ピン芸人のパーマ大佐のネタが騒動を引き起こしている。童謡「森のくまさん」の替え歌ネタを収録したCDが、曲の訳詞者から著作者人格権侵害であるとして300万円の慰謝料請求を受けたのだ。騒動発覚以降、パーマ大佐は同ネタを行っておらず、実質的に封印状態にある。 これを受け“元祖替え歌芸人”といえる嘉門達夫の発言が話題となった。嘉門は、替え歌を作るにあたり、トラブル防止のために権利者にきちっと許可を取っているという。 「パーマ大佐のネタは、既存の歌詞に、彼オリジナルのネタを付け足したもの。レコード会社は、訳詞者に許諾願いを出しましたが本人が拒絶。しかし、商品が発売されてしまったことが、訳詞者側が主張するトラブルの内容です。一方で、嘉門さんのネタは歌詞を全面的に変えるもので、パーマ大佐のネタとは異なるものです。そうであっても、きちっと権利者に許可を取る姿勢は、仕事に対する誠実さを感じさせますね」(放送作家) パロディネタは、笑いには欠かせない要素だといえる。中でも、モノマネは代表格だろう。極端なデフォルメなどを含むため、本人の怒りを買わないためにも、モノマネ芸人はきちっと筋を通す人間が多い。 「松村邦洋さんは、モノマネ相手にきちっと毎年お歳暮を送ることで知られています。それにより、西田敏行さんや、津川雅彦さんは“笑って許してくれる”どころか“ネタのアドバイス”をくれる関係となっています。さらに、コロッケさんも、美川憲一さんに挨拶を欠かさず、今ではジョイントコンサートをする関係になっています」(同) パロディネタを行うは、対象に対するリスペクトはもちろん、なにより常識的な手続きが求められるのだろう。その点でいえば、今回の件はパーマ大佐側に非があるといえるかもしれない。 (文=平田宏利)『パーマ大佐 - 「森のくまさん」 ショートver. - YouTube』より
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“著作権完全無視”の韓国で、企業も自治体もやりたい放題! 「ポケモンGO」が早くも社会現象から社会問題へ!?
早くも大ブームとなっている「ポケモンGO」だが、お隣韓国ではまだ正式リリースされていないにもかかわらず、なぜか一部の地域でポケモンが出現。束草(ソクチョ)市や蔚山(ウルサン)市は連日、プレーヤーで大にぎわいだ。 そんな中、ポケモンの韓国内ライセンスを管理する「ポケモンコリア」は、韓国でのフィーバーぶりにかなり困惑しているようだ。というのも、「ポケモンのキャラクターやロゴはもちろん、ポケモンという単語そのものが著作権対象となっている」(ポケモンコリア関係者)といい、人気に便乗している自治体や企業のほとんどが、“著作権完全無視”状態なのだ。 例えば、いまや「ポケモンGO」が地域経済に大きな影響を与えている束草市は、次々と集まってくるプレーヤーたちを喜ばせようと、「ポケモンの聖地へようこそ」というプラカードを市の入り口に掲げている。まるで「ポケモンGO」オフィシャルタウンと言わんばかりのアピールである。 しかも、イ・ビョンソン束草市長は、自身のFacebookプロフィールを、ゲームに登場するウィロー博士を真似て「イ博士」と変更し、モンスターボールを片手に白衣を着たオリジナルキャラクターまで作っている。それどころか、ウィロー博士風にコスプレして市内を歩き回っているという。 もちろん、束草市はそれらのマーケティングをするに当たって、著作権使用量は一切支払っていない。まさに、束草市全体が著作権侵害を行っている状況なのだ。 こうした厚顔無恥の違法行為は、行政を司る自治体だけにとどまらない。多くの企業が「ポケモンGO」の著作権を無視したまま、自社製品やサービスのマーケティングを展開している。 例えば某大手通販サイトでは、ソウルから束草へ行く日帰りバスツアー商品の販売ページに、ゲームのロゴをそのまま掲載。宿泊施設の画像に、ポケモンのキャラクターを合成しているサイトもある。 セブン-イレブン・コリアは、ゲームのプレイ画面をそのまま公式Facebookに掲載し、「束草地域のセブン-イレブンにポケモンが出没する」と宣伝している。 ほかにも、自社の商品キャラクターを「ポケモンGO」のプレイ画面に合成したり、「ポケモンGO」をコンセプトにしたイベントを開催したりするなど、巧妙な手法を使うところもある。 ポケモンコリアは、「無断でゲームのロゴや画像を使った企業に対して警告の文書を送っており、改善されない場合は法的手段も検討する」としているが、その警告に反応したり、悪びれる様子も見られない。 そもそも韓国は著作権に関する概念が日本よりルーズな国だが、その認識の甘さが見事に露呈した格好だ。そんな失態に歯止めをかけようと、ポケモンコリアだけでなく一部メディアも警鐘を鳴らすが、企業や自治体が久々に訪れたビジネスチャンスを簡単にあきらめるはずもない。 「ポケモンGO」が韓国で“社会現象”から“社会問題”へ発展するのは、まさに時間の問題かもしれない。セブン-イレブン・コリアでも不法使用
被害額は東京オリンピックの予算並み! 無法地帯「FC2動画」壊滅に向けて立ち上がったAVメーカーの熱意
アニメ、マンガ、アダルトビデオまで、インターネット上には無数の日本発コンテンツが、違法にアップロードされている。テレビで放送されるアニメが、翌日には字幕つきでアップロードされるのは、当たり前。中国では、翻訳された日本のマンガが読み放題の、違法なiPhoneアプリまでもが流通している。
そうした違法なアップロードによる被害が総額で幾らになるのかは、計り知れない。
日本書籍出版協会の試算では、ネットを通じて流通する書籍の被害額は270億円。北米では2007~11年の間に1,500~3,000億円もの日本のマンガが違法にアップロードされているという。これに、アニメやゲーム、アダルトビデオを加えれば、天文学的な数字が違法アップロードによって失われていることが、容易に想像できる。つまり、違法アップロードは、日本のあらゆるコンテンツ産業に甚大な被害を与えているのだ。
こうした違法アップロードの温床となっている代表格に、動画共有サイト「FC2」がある。
同社はブログやレンタルサーバーなどの事業も行い、インターネットユーザーには、名の通った企業である。特に、ブログは2011年のデータでブログ開設者数560万人、月間ページビュー約80億PVといわれ、日本国内でもトップの数字を誇っている。
だが、その巨大さに対して企業実体は謎だ。
この企業は、1999年に設立。ネバダ州ラスベガスに本社を置き、日本人の高橋理洋なる人物がCEOであるとされる。この高橋氏が、どのような人物であるかは明らかではない。
そして、本社がアメリカにあることから、日本の国内法は及ばない。そのため、ブログでの悪質な投稿や違法な動画のアップロードに対しても、権利侵害を申し立てることが難しく、FC2自体もユーザーの違法な行為を放置してきたのである。そうした体質ゆえに、同社のサービスは違法にアップロードされたコンテンツが多数配信される無法地帯、いわば犯罪者の天国となってきたのである。
その無法地帯に、ついに権利者が立ち上がった。特定非営利活動法人(NPO法人)・知的財産振興協会(IPPA)に所属する日本国内のアダルト映像制作メーカー7社が、ビデオ作品を無断に公開されたとして、損害賠償を求めて東京地裁に提訴したのである。
原告に名を連ねたのは、有限会社ビタミンエー・株式会社CA・ジャパンホームビデオ株式会社・株式会社ケイ・エム・プロデュース・有限会社プレステージ・株式会社桃太郎・SODクリエイト株式会社だ。7社はFC2の運営する「FC2動画アダルト」に各社が制作したビデオ作品35本が無断で公開されていることに対して、配信の停止と動画の削除および約6,500万円の損害賠償を求めている。
「FC2動画アダルト」は無料でも視聴可能だが、回線速度や一日の閲覧本数には制限がある。ところが有料会員になると、快適な回線速度で無制限になるサービスも提供している。つまり、違法なアップロードを放置するどころか、それを利用して利益を上げてきた側面もある。まさに、著作権無視の総本山ともいえる存在に、アダルトビデオメーカーが率先して切り込んだ理由は何か。
