
環境省総務課動物愛護管理室のある庁舎

環境省総務課動物愛護管理室のある庁舎

社団法人 日本動物福祉協会公式サイトより
八百長騒動で日本相撲協会が公益法人の資質を問われている中、70年近い歴史を持つ別の法人団体が不明朗な会計で大揺れに揺れている。団体名は「(社)日本動物福祉協会」(本部:東京都品川区)。このほど、一部の幹部による協会資金の不正流用が発覚し、監督する神戸市が関係者に対して立ち入り調査をするなどの騒動が起こっているのだ。
協会資金を不正に着服していたのは、同協会前阪神支部長のN島氏。2008年には、同協会の推薦により環境大臣表彰を授章している。すでに支部長を辞任しているN島氏だが、0その理由は「一身上の理由」とされている。だが、事情を知る会員のAさんは次のように語る。
「N島さんは、顧問獣医師のK原氏らと共謀して協会資金を不正流用してきました。その事実を知った一部の会員が神戸市や環境省へ電話とメールで内部告発をし、これにより他の会員にも問題の存在が広がり、N島さんは会にいられなくなったのです」
日本動物福祉協会の歴史は古い。終戦直後の1946年、大学の実験動物の取り扱い改善を目的に創設。57年には社団法人の認可を受け、名誉会長には旧皇族の竹田恒徳氏が就任。以来、歴代の理事長には麻生元総理の母親・麻生和子氏や、中曽根康弘氏などそうそうたる顔ぶれが並ぶ。
現在は正仁親王妃華子さまが名誉総裁を務め、同協会が毎年作成するカレンダーには、麻生元総理の実妹・寛仁親王妃信子さまが撮影した写真が長年使われてきた。また、動物愛護法改正を検討する環境省中央審議会のメンバーにも、同協会の理事や顧問獣医師が名を連ねるなど、社会的な信用度はきわめて高い。
協会の主な活動のひとつが、野良猫の不妊去勢手術の推進である。地方の各支部が行う野良猫の捕獲活動や不妊手術費用を東京本部が支援・助成する一方、全国の都道府県から毎年2地域を選んで「捨て猫防止キャンペーン」なども行っている。本部から支部への資金の流れは、内部資料によれば以下の通りだ。
(1)各支部は年間に行う不妊手術件数の予測を立て、予算案を策定する。本部は各支部から提出された予算案に基づき、支部予算の不足分を送金する。
(2)支部は「不妊去勢手術助成金取り扱い規則」や支部独自の規定に基づき、手術の「申請者」に対して助成金を支払う。
(3)支部は、手術を実施した獣医師の証明書や領収書を添えて毎月本部に実績報告する。
上記(2)でいう「申請者」とは、「野良猫が保健所に殺処分されてはかわいそうだから」と、手術費用を自腹で支出する会員や一般住民を指す。助成金は、こうした善意の自己負担に対する補助行為ということになる。
阪神支部の規定によれば、申請者に支払われる助成額は手術費用に応じて一件2,000円~5,000円。2009年度の同支部の実績報告書によれば、1,757匹の不妊手術に対して452万4,000円の助成金が申請者に支払われ、本部から支部へは不足分として419万円が補てんされている。
理論上は、野良猫をたくさん捕獲して不妊手術をすればするほど、その実績に対して多くの補填が本部から支払われるという仕組み。当然ながら、手術費用が高いほど、支部から申請者へ支払われる助成額も高くなる。ちなみに、「阪神支部の助成金は、他の支部と比較して突出して高額化していた」(協会本部の内部資料より)という。

阪神支部の助成金規則と、2009年度の同支部の実績(協会内部資料より)。
※クリックすると拡大します(以下同)。
ここで話をAさんの証言に戻そう。
「阪神支部の前支部長のN島さんは、なぜか支部内に動物福祉協会とはまったく別の組織を立ち上げて、まるで商売のように不妊手術の"注文"を会員以外からも積極的にとっていました。組織の名前はN島さんと相棒のFさんの苗字をとって、漢字2文字で『NF会』と呼ばれていて、支部の中では大きな発言力を持っていました。このNF会と福祉協会阪神支部の活動がごっちゃになってしまい、それでお金の流れもよく分からなくなってしまったようです」
別の会員のBさんが言う。
「N島さんはいつも、阪神支部の顧問獣医師であるK原さんに8,000円で手術を依頼していたようなのですが、一方で申請者には1頭1万数千円や2万円、高いときは3万円くらいを請求していました。額は相手の懐具合を見て決めていたようです。なぜいつも3万円という高額な請求をしているのかと不審に思っていた会員は少なくなかったのですが、本人がいろいろな場で『3万円なんてもらえるのは全体の3分の1くらい。いつもではない』と自ら"白状"していますので、逆に言えば3分の1程度は3万円以上の高額請求をしていたということでしょう」
さらに、N島前支部長はK原獣医師に8,000円で手術を依頼しておきながら、実際の金額より高い1万円で虚偽の領収書を書くように要請。これにより助成金を不正に多く受け取っていたことが、後述するその後の本部による調査で判明している。3万円で受託した手術を8,000円でK原獣医師に"下請け"に出していたとしたら、その差額は一体どこへ消えたのだろうか。

