いったい何がイカンのか!? タイムリーな社会派ギャンブルマンガ 『野球賭博』

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野球賭博』(谷あく斗、村岡栄一/芳文社)
 いま、プロ野球選手の野球賭博問題が世間をにぎわせています。野球賭博といえば、有名なところでは1969年の黒い霧事件、そして2010年の大相撲野球賭博問題があります。特に2010年は多くの力士や親方が処分され、まさしく角界に激震が走った事件であり、記憶に新しい方も多いのではないでしょうか。そのわずか5年後に、再びプロ野球界で野球賭博問題が発覚するとは、この問題の根の深さを表しています。    そんなスポーツ界を揺るがす野球賭博問題ですが、いったい何が問題なのか? 一般的には、あんまりなじみがないですよね。正直、僕もよく知りません。しかし、そんな疑問を解決するマンガが存在するのです。その名もズバリ『野球賭博』というマンガです。まさに、このタイミングで紹介するにふさわしい作品と呼べるのではないでしょうか。  ちなみに、野球賭博の話が出てくるマンガは『ラストイニング』や『ラストニュース』『白竜』『名門!第三野球部』などがあります。しかし、いずれも、あくまで作品のほんの一部で取り上げているだけです。「野球賭博」そのものをフィーチャーしたマンガというのは、おそらく本作だけだと思われます。いかにもマンガにするニーズがなさそうですから、当然といえば当然ですが、とにかく大変異質な存在です。  実際、単行本の表紙からして、すごく異質です。どこが異質かというと、真っ赤なのです! 表紙が真っ赤なだけならまだしも、表紙に描かれているオッサンのサングラスの中まで赤いという、尋常じゃないセンスです。まるで、内容がレッドゾーンであることを物語っているかのようです。 『野球賭博』は、実は野球をテーマにした劇画短編集なのですが、プロ野球や高校野球で1軍に上がれないまま落ちぶれていった日陰男たちの悲哀をテーマにしています。普通の野球選手がテーマのマンガではなく、「落ちぶれた野球選手」専門のマンガです。すごいコンセプトですよね。  たとえば、第1話は、ドラフト5位でスターズ(明らかに巨人がモデル)に入団したもののフォーム改造で肘を壊し、結局1軍に上がることができずに解雇になった滝田という男の物語です。  球団の無理な投球フォーム改造のせいで人生を狂わされたことを恨んでいる滝田は、なんとハンク・アーロンの755本塁打の記録にあと1本と迫ったスターズの剛選手(明らかに王貞治氏がモデル) を誘拐するという暴挙に出ます。そして身代金1億円を奪い取った挙げ句、剛選手を殺してしまおうという計画です。100%逆恨みですね。  剛選手誘拐の一報を聞いた刑事たちは…… 「畜生! なんてことしやがる。明日の中日戦には来々軒の上カツ丼がかかってるってぇのに!」  なんと、剛選手が記録達成するかどうかでカツ丼を賭けていた模様。  結局、最終的には逃走中に警察によって銃で撃たれて殺されてしまう滝田。世にも悲惨なお話です。この話をまとめると、次のようになります。  プロ野球入団→球団による投球フォーム改造→肘を壊す→2軍でくすぶり続けた後、引退→テレビに出てるスター選手に嫉妬→その選手を誘拐→全国に指名手配→警察に銃で撃たれて死亡  プロ野球選手として大成できなかった末路が銃殺という、なんという転落人生……。こんな感じで、日の当たらない野球選手たちの切ない話が盛りだくさんなわけですが、やはりメインとなるのは第2話の野球賭博ネタの話です。タイトルは「ハンディ師竜二」。  主人公はタイトルの通り、ハンディ師の東竜二という男です。野球賭博にはハンディ師と呼ばれる、野球の試合に独自のハンディを設定して賭けを盛り上げるための仕掛け人が存在します。  ハンディ師の竜二は、現在はヤクザですが、元プロ野球選手で関西一の凄腕のハンディ師と呼ばれています。 「竜二、明日のハンディは何点や」 「パイレーツに2.5点やな!(くわっ)」  みたいな感じの会話でハンディが設定されます。たとえばジャイアンツVSタイガースの試合で、絶好調のタイガースが圧倒的大差で勝利すると思われる場合は、ハンディ師はタイガースに2.5のハンディを課します。その場合、実際の試合でタイガースが2点差で勝ったとしても、賭けの世界では負けとなります。  ちなみに、0.5というのは、実際の試合が引き分けに終わった場合でも白黒をはっきりさせるために設定されています。こうやって、ハンディ師のさじ加減で、実際には大差がつきそうな試合でも緊迫感を煽ることができるのです。そのためハンディ師は、元プロ野球選手のような相当プロ野球に詳しい人物がやるのです。  ……って、やたらルールを詳しく書いちゃってますが、よい子のみんなはくれぐれもやらないように!  さて、そんな凄腕のハンディ師竜二ですが、客の挑発に乗って「八百長賭博」に手を出してしまいます。実際のプロ野球選手を脅迫するなどして、勝敗に関わるような八百長をさせてしまう行為です。  目をつけたのはパイレーツのエース投手、尾形。実は、竜二とは甲子園時代のライバルでした。尾形投手は、なんと4日連続登板をするなど超人的な活躍をしていたのですが、実はドラッグの「スピード」をやってギンギンになって投げていたのでした。それに気づいた竜二は登板前にスピードを飲む瞬間をカメラで撮影し、それをネタに脅迫したのです。そもそも、試合中にドラッグやってるエースってのも、かなりありえない感じですが……。  しかし、今でも野球を愛しており、高校時代ライバルだった尾形を苦しめたことに良心の呵責を覚えた竜二は、もう八百長はしないと誓うのです。ところが、八百長賭博がめちゃくちゃ儲かることを知った組長たちは、竜二にもっと尾形に八百長をやらせるように命令します。抵抗した竜二は組と仲間割れ……。  腹をドスで刺されながらも球場に駆けつけ、試合中に苦悩している尾形の目の前でネガを焼き捨てる竜二。 「尾形、これであんたは自由の身や! もう何も恐れることはないで!」 「いいんだな、力いっぱい投げていいんだな、東」  野球を愛するひとりの男として、最後の良心が働いたのです。しかしその後、組からの刺客に刺され、力尽きてしまう竜二。 「歓声や…大歓声や、わ、わしは帰って来たんや、この歓声の中に…」  なぜか最後はちょっと泣ける話ふうになっていますけど、八百長賭博を始めたのは竜二本人ですので、どう考えても自業自得です。しかも、自分が歓声の中に帰って来たとか言ってるのも明らかに勘違いですし。  というわけで野球賭博に関わったがために、悲惨な末路を迎えてしまったハンディ師竜二の話でした。繰り返しますが、こんな悲惨な末路が待っていますので、賭博にはくれぐれも手を出さないように! あなたの人生が登録抹消されても知りませんよ!

