国際結婚というと、皆さんがすぐに思い浮かべるのは千昌夫とジェーン・シェパード夫人、梅宮辰夫とクラウディア夫人、川崎麻世とカイヤ夫人、後藤久美子とジャン・アレジ等の華々しい結婚ではないでしょうか。えっ、どれも古いって? 今回ご紹介する『愛しのアイリーン』は、1995~96年まで「ビッグコミックスピリッツ」(小学館)に連載されていた新井英樹先生による作品で、国際結婚がテーマです。しかし、国際結婚といっても、いま挙げたような華やかな事例とはちょっと違い、フィリピン人女性とのトンデモ国際結婚がテーマとなっています。 80~90年代まで、日本人男性がフィリピンに行って嫁探しをし、フィリピン人女性は出稼ぎ感覚で日本に嫁ぐ……そういったスタイルの国際結婚が社会現象になっていました。「ジャパゆきさん」という言葉がはやったり、フィリピン人女優のルビー・モレノが活躍したりしました。『愛しのアイリーン』は、そんな社会情勢に強く影響を受けています。 それはともかく、『愛しのアイリーン』ってタイトル、なんともラブリーでかわいらしいですよね。タイトルだけだと、きっとキュートな女性が登場するあまーいラブコメじゃないか、なんて思う人もいるかもしれません。ところがどっこい、内容は全然かわいくありません。出てくるのは、オナニーとセックスとバイオレンス。主人公は有り余る性欲が抑えられず、「おまんごー!」「メイグラーブ!」と、方言全開で雄叫びを上げたりします。軽い気持ちで読むと、トラウマになる作品ですね。 舞台は、過疎化が進行したとある山村。主人公、宍戸岩男は熊のようなガタイをした大男で、パチンコ店勤務のモテない42歳のオッサンです。同居する家族は年老いた母親・ツルと、認知症が進行している父親・源造……なんとも切なさがこみ上げてくる設定ですね。 1話目から、岩男の非モテエピソードが全開です。仕事から帰ってきて、夜中に親の目を盗んでAVやエロ本を見ながら自慰にふける主人公。その様子を、障子の穴から心配そうにのぞく母。なんともやるせないシーンです。なにより、この42歳独身男にプライバシーが皆無なのがやるせない。母よ、そこはのぞかないでやってくれよ……。 そんな母は、結婚するアテもない息子を不憫に思い、お見合いをセッティングしようとするのですが、岩男は母ちゃんが苦労してセッティングした縁談を頑なに拒みます。 実は、岩男は職場にいる愛子という同僚に惚れていました。バツイチ子持ちの薄幸そうな清楚系美女ですが、岩男に対し、ちょくちょく気があるようなそぶりを見せるため、免疫のない純情中年童貞は、すっかりその気になってしまっていたのです。 ところが、その愛子が清楚な見た目とは裏腹に超お盛んで、パチンコ店の複数の男性従業員とエッチ済みだったのでした。その事実を知って愕然とする岩男は、怒りのあまり愛子の自宅に押しかけるも「ほ…本気だと困るんだわ」と、ガッツリ振られます。その夜、怒りのあまり車で壮絶に事故り、血だるまの状態で雪山に駆け上り、『北斗の拳』のケンシロウよろしく上半身の服をビリビリに引き裂きながら「お…おま…おまんごー」と絶叫。あまりに壮絶すぎるシーンに、読者の大半はドン引き必至。それにしても、非モテをこじらせるとケンシロウ化するんですね。知らなかった……。 さて、ここまでのシーンで6話経過しているのですが、一切タイトルの「アイリーン」がなんなのか触れられていません。まるでスピッツの「ロビンソン」並みに謎の存在でしたが、ここから急展開します。 愛子に振られて失意の岩男は、あっせん業者になけなしの貯金280万円を支払って、フィリピンへ嫁探しに。そして、30人の嫁候補と面談の末、面倒くさくなって決めたのが、18歳の生娘、アイリーンでした。ただヤリたいだけの夫と、カネ目当ての妻。打算だらけの国際結婚が成立します。 しかし、せっかく嫁を連れて帰国した岩男、バラ色のハネムーンどころか、そこからが地獄の始まりでした。岩男が黙ってフィリピンに嫁探しに行っている間に父が亡くなっていたのです。事もあろうに、葬儀中にフィリピン人妻を突然連れて帰ってきたため、母・ツルが激怒。その姿は、まさに鬼婆そのものでした。その後のシーンでは、ツルはアイリーンに猟銃を突きつけ、単なる脅しかと思いきや、本当に発砲。間一髪で逃れたものの、本気でアイリーンを殺しにかかるシーンが何度かあります。こんな恐ろしい婆さん、マンガでもなかなかいないレベルです。 家の敷居をまたげなくなってしまった岩男は、アイリーンとともにラブホテルを転々とする生活を余儀なくされますが、しょせんカネで買った関係。アイリーンが岩男に心を許さず、セックスを拒み続けるため、いまだに初夜を迎えられません。280万円払っても望みがかなわない岩男は、ラブホのベッドを引き裂き、逃げ回るアイリーンに対し「おまんごー」「メイグラーブ!!」「ファッグ ミ ファッグ ミ」と怒りの絶叫。最後は、ホテルの部屋中の器物を破壊しまくります。非モテが極まって、公害レベルの迷惑な存在へと進化! ここまででも十分に常軌を逸している展開なのですが、その後もすごいです。どうしても岩男とアイリーンの結婚を受け入れられないツルは、アイリーンと和解するフリをして家に呼び寄せ、女衒のヤクザ者に売り飛ばします。しかし、ヤクザに車で連れ去られるアイリーンを岩男がカーチェイスの末、決死の救出。勢い余って、ヤクザ者を猟銃で撃ち殺してしまいます。 岩男とアイリーンは、その遺体を人里離れた山中に埋めます。皮肉なことに、結婚後初めての共同作業がケーキカットではなく、死体埋葬でした。そしてその夜、2人は初めて結ばれるのです。 その後、2人は仲睦まじく幸せに……ということは全然なく、人を殺した罪悪感と、殺したヤクザの仲間からの執拗な嫌がらせにより精神崩壊状態の岩男は、同僚の愛子を襲ったり、アイリーンの友人のフィリピーナを買ったりと、女がいれば手当たり次第にセックス三昧で現実逃避に走ります。人を殺した後が一番モテモテ、なんという皮肉でしょうか。 その後はなんと、岩男が途中で死亡。残されたアイリーンとツルが壮絶な嫁姑バトルを展開しますが、最後の最後までドン底すぎる展開が続きます。 実は本作品、農村の少子高齢化や嫁不足問題、後継者問題、そして国際結婚といった複雑な社会問題をテーマとして扱っている作品でもあるのですが、終始狂気に満ちあふれた、気が抜けないストーリーとすさまじい画で、そういった部分をまったく感じさせません。バブルアフターで浮かれ気分の残る世間の風潮に強烈な冷水を浴びせるものすごいマンガ、それが『愛しのアイリーン』だったのです。 (文=「BLACK徒然草」管理人 じゃまおくん<http://ablackleaf.com/>)『愛しのアイリーン』(新井英樹/太田出版)
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親子丼といえば「鮭イクラ丼」!? 地方あるあるマンガ 『北海道民のオキテ』『沖縄県民のオキテ』
