
最近、「炎上」が問題になっている。炎上とは、ネット上で特定の発言や状況に話題が集中して拡散することを意味する。刺激的な内容であれば、TwitterやSNS、ブログなどを介して爆発的に広まるのが特徴だ。炎上の引き金になる内容は多岐にわたるが、カンニングや飲酒運転、万引き、いじめなどの行為を自慢するために投稿し、第三者によって広められることが多い。その際、ネットの住民たちによって、個人情報を根こそぎ晒され、実害が出ることもある。
ネット住民による、この個人情報の収集能力は恐ろしく高い。Twitterで失言があった場合、その過去の投稿をすべてチェックし、ユーザー名などのプロフィールも元に個人を特定しようとする。たとえ本名で利用していなくても、特定するための手がかりは無数にある。食事を取ったお店、友人と撮影した写真、投稿に付随する位置情報などなど。同じユーザー名で、mixiやFacebookなどを利用していれば、そちらから詳細な個人情報が漏れることもある。一旦炎上すると、数万人から数十万人が目にするので、通常のネット検索では見つからない情報からも特定されてしまうことがある。
7月にはアメリカのファストフード店で客に出すためのレタスを踏んでいる写真を投稿したユーザーがいたが、大炎上して即身元を特定される事件があった。その後、このユーザーは解雇されている。日本でも多数の事例が発生しており、特定されたユーザーが、退学や解雇に追い込まれることも多い。
明らかな犯罪行為を全世界に公開するのは、炎上して当たり前ともいえる。しかし、本人は炎上するとは思っていない投稿が炎上することも頻繁に見受けられる。例えば、電車で席を譲ってくれない人やいびきをかいて寝ている人を写真付きで晒すケースや、写真がなくても、有名人を目の前で見て誹謗中傷したり、犯罪行為を肯定する投稿も炎上を招く。ここは、常識とかモラルといったバランスの問題になるので線引きは難しいが、下手なことは投稿しないほうがいい。
また、このネットリンチというべき現象は、無視できない弊害も起こしている。問題の原因ではない、別人に被害が及ぶことがあるのだ。炎上したユーザーの投稿をしらみつぶしにチェックした時に、本文や写真に現れる友人や家族関係にも調査の手が伸びる。完全にとばっちりだが、その際に突っ込みどころのある投稿が見つかると、炎上ユーザーの知人はやっぱりそんな人物だった、として拡散してしまうのだ。ネットに流れてしまった情報は削除することができない。将来にわたって、カンタンに検索されてしまう状態になるのだ。人によっては、就職や結婚に支障が出てしまうこともあるだろう。
対策としては、ネットには個人情報をなるべく出さないことが重要だ。モラルに反するような投稿はしない。危険人物とはつながりを切る、といったことも有効。筆者も知人にはそのようにアドバイスするのだが、「それでは天気の話しかできない」と返される。それは確かにその通りなのだが、炎上したり、炎上に巻き込まれた時の被害は計り知れない。プロフィールの内容を特定されないように変更したり、GPS設定を切るなど、最低限の対策はしておきたい。バカな投稿をしたことがあるなら、そのアカウントは削除して、新たにやり直すといったことも検討することをお勧めする。
(文=柳谷智宣)
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「ノマドの女王」安藤美冬×「百獣の王」武井壮 ノマドワーカー・サバイバル対談!
【サイゾーpremium】より
──今年『情熱大陸』への出演で注目を集めた安藤美冬氏。彼女が提唱するソーシャルメディアを駆使した「自由に生きるための働き方」というスタイルは、仕事に追われる世のリーマンたちの心を突き動かした。しかしその裏で、「いや、本物はこっちだろ!」と言われ、同時に注目を集めた人物がいる。家なしの本気ノマドライフを送るアスリート、武井壮氏。果たして真のノマドはどちらか? ついに直接対決の火ぶたが切って落とされる──!?
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『ノマドワーキング』とは?……「ノマド」は「遊牧民」という意味。決まったオフィスなどではなく、カフェや公園、取引先のオフィスなどでノートパソコン、スマートフォンなどを駆使し、ネットを介して場所を問わずに仕事をするスタイルを、「ノマドワーキング」と呼ぶ。 武井 壮(以下、武井) 安藤さん、テレビに出演してましたよね。なんか『情熱大陸』(TBS系)みたいな番組だったような気が。 安藤美冬(以下、安藤) それ、『情熱大陸』ですね(笑)。 武井 あ、そうでしたか! 似たような番組いっぱいあるから。安藤さんがその番組に出演したときに、僕のツイッターにもすごい反響があったんですよ! 「武井壮のほうがノマドじゃねーか」みたいな(笑)。それで、安藤さんのことを知ったんですよね。 安藤 (笑)。私も武井さんのことはテレビで拝見しました。 ──では、お互いのことはご存じなんですね? 武井 申し訳ないんですけど、安藤さんがどんな活動やお仕事しているかはわからないですが……。 安藤 もともとは、集英社という出版社に勤務していました。 武井 「週刊少年ジャンプ」の!?(写真/奥山智明)
安藤 そう、その集英社です(笑)。7年間、広告部ではファッション誌の広告営業、宣伝部では書籍単行本のプロモーションに関わる仕事をさせていただきました。そして2年前に退社して、フリーランスとしての活動を始めたんです。でも実は、退社する最後の最後まで、「自分はこの仕事をやるんだ」ということを決められないままで。武井さんみたいにアスリートとして生きる、みたいな一生を捧げるだけの(仕事の)対象も覚悟もなかった。それがコンプレックスだったんですけど、じゃあやりたいことが見つからないなら、それを逆手にとって「仕事相手に領域を決めてもらおう」と発想を転換させました。ソーシャルメディアを通じて日々自分のことを発信していくについれて、学校の講座を企画したり、ウェブサイトのディレクションをしたり、コワーキングスペースに対して働く視点を提供するアドバイザリー業務をしたりと、「安藤さん、こんな仕事をしませんか?」とさまざまな依頼をいただくようになったんです。 武井 それで、安藤さんがノマドワーキングの急先鋒といわれているわけだ。 安藤 時々勘違いされますけど、別にスタバでMacBook Airをいじってかっこつけて仕事するのがノマドワーキングじゃないんですよ(笑)。自分で好きな仕事を作り出したり、組織に縛られずに自由でありたいという欲求をワークスタイルに合わせて生きていくことの、選択肢のひとつとしてノマドがあるんです。ノマドワーカー自体は昔から一定数いましたし、別に新しい働き方でもなんでもないですけどね。 ──武井さん、安藤さんと自分のスタイルを比べてみてどうですか? 武井 まず、僕と一番大きく違うのは、僕は会社勤めをしたことがないということ。そういうことからは、身体能力だけで逃げ切ってやろうと思ってますから! ──そこまで断言されると、なんか心強いですね。 武井 で、僕は今もいわゆるノマド的な生活をしていますけど、もともと小学生の頃からその気持ちがあったんです。体育の授業は大好きだけど、週に3~4時間しかないじゃないですか。それ以外の時間は、ずっと嫌いな勉強の時間だったわけですよ。1日1時間好きな授業があっても、毎日4時間、1日の6分の1は嫌いなこと。6年間通ったら1年分ですよ! その頃から、「なんで楽しいことだけで選んじゃだめなのかなぁ?」と疑問に思っていて。それが今の僕の活動の根源になってますね。だから今は、ウキウキすることしかしてません。 安藤 すごく共感します! 今すぐ立ち上がって拍手したいくらい! 私はよく、「”What”から”How”の時代が来た」と言っているんですね。これまではどの会社に入って、なんの仕事をするか(What)が重要視されてきました。もちろん、それらも働くうえでの重要なポイントなのですが、これからの時代において大事なのは、どんなふうに人生を生きたいのか、そしてどんなふうに働きたいのか(How)だと考えています。まずやりたくないことを決めたり、ウキウキすることに動かされていったりする上で、最後にピースが埋まるように仕事がハマればいいと思うんですよ。私の場合は、そのHowを徹底して突き詰めたら、ノマドというスタイルに行き着いたんです。 ──なんだか、すっかり”ウキウキ”がお2人の共通テーマになってるようですが……そのウキウキを求めるようになった原体験ってあるんですか? 武井 僕が子どもの頃は、褒めてくれる人が身近にいなかったから、先生に褒められたり、友達に「壮君すごい!」って言われるのを渇望してたんですよ。承認欲求が強かったというか。だから今でも「武井壮すごい!」って言ってくれることに喜びを感じますし。 安藤 私の場合は、子どもの頃から「自由に自分らしく生きること」への強烈な憧れがあった気がします。身体が強いほうではなかったですし、小学校ではイジメに遭っていたこともありました。毎日図書館に通っては、「少年探偵団」とか「ホームズ」が繰り広げる冒険譚に心躍らせていて。こんな風に、かっこよく生きられたらどんなに素晴らしいだろうって思っていたような気がします。 ■ノマドは『ドラクエ』のようなものソーシャルメディアにマイナスなし! ──なるほど。お互いに子どもの頃の思いが今に生きているわけですね。そして、おふたりは、「ウキウキ」「ノマド的な生き方」という共通項のほかに、ツイッターをはじめ、ソーシャルメディアを頻繁に利用されているという共通点もありますよね。安藤美冬氏。(写真/奥山智明)