環境省の指導で動物福祉協会が昨年12月にまとめた、
事件の調査報告書。
かねてよりN島氏の行動に強い不信感を抱いていた一部の会員らにより、昨年5月26日に開かれた阪神支部総会は激しく紛糾した。不明瞭な助成金の行方や「NF会」の存在理由、さらにはN島氏が自宅で常時40~50匹の猫を管理していたことが動物取扱業にあたらないかなどについて、会員から厳しい質問が飛び交ったという。N島氏はこれを受けて翌6月に辞任したが、その後も告発を受けた神戸市保健福祉局が、昨年8月18日にN島氏の自宅を立ち入り調査し、事態を重く見た環境省も協会事務局本部に対して事情説明を求めるなど、監督官庁らを巻き込みながら騒動は次第に広がりを見せはじめたのである。
こうした中、協会は12月13日付で調査書をまとめ、環境省に対して概要を以下の通り報告している。
・N島氏とF氏らが立ち上げた「NF会」が高額の手術代金を受領していたのは事実。
・K原獣医師が、N島氏の「ボランティアの労苦を慮って、好意的に実費より高額の領収書(実費8,000円→領収書1万円)を発行していた」(原文ママ)のは事実。

環境省に提出された報告書の一部。
「NF会」(実際は漢字2文字)が高額な料金で不妊手術を受託していた。
先のAさんが憤る。
「ニセの領収書を書いた理由が『日ごろの苦労を慮って』とか『あくまで好意で』なんていう理由が通用すなら、税務署は入りませんよ。実際、K原医師は税務署へどう申告していたのでしょうか」
Bさんも言う。
「K原獣医師にとっては、N島さんが営業担当者のように"仕事"を取ってきてくれるんだから、いい取引先なんでしょう」
さらに協会はこうした不正の事実を会員に対しては長らく報告してこなかったとBさんは言う。
「環境省からは事実報告をすべての会員に対しても行うように指導されているはずです。ところが、不正の事実を認めた12月13日の報告書のわずか2日後、12月15日付の会報(『jaws』65号)を見ると、『本部の調査で、助成金支給に関して不正等は存在しなかったことは確認されております』なんて書いてある。唖然としましたよ。内容が環境省に提出した報告書と、まるっきり逆じゃないですか」
また、取材を進めるうちにさらなる信じがたい証言も飛び出してきた。「NF会に猫を預けると二度と帰ってこない。いったいどこへ始末しているのか」との声が、協会本部や自治体に数多く寄せられていたのである。