埼玉disマンガ『翔んで埼玉』が話題になったことで、地方disマンガというジャンルが、にわかに盛り上がっています。そんな中、『翔んで埼玉』を復刊した宝島社から、続けざまに「この『地方ディス』マンガがひどい!」というムックまで出版されました。編集のスピード感もすごいですが、あけすけな便乗っぷりで商魂たくましすぎ! しかし、「埼玉だとか群馬だとかの関東の話はもういい! ほかの地方マンガが読みたい」という方もいらっしゃるのではないのでしょうか? そんなあなたには『○○民のオキテ』という、地方あるあるマンガシリーズがあります。今回はその中で、南北の両端となる『北海道民のオキテ』と『沖縄県民のオキテ』(KADOKAWA/中経出版)をご紹介しましょう。 『○○民のオキテ』シリーズは現在、北海道、沖縄県、愛知県、福岡県と出ていますが、最初に発売されたのが『北海道民のオキテ』で、続編として『もっと!北海道民のオキテ』が出版されています。 ■『北海道民のオキテ』『もっと!北海道民のオキテ』 札幌支社に転勤になった主人公のまささんが、そこで働いていたもえさんに一目惚れ。晴れて結婚して夫婦になるものの、北海道民のもえさんとの文化の違いに翻弄される……という内容です。 道民の生態っていっても、都民と大した違いはないんじゃないか? と思っていたのですが、まさかここまで桁外れに違うものだとは……。というわけで、東京以外に住んだことがない僕にとって特にインパクトが強かった「オキテ」をご紹介しましょう。 「道民はご飯にバターと醤油をかけた『バターかけご飯』を日常的に食べる」 バターかけご飯って、ビンボー学生なんかが仕方なく食べてる感がありましたが、北海道では常食なんですね。ビンボー食扱いしてすんません。 「北海道ではコンビニでおにぎりを買うと『おにぎり温めますか?』と聞かれる」 東京ではまず聞かれることないので、これは結構、衝撃的です。ビニールを引き抜いて海苔と合体させるタイプのおにぎりは、温めるとかなり食べづらいような気がするんですが……。 「道民にとって親子丼といえば『鮭イクラ丼』のこと」 親子の基準が鮭だったとは、さすが鮭王国北海道。となると、道民は親子丼を鶏卵丼って呼ぶのでしょうか? 「道民が気温を5度とか15度とかいうと、マイナス5度やマイナス15度のことを意味する」 「道民にとってマイナス5度ぐらいなら全然暖かい方」 逆に、0度以上の気温の時にあえて「プラス5度」というらしいです。これは知っておかないと、命にかかわるレベルの文化の違いですね。 「道民はゴミ集積所にゴミを捨てることを『ゴミステーションにゴミを投げる』という」 ステーションって! ゴミが集まる駅、もしくはゴミ収集車が止まる駅ということなんでしょうか? でも、ゴミ集積所より呼び方がカッコイイし、なんかいいかもしれません。「ゴミを投げる」は、ちょっとビビりますけど。 「『ジャスコまで直進110Km』とかいう看板が普通に出ている」 110Kmって、東京からだと熱海(静岡)に行けちゃう距離です。ちょっとした旅行ですよ。買い物に行くのに熱海まで、しかも往復とか……絶対無理。やはり北海道は、“試される大地”だったか。 「道民の7割がセイコーマートのポイントカードを持っている」 以前、北海道に行った時にやたらオレンジ色のコンビニを見かけるなと思っていたのですが、あのコンビニがそこまで普及していたとは。7割って、尋常じゃないですよね。Tカードより、普及率高そう。『北海道民のオキテ』(KADOKAWA/中経出版)
■『沖縄県民のオキテ』 横浜出身のまゆさんが、石垣島でりゅうくんと出会って、沖縄で結婚生活を始めるというストーリーです。読んでみると、沖縄ってもしかして外国? と思わせるエピソードが多いです。こちらも、特にインパクトが強かった「オキテ」をご紹介しましょう。 「沖縄県民は水着にならず服のまま海に入る」 「沖縄県民の6割は、実は泳げない」 沖縄といえば、美しい海のイメージを描く人がほとんどだと思いますが、沖縄県民は海に対してさほど思い入れがないようです。 「沖縄県民は雨が降っても傘をささない」 すぐやむから、すぐ乾くから、面倒くさいからという理由で、ほとんど傘をささないとのこと。そう聞くとびっくりですが、海外ではあまり傘をささない国も多いので、そういう意味では沖縄県民のほうが、感覚がグローバルなのかもしれません。 「沖縄ではマーガリンのことをバターと呼ぶ」 マーガリンはバターの代用品というイメージですが、沖縄県ではマーガリンとバターはほぼ区別がなく、「ホリデーマーガリン」という米国製マーガリンを使うのが主流のようです。親に「バター買ってきて」って頼まれて、マーガリンを買ってきたら激怒された経験を持つ僕としては、にわかに信じられない話です。 「沖縄で魚屋のことを『さしみ屋』と呼ぶ」 沖縄では魚料理といえば、ほぼ刺身のことを言うため、魚屋=さしみ屋になったとのこと。東京で「さしみ屋」っていう看板があったら、どう考えても海鮮居酒屋のイメージですよね。 「沖縄県民は台風がやってくると外出しようとする」 そ、それって死亡フラグじゃないの? って思ってしまいますが、沖縄では台風が来ると、翌日会社や学校が休みになることが多いため、夜遅くまで飲んだり、ボウリング場で遊んだりと、やたらとアクティブになる気質があるとのこと。台風が来ると花金気分か! それはそれでうらやましい……。 「沖縄県では中学・高校の卒業式にメリケン粉(小麦粉)をぶちまけるイベントがある」 少し前に、沖縄で卒業式に投げる用に大量購入したメリケン粉を、校長先生に説得されて寄付に回したというニュースが話題になりましたが、これって沖縄では普通のイベントだったんですね……。それにしてもメリケン粉っていうのが、またアメリカンな響きで異国情緒漂ってます。 *** というわけで、北は北海道、南は沖縄それぞれの文化を描いたマンガ『北海道民のオキテ』『沖縄県民のオキテ』をご紹介しました。ここでご紹介したオキテも、地元の人からしてみると「え、それって全国共通でしょ?」と思うことばかりなのかもしれませんが、はっきり言います。それは完全なるローカルルールです!! (文=「BLACK徒然草」管理人 じゃまおくん<http://ablackleaf.com/>)『沖縄県民のオキテ』(KADOKAWA/中経出版)
ゲイの毒舌精神科医がお悩み解決! 読んでおきたい『ツレうつ』以降の「うつ病」マンガ
