくない。痛い。痛みで発狂しそうだ。俺はサーバールームにいる」  そんなつぶやきをTwitterで発信し、これを見た多くのユーザーがリツイートで拡散。最終的には消防車が出動する騒ぎに。さらに当の本人は謝罪どころか、別のアカウントで「だからRT(リツイート)嫌いなんだよ。お前等どんだけ連鎖させてんの。馬鹿だなー。」と開き直り、これにブチ切れたネットユーザーが激しく反応したのは言うまでもない。  この人物は以前から真贋の紛らわしい情報をネット上に流布しており、当初より一部のネットユーザーの間ではそのツイートに疑問符が投げかけられていたが、なぜこんな大きな騒動になってしまったのか? メディア論に詳しい荻上チキ氏が呆れながら言う。 「安易にリツイートをして情報拡散する"情弱(情報弱者)"も同罪だ、というのでしょう。もちろんソースの確認は常に欠かせませんが、『自分を助けてくれ』という情報を受け取れば、慌ててしまうのが当たり前。まず責められるべきは、そんなくだらないデマを流した当人です。絶対に騙されない人なんておらず、デマを信じる人が一定数生まれるのも避けがたいこと。ですから本当に"情強"なら、弱者が一定数存在してしまうことを前提にした上で、情報共有をしてあげるための方法を考えるべきです。笑いものにしても意味はありません。ましてや、今回のようなものは論外と言うしかない」  また、地震や原発の不安に包まれているような現状では、基本的にこうしたデマが非常に広がりやすい環境にあるという。 「情報が不足し、災害への不安感情も高まっている今のような状況では、情報をポンと放り込むと多くの人が簡単に飛びつく傾向があります。結果、デマが非常に流れやすい構造になっていると言えます。ネットで出回ったチェーンメールや書き込みを、現地の人が見て、さらなる不安を抱えてしまう、ということが実際に起きています。ネットだけの問題では済まされないのですから、十分に警戒してください」  あるITライターも言う。 「拡散して必死で広げようとする人って『人のために役立ちたい』とか『自分がなんとかしたい!』という人たちがほとんどなんですよね。テレビのニュースで被災地の悲惨な事態を見続けて、何もできない、せめてTwitterで困っている人を助けたい、そんな一心で、ひたすらリツイートやチェーンメールの拡散を続けているわけです。善意と言えば善意なんですが、それだけに厄介でもありますね」  事実、筆者のところにも地震翌日の夕方頃、「コスモ石油に勤めてる知り合いからの情報です」とのメールが届き、「製鉄所の火災の影響で首都圏では科学薬品(注:化学薬品ではない)の含まれた雨が降ることが予想されます」という文面。文末はお約束の「広めて!とりあえず広めて!」という締め文句。送信者を見ると、高校時代の同級生でかれこれ5年は交流がなかった主婦のA子だった。  即、折り返し電話を5年ぶりにして「そのコスモ石油の友人とやらに話を聞きたいので紹介してくれ」と頼むと、返ってきたのは「知らない。そのまま転送しただけ」との返事。悪びれるどころか、「用心に越したことはないから送っておいた」となぜか得意気だった。聞けばこの20分の間に、筆者以外にも6人の知人に送ったと言い、さらに小学生の娘さんをせかして同級生5人に送らせ、ついでにそのお母さん仲間全員にも送ったという。恐るべきは"善意"の主婦である。  では、こうした情報に遭遇したとき我々はどう対処すべきなのか。先の荻上氏が言う。 「その情報が、本当に自分という立場の人間こそが拡散すべき情報なのかを、一旦立ち止まって考えてみるべきですね。脊髄反射でポンとリツイートする人が多いので、クリックする前に深呼吸するなんてのも案外効果があります。また、付加情報が特にない場合は公式リツイートを使ってソース元へのリンクを常に確保しておくことです。でないと、問題が解決して発信元がつぶやきを削除しても、リツイートされたつぶやきはその後も大量に残ることになってしまい、そこから新たな誤解や問題が発生してしまうとも限りません。情報はいずれ古びます。その古びた情報を遅れて取得する人への配慮も重要です。そうしたことができる自信がないという方は、わざわざツイートなどせず、募金など、自分にできる活動で被災者を支えてあげてください」  人を助けたいと思う気持ちそのものは尊いもの。しかし、「自分の助けこそが必要だ」というケースは極めて少ないはずと荻上氏は言う。また、可能であれば"当事者"に直接聞くなど一次情報に接する努力も必要だ。今後もしネット上で該当する情報にぶつかった場合は、 1.自分がすべき問題なのか考える。 2.一次情報の獲得に務める。 3.公式リツイートを使う。  以上3点肝に銘じたい。尚、この問題については荻上氏のブログに詳しい。ぜひご参照されたい。 (文=浮島さとし) ◆「荻上式BLOG」(荻上チキブログ)http://d.hatena.ne.jp/seijotcp/
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災害時の携帯電話との接し方について「利用者ができること」を専門家に聞いてみた