S1、ムーディーズ、SODクリエイト、アリスJAPAN、ケイ・エム・プロデュースなど、多くの原告メーカーが加盟しているコンテンツ・ソフト協同組合(CSA)の理事長は語る。
「きっかけは、アダルトビデオの業界5団体が協力して、知的財産振興協会での海賊版対策への取り組みを始めたことです。これまでは各団体、各メーカーともに海賊版対策についてはバラバラに実施していました。知的財産振興協会は、それでは海賊行為に十分な対策、対応が取れないことから、各団体、各メーカーが協力するために結成されたという経緯があります。協会の設立以降、対策を進めていく中で“FC2動画アダルトを何とかしたい”というのは、各社共通の思いだったのです」
アダルトビデオ業界の「FC2動画アダルト」によって受けている被害額は、どのくらいになるのか。昨年、知的財産振興協会がFC2に対して行った削除件数は約9,500件。今年は9月までで約1万2,000件に達している(CSA会員だけではなく、IPPA加盟の他団体の審査済作品も含む)。
「21カ月間で合計2万1,500件、正規品DVDの1本販売価格を2,980円とすると、6,407万円の被害ということになる。これはDVD販売価格を基準として計算されていますので、正規の動画配信価格を基準とすれば被害額は変わります。しかし、違法動画で一番問題なのが、その再生、視聴された回数です。インターネットでの違法動画は、1人が視聴するのではなく、多くの人々が再生、視聴します。6,407万円という数字は、違法動画1件あたり1回しか再生、視聴されなかった場合の金額です。10回再生されれば×10、100回再生されれば×100、1,000回視聴されれば×1,000と被害額が跳ね上がります。知的財産振興協会で削除したFC2動画アダルトでの違法動画については、再生回数平均が約1万回。6,407万円×10,000回で6,407億円にもなるのです」
2020年の東京オリンピックで東京都が想定している予算は約6,000億円。それと同規模の収益が、違法アップロードによって奪われているということになる。これは、決して見過ごすことのできるものではない。これまで、FC2に対しては動画の削除や、アップロードした人物の情報の開示を求める仮処分は行われてきた。しかし、FC2側は自社の責任を明確にせず、積極的な対応を行わなかったことでも、批判されている。今回の裁判では、初めてのFC2への損害賠償が含まれているが、「責任を取らせる」意味で効果は高い。
インターネット上にはびこるコンテンツの著作権侵害に関する裁判は数多く行われているが、その中でも、この裁判の注目度は高い。そもそも、アメリカにあるFC2に対して日本国内での提訴を実現させたのは、昨年、改正民事訴訟法が施行されたことが要因の一つである。これは、海外法人が日本向けに事業展開をしている場合などの裁判管轄について明文化されことにある。
本件について報道された10月20日のNHKニュースにおいては、今後に大きな影響を与える裁判という弁護士コメントの紹介もあった。この裁判の結果いかんで、インターネット上の違法にアップロードされたコンテンツへの対策が大きく前進する可能性もあるのだ。
しかし、初めてのケースゆえに、今後の争点やスケジュールはどうなっていくのか? 原告側弁護士の畑中鐡丸法律事務所に聞いた。
「争点としては、まず裁判の管轄です。すなわち、本件について、サーバーが所在するアメリカを中心に見て、アメリカの問題とするのか、もしくは、視聴者の多数が存在する日本を中心に見て日本の問題とするのか。そのいずれによってかで、管轄が日本にあるかどうかが問題となります。これを乗り越えたとしても、各ユーザーの不法行為を『FC2自身の行為』とみなすことができるのか、ユーザーの行為によってFC2のサイトは賑わっており、アフィリエイト等を介してFC2が儲けているということから、FC2自身が著作権侵害の主体とみることができるかどうか、が問題となります。訴訟開始直後であり、どのような進行になるのかは不明ですが、新規な論点をはらんでおり、重大な訴訟と思われますので、慎重に進められることかと存じます」
どうも、無法地帯を壊滅させるためには、なかなか困難がある様子だ。
しかし、アダルトビデオメーカーが立ち上がったことをきっかけに、今後は一般メーカーも含めFC2に対して、被害に遭っている著作権者が次々と訴訟を起こすこともありえるだろう。FC2ではアダルトだけでなく非18禁の動画投稿サイトも運営しているのだが、こちらには日本のメーカーが制作したアニメが、無数に違法アップロードされているからだ。そうした被害を受けている企業のひとつ「ソニー・ミュージックエンタテインメント」に話を聞いたところ「違法アップロードされた動画が多数存在していることは把握しており、定期的に監視および削除要請を行っています」という。しかし、それがもはやイタチごっこに過ぎなくなっているのが現実だ。
コンテンツを制作し、流通させる人々へのリスペクトもなく、違法行為によって収益を得る企業の存在は許されない。本サイトでは、引き続きこの問題を追っていく予定だ。膨大な情報が流通するネットという文化がもたらした海賊版の蔓延、ゾーニングの不徹底といった問題に対して、この裁判が何らかの一石を投じる事を願ってやまない……。
なおFC2側に取材を申し込んだところ「取材にはお応えすることはできかねます。全ての主張は、法廷で明らかにさせていただきます」との回答があった。
(取材・文=昼間たかし)
同人誌を売るコミケを守ることが、なぜ日本の国益と世界平和につながるのか?
サイゾーのニュースサイト「Business Journal」の中から、ユーザーの反響の大きかった記事をピックアップしてお届けします。
こんにちは、江端智一です。 前回「著作権侵害の同人誌でも、コミケ会場なら許される? マンガ家の太鼓判『黙認ライセンス』」では、赤松健先生の提唱された「黙認ライセンス」(CVライセンス)の概要についてご説明致しました。 「二次創作同人誌の作者による、コミケ当日だけの販売を許す」ことを、既存のライセンスで実現することは難しいため、赤松先生は、「自分の作品のキャラクターの無制限の使用を許諾しない。だが、コミケでの販売に関しては『見て見ないふり』をする」という新しい概念―― 「黙認」を案出されました。 ●まったく新しい概念「黙認」とは 「黙認」、すなわち「見て見ないふり」というのは、こういうことです。 ・私(赤松先生)は、コミケによる、私の著作物に関する著作権違反が存在していることを「知っている」 ・しかし、コミケ開催中の同人誌の販売については、私(赤松先生)は「騒ぎ立てるつもりはない」。 つまり、CVライセンスは、ライセンスといいながら、実は、なんの許諾もしていないのです。ただ、コミケ開催期間だけは、著作権侵害を「見なかったことにする」という、マンガ家からの宣言なのです。 つづきを読む筆者提供
著作権侵害の同人誌でも、コミケ会場なら許される?マンガ家の太鼓判「黙認ライセンス」
サイゾーのニュースサイト「Business Journal」の中から、ユーザーの反響の大きかった記事をピックアップしてお届けします。
こんにちは、江端智一です。 前回「ライセンスの絶望的な“面倒くささ”を救済するクリエイティブ・コモンズ・ライセンス」では、「クリエイティブ・コモンズ・ライセンス(以下、CCライセンスといいます)」についてご説明しました。 CCライセンスとは、「私の著作物(創作した作品)を使っていいわよ」という意味の「キスマーク」、または「ハンコ」のようなものです。 簡単にいうと、これまでの著作権法の枠組みでは、「許諾」と「不許諾」の2つの「ハンコ」しかつくれなかったことに対して、CCライセンスは、この2つの「ハンコ」の間に存在する、6つの状態の「ハンコ」をつくって、それを著作物に表示し(貼り付け)て使えるようにしたものです。 つづきを読む筆者提供
「初音ミク」長期ブームを支える、販売元クリプトン社の“驚異的な”ライセンス戦略?