安藤 武井さんのブログやツイッターを拝見してたら、「百獣の王を目指す男」ってキャッチコピーが真っ先に目に入ってきましたよ! このコピーを使い始めたきっかけってなんですか? 武井 昔、オレゴンの山の奥でものすごく大きな鹿に出くわしたことがあって、奴を見た瞬間、「殺される!」って思ったんです。「今まであんなにトレーニングをがんばったのに、観光に来て、鹿に遭っただけでそれが全部終わっちゃうんだ……。こりゃいかーん!」と。それで、「なにごとも、準備しとかなきゃ簡単に終わっちゃう」ってことを痛感して、動物のことを調べ始めたんですよ。で、それを何かに生かせないかと考えていたところに、自分がウキウキする肩書をつけようと思いついて、「百獣の王だ!」って。 安藤 個人が誰でもメディアになれる状況では、言葉を作る能力、具体的には発信を受け取る側に自分がどんな人間なのかを伝えるための”キーワード化”がすごく重要なんですよ。私の場合は「ノマド」「セルフブランディング」「ソーシャルメディア」「フリーランス」という4つのキーワードを1年以上前に定めて、「この人は新しいワーク&ライフスタイルを実践している人なんだ」っていうイメージがツイッター上で拡散していくのを狙ったんです。でも、それを自然にやってしまう武井さんはすごいと思います! 武井 お、おお……分析されている。実はね、「百獣の王」をグーグルで検索したら、上位4つ目まで武井壮なんですよ! ライオンが5位! ライオンの長期政権だった「百獣の王」が今、日本国内のネット上では「百獣の王=武井壮」なんです! 安藤 すごい! やっぱり継続して発信し続けることって大事なんですよね。 ──おふたりとも順調に活動しているようですが、これまでピンチはなかったんですか? 安藤 実は、独立してから5カ月間は収入が「0」だったんですよ。会社員時代は毎月の給料やボーナスもかなりいい額をいただいていたこともあって、それが0になった途端、社会から「お前いらねーよ」って言われてるような気がして。その頃は本当にノックアウトされてましたね……。 武井 唯一のピンチは、100メートルのタイムが11秒台に落ちてしまった時ですね。僕は陸上を始めて、最初の100メートル走が10秒9だったんです。それからずっと10秒台をキープしてたんですよ。それがアメリカに渡ってゴルフを始めたら、走らないもんだから体力もなくなって、2〜3年もたつと体重も増えて、すげー足が遅くなっちゃって。100メートルが11秒7にまで落ちたんですよ。 ──それでも十分立派なタイムだと思うんですが……。 武井 いや、11秒台になるとスコアも伸びなくなって。それで日本に帰ってきてからトレーニングを強化して、今年、10秒台が出たんですよ。そしたらテレビにも出られて調子が上がってきたんです。武井壮は10秒台で走ってると最高なんだけど、11秒台になるとピンチが訪れる「武井壮11秒台ピンチ説」という現象が起きているわけですよ! だから日本の男子たち、100メートルは11秒を切っておけよ! ──いやいや、無茶言わないでください(笑)。安藤さんは、ピンチをどうやって脱出したんですか? 安藤 当然ですが、仕事がなければ仕事のことは発信できませんよね。おまけにつまらない見栄をはりたい気持ちから、「仕事がない。仕事が欲しい」と周囲に頼むこともできなくて。外には出かけるのだけれども、周りに自分の内面をさらけだすことができない「外こもり」状態を経て、どんどん後ろ向きになって、なおさら仕事がない状態に陥ってしまったんです。そんな状態がもうすぐ半年、となった頃に「このままじゃいけない」と覚悟が決まりまして。「よし、自分を発信するぞ!」と意を決して積極的に自分のことを発信するようにしたんですよ。そうしたら、少しずつソーシャルメディア経由で依頼が来るようになりました。まずは発信すること、そしてあきらめずにずーっと続けることですね。 武井 続けることって、プラスにしかならないですよね。僕のことを知らないのが0で、「武井壮つまんねーな」は1だと思ってます。「武井壮おもしれーな」がプラス100くらいな感じで。そうやって武井壮がどんどん伸びていけばいいなぁ。 安藤 武井”草”が伸びていくわけですね(笑)。「つぶやきがつまんない」とか言われたりしても、結果マイナスだったことはないですよね。 ──自身の発信に対する批判もあるわけじゃないですか。それについてはどう考えてます? 安藤 ソーシャルメディアは世の中に対して開かれたツールですから、中にはそうした反応があるのはごく自然なことだと思います。『情熱大陸』放映中にツイッターのフォロワーさんが1万4000人ほど激増したんです。そしたら、人に好かれたいと思う気持ちが強くなりすぎて、つぶやきができなくなってしまって。「普通のカレーを食べていることをツイートしたらカッコ悪いんじゃないか」「いや、ここは庶民的なところを見せたほうが印象いいかな」とか考えちゃったり(笑)。人の視線を気にして、自分らしくなくなっていることに気がついたんです。それからはもっと自分に正直になろうと思って、発信をしていけばこういう日もあるさと前向きに考えるようになりました。 武井 僕は、毎日”エゴサーチ”してますけどね(笑)。ソーシャルメディアがなくてケータイが主な連絡手段だった時は、1時間誰からも連絡がないだけで「地球上の60数億人が、1時間=3600秒もの間に、誰も武井壮に連絡したいと思っていないのか……!」という不安があったもんで。 ──これまたスケールの大きな不安ですね。 武井 だからソーシャルメディアが成熟してきた最近は、毎日が楽しいですよ。ツイッター開いたら、いろんな人が「武井壮、武井壮」って言ってくれて。「ほほう、悪口まで言っちゃうか!」なんて思ってみたり。僕は「武井壮」を知ってほしいっていうのが大前提にありますからね! 今や、その希望が動物にまで及んでいるくらいです! 一同 (笑) 武井 動物たちにも「お! 武井壮じゃん」って言ってほしいんですよ! ヌーの群れが「武井が来たから行こうよ」とか言って囲んでくれたり、ゴリラがオレのことを見つけてバナナ持ってきてくれたり。そんなことになったら、地球で生活するのが楽しくてしょうがないじゃないですか! 安藤 そうそう、ノマドというスタイルを生きながら、その中でインフラのようにソーシャルメディアを使って仲間を増やしていくのが楽しいんですよね。私、これって『ドラゴンクエスト』に例えられると思っていて。「サイゾー」読者の皆さんも、『ドラクエ』やったことある世代ですよね? ──そりゃもう、「復活の呪文」を入力していた世代ですよ。 安藤 それです、「復活の呪文」(笑)。『ドラクエ』のように、ある日自分の使命に目覚めて、ソーシャルメディア上で自分を発信するようになる。「私はこんなことを考えていますよ」「一緒にこんなことをやりましょう」とか、さまざまなことを日々発信していき、受け手の反応を見ながらレベルアップしていく。そのフィールドには、どんなモンスターやボスが待ち構えているかわからないですけど、「この指止まれ」とフラグを立てれば、自然と仲間が集まってくるのが現代の素晴らしいところ。個人が世界に自分を発信していくことで、人や情報がどんどんつながっていって、仲間やチャンスや仕事をつかんでいけるようになる。そんな冒険が始まると思うと、ワクワしませんか!? (構成/高橋ダイスケ) 安藤美冬(あんどう・みふゆ) 1980年、東京都育ち。(株)スプリー代表。SNSでの発信を駆使した、独自のノマドワークスタイル実践者。さまざまな企業・業種からの依頼で活動しながら、連載、講演、広告出演なども行う。11月、初の著書をディスカヴァー・トゥエンティワンより発売予定。 武井壮(たけい・そう) 1973年、東京都生まれ。アスリート。中央学院大学在学中に陸上を始め、3年生の時、十種競技を開始、2年半後には日本タイトルを獲得する。その後、アメリカにゴルフ留学をしたり、台湾で野球チームのコーチを務めたりもした。8年以上家のない生活を送っており、日夜「百獣の王」を目指してトレーニングに励んでいる。 【「サイゾーpremium」ではIT業界の裏側を暴く記事が満載!】 ・【限定】お手本は”のび太”!? 実践してしまう前に読みたい! ノマドスタイル(笑)本3選 ・ITバブル終焉で、豪遊社長は絶滅寸前……ホープはグリー田中社長!? 夜もイケイケなIT社長名鑑 ・アップルの行動原理を探る――新CEOのもと超高学歴エリートたちが激烈な社内政治を展開!?武井壮氏。(写真/奥山智明)
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──今年『情熱大陸』への出演で注目を集めた安藤美冬氏。彼女が提唱するソーシャルメディアを駆使した「自由に生きるための働き方」というスタイルは、仕事に追われる世のリーマンたちの心を突き動かした。しかしその裏で、「いや、本物はこっちだろ!」と言われ、同時に注目を集めた人物がいる。家なしの本気ノマドライフを送るアスリート、武井壮氏。果たして真のノマドはどちらか? ついに直接対決の火ぶたが切って落とされる──!?
