「誰が動画を消せるのか」ニコニコ動画"丸ごと1本アップ"を巡る権利問題の行方

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国内でも有数の有名サイトとなった「ニコニコ動画」だが......。
 インターネット上には「共有」の名のもとに各種のコンテンツをアップロードするサイトが多数存在する。動画を例に取れば、その代表は世界的にはYouTubeであり、日本ではニコニコ動画が相当する。  これらのサイトは一歩運営を間違うと「海賊版の巣」になりかねない。実際両サイトともに海賊版サイトとしか言いようのない時期があった。その後権利者の通報により削除するシステムを導入して、アニメ丸ごと一本アップロードなどといった違法性の高い動画は駆逐されるようになった。  ただ、完全に違法ファイルが一掃されたかと言うとそうでもなく、どちらのサイトにもまだかなりの著作権者に無断でアップロードされた動画が多数存在する。ニコニコ動画だけでも、その数は1,000本に迫るという勢いなのだ。  共有サイトは基本的に「権利者からの通報」によって違法動画の削除を決定する。第三者の通報には対応しない。というのは、第三者の場合当該のコンテンツが、正当な権利者によってアップロードされたものである可能性を否定できないからだ。  さらに、権利者の方にもいろいろある。簡単に説明すると、アニメや映画などのコンテンツの場合、それを商品として流通させるかどうかの権利は製作会社や配信会社などが持っている。実際に制作に関与した監督やアニメーターなどは、コンテンツが完成した時にそれらの権利を製作会社に譲渡するなどしているため、権利を喪失している。上で書いた「権利者からの通報」は通常製作会社や配信会社によってなされるもので、監督やアニメーターからされるものではない。  では、監督やアニメーターは完全な無権利かというとそうでもなく、著作者人格権というものを保持している。これには、未公開のコンテンツを公開するか否かを決める権利(公開権)、コンテンツに自分の名前をクレジットする(あるいは非表示にする)権利(氏名表示権)、コンテンツを勝手に改変されない権利(同一性保持権)、コンテンツの製作意図とあまりにかけ離れた使い方に異議を唱える権利(名誉声望保持権)などが含まれる。ただ実際に、現場の制作者がこうした権利を盾に海賊版の削除を申し入れたことはほとんどないと考えられていた。  だが今月3日の未明、Twitterでニコニコ動画を運営するニワンゴの取締役K氏を名乗るユーザーが、他の多くのユーザーから同社の違法動画の削除基準について質問を受けていた。K氏は当初「削除するかどうかは著作権侵害が明らかになった後、つまり裁判所で判決が下った後」としていた。  しかし会話の途中にアニメ監督の北久保弘之氏(※編註=本人確認済)が「自分の作品がニコニコ動画に不法にアップロードされている。自分は著作者人格権しか持たない。当該ファイルは改変なしの丸ごと一本アップなのでそれらのうち同一性保持権を盾に取ることはできないが、それでも通報すれば削除に応ずるのか」という旨の質問をしてきた。するとK氏は、これまでの態度を一変させ、削除すると言ったばかりか、名誉声望保持権に基づく削除要請に対しても応ずるかのような発言をしたのだ。  これは要するに、一作品あたりでもかなりの数がいるアニメスタッフのひとりひとりに、「お前のサイトは自分の作品を公開するのにふさわしい場所ではないから削除せよ」と言われたらその通りにする、と宣言したのに等しい。  もちろんK氏を名乗る人物のTwitterでの発言を同社の公的なコメントであるとすることもできない。ただ、コンテンツを扱う企業の取締役の地位にある人物の著作権法に対する知識・認識がこの程度であると思われることは、たとえ噂レベルであっても同サイトの利用者やコンテンツの各種権利者に不安を抱かせるのに十分であろう。  ニコニコ動画は、ネット時代の新しい著作権のあり方を模索すると称して、「ニコニ・コモンズ」というサイトを立ち上げ、二次創作を広く認める素材コンテンツの収拾を行なっている。「盗品」の管理がきちんとできないと、こちらの崇高な理念も根元から崩れてしまいかねないだろう。
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「著作者が見つからなければみんなのモノ!?」波紋を広げる片岡Kの"ネット画像本"

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どこかで見たことある写真ばかり......。