サイゾーのニュースサイト「Business Journal」の中から、ユーザーの反響の大きかった記事をピックアップしてお届けします。
■「Business Journal」人気記事(一部抜粋)
アイドル・谷桃子も被害、芸能人を狙う窃盗詐欺の手口を告白「怪しいと思わなかった」
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「初音ミク」長期ブームを支える、販売元クリプトン社の“驚異的な”ライセンス戦略? - Business Journal(5月12日)
こんにちは、江端智一です。 前回、記事『初音ミクの画像は勝手に使ってよい? 「初音ミク」の販売元のクリプトン社に聞く』では、「初音ミク」の販売元であるクリプトン社への取材をもとに、『初音ミク』の絵の権利を有するクリプトン社へ許諾の申し入れをすることなく、その絵を自由に使えることを保証する「ピアプロ・キャラクター・ライセンス(PCL)」についてお話しました。 しかしその最後で、次のような疑問が残ったままでした。 ========================= --「どうしても、PCLから、「初音ミク」のN次著作【編註:初音ミクを使用した他の人の作品を取り込んで、さらに新しい自分の作品を生み出す、いわゆる「他人の著作に依拠して創作された創作物」】が安心して自由に創成される世界が導き出せないのです」と、泣きを入れた私に、クリプトン社の方は、親切に答えてくれました。 「N次創作は、『ピアプロ』(後述参照)が担保しているのです」 --はい?「ピアプロ」って、「ピアプロ・キャラクター・ライセンス(PCL)」のことではないのですか? 「違います。『ピアプロ』とは、弊社が開発したコンテンツ投稿サイトのことです」 もう、この辺から、私の混乱の度は、最大級に達するのです。 ========================= ※当サイト記事『初音ミクの画像は勝手に使ってよい? 「初音ミク」の販売元のクリプトン社に聞く』(4月16日付)より抜粋 そこで今回は、上記の「ピアプロ」の私の理解のプロセスと、「初音ミク」ブームを支えるクリプトン社のライセンス戦略について、ご説明します。 ●「ピアプロ」とは「文化祭期間中の体育館」である さて、まず「ピアプロ」の解説から始めます。 「ピアプロ」というのは、クリプトン社が開発したコンテンツ投稿サイトです。 投稿サイトというイメージがつかみにくい人もいると思いますので、誤解を恐れずに言い切ってみますと、生徒全員の作品(絵や、彫刻や、手芸)などを展示している、「文化祭期間中の体育館」です。要するに、クリプトン社の常設展示の体育館です(ここでは誰もスポーツができないので、体育館としては機能しませんが)。さらに、この体育館、かなりバラエティに富んでいまして、カラオケボックス、図書閲覧室までが併設されています。 この「クリプトン社の常設展示専用の体育館」(以下、クリプトン社の体育館)は、北海道札幌市中央区にあるクリプトン本社の隣に建てられている、というわけではなく、インターネットに接続したサーバの中につくられています。この「クリプトン社の体育館」が、「コンテンツ投稿サイト『ピアプロ』」のことです。 あなたが、自分の作品を展示してもらうためには、以下の条件が必要となります。 (1)「クリプトン社の体育館(=ピアプロ))の入館証を持っていること つまり、ピアプロの会員になることが必要です。これはクリプトン社のホームページから簡単に入会できます。これで「体育館」に自由に出入りでき、作品を自由に楽しむことができるようになります。 (2)「クリプトン社の体育館(=ピアプロ)」に、インターネット経由で自分の作品を持ち込むこと 自分の作品を「ピアプロ」のサーバにアップロードすることで、作品を持ち込みます。つまり、パソコン上でつくられたもの、加工されたものであって、ファイルとして転送できるもの(電子情報財)に限定されるということで、自分自身で「サーバに持ち込むこと」が必要となります。これを「アップロード」または「投稿」と言います。 ですから、クリプトン社に、自分の絵画や彫刻や、あるいは自分の歌をカセットテープに録音したものを送りつけても、受理してもらえません。 「クリプトン社の体育館」、つまり「ピアプロ」に展示されている作品は、バラエティに富んでいて華やかで楽しいです。 まず、絵画は当然として、音楽、小説(これらは、まとめて「コンテンツ」と呼ばれます)など、パソコンのファイルとして取り扱えるコンテンツであれば、動画以外はほとんど投稿できます。 例えば、「小説」なら、「初音ミク」を主人公とした恋愛小説だけでなく、冒険、推理、SFなど、公序良俗に反しない限りはなんでもOKです。さて、その中でも、ちょっと珍しいコンテンツとして、「歌詞だけの出品」とか、その逆に「歌詞の付いていない楽曲だけの出品」などという、未完成であることを表明した作品の投稿が挙げられます。 これは、「コンテンツ投稿サイト『ピアプロ』」の特徴を説明する上で、極めて重要なことなので覚えておいてください。 ●ピアプロに投稿できない作品 「公序良俗」に反するものは、ピアプロに投稿できません。 第一に、道徳観に反するもの、猥褻なもの、嫌悪感を催させるものを投稿することはできません--といっても、まあ、成人向け同人誌の作者の中には、「これは『エロ』ではない。『愛』だ」と主張する人もいるようですが、最終的には「ピアプロ」の管理人が必要に応じて削除してしまうと思います。 第二に、法律に違反する作品を投稿することはできません。 例えば、「他人の著作物に依拠して創作された著作物のうち、当該他人の許諾を得ていないもの」を投稿することはできません。著作権者に「ピアプロに投稿・第三者に開示すること」の許諾を得ていないドラえもんやワンピース、ポケモンを使った作品は、即時アウトです。 では、著作権的に適法な作品とは、どのようなものでしょうか。 もちろん、あなたが他人の著作物を利用せずに、すべて100%オリジナルの作品であれば、完全に適法な作品です。 また、「初音ミク」を利用した作品も適法です。前回、ピアプロ・キャラクター・ライセンス(PCL)について説明した通り、公序良俗に反しないで非営利であれば、「初音ミク」を翻案し、または二次的利用した作品は適法です。 しかし、PCLは、別に「クリプトン社の体育館」つまり「ピアプロ」の中だけで有効であるというわけではありません。日本中、いつでもどこでも有効で、YouTubeやニコニコ動画に投稿しようが、まったく問題ありません。 ●「ピアプロ」に投稿するメリットとは? では、わざわざ「ピアプロ」に投稿することのメリットとはなんでしょうか。 まず一つには、初音ミク等以外にも、自由に使えるボーカロイドキャラクター(音声合成ソフトウェアパッケージの箱に描かれているキャラクター)たちがたくさんいるからです。 私が初めてボカロを体験した「結月ゆかり」、歌手で俳優のGACKTさんが音声を提供した「神威がくぽ」ほか、実に、35人のキャラクター【註1】を、「ピアプロ」の中であれば自由に使ってよいことになっています。ですから、この「結月ゆかり」と「神威がくぽ」の2人を主人公とした恋愛小説も、2人の結婚式のイラストも、2人がデュエットしている歌をつくって投稿してもOKです。 仮に、このキャラクターリストの中に「サザエさん」が入ってくれば、当然に「サザエさん」のキャラクターも自由に使えることになるのですが、まあ、ありえないだろうと思います。長谷川町子財団に、このような使用許諾をするメリットがないからです。 比して、コンテンツ投稿サイト「ピアプロ」は、クリプトン社には大きなメリットがあります。クリプトン社にとって、「PCL」と同様に、「ピアプロ」は初音ミクの最大の広告宣伝の場になるからです。 ●前回の「ピアプロ・キャラクター・ライセンス(PCL)の限界」を復習する さて、ここで前回の問題提起を思い出していただきたいと思います。 「初音ミク」の父方の兄弟の娘であるオリジナルのキャラクター「初芽ミロ」というキャラクターを、「初音ミク」といっしょに記載したAさんのマンガがあったとします。 このAさんのマンガを利用して、さらにあなたがその従兄弟のアパートの隣の住人である第3番目のキャラクター「初出ミレバ」を「初芽ミロ」と「初音ミク」の3人で登場させたマンガを創作したとします。 整理します。 (1)一次著作物:「初音ミク」(権利者はクリプトン社) (2)二次著作物:「初音ミク」+「初芽ミロ」(←Aさんが創作したマンガ) (3)三次著作物:「初音ミク」+「初芽ミロ」+「初出ミレバ」(←あなたがつくったマンガ)筆者提供