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安藤 そう、その集英社です(笑)。7年間、広告部ではファッション誌の広告営業、宣伝部では書籍単行本のプロモーションに関わる仕事をさせていただきました。そして2年前に退社して、フリーランスとしての活動を始めたんです。でも実は、退社する最後の最後まで、「自分はこの仕事をやるんだ」ということを決められないままで。武井さんみたいにアスリートとして生きる、みたいな一生を捧げるだけの(仕事の)対象も覚悟もなかった。それがコンプレックスだったんですけど、じゃあやりたいことが見つからないなら、それを逆手にとって「仕事相手に領域を決めてもらおう」と発想を転換させました。ソーシャルメディアを通じて日々自分のことを発信していくについれて、学校の講座を企画したり、ウェブサイトのディレクションをしたり、コワーキングスペースに対して働く視点を提供するアドバイザリー業務をしたりと、「安藤さん、こんな仕事をしませんか?」とさまざまな依頼をいただくようになったんです。 武井 それで、安藤さんがノマドワーキングの急先鋒といわれているわけだ。 安藤 時々勘違いされますけど、別にスタバでMacBook Airをいじってかっこつけて仕事するのがノマドワーキングじゃないんですよ(笑)。自分で好きな仕事を作り出したり、組織に縛られずに自由でありたいという欲求をワークスタイルに合わせて生きていくことの、選択肢のひとつとしてノマドがあるんです。ノマドワーカー自体は昔から一定数いましたし、別に新しい働き方でもなんでもないですけどね。 ──武井さん、安藤さんと自分のスタイルを比べてみてどうですか? 武井 まず、僕と一番大きく違うのは、僕は会社勤めをしたことがないということ。そういうことからは、身体能力だけで逃げ切ってやろうと思ってますから! ──そこまで断言されると、なんか心強いですね。 武井 で、僕は今もいわゆるノマド的な生活をしていますけど、もともと小学生の頃からその気持ちがあったんです。体育の授業は大好きだけど、週に3~4時間しかないじゃないですか。それ以外の時間は、ずっと嫌いな勉強の時間だったわけですよ。1日1時間好きな授業があっても、毎日4時間、1日の6分の1は嫌いなこと。6年間通ったら1年分ですよ! その頃から、「なんで楽しいことだけで選んじゃだめなのかなぁ?」と疑問に思っていて。それが今の僕の活動の根源になってますね。だから今は、ウキウキすることしかしてません。 安藤 すごく共感します! 今すぐ立ち上がって拍手したいくらい! 私はよく、「”What”から”How”の時代が来た」と言っているんですね。これまではどの会社に入って、なんの仕事をするか(What)が重要視されてきました。もちろん、それらも働くうえでの重要なポイントなのですが、これからの時代において大事なのは、どんなふうに人生を生きたいのか、そしてどんなふうに働きたいのか(How)だと考えています。まずやりたくないことを決めたり、ウキウキすることに動かされていったりする上で、最後にピースが埋まるように仕事がハマればいいと思うんですよ。私の場合は、そのHowを徹底して突き詰めたら、ノマドというスタイルに行き着いたんです。 ──なんだか、すっかり”ウキウキ”がお2人の共通テーマになってるようですが……そのウキウキを求めるようになった原体験ってあるんですか? 武井 僕が子どもの頃は、褒めてくれる人が身近にいなかったから、先生に褒められたり、友達に「壮君すごい!」って言われるのを渇望してたんですよ。承認欲求が強かったというか。だから今でも「武井壮すごい!」って言ってくれることに喜びを感じますし。 安藤 私の場合は、子どもの頃から「自由に自分らしく生きること」への強烈な憧れがあった気がします。身体が強いほうではなかったですし、小学校ではイジメに遭っていたこともありました。毎日図書館に通っては、「少年探偵団」とか「ホームズ」が繰り広げる冒険譚に心躍らせていて。こんな風に、かっこよく生きられたらどんなに素晴らしいだろうって思っていたような気がします。 ■ノマドは『ドラクエ』のようなものソーシャルメディアにマイナスなし! ──なるほど。お互いに子どもの頃の思いが今に生きているわけですね。そして、おふたりは、「ウキウキ」「ノマド的な生き方」という共通項のほかに、ツイッターをはじめ、ソーシャルメディアを頻繁に利用されているという共通点もありますよね。安藤美冬氏。(写真/奥山智明)
安藤 武井さんのブログやツイッターを拝見してたら、「百獣の王を目指す男」ってキャッチコピーが真っ先に目に入ってきましたよ! このコピーを使い始めたきっかけってなんですか? 武井 昔、オレゴンの山の奥でものすごく大きな鹿に出くわしたことがあって、奴を見た瞬間、「殺される!」って思ったんです。「今まであんなにトレーニングをがんばったのに、観光に来て、鹿に遭っただけでそれが全部終わっちゃうんだ……。こりゃいかーん!」と。それで、「なにごとも、準備しとかなきゃ簡単に終わっちゃう」ってことを痛感して、動物のことを調べ始めたんですよ。で、それを何かに生かせないかと考えていたところに、自分がウキウキする肩書をつけようと思いついて、「百獣の王だ!」って。 安藤 個人が誰でもメディアになれる状況では、言葉を作る能力、具体的には発信を受け取る側に自分がどんな人間なのかを伝えるための”キーワード化”がすごく重要なんですよ。私の場合は「ノマド」「セルフブランディング」「ソーシャルメディア」「フリーランス」という4つのキーワードを1年以上前に定めて、「この人は新しいワーク&ライフスタイルを実践している人なんだ」っていうイメージがツイッター上で拡散していくのを狙ったんです。でも、それを自然にやってしまう武井さんはすごいと思います! 武井 お、おお……分析されている。実はね、「百獣の王」をグーグルで検索したら、上位4つ目まで武井壮なんですよ! ライオンが5位! ライオンの長期政権だった「百獣の王」が今、日本国内のネット上では「百獣の王=武井壮」なんです! 安藤 すごい! やっぱり継続して発信し続けることって大事なんですよね。 ──おふたりとも順調に活動しているようですが、これまでピンチはなかったんですか? 安藤 実は、独立してから5カ月間は収入が「0」だったんですよ。会社員時代は毎月の給料やボーナスもかなりいい額をいただいていたこともあって、それが0になった途端、社会から「お前いらねーよ」って言われてるような気がして。その頃は本当にノックアウトされてましたね……。 武井 唯一のピンチは、100メートルのタイムが11秒台に落ちてしまった時ですね。僕は陸上を始めて、最初の100メートル走が10秒9だったんです。それからずっと10秒台をキープしてたんですよ。それがアメリカに渡ってゴルフを始めたら、走らないもんだから体力もなくなって、2〜3年もたつと体重も増えて、すげー足が遅くなっちゃって。100メートルが11秒7にまで落ちたんですよ。 ──それでも十分立派なタイムだと思うんですが……。 武井 いや、11秒台になるとスコアも伸びなくなって。それで日本に帰ってきてからトレーニングを強化して、今年、10秒台が出たんですよ。そしたらテレビにも出られて調子が上がってきたんです。武井壮は10秒台で走ってると最高なんだけど、11秒台になるとピンチが訪れる「武井壮11秒台ピンチ説」という現象が起きているわけですよ! だから日本の男子たち、100メートルは11秒を切っておけよ! ──いやいや、無茶言わないでください(笑)。安藤さんは、ピンチをどうやって脱出したんですか? 安藤 当然ですが、仕事がなければ仕事のことは発信できませんよね。おまけにつまらない見栄をはりたい気持ちから、「仕事がない。仕事が欲しい」と周囲に頼むこともできなくて。外には出かけるのだけれども、周りに自分の内面をさらけだすことができない「外こもり」状態を経て、どんどん後ろ向きになって、なおさら仕事がない状態に陥ってしまったんです。そんな状態がもうすぐ半年、となった頃に「このままじゃいけない」と覚悟が決まりまして。「よし、自分を発信するぞ!」と意を決して積極的に自分のことを発信するようにしたんですよ。そうしたら、少しずつソーシャルメディア経由で依頼が来るようになりました。まずは発信すること、そしてあきらめずにずーっと続けることですね。 武井 続けることって、プラスにしかならないですよね。僕のことを知らないのが0で、「武井壮つまんねーな」は1だと思ってます。「武井壮おもしれーな」がプラス100くらいな感じで。そうやって武井壮がどんどん伸びていけばいいなぁ。 安藤 武井”草”が伸びていくわけですね(笑)。「つぶやきがつまんない」とか言われたりしても、結果マイナスだったことはないですよね。 ──自身の発信に対する批判もあるわけじゃないですか。それについてはどう考えてます? 安藤 ソーシャルメディアは世の中に対して開かれたツールですから、中にはそうした反応があるのはごく自然なことだと思います。『情熱大陸』放映中にツイッターのフォロワーさんが1万4000人ほど激増したんです。そしたら、人に好かれたいと思う気持ちが強くなりすぎて、つぶやきができなくなってしまって。「普通のカレーを食べていることをツイートしたらカッコ悪いんじゃないか」「いや、ここは庶民的なところを見せたほうが印象いいかな」とか考えちゃったり(笑)。人の視線を気にして、自分らしくなくなっていることに気がついたんです。それからはもっと自分に正直になろうと思って、発信をしていけばこういう日もあるさと前向きに考えるようになりました。 武井 僕は、毎日”エゴサーチ”してますけどね(笑)。ソーシャルメディアがなくてケータイが主な連絡手段だった時は、1時間誰からも連絡がないだけで「地球上の60数億人が、1時間=3600秒もの間に、誰も武井壮に連絡したいと思っていないのか……!」という不安があったもんで。 ──これまたスケールの大きな不安ですね。 武井 だからソーシャルメディアが成熟してきた最近は、毎日が楽しいですよ。ツイッター開いたら、いろんな人が「武井壮、武井壮」って言ってくれて。「ほほう、悪口まで言っちゃうか!」なんて思ってみたり。僕は「武井壮」を知ってほしいっていうのが大前提にありますからね! 今や、その希望が動物にまで及んでいるくらいです! 一同 (笑) 武井 動物たちにも「お! 武井壮じゃん」って言ってほしいんですよ! ヌーの群れが「武井が来たから行こうよ」とか言って囲んでくれたり、ゴリラがオレのことを見つけてバナナ持ってきてくれたり。そんなことになったら、地球で生活するのが楽しくてしょうがないじゃないですか! 安藤 そうそう、ノマドというスタイルを生きながら、その中でインフラのようにソーシャルメディアを使って仲間を増やしていくのが楽しいんですよね。私、これって『ドラゴンクエスト』に例えられると思っていて。「サイゾー」読者の皆さんも、『ドラクエ』やったことある世代ですよね? ──そりゃもう、「復活の呪文」を入力していた世代ですよ。 安藤 それです、「復活の呪文」(笑)。『ドラクエ』のように、ある日自分の使命に目覚めて、ソーシャルメディア上で自分を発信するようになる。「私はこんなことを考えていますよ」「一緒にこんなことをやりましょう」とか、さまざまなことを日々発信していき、受け手の反応を見ながらレベルアップしていく。そのフィールドには、どんなモンスターやボスが待ち構えているかわからないですけど、「この指止まれ」とフラグを立てれば、自然と仲間が集まってくるのが現代の素晴らしいところ。個人が世界に自分を発信していくことで、人や情報がどんどんつながっていって、仲間やチャンスや仕事をつかんでいけるようになる。そんな冒険が始まると思うと、ワクワしませんか!? (構成/高橋ダイスケ) 安藤美冬(あんどう・みふゆ) 1980年、東京都育ち。(株)スプリー代表。SNSでの発信を駆使した、独自のノマドワークスタイル実践者。さまざまな企業・業種からの依頼で活動しながら、連載、講演、広告出演なども行う。11月、初の著書をディスカヴァー・トゥエンティワンより発売予定。 武井壮(たけい・そう) 1973年、東京都生まれ。アスリート。中央学院大学在学中に陸上を始め、3年生の時、十種競技を開始、2年半後には日本タイトルを獲得する。その後、アメリカにゴルフ留学をしたり、台湾で野球チームのコーチを務めたりもした。8年以上家のない生活を送っており、日夜「百獣の王」を目指してトレーニングに励んでいる。 【「サイゾーpremium」ではIT業界の裏側を暴く記事が満載!】 ・【限定】お手本は”のび太”!? 実践してしまう前に読みたい! ノマドスタイル(笑)本3選 ・ITバブル終焉で、豪遊社長は絶滅寸前……ホープはグリー田中社長!? 夜もイケイケなIT社長名鑑 ・アップルの行動原理を探る――新CEOのもと超高学歴エリートたちが激烈な社内政治を展開!?武井壮氏。(写真/奥山智明)
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iPhone 5からGoogleマップがなくなったワケと対処法

iPhone 5でもGoogleマップが活用できる!?