作者の実体験を赤裸々に語るコミックエッセイの中でも、「うつ病」をテーマにしたマンガを目にすることが多くなりました。最近では特に、田中圭一先生がうつ病からの脱出に成功した人たちをリポートするコミック『うつヌケ~うつトンネルを抜けた人たち~』(https://note.mu/keiichisennsei/n/n825d9e612277?magazine_key=m1e241522cab9)が話題になっています。 「うつ病」マンガが増えているのは、なんといっても、ドラマ化・映画化もされた、細川貂々先生の『ツレがうつになりまして。』(幻冬舎)の功績でしょう。かつては、精神疾患をマンガのネタにするのはある種のタブーとされていましたが、『ツレうつ』では重くなりがちなテーマを、かわいらしい画とユーモアで明るく描き切っています。「うつ病」マンガのハードルを下げ、後に続く作品を生み出す土壌になったといえます。 「うつ病」マンガが注目を集めるのは、15人に1人はうつ病といわれるほど身近な病気になってきていることが起因しています。実際、僕の周りを見渡しても、近親者・友人・知人にうつ病の経験者が多数おり、決して他人事ではありません。というわけで、今回は「うつ病」マンガの中でも、ひときわ個性を放つ2作品をご紹介します。 ■『夫婦で鬱るんです』(少年画報社) ホラーコミック作家・稲垣みさお先生によるうつ&育児体験記です。この作品のすごいところは、新婚3カ月で稲垣先生がうつ病にかかり、その後に旦那さんが躁うつ病にかかり……しかも、先生のおなかには赤ちゃんが! という「マンガかよ!」と突っ込みたくなるほどにエクストリームな状況になっているところです。 最大の見どころは、陣痛に追い詰められた先生が、「生まれるって言ってるだろーがっ!!」と、うつでダウンしている旦那を蹴り飛ばし、旦那に車を運転させて病院に直行するシーンです。人間、やればできる。まさに火事場のバカ力です。 無事出産後も、修羅場は続きます。ただでさえ大変な赤ちゃんの世話ですが、両親共にうつ症状でフラフラ、それを尻目に超ハイテンションで暴れる赤ちゃん……。なんという地獄絵図。 さらに旦那さんはうつが悪化し、仕事を始めても1カ月も続かない毎日で、収入がピンチ!などなど。無理ゲーすぎる試練が次々襲ってくる稲垣家から、目が離せないマンガです。 また、この作品のテーマが「うつ病でも、妊娠・出産・育児は可能です!!!」となっている通り、非常にリスクが高いといわれている妊娠中の抗うつ薬使用についても、服用量を調整しながら無事に出産されているのは貴重な事例といえるでしょう。 ■『アンタたち治るわよ!-ゲイ精神科医が心の病をぶったぎり』(講談社) こちらは、ゲイの精神科医Tomy先生と、漫画家はじめ先生による合作。ゲイの精神科医という時点で相当キャラが立っているのですが、相談に来る患者さんたちの悩みをオネエ言葉と毒舌でガンガン解決していく「元気の出るうつマンガ」です。 うつがどうこう以前に、まずTomy氏のキャラが相当濃いです。一人称が「アテクシ」なのもなかなかのブッ飛び具合ですが、Tomy氏のパートナーで同じくゲイの精神科医ジョセフィーヌ氏がほぼレギュラーで登場し、ゲイカップル2人でキャッキャウフフしながら悩みを解決していきます。 なにしろ本題に入る前に、いきなり2人の馴れ初めが(ゲイバーで出会って、その日に合体とか)描かれているあたり、うつ病マンガの中で、本作がいかに特殊な雰囲気なのか、おわかりいただけるのではないでしょうか。 そして、相談に来るイケメン男性患者には、もれなく「Tomy’sサーチアイ」が発動。 26歳の男性会社員の相談に対しては、 「あーん、いーわー、若い男にすがられるってカ・イ・カ・ン」 32歳の男性エアロビインストラクターには、 「モテ筋…いいオトコ!」 うつ症状を発症している娘の相談に来た父親にも、 「老けてもいないけど脂ぎってもいないわね! アテクシ若いのが好みだけど、こういうのもアリだわ」 ……そんなん言われたら、かえってうつが進行するわ! と思わず突っ込まずにいられないほど、オネエキャラが徹底されています。ちなみに、うつ病だけではなく、躁うつ病、新型うつ、アスペルガー障害、ボーダーライン、パニック障害などなど、うつ病と一緒に語られやすいさまざまなメンタル系疾患についても取り上げられており、その解説も明快で、さすが精神科医! という内容になっています。ただ……解説は、ことごとくオネエ言葉なんですけどね。 というわけで、今後一層ニーズが高まりそうな「うつ病」マンガを2作品ご紹介しました。読んでみると、自分には全然関係ないと思っている人でも、いつ自分や家族がかかってしまうかわからないということを、あらためて痛感しますね。読んでおいて損はないジャンルです。 (文=「BLACK徒然草」管理人 じゃまおくん<http://ablackleaf.com/>)『夫婦で鬱るんです』(少年画報社)、『アンタたち治るわよ!-ゲイ精神科医が心の病をぶったぎり』(講談社)
これは世紀末うどん伝説か? 『北斗の拳』みたいなグルメマンガ『食戦記』
飽食の時代といわれる現代において、日々雑誌やネットで紹介されるグルメ情報やレシピ情報は、われわれにとって欠かせない情報のひとつとなっていますね。しかし、「食べログ」とか「クックパッド」などでお気軽に手に入れられるような情報が、ある日忽然と消滅し、特定の人間たちだけが情報を操ることのできる世界が訪れたら、人々はどうなってしまうのか……? 今回ご紹介するマンガ『食戦記』は、人類が壊滅し、あらゆる文化が崩壊、原始時代に逆行した近未来の世界が舞台。生き残った人間たちの間には、知性より暴力による支配が横行していて、まるで『北斗の拳』のような世界観になっています。出てくるキャラも、いかにも「ヒャッハー」って言いそうな格好をしています(実際は言わないけど)。 そんな世界において、数少ない知性を持った一族が「食師」という人々でした。食師は民を飢えから救うために、自然の中で食べられる物を見分け、 食物の栽培や料理法等を教えてくれるという、こんな時代に超ありがたい人たちなのですが、頭の悪そうなヒャッハーな人たちには理解されません。 「人間業とは思えないような超おいしい食い物を作る奴らがいる」→「なんだ? コイツらは妖術使いか!? きっと食べ物に呪いをかけているに違いない」→ 「悪いこと企てる前に皆殺しだ! 焼き払えー!!」 ……という思考回路により、食師の一族は皆殺しにされてしまうのです。魔女狩りならぬ食師狩り。人にレシピ教えただけで殺されちゃう時代とか、そうとうヤバイですね。クックパッドなんかに投稿した日には、命がいくつあっても足りません。 そんな悲劇の食師一族の中で唯一、一命を取り留めた青年・ワタルが本作の主人公です。ワタルは、自分の命を助けてくれた部族への恩返しとして、必殺の激ウマ料理を振る舞います。村の民を全員集めて、小麦をこねるワタル。 日時計を見ながら生地を数時間寝かし、作った驚愕のメニュー、それが……! 「かけうどんというものです!」 ドーン!! なんと、数時間かけてドヤ顔で出してきたメニューが、まさかのかけうどんです。もちろん「食師」ってくらいですから、これだけで済むはずがありません。こんなメニューは軽いジャブに違いないのです。……ということで、さらに繰り出してきたメニューが「山菜うどん」とか「焼きうどん」。お前は香川県民か!! しかし、さすが食の原始時代だけあって、初めて見た「うどん」に対するリアクションが半端ありません。 「!!」 「旨い」 「ああーーっ」 「このような食べ物が人間の手で作れるのか!!」 これ、繰り返しますが、かけうどんの話です。「人間の手で作れるのか!!」って……。ほかに誰が作るんだよ。この調子だと、もはや立ち食いそば屋のおばちゃんだって、神になれる時代です。香川に連れて行こうものなら、天国に連れてこられたと思い込むに違いありませんね。 