 12日に発売された書籍『ジワジワ来る○○(マルマル)』(アスペクト)が波紋を呼んでいる。これは映画監督で演出家の片岡K氏が、自身のTwitter上でネットから拾った面白画像に"ジワジワ来る"とコピーを付けてアップしていたものを一冊にまとめた本。「猛犬注意」の看板のある犬小屋の中のチワワ(ジワジワ来る犬小屋)、アルバイト募集のポスターに見入る仮面ライダーもどき(ジワジワ来る不況の波)など、"パッと見では分からないが、二度見するとジワジワ笑える"というコンセプトだ。  しかし、この本に収められている画像はすべて、ネット上に流出している著作者不明のもの。それを書籍化することについて、発売前から片岡氏のフォロワーなどからは「出典不明の画像を本として出版してもいいものなのか」などと疑問の声が上がっていた。  これに対し、片岡氏は「出典を辿れるものなら辿りたいが、それは事実上不可能」「このような画像が法律的にグレーなままネット上を漂流してしまっていることは残念だが、もはやどうしようもない」と画像使用の正当性を主張。「過去に流出した画像には現行の著作権やロイヤリティーのルールを当てはめても仕方なく、まったく違うルールを作る以外に方法はない。例えば、営利目的に広く活用された時などには、速やかに著作者が名乗り出たらいい」としている。  実際に発売された本には、「著作者が見つからない以上、これはもうみんなのモノ。僕はそう考えることにした」という但し書きがあり、もし該当する著作権者がいれば、編集部に申し出てほしいと呼び掛けている。こうしたネット画像本に詳しい出版関係者に話を聞いた。 「この手の、ネット画像を拾って集めた本というのは2008年くらいに一度ブームがあって、最初に出た本はコンビニを中心に10万部を超えるベストセラーになりました。この成功を受け、中堅の出版社から次々に類似本が出版されましたが、それらも7~8万部は売れたようです」  手間も制作費もかからないので、出版社にとってはいい金脈だったようだが、気になるのは著作権の問題。 「もちろん、著作者が分からないからといって勝手に使っていいものではないです。しかし、一度売れてしまうとそのへんの倫理観も麻痺してしまうというか......。しかも、著作権侵害というのは基本的に親告罪(被害者が訴え出て初めて罪になる)ですからね。片岡さんも、そのへんのグレーな事情は分かっていると思いますよ」(同関係者)  クレームは第三者からばかりで、著作権者本人からのクレームはいまだに一件もないとする片岡氏だが、そもそも、このTwitterや本の存在を知らなければクレームのつけようもない。  この騒動、まだまだ世間の議論を引き起こしそうだ。
ジワジワ来る○○(マルマル) 確かに面白いけど......ね。 amazon_associate_logo.jpg
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海賊版出し放題!? AppleもGoogleも放置状態の電子書籍マーケットの現状

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人気作品が並ぶAppStoreだが......
 11月はじめ、中国のApp Store(AppleのiPhone・iPad用のコンテンツストア)において、日本の作家の作品を許諾を得ずに翻訳し、公開していた業者があったことが発覚した。  まずはじめに発見されたのは、人気作家・村上春樹の『1Q84』などであったが、その後日本のベストセラー作家の作品が次々と見つかった。  コトはAppleのストアだけの話ではない。Android Marketの「コミック」カテゴリを開くと、いくつもの英訳された「MANGA」アプリが見つかる。その大部分は集英社などの大手出版社から発売された、海外でも人気の高い作品である。日本の出版社や著者と、きちんと契約を結んだ上で発行されているかどうか、極めて疑わしい。  App Storeで販売するアプリやコンテンツの審査が非常に厳しいことで有名なAppleだが、実は著作権関連のチェックは行っていない。原則的にアプリ製作者がAppleに出さなければならないのはアプリ本体くらいで、原著者とアプリ製作者との間に結ばれた契約書の提示などを求められることはないのだ。水着の女性の写真集などを作って申請すれば、たちまち審査で弾かれてしまうのだが、無名の作家の小説を密かに翻訳してアップしても、それが正規版であるかどうかのチェックは行われず、審査を通過してしまう。  Android Marketの場合は微妙に異なるが、著作権の確認が行われない点は共通だ。まず、Android Marketの場合、販売開始までのプロセスで審査は行われない。発売後、購買者からの「通報」によりそのコンテンツが違法なものであるかどうかを確認するというシステムを採用しているのだ。  