爆笑必至! "隅におけない"会社員が作るシュールアニメDVD『むっちり村』

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『むっちり村』(ポニーキャニオン)
 『むっちり村』――微妙なイヤらしさをはらむこれは、6月2日に発売されたシュールアニメDVDのタイトルである。制作者は谷口崇。脚本、作画、声優、編集、すべての工程をほぼひとりで担当。数年前から、同名の個人サイトでアニメを公開し、さまざまな賞も受賞している。唇のシワや、指先の爪まで描かれているリアルでやや不気味なタッチの絵が特徴で、一度見たら忘れられないインパクトがある。  このDVDに収録されているアニメは『悪いのを倒せ!! サラリーマンマン』、『茂雄はハンサム』、『森の安藤』、『名探偵ゴードン』、『荒くれ純一の涙』、『むきだしの光子』の6本。再生するとさっそく1本目のアニメが始まる......のではなく、これら6本の手描きアニメーションができるまでを、ドキュメンタリー仕立てで紹介しているのだ。  「......当時はCGばかりが持てはやされる時代でした。でも、手描きアニメのような素晴らしいものを絶やすわけにはいかない、そういう気持ちでしたね」と、自身を振り返る初老のアニメーター"谷口崇"氏。氏の生い立ちや、手描きアニメの道を志したきっかけ、アニメを作っていく上での苦労、作品が世間から受け入れられず頭を抱える仲間のクリエイターたち、そして苦難を乗り越えての飛躍――いかにもベタな"ドキュメンタリー番組"に乗せて、初めて作ったアニメ「悪いのを倒せ!! サラリーマンマン」が始まる。
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「悪いのを倒せ!! サラリーマンマン」(c)谷口崇/ポニーキャニオン
 「悪いのを倒せ!! サラリーマンマン」は、突如現れた"悪いの"という名前の悪役を、正義のヒーロー"サラリーマンマン"が倒すという物語。"悪いの"という悪役の名前からセリフ回しまで、最後まで徹底的にふざけきっているのが魅力だ。棒読みでも、噛み気味でも、それがひとつの味となって作品を支えている。
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「森の安藤」(c)谷口崇/ポニーキャニオン
 DVD内のドキュメンタリー風番組で、飛躍のきっかけとして紹介されるのが、3本目・4本目の作品「森の安藤」と「名探偵ゴードン」。筆者イチオシでもある『森の安藤』の見どころは、前述の「悪いのを倒せ~~」と同様、シュールなノリで物語が進むにも関わらず、"森を大切に"という壮大なテーマを扱っているミスマッチな点。また、森を守ってもらえて喜ぶ動物たちが、最後にミュージカル調で歌うシーンがあるのだが、この歌が無駄に上手いところも見逃せない。歌っているのはもちろん谷口崇氏。この予想外の歌唱力、なかなか隅におけない。
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「名探偵ゴードン」(c)谷口崇/ポニーキャニオン
 そして、5本目の「荒くれ純一の涙」、6本目の「むきだしの光子」はともに大ヒット、初老"谷口崇"氏は「アニメーターを目指す未来の子ども達に、CGアニメだけでなく、手描きアニメという選択肢を与えることができた......まだまだ私も、これからの若いアニメ作家さん達に負けないようにしないと(笑)」とドキュメンタリー風番組は感動的に幕を閉じる。  こうして"谷口崇"氏は、世間で知られる手描きアニメーターとして成功を収めた......ということになっている、このDVDの中では。そう、『むっちり村』を制作した本物の谷口崇氏は、1985年生まれ、20代の会社員である。たとえそれが感動ドキュメンタリー風番組でも、徹底的にふざけきって作り込む若き谷口崇氏は、やはり"隅に置けない"。また、これだけ「手描きアニメの良さを伝えたい」というテーマでドキュメンタリーが作られているにも関わらず、DVD特典映像として収録されているのは"クレイアニメ"。手描きの手の字もない。隅から隅まで人をおちょくったような『むっちり村』、夜中に人知れずこっそり観て、クスッとしたい作品だ。 (文=朝井麻由美) ■たにぐち・たかし 生年:昭和60年 好きな食べ物:稲森いずみ 職業:会社員 ブログ<http://mc.adkda.net/>
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蝶野正洋さんの至言「自分の役割の中で、最大限に光らなきゃならない」(後編)

akari_chono02.jpg ■前編はこちら ──そうだったんですか。バラエティーはどうして嫌いなんですか? 蝶野 瞬発的に対応しないといけないからね。それが苦手で、インタビューも以前はダメだったし。オレはインタビューされたら、「ああそうですね」とか、ずっとそういう感じで、記事にならない。バラエティーでは、武藤(敬司)選手だとか、橋本(真也=故人)選手だとか、彼らは対応できるんだよ。俺は全然しゃべれない。だから会社にも「俺は出たらマイナスだから!」って、ずっと断っていた。 ──武藤選手や橋本選手が対応できすぎたんじゃ......? 普通無理ですよ、タレントでもないのに! っていうか、蝶野さんがテレビでしゃべらないのは、威圧感を出すための設定なんだと思ってました。 蝶野 テレビだけじゃなくて、試合でもそうなんだけど、オレはもう緊張しいなんだよね。若手のころ、海外遠征では、客が入っても200~500人の小さい会場ばかりで試合をしていたのに、東京ドーム大会の初興行に呼ばれて帰ってきたとき、500人がいきなり5万人の規模になって。だから、「ここはいいとこ見せてやろう!」って気合を入れて入場ゲートに出たとたん、3時間くらい記憶飛んじゃって、試合もぐだぐだで。俺、東京ドーム大会には30回くらい出ているんじゃないかな。でも20回くらいまでは負けてばかりで、東京ドームって言ったら、最初のうちは負けて天井を見てるイメージしかない。でも、それも徐々に慣れてきたら、対戦相手もお客さんも落ち着いて見れるようになるし、要は慣れだよね。 ──失敗して落ち込んだ時や、怪我で不安な時期もあったと思うんですけれど、そういう時はどうしていましたか? 蝶野 当時も、40歳になっても毎日不安はあるし、もう信じるしかないよね。「自分は倒れない」「あきらめない」って。そこだけだと思うね。実際、最初の7、8年なんて食えてないし、海外から帰ってきて「闘魂三銃士」なんて言われていても、大して金ももらってないし。もう結婚していたけど食うのが精一杯で......そんな生活ですよ。 ──「闘魂三銃士」が儲かってなかったなんて......。人気のレスラーさんたちは、もっと豪華な日常を送ってると思ってました。心が折れなかったですか? 蝶野 プロレスって、俺らは興行地に行って試合をするだけだけど、プロモーターは1年前から準備をして、興行のためにいろんな人に協力を求めて、何千人って人を集めて......それは雑誌も一緒だと思うよ。何万人の人に雑誌を見てもらう世界で、小明さんみたいに表に出てる人たちっていうのは氷山の一角。だけどやっぱり大事なんだよ、その下で支えてる人たちの努力というものは。それに見合うために、自分は最大限に光らなきゃいけない。......でも、そういう役割が分かってくるのって、ある程度経験を積んでからなんだよね。 ──最大限に光らなきゃ......。そう思うとこの「私が相談したい」ってだけの理由で始まった対談もすごく価値のあるものに思えてきます......レッツひかり! ちなみに、蝶野さんが、一番影響を受けた方って誰ですか? 蝶野 やっぱり、猪木さんでしょうね。オレが猪木さんの付き人やっているときは会社が一番落ちている時期で、興行地でチケットがぜんぜん売れていない、と。すると猪木さんは、トレーニングがてらに若手の俺たちを連れて1時間くらい町を走るんだよね。最初は「何やってんのかな、こんな走って......」って思っていたけど、今考えれば、宣伝カーが回せなかったり、営業マンがいなかったから、猪木さんが「プロレスラーが来てるよ!」「試合に来てるよ!」と分からせるために、自ら町を走っていたんだよね。 ──走る広告塔ですね! かっこいい! でも、それで言うと、蝶野さんも多方面で活躍されていて、ものすごくプロレス界に貢献されてますよ! 蝶野 小明さんも、今はライターもやって、被写体としてだけじゃなく、内側の武器を増やしているわけでしょ? あんまり喧嘩はしない方が良いけど、そうやって自分の価値を磨いて、上げて、辞めた事務所から「もう一回帰ってきてくれ!」くらいにするのが、まず目標だろうね。今、まだ25歳でしょ? そんなの、まだまだガキだよ、ガキ! ──アイドルではもう賞味期限切れっぽいですけど、プロレスラーだったらまだまだグリーンボーイ! ありがとうございました! (取材・文=小明) ●蝶野正洋(ちょうの・まさひろ) 1963年、アメリカ・シアトル生まれ。84年、「新日本プロレス」入団。アントニオ猪木の付き人、海外遠征などを経て「闘魂三銃士」としてブレイク。94年からは黒をイメージカラーにヒールに転じ、抜群の存在感を発揮。10年1月、新日本を退団しフリー転向。 ●小明(あかり) 1985年、栃木県生まれ。02年、史上初のエプロンアイドルとしてデビューするも、そのまま迷走を続け、フリーのアイドルライターとして細々と食いつないでいる。初著『アイドル墜落日記』(洋泉社)、DVD『小明の感じる仏像』(エースデュース)発売中。 ブログ「小明の秘話」<http://yaplog.jp/benijake148/
