黒き鋼鉄と化した男の爆音復讐譚『鉄男 THE BULLET MAN』

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『鉄男 THE BULLET MAN』/5月22日(土) シネマライズ他全国ロードショー/配給:アスミック・エース/(C)TETSUO THE BULLET MAN GROUP 2009/http://tetsuo-project.jp/
 5月病からなかなか抜け出せずにいる人も、この映画を見れば嫌が上でも目が覚めるかもしれない。世界で人気の塚本晋也監督最新作『鉄男 THE BULLET MAN』(5月22日公開)だ。  塚本監督は1987年に『電柱小僧の冒険』で若手監督の登竜門PFFグランプリを受賞。89年の商業映画監督デビュー作『鉄男』は、「全身が鋼鉄の塊と化す男」という鮮烈な内容でいまでもカルト的な人気を誇っている。『六月の蛇』(02)ではベネチア国際映画祭審査員特別大賞を受賞し、同映画祭では審査員を2度努めるなど特にヨーロッパでの人気・評価が高い。脚本、撮影、美術、編集なども自らこなすこだわりの人でも知られ、そこから生み出される独創的な世界観は一度ハマると病み付きになる。  そんな塚本監督が、デビュー作にして代表作の『鉄男』20周年を記念して製作したのが、今回の『鉄男 THE BULLET MAN』。東京の外資系企業で働くアメリカ人、アンソニー(エリック・ボシック)がある日突然、愛する息子を何者かに殺され、人生が一変。絶望に打ちひしがれながらも事件の謎を追う。すると、解剖学者だった父親が関与する<鉄男プロジェクト>と呼ばれる謎の実験の存在に行き当たり、その事実を知って怒りに震えるアンソニーの体は、蒸気と黒いオイルを噴出する鋼鉄の銃器と化していく。  かつてハリウッドで企画開発されていた経緯があり、製作にはクエンティン・タランティーノも参加していたが実現には至らなかった。結局は日本映画として製作されたが、海外展開を意識して全編英語劇として完成。すでに昨年のベネチア国際映画祭のコンペティション部門に出品されてワールドプレミアも行われた。満を持しての日本公開となる。  『鉄男』と『鉄男II BODY HAMMER』(92)のシリーズ過去2作とは、大都市・東京を舞台に男の体が怒りで鋼鉄の塊と化すというモチーフが共通するのみ。続編でもリメイクでもない新作として、過去作を見ていなくても問題ない。加えて、主人公の過去が明らかにされる過程や愛する人との絆などが描かれ、クライマックスの鉄男と謎の男と対決もアクション満載で、過去2作よりもストーリー性や娯楽性が増した。  なにより強烈なのがその音響だ。鋼鉄がうなりを上げるかのような破壊的な音が、劇場の限界ギリギリまで響き渡る。塚本監督は「上映時間は『アバター』の3分の1だが、見た後の疲労度は『アバター』の3倍は間違いなくある」と自信たっぷりで、実際にマスコミ試写では「試写室が揺れる」という現象も起こっているとか。  映像もCGは極力使われずアナログに徹しており、デジタル3Dが盛んな昨今、CGばかりの映画に見慣れた若い世代には、特に新鮮かもしれない。好き嫌いの別れる映画ではあるが、わずか71分の上映時間ながらも、見終わったあとはアドレナリンが全開に。その映像と音を文字通り体で受け止める"体感"映画として、季節柄ぼんやりしがちな脳ミソを刺激するには十分すぎる迫力がある。 (eiga.com編集部・浅香義明) 『鉄男 THE BULLET MAN』作品情報 http://eiga.com/movie/54774/
完全鉄男 『鉄男』から『鉄男 THE BULLET MAN』までの軌跡 徹底的に鉄男の世界。 amazon_associate_logo.jpg
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“映画祭男”小林政広監督が大放談!「ボクはもう怖いものがないんです」

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『バッシング』『愛の予感』などの自主映画が欧州の映画祭で高く評価された小林政広監督
。「今回は映画祭出品ということを意識せず、自分の撮りたいものをようやく撮ることができた」と『春との旅』の手応えを語る。
 ようやく春がやってきた。低予算ながら気骨のある映画を地道に作り続けてきた小林政広監督のもとに春がやってきた。イラク邦人人質事件をめぐる日本国内のヒステリックな世論を題材にした『バッシング』(05)、佐世保市で起きた小学生による刺殺事件にインスパイアされた『愛の予感』(07)など、超シリアスな作品を小林監督は自主映画として作り続けてきた。『バッシング』はカンヌ映画祭でコンペイン、『愛の予感』はロカルノ映画祭でグランプリを含む4冠受賞するなど、そのストイックな映画づくりの姿勢は海外の映画祭で高く評価されているものの、国内での評価には必ずしも比例していない状態だった。ところが、だ。新作『春との旅』は脚本を読んで出演を快諾した仲代達矢が主演、孫娘役にはヒット作『フラガール』(06)で好演した徳永えりを起用。そして2人が旅先で会うのは、大滝秀治、菅井きん、小林薫、田中裕子、淡島千景、柄本明、美保純、香川照之、戸田菜穂......と実力派俳優ばかりのオールスターキャストなのだ。『愛の予感』は男優の都合がつかず、小林監督自身が主演したことを考えると、なんという豪華さ、賑やかさではないか。小林監督もいつになく、明るい面持ちなのだ。映画づくりにおいて突き抜けた感のある小林監督が胸の内を語った。 ──小林監督、今までになくめでたい作品ですね。 小林政広監督(以下、小林) そうだね(笑)。昔はよく、東映や松竹でオールスターの正月映画を上映していたでしょ? あれの第2弾って感じ。正月映画第1弾は『男はつらいよ』みたいな娯楽映画だけど、正月映画第2弾は社会派ドラマが交じったりしていたでしょ。ああいう感じを狙ったものです。 ──北海道の小さな漁村で50年間もニシンの大群が来ることを待ち続けた漁師・忠男(仲代達矢)と孫娘のロードムービー。忠男の頑固で一途なところが小林監督と似ていますね? 小林 うん、まぁ、登場人物は自分自身の分身でもあるわけです。それに主人公の忠男はニシンを待ち続けた漁師だけれども、それは映画の世界の話でもあるんです。50年前の映画全盛期には映画館にお客さんが入り切れないほど押し寄せてきて、段ボール箱へ札束を足で踏んづけて入れていた。あの世代は、「夢よ、もう一度」と今も映画界にしがみついている。そういうのと重ね合わせたものですね。 ──これだけの豪華キャスト、現場でかなり気を遣ったのでは? 小林 気だけは、死ぬほど遣いましたね(苦笑)。これまでもキャストに気を遣うのがイヤになって、次の作品では若い子を起用したりしていたんだけど、今回はもうその反動も起きないぐらい。すべてを出し尽くした感じですよ(笑)。役づくりというのは、役者と一緒に細かい線を手繰り寄せていくような作業なんだけど、気の合わない役者だと時間ばかりかかるもの。こういうと僭越なんだけど、仲代達矢さんとは気が合った。ちゃんと応えてくれた。現場もね、仲代さんと他の役者さんたちとの手合わせを観戦するような面白さがありましたよ。 ──ベテラン俳優同士の間で静かに火花が散る現場ですね。
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小林 これだけのキャリアの方たちが集まってくれたので、撮影そのものは心配することはそうなかったけれど、スタッフに対してボクは怒鳴っていました。カメラの前にいる人たちって、カメラの後ろ側が全部見えるものなんですよ。気を抜いているスタッフがひとりでもいるとダメ。いい芝居が生まれないものなんです。あんまりボクが厳しいから、逃げ出したスタッフもいるくらいです。 ──キャストは豪華ですが、祖父の世話をしていた孫娘・春(徳永えり)が東京に出て働くために、祖父を親戚の誰かに引き取ってもらおうという"現代の姥捨て"という非常にシビアなテーマ。 小林 10年前から温めていた脚本だけど、以前はユルいものを考えていたんです。おじいちゃんと孫娘のちょっとファンタジックなロードムービーを考えていた。でも脚本を書き直しながら、自分自身がもっと切実になれるテーマを盛り込まないと1本の映画にはならないと考えるようになったんです。そう考えている間に、『バッシング』や『愛の予感』を作ったわけです。『バッシング』『愛の予感』は映画的なリアリティーをとことん突き詰めてみようと考えて撮った作品。やはり、そういうシリアスな作品を撮ってきたことで、今回の『春との旅』も生まれたんだと思います。下手すれば、これだけの俳優がそろっていれば、何もしないでも映画はできたと思いますよ。もっと、多くの人が見易い映画になっていたかもしれない。でも、そんな映画はボクは撮りたくなかったし、やる意味がないと思ったんです。お客さんの心に届く作品にならないだろうなとね。 ──やはり、これだけのキャストが顔を合わせたのは、カンヌ映画祭やロカルノ映画祭での実績が功を奏したわけですか? 小林 そう思いたいですね。やっぱり、映画祭での受賞は自信になりました。自主映画でね、作っていると次第に自信がなくなってくるんです。デビュー作『CLOSING TIME』(96)の頃は周囲に応援してくれる人がいたけど、映画を撮り続けているうちに、励まして支えてくれる人がいなくなっちゃった(苦笑)。監督が自信を失ったら映画は作れません。そういう意味では、映画祭で認められたのは自信を繋ぎ止めるという効果はありました。現場では、なるべくエラソーにしていましたよ。そうじゃないと保たない。潰れてしまいそうだった。特に今回は家族がテーマでしょ。俳優にしろスタッフにしろ、兄妹や家族がいるわけですから、ヘタなことは言えなかった。トンチンカンなことを言って、「監督のくせに、何も分かってないな」と思われたら、こういう映画は撮れませんしね。結局、映画ってのは自分に身の覚えのあることじゃないと撮れないんです。自分自身の抱えていることしか、映画にできないものなんです。 ──昨年は葬式費用を持たない少年が自分の手で母親の遺体を葬る『ワカラナイ』(08)に加え、エグザイルの眞木大輔主演作『白夜』(09)も劇場公開。そして、今年はオールスターキャストの『春との旅』。小林作品がここに来て、ずいぶん自由度が増したように思います。 小林 『春との旅』もずいぶん温めた脚本だけど、『白夜』はもう20年前に書いた脚本。ずっとやりたかった企画だったけど、2人芝居で長台詞があり、誰も俳優が引き受けてくれなかった。それがエグザイルの眞木大輔が演じられる脚本はないか、ということで決まったんです。ボクは「え、エグザイルって何?」って感じだったんだけどね(笑)。撮影が始まるときには『春との旅』の撮影も決まったんで、望遠カメラを使っての隠し撮り風のシーンなどを試したりもしました。『ワカラナイ』は、『バッシング』『愛の予感』に続くシリアス3部作のつもりで撮ったもの。でも、これも『春との旅』が頭にあったので、ちょっと甘くなってしまった(苦笑)。もっと、辛口に徹するつもりだったんだけどね。欲が出て、お客さんを泣かせようと考えてしまった(笑)。年をとっちゃったのかな? ──いい意味で、マイルドになったと考えましょうよ。
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寒村で肩を寄せ合うように暮らしてきた忠男
(仲代達矢)と孫娘の春(徳永えり)。春の職場
がなくなったことから、忠男を預かってくれる
親戚を探す"姥捨て"の旅に出る。
(c)2010『春との旅』フィルムパートナーズ/
ラテルナ/モンキープロダクションズ
小林 なんかね、ここ最近、自分にとって怖い人がいなくなったんですよ。父親が亡くなり、フォーク歌手時代のボクの師匠だった高田渡さんも亡くなった。それに『殺し』(00)、『歩く、人』(01)に出演してくれた緒形拳さんも亡くなった。もう、ボクは怖いもの知らずですよ。それまでは、こんなことしたら何か言われるかなと気にしている部分があり、どこか遠慮がちになっていた。でも、今はニシン漁の夢だけを追い続けた忠男と同じように、映画以外のことは、もうどうなってもいいやぐらいの気構えなんですよ(笑)。 ──怖いもの知らず、ですか。05年に出版した『映画監督小林政広の日記』(キネマ旬報社)では血糖値が高いことに触れていましたが、最近お酒のほうは? 小林 飲んでますよ(笑)。以前ほど、もう飲めなくなりましたけど。アルコール依存症の刑事を主人公にした『フリック』(04)の撮影の頃は医者から禁じられて酒は飲まないようにしてましたが、『春との旅』の撮影時は昼から飲んでました(笑)。もちろん、コンテが決まってるときだけですよ。コンテが決まってなかったら、酒どころじゃありませんから。撮影中はテンションが上がるから、体に良くないね(苦笑)。いつ体が動かなくなるか分からないからね、これからはメジャーとかマイナーとか関係なく、どんどん撮っていこうと思っているんですよ。映画祭に出品するときは、やはりどこか映画祭を意識して作っている部分があった。これからは、あまりそういうことも考えずに、自分の撮りたい映画を撮ってやろうと思います。今回はそれが、ようやくできたんじゃないかな。これからはね、内へ内へと内向するものじゃなくて、外に向かってバァーンと広がっていくような作品を作っていきますよ。  フォーク歌手、郵便局員、シナリオライターと仕事を転々としながらも、「トリュフォーのように自分で映画を撮りたい」という夢を追い詰めて追い詰めて自分のものにした小林監督。監督デビューしてからも、低予算の中で最大限の効果を得るスタイルを模索し続け、独自の境地に至った感がある。『春との旅』は辛口ドラマながら、温かい感触が残る作品だ。苦節の末に暖かい春が訪れた。今までの小林監督作になく、観た人の気持ちを和ませる作品なのだ。 (取材・文=長野辰次) ●『春との旅』 原作・脚本・監督/小林政広 出演/仲代達矢、徳永えり、大滝秀治、菅井きん、小林薫、田中裕子、淡島千景、柄本明、美保純、戸田菜穂、香川照之 配給/ティ・ジョイ、アスミック・エース 5月22日(土)より全国ロードショー <http://www.haru-tabi.com> ●こばやし・まさひろ 1954年東京都本郷出身。フォーク歌手、郵便局員、シナリオライターなどを経て、『CLOSIN TIME』(96)で監督デビュー、ゆうばり国際ファンタスティック映画祭グランプリ受賞。『海賊版=BOOTLEG FILM』(99)、『殺し』(00)、『歩く、人』(01)で3年連続カンヌ映画祭出品の快挙を果たす。『女理髪師の恋』(03)はロカルノ映画祭特別大賞受賞。『バッシング』(05)はカンヌ映画祭のコンペ部門に選出。『愛の予感』(07)はロカルノ映画祭でグランプリを含む4冠に輝く。4月に本作のヒロイン・春のその後を描いた小説『春との旅』(毎日新聞社)を上梓した。
ワカラナイ 誰か教えて。 amazon_associate_logo.jpg
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アイドルが地獄で微笑む『戦闘少女』ギャグ×血しぶき×殺陣の特盛り丼!