先月発売され、大ヒット中のiPhone 5。搭載されているiOS 6では、マップアプリが変更された。従来はGoogleマップだったのだが、Appleのオリジナルマップになったのだ。iPhone 5やiOS 6はすこぶる評判がいいのだが、マップアプリだけは大不評。地図データはすかすかだし、地名や駅名などが変な名称になっていたりと、Googleマップと比べると精度が大幅に劣っているのだ。日本でiPhoneを発売しているauとソフトバンクには苦情が殺到したようだが、これはApple側の問題だ。
アップルの開発者会議「WWDC 2012」でiPhone 5が発表された時のプレゼンを見ていたのだが、その時はGoogleマップのような画像ではなく、ベクタデータを使った新しいシステムのマップに進化したように聞こえた。3D表示や音声案内が可能なナビ機能など、Googleマップではできない機能を実現したように見えたのだ。

iOS 6のマップアプリ(左)、モバイルGoogleマップ(右)で
JR五反田駅周辺を表示したところ。
だが、現実は違った。あまりに新しいマップへの苦情が多いため、Appleの最高経営責任者(CEO)であるティム・クックは、ホームページ上に謝罪文を公開。しかも、「地図マピオン」や「地図 Yahoo!ロコ」などのアプリをダウンロードしたり、Googleマップのウェブサイトを利用することを推奨している。これは、Appleに限らず異例のことだ。
すると、気になるのはAppleがGoogleマップを外した理由だ。公式には一切発表されていないが、バックグラウンドを探ると状況が見えてくる。Appleの時価総額は6,230億ドル(約49兆5000億円)という莫大なものになった。当然、将来のことも考える。今はiPhoneが大ブレイクしているが、近いうちに飽和して頭打ちになることは間違いない。その時、ソフトやサービスで儲けていかなければならない。アプリや音楽の環境はがっちり固めたが、Googleのサービスを使っている限り、地図や動画(YouTube)からは一切収益が上がらないのが悩みどころ。いつかは自前でサービスを持ち、収益につながるようにする必要がある。そこで、3年ほど前からいくつもの地図関連企業を買収し、準備を進めてきた。
2011年初めに、GoogleはGoogle Maps APIの有料化を発表した。これは、Googleマップのデータを利用するアプリやサービスの提供者に課金するということ。そのため、Foursquareのような有名サービスはGoogleマップを使わなくなった。また、あるニュースサイトでは、AppleがGoogleマップの音声ナビ機能を求めたのに提供してもらえなかったことが原因、という報道もあった。

モバイルGoogleマップのページをホーム画面に追加して、
アプリのように起動できる。
Googleにとっても、iOSから外されるのにはなんの不満もない。iOSの標準機能として提供すると、Googleマップに広告を表示できないためだ。さらに、Googleマップが優れていることがわかれば、Androidスマートフォンへの強力な誘導にもなる。
これら、もろもろが重なって、不十分なマップへの強制移行が起きたと考えられる。とはいえ、ユーザーにとってはそんなことは関係ない。不便なマップを使い続けるわけにはいかない。そこで、iOS端末でGoogleマップを使う方法を紹介しよう。
まずは、モバイルGoogleマップ(http://m.google.co.jp/maps)を表示し、矢印アイコンをタップ。送信先の選択画面が開くので、「ホーム画面に追加」をタップしよう。アプリ名を「GoogleMap」にすれば、ホーム画面にGoogleマップのショートカットが作成される。これで、アプリのようにGoogleマップを利用できる。しかも、GoogleはモバイルGoogleマップでストリートビューを使えるようにすると発表。モバイルGoogleマップなら、PCで作成したマイマップ機能も利用できるというメリットもある。Appleのマップが改善されるか、GoogleマップのネイティブアプリがApp Storeに登場するまでは、この手でしのいでいただきたい。
(文=柳谷智宣)
それでもグーグルには勝てない? LINE、NAVERまとめのNHN Japan台頭の裏
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──今年8月、スマートフォン向けインスタントメッセンジャーアプリ「LINE」のユーザー数が世界で5000万人を突破したと報じられた。このアプリを開発したのは、日本のIT企業・NHN Japanだ。韓国では検索エンジンにおいてグーグルを上回るシェアを持つというNHN社の日本支社だが、LINEの開発をはじめ、キュレーションサービス「NAVERまとめ」などで昨今その知名度を急激に伸ばしている。2010年にはライブドアを買収し、今年頭に完全統合を果たしてますます勢いに乗る同社だが、この急成長に落とし穴はないのだろうか? ここ最近、日本のIT業界関係者の間で、頻繁に話題になる会社がある。それが、新宿区と品川区大崎にオフィスを置く、NHN Japan社だ。しかしこの会社の場合、一般には社名よりも、運営するサービス名のほうが広く知られていることだろう。インスタントメッセンジャーアプリの「LINE」、個人向けキュレーションサービス「NAVERまとめ」、そしてオンラインゲームの「ハンゲーム」などである。この名前を聞けばピンとくる読者も多いのではないだろうか。サービス名が先立ち、会社としての存在感はやや薄いが、実はあのライブドアも2010年に同社に買収されており、資本金約125億・全従業員1000名ほどのそこそこ大きなIT企業なのだ。 NHN Japanは、韓国内でトップのシェアを誇るIT企業・NHNの日本支社である。00年9月に日本に初めて上陸したときの社名は「ハンゲーム・ジャパン」。オンラインゲーム大国である韓国のサービスが日本にも上陸したとして、当初かなり話題になった。そうして下地を作った後、ネイバージャパン株式会社を立ち上げ、01年には検索ポータル「NAVER」を日本でスタートさせた。詳細は91ページに譲るが、「NAVER」は検索・ポータル機能において韓国で実に7割のシェアを持つ巨大サービスだ。日本で言うところのYahoo!のような存在である。しかしこの日本進出は失敗に終わった。 「当時の『NAVER』は、日本語へのローカライズが全然うまくいっておらず、検索精度が低すぎた記憶があります。それではむろんポータルサイトのほうも根付かない。03年にネイバージャパンはハンゲームと合併してNHN Japanになりましたが、『NAVER』自体の定着は結局一度諦めて、05年に閉鎖しました」(ITジャーナリスト) しかしNHNはゲーム以外の日本市場を諦めたわけではなかった。09年、今度はNHN Japanの子会社としてネイバージャパン株式会社を再び立ち上げ、サービスを再開。そして10年5月にはNHN Japanはライブドアを買収し子会社化するという速攻を見せた。買収から4カ月後の9月には、ライブドアの検索エンジンが「NAVER」に置き換わっている。 ■日本発! LINEがここまで普及したカラクリ そして、同社の中で今最も注目を集めているサービスは「LINE」だろう。スマートフォン向けインスタントメッセンジャーアプリで、テキストチャットと無料音声通話が主な機能になっている。同アプリは韓国からの輸入ではなく、日本法人が独自開発したもの。11年6月にサービスを開始し、1年余りで中東や東南アジアなどにも広がりを見せ、世界で5000万人のユーザーを抱える巨大サービスに成長した。その成功の理由について、『Google+ 次世代SNS戦争のゆくえ』(ソフトバンク新書)などの著書を持つ株式会社モディファイCEOの小川浩氏はこう語る。 「AndroidやiOS上で、無料通話とメッセンジャー機能に絞り込んだシンプルなサービスを提供していることが『LINE』の魅力です。加えて、スマートフォンの電話帳をベースに、そこに登録されている知人を仲間に引き込む仕掛けが優れている。サービスモデルとして韓国のカカオトーク【編注:同様のメッセンジャー&無料通話アプリ。同国のベンチャー企業が開発した。韓国のスマホユーザーの95%が使っているという情報も】という先行者がありました。それを良い意味で改良コピーするという戦略を取ることができ、さらにNHN自体が強力な資金を有しているため、いわば後出しジャンケンと資金力でカカオトークを抜き去ったと言えます」 そして「LINE」の人気を支えるのが「スタンプ」だ。前ページ上部のサービス紹介を見てほしいが、いわば従来のケータイメールにおける絵文字をさらに大きくしたようなもので、キャラクターの種類や表情、イラストのタッチも豊富。無料のものと有料のものがあり、有料ならば一律170円で、コンテンツや商品とのコラボレーションスタンプも多く配布されている。筆者も、映画『アメイジング・スパイダーマン』(12年6月公開)やゲーム『ドラゴンクエストⅹ』(同8月発売)、日清チキンラーメンなどのスタンプを利用している。8月末現在、スタンプをダウンロードできる「スタンプショップ」のランキング1位は『エヴァンゲリオン』(有料)だ。 「オリジナルスタンプを製作・配布する際は、最低で1000万円からかかるそうです。また、企業向けに『LINE公式アカウント』も提供しています。このアカウントを”友だち”に追加したユーザーに、クーポン情報や店舗情報などを直接メッセージで配信できるサービスです。こちらは初期費用が200万円で、月額は150万円から。どちらも決して安くはないですが、国内の2000万人近いユーザーに届く可能性を考えたら、広告としては悪くない。しかもスタンプのキャラクターには一定の親しみが抱かれますし、ユーザー間で送り合うことで話題にもなる。十分、元は取れるでしょう」(前出・ITジャーナリスト) ■“出会い”目的が出るのはSNSの宿命だが…… 今後のNHN Japanの成長に不安材料があるとすれば、それはやはりこの台頭を後押しした当の「LINE」がどこかで躓くことだろう。同サービスの今後を左右することになるであろう次の一手として、7月3日に開催された初の「LINE」カンファレンスで発表されたのは、「ホーム」機能と「タイムライン」機能の導入だった。前者は、自分が撮った写真や動画、位置情報などを使って近況をアップデートできる機能で、後者は「LINE」でつながる友人たちがそれぞれに「ホーム」でアップデートした近況をタイムライン形式で閲覧し、コメントやリアクションをつけることができる機能だ。Androidには8月6日から、iPhoneでは同13日から実際に機能が追加されたが、この展開に対しては懐疑的な見方も多い。 「これまで『LINE』は、ウェブ上ではなくスマートフォン上でのネイティブアプリに特化することで、広範囲な人脈作りというよりはクローズドな人間関係のコミュニケーションに絞ってきました。SNS化することはフェイスブックとのユーザーの奪い合いになる可能性があり、戦略的に正しいとは思えませんね。ライトユーザーを失いかねません」(前出・小川氏) 実際、まだ大きく浸透はしていないようで、「LINE」上の”友だち”が約50人の筆者のタイムラインでも、8月6日の機能開始以降、4件しか投稿がないといった有様である。 さらに、こうしたコミュニケーションサービスにとっては避けがたいことに、「LINE」を出会い系として利用するユーザーも増えてきた。すでに7月には、奈良市の会社員の男(32)が「LINE」を利用して知り合った中学3年生女子とみだらな行為をしたとして滋賀県青少年健全育成条例違反容疑で逮捕されている。この事件で発覚したが、どこか別の掲示板やSNSで「LINE」のID情報と居住地域などを晒し、連絡を待つという手法が”出会い”目的利用のメインになっているようなのだ。