会社に負けない喧嘩の仕方 オラ、エ~! amazon_associate_logo.jpg
小明の「大人よ、教えて!」"逆"人生相談バックナンバー 【第12回】 有野晋哉さんの至言「アイドルは『育ちがええねんなー』っていうのが大事です」 【第11回】  鳥居みゆきさんの至言「やりたくないこと、やらないだろうな、ってことをやるの」 【第10回】  宇多丸さんの至言「人にはだいたい『ちょうどいい』ところがあるんです」 【第9回】  桜木ピロコさんの至言「あたしいつもだいたいいやらしいことしてるもん!」 【第8回】 伊集院光さんの至言「結局、うんこを食うしかない状況になるんです」 【第7回】 ルー大柴さんの至言「ライフっていうのはマウンテンありバレーありです」 【第6回】 大堀恵さんの至言「私、いつも『アンチ上等』って思ってるんです」 【第5回】 品川祐さんの至言「なったらいいなと思ってることは、だいたい実現する」 【第4回】 福本伸行さんの至言「俺は『面白いものを作ろう』じゃなくて、作れちゃう」 【第3回】 大根仁さんの至言「ネットの書き込みなんて、バカにしていいんじゃない?」 【第2回】 杉作J太郎さんの至言「そんなことより『ファフナー』見ろ、『ファフナー』を」 【第1回】 河原雅彦さんの至言「もう無理やりヤラれちゃえばいいんじゃない?」

蝶野正洋さんの至言「自分の役割の中で、最大限に光らなきゃならない」(前編)

akari_chono01.jpg  モテない、金ない、華もない......負け組アイドル小明が、各界の大人なゲストに、ぶしつけなお悩みを聞いていただく好評連載。第13回のゲストは、書籍『会社に負けない喧嘩の仕方』を刊行されたプロレスラー・蝶野正洋さんです! [今回のお悩み] 「喧嘩の仕方を教えてください......」 ──『会社に負けない喧嘩の仕方』読みました! 私は喧嘩が苦手で、今日は蝶野さんに喧嘩の仕方を教えていただきたく......。 ──『会社に負けない喧嘩の仕方』読みました! 私は喧嘩が苦手で、今日は蝶野さんに喧嘩の仕方を教えていただきたく......。 蝶野 あ、俺もきらい。 ──えっ! 蝶野 喧嘩なんて、しない方がいいよ。 ──......え~っと、同書では、『同期とは早めに喧嘩せよ』っていうことで、新日本プロレス入門初日から橋本真也選手と喧嘩をした話を書いていらしてたんですけど......。 蝶野 そんなこともあったね。 ──私も他人に対してそのくらい強く出られたらいいんですけど、トラブルがあった時に何か言わなきゃと思っても、「この人とは今後も付き合わなきゃいけないしなー」って思うと何も言えなくなっちゃって、気づいたらストレスがたまって、フェードアウトの繰り返しで......。 蝶野 それ、普通だよ。俺なんかもそうだよ。俺も、カッとなったことをすぐに口には出さないで、溜めて溜めて。で、ある程度、マナーの部分を越しちゃったやつに対しては怒る。たぶん皆そうだと思うよ。自分が持ってる不満っていうのは、相手も同じように、違う立場で不満を持っているはずなんだよ。 ──なるほど、確かにこっちが「オラ、エ~!」って思ってたら、向こうもそう思ってるはずですからね! ところで私もフリーなので、この『会社に負けない喧嘩の仕方』っていうタイトルにはすごく惹かれました! アイドルとして売れな過ぎて事務所を辞めて『アイドル墜落日記』(洋泉社)なんて本も出しちゃったので、決して円満退社とは言えないし......。いつも「こんなこと書いて、あの事務所に怒られないかな」と不安なんです。 蝶野 俺も(1月末の新日本プロレス退団は)そんなに円満退社じゃないよ。会社的にはボロ雑巾みたいになるまで使って、定年まで仕事をさせて使いものにならなくなったときに、初めていらなくなるからね。でも、その状況で辞める人なんて、今、いないから(笑)。会社は、思ってるほど辞めていった人間のことを気にしてないよ。「もういない人間より今の戦力を」って考えてるから。 ──なるほど。ちょっと心が軽くなりました! 事務所の人、私のことは忘れてください! それと、この本にも『自己プロデュース力』について書かれてましたけど、私それも失敗して......。事務所を辞めてすぐライターの仕事を始めたので、落ち着いたら徐々にアイドルの仕事もしたいなーと思ってたんですけど、もう、外に出たときにどう振舞ったらいいか分かんなくなるし、外見的な華もどんどん減るし、全然アイドルの仕事も来ないんですよ......! 蝶野 大丈夫だよ、表に出てたらまた華も出るって! でも、グラビア、ものすごい人数いるわけでしょ? すごいよね。 ──だから雑誌に載せてもらうためには、今までやってなかったことをやらなきゃいけないとかで、「じゃ、脱いじゃおうか」みたいな流れは必須で。蝶野さんはプロレスで海外に遠征をされてたときに、「はじめて自分が商品になれて嬉しかった」って書かれてましたけど、私はグラビアをやって自分が商品だったときに、嬉しい反面すごく悲しいなって思っていて。自分が商品としてできることっていったら、服を脱ぐとか、そういうことしかなかったから、会社にお金が入っても、自分の価値がドンドン下がってるなっていうのも分かって。「やりたくない」って思っても、「社長に嫌われたらいけない」と思って強く出られなかったり......。そうやって人間関係をこじらせるより、いっそさっぱり喧嘩できた方が、わだかまりが残らなかっただろうなぁ、と思います。 蝶野 さっきも言ったけど、人を売ってるプロダクションとか、プロレスの業界とか、そういう会社の基本は、「ボロボロになるまで使い切る」。それはもう、しょうがない。そういう方針っていうのは、多分どこも一緒だと思う。そこでどう生き抜くかだよね。実際、俺も「こういう仕事はしたくない!」っていうものはいっぱいあって。バラエティーとか、出るの大嫌いだったから。 ──えー! 『ダウンタウンのガキの使いやあらへんで』(日本テレビ)のとか、すごい楽しく見てましたよ! 蝶野 俺はリングの外で体を使ってアピールすることはやってなかったんだけど、マネージャーがもう仕事を請けちゃってて、どうしようもなくって。まぁ、今はプロレスがテレビであまり放映されていないから、そういうところに出ることでプロレスのアピールをしよう、と。 (後編につづく/取材・文=小明) ●蝶野正洋(ちょうの・まさひろ) 1963年、アメリカ・シアトル生まれ。84年、「新日本プロレス」入団。アントニオ猪木の付き人、海外遠征などを経て「闘魂三銃士」としてブレイク。94年からは黒をイメージカラーにヒールに転じ、抜群の存在感を発揮。10年1月、新日本を退団しフリー転向。 ●小明(あかり) 1985年、栃木県生まれ。02年、史上初のエプロンアイドルとしてデビューするも、そのまま迷走を続け、フリーのアイドルライターとして細々と食いつないでいる。初著『アイドル墜落日記』(洋泉社)、DVD『小明の感じる仏像』(エースデュース)発売中。 ブログ「小明の秘話」<http://yaplog.jp/benijake148/
会社に負けない喧嘩の仕方 オラ、エ~! amazon_associate_logo.jpg