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公開前から、すでに世界7カ国への配給が決定している『戦闘少女』。
杉本有美(中央)、高山侑子(写真右)、森田涼花の3人がミュータントと化し、
ガールズアクションを披露する。(c)2010東映ビデオ
 すまし顔の美女のポスターを見かけると、とりあえず周囲に誰もいないことを確かめた上で、美女の鼻の下にハミ毛を描き足したくなる。ついでにホクロ毛も加えたくなる。美しすぎるものを、この手で汚したい。完璧なるものを壊してやりたい。誰しもが経験する衝動ではないだろうか。普通の大人は頭の中のイメージだけにとどめているこの欲望を、映像作品へと昇華しているのが井口昇監督だ。井口監督の場合は鼻毛どころの騒ぎではない。八代みなせ主演『片腕マシンガール』(08)や木口亜矢主演『ロボゲイシャ』(09)ではヒロインたちを血まみれ地獄へと追い込み、阿修羅と化したヒロインが放つ美しさ、タフさをクローズアップしてみせた。成海璃子初主演映画『まだらの少女』(05)では蛇娘に変身する直前の成海璃子がゾクゾクするほど美しかった。アイドル映画において特殊な才能を発揮する井口監督が、西村喜廣監督(特殊造型家として大活躍!)、坂口拓監督(アクション俳優として超人気!)という同志たちと強力スクラムを組んだのが『戦闘少女』なのだ。  『戦闘少女』で3人の特殊クリエイターに選ばれたのは、雑誌モデル出身の新進女優・杉本有美、自衛隊全面協力映画『空へ 救いの翼』(08)に主演した高山侑子、アイドリング11号こと森田涼花の3人。『X-MEN』よろしく、3人の美女たちがミュータント戦士として己の運命、そして巨大な敵と戦う。お尻から飛び出した武器で戦うなど『ロボゲイシャ』の井口監督らしいお茶目なギャグあり、『東京残酷警察』(08)の西村監督らしい戦慄の血しぶきシーンあり、実写版『魁!!男塾』(08)の坂口監督らしい生身のアクションシーンあり。アイドル映画の枠を遥かに飛び出した、オーバーフロー気味のエンタテイメント快作となっている。  ストーリーは、『バビル2世』『幻魔大戦』といった往年の名作コミックを彷彿させるもの。女子高生の凛(杉本有美)はクラスメイトからの陰湿なイジメに耐え忍ぶ日々を過ごしていた。しかし、16歳の誕生日に凛に異変が起きる。右腕が疼いて仕方ないのだ。学校から帰ってきた凛を両親は優しく迎え、バースデイケーキで娘の誕生日を祝う。「凛、誕生日おめでとう」。そして父親は自分がミュータントであることを告白する。ガガーン! じゃあ、私にもその血が流れているの? そこへ武装集団が襲いかかり、両親を血祭りに。せっかくのバースデイケーキがクランベリーソースでなく、血のソースでデコレーションされる。ミュータントとしての潜在能力を発揮し、その場は逃れた凛だが、もはや人間として見られることはなかった。やがて凛はミュータント仲間である玲(高山侑子)、佳恵(森田涼花)らと出会い、人間vs.ミュータント族の果てしない抗争に巻き込まれていく。
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怪しいムードの中、鉄仮面を被せられる凛(杉本
有美)。東映ビデオ製作ということで、『スケ
バン刑事 少女鉄仮面伝説』(フジテレビ系)や
『女番長』シリーズへのオマージュあり。
 本作の注目点は、やはり『トリプルファイター』のごとく奇跡の合体を果たした井口&西村&坂口の3監督によるコラボだろう。ライバル心むき出しの監督たちがバラバラに撮ったオムニバス映画と違って、気の合う3監督がそれぞれの特性を活かした演出を施している。家から逃げ出した凛が商店街で"15人斬り"に挑む第1章はアクションを得意とする坂口監督、ミュータント一族に合流した凛が女同士の友情を育みつつ、人間たちを復讐することに苦悶するドラマ部分の第2章は総監督である井口監督、凛&玲&佳恵が強化スーツを装着して活躍するクライマックスの第3章は特殊効果のスペシャリスト・西村監督、と一応の担当パートを決めてから撮影を進めたとのこと。だが、現場が大好きな3監督は、他の監督が撮影中も現場に待機してアシストに努めた。坂口監督がアクション演出で熱くなっているときは、西村監督がカメラを手にクレーンに上がり、西村監督が手いっぱいのときは、井口監督がキャスト陣に優しく毛布を掛けてあげるなど、きめ細かいフォローが行なわれたそうだ。お山の大将タイプの映画監督には普通こうはできないもの。予算規模に関係なく、「とにかく面白い映画をつくりたい」と願う3監督だからこその連携プレーだったに違いない。  現在、劇場版『電人ザボーガー』の製作で忙しい井口監督だが、日刊サイゾー向けに特別にコメントを寄せてくれた。共同監督というシステムの利点について、こう語っている。 「自分の得意分野に専念できて、いい意味で肩の力を抜いて作品に挑むことができたと思います。坂口監督の第1章、西村監督の第3章もそれぞれ監督の色が出ている。この作品はまとまらなくてもいい、バラバラでもいいんだと思いながらやっていたので、ふだんの監督作より気持ち的に楽でした。自由な力が働いて、本能のおもむくままに監督したという感じ。でも、3人で打ち合わせもしていないのに、出来上がった作品はキチンとひとつの作品として成立していますよね。自分の監督ではないパートでは、コーヒー飲んだりお菓子食べたりしていられたのも良かった(笑)」  かつての日本映画界では、それぞれピンを張る実力派の脚本家である菊島隆三、小国英雄、橋本忍の3人が旅館に篭って、黒澤明監督の娯楽大作『隠し砦の三悪人』(58)の脚本を練り上げた。鈴木清順監督の傑作カルト映画として知られる『殺しの烙印』(67)に脚本家としてクレジットされている"具流八郎"は美術監督の木村威夫、アニメ『ルパン三世』の脚本家・大和屋竺らによる創作集団だ。個性豊かなメンバー間のブレーンストーミングによって、日本映画史に残る奇妙奇天烈な作品が生まれた。70年代の全盛期には視聴率30~40%を稼いでいたテレビ時代劇『水戸黄門』(TBS系)の脚本家"葉村彰子"は、プロデューサーの逸見稔をはじめ、任侠映画の大御所・加藤泰監督、『仮面の忍者 赤影』の山内鉄也監督、ホームコメディの名手である脚本家・松本ひろし、紅一点・向田邦子ら創作チームの名称だった。それだけの才能が集まって、アイデアを出し合えば面白い作品にならないはずがない。面白い映画、ドラマにはちゃんとした理由があるのだ。  話題を『戦闘少女』に戻そう。井口監督が特殊な才能に目覚めた過程を赤裸々に綴った名著『恋の腹痛、見ちゃイヤ!イヤ!』(太田出版)の中で、中学2年のときに本屋で団鬼六の官能小説『花と蛇』を立ち読みし、SMの世界に感電してしまったと告白している。美しい女性がイジの悪い女中にイビられて身悶えする姿を想像するのが、三度の飯よりも大好き。井口監督のそんなマニアック嗜好を、また別の特殊才能を持つ同志たちがサポートし、ポップでキュートなトラウマ絵巻が繰り広げられる。  井口監督にとって自分の頭の中の妄想を具象化できる"映画監督"という職業は天職だろう。しかし、キャスティングされた女優陣の全員が井口ワールドを完全に理解した上で参加しているわけではない。そこには見えない火花が散り、現場には緊張感が漂う。ただの妄想ワールドではなく、監督vs.女優、フィクションvs.リアルの攻防があり、それゆえに作品に奥行きが与えられる。『プラトニック・セックス』という飯島愛のベストセラー小説があった。読んではいないが、多分それっぽく言えば、井口監督は"プラトニック・サディスト"なのだ。井口監督はアイドル女優が演じる健気なヒロインを徹底的に追い込んでみせる。耐えて耐えて耐え忍んだアイドル女優の内面で何かが弾け、輝き始める。  井口監督にアイドル映画を撮らせると天才的才能を発揮する。しかし、正確にいうと、それはもうアイドル映画ではない。"純愛系SM映画"と呼んだほうが正しいだろう。アイドルマニアよ、身震いしながら『戦闘少女』を観るがいい。 (文=長野辰次) iguchi0519_2.jpg『戦闘少女 血の鉄仮面伝説』 監督/井口昇、西村喜廣、坂口拓 出演/杉本有美、高山侑子、森田涼花、坂口拓、島津健太郎、亜紗美、川合千春、いとうまい子、津田寛治、竹中直人 配給/東映ビデオ 5月22日(土)よりシアターN渋谷、池袋シネマ・ロサ(レイトショー)、名古屋シネマスコーレ(レイトショー)ほか全国順次公開 +R15 <http://www.sentoshojo.jp>
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●深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】INDEX [第66回]アナーキーな"社歌"で生産性アップ! 満島ひかり大進撃『川の底からこんにちは』 [第65回]超ヘビー級なシリアス劇『プレシャス』"家族"という名の地獄から脱出せよ [第64回]乱れ咲く"悪の華"ゼブラクイーン! 仲里依紗が過激変身『ゼブラーマン2』 [第63回] オタク王が見出した"夢と現実"の接点 ティム・バートン監督作『アリス──』 [第62回] バッドテイストな感動作『第9地区』 アナタはエビ人間とお友達になれるか? [第61回]スコセッシ監督の犯罪アトラクション『シャッターアイランド』へようこそ! [第60回]宮崎あおいの"映画代表作"が誕生! 毒を呑んでも生き続けよ『ソラニン』 [第59回]"おっぱいアート"は世界を救えるか? 母乳戦士の記録『桃色のジャンヌ・ダルク』 [第58回]現代に甦った"梶原一騎ワールド"韓流ステゴロ映画『息もできない』 [第57回]命知らずの変態レポーター、中東へ! 史上最大のどっきり?『ブルーノ』 [第56回]仲里依紗がアニメから実写へと跳躍! 母娘2代の時空旅行『時をかける少女』 [第55回]ビグロー監督はキャメロンより硬派! 人間爆弾の恐怖『ハート・ロッカー』 [第54回] "空気を読む"若者の悲劇『パレード』楽しいルームシェア生活の行き先は? [第53回]社会の"生け贄"に選ばれた男の逃亡劇 堺雅人主演『ゴールデンスランバー』 [第52回]『男はつらいよ』の別エンディング? "寅さん"の最期を描く『おとうと』 [第51回]ひとり相撲なら無敵のチャンピオン! 童貞暴走劇『ボーイズ・オン・ザ・ラン』 [第50回]ヒース・レジャーが最後に見た夢の世界 理想と欲望が渦巻く『Dr.パルナサスの鏡』 [第49回]トニー・ジャーは本気なんジャー! CGなしの狂乱劇再び『マッハ!弐』 [第48回]全米"オシャレ番長"ズーイー、見参! 草食系に捧ぐ『(500日)のサマー』 [第47回]市川崑監督&水谷豊"幻の名作"『幸福』28年の歳月を経て、初のパッケージ化 [第46回]押井守監督、大いなる方向転換か? 