環境省に不正の事実を認めてから約10カ月後、
協会はようやく騒動の事実をHP上で会員へ報告。ただし、損害額は合計数万円程度で
「巨額の不正等は存在しない」と結論付けた。サイゾーが金額の根拠を問いただすと
「あくまで自己申告」「われわれは捜査機関ではないから」(事務局長)と回答。
これに対し環境省は「徹底した調査が求められる」と懸念を示している。
(後編に続く/文=浮島さとし)
※当記事は、熊本地震の発生にあたり、サイゾーの過去の記事から再掲載しています。 阪神・淡路大震災(1995年)、三宅島の噴火(00年)、新潟県中越地震(04年)など、過去に起きた災害時には、人間だけではなく多くの動物たちも被災した。だが、実際にいざ自分が被災し当事者になったら、自分の飼っているペットはどうしたらよいのか、具体的な対応策を知っている人は少ないのではないだろうか。ただでさえパニックになりがちな災害時において、飼い主である人間は、正しい行動が取れるのだろうか──。 そこで、前述の災害時などで動物の救済活動に携わってきたひとり、獣医師の山口千津子氏(社団法人日本動物福祉協会)に「災害時のペット」の現状と防災対策について話を伺った。 「私たちは、阪神・淡路大震災以降、『緊急災害時動物救援本部』(日本動物愛護協会、日本動物福祉協会、日本愛玩動物協会、日本動物保護管理協会、日本獣医師会によって組織)の被災地における動物救護本部設置の手伝いをはじめとする動物の救援活動をしてきました。これは、行政、獣医師会、動物愛護団体が一緒になって行われているもので、この取り組みの積み重ねにより、最近になってようやく、災害時のペット避難対策を具体的に検討する自治体が増えてきました。ペットの同行避難に対する理解も広がってきており、私たちは、まず、災害時には飼い主によるペットの同行避難を呼びかけています」 災害に巻き込まれたペットは、被災地に置き去りにされたり、飼い主不明のまま保護される迷子も少なくない。迷子になれば、火災や事故に遭う危険性も出てくる。 「とにかく同行避難さえしていれば、餌の支給、物資援助、獣医師協力もあり、ペットの受け入れができない避難所の場合でも、一時的な預りを行う上記の救護本部などに依頼すれば、安全を確保することができます。ですが、もし、同行避難せずペットを置き去りにした場合、たとえ後日迎えに帰るつもりだったとしても、その地域が立ち入り禁止地区になったら、迅速な救助が困難となります。有珠山の噴火の時(00年)は、危険地域に置き去りにされた動物たちのために、自衛隊や警察・消防などに協力を要請し、飼い主に代わって餌やりや保護活動を行いました」(同) もっとも、同行避難後も、大きなダメージとストレスに加え、プライバシーのない避難所での共同生活では、隣人への配慮が必要不可欠だ。動物の無駄吠え、かみつきなどの問題行動は、隣人トラブルの原因となる。また、不十分な健康管理やワクチン不接種の動物を持ち込むことで、感染症などの新たな問題も起こしかねない。 「家族の一員であるペットの命を守ることができるのは、飼い主だけです。このことを自覚し、正しい知識と責任を持って、日頃からしつけや健康管理などを行うことが何よりも大切です。また、それが飼い主自身の心の支えにもなります」(同) 災害時に限らず、一番必要なのは、「ペットのしつけ」ではなく、「飼い主のしつけ」なのだ。最後に、ペットの防災対策に有効なポイントを簡単にまとめてみたので、飼い主のみなさんはぜひ実践していただきたい。 [ペットの防災対策] 【1】健康管理(=ワクチン接種、定期健康診断、病気の治療) 【2】しつけ(=人間社会への適応) 【3】避妊・去勢(=みだりな繁殖や問題行動の防止) 【4】鑑札や迷子札、マイクロチップ(動物の個体間識別を可能にする電子標識器具)の装着(=飼い主の所在明示による迷子の防止) 【5】同行避難時の非常袋(フード、水、薬、リードなど)の準備 【6】飼い主の情報、ペットの健康状態、病歴などをまとめた情報手帳の携帯 (文=小林未央/本記事は「サイゾー」2008年9月号掲載のものを再構成したものです)イメージ画像(「足成」より)