小明の「大人よ、教えて!」"逆"人生相談バックナンバー 【第12回】 有野晋哉さんの至言「アイドルは『育ちがええねんなー』っていうのが大事です」 【第11回】  鳥居みゆきさんの至言「やりたくないこと、やらないだろうな、ってことをやるの」 【第10回】  宇多丸さんの至言「人にはだいたい『ちょうどいい』ところがあるんです」 【第9回】  桜木ピロコさんの至言「あたしいつもだいたいいやらしいことしてるもん!」 【第8回】 伊集院光さんの至言「結局、うんこを食うしかない状況になるんです」 【第7回】 ルー大柴さんの至言「ライフっていうのはマウンテンありバレーありです」 【第6回】 大堀恵さんの至言「私、いつも『アンチ上等』って思ってるんです」 【第5回】 品川祐さんの至言「なったらいいなと思ってることは、だいたい実現する」 【第4回】 福本伸行さんの至言「俺は『面白いものを作ろう』じゃなくて、作れちゃう」 【第3回】 大根仁さんの至言「ネットの書き込みなんて、バカにしていいんじゃない?」 【第2回】 杉作J太郎さんの至言「そんなことより『ファフナー』見ろ、『ファフナー』を」 【第1回】 河原雅彦さんの至言「もう無理やりヤラれちゃえばいいんじゃない?」

【ドボク対談】大山顕×西澤丞『Build the Future』はアイドル写真集だ!(後編)

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大阪大学レーザーエネルギー学研究センターのターゲットチャンバー室。
■前編はこちら ■『Build the Future』はアイドル写真集だ! 大山 取材の許可もらうのも大変ですけど、こうやって写真集にするのも大変じゃないですか。あのー、編集さんいる前でなんですけど、写真集って儲からないじゃないですか(笑)。 西澤 儲かんないっすよねー(笑)。 大山 だから写真家と編集者とが、悪巧みというか、共犯関係みたいにならないと写真集ってできないですよね。ぼくは、自分が写真集出すにあたってそれが素敵だなって思ってるんです。かっこいい! って編集者さんが惚れ込んじゃう、みたいな。七井(『Build the Future』の担当編集)さんはもともと好きなんですか、こういうの? 七井 西澤さんの写真がすごい好きで。実は、前の会社にいるときも西澤さんの写真集を出させていただいて。
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こちらは『Deep Inside』より。
大山 あー!『Deep Inside』(求龍堂)も七井さんなんだ! そうなんだ! 今回どうやって企画通したんですか? 七井 とにかく西澤さんの写真を見てもらいました。通常は企画書を出して説明するんですけど、この企画は西澤さんにA3で大きく写真をプリントしてもらって、「とにかく見てください!」と。 大山 どうでした、そのときの反応? 七井 写真を見た瞬間に、「やってみよう!」みたいな。 大山 あー! それ素晴らしいですね! あ、じゃあ企画通したときは西澤さんはすでに撮り終わっていたわけですよね。撮影に同行してないんですね。 七井 そうなんです、行ってないんです。 大山 それ、悔しくないですか(笑)。 西澤 でも、本物見てもこんな風になってないから「なんだよこれかよ」ってなっちゃうかもしれない。 大山 あー、分かります分かります。工場もねー、実際以上に美しく撮ってるので実際見に行って「写真と違う......」っていう人多いです。写真って嘘つきだからなー。 七井 そうなんです、樋口(真嗣)監督が帯で書いてくださっている言葉がすごく分かりやすいんですけど、たぶん社会科見学だけだとこの衝撃は得られないっていうのが本当で。西澤さんの目で切り取ってるこの写真で見たほうが、たぶん実際に見るよりもかっこよく見えちゃってるかも。 大山 そうそう。そういえばこの『Build the Future』見て思ったのは、「この写真って"なに写真"なんだろう?」ってことだったんですよ。単純に、いわゆるアート写真ってのがあって、もう一方に報道とかドキュメンタリー写真っていうものがあるとしたら、西澤さんのこの写真はどっちなんだろう? って。たぶん大きく言えばドキュメンタリーなんだろうけど、でもいま言ってたように、忠実に撮るようで忠実じゃないわけじゃないですか。かっこよく撮って「どう? かっこいいよね!」って。 西澤 単純に言っちゃえばそうなんだよね。 大山 で、ぼく気がついた。「これ、アイドル写真だ!」って。 西澤 あーなるほど。 大山 実際のアイドル見たらあんまりきれいじゃなかったよ、っていうのと同じ。でも、かわいいのは確かで、現場で盛り上がっちゃうっていうのと同じで。腑に落ちたんですよね。 七井 なるほどー、分かりやすい。そうですね。
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「レーザーディスクガラス保持治具の精密洗浄風景/
ここでは超純水を使った手作業での洗浄が行われる」(本書より)
■「耐震写真集」出したいですよね 大山 さっきの前書きの話ですけど、日本っていうところにやっぱりこだわりはあります? 西澤 そうですねー。自分の住んでいる国だからね。これから世界にいくようになれば、世界に変わるのかもしんないけど。 七井 でも、博士たちの話を聞きにいったときに、日本人ならではだなって思ったのがあって。日本て耐震構造を必ず設計に入れてる。 大山 おおー。 七井 海外ではそういうの想定してないので、震度3くらいでポロっといっちゃう。 大山 そうそう! 日本の高架橋のスペックもすごいんですよ。それがまたビジュアルに現れてて。初めて上海の高速道路の高架見たとき、おいおいそんなペラッペラで、大丈夫かよって、思った。でも地震なかったらあれで十分なんでしょうね。日本の見慣れてると、びっくりする。団地もそうなんだよなー。 西澤 そうかー。 大山 「耐震写真集」出したいですよね。 西澤 耐震!(笑)大山さんなんてぼくよりマニアックだと思うよ(笑)。 大山 いやいやいやいや(笑)。 西澤 だってほら、『高架下建築』(洋泉社)でしたっけ? すごいマニアックだなーと思ってさー。しかもよく企画通したなと思ってさ。 大山 いやでも、あれニフティの「デイリーポータルZ」で記事にしたら、アップされて30分後に編集者さんから出版打診のメールが来たんですよ。「こういう写真集が作りたくて、仕事を変えた者です」みたいなひと言が添えられて(笑)。
→この顛末はサイゾーウーマン『気鋭の女性編集者たちにとっての「ドボク・エンタテイメント」とは』でどうぞ!http://www.cyzowoman.com/2009/09/post_981.html
西澤 すごいね(笑)、運命の出逢いだなー。 七井 いやーそういうことですよ、そういうことですよ! 西澤 あと面白いのが、例えばこの写真ね、改修作業に入っちゃうからもう見れないの。今度は超伝導のコイル使うらしい。 大山 おおー! 七井 研究が終わるとどんどん崩してっちゃったり、解体しちゃうので、けっこう儚いんですよ。 大山 そっかそっか! それ面白いな! 確かに、実験器具なんですよね、施設っていうより道具なんだなー! 西澤 装置もどんどん変わってるんですよ。どんどん改修して実験の精度をあげてってるから。 七井 やっぱりアイドル写真集ですよ、16歳の今はここしかないんです!(笑) 一同 うまいなー!(笑)。
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那珂核融合研究所のJT-60。現在も日々、改修を繰り返している。
 どうでしょうか。ぼくとしては「ちゃんと取材企画書書こう!」って反省した有意義な雑談、じゃなくてインタビューでした。取材後、「飲みながら話した方がよかったかもね」なんて話も。すみません。いや、でも本当に有意義なお話しでした。編集さんとの関係も素敵。うらやましい。  そして"アイドル写真集"である『Build the Future』、本当にかっこいいのでみなさんぜひ買ってみてください!  あ、あと、チャンバー室の写真(この記事のトップ)を見ながらこんな会話も: 西澤 これもね、普段は装置を保護するジャケットがかかってるの。でもどうしてもそのジャケット外したときに撮りたいから、メンテナンスのときに呼んでくださいってお願いしたんですよ。 大山 やっぱりアイドル写真ですね(笑)。 西澤 そうそう、脱がしちゃった。着てちゃ画にならないから、って(笑)。 (取材・構成=大山顕) ohyama_nishizawa01.jpg ●にしざわ・じょう(写真左) 自動車メーカーデザイン室、撮影プロダクション勤務を経て2000年よりフリー。広告、広報の写真撮影を行っているが、なかでも、科学技術、工業技術の撮影には定評があり、その写真は国内外のクリエーターに影響を与えている。 http://joe-nishizawa.jp/ ●おおやま・けん(写真右) 公営団地を紹介するWEBサイト「住宅都市整理公団」総裁。団地や工場のほかにもジャンクション、水道管、螺旋階段、高架下建築、地下鉄ホーム、駅のパイプ群など幅広い鑑賞趣味を持つ。写真集『ジャンクション』、著書『団地の見究』ほか。 http://danchidanchi.com/