あなたは、PCLに基づき「初音ミク」の利用に関しては、クリプトン社への許諾申し入れの電話は不要となりますが、Aさんへの「初芽ミロ」の利用に関しては、許諾申し入れの電話やメールでの交渉は必須となるはずです。 これが、私が問題提起した、「PCLの限界」です。 PCLは「初音ミク」の利用しか担保してくれません。Aさんの創作した「初芽ミロ」については、著作権法(ここでは、21、27、28条)が適用され、あなたのつくったマンガは、Aさんの許諾がない限り、世の中に発表することはできません。つまり、「N次創作の問題」は、解決されていないのです。 ●「PCL」+「ピアプロ」連携によるN次創作問題の解決 コンテンツ投稿サイト「ピアプロ」が、その機能を最大限に発揮するのは、ここからです。 先ほど、「クリプトン社の体育館(=ピアプロ))には、どんな作品を持ち込んでもよい、というお話をしました。しかし、あなたが、自分の作品を体育館に持ち込んだまさにその瞬間、以下のライセンス条項(ピアプロ利用規約第11条第6項)【註2】が発動してしまうのです。 『Aさんが自分の作品を「クリプトン社の体育館(=ピアプロ)」持ち込んだ瞬間、Aさんは、体育館の入館証を持っている全ての人に対して、(1)Aさんの作品を利用して新しい作品をつくることと、(2)その新しい作品が世界中に公開されることを、原則として許諾しなければならない』【註3】 つまり、こういうことです。 (1)Aさんもあなたもピアプロの会員であって、 (2)Aさんが、「初音ミク」+「初芽ミロ」のマンガの作品を「ピアプロ」に投稿している場合、 (3)あなたは、Aさんの許諾をもらわなくても「初芽ミロ」を使用できて、 (4)「初音ミク」+「初芽ミロ」+「初出ミレバ」のマンガの作品を、あなたのホームページで公開することも、また、ピアプロや、他のマンガ投稿サイトでも投稿することができる。 もう一度、説明しますと、「クリプトン社の体育館」に展示された絵を摸写して、ちゃっかり自分の絵に取り込んだ作品を創作して、世界中のどこで公開したとしても、その絵の作者から「おい、なに、人の絵を勝手に使ってやがるんだよ」と文句は言われることは、基本的にはないということです。 整理しますと、 (1)「初音ミク」を利用する作品に関しては、「初音ミク」の利用を許諾するという「PCL」によって保護されることになります→「初音ミク」を利用した2次著作の創作と公開の自由の担保の実現 (2)さらに上記(1)の作品がピアプロに投稿された場合には、その作品を利用した新しい作品は、著作権上の使用許諾の問題がクリアされた状態になっており、全世界への公開が可能となります→「ピアプロ利用規約」による、N-1次著作を利用したN次著作の創作と公開の自由の担保の実現 ここに、「PCL」と「ピアプロ利用規約」の連合チームによって、現行著作権法と一切の齟齬(そご)を起こすことなく、世界に対して完全に開かれた「初音ミク」に関係する著作物の創作の自由が、見事に実現されることになるわけです。 ●「ピアプロ」の厳しい掟 しかし、ピアプロが、「初音ミク」に関係する創作の自由を認められる場所であったとしても、その運用については、以下の厳しいルールが課せられています。 (1)公序良俗に反しないものであること これは、すでにお話ししたので割愛します。 (2)非営利目的に限ること 「私の作品を見たい者は、1回につき10円払え」とかいうような条件を付けることはできません--というのは、まあ普通に理解できますよね。また、ピアプロに投稿されていない創作物を取り入れてN次創作物をつくろうとすれば、当然、前々回に説明した、「N次創作のための、果てしない『お願いツアー』」を行わなければなりません。 ならば、ピアプロの中で無料の広告コンテンツを作って、それを展示すればよい--という、ズルいことを考える人が出てくるかもしれません。例えば、「初音ミク」と「初芽ミロ」と「初出ミレバ」の3人のキャラクターの動画をつくって、「会社の宣伝」や「自社製品の紹介」をさせれば、美味しい広告ができるという発想です。当然、このような行為はアウトです。 また、以下については、ルールではありませんが、強く推奨されています。 (3) ある作品を使用したら、その作者に連絡をすること これも、常識的に当たり前といえば当たり前です。「初音ミク」+「初芽ミロ」+「初出ミレバ」のマンガを発表するのに、使わせてもらった「初芽ミロ」の作者の名前を表示せずに、「自分で全部つくった」というふうに振る舞われたら、誰だって腹が立ちます。 しかし、実は、ピアプロに投稿された作品については、そのすべてに氏名表示の義務があるわけではありません。投稿者は、他者が作品を利用する際に、自分の氏名を表示させることを義務付けするか否かを選ぶことができます。これは、氏名表示を義務化している「クリエイティブ・コモンズ・ライセンス」などとは大きく異なるところです。クリプトン社によると、ピアプロを開設した当時、氏名表示を義務付けするか否かは投稿者の選択に任せたほうがよいと考えてそのようにしたとのことです。 ただ、作者の氏名表示は、最低限の礼儀と言えるでしょう。クリプトン社も、仮に作品の作者が氏名表示を義務付けていないとしても、作品の利用者はできるだけ作者に感謝を伝えることを推奨しています。 また、興味深い選択可能なルールとしては、以下のようなものがあります。 (4) 利用してもよいが、改変してはならない これは、作品を利用したい側から見ると、かなりキツイ条件になります。 例えば、絵画の場合、「初芽ミロ」を使ってもよいが、その場合でも、表情を変えても、ポーズを変えても、ダメということです。「そのまま」を使えということです。 ここで、「歌詞だけの出品」とか、逆に「歌詞の付いていない楽曲だけの出品」などという、未完成であることを表明した作品があったことを思い出してください。このような「未完成作品」などでは、このライセンスは、逆に有効に機能する場合があります。 「歌詞は一文字も変えてほしくない」けど「曲はつくってほしい」とか、逆に、「曲は楽器も音符もリズムも何も変えてほしくない」けど「詞を付けてほしい」というような共同創作を行う場合には、このような「改変禁止」は有効に働くからです。 以前インタビューに応じていただいた、ボカロPさん(ボーカロイドパッケージソフトを使って、ボーカロイド音楽を創作<プロデュース>する人)が、「自分の作品を使って創作された作品が、非常に低レベルなもので、がっかりしたことがある」とおっしゃっていました。 これは、N次創作に自由を与える「ピアプロ」の本質的な問題点ではありますが、しかし、「低レベルとなる作品には許諾しない」などという条件を許せば、ピアプロの理念が崩壊することになります。 だから、ボカロPさんは、「これは、我慢しなければならないことだ」とも、おっしゃっていました。これもまた、「ピアプロの厳しい掟」とも言えると思います。 あと、これはルールでもなんでもないのですが、私からの個人的なお願いとしては、 (5) ピアプロの作品を利用してつくった作品なら、ちゃんとピアプロに投稿しようね! とは言いたいです。 他の人のN-1次の著作物を利用して、自分のN次の著作物をつくって、それを世界に羽ばたかせているなら、当然自分の作品も、他の人が利用できる状態に置いてほしいと思うのが人情です。「人のものを使ったなら、自分のものも使ってもらう」、これが正しい姿であり、ピアプロの理念だと思うからです。 では、最後にまとめたいと思います。 「ピアプロ」とは、 (1)作品が単に展示されているサイトにとどまらず、 (2)その作品を使って、自由に別の作品を創作することが許されており、 (3)その創作された作品は、他人の著作権との調整がすでに完了しており、 (4)誰からもどこからも文句の出ない、世界に公開可能な作品の創作を可能とする、 N次著作物問題を一元的に解決する「ピアプロクリアランス」を発動する、コンテンツ投稿サイトです。 「初音ミク」を提供するクリプトン社は、複雑で難しいコンテンツビジネスの著作権の問題を逆手に取って、 ・著作権の保護と利用の利害関係を調整するライセンス(PCL)を創成し、 ・創作者に、大量の著作物の利用環境と新しい創作意欲を促す場(ピアプロ)を育成し、 ビジネスモデルとして組み上げました。 「初音ミク」ブームが、コンテンツビジネスとしては驚異的に長い期間(5年以上)も続き、そして、今なお発展を続けているのは、関係者全員にメリットを与えるために周到に準備された法律上の仕組みが、精緻に動き続けているからなのです。 では、次回は、クリプトン社が仕掛ける、さらなる2つの仕組み--「創作ツリー」と「ピアプロリンク」についてご説明をして、「初音ミクと著作権」シリーズ最後のまとめをさせていただこうと思います。 (文=江端智一) ※本記事へのコメントは、筆者・江端氏HP上の専用コーナーへお寄せください。 ※後編へ続く。 【註1】投稿可能な他社キャラクターについて http://piapro.jp/license/other_character_guideline 【註2】「会員は、会員コンテンツをアップロードする際にライセンス条件を選択することができるものとし、他会員がライセンス条件の範囲内で会員コンテンツを再複製・再頒布することに合意するものとします。」 http://piapro.jp/user_agreement/ 【註3】厳密にいうと、「許諾しない」というライセンスを選択することも可能です。 ■おすすめ記事 アイドル・谷桃子も被害、芸能人を狙う窃盗詐欺の手口を告白「怪しいと思わなかった」 ANAに聞く、AKBとの共同プロジェクトの狙いとは? 搭乗客に握手会取材の権利も 不動産バブルの様相 今は買い時ではないワケ…買ってよい/ダメなエリアとは? ブラック企業化する医療現場 勤務医や看護師への患者の暴言・セクハラ、長時間労働 ドコモ、iPhone販売拒む3重の壁…「今年確実」「絶対ない」業界内で割れる見方筆者作成
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サイゾーのニュースサイト「Business Journal」の中から、ユーザーの反響の大きかった記事をピックアップしてお届けします。
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同人誌は著作権侵害? 回避は簡単なのになぜ事件化&泥沼化するのか? - Business Journal(4月10日)