黒木メイサ主演『アサルトガールズ』 [第45回]ドラッグ漬けの芸能関係者必見!"神の子"の復活を追う『マラドーナ』 [第44回] 暴走する"システム"が止まらない! マイケル・ムーア監督『キャピタリズム』 [第43回]"人は二度死ぬ"という独自の死生観『ガマの油』役所広司の監督ぶりは? [第42回]誰もが共感、あるあるコメディー! 2ちゃんねる発『ブラック会社』 [第41回]タラとブラピが組むと、こーなった!! 戦争奇談『イングロリアス・バスターズ』 [第40回]"涅槃の境地"のラストシーンに唖然! 引退を賭けた角川春樹監督『笑う警官』 [第39回]伝説の男・松田優作は今も生きている 20回忌ドキュメント『SOUL RED』 [第38回]海より深い"ドメスティック・ラブ"ポン・ジュノ監督『母なる証明』 [第37回]チャン・ツィイーが放つフェロモン爆撃 悪女注意報発令せり!『ホースメン』 [第36回]『ソウ』の監督が放つ激痛バイオレンス やりすぎベーコン!『狼の死刑宣告』 [第35回]"負け組人生"から抜け出したい!! 藤原竜也主演『カイジ 人生逆転ゲーム』 [第34回]2兆円ペット産業の"開かずの間"に迫る ドキュメンタリー『犬と猫と人間と』 [第33回]"女神降臨"ペ・ドゥナの裸体が神々しい 空っぽな心に響く都市の寓話『空気人形』 [第32回]電気仕掛けのパンティをはくヒロイン R15コメディ『男と女の不都合な真実』 [第31回]萩原健一、松方弘樹の助演陣が過剰すぎ! 小栗旬主演の時代活劇『TAJOMARU』 [第30回]松本人志監督・主演第2作『しんぼる』 閉塞状況の中で踊り続ける男の悲喜劇 [第29回]シビアな現実を商品化してしまう才女、西原理恵子の自叙伝『女の子ものがたり』 [第28回]"おねマス"のマッコイ斉藤プレゼンツ 不謹慎さが爆笑を呼ぶ『上島ジェーン』 [第27回]究極料理を超えた"極地料理"に舌鼓! 納涼&グルメ映画『南極料理人』 [第26回]ハチは"失われた少年時代"のアイコン  ハリウッド版『HACHI』に涙腺崩壊! [第25回]白熱! 女同士のゴツゴツエゴバトル 金子修介監督の歌曲劇『プライド』 [第24回]悪意と善意が反転する"仮想空間"細田守監督『サマーウォーズ』 [第23回]沖縄に"精霊が暮らす楽園"があった! 中江裕司監督『真夏の夜の夢』 [第22回]"最強のライブバンド"の底力発揮! ストーンズ『シャイン・ア・ライト』 [第21回]身長15mの"巨大娘"に抱かれたい! 3Dアニメ『モンスターvsエイリアン』 [第20回]ウディ・アレンのヨハンソンいじりが冴え渡る!『それでも恋するバルセロナ』 [第19回]ケイト姐さんが"DTハンター"に! オスカー受賞の官能作『愛を読むひと』 [第18回]1万枚の段ボールで建てた"夢の砦"男のロマンここにあり『築城せよ!』 [第17回]地獄から甦った男のセミドキュメント ミッキー・ローク『レスラー』 [第16回]人生がちょっぴり楽しくなる特効薬 三木聡"脱力"劇場『インスタント沼』 [第15回]"裁判員制度"が始まる今こそ注目 死刑執行を克明に再現した『休暇』 [第14回]生傷美少女の危険な足技に痺れたい! タイ発『チョコレート・ファイター』 [第13回]風俗嬢を狙う快楽殺人鬼の恐怖! 極限の韓流映画『チェイサー』 [第12回]お姫様のハートを盗んだ男の悲哀 紀里谷監督の歴史奇談『GOEMON』 [第11回]美人女優は"下ネタ"でこそ輝く! ファレリー兄弟『ライラにお手あげ』 [第10回]ジャッキー・チェンの"暗黒面"? 中国で上映禁止『新宿インシデント』 [第9回]胸の谷間に"桃源郷"を見た! 綾瀬はるか『おっぱいバレー』 [第8回]"都市伝説"は映画と結びつく 白石晃士監督『オカルト』『テケテケ』 [第7回]少女たちの壮絶サバイバル!楳図かずおワールド『赤んぼ少女』 [第6回]派遣の"叫び"がこだまする現代版蟹工船『遭難フリーター』 [第5回]三池崇史監督『ヤッターマン』で深田恭子が"倒錯美"の世界へ [第4回]フランス、中国、日本......世界各国のタブーを暴いた劇映画続々 [第3回]水野晴郎の遺作『ギララの逆襲』岡山弁で語った最後の台詞は...... [第2回]『チェンジリング』そしてイーストウッドは"映画の神様"となった [第1回]堤幸彦版『20世紀少年』に漂うフェイクならではの哀愁と美学

デビュー作『鉄男』の衝撃から20年! 塚本晋也監督の変わらない製作スタイル

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個性派俳優としても活躍する塚本晋也監督。
新作『鉄男 THE BULLET MAN』ではおなじみの"ヤツ"を演じている。
 インディペンデントなる道を切り開いて20年。塚本晋也監督が製作・脚本・監督・出演・美術・特撮・編集......と全てセルフメイドで作り上げた『鉄男』(89)は、インディペンデント映画の金字塔、いやクロガネの要塞だ。都市生活者の肉体が突然、鉄に侵食されていくという不条理なこの作品は、ローマ国際ファンタスティック映画祭でグランプリを受賞。続く『鉄男II BODY HAMMER』(92)も各国の映画祭で上映され、"塚本晋也"の名前は日本よりも世界で広く知られるようになった。また、サイバーパンクな『鉄男』シリーズだけでなく、官能映画『六月の蛇』(02)はベネチア映画祭コントロ・コレンテ部門審査員特別大賞を受賞するなど、身体性にこだわる独自の作風はより進化を続けている。世界の映画シーンに衝撃を与えた『鉄男』誕生から20周年となった2009年、全編英語による『鉄男 THE BULLET MAN』が完成し、ベネチア映画祭コンペ部門でプレミア上映。5月22日(土)より、ようやく日本でも公開されることになった。温和な性格で知られる塚本監督だが、映画製作に関しては鋼鉄のような堅い意志を貫く。塚本監督のブレない生き方を体感するべし。 ──以前からハリウッド版『鉄男』の噂は耳にしていたのですが、全編英語劇となる『鉄男 THE BULLET MAN』はその流れのものでしょうか? 塚本晋也監督(以下、塚本) 舞台は東京ですが、ボクとしては完全にハリウッド版の流れで作ったものです。ハリウッド側とは何度か話し合ったんですが、どうしてもボクが考えているような『鉄男』にはなりそうになかった。それでボクの会社「海獣シアター」での自主製作という形になったんです。日本でもボクの映画はなかなか話がまとまらないのに、ハリウッドでやろうとしたら尚更ですよね。よく考えれば分かること、いやパッと考えても分かることなのに(苦笑)。こう見えても、意外と自分は流れに乗って映画を作ることもできると思っていたんですよ。でも、やっぱり『鉄男』となると、別ですね。 ──"鉄男"というキャラクターだけをハリウッドに売り渡すことはできなかった? 塚本 そうですね。『悪夢探偵』シリーズ(06、08)は、元々はメジャー的に展開する"売る"ための企画として考え出したものだったんですが、松田龍平さん主演作として完成した今となっては、そう軽く考えることができない。やっぱり、作り出しちゃうと、どうしてもこだわっちゃうんです。ダメですねぇ......(苦笑)。ハリウッド側からも、「そんなにこだわらないで、もっと胸を開いて、こちらのことを信頼してください」とか言われるんですが、そんな風に言われても、譲れないものは譲れませんからね。向こうの言い分は、人気俳優を起用しましょう。そのためには撮影期間はこれだけで......と。でも、『鉄男』は撮影や編集に時間を徹底的にかけて、手を尽くすことで面白くなる作品。今回の『鉄男 THE BULLET MAN』は普通なら3週間程度の撮影で済ませる規模の作品ですが、撮影だけで8カ月かけています。『鉄男』の面白さを出すためには、決まった製作期間で済ませることができないんです。 ──ハリウッドの人気俳優の名前も挙っていたんじゃないですか。 塚本 まだ具体的な名前が出る前の段階でした。でも、『鉄男II』直後の段階では、こちらがジョニー・デップや、ティム・ロスといった俳優の名前を挙げると、向こう側は興味を示していましたね。『シザーハンズ』(90)で注目を集め始めたジョニー・デップは病的な雰囲気を持つ米国人が当時はまだ珍しかったし、鉄男とハサミ男で繋がる部分もあるかなと。ティム・ロスは平凡な会社員役がハマりそうだった。当時は、ハリウッド版『鉄男』、行けるなと思っていましたね(笑)。 ──『鉄男』ファンを公言するクエンティン・タランティーノが製作に名乗りを挙げたことも。
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クエンティン・タランティーノ、ダーレン・アロ
ノフスキー、ギャスパー・ノエら、塚本晋也ファン
を公言する映画人は世界に多い。
塚本 93年ごろでしたね。いい感じで盛り上がっていた。あれは、乗っても良かったかもしれない(苦笑)。タランティーノは他の人と違って、「ちゃんと監督を守る」と言ってくれていましたから。「チームを組んで共同プロデューサーという形にすれば、映画会社の言いなりにならなくて済む」と言ってくれた。でも、そのときのボクはまだ具体的なハリウッド版のイメージがなく、脚本が用意できていなかったんです。ボクの中で、熱く盛り上がっているものがないとダメ。ボクは器用な職人ではないんです。不器用だけど一生懸命に、作品に愛情を込めることで、ようやく面白いものになるんです。 ──映画界で20年間サバイバルを続けてきても、それは変わらない? 塚本 そうですねぇ、心のどこかでは、きっちりした映画監督になって、お金持ちになって......というビジョンを持っていたんですが、どうもそうはなれない(苦笑)。性格なんでしょうね。最近ようやく気づいたんですが、ボクはエラそーに人に指示を出すのが得意じゃない。むしろ、自分で粘土をこねて、じわじわと作っていくタイプ。ディレクターズチェアにも一度も座ったことがありませんしね。松尾スズキさんの映画に役者として現場に行くと、松尾さん用の立派なディレクターズチェアが置いてあるんです。松尾さんは立派な監督だなぁと思いますよ(笑)。 ──今回はシニア・プロデューサーとしても名前がクレジットされています。プロデュースから裏方仕事まで、全て自分でやらないと気が済まないんですね。 塚本 現場のことはプロデューサーに任せていますけど、製作費は自分で集めています。『鉄男』以外の作品もほとんど、自分でお金は用意しているんです。8ミリ映画を撮っていた10代のときから、そうですね。映画ってお金を出している人のものなんです。最終判断は、お金を出している人がするもの。それは、はっきりしています。そのスタイルは学生時代から、現在まで変わりませんね。変わったのはカメラぐらい(笑)。それと、ボクの作品は製作期間が長いこともあって、スタッフはボランティアみたいな形で参加してもらっています。『悪夢探偵』シリーズを通して、スタッフが育ち、いい感じで『鉄男 THE BULLET MAN』に挑めると思っていたんですけど、予想外の不況でしょ。スタッフにも生活があるし、ボクにも家族がある。みんなにギャラを払うと予算オーバーしちゃう。昔からのスタッフは『鉄男 THE BULLET MAN』に参加したがっていたので、本当に申し訳なかった。でも、また今度の現場を経験した若いスタッフが、映画界に貢献していくような一流のプロに育っていくんじゃないかな。 ──サンディエゴのコミコン2009で行なわれた製作発表では『アバター』の製作費200分の1、とコメントされていました。 塚本 自虐的に200分の1と話したんですが、『アバター』(09)の製作費は200億円と言われていますから、『鉄男 THE BULLET MAN』もそれなりに掛かっていますよね。でも、撮影に8カ月、編集に4カ月要したことで、製作費が膨れ上がったんです。ギャラのことは、いつも考えていますね。スタッフにはこれだけしか払えないなぁ、食事はひとり250円だなぁとか(苦笑)。 ──生半可な気持ちでは『鉄男』は出来ないんですね......。国際色豊かなキャスティングについて聞かせてください。