ちなみに一連のうどんレシピのほかに出てきた食べ物といえば「大学いも」がありますが、これもまた渋いチョイスです。確かに、原始時代に大学いもが出てきたらビックリ仰天するでしょうね。 さて、うどんのくだりの後、いよいよワタルに旅立ちの時が訪れます。さんざん伏線をちりばめまくって、さあいよいよこれからどんな奇想天外なグルメ旅が始まるのか……というところで単行本第1巻が終了するのですが、どうやら掲載誌「A-ZERO」(双葉社)が休刊となったため、残念ながら2巻以降が出ておりません。食師の夢と希望は、そのままお蔵入りになってしまっている模様です。うどんだけを残して……。 そんなわけで極限世界のグルメを描いたマンガ『食戦記』、未完なのが残念ですが、グルメマンガにおける超異端児として、ぜひとも一度読んでみてはいかがでしょうか。とりあえず、かけうどんだけでこんなにテンションが上がるマンガって、そうそうないです。 (文=「BLACK徒然草」管理人 じゃまおくん<http://ablackleaf.com/>)『食戦記』(中村博文/双葉社)
スーパーアイデア炸裂! ザハもびっくりの建築デザインバトルマンガ 『建作ハンズ』
2020年の東京五輪を控え、新国立競技場問題などで何かと建築デザインが取り沙汰される昨今、世にも珍しい「建築デザイナーマンガ」というものが存在します。その名も『建作ハンズ』。東急ハンズとは、もちろん無関係です。テーマ自体かなりマニアックですが、その中で繰り広げられる建築デザインバトルもまた、ぶっ飛んでおります。 早速、内容をご紹介しましょう。主人公は、一流の建築デザイナーを目指して上京してきた、計建作(はかり・けんさく)という少年。 建作の才能は、上野駅で早くも発揮されます。なにやら駅の構内にあるショーウィンドーの飾り付けでモメている大人たち。まったく話がまとまりそうにありません。それを見た建作は、勝手にショーウィンドーの資材をいじり始めます。それが先ほどの大人たちに見つかって、ダッシュで逃亡。 実は建作、ショーウィンドーを勝手に飾り付けしてしまったのでした。しかも、それがメチャクチャ高評価です。建作は東京の有名建築デザイン学校「日本建築学院」にトップの成績で合格し、入学するために上京した優秀な学生だったのです。 ようやくたどり着いた日本建築学院の前には、超ミニスカートのヒロイン、白瀬まゆが登場します。彼女は建築学院の講師の娘ということで、そのツテで建作も入学前に学院内を見学させてもらえることになりました。そこで繰り広げられていた授業の課題は「広く感じる部屋の作成」というもの。 建築デザインという地味なテーマなので、こんなんでマンガが盛り上がるのかと心配になりますが、そこはご安心を。ちゃんとバトルが繰り広げられます。「広く感じる部屋」を自慢げに見せびらかしてきたのは、成績は優秀だけど、ちょっと性格の悪い天本先輩。その先輩のつくった「広く感じる部屋」ですが、コマの効果音が「ばん!」ときて…… 「おおー、さすが大きなことを言うだけはある!!」 「とても広く感じるぞっ!!」 と、ギャラリーたちは好リアクション! 正直、読者には広いのかどうなのかよくわかりませんが、なにしろ効果音が「ばん!」なので、きっと広いんでしょう。そんな天本先輩ご自慢の広く見える部屋を、建作が早速ディスりまくります。 「うーん…まだまだだなぁ…」 「この部屋をもっと広くできると思ってさぁ」 「基本を忘れてるんだよねー、基本を…」 まだ入学もしていない新入生にメンツを潰され、天本先輩も激怒します。 「よおーし、じゃあその基本とやらをここで見せてもらおうじゃないか」 というわけで、建築デザイナーズバトルが勃発するのです。調子に乗ってる奴を挑発してバトルに持ち込む構造は、『ミスター味っ子』とか『美味しんぼ』などのグルメマンガの構造とよく似ています。そして、建作がつくった広く見える部屋は、コマの効果音が「ぐあっ!」ときて…… 「あ、天本の部屋より広く見えるぞ!!」 「ほっ本当だっ!!」 ギャラリーからは、天本先輩のときより大きめのリアクション。効果音が「ばん!」から「ぐあっ!」となっているので、さぞかし広くなったのでしょう。タネ明かしはこうです。 「部屋づくりの基本として、その空間が正方形により近い方が広く感じられるんだよ!」 なるほど、勉強になります。さらに、建作には、もっと部屋を広く感じさせる裏技があるというのです。その名も、計建作の究極の超拡大部屋!!(そのまんまのネーミング) 「すっ…すごいっ!!」 「部屋がずっと広がり天井がつきぬけているっ!!」 またしても好リアクション。なにせ、見開きページで効果音が「グアアアッ」となっていますし、相当広くなったのでしょう。その、「劇的ビフォーアフター」な奥義とは…… 「カガミを壁と天井の一部に張ることによって視覚的に部屋に奥行きを持たせたんだ!!」 なるほど! ラブホとかによくあるアレですね!! っていうか、それなら最初から全面にカガミを張っておけば最強なのでは……? そんな感じでバトルに勝利した建作。一息つくのも束の間、次のバトルがすぐにやってきました。自分の住まい探しのために、超ミニスカのまゆちゃんと一緒に不動産回りをする建作。 格安の物件につられて早速契約したのですが、実は悪徳不動産屋でした。ろくな説明もされず、超ボロアパートを押し付けられてしまった建作。返金を申し出ても、契約をタテに受け付けようとしません。しかし、建作が日本建築学院の学生だと知り、突然返金の条件を突き付けてきます。 その条件とは、この不動産屋のおっさんの自宅の和室を洋室に改装し、しかも気が向いたらいつでも和室に戻せるような部屋にしてほしいとのこと。これができれば返金してくれますが、できなければ金を倍額取られてしまいます。普通に考えてあり得ないほど無茶な条件ですが、そこはマンガですから、建作は驚くべきアイデアで不可能と思えた和室と洋室のハイブリッドな部屋を考え出します。その方法とは……。 「障子と掛け軸はロールブラインドで隠し、畳を全部ひっくり返して床をフローリングに!」 なんということでしょう! こんな方法があったとは!! まさに匠のワザですね。実はこのアイデア、自分の着ているリバーシブルのジャンパーがヒントになったのでした。この安っぽさがまた、少年マンガらしくていい味出していますね。 そんな感じで、建作のスーパーアイデアが炸裂して建築デザインバトルに次々勝ち進んでいきます。その後の展開としては、喫茶店の改装バトルで店内に滝をつくってみたり、“地獄の集中授業”と称して、学生全員が無人島に置き去りにされ、最小限の工具と食料で、自分で家を一からつくらなければいけないという、なんの意味があるのかよくわからないサバイバル実習を行わされたりします。 しかも、無人島で家づくりに失敗した学生たちは次々と原因不明の失踪をしてしまうという、まるで海外ドラマ『LOST』を彷彿とさせる恐ろしい島になっており、かなり想像の斜め上を行く展開です。そのあたりのトンデモなストーリーは、ぜひ作品を読んでいただければと思います。 というわけで、世にも珍しい建築デザインバトルマンガ『建作ハンズ』をご紹介しました。部屋を広く見せるテクニックなどは、ニトリとかIKEAでインテリアをそろえたりするのが好きな方には、微妙に役に立つかもしれませんね。 (文=「BLACK徒然草」管理人 じゃまおくん<http://ablackleaf.com/>)『建作ハンズ』(河本ひろし/少年画報社)