過去、こうした”出会い”目的のユーザーをはびこらせないためにGREEやミクシィなどのSNSでは監視を厳しくし、個人あてのメッセージであっても電話番号の交換を行うとアカウントごと停止されるようになっているが、IDの交換では単なるアルファベットの並びゆえ検出も難しい。ユーザー数の急激な増加に伴ってこうした事件が続けば、かねてよりスマホ向けのフィルタリング強化を進めようとしている政府にとっては、格好の規制対象になるだろう。かつてGREEやミクシィが通ってきたのと同じように、「LINE」に対する世間の批判の目も強まるはずだ。 ことほどさように、今や看板サービスとなった「LINE」において不安材料も抱えながら、躍進を続けるNHN Japan。中東やアジア圏での「LINE」人気を追い風に、ネットサービスの本場である欧米をも巻き込んだプラットフォームを築き上げていくことはできるのだろうか? 「フェイスブックやグーグルのような大規模プラットフォームに発展させることは難しいでしょうね。会社自体は収益的には当面死角は見当たりませんが、この2社などのライバルとしてグローバル化できるか? という点においては、やはり韓国や日本のネット事情に特化することで収益力を保っているという見方ができます。ですから、真のグローバルプラットフォーマーには成り得ないでしょう」(前出・小川氏) 果たしてNHN JapanはIT業界を変える存在に成り得るのか? 本特集では、いまだその全貌が世に知られていないであろう同社を解剖しながら、その将来を占っていきたい。 (取材・文/松井哲朗) 【「サイゾーpremium」ではこの他にもNHN Japan躍進の裏側に迫った記事が満載!】 ・韓国国民の7割が「NAVER」を利用? 不正操作疑惑もなんのその韓国NHNは今日も磐石 ・いしたにまさきに訊くNHN Japanブレイクの理由「ライブドア買収にNHNの本気を見た!」 ・濱野智史に訊くNHN Japanブレイクの理由「スタンプとAAはよく似てる!? LINEの台頭は必然」『LINEを100倍楽しむ本』(アスペク
トムック)
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「LINE」爆発的普及の裏にあるガラケー文化の巧みな利用法
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進化の歩みを止めないIT業界。日々新しい情報が世間を賑わしてはいても、そのニュースの裏にある真の状況まで見通すのは、なかなか難しいものである――。業界を知り尽くしたジャーナリストの目から、最先端IT事情を深読み・裏読み! 使ったことはなくとも、多少ITや新サービスに興味があれば聞いたことはあるだろうスマホアプリ「LINE」。NHN Japanによって開発されたこのアプリは、なぜこれほど話題を呼び、ユーザーを増やしているのか? 久々の日本発のヒットサービスとなりそうな、このアプリのすごさを探る。 LINEというアプリの成長ぶりが今、IT業界で話題騒然となっている。 LINEは、NHN Japanが開発した、スマホ向けのメッセージングアプリだ。NHNは韓国企業で、元の社名をハンゲームといった。検索エンジン「NAVER」を運営していることで有名で、日本でも「NAVERまとめ」というキュレーションサービスが人気を集めている。最近では、ライブドアを買収したことでも知られる。LINEはこの会社のサービスだが、日本法人主導で開発されており、実はほぼ純国産のアプリ。そしてLINEのユーザー数は、今すごい勢いで伸びている。国内のユーザー数は1800万人、世界ではなんと5000万人。今年4月以降、毎月500万人以上のペースで伸び続けており、グローバルプラットフォーム化に成功しつつあるといっていいだろう。 このLINEの最大の注目点は、日本がかつて誇ったガラケー文化のエッセンスをうまくスマホの世界に持ち込み、「つながり」を軸としたコミュニケーションの演出に成功したことだ。 持ち込まれたガラケー文化のエッセンスのひとつは「電話番号」であり、もうひとつは「スタンプ」だ。 LINEはスマホのアプリだが、スマホっぽいところが全然ない。たとえば普通のスマホアプリだと、アカウントを取得するのにIDやパスワードを設定したり、フェイスブックやツイッターと連携させたりといった登録作業が求められるが、そういう面倒さはLINEからは排除されている。そもそもログインという概念さえ排されていて、即座に使い始められるようになっている。 携帯電話というのは、非常に直感的なデバイスだ。ガラケー時代にはこの直感性が重要視され、だからこそ老若男女多くの人に使われるようになったといえる。日本が2000年代前半のガラケー時代にモバイル先進国となれたのは、こういう直感性を重視し追求したからではないか。ところがその直感性は、スマホの波の中で徐々に失われつつある。スマホという「モバイルのPC化」によって、モバイルにPC的なインターフェイスが持ち込まれたため、直感性が減少しているのだ。 LINEはここをうまく乗り越えて、スマホアプリでありながらガラケー的な直感性を実現しているように思える。ログインの排除や電話番号をベースにしたメッセージングがそうだ。 ■古くて新しい「つながり」を推す機能 そしてこの「ガラケー的な直感性」を、スタンプ機能が強力に後押ししている。スタンプとは、アイコンや顔文字をさらに大きくした画像で、メッセージとして送信できるものだ。テキストに添付するだけでなく、スタンプ単体で送ることで、相手にちょっとした感情をワンクリックで気軽に送信できるのが特徴だ。 6月に北海道で開かれたIVS 2012 SpringというIT系のイベントでのセッションで、NHN Japan執行役員の舛田淳氏はこう話していた。 「スタンプはもともと絵文字からスタートしたけれど、絵文字よりもっとカジュアルに気持ちを伝えられるものがないかということを考えた。テキストの最後にニュアンスとしてつける絵文字でさえも、時間がかかる。それよりもインスタントにカジュアルに送信一発で伝えられないか。そういう発想から、単体で送れる大きい絵柄の画像を考えた」 スタンプのキャラクターも工夫をしたという。ただ可愛いだけではなく、ちょっと怖い感じのキャラクターが中心だ。 「『キモカワ』といわれるような若干の毒があるのは、さまざまなスタンプを用意してリサーチしてみた際、若い女の子は『これがいい』という反応だったから。意見が真っ二つに分かれたので、だったら反対意見があまりないものよりも、反対があったほうを選んだほうがいいだろうという判断となった」 「これらのキモカワのスタンプは、フェイスブックやツイッターには向かない。なぜなら『怒ってるウサギ』とか『困ってるクマ』というのは、単体では何の感情を表現しているのかわかりにくく、送信側と受信側の人間関係の中でだけ意味を持ちうるから。つまりクローズドなメッセージングだから成り立つ感情なのだ」 これは非常に鋭い分析だ。インターネットには「情報流通」機能と「つながり」機能があるが、フェイスブックやツイッターなどはどちらかといえば前者に傾斜している。日本ではミクシィが後者の「つながり」を前面に打ち出したSNSだったが、若干失速してしまった。この隙を狙ってLINEが「つながり」メディアとして急成長してきた。その背景には、日本の若者のクローズドな人間関係にうまくはまり込む機能を巧みに提供できているからだろう。 なお先ほどのIVSのセッションでは、司会を務めたヤフーCIO松本真尚氏が、こんな興味深い質問をしていた。 「LINE利用者はキャバ嬢とかが圧倒的に多くて、ほぼ100%使ってるという話もある。LINEを使うと、モテ率が30%ぐらい高まるのでは?」 水商売系でLINE率が高いというのも、ガラケー文化を強く感じさせる象徴だ。もともと水商売系には、フェイスブックやツイッターのようなオープンな情報流通系SNSはそぐわない。キャバ嬢とフェイスブックのフレンドになったりすると、ほかの交友関係にすぐばれてしまって、いささか恥ずかしいことになる。それに比べればLINEはクローズドなメッセンジャーなので、他者にばれないですむというメリットがあるわけだ。 そもそもコミュニケーションは多様である。相手によって、TPOに応じてコミュニケーションのメディアを使い分けるというのは当然の作法となっていくのだろう。 先ほどの質問に、NHN Japan社長の森川亮氏はこう返答した。 「(水商売に限らず)やっぱりコミュニケーションが大切ということ。コミュニケーションって、何のためにやるのだろうか。フェイスブックは情報伝達したり、意味を求めるコミュニケーションだけれど、LINEは気持ちを伝えるコミュニケーション。テキストより、その時の気持ちをさくっと伝えられる。知り合いとのコミュニケーションって、そういう伝達がけっこう大事なのでは」 さらにLINEは、ビジネスモデルまでもガラケー的だ。フェイスブックやツイッターのように広告で儲けるのではなく、アイテム課金を持ち込んでいるのである。メッセージで送るさまざまなスタンプを、購入できるようになっているのだ。これはグリーやモバゲーのような日本のソーシャルゲーム業界が構築してきたアイテム課金のモデルを、うまくメッセージングに持ち込んだということで、たいへん興味深い。 森川氏は「機能が多いよりは、使いやすさ・わかりやすさ・直感的な使い勝手が大切」と話していた。せっかく育ったガラケー文化をスマホの波で見失ってしまうのではなく、時代に適合させる形で進化させていくというのは、なんとも素敵である。 (文/佐々木俊尚) 楽天の電書リーダーの破壊的価格 7,980円 2012.7.19 楽天らしい爆安でキンドル発売に対抗! 楽天が満を持して発表した電子書籍リーダー「コボタッチ」は、8000円を切る思いきった戦略的価格。ソニーリーダー・1万6800円、シャープGALAPAGOS・2万4800円などと比べると非常に安い。しかし発売当初アクティベーションができないといった不具合があり、苦情が殺到。波乱の幕開けとなった。 【佐々木が注目する今月のニュースワード】 ■マリッサ・メイヤー 迷走する米ヤフーの新CEOに、グーグルの「顔」として知られてきた古参女性幹部のマリッサ・メイヤーが就任。おまけに現在妊娠中で秋に出産予定ということで、アメリカのIT業界では話題沸騰している。果たしてヤフーを復活させられるか。 ■クラウドワークス 今、日本で急成長中のクラウドソーシングサービス。仕事が欲しい技術者やクリエイターと、仕事を発注したい企業や人を結びつける仕組み。スタートして3カ月あまりで、募集案件総額が3億円を突破した。 ■リトルモンスターズ レディ・ガガがスタートさせた独自のSNS。これまでタレントやミュージシャンはフェイスブックやツイッターなどの大手サービスを利用するだけだったが、今後はオウンドメディア(自社メディア)を持つケースが増えてくるかも。 佐々木俊尚(ささき・としなお) 1961年生まれ。毎日新聞、アスキーを経て、フリージャーナリストに。ネット技術やベンチャービジネスに精通。主な著書に『電子書籍の衝撃』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『キュレーションの時代』(ちくま新書)ほか。3月16日に『「当事者」の時代』を光文社新書より上梓。 【「サイゾーpremium」では他にも気鋭の識者による連載が満載!】 ・町山智浩の「映画がわかる アメリカがわかる」/食事はマクドナルドに!?落ちゆく“裸の”女王様 ・高須基仁 の「全摘」/三才ブックスのDVDコピーソフト販売問題で社員4人逮捕は「みせしめ」、公のいじめだ! ・神保哲生×宮台真司「マル激 TALK ON DEMAND」/リオ地球サミットの約束はなぜ果たされなかったか送るスタンプを選んでタッチしたその瞬間には、
もう相手に送信されている。この速さはこれま
でのメッセージングアプリにはなかったものだ。
ただし、送り間違いには注意!