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東京の外資系企業に勤めるアンソニー(エリック
・ボシック)の息子が、謎の男・ヤツ(塚本晋也)
の運転する車に轢かれた。怒りの感情を抑えられ
なくなったアンソニーの顔が次第に鉄に覆われ始める。
塚本 みなさん、オーディションに参加してくれた人たちです。主演のエリック・ボシックの本職はフォトグラファー兼モデルですが、演技の基礎ができていて、暗黒舞踏を経験しておりアングラ的世界を理解している。しかも日本語がうまい。父親役のステファン・サラザンさんは、フランスの映画誌「カイエ・デュ・シネマ」でボクの作品を紹介してくれた評論家。桃生亜希子さんは主演女優らしいオーラがあり、母親役の中村優子さんはオーディションで素晴らしい集中力を見せてくれた。スタッフもそうですが、キャストも拘束時間が長いので、「こんな条件の映画ですが......」と参加希望者をオーディションという形で募るしかなかった。エリックはエキストラのつもりでオーディションを受けたのに、後で自分が鉄男役だと知って大喜びしていました(笑)。1日だけですが、田口トモロヲさんにも出演してもらいました。前2作に主演された田口さんにちょっとでも参加してもらうことで、『鉄男』シリーズとしての刻印を押して欲しかったんです。 ──スタッフもキャストも狂おしいまでの愛情を注ぐことで、『鉄男』ワールドが成立するんですね。『鉄男』の第1作はバブル時代の都市の熱気とその崩壊を予感したかのような内容でしたが、今回は青い目の鉄男が自分のアイデンティティーを見つめ直す物語と言えますね。 塚本 アイデンティティーというか、自分という意識はどこにあって、どこから来たものなのかというテーマは、『ヴィタール』(04)ぐらいから始まったものですね。それまでは"都市と肉体"という2つの対比、対決が主題だったんですが、次第に肉体そのものに意識が移り、『六月の蛇』から『ヴィタール』を撮るうちに肉体の内側へと意識が向かい出したんです。肉体の中の意識はどこにあるんだろうと、さまよいながら撮ったのが『ヘイズ』(05)、そして"夢"という深層心理を描いた『悪夢探偵』シリーズでした。今回の『鉄男 THE BULLET MAN』もその延長線上にあるもの。従来の『鉄男』の世界と"意識とはどこにあるものか?"というイメージとが合致したものと言えるでしょうね。『鉄男』は元々、都市生活者の意識の不確かさ、夢か現実か分からない曖昧な『マトリックス』(99)的なものを描いたものですが、20年経て、よりそういう社会になっているように感じるんです。
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人間兵器へと変貌するアンソニー(エリック・
ボシック)。10段階の変身工程を、まず塚本晋也
監督が粘土造型として作り、特殊造型班が試行錯誤
を重ねて新しい鉄男を生み出した。クライマックス
では全長20mまで巨大化する。
──クライマックスは、かつての『鉄男』とはひと味違うものとなっています。撮影スタイルは20年前と変わらないとのことですが、塚本監督の内面は当然ながら変化しているかと思います。 塚本 『ヴィタール』の頃に自分に子どもが生まれ、家族ができたことでやはり意識は変わってきたと思います。テレビで戦争のニュースとか流れると「大丈夫か?」と不安になりますね。『鉄男』もノリだけで作っていいのか? ブッ壊すだけでいいのか? 救いを見せなくちゃいけないんじゃないかとか考えますよ。結局、今回も東京を舞台にしているわけですが、太平洋戦争が終わって60年以上が過ぎて、戦争について話せる人が日本にいなくなってしまった。語り部がいなくなってしまった東京という都市はどうなってしまうのかという怖さですね。平和ボケしてしまって、大切なことを忘れているんじゃないかと。今回のクライマックスは、『鉄男』を見続けてくれている人は「パンクの精神に反する」と感じるかもしれない。以前に比べると、物腰が弱くなっているように映るかもしれない。でも、逆に強い力がないと、暴力的なものから大事なものを守ることができないと思うんです。壊さずに守ることのほうが、もっと大変なんだよってことですよね。 ──今後、塚本作品はどこに向かっていくんでしょうか? 塚本 ここ5年くらいはハイペースで作ってきました。決して、手を抜いて量産化したわけではありませんが、これからはより丹念に作っていくつもりです。仕事のオファーがあれば、その企画の中にどう自分のテーマを盛り込めるか考えるのも楽しいですし、仕事が来るのを待っているだけじゃダメなので、自分でも作っていくつもりです。これまで以上に、じっくりじわじわと作っていくしかないですね。  ミッキー・ロークを蘇らせた『レスラー』(08)のダーレン・アロノフスキー監督は『鉄男』に衝撃を受け、デビュー作『π』(97)を撮り、また『バレット・バレエ』(99)から『悪夢探偵』(06)まで照明スタッフとして参加していた吉田恵輔監督は『純喫茶磯辺』(08)、『さんかく』(6月26日公開)などで注目される若手監督となっている。塚本作品は映画界に有名無形の影響を与えていると言っていいだろう。そのことに触れると、「いやいや、とんでもない」と謙遜してみせる塚本監督だった。普段は物腰が低いが、作品の中では過激なまでに跳躍してみせる。塚本監督は鋼でできたスプリングのようなクリエイターなのだ。 (取材・文=長野辰次) ●『鉄男 THE BULLET MAN』 監督・脚本・原作・撮影・美術・特殊造型・編集/塚本晋也 音楽/石川忠 出演/エリック・ボシック、桃生亜希子、中村優子、ステファン・サラザン、塚本晋也ほか 配給/アスミック・エース 5月22日(土)渋谷シネマライズほか全国ロードショー <http://tetsuo-project.jp/> ※5月8日(土)~21日(金)シアターN渋谷にて連日夜9時より『塚本大図鑑 SHINYA TSUKAMOTO FILM FESTIVAL2010』を上映。5月15日(土)~21日(金)池袋シネマ・ロサにて夜9時より『バレット・バレエ プレミアバージョン』上映。6月12日(土)~18日(金)吉祥寺バウスシアターにて夜9時より『鉄男』『鉄男II』爆音&大音響上映 ●つかもと・しんや 1960年1月1日、東京都生まれ。14歳で8ミリカメラを持ち、映画づくりを始める。日本芸術大学美術学科卒業後はCF制作会社に勤めるが4年で退社し、85年に「海獣シアター」を結成。3本の芝居を上演後、8ミリ作品『普通サイズの怪人』(86)で映画製作を再開。同じく8ミリ作品『電柱小僧の冒険』(87)でPFFグランプリ受賞。16ミリ作品『鉄男』(89)はローマ国際ファンタスティック映画祭でグランプリ受賞。続く沢田研二主演のメジャー作『ヒルコ/妖怪ハンター』(90)は諸星大二郎の原作コミックを大胆にアレンジし、切ない青春ホラーに仕立て上げた。『鉄男II BODY HAMMER』(92)は27の映画祭で上映され、世界15か国で公開。その他の代表作に『東京フィスト』(95)、『バレット・バレエ』(98)、『六月の蛇』(02)、『ヴィタール』(04)など。『悪夢探偵2』(08)のラストの長回しでの松田龍平の表情も見逃せない。また、ベネチア映画祭には2度審査員として参加している。
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成海璃子、大女優へとむくむく成長! 17歳の笑顔が眩しい『書道ガールズ』

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愛媛での合宿ロケで結束を固めた書道ガールズ。右から『おっぱいバレー』の小島藤子、『サマーウォーズ』の桜庭ななみ、『武士道シックスティーン』の成海璃子、『ねこタクシー』の公開が控える山下リオ、舞台『ピーターパン』の8代目ピーターパン・高畑充希。『クローズZEROII』の金子ノブアキが書道部の顧問役。(c)NTV
