【浜野謙太】枯れた現代に"望み"を見いだす、夢の街「ラブトピア」へようこそ

――超絶ナンセンス・コメディ『ラブトピア』がついにDVD化。主演ののぞみとハマケンがやってきた!
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(写真/cherry chill will)
 主演ののぞみをはじめ、友人のゆりやリナ、あつ子といったラブドールたちが主(人間)の不在時に楽しく暮らす夢の街「ラブトピア」。  この薄ら寒い現代との対比として描かれているようなラブトピアの世界観は、永遠に続く幸福のように描写されつつ、泡のように消えた幻想=バブル期を彷彿とさせる。ドールたちをメインとする“ナンセンス・コメディ・ドラマ”と銘打たれたトンデモな世界に“のぞみのカレ”として唯一出演している“人間”、ハマケンこと浜野謙太に話を聞くことができたので、彼の言葉を借りて、仮想世界“ラブトピア”を紐解いてみたい。 「(ラブトピアは)いろんな意味で元気な世界なんですよ。具体的な時代設定はないんですが、枯れてしまっている現代感はなくて、平気で(のぞみとの)セックスの回数もこなす。のぞみから人間界に電話がかかってきて、『今、仕事中だよ』って対応するシーンがあるんですけど、人間界は“現実”という雰囲気があってバブル感はない。でも、カレが需要の少なそうな仕事に就いている感は、ラブトピアの景気の良さとの対比が出ていて面白いな、って」  現代の人間が描く理想郷=ラブトピアで生活をするのは、あくまでもドールが中心だ。劇中、ドールとの唯一の接触者である浜野は、その異様な世界観やドールとの触れ合いをどう感じているのか? 「人との会話って、話の内容が進むにつれて気持ちも動いていくものじゃないですか。でも、ドールの声優さんは後からアテレコするので、撮影現場ではADが台本を見ながらドールの台詞を言うわけで──それもまたシュールなんですけど──ほとんどひとりで演じているようなものなんです。なので、僕が演じるのぞみのカレには、自己完結したストーリーがあって、ドールが声を発さなくても心で聞こえている、ひとりで話していても世界が成立するように演じることができれば、と思っていたんです。そう思いながら演じていたら、普段の人間関係においてもちゃんと他人の話を聞いているのかな? って感じ始めたんですよね。日常において付き合いの古い女友達や彼女、奥さんといった女性と接するときって、たいてい話を聞いていなかったり、さらっと流していたり、心もそんなに動かされることってないじゃないですか。それこそ予定調和の話ばかりしているような気がして。それってラブドールと同じなんじゃないか? って思っちゃったりして」  奥が深い。しかし、ナンセンスと謳うだけあって、その奥深さに加え、この『ラブトピア』にはコミカルな要素と合わせてシニカルな部分も多く、随所にブラックジョークも散りばめられている。浜野自身がいうように、最終的にラブトピアと実世界の対比が明らかになったとき、(あまりの温度差はあれど)コミカルに描かれてはいるが、現代に対する警笛ともとることができるのだ。 「ラブドールが自殺するシーンがあるんですけど、『私は人形だから死ねない!』って言うんです。ほかにも『愛されなくなったらおしまい!』とか、完全に『トイ・ストーリー』の世界だったり。『ラブトピア』で繰り広げられる世界は、現代の縮図なのかもしれない、とすら思えてくるんですよ。まあ、ラブドールの世界の中に僕ひとりが人間、ってこと自体がすごくシュールなんですけど、全体のその世界観こそ『ラブトピア』が伝えたい主題であって、一番の見どころだと思いますね」  突拍子もないアイデアとコミカルな構成。しかし、蓋を開けて味わってみると、風刺的な要素も垣間見られ、一筋縄ではいかない。“ナンセンス・コメディ”とは、実に言い得て妙である。  と、説明すると堅苦しく感じられてしまうかもしれないが、ラブトピアにはユーモアと、現実離れしたある種の“理想”がある。 (文/橋本 修─) (ヘアメイク/小林弘美) 浜野謙太(はまの・けんた) 1981年、神奈川県生まれ。インストゥルメンタル・バンドであるSAKEROCKのメンバー、また在日ファンクのリーダーとして音楽活動をする一方で、映画やドラマを中心に俳優としても活躍。そのキャラクターを買われ、『めちゃ×2イケてるッ!』などバラエティ番組にも多く出演している。
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『ラブトピア完全版』 演出は住田崇、脚本がオークラ、美術にニイルセン、そして主演は浜野謙太と”ラブドール”(声優は後藤沙緒里、土師亜文、伊達朱里紗)という布陣で送るコメディ・ドラマ。サスペンスあり、社会風刺あり、シュールかつコミカルに進行する話題のドラマがついにDVD化。上下巻、2巻同時発売。発売記念イベントも開催決定(詳細は公式HPにて) 発売/ズノーエンターテインメント 販売/ポニーキャニオン 価格/各2800円(+税)

在日ファンクが目指すのは女の子に「キャー」と言われる"アイドル的"ファンク!?