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日本時間9月13日午前2時にiPhone 5がお目見え! サムスン製パーツが大幅減、ディスプレイはシャープ製?

9月12日にiPhone5がお目見えする!
しかし、日本時間では13日午前2時。
プレスイベントは午前10時から行われる予定だ。
Appleからは公式アナウンスはないものの、9月12日にiPhone 5の発表が予定されていることは周知の事実。iPhone 5を購入するかどうか悩んでいる人は、どう進化するのかが気になるところ。そこで、一足先にリーク情報からiPhone 5の姿を読み解いてみよう。
発表は9月12日、発売は翌週金曜日の21日からという線が濃厚だ。アメリカの通信会社VerizonはiPhoneを扱っているが、9月21日から9月30日までの休暇を禁止しており、これはiPhone 5の発売に合わせた処置と考えられている。しかし、残念ながら、日本を含むアメリカ以外での発売は10月5日になる可能性が高い。予約は12日から受け付けられるだろう。
iPhone 5もこれまでと同様、さまざまなところから情報がリークされてきた。中にはよくできた偽情報まであり、盛り上がっている。その中から、信憑性の高いリークを見ていくと、iPhone 5は画面が縦に長くなるようだ。横幅はiPhone 4Sと変わらず、縦方向の解像度が960ドットから1136ドットになるという情報もある。横幅は変わらないので、ホールド感も同じだ。最近、Androidスマートフォンは大画面化が進み、特に女性などから大きすぎて持ちにくいという意見が出ているが、3.95インチという画面サイズなら問題はないだろう。

左がiPhone 5、右が4S。情報元は「MacRumors」。
iOSもバージョン6にグレードアップする。地図アプリは、Appleが地図関連の企業を買収して手がけるオリジナルのものになる。Googleマップの制限から解放され、さまざまな活用提案が出てくるに違いない。渋滞情報をサポートし、車での移動をスムーズに行える。ただ、この機能はアメリカで先行し、日本ではすぐに利用できないかもしれない。FacebookがOSに内蔵され、音声認識アプリのSiriが賢くなっている。電話機能も強化され、かかってきた電話に対してワンタッチでテキストメッセージを返信したり、かけ直しのためのリマインダーを設定できる。昼寝の時は「おやすみモード」にして居留守を使う。しかし、上司からの電話は音を鳴らすといった柔軟な設定が可能。これは便利だ。
内部のパーツでいうと、まずサムスンのパーツをあまり使わなくなった。これまでのiPhoneやiPadはサムスン製の部品を多用していたのだが、サムスンとAppleの訴訟合戦による影響が出てきたのだ。そのため、東芝やシャープなどのパーツを採用することになった。しかし、アメリカのウォールストリートジャーナルによれば、シャープが担当しているディスプレイの製造が遅れているとのこと。これが原因で、アメリカで先行販売し、他の国の販売は10月にずれ込むのかもしれない。

設計図とみられる写真までリークされている。
ウォール街では、iPhone 5が登場した最初の1週間で1,000万台が販売されると予想している。iPhone 4Sは最初の3日間で400万台を売り上げたが、それ以上のペースが見込まれているのだ。日本でも同様の人気を集めるはず。発売するキャリアはソフトバンクモバイルとauの2社だろう。ドコモは6月に開かれた株主総会で、「iPhoneの導入は難しい」と明言している。その後、戦略を見直すという報道が流れたが、さすがにiPhone参入という大転換にはならないと思う。
iPhone 5は、iPhone 3Gもしくは4が登場したときのようなインパクトはないかもしれない。それでもハードウェアは確実に進化し、新しいディスプレイにより画面の小ささも解消されている。高速な4G通信にも対応し、次世代のスマートフォンとしての機能も備えている。間違いなく、注目の的になることは間違いない。iPhoneデビューをしようと考えているなら最高のタイミングだ。iPhone 4以前のユーザーでも機種変すべし。筆者は、iPhone 4Sのユーザーだが、発売日に迷うことなく乗り換えようと思っている。
(文=柳谷智宣)
財界と社内のマネジメントから見る楽天・三木谷浩史の真価
──2011年6月、楽天が経団連を脱退することを、同社代表の三木谷浩史氏がツイッター上で発表した。それから1年、同氏はこの6月に、ウェブ事業者を中心にした「新経済連盟」を始動。97年の創業以来、順調に事業・組織を拡大してきた楽天を率いる三木谷氏とは何者か、我々は本当には知らないのかもしれない。彼は日本の経済界を変える救世主なのか? 財界の大御所を手玉にとる「ジジ転がし」なのか、あるいは、配下の人間に過酷な労働を強いるただの独裁者か。その”マネジメント能力”の真価を計る。
月額525円で読み放題! (バックナンバー含む) 【「サイゾーpremium」では他にも楽天・三木谷関連記事が満載!】 ・恵まれた環境と如才ない処世術でのし上がった"財界のジジ転がし"三木谷浩史が反旗を翻すまで ・「新経連なんて経団連の2軍に過ぎない」経団連に阻まれた三木谷の理念なき野望――評論家・佐高信 ・"経団連"のペット三木谷が画策する維新の会とのタニマチ関係――経済ジャーナリスト・須田慎一郎
2011年、楽天の中核をなす「楽天市場」の取扱高が1兆円を突破した。いまや国内企業が経営する最大のインターネットモールであることは、誰の目にも明らかである。三木谷浩史氏は今年最初の社員集会で「20年までに流通総額を10兆円に伸ばす」と高らかに宣言。その勢いはまだ衰えていない。一代で富を築いた彼だが、その歴史をさかのぼると、重大なターニングポイントでは常に経済界の重鎮たちによるバックアップを受けてきたことが浮き彫りになる。 生まれは1965年。父は高名な経済学者で神戸大学教授(現名誉教授)、母も同大卒のキャリアウーマンという、見事なエリート一家である。父がイェール大学の客員研究員として赴任した際には家族で渡米し、6歳からの3年間をボストンで過ごした。中学からテニスを始め、一橋大学時代にはテニス部部長として100名近くの部員を率いている。 大学を卒業した三木谷氏が就職先に選んだのが、日本興業銀行(現みずほコーポレート銀行)。3年後の91年、社内制度を利用してハーバード大学に留学し、MBAを取得。帰国後は大型M&Aを手がけ、期待の若手に育っていく。しかし95年の阪神大震災で叔父叔母を亡くしたことが、人生の転機となった。「人生は儚い。やりたいことをやらないと悔いが残る」と痛感し、同年末に興銀を退社。コンサルティング会社設立を経て、97年2月には楽天の前身となる会社を作り、同年5月に「楽天市場」を開設した。 まだネット黎明期、ECサイトの成功例もなければノウハウもない時代だった。開設当時の社員は妻を含めて6人、出店店舗はわずか13。彼はこの逆境を、猛烈な営業努力によって乗り切っていく。この頃発揮された「体育会系のアツさ」は、現在に至るまで楽天の社風としても根付いている。その働きの甲斐あって、99年にはテナント2000店舗、年間流通総額1億円超を誇り、あっという間に日本最大のインターネットショッピングサイトとなった。 ■人の話を聞くためのガラス張りの社長室 急成長の裏には、目標達成のための厳格なルール作りがある。「常に改善、常に前進」「スピード!! スピード!! スピード!!」などの「5つの社訓」は社内各所に掲示され、楽天成功の象徴として知られている。これは社員証にも印刷されており、社員は暗唱必須。ノルマも熾烈を極め、成績により細かい職級で格付けがされる。火曜朝8時から行われる定例会議では、遅刻すると入室を認めない徹底ぶり。だが、03年頃に在社した元社員は、当時の社内をこう振り返る。 「幹部クラスのほうが平社員よりも出社が早いから、文句は言えなかったですね。『豪腕』『独裁』とよく言われますが、毎月社員の合同誕生日会を開くなど、社員とも積極的にコミュニケーションを取っていくタイプ。社長室がガラス張りになっていることと、三木谷社長がよく飼い犬のチワワと出社してくることが印象的でした(笑)」 楽天を世間に最も印象づけたのは、04年のプロ野球界再編騒動だろう。先に参入に名乗りを上げていたのはライブドア社長(当時)・堀江貴文氏だったが、Tシャツ姿の彼とは真反対に、三木谷氏はスーツでメディアに登場。堅実さを印象づけた。そしてここで、彼の「ジジ転がし」の力が発揮される。加盟申請書に書かれた諮問委員には、トヨタ自動車会長・奥田碩氏、みずほコーポレート銀行頭取・齋藤宏氏ら、財界のそうそうたる顔ぶれが名を連ねていた。これでは球界の重鎮たちも首を縦に振らないわけにはいかない。結果、渡邉恒雄・読売巨人軍オーナーからのお墨付きも得て、50年ぶりの新規参入企業として選出された。『”教祖”降臨―楽天・三木谷浩史の真実』(05年/日経BP社)の著者で、当時を知るジャーナリスト・児玉博氏はこう語る。 