パクリ度ゼロ! デザイン業界激震の独創的すぎるファッションマンガ『こっとん鉄丸』

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『こっとん鉄丸』(あおきてつお/小学館)
 東京五輪のエンブレム騒動以来、いろいろと激震が走っているデザイン業界。“この素晴らしいアートも、実はパクリなんじゃないか”と疑心暗鬼になる、悲しい風潮になってきちゃっていますよね。  とりわけファッション・アパレル業界では、そういうパクッたパクられたのトラブルは顕著のようで、どこぞのファストファッションブランドがシャネルをパクッただの、エルメスとそっくりだの、ボタンの数が違うだけだの、そっくりなようだけど素材が違うから別物だのと複雑怪奇な様相を呈しています。  しかし、今回ご紹介する『こっとん鉄丸』では、まったくその心配がありません! どう考えても完全オリジナル、独創的すぎてドン引き! 誰もパクろうとする気すら起こらないレベルに達しているデザインが次から次へと飛び出してきます。パクッて当たり前の今の時代に強烈なメッセージを投げつけてくる、オリジナリティあふれるマンガなのです。 『こっとん鉄丸』は1987年から「週刊少年サンデー」(小学館)で連載された、少年誌としては珍しいファッションデザイナーマンガです。一見、少年マンガでファッションを語られてもあまりニーズがなさそうですが、バトルの要素を巧みに取り入れ、しっかり少年マンガとして成立させています。  主人公の山田鉄丸は、世界一のファッションデザイナーを目指す少年。原宿を舞台に、いろんな有名ショップや悪徳デザイナーに難癖をつけてファッション勝負を挑みます。他人様のファッションに文句をつけて勝負を挑むぐらいですから、主人公の鉄丸は相当なファッションセンスを持っているに違いありません。いったいどんなおしゃれボーイが主人公なのか?  鉄丸のファッションは、スウェットに横並びにプリントされた巨大な2つのチェック柄の胸ポケット。ズボンにも胸ポケットと同様のチェック柄の巨大膝パットがあてがわれ、ズボンの裾はしっかりとソックスの中にインしているという、独創的すぎる服装。こんなの、パリコレでも見たことありません。  オシャレなのかダサいのか判断がつかない(というか、世間一般的な感覚だと超ダサい)謎ファッションに身を包んだ鉄丸が、原宿で大暴れ。道行く原宿の若者のファッションに、いきなりイチャもんをつけ始めます。 鉄丸「ははーん。これからナンパしに行くんだね?」 若者「そんなの、お前の知ったことかよ!」 鉄丸「ぷぷぷっ! 悪いけどそのまんまじゃ、誰も寄ってこないかもね」  初対面なのに失敬すぎるセリフを放ちつつ、いきなり若者のコーディネートをし始める鉄丸。 鉄丸「ほいっ、できあがり!!」 …じゃじゃーん 鉄丸「ジーンズのすそは絶対ロールアップしたほうがいいよ!」 若者の友達「へーっ! なかなかいいじゃん。カッコよくなったぜ!」 若者「そ、そうか…」  鉄丸のドヤ顔で繰り出されるファッションアドバイス。確かに、ファッションのトレンドは時代とともに変わるもの。今まさに2015年、一回りしてロールアップがカッコいい時代が来つつあります。でもそれを踏まえた上でも、やっぱり全体としては実に微妙な感じに仕上がっております。これはパクれない!  さらに、このマンガはお役立ちファッションマンガ的な側面があり、鉄丸のファッションアドバイスコーナーがちょいちょい挟まれています。参考のために、いくつかご紹介しましょう。 ・国旗のプリントが今年のトレンド ・麻のジャケットはツータックのチノパンと合わせるのがオシャレ ・素足にスニーカーを履くことを強く推奨 ・いつもの服に「ワッペン」をつけるだけでオシャレ服に  などなど、さらに解けにくい靴ひもの通し方、モテるネクタイの結び方、デニムの色の落とし方、靴を買ったらまず防水スプレーをしろ、いま持っている服のボタンを付け替えるだけで途端にオシャレに、等々の明日から使える実践的アドバイスてんこ盛り。実践的なのに、なぜか真似したくないオシャレアドバイスが満載です。  ファッションバトルのハイライトはなんといっても、「ルフォーレ原宿」のショップ出店権をかけて有名ブランド「ヒューマンズ」とジャケット対決をするストーリー。それぞれのブランドのジャケット100着を先に完売したほうが勝ちという単純明快なルールとなっています。  鉄丸と敵対する有名ブランドのパーソ……もといヒューマンズは、ソ連からの直送ルートで格安の麻を手に入れ、普通なら4万円は下らないジャケットを1万5,000円で売るという戦略です。そう、価格のリーズナブルさも勝負のポイントなのです。  一方、鉄丸は麻のコストに頭を悩ませます。そこに妙案が!「コーヒーの麻袋を使えば、タダ同然じゃないか!」えー! 何言ってんの、コイツ?  しかも、麻袋にプリントされたコーヒーのロゴをデザインとしてそのまま利用。 「このスタンプって世界各地のものでしょ? 見てるだけでも夢があるじゃない?」  どう考えても間違った方向のポジティブさで、トントン拍子に話が進んでいきます。 そして、最後はボタンの選定です。コーヒーの麻袋にベストマッチなラフなボタンとは……? 「これだぁ、これだよ!」 なんと、コカ・コーラのフタをボタンにする鉄丸。いや、それはさすがにラフすぎでは? あまりにも貧乏くさ…… 「遊び心満点ね!」 ……ものすごいポジティブさで、ついに鉄丸の麻ジャケットが完成しました。コーヒー豆の麻袋のジャケットにコーラのフタのボタン。そして、着心地を重視して虫取り網の網を裏地に使うというナイス工夫! これでなんと1,000円という、GUもビックリの低価格を実現! ヒューマンズの1万5,000円に対し、1,000円。価格差が歴然すぎます。しかも、センスには定評のある鉄丸デザイン。ジャケット勝負は(デザインではなく)圧倒的価格差で、見事鉄丸が勝利したのでした。  そのほかの対決も、鉄丸の先鋭的すぎるデザインにより負け知らず。さすが世界一のファッションデザイナーを目指すだけのことはあります。  そんなわけで、ユニクロもギャップもしまむらもブッ飛ぶ、超ファッショナブルなマンガ『こっとん鉄丸』。みなさんもぜひ本書を読んで、モテるファッションのコツをマスターしてください。 (文=「BLACK徒然草」管理人 じゃまおくん<http://ablackleaf.com/>)

君は粘土のために死ねるか? 老後に備えて読んでおきたい「陶芸マンガ特集」

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 サラリーマンが定年退職後にやりがちな趣味といえば、そば打ちと陶芸ですよね。どちらも、ある種の男のロマンを感じさせる職人的世界であり、サラリーマン時代に成し得なかったことにチャレンジしてみたいというその気持ちはわからないでもありません。  しかし、そばはともかく、陶芸なんて地味すぎて絶対マンガのテーマにならないだろうと思っていませんか? 実は、陶芸マンガって、結構あるんです。しかも、どいつもこいつも「粘土」に対する執念がハンパなくて、文字通り粘土に命を懸けている奴らばかりです。今回は老後に備えて読んでおきたい、熱い陶芸マンガを4作品集めてみました。
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■『緋が走る』(原作:ジョー指月、作画:あおきてつお)  陶芸マンガの中では、おそらく一番有名な作品。単行本が全15巻出ているだけでなく、『美咲の器―それからの緋が走る』という続編も単行本で9巻出ています。よくぞ、陶芸だけでここまでネタが引っ張れるものだ! と感心せざるを得ません。
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 陶芸といえば男の世界、という先入観を覆し、主人公に女性を据えたところもポイントです。『夏子の酒』とか『ソムリエール』などと同様の手法ですね。  タイトルの通り、陶芸の最高芸術といわれながらもかつて誰も再現できなかった、朱よりも赤く炎より深い色「緋色」の器を作ることが作品のテーマです。主人公・松本美咲は、「緋色(ひいろ)」の器を作ることに陶芸家生命を懸けた父の遺志を継ぎ、女子大生からいきなり陶芸家にジョブチェンジします。  ただ、女子大生がいきなり陶芸家を目指すという設定なので、前半はひたすら地道に修業。土を運んだり、掘り起こしたり、こねまくったりするシーンが続きます。泥だらけで、画的にはとにかく地味。地味ながらグイグイ引き込まれるのは、父娘二代にわたって命懸けで「緋色」を追い求めるというテーマが壮絶すぎるからにほかなりません。
haruka0911
■『ハルカの陶』(原作:ディスク・ふらい、作画:西崎泰正)  こちらも主人公は女子です。OLの小山はるかが、陶芸展で見た備前焼の大皿に感銘を受け、会社を辞めていきなり大皿の作家のもとへ弟子入りしに行くという話です。設定からもわかる通り、『緋が走る』に比べると悲壮感薄めです。というか「陶芸=命懸け」なマンガが多すぎて、こういうライトな設定が逆に斬新という不思議なジャンルになのです。  単行本は3巻出ており、1巻では土を練っているシーンがメイン、2巻ではロクロを回しているシーンがメイン、最終巻となる3巻ではようやっと窯に火が入って……という、これまたひたすら下積みばかりのマンガです。地味なのは陶芸マンガの宿命なので致し方ありません。かわいい女の子が主人公というのが救いです。  ちなみに『緋が走る』は萩焼がテーマとなっており、一見イメージがかぶりそうな2作品ですが、ちゃんと棲み分けされています。
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■『流れ陶二郎 けんか窯』(原作:遠崎史朗、作画:ビッグ錠)  職人バトルマンガの大家・ビッグ錠先生と『アストロ球団』の原作者・遠崎史朗先生のコンビが送り出す陶芸マンガ。タイトルからも想像がつく通り、陶芸バトルマンガであり、リアルさを追求していた上記2作品とはブッ飛び度が段違いとなっています。  主人公の流陶二郎は凄腕の「渡り焼き物師」。渡り焼き物師とは日本全国を渡り歩き、数百万円とも数千万円ともいわれる法外な報酬を受け取って焼き物を焼き、日本各地のピンチに陥った窯元を救うという、助っ人陶芸家です。いわば「陶芸版ブラック・ジャック」みたいな感じです。さすがに陶芸バトルマンガだけあって、陶二郎の常軌を逸した行動が、これでもかと言わんばかりに炸裂。  時価数百万円の茶碗をいきなりで手で叩き割り、その破片をポリポリと食べ始めます。「釉薬は柞灰(いすばい)ですね…」などと、破片を食べることで土や塗料などの陶器の成分をズバリ当ててしまう陶二郎。そこまでしなくても、人に聞けばいいだけのことだと思うのですが、陶芸バトルでは、まずは周りの度肝を抜くことが大切なのです。  萩焼編では陶芸バトルで勝つために、燃えさかる窯の中に直接飛び込んで釉薬を吹き付けるという新製法に挑みます。ちなみに窯は、最高で1400度になるらしいんですが、そんなところに飛び込んで大丈夫なんでしょうか? 答えはノー。当然、全身黒焦げになります。あらかじめ用意をしていた水をかけまくって一命をとりとめますが、文字通り命懸けの陶芸バトル。  瀬戸焼編ではなんと、処女の初潮の血を土に練り込んだという幻の乙女茶碗が登場。芸術のためならばタブーも侵すという、狂気な側面が垣間見られますね。この幻の乙女茶碗を処女の初潮の血を使わずになんとか現代に蘇らせようとする陶二郎と、コンピューター解析で処女の初潮の血と同じ成分を作り、再現しようとする科学者とのバトルになります。  丹波焼編では、エジプトのピラミッドの内部で発見された壺がどうも丹波焼の壺にそっくりなので、それを証明したいというワケのわからない依頼により、ピラミッドの壺とそっくり同じ物を丹波焼で作らされるハメになる陶二郎。ここでは、ライバルの渡り焼き物師「窯神」が登場。  なんとこの話では、渡り焼き物師同士の裏窯勝負に恐ろしい掟があることが発覚。敗れた者は二度と粘土練りができないよう、己の指を打ち砕かなければならないらしいのです。恐ろしい掟ですね。何が恐ろしいって、どう考えても掟が後付けくさいところです。
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■『陶炎』(原作:原田大輝、作画:はしもとみつお)   こちらも、男が主人公の陶芸マンガです。主人公・浜田陶太は、表向きは「自由窯」という窯の主人で、陶芸教室なんかも開催しちゃっているほのぼの系陶芸家ですが、裏の顔は数千万円の報酬で陶芸にまつわるあらゆる揉め事を解決する「裏陶工師」なのです。渡り焼き物師といい裏陶工師といい、とにかく一癖も二癖もある裏稼業っぽい陶芸家が出てくるのがメンズ陶芸マンガの特徴です。  こちらの作品でも、800度の窯の中に飛び込んで全身黒焦げになってみたり、時価数億円の器を叩き割ったり、贋作を作って本物とすり替えたり等々、おおよそ陶芸マンガに期待される陶芸アクションがちりばめられた作品です。さらに焼き物を作って殺人事件を解決してみたりと、陶芸家のスキルを超えるハイスペックぶりを発揮。単行本全2巻ですが、なかなか見応えのある作品となっています。 ***  というわけで、とにかくストイック、とにかく粘土ラブな陶芸マンガの世界をご紹介しました。これらの作品を読んじゃうと、老後にのんびり陶芸でもやろうかな……なんて甘っちょろい考えは吹っ飛んでしまうかもしれません。どうせ陶芸を始めるなら、800度の窯に飛び込むぐらいの覚悟で臨みたいものです。 (文=「BLACK徒然草」管理人 じゃまおくん<http://ablackleaf.com/>)