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ミュージシャンとしても俳優としても今大注目されているハマケン。
 SAKEROCKのフロントマン・ハマケンこと浜野謙太が、トロンボーンをマイクに持ち替えジェームス・ブラウンばりのシャウトを響かせるバンド、在日ファンク。今年の1月には初のフルアルバム『在日ファンク』(P-VINE Records)を発表し、夏には「ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2010」をはじめとする音楽フェスやライブイベントに出演し、大きな話題をさらった。  そんな彼らが満を持して発表する新作は、本日10月20日より3カ月連続でリリースされるコラボレーションシングル。アルバムリリース時のインタビューでは、「SAKEROCKとの距離感に悩んでいて、アイデンティティ確立のため在日ファンクが必要だった」とバンド始動の経緯について自信なさげに語ったハマケン。およそ1年が経過して、その心境はどう変わったのか。また、ドラマ『モテキ』(テレビ東京系)への出演など、役者としても注目を集め始めた現状について話を聞いた。 ──アルバム『在日ファンク』のリリースから1年近く経ちました。以前はまだまだ不安要素も多かったようですが、今はずいぶん状況も変わったのでは? 浜野謙太(以下、浜野) そうですね。BOSE(スチャダラパー)さんと以前話した時に、「いろいろやってみないと分かんないよ」ってアドバイスをもらったことがあって。確かに、実際やってみると、SAKEROCKの活動もリラックスした気持ちでできるようになったんですよ。 ──SAKEROCKでも在日ファンクでも同じ「フロントマン」という立場ですが、やはり歌を歌う在日ファンクとインストバンドのSAKEROCKでは感覚が違う? 浜野 最初、在日ファンクでは面白い部分を出しちゃいけないと思ってたんです。でも「面白いところがない」とか「ツッコミどころがないから見ない」とかネットで批判されて(笑)。そうなると、SAKEROCKとの区別が必要だと思ってたけど、やっぱりどこかに面白い部分は自然と出ちゃうもので。最近は、だんだん在日ファンクなりの面白味の出し方も掴めてきたし、無理に縛らないことで、逆にSAKEROCKでも奇跡的なプレーというか、踊りというか......あ、立ち居振る舞い?(笑)ができることもあったりして。相乗効果がありましたね。
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──10月、11月、12月と3カ月連続でコラボレーションシングルがリリースされますが、これはどういう経緯で決まったんですか? 浜野 以前ライブで(サイトウ"JxJx")ジュンさん(YOUR SONG IS GOOD)とかサイプレス上野君(サイプレス上野とロベルト吉野)とコラボレーションをやって、それがすごく楽しかったんですよ。そういう楽しいことが続いて、1回のライブのために新曲作っちゃえるぐらいドンドン曲ができてた時期に、レーベルの担当さんが「3枚連続シングルとかどう?」ってポロッと言ったんで、即答で「それいいッスね!」みたいな。