Build the Future この本の中には、科学の子の、「夢」がある。(出渕裕氏) amazon_associate_logo.jpg
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【ドボク対談】大山顕×西澤丞『Build the Future』はアイドル写真集だ!(前編)

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核融合科学研究所の大型ヘリカル装置内部。
写真集『Build the Future』より
 みなさんこんにちは。大山です。ぼくは工場や団地やジャンクションを撮って写真集出したりしている人間です。要するに、一般的に写真家と呼ばれる職業ですね。そう、今回なぜだか一介の写真家であるぼくが、インタビューをしました。しかも写真家に!  インタビューする相手は、先日素晴らしい写真集『Build the Future』(太田出版)を出版された西澤丞さん。ぼくの尊敬する写真家です。2006年に発表された写真集『Deep Inside』(求龍堂)では建設中の高速道路や原子力発電所の内部などが収められていて、これがものすごくかっこいい。ぼくの大好きな写真集のひとつ。  で、今回の『Build the Future』でも核融合研究施設や加速器研究施設など、ふつう入ってみることのできない空間の、超かっこいい写真を撮っておられます。  うらやましい!  インタビューは正直気が引けてたんですが、どうやったらこういう写真が撮れるのか、この際そこらへんを聞いてみたい! という下心もあって西澤さんと対談してきました。  そう、これ、インタビューじゃなくて対談、いや、雑談かも。 ■「かっこいい!」って言っちゃう 大山 『Build the Future』拝見しました。これ、本当かっこいいですね! 西澤 ありがとうございます(笑)。 大山 こんなにかっこいいものを目の前にしながら、どんな感じで撮ってるんですか? 「うおー!」とか言っちゃいません? 西澤 「かっこいい!」って言っちゃう。言いながら撮ってるよ。 大山 やっぱり(笑)。 西澤 例えばこの表紙の場所、実は2回行ってるんですよ。1回目はあまりのかっこよさに舞い上がっちゃって、人物を入れて撮影するのを逃しちゃったの(笑)。 大山 あはは(笑)。 西澤 それが表紙。 大山 舞い上がっちゃって撮るの忘れたって、いい話だなー。なんかこう、勇気づけられる。で、現場にいらっしゃる研究者の方々はそういう「かっこいい!」っていう感想をどう受け取ってるんですかね。 西澤 現場の方々は見慣れちゃってるから、かっこいいと思ってないんですよ。面白いのは、ぼくは研究者ではなく素人なんで、かっこいいと思ったとこだけ撮るじゃないですか。それは研究の本質じゃないところだったりする。で、現場の博士たちは「そこはそんなに重要じゃないんだけどなー」みたいな目線を送ってくる(笑)。 大山 ああ、分かる分かる。ぼくも工場に招かれて、かっこいいなあと思ったもの撮ってると「それよりこっちの方を見てもらいたいんですけど......」って言われる。博士たちは西澤さんが撮った写真見ても「これがかっこいいのかー。分からないなー」って感じなんですかね? 西澤 撮影したあと、「こんな風に撮らせていただきました」ってメールで写真送るんですよ。そうすると少し反応が変わる。で、こうやって本が出ると「撮ってくれて、ありがとう!」ってなる。 大山 おおー。 西澤 こういう施設って、今までこういう写真集にはなってないじゃないですか。だから、みなさんどういう感じに写るのか想像ができない。で、実際こういう形で目の当たりにして初めて、ちょっと理解できるんでしょうね。 大山 みんなもっと撮ればいいのにね、こういうの。もしかして、自分でも写真撮り始めちゃう現場の方いらっしゃるんじゃないですか? 西澤 いると思いますよ。 大山 それはやっぱり「かっこいい!」って思ってるんですかね。 西澤 うん、だと思いますよ。 大山 それいいな、それいい。
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「大型ヘリカル装置の超伝導コイルは液体ヘリウムで冷却されており、
その液体ヘリウムを制御するためのバルブ」(本書より)
よくわからないが、かっこいい。
■「泣ける企画書を書くんですよ」 大山 実は今回ぼくが一番お聞きしたいのは......こういう施設って、どうやって入れてもらって撮影許可もらったんですか? 西澤 (笑)それはねー、企画書書いて、泣き落としですよ。 大山 泣き落とし!(笑) 具体的にどう泣き落とすんですか? 西澤 いやーもう、泣ける企画書を書くんですよ。 大山 それは西澤さんご本人が。 西澤 もちろんもちろん、自分で書く。 大山 それはもちろん撮りたいがための言葉ではなくて、本気ですよね。 西澤 いやマジですよ、マジマジマジ。ぼくは博士みたいに研究はできないけど、撮影して発表するっていうスキルがある。そこでぼくのやるべきことがあるなっていう。博士たちの研究を通訳して発表するような、そんな感じですね。 大山 かっこいい写真一枚で説得力があるっていうのはありますよね。そういうのもっと利用したいですよね。 西澤 そう。海外ではすごく上手に写真を政治の道具に使ってるじゃないですか。 大山 そうそう! アメリカの新聞社のサイトとか、写真かっこいいんですよね。 西澤 うまいんだよねー。使い方もよけりゃ撮り方もうまいしさー。あーゆうの見てると、すごいくやしいんだよ。 大山 そう、すごいくやしい! 西澤 フランスなんてカメラマンを雇って核融合施設の写真をかっこよく撮らせて、世界中に送ってるんですよ。しかもそのカメラマンが日本の施設にも来るらしいんだよ。なんで向こうのやつがこっちにきて撮るんだよって!(笑) 大山 俺にやらせろ! って。 西澤 そうそう、俺にやらせろって思うよね、本当に。
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那珂核融合研究所。「高周波加熱装置の導波管/プラズマを加熱する為に、
1本あたり1000kWの高周波を伝送する」(本書より)
■「『かっこいい!』ってやられちゃうといいなー」 大山 実はこの写真集でぼくが一番グっときたのは、前書きなんですよ。これすごくいい文章で、たぶん、このインタビュー記事で書くべきことがあるとしたら、もうこの前書きにぜんぶ凝縮されてるな、と思って。 西澤 悩んだ、これ書くの何日もかかった。 大山 最後の段落で「この国にとって重要な~」ってあるじゃないですか。つまり、こういうことですよね。 西澤 それくらいのこと言う人、いま必要だと思うもん。 大山 現場に行ってそこで働いている方の話し聞くと、やっぱり感動しちゃいますよね。 西澤 そうそう。感動しちゃってこういう文章になっちゃうんだよね。これ必要なのか必要じゃないのか、日本はどこへ投資するのか、って考えながら撮るじゃないですか。 大山 おおー! 西澤 そうすると、勉強しないと撮れなくなっちゃうんです。博士たちの物理の話もよく分かんないんだけど、それが何を目的にやってるかっていうことは自分で把握しとかないと、本にならないんです。ぼくが理解しないと読者にも伝えられないと思ってる。 大山 すごいなー。やっぱりこれ見て、かっこいいなーって、たとえば、高校生とかが思って、こういう研究施設で働いてみたいとか、っていうのが......。 西澤 そうそうそう、それ。 大山 うんうん! ぼくも時々ね、『工場萌え』(東京書籍)買ってくれた大学生が、あれがきっかけで工場の研究所に働くことにしましたって言ってくださることがあって。 西澤 それ、うれしいじゃないですか! 大山 そう、すごくうれしいの。 西澤 それですよ。 七井(この本の編集者さん) ちょうど一昨日、高校の図書館さんから注文がきてました。 大山 ああ! いいな! 西澤 それいいね! いいですね。高校生くらいがみて「かっこいい!」ってやられちゃうといいなー。ぜひやられちゃってほしいなー。 大山 あー、ぼく、ちゃんと企画書書いて取材申し込むのやったほうがいいな、っていま反省した。このインタビューの収穫はそれだな。 西澤 そこかい!(笑) (後編につづく/取材・構成=大山顕) ohyama_nishizawa01.jpg ●にしざわ・じょう(写真左) 自動車メーカーデザイン室、撮影プロダクション勤務を経て2000年よりフリー。広告、広報の写真撮影を行っているが、なかでも、科学技術、工業技術の撮影には定評があり、その写真は国内外のクリエーターに影響を与えている。 http://joe-nishizawa.jp/ ●おおやま・けん(写真右) 公営団地を紹介するWEBサイト「住宅都市整理公団」総裁。団地や工場のほかにもジャンクション、水道管、螺旋階段、高架下建築、地下鉄ホーム、駅のパイプ群など幅広い鑑賞趣味を持つ。写真集『ジャンクション』、著書『団地の見究』ほか。 http://danchidanchi.com/