keitaidenwanotsukaikata.jpg ※日刊サイゾーは省エネ運転中です。  国内観測史上最大の地震となった「東北地方太平洋沖地震」。地震発生直後から携帯電話は各キャリアとも利用不能となり、「被災地の家族と連絡が取りたい」という血の叫びにも似た書き込みで、Twitter上は一時埋め尽くされた。もちろん、連絡が取れずに一番辛い思いをしているのが現地の被災者であることは言うまでもない。過去の大きな災害時では、瓦礫の狭間で生き延びながら、救援を求めてつながらない携帯電話を必死でかけ続けていたという被災者も少なくない。  こうした際に必ず出るのが「いくらなんでも、いざというときにケータイ使えなさ過ぎ!」「不便は覚悟するが、もうちょっとなんとかならんのか!」といった悲痛な叫び。あるSNSでは「国民全員が一斉に電話してもビクともしない体制は作れないものなのでしょうか」という、素朴とも無茶ともとれる直球な疑問も見受けられた。  実際、災害時でも過不足なく携帯電話を使えるようにすることは不可能なのだろうか。携帯電話の業界動向に詳しい武蔵野学院大学准教授の木暮祐一氏は、「各キャリアがとんでもなく莫大な設備投資をすれば理論上は可能ですが」とした上で、「現実的には難しい」という理由を次のように説明する。 「莫大な設備投資をすれば、当然ながら料金にも跳ね返ってきます。現行サービスはあくまで、平常時で過不足なく使えることを前提に設備投資し、そのうえで料金を設定しています。仮にピーク時のスペックで巨額のインフラ整備するとなると、その設備能力は平時ではまったく無駄になってしまいます。それ以外にも、総務省から割り当てられている周波帯の問題もありますが、今回それを考慮から外したとしても現実的には難しいでしょう」  あるシステム開発者もこれに同意する。 「もしJRや私鉄が今の100倍、200倍の輸送量を、365日24時間体制で実現しようとすれば、極端に言えば線路そのものを何本も新たに敷設したり、車両を2階建て、3階建てにするなどして、キャパも100倍にしないと無理です。工事費はもちろん、維持費や安全対策費、人件費も莫大に膨らみますが、一年のほとんどは電車がガラガラという状態になるでしょう。それでも『一年中その状態で走らせろ』という声に応えようとすれば、料金を一区間5,000円とか1万円とかにしないと維持できません。それと似たような話です」  物理的には可能だが事実上無理というのが、現時点での答えのようだ。また、前出の木暮氏はNTTが電電公社だった時代を振り返りながら、電話の社会的な位置づけの変化を指摘する。 「昔は電話も、電気やガスと同じ公共インフラとしての認識が今以上に強く、本当に必要なときだけ電話で話すべきだという風潮がありました。ところが民営化してNTTになると、トレンディドラマをスポンサードするなどして、電話を現代人のコミュニケーションツールとして前面に打ち出し始めました。同時に、さまざまな手段で利用者の意識を煽りながら利用料金の拡大に務めてきたわけです。ブームになった『帰るコール』なんて、いわば無駄な電話の典型です。民間会社としては必然という部分もありますが、実際に緊急事態で電話を使えずに命の危険にさらされている人がいるわけですから、公共インフラとしての認識を、サービス会社も利用者も双方があらためて持つ必要はあるでしょうね」  一方、一連の不満の声で多く見られたのが、「災害用伝言ダイヤル(171)が通じない」というもの。これは「地震、噴火などの災害の発生により、被災地への通信が増加し、つながりにくい状況になった場合に」(NTT東日本のHPより)利用できる緊急ダイヤルで、2005年8月の宮城県沖地震での調査では、回答者の9割がその存在を認知していたというほど定着が進んでいる。今回の地震でも、一部の全国紙ではこの171を「固定電話からも携帯電話からも使えるサービス」と紹介している。ところが実際には「171が全然通じない!」という声がTwitterやSNSで氾濫した。  これについて木暮氏は、171そのものへの誤解があると説明する。 「たとえば、auからdocomoへというように、他のキャリアへ電話をかけるときは『ゲートウェイ』と呼ばれる電話会社同士が接続する関門局を通過するのですが、混雑時はこのポイントでどうしてもつながりにくくなります。『171』のサービスはauでもdocomoでもなく、NTT東日本という別の電話会社が運営しているわけですから、どの携帯電話からも混雑時には基本的につながりにくくなります。混雑が収まれば携帯からももちろんつながりますが、緊急時では固定電話で使うサービスだと基本的に認識しておいたほうがいいでしょう」  たしかに、NTT東日本のHPでは、「171」を利用できるのは固定電話や公衆電話、ひかり電話などが基本とした上で、「携帯電話、PHSからも利用できますが、詳しくはお客様がご契約されている通信事業者へご確認を」と説明している。携帯電話からの利用は、各キャリアが推奨しているウェブサービス「災害用伝言板」を利用するのが正しいようだ。  以上をまとめると、災害時での携帯電話については 1.災害時につながらない状況は今後も大幅に改善される見通しはない。 2.したがって混雑時は当事者以外は携帯の利用を控える。 3.各キャリアの災害用伝言板サービスを活用する。  という、極めてシンプルな点の再認識が必要となりそうだ。  「そんなことはあたりまえだろ!」と言うことなかれ。災害直後のネット上では「会社に何回もかけまくってんだけど、全然つながらない」「さっきからバイト先に20回くらいかけてる」そんなカキコミが散乱していたのも現実。これについて木暮氏が言う。 「普段あまり意識されていませんが、電波というのは限られた枠をみんなで分け合って使っているという現実があります。災害時のような緊急時には不要な電話は控え、本当に必要としている人たちのために譲る考え方を周知する必要があるでしょう。たとえば、公衆電話は実は固定電話よりもつながりやすく設定されていますので、移動中に会社へ連絡するときは、公衆電話から会社の固定電話へかければ携帯の周波帯は使わなくて済みます。被災地の大変な状況はまだ続きますので、今後もしばらくは配慮が必要でしょう」 (文=浮島さとし)
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