「愛人の作り方、学べます!」不倫とポジティブに向き合うマンガ 『フリンジマン』
サイゾー読者の皆様、こんにちは。早くも今年の流行語大賞の有力候補に、「センテンススプリング」や「ゲス不倫」といったワードが入ってきそうな勢いを感じるほど、あの人気タレントも、あの政治家も、あの師匠も、そしてあのスポーツライターも、みんな不倫、不倫、不倫だらけの昨今。「あれ!? 日本って、一夫多妻制だったっけ?」と、勘違いするレベルですね。 「不倫=バレたら破滅」というのは散々歴史が証明しているところですが、それでも不倫がなくならないところを見ると、やはり「不倫は文化」というフレーズは正しいのでしょう。そして、マンガの世界に目を移してみると、やはり多くのマンガで不倫は背徳行為のシンボルとして扱われています。しかし、もしかしたら唯一? といっていいほどポジティブに不倫と向き合っているマンガが存在しました。その名も『フリンジマン』。これを読めば、あなたも愛人が作れるかもしれない!? 『フリンジマン』の設定をご紹介しましょう。とある雀荘で卓を囲む男4人。しかし、彼らは、卓を囲みながらもお目当ては麻雀ではなく、ほかのところにありました。そう、一度不倫をしてみたい、愛人を作ってみたい男たちの密会が行われていたのです。 卓を囲んでいたのは、同時に最高5人の愛人と付き合う「愛人教授(ラ・マン プロフェッサー)」と呼ばれる不倫のエキスパート・井伏真澄。そして、不倫に憧れる田斉、満島、安吾という、3人の迷える子羊たちです。ここで、井伏の教えを請いながらお互いの愛人作りをサポートする「愛人同盟」が結成されます。 早速、愛人教授・井伏が繰り出す、数々の不倫名言が弟子たちの不倫モチベーションを高めます。 「愛人にどう告白すべきかでしたっけ?…愚問ですね。いらないんですよ、告白なんて」 「愛人にするのは好きな女ではありません、都合の良い女です」 「感情を捨てなければ愛人関係という任務は遂行できません。マシーンになるのです」 こんな感じで、思いっきり不倫に前向きなのです。教授いわく、不倫とは「ウニを食べる」「海外旅行に行く」「グリーン車に乗る」などと同様、少し手を伸ばせば手に入る、オトナだけに許された悦楽なのであります。そう考えると、全然ゲスな行為ではないんですね。 田斉をはじめとした弟子たちの愛人作りを通して、より実践的なレクチャーへと進んでいきます。例えば、田斉は会社の新人OL、山口詠美がターゲット。愛人教授によるGPSとイヤホンを駆使した的確な遠隔指示、さらに愛人同盟の協力体制により、着実に愛人作りを遂行していきます。 ところで、愛人作りにおいてまず課題となるのは、結婚している男に一体どんな女(ヒト)が興味を持ってくれるのかということですが、そこで役に立つのが「愛人の原石の見分け方」です。 「オハヨウゴザイマスの後にアナタの名前を呼ぶ女は愛人の原石」 「曲がっているネクタイを自ら直接直しに来る女は愛人の原石」 などなど。つまり、会社で単なる「おはようございます」ではなく「おはようございます○○主任」と名前まで呼んでくれる女性、あるいは曲がったネクタイを指摘するだけでなく、わざわざ直してくれる女性は間違いなく自分に好意があり、愛人候補として大いにチャンスがある! という理屈です。なるほどなるほど、つまり不倫をしたければネクタイは曲げておくべし、ということですね。実に勉強になります。 そして、自分に好意を持ってくれる愛人の原石を見つけたら、給湯室などの2人きりになれる場所で世間話をし、擬似不倫体験を共有する……これぞまさに、明日からすぐに(愛人を)探せるテクニックです。 しかし、愛人作りのためには、注意点も数多くあります。 ・待ち合わせ場所は書店がオススメ。道端、居酒屋などは避ける ・宝飾店や指輪は2人の会話に結婚のイメージが入り込む恐れがあるため、愛人との会話では厳禁 ・デパートの受付嬢は店舗案内…「店案」と呼ばれ、愛人にするには最も手ごわい職種のひとつ などなど。そうですか、デパートの受付嬢は手ごわいですか。覚えておいて損はない知識ですね。個人的には、役に立つ日が来るとは到底思えませんけど。 こんな感じで、かつてないほど実践的なレクチャーがちりばめられている「HOW TO 不倫」なマンガ『フリンジマン』なのです。不倫スキャンダルで芸能ニュースをにぎわせたタレントたちも、このマンガを一読してさえいれば、あんな悲劇は起こらなかったかもしれません。……と言いたいところですが、実は不倫をネタにしたギャグマンガなので、どこまで本気にするかはアナタ次第です。 ちなみにこの「愛人教授」ですが、恋愛だけでなく仕事のほうもデキる男なのかと思えば、仕事のほうはからっきしダメで、新人レベルの間違いで上司に怒られたり、全国の愛人行脚のために長期休暇を取って同僚に迷惑をかけたりと、ダメダメ男なのです。デキる男がモテるのかと思いきや、現実は案外そういうものではないのかもしれませんね。 (文=「BLACK徒然草」管理人 じゃまおくん<http://ablackleaf.com/>)『フリンジマン』(青木U平/講談社)
「愛人の作り方、学べます!」不倫とポジティブに向き合うマンガ 『フリンジマン』
サイゾー読者の皆様、こんにちは。早くも今年の流行語大賞の有力候補に、「センテンススプリング」や「ゲス不倫」といったワードが入ってきそうな勢いを感じるほど、あの人気タレントも、あの政治家も、あの師匠も、そしてあのスポーツライターも、みんな不倫、不倫、不倫だらけの昨今。「あれ!? 日本って、一夫多妻制だったっけ?」と、勘違いするレベルですね。 「不倫=バレたら破滅」というのは散々歴史が証明しているところですが、それでも不倫がなくならないところを見ると、やはり「不倫は文化」というフレーズは正しいのでしょう。そして、マンガの世界に目を移してみると、やはり多くのマンガで不倫は背徳行為のシンボルとして扱われています。しかし、もしかしたら唯一? といっていいほどポジティブに不倫と向き合っているマンガが存在しました。その名も『フリンジマン』。これを読めば、あなたも愛人が作れるかもしれない!? 『フリンジマン』の設定をご紹介しましょう。とある雀荘で卓を囲む男4人。しかし、彼らは、卓を囲みながらもお目当ては麻雀ではなく、ほかのところにありました。そう、一度不倫をしてみたい、愛人を作ってみたい男たちの密会が行われていたのです。 卓を囲んでいたのは、同時に最高5人の愛人と付き合う「愛人教授(ラ・マン プロフェッサー)」と呼ばれる不倫のエキスパート・井伏真澄。そして、不倫に憧れる田斉、満島、安吾という、3人の迷える子羊たちです。ここで、井伏の教えを請いながらお互いの愛人作りをサポートする「愛人同盟」が結成されます。 