 リコピンは孤高の女優だ。いや、リコピンは馴れ馴れしいか。女優・成海璃子はいつもひとりぼっちだ。17歳にして、すでに芸歴は12年。ADならずとも成海璃子さん、とさん付けしたくなる大物感が漂う。小学生と思えない大人びた美少女ぶりで話題となった初主演ドラマ『瑠璃の島』(05年、日本テレビ系)をはじめ、成海璃子はいつも大人の俳優たちの中で、コドクな少女を演じてきた。絶対音感を持つピアニストを演じた『神童』(07)ほか、近寄りがたい天才少女役が多い。剣道を題材にした『武士道シックスティーン』(現在公開中)でも、他の女子高生たちとキャッキャッと戯れることを良しとしない、現代の"女・宮本武蔵"を演じた。天才はいつもひとりぼっちなもの。そんなイメージのある成海璃子だが、『書道ガールズ!! わたしたちの甲子園』では今までとはちょっぴり違う自然な表情を見せている。  『書道ガールズ!!』は、『サマーウォーズ』(09)の桜庭ななみ、『魔法遣いに大切なこと』(08)の山下リオら同世代の若手女優たちとの共演作。日本一の紙の生産量を誇る"紙の町"愛媛県四国中央市を舞台にした、文化系高校生たちの青春映画だ。成海璃子は書道部の部長・里子役。シャッター通りと化した地元を盛り上げるため、「書道パフォーマンス甲子園」を開催し、書道部のエースとして部員たちを束ねていく役どころとなっている。地方都市を舞台にした秀作映画『ウォーターボーイズ』(01)、『フラガール』(06)と同じく、本作も実話をベースにした物語。実際に「書道パフォーマンス甲子園」を立ち上げた愛媛県立三島高校をモデルにし、愛媛ロケが行われた。  書道シーンに加え、6m×8m四方の紙の上で行なう書道パフォーマンスのシーンも、いっさい吹き替えなし。そのため、成海璃子らは撮影の1か月前から合同練習を開始。さらに愛媛での合宿ロケによって、すっかり体育会系部員のような結束がキャスト陣に生まれたようだ。ムードメーカー役の副部長・香奈を演じる桜庭ななみを相手に、成海璃子に自然な笑顔がこぼれる。実際にロケ現場では、キャリアの長い成海璃子は自然と慕われ、同世代のキャストをまとめる役割を負っていたそうだ。また、自分自身の内面と向き合う書道のスタイルは俳優業に似ており、部員同士が息を合わせて協力しないと完成しない書道パフォーマンスは、チームワークを尊ぶ映画製作に通じるものがあったのだろう。製紙工場の煙突をバックに自転車を漕ぐ姿、墨汁だらけで練習に励むジャージ姿など、成海璃子が天才少女役のときとは違った田舎の少女らしい気取りのない佇まいを見せる。その分、クライマックスの「書道パフォーマンス甲子園」で、墨を含ませると20kgもの重さになる太筆を手にした袴姿は、いつも以上に凛々しく感じるではないか。ちなみに本作のメガホンを取った猪股隆一監督は、『瑠璃の島』のチーフディレクター。なるほど、成海璃子の輝かせ方に長けているはずである。
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吹き替えなしでの書道パフォーマンスに挑んだ成
海璃子たち。音楽に合わせて巨大な紙の上で行
なう書道パフォーマンスが臨場感たっぷりに展開
される。
 さて、あまり美しくまとめては日刊サイゾーらしくないので、17歳の天才女優・成海璃子の素顔を探るべく、過去の発言歴を検証したい。「野性時代」(角川書店)07年5月号の特集の中で"好きな小説、コミック、映画は?"という質問に対して、「コミック=『魁!!クロマティ高校』、映画=『レオン』」と答えている。おっ、ちょっと親近感が湧いてきたぞ。  テレビドラマ版『はちみつとクローバー』(08年、フジテレビ系)でヒロイン・はぐみを演じた際の「JUNON」(主婦と生活社)08年3月号インタビューでは、「私もあまり人とコミュニケーションをとるのが得意ではないし」「私自身は同世代の友達が少ないんです。同い年ぐらいの人って、エネルギーがすごいじゃないですか(笑)」「今までわりと天才的な役が多かったですね。まわりから見るとそういうイメージなんですかね。だったら、次はバカの役をやりたいです」。う~む、天才は天才ゆえの苦労が尽きないようだ。  いちばん共感できたのは、「Non-no」(集英社)08年2月5日号で語った休日の過ごし方。「休みの日は家でずっと都市伝説を調べています(笑)。新しい都市伝説を知ると『こんなスゴイことが!』ってテンションが上がるんです。(中略)休日はほとんど外出しないんですが、ディズニーランドに行くのは好きですね。乗り物に乗らずに、歩き回るだけで幸せな気分になるんです。あっ、そうそう。ディズニーランドも都市伝説の宝庫なんですよ、フフフ♪』 フフフ、ずいぶん、成海璃子さんがリコピンに近づいてきたじゃないですか。  ホラーコメディ『山形スクリーム』(09)ではフェイスラインがふくよかになっていたことで、ストーリー以上にファンはハラハラしたが、あれは平安時代のお姫さまに間違えられる役だったので、彼女なりの周到な役づくりだったのだろう。『武士道シックスティーン』では剣道の試合で気合いを入れる際の変顔がとってもチャーミングだった。『罪とか罰とか』(09)でのやることなすこと災難つづきの売れないアイドル役も絶品だった。筋肉痛に悩まされながらも見事にやり通してみせた今回の書道パフォーマンスのように、"難しい役ほど、燃える"17歳の大女優・成海璃子。バラエティー番組で愛想笑いを振りまくことなく、女優道を邁進してほしいものである。 (文=長野辰次) shodogirls03.jpg ●『書道ガールズ!! わたしたちの甲子園』 監督/猪股隆一 脚本/永田優子 音楽/岩代太郎 書道監修/石飛博光 出演/成海璃子、山下リオ、高畑充希、桜庭ななみ、金子ノブアキ 配給/ワーナー・ブラザーズ映画 5月15日(土)より全国ロードショー http://wwws.warnerbros.co.jp/shodo-girls/
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書道に剣道に大忙し! 成海璃子、日本の伝統芸道に真摯に挑む

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『書道ガールズ!! ―わたしたちの甲子園―』(C)NTV
 成海璃子が、日本の伝統芸道を現代に伝える女優になっている。最新主演作『書道ガールズ!! ―わたしたちの甲子園―』(猪股隆一監督)が5月15日より公開されるのに加え、先月24日からは、もう1本の主演作『武士道シックスティーン』(古厩智之監督)も公開中で、書道に剣道に大忙しだ。  『書道ガールズ!!』は、愛媛県四国中央市で地元高校生が町おこしのために始めた「書道パフォーマンス甲子園」を題材にしたオリジナル作品。日本一の紙の生産高を誇る"紙の町"でありながらも、不況で次第に寂れていく町に活気を取り戻そうと、地元の高校に通う書道部の面々が「書道パフォーマンス甲子園」を発案。それは、音楽にあわせて華麗に書を書き付ける「書道パフォーマンス」の腕を競い合うというもので、賛同した高校生たちが全国から集まり、第1回大会が開かれるまでを描く。  成海は、地元高校書道部の部長、里子役で主演。書道家の父になかなか認めてもらえず悶々とする里子は、書道は自分の内面と静かに向き合い、個人でやるものだと主張。当初は書道パフォーマンスを頑なに拒むが、部員や顧問との交流から次第に書道パフォーマンスの魅力に惹かれていく。  見どころは、クライマックスの書道パフォーマンス大会。重さ20キロにもなる毛筆をバケツにくんだ墨汁につけ、Jポップや洋楽などの音楽にのせて、踊るように華麗に、叩きつけるように豪快に巨大な半紙に書き付けていく。部員のチームワークも重要なパフォーマンスの様子は、スポーツにも通じる興奮がある。成海や桜庭ななみ、山下リオ、小島藤子といった若手女優たちが吹き替えなしで挑戦し、アンジェラ・アキの「手紙」にのせて、どのような書を完成させるかに注目してほしい。題材こそ書道パフォーマンスという珍しいモノを扱っているが、失敗や挫折を繰り返しながらも、ひとつの目標に向かって一丸となって頑張る姿は、普遍的な青春物語として老若男女が受け入れやすいはず。  そして『武士道シックスティーン』は、『ジウ』(中央公論社)『ストロベリーナイト』(光文社)などで人気上昇中の作家・誉田哲也の同名青春小説の映画化。成海と北乃きいがダブル主演し、剣道に青春をかける女子高生の姿を描いている。  宮本武蔵の『五輪の書』を愛読する香織(成海)は、勝つことが全てという価値観で剣の道を歩んできたが、剣道は楽しむがモットーの天然少女、早苗(北乃)に思わぬ敗北を喫する。早苗を倒すために同じ高校の剣道部に入部するが、切磋琢磨するなかで彼女自身にも、そして早苗にも変化が生まれていく。  成海演じる香織は、父が厳格な剣道の道場主で幼少期から剣の道一筋と、このあたりの設定も両作品に共通(鬼の形相で早苗をにらみすえるなど、香織のほうが『書道ガールズ!!』の里子よりもさらにストイックだが)。10代前半から大人びて落ち着いた雰囲気で、時に大学生役をも演じてきた成海だけに、同世代の女子高生と気安く交わらない孤高なヒロインは似合う。しかし、いずれの作品でもそんな自分に思い悩む姿や、ふと見せる柔和な笑顔など、等身大の演技も見逃せない。  成海が真摯に剣道や書道に挑む姿を通して、日本の伝統芸道の良さを再確認しつつ、彼女にはぜひとも柔道や茶道、華道にも挑戦してほしくなってしまうが......。  ともあれ、そんな成海は、6月5日にもメインキャストとして出演する『シーサイドモーテル』が公開(これは別に武道も書道も関係ない映画)。ますますの活躍に期待したい。 (eiga.com編集部・浅香義明) 『書道ガールズ!! -わたしたちの甲子園-』作品情報 <http://eiga.com/movie/55233/> 『武士道シックスティーン』作品情報 <http://eiga.com/movie/54642/> 『武士道シックスティーン』成海璃子&北乃きい インタビュー <http://eiga.com/buzz/20100423/21/> 『シーサイドモーテル』作品情報 <http://eiga.com/movie/54901/>
12歳/成海璃子ファースト写真集 芽生えの季節。萌芽の予感。(アマゾンより引用) amazon_associate_logo.jpg
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アナーキーな”社歌”で生産性アップ! 満島ひかり大進撃『川の底からこんにちは』

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「来るなら来てみろ大不況 その時ゃ政府を倒すまで♪」と勇ましい歌詞が踊る新時代の社歌。
佐和子(満島ひかり)は自分からにじみ出る負のオーラを反転させ、世間への逆襲に挑む。
(c)PFFパートナーズ2010