クドい! めんどくさい! 暑苦しい! この夏オススメの「こだわる男マンガ」4選

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 例年にも増して猛暑日が続く2015年夏ですが、エコ冷房、クールビズ全然意味なし! マンガ読みのみなさんにおかれましては、エアコンをガンガン効かせた部屋に引きこもるのが、この夏を快適に過ごす最も正しいやり方であることは言うまでもありません。  しかし、古来より暑い夏こそ、あえて熱いお茶を飲んだほうが暑さが引くなんていわれていますね。実はマンガもそれと同じ。暑い時ほど読むマンガも暑苦しくてクドいやつのほうが、暑気払いに向いているんです。  そこで今回は、この夏にぜひ読んでほしい、クドくて、暑苦しくて、めんどくさい、マンガのジャンル「こだわる男マンガ」をご紹介したいと思います。そんなマンガのジャンル聞いたことないと思う方も多いかもしれません。それはそうでしょう。ついさっき僕が作りましたから。でも、昨今「やたらとこだわる男が登場するマンガ」がウケていることは事実なのです。  例えば、ドラマ化された『孤独のグルメ』や『食の軍師』、あるいは最近単行本化されてスマッシュヒットしている『その「おこだわり」、俺にもくれよ!!』、これらのマンガはみんな「こだわる男」がテーマです。どうやら今の世の中、こだわる男たちが求められていることは間違いなさそうです。 というわけで、この夏にチャレンジしてほしいおすすめ「こだわる男マンガ」を4作品ご紹介しましょう。
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■『その「おこだわり」、俺にもくれよ!!』(著:清野とおる/ワイドKC モーニング)  『東京都北区赤羽』の清野とおる先生が講談社の「モーニング・ツー」で現在連載中のマンガが『その「おこだわり」、俺にもくれよ!!』です。文字通り、あることにこだわっている「おこだわり」な人たちが毎回紹介されるのですが、その「おこだわり」がどれも一癖あるヤバいやつばかりです。少しだけ紹介しておきますと、 ・ポテトサラダを割り箸でねぶるように食べ続ける男 ・マンションのベランダで生活することにこだわる男 ・さけるチーズをいかに極細に裂くかにこだわる男 ・喫茶店で、あえて「アイスミルク」を頼む男  などなど……客観的に見て、ほんっとにどうでもいいこだわりばかり。でも、それがいい。こだわりがしょーもなければしょーもないほど、内容が反比例して面白くなっているのです。しかもなぜか、この「おこだわり」を自分でも真似してみたくなるのです。僕もこのマンガを読んで、実際にシャノアールでアイスミルクを頼みましたからね。これは、北区赤羽という土地を一大ギャグタウンに変えてしまった「清野とおるマジック」といえるかもしれません。
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■『ネイチャージモン』(著:刃森尊、原案:寺門ジモン/ヤンマガKCスペシャル)  ご存じ、ダチョウ倶楽部の寺門ジモンこと「ネイチャージモン」の奇行っぷりを大胆にフィーチャリングしたルポマンガです。本やテレビなどで、肉へのこだわりがハンパでないことはすでに有名ですが、マンガで読むと、あらためてそのこだわりが尋常ではないというのがわかります。ちなみに単行本表紙の暑苦しさは、「こだわり男」マンガの中でも最凶レベルとなっております。  例えば、ネイチャージモンが東京一の焼き肉屋「スタミナ苑」で焼き肉を食べるために、以下のような儀式をします。 1.事前に30分以上筋トレをする。 2.徒歩で3時間半歩いて店に行く。 3.開店の2時間前から店の前で待つ。 4.待っている際は背中でオーラを出し、店のマスターにプレッシャーを掛ける。  焼き肉食べるだけなのに、すごくウザい! それも、ケタ外れのウザさです。そのほかにも…… ・牛肉が好きすぎて、家畜商の免許を取って松阪牛のセリに参加する。 ・世界最古のステーキを求めてイタリアに行く。 ・世界一のステーキを食べに、日帰りでニューヨークに行く。  などなど、規格外すぎる肉へのこだわりが満載。  また、肉以外にもオオクワガタへのこだわりもすごいです。というかこのマンガ、ほぼ肉とクワガタのことしか描いていません。それなのに単行本9巻も出ているんですから、いろいろ狂っていますよね。
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■『ダンドリくん』(著:泉昌之)  『ダンドリくん』は『食の軍師』と同じ、泉昌之先生(泉晴紀先生と久住昌之先生の合作名)の作品です。基本的に泉昌之先生の作品はすべて、画がクドくて説明がウザいギャグマンガばかりなのですが、この『ダンドリくん』はそんな中でもとりわけウザく、そんなウザさを嗜むために生まれてきたようなマンガといえます。  主人公のダンドリくんは、日常生活におけるダンドリに異常にこだわり、いかに日々を合理的に過ごすかばかりを考えている男です。要するに、すごくめんどくさいヤツなのです。  例えば、朝起きて顔を洗って歯を磨く、そして朝食へという早朝の一連の行為も、ダンドリくんにかかれば、まったく逆の順番になります。飯を食って、歯を磨いて、顔を洗う。そうすれば、最後に顔を拭くだけで全部終了。ムダがありません。  さらに、トイレのドアを開けっぱなしにしてテレビを見ることで、朝の情報収集と用便が同時にできるという合理的アイデアも紹介してくれます。確かに合理的だけど、人としてはどうなんでしょうか……。  このように、役に立つような立たないような、大きなお世話のようなダンドリ流ライフハックが次々と紹介されていきます。  ファッションについても、一家言あります。ダンドリくんの推奨する究極ファッションアイテムはズバリ、ベスト(チョッキ)です! ベストだと冬の暑い日にも脱がなくて大丈夫、夏の寒い日は着ていて大助かり。つまり、冬も夏もいちいち脱ぎ着せずに着っぱなしでいい。そんなハイブリッドさがベストの素晴らしさです。  またベストだと、着る時セーターのように、下のシャツがまくれ上がらないように袖を押さえておいたりするような必要もありません。注射打つ時もいちいち脱がなくてもいいし……ってダンドリくんのベスト推しがウザすぎる!!  こういった比較的どうでもよいことを、いちいちドヤ顔で解説してくるマンガなのですが、ダンドリにこだわりすぎるあまり、かえって非効率になっているダンドリくんを嘲笑ってあげるのが、このマンガの正しい楽しみ方です。
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■『それはエノキダ!』(著:須賀原洋行/モーニングワイドコミックス) 「こだわる男マンガ」の中でも、あらゆるジャンルに異常なこだわりを見せる、オールマイティにウザいマンガが『それはエノキダ!』という作品。  主人公は、物事がキッチリしていないと我慢できない神経質な男「榎田君」。物事がキッチリしていると「キモチE」、キッチリしてないと「キモチ悪い」というのが口癖です。  例えば、エレベーターでは「閉」ボタンを押して出て行く。一見よくある光景ですが、榎田君の場合、あらゆるエレベーターの機種でスムーズに「閉」が押せるように日頃から訓練を積んでおり、ボタンがドアの右にあろうが左にあろうが目をつむったまま「閉」が押せます。  異常に物持ちがいいのも特徴。何かについていた輪ゴム、ケーブルなどを束ねている針金ビニール、クリーニングに出すとついてくるハンガー、刺し身についているワサビや納豆についているカラシなどを生まれてこの方、ずっと捨てずに取ってあり、タンスは4段とも輪ゴムでいっぱい、冷蔵庫の中はワサビやら魚の容器のしょう油だらけ。断捨離の思想とは対極にいる男です。  オーディオへのこだわりも尋常ではありません。 ・ケヤキの無垢材やギリシャ産ラムスキンを使った、36万円最高級ヘッドホンを購入。 ・アンプやスピーカーの振動を抑えるための重しとして、鉛の板80kg・6万8,000円分を購入。 ・銅線の純度が99.99997%、1mあたり10万円のスピーカーケーブルを使用。  など、こだわりのためなら金に糸目をつけない恐るべきピュアオーディオぶりを発揮。  ト○タのハイブリッドカー「プリ○ス」を購入した時の話もかなりヤバいです。 ・徹底的に上り坂を避け、常に下り坂を走り続けるため、目的地にたどり着けない。 ・真夏でもエアコンをつけず、後部座席に巨大な氷を置いて走行。 ・燃費にいい高速道路を使うため、インターチェンジの近くに家を引っ越す。  などなど、究極の燃費走行を極めんとする、クレイジーなハイブリッドカーマニアたちが登場します。明らかにこだわっている方向性がおかしいです。  こんな感じのマンガなので、ページ内が説明、ウンチクだらけで1ページあたりの文字数がものすごく多くて、読んでいるとクラクラしてくる上級者向けの「こだわる男マンガ」です。 ***  というわけで、クドい、めんどくさい、暑苦しい、でもそこがいい、この夏オススメの「こだわる男マンガ」をご紹介してみましたが、いかがだったでしょうか? どのマンガもあきれるほどにクドく、実生活で役に立たない知識であふれています。なんの対策もせずにいきなり読むと、暑苦しくて本当に熱中症になってしまう可能性もありますので、よく水分をとって、涼しいところで読むことをオススメします。 (文=「BLACK徒然草」管理人 じゃまおくん<http://ablackleaf.com/>)

かわいすぎて悶絶! おっさんたちをキュンキュンさせる「もちる女子」って?