「三木谷氏は興銀時代に孫正義氏や増田宗昭氏を顧客に抱え、ここから財界への足がかりをスタートした。03年には三井住友銀行頭取だった西川善文氏を社外取締役に迎えて地盤を固め、年配経営者たちとのパイプを強めるきっかけになる。奥田氏とはおそらく、当時頻繁に開催されていた政府関連の委員会などで知己を得たのでは。三木谷氏は起業からかなり早い段階で、いわゆる『ITベンチャー』というイメージとは決別したいと考えていました。そのためには先輩社長たちから学び、取り入ることが得策だと考えたのでしょう」 しかし興銀時代から続く人間関係があったとしても、百戦錬磨の財界人たちの懐に入るのは簡単なことではない。なぜ三木谷氏だけが彼らに可愛がられたのだろうか。 「三木谷氏は子どもの頃から、父の元を訪れる経済関係者たちの振る舞いを間近で見て育った。そこで、どんな人物ならお歴々に気に入ってもらえるか、自然と学んでいたのでしょう。テニスで鍛えたスポーツマンシップや体育会系のノリも、財界の大御所たちを惹き付ける魅力になった。トレードマークだったヒゲを剃ったことも、年配者への配慮のひとつで、クレバーな思考の象徴。そもそも球界参入のきっかけは、同じ神戸出身であり経済同友会の先輩でもあるオリックス会長・宮内義彦氏が近鉄買収を打診したことから。三木谷氏が準備を整えていたわけではなく、先輩に言われて慌てて手を挙げたのが本音。つまり子どもの頃から今まで、周りの環境に背中を押されるように育てられてきたんです」(児玉氏) 三木谷氏はこの後も「ジジ転がし」としての実力を遺憾なく発揮していく。特に財界のドン・奥田氏からは絶賛され、長年強力なバックアップを受けた。また、エイベックスの代表取締役社長・松浦勝人氏とは六本木や銀座の豪遊仲間とされるなど、コネクションは高齢実力者だけにとどまらない。さらに、政界にも人脈を持つ。興銀時代の同期には石原慎太郎都知事の三男で、前衆議院議員の石原宏高氏がいた。10年には民主党の細野豪志氏、馬淵澄夫氏など実力派中堅議員と秘密裏に会合を開き、党内の世代交代について助言したといわれている。ツイッターでも「心ある政治家はバックアップします」と宣言し、ネットを使った政治献金システム推進の旗を振る。 こうして強力な人脈を武器に財界をサバイブしてきた三木谷氏だが、やがて重鎮たちと袖を分かつ契機が訪れる。10年2月に立ち上げた「eビジネス推進連合会」。「ネット活用が進まなければ日本は開発途上国になる」と宣言し、副会長にヤフー副社長の井上雅博氏(当時)、幹事にはサイバーエージェント社長の藤田晋氏らを据えた。しかし当時三木谷氏は日本経団連の理事も務めていたため、「新団体を作るなら経団連を抜けるのが道理ではないか」と怒りを買い、11年6月、ついに脱退を決断した。 「経団連の意思決定はブラックボックスで、上層部の限られた人にしか真相がわからない。三木谷氏にとって、ジャッジの過程が見えないことはかなりストレスだったのでは。また、経団連に所属する最大のメリットは、そこで収集される国内外の情報を得られることですが、近年はその収集能力がとみに落ちている。楽天はアジアや南米に拠点を置くなど海外進出にも積極的ですが、そうなるとむしろ足を引っ張られると感じるようになったのでしょう。米倉弘昌氏が選出された会長人事でも、古い体制と求心力のなさに失望したはず」(同) そして今年6月、「eビジネス推進連合会」は「新経済連盟」と改名し、活動を強化すると発表。「我々は未来志向だ」と力強く宣言するなど、ITこそが日本の財界を導くという信念と野望が透けて見える。冒頭に述べたように、彼の目指す先はさらなる高みであり、最終目標は「世界一のインターネット企業」だ。新局面に突入する三木谷氏は、これからどこに向かい、何を成し遂げるのだろうか? 「これまでは新興企業として尖った姿を見せて知名度を得てきたが、今はもうその必要もない。いわば『普通の大企業』になった。目立った行動は少なくなるかもしれないが、各界への影響力はさらに強まるでしょう。ひたすら分析と実行を繰り返した楽天のビジネスモデルは誰にでも真似ができるもので、彼の強みは興銀出身という背景を存分に生かしながら、その看板に驕らない冷静さと意志の強さにあります。その長所を忘れない限り、大きく凋落することはないのでは。それは反面、彼のつまらなさの象徴でもあるのですが」(同) 停滞する日本経済を救うのか、それとも単によくできたワンマン社長として終わるのか。以降では、楽天と三木谷氏を内側・外側それぞれから見てきた人々による、そのジャッジメントを見ていこう。 (取材・文/田島太陽)三木谷浩史氏の著書『成功のコンセ
プト』。
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月額525円で読み放題! (バックナンバー含む) 【「サイゾーpremium」では他にも楽天・三木谷関連記事が満載!】 ・恵まれた環境と如才ない処世術でのし上がった"財界のジジ転がし"三木谷浩史が反旗を翻すまで ・「新経連なんて経団連の2軍に過ぎない」経団連に阻まれた三木谷の理念なき野望――評論家・佐高信 ・"経団連"のペット三木谷が画策する維新の会とのタニマチ関係――経済ジャーナリスト・須田慎一郎
財界と社内のマネジメントから見る楽天・三木谷浩史の真価
──2011年6月、楽天が経団連を脱退することを、同社代表の三木谷浩史氏がツイッター上で発表した。それから1年、同氏はこの6月に、ウェブ事業者を中心にした「新経済連盟」を始動。97年の創業以来、順調に事業・組織を拡大してきた楽天を率いる三木谷氏とは何者か、我々は本当には知らないのかもしれない。彼は日本の経済界を変える救世主なのか? 財界の大御所を手玉にとる「ジジ転がし」なのか、あるいは、配下の人間に過酷な労働を強いるただの独裁者か。その”マネジメント能力”の真価を計る。
月額525円で読み放題! (バックナンバー含む) 【「サイゾーpremium」では他にも楽天・三木谷関連記事が満載!】 ・恵まれた環境と如才ない処世術でのし上がった"財界のジジ転がし"三木谷浩史が反旗を翻すまで ・「新経連なんて経団連の2軍に過ぎない」経団連に阻まれた三木谷の理念なき野望――評論家・佐高信 ・"経団連"のペット三木谷が画策する維新の会とのタニマチ関係――経済ジャーナリスト・須田慎一郎
2011年、楽天の中核をなす「楽天市場」の取扱高が1兆円を突破した。いまや国内企業が経営する最大のインターネットモールであることは、誰の目にも明らかである。三木谷浩史氏は今年最初の社員集会で「20年までに流通総額を10兆円に伸ばす」と高らかに宣言。その勢いはまだ衰えていない。一代で富を築いた彼だが、その歴史をさかのぼると、重大なターニングポイントでは常に経済界の重鎮たちによるバックアップを受けてきたことが浮き彫りになる。 生まれは1965年。父は高名な経済学者で神戸大学教授(現名誉教授)、母も同大卒のキャリアウーマンという、見事なエリート一家である。父がイェール大学の客員研究員として赴任した際には家族で渡米し、6歳からの3年間をボストンで過ごした。中学からテニスを始め、一橋大学時代にはテニス部部長として100名近くの部員を率いている。 大学を卒業した三木谷氏が就職先に選んだのが、日本興業銀行(現みずほコーポレート銀行)。3年後の91年、社内制度を利用してハーバード大学に留学し、MBAを取得。帰国後は大型M&Aを手がけ、期待の若手に育っていく。しかし95年の阪神大震災で叔父叔母を亡くしたことが、人生の転機となった。「人生は儚い。やりたいことをやらないと悔いが残る」と痛感し、同年末に興銀を退社。コンサルティング会社設立を経て、97年2月には楽天の前身となる会社を作り、同年5月に「楽天市場」を開設した。 まだネット黎明期、ECサイトの成功例もなければノウハウもない時代だった。開設当時の社員は妻を含めて6人、出店店舗はわずか13。彼はこの逆境を、猛烈な営業努力によって乗り切っていく。この頃発揮された「体育会系のアツさ」は、現在に至るまで楽天の社風としても根付いている。その働きの甲斐あって、99年にはテナント2000店舗、年間流通総額1億円超を誇り、あっという間に日本最大のインターネットショッピングサイトとなった。 ■人の話を聞くためのガラス張りの社長室 急成長の裏には、目標達成のための厳格なルール作りがある。「常に改善、常に前進」「スピード!! スピード!! スピード!!」などの「5つの社訓」は社内各所に掲示され、楽天成功の象徴として知られている。これは社員証にも印刷されており、社員は暗唱必須。ノルマも熾烈を極め、成績により細かい職級で格付けがされる。火曜朝8時から行われる定例会議では、遅刻すると入室を認めない徹底ぶり。だが、03年頃に在社した元社員は、当時の社内をこう振り返る。 「幹部クラスのほうが平社員よりも出社が早いから、文句は言えなかったですね。『豪腕』『独裁』とよく言われますが、毎月社員の合同誕生日会を開くなど、社員とも積極的にコミュニケーションを取っていくタイプ。社長室がガラス張りになっていることと、三木谷社長がよく飼い犬のチワワと出社してくることが印象的でした(笑)」 楽天を世間に最も印象づけたのは、04年のプロ野球界再編騒動だろう。