 満島ひかりはシジミのような女だ。そんなことを言うと、今をときめく若手実力派女優に失礼だろうか。モデル出身の高身長女優が闊歩するイマドキの芸能界にあって、162cmの満島ひかりは小柄な部類だろう。ルックス的にも整った顔立ちゆえ、逆に派手さがない。『モスラ2 海底の大決戦』(97)に子役で出ていた頃の満島ひかりは沖縄の少女らしく浅黒で、本当にシジミのよう。その後、アイドルグループ「Folder5」として売り出されるも、鳴かず飛ばずで自然消滅。しみじみと地味なプロフィールの持ち主である。しかし、そのシジミちゃんが大ブレイク中なのだ。渋谷ユーロスペースで公開中の最新主演作『川の底からこんにちは』が連日の盛況ぶりを見せている。シジミ入りの味噌汁が疲れた体にジワジワと効くように、満島ひかりという女優の存在は疲弊した日本映画界においてサプリメント的効果を発揮している。  Folder5消滅後は、『ウルトラマンマックス』(05~06年、TBS系)に美少女アンドロイドとしてレギュラー出演していたが、感情表現が許されない、女優としてはしんどい役だった。しばらくは、園子温監督のホラー映画『エクステ』(07)、深夜ドラマ『帰ってきた時効警察』(07年、テレビ朝日系)などにちょこちょこと出演し、雌伏の時間を過ごす。しかし、川の土手からは見えないだけで、川の底では恐ろしいまでの潮流が渦巻いていたのだ。ヒロイン・ヨーコを演じた『愛のむきだし』(09)で園監督に徹底的に鍛えられ、自分自身をむき出しにすることで、女優開眼を果たす。固く閉じていた二枚貝がパカッと開いたごとく。以後、女優・満島ひかりの快進撃が始まる。  『ウルトラマンマックス』のチーフ監督だった金子修介監督に抜擢され、オペラの世界を舞台にした『プライド』(09)では歌手のステファニーとダブル主演。演技経験のないステファニーが不憫に思えるほどの怪演。ふてぶてしい女の怖さ、嫌らしさを発揮してみせた。『クヒオ大佐』(09)では実在した結婚詐欺師プリンス・ジョナ・クヒオに騙される地味な博物館の学芸員役。ここでも松雪泰子ら他の女優陣がかすんでしまうほどの"痛い女"ぶりで場面をさらう。『食堂かたつむり』(10)は満島ひかりが目立ちすぎないように出番が削られたのではないかと勘ぐりたくなった。おいしい話や男にころっと騙されるダメ女を演じさせたら、今の満島ひかりに敵う女優はいないだろう。今秋公開の東宝映画『悪人』にもキーパーソン役でキャスティングされている。不景気で世知辛い世の中、満島ひかりの出番はますます増えそうだ。
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オバさんたちに新社歌を歌唱指導する佐和子。
劇中で歌われる「木村水産 新社歌」は反響
が大きく、現在エイベックスにCD化を打診している。
 大阪芸大卒の俊英・石井裕也監督作『川の底からこんにちは』で、満島ひかりは十八番としているダメ女ぶりに磨きを掛けている。主人公の佐和子は田舎を飛び出して5年。職場を5回変え、男も今の職場の先輩社員・健一(遠藤雅)で5人目。健一はバツイチの子連れ。「どーせ、自分は"中の下"ですから」と佐和子は自嘲気味に呟く。高望みする気力もなく、流れに身を任せ、テキトーな生活を送っていた。そんな折、田舎でシジミ工場を経営していた父親(志賀廣太郎)が倒れ、やむえず実家に戻ることに。そこへ、「工場経営の父が危篤。佐和子はひとり娘」ということに俄然着目した健一が娘の加代子(相原綺羅)を連れて強引に押し掛けてくる。しかし、工場は倒産寸前。健一は工場に勤める若い女子社員に早速手を出し、加代子を残して失踪。どーする、佐和子? 今まで流れに流されるままに生きてきた佐和子は、人生のどん底にぶち当たり、ついに腹を括る。  逆襲への合図となるのが、シジミ工場「木村水産」の新社歌。毎朝、形だけみんなで斉唱していた社歌だが、覚悟を決めた佐和子はアナーキーさを極めた歌詞を体から吐き出し、世にも奇妙な新社歌が誕生する。他に職場がなく、仕方なくシジミ工場に勤めていたオバさんたちも佐和子と同様に長年溜め込んでいた体内毒素を新社歌斉唱をきっかけに吐き出していく。デトックスが進み、佐和子とオバさんたちの顔色が変わっていく。川の底からこんにちは。どん底からの女たちの反撃が始まる。  それにしても満島ひかりは世間への怨念に満ちた役がぴたりとハマる。『プライド』で自分に冷たく当たる副社長秘書(新山千春)に対し、「私、イヤな思いをすると力が湧くんですよ」と恨みの言葉を投げ掛けるシーンは、『リング』(98)の貞子、『呪怨』(03)の伽倻子ばりの迫力だった。  「キネマ旬報」(キネマ旬報社)5月上旬号で、金子修介監督がブレイク前の満島ひかりにまつわるエピソードを明かしており、非常に面白い。10代の頃の満島はオーディションですっかり落ち癖が付いており、『ウルトラマンマックス』に落ちたら、もう沖縄に帰るつもりだったそうだ。その直前に落ちたオーディションが『ニライカナイからの手紙』(05)。沖縄を舞台にした作品だが、福岡出身の蒼井優に負けてしまったのだ。また、金子監督の大ヒット作『デスノート』シリーズ(06)では、金子監督は弥海砂(あまね・みさ)に推すつもりで満島をオーディション会場に連れていったところ、戸田恵梨香も会場に来ており、あれよあれよという間に戸田恵梨香が海砂に選ばれてしまった。そのオーディションの帰り、満島は「私、駄目ですよね。あぁ、世界が変わってしまえばいい!」と呟いたという。怨念に満ちた演技がリアルなはずである。今、スクリーンの中で研ぎ澄まされた負のオーラを放つ満島ひかりだが、これからヒット作に恵まれ、多くの人の目に触れることで、陽性のオーラに転じていくに違いない。  『川の底からこんにちは』で地味な仕事のイメージで描かれているシジミ工場、およびシジミ漁だが、近年はシジミに含まれるオルニチンは肝臓にいいということで大評判。シジミ漁はかなり賑わっているらしい。もとよりシジミ大好きな自分は、シジミの醤油漬けでビールを飲むのを楽しみとしている。そのうち、すっかり人気女優としてテレビに出ている満島ひかりを眺めながら、「昔はダメ女役で光ってたんだよなぁ」とビール片手にシジミを突つきながら独りごちることだろう。そのとき、自分は冒頭の"満島ひかりはシジミのような女だ"という言葉を訂正するはずだ。"満島ひかりは真珠貝のような女だ"と。 (文=長野辰次) kawanosoko03.jpg『川の底からこんにちは』 監督・脚本/石井裕也 出演/満島ひかり、遠藤雅、相原綺羅、志賀廣太郎、岩松了ほか 配給/ユーロスペース+ぴあ 5月1日より渋谷ユーロスペースほか全国順次公開中 <http://kawasoko.com>
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●深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】INDEX [第65回]超ヘビー級なシリアス劇『プレシャス』"家族"という名の地獄から脱出せよ [第64回]乱れ咲く"悪の華"ゼブラクイーン! 仲里依紗が過激変身『ゼブラーマン2』 [第63回] オタク王が見出した"夢と現実"の接点 ティム・バートン監督作『アリス──』 [第62回] バッドテイストな感動作『第9地区』 アナタはエビ人間とお友達になれるか? [第61回]スコセッシ監督の犯罪アトラクション『シャッターアイランド』へようこそ! [第60回]宮崎あおいの"映画代表作"が誕生! 毒を呑んでも生き続けよ『ソラニン』 [第59回]"おっぱいアート"は世界を救えるか? 母乳戦士の記録『桃色のジャンヌ・ダルク』 [第58回]現代に甦った"梶原一騎ワールド"韓流ステゴロ映画『息もできない』 [第57回]命知らずの変態レポーター、中東へ! 史上最大のどっきり?『ブルーノ』 [第56回]仲里依紗がアニメから実写へと跳躍! 母娘2代の時空旅行『時をかける少女』 [第55回]ビグロー監督はキャメロンより硬派! 人間爆弾の恐怖『ハート・ロッカー』 [第54回] "空気を読む"若者の悲劇『パレード』楽しいルームシェア生活の行き先は? [第53回]社会の"生け贄"に選ばれた男の逃亡劇 堺雅人主演『ゴールデンスランバー』 [第52回]『男はつらいよ』の別エンディング? "寅さん"の最期を描く『おとうと』 [第51回]ひとり相撲なら無敵のチャンピオン! 童貞暴走劇『ボーイズ・オン・ザ・ラン』 [第50回]ヒース・レジャーが最後に見た夢の世界 理想と欲望が渦巻く『Dr.パルナサスの鏡』 [第49回]トニー・ジャーは本気なんジャー! CGなしの狂乱劇再び『マッハ!弐』 [第48回]全米"オシャレ番長"ズーイー、見参! 草食系に捧ぐ『(500日)のサマー』 [第47回]市川崑監督&水谷豊"幻の名作"『幸福』28年の歳月を経て、初のパッケージ化 [第46回]押井守監督、大いなる方向転換か? 黒木メイサ主演『アサルトガールズ』 [第45回]ドラッグ漬けの芸能関係者必見!"神の子"の復活を追う『マラドーナ』 [第44回] 暴走する"システム"が止まらない! マイケル・ムーア監督『キャピタリズム』 [第43回]"人は二度死ぬ"という独自の死生観『ガマの油』役所広司の監督ぶりは? [第42回]誰もが共感、あるあるコメディー! 2ちゃんねる発『ブラック会社』 [第41回]タラとブラピが組むと、こーなった!! 戦争奇談『イングロリアス・バスターズ』 [第40回]"涅槃の境地"のラストシーンに唖然! 引退を賭けた角川春樹監督『笑う警官』 [第39回]伝説の男・松田優作は今も生きている 20回忌ドキュメント『SOUL RED』 [第38回]海より深い"ドメスティック・ラブ"ポン・ジュノ監督『母なる証明』 [第37回]チャン・ツィイーが放つフェロモン爆撃 悪女注意報発令せり!『ホースメン』 [第36回]『ソウ』の監督が放つ激痛バイオレンス やりすぎベーコン!『狼の死刑宣告』 [第35回]"負け組人生"から抜け出したい!! 藤原竜也主演『カイジ 人生逆転ゲーム』 [第34回]2兆円ペット産業の"開かずの間"に迫る ドキュメンタリー『犬と猫と人間と』 [第33回]"女神降臨"ペ・ドゥナの裸体が神々しい 空っぽな心に響く都市の寓話『空気人形』 [第32回]電気仕掛けのパンティをはくヒロイン R15コメディ『男と女の不都合な真実』 [第31回]萩原健一、松方弘樹の助演陣が過剰すぎ! 小栗旬主演の時代活劇『TAJOMARU』 [第30回]松本人志監督・主演第2作『しんぼる』 閉塞状況の中で踊り続ける男の悲喜劇 [第29回]シビアな現実を商品化してしまう才女、西原理恵子の自叙伝『女の子ものがたり』 [第28回]"おねマス"のマッコイ斉藤プレゼンツ 不謹慎さが爆笑を呼ぶ『上島ジェーン』 [第27回]究極料理を超えた"極地料理"に舌鼓! 納涼&グルメ映画『南極料理人』 [第26回]ハチは"失われた少年時代"のアイコン  ハリウッド版『HACHI』に涙腺崩壊! [第25回]白熱! 女同士のゴツゴツエゴバトル 金子修介監督の歌曲劇『プライド』 [第24回]悪意と善意が反転する"仮想空間"細田守監督『サマーウォーズ』 [第23回]沖縄に"精霊が暮らす楽園"があった! 中江裕司監督『真夏の夜の夢』 [第22回]"最強のライブバンド"の底力発揮! ストーンズ『シャイン・ア・ライト』 [第21回]身長15mの"巨大娘"に抱かれたい! 3Dアニメ『モンスターvsエイリアン』 [第20回]ウディ・アレンのヨハンソンいじりが冴え渡る!『それでも恋するバルセロナ』 [第19回]ケイト姐さんが"DTハンター"に! オスカー受賞の官能作『愛を読むひと』 [第18回]1万枚の段ボールで建てた"夢の砦"男のロマンここにあり『築城せよ!』 [第17回]地獄から甦った男のセミドキュメント ミッキー・ローク『レスラー』 [第16回]人生がちょっぴり楽しくなる特効薬 三木聡"脱力"劇場『インスタント沼』 [第15回]"裁判員制度"が始まる今こそ注目 死刑執行を克明に再現した『休暇』 [第14回]生傷美少女の危険な足技に痺れたい! タイ発『チョコレート・ファイター』 [第13回]風俗嬢を狙う快楽殺人鬼の恐怖! 極限の韓流映画『チェイサー』 [第12回]お姫様のハートを盗んだ男の悲哀 紀里谷監督の歴史奇談『GOEMON』 [第11回]美人女優は"下ネタ"でこそ輝く! ファレリー兄弟『ライラにお手あげ』 [第10回]ジャッキー・チェンの"暗黒面"? 中国で上映禁止『新宿インシデント』 [第9回]胸の谷間に"桃源郷"を見た! 綾瀬はるか『おっぱいバレー』 [第8回]"都市伝説"は映画と結びつく 白石晃士監督『オカルト』『テケテケ』 [第7回]少女たちの壮絶サバイバル!楳図かずおワールド『赤んぼ少女』 [第6回]派遣の"叫び"がこだまする現代版蟹工船『遭難フリーター』 [第5回]三池崇史監督『ヤッターマン』で深田恭子が"倒錯美"の世界へ [第4回]フランス、中国、日本......世界各国のタブーを暴いた劇映画続々 [第3回]水野晴郎の遺作『ギララの逆襲』岡山弁で語った最後の台詞は...... [第2回]『チェンジリング』そしてイーストウッドは"映画の神様"となった [第1回]堤幸彦版『20世紀少年』に漂うフェイクならではの哀愁と美学