採算的には危ない気もするんですけど(笑)、「言ったからにはやりましょうよ」って。 ──ゲストの3人はすぐに決まったんですか? 浜野 何度も話し合いをして、加護亜依さんとか野村沙知代さんっていうアイデアも出たんですけど(笑)、顔なじみのジュンさん、上野君ときて、最後にROY君(THE BAWDIES)が出てきたら、すごくカッコいい3連チャンでビシっとまとまるんじゃないかと。確固たるイメージを持ってる先輩方だから......ROY君は年下ですけど、アーティストの格としてはたぶん先輩なんで(笑)、そういう先輩方に在日ファンクの型作りを手伝ってもらったような、おすそわけしてもらったような感じがありますね。だからズルいんですよ(笑)。卑怯な3連チャンなんです。 ──アーティストとして"格上"だとおっしゃるTHE BAWDIESを、どのようにに見てきましたか? 浜野 なんでこんな渋い音楽を今やってんだろうなって(笑)。そこは俺も共通するところなので、一緒にファンクをやっても全然大丈夫だと思ったし、気持ちもわかってもらえるだろうなと。「あいつによろしく(在日ファンクとサイトウ"JxJx"ジュン)」と「BAY DREAM ~FROM課外授業~(在日ファンクとサイプレス上野)」はもともとあった曲ですけど、「Escape(在日ファンクとROY)」は、さっき話したドンドン曲を作ってた時期にできた新曲で。かたちにするのは結構難しかったけど、在日ファンクの曲を作る上で何か新しい扉を開けたような、大きな手応えがありました。 ──ちなみに、「Escape」のカップリング「京都」は以前からSAKEROCKのライブで披露されていた曲ですよね? SAKEROCKでやると、あまりに爽やかなソウル風味の歌モノで「異質過ぎて笑っちゃう曲」みたいな扱いでしたけど、在日ファンクがやるとちょっと意味合いが変わって聴こえてしまう。なんか、すごく真面目なんですよね。世間が持つ「ハマケン=面白おかしい人」みたいなイメージが揺らいで、どっちが本当のハマケン像なのかわからなくなるというか。 浜野 あー、うれしいッスね。1stアルバムの取材の時、よく「ZAZEN BOYSがカッコいい」っていう、俺が言わなくてもみんなが知ってるようなことを言いまくってたんですけど(笑)、ZAZEN BOYSの音楽って、まさにカッコいいのか笑っていいのか分かんない世界観だと思うんですよ。それが理想なんです。だから「ハマケン=面白おかしい人」ってイメージは在日ファンクではなくしたい。「京都」はマジメにくだらない曲にしたかったから、わざわざストリングスまで入れましたし(笑)。 ──でも「面白ハマケン」が好きだった人は、これで離れてしまうかもしれないですよね。 浜野 それはもう、1stアルバムを出した段階で十分離れたと思います(笑)。瞬発力で面白いことをするっていうのもいいんですけど、考え抜いて構築して、結局くだらないみたいな......。そういうのを在日ファンクでは目指しているので。 ──この3連チャンシングルが発表されることで新しいファンも増えると思いますが、それによって今までより忙しくなると思うんですが。バンドだけでもたくさん抱えてるのに、さらにタレント仕事、役者仕事と......。忙しくなることへのプレッシャーはないですか?