こんにちは。江端智一です。
前回、前々回と、少女マンガのキャンディキャンディにまつわる事件から二次的著作物の権利関係を整理し、同人誌の著作権問題をキャラクターの観点から、マンガやアニメなどの原作、元ネタがある創作物の成人向けパロディを記載した同人誌=「薄い本」を引き合いに出しつつ説明させていただきました。
その目的は、創作を保護する法律や規制が、別の創作を妨げることもあり、ある種の創作活動は、「その気になれば、いつでも、どこからでも潰され得る」というリアルな現状を理解していただくことでした。それがたとえ、趣味として自分のホームページで開示しているだけでも、また、自腹を切って自分で印刷して無料で配布していても、違法行為であることから免れることはできないのです。
例外があるとすれば、自分の机の引き出しの中に隠し続けているあなたの「秘密のノート」での創作活動などになります(具体的には、「著作権法第2章第3節第5款に記載 著作権の制限」の行為に限られます)。
さて、最初にお断りしておきますが、本コラムでは、別段の定めがない限り、「他人の著作物に依拠して創作された著作物のうち、当該他人の許諾を得ていないもの」を「同人誌’」と記載致します。また、今回のコラムでは「著作者」と「著作権者」という用語が何度も登場しますので、このコラムのイラストの例を使って、簡単にご説明致します。
このイラストを実際の絵として完成させたのは小学4年生の娘(次女)ですが、その図案を創作したのは私です。この場合、このイラストは、「娘(次女)」と「私」の共同著作物となり、この二人が共同著作者となります。一般的に、著作者=著作権者となりますので、この段階では、二人とも著作権者(共同著作権者)になります。 しかし、万が一、娘(次女)が、「Business Journalなんかに、私のイラストを使われるのはイヤー!」と泣き叫んだら掲載ができなくなります。ですので、私は、娘(次女)の著作権の持ち分を、対価(600円)を払って譲渡してもらっています。 この結果、権利関係は以下のようになります。 ・著作者:娘(次女)と私の二人。著作者は(たとえ100万円払おうとも)変更できない。 ・著作権者:私だけ この「600円」の支払いをもって、私は、このコラムとイラストの両方の著作権を専有している状態になり、ここで、私は単独でBusiness Journalに対して、Web公開の許諾ができるようになるわけです。 ●解決の「方法」は簡単である 「同人誌’」事件に見られる侵害行為を回避する方法は、びっくりするほどに簡単です。 その答えは、「『著作者』と『著作権者』の二人(多くの場合、同一人物)から許諾を得ればよい」のです。 次のような感じです。 「あなたのマンガをベースとして、あなたのマンガのキャラクターを登場させた『成人向け同人誌’』をつくりました。ぜひご覧ください。そして、これを使って、同人誌即売会で販売する許可をください」 「無償で許諾をいただければうれしいですが、もし駄目なら収益の50%を差し出します。何卒、何卒、よろしくお願いします」 これで、著作者(マンガ家)と、著作権者(マンガ家、まれに出版社)の許諾を得れば、「同人誌’」ではなくなり、それが成人向けであろうが何であろうが、天下御免で、正々堂々と販売して、収益を得ることができます。 このような手続を行っている以上、100%合法行為なので、国家権力といえども手を出すことはできません(成人向け同人誌の問題は、公序良俗の問題もパスする必要がありますが、今回は割愛します)。 この「手続」をサボっているから、問題となってしまうのです。 ●ところが、解決の「手続」はまったく簡単ではない しかし、こんな「交渉の手続」が簡単にできるのであれば、そもそも、「同人誌’」をめぐる裁判など、我が国ではひとつも起こっていないはずです。 第一に、著作者または著作権者(マンガ家)にアクセスする方法がわからない。マンガの巻末に住所や電話番号でも記載されていればよいのですが、そんなことは滅多にありませんし、すべてのマンガ家が、ツイッターやメールを使っているわけでもないでしょう。 加えて、「成人向け同人誌’」の販売を、著作者が許諾するだろうか、という問題があります。自分が精魂注いでつくり上げたキャラクターや世界観を、そんなふうに使われることを「ああ、いいよ」と許してくれる著作者がいたら、私は心底「すごい度量だ」と思います。 ●「同人誌’」の著作権侵害が事件化しにくい理由 著作者、または著作権者が権利行使を決意すれば、「同人誌’」を叩き潰すことなどは造作もなく、差止の仮処分(確定判決の前に、裁判所が決定する暫定的処置)などは、即時に認められるように思います。 では、著作者らは、なぜそのような権利行使を実行に移さないのか? 私は、2つ理由があると考えています。 【理由その1】 「同人誌’」の存在が、必ずしも不利益といえない場合があるため。「同人誌’」が、著作物の宣伝広告の効果を発揮してくれる場合があるからです。また、そのような「寛容な態度」でマンガに好感を持ってもらえるという巧妙な計算もあるでしょう。 【理由その2】 「同人誌’」の創作者を告発するコストが高いため。裁判手続は金も時間もかかります。損害賠償の裁判となれば、著作権者の損害額を算定しなければならないのですが、これが恐ろしく難しい。「同人誌’」の販売の規模によっては、損害額2万円、裁判費用200万円などという話はザラです(略式手続<刑事訴訟法470条>で有罪確定した「ポケモン同人誌事件」は例外中の例外です)。 なお、ツイッターにマンガの主人公の顔を使っている人は、許諾を得ていない限りすべて複製権の侵害被疑者ですが、では、その被害額はいくら? 提訴する相手を特定できるか? となることを考えれば、訴訟なんて手続は、とてもコストに見合わなくてやっていられないのです。つまり、コストの観点から、著作者または著作権者は、権利行使を「留保」していることになります。 このほか、多くの場合は、差止の警告をされれば、「同人誌’」の製作者は直ちに販売の中止に応じて、事件になりにくいという性質もあります。また、「同人誌’」を含め、同人誌ビジネスは基本的に儲からないので、儲からないところへ損害賠償を請求してもメリットがないという理由もあります。 ●著作権事件が泥沼化する理由 確かに、著作権侵害は事件化(裁判等)しにくいですが、ひとたび事件化した場合、和解に至るケースのほうが少ないように思います。 私は、これまでの「同人誌’」を含む著作権侵害訴訟の判例を、一通り眺めてきましたが、訴訟に至るか否かを決定づける要因は、「金(カネ)」より「怒り」の要素が大きいように思えます。人間はいったん「怒り」のモードに入ったら、「金」の問題など吹き飛びます。 私は、以前、「初音ミク」の技術編コラムで、「このキャラクターを創成する立場であれば、間違いなくキャラクターに『愛』が込められていくのは当然のことです」と記載したことがありますが、これを逆方向から述べてみれば、「このキャラクターを『汚(けが)す』者であれば、間違いなくその者に『殺意』が込められていくのは当然のことです」となるのは自然な帰結です。なぜなら、自分の著作物は(それが二次的な著作物であったとしても)、自分の大切な「宝物」、自分が育てた「子供」のようなものだからです。 例えば、私は自分のコラムに添付しているイラストが「成人向け同人誌’」に使われた日には(どのように使えるのか想像もつかないですが)、差止の警告を出す決断をするのに3秒、そして警告が無視されたら、たとえ刑事告訴になろうとも、最後まで闘うだろうという確信があります。 ●N次著作の面倒くささ さて、これまでは「他人の著作に依拠して創作された創作物」の関係についてのみお話ししました。これが、二次的著作(第28条)、翻案等(第27条)、または複製(第21条)に該当するかはケースバイケースですが、本コラムでは、これら「他人の著作に依拠して創作された創作物」を便宜的に「二次的な著作物」と呼ぶこととします。 しかし、単純な「二次的な著作物」であれば、それは著作権者との関係を調整すれば足りますが、大抵の場合、著作物とはそんな単純な構成をしていないのです。これが最近、よく聞くようになった用語「N次著作」です。 ここで一度、「N次著作」と言われているものを、例題を使って整理してみましょう。筆者提供