ゼロ年代の最後を飾る映画賞が決定! アンチメジャーな”日プロ大賞”が復活

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宮崎あおい、寺島進、麻生久美子、三池崇史
監督ら賑やかな顔ぶれが集まった「第11回日本
映画プロフェッショナル大賞」授賞式の様子。
02年に開かれたこの授賞式を最後に「日プロ大賞」
授賞式は中断していた。
  "日プロ大賞"なる賞をご存知だろうか? 正式名称は「日本映画プロフェッショナル大賞」。1992年に始まった映画賞で、今年で19回目を数える。青山真治監督(第6回作品賞『Helpless』)、黒沢清監督(第7回作品賞『CURE』)、三池崇史監督(第7回監督賞『極道黒社会 RAINY DOG』)ら日本映画界を支える才能を早くから評価し、配給会社の力量や宣伝不足などの理由で興行的に恵まれなかったインディペンデント系の力作、秀作を顕彰してきた映画賞なのだ。映画賞シーズンの終わった今年4月、ゼロ年代最後の映画賞となる「第19回日プロ大賞」受賞作品および受賞者が発表された。 ●作品賞=『私は猫ストーカー』 ●主演男優賞=菅田俊『ポチの告白』 ●主演女優賞=ぺ・ドゥナ『空気人形』 ●監督賞=細田守監督『サマーウォーズ』 ●新人監督賞=鈴木卓爾監督『私は猫ストーカー』 ●新人奨励賞=町田マリー『美代子阿佐ヶ谷気分』 ●新人奨励賞=満島ひかり『プライド』  矢口史靖監督の初期作品『裸足のピクニック』(93)、『ひみつの花園』(97)に共同脚本で参加していた鈴木卓爾監督の長編デビュー作『私は猫ストーカー』にスポットライトを当て、また警察組織の腐敗ぶりを生々しく描いた問題作『ポチの告白』での菅田俊の渾身の演技を見逃さないなど、日プロらしい選考結果となっている。満島ひかりは大ヒット作『愛のむきだし』ではなく、興行的に苦戦を強いられた『プライド』での受賞というのも「メジャーな映画賞を受賞した作品は対象外」という日プロならでは。  メジャーな映画会社や芸能プロダクションの政治的な思惑に左右されない"日プロ大賞"の存在は現場で働く映画人たちに高く評価され、池袋・新文芸坐やテアトル新宿で行なわれた授賞式には受賞監督や俳優たちが駆けつけ、手づくり感に溢れた映画賞として歴史を刻んできた。だが、三池崇史監督、麻生久美子、宮崎あおいらが来場するなど大いに賑わった第11回授賞式を最後に授賞イベントは取り止めとなり、受賞作品が毎年発表されるだけになっていた。そんな折、先述の第19回日プロ大賞は8年ぶりに授賞式を開催することに。なぜ、日プロ大賞は今年になって復活の狼煙を上げたのか。日プロ大賞実行委員長である映画ジャーナリストの大高宏雄氏にコメントを求めた。 「もともと、非常に個人的な想いから始まった映画賞なんです。第1回の主演男優賞は『遊びの時間は終わらない』(91)の本木雅弘、新人監督賞が同作品の萩庭貞明監督でした。この作品は非常に面白いにも関わらず、劇場公開時にほとんど話題にならず、あらゆる映画賞からも漏れてしまった。そのことに私は義憤を感じ、衝動的に始めた映画賞なんです(笑)。仲間に協力してもらい、その後も自腹で運営していたんですが、03年に私の父が亡くなり、その年の授賞式は中止しました。その年から授賞式は中断しています。また、私は文化通信社の記者として普段は取材している会社員なわけですが、映画誌や新聞に映画評などを寄稿していることも含め、いち社員が映画賞を主宰していることに対して、当時のオーナーから圧力を受けたのも中断していた理由のひとつでしたね。足を引っ張る力は、どこにもありますよ。まぁ、いずれにしろ、私個人の些細な事情なんです(苦笑)」  お祭りと同じく、人を呼び集めるイベントは、ある種の"磁場"が働くことで成立するもの。時代の流れ、社会の空気みたいなものも、"日プロ大賞"復活に影響を与えたのだろうだろうか? 「そうですね、後付けかも知れませんが、日プロ大賞が選んだ09年のベスト10作品に松江哲明監督の『あんにょん由美香』が選ばれていますが、取材対象に監督が積極的に関与するという新しいスタイルのドキュメンタリーを得意とする松江監督のような若い世代が出てきたということもあるでしょう。松江監督は90年代の日プロ大賞の授賞イベントに観客として参加していたそうです。日プロ大賞の授賞式が盛り上がっていた90年代のインディペンデント映画の熱気を感じながら育った世代が、すでに作り手となっているわけです。また、ダントツの人気で作品賞に選ばれた『私は猫ストーカー』やベスト10に入った『オカルト』もデジカメの特性を生かしたユニークな作品。今回、受賞には至らなかったけれど、他にも『SRサイタマノラッパー』、今年で言うなら『イエローキッド』といったデジカメならではの低予算作品が注目を集めています。90年代は三池監督、黒沢監督、青山監督らが続々と現われたのに対し、ゼロ年代の中盤以降はそういう流れがなかった。でも、ここにきて、ようやく新しい流れが生まれつつあるように感じますね」  日プロ大賞が選出した09年のベスト10作品は以下の通り。また、併せてゼロ年代邦画ベスト5も発表された。 ●第19回日プロ大賞作品ベストテン 1.鈴木卓爾監督『私は猫ストーカー』 2.細田守監督『サマーウォーズ』 3.是枝裕和監督『空気人形』 4.光石富士朗監督『大阪ハムレット』 5.松江哲明監督『あんにょん由美香』 6.廣木隆一監督『余命1ヶ月の花嫁』 7.白石晃士監督『オカルト』 8.宮藤官九郎監督『少年メリケンサック』 9.金子修介監督『プライド』 9.田口トモロヲ監督『色即ぜねれいしょん』 ●2000年代(ゼロ年代)邦画ベスト5 (00年~09年公開作品が対象) 1. 青山真治監督『EUREKA(ユリイカ)』 2. 若松孝二監督『実録・連合赤軍 あさま山荘への道程』 3. 荒戸源次郎監督『赤目四十八瀧心中未遂』 3. 黒沢清監督『アカルイミライ』 5. 三池崇史監督『殺し屋1』  5月15日(土)、池袋・新文芸坐で開かれる8年ぶりの授賞式には、ベテラン俳優・菅田俊、細田守監督、鈴木卓爾監督、町田マリーら受賞者、さらにゼロ年代邦画で票を分け合った青山真治監督、若松孝二監督らの来場が予定されている。メジャーな映画賞にはない、味のある顔ぶれだ。 「青山監督は今でもプロフィールに"日プロ大賞受賞"と入れています。青山監督にとっても日プロは思い入れが強いらしく、今回の授賞式はカンヌ映画祭に入るのを遅らせて来てくれるそうです。若松監督もずっとインディペンデントシーンで活躍し続けているのは凄いこと。90年代に溜め込んでいたエネルギーが『実録・連合赤軍』(08)で爆発した感があります。昨年11月、テアトル新宿で行なったプレイベントで荒戸源次郎監督と奥山和由プロデューサーの対談を組みましたが、スケジュールの都合でトーク時間が充分ではなかった。その反省もあり、今回の授賞式は受賞者がそれぞれトークできるよう、作品上映の前に1時間20分ほど時間を割いています」  『空気人形』で眩しいヌードを披露した、韓国映画界の才媛ペ・ドゥナの来場はないのだろうか? 「ペ・ドゥナですか? 日プロは日本アカデミー賞のように、韓国からの旅費と宿泊費を用意することができないので、『授賞式の時期に東京に遊びに来ないか』と製作会社を通して打診したが、無理でした。是枝監督も参加できないとの通達があり、少し悲しくなりましたね。いっそ、ペ・ドゥナの代わりに空気人形に来てもらうというのもいいかもしれませんね」  来年は記念すべき第20回を迎えるが、これまで大高氏が自腹で運営してきた体制は次回からシフトチェンジしたいとも語る。 「テレビ局が放映する日本アカデミー賞のようなメジャーな映画賞に対するアンチテーゼとしての意義が日プロにはあると考えています。ただ、アンチ、ゲリラも力を持たないといけない。こちらも、いつまでも"個"に固執ばかりしてはいられないということです。まだ、どういう形になるかは分かりませんが、第20回から変わっていくために、ひとつの節目として今回は授賞式をきちんとやりたいという想いがあったんです。でも、日プロ大賞は個人的な熱い想いから生まれたもの。その部分は大事にしていきたいですね」  5月15日に開かれる「日プロ大賞」授賞式は、日本映画の新しい流れを予感させる生イベントとなりそうだ。 (取材・文=長野辰次) 【第19回日プロ大賞授賞式】 ●5月15日(土)午後9時15分開始 授賞式=午後9時15分~午後10時35分 映画上映=午後10時45分から午前6時ごろまで ●会場=池袋・新文芸坐  料金=2500円  主催:日プロ大賞実行委員会 ●上映作品 『EUREKA(ユリイカ)』(ゼロ年代ベストワン作品) 『オカルト』(09年ベスト7位作品)、『蘇りの血』 ●受賞者ゲスト出席者(5月10日時点での予定者) 菅田俊、町田マリー、細田守監督、鈴木卓爾監督、青山真治監督、若松孝二監督
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乱れ咲く”悪の華”ゼブラクイーン! 仲里依紗が過激変身『ゼブラーマン2』

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思わず胸元に目が行ってしまう『ゼブラーマン ゼブラシティの逆襲』
のゼブラクイーン(仲里依紗)。『妖怪大戦争』の高橋真唯、
『神様のパズル』の谷村美月、『ヤッターマン』の深田恭子に続く、
セクシーヒロインだ。三池崇史監督、ありがとう!