Build the Future 「もう、シビレるっ!」としか云えません。(庵野秀明監督) amazon_associate_logo.jpg
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手のひらに広がる大冒険!「ゲームブック」今昔物語 

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ゲームブックファンのマスターピース!『火吹山の魔法使い』
 アナログとデジタルの過渡期であった1980年代。WiiもPS3もなかったけれど、ジャンクでチープなおもちゃがあふれていた。足りない技術を想像力で補い、夢中になって集めた「キン消し」「ミニ四駆」「ビックリマンシール」......。なつかしいおもちゃたちの現在の姿を探る!   まだゲームが一日一時間と、高橋名人によって決められていたあの頃。どうしてもゲームがしたくて仕方がなかった時にお世話になったのが「ゲームブック」である。異論は認める。 ■ゲームブックとはなんぞや?  「ゲームブック」を知らないという方のために簡単に解説すると、読者は番号によって分けられた数十~数百個のパラグラフ(段落)を読み、文章の末尾にある選択肢を選んで指定された番号のパラグラフに移動。また文章を読み、次の選択肢を選ぶ。この繰り返しで物語を進めるゲーム形式の小説のことである。ちなみに本文のイメージは以下の通り。 <1> 君は今、大きな部屋の中にいる。扉は木の扉と鉄の扉がある。どちらを開ける? ・木の扉を開ける→46へ ・鉄の扉を開ける→172へ <172> 重い扉をやっとのことで開けると、大きな棍棒を手にしたオーガが待ち構えていた! いきなり殴られて君は即死した。 GAME OVER  こんな感じで、RPGやアドベンチャー・ゲームを本の形式で楽しむわけだ。ちなみに戦闘シーンなどは、サイコロで行動の成否を決めたりする。もちろん、ダメージを受けたりした場合は、ちゃんと残りの体力などをメモしておく必要がある。今にして思うと、驚くほど面倒くさくてアナログな遊びである。しかし、頻繁にゲームソフトを買うお金がないお子様にとって、お手軽に冒険を体験できるゲームブックは、代替アイテムとしてはまさに打ってつけだったのである。個人的には「またゲームばっかりして!」と顔をしかめる母親の目をごまかしながら、思い切りゲームを堪能できる点が素晴らしかった。 私「おかーさん、この本買って!」 母「あら、小説なんて読むようになったのね? いいわよ」 私(ニヤリ。計画通り......) ってな感じである。 ■ゲームブックの時代  さてさて、そんなゲームブックの歴史は1982年のイギリスから始まる。この年に発表された『火吹山の魔法使い』は、元々複数人でプレーすることが前提となっていたテーブルトークRPG(会話とサイコロによる判定で楽しむゲーム。後のコンピュータRPGの元となる)を一人でも楽しむために考え出されたものだった。本作以前にもゲームブック形式の書籍は存在していたが、パラメータ(数値化されたキャラクターの強さ)やアイテムの管理などの本格的なシステムを確立したという点で、『火吹山の魔法使い』がゲームブックの元祖と言われている。その後、84年に同作が日本語に翻訳されたちまちベストセラーとなり、日本にもゲームブック・ブームが訪れた。  80年代半ばには『ソーサリー』シリーズや『バルサスの要塞』など海外でヒットした作品やゲームブック専門誌『ウォーロック』が翻訳・刊行される一方で、国産ゲームブックも非常に多く制作された。オリジナル作品の他に、既存のテレビゲームやアニメを題材としたものも相当数発行されていたわけだが、その理由としてはまだまだゲーム機の表現力が乏しかったことや、ビデオデッキが十分に普及していなかったため、テレビゲームの副読本、もしくはアニメを追体験するためのツールとして重宝されたという側面もあったのではないか、と筆者は考えている。  つまり、当時のゲームファン、アニメファンは足りない技術を文字と数枚の挿絵から喚起される想像力をフル動員して、強引に脳内補完していたわけだ。ちなみに80年代後半には、『ドラゴンクエスト』『ファイナルファンタジー』『MOTHER』といった人気RPGだけではなく、『スーパーマリオ』『魂斗羅』といったバリバリのアクションゲームまでもがゲームブック化されており、この時期はまさにームブック爛熟期であったと言える。  しかし、90年代に入るとビデオデッキはほとんどの家庭に普及し、テレビゲーム機の性能も上昇し単体で十分に物語を語ることが可能になった。ということは、代替品としての性格が強かったゲームブックの存在意義がなくなる、ということでもある。案の定、この90年代半ばには日本国内のみならず、海外においてもゲームブックは市場からほぼ姿を消してしまった。
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名作TRPG『ソードワールド』がニンテンドーDSに、
ゲームブックとして登場!
■よみがえるゲームブック  ゲームブックの刊行が止まってしまったとはいえ、ゲームブックのファンが世の中からいなくなったわけではない。21世紀に入って以降、再び世界中でゲームブックの息吹が聞こえ始めている。  海外ではイギリスのアイコン・ブックスが新ブランド"ウィザード・ブックス"を立ち上げて『火吹山の魔法使い』を復刊。その他、新作もリリースしているらしい。そして日本国内の状況はと言うと、まず創土社が01年より『アドベンチャーゲームノベル』シリーズを立ち上げ、過去の名作のみならず、新作をコンスタントにリリースしている。また、ホビージャパン社からは名作『デストラップ・ダンジョン』、『ハウス・オブ・ヘル』などが今はやりのライトノベル風イラストとテキストでリメイクされた。  その他、携帯端末という新たなフィールドでニーズを模索する動きも見られる。携帯サイト「ゲームブック・ラボR」では『ファイティング・ファンタジー』シリーズを携帯ゲームとして復活させた他、株式会社ブロッコリーは「GAMEBOOK DS」というシリーズを立ち上げ、携帯ゲーム機「ニンテンドーDS」用ソフトとして『ソード・ワールド2.0』、『アクエリアンエイジ Perpetual Period』、『鋼殻のレギオス』の3タイトルをリリースした。
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twitterでも登場したゲームブック。
ゲームブックには無限の可能性がある!? 