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 皆さんは、「いくえみ男子」という言葉をご存じでしょうか? マンガ家・いくえみ綾先生の作品に出てくる男子キャラクターたちのことで、いわゆるイケメンとは違う、塩顔で痩せ形、唇は薄め、オシャレすぎず飾りすぎず等身大。だけど、身近にいそうでいない。草食系なようで、実は肉食なロールキャベツ男子……ってどんな男子なのかサッパリ想像がつきませんね。とにかく、いくえみ綾先生の描く男子は女子を胸キュンさせてやまないのです。いくえみ男子だけを特集した『いくえみ男子スタイルBOOK』(集英社)なんてムック本まで出ているほど、もはや確固たるブランドを確立しているといえます。  少女マンガ界には「いくえみ男子」がいるのに、少年マンガ・青年マンガの世界には「○○女子」は存在しないのでしょうか? 残念ながら「いくえみ男子」ほど確固たるブランドを確立したキーワードはなさそうです。そんな中で今、新たに提唱したい「○○女子」があります。それは、星里もちる先生の作品に出てくる女子キャラクター、すなわち「もちる女子」であります。  星里先生のマンガに出てくる女子キャラクターは、いわゆる萌えマンガのかわいさとは系統が異なる、万人に愛されるかわいさを持っています。そんなかわいい女子たちが、冴えない主人公に惚れるというのが星里マンガのお決まりのパターン。しかも二股、三股あり、ハーレム設定ありと、男のロマンがトゥーマッチに盛り込まれています。僕たちがこの冴えない主人公に自分を投影させてしまった瞬間、胸のキュンキュンが止まらない“もちるワールド”が始まってしまうのです。  もちる女子のタイプは、多岐にわたります。癒やし系・ドジッ娘・不思議ちゃん・妹系・お姉さん系・ツンデレ系、ロングヘアーにショートヘアー、幼なじみから会社の後輩まで、我々ミドルエイジ男子が惚れがちな、あらゆる女子タイプが登場します。しかも、そのほぼすべてのキャラクターがかわいく魅力的。今回は、そんな「もちる女子」登場作品の中から、特にキュンキュンできるおすすめ作品をご紹介します。
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■『りびんぐゲーム』  星里先生の代表作といえば、『りびんぐゲーム』を思い浮かべる人も多いでしょう。主人公は、中小企業ナミフクDMサービスのちょっと冴えない若手社員、不破雷蔵(ふわ・らいぞう)。  雷蔵の職場、ナミフクDMサービスはオフィス移転に失敗し、急遽主人公雷蔵のアパートの部屋を無理やりオフィスにすることに。雷蔵は、自分の生活空間を会社に占領されてしまいます。  この時点ですでにありえない展開なのですが、さらに中卒15歳の女の子、氷山一角(ひやま・いずみ)が雷蔵の後輩として入社。このいずみこそ、同僚であり、後輩であり、妹的存在でもあり、恋人でもある、我々男子の理想を詰め込んだ「もちる女子」なのです。  いずみは、15歳のため自分一人ではアパートを借りることもできず、やむを得ず会社……つまり、雷蔵の家に住み込むことになります。冴えないサラリーマンが自分に好意を持つ15歳の女の子と一つ屋根の下で同居、しかも顔はあどけないくせに大人顔負けのエッチなカラダを装備しているという……なんという淫行スレスレの展開でしょうか。  2人きりのシーンでは、「先輩、あたしのこと、嫌いですか? それとも……なんとも思ってませんか?」などの年上殺しのセリフが次々飛び出す、うらやまけしからん展開がひたすら続きます。もし自分が雷蔵の立場だったら……手を出さずに我慢できるのか? 16歳になったら、手を出してもいいのか? 等々、男子読者の妄想は無限に広がっていくのです。自分、40代ですけど、胸キュンいいすか?
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■『夢かもしんない』  こちらは、星里版『ゴースト』とでも言うべきラブコメ作品です。主人公、加勢晴夫は妻子持ちですが、ワーカホリック気味で家族を顧みないため、夫婦仲は冷め始めています。  日々の生活にお疲れな加勢の前に突然現れた幽霊の女の子、夢野すみれ。すみれはなぜか加勢の前にだけ現れ、仕事も家庭もうまく行っていない加勢を「ハッピーにしてあげる」と明るく励ましてくれます。そんなすみれの正体は、若くして亡くなった人気アイドルだったのでした。  さらに、加勢は会社の後輩、佐藤ひろみ(癒やし系)に慕われ、「今日は一人に……しないで下さい……」なんて先輩殺しのセリフを繰り出された結果、不倫関係になってしまいます。でも、不倫のシーンすらも爽やかで全然ドロドロしてないあたりが、星里先生の手腕を感じます。  果たして、このまま加勢の家庭は壊れてしまうのか? そして、すみれが加勢の前に現れた目的とは!? 妻と、娘と、会社の後輩と、アイドルの幽霊。つまり、3人+1ゴーストの女子たちに囲まれて、いろいろヤキモキしちゃうラブコメです。
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■『オムライス』  一つ屋根の下、美女に囲まれて生活したい、そんな男のロマンであるハーレム状態をついに実現してしまったマンガ、それがこの『オムライス』です。  主人公・今井光は、ワケありのバツイチ無職青年。そして、登場する女子たちは今井珠子(歯科医)、羽子(アーティスト系)、葉子(女子大生)、緑(不思議ちゃん)という美人四姉妹。  無職で生活に困窮していた光は、ひょんなことから同じ今井姓というだけの理由で、今井四姉妹の住む家に居候することになります。マンガとはいえ、ここまで豪快かつ無理やりなハーレム設定は、なかなかお目にかかれません。  光は、今井四姉妹の四女、緑(不思議ちゃん系)と恋仲になるのですが、途中から光の元嫁、稲森はるなが光のことが忘れられず押しかけ、元女房として今井家に居候するようになり、緑とはるなの奇妙な三角関係が勃発。 結果として、女子5人の中に男1人というハーレム状態、それって、どう考えてもエロゲの設定だろといわんばかりのカオスさで、これまたうらやまけしからんのですが、一つ屋根の下に男女が入り乱れる異常な雑居状態でもごく普通にラブコメを展開してしまうのが星里作品の特徴であり、「住宅ラブコメ」の伝道師といわれるゆえんでもあります。
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■『ルナハイツ』  『オムライス』で実現した男の夢、ハーレム状態をさらにパワーアップさせたのが、この『ルナハイツ』です。  主人公は、婚約者・友美によって一方的に婚約破棄された男、南條隼人。南條は新婚生活を送るために購入した一軒家を、ローンの支払いのために女子寮として会社に提供することになります。しかし、家主である南條は男一人、その女子寮(ルナハイツ)に同居することになるのです。  今風にいえば、シェアハウスってことなんでしょうけど、やっぱり女子の中に男一人というのが普通のシェアハウスとは根本的に違うところです。ハーレムシェアハウスです。いやー、ありえない。でもうらやましい…・・・。なぜこんな夢設定を毎回考えつくんでしょうか。  同居する女子寮メンバーは大月窓明(おおつき・まどり)、日高りん、茅ヶ崎裕子、土屋重子の4人。この中で、ヒロインのまどり(サバサバ系)と、りん(ロリ系)が南條をめぐって三角関係に。さらに南條を振った元婚約者・友美が浮気相手との子を宿した妊婦姿で登場。普通に考えると、どのツラ下げて……って感じなのですが、なんと友美も同居してしまいます。ここまでいくと、カオスすぎて胸キュンどころではありません。 ***  そんな感じで、男のロマンをこれでもかといわんばかりに過積載したモテ設定。読後感のいい、ほのぼのストーリー。そして、なんといっても、ほぼ全員がかわいい「もちる女子」……。星里先生の作品は、今宵もおじさんをキュンキュンさせてやまないのです。おじさんおじさん言ってますが、青年誌の掲載作品が多いというだけで、おじさん以外でももちろん楽しめますよ。 (文=「BLACK徒然草」管理人 じゃまおくん<http://ablackleaf.com/>)