『珍獣の医学』(扶桑社)
昨今、日本では空前のペットブームが到来し、犬や猫などが家族の一員として、目に入れても痛くないというほど可愛がられている。それにともない、動物の診療技術がめきめきと発達し、人間に使用する医療機器を使い、MRI検査や放射線治療など、最先端の治療さえも受けられるほどの進化を遂げた。もはや、ペットは人間と同等、もしくは飼い主によっては人間以上の手厚い診療を受けられる時代になっている。
だが、その一方で、犬猫以外の動物の診療はあまり発達していない、という現実がある。というのも、日本の獣医学の世界では、犬猫以外の動物は、"エキゾチックペット"と呼ばれ、ウサギもハムスターもインコも珍獣扱いされている。大学の獣医学科では処置の方法を習うことすらない。犬猫ですら、きちんと診られるようになってきたのは、ここ30年ほどのことだという。
ではどうやって診療しているのかというと、「『がんばる』としか言いようがない」と、「田園調布動物病院」病院長・田向健一先生は語る。つまり、自主的な勉強でなんとかする、ということなのだ。
あまり知られていないが、動物病院というのは基本的に犬や猫を診る病院のことを指し、多くの場合、それ以外の動物は病院側が受け入れを拒否している。だが、田向先生は幼い頃からマイナーな生き物全般が大好きで、どんな生き物でも治してあげたい、という思いから、基本的にすべてを受け入れている。
本書『珍獣の医学』では、アリクイやタランチュラの脱水症、ごきぶりホイホイにつかまったハムスターのノリはがし、切断されてしまったウーパールーパーのしっぽの縫合など、田向先生の病院に訪れた数多くの珍ペットを診療する様子が、写真付きで分かりやすく書かれている。
中でもとくに個人的に興味を引かれたのが、ベランダからダイブし、甲羅がパックリと割れてしまったカメ。バーンと写真に映し出された甲羅の中身は、「えっ! こんなことになってるんだ!!」と、なかなか衝撃的だ。
動物はしゃべれない。だから、獣医師は余計に動物に対する責任が重い。田向先生は、実は獣医師だって、病気の動物を診ることは常に不安なのだと告白し、こんなことを言っている。
「『お~い、大丈夫か~生きてるか~?』と冗談交じりに話しかけているとき、半分は本気で『死んじゃっていたら、どうしよう』と思っていたりするものなのだ」
"エキゾチックペットを広く受け入れる"ということは、犬猫のように診療が確立されているペットたちより格段に大変なこと。前例がないため、失敗するかもしれないという不安が常につきまとう。しかも、もし死んでしまったら、飼い主をひどく悲しませてしまう。
それでも、目の前にいる動物を絶対に助けてあげたい、断ったらほかに行くところもなく飼い主が途方にくれて悲しむだろう、と言う思いから、日々勉強をして、100種類以上のペットたちの診療を続けている。獣医師の嘘偽りのない、まっすぐな言葉が胸に温かく届く。
(文=上浦未来)
●たむかい・けんいち
田園調布動物病院院長。愛知県出身。98年麻布大学獣医学科卒業。幼少時の動物好きが好じて獣医師に。大学時代は探検部に所属し、アマゾンやガラパゴス、ボルネオなど海外の秘境に動物訪問。卒業後は、東京、神奈川の動物病院勤務を経て、田園調布動物病院を開業。ペットとして飼育される動物のほとんどを診療対象としており、無脊椎動物、爬虫類から哺乳類までと守備範囲は広い。その専門知識を生かし一般書、専門書、論文まで動物に関する著書を多数執筆、監修を行う。
珍獣の医学 目がテン!

米国ミネソタ州のホスピスで暮らす"おくりねこ"のオスカー。
人間の死を予期する特殊な能力を有している。
(c)La bascule and Ana films
和歌山県太地町におけるイルカの追い込み漁の実態を告発した米国映画『ザ・コーヴ』は2010年上半期の映画界の話題を独占したが、もう1本、日本人と動物の関係を考えさせるドキュメンタリー作品がフランスから上陸した。ミリアム・トネロット監督による『ネコを探して』がそれだ。19世紀のフランスでは"自立と自由の象徴"としてネコは画家や文化人らに愛されたが、さまざまな仕草のネコを描いた安藤広重の浮世絵が少なからず影響を与えているという。夏目漱石の『吾輩は猫である』も愛読しているトネロット監督は、米国や英国のネコたちも紹介するが、とりわけ日本のネコたちの紹介により時間を割いている。フランスの女性監督の目には、日本人とネコの関係はかなり特殊なものに映っているようだ。
アニメーションを導入に使うことで、ネコの肉球のごとくソフトタッチに始まる本作だが、日本人とネコの関わりを伝える序盤のエピソードにネコ愛好家は鋭いツメでえぐられるような衝撃を受けるだろう。世界初の公害病である水俣病の存在を人間社会に初めて伝えたのは水俣の海辺に暮らすネコたちだったのだ。確かに水俣病問題を最初に報道した1954年8月1日の「熊本日日新聞」の記事内容は『水俣市の漁村で百余匹いた猫が全滅し、ねずみが急増。あわてて各方面から猫をもらってきたが、これまた気が狂ったように死んでいく』というものだった。やがてネコだけでなく、痙攣や神経症状を呈する人間の患者が相次ぎ、"原因不明の奇病"として水俣病の存在が56年に公表される。メチル水銀が魚介類に蓄積され、それを摂取することによって起きたメチル水銀中毒と判明したのは59年。日本政府が公害病として認定したのは68年になってからだ。
水俣病の存在が報告されてからも工場廃水を流し続けたチッソ社は自社の無罪を証明するため、「400号」と名付けたネコに3カ月間にわたって工場廃水を飲ませる動物実験を行なっている。ネコ400号は人間の水俣病患者と同じ症状を見せたが、チッソ社はこの実験結果を公表せず、チッソ工場と水俣病は無関係であることを主張。また、チッソ社の付属病院だけでなく、熊本大学でもメチル水銀で汚染された魚をネコたちに与え続けるという動物実験が行なわれた。水俣病で苦しんでいるのは人間だけではなかったのだ。トネロット監督は水俣病研究の犠牲となったネコたち数万匹を弔う慰霊碑に手を合わせるかのようにカメラを向ける。