海賊版の流通防止という点において、一見Appleよりマシなシステムに見えるが、実は抑止力は大差ない。あるコンテンツが海賊版かどうかは、契約の当事者である業者と原著作者にしかわからないことで、どんなに怪しくても第三者が「それは海賊版だ」と断じることができないからだ。この「通報」によって海賊版を排除することができるのは、著者本人とオリジナルの版元だけということになる。  すでに当サイトにおいて報じたこともあるが(http://www.cyzo.com/2010/11/post_5901.html)、AppleにしろAndroidにしろ、クリエイターの表現の自由を拘束することにはやたら熱心ではあるが、クリエイターの知的財産を守ろうとする意識は希薄であるように見受けられる。 ◆誰が作家を守るのか?  このように、現状のシステムでは、海賊版の流通による知的財産権の侵害を防ぐ手立てはない。  本来、こうした権利の管理は出版社が手がけてきたものであるが、出版業界の一部には電子書籍全体を敵視する傾向があり、その結果、電子出版で発生する各種トラブルへの対応策が整っていないという現状がある。  先に述べたAndroid Marketの「海賊版とおぼしき」翻訳漫画アプリにしても、日本の版元がチェックすれば本当の海賊版なのかどうかすぐに判明するし、著者の代理人としての立場から彼らが通報を行えば、一発でマーケットから排除することが可能なはずだ。  今後電子出版が盛んになり、作家が個人レベルで作品を刊行するようになると、海賊版問題はさらにあちこちで頻発するようになるだろう。作家は作品を執筆するのが本業であり、刊行した著作物の権利を守ることまでとても手がまわらないからだ。  実は同様の問題はPC用のWeb上でも発生している。この場合主に被害者となっているのは、同人漫画作家だ。違法にスキャンされたデータが、海外で製作された「画像収集ソフト」で集められ、アフィリエイト収入を目的としたサイトに配信されているのだ。同人作家の多くは、自作がそういう形で違法に再配信されていることをほとんど知らないか、知っていてもどうすればいいのかお手上げ、という状態に陥っている。誰か、彼らの代わりに権利を管理する者が必要なのである。  海外には、出版エージェントという業態がある。作家の原稿や規格を出版社に売り込み、ギャラの交渉を行い、契約内容の管理を行うというのがその業務内容だ。日本においては、この機能は出版社が請け負っていた。しかし、電子書籍時代の到来に伴い、出版社がこの機能を喪失すれば、日本でも出版エージェントがその役割を担うことになるのかもしれない。いずれにせよ、誰かが作家たちの権利を守らなければ、夢の電子書籍市場は違法業者が跋扈する荒地となってしまうことは間違いないだろう。 (文=高安正明)
電子書籍の作り方、売り方 つくれる。 amazon_associate_logo.jpg
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JASRACに突撃取材!! 著作物使用料の徴収方法と分配方法の真実(後編)

前編はこちら ――さて、巷で話されている都市伝説の真偽を教えてください。「筋肉少女帯の大槻ケンヂが自分のエッセイに自身が作詞した筋少の曲『高円寺心中』の歌詞を載せたところ、JASRACから歌詞の著作物使用料を徴収されてしまい、しかもその金額が印税としてまったく還元されなかった」というウワサがあります。2008年にこれは大槻さん自身が、雑誌「ぴあ」で単なるウワサだと否定しましたが、一般的にこのような事例はありえるのでしょうか? また、本に歌詞をどの程度引用した場合から申請が必要になるのでしょうか? JASRAC 出版物に歌詞を載せる場合、歌詞を書いた方が自身の曲を載せたとしても、著作権の手続きを取らなければならないのは、出版の責任者である出版社になりますので、ご自身が著作物使用料の請求を受けることはありません。歌詞の「引用」などは、法律上認められています。引用の判断は、著作権法の第32条に「公表された著作物は、引用して利用することができる。この場合において、その引用は、公正な慣行に合致するものであり、かつ、報道、批評、研究その他の引用の目的上正当な範囲内で行なわれるものでなければならない」という引用の規定があります。歌詞を1行ならいい、2行ならいいという話ではなく、引用の仕方が問題で、この対応はケースバイケースにならざるを得ません。でも、丸ごと歌詞を載せる、楽譜を載せる場合は、通常の利用になるので手続きは間違いなく必要です。このような引用の問題については、個別の具体事例を法文上に盛り込むことはできませんから、裁判で争われることもあります。 ――「Twitterで歌詞をつぶやいたら、著作物使用料が発生する」とニコニコ動画のニコニコ生放送でJASRACの菅原常務理事が発言されました。今後、Twitterにはどのような対応を取られるのでしょうか? JASRAC Twitterについては現在検討中です。管理する可能性もあります。 ――使用料を徴収するとしたら運営会社でしょうか? 個人でしょうか? JASRAC どなたに手続きをお取りいただくかは、未定です。でも、個人の方にお願いするのは難しいでしょうね。 ――既存のネットサービスにはどのように対応されているのでしょう? JASRAC ネットで許諾を得ていない歌詞が掲載されている場合はJASRACで調査し、見つけたものには連絡して、契約の手続きを求めています。個人でホームページに歌詞を載せる場合は、1曲あたり1カ月150円、1年の契約で1200円で掲載することが可能です。 ――JASRACは権利者のことを考えて公明正大に職務を全うされているように思えます。ですが、世間のJASRACを見る目は非常に厳しい。この点はどのようにお考えですか? JASRAC 飲食店などの社交場の契約で、支払いを長年にわたって拒否されていた利用者の方が、法的措置になった場合に多額の金額を徴収された、という報道に対して反感を持たれてしまっているように思います。Aという店には長年支払ってもらっているのに、その隣にある店のBが拒否されては、Aとの公平性を欠くのでBを放置できません。社交場から著作物使用料を支払ってもらうのは、粘り強く交渉するしかありません。実は、JASRACの職員が著作物使用料の徴収に出向いて、危険な目にも遭うことがあります。それでも、権利者に著作物使用料を分配することが目的なので、著作物使用料の支払いを拒否している人を放って置くわけにはいきません。 ――ネットユーザーというのは、YouTube、ニコニコ動画など、無料で音楽・動画を利用することに慣れています。包括契約で、ニコニコ動画やYouTubeはJASRACに支払う契約を結んでいますが、今後、Twitter、USTREAMなどさらに新たなネットサービスが台頭することは予測されます。この状況の中でJASRACはどのような対応を取っていくのでしょうか? JASRAC ネットでの音楽配信などのビジネスが成り立たないと、今後、音楽業界は崩壊する可能性があります。JASRACのような管理事業者が著作物使用料を決める場合には、著作権等管理事業法にもとづいて、利用者団体などからあらかじめ意見を聴取するよう努めなければなりませんので、こちらで勝手に届けを出して、勝手に管理することはできません。NMRC(ネットワーク音楽著作権連絡協議会)などネットを使った新しいビジネスを行う人達と、意見交換できる窓口は常に設けているので、スピーディーに決めていきたいと考えています。そのほか、ネット配信で著作物使用料を正当に評価できる仕組みを考えないと、最終的にユーザーが不利益をこうむることになります。 ――やはりもっと、JASRACの職務内容を世間に周知徹底する必要がありますね。 JASRAC ユーザーに著作権の大切さをどう理解してもらうか、広報していくかは常に模索しています。役員がニコニコ動画に出演したり、誰もが来てもらえる公開シンポジウムを開いたり、努力はしている。ほかにも、ラジオCMを流しているほか、中学生、高校生の訪問を受け入れたり、大学の講座で話もしています。若年層に向けたアプローチを今後もっと考えていこうと思っています。  * * *  作詞、作曲者が作った楽曲がテレビ、映画、カラオケなどで利用された際に、その利用者から著作物使用料を徴収し、その作家に正当に分配するJASRACの存在は、作詞、作曲者には非常に貴重な存在だ。音楽を愛する人であれば、自分が利用した音楽の著作物使用料が作詞家、作曲家に分配されるなら文句を言う人はいないだろう。だが、JASRACの著作物使用料の徴収方法などはまだまだ世間に浸透しておらず、今後もJASRACのあり方については、時代に即した制度にするべく議論が必要だ。JASRACによって、日本の音楽文化がさらに発展することを願いたいものだ。  そんな中、今回のファンキー末吉とJASRACの議論を記事にするのは、今回の取材をもって終結させようとしていた矢先、ファンキーがまたも自身のブログで激昂した。「今回の私の申し出をJASRACが断ったとしたら、お話しには行きたいが、客を入れたりネット中継されるのは勘弁してくれ、と言うならば!! そしたらワシはJASRACに出向いて行こう!! 来てくれないならワシから出向いて行くしかない!! ワシは著作権料を支払いたいのだ!!」(文章一部略)  どうやらファンキー氏、JASRACに自ら乗り込むつもりだという。JASRAC VS ファンキー末吉、第2章。事態の進捗にご期待あれ。 (文=本城零次<http://ameblo.jp/iiwake-lazy/>)