『孤独のグルメ』の原作コンビが描く、究極散歩マンガ『散歩もの』

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散歩もの』(作画・谷口ジロー、著・久住昌之)
 この世で最も奥が深く、老若男女が楽しめるアウトドアスポーツといえば、ズバリ「散歩」ではないでしょうか。健康診断で肉体年齢が60代と診断された、筋金入りのインドア派を自称する僕でも可能なスポーツ、それが散歩。散歩・イズ・ビューティフル。まあ……散歩がスポーツなのかどうかは、別途議論が必要なところですが。  今回は、そんな散歩がテーマのマンガ『散歩もの』をご紹介します。「散歩」がテーマのマンガなんて、一体どうやってオチをつけるんだ? と思う方もいらっしゃるかと思うのですが、そこは心配ご無用。実は、本作品は『孤独のグルメ』の名コンビ、谷口ジロー先生と久住昌之先生の作品なのです。本作品も『孤独のグルメ』同様、毎回これといったオチはなく、フワッとした感じで終わりますが、それでいてちゃんとした作品として成立しているのです。 『散歩もの』は通常のマンガ雑誌ではなく、「通販生活」(カタログハウス)という雑誌に掲載されていました。この掲載誌の渋さこそが、「散歩」というニッチなテーマのマンガを実現できる理由だともいえます。  テーマが違うとはいえ、谷口先生と久住先生のコンビ作品ですから、当然『孤独のグルメ』のテイストが色濃く出ており、読めば読むほどに『孤独のグルメ』のスピンオフ作品ともいえる雰囲気を感じます。特に、作品中に出てくる食事のシーンなどは、かなり孤独のグルメっぽいです。  ただし『散歩もの』は、あくまで散歩マンガなので、グルメではなく散歩がメイン。主人公である中堅文具メーカーの部長、上野原譲二が休日や仕事中にいろいろな場所をフラッと散歩して、古い町並みを見たり、雑貨を見つけたりしてはその心象風景をつづるという、これが全盛期のジャンプだったら、3話目ぐらいで強制的に途中からバトルものに方向転換させられかねない地味な内容です。もし散歩バトルマンガがあれば、それはそれで読んでみたい気もしますけど。  でもまあ、読者層はきっと「散歩の達人」(交通新聞社)とか「おとなの週末」(講談社)とか読んでいそうなアダルティな人たちを狙ってるわけですから、これでいいわけです。そういう意味では、孤独のグルメ以上にディープで読み手を選ぶ作品といえましょう。  主人公、上野原は妻帯者、中小企業の中間管理職という設定で、独身貴族の孤独のグルメ・井之頭五郎とは異なり、なかなかのリア充っぽさが漂います。しかし、作品が醸し出す雰囲気が酷似しているのは、どっちの主人公も頑固で結構変わった性格をしているからなんだと思います。  上野原は、とにかく散歩にかける情熱が人並み以上のものがあります。奥さんの頼まれ物の途中とか、仕事中の出先とかでもお構いなしにガンガン脇道にそれて、散歩モードに突入してしまいます。  自分のことを「散歩の天才」って言うぐらいの散歩好き。自称、散歩の天才……。うーん、実に微妙な響きです。さらに、頑固なまでの懐古主義者でもあります。 「俺は街を上へ上へ開発していくのって嫌いなんだよ」  上野原は、高層ビルなどの建築が大っ嫌い。それこそ、六本木ヒルズとか東京ミッドタウンは最悪なんでしょうね。その一方で、大正とか昭和の香りのするノスタルジックな建物は大好きな模様です。  そんな古めかしい店に入っては、普通の人が興味を示さないような渋い雑貨を衝動買いして帰ってくるという、奇妙な性癖(?)もあります。  慶応元年からやっている草履屋に興味を示して、いきなり草履を衝動買いしたり、ちょっとイイ感じの雑貨屋を発見して、エジソン電球なるレトロな電球を衝動買いしたり。いきなりエジソン電球とか買ってきて家に取り付けられても……そりゃ奥さんもあきれちゃいますよね。  そのほかにも、仕事途中に昔ながらの井戸を見つけて、テンション上がってしまい、井戸水をガンガンくみ出していたら、住人に怒られてしまったり。一企業の部長としてはなかなか行動がアレですよね。  そんな上野原の散歩にかける熱い思いがヒシヒシと伝わってくる、散歩原理主義者ともいえる数々の名言(しかも、ほとんどが独り言)をご紹介しましょう。 「テレビや雑誌で見た場所へ出かけていく散歩は、散歩ではない」    後でも出てきますが、散歩にガイドブックは不要というのが上野原の持論です。迷ったら、それはそれでいいじゃないか的な。つまり、「東京ウォーカー」(角川マガジンズ)、「るるぶ」(JTBパブリッシング)あたりで下調べしてから行くのは観光であって、散歩ではありません。もちろん、ネットで調べるというのもアウトです。 「理想的なのは、『のんきな迷子』」  どうやら、積極的に迷うのを推奨している模様です。確かに、散歩は無計画なぐらいなほうが楽しいかもしれません。もはや、この男にカーナビは不要に違いありません。 上野原の散歩論はさらにディープに、坂道についても熱く語ります。 「あー、いいねえ坂道だ」 「わあ、素晴らしいスロープだ」  目白の坂道に感動しまくり! 確かに、すごい坂道を見つけるとテンションが上がってしまうのは、なんとなく理解できますが……。 「こっちの坂もいいぞ」  別の坂道にも食いつく上野原。坂道がいいとか悪いとか……基準がよくわかりませんが、これは相当な坂道マニアですね。もしかしたら、坂道にエクスタシーを感じるタイプなのかもしれません。 「傾斜した道は使いにくい」 「だから工夫しなきゃならない」 「そういうのが街の味になってるんだな」  坂道文化を語り続けます。もはや、オッサンが散歩の最中に発する単なる独り言とは思えないほどのクオリティ。散歩の天才と呼ばれるには、このぐらいの域に達していなければならないようです。そういえばタモリさんも「日本坂道学会」なるものを設立しているぐらいですし、坂道にはどこか人を惹きつけてやまない魅力があるのかもしれません。  続いて、東京・吉祥寺の路地裏「ハーモニカ横丁」の日本一狭いカレー屋での一幕。路地裏文化に興味を示す若者カップルとの会話で、たいそうご機嫌な上野原です。 「吉祥寺の良心ですよ」  吉祥寺の良心……こういうクサいセリフは、相当吉祥寺ラブでないと言えないセリフです。しかし、若者たちがハーモニカ横丁のガイドブックを作りたいなどという発言をした途端、説教モードに。 「こういう路地はガイドなんかに頼らないでただ歩くのが楽しいんじゃない?」  独自の路地論を展開。ガイドに頼るのは散歩じゃないんだ、邪道だ、と。とにかく路地は自力で散策するのが粋なのだと力説します。まさに、散歩原理主義ならではですね。 「ちょっと不安なぐらいがいいんじゃない? 歩けば必ず面白い店やものが発見できる、そんな路地ですよ」  若者は完全にキョトン顔です。言いたいことはわかりますが、ここまでいくと老害……いやいや、日本の明日を担う若者たちに散歩の本当の楽しさを伝えたい一心での発言ですよね。わかります。この若者も今後はきっと改心して、ガイドなど持たずに路地裏を徘徊することでしょう。  というわけで、かつてないほどに硬派な散歩論が展開される究極の散歩マンガ『散歩もの』。いかがだったでしょうか? たまに散歩する程度の人からディープな坂道マニアの人まで、散歩をする人にはぜひ一度手に取って読んでいただきたい、そんな奥深い作品です。 (文=「BLACK徒然草」管理人 じゃまおくん<http://ablackleaf.com/>)