ネコに鍼灸を施す獣医師・石野孝氏。
ペットの高齢化・美食化が進み、成人病の予防
は欠かせない。
どーんと沈みきったネコ愛好家の気持ちを和ませてくれるのは、和歌山電鐵貴志川線貴志駅のスーパー駅長たま。人気者の駅長たまのお陰で、赤字ローカル線だった貴志川線は廃線を免れた。福を招く"招き猫"たまを写メに収めようと大勢の客が貴志駅を利用する。たまが駅長に就任したことによる経済効果は11億円にもなるという。芸術の国フランスではネコは自由のシンボルとして見られているのに比べ、どうも日本のネコたちは人間に対し献身的な役割を背負わされているようだ。秋田犬ハチが軍国化の進む戦前の日本で主人に尽くす"忠犬ハチ公物語"として美談化されたことを彷彿させる。
公共機関である鉄道を守っているのは、日本のスーパー駅長たまだけではない。英国鉄道では長い年月、信号ケーブルを齧るネズミを駆除するためのネコたちが公費で飼われていた。英国の鉄道員たちはネコをネズミ獲りの職人として認めていたのだ。ネコと人間がお互いに支え合った古き良き時代。しかし、90年代に英国鉄道は完全民営化され、職員の25%がリストラされたと同時に200匹の職人ネコたちも解雇された。経済効率至上主義の民営企業は、ネコたちに与えるエサ代は無駄な出費と考えたのだ。民営企業はネコのエサ代だけでなく、レールの点検作業や補修費なども省くようになり、民営化された英国鉄道では死者を出す大事故が続発。英国鉄道の民営化は失敗した、として立て直しが進められている。
自由気ままなネコの性質は、よく女性に例えられるが、米国ミネソタ州にあるホテル「キャットハウス」はちょっと妖しげ。オランダの風俗街「飾り窓」のように、さまざまなタイプの美猫たちはお客が来るのを毛づくろいしながら待っている。このホテルでは、お客は指名したお気に入りのネコちゃんと個室でひと晩、ベッドを共にすることができるのだ。自宅でネコを飼っているけど、ちょっと違う種類のネコと浮気してみたい人たちに大人気。1匹のネコを相手に3Pプレイを楽しむ夫婦もいるし、死んでしまったネコにそっくりなネコを見つけてペットロスでぽっかり開いた心の穴を塞ごうとする婦人の姿も。美しいネコたちは、それぞれ得意な仕草でお客の心をトロトロにとろかせる。
ミネソタ州の"猫のホテル"に比べ、せわしく狭苦しい印象を与えるのは、日本の猫カフェ。お気に入りのネコの喉をさすりながら、日本の若者たちは「大人になってもネコはカワイイ」「野良ネコはいやだけど、飼いネコならなってもいい」と口にする。猫カフェに押し込まれたネコたちはツメが切られ、去勢されたおとなしいネコばかり。さらに日本人はネコをペット服で着飾り、健康のために動物専用の鍼灸へ連れていく。人間を癒すために多大なストレスを抱える日本のネコたち。トネロット監督はネコは人間社会を映し出す鏡、過剰なペット・ビジネスに今の日本文化が象徴されていると感じている。
ネコをめぐる旅の最後に登場するのは、超能力ネコのオスカー。人間の死を正確に予期するというスピリチュアル系の不思議ネコだ。オスカーは米国のロードアイランド州にある認知症患者のためのホスピスで暮らしている。普段は人間にあまり寄り付かないオスカーだが、死期が迫った患者を察知すると、亡くなる約4時間前からその患者のベッドに上がり、寝ずの番をするという。認知症で家族さえ判別できなくなっている患者も、かわいいネコが自分の横で丸まっていることで苦しみが和らぐらしい。死を予告するネコと聞くと不吉に考える家族もいるんじゃないかと思うが、オスカーが病室にいることで付き添う家族の気持ちも慰められている。オスカーと共に多くの患者を看取った医者のデイヴィッド・ドーサ氏はノンフィクション本『オスカー 天国への旅立ちを知らせる猫』(早川書房)の中で、人間の体が機能しなくなることで体内にケトン体が分泌され、ケトン体の匂いをオスカーは嗅ぎ分けているのではないかと推測している。戦場では先の長くない負傷兵からは甘い匂いが漂ってくるという衛生兵の談話も紹介している。しかし、それだけではオスカーの不思議な能力は説明できない。危篤患者が2人いる場合は、オスカーは身寄りのいないコドクな患者のベッドを選ぶのだ。オスカーはホスピス内で自分がやらなくてはいけない任務を熟知しているらしい。
本作を見終わって写真家アラーキーこと荒木経惟氏の言葉が思い浮かんだ。アラーキーは人妻熟女だけでなくネコ好きでも知られる。野良ネコのいる風景を撮り続けた『東京猫町』(平凡社)はネコ好きにはたまらない写真集だ。路地裏に佇むネコたちを追った『東京猫町』の中でアラーキーは、"猫が歩いている町はイイ町なのです"と語っている。"猫が消えちゃったら東京は廃墟になっちゃうんだろーニャア"とも言う。東京から、日本から、ネコがいなくなりませんように。
(文=長野辰次)