JASRAC概論―音楽著作権の法と管理 著作権って、大事なのよ。 amazon_associate_logo.jpg
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JASRACに突撃取材!! 著作物使用料の徴収方法と分配方法の真実(前編)

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JASRAC公式サイトより
 一般社団法人日本音楽著作権協会JASRAC。音楽の著作権の許諾・徴収・分配を行っている団体であることは知られているが、実際、その詳細を明確に説明できる人は僅少だろう。前回の取材で、音楽バー「Live Bar X.Y.Z.→A」への著作物使用料の徴収方法とその分配方法に疑問を呈するドラマーのファンキー末吉が「JASRACとの公開討論を望む」と発言。彼の声を直接届けるべく、日刊サイゾー記者・本城零次と編集SがJASRACを訪問し、直撃インタビューを行った。 ファンキーの意向を伝えたが、「個別の交渉を公の場で議論するのは、プライバシー、個人情報保護などの観点からも不可能」とJASRACから"公開討論"の要望は断固拒否されてしまった。だが、そこで引き下がる我々ではない。あくまで、「一般論として」という形式ではあるが、JASRACの著作権の徴収と分配の実態、さらに、都市伝説として知られる"オーケン事件"の真相、著作権制度とネット社会のあり方を2時間に及んで取材した。 ――改めて読者に向けて、JASRACとはどういう団体なのか説明していただけますでしょうか? JASRAC JASRACは、著作権等管理事業法という法律に則った音楽の著作権を管理する事業者です。ほかにも音楽の分野で12社の著作権管理事業者があり、それらは営利法人ですが、JASRACは非営利で、手数料以外はすべて権利者に分配しています。事業目的は著作権の保護、利用の円滑を図り、音楽文化の発展に寄与すること。国内の作詞者、作曲者、音楽出版者など1万5000者以上の権利者と信託契約を結んで著作権の管理を受託しているほか、JASRACの管理曲を利用する場合には、利用者にJASRACの許諾を取っていただいて、著作物使用料をお支払いいただいています。海外の管理団体、84カ国、地域、114の管理団体と相互管理契約を結んでいるので、日本でビジネスとして流通している楽曲のほとんどと言っていいかもしれません。国内で利用実績のある日本曲120万曲、外国曲149万曲計269万曲をデータベースで管理し、ホームページで公表しています。また、文化事業として、著作権の講座を複数の大学に設けているほか、新人アーティストの支援ライブなどの事業も展開。JASRACの管理事業を通じて、権利者の著作権が保護され、利用される方が、適正な料金で使えることを通じて、音楽文化が普及発展するよう事業を進めています。 ――もし仮に、JASRACがなくなると、世の中にどのような影響がありますか? JASRAC もし、JASRACがなければ、権利者1万5000者がそれぞれ著作権を管理することになり、利用者はコンサートやカラオケなどで楽曲を利用する際に、毎回、各権利者に許諾を求め、使用料を決めて、権利者と交渉することになります。これは双方にとって不都合なことで、合理的ではありません。特に、外国の団体と相互管理契約を結んでいるのは日本ではJASRACだけなので、外国曲も直接海外に許諾を得ないと使えなくなります。例えば、100曲を掲載した歌集(歌本)を作る際に、全てJASRACの管理楽曲であれば、JASRACにだけ届ければ許諾を得られますが、100曲で作詞、作曲者が違えば、200人に許諾を取ることになり、手続きが大変煩雑になります。 ――ドラマーのファンキー末吉氏がマネジャーを務めている音楽バーにJASRACから著作物使用料の要求が来て、徴収方法とその分配方法に疑問を呈し、JASRACと交渉を続けています。JASRACはこの一件をどのように捉えていらっしゃいますか?  JASRAC やはり個別の交渉を公の場で議論するのは不可能です。ここで、著作物使用料の請求の現状について説明させていただければと思います。 社交場での演奏というと、カラオケ、生演奏、ディスコなどのレコード演奏があります。全国に飲食店は70万~80万店程度あり、その中で音楽を使っているかどうかをJASRACが調査して、利用形態に応じた形で著作物使用料を支払っていただいています。音楽を使っている飲食店は約20万店強。