 さらには、いま流行りの「Twitter」を使いゲームブックを再現しようとする強者までもが登場。わずか140文字のツイートを1パラグラフと考え、ツイート末尾に用意された選択肢(リンク)を選び、次のツイートに移動するというものだ(http://twitter.com/peretti/status/10731245477)。肝心のストーリーはと言うと、将軍様の統治する北の某国に潜入し、核ミサイルの発射を阻止するというちょっぴりアレな内容で、選択肢も少なくすぐにクリアできてしまう。とは言え、ゲームブックの新たな可能性を感じさせる面白い試みではある。 ■再評価されるゲームブック  「テキストを読み、文末の選択肢を選ぶ」。そのスタイルを変えることなく、今日もさまざまなメディアで断続的に新作が発表されているゲームブック。今なおファンに愛され続けるその理由は、一体何なのだろうか。テレビゲームの表現力は映画をも凌駕し、ビデオデッキどころかインターネットに接続さえできれば、いつでも好きな映像を堪能できる現代、「代替品」として消費されているとは到底考えられない。ということは、やはり「ゲーム」としての面白さが再評価され始めたためではないだろうか。  冒頭の本文イメージにもある通り、読者=主人公一人ひとりに語りかけるような、独特の文体から生まれるロールプレイ感覚。文章(と挿絵)から喚起される想像力。短いセンテンスの積み重ねから生まれるリズム感と、クリア後に用意されている長めの文章を読む時の達成感。そして「自分の手で」ページをめくり、選択肢の結果を確認するという緊張感と、その後訪れる解放感によるカタルシス。そんなアナログで、プリミティブな「快感」こそがゲームブックの魅力だと多くの読者が気付き始めた事が、ゲームブック熱再燃の理由ではないだろうか(実際、デジタルコンテンツで再現されたほとんどのゲームブックが「サイコロでの判定」「ページをめくる」などのアクションを律儀に再現している)。  さあ、全国の冒険者たちよ。書を手に旅に出よう! そして想像力という翼を広げて、自分だけの物語を紡ぐのだ! ■特別企画! 創土社ゲームブック担当者に聞く、「ゲームブックの魅力とは」!  今回は本文中でも話題にとりあげたゲームブックを断続的に刊行し続ける、冒険大好き出版社・創土社のゲームブック担当者に突撃インタビューを敢行! ゲームブックへの熱い思いを思う存分語ってもらった。 ──創土社が過去作の復刊や新刊の発行などを始めた理由は何でしょうか? 「私自身、少年時代にゲームブックファンであり、現代でも本で遊ぶゲームには独特の味があって十分に楽しめるモノだという思いがあったからです。オンラインゲーム全盛の昨今、私もオンラインゲームをよくプレーしていますが、ゲームブックにはまたそれらとは違った良さがあり、絶滅して当然のメディアとは考えていません」 ──売れ行きは好調ですか? 「儲かっていますか? と聞かれたならば、答えは「いいえ」ですね。私の自己満足で存続しているとか言われることもあります(笑)。って笑いごとじゃないな。もっと他社さんが「うちもゲームブックを」とどんどん参入するくらいにがんばらねば。他社さんもちょっと参入するものの、後が続かないのはやっぱりコスト的に難しいからでしょうね」 ──では、読者の反響はありますか? 「実売部数が少ないので、絶対数は大したことありません。ただ、それを考慮すると相対比率としては驚異的な反響があるとも言えます。また、ひとりひとりの声がすごくパワーがあるんですよね。それにお手紙やメール以上に多いのが、ファンの方が直接私に電話してくるケースです(笑)。そういう反響があると、多少赤字でも頑張らねばって思っちゃうんです」 ──ファンの心をいつまでも捉えて離さないゲームブックの魅力とは何でしょうか? 「『ゲーム』であり『ブック』であることが特徴ですが、だから魅力的だということはとくにありません。ストーリーがダメな小説は面白くないし、システムが手抜きなゲームがつまらない。それと同じで、ゲームブックも作り手次第で玉石混交です。ストーリー性を重視したゲームブックは小説のように感動できるし、パラグラフ構造の練りこまれた作品は匠の心を感じさせます。要は作品次第ってことですね」 ──ありがとうございました! これからもゲームブックの火を絶やさないよう、無理をしない程度にがんばってください! (取材・文=有田シュン)
火吹山の魔法使い これが元祖にして本家! amazon_associate_logo.jpg
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“オブローダー”が厳選! 知られざる地域史が見えてくる『廃道をゆく2』

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『廃道をゆく2』イカロス出版
 「廃墟ブーム」と言われて久しい。というより、もはや一般化し、サブカルチャーの一形態としての地位を獲得した感がある。朽ちていく建築に宿る虚無感や退廃的なムードを切り取った写真集や、実際にそこを訪れたい人のためのマニュアル本が現在にいたるまで数多く出版されているのは周知の通り。  本書『廃道をゆく2』は、簡単に言ってしまえばそんな廃墟ガイド本の「道」バージョンだ。写真・執筆は、廃道サイト「山さ行がねが」を運営する平沼義之氏や、ウェブ同人誌「日本の廃道」の永冨謙氏をはじめとする総勢9人の「オブローダー」(「廃道探索者」を表す造語)たちで、全国各地に散らばる計51本の「棄てられた道」を文字通り「探索」している。なお、「2」というからには続編にあたるわけだが、前作と基本スタンスは変わらず、重複する廃道もない。本書を読んでから前作に遡ってもまったく問題ない。  雑草や薮に浸食された舗装路、塞がれた隧道(ずいどう※「トンネル」の古い表記)、苔むした石造りの橋梁、岩壁を切り通した跡......掲載された写真の数々には廃道を彩るさまざまな要素が克明に捉えられている。それらはもちろん素晴らしいが、本書のキモは、ただ単にビジュアルで情緒に訴えるだけでなく、廃道がまだ廃道でなかった時代の人々の暮らしぶり、すなわち地域の歴史を掘り下げようとする執筆陣の姿勢にある。これは特に意図されたというよりは、オブローダーが廃道巡りにおもむく際に抱く欲求ないし動機みたいなものがそのまま表れたのだろう。  たとえば、奈良県吉野郡川上村を抜ける東熊野街道。この廃道で特筆すべきは、それ自体からまた無数の廃道が派生していることだ。本書の言葉を借りれば「廃道のテーマパーク」。川上村は吉野杉の本場であり、その吉野林業を大成させたのは幕末~明治の森林王・土倉庄三郎だ。廃道によって結ばれた集落を辿っていけば、土倉の功績や「林業という産業システムにおける道の役割」が見えてくるし、ひいては「隣村隣県との交通史に繋がっていく」。「道」というものは必ずどこかに通じている。そのネットワークが途切れて欠損した部分が廃道であり、廃道探索とは「地域史のミッシングリンク」に光を当てる作業でもある、というわけだ。  あるいは、富山県南砺市にある「中の谷隧道」と「栃折隧道」。いずれも抜け穴のような、狭く、そのわりには長い「歩行者専用」のトンネルだ。この地域は1971(昭和46)年まで、冬場は豪雪に閉ざされ外界から孤立してしまう山村だったそうだ。しかし、急病人が出たり物資が足りなくなったりすれば、遭難覚悟で雪の峠を越えねばならない。だったら、土の中を進んだほうが安全じゃないか。との村民の思いから、人しか通れないサイズ、逆に言えば、人さえ通れればいい「雪中隧道」が掘られたのだという。  また、この廃隧道というのは、土木建築史的観点から見ても興味深い点が多々ある。簡素な素堀から、重々しい石積み、レトロな煉瓦積み、さらには洗い出しの化粧コンクリートで仕上げたモダンなものまで、個性豊かな隧道写真はさながら近代土木技術の見本市のようだ。実は、道路トンネルの建設技術は鉄道由来だが、鉄道に比べて体系的な資料に乏しく、どのように発達していったのかはよく分かっていないらしい。つまり隧道には謎解きの楽しみもまだまだ残っているのだ。  本書を「廃墟ブームに乗った、二番煎じのサブカル本でしょ?」みたいに侮ってはいけない。 (文=須藤輝)
廃道をゆく2 オブローダーデビューしちゃう? amazon_associate_logo.jpg
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根本敬が語る伝説の漫画雑誌「ガロ」と蛭子能収のアブない裏話