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浜野 いやー、ありますね。 ──"業界視聴率"が非常に高いと言われた『モテキ』(オム先生役を怪演)への出演は、役者業の部分で大きな転換期になり得るのではないかと思います。さらに来年には、映画『婚前特急』に準主役で出演するんですよね? 浜野 実は『婚前特急』は『モテキ』より前に撮ったんですけどね。前からSAKEROCKのライブを見てくれていた前田弘二監督がオーディションに呼んでくれて。 ──おぉ! ちゃんとオーディションを勝ち抜いて(笑)。 浜野 そうなんスよ。吉高由里子さんの事務所もよくOK出しましたよね(笑)。 ──じゃあ今回は「呼ばれたからにぎやかしで出てまーす」的なものではなく、結構マジメに"俳優"をやってるんですね? 浜野 偶然舞い込んだ話ではあったんですけど、たまたまハマリ役で......。まあ、役者業と言っても、たまたま続いただけなんですけどね。この後なんの仕事も来てないですから(笑)。 ──とはいえ、今をときめく吉高由里子の相手役ですから! 浜野 (急にどや顔で)いやー、吉高はなかなか良かったですよ。 ──うわっ、すごい上から目線(笑)。でも本当に「音楽どころじゃない」ぐらいのことになる可能性も、なくはないですよね。最終的に、浜野謙太はどこへ行こうとしているのでしょうか? 浜野 それがどんどん分かんなくなってて......。 ──ははははは。悩みがさらに深まってるじゃないですか。 浜野 『婚前特急』の試写会に行って「俺......役者で売れちゃうかも」とか思いながら、帰ってきて在日ファンクのシングル作ってると「俺は何をやってんだろう」って気持ちになるし。 ──いろんなことをやりながらも「でも俺はミュージシャンだから」みたいな気持ちはないんですか? 浜野 うーん......。でもミュージシャンってちょっと貧乏臭いような気がしてて(笑)。役者とかをやるやらないにかかわらず、専業ミュージシャン的なノリはあまりよくないんじゃないかと。だからそんなに......あ、アイドルにはなりたいですけどね。3連チャンシングルも関ジャニ∞みたいでしょ? ──アイドル!? え? ちやほやされたいの?(笑) 浜野 まぁ、ぶっちゃけそうですね。 ──あえてライバルを挙げるなら誰? 星野源君とか? 浜野 いや、星野君はライバルではないですねー。ライバル......ライバルかぁ......。あ、戦うってことだったら、もう「敵」だと思っているものはいっぱいあります!(笑)誰にも伝わらないと思うんですけど、「Escape」はサムライブルーに対抗した曲なんですよ。「サムライになんかなれないぞ。侍になりたいけどなれないのが、むしろジャパンなんじゃないか!」と思ってるから、そこは戦っていきたい。 ──結構巨大なものを敵認定しますね(笑)。 浜野 メンバーすらそんな曲だと気付いてないですけど(笑)。でもとにかく、貧乏くさくない生き方をしたいですね。1970年代、最盛期を迎えた頃のJBのどこに憧れるかっていうと、突き詰めるとたぶん音だけじゃないんですよ。 ──あの貧乏くささのない、リッチな感じ。 浜野 そうです。リッチな、余裕の塊みたいな。オーサカ=モノレールの中田亮さんが言ってたんですけど、JBは今でこそ「通が聴く音楽」になってるけど、当時は中学生くらいの女の子が「キャー」って言うような大衆音楽だったんだよって。俺はむしろその、大衆音楽のほうに行きたいんですよ。たぶん。 (構成=臼杵成晃/撮影=後藤秀二 ) ●在日ファンク 新しい時代のディープファンクバンド。高祖ジェイムズ・ブラウンから流れを汲むファンクを日本に在りながら(在日)再認識しようと、音、思想、外観あらゆる面から試みるその様は目を覆うものがある。しかし、それこそがまさにファンクなバンドなのだ。公式HP<http://www.zainichifunk.com/【ライブ】 10/24 NESTフェスティバル@渋谷O-EAST 10/31 多摩美術大学芸術祭@多摩美術大学 八王子キャンパス(入場無料) 10/31 自主法政祭@法政大学市ヶ谷キャンパス(入場無料) 11/21 ZAZENBOYS vs. ZAINICHIFUNK@新宿 ロフト
あいつによろしく 10日20日に発売されたがかりのハマケンが番組MCとしてタッグを組んだ盟友サイトウ"JxJx"ジュンをゲストに迎えたコラボシングル第1弾。カップリングには2人の番組から生まれた「スペシャボーイズ・ザ・ワールドのテーマ」も収録。また、11月17日発売のコラボ第2弾「BAY DREAM~FROM課外授業~」にはサイプレス上野、12月22日発売の第3弾「Escape」にはROY(THE BAWDIES)が参加している。 amazon_associate_logo.jpg
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