まず、私、江端智一が「『初音ミク』主演映画」に触発されて、その映画のストーリーに依拠した小説「ミクミク物語」を創作したとしましょう。私が、この小説を、引き出しの奥にしまいこんで、時々取り出しては『私って、なんて才能があるのだろう』と自分の作品に、自分一人で涙するのであれば、別に何もする必要がありません。 しかし、これを自分のホームページに公開するとなれば話は別です。対価を得ている/得ていないは問題にはなりません(何度も繰り返しますが、この点は重要です。無償ならばなんでも許されるというのは、完璧な勘違いです)。この場合、私は、まず映画の著作権者(上図では三次著作権者)に、自分のホームページへの公開の許諾を得なければなりません。なぜなら、私は小説の著作者、著作権者ではありますが、同時に、映画の著作権者もまた、私の作品に対して著作権(翻案権)を持っているからです。 さらに、この映画が、二次著作権者のつくった楽曲を使っていて、さらに、私も私の小説の中でその歌詞を使っているなら、二次著作権者の許諾も必要となります。 そして言うまでもなく、私の小説の中に登場する「初音ミク」は、一次著作の「初音ミク」の画像、または二次著作の「初音ミク」を演じた映像に依拠することになるので、当然に「初音ミク」の画像の権利を所有している、クリプトン・フューチャー・メディア株式会社(以下、クリプトン社という)の許諾も必要です。 「創作する」というだけでも大変なのに、上記の例では、私は3人の権利者に頭を下げて、そして必要なら対価を払って許諾を得なければなりません。N次創作物をつくり出すことを、単に個人(の机の引き出しの中のノート)で楽しむのであれば、誰の許諾もいりません。しかし、それを世の中に出したいと思った瞬間から、果てしない「お願いツアー」に出発しなければならないのです。 (文=江端智一) ※本記事へのコメントは、筆者・江端氏HP上の専用コーナーへお寄せください。 ※後編へ続く。 ■おすすめ記事 吉野家、牛丼並盛り280円へ値下げ 他社の値下げに追随で、価格競争再燃の可能性も 4月15日がXデー!? 北朝鮮暴発で奇襲攻撃や化学テロの懸念も… 「IkeGami」線は「IG」!? 駅ナンバリングって知ってる? 不思議な法則を東急線に直撃してみた 浜崎あゆみ、久々のメディア出演で苦悩や私生活を語る「外に出るのが恐かったことも」 テレ朝はヒット番組量産システムで視聴率トップへ、フジは遺産頼みで3位転落?筆者提供
“違法な”同人誌はなぜ放置されている? 600億円市場に突然警察介入の可能性も…
サイゾーのニュースサイト「Business Journal」の中から、ユーザーの反響の大きかった記事をピックアップしてお届けします。
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“違法な”同人誌はなぜ放置されている? 600億円市場に突然警察介入の可能性も… - Business Journal(3月10日)
【前回記事はこちら】 『あの名作マンガはなぜ買えない? 創作者に“ものすごい”力を許す著作権の常識』 前回記事では、少女マンガ『キャンディ・キャンディ』にまつわる事件(「キャンディキャンディ事件」)やボーカロイド「初音ミク」などを通じて、創作者が保有する著作権の強さについて紹介させていただきました。 前回の繰り返しになりますが、いわゆる「キャンディキャンディ事件」とは、以下のようなものです。 ・作画者のいがらしゆみこさん(以下、マンガ家のいがらしさん)が、原作で原案者の水木杏子さん(以下、原作者の水木さん)の許諾を得ることなく、キャンディキャンディの主人公・キャンディのキャラクターでビジネス始めたことに端を発する事件で、このビジネスに対して、原作者の水木さんが、二次的著作物の著作権侵害の訴訟を起こした。 ・キャンディキャンディのストーリーが、水木さん原作、いがらしさん作画による著作物であることには、両者とも争いはありません。 ・しかし、マンガ家のいがらしさんは、キャンディのキャラクターを描いただけの絵(便宜的に、「カット絵」といいます)は、上記の二次的著作物ではないと主張します。カット絵ではストーリーは描かれていないので、水木さんの原作は使っていないことになる、という理由によると考えられます。マンガ家のいがらしさんは、上記の「カット絵」については、マンガ家のいがらしさんのみに著作権があり、原作者の水木さんには著作権はないと、著作権侵害を否認しました。 ・判決は、原作者の水木さんの全面勝訴。裁判所は、「カット絵」も水木さんの二次的著作物であることを認定し、「カット絵」に関しても、水木さんの許諾なくビジネスはできないとして、地裁・高裁・最高裁とパーフェクト勝訴し、2001年10月に最高裁で結審して、判決は確定しました。ちなみに「確定判決」とは、よほどの理由(新しい証拠が見つかった等)がなければ、ひっくり返らず、他の裁判もこの判断に従うことになるという、事実上の法律に相当する絶対的な判決を言います) 判決理由【註1】の概要は、以下のとおりです(筆者要約)。 (1)キャンディキャンディは、水木さんの原作の二次的著作物と認める。従って、二次的著作物にも、原作者の権利が及ぶとされている著作権法第28条が適用される。 (2)著作権法28条に照らせば、マンガ家のいがらしさんが持つ権利については、すべて同様に原作者の水木さんも持つと解釈される(そもそも、キャンディキャンディに関して、マンガ家いがらしさん“だけ”が持っている権利は存在しない)。 (3)なぜ著作権法第28条が、そのように規定しているかというと、このようなケースを個別判断していたら権利関係が著しく不安定になるし(=訴訟をいくつやっても足りない)、そもそも原作に依存しない二次的著作物というものは観念できない(=そのような著作物はない)。 というものでした。 さて、この判決について、私は妻に、「この判決、法律的には妥当と思うけど、直感的にどう思う?」と尋ねてみたところ、以下のように答えてくれました。 ・「カット絵」だけが、原作と完全に切り離されて成立して、マンガ家にだけ権利があるという主張は、変だと思う。 ・この作品(キャンディキャンディ)に限って言えば、「原作があってマンガが成立した」と言えるけど、その逆、「マンガがあったから原作が成立した」とは言えないように思う。 ・マンガ家のいがらしさんの描く絵は文句なしに素晴らしい。しかし、いがらしさんの絵ではなくても、「キャンディキャンディ」は十分に成立したと思える。それほどに、原作の世界観は、圧倒的で、すごかったから。 以下に、私の所感も追加します。 ・私は、高校の時に、友人のアニメ作成に付き合ったことがあります。キャラクターを考え出して、その場面の背景を描きつつ、キャラクターの表情や動作を具体的に絵として落として、所定の期日までに納品することが、どれほど大変で、命を削るような過酷な作業であるか、容易に想像することができます。 ・こんなすさまじい地獄の中で画をつくってきた人が、マンガの「カット絵」一つですら、原作者の許諾を得なければビジネスすることができない、というのは確かに理不尽であるようにも思えます。 ・しかし、それと同時に、マンガ家のいがらしさんは、それだけの画力があるのだから、キャンディキャンディ以外のマンガでもビジネスはできるはず、とも考えられます。 ・逆に言えば、キャンディキャンディ以外のコンテンツではビジネスが成立しないのであれば、キャンディキャンディの世界観こそが「最大の売り」になっているという事実を、逆説的に証明してしまっている、と思えます。 ・このように考えていくと、「『カット絵』はマンガ家だけに著作権がある」という考え方を採るのは、仮に著作権法第28条のことを全部忘れてみたとしても、やっぱり難しいように思えます。 ●同人誌は二次的著作物なのか? さて、ここまで読んでいただいて、青ざめている方もいるのではないかと思っています。 というのは、今、「初音ミク」や同人誌などのいわゆるサブカルチャーの著作物は、「二次的著作物」と認定されるものが多いと思われるからです。 「初音ミク」に関する二次的著作物については、次の機会に取り上げるとして、今回は、同人誌を作っている方々を例に、説明させていただきます。 ここで提示する問題提起は、「同人誌は、本当に二次的著作物なのか?」ということです。 同人誌の事件で有名なものに「ドラえもん最終話同人誌問題」というものがあります。これは、ドラえもん最終話を、原作者でない人が同人誌に発表、販売していた事件です。 少し話はそれますが、この同人誌、「これ以外の最終回は考えられない」というくらいの大変に素晴らしい作品で、中学二年生の長女に、この作品を見せながら著作権の講義をしていたのですが、私の解説なんぞには最初から耳を貸さず、「ドラえもんの最終回はこれに決めようよ」と言い出すほどです。 この事件は、著作権者である小学館が侵害警告をして、同人誌の作成者も損害賠償に応じたことで、訴訟に至らずに終結しました。 では一体どのような内容の警告が行われたのか、想像してみたいと思います。 まず一つには、「ドラえもんの二次的著作物を、我々(小学館)に許可を得ることなく、制作、販売するのは、やめろ」というものが考えられます。 しかし、前述のように、私は、「同人誌 = 二次的著作物」とは言えないのではないかと考えています。 同人誌をつくられている方は、当然、原作のアニメやマンガの雰囲気や世界観を反映させながらも、「独自のストーリー」をつくっているはずです。これを、原作品を変形させたり脚色させたりした二次的著作物であると主張するのは、ちょっと無理があるように思います。 しかし、「ストーリーは違うかもしれないけど、アニメやマンガのキャラクターを、そのまま使っているじゃないか」との反論もあるかもしれません。 ところが、最高裁判所が「キャラクターには著作物性はない」と判示しているのです【註1】。判決文の中で、「キャラクターというものは、登場人物の人格とも言うべき抽象的概念であって、それ自体が思想又は感情を創作的に表現したもの(著作権法2条1項1号)ではない」と述べています。 私は、この判決文の意味がわからず、何度も読み直し、以下のように解釈しました。 例えば、「ドラえもん」を一度も見たことがない人に、「ドラえもん」というキャラクターを言葉、または文章で伝えようと考えた場合、「22世紀の未来から、のび太を助けるためにやってきたネコ型ロボット」と説明されると思います。これは、「設定」ではありますが「思想又は感情を創作的に表現したもの」ではないです。 もう少し具体的に考えてみましょう。 