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 作品の新しさや、独創性を重視した編集方針で白土三平や水木しげる、つげ義春、蛭子能収、みうらじゅん、内田春菊......等々、漫画界の異才、奇才を多数排出して一時代を築いた漫画雑誌「ガロ」(青林堂)。4月10日、高円寺・西部古書会館において、そんな「ガロ」を語るトークイベント「昭和のカルチャー、漫画、そしてガロ」が開催された。  出演者は、いわゆる「ガロ系」と呼ばれるアングラ漫画界においても極北に位置し、海外の現代アートシーンからも注目を受ける特殊漫画家・根本敬氏と、かつては「ガロ」副編集長であり、現在は実質的な後継誌である「アックス」(青林工藝舎)の編集長を務める手塚能理子氏。一応「ガロ」を切り口に昭和の漫画カルチャーを語るイベント......という予定だったのだが、このふたりのトークがまともなカルチャー話になるハズもなく、「ガロ」周辺の編集者、漫画家の暴露トークがバンバン飛び出した。 手塚能理子氏(以下、手塚)「ガロ」編集部の建物って本当にボロかったんですよ。材木屋の二階を借りていたんですけど、トラックが出入りするたびに建物全体が思いっきり揺れてましたから。 nemoto01.jpg 根本敬氏(以下、根本) しかも編集部の中に入るとものすごい量の返本の山があってさ。本当に床が抜けるんじゃないかっていう感じだったもんね。 手塚 ある時、本当にこれはヤバイということで大家さんに頼んで修繕してもらったんですが、どこを直したのかと思ったら、土台のコンクリートと柱の間にカマボコ板を打ち付けただけだったんですよ。 根本 かまぼこ板一枚で建物を支えていた(笑)。でもそういう、その場しのぎの精神っていうのが「ガロ」編集部にピッタリだよね。ヘタにそこだけちゃんと工事してたら、全体のバランスが狂ってたちまち崩れ落ちてたと思いますよ。  「ガロ」といえば、名物編集として知られる初代編集長・長井勝一氏の「儲かったら払う」という方針から、原稿料がほぼゼロだったというのは有名な話だが、そんな状況でも「ガロ」で作品を発表したいという漫画家は後を絶たなかったという。そこには「お金」には変えられない、描き手と雑誌との強い結びつきがあったのだ。 手塚 「お金がなさそうなのによく続いてますね」って言われるんですけど、ただ続けるだけなら実はそんなに難しいことではないんですよ。それよりも、こういう同じ皮膚感覚を持った仲間が集まる場所を作るっていうことの方が難しいですよね。 根本 「ガロ」や「アックス」って、学校の中で友達がいなかった、行き場がなかった人たちが吸い寄せられる場所だった。だから長井さんが新人漫画家を採用する時の基準って漫画自体の良し悪しとかじゃなく「とりあえずウチで何かやらせておかないと事件を起こしかねない」っていうことだったんじゃないかと思うんですよ。 手塚 「漫画なんか描いてれば誰でも上手くなるんだ」ってよく言ってましたからね。それよりも「人間」っていう部分を見ていたと思います。私も新人を入選させるかどうかの判断基準って「生命力」ですからね。 根本 それは一般に言われる体力とかそういうことじゃなくて、それ以前のところでの「生命力」だよね。たとえば蛭子(能収)さんなんて体力はないだろうけど、無人島で遭難したらみんなを食べ尽くして自分だけ生き残りそうな生命力は持っていますから。  そんな苦境から這い上がる生命力を持っている漫画家の例として挙げられたのが『刑務所の中』の花輪和一氏。改造モデルガンを所持していたということで、半ば見せしめのような形で懲役三年の実刑判決を受けたが、出所後、刑務所での経験を描いた『刑務所の中』で大ヒットを飛ばした。 nemoto02.jpg 手塚 実はあの頃、会社が倒産寸前まで行ってたんですよ。『刑務所の中』が爆発的に売れてくれたおかげで持ち直せたんですけど、ある意味犯罪者に会社を助けてもらったってことですよね(笑)。それから「『刑務所の中』に手塚治虫文化賞を」っていう話が来たんで、もっと売れるだろうな......と思ってたら、花輪さん「手塚漫画の影響を受けた覚えがないから結構です、入りません」って断っちゃって。 根本 「賞金200万円もらえるからもらっておけばいいじゃない!」ってみんな止めたんだけどね(笑)。これが蛭子さんだったら「あ、200万ですか! いいですよ、もらいます」ってなったろうに......。でも花輪さんと蛭子さんって行動パターンは真逆なんだけど、生き物としての強さを持っているという部分は共通してるんですよ。ふたりとも妖怪に近いですからね。  ここからは根本氏のイベントではもはや恒例、蛭子さんの邪悪話に突入。奥さんが妊娠したので堕ろさせようとしたら断られて「女の人って堕ろすの嫌いなのかな? ワシは女心が分からんからなぁ......」と相談しにきたなど、一般的に知られる蛭子さんのニコヤカなイメージからはかけ離れたダーク過ぎる本性に会場は爆笑の嵐だったが、さすがの日刊サイゾーでもアウトじゃないかというヒドイ話の数々だったので割愛。  とにかくこんな濃い人たちを長年に渡って一手に引き受けてきた漫画雑誌「ガロ」「アックス」ってすごいなぁ......と再確認させられたのだった。こんなディープな漫画の世界があるって知らなかった人たちも、是非一度足を踏み入れてもらいたい。 (取材・文=北村ヂン)
因果鉄道の旅 ついに文庫化! amazon_associate_logo.jpg
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有野晋哉さんの至言「アイドルは『育ちがええねんなー』っていうのが大事です」(後編)

akari_arino02.jpg前編はこちら ──この『全日本オヤジ選手権』DVDで言ったら時東ぁみちゃんのポジションですよね。親父の靴下嗅いで「くさぁい!」とか。 有野晋哉氏(以下、有) そうそう、普通の表現いっぱいしてたやん、時東って。 ──靴下のにおいを「うんこです!」って。  そこ、注目しちゃってるでしょ! それがダメやと思う! ──だって、時東ぁみちゃんが「うんこ」って言うと思わなかったから!  ちょっとびっくりするでしょ? でも、小明さん、何でも言いそうじゃないですか。「うんこ食ったことあるんですよー」って、言いそうじゃないですか。「またうんこ食えって言われたらどうしよっかなって思いますけどぉー」とか。 ──言わないですよ! うんこも食わないし! でも、自然に出てくる言葉まで培われるとなると、つくづく大事ですね、家庭環境は。でもそれに関しては、もうこれから新たに家庭を築くしか......。  ないですねぇ(笑)。 ──もう機会さえあれば結婚したいくらいの気持ちでなんですけど、そこにはいろいろなハードルがあるじゃないですか。まず出会って恋愛して、みたいなのが、ちょっと不得意で......。  ああーなるほど、人と接するのがうまくない。......うん、芸能界に向いてないんじゃないですか? ──あっ、すごく根本的なところを! でも確かにそうなんです。だから、毎回いろんな方に相談させていただくんですけど、いろんな人に白旗を上げられがちで。  あーそうなんや、それはなんとかしてあげたいね。......なんやろね。小明さんの場合、アイドルって書いてるけど、水着の印象がないじゃないですか。 ──そうですねー、グラビアやってたのも、もう5年くらい前になります。  そうすよね。なんか、表現がすごい悪いけど、社長に抱かれてそうな感じ?(笑) ──うわああああ!!  はははは! 違うとは思うから言うねんけど! ──うちの社長、女です! 女でした、女!  それはよかった、それはよかった(笑)。でも、そんな感じがするの(笑)。そういう雰囲気のアイドルおるやん? ──確かにいますけど、まさか自分からその雰囲気が出てるなんて考えたこともなかったです......枕営業なんてしたことないのに!   分かるよ。分かるよ。その、なんていうのかな。枕してまで仕事あげると、自分の方が下がってしまうなーって、マスコミは知ってると思う。ふふ!(笑) ──なんか最悪じゃないですか!  「あそこに抱かれても仕事ぜんぜんくれへんやんか! しょっぼいの持ってきやがってよぉー」とか、書かれそうな感じがある(笑)。 ──うへー。そのせいか、その手のお誘いはいただかないです。  うん、なんですかねー? ──なんなんですかねー?  もう『アイドル』って冠を取るほうがいいんじゃないですかねー? ──えっ!?  今、もう、アイドルって、その「○○ドル」が、すごい流行ってもうたやん? だから、もう「美人過ぎるライター」くらいにしといたらいいんじゃないすか? そこのピンキリはまだ幅がないから、イケいけると思いますよ! ──でも、「美人すぎる」って、まず自分から言わなくないですか?  ふはは! 気づいた? 賢いね~。 ──「わたくし美人過ぎるライターでございまして」って、言えないですよね。......でも、「有野さんがつけてくれました」って言っていいならイケる気がする。  やめてください! 自作自演お願いします! っていうかまだかな、DVDの話は!?