『孤独のグルメ』の原作コンビが描く、究極散歩マンガ『散歩もの』

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散歩もの』(作画・谷口ジロー、著・久住昌之)
 この世で最も奥が深く、老若男女が楽しめるアウトドアスポーツといえば、ズバリ「散歩」ではないでしょうか。健康診断で肉体年齢が60代と診断された、筋金入りのインドア派を自称する僕でも可能なスポーツ、それが散歩。散歩・イズ・ビューティフル。まあ……散歩がスポーツなのかどうかは、別途議論が必要なところですが。  今回は、そんな散歩がテーマのマンガ『散歩もの』をご紹介します。「散歩」がテーマのマンガなんて、一体どうやってオチをつけるんだ? と思う方もいらっしゃるかと思うのですが、そこは心配ご無用。実は、本作品は『孤独のグルメ』の名コンビ、谷口ジロー先生と久住昌之先生の作品なのです。本作品も『孤独のグルメ』同様、毎回これといったオチはなく、フワッとした感じで終わりますが、それでいてちゃんとした作品として成立しているのです。 『散歩もの』は通常のマンガ雑誌ではなく、「通販生活」(カタログハウス)という雑誌に掲載されていました。この掲載誌の渋さこそが、「散歩」というニッチなテーマのマンガを実現できる理由だともいえます。  テーマが違うとはいえ、谷口先生と久住先生のコンビ作品ですから、当然『孤独のグルメ』のテイストが色濃く出ており、読めば読むほどに『孤独のグルメ』のスピンオフ作品ともいえる雰囲気を感じます。特に、作品中に出てくる食事のシーンなどは、かなり孤独のグルメっぽいです。  ただし『散歩もの』は、あくまで散歩マンガなので、グルメではなく散歩がメイン。主人公である中堅文具メーカーの部長、上野原譲二が休日や仕事中にいろいろな場所をフラッと散歩して、古い町並みを見たり、雑貨を見つけたりしてはその心象風景をつづるという、これが全盛期のジャンプだったら、3話目ぐらいで強制的に途中からバトルものに方向転換させられかねない地味な内容です。もし散歩バトルマンガがあれば、それはそれで読んでみたい気もしますけど。  でもまあ、読者層はきっと「散歩の達人」(交通新聞社)とか「おとなの週末」(講談社)とか読んでいそうなアダルティな人たちを狙ってるわけですから、これでいいわけです。そういう意味では、孤独のグルメ以上にディープで読み手を選ぶ作品といえましょう。  主人公、上野原は妻帯者、中小企業の中間管理職という設定で、独身貴族の孤独のグルメ・井之頭五郎とは異なり、なかなかのリア充っぽさが漂います。しかし、作品が醸し出す雰囲気が酷似しているのは、どっちの主人公も頑固で結構変わった性格をしているからなんだと思います。  上野原は、とにかく散歩にかける情熱が人並み以上のものがあります。奥さんの頼まれ物の途中とか、仕事中の出先とかでもお構いなしにガンガン脇道にそれて、散歩モードに突入してしまいます。  自分のことを「散歩の天才」って言うぐらいの散歩好き。自称、散歩の天才……。うーん、実に微妙な響きです。さらに、頑固なまでの懐古主義者でもあります。 「俺は街を上へ上へ開発していくのって嫌いなんだよ」  上野原は、高層ビルなどの建築が大っ嫌い。それこそ、六本木ヒルズとか東京ミッドタウンは最悪なんでしょうね。その一方で、大正とか昭和の香りのするノスタルジックな建物は大好きな模様です。  そんな古めかしい店に入っては、普通の人が興味を示さないような渋い雑貨を衝動買いして帰ってくるという、奇妙な性癖(?)もあります。  慶応元年からやっている草履屋に興味を示して、いきなり草履を衝動買いしたり、ちょっとイイ感じの雑貨屋を発見して、エジソン電球なるレトロな電球を衝動買いしたり。いきなりエジソン電球とか買ってきて家に取り付けられても……そりゃ奥さんもあきれちゃいますよね。  そのほかにも、仕事途中に昔ながらの井戸を見つけて、テンション上がってしまい、井戸水をガンガンくみ出していたら、住人に怒られてしまったり。一企業の部長としてはなかなか行動がアレですよね。  そんな上野原の散歩にかける熱い思いがヒシヒシと伝わってくる、散歩原理主義者ともいえる数々の名言(しかも、ほとんどが独り言)をご紹介しましょう。 「テレビや雑誌で見た場所へ出かけていく散歩は、散歩ではない」    後でも出てきますが、散歩にガイドブックは不要というのが上野原の持論です。迷ったら、それはそれでいいじゃないか的な。つまり、「東京ウォーカー」(角川マガジンズ)、「るるぶ」(JTBパブリッシング)あたりで下調べしてから行くのは観光であって、散歩ではありません。もちろん、ネットで調べるというのもアウトです。 「理想的なのは、『のんきな迷子』」  どうやら、積極的に迷うのを推奨している模様です。確かに、散歩は無計画なぐらいなほうが楽しいかもしれません。もはや、この男にカーナビは不要に違いありません。 上野原の散歩論はさらにディープに、坂道についても熱く語ります。 「あー、いいねえ坂道だ」 「わあ、素晴らしいスロープだ」  目白の坂道に感動しまくり! 確かに、すごい坂道を見つけるとテンションが上がってしまうのは、なんとなく理解できますが……。 「こっちの坂もいいぞ」  別の坂道にも食いつく上野原。坂道がいいとか悪いとか……基準がよくわかりませんが、これは相当な坂道マニアですね。もしかしたら、坂道にエクスタシーを感じるタイプなのかもしれません。 「傾斜した道は使いにくい」 「だから工夫しなきゃならない」 「そういうのが街の味になってるんだな」  坂道文化を語り続けます。もはや、オッサンが散歩の最中に発する単なる独り言とは思えないほどのクオリティ。散歩の天才と呼ばれるには、このぐらいの域に達していなければならないようです。そういえばタモリさんも「日本坂道学会」なるものを設立しているぐらいですし、坂道にはどこか人を惹きつけてやまない魅力があるのかもしれません。  続いて、東京・吉祥寺の路地裏「ハーモニカ横丁」の日本一狭いカレー屋での一幕。路地裏文化に興味を示す若者カップルとの会話で、たいそうご機嫌な上野原です。 「吉祥寺の良心ですよ」  吉祥寺の良心……こういうクサいセリフは、相当吉祥寺ラブでないと言えないセリフです。しかし、若者たちがハーモニカ横丁のガイドブックを作りたいなどという発言をした途端、説教モードに。 「こういう路地はガイドなんかに頼らないでただ歩くのが楽しいんじゃない?」  独自の路地論を展開。ガイドに頼るのは散歩じゃないんだ、邪道だ、と。とにかく路地は自力で散策するのが粋なのだと力説します。まさに、散歩原理主義ならではですね。 「ちょっと不安なぐらいがいいんじゃない? 歩けば必ず面白い店やものが発見できる、そんな路地ですよ」  若者は完全にキョトン顔です。言いたいことはわかりますが、ここまでいくと老害……いやいや、日本の明日を担う若者たちに散歩の本当の楽しさを伝えたい一心での発言ですよね。わかります。この若者も今後はきっと改心して、ガイドなど持たずに路地裏を徘徊することでしょう。  というわけで、かつてないほどに硬派な散歩論が展開される究極の散歩マンガ『散歩もの』。いかがだったでしょうか? たまに散歩する程度の人からディープな坂道マニアの人まで、散歩をする人にはぜひ一度手に取って読んでいただきたい、そんな奥深い作品です。 (文=「BLACK徒然草」管理人 じゃまおくん<http://ablackleaf.com/>)

金、女、野望、復讐……柳沢きみお『青き炎』と『DINO』に学ぶ、アウトローな生き方

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青き炎』(実業之日本社)
 女性にとって、結婚したい男と付き合いたい男は違う。金持ちで優しい男が結婚相手としては理想だけど、付き合うんならどこか翳があって、ちょっと危険でワルな感じのする男がいい、というのが昔からの定説ですよね。もちろん、男目線で見ても憧れるのは後者のような男じゃないでしょうか。  今回ご紹介する柳沢きみお先生の『青き炎』と『DINO(ディーノ)』は、まさにそんな主人公が登場します。どちらもイケメンで高学歴、スポーツ万能という誰もがうらやむ天賦の才能を持ちながら、自らの野望達成のため、あえてドス黒い悪の道に進んでいくというピカレスク・ロマンです。  『青き炎』は、金と権力を手に入れるために徹底的に女を利用し、時には殺人も厭わない。そんなダークネスな男の一代記です。  主人公は海津龍一という高校生。成績優秀、スポーツ万能、おまけにイケメンという三拍子そろった男子なのですが、高校では友達を作らず、部活にも所属せず、おまけに家族とも折り合いが悪く、父親に「何を考えてるのかさっぱりわからん」と見捨てられている状態。筋金入りの一匹狼です。愛想がないので「氷のような人間」として男子からは嫌われていますが、イケメンでクールなので女子からは人気があるのです。性格が激悪でもイケメンならモテるという、実にわかりやすい事例です。  そんな龍一がどれだけ危険でワルな男なのか、ダイジェストで紹介しましょう。個人的には、絶対友達になりたくないタイプです。  高校生なのにホステスを愛人に持ち、しかもその女に貢がせている。  ホステスと二股をかけて、カネ目当てで大病院の娘と付き合う。娘の父親を脅して、手切れ金1,000万円を請求。  頭がいいので、ちゃっかり慶応義塾大学に合格。テニスサークルに入部して、モテモテ。  入部早々、速攻で部長の彼女に手を出して部長の怒りを買い、テニスの試合でボコボコにされるが、サークルを休んでテニススクールで1カ月特訓を積み、部長にリベンジ。今度は龍一が圧倒的な勝利を収め、部長に赤っ恥をかかせてサークルから追い出します。  テニサーと並行して、ディスコの黒服バイトを始めます。女殺しテクに磨きがかかり、ホストやヤクザとも付き合いだして、さらにタチが悪くなります。  究極のお金持ち、住菱財閥のお嬢様に目をつける。お嬢様がラグビー好きと見るや、ラグビー部にサクッとくら替え。運動神経バツグンなので、すぐに大学の代表選手に選ばれる。もちろん龍一の狙いは、住菱財閥に婿入りしてカネと権力をゲットすることです。  住菱財閥の婿入りが不可能と見るや、6つのビルを所有する未亡人オバさんにターゲットを変更。オバさんを言葉巧みに口説き落とし、結婚にこぎ着けた後、速攻で交通事故に見せかけて殺してしまい、念願のビルオーナーとなります。そしてババア殺しの疑いをかけてきた親戚は、ヤクザを使って脅して黙らせます。  資産ゲットでついに野望達成かと思いきや、その後の展開では、予想外の転落が待っているわけですが……。 「大企業の社長になれた!? ふん、それがどうだって言うんだ。しょせんサラ公じゃねーか! そんなのになって大喜びしてるヤツもしょせん三流野郎だ!」 「本当のエリートってヤツを教えてやろう。自由に生きていて、若くして成功したヤツだ。それがエリートだ」  龍一のこんなセリフに象徴されるように、社会の歯車たるサラリーマンを徹底的に蔑み、イケメンと明晰な頭脳を徹底的に悪い方へ利用するという、バブルが生んだドス黒いアンチヒーローなのです。
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DINO』(ゴマブックス)
 一方、『DINO』は老舗デパートが舞台であり、主人公の家族を不幸に追い込んだ奴らへの復讐をテーマにした壮大なストーリーです。  主人公の菱井ディーノは丸菱デパート7代目社長、菱井丈一郎の息子です。しかし丈一郎は、丸菱デパートの番頭格であった樽谷一族にクーデターを起こされ、追放されてしまいます。その後、丈一郎は酒に溺れて死亡、母は家を出ていき、ディーノは親戚をたらい回しにされる不遇な少年時代を送ります。  高校に入学したディーノは、父が遺品として、1軒の家とフェラーリ・ディーノ206GTを遺してくれていたことを知って感激し、亡き父のために樽谷一族へ復讐して丸菱デパートを取り返すことを決意します。    いきなりオープニングの「お父さん、いよいよだよ」というセリフのあと「天罰を与えるべき者」という復讐リストがドバーンと出てきます。そこには樽屋一族をはじめ、クーデターに参加した当時の重役たちの名前がズラッと並んでいます。丸菱デパートに潜入して、このリストに載っている奴らに一人ずつ復讐していこうというのです。  復讐のため、養子先の杉野姓を名乗り、杉野ディーノとして東大を卒業後、トップの成績で丸菱デパートに入社。早速、幹部候補生となります。もちろん、イケメンでスタイルも抜群なので、デパート内の女子にモテまくり。新卒のくせに、配属された売り場内の女主任を速攻で口説く手の早さ。さすが、東大卒イケメン。 「なにもこんな30にもなったオバさんを抱かなくても、キミならいくらでもいるでしょ」 「ふう、僕はアナタくらいの年上の人が好きなんだ」  甘いピロートークで、女主任から丸菱デパートの内部事情を夜な夜な聞き出します。もちろんこの女主任は、ディーノが復讐するための情報源にすぎません。そして主任から得た情報を元に、矢継ぎ早に復讐を実行していきます。  最初のターゲットは曽根崎専務。専務に復讐する足がかりとして、コネ入社の息子・曽根崎フロア長を狙います。深夜のオフィスで女子社員とエッチする性癖のある曽根崎フロア長を背後から襲い、素っ裸のまま縛り上げ、翌朝フロア中の晒し者に。  息子の失態により、流通センターに左遷された曽根崎専務。しかし、ディーノの怒りはその程度では収まりません。追い打ちを掛けるように流通センターへ忍び込んで、放火するディーノ。曽根崎専務はショックで心筋梗塞を起こし、再起不能に。そう、これがディーノ流の天罰なのです!  2人目のターゲットは登戸副社長。登戸には溺愛する一人娘・恵がいます。ディーノは松野という偽名で恵に接近し、口説き落とします。そう、東大卒イケメンなら、どんなにうさん臭い偽名でもナオンを口説けるんです!  自宅に呼び寄せ、酒でベロベロに酔わせた恵の裸体を撮影。その写真を登戸副社長宅に送りつけます。登戸は怒りのあまり、朝帰りの娘の首を絞めて殺してしまい、そのまま失脚です。天罰……怖すぎですね。  このようにディーノは女から得た情報を元に、ターゲットのウィークポイントを徹底的に突く、ヤクザ顔負けの発想で冷徹に復讐を実行していきます。なんというガチすぎる復讐。東大卒イケメンのくせに、とんだ大悪党です。  この先も、ラスボスである樽谷会長を目指して着々と復讐を敢行していくのですが、ツッコミどころも豊富な作品です。  まず気になるのが、主人公の菱井ディーノというキラキラネームっぷり。名字を変えて杉野ディーノになっているので、先代社長の息子だとはバレていない、という設定なのですが、そもそもディーノっていう名前が個性的すぎて、普通にバレるだろという気がします。しかし作品の後半になるまでそのキラキラネーム問題はスルーで、散々復讐しまくった「え、今さら?」というタイミングで、ディーノという名前は目立つからマズい……となり、杉野一郎へと強引に改名します。一郎って……急に変えすぎだろ!  そのディーノという名前は、ディーノの父親・丈一郎の遺品でもあったフェラーリ・ディーノ206GTから取られているのですが、息子にスーパーカーの名前をつけるという発想もすごいですよね。そんな作品なので、本編の復讐ストーリーとは関係なく、柳沢きみお先生のフェラーリ偏愛ぶりが遺憾なく発揮されています。作品中にまったく脈絡なく「フェラーリの名車たち」というミニコーナーが割り込んできたり、「この車は男が一人で走らせるためにある。この車は男の汗だけを求める」みたいな、イケてるフェラーリポエムが突然挿入されたりするのも特徴となっています。特にフェラーリに興味がない人には読んでいて違和感がすごいのですが、これが逆にクセになってくるのです。  こんな感じで、最初から全力で悪の道を行く『青き炎』と、復讐という大義名分がありつつも結局人を殺しまくる『DINO』。対照的な2作品なのですが、どちらもダークな主人公を軸としたストーリーがとてつもない面白さで、やっぱりクールでワルな男の生き様はどこまでいっても魅力的なのだ、ということを証明してくれています。今さらながらアラフォーの僕も、『LEON』あたりを熟読してクールなワルを目指さなければ、と思うようになりました。まあ、厄年なので、すでに運勢は十分にワルいんですけどね。 (文=「BLACK徒然草」管理人 じゃまおくん<http://ablackleaf.com/>)