先に参入に名乗りを上げていたのはライブドア社長(当時)・堀江貴文氏だったが、Tシャツ姿の彼とは真反対に、三木谷氏はスーツでメディアに登場。堅実さを印象づけた。そしてここで、彼の「ジジ転がし」の力が発揮される。加盟申請書に書かれた諮問委員には、トヨタ自動車会長・奥田碩氏、みずほコーポレート銀行頭取・齋藤宏氏ら、財界のそうそうたる顔ぶれが名を連ねていた。これでは球界の重鎮たちも首を縦に振らないわけにはいかない。結果、渡邉恒雄・読売巨人軍オーナーからのお墨付きも得て、50年ぶりの新規参入企業として選出された。『”教祖”降臨―楽天・三木谷浩史の真実』(05年/日経BP社)の著者で、当時を知るジャーナリスト・児玉博氏はこう語る。 「三木谷氏は興銀時代に孫正義氏や増田宗昭氏を顧客に抱え、ここから財界への足がかりをスタートした。03年には三井住友銀行頭取だった西川善文氏を社外取締役に迎えて地盤を固め、年配経営者たちとのパイプを強めるきっかけになる。奥田氏とはおそらく、当時頻繁に開催されていた政府関連の委員会などで知己を得たのでは。三木谷氏は起業からかなり早い段階で、いわゆる『ITベンチャー』というイメージとは決別したいと考えていました。そのためには先輩社長たちから学び、取り入ることが得策だと考えたのでしょう」 しかし興銀時代から続く人間関係があったとしても、百戦錬磨の財界人たちの懐に入るのは簡単なことではない。なぜ三木谷氏だけが彼らに可愛がられたのだろうか。 「三木谷氏は子どもの頃から、父の元を訪れる経済関係者たちの振る舞いを間近で見て育った。そこで、どんな人物ならお歴々に気に入ってもらえるか、自然と学んでいたのでしょう。テニスで鍛えたスポーツマンシップや体育会系のノリも、財界の大御所たちを惹き付ける魅力になった。トレードマークだったヒゲを剃ったことも、年配者への配慮のひとつで、クレバーな思考の象徴。そもそも球界参入のきっかけは、同じ神戸出身であり経済同友会の先輩でもあるオリックス会長・宮内義彦氏が近鉄買収を打診したことから。三木谷氏が準備を整えていたわけではなく、先輩に言われて慌てて手を挙げたのが本音。つまり子どもの頃から今まで、周りの環境に背中を押されるように育てられてきたんです」(児玉氏) 三木谷氏はこの後も「ジジ転がし」としての実力を遺憾なく発揮していく。特に財界のドン・奥田氏からは絶賛され、長年強力なバックアップを受けた。また、エイベックスの代表取締役社長・松浦勝人氏とは六本木や銀座の豪遊仲間とされるなど、コネクションは高齢実力者だけにとどまらない。さらに、政界にも人脈を持つ。興銀時代の同期には石原慎太郎都知事の三男で、前衆議院議員の石原宏高氏がいた。10年には民主党の細野豪志氏、馬淵澄夫氏など実力派中堅議員と秘密裏に会合を開き、党内の世代交代について助言したといわれている。ツイッターでも「心ある政治家はバックアップします」と宣言し、ネットを使った政治献金システム推進の旗を振る。 こうして強力な人脈を武器に財界をサバイブしてきた三木谷氏だが、やがて重鎮たちと袖を分かつ契機が訪れる。10年2月に立ち上げた「eビジネス推進連合会」。「ネット活用が進まなければ日本は開発途上国になる」と宣言し、副会長にヤフー副社長の井上雅博氏(当時)、幹事にはサイバーエージェント社長の藤田晋氏らを据えた。しかし当時三木谷氏は日本経団連の理事も務めていたため、「新団体を作るなら経団連を抜けるのが道理ではないか」と怒りを買い、11年6月、ついに脱退を決断した。 「経団連の意思決定はブラックボックスで、上層部の限られた人にしか真相がわからない。三木谷氏にとって、ジャッジの過程が見えないことはかなりストレスだったのでは。また、経団連に所属する最大のメリットは、そこで収集される国内外の情報を得られることですが、近年はその収集能力がとみに落ちている。楽天はアジアや南米に拠点を置くなど海外進出にも積極的ですが、そうなるとむしろ足を引っ張られると感じるようになったのでしょう。米倉弘昌氏が選出された会長人事でも、古い体制と求心力のなさに失望したはず」(同) そして今年6月、「eビジネス推進連合会」は「新経済連盟」と改名し、活動を強化すると発表。「我々は未来志向だ」と力強く宣言するなど、ITこそが日本の財界を導くという信念と野望が透けて見える。冒頭に述べたように、彼の目指す先はさらなる高みであり、最終目標は「世界一のインターネット企業」だ。新局面に突入する三木谷氏は、これからどこに向かい、何を成し遂げるのだろうか? 「これまでは新興企業として尖った姿を見せて知名度を得てきたが、今はもうその必要もない。いわば『普通の大企業』になった。目立った行動は少なくなるかもしれないが、各界への影響力はさらに強まるでしょう。ひたすら分析と実行を繰り返した楽天のビジネスモデルは誰にでも真似ができるもので、彼の強みは興銀出身という背景を存分に生かしながら、その看板に驕らない冷静さと意志の強さにあります。その長所を忘れない限り、大きく凋落することはないのでは。それは反面、彼のつまらなさの象徴でもあるのですが」(同) 停滞する日本経済を救うのか、それとも単によくできたワンマン社長として終わるのか。以降では、楽天と三木谷氏を内側・外側それぞれから見てきた人々による、そのジャッジメントを見ていこう。 (取材・文/田島太陽)三木谷浩史氏の著書『成功のコンセ
プト』。
■「サイゾーpremium」とは? 雑誌「サイゾー」のほぼ全記事が、
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シャープ「GALAPAGOS」撤退騒動に見る電子書籍の本質
──激変するITビジネス&カルチャーの深層を抉る!
2010年は「電子書籍元年」と呼ばれたが、実際のところ、日本においてはまだ電子書籍が広く普及したとは言えない状況だ。幅広いユーザーへと波及しないのはなぜなのか? 先般話題になったシャープの電子書籍リーダーをめぐる騒動からその本質を考察する。 9月中旬、シャープの電子書籍リーダー「GALAPAGOS」が「撤退へ」と、新聞各紙などで一斉に報じられる騒ぎがあった。たとえば日刊スポーツはいかにも扇動的な「ガラパゴス"絶滅"真価を見せられず」という見出しで、こう報じている。 「液晶画面に触れるだけで簡単に操作できるタブレット端末。その国産品の一角が脱落した。シャープは15日、昨年12月に鳴り物入りで発売した『ガラパゴス』の自社販売を今月30日で終了すると発表した。わずか10カ月の短命となった背景には、先行する米アップル社『iPad』の勢いに勝てず、電子書籍のコンテンツ不足などが重なった。さらに、人気の多機能携帯電話『スマートフォン』にもアピール力で及ばなかったことなどが浮上した」 最後の文章など何を意味しているのかわからず、いかにもスポーツ紙らしいIT音痴ぶりを発揮しているが、しかし一般紙などの記事もおおむね「撤退」という論調だった。 これに慌てたのが、シャープ自身。翌日になって「撤退は事実と異なる報道だ」と異例の声明をリリースした。自社販売は終了するが、アンドロイド搭載のGALAPAGOS製品に関しては通信キャリアのイー・アクセスから発売しており、今後も販売していく予定だというのである。そして同時に濱野稔重副社長が大阪の機械記者クラブで「GALAPAGOSは決して撤退しない。来年にも、さらに新モデルを追加販売する予定だ。今後もさらに魅力ある端末とコンテンツサービスの提供に努め、事業拡大を図る」と説明したのだった。 しかし、GALAPAGOSのビジネスが岐路に立たされているのは間違いない。その約10日後には、今度は配信プラットフォーム「TSUTAYA GALAPAGOS」からTSUTAYAが撤退し、同プラットフォームがシャープの100%子会社になるという発表も行われた。 そもそもGALAPAGOSの販売方式には、残念ながらかなり無理があったと言わざるを得ない。家電量販店で購入を申し込んでもその場で製品は受け渡しされず、後日シャープから直送されてくる形式になっていた(あるいは、シャープのオンラインストアでの購入)。なぜ直販方式を採用したかといえば、電子書籍のプラットフォームビジネスでは単にリーダーという家電製品を販売するだけでなく、リーダーを中心とした電子書籍エコシステムを包括的に利用してもらわなければならないからだ。そのためには、ユーザーに製品購入時に必ず決済やアカウントの登録をしてもらう必要がある。 シャープの担当者は今年初め、私の取材にこう答えている。自慢のアーカイブが、虚無の彼方に消え去
るかも......となれば、ちょっと考えます。
「プレミアサイゾー」で続きを読む■プレミアサイゾーとは? 雑誌サイゾーのほぼ全記事が、月額525円で読み放題!(バックナンバー含む) 【こんな記事もオススメ!】 ・佐々木俊尚の「ITインサイド・レポート」 ・穴の向こうは......漆黒の闇? IT業界禁断のウラ側 ・プライバシー、著作権、FREE......それでも使いたい人は必読!! グーグルはなぜ嫌われるのか?