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『全日本オヤジ選手権』
イーネット・フロンティア
──あ、DVDの話がまだでしたね! 最近はバイオリズムが低下していて絶不調だったんですけど、このDVDの、温泉で煮詰められてる親父とか、魚肉ソーセージほおばってる親父とか、踊る親父とか見て、なんかがんばろうって気持ちになりました。  あはは! 親父はあんな醜い形でも生きてんねんから! ──蛭子さん以外の出演者の方、ほとんど素人さんなのも凄いですよね。  うん、もっとすごいのが、親父全員に演出が一切入ってないんすよ。何も言うてへんのに全員が違うことをやってくるんすよ。今の若い子には多分やれないと思うんすよね。右へ倣え的なところが、今の人やったらあると思うから。 ──この世代の方々に学ぶところは多いですよね。  学ぶところ、全部が入ってると思いますね。「へえー」と思いながら見てましたね。たぶん町ですれちがっても、蛭子さん以外分かんないと思いますけど(笑)。 ──町にとけ込みすぎるから(笑)。蛭子さんと言えば、「蛭子さん伝説」ってあるじゃないですか。蛭子さんに酷いことをすると、不幸なことが起こるっていう。  はいはいはい。ある。 ──DVD内でも、みんなで蛭子さんに暴言を吐いたりしてヒヤヒヤしちゃったんですけど、その後みなさん大丈夫でしたか?  あ、大丈夫でしたよ。仕事場では多分ないと思うんすよ。画面上でくさすのはぜんぜん良いと思うよ。小明さんもそういう伝説ない? ──薄幸にする伝説ですか? 大丈夫です。占いで「あげまん」って言われました。  いや、だからって抱かへんけど! ──とにかく最近はそんな憂鬱な状態ですごい死にたかったんですけど、この『全日本オヤジ選手権』DVDを観てですね......。  いややで死んだら! めっちゃ、いややで、俺そんなん! うわーなんか後味悪いわーってなる! ──それなら「BOMB」(学研)のアイドルランキングに入れといたらよかったなー、て思うかもしれないですね。......もしかしたら追悼で入れてくれるかもしれない!?  いや! 追悼やったら影が出るから、そんなことしないもん! うん、会ったことないことにする(笑)。 (取材・文=小明) ●有野晋哉(ありの・しんや) 1972年、大阪府生まれ。90年、お笑いコンビ「よゐこ」としてデビュー。93年から放送されたフジテレビ系『とぶくすり』で頭角を現し、その後15年以上にわたって第一線での活躍を続けている。4月28日発売のDVD『全日本オヤジ選手権』出演。 ●小明(あかり) 1985年、栃木県生まれ。02年、史上初のエプロンアイドルとしてデビューするも、そのまま迷走を続け、フリーのアイドルライターとして細々と食いつないでいる。初著『アイドル墜落日記』(洋泉社)、DVD『小明の感じる仏像』(エースデュース)発売中。 ブログ「小明の秘話」<http://yaplog.jp/benijake148/
全日本オヤジ選手権 収録時間:本編117分 特典映像14分 発売日:4月28日(水)予定 価格:3,800円(税別) 発売・販売元:株式会社イーネット・フロンティア amazon_associate_logo.jpg
小明の「大人よ、教えて!」"逆"人生相談バックナンバー 【第11回】  鳥居みゆきさんの至言「やりたくないこと、やらないだろうな、ってことをやるの」 【第10回】  宇多丸さんの至言「人にはだいたい『ちょうどいい』ところがあるんです」 【第9回】  桜木ピロコさんの至言「あたしいつもだいたいいやらしいことしてるもん!」 【第8回】 伊集院光さんの至言「結局、うんこを食うしかない状況になるんです」 【第7回】 ルー大柴さんの至言「ライフっていうのはマウンテンありバレーありです」 【第6回】 大堀恵さんの至言「私、いつも『アンチ上等』って思ってるんです」 【第5回】 品川祐さんの至言「なったらいいなと思ってることは、だいたい実現する」 【第4回】 福本伸行さんの至言「俺は『面白いものを作ろう』じゃなくて、作れちゃう」 【第3回】 大根仁さんの至言「ネットの書き込みなんて、バカにしていいんじゃない?」 【第2回】 杉作J太郎さんの至言「そんなことより『ファフナー』見ろ、『ファフナー』を」 【第1回】 河原雅彦さんの至言「もう無理やりヤラれちゃえばいいんじゃない?」

有野晋哉さんの至言「アイドルは『育ちがええねんなー』っていうのが大事です」(後編)

akari_arino02.jpg前編はこちら ──この『全日本オヤジ選手権』DVDで言ったら時東ぁみちゃんのポジションですよね。親父の靴下嗅いで「くさぁい!」とか。 有野晋哉氏(以下、有) そうそう、普通の表現いっぱいしてたやん、時東って。 ──靴下のにおいを「うんこです!」って。  そこ、注目しちゃってるでしょ! それがダメやと思う! ──だって、時東ぁみちゃんが「うんこ」って言うと思わなかったから!  ちょっとびっくりするでしょ? でも、小明さん、何でも言いそうじゃないですか。「うんこ食ったことあるんですよー」って、言いそうじゃないですか。「またうんこ食えって言われたらどうしよっかなって思いますけどぉー」とか。 ──言わないですよ! うんこも食わないし! でも、自然に出てくる言葉まで培われるとなると、つくづく大事ですね、家庭環境は。でもそれに関しては、もうこれから新たに家庭を築くしか......。  ないですねぇ(笑)。 ──もう機会さえあれば結婚したいくらいの気持ちでなんですけど、そこにはいろいろなハードルがあるじゃないですか。まず出会って恋愛して、みたいなのが、ちょっと不得意で......。  ああーなるほど、人と接するのがうまくない。......うん、芸能界に向いてないんじゃないですか? ──あっ、すごく根本的なところを! でも確かにそうなんです。だから、毎回いろんな方に相談させていただくんですけど、いろんな人に白旗を上げられがちで。  あーそうなんや、それはなんとかしてあげたいね。......なんやろね。小明さんの場合、アイドルって書いてるけど、水着の印象がないじゃないですか。 ──そうですねー、グラビアやってたのも、もう5年くらい前になります。  そうすよね。なんか、表現がすごい悪いけど、社長に抱かれてそうな感じ?(笑) ──うわああああ!!  はははは! 違うとは思うから言うねんけど! ──うちの社長、女です! 女でした、女!  それはよかった、それはよかった(笑)。でも、そんな感じがするの(笑)。そういう雰囲気のアイドルおるやん? ──確かにいますけど、まさか自分からその雰囲気が出てるなんて考えたこともなかったです......枕営業なんてしたことないのに!   分かるよ。分かるよ。その、なんていうのかな。枕してまで仕事あげると、自分の方が下がってしまうなーって、マスコミは知ってると思う。ふふ!(笑) ──なんか最悪じゃないですか!  「あそこに抱かれても仕事ぜんぜんくれへんやんか! しょっぼいの持ってきやがってよぉー」とか、書かれそうな感じがある(笑)。 ──うへー。そのせいか、その手のお誘いはいただかないです。  うん、なんですかねー? ──なんなんですかねー?  もう『アイドル』って冠を取るほうがいいんじゃないですかねー? ──えっ!?  今、もう、アイドルって、その「○○ドル」が、すごい流行ってもうたやん? だから、もう「美人過ぎるライター」くらいにしといたらいいんじゃないすか? そこのピンキリはまだ幅がないから、イケいけると思いますよ! ──でも、「美人すぎる」って、まず自分から言わなくないですか?  ふはは! 気づいた? 賢いね~。 ──「わたくし美人過ぎるライターでございまして」って、言えないですよね。......でも、「有野さんがつけてくれました」って言っていいならイケる気がする。  やめてください! 自作自演お願いします! っていうかまだかな、DVDの話は!?
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『全日本オヤジ選手権』
イーネット・フロンティア
──あ、DVDの話がまだでしたね! 最近はバイオリズムが低下していて絶不調だったんですけど、このDVDの、温泉で煮詰められてる親父とか、魚肉ソーセージほおばってる親父とか、踊る親父とか見て、なんかがんばろうって気持ちになりました。  あはは! 親父はあんな醜い形でも生きてんねんから! ──蛭子さん以外の出演者の方、ほとんど素人さんなのも凄いですよね。  うん、もっとすごいのが、親父全員に演出が一切入ってないんすよ。何も言うてへんのに全員が違うことをやってくるんすよ。今の若い子には多分やれないと思うんすよね。右へ倣え的なところが、今の人やったらあると思うから。 ──この世代の方々に学ぶところは多いですよね。  学ぶところ、全部が入ってると思いますね。「へえー」と思いながら見てましたね。たぶん町ですれちがっても、蛭子さん以外分かんないと思いますけど(笑)。 ──町にとけ込みすぎるから(笑)。蛭子さんと言えば、「蛭子さん伝説」ってあるじゃないですか。蛭子さんに酷いことをすると、不幸なことが起こるっていう。  はいはいはい。ある。 ──DVD内でも、みんなで蛭子さんに暴言を吐いたりしてヒヤヒヤしちゃったんですけど、その後みなさん大丈夫でしたか?  あ、大丈夫でしたよ。仕事場では多分ないと思うんすよ。画面上でくさすのはぜんぜん良いと思うよ。小明さんもそういう伝説ない? ──薄幸にする伝説ですか? 大丈夫です。占いで「あげまん」って言われました。  いや、だからって抱かへんけど! ──とにかく最近はそんな憂鬱な状態ですごい死にたかったんですけど、この『全日本オヤジ選手権』DVDを観てですね......。  いややで死んだら! めっちゃ、いややで、俺そんなん! うわーなんか後味悪いわーってなる! ──それなら「BOMB」(学研)のアイドルランキングに入れといたらよかったなー、て思うかもしれないですね。......もしかしたら追悼で入れてくれるかもしれない!?  いや! 追悼やったら影が出るから、そんなことしないもん! うん、会ったことないことにする(笑)。 (取材・文=小明) ●有野晋哉(ありの・しんや) 1972年、大阪府生まれ。90年、お笑いコンビ「よゐこ」としてデビュー。93年から放送されたフジテレビ系『とぶくすり』で頭角を現し、その後15年以上にわたって第一線での活躍を続けている。4月28日発売のDVD『全日本オヤジ選手権』出演。 ●小明(あかり) 1985年、栃木県生まれ。02年、史上初のエプロンアイドルとしてデビューするも、そのまま迷走を続け、フリーのアイドルライターとして細々と食いつないでいる。初著『アイドル墜落日記』(洋泉社)、DVD『小明の感じる仏像』(エースデュース)発売中。 ブログ「小明の秘話」<http://yaplog.jp/benijake148/
全日本オヤジ選手権 収録時間:本編117分 特典映像14分 発売日:4月28日(水)予定 価格:3,800円(税別) 発売・販売元:株式会社イーネット・フロンティア amazon_associate_logo.jpg
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