(c)2010「ゼブラーマン ゼブラシティの逆襲」製作委員会
 ズンドコズンドコ、顔を黒塗りした仲里依紗が腰を振り振り、踊り狂う。『ゼブラーマン ゼブラシティの逆襲』のいちばんの見どころは、何といっても仲里依紗扮するゼブラクイーンが歌い踊る「ゼブラクイーンのテーマ」のPVシーンだろう。近未来の東京は新知事(ガダルカナル・タカ)によって"ゼブラシティ"と改名され、知事の娘・ゼブラクイーンが絶大な人気を誇っている。都民たちはカリスマアイドル・ゼブラクイーンの過激な言動に痺れっぱなしだ。三池崇史監督が創り出したゼブラシティは、ある意味、すごく平和な社会だ。リーダーシップの強い人間によって治められ、一般市民は何も考えなくていい。しかも、毎日朝と晩に"ゼブラタイム"が導入され、その5分間、ゼブラシティはルール無用の無法地帯となる。毎日、だんじり祭、御柱祭級の興奮が味わえるのだ。ゼブラシティは本能にいちばん忠実なヤツがいちばんエラい。ゼブラクイーンと一緒に踊れば、ズンドコズンドコ、不思議な陶酔感が体にみなぎる。  前作『ゼブラーマン』(04)は哀川翔の主演作100本記念として、盟友・三池崇史監督、脚本に売れっ子・宮藤官九郎が起用されたメモリアルイベントとしての作品だったが、6年のブランクを経て製作された本作は、前作との関連性はかなり希薄。15年もの長い眠りから目覚めたダメ教師・新市(哀川翔)は自分がゼブラーマンだったという記憶を失い、奥さん(鈴木京香)もとっくに消えてしまった。続編というよりは三池監督の独自テイストが前面に押し出された、奇妙に捻れ曲がったワンダーランドとなっている。  三池監督が創り出したダークな色彩のユートピア"ゼブラシティ"。『妖怪大戦争』(05)の高橋真唯、『神様のパズル』(08)の谷村美月、『ヤッターマン』(09)の深田恭子に続く、歪んだ楽園の新しい女王さまに抜擢されたのがアニメ&最新実写版『時をかける少女』のヒロイン・仲里依紗だ。『時かけ』公開の際の彼女に、ゼブラクイーン役についても聞いてみた。 「最初に謝っておきます、スミマセン! 『時をかける少女』を観てファンになってくれた人は『ゼブラーマン──』の私を観て、ショックを受けるかも。『ゼブラクイーンは私です』って言わないと分かんないですよね。自分でも分からないぐらいですから(苦笑)。『時かけ』のときもそうでしたけど、『ゼブラーマン──』もゼブラクイーンのキャラクターが私に憑依して、現場のことはあまり覚えてないんです......」
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真っ白なゼブラーマン(哀川翔)と腹の底
まで真っ黒なゼブラクイーン(仲里依紗)が
激突! 2人がそろって、初めてシマシマに
なることにお互い気づいていない。
 劇中と違って、普段は腰の低い仲里依紗。仲里依紗ファンこそ、『時かけ』の清純ヒロインから、『ゼブラーマン ゼブラシティの逆襲』での"悪の華"への妖艶な変身ぶりを堪能してほしい。仲には自分は"アイドル"ではなく、"女優"であるという認識と覚悟がある。20歳ながら、確固たる職業意識を持っているアッパレな九州女だ。仲は、ある意味で素っ裸だ。一度身にまとったキャラクターのイメージを簡単に脱ぎ去って、新しい作品へと丸裸の状態で飛び込んでいく。役によって、監督によって、善にも悪にも染まってみせる。ひとつのイメージに固執しない柔軟さ、思いっきりの良さが、彼女の魅力だろう。  それにしても、三池監督作品には"三池印"とでも呼ぶべき、グニョグニョとした原生動物のような奇妙なクリーチャーがやたらと登場する。『妖怪大戦争』では吉凶を予言する半人半牛の妖怪"くだん"が冒頭で生まれ、『極道恐怖大劇場 牛頭』(03)では吉野公佳の股間から未知なる生命体が現れる。『インプリント ぼっけぇ、きょうてえ』(04)の工藤夕貴は頭の中にキュートなモンスターを潜ませ、『ヤッターマン』の阿部サダヲは"泥棒の神様"ドクロベエのパカッと開いた頭の中から胎児のように這い出てきた。『神様のパズル』の谷村美月は新しい宇宙、新しい生命を誕生させようと壮大な実験に挑んだ。そして今回の『ゼブラーマン ゼブラシティの逆襲』でもゼブラーマンは巨大な遠心分離機に掛けられ、ゼブラーマンから奇妙な生命体が分離発生する。このグニョグニョした生命体の正体は一体何だろうか?   90年代にVシネを中心に、さまざまなジャンルの作品を職業監督として全力疾走状態で撮り続けた三池監督は、『オーディション』(00)、『殺し屋1』(01)のバイオレンス作品で作家性を高めた。Vシネながらカンヌ映画祭に出品された『牛頭』や"マスター・オブ・ホラー"として米国の有料テレビからの要請を受けて撮った『インプリント』あたりで、その表現スタイルはピークに達したといえるだろう。さらに『クローズZERO』(07)、『ヤッターマン』の大ヒットで、メジャー映画でも興行結果を残せるヒットメーカーとなっていく。  Vシネ界で暴れ回る鬼才から、メジャーシーンへと浮上していった三池監督。作品スタイルにどのような違いが生じたかというと、Vシネ時代の作品が地下室で開かれる秘密のパーティーのような妖しさが漂っていたのに対し、予算が増えたメジャー作品は多くのキャストやスタッフを巻き込んだ"ケンカ祭り""闇祭り"へとスケールアップしていったように思う。そして、その"三池祭り"のご神体となっているのが、例のグニョグニョした生命体、神なのか悪魔なのか分別できない未分化のクリーチャーなのである。  この"三池祭り"は映画館で入場料を払いさえすれば、誰でも参加できる。映画館の照明が消え、いよいよ闇祭りが始まる。祭りには善も悪もない。ただ、日頃溜め込んだ欲望の塊を気持ちよく吐き出すだけだ。ズンドコズンドコ、仲里依紗が扮するゼブラクイーンが歌い踊る。同じアホなら、踊らにゃソンソン。善か悪か分からない奇妙なご神体のある限り、三池祭りは終わらない。 (文=長野辰次) zebra02.jpg ●『ゼブラーマン ゼブラシティの逆襲』 脚本/宮藤官九郎 監督/三池崇史 出演/哀川翔、仲里依紗、阿部力、井上正太、田中直樹(ココリコ)、ガダルカナル・タカ、スザンヌ、永野芽郁、中野英雄、水樹奈々、前田健、六平直政、木下ほうか、マメ山田、波岡一喜、生瀬勝久 配給/東映 5月1日(土)より全国ロードショー公開 <http://www.zeb2.jp>
仲 里依紗 × ゼブラクイーン 写真集 た、たまらん......。 amazon_associate_logo.jpg
●深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】INDEX [第63回] オタク王が見出した"夢と現実"の接点 ティム・バートン監督作『アリス──』 [第62回] バッドテイストな感動作『第9地区』 アナタはエビ人間とお友達になれるか? [第61回]スコセッシ監督の犯罪アトラクション『シャッターアイランド』へようこそ! [第60回]宮崎あおいの"映画代表作"が誕生! 毒を呑んでも生き続けよ『ソラニン』 [第59回]"おっぱいアート"は世界を救えるか? 母乳戦士の記録『桃色のジャンヌ・ダルク』 [第58回]現代に甦った"梶原一騎ワールド"韓流ステゴロ映画『息もできない』 [第57回]命知らずの変態レポーター、中東へ! 史上最大のどっきり?『ブルーノ』 [第56回]仲里依紗がアニメから実写へと跳躍! 母娘2代の時空旅行『時をかける少女』 [第55回]ビグロー監督はキャメロンより硬派! 人間爆弾の恐怖『ハート・ロッカー』 [第54回] "空気を読む"若者の悲劇『パレード』楽しいルームシェア生活の行き先は? [第53回]社会の"生け贄"に選ばれた男の逃亡劇 堺雅人主演『ゴールデンスランバー』 [第52回]『男はつらいよ』の別エンディング? "寅さん"の最期を描く『おとうと』 [第51回]ひとり相撲なら無敵のチャンピオン! 童貞暴走劇『ボーイズ・オン・ザ・ラン』 [第50回]ヒース・レジャーが最後に見た夢の世界 理想と欲望が渦巻く『Dr.パルナサスの鏡』 [第49回]トニー・ジャーは本気なんジャー! CGなしの狂乱劇再び『マッハ!弐』 [第48回]全米"オシャレ番長"ズーイー、見参! 草食系に捧ぐ『(500日)のサマー』 [第47回]市川崑監督&水谷豊"幻の名作"『幸福』28年の歳月を経て、初のパッケージ化 [第46回]押井守監督、大いなる方向転換か? 黒木メイサ主演『アサルトガールズ』 [第45回]ドラッグ漬けの芸能関係者必見!"神の子"の復活を追う『マラドーナ』 [第44回] 暴走する"システム"が止まらない! マイケル・ムーア監督『キャピタリズム』 [第43回]"人は二度死ぬ"という独自の死生観『ガマの油』役所広司の監督ぶりは? [第42回]誰もが共感、あるあるコメディー! 2ちゃんねる発『ブラック会社』 [第41回]タラとブラピが組むと、こーなった!! 戦争奇談『イングロリアス・バスターズ』 [第40回]"涅槃の境地"のラストシーンに唖然! 引退を賭けた角川春樹監督『笑う警官』 [第39回]伝説の男・松田優作は今も生きている 20回忌ドキュメント『SOUL RED』 [第38回]海より深い"ドメスティック・ラブ"ポン・ジュノ監督『母なる証明』 [第37回]チャン・ツィイーが放つフェロモン爆撃 悪女注意報発令せり!『ホースメン』 [第36回]『ソウ』の監督が放つ激痛バイオレンス やりすぎベーコン!『狼の死刑宣告』 [第35回]"負け組人生"から抜け出したい!! 藤原竜也主演『カイジ 人生逆転ゲーム』 [第34回]2兆円ペット産業の"開かずの間"に迫る ドキュメンタリー『犬と猫と人間と』 [第33回]"女神降臨"ペ・ドゥナの裸体が神々しい 空っぽな心に響く都市の寓話『空気人形』 [第32回]電気仕掛けのパンティをはくヒロイン R15コメディ『男と女の不都合な真実』 [第31回]萩原健一、松方弘樹の助演陣が過剰すぎ! 小栗旬主演の時代活劇『TAJOMARU』 [第30回]松本人志監督・主演第2作『しんぼる』 閉塞状況の中で踊り続ける男の悲喜劇 [第29回]シビアな現実を商品化してしまう才女、西原理恵子の自叙伝『女の子ものがたり』 [第28回]"おねマス"のマッコイ斉藤プレゼンツ 不謹慎さが爆笑を呼ぶ『上島ジェーン』 [第27回]究極料理を超えた"極地料理"に舌鼓! 納涼&グルメ映画『南極料理人』 [第26回]ハチは"失われた少年時代"のアイコン  ハリウッド版『HACHI』に涙腺崩壊! [第25回]白熱! 女同士のゴツゴツエゴバトル 金子修介監督の歌曲劇『プライド』 [第24回]悪意と善意が反転する"仮想空間"細田守監督『サマーウォーズ』 [第23回]沖縄に"精霊が暮らす楽園"があった! 中江裕司監督『真夏の夜の夢』 [第22回]"最強のライブバンド"の底力発揮! ストーンズ『シャイン・ア・ライト』 [第21回]身長15mの"巨大娘"に抱かれたい! 3Dアニメ『モンスターvsエイリアン』 [第20回]ウディ・アレンのヨハンソンいじりが冴え渡る!『それでも恋するバルセロナ』 [第19回]ケイト姐さんが"DTハンター"に! オスカー受賞の官能作『愛を読むひと』 [第18回]1万枚の段ボールで建てた"夢の砦"男のロマンここにあり『築城せよ!』 [第17回]地獄から甦った男のセミドキュメント ミッキー・ローク『レスラー』 [第16回]人生がちょっぴり楽しくなる特効薬 三木聡"脱力"劇場『インスタント沼』 [第15回]"裁判員制度"が始まる今こそ注目 死刑執行を克明に再現した『休暇』 [第14回]生傷美少女の危険な足技に痺れたい! タイ発『チョコレート・ファイター』 [第13回]風俗嬢を狙う快楽殺人鬼の恐怖! 極限の韓流映画『チェイサー』 [第12回]お姫様のハートを盗んだ男の悲哀 紀里谷監督の歴史奇談『GOEMON』 [第11回]美人女優は"下ネタ"でこそ輝く! ファレリー兄弟『ライラにお手あげ』 [第10回]ジャッキー・チェンの"暗黒面"? 中国で上映禁止『新宿インシデント』 [第9回]胸の谷間に"桃源郷"を見た! 綾瀬はるか『おっぱいバレー』 [第8回]"都市伝説"は映画と結びつく 白石晃士監督『オカルト』『テケテケ』 [第7回]少女たちの壮絶サバイバル!楳図かずおワールド『赤んぼ少女』 [第6回]派遣の"叫び"がこだまする現代版蟹工船『遭難フリーター』 [第5回]三池崇史監督『ヤッターマン』で深田恭子が"倒錯美"の世界へ [第4回]フランス、中国、日本......世界各国のタブーを暴いた劇映画続々 [第3回]水野晴郎の遺作『ギララの逆襲』岡山弁で語った最後の台詞は...... [第2回]『チェンジリング』そしてイーストウッドは"映画の神様"となった [第1回]堤幸彦版『20世紀少年』に漂うフェイクならではの哀愁と美学