早速、愛人教授・井伏が繰り出す、数々の不倫名言が弟子たちの不倫モチベーションを高めます。 「愛人にどう告白すべきかでしたっけ?…愚問ですね。いらないんですよ、告白なんて」 「愛人にするのは好きな女ではありません、都合の良い女です」 「感情を捨てなければ愛人関係という任務は遂行できません。マシーンになるのです」 こんな感じで、思いっきり不倫に前向きなのです。教授いわく、不倫とは「ウニを食べる」「海外旅行に行く」「グリーン車に乗る」などと同様、少し手を伸ばせば手に入る、オトナだけに許された悦楽なのであります。そう考えると、全然ゲスな行為ではないんですね。 田斉をはじめとした弟子たちの愛人作りを通して、より実践的なレクチャーへと進んでいきます。例えば、田斉は会社の新人OL、山口詠美がターゲット。愛人教授によるGPSとイヤホンを駆使した的確な遠隔指示、さらに愛人同盟の協力体制により、着実に愛人作りを遂行していきます。 ところで、愛人作りにおいてまず課題となるのは、結婚している男に一体どんな女(ヒト)が興味を持ってくれるのかということですが、そこで役に立つのが「愛人の原石の見分け方」です。 「オハヨウゴザイマスの後にアナタの名前を呼ぶ女は愛人の原石」 「曲がっているネクタイを自ら直接直しに来る女は愛人の原石」 などなど。つまり、会社で単なる「おはようございます」ではなく「おはようございます○○主任」と名前まで呼んでくれる女性、あるいは曲がったネクタイを指摘するだけでなく、わざわざ直してくれる女性は間違いなく自分に好意があり、愛人候補として大いにチャンスがある! という理屈です。なるほどなるほど、つまり不倫をしたければネクタイは曲げておくべし、ということですね。実に勉強になります。 そして、自分に好意を持ってくれる愛人の原石を見つけたら、給湯室などの2人きりになれる場所で世間話をし、擬似不倫体験を共有する……これぞまさに、明日からすぐに(愛人を)探せるテクニックです。 しかし、愛人作りのためには、注意点も数多くあります。 ・待ち合わせ場所は書店がオススメ。道端、居酒屋などは避ける ・宝飾店や指輪は2人の会話に結婚のイメージが入り込む恐れがあるため、愛人との会話では厳禁 ・デパートの受付嬢は店舗案内…「店案」と呼ばれ、愛人にするには最も手ごわい職種のひとつ などなど。そうですか、デパートの受付嬢は手ごわいですか。覚えておいて損はない知識ですね。個人的には、役に立つ日が来るとは到底思えませんけど。 こんな感じで、かつてないほど実践的なレクチャーがちりばめられている「HOW TO 不倫」なマンガ『フリンジマン』なのです。不倫スキャンダルで芸能ニュースをにぎわせたタレントたちも、このマンガを一読してさえいれば、あんな悲劇は起こらなかったかもしれません。……と言いたいところですが、実は不倫をネタにしたギャグマンガなので、どこまで本気にするかはアナタ次第です。 ちなみにこの「愛人教授」ですが、恋愛だけでなく仕事のほうもデキる男なのかと思えば、仕事のほうはからっきしダメで、新人レベルの間違いで上司に怒られたり、全国の愛人行脚のために長期休暇を取って同僚に迷惑をかけたりと、ダメダメ男なのです。デキる男がモテるのかと思いきや、現実は案外そういうものではないのかもしれませんね。 (文=「BLACK徒然草」管理人 じゃまおくん<http://ablackleaf.com/>)『フリンジマン』(青木U平/講談社)
過激発言連発!! 打ち切り&発禁になった伝説の女装男子マンガ『ストップ!!ひばりくん!』『おカマ白書』
いまテレビで一番勢いのあるバラエティタレントといえば、マツコ・デラックスですね。かつてはおすぎとピーコの独壇場であったオネエ枠ですが、今では多数のタレントがおり、エンタメの世界になくてはならない存在となっています。 こういったマスコミの取り上げ方や、コスプレイヤーが世間で認知されるようになるとともに女装のハードルも下がり、「女装男子」とか「男の娘」が普通に話題となる、いわゆる女装のカジュアル化が起こっています。 しかし1980~90年代は『笑っていいとも!』(フジテレビ系)の「Mr.レディー」ブームこそあったものの、まだまだ女装が何かまがまがしいものであるかのような扱いを受けていた時代です。そんな時代にあえて女装男子をテーマとした伝説的2作品を、今回はご紹介します。 ■『ストップ!!ひばりくん!』 女装男子をテーマにした作品で最も有名なものといえば、おそらく江口寿史先生の 『ストップ!!ひばりくん!』でしょう。81~83年に「週刊少年ジャンプ」(集英社)で連載された後、アニメ化されてゴールデンタイムで放映されました。よくよく考えれば、これはすごいことですね。 主人公・坂本耕作は両親を亡くし、母親の知人の家に居候することになります。その知人とは、関東大空組というヤクザの組長。ですが、そこにいたのは、つばめ・つぐみ・ひばり・すずめと美人ぞろいの大空家姉妹。その中で一番の美少女・ひばりが、実は男だったのです。ヤクザの組長の息子が女装男子。しかも、とびきりの美少女という、当時としては相当のブッ飛び設定でした。 ひばりは、街を歩けば周りの注目を浴びる完璧美少女(※ただし女装)です。しかし、ひばりや耕作が通う若葉学園では、ひばりは男であることを隠して女子として通っていたため、周りの男子たちからはモテまくり、女子からは嫉妬されまくりです。さらに、ひばりをよく思わない女子たちがひばりの正体を暴こうとし始めて、そこに耕作が巻き込まれて右往左往するドタバタコメディです。 ひばりは設定こそ「男」ですが、画的に男性っぽさを感じさせる部分はほぼ皆無。実際、ひばりをかわいく描くための江口先生のこだわりがアシスタントの使用を困難にしたというエピソードもあるぐらい、少年マンガ屈指のかわいさ(だけど男)なのです。さらに、全体的にライトでポップな作風のため、「女装」のイメージが醸し出すいかがわしさとか背徳感みたいなものはありませんでした。だからこそ、ゴールデンで放送できたのでしょう。 基本的にギャグマンガなのですが、女装とかおカマをいじったネタよりも、ヤクザをネタにしたギャグのほうが過激です。ひばりの父親(大空組の組長)が、ひばりの女装姿にショックを受けて心臓発作を起こした時、覚せい剤を注射して蘇生するシーンとか……。ギャグとして描かれていますが、今のご時世なら絶対シャレになりません。 ちなみに、本作は当時から休載を繰り返していた江口先生が最終的にギブアップし、未完のまま打ち切り終了しているのですが、09年に発売された『ストップ!!ひばりくん! コンプリート・エディション』では、掲載されなかったエピソードが加筆されて完結しています。『ストップ!!ひばりくん!』(小学館)