カラオケは約18万店、生演奏が約1万店、そのほか、旅館などがあります。カラオケは全店舗中90%の管理率、ライブハウスなどの生演奏の店が70%ぐらいの管理率です。カラオケは通信システムなので、全曲曲目を捕捉可能で、管理楽曲は年間トータルで40億~50億回使われて、使われた回数通りに権利者に分配されます。 ――では、著作物使用料の分配についてさらに詳しく教えてください。 JASRAC 分配には、曲ごとに徴収した著作物使用料を基に行う曲別分配、演奏会や映画など年間の包括利用許諾契約を結び、全量報告を基に行うセンサス分配、それからサンプリング分配があります。現在、サンプリング分配を行っているのは、テレビなどにおけるレコード放送(テレビ番組の背景音楽としての利用)、社交場の生演奏、レンタルCD、有線放送等の4つの利用区分のみ。テレビなどにおけるレコード放送、レンタルCDは技術的に今後、どの曲が何回使われたのか、捕捉が可能になっていきます。 生演奏で利用した楽曲をすべて報告するのは、利用者(ライブハウスなどの経営者)の負担が大きく、また、曲の正確な題名、作詞、作曲者も分からない場合があり、そのためサンプリングにならざるを得ません。でも、ライブハウスなどにも曲目をJASRACに提出してもらうように要請はしてます。サンプリングのモニター店は、統計学の観点から選んだ全国800店舗(年間)で実施しています。  800店は順次変わり、地域、規模もそれぞれ異なる店を統計手法に基づきランダムに選んでいます。サンプリングは全国を対象に行っているので、効率良く実施するために統計調査を専門とする外部の社団法人に委託しています。そこでの調査結果と、ライブハウスから提出された曲目リストの報告も加味して、著作物使用料を分配しています。でも、サンプリングなのでやはり、もれてしまう可能性はあります。100%と言えないのは確か。今後はさらに、サンプリングの精度を上げることが課題ですね。 ――著作物使用料を分配する際には、手数料を取っていらっしゃるんですよね? JASRAC 手数料は、権利者に分配する段階で控除させていただいています。手数料率の平均は、一昨年度では12.1%です。この数字は、外国の著作権管理団体と比べてかなり低い数値です。JASRACは、非営利の法人であり、ほかの公益法人のように国からの補助金なども一切受けていません。 ――その手数料というのは、妥当な数字だとお考えですか? JASRAC 迅速で公正な管理を行う上で、可能な限り低い料率と考えています。ただし今後、さらに合理的な管理方法を実現することで手数料が下がることはあるでしょう。特にインターネットの楽曲の利用は数が膨大で、利用者も曲目を報告するのが煩雑なため、利用申請の簡素化を図る「一般社団法人 著作権情報集中処理機構(CDC)」という団体を作り、申請の権利処理を早くするようにしています。 (後編に続く/文=本城零次<http://ameblo.jp/iiwake-lazy/>)
JASRAC概論―音楽著作権の法と管理 著作権って、大事なのよ。 amazon_associate_logo.jpg
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JASRACに激怒するファンキー末吉に突撃取材!! 著作権料徴収法と分配法への緊急提言

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"音楽業界のタブー"JASRAC問題に噛みついたファンキー末吉氏。
 爆風スランプで活躍し、LOUDNESSの二井原実、筋肉少女帯の橘高文彦らとのバンド・X.Y.Z.→Aのほか、中国でも演奏活動を行うドラマーのファンキー末吉。そんな彼がブッキングマネジャーを務める音楽バー「Live Bar X.Y.Z.→A」に社団法人日本音楽著作権協会(JASRAC)から著作権料の支払いを求める書類が届くが、ファンキーはJASRACの料金徴収法とその分配法に疑問を呈した。  飲食店やライブハウスの場合、面積によって著作権料を徴収する包括的利用許諾契約を取っているが、どのアーティストの楽曲を使用したかについては不明なまま料金を徴収している。JASRACはモニター店でサンプリングしたデータを元に、使用料を割り出して還元しているが、ファンキーは「X.Y.Z.→Aの曲は、それが1円も還元されていない」と主張。「いつでも著作権料はお払い出来ます。ただそれをどこに分配するのかちゃんと説明して下さい」と分配の明確化を求めて、JASRAC側と数カ月にも渡る交渉を行っている。  彼がブログに綴った「これではヤクザのみかじめと同じである」というインパクトある一文をフィーチャーしつつ、昨年11月に日刊サイゾーでその情報を報じたところ(参照記事12)、ネットを中心に一大センセーションを巻き起こした。