(c)Jerome Jouvray
『ネコを探して』
監督/ミリアム・トネロット 出演/"駅長"たま、"おくりねこ"オスカー、"鉄道員"エリカ、"カメラねこ"ミスター・リー、"お泊りねこ"ジンジャー、鹿島茂、石野孝ほか 配給/ツイン 渋谷シアターイメージフォーラムほか全国順次公開中
<http://www.neko-doko.com>
東京猫町 にゃあ~

『Dreams for Dogs』(ハッツ・アンリミテッド))
少子高齢化にあって、今やペットの数が15歳未満の子どもの数を上回ると言われるペット大国・ニッポン。
最近では、マンションでも犬や猫が飼えるようになるなど、動物好きにとってはうれしい環境が整いつつあるが、そんななか、"究極の愛犬家アイテム"として注目を集めているCDをご存じだろうか? そのCDとは、『Dreams for Dogs』(企画・販売元:ハッツ・アンリミテッド)。
「犬と一緒にゆっくりした時間が過ごしたい」「犬にもリラックスした時間を与えてあげたい」という飼い主のリクエストのもと、帝京科学大学アニマルサイエンス学科とレコードメーカーが共同で開発したインストゥルメンタル・アルバムで、チャイコフスキーの「花のワルツ」や、バッハの「主よ人の望みの喜びよ」ほか、一般にもお馴染みのクラシックが収録されているのだが、単に癒し系楽曲を並べただけでなく、これらの音源に"特殊な効果音"をプラスしているというのだ。
具体的にどんな音かと言えば、犬の鳴き声をはじめ、"街のざわめき"とでも表現すべき音がクラシック音楽の背景からかすかに聴こえてくる......というもの。完全な静寂より、ほどよい雑音の中のほうがかえって眠気を誘うように、その効果音がなんとも絶妙な心地よさを演出するようで、さっそくyou tubeでもこのCDを聴きながらスヤスヤと眠りにつく小犬の姿が紹介されているほどなのだ。
実はこのCD、2007年に第一弾がリリースされるや、"眠ってしまうため最後まで聴けない、究極の快眠CD"として話題を集め、同年度の日本ゴールドディスク大賞でインストゥルメンタル・アルバム・オブ・ザ・イヤーを受賞した『Dreams』シリーズの第3弾。シリーズを通して、医学的・科学的実験データをもとに制作されているのが特徴で、実際、第1・2弾では、海外旅行の悩みである「機内でいかにぐっすり眠るか?」をテーマに、4カ月間で約170回の睡眠実験を繰り返したそうだが、今回の『Dreams for Dogs』でも、約5カ月の間、何種類もの音源をさまざまな犬種に聴かせてその活動量を計測したという。
それだけにその効果にも納得だが、さらに今回の実験は、今年7月にスウェーデンで開催されたIAHAIO(人と動物の関係学会国際会議)で日本の代表研究として採択されたとのことで、企画・販売元のハッツ・アンリミテッドは、「多数の研究論文の中からこの実験報告がとり上げられ、発表されることは、このCDの犬への効果が国際的にも注目されていることを裏づけるもの」と自信を覗かせている。
飼い主ともどもリラックスできるうえ、ひとりぼっちの不安が和らぐことから愛犬のお留守番時にも最適というこのCD。ストレス社会に生きる今どきのワンコちゃんには、オシャレなペット服よりこっちのほうが必須かも!?
Dreams for Dog 癒やされたい......。
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