■『おカマ白書』 こちらは89~91年に「週刊ヤングサンデー」(小学館)誌上に連載されていた作品です。作者は『殺し屋1(イチ)』『ホムンクルス』の山本英夫先生です。いわゆる、マスコミが煽るような「おカマ」的要素をふんだんにちりばめたお下品ネタが満載で、近年のギャグマンガにはない、独特の破壊力を持っています。 主人公は岡間進也(おカマ・しんや)という大学生。いかにもな名前がナイスです。大学の飲み会の席で、イタズラで女装させられた自分の姿があまりにかわいく、自分の女装姿に惚れてしまうほどだったため、親友・田中の勧めでおカマバー「モーリス」で源氏名「キャサリン」としてバイトを始めます。そこに客として現れた女子大生・ミキちゃんが、なんとキャサリンと瓜二つのカワイコちゃん。進也は自分の女装姿にそっくりのミキちゃんに一目惚れし、キャサリンの姿でミキちゃんに接近する……という話です。 とにかく表現がお下品かつ、過激。聞いたことがない専門用語がビシバシ登場して、ノンケの読者は困惑必至です。 「ママリンの男のタイプはね…サラマンは絶対条件ね。あと乳首に毛がはえてればグッド&テイスティーね」 「いいカラダしてるわね、おじさんとビビンバしない?」 「サラマン」とか「ビビンバ」って、一体なんなの……? すごくいかがわしい感じがビンビンしますね。 作品中に出てくるおカマたちの恋愛対象は、当然ながら全員男性です。しかし、主人公の進也は女の子に近づく手段として女装を使っており、あくまでも恋愛対象は女子(ミキちゃん)なのです。 モーリスのママの、「女の子っていうのはね、男に対しての警戒心が…おカマに対してだと、ほとんど消えちゃうのヨ!!」というセリフの通り、女装効果は絶大。キャサリンに対し、親友としてすっかり心を許しているミキちゃん。しかし、キャサリンとミキちゃんの距離があまりに近くなりすぎてしまったため、岡間進也として告白ができずに思い悩むことになるのです。お下品おカマコメディである半面、「性」が複雑に交錯するセンシティブな一面ものぞかせる作品です。 この作品では「女装」も「ゲイ」も「ニューハーフ」も区別せず、一括りで「おカマ」として変態扱いされています。もちろん当時はLGBTなんて言葉も知られておらず、マスコミも含め、世間一般的にその程度の認識だったわけですが。それが、後に大騒動に発展します。 「エイズでもくれてやろうかしら!」 「カマはカマ同士仲良くやってな」 「チンポねーちゃん」 といった、数々のおカマをいじった過激な表現が、マイノリティの人たちに侮蔑的と捉えられ、抗議を受けて単行本3巻以降の発売が白紙になってしまいます。それどころか、すでに発売されている1、2巻まで書店から回収されるという異例の事態へと発展します。 最終的に、一部過激な表現が修正され、巻末には「おカマ白書における男性同性愛者の描かれ方について」という文章が「動くゲイとレズビアンの会」監修の下で挿入されてようやっと復刊されることになるのです。こういった発禁エピソードに加え、読者が誰も予想しなかったであろう衝撃のラストシーンは、『ひばりくん』とは別の意味でレジェンドと呼ばれるにふさわしい作品といえるでしょう。 というわけで、オネエタレントや女装が珍しくなくなってしまった今だからこそ、あえて読みたい伝説の女装男子マンガ2作品をご紹介しました。あなたもこれを読んだら、新しい人生の扉が開けるかもしれませんよ?(モロッコ的な意味で) (文=「BLACK徒然草」管理人 じゃまおくん<http://ablackleaf.com/>)『おカマ白書』(小学館)
壮絶! リストラ漫画家のお遍路旅『55歳の地図』で知る、四国の人のあったかさ
人が人生の岐路に立った時に選ぶ道のひとつに、「お遍路」というものがあります。いわゆる四国八十八カ所のお寺を回る、日本最大規模のスタンプラリーです。最近は旅行会社のツアーなんかもあったりして、大変人気があるようですね。 今回ご紹介するのは、お遍路をテーマにした漫画『55歳の地図』という作品。「実録!リストラ漫画家遍路旅」というサブタイトルがついており、仕事がなくなり、食えなくなってしまった漫画家、黒咲一人先生が自分探しのためにガチの「お遍路さん」をする、壮絶なドキュメント漫画なのです。 黒咲先生は2003年ごろから原稿の新規依頼が途絶え、連載していた雑誌が廃刊になったりと、漫画の仕事が徐々になくなっていきます。そして、ついに完全に廃業状態となった黒咲先生は、身辺整理を始めます。しかし、ハローワークに行っても、漫画しか描けない55歳のオッサンに職が見つかるはずもありません。 そんな黒咲先生の窮状を心配して駆けつけてきたのが、漫画家仲間のさとう輝先生。『江戸前の旬』がロングヒットしており、リストラとは無縁なお方です。さらに御大、本宮ひろ志先生も、ビルのワンフロアーをタダで貸してくれるなどと言ってくれます……。うーん、いい人たちだ。 さらに、犬漫画の帝王『銀牙』『銀牙伝説WEED』などでおなじみ高橋よしひろ先生も、「仕事を手伝わないか?」と電話をかけてきてくれました。 せっかく心配して声をかけてくれているんだから、素直に高橋先生の仕事を手伝えばいいじゃないかと思うのですが、そこはかつて自分も第一線で描いていた漫画家だというプライドがあるのでしょう。結局、自分探しの道、四国遍路の旅を選びます。 『55歳の地図』というタイトルで思い出すのが、尾崎豊の名曲「十七歳の地図」です。尾崎は「盗んだバイクで走りだす」のですが、黒咲先生の場合は「5,000円で買った中古三輪チャリ」で走りだします。これが55歳の青春なんでしょうか……。あまりの先行き不透明感で、読んでいるこっちも暗澹たる気分になります。 それにしても黒咲先生、どうも要領が悪すぎるというか、自らピンチを招き入れている感があります。出発の日は冬が差しせまる11月、どう考えても春や夏に比べて、放浪旅をするにはつらい時期です。さらに土砂降りの雨。何も、こんな日を選ばなくても……って気がしますが。しかも、運が悪いことに途中で三輪車のタイヤがパンク。 タイヤを修理するために土砂降りの中を右往左往し、予定のフェリーの時間に間に合わず……。まだ東京なのに、すでに瀕死状態です。大丈夫なのか、こんなんで。 四国へ上陸後、旅路用にホームセンターでテントを買って一国一城の主気分になるも束の間、相変わらず大ピンチです。なにしろ、総重量20キロの全財産を自転車に積んでいるため漕ぐことができず、結局、常に自転車を手押しして移動することになります。案の定、徳島で早速、死にそうになります。朝から胃袋に入れたのは、缶コーヒーとビールのみ。カロリーメイトぐらい買っておけばいいのに……。 ようやくスタート地点である、第一番札所「霊山寺」(徳島)に到着。ここでお遍路さんのコスプレ、もとい衣装に着替え、お遍路さんに変身。しかし、延々と続く山道を20キロの重量を積んだ自転車を押し続けるわけですから、相当大変です。 せっかく有り金をつぎ込んで宿に泊まっても風邪を引いてしまい、食事も取れずボロボロに。死に装束風のお遍路さんのカッコも相まって、いつ逝ってもおかしくない雰囲気です。そんな常に瀕死の黒崎先生を見るに見かねたのか、謎のオヤジが登場。 「死ぬで!!」 ハードボイルドなホームレス風のオッサンは一心さんという人で、さまよえるお遍路さんに付き添ってアドバイスしてくれる、お遍路の「先達さん」をライフワークにしている人でした。まさに、黒咲先生の命の恩人。 