そこで、現在も交渉継続中のファンキーに単独インタビューを敢行。爆風スランプの代表曲「Runner」の作曲家として莫大な印税を得るというJASRACの恩恵も享受しながら、一方、著作権料を支払う側の心境も理解する彼ならではの主張を明かしてくれた。 ――アーティストでここまで明確に、JASRACにモノを申した方は史上初だと思います。それはなぜでしょうか? ファンキー 印税をもらう側の立場で言うと、JASRACからの印税は、アーティストが売れてない時は当然ほとんどもらえないから、別に争いを起こさない。仮に争いを起こしても、もらえる額は少ない。でも売れてからは、(サンプリングの特質上)印税は事実上支払われているから争いを起こす必要がない。売れてから「もらいすぎだ」と思っても、楯突くともらえなくなる可能性があるから、もらう側はこれまで文句を言う必要がなかった。テレビやラジオで曲が流れても必ず印税が入るわけではなく、レイティング週(3カ月に1~2週間のサンプリング調査期間)だけに調査したものをJASRACが払っているという話は知っていた。 ――サンプリングによって、対象外になったものはゼロになり、対象内となったものにはよりバイアスがかかって、印税額が加算されるのが現行のシステムです。さて、X.Y.Z.→Aの場合は、各地のライブハウスで演奏を行っているのに、その項目の印税が入ってこないという話ですが......。 ファンキー X.Y.Z.→Aは音楽出版も自分が管理していて、自分で印税の明細を打ち込んでいるから全部分かる。曲の利用形態には、有線ラジオ、社交場(カラオケ、生演奏、ライブハウスもここに該当)、インタラクティブ配信(iTunes、着うた)などの項目があるが、社交場からの項目の金額が一切ない。X.Y.Z.→Aは結成10年で累計300本ぐらいライブハウスでライブをしていて、毎回20曲演奏しているから、約6,000曲分の印税が1回も来ていない。多いときは年間100本ライブをやっていて、各店舗が包括契約でお金を払っているはずなのに、(印税が)ない。これはおかしい。X.Y.Z.→Aは売れてないから印税が来ないのか? でも、それでいいの? 包括契約でライブハウスからお金を取っているが、どのように配分しているのかは不明瞭。包括契約以外にも方法はあると言うが、BGMの著作権料は徴収しなかったり、それはそれで問題がある。それらを全て公の場でちゃんと説明してくれと言うと、密室じゃないとダメだと言う。こちらはちゃんと分配されるということをクリアにしてほしいだけ。 ――JASRACとはどういう形で交渉を行っているのでしょうか? ファンキー JASRACの担当者が店に来て、支払いの督促をしてくるが、必ず密室に追い込む。担当の方は人を説得するプロなんだけど、いい人で高圧的ではないし、話も聞いてくれるから、こちらが相手をイジメている気分になって辛い。だからヘトヘトになる。向こうはこの交渉が仕事で金をもらっているけど、こっちは無償で1時間犠牲にしている。JASRACはJASRACの言い分を言っているだけで、こちらは分配の仕組みのブラックボックスを明らかにしたいだけだから、話はいつも平行線になってしまう。料金徴収が難しいということは本当によく分かるんだけどね。JASRACとしてもやりようがないのも分かる。 ――ファンキーさんは、中国映画『瘋狂的石頭(クレイジーストーン)』の音楽を担当されるなど、中国でも演奏活動をされています。中国の著作権事情は? ファンキー まあ、中国は海賊版だらけですよね。中国のトップは頭いいと思う? 悪いと思う? 海賊版を本気でなくそうとしたら1週間でできると思わない? 中国はなんで海賊版だらけなのか? 国家主席が取り締まろうと思えば、取り締まることもできる。でも、それをやると海外に莫大な著作権料を支払わなければならない。だから、今は音楽CDも映画のDVDも海賊版だらけにしている。映画のDVDは100円ぐらいだから、世界で一番中国人が映画を観ている。だから今はそれを利用して若手クリエイターを育て、(彼らが成長し)中国が海外から著作権料をドーンと取れるようになってから、海賊版を取り締まるだろう。そうすれば、「アメリカさんお金をください」って莫大な額が取れる。これは笑い話なんだけど、著作権の一つの側面を象徴している。 ――さて、ファンキーさんほど一時代を築いた人が、このJASRACとの闘争にどう落とし前をつけるのか、世間も注目していると思います。今後はどうしていくお考えですか? ファンキー このケンカは見ている方は面白い。JASRACも労力をかけて損したし、僕も多大な損をした。僕はプール金よりも多大な労力を払っていると思う。