例えば、私(江端)を題材とした「江端物語」という架空の創作をする場合に、その物語には、当然私を模したキャラクターが登場することになります。しかし、その私のキャラクターは「思想又は感情を創作的に表現したもの」にはならないでしょう。 ●キャラクターの「設定」と「絵」の違い さて、これを整理してみますと、 (1)同人誌のストーリーにはオリジナル性があり、原作をコピーしたものではない (2)同人誌に登場するキャラクター(の設定)には著作性はない ということになります。 二次的著作物とは、乱暴にいうと「原著作物を『取り込んだ』著作物」を指すのですから、「同人誌=二次的著作物」の理屈を導くのは無理ではないか、と思うのです。 「え! 同人誌は、二次的著作物じゃないの? それでは、著作権侵害にはならないね! やったー!」と思われるかもしれませんが、残念ながらそうではなく、もっと悪い結論が導き出せるのです。 確かに、キャラクターの「設定」には著作権は発生しないかもしれませんが、キャラクターを「絵」にしたものには、当然に著作権が発生します(絵画の著作物)。例えば、「ドラえもん」であれば、これまで連載が続いてきたドラえもんのすべてのポーズ、動き、表情に、著作物性が認められます。 では、同人誌をつくっている人は、何をしていることになるか? アニメやマンガの原作の絵を「切り取って」「貼りつけて」いる、すなわち、原作を「コピー&ペースト(コピペ)」して同人誌をつくっている、と解釈されます。 するとどうなるか? 二次的著作物の認定などという面倒なことはふっとばして、ダイレクトに複製権侵害(第21条)が成立してしまいます。つまり「同人誌=二次的著作物」ではなく、「同人誌=違法コピー物」で、アウトです。直撃です。 原作者や版権元から差し止め(やめろ!)、損害賠償(金払え!)と言われるだけでなく、国家までもがしゃしゃり出て、お仕置き(刑事罰)をしてくる可能性があります。具体的には、「10年以下の懲役もしくは1000万円以下の罰金に処し、またはこれらを併科する(著作権法119条1項)」という、民法の中でもかなり厳しい内容となっています。 ●同人誌の逃げ道とは? では、同人誌は複製権侵害から、どうやっても逃れようがないのでしょうか? 私は、同人誌の中でも、ある特定の分野に限っては、「逃げ道」があると考えているのです。 「薄い本」です。 「薄い本」とは、マンガやアニメなどの、原作、元ネタがある創作物のパロディを記載した同人誌であって、主に性的な娯楽要素を扱う分野の同人誌、いわゆる「エロ同人本」をいいます。 唯一、複製権侵害を免れる方法があるとすれば、「アニメやマンガのキャラクターの絵を使っているが、原作のコピーであるとは絶対に言えないような絵だけで構成されている」と主張できればよいはずです。理論立てとしては、次のような感じになるでしょうか。 【Step.1】 アニメやマンガのキャラクターが、「あんな淫らなことしている絵」や、「こんなイヤらしいことしている絵」は、原作には絶対に登場しない。 【Step.2】 従って、原作のどの絵をどのように切り取ってコピペしても、私が創作したこの「薄い本」のようにエゲつなく、下品で、スケベで、エロい作品には、断じてならない。 【Step.3】 以上より、複製権侵害は否定される。 と言い張れば、裁判で勝つ可能性に一条の光を見いだすことはできるはずです。 しかし、キャラクターの顔を似せない「薄い本」に商品価値はあるか疑問がありますし、また、弁護士は、「あんな淫らなことしている絵」や、「こんなイヤらしいことしている絵」を証拠として、裁判官や陪審員に開示しながら、あなたを弁護することになりますが、はたして、その仕事、引き受けてくれるでしょうか。 ●コミケ会場が封鎖される日 それにしても、同人誌が、複製権侵害を構成すると判断される可能性は相当に高いのに、「1ミリたりとも、絶対にそのような侵害を見過ごさない」という絶対的な決意で取り組んでいるのは、私の知る限り、灰かぶり姫のお城で、ネズミの着ぐるみが踊り狂う千葉県にあるアミューズメント施設を運営する法人だけです。 不思議に思って、ちょっと調べてみたのですが、同人誌を取り扱う市場は、媒体で300億円弱、流通形態で300億円強、合計600億円市場といわれているらしいです。この600億円市場を吹き飛ばすことは、出版業界にとっても、本意ではないのかもしれません。また、国も、コンテンツ産業立国を目指すという国家的な政策から、警察権力の介入を差し控えているだけかもしれません。 しかし、私は、コミックマーケット(いわゆる、コミケ)の会場が、警察によって封鎖され、同人誌がすべて押収されるという未来が、絶対に来ないとは断言できないと思っています。 ●ここから本題 さて、今回、キャンディキャンディ事件から、二次的著作物の権利関係を整理し、同人誌の著作権問題を、キャラクターの観点から「薄い本」とからませて説明させていただきました。 実は、ここまでが前置きとなり、ここから本題に入ります。 今回のコラム執筆の動機は、初音ミクパッケージを販売している、クリプトン・フューチャー・メディア株式会社が作成した、ピアプロ・キャラクター・ライセンス(PCL)の、以下の3行を読んだ時点からスタートしています。 「ピアプロ・キャラクター・ライセンス 第2条(著作権法その他適用法との関係) 1.当社キャラクターは、著作権法その他の適用法令によって保護されます」 あれ、「キャラクターを保護」? キャラクターって、著作権上の保護対象ではないと、判示されていますが、これは一体どういうこと? という疑問から始まりました。 次回では、これまで3回連続で掲載させていただいた「初音ミク」について、法律面からのアプローチを試みたいと思います。また、N次著作の意味と、上記のピアプロ・キャラクター・ライセンスについても、具体的に書きたいと思います。 (文=江端智一) ※本記事へのコメントは、筆者・江端氏HP上の専用コーナーへお寄せください。 【註1】最高裁判決(平成9年7月17日)「ポパイネクタイ事件」 ■おすすめ記事 元恋人からわいせつ画像で脅迫、10人に1人が経験?危険な専用投稿サイトも 西武HDへ敵対的TOBか サーベラス、上場阻止狙い今週にも…株価つり上げ画策か 冷たい(?)楽天ECコンサルをフル活用して売上を増やす術 心が折れない人になるための3つの方法 モデル・西山茉希、早乙女と復縁との一部報道について「ない」と所属事務所へ報告画像は筆者提供
出版社の信用が完全崩壊! 太田出版が『完全自殺マニュアル』スラップ訴訟で返り討ちに

左が社会評論社の『完全自殺マニア』、右が太田出版の『完全自殺マニュアル』
太田出版といえば、サブカルチャー系の有名出版社。これまで、数々のパロディ本や著作権に関する書籍を出版しているこの会社が自社の本のパロディを許容せず「著作権侵害だ!」と裁判所に駆け込んだ挙げ句に、完敗する騒動が起こった。
争点となったのは、今年5月に社会評論社から出版された『完全自殺マニア』(著:相田くひを)。サブカル系編集者として名を轟かせる濱崎誉史朗氏が企画・編集したこの本の素晴らしさは以前、当サイトでも取り上げた通り(http://www.cyzo.com/2012/06/post_10880.html)。悪趣味とはいえ、よくできたパロディのはず。それを、よりにもよってパロディ本で儲けてきた出版社が訴えるという異常事態を追った。
■話し合いもなしに、突如内容証明がやってきた
『完全自殺マニア』に対して、太田出版から最初のアクションがあったのは、刊行間もない今年5月中旬のことだ。『完全自殺マニア』の著者・相田氏は、1999年に太田出版から『薬ミシュラン2』を出版した経歴がある。この時の担当編集者が、現・代表取締役社長の岡聡氏であった。相田氏は、岡氏から『薬ミシュラン』の続編を出そうという話を持ちかけられていたが、形にできないまま歳月が流れていた。そのことを申し訳ないと思っていた相田氏が、挨拶状をつけて『完全自殺マニア』を献本したのが事の始まりである。
担当編集の濱崎氏は、抗議の経緯を語る。
「送った翌日に、相田さん宛に太田出版から抗議文が届きました。さらに、その翌日には虎ノ門総合法律事務所(日本でも指折りの著作権に強い弁護士事務所である)から社会評論社宛に、不正競争防止法を根拠に絶版断裁を求める内容証明が届いたんです」
すわ一大事と思うところだが、濱崎氏はそのまま「放置していた」という。すると、1週間を過ぎた頃に、今度は絶版断裁を取り下げて「著作権法違反なので、カバーを取り替えるよう」要求する内容証明が届いたという。
「どうも、チーズ本対バター本事件の件を踏まえて、不正競争防止法だと勝てないと踏んだのではないか」
というのが、濱崎氏の読みだ。この2度目の内容証明にも濱崎氏は無視を決め込んだ。すると、10日後、今度は東京地裁から連絡がきた。太田出版が起こした頒布差し止め仮処分申立に対して、話を聞きたいというものだ。
「世間の太田出版に対するイメージとは真逆のことでしょう。仮にもサブカルチャーをやっている出版社が、いきなり国家権力に頼るなんて……」(濱崎氏)
■「思いつき」「レベルの低い編集」と主張する太田出版
こうして東京地裁を舞台に、双方は意見を戦わせることになった。当初、濱崎氏は「過激だけどパロディの範疇」と主張したが、太田出版側は認めなかった。さらに、太田出版の岡社長は、虎ノ門総合法律事務所経由で極めて攻撃的な「意見書」まで送付してきたのだ。