作品の中盤まで、ラーメンを作ってくれたり、テントを張るベストポジションを教えてくれたり、効率のよい寺の回り方などをアドバイスしてくれたり、お供え物のゲットの仕方まで、とにかく至れり尽くせりで生きる伝授してくれます。さらに、この一心さん以外にも、無料宿泊所のリストをくれる人、自転車をタダで修理してくれる自転車屋さん、自転車をタダで修理してくれた上にミカンまでくれる町工場の人、自転車を家族総出でタダで直してくれる地元の駐在さんと、四国の人あったかすぎて泣ける! そんな感じで何度も死にそうになりながら88カ所の寺を回り切り、真のゴールである高野山(和歌山)へ。その高野山が、完全に冬登山モードで遭難必至。あまりの寒さに、何度も三途の川を渡りそうになります。ゴールを目前にして息絶えるのか……というところで、間一髪。通りがかった車に乗せてもらい、なんとか高野山にたどり着くのでした。最後まで人の優しさに頼り切って、見事ゴール! 本当によかった、よかった。 冷静に考えると、数々の申し出を振り切ってまでお遍路さんに行って、自分探しはできたけど職は探せていなくて、実はなんの解決にもなってないという、元も子もないオチなのですが、結局、お遍路ネタでこの漫画が描けているのですから、これこそがまさにお遍路さんのご利益なのかもしれませんね。皆さんも人生に行き詰まったら「お遍路さん」。覚えておいて損はありません。 (文=「BLACK徒然草」管理人 じゃまおくん<http://ablackleaf.com/>)『55歳の地図』(黒咲一人/日本文芸社)
嗚呼、清原……『かっとばせ!キヨハラくん』で、かつてのプロ野球界のアイドルの全盛期を振り返る
ご存じの通り、清原和博が覚せい剤取締法違反容疑で逮捕された事件は、日本列島に衝撃を与えています。10代の若者からすれば「元野球選手かなんか知らないけど、ヤクザみたいなオジサンが逮捕されて、なんでこんな大騒ぎになってるの?」という感じかもしれません。しかし、我々アラフォー世代にとっては、清原といえば、野球に興味があるなしにかかわらず、誰でも知っている国民的大スターだったわけです。 そんな清原の全盛期の人気ぶりを象徴するのが、なんといっても、マンガ『かっとばせ!キヨハラくん』でしょう。1987年から94年まで「月刊コロコロコミック」(小学館)で、単行本にして15巻分の長期連載がなされていたのですから、当時の子どもたちへの影響力は絶大だったといえます。今でいうピカチュウ、ジバニャンと同等レベルの知名度といって差し支えないでしょう。 連載がスタートした87年ごろといえば、清原がシャブではなくホームランを打ちまくっていた時代。くしくもお笑い界では、マーシーこと田代まさしが「ギャグの王様」「ダジャレの帝王」と呼ばれてバラエティ番組を席巻し、アイドル界ではのりピーこと酒井法子が「のりピー語」をひっさげて衝撃のデビュー。歌謡界ではCHAGE and ASKAが「恋人はワイン色」「LOVE SONG」「SAY YES」を立て続けにヒットさせていました。 『かっとばせ!キヨハラくん』の主人公は、西部ライアンズの四番打者キヨハラ。第1話からファンの女の子にキャーキャー言われているシーンが、当時のアイドル的人気を物語っています。そのほかには、モリ監督、ピッチャーのクドー、イシゲ、アキヤマといったライアンズの面々や、パ・リーグ、セ・リーグの有名選手たちが登場し、毎回彼らとのドタバタギャグが繰り広げられます。内容はといえば、子どもたちが好きそうな下ネタあり、ダジャレありの、くっだらないギャグのオンパレードです。 たとえば、先発ピッチャーに悩むモリ監督が、クドーやワタナベに打診したところ拒否されてしまいます。そこで、「代わりにやりましょうか?」とキヨハラ。おもむろにモリ監督の頭をシャンプーしだします。「洗髪=センパツ」というわけです。 ほかにも、モリ監督が出したスクイズのサインを見てウグイスと間違えて「ホーホケキョ」と言ってみたり……。クドーの投げた牽制球がキヨハラの股間に当たり、チ●チンが膨れ上がったり……。いかにも小学生が大好きそうなギャグなのですが、大人が読んでも十分笑えるクオリティです。 そしてなんといっても、学生時代からのライバルである東京カイアンツのクワタの存在が作品の面白さを際立たせています。天然ボケで肉体派のキヨハラと、根暗でネガティブなクワタの掛け合いがバツグンに面白いのです。 クワタのキャラクターはかなりエキセントリックで、五寸釘を藁人形に打ち込んだり、いつもブツブツ言ってる不気味なキャラで、助っ人外国人や審判に変装したり、時にはウグイス嬢に女装するなど、ありとあらゆる手段でキヨハラの練習や試合を妨害します。主役のキヨハラを食うレベルの活躍で、作品中で『がんばれ!クワタくん』というスピンオフ作品を生んだほどでした。 このように、子ども向けギャグマンガの王道を行く『かっとばせ!キヨハラくん』でしたが94年に一旦終了。その後は、松井秀喜をモデルとした後継作品『ゴーゴー!ゴジラッ!!マツイくん』がしばらく連載されます。しかし、2003年に松井が大リーグ入りしたタイミングで、巨人に移籍した清原がモデルの『モリモリッ!ばんちょー!!キヨハラくん』が開始されます。 ……しかし、この『モリモリッ!ばんちょー!!キヨハラくん』がエライことになっていました。タイトルの通り、番長キャラに変貌した主人公キヨハラ。モトキをはじめとした舎弟たちを引き連れ、丸刈り、関西弁、目は据わっており、やたら裸になって筋肉を誇示します。ハラ監督やヨシノブ(高橋由伸)をはじめとした気の弱そうなキャラクターたちを恫喝して笑いを取るギャグが多く、『かっとばせ!』時代とは完全に別のキャラクターとなっているのです。ある意味、リアルさを追求した結果といえなくもないですが、これはこれでちゃんと笑えるギャグになっているところが、作者・河合じゅんじ先生の職人技なのかもしれません。 まるで何かのクスリをやっているのではないかと思うほどのキャラの変貌ぶりで、バイオレントに暴れまくるキヨハラですが、ここでもクワタが、暴走するキヨハラのストッパー役として登場。2人の掛け合いで、見事にギャグが成立しています。まるで長年連れ添った夫婦のようなコンビネーション。光と影、陰と陽。やはり、この2人は切っても切れない関係なのです。リアルの清原も、釈放されてイチから人生をやり直すとしたら、やっぱり一番頼りになる存在は桑田なのかもしれませんね。 ちなみに、14年から刊行されている大人版のコロコロコミックである「コロコロアニキ」では、番長時代ではないほうのマンガ『かっとばせ!キヨハラくん』が復活し、好評連載されていました。そして今回の事件を受けてその存続が心配されていましたが、残念ながら「諸般の事情」により休載が発表されています。一応「休載」ですから、いつの日か復活するかも……。そんなわずかな望みにかけて、再開を待ちたいと思います。 (文=「BLACK徒然草」管理人 じゃまおくん<http://ablackleaf.com/>)『かっとばせ!キヨハラくん』、『モリモリッ!ばんちょー!!キヨハラくん』(小学館)