この交渉は、言ってみればネットを使った"劇場戦争"。観客は、JASRACが激怒して僕をブタ箱に入れるのを見たいだけ。でも僕は分配をはっきりしてほしいだけで、JASRACの根本を変えてやろうとは思ってない。もしそれをやるなら、そのためには政治に出馬しなけりゃならない。僕もこの人(記者)が記事にしたおかげで、上げたコブシを降ろせなくなっている。JASRACから「契約してください」と言われても、納得してないからするわけにいかない。契約する条件を明確にしてください、という話をするしかない。これはもう、僕の上げたコブシではなくなっている。「明確にしろ」という、国民の声が後ろについている。そう言いながら、契約にハンコ押したら私はこの国で生きていけません。万全な解決は無理で、それは法律を変えなきゃいけない。だからJASRACとの交渉を密室ではなく、"公開討論"でやろうと。著作権の意識を国民がより深めていくためにも意義があることだと思う。 ――その公開討論は、ファンキー末吉VS.JASRACではなくて、専門家のジャーナリストや一般の商店主などの論客も参加して、『朝まで生テレビ!』風にやるのはどうでしょうか? ファンキー そうそう、それがいいね。それをやれば、僕がアンチJASRACじゃないことがよく分かると思う。JASRACを擁護する発言が意外に多いことに見た人はびっくりすると思う。ライブハウスの店長に出てもらって「1曲ずつ報告する? そんなことできるか」って一喝してもらったり、「有線放送はどうやっているんですか?」と一つ一つ解き明かしていく。そんな議論を重ねていって、包括契約の全貌が見えて、どのように分配して、手数料をいくら取っているかをJASRACの口から明らかにしてもらう。さらに別の徴収方法の問題点とかも徐々に明らかになって、出来れば時代に合った新たな徴収方法の模索が始まりさえすれば、「自分のところに還元されなくても納得しました」という風になるかも知れないし、見ている人全員に全貌が明らかになる。 ――そのプロセスから明確化していくと。 ファンキー そう。そのプロセスを見せて、密室をやめればいい。例えて言えば、空気にお金をつけて、「その空気を集めてやってるんだから文句言うなよ」っていうのがJASRACの基本的な立場。それは著作権者もよく分かっている。JASRACはがんばっているけど、分配法が不透明。透明にするにはお金が掛かるけど、それは新聞広告を打つよりも意義があるんじゃなかと私は思う。自分の払った著作権料が自分には返ってこなくても、ジョン・レノンのところに行ったとか、どのアーティストのところに行ったのかがはっきり分かれば「JASRACはいい仕事をしてるな」ってなるはず。公開する場所は、USTREAMでもいいし、ニコニコ動画でもいい。雑誌や日刊サイゾーで月1でやってもいいし。それもエンタテインメントにしませんか?  * * *  遠藤真志というアーティストにカバーされた爆風スランプの「Runner」が、ダイハツ「ムーブカスタム」CMに2年間起用され、そこで得た印税額は「トータルで八王子に家が買えるぐらい」だったことも明かしてくれたファンキー。作詞家、作曲家ら著作権者からすれば、テレビ、ラジオ、カラオケなどで使用された楽曲からも印税を分配するJASRACは、非常に有益な存在と言えるだろう。だが、ひとたびその著作権使用料を支払う側となると、ファンキーが語るように使用料の計算方法、そして、包括契約の場合の分配方法には疑問が残る。事態の解決の糸口を見つけるためにも公開討論を提案するファンキー。このオファーにJASRACはどのような反応を示すのか? 完全スルーか、まさかの合意もありえるのか!? 日刊サイゾーがJASRACに質問状を送り、疑問を突きつける衝撃の2時間インタビューを敢行。その模様は近日公開予定。刮目して待て!! (文=本城零次) ●ファンキー末吉(ふぁんきー・すえよし) 1959年7月13日生まれ、香川県出身。ドラマー。84年、サンプラザ中野、パッパラー河合、江川ほーじんと爆風スランプとしてデビュー。江川の脱退、バーベQ和佐田の加入もありながら、爆風スランプは「Runner」「リゾ・ラバ」「大きな玉ねぎの下で」「旅人よ~The Longest Journey」などをヒットさせた。1998年のバンド活動休止後は、LOUDNESSの二井原実、筋肉少女帯の橘高文彦、バーベQ和佐田とX.Y.Z.→Aを結成し、08年には全米デビューも果たしている。
JASRAC概論―音楽著作権の法と管理 話せば、分かりあえると思うよ。人間だもの。 amazon_associate_logo.jpg
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