元祖“Lサイズ女子”の圧倒的包容力! 名作ラブコメ『Theかぼちゃワイン』の魅力

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The かぼちゃワイン』(著:三浦 みつる/秋田書店)
 大地の母、母なる海、人間空母……これらの言葉に代表されるように、古来より人は女性に対して雄大さとか母性とか包容力みたいなものを求めてきました(人間空母は関係ありませんけど)。  しかし、残念ながら現代の日本では、自分より小柄な女性を好む男性が多いといわれています。そしてマンガの世界でも、男子のほうが女子よりも高身長なカップル設定が圧倒的に多いです。男子のほうが背が高くて当たり前、という先入観がいつの間にか世の中に浸透してしまっているんですよね。  ところが、そんな先入観をひっくり返す、170センチオーバー、180センチオーバーの高身長女子、すなわち“Lサイズ女子”が活躍するラブコメが近年増えてきています。『富士山さんは思春期』をはじめとして『ハル×キヨ』『Stand up!』などなど、さらには一歩踏み込んで『七つの大罪』のような文字通り巨人族の女子(9メートル級)が登場するマンガもあります。まあ『七つの大罪』は、ラブコメじゃないですけど。とにかく、Lサイズ女子復権の時代が、確実に到来してきているのです。  復権という言葉を使わせていただきましたが、1980年代、元祖Lサイズ女子がヒロインのマンガが人気を集めました。『Theかぼちゃワイン』がそれです。  『かぼちゃワイン』は1981年から「週刊少年マガジン」(講談社)で連載されたマンガで、作者は三浦みつる先生。82年からはアニメ化もされているので、原作は読んでいなくてもアニメは見ていたという人も多いのではないでしょうか。また、『かぼちゃワイン』の正式タイトルに「The」がついていることを知らない人も意外と多いかもしれません。  『かぼちゃワイン』は主人公であり、チビで女嫌いの自称硬派・青葉春助と、大柄ヒロインのエルちゃんこと朝丘夏美の「SLコンビ」によるドタバタラブコメディです。サンシャイン学園中等部に転校してきた春助に、エルちゃんが一目惚れ。一方的にモーションをかけます。しかし、春助は女嫌い硬派のキャラを押し通そうとして、エルちゃんを邪険に扱います。  しかし、エルちゃんのポジティブさや一途さに、次第に自分もエルちゃんに惹かれていることを認め始めます。それでも頑固な春助の性格のせいで、正式なカップル成立には至らない……という、非常にヤキモキさせるストーリー展開です。  春助もエルちゃんも中学生(後半では高校生)なのですが、その身長差はかなりのもので、エルちゃんが片膝をついてしゃがんでいる状態と春助が直立している高さがほぼ同じというシーンがあります。  春助とエルちゃんの身長について公式発表はされていませんが、初期設定ではエルちゃんが175センチで春助が120センチだったといわれています。中学生で120センチって……まさに、大人と子どもですね。  『かぼちゃワイン』の作品の魅力はなんといっても、元祖“Lサイズ女子”エルちゃんの、母なる海を感じさせる圧倒的包容力に尽きます。一方で、主人公の春助はケンカっ早く、トラブルメーカーで、エルちゃんに対する言葉も相当キツいものがあり、恋愛対象としてはかなりどうかと思うところがあります。  例えば、春助のためにエルちゃんがお弁当を作ってくれたシーンでの、春助のセリフ。 「よけえなおせっかいはやめろっていってんだろ! だれがくうかっ、ぜったいにくわねえぞ!」  それに対するエルちゃんのセリフは 「ううんっいいの、いやならしかたないもんっ。あたしってほんとおせっかいだね!」 ……切ないです。  また、レストランで春助とエルちゃんが一緒に食事するシーンでは、ワリカンでお金を払おうとするエルちゃんに対し、 「女におごってもらうなんて男としてカッコつかねえじゃんか」 と、男らしく自分がおごる意思を見せますが、ポケットが破れてお金を落としてしまっており、食い逃げ疑惑で店員とレジでモメ始めます。  結局、エルちゃんが全額立て替えることになるのですが、男のプライドが邪魔して、素直に受け入れられない春助。金がないくせに、頑なに拒みます。その時のやりとりのセリフ。 「春助クンあたしにはらわせて!おねがいっ。ねっ」 「よ……ようし……そんなにたのむんだったら、はらわせてやらァ!」 「ありがとっ。春助クン」  ちゃんと春助のメンツを立てつつ、お金を払ってきっちり場を収めるエルちゃんの懐の深さ……まさに女神です。中学生にしてこんなできた女、そうそういないですよね。  これだけだったら、春助は体も器も小さいサイテー男なのですが、そこは主人公。随所に、エルちゃんに対する気づかいも見られます。  足をくじいた春助の手当てをしようと、自分が住んでいる女子寮に春助を引っ張り込むエルちゃん。男子禁制の女子寮に男を連れ込んだことがバレて、エルちゃんは朝まで食事抜きの独居房のような反省部屋に入れられてしまいます。  責任を感じた春助は、女子寮に再度忍び込み、エルちゃんが幽閉されている反省部屋にこっそりあんパンを差し入れします。喜ぶエルちゃんに対して…… 「い、いいかっ勘違いすんなよ! 別におまえが心配だからきたんじゃねえぞ」  そう、春助は決してエルちゃんが嫌いなわけではないのです、頑ななまでの男ツンデレなのです。もちろん作品連載当時はツンデレなどという概念はありませんでしたが、春助は80年代からすでに孤高のツンデレ男子だったのです。  とにかくエルちゃんは、春助のしでかしたケンカやトラブルを丸く収め、どんなに春助に憎まれ口を叩かれても、常にニコニコして決してへこたれないタフなメンタル。そして、最終的には圧倒的包容力ですべてを包み込んでしまう、中学生にして完成された母性を持つ女なのです。人間関係がギスギスしがちな今の時代だからこそ、エルちゃんのような体もハートもビッグなLサイズ女子が評価されるべきではないでしょうか? Lサイズ萌えの時代は、確実に到来してきていますよ!  ちなみに『かぼちゃワイン』には続編として『Theかぼちゃワイン Another』という作品があります。こちらは27歳、社会人となった春助とエルちゃんの話です。エルちゃんは春助の実家のランジェリーショップで働いており、春助は探偵事務所で働きだすのですが…… 「ねぇ、せっかくだから泊まっていけばいいのに」 「恋人同士でもないのにそんなこと出来っかよ!!」 「気安くキスすんなって言ってんだろ!」  というわけで、27歳になった2人の関係は、中学時代から何も変わっていませんでした。ダメだ、この甲斐性なし男は……。エルちゃん、いくら器がでかいといっても、いい加減キレるべきだと思います。 (文=「BLACK徒然草」管理人 じゃまおくん<http://ablackleaf.com/>)

究極のチャラ男マンガ『Bバージン』は、なぜ非モテのバイブルだったのか?

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『Bバージン』(著:山田玲司/小学館)
 ジュリアナ東京、ワンレン、ボディコン、ヤンエグ、アッシー君、オヤジギャル等々……今はすでに死語になってしまったバブル時代を象徴するキーワードの数々、今の日本では想像できないほどに、あらゆる事象がアホみたいに盛り上がっていた時代でした。  そんなバブル時代の影響を色濃く受けた、『Bバージン』という作品をご存じでしょうか?「週刊ヤングサンデー」(小学館)で1991~97年まで連載されていた、山田玲司先生の代表作です。  今でこそクールジャパンで、アニメオタク・マンガオタク・アイドルオタクなど、自分のオタク属性をカミングアウトしても一定の理解を得られる世の中ですが、90年代はまだ今ほどオタクに市民権はなく、オタクを実生活でカミングアウトすることは、モテるためには絶対的禁忌とされていました。そんな中で『Bバージン』はオタクからモテ男への転身を描いた、当時としては画期的なラブコメであり、多くの非モテ男へ勇気と希望を与えるマンガだったのです。  当時ならいざ知らず、もしいま初めて『Bバージン』を読むと「うわー、何このチャラいマンガ!」という印象を持ってしまうかもしれません。なにしろ出てくるセリフの一つひとつがことごとくチャラチャラしており、「女を落とすならウォッカベースのモスコミュールで!」みたいな口説き方指南もバンバン出てくるという、ここまで徹底的にチャラさに徹したラブコメは当時としても斬新でした。  主人公・住田秋は、高校時代は生物部に所属する生物オタク。女性とは無縁の完全オタクな非モテ青年でした。しかしある日、高校で出会ったヒロイン、桂木ユイに一目惚れします。  一念発起した秋は脱オタク、そして脱非モテを目指して2人の姉と1人の妹に徹底的なイケメンに仕立て上げられます。そして憧れのユイと同じ大学に入学。女子の理想をそのまま体現したようなさわやかイケメンへと改造された秋は、キャンパスのナンバーワン女子、乙丸アリサをもゾッコンにさせるほどのモテっぷりで、童貞のままナンバーワンの女殺しの名を与えられたのでした。  ちなみに作品タイトルの『Bバージン』ですが、おぼっちゃま・お嬢様すぎてヤレない童貞(処女)がAバージン、オタク&非モテでヤレないのがCバージンであり、Bバージンは、モテまくりでやろうと思えばやれるけど、愛する人のために操を立ててヤラないことなのです。Bバージン……なんという高貴な童貞でしょうか!  つまり主人公の秋は、せっかく大学デビューでモテまくりなのに、本命のユイと付き合えるまで誰ともヤラない「宿命のBバージン」という十字架を姉たちにより背負わされていたのです。  この『Bバージン』の魅力のひとつは、冒頭でもご説明した通り、圧倒的なチャラ描写と、軽薄ゼログラビティなチャラいセリフの数々です。会話の一つひとつがチャラすぎて用語解説が追いつかないレベルです。 「彼氏きめてんじゃん。それアニエスの新作だろ。俺もさ、今年はアニエスかなってチェックしたんだ」 「今日はブナンにベルサーチでまとめたけど、ベルトはアルマーニなんだ」 「このあとアザブのクラブ行こうよ。昔のチームの連中がDJやっててさ・・・けっこー基地(ベース)の連中も・・・」 「オータニのバルゴでも行こうか?」 「俺、今日は一応イタリアものできめたかったし、エンポリオだけど」 「アニエスのスーツの後はベネトンでカジュアル・・・お前やっぱわかってるよなぁ」  めまいがするほどのチャラいセリフのオンパレード……。連載当時、ファッションに疎い非モテ予備校生男子だった僕(筆者)には、アニエスだのアルマーニだの言われても、かろうじてどこかの国のファッションブランドなんだろうな程度の知識レベル。ベネトンに至っては、F1に出ているぐらいだから車のメーカーでしょ? という認識でした。ナイキとかアシックスとかアディダスは、よく知ってたんですけどね!  おまけに90年初頭はインターネットなどない時代なので、今のようにわからない言葉をググることもできません。さらに、友達に意味を聞くのも恥ずかしくてできません……というわけで、「エンポリオ(アルマーニ)」の意味がわかったのは『Bバージン』を読み始めてから5年後ぐらいのことですし、「オータニのバルゴ」に至ってはいまだに意味がわかりません。  マンガの中でHOW TOコーナー的な感じで、あからさまに女の口説きテクニックが紹介されているのも斬新でした。当時これを真に受けて実践し、ボッコボコにされた非モテ男子たちは星の数ほどいるのではないでしょうか?(成功した人もいると思うけど) <女のつかみ方 基本1> その娘が強調してるアクセサリーをさりげなくホメる。 「あ・・・そのイヤリングいいね。似合うじゃん・・・」 「そぅおー、ハデかなーとか思ったんだけどー。」 <女のつかみ方 基本2> それにひっかけて本人をほめる 「まあ・・・素材がいいからだろ・・・フツーの娘だとイヤリングに負けそうだもんね」 といった具合に、ものすごく実践的に解説されています。モテたければこの歯の浮くようなセリフをサラッと言えればいいのですが、言えるんだったら非モテはやってませんよね。イヤリングじゃなくて、イカリングなら大好物なんですけどね!  そのほかにも「『○○みたいな』で女をホメる時はわけのわからないハリウッド女優はブナンである」みたいな実践テクも書かれていました。つまり「君ってウーピー・ゴールドバーグみたいだね」とか言えば喜ぶみたいなんですよ。まったく……女心ってやつは意味不明です。  とにかく『Bバージン』連載当時の僕は、大学受験に失敗した後、代ゼミで先の見えない暗い浪人時代を送っており、非モテをこじらせすぎて非モテレベルがMAXでした。そのため『Bバージン』に出てくるチャラ男すぎる大学生のチャラチャラした恋愛ライフがあまりにうらやましくまぶしくもあると同時に、とめどなく殺意が湧くものでありました。  しかし、読んでいくうちに、そのチャラさの厚いヴェールに覆われた作品の本当のテーマが、韓流ドラマも真っ青の究極の純愛であることに気づくのです。そう『Bバージン』こそ、どん底にいる僕たち非モテの心をグッとつかんで離さない非モテのバイブルだったのです。チャラッチャラに装飾されたキャンパスライフが描かれている中にあって、Bバージンを誓って一途にユイだけを追いかける秋の熱さが非モテ達の胸を打つわけです。 「キープだ愛人だって、なんなんだお前達はーっ!! こいつの為なら死んだっていいってのが、恋愛だろ!! それをなんだ、キープだ補欠だって、恋人は物じゃねーぞ!!」 などと、秋は青春映画真っ青の熱いセリフをかましてくれるのです。ここで非モテたちは号泣ですよ。  作品中盤ではだんだんチャラさのヴェールが取れていき、純愛路線、そして熱血路線を経て、秋の生物オタクへの回帰が色濃くなってきます。ユイを狙うライバルとして登場した、Jリーガー候補のサッカー部のエース、佐藤元三(モトミ)とユイを賭けてPK対決するくだりは完全に熱血スポ根友情マンガみたいです。  終盤になると、一流の生物学者になるため、水族館のスタッフとして働き始める秋。イルカを処分するしないで、水族館スタッフの内部紛争に巻き込まれていきます。最後にはシー●ェパードみたいなゴリゴリの武闘派動物愛護団体と手を組んで、水族館内でクーデターを起こし、殺されそうなイルカを東京湾に逃がし、自分も海外逃亡……などというすごい展開に。もはやハードボイルドです。前半のあのモテHOW TOマンガみたいな展開はどこへ行ってしまったのか……。  このように大学生チャラ男編、熱血純愛編、水族館内部紛争編のように激しく方向性が変わっていった作品ではありますが、最後までハイテンションを維持しており、名作と呼ぶにふさわしい作品です。皆さんも本作品を読んで究極の純愛『Bバージン』を目指してみてはいかがでしょうか? 結局のところ、イケメンじゃなければキモチ悪いだけという可能性もありますが……。 (文=「BLACK徒然草」管理人 じゃまおくん<http://ablackleaf.com/>)