この中で岡社長は、差し止め請求を取った理由として「編集レベル、志が低すぎるということにつきます。これほど出版ということを軽く考えた事例に遭遇したことはありません」と主張。さらに「原稿を本にする段階で編集者の思いつきで世間的に認知度のある『完全自殺マニュアル』のデザインのみを模したというにすぎない」として「『完全自殺マニア』はパロディになっていない」というのだ。
この「意見書」は、後半になり、さらにヒートアップする。少々長くなるが引用してみよう。
「批評性などかけらもなく編集者の思いつきというレベルでデザインを模した『完全自殺マニア』をめぐる編集姿勢は、出版をなめているとしか思えません。自殺した人をも侮辱したものですし、ひいては『完全自殺マニア』の著者・相田くひを氏をもばかにした行為であると考えます。パロディというならば、もっと根性を据えて切り込むべきです。今回の最大の被害者は『完全自殺マニア』の著者自身かもしれません。相当の時間・労力をついやして書き上げたオリジナリティのある原稿を、編集者の『おふざけ』レベルで『完全自殺マニュアル』の亜流のようなものにされたのですから。このようなレベルの低い編集が何か冴えた思いつきであるかのような勘違いを見過ごすとこはできません」
この攻撃的な「意見書」からは、多くの疑問が湧いてくる。これまで、太田出版では多くのパロディ本を出版してきた。大森うたえもんの『ノルウェイの大森』、岩波文庫の装丁をパロディにしたブルボン小林の『ジュ・ゲーム・モア・ノン・プリュ』、そして、前述の『薬ミシュラン』はタイトルからして、ガイドブック『ミシュランガイド』のパロディであるし、装丁はアメリカでベストセラーになったHarold M. Silvermanの『The Pill Book』のパロディである。そうしたパロディを多用しておきながら、自社の出版物に対しては「批評性などかけらもなく」と断罪し、あまつさえ国家権力の手を借りて封じようとするやり方には、疑問を感じざるを得ない。濱崎氏によれば「『完全自殺マニュアル』の著者・鶴見済氏やデザイナーからは、なんのリアクションもない」という。
■軽重を判断するのは、読者の手に委ねられる
これに最も強く反論したのが、岡社長からは、ばかにされているとまで書かれた、当の『完全自殺マニア』著者の相田氏だ。相田氏は、さっそく岡社長の意見書をパロディにした陳述書を作成した。この中で、相田氏は語る。
「なぜ、今回に限り太田出版がそのような処置をとったか、端的に言うと、拙著の編集レベル、志が低すぎるということだそうですが、本書の企画は、13年前から太田出版をはじめ知遇を得た出版社複数に打診しましたが、全部、『完全自殺マニュアル』の社会的影響度の大きさからか、臆して断られてきました。チュニジア育ちの、日本の空気をあえて読まない変な編集者濱崎誉史朗氏と松田健二社長が根性を据えて決断した上で生まれた本であり、決して出版ということを軽く考えたものではありませんが、軽重を判断するのは読者であると著者は思います」
「単なるデザインのパロディにしかすぎない『完全自殺マニア』の表紙カバーを、批評性がない、『完全自殺防止マニュアル』(注:岡社長の意見書で批評性がある事例として記されている、ぶんか社のパロディ本)のように批評性のある内容にしろというのは、ちょっと無茶に思います」
「レベルの高い出版社の代表取締役が何か冴えた思いつきで、あの本は志が低い、根性がない、レベルが低い、だから裁判で差し止めすることを著者として見過ごすことはできません」
この陳述書に加えて、濱崎氏が「パロディを拡張する裁判にしたい」と宣言した経緯もあり、東京地裁はすぐに結論を出すことを避けて合議制に移行。いよいよ、本格的に論戦かと思いきや、太田出版側は相田氏の陳述書の提出後に弁護士任せにして、関係者は裁判に出廷しなくなったという。
そして、東京地裁の出した結論は、太田出版の訴えを認めないというものであった。
追記:
決定文が非常に長大なので、抜粋すると判断に齟齬が生じるとの指摘があったので掲載しません。社会評論社がサイトで全文を掲載予定。
■「言論・表現の自由」は口だけだったのが露呈
今回の事態で、太田出版は単に差し止め請求を却下されただけではない、大きなダメージを負った。
『完全自殺マニュアル』は全国的に賛否両論を生んだ問題作で、現在でも太田出版を代表する著作といえる。その思い入れがある本を「安易にパクられた」と憤る気持ちは、わからなくもない(しかも、自分の会社で本を出している著者が関わっていることも含めて)。
とはいえ、話し合いの席も持たずに、いきなり抗議文、そして東京地裁へ訴え出るという太田出版側のやり方には、疑問を持たざるを得ない。太田出版は、2010年の東京都青少年健全育成条例改定問題の際には、積極的に反対の声を上げた出版社である。しかし、「パロディになっていない」という私的な意見を、いきなり国家権力の手を借りて叩き潰そうとする今回のやり方は、まさにスラップ訴訟と呼ぶにふさわしいもの。同社の「言論・表現の自由」への態度は、この程度のものだったのかと疑問を抱かざるを得ない(サブカルチャー関連の文筆を糧にしてきた人々にとっては、これは「ルビコン川」かも)。この点で、太田出版という看板の信用は地に墜ちたといえる。著作権に関する書籍も数多く出版しているだけに、今後出版する著作権関連本では、この件をどのように記述するのか、気になるところだ。
なお、太田出版にコメントを求めたところ「弁護士と相談中のため、今のところはコメントすることはありません」との回答だった。
(取材・文=昼間たかし)
「誰が動画を消せるのか」ニコニコ動画"丸ごと1本アップ"を巡る権利問題の行方
インターネット上には「共有」の名のもとに各種のコンテンツをアップロードするサイトが多数存在する。動画を例に取れば、その代表は世界的にはYouTubeであり、日本ではニコニコ動画が相当する。
これらのサイトは一歩運営を間違うと「海賊版の巣」になりかねない。実際両サイトともに海賊版サイトとしか言いようのない時期があった。その後権利者の通報により削除するシステムを導入して、アニメ丸ごと一本アップロードなどといった違法性の高い動画は駆逐されるようになった。
ただ、完全に違法ファイルが一掃されたかと言うとそうでもなく、どちらのサイトにもまだかなりの著作権者に無断でアップロードされた動画が多数存在する。ニコニコ動画だけでも、その数は1,000本に迫るという勢いなのだ。
共有サイトは基本的に「権利者からの通報」によって違法動画の削除を決定する。第三者の通報には対応しない。というのは、第三者の場合当該のコンテンツが、正当な権利者によってアップロードされたものである可能性を否定できないからだ。
さらに、権利者の方にもいろいろある。簡単に説明すると、アニメや映画などのコンテンツの場合、それを商品として流通させるかどうかの権利は制作会社や配信会社などが持っている。実際に製作に関与した監督やアニメーターなどは、コンテンツが完成した時にそれらの権利を制作会社に譲渡するなどしているため、権利を喪失している。上で書いた「権利者からの通報」は通常制作会社や配信会社によってなされるもので、監督やアニメーターからされるものではない。
では、監督やアニメーターは完全な無権利かというとそうでもなく、著作者人格権というものを保持している。これには、未公開のコンテンツを公開するか否かを決める権利(公開権)、コンテンツに自分の名前をクレジットする(あるいは非表示にする)権利(氏名表示権)、コンテンツを勝手に改変されない権利(同一性保持権)、コンテンツの製作意図とあまりにかけ離れた使い方に異議を唱える権利(名誉声望保持権)などが含まれる。ただ実際に、現場の製作者がこうした権利を盾に海賊版の削除を申し入れたことはほとんどないと考えられていた。
だが今月3日の未明、Twitterでニコニコ動画を運営するニワンゴの取締役K氏を名乗るユーザーが、他の多くのユーザーから同社の違法動画の削除基準について質問を受けていた。K氏は当初「削除するかどうかは著作権侵害が明らかになった後、つまり裁判所で判決が下った後」としていた。
しかし会話の途中にアニメ監督の北久保弘之さんを名乗るユーザーが「自分の作品がニコニコ動画に不法にアップロードされている。自分は著作者人格権しか持たない。当該ファイルは改変なしの丸ごと一本アップなのでそれらのうち同一性保持権を盾に取ることはできないが、それでも通報すれば削除に応ずるのか」という旨の質問をしてきた。するとK氏は、これまでの態度を一変させ、削除すると言ったばかりか、名誉声望保持権に基づく削除要請に対しても応ずるかのような発言をしたのだ。
これは要するに、一作品あたりでもかなりの数がいるアニメスタッフのひとりひとりに、「お前のサイトは自分の作品を公開するのにふさわしい場所ではないから削除せよ」と言われたらその通りにする、と宣言したのに等しい。
もちろんK氏を名乗る人物のTwitterでの発言を同社の公的なコメントであるとすることもできない。ただ、コンテンツを扱う企業の取締役の地位にある人物の著作権法に対する知識・認識がこの程度であると思われることは、たとえ噂レベルであっても同サイトの利用者やコンテンツの各種権利者に不安を抱かせるのに十分であろう。
ニコニコ動画は、ネット時代の新しい著作権のあり方を模索すると称して、「ニコニ・コモンズ」というサイトを立ち上げ、二次創作を広く認める素材コンテンツの収拾を行なっている。「盗品」の管理がきちんとできないと、こちらの崇高な理念も